-1-平成25年11月26日判決言渡平成24年(行ウ)第548号過誤納金還付請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,2633万0500円及びこれに対する平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,亡Aの相続人であり,亡Aの相続に関し,原告自身の相続税を納付したほか,他の相続人3名の各名義で合計2633万0500円の相続税を納付したところ,麻布税務署長は,当該他の相続人らが納付すべき相続税はないから,上記納付により誤納金が生じたとして,国税通則法(以下「通則法」という。)56条1項に基づき,当該他の相続人らに対して誤納金を還付した。 本件は,原告が,主位的に,上記誤納金の還付請求権者は納付をした原告であるから,上記還付によりその還付請求権が消滅するものではないと主張して,通則法56条1項に基づき,誤納金額2633万0500円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めるとともに,予備的に,①麻布税務署長が故意又は過失により違法に上記他の相続人らに対して誤納金を還付したなどと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,又は,②原告が上記他の相続人らを債務者として申し立てた仮差押命令に関し,麻布税務署長が第三債務者として過誤納金還付請求権が存在しない旨の不実の陳述をしたと主張して,民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づき,主位的請求と同額の損害賠償金の支払を求める事案である。 -2- 1 関係法令の定め別紙関係法令の定め記載のとおり(なお,同別紙中の略語は,本文においても用いる 事執行法147条2項に基づき,主位的請求と同額の損害賠償金の支払を求める事案である。 -2- 1 関係法令の定め別紙関係法令の定め記載のとおり(なお,同別紙中の略語は,本文においても用いることとする。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠(枝番号の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 当事者等ア亡Aは,平成18年▲月▲日,死亡した。 イ亡Aの第1順位の法定相続人は,亡Aの死亡時の妻である原告のほか,亡Aとその前妻との間の子であるB,C及びD(B及びCと併せて「Bら」という。)の,合計4名であった(以下,亡Aの死亡により開始した相続を「本件相続」という。)。 ウ Bは,平成19年2月8日,本件相続について相続放棄をした。 (2) 誤納金発生の経緯(別表の順号1ないし3)ア原告は,平成19年3月23日,麻布税務署長に対し,単独で,本件相続に係る相続税の申告をした。このとき原告が提出した申告書には,納付すべき税額として,原告につき2633万0600円,B及びCにつき各895万2400円,Dにつき842万5700円と記載されていた。なお,同申告書において,Bらについては,記名はされているが押印はされていなかった(乙1)。 イ C及びDは,平成19年3月26日,麻布税務署長に対し,本件相続に係る相続税の申告をしたが,両名の申告納税額はいずれも0円であった(乙2)。 ウ原告は,平成19年3月26日,日本銀行の国税の収納を行う代理店である株式会社E銀行F支店において,本件相続に係る相続税として,原告名義で2633万0600円を納付したほか,B名義で895万2400円,C名義で895万2400円,D名義で842万5700円をそれぞ-3-れ納付 支店において,本件相続に係る相続税として,原告名義で2633万0600円を納付したほか,B名義で895万2400円,C名義で895万2400円,D名義で842万5700円をそれぞ-3-れ納付した(甲1ないし4,弁論の全趣旨。以下,Bら名義での納付を,それぞれ「B名義納付」,「C名義納付」,「D名義納付」といい,併せて「本件各納付」という。)。本件各納付で使用された納付書の書式は,54号省令別紙第1号書式(その1)であった(甲2ないし4,乙26)。 エしかし,Bは相続放棄により相続税の申告をしておらず,また,C及びDは相続税の申告納税額が0円であったことから,Bらに係る相続税として納付された本件各納付は,納付すべき税額が存在しないのにされたものであり,そのため,本件各納付により誤納金(以下「本件各誤納金」という。)が発生した。 (3) 更正処分等の経緯(別表の順号4,5)ア麻布税務署長は,平成21年6月30日,本件相続に係る相続税に関し,原告に対し,納付すべき税額を156万9900円とする減額更正処分をし,C及びDに対し,納付すべき税額を各78万4900円とする各増額更正処分及び過少申告加算税を各9万2000円とする各過少申告加算税賦課決定処分をした(甲5,乙4)。 イ麻布税務署長は,平成21年12月4日頃,本件相続に係る相続税に関し,原告に対し,納付すべき税額を149万8500円とする減額更正処分をし,C及びDに対し,納付すべき税額を各73万1300円とする各減額更正処分及び過少申告加算税を各8万4500円に減額する各決定をした(甲6,乙9)。 (4) 誤納金還付の経緯(別表の順号6ないし10)ア麻布税務署長は,平成20年8月8日付けで,Bに対し,通則法56条1項に基づき,B名義納付に係る誤納金895万240 をした(甲6,乙9)。 (4) 誤納金還付の経緯(別表の順号6ないし10)ア麻布税務署長は,平成20年8月8日付けで,Bに対し,通則法56条1項に基づき,B名義納付に係る誤納金895万2400円及び還付加算金52万3300円の合計947万5700円を還付した(乙3)。 イ麻布税務署長は,平成21年12月22日付けで,原告に対し,通則法56条1項に基づき,前記(3)アの減額更正処分(原告に対するもの)に-4-より生じた過納金2476万0700円及び還付加算金43万9500円の合計2520万0200円を還付し,さらに,平成22年9月29日付けで,原告に対し,同項に基づき,前記(3)イの減額更正処分(原告に対するもの)により生じた過納金7万1400円及び還付加算金2200円の合計7万3600円を還付した(乙10,11)。 ウ麻布税務署長は,平成23年8月11日付けで,C名義納付に係る誤納金895万2400円について,通則法57条1項に基づき前記(3)ア及びイの更正処分等(Cに対するもの)に係る未納の相続税,過少申告加算税及び延滞税の合計84万8500円に充当した後の金額である810万3900円並びに還付加算金163万4000円の合計973万7900円を,Cに対して還付した(乙12)。 エ麻布税務署長は,平成23年8月11日付けで,D名義納付に係る誤納金842万5700円について,通則法57条1項に基づき前記(3)ア及びイの更正処分等(Dに対するもの)に係る未納の相続税,過少申告加算税及び延滞税の合計84万8500円に充当した後の金額である757万7200円並びに還付加算金153万2500円の合計910万9700円を,Dに対して還付した(乙13。以下,前記アのBに対する還付及び前記ウのCに対する還付と併せて「本件各還付」 金額である757万7200円並びに還付加算金153万2500円の合計910万9700円を,Dに対して還付した(乙13。以下,前記アのBに対する還付及び前記ウのCに対する還付と併せて「本件各還付」という。)。 (5) 原告による仮差押命令申立て等の経緯(別表の順号11)ア原告は,東京地方裁判所に対し,債権者を原告,債務者をB,第三債務者を国(代表者は国税資金支払命令官である麻布税務署長),被保全債権を原告のBに対するB名義納付を理由とする895万2400円の不当利得返還請求権,仮差押債権をBの国に対する平成19年3月26日の過誤納付を理由とする同額の「相続税法32条に基づく過誤納金還付請求権」とする仮差押命令の申立てをし(同裁判所平成21年(ヨ)第2889号債権仮差押命令申立事件),平成21年7月30日,上記内容の仮差-5-押命令がされた(乙6)。 イ原告は,東京地方裁判所に対し,債権者を原告,債務者をC,第三債務者を国(代表者は国税資金支払命令官である麻布税務署長),被保全債権を原告のCに対するC名義納付を理由とする895万2400円の不当利得返還請求権,仮差押債権をCの国に対する本件相続に関する816万7400円の「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」とする仮差押命令の申立てをし(同裁判所平成21年(ヨ)第2888号債権仮差押命令申立事件),平成21年7月31日,上記内容の仮差押命令がされた(乙7)。 