令和5(ワ)3268 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文27,986 文字)

- 1 -主文 1 被告は、原告aに対し、6万6000円及びこれに対する令和5年5月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告aのその余の請求並びに原告b、原告c及び原告dの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告aと被告との間においては、原告aと被告との間に生じたものを9分し、その1を被告の負担とし、その余を原告aの負担とし、原告b、原告c及び原告dと被告との間においては、原告b、原告c及び原告dの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告aに対し、59万4000円及びこれに対する令和5年5月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は、原告bに対し、9万円及びこれに対する令和5年5月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 3 被告は、原告cに対し、9万円及びこれに対する令和5年5月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 4 被告は、原告dに対し、9万円及びこれに対する令和5年5月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、次の(1)~(3)の各事案である。 (1) 死刑確定者としてe拘置所に収容されている原告a並びに原告aが受けた死刑判決に係る刑事事件の第一審の弁護人であった原告b、原告c及び原告d(以下、原告b、原告c及び原告dを併せて「原告bら」という。)が、原 告aが原告b宛てに送付しようとした信書3通につき、e拘置所長がその一 - 2 -部を抹消した3件の措置(以下、これら3件の措置を併せて「本件各措置①」という。)はいずれも違法であると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1 した信書3通につき、e拘置所長がその一 - 2 -部を抹消した3件の措置(以下、これら3件の措置を併せて「本件各措置①」という。)はいずれも違法であると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、各自、措置1件あたり3万円(合計9万円)の慰謝料及び原告aについては弁護士費用9000円並びに訴状送達の日の翌日である令和5年5月16日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損 害金の支払を求める事案(2) 原告aが、弁護士であるf(以下「f弁護士」という。)宛てに送付しようとした信書14通につき、e拘置所長がその一部を削除又は抹消した14件の措置(以下、これら14件の措置を併せて「本件各措置②」という。)はいずれも違法であるとして、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、措置1 件あたり3万円(合計42万円)の慰謝料及び弁護士費用4万2000円並びに訴状送達の日の翌日である令和5年5月16日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案(3) 原告aが、f弁護士から原告a宛てに送付された書籍3冊及び冊子1冊(別紙1「本件書籍等目録」1ないし4記載の各書籍等。以下、これらを併せて「本 件書籍等」という。)並びに本件書籍等に同封されていた信書(以下「本件受信書」という。)につき、e拘置所長が本件受信書の一部を抹消した措置(以下「本件受信書抹消措置」という。)及び本件書籍等を原告aに交付せずf弁護士に引取りを求めた措置(以下「本件書籍等不交付措置」といい、本件受信書抹消措置と併せて「本件各措置③」という。)はいずれも違法であるとして、 被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、3万円の慰謝料及び弁護士費用3000円並びに訴状送達の日の翌日である令和5年5月1 措置と併せて「本件各措置③」という。)はいずれも違法であるとして、 被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、3万円の慰謝料及び弁護士費用3000円並びに訴状送達の日の翌日である令和5年5月16日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案 2 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは、別紙2「関係法令等の定め」記載のとおりで ある。なお、同別紙における略語は、本文においても用いることがある。 - 3 - 3 前提事実(争いのない事実、顕著な事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告a(乙10)原告aは、▲年▲月▲日に殺人の罪によりe地方裁判所において死刑判決 (以下「本件死刑判決」という。)の言渡しを受け、本件死刑判決が確定したことにより、■年■月■日以降、死刑確定者としてe拘置所に収容されている者である。 イ原告bら(乙11、12・2頁)原告bらは、いずれも弁護士であり、本件死刑判決に係る刑事事件の第一 審の弁護人であった者である。 