- 1 -主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,1345円を支払え。 3 控訴人の被控訴人に対する平成24年3月分から同年6月分までの放送受信料5240円の支払義務がないことを確認する。 第2 事案の概要(用語の略称及び略称の意味は,原判決に従う。以下同じ。) 1 本件は,被控訴人との間でワンセグ機能付き携帯電話(本件携帯電話)について放送受信契約(本件契約)を締結した控訴人が,本件契約は強行法規である放送法64条1項に反するもので民法90条違反の契約として無効であり,また,民法94条1項によっても無効であるなどと主張して,不当利得返還請求権に基づき,本件契約により支払った放送受信料1345円及びこれに対する平成24年7月8日(本件契約の締結日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,本件契約に基づく未払の放送受信料債権5240円につき債務不存在確認を求めた事案である。 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。なお,控訴人は,控訴の趣旨2項記載のとおり,当審において請求を減縮した。 2 前提事実,関係法令の定め,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決3頁8行目の「認可」を「許可」と改め,次項において当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における当事者の主張(1) 本件携帯電話は,放送法64条1項ただし書所定の「放送の受信を目的とし- 2 -ない受信設備」に該当するかア控訴人の主張ワンセグ機能付きの携帯電話は,あくまでも携帯電話 主張(1) 本件携帯電話は,放送法64条1項ただし書所定の「放送の受信を目的とし- 2 -ない受信設備」に該当するかア控訴人の主張ワンセグ機能付きの携帯電話は,あくまでも携帯電話であって,ワンセグ機能は付随的機能にすぎないもので,放送法64条1項ただし書所定の「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するから,放送受信契約を要しない。 イ被控訴人の主張放送法64条1項ただし書にいう「放送の受信を目的としない受信設備」とは,電波監視用の受信設備,電気店の店頭に陳列された受信設備,公的機関の研究開発用の受信設備,受信評価を行う電波監理用の受信設備等,放送の受信を目的としないことが客観的,外形的に明らかな場合をいうところ,本件携帯電話について「放送の受信を目的としないことが客観的,外形的に明らか」であるという事情は存在しないから,本件携帯電話は「放送の受信を目的としない受信設備」には該当しない。 (2) 平成24年3月分から同年6月分までの放送受信料債権の消滅時効ア控訴人の主張本件契約における支払方法・コースは,継続振込2か月払であるから,被控訴人の控訴人に対する平成24年3月から同年6月分までの放送受信料債権(以下「本件受信料債権」という。)につき,支払期日は下記のとおりであり,いずれも5年が経過した。 記平成24年3月分平成24年3月31日同年4月及び5月分平成24年5月31日同年6月分平成24年7月31日控訴人は,本件受信料債権につき,平成30年4月6日の当審口頭弁論期日において,5年の消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 - 3 -イ被控訴人の主張本件受信料債権に係る消滅時効の起算点は,平成24年3月から5月までの分は本件契約の成立時(平成24年7 において,5年の消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 - 3 -イ被控訴人の主張本件受信料債権に係る消滅時効の起算点は,平成24年3月から5月までの分は本件契約の成立時(平成24年7月8日),平成24年6月分は同年7月31日となる。 そして,本件受信料債権の消滅時効は,控訴人が平成29年2月24日付け訴え変更申立書を原審裁判所に提出した時点,又は,遅くとも被控訴人が平成29年4月10日に同日付け被告準備書面(2)を原審裁判所に提出した時点で,債権者たる被控訴人の請求(民法147条1号)により中断した。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも棄却すべきと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正し,次項に当審における当事者の主張に対する当裁判所の判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決10頁25行目,11頁4行目,同頁9行目,12頁17行目,同頁22行目,13頁13行目から14行目にかけて,15頁5行目,16頁6行目,17頁2行目,同頁4行目及び19頁14行目の各「前提事実」をいずれも「関係法令の定め」と改める。 (2) 原判決11頁21行目の「ことからすると」の次に「(前記関係法令の定め⑵)」を加える。 (3) 原判決12頁2行目の「ことからすると」の次に「(前記関係法令の定めを加える。 (4) 原判決17頁11行目の「前提としている」の次に「(乙第31号証)」を加え,同頁19行目の「規定してない」を「規定していない」と改める。 (5) 原判決20頁17行目の「原告とAは,」の次に「控訴人が本件携帯電話の使用を開始した日ではなく,」を加え,同行の「同日」を「同年7月8日」と改める。 - 4 - 2 当審 」と改める。 (5) 原判決20頁17行目の「原告とAは,」の次に「控訴人が本件携帯電話の使用を開始した日ではなく,」を加え,同行の「同日」を「同年7月8日」と改める。 - 4 - 2 当審における当事者の主張に対する当裁判所の判断(1) 本件携帯電話は,放送法64条1項ただし書所定の「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するかア控訴人は,ワンセグ放送の受信可能エリアが狭いこと,ワンセグ機能付携帯電話によるワンセグ放送の受信は外出時に短時間だけテレビを見るという本来のテレビ番組視聴の補完的な役割しか担っていない状態にあり,ワンセグ機能付きの携帯電話は,あくまでも携帯電話であって,ワンセグ機能は付随的機能にすぎないなどと主張する。 イしかし,放送法64条1項ただし書にいう「放送の受信を目的としない受信設備」には,電波監視用の受信設備,電気店の店頭に陳列された受信設備,公的機関の研究開発用の受信設備,受信評価を行う電波監理用の受信設備等があるとされているが(乙第9号証の175頁),これは,同項が,受信設備設置者に対し受信契約の締結義務を定めた規定であることから,「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するためには放送の受信を目的としないことが客観的,外形的に明らかな場合でなければならないというべきであるところ,そのような場合を例示したものというべきである。本件携帯電話は,機器の客観的な機能として放送の受信が可能であり,その放送の受信機能は機器の所有者が放送を視聴するために備えられているものであって,電気店の店頭に陳列されているなどして放送の受信を目的としていないことが客観的・外形的に明らかにされているような事情が存しない限り,「放送の受信を目的としない」とはいえないというべきところ,このような事情を認めるに足りる いるなどして放送の受信を目的としていないことが客観的・外形的に明らかにされているような事情が存しない限り,「放送の受信を目的としない」とはいえないというべきところ,このような事情を認めるに足りる証拠はない。したがって,本件携帯電話は,「放送の受信を目的としない受信設備」には該当しない。 (2) 本件受信料債権の時効消滅ア受信料契約に基づき発生する受信設備の設置月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,受信契- 5 -約成立時から進行するものと解するのが相当である(最高裁平成29年12月6日大法廷判決・民集71巻10号1817頁)。したがって,本件受信料債権の消滅時効は,平成24年3月から5月までの分は,本件契約成立時である平成24年7月8日から,同年6月分は平成24年7月31日から進行する。 イ控訴人は,本件受信料債権につき,債務不存在確認を求めているところ,債務不存在確認の訴えのような消極的確認訴訟において,少なくとも債権者が請求棄却判決を求め債権の存在を主張したときは,上記主張は裁判上の請求に準ずるものとして,債権につき消滅時効の中断の効力を生ずるというべきである(最高裁昭和44年11月27日第一小法廷判決・民集23巻11号2251頁参照)。そして,被控訴人は,平成29年4月10日付け準備書面を,同日,原審裁判所に提出して,請求棄却の答弁をしたことが認められる(当裁判所に顕著な事実)。 ウ以上によれば,本件受信料債権につき,平成30年4月6日の当審口頭弁論期日において,控訴人が上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした事実は当裁判所に顕著であるが,上記イのとおり,消滅時効の中断が認められるから,本件受信料債権は時効により消滅したとの控訴人の主張は理由がない。 3 控訴 上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした事実は当裁判所に顕著であるが,上記イのとおり,消滅時効の中断が認められるから,本件受信料債権は時効により消滅したとの控訴人の主張は理由がない。 3 控訴人は,上記のほかにも,控訴人が,放送法64条1項所定の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に該当せず本件契約が民法90条に違反すること,他の理由で本件契約が民法90条に違反すること及び本件契約が民法94条1項に違反することなどにつき,るる主張するが,いずれも放送法の改正経緯ないし同法の解釈につき独自の見解を述べるものであるか,原審における主張を繰り返すにすぎないものであるから,前記1の認定判断を左右しない。 以上によれば,被控訴人が控訴人から本件契約に基づいて受領した放送受信- 6 -料1345円には法律上の原因があり,本件受信料債権は5240円を超えて存在することが認められる。 4 よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部 裁判長裁判官萩原秀紀 裁判官馬場純夫 裁判官西森政一
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