ウ原告は,東京地方裁判所に対し,債権者を原告,債務者をD,第三債務者を国(代表者は国税資金支払命令官である麻布税務署長),被保全債権を原告のDに対するD名義納付を理由とする842万5700円の不当利得返還請求権,仮差押債権をDの国に対する本件相続に関する764万0700円の「相続税法32条に基づく相続税還付請 長),被保全債権を原告のDに対するD名義納付を理由とする842万5700円の不当利得返還請求権,仮差押債権をDの国に対する本件相続に関する764万0700円の「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」とする仮差押命令の申立てをし(同裁判所平成21年(ヨ)第2885号債権仮差押命令申立事件),平成21年7月30日,上記内容の仮差押命令がされた(乙5)。 エ麻布税務署長は,前記アないしウの各仮差押命令に係る陳述の催告に対し,平成21年8月13日付けで,各仮差押えに係る債権の存否について「ない」旨を記載した各陳述書を東京地方裁判所宛てに提出して,その旨を陳述した(乙5ないし8)。 3 争点(1) 誤納金還付請求の成否具体的には,原告がBらの名義でした本件各納付により生じた本件各誤納金につき,原告が還付請求権を有するかどうか。 (2) 国家賠償請求の成否-6-具体的には,①麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を違法に還付したこと又は②納付書の書式等に不備があることを理由に,被告が国家賠償法1条1項に基づく賠償責任を負うかどうか。 (3) 民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づく損害賠償請求の成否具体的には,麻布税務署長が第三債務者としてしたC及びDを債務者とする仮差押えに係る債権がない旨の各陳述が不実のものであるかどうか。 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(誤納金還付請求の成否)について(原告の主張)ア国税の還付は民法上の不当利得の返還と実質的に異なるものではないから,本来,その還付は実際の出捐者に対して行うべきである。そして,租税行政の公正かつ円滑な運営の要請から書面上の形式的な記載を重視する必要があるとはいっても,納税者の利益も考慮する必要があり,納付書の記載と異なる事 は実際の出捐者に対して行うべきである。そして,租税行政の公正かつ円滑な運営の要請から書面上の形式的な記載を重視する必要があるとはいっても,納税者の利益も考慮する必要があり,納付書の記載と異なる事情が明らかである場合にまで納付書の形式的な記載を絶対的なものとすべきではない。 そうすると,過誤納金の還付請求権を取得するのは,真に出捐及び納付を行った者(以下「真の納付者」という。)というべきであり,その上で,国は納税名義人として表示された者に対して還付すれば原則として免責されるが,同人が真の納付者でないことが明らかに推認され,同人が過誤納金の受領を拒否しているような場合には,免責されないという解釈をすべきである。 また,その判断は,裁判所が事後的に諸事情を考慮して行うものであり,その判断資料が納付前の事情に限られるものではない。少なくとも,納付の当日又は翌日といった納付と近接した時期であれば,税務署における取扱いは決定していないはずであり,そのような時期の納付後の事情を考慮-7-すべきものとしても,租税行政の公正かつ円滑な運営は何ら害されない。 イこれを本件について見ると,本件各納付の真の納付者は原告である。 そして,①Bは本件相続に係る相続税の申告をしておらず,C及びDはこれを0円とする申告をしていたのに対し,原告は本件各納付と同じ税額が記載された申告書を提出していたのであり,また,原告及びBらの各名義の納付は同じ場所(E銀行F支店)で同時に行われ,その場所は原告の住所地と同じ区内であるのに対し,Bらの住所地はいずれも上記場所とは別の区又は市であって,以上のような申告書と納付書の記載内容等を対照するだけで,原告が本件各納付の真の納付者であることは一見して明白であったこと,②原告は,本件各納付後にBの相続放棄を知ったことから, の区又は市であって,以上のような申告書と納付書の記載内容等を対照するだけで,原告が本件各納付の真の納付者であることは一見して明白であったこと,②原告は,本件各納付後にBの相続放棄を知ったことから,本件各納付の当日又は翌日に,麻布税務署職員に対して電話をかけ,本件各納付は原告がしたものであると説明して,原告に対する還付を求めた上,その後も再三にわたり同趣旨の申入れをしていたこと,③Bらも,麻布税務署職員に対して,本件各納付が原告によってされたことを認め,本件各誤納金の受領を拒んでいたことなどからすれば,本件各納付については,納税名義人として表示された者が真の納付者でないことが明らかに推認され,同人が誤納金の受領を拒否していた場合に当たるから,麻布税務署長が納税名義人として表示されたBらに対して本件各誤納金の還付をしたとしても,本件各誤納金の還付債務が免責されることはないというべきである。 なお,上記②の電話の際,麻布税務署職員は,あくまでも納付書の名義人に返還すべきであるが,Bが原告の口座を還付金の払戻口座に指定すれば,前例のないことながら同口座への返還も可能である旨を言明した。また,原告は,自身が本件各納付に係る納付書控を所持している旨を伝えていたから,麻布税務署職員においてこれを確認すれば,真の納付者が原告であることを容易に確認できた。 -8-ウ原告が本件各納付をしたのは,税理士から,本件相続に係るBらの相続税について連帯納付義務(相続税法34条)を負っていると説明されたからであり,原告は連帯納付義務の履行として本件各納付をしたものである。国税通則法基本通達は,連帯納付義務者が納付した国税につき生じた過誤納金は「その納付した者」に還付する旨を定めているところ(第56条関係の5),「その納付した者」とは,自らの出捐におい ものである。国税通則法基本通達は,連帯納付義務者が納付した国税につき生じた過誤納金は「その納付した者」に還付する旨を定めているところ(第56条関係の5),「その納付した者」とは,自らの出捐において納付手続をした者を指すものと解され,これによれば本件各誤納金も原告に還付されるべきである。 エ本件の状況は,銀行口座に誤振込みがされた場合と類似しており,誤振込みの受取人と同様,納付書に納税名義人と表示された者についても,誤納金を自己のものとすべき実質的権利はないし,自己への還付は望まないのが通常である。そして,真の納付者が自己への還付を求めており,納付書に納税名義人として表示された者が自らが真の納付者でないことを認めて自己への還付を拒んでいるというような場合にまで,同人に還付をすることは,真の納付者を不当に害し,無用な紛争を発生させるだけであって,明らかに社会常識に反する。 オ以上によれば,本件各誤納金の還付請求権者は原告であるというべきであり,麻布税務署長がBらに対して本件各還付をしたことによって,原告の有する本件各誤納金の還付請求権が消滅するものではない。 よって,被告は,原告に対し,通則法56条1項に基づき,本件各誤納金の額である2633万0500円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払う義務を負う。 (被告の主張)ア国税に係る過誤納金が発生した場合において,その還付請求権の債権者となるのは,当該国税の固有の納税義務者である。仮に国税の納付が第三-9-者の出捐によってされたものであったとしても,当該国税の固有の納税義務者ではない当該第三者が,当該国税の納付に係る過誤納金還付請求権を取得することはない。 これは,納税事務及び還付事務が日々大量かつ反 出捐によってされたものであったとしても,当該国税の固有の納税義務者ではない当該第三者が,当該国税の納付に係る過誤納金還付請求権を取得することはない。 これは,納税事務及び還付事務が日々大量かつ反復して生じるものであり,これらを適正かつ画一的に処理しなければならないという租税の特殊性に由来するものである。すなわち,相続税を含めた国税の納税は,課税庁ないし歳入代理店たる金融機関において,一定の書式を備えた納付書を添えて納付することによってのみされるものであるところ(通則法34条1項,通則法施行規則6条(なお,平成19年財務省令第17号による改正後においては16条である。),54号省令5条),課税庁や歳入代理店において,納付書の記載以上に,実質的な出捐者等を逐一確認することは想定されておらず,それゆえ,課税庁は,納付された金員の出所等について一切関知するものではなく,また,もとより出捐者を調査する権限もない。このことから,納税された金員が後に過誤納であることが判明した場合において,当該過誤納金の還付請求権を有する債権者は,その過誤納金が納付されたことによる法的効果を受けた者と見るべきものと解され,たとえ第三者の出捐によって納付がされ,又は第三者がその名において納付をした場合であったとしても,上記納付に係る過誤納金還付請求権の債権者は,固有の納税義務者のみである。 また,過誤納金の還付請求権者が誰であるかは,当該国税が納付された時点で確定するのであって,納付後に生じた事情によって,過誤納金還付請求権の帰属が左右されることはない。 イこれを本件について見ると,本件各納付はBらの相続税として納付がされたものであるから,これによって生じた本件各誤納金の還付請求権者は当該相続税の本来の納税義務者であるBらである。 