e拘置所長は、原告aが、原告bらにつき、本件死刑判決に係る再審請求事件の弁護人となろうとする者として外部交通の必要性がある旨申請したことから、令和2年12月16日、原告aと原告bらとの外部交通を許可する方針とした(以下、e拘置所長が原告aとの外部交通を許可する方針とし た者を「外部交通許可方針者」といい、それ以外の者を「外部交通非許可方針者」という。)。 ウ f弁護士(甲5、8、24、乙12・4~5頁)f弁護士は、遅くとも令和4年6月2日までに、原告aの養子であるA(以下「養子A」という。)との間で、国家賠償請求事件(以下「別件訴訟」と いう。)の提起を受任 8、24、乙12・4~5頁)f弁護士は、遅くとも令和4年6月2日までに、原告aの養子であるA(以下「養子A」という。)との間で、国家賠償請求事件(以下「別件訴訟」と いう。)の提起を受任した弁護士である。 e拘置所長は、原告aが、令和4年6月10日、f弁護士につき、①別件訴訟の承継に関する内容、②原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関する内容及び③再審請求の弁護に関する内容について、外部交通の必要性がある旨申請したことから、同月29日、f弁護士との外部交通につき、 ①別件訴訟の承継に関する内容及び②原告aが提起を予定している国家賠 - 4 -償請求事件に関する内容に限り、許可する方針とした。 f弁護士は、令和4年7月7日、原告aとの間で、原告aがe拘置所において受けた外部交通の制限に係る国家賠償請求訴訟(以下「本件訴訟」という。)の提起を受任した。 (2) 本件各措置①の経緯(甲1~3、乙12~16) ア原告aは、原告b宛に3通の信書(別表の「信書番号」欄の「本件発信書①」ないし「本件発信書③」の各行に記載の信書。以下、別表記載の各信書を、「信書番号」欄記載のとおり「本件発信書①」、「本件発信書②」などという。)を発信しようとした。 これに対し、e拘置所長は、本件発信書①~③につき、別表の「検査の日 (措置の日・告知の日)」欄のかっこ内記載の各日に、「削除又は抹消の理由(概要)」欄記載の理由で、「削除又は抹消の箇所」欄記載の各部分を抹消する旨の各措置(本件各措置①)をし、その旨を原告aに告知した。 イ本件発信書①~③の抹消部分の内容は、別表の本件発信書①~③の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりである。 (3) 本件各措置②の経緯等ア f弁護士から原告aへの問合せ(甲5、乙 イ本件発信書①~③の抹消部分の内容は、別表の本件発信書①~③の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりである。 (3) 本件各措置②の経緯等ア f弁護士から原告aへの問合せ(甲5、乙17)f弁護士は、養子Aから別件訴訟の提起を受任し、その準備を進めていたところ、養子Aは令和4年2月にステージ4のすい臓がんと診断されていたため、養子Aと相談の上、養子Aの推定相続人である原告aに対し、養子A が死亡した場合に別件訴訟を承継する意向か否かを問い合わせることとし、その旨を記載した同年6月2日付けの連絡文書を原告aに送付した。 イ本件各措置②の経緯(甲4、9~20、乙12、13、18~34、46)(ア) 原告aは、f弁護士からの上記アの問合せを契機に、f弁護士に信書を送付するようになり、14通の信書(別表の「信書番号」欄の「本件発信 書④」ないし「本件発信書⑰」の各行に記載の信書。)を送付しようとし - 5 -た。 これに対し、e拘置所長は、本件発信書④~⑰につき、別表の「検査の日(措置の日・告知の日)」欄のかっこ内記載の各日に、「削除又は抹消の理由(概要)」欄記載の理由で、「削除又は抹消の箇所」欄記載の各部分を削除又は抹消する旨の各措置(本件各措置②)をし、その旨を原告a に告知した。 (イ) 本件発信書④~⑰の削除・抹消部分の内容は、別表の本件発信書④~⑰の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりである。 (4) 本件各措置③の経緯(甲21、乙12、13、35~38)ア令和4年7月4日、f弁護士が原告a宛てに郵送した本件書籍等及び本件 受信書(別表の「信書番号」欄の「本件受信書」の行に記載の信書)が、e拘置所に到着した。これに対し、e拘置所長は、令和4年7月8日、本件受信書につき、「削除 宛てに郵送した本件書籍等及び本件 受信書(別表の「信書番号」欄の「本件受信書」の行に記載の信書)が、e拘置所に到着した。これに対し、e拘置所長は、令和4年7月8日、本件受信書につき、「削除又は抹消の理由(概要)」欄記載の理由で、「削除又は抹消の箇所」欄記載の部分を一部抹消する措置をし、その旨を原告aに告知するとともに(本件受信書抹消措置)、本件書籍等を原告aに交付せず、同 月14日、f弁護士に対し本件書籍等の引取りを求めた(本件書籍等不交付措置)。 イ本件受信書の抹消部分の内容は、別表の本件受信書の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりである。 4 争点 (1) 本件各措置①の国家賠償法上の違法性の有無(争点1)(2) 本件各措置②の国家賠償法上の違法性の有無(争点2)(3) 本件各措置③の国家賠償法上の違法性の有無(争点3)(4) 損害の発生の有無及びその数額(争点4) 5 争点に関する当事者の主張 争点1ないし3に係る当事者の主張は、別表「原告らの主張」欄及び「被告の - 6 -主張」欄記載のとおりであり、その概要は、次のとおりである。 (1) 争点1(本件各措置①の国家賠償法上の違法性の有無)についてア原告らの主張e拘置所規程(甲23、乙3)は、「民事訴訟や再審請求等について、委任又は相談を受けている弁護士等」(同規程5条(1)イ、19条1項)との 間で発受する信書が「法律上…の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当するとしている。 原告bらは、本件発信書①~③を受信した当時、既に本件死刑判決に係る再審請求を受任しているところ、再審請求の弁護人は、信頼関係を維持するために原告aが伝えたいと考えるあらゆる事項を把握している必 原告bらは、本件発信書①~③を受信した当時、既に本件死刑判決に係る再審請求を受任しているところ、再審請求の弁護人は、信頼関係を維持するために原告aが伝えたいと考えるあらゆる事項を把握している必要がある。 したがって、本件各措置①により抹消された各部分の内容は、いずれも、「法律上…の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当し、かつ、本件発信書①~③には刑事収容施設法141条が準用する同法129条の要件が認められないことから、e拘置所長がした本件各措置①は国家賠償法1条1項の適用上違法である。 イ被告の主張(ア) 検討の枠組み刑事収容施設法139条1項2号にいう「身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務」は、単に死刑確定者が処理・遂行したいと考えるものでは足りず、また、その遂行が正当なものでなければならない。そし て、同号においては、その用務として、婚姻関係の調整、訴訟の遂行及び事業の維持が例示されているところ、同号により信書の発受が許される場合としては、典型的には、婚姻・縁組、それらの解消、子の親権者の決定などの身分行為を行うための相談・協議、遺産分割の協議、民事訴訟や刑事の再審請求の訴訟を遂行するための相談、事業経営上の指示や交渉を行 う場合などが想定される。したがって、死刑確定者が発受する信書につい - 7 -て、刑事収容施設法139条1項2号に規定する「身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」に該当するか否かは、当該信書が、前記の典型的な用務と同程度に死刑確定者にとって重大な利害に係る用務の処理に必要とされるか否かという観点から検討する必要がある。 (イ) あてはめ本件各措置①により抹消され 、当該信書が、前記の典型的な用務と同程度に死刑確定者にとって重大な利害に係る用務の処理に必要とされるか否かという観点から検討する必要がある。 (イ) あてはめ本件各措置①により抹消された各部分の内容は、別表の本件発信書①ないし③の各行の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりであり、いずれも原告aにとって重大な利害に係る用務の処理に必要であるとはいえないから、刑事収容施設法139条1項2号所定の文書に該当しない。e拘置 所長が、本件発信書①~③のうち本件各措置①により抹消された各部分が同号及び同条2項所定の文書に該当しないと判断したことは合理的根拠を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものでもない。 したがって、本件各措置①は、e拘置所長が、その裁量権の範囲を逸脱 し、又はこれを濫用したものとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 (2) 争点2(本件各措置②の国家賠償法上の違法性の有無)についてア原告aの主張(ア) 本件発信書④~⑦について f弁護士は、本件発信書④~⑦を受信した時点においては、原告aから本件訴訟の提起を受任していなかったが、原告aから法律相談を受けていたことから、「民事訴訟や再審請求等について、委任又は相談を受けている弁護士等」(e拘置所規程5条(1)イ)に該当する。 民事訴訟の受任前であっても、信書の内容が法律相談の一部に該当する 可能性は十分にあり、部分的に抹消されてしまうと相談の趣旨が弁護士に - 8 -正確に伝わらないことから、法律相談の趣旨を正確に伝えるためには、原告aからf弁護士宛ての発信書のあらゆる記載が「法律上…の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当すると から、法律相談の趣旨を正確に伝えるためには、原告aからf弁護士宛ての発信書のあらゆる記載が「法律上…の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当するというべきである。 特に、本件発信書④の削除・抹消部分には、「外部交通が著しく制限さ れ、支援者や支援団体等との外部交通は一切制限されている」、「色々と相談したいのでf弁護士には再審請求弁護人になってほしい。」、「e拘置所の死刑確定者の外部交通や処遇の件で国家賠償訴訟の準備を進めている。その力になってほしい。」などと記載されており、また、本件発信書⑤の削除・抹消部分には、「外部交通が遮断されて困っている。」、「再 審請求弁護人宛ての手紙が抹消される」などと記載されており、いずれもf弁護士に法的助言を求める記載である。このような法的助言を求める記載が同法139条1項2号に該当することは明らかである。 実際、本件各措置②により、原告aが本件発信書④及び⑤においてf弁護士に再審請求を依頼していたことが伝わらなかった。 したがって、本件発信書④~⑦の各抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号所定の信書に該当し、かつ、本件発信書④~⑦には刑事収容施設法141条が準用する同法129条の要件が認められないから、e拘置所長がした本件各措置②は国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (イ) 本件発信書⑧~⑰について f弁護士は、本件発信書⑧~⑰を受信した時点において、既に原告aから本件訴訟の提起を受任しており、「民事訴訟や再審請求等について、委任又は相談を受けている弁護士等」(e拘置所規程5条(1)イ)に該当する。 正式に事件を受任している以上、信頼関係を維持するため、原告aから f弁護士宛ての発信書のあらゆる記載が「法 て、委任又は相談を受けている弁護士等」(e拘置所規程5条(1)イ)に該当する。 正式に事件を受任している以上、信頼関係を維持するため、原告aから f弁護士宛ての発信書のあらゆる記載が「法律上…の重大な利害に係る用 - 9 -務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当するというべきである。 したがって、本件発信書⑧~⑰の各抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号所定の信書に該当し、かつ、本件発信書⑧~⑰には刑事収容施設法141条が準用する同法129条の要件が認められないから、e拘置 所長がした本件各措置②は国家賠償法1条1項の適用上違法である。 (ウ) 国家賠償法1条1項における違法性について国家賠償法1条1項の解釈について、被告が主張する、いわゆる職務遂行基準説を採ったとしても、e拘置所長による注意義務違反を認定することは充分に可能であり、本件各措置②は国家賠償法1条1項の適用上違法 である。 イ被告の主張本件各措置②により抹消された各部分の内容は、別表の本件発信書④~⑰の「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりであり、いずれも原告aにとって重大な利害に係る用務の処理に必要であるとはいえないから、刑事収容施設 法139条1項2号所定の文書に該当しない。e拘置所長が、f弁護士宛て各書面のうち本件各措置②により抹消された各部分が同号所定の文書に該当しないと判断したことは合理的根拠を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものでもない。 したがって、本件各措置②は、e拘置所長が、その裁量権の範囲を逸脱し、 又はこれを濫用したものとはいえず、本件各措置②は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 (ア) 本件発信書④について本件発信書④の 置所長が、その裁量権の範囲を逸脱し、 又はこれを濫用したものとはいえず、本件各措置②は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 (ア) 本件発信書④について本件発信書④の削除・抹消部分の内容は、原告aの心境や外部交通制限への不満などであり、刑事収容施設法139条1項2号に該当しない。f 弁護士は、原告aと何らかの契約をしたり、民事訴訟や再審請求等の相談 - 10 -を受けたりしていなかったこと、「国家賠償訴訟」などの文言が記載されている部分は、どのような法的対応を求めているか明らかでなく、具体性を欠くこと、原告aが、f弁護士に再審請求弁護人になってほしいと考えていたとは認められず、信書の他の部分の記載から、f弁護士に再審請求弁護人になってほしいとの趣旨は理解できることなどから、「国家賠償訴 訟」や「再審請求」との文言が出てくる記述についても、同号に該当しない。また、「色々と相談したい」、「国家賠償訴訟の件についてもアドバイスしてほしい。」旨の記述に関しても、上記同様の理由により、原告aがf弁護士に対し実質的に「訴訟の遂行」のための相談やアドバイス等を求めているとまでは評価できない。 (イ) 本件発信書⑤について本件発信書⑤の削除・抹消部分の内容は、原告aの心境や外部交通制限に関する感想などであり、刑事収容施設法139条1項2号に該当しない。f弁護士は、原告aと何らかの契約をしたり、民事訴訟や再審請求等の相談を受けたりしていなかったこと、「何とかしてほしい」という内容 も極めて抽象的であることなどから、この記述についても、原告aがf弁護士に対し実質的に「訴訟の遂行」のための相談やアドバイス等を求めているとまでは評価できず、刑事収容施設法同号に該当しない。 (ウ) 国家賠償法1 あることなどから、この記述についても、原告aがf弁護士に対し実質的に「訴訟の遂行」のための相談やアドバイス等を求めているとまでは評価できず、刑事収容施設法同号に該当しない。 (ウ) 国家賠償法1条1項における違法性について公務員の行為が、結果として、法令の解釈・適用を誤ったものであった としても、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような特段の事情がある場合に限り、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものと解すべきである。 本件発信書④の「色々と相談したい」旨の記載等は具体性を欠き、実質的に「訴訟の遂行」のための具体的な相談やアドバイス等を求めているか 判然としないものであった上、原告aとf弁護士との関係性からも、「訴 - 11 -訟の遂行」と同程度の原告aにとって重大な利害に係る用務の処理のために必要とされる記述であるとは判断できないものであったため、e拘置所長が、本件発信書④の削除・抹消部分は刑事収容施設法139条1項2号により発受が許されるものには該当しないと判断したことには相当の根拠が認められ、同人が、職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然 と当該判断をしたと認め得るような特段の事情はない。 