そして,本件各納付の納付 件について見ると,本件各納付はBらの相続税として納付がされたものであるから,これによって生じた本件各誤納金の還付請求権者は当該相続税の本来の納税義務者であるBらである。 そして,本件各納付の納付書の記載から本来の納税義務者であるBらの-10-納税義務の履行と認められる以上,真の出捐者が誰であるか,納付手続を行った者が誰であるか並びに納付後還付前に原告が税務署職員に対して真の出捐者及び納付手続を行った者が誰かを伝えたかどうかが過誤納金還付請求権の帰属を左右することはないのであって,仮に,真の出捐者及び納付手続を行った者が原告であり,原告が納付後にその旨を麻布税務署職員に連絡していたとしても,また,Bがいったんは誤納金の受領をちゅうちょしていたとしても,そのことによって本件各誤納金の還付請求権の債権者が原告になるわけではない。 ウなお,原告が主張する本件各納付後の事実関係に対する認否等は,次のとおりである。 (ア) 原告が本件各納付の当日又は翌日に麻布税務署職員に対して電話をかけたことについては不知である。ただし,納付直後に電話があったからといって,これに応対した職員において,直ちに本件各納付の納付者が原告であることを明確に確認できるわけではないし,直ちに原告に対して過誤納金を還付すべき旨を判断することなど到底できない。また,還付金等の支払手続において,銀行口座に振り込む方法をとる場合には,還付請求権者と名義が一致した預金口座に振込入金することが原則であり,例外的に還付請求権者以外の預金口座に振り込むことがあったとしても,還付請求権者と受領者との間での債権譲渡や受領の委任があった事実が確認できた場合に限られるところ,債権譲渡や受領の委任はあくまでも当事者間で行われるものであり,税務署職員が積極的にこれを行うように処置すること と受領者との間での債権譲渡や受領の委任があった事実が確認できた場合に限られるところ,債権譲渡や受領の委任はあくまでも当事者間で行われるものであり,税務署職員が積極的にこれを行うように処置することはない(職員が一定の処理について述べたとすれば,一般論としてそういう方法があり得ることを述べたにすぎないと思われる。)。したがって,少なくとも,上記電話の際に,麻布税務署職員が,原告に対して過誤納金を支払うことも可能であると断定的に回答することはあり得ない。 -11-このほか,原告が,麻布税務署職員に対し,本件各納付は原告がしたものであるためBらに還付しないでほしい旨を電話で申し出たり,麻布税務署に出向いて本件各納付の経緯等について説明したりしたことはあるが,その時期は平成21年7月頃以降である。 (イ) Bは,誤納金の発生理由及び受領する理由が分からない状況では受領できないと述べたことはあるものの,その後誤納金を任意に受領しているし,C及びDは,ちゅうちょすることなく誤納金を任意に受領しており,いずれも本件各誤納金の受領を拒否していない。 エ原告は,連帯納付義務の履行として本件各納付をした旨を主張する。しかし,原告は,あくまでもBらに代わって同人らの相続税を納付したにすぎず,そもそも連帯納付義務の履行として本件各納付をしたものではない。また,納税者が連帯納付義務の履行として納付したことを課税庁に主張できるのは,形式的な書面上の記載を重視する必要性から,特段の事情のない限り,納付書に連帯納税義務の履行である旨を明記した場合に限られるところ,本件各納付の納付書には連帯納付義務の履行であることは何ら現れていないし,上記特段の事情も存在しないから,本件各納付が連帯納付義務の履行としてされたものとは認められない。そして,国税の納付が連帯納 本件各納付の納付書には連帯納付義務の履行であることは何ら現れていないし,上記特段の事情も存在しないから,本件各納付が連帯納付義務の履行としてされたものとは認められない。そして,国税の納付が連帯納付義務の履行であると評価できるかどうかは,当該国税の納付時において決せられるものであり,納付後の事情によって以上のことが左右されるものではない。 オ銀行における誤振込みの場合と本件とでは,債権の法的性質も事案も異なるから,誤振込みの場面での取扱いを根拠に,原告に対して本件各誤納金を還付すべきであるということはできない。 カよって,本件各誤納金を還付すべき相手方はBらであって,原告ではないから,原告による本件各誤納金の還付請求には理由がない。なお,還付加算金の金額の計算は,通則法58条1項,租税特別措置法95条1項,-12-93条1項所定の割合で行うべきである。 (2) 争点(2)(国家賠償請求の成否)について(原告の主張)ア ①麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を違法に還付したことについて(ア) 税務署長は,納税事務及び還付事務の正常な運営に支障のない範囲で,納税者に不利益が生じるのを回避するとともに,無用な紛争の発生を防止し,また,国費の無用な支出を防止すべき義務を負っている。 (イ) 本件各納付については,原告が真の納付者であることが明らかに推認され,かつ,納税名義人として表示されたBらも,原告が真の納付者であることを認めて誤納金の受領を拒んでいた。特に,Bは,麻布税務署に対して,B名義納付について,自らが納付したことがないことを通知し,有印私文書偽造等の犯罪行為が行われた可能性もあるなどと告げた上,還付がされないように預金口座を解約するという強硬手段もとっており,誤納金の受領を明確に拒絶していた。 このような いことを通知し,有印私文書偽造等の犯罪行為が行われた可能性もあるなどと告げた上,還付がされないように預金口座を解約するという強硬手段もとっており,誤納金の受領を明確に拒絶していた。 このような事情の下では,麻布税務署長としては,納税者の利益を図る意味からも,無用な紛争や高額な還付加算金の発生を防止する意味からも,Bらが誤納金の受領を拒んだ時点で直ちにこれを供託(通則法121条,民法494条)すべきであった。それにもかかわらず,麻布税務署長は,Bらに対して度重なる強い要請をして,無理に本件各還付をしたものであって,その行為は前記(ア)の義務に違反し,違法というべきである。 (ウ) 本件各還付により,原告は,Bらに対する不当利得金債権の回収に困難を来すことになり,同債権相当額である2633万0500円の損害を被った。 イ ②納付書の書式等に不備があることについて-13-(ア) 国は,国民が国税の納付書に誤った記載をして損害を被らないように配慮する義務を負っている。 (イ) しかし,通則法施行規則等所定の納付書には,連帯納付義務の履行として納付する旨を記載する欄は存在しないし,同納付書の備考や説明書き等を見ても,どこにどのように連帯納付義務の履行である旨を記載すればよいのか不明である。そのため,原告のように,連帯納付義務を履行しようとしながら,他の相続人の名を記載してその納付すべき税額を納付してしまうことも十分起こり得るところであり,その結果は,真の納付者でありながら誤納金の還付を受けられなくなるという重大なものである。 財務大臣は,このような不備のある書式の納付書を漫然と用いていたものであり,前記(ア)の義務に違反した違法がある。 また,国税庁長官は,連帯納付義務の履行として納付する場合の記入方法を納付書に付記したり, は,このような不備のある書式の納付書を漫然と用いていたものであり,前記(ア)の義務に違反した違法がある。 また,国税庁長官は,連帯納付義務の履行として納付する場合の記入方法を納付書に付記したり,インターネット上のホームページで注意喚起したりすることを怠ったものであり,前記(ア)の義務に違反した違法がある。 (ウ) 原告は,これらの義務違反により,誤ってBら名義で本件各納付を行い,結果的に本件各納付に係る誤納金の還付を受けることができなくなったのであり,本件各誤納金相当額の損害を被った。 ウ被告の国家賠償責任よって,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金2633万0500円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 (被告の主張)ア ①麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を還付したことについて-14-本件各誤納金の還付請求権者はBらであるから,麻布税務署長は,法令に基づき,還付請求権者に対して適切に本件各誤納金の還付を実施したものであり,本件各還付に何ら違法はない。 また,Bらは最終的に本件各誤納金を任意に受領しており,受領拒絶(民法494条)をした事実はないし,債務者は債権者が弁済の受領を拒んだ場合に供託により債務を免れることが「できる」とされているにとどまり(同条),供託をする義務があるわけでもないから,麻布税務署長において本件各誤納金を供託すべき義務が生じる余地はない。 よって,麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を違法に還付したことを理由とする国家賠償請求には理由がない。 イ ②納付書の書式等について相続税法34条に規定する連帯納付義務の履行は自己の義務(債務)の履行としてされるものであり 件各誤納金を違法に還付したことを理由とする国家賠償請求には理由がない。 