また、本件発信書⑤についても、本件発信書④の場合と同様、「何とかしてほしい」旨の記載等は具体性を欠き、原告aとf弁護士との関係性からも、e拘置所長が、本件発信書⑤の削除・抹消部分は刑事収容施設法139条1項2号により発受が許されるものには該当しないと判断したこ とには相当の根拠が認められ、同人が、職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該判断をしたと認め得るような特段の事情はない。 (3) 争点3(本件各措置③の国家賠償法上の違法性の有無)につい とには相当の根拠が認められ、同人が、職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該判断をしたと認め得るような特段の事情はない。 (3) 争点3(本件各措置③の国家賠償法上の違法性の有無)についてア原告aの主張(ア) 本件受信書抹消措置について f弁護士は、弁護士の職務として本件受信書を原告aに送付していることから、本件受信書は「法律上…の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書」(刑事収容施設法139条1項2号)に該当する。 本件受信書に本件訴訟について直接言及する記載は見られないが、本件受信書の表題は「国家賠償請求について」とされており、原告aから相談 を受けていた国家賠償請求訴訟に関する信書であることが明らかにされている。 したがって、e拘置所長がした本件受信書抹消措置は違法である。 (イ) 本件書籍等不交付措置についてf弁護士による物品の差入れは、刑事収容施設法46条1項各号に該当 せず、e拘置所長には、同封物である書籍3冊及び冊子1部を原告aに引 - 12 -き渡す義務がある。 刑事収容施設法46条1項1号の定める「被収容者に交付することにより、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるものであるとき」とは、「被収容者が差入人から金品の交付を受けることで交流すること自体によって規律秩序を害するおそれがある場合」をいうところ(逐条解説刑事 収容施設法第3版172頁)、被告は本件書籍等の差入れを認めれば、外部交通非許可方針者である養子Aと原告aとの交流を認めることになるため、本件差入れが同法46条1項1号に該当する旨主張する。 しかし、仮にf弁護士が養子Aから本件書籍等を受領し、これを原告aに差し入れたとしても、本件受信書にはそのことが一切記載されていない から、原告a が同法46条1項1号に該当する旨主張する。 しかし、仮にf弁護士が養子Aから本件書籍等を受領し、これを原告aに差し入れたとしても、本件受信書にはそのことが一切記載されていない から、原告aには本件書籍等がf弁護士から差し入れられた事実しか伝わらないため、「被収容者に交付することにより、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれ」が生じることはない。原告aからすれば、本件書籍等は、f弁護士から差し入れられた物品であり、本件書籍等の差入れを認めたとしても、養子Aとの交流が潜脱的に実施されたこととはならない。 したがって、本件書籍等の差入れは刑事収容施設法46条1項1号に該当せず、e拘置所長がした本件書籍等不交付措置は違法である。 イ被告の主張(ア) 本件受信書抹消措置についてe拘置所においては、原告aとf弁護士との信書の発受につき、①別件 訴訟の承継に関する内容及び②原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関する内容に限り許可する方針としていたところ、本件受信書の抹消部分の内容は、別件訴訟や本件訴訟に関する内容であるとはいえず、「婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため」の内容であると は認められないから、刑事収容施設法139条1項2号に該当しない。 - 13 -したがって、e拘置所長が、本件受信書の抹消部分が同号所定の文書に該当しないと判断したことは合理的根拠を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものでもないから、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 よって、e拘置所長がした本件受信書抹消措置は国家賠償法1条1項の 適用上違法であるとは認められない。 (イ) 本件書籍等不 、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 よって、e拘置所長がした本件受信書抹消措置は国家賠償法1条1項の 適用上違法であるとは認められない。 (イ) 本件書籍等不交付措置について刑事収容施設法46条1項各号は、差入れが広い意味で外部交通の性質を有するため、差入れが認められない場合があることを前提として、同項1号についていえば、被収容者に差入物を交付することにより、刑事施設 の規律及び秩序を害するおそれがある場合に適用される。もっとも、憲法上の表現の自由にも関わる外部交通に比して、差入れは、「自弁物品等」の取得の機会に関わるものにすぎず、これを保障する必要性は必ずしも大きくないことから、同号に該当する場合の差入れの制限は、受刑者に限られず、また、差入人が親族である場合も除外されていない。 本件書籍等は、外形的にはf弁護士が国家賠償請求事件に関するものとして差し入れたように見えるものの、f弁護士と養子Aとの間で本件書籍等と同じタイトルの書籍等の授受があったこと等に照らせば、本件書籍等は、実質的には養子Aと原告aとの間での授受が企図されたものであり、f弁護士はこれに介在していたにすぎない。そうすると、本件書籍等の差 入れを認めることは、刑事収容施設法に定める差入れの制限の潜脱を認めることと同旨であり、ひいては、不正な物品の授受を通じてe拘置所の規律及び秩序を害するおそれがあるといえるものであるから、刑事収容施設法46条1項1号に該当するというべきである(なお、本件受信書には、いかなる目的をもって本件書籍等を差し入れたかが明記されておらず、本 件受信書を併せ考慮しても、上記差入れの潜脱という認定を排斥するだけ - 14 -の具体的理由は認められない。)。そして、e拘置所長が もって本件書籍等を差し入れたかが明記されておらず、本 件受信書を併せ考慮しても、上記差入れの潜脱という認定を排斥するだけ - 14 -の具体的理由は認められない。)。そして、e拘置所長が、本件書籍等を原告aに交付することが刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるもの(刑事収容施設法46条1項1号)に該当すると判断し、本件書籍等を原告aに交付せず、f弁護士に引取りを求めたことは、刑事収容施設法の趣旨に整合する合理的な判断であったといえ、その裁量権の範囲を逸脱 し、又はこれを濫用したものとはいえない。 したがって、本件書籍等不交付措置は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 (4) 争点4(損害の発生の有無及びその数額)についてア原告らの主張 (ア) 本件各措置①により原告らが被った精神的損害死刑確定者の地位にある再審請求人は、刑事訴訟法440条1項の趣旨に照らし、再審請求弁護人との間において、書類又は物の授受をする利益(以下「書類等授受の利益」という。)を有しており、この書類等授受の利益は、法的保護に値するものと解される。そして、このような書類等授 受の利益は、刑事訴訟法440条1項の趣旨に照らし、再審請求弁護人の固有の利益でもあると解される。 e拘置所長による本件各措置①は、原告aの法的利益のみならず、原告b固有の書類授受の利益を著しく侵害した。 また、原告aが原告bに発信する信書は、全て再審請求弁護人である原 告c及び原告dに共有されることとされていたところ、本件各措置①は、原告c及び原dの書類授受等の利益も侵害した。 原告らが本件各措置①により被った精神的苦痛は、各措置につき3万円(合計9万円)を下らない。 (イ) 本件各措置②及び本件各措置③により原告aが被っ 原告c及び原dの書類授受等の利益も侵害した。 原告らが本件各措置①により被った精神的苦痛は、各措置につき3万円(合計9万円)を下らない。 (イ) 本件各措置②及び本件各措置③により原告aが被った精神的損害 本件各措置②及び本件各措置③により、原告aは著しい精神的苦痛を被 - 15 -った。原告aが被った精神的損害は、本件発信書④~⑰及び本件受信書の合計15通の1通につき3万円(合計45万円)を下らない。 (ウ) 原告aが被った経済的損害本件各措置①、本件各措置②及び本件各措置③により原告aが被った精神的損害は合計54万円であり、原告aは、損害の回復を図るために弁護 士に依頼して訴訟を提起せざるを得なくなった。原告aが負担を余儀なくされた弁護士費用は、各措置による精神的損害額の1割(合計5万4千円)を下回らない。 イ被告の主張否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1ないし3に係る判断枠組み(1) 国家賠償法上の違法性国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加 えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、公務員による公権力の行使に同項にいう違法があるというためには、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 したがって、刑事施設の長がした信書の削除又は抹消の措置が刑事収容施設法の定めに反し違法である場合であっても、刑事施設の長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をし したがって、刑事施設の長がした信書の削除又は抹消の措置が刑事収容施設法の定めに反し違法である場合であっても、刑事施設の長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がないときは、当該措置は国家賠償法上違法とはいえないというべきである。 (2) 刑事収容施設法139条1項2号該当性について 刑事収容施設法は、死刑確定者の信書の発受について、親族以外の者との間 - 16 -においては、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する場合(刑事収容施設法139条1項2号)又は発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる場合(同項3号)にこれを許すものとし、それ以外の場合には、その発受の相手方との交友関係の維持その他発受を必要とする事情が あり、かつ、その発受により刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認められるときに、これを許すことができるものとしている(同条2項)。 