イ ②納付書の書式等について相続税法34条に規定する連帯納付義務の履行は自己の義務(債務)の履行としてされるものであり,連帯納付義務者も通則法2条5号に規定する「納税者」に該当するから,連帯納付義務者がその連帯納付義務を履行したというためには,当該連帯納付義務者が,所定の納付書(通則法施行規則別紙第1号書式又は54号省令別紙第1号書式(その1))に納税者として自己の納税地及び氏名を記載し,自らの納税義務の履行であることを明らかにするとともに,連帯納付義務の履行であることを判別することができるように,他の相続人の納税地及び氏名を適宜の余白に記載すれば足りる。納付書には連帯納付義務の履行として納付する場合についての説明はされていないが,連帯納付をしようとする者であっても,納付書に自己の納税地及び氏名を記載するのが原則であり,殊更連帯納付義務の履行の場面に固有の記載方法に拘泥する必要はない。したがって,連帯納付義務の履行に関し,納付書の書式等に何ら不備はない。 そもそも,原告は,連帯納付義務の履行を意図して本件各納付をしたものではないから,原告の主張は前提を欠くものである。 -15-よって,納付書の書式等の違法を理由とする国家賠償請求には理由がない。 (3) 争点(3)(民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づく損害賠償請求の成否)について(原告の主張)ア前記前提事実(5)イ及びウの債権仮差押命令につき,麻布税務署長は,被告の代表者として,仮差押債権であるC及びDの誤納金還付請求権が未還付につき存在していたにもかかわらず,これが存在しない旨の不実の陳述をした。なお,その仮差押債権目録には,通則法56条1項ではなく「相続税法32条に基づく 債権であるC及びDの誤納金還付請求権が未還付につき存在していたにもかかわらず,これが存在しない旨の不実の陳述をした。なお,その仮差押債権目録には,通則法56条1項ではなく「相続税法32条に基づく」旨の誤記がされていたが,いずれの規定も過誤納金を納税者に還付する旨の条項であり,債権の特定に欠けるところはない。 イこの不実の陳述により,原告は,本件各納付に基づく不当利得金債権の回収に困難を来すことになり,同債権相当額である2633万0500円の損害を被った。なお,原告は,この不当利得金債権について転付命令を受けたが,前記仮差押債権がある旨の陳述がされていれば,当該転付命令を受ける前に,不当利得金債権の回収をすることが可能であった。 ウよって,被告は,原告に対し,民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づき,損害賠償金2633万0500円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成24年9月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 (被告の主張)ア国税の還付請求権は通則法等の法令の規定に基づいて発生する法定債権であるから,その仮差押えをする場合には,仮差押債権目録において根拠法令,法的性質及び要件事実等を正確に記載して特定しなければならず,これらが異なれば債権の同一性は認められない。第三債務者としても,-16-仮差押債権目録に明示されている根拠法令,法的性質や要件事実等に沿った解釈をして,仮差押債権が何であるかを判別すべきである。 前記前提事実(5)イ及びウの債権仮差押命令において,仮差押債権は「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」と記載されているが,本件各誤納金の還付請求権は,通則法56条1項に基づいて発生したものであって,更正の請求の特則を規定する相続税法32条に基づ 差押債権は「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」と記載されているが,本件各誤納金の還付請求権は,通則法56条1項に基づいて発生したものであって,更正の請求の特則を規定する相続税法32条に基づき発生する還付金支払請求権とは,その根拠法令,法的性質及び要件事実のいずれも異にするものである。そうすると,上記各債権仮差押命令の仮差押債権目録に記載された「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」は,本件各誤納金の還付請求権とは異なるものであり,上記各債権仮差押命令の効力が本件各誤納金の還付請求権に及ぶことはないから,麻布税務署長がした仮差押えに係る債権が存在しない旨の陳述は,何ら真実に反するものではない。 イまた,前記各債権仮差押命令に関し,原告は本案事件において敗訴し,債務名義を得るに至っていないし,請求債権たる原告のC及びDに対する各不当利得返還請求権はいずれも債権差押え及び転付命令により移転し,原告はもはやその債権者ではない。したがって,仮に麻布税務署長の前記陳述が不実のものであるとしても,これにより原告に損害が生じる余地はない。 ウよって,民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づく損害賠償請求には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(誤納金還付請求の成否)について(1) 国税に係る過誤納金の還付請求権者についてア通則法56条1項は,国税局長,税務署長又は税関長(以下「税務署長等」という。)は,国税に係る過誤納金があるときは,遅滞なく,金銭で還付しなければならないものと規定する。同項に規定する過誤納金は公法-17-上の不当利得の性質を有するものと解されるところ,通則法が租税法律関係の特殊性に鑑みて特に上記規定を設けていることからすれば,同項に基づく過誤納金の還付請求権者が誰であるかについ 金は公法-17-上の不当利得の性質を有するものと解されるところ,通則法が租税法律関係の特殊性に鑑みて特に上記規定を設けていることからすれば,同項に基づく過誤納金の還付請求権者が誰であるかについても,租税法律関係の特殊性に鑑みて判断すべきものと解するのが相当である。 上記国税に係る過誤納金は,国税の納付がされた場合において,それが事後的に法律上の原因を欠くに至ったとき又は納付時から法律上の原因を欠くときに生じ,その還付がされるものである。そこで,国税の納付の手続について見ると,通則法34条1項は,国税を納付しようとする者は,その税額に相当する金銭に納付書を添えて,これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に納付しなければならないものと規定している。この納付書の書式は,通則法施行規則6条,別紙第1号書式において定められており(なお,納付書の書式に係る定めの内容は,本件各納付当時のものを記載する。以下同じ。),当該書式には,納税者の納税地及び氏名又は名称,年度,受入科目,取扱庁名,納付の目的並びに金額を記載する欄があり,これらについては,法令に別段の定めがある場合を除き,納税者が記載するものと定められている(同書式の備考4)。また,電子情報処理組織を使用して国税の収納処理をする場合における特例として,その場合の納付書の書式が54号省令5条,別紙第1号書式(その1)において定められており,当該書式には,納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名),年度,税目番号,税務署名,納期等の区分並びに金額を記載する欄があり,これらについては,法令に別段の定めがある場合を除き,納税者が記載するものと定められている(同書式の備考2)。そして,国税の納付に関し,上記のとおりの納付書における納税者の氏名等の記載の 欄があり,これらについては,法令に別段の定めがある場合を除き,納税者が記載するものと定められている(同書式の備考2)。そして,国税の納付に関し,上記のとおりの納付書における納税者の氏名等の記載のほかに,当該納付の実質的な出捐者が誰であるかや当該納付の手続を行ったのが誰であるか等を記載することを求める法令の定めは見当たらないし,国税の収納を行う税務署の職員等に-18-おいて,当該納付の実質的な出捐者が誰であるかや当該納付の手続を行ったのが誰であるか等を逐一確認すべきことを定める法令の定めも見当たらない。さらに,国税に係る過誤納金の還付に関しても,その還付を行う税務署長等において,当該過誤納金の実質的な出捐者が誰であるかやその納付の手続を行ったのが誰であるか等を逐一確認すべきことを定める法令の定めは見当たらない。 このような国税の納付及び還付に関する法令の定めの内容と,納税事務及び還付事務が大量かつ反復的に行われ,これを迅速かつ画一的に処理する必要があるという租税法律関係の特殊性に鑑みれば,納付時において国税の収納を行う税務署の職員に対して別異の表示がされたような場合をどのように解するかはともかくとして,そうでない限り,国税の納付の効果は納付書に納税者として記載された者(以下「納税名義人」という。)