これらの規定は、死刑確定者の拘置の趣旨、目的が、死刑確定者の心情の安定にも配慮して、死刑の執行に至るまでの間、外部交通の遮断も含めて社会から隔離してその身柄を確保するというものであることに鑑み、死刑確定者と親 族以外の者との間の信書の発受については、同条1項2号若しくは3号又は同条2項に該当する場合に限り、これを許すこととしたものと解される。そして、同条1項2号が、死刑確定者であっても重大な利害に係る用務の処理を妨げられるべきではないとの考慮に基づくものと解され、重大な利害に係る用務の例示として「婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持」が挙げられていること からすれば、重大な利害に係る用務の処理とは、上記 れるべきではないとの考慮に基づくものと解され、重大な利害に係る用務の例示として「婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持」が挙げられていること からすれば、重大な利害に係る用務の処理とは、上記例示と同程度に死刑確定者にとって重大な利害に係る用務についての相談、協議等を内容とするものと解するのが相当である。 2 争点1(本件各措置①の国家賠償法上の違法性の有無)について(1) 検討 ア刑事収容施設法139条1項2号及び同条2項該当性について本件発信書①~③の各抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄に記載のとおりであり(前提事実(2)イ)、外部交通非許可方針者である第三者の名前のほか、外部交通許可非方針者である第三者に対し、e拘置所における処遇上の不満を伝達する内容、機関紙の記事を読んだ感想を通じて激 励する内容、原告bに対し、外部交通非許可方針者である第三者に本件発信 - 17 -書①やこれを複写したものの転送又は送付を依頼する内容、同第三者が外部交通許可方針者となるような資料の送付を求める内容である。 これらの内容はいずれも原告bらが関与していた再審請求事件と関連性があるものとは認められず、また、原告bに法律相談を依頼する内容でもないことからすれば、原告aにとって、訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に 係る用務の処理のために必要であるとはいえない。したがって、本件発信書①~③の各抹消部分について、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、同条2項により発信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 イ刑事収容施設法129条1項3号該当性について前記前提事実(2)イによれば、本件発 あるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 イ刑事収容施設法129条1項3号該当性について前記前提事実(2)イによれば、本件発信書①の内容は、外部交通非許可方針者である第三者に対して処遇上の不満や激励等の意思を伝達するものであること、本件発信書②及び③の内容は、弁護士である原告bに対し、上記第三者に対して本件発信書①やこれを複写したものの転送又は送付を依頼 するもの、あるいは上記第三者が外部交通許可方針者となるような資料の送付を求めるものであることが認められる。そうすると、本件発信書①~③の各抹消部分の発信を許可した場合には、実質的に、1通の信書により、名宛人である原告bに加え、外部交通非許可方針者である第三者に対する意思の伝達を認めることとなるから、刑事収容施設法141条が準用する同法13 0条の規定に基づきe拘置所長が定める死刑確定者の信書の発信の申請通数を1日1通とする制限(e拘置所規程23条)の潜脱を認めることになる。 したがって、本件発信書①~③の各抹消部分について、e拘置所長が、刑事収容施設法141条が準用する129条1項3号により、その発信によって刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとした判断 について、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 - 18 -ウ小括以上によれば、e拘置所長が、発信書①~③の各抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号及び同条2項に該当せず、同法129条1項3号に該当すると判断し、本件各措置①をしたことには合理的根拠があり、職務上の法的義務に違背するものとはいえない。 したがって、e拘置所長がした本件各措置①は、国家賠償法1条1項の適用上違法である 当すると判断し、本件各措置①をしたことには合理的根拠があり、職務上の法的義務に違背するものとはいえない。 したがって、e拘置所長がした本件各措置①は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 (2) 原告らの主張について原告らは、原告bらは原告aの再審請求の弁護人であるから、信頼関係を維持するため、原告aの原告bらに対する信書のあらゆる記載が重大な利害に係 る用務の処理のため発受する信書に該当する旨主張する。 しかし、刑事収容施設法139条1項2号の趣旨は、前記1(2)のとおりであって、同号が、死刑確定者であっても重大な利害に係る用務の処理を妨げられるべきではないとの考慮に基づくものと解されることにも照らせば、そのために必要とはいえない記述部分についてまで、同号により発受を許すべき理由 はないというべきである(最高裁令和元年8月9日判決・民集73巻3号327頁参照)。 