に帰属し,かつ,当該国税に係る過誤納金の還付請求権は当該納税名義人が取得するものと解すべきである。 なお,通則法41条1項の規定により第三者が納付する場合又は国税徴収法に規定する第二次納税義務者若しくは国税の保証人が納付する場合においては,納付書の納税者の納税地及び氏名又は名称欄に当該第三者,第二次納税義務者又は保証人の住所及び氏名又は名称を記載し,納付の目的欄又は余白に納税者すなわち固有の納税義務者の納税地及び氏名又は名称を付記す 付書の納税者の納税地及び氏名又は名称欄に当該第三者,第二次納税義務者又は保証人の住所及び氏名又は名称を記載し,納付の目的欄又は余白に納税者すなわち固有の納税義務者の納税地及び氏名又は名称を付記するものとされているところ(通則法施行規則別紙第1号書式の備考7。54号省令別紙第1号書式(その1)の備考4においても同様の定めがされている。),その場合の当該国税に係る過誤納金の還付請求権の帰属については,上記のとおり納付書に記載された納付の性質を踏まえて決せられるべき問題であり,場合を異にする本件では特に立ち入らない。 イこれに対し,原告は,過誤納金の還付請求権を取得するのは「真に出捐-19-及び納付を行った者」である旨を主張する。 しかし,前記アのとおり,過誤納金の還付を行う税務署長等において当該過誤納金の実質的な出捐者が誰であるかやその納付の手続を行ったのが誰であるか等を逐一確認すべきことを定める法令の定めはないところ,原告のように解するとすれば,税務署長等に対し,法令上の義務及び権限のない「真に出捐及び納付を行った者」を調査する事務を強いることになる上,大量の還付事務の迅速かつ画一的な処理の要請にも反する結果となるのであって,このような解釈を採用することはできない。 「真に出捐及び納付を行った者」と納税名義人が異なる場合において,納付された国税の出捐者ではない納税名義人に対して当該国税に係る過誤納金が還付されたとしても,当該出捐者と当該納税名義人との間において清算すべき債権債務関係が生じるにとどまり,両者と国との間の債権債務関係が生じるものではない。原告が主張するようにこのような場合に「真に出捐及び納付を行った者」に対して過誤納金を還付すべきであるとすれば,「真に出捐及び納付を行った者」があえて自らと異なる者を納税名義人と じるものではない。原告が主張するようにこのような場合に「真に出捐及び納付を行った者」に対して過誤納金を還付すべきであるとすれば,「真に出捐及び納付を行った者」があえて自らと異なる者を納税名義人としたことにより,国又は税務署長等は,納税名義人ではない「真に出捐及び納付を行った者」が誰であるかを調査,解明する義務を負担させられ,かつ,その判断を誤って還付した場合にはその受領者からの回収等に係るリスクも負担させられることになるのであって,このような結果を招く解釈は不相当なものといわなければならない。 (2) 本件各納付等に係る事実関係そこで,本件各納付等に係る事実関係について見ると,前記前提事実のほか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実が認められる。 ア原告は亡Aの死亡時の妻であり,Bらは亡Aとその前妻との間の子であったが,原告とBらとは, ○ であった亡Aの存命中から,亡A名義の-20-財産の帰属等をめぐって争うなど,険悪な関係にあった(甲11,前記前提事実(1)イ)。 イ原告は,亡Aが平成18年 ▲月 ▲日に死亡した後,本件相続に係る相続税につき,Bらと共同して申告書を提出することができなかったため,平成19年3月23日,原告が単独で作成した申告書を提出した(甲11,前記前提事実(2)ア)。 さらに,原告は,税理士から,Bらの相続税についても原告に連帯納付義務があり延滞税も生じ得る旨等の説明を受けたことから,平成19年3月26日,上記申告書に記載された各相続人の納付すべき税額に従い,原告名義及びBら名義で相続税の納付をした(このうちBら名義での納付が本件各納付である。)。これらの納付は,いずれも,日本銀行の国税の収納を行う代理店である株式会社E銀行F支店において,54号省令別紙第1号書式(その1 相続税の納付をした(このうちBら名義での納付が本件各納付である。)。これらの納付は,いずれも,日本銀行の国税の収納を行う代理店である株式会社E銀行F支店において,54号省令別紙第1号書式(その1)を用いて行われたものであり,そのうち,原告名義の納付については,その納税者欄に原告の氏名及び住所が記載されており,本件各納付については,その納税者欄にそれぞれB(B名義納付),C(C名義納付)又はD(D名義納付)の氏名及び住所が記載されている一方,原告を示す氏名等は何ら記載されていなかった(甲1ないし4,11,前記前提事実(2)ウ)。 ウ原告は,本件各納付後間もなく,Bが本件相続について相続放棄をしていたこと(前記前提事実(1)ウ)を知った。そこで,原告は,本件各納付の当日又は翌日頃,麻布税務署に電話をかけ,同税務署職員に対し,原告が本件各納付をした旨やB名義納付に係る納付金を原告に返還してほしい旨を告げたところ,同税務署職員は,Bが原告の口座を返金口座に指定すれば,当該口座に返還する余地がある旨等を説明した(甲11,乙22,弁論の全趣旨)。(なお,原告の陳述書(甲11)には,上記説明をしたのは麻布税務署長である旨が記載されているが,この点は被告が明示的に-21-否認するところであり,他にこれを裏付ける証拠もないから,そのような事実を認めることはできない。)エ麻布税務署において,平成19年6月11日から同年7月24日まで,本件各納付に係る申告状況等について調査した結果,Bについては,既に相続放棄手続がされており相続税額が発生する見込みがないため,納付された相続税を還付し,C及びDについては,申告税額を0円とする相続税の申告書が提出されているものの,修正申告書の提出が想定されるため,納付された相続税の還付を保留することとされた( ないため,納付された相続税を還付し,C及びDについては,申告税額を0円とする相続税の申告書が提出されているものの,修正申告書の提出が想定されるため,納付された相続税の還付を保留することとされた(乙22,前記前提事実(2)エ参照)。 オ麻布税務署職員は,平成19年9月26日付けで,Bに対し,国税還付金の振込口座を尋ねる書面を送付した。これに対し,Bは,同年10月11日付けで,麻布税務署宛てに,B名義の預金口座を記載した回答書とともに,「私は麻布税務署に対し過去に国税を納付したことはなく,還付金が発生する理由がありません。もし私の名前で税金を納付した第三者がいたとすれば,有印私文書偽造等の犯罪行為が行われていた可能性もございます。したがいまして還付金を振り込む前に,今回の私の還付金請求権発生根拠をご教示願いたいと思います。」などと記載した通知書を送付した。 その後,Bは,還付請求権の発生根拠の連絡がないことを理由に上記預金口座を解約したが,麻布税務署職員が,平成19年12月17日付けで,Bに対し,B名義納付につき納付の目的となる申告が確認できないため過誤納金として通則法56条に基づく還付がされる旨や,第三者等が納付した国税について生じた過誤納金は納税者(納付書に記載されている者)に還付することとなっている旨等を記載した書面を送付したところ,Bは,同月24日付けで,同書面により理解することができた旨や,振込先口座を近日中に新設する旨等を回答した(以上につき,乙22)。 そして,麻布税務署長は,平成20年8月8日付けで,Bに対し,B名-22-義納付に係る誤納金及び還付加算金を還付した(前記前提事実(4)ア)。 カ原告は,平成21年7月,東京地方裁判所に対し,前記前提事実(5)アないしウのとおりの内容の仮差押命令の申立てをするとと -義納付に係る誤納金及び還付加算金を還付した(前記前提事実(4)ア)。 カ原告は,平成21年7月,東京地方裁判所に対し,前記前提事実(5)アないしウのとおりの内容の仮差押命令の申立てをするとともに,その頃,麻布税務署職員に対し,電話で,同申立てをした旨のほか,本件各納付は原告がしたものであるためBらに対して還付しないでほしい旨を告げた。 また,この頃,麻布税務署職員は,原告の過誤納金の振込先を確認する目的等で原告に数回電話をかけたが,その際にも,原告は,本件各納付は原告がしたものであるためBらに対して還付しないでほしい旨を繰り返し述べていた(甲11,乙22)。 なお,麻布税務署長は,上記各仮差押命令に係る陳述の催告に対し,仮差押債権と本件各誤納金の還付請求権の内容が一致しなかったため,仮差押えに係る債権は「ない」旨を陳述した(乙22,前記前提事実(5)エ)。 キ麻布税務署長は,本件相続に係る相続税についての調査を経て,平成21年6月から12月までの間に,原告,C及びDに対し,同相続税に関する更正処分等をした(前記前提事実(3))。 これを踏まえて,麻布税務署長は,平成21年12月22日付け及び平成22年9月29日付けで,原告に対し,原告名義の納付に係る過納金及び還付加算金を還付した。他方,麻布税務署長は,C名義納付及びD名義納付に係る各誤納金については,原告が自らへの還付を求めていたことや,原告とC及びDとが本件相続をめぐって係争中であったことなどから,その還付を保留していたが,平成23年8月11日付けで,C及びDに対し,C名義納付及びD名義納付に係る誤納金及び還付加算金をそれぞれ還付した(乙22,前記前提事実(4)ウ及びエ)。(なお,C又はDがその受領を拒んだとは認められない。)ク C及びDは,平成21年12月28日頃 及びD名義納付に係る誤納金及び還付加算金をそれぞれ還付した(乙22,前記前提事実(4)ウ及びエ)。(なお,C又はDがその受領を拒んだとは認められない。)ク C及びDは,平成21年12月28日頃,原告ほか1名を被告として,原告が亡A名義の預金を原告の相続分を超えて第三者名義の預金口座に-23-送金したことにより,C及びDが相続した預金債権を侵害されたとして,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,それぞれ1億2272万4401円及びこれに対する遅延損害金の支払等を請求する訴えを東京地方裁判所に提起し(同裁判所平成21年(ワ)第47548号),同裁判所は,平成22年12月20日,同請求を認容する旨の判決をした(以下「別件判決」という。)。これに対し,原告ほか1名は東京高等裁判所に控訴したが(同裁判所平成23年(ネ)第759号),同裁判所は,平成23年5月31日,同控訴を棄却する旨の判決をした(甲11,乙19)。 (なお,本件証拠関係上,その確定の有無は明らかでない。)その後,東京地方裁判所により,①平成23年7月14日,債権者をC及びD,債務者を原告,第三債務者をB,請求債権を別件判決を債務名義とする債権,差押債権を原告のBに対するB名義納付を理由とする不当利得返還請求権とする各債権差押え及び各転付命令が,②同年11月11日,債権者をC,債務者を原告,第三債務者をD,請求債権を別件判決を債務名義とする債権,差押債権を原告のDに対するD名義納付を理由とする不当利得返還請求権とする債権差押え及び転付命令が,③同日,債権者をD,債務者を原告,第三債務者をC,請求債権を別件判決を債務名義とする債権,差押債権を原告のCに対するC名義納付を理由とする不当利得返還請求権とする債権差押え及び転付命令がそれぞれされ,以上の①ないし③の転付命 告,第三債務者をC,請求債権を別件判決を債務名義とする債権,差押債権を原告のCに対するC名義納付を理由とする不当利得返還請求権とする債権差押え及び転付命令がそれぞれされ,以上の①ないし③の転付命令はいずれも確定した(乙19ないし21)。 原告は,C及びDを被告として,Cに対し,原告によるC名義納付を理由とする不当利得の返還等を,Dに対し,原告によるD名義納付を理由とする不当利得の返還等を,それぞれ請求する訴えを東京地方裁判所に提起したが(同裁判所平成22年(ワ)第47894号),同裁判所は,平成24年11月2日,原告がC名義納付及びD名義納付に基づきC及びDに対してそれぞれ不当利得返還請求権を取得したことは認めたものの,上記-24-②及び③の各転付命令により,原告はこれらの不当利得返還請求権を失ったなどとして,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決をした(乙19)。 (なお,本件証拠関係上,その確定の有無は明らかでない。)(3) 本件各誤納金の還付請求権者についてア前記(1)アの解釈を前提に,本件各納付に係る事実関係について見ると,本件各納付に係る各納付書(54号省令別紙第1号書式(その1)を用いたもの)には,その納税者欄にそれぞれB(B名義納付),C(C名義納付)又はD(D名義納付)の氏名が記載されている一方,原告を示す氏名等は何ら記載されていないのであるから(前記(2)イ),本件各納付につき,納付書に納税者として記載された者(納税名義人)は,Bらであるというほかない。また,上記の各納付書の記載内容に加え,本件各納付は日本銀行の国税の収納を行う代理店である株式会社E銀行F支店において行われたものであること(前記(2)イ)からすれば,本件各納付について,その納付時において,国税の収納を行う税務署の職員に対して納税名義人とは 税の収納を行う代理店である株式会社E銀行F支店において行われたものであること(前記(2)イ)からすれば,本件各納付について,その納付時において,国税の収納を行う税務署の職員に対して納税名義人とは異なる納税者の表示がされていたものと認めることはできない。 そうすると,前記(1)アに述べたところからすれば,本件各納付によって生じた本件各誤納金の還付請求権者は,本件各納付の納税名義人であるBらであるというべきである。 イ原告は,過誤納金を還付すべき者の判断につき,その資料は納付前の事情に限られるものではなく,納付後の事情であっても,少なくとも納付と近接した時期のものは考慮されるべきであるとした上で,原告が,本件各納付の当日又は翌日に麻布税務署職員に対して電話をかけ,本件各納付は原告がしたものであると説明して原告に対する還付を求めていたこと,Bらも,麻布税務署職員に対して,本件各納付が原告によってされたことを認めて本件各誤納金の受領を拒んでいたこと等の本件各納付後の事情を主張して,本件各誤納金は原告に還付すべきであり,本件各誤納金をBら-25-に還付しても本件各誤納金の還付請求権は消滅しない旨を主張する。 しかし,そもそも,原告の上記主張は,過誤納金の還付請求権を取得するのは「真に出捐及び納付を行った者」であるとの解釈を前提とするものであるところ,そのような解釈を採用することができないのは前記(1)イのとおりである。そして,当裁判所の採用する前記(1)アの解釈を前提としてみても,国税の納付の効果は納付時において生じるものであり,その納付が法律上の原因を欠いていた場合の過誤納金の還付請求権の帰属も当該納付時において定まるものというべきであるところ,前記アのとおり,納付時の事情によりBらが本件各納付によって生じた本件各誤納金の還付請求 律上の原因を欠いていた場合の過誤納金の還付請求権の帰属も当該納付時において定まるものというべきであるところ,前記アのとおり,納付時の事情によりBらが本件各納付によって生じた本件各誤納金の還付請求権を取得するものと認められるのであるから,原告が主張するような納付後の事情があったとしても,それが本件各誤納金の還付請求権の帰属に影響するものということはできない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 ウなお,過誤納金の還付請求権の帰属が国税の納付時において定まるとしても,その後において,当該還付請求権を取得した者から当該納付をしたと主張する者その他の第三者に対して,債権譲渡その他の債権の移転や受領の委任がされたような場合には,一般的な債権債務関係の場合と同様に,当該第三者に対して過誤納金の支払がされることになるものと解されるから,本件においても,このような方法により原告が本件各誤納金に係る還付すべき金員の支払を受ける余地はあったものと考えられる。本件各納付後に,麻布税務署職員が,B名義納付について自らへの還付を求める原告に対して,Bが原告の口座を返金口座に指定すれば当該口座に返還する余地がある旨を説明したのも,上記のような方法による解決が可能であることを一般論として説明したものと考えられる。もっとも,このような方法による解決は専ら関係当事者間において図られるべき性質のものであるところ,本件においては,本件各納付から本件各還付までに相当程度-26-の期間(Bに対する還付までは1年4か月余り。C及びDに対する還付までは4年4か月余り。)があったにもかかわらず,原告とBらとの間の険悪な関係や争訟の存在等を背景として,結局,原告とBらとの間で上記のような方法がとられることはなかったのであって,本来の還付請求権者であるBらに 余り。)があったにもかかわらず,原告とBらとの間の険悪な関係や争訟の存在等を背景として,結局,原告とBらとの間で上記のような方法がとられることはなかったのであって,本来の還付請求権者であるBらに対して還付がされたのは,やむを得ない結果というべきである。 また,前記(1)イのとおり,納付された国税の出捐者ではない納税名義人に対して当該国税に係る過誤納金が還付された場合,当該出捐者と当該納税名義人との間において清算すべき債権債務関係が生じるのであって,本件各納付についても,原告は,Bらに対して本件各納付の額に相当する不当利得返還請求権を取得したものと解されるから,その意味においては,Bらに対する還付によって原告が経済的不利益を受けることはないはずである。この点につき,前記(2)クのとおり,原告のBらに対する本件各納付を理由とする不当利得返還請求権がいずれも確定した転付命令の対象とされたことから,原告は当該請求権を失っており,今後原告がBらから本件各納付に相当する金員を回収することはできなくなったものとも考えられるが,このような状況は,原告が当該転付命令に係る債務名義の原因となる債務(別件判決で認容された債務)を負っていたという,本件各納付及び本件各還付とは関係のない事情によって生じたものであるし,また,当該転付命令の確定によって当該債務について弁済効(民事執行法160条)が生じるのであるから,その意味においては,原告は本件各納付の額に相当する経済的利益を受けているものということができる。 以上のことからすれば,前記アの解釈が原告に不合理な不利益をもたらすものということはできず,明らかに社会常識に反するともいえない。 (4) 連帯納付義務者としての納付の主張についてさらに,原告は,原告が本件各納付をしたのは,本件相続に係るBらの相 利益をもたらすものということはできず,明らかに社会常識に反するともいえない。 (4) 連帯納付義務者としての納付の主張についてさらに,原告は,原告が本件各納付をしたのは,本件相続に係るBらの相-27-続税について原告が連帯納付義務(相続税法34条)を負っていたからである旨を主張する。 しかしながら,上記主張が,本件各納付が連帯納付義務の履行としてされたものであることをいう趣旨であるとすれば,相続税法34条に定める連帯納付の義務は,当該連帯納付義務者自身が負う国税を納める義務であり,連帯納付義務の履行は,当該連帯納付義務者が自らを納税者(通則法2条5号)として行うものであるから,その納付の効果や過誤納金の還付請求権の帰属については,前記(1)アと同様に解すべきものである。そして,本件各納付について,その納付の効果や本件各誤納金の還付請求権が原告に帰属するものではないことは前記(3)アのとおりであり,その結論は,本件各納付の効果が連帯納付義務の履行として原告に帰属するものかどうかやその納付による誤納金の還付請求権が原告に帰属するかどうかについても,異なるものではない。 他方,上記主張が,本件各納付に係る動機をいうものであるとすれば,単なる動機によってその納付の効果や本件各誤納金の還付請求権の帰属が左右されるものではない。 したがって,いずれにしても,上記主張によって前記(3)アの判断が左右されるものではない。 (5) まとめ以上のとおり,本件各誤納金の還付請求権者はBらであって,原告がその還付請求権者であると認めることはできないから,通則法56条1項に基づき本件各誤納金の還付を求める原告の請求には理由がない。 2 争点(2)(国家賠償請求の成否)について(1) ①麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を還付したことに から,通則法56条1項に基づき本件各誤納金の還付を求める原告の請求には理由がない。 2 争点(2)(国家賠償請求の成否)について(1) ①麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を還付したことについて前記1のとおり,本件各誤納金の還付請求権者はBらであるから,麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を還付したことについて,国家賠償法上-28-の違法があるということはできない。なお,前記1(3)ウのとおり,Bらから原告に対する債権譲渡その他の債権の移転や受領の委任がされたような場合には,原告に対して本件各誤納金に係る還付すべき金員の支払をする余地はあったものと解されるが,このような方法による解決は専ら関係当事者間において図られるべき性質のものであって,税務署長においてこのような方法がとられるように積極的に行動すべき義務があるとは認められないから,麻布税務署長がそのような行動をしなかったからといって,国家賠償法上の違法があるということはできない。 原告は,麻布税務署長は本件各誤納金を供託(通則法121条,民法494条)すべきであった旨を主張するが,供託は,債権者が弁済の受領を拒んだとき等において,弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができるというものであって(同条),供託の要件を充足するからといって直ちに弁済者において供託をする義務が生じるわけではないし,少なくとも,本件各誤納金の還付請求権者ではない原告との関係において,麻布税務署長が本件各誤納金を供託する義務を負っていたものと解する余地はない。したがって,麻布税務署長が本件各誤納金を供託しなかったことについて,原告との関係において国家賠償法上の違法があるということはできない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,麻布税務署長がBらに対し 布税務署長が本件各誤納金を供託しなかったことについて,原告との関係において国家賠償法上の違法があるということはできない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,麻布税務署長がBらに対して本件各誤納金を違法に還付したことを理由とする国家賠償請求には理由がない。 (2) ②納付書の書式等についてア原告は,通則法施行規則等に規定する納付書の書式に,連帯納付義務の履行として納付する旨の記載をする欄が存在せず,同納付をする場合の記入方法についての説明書き等も存在しないことが,違法である旨を主張する。 -29-しかし,前記1(4)のとおり,相続税法34条に定める連帯納付の義務は,当該連帯納付義務者自身が負う国税を納める義務であり,連帯納付義務の履行は,当該連帯納付義務者が自らを納税者(通則法2条5号)として行うものであるから,連帯納付義務を履行しようとする者は,所定の納付書(通則法施行規則別紙第1号書式又は54号省令別紙第1号書式(その1))の納税者欄に自己の氏名等を記載し,自らの納税義務の履行であることを明らかにすれば,その納付の効果を自らに帰属するものとすることができる。また,それが連帯納付義務の履行であることについては,第三者による納付(通則法41条1項)等の場合(通則法施行規則別紙第1号書式の備考7及び54号省令別紙第1号書式(その1)の備考4参照)に準じて,納付書の納付の目的欄又は納期等の区分欄や適宜の余白にその旨を記載すれば足りるものということができる。そうすると,納付書の書式の内容や,連帯納付義務の履行として納付する場合の記入方法について特別の説明書き等が存在しないことについて,国家賠償法上の違法があるとまでと評価すべき不備があるということはできない。 イまた,原告は,国税庁長官が,連帯納付義務の履行とし 場合の記入方法について特別の説明書き等が存在しないことについて,国家賠償法上の違法があるとまでと評価すべき不備があるということはできない。 イまた,原告は,国税庁長官が,連帯納付義務の履行として納付する場合の記入方法を納付書に付記したり,インターネット上のホームページで注意喚起したりすることを怠ったことが,違法である旨を主張するが,前記アに述べたところからすれば,連帯納付義務の履行として納付する場合の記入方法について納付書の書式以外に特別の説明がされていなかったとしても,国家賠償法上の違法があるとまでいうことはできない。 ウよって,その余の点について判断するまでもなく,納付書の書式等の不備を理由とする国家賠償請求には理由がない。 3 争点(3)(民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づく損害賠償請求の成否)について原告は,麻布税務署長が,前記前提事実(5)イ及びウの債権仮差押命令につ-30-いて,仮差押債権であるC及びDの誤納金還付請求権が未還付につき存在していたにもかかわらず,これが存在しない旨の不実の陳述をした旨を主張する。 しかし,上記各債権仮差押命令の仮差押債権目録において,仮差押債権は「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」と記載されているが(乙5,7),本件各誤納金の還付請求権は,通則法56条1項に基づいて発生したものであって,更正の請求の特則を規定する相続税法32条に基づき発生する還付請求権とは,その根拠法令,法的性質及び要件事実のいずれも異にするものである。 そうすると,上記各債権仮差押命令の仮差押債権目録に記載された「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」と,本件各誤納金の還付請求権とは,債権の同一性を欠くものというほかなく,上記各債権仮差押命令の効力が本件各誤納金の還付請求権に及ぶものと 目録に記載された「相続税法32条に基づく相続税還付請求権」と,本件各誤納金の還付請求権とは,債権の同一性を欠くものというほかなく,上記各債権仮差押命令の効力が本件各誤納金の還付請求権に及ぶものということはできない。したがって,上記各債権仮差押命令について麻布税務署長がした仮差押えに係る債権がない旨の陳述について,C及びDの誤納金還付請求権(本件各誤納金の還付請求権のうちC分及びD分)が存在していたことを理由に,不実の陳述であるということはできない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,民事保全法50条5項,民事執行法147条2項に基づく損害賠償請求には理由がない。 第4 結論以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 -31- 裁判官竹林俊憲 裁判官貝阿彌亮-32-別紙関係法令の定め 1 国税通則法(1) 34条(納付の手続)1項国税を納付しようとする者は,その税額に相当する金銭に納付書(納税告知書の送達を受けた場合には,納税告知書)を添えて,これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に納付しなければならない。ただし,(略)。 (2) 41条(第三者の納付及びその代位)1項国税は,これを納付すべき者のために第三者が納付することができる。 (3) 56条(還付)1項国税局長,税務署長又は税関長は,還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という。)があると 国税は,これを納付すべき者のために第三者が納付することができる。 (3) 56条(還付)1項国税局長,税務署長又は税関長は,還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という。)があるときは,遅滞なく,金銭で還付しなければならない。 (4) 57条(充当)1項国税局長,税務署長又は税関長は,還付金等がある場合において,その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税(略)があるときは,前条第1項の規定による還付に代えて,還付金等をその国税に充当しなければならない。この場合において,その国税のうちに延滞税又は利子税があるときは,その還付金等は,まず延滞税又は利子税の計算の基礎となる国税に充当しなければならない。 2 国税通則法施行規則(平成19年財務省令第17号による改正前のもの。本文において同じ。乙24)(1) 6条(納付書の書式等)法(国税通則法)及び令(国税通則法施行令)の規定により作成する書面のうち,次の表の上欄に掲げるものの様式及び作成の方法は,それぞれ同表の下欄に掲げる書式に定めるところによる。 -33-法第34条第1項(納付の手続)の納付書別紙第1号書式(以下略)(2) 別紙第1号書式について同書式は,「納付書・領収済通知書」,「領収控」及び「領収証書」の3片からなるところ,各片には,納税者の納税地及び氏名又は名称,年度,受入科目,取扱庁名,納付の目的並びに金額等を記載する欄が設けられている。 また,同書式の備考として,次のとおり定められている。 ア備考3各片に共通する事項(あらかじめ印刷されている事項を除く。)は,複写により記入するものとする。 イ備考4納税者の納税地及び氏名又は名称,年度,受入科目,取扱庁名,納付の目的並びに金額は,法令に別段の定めがある場合 らかじめ印刷されている事項を除く。)は,複写により記入するものとする。 イ備考4納税者の納税地及び氏名又は名称,年度,受入科目,取扱庁名,納付の目的並びに金額は,法令に別段の定めがある場合を除き,納税者が記載するものとする。 ウ備考7法(国税通則法)第41条第1項の規定により第三者が納付する場合又は国税徴収法(昭和34年法律第147号)に規定する第二次納税義務者若しくは国税の保証人が納付する場合においては,納税者の納税地及び氏名又は名称欄に当該第三者,第二次納税義務者又は保証人の住所及び氏名又は名称を記載し,納付の目的欄又は余白に納税者の納税地及び氏名又は名称を付記するものとする。 3 電子情報処理組織を使用して処理する場合における国税等の徴収関係事務等の取扱いの特例に関する省令(平成3年12月25日大蔵省令第54号。平成19年11月27日財務省令第59号による改正前のもの。以下「54号省令」という。本文において同じ。乙26)(1) 54号省令について-34-54号省令は,国税収納命令官等がその所掌に属する国税等の徴収に関する事務を電子情報処理組織を使用して処理する場合,及び,日本銀行が国税等の収納に関する事務を光学読取式電子情報処理組織を使用して処理する場合における,これらの事務の取扱いを定めたものであり(1条1項),その場合の納付書等の書式を,5条により別紙第1号書式として定めている。 (2) 5条(納付書等の様式)1項指定国税収納命令官(税関の指定国税収納命令官を除く。)が,規則(国税収納金整理資金事務取扱規則)第15条,第16条及び第17条の規定により納税者等に送付する納付書又は国税等の徴収上適当と認められるときに納税者等に交付する納付書の様式は,別紙第1号書式(その1),同書式(その2 金事務取扱規則)第15条,第16条及び第17条の規定により納税者等に送付する納付書又は国税等の徴収上適当と認められるときに納税者等に交付する納付書の様式は,別紙第1号書式(その1),同書式(その2),同書式(その3),同書式(その4),同書式(その5),同書式(その6),同書式(その7),同書式(その8),同書式(その9)又は同書式(その10)(以下「別紙第1号書式」と総称する。)によるものとする。ただし,(略)。 (一及び二略)(3) 別紙第1号書式(その1)について同書式は,「(納付書)領収済通知書」,「領収控」及び「領収証書」の3片からなるところ,各片には,納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名),年度,税目番号,税務署名,納期等の区分並びに金額等を記載する欄が設けられている。 また,同書式の備考として,次のとおり定められている。 ア備考1国税通則法施行規則(昭和37年大蔵省令第28号)別紙第1号書式備考1から3まで及び5は,この書式について準用する。 イ備考2納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名),年度,税目番号,税務署名,納期等の区分並びに金額は,法令に別段の定めがある場合を除き,納税者が-35-記載するものとする。 ウ備考4国税通則法(昭和37年法律第66号)第41条第1項の規定により第三者が納付する場合又は国税徴収法(昭和34年法律第147号)に規定する第二次納税義務者若しくは国税の保証人が納付する場合においては,納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名)欄に当該第三者,第二次納税義務者又は保証人の住所(所在地)及び氏名(法人名)を記載し,納期等の区分欄又は余白に納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名)を付記するものとする。 4 相続税法(平成23年法律第82号による改正前のもの。本文にお の住所(所在地)及び氏名(法人名)を記載し,納期等の区分欄又は余白に納税者の住所(所在地)及び氏名(法人名)を付記するものとする。 4 相続税法(平成23年法律第82号による改正前のもの。本文において同じ。)(1) 32条(更正の請求の特則)相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は,次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があった場合には,当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となったときは,当該各号に規定する事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り,納税地の所轄税務署長に対し,その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をすることができる。 (一から九まで略)(2) 34条(連帯納付の義務)1項同一の被相続人から相続又は遺贈(略)により財産を取得したすべての者は,その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について,当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として,互いに連帯納付の責めに任ずる。 5 民事保全法50条(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行)5項民事執行法(略)第146条から第153条まで(略)の規定は,第1項の債-36-権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。 6 民事執行法147条(第三債務者の陳述の催告)(1) 1項差押債権者の申立てがあるときは,裁判所書記官は,差押命令を送達するに際し,第三債務者に対し,差押命令の送達の日から2週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述 差押債権者の申立てがあるときは,裁判所書記官は,差押命令を送達するに際し,第三債務者に対し,差押命令の送達の日から2週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。 (2) 2項第三債務者は,前項の規定による催告に対して,故意又は過失により,陳述をしなかったとき,又は不実の陳述をしたときは,これによった生じた損害を賠償する責めに任ずる。
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