そして、上記(1)で述べたとおり、本件発信書①~③の各抹消部分の内容は、原告aにとって、訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえず、これらについて、刑事収容施設法139条1項2号 により発受を許すべき理由はない。したがって、この点に関する原告aの主張は理由がない。 3 争点2(本件各措置②の国家賠償法上の違法性の有無)について(1) 本件発信書④についてア検討 (ア) 本件発信書④の各削除・抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」 - 19 -欄に記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、このうち、同欄の①ないし⑬(枝番号を含む)、⑭-1、⑭-3、⑭-4の削除・抹消部分は、原告aの感想や意見、心境を述べるもの、原告aの近況や外部交通が制限されている状況を述べるも (3)イ(イ))、このうち、同欄の①ないし⑬(枝番号を含む)、⑭-1、⑭-3、⑭-4の削除・抹消部分は、原告aの感想や意見、心境を述べるもの、原告aの近況や外部交通が制限されている状況を述べるもの、親族に関する説明、刑務所に収容されていた状況の説明、f弁護士宛ての信書を外部交通許可方針者ではない第三者に 転送することを期待する内容等である。これらの内容はいずれも、別件訴訟の承継に関する内容又は原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関連性があるものとはいえず、原告aにとって、訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえない。そうすると、上記削除・抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当 するとはいえず、また、e拘置所長が、同条2項により発信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。したがって、e拘置所長が、上記各削除・抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号及び同条2項に該当しないと判断したことは、職務上の法的義務に違背したものとはいえな い。 (イ) 他方で、本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分には、「色々と相談したいのでf弁護士には再審請求弁護人になってほしい。e拘置所の死刑確定者の外部交通や処遇の件で国家賠償訴訟の準備を進めている。その力になってほしい。再審弁護人とは連絡が取れない 状況である。原告が提訴する国家賠償訴訟の件についてもアドバイスしてほしい。」との記載がある。これらの記載内容からは、原告aが、f弁護士に対し、再審請求事件の受任を希望していることや、原告aが提起を予定している国家賠償請求事件について法律的なアドバイス(法律相談)を求めていることを明確かつ れらの記載内容からは、原告aが、f弁護士に対し、再審請求事件の受任を希望していることや、原告aが提起を予定している国家賠償請求事件について法律的なアドバイス(法律相談)を求めていることを明確かつ容易に読み取ることができるから、これらの記 載内容は、原告aにとって、再審請求や提訴予定の訴訟等に係る相談とい - 20 -う訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要なものであり、刑事収容施設法139条1項2号の信書に該当するというべきである。そして、特に上記削除部分の「再審請求弁護人になってほしい。」、「原告が提訴する国家賠償訴訟の件についてもアドバイスしてほしい。」という記載内容を読めば、明確かつ容易に原告aの上記意向を理 解し得ることからすれば、e拘置所長がこれらを同号の信書に該当しないと判断したことについては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきである。 (ウ) したがって、e拘置所長が、本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分を削除した措置は、国家賠償法1条1項の適用上、違 法であると認められる。 イ被告の主張についてこれに対し、被告は、本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分における「色々と相談したい」旨の記載等は具体性を欠き、実質的に「訴訟の遂行」のための具体的な相談やアドバイス等を求めているか 判然としないものであった上、原告aとf弁護士との関係性からも、「訴訟の遂行」と同程度の原告aにとって重大な利害に係る用務の処理のために必要とされる記述であるとは判断できないものであったため、e拘置所長が、本件発信書④の削除・抹消部分は刑事収容施設法139条1項2号により発受が許されるものに って重大な利害に係る用務の処理のために必要とされる記述であるとは判断できないものであったため、e拘置所長が、本件発信書④の削除・抹消部分は刑事収容施設法139条1項2号により発受が許されるものには該当しないと判断したことには相当の根拠が認めら れ、同人が、職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該判断をしたと認め得るような特段の事情はない旨主張する。 しかし、上記ア(イ)で述べたとおり、本件発信書④の削除部分の「再審請求弁護人になってほしい。」、「原告が提訴する国家賠償訴訟の件についてもアドバイスしてほしい。」という記載内容からは、再審請求の委任を希望 していることや、原告aが提起を予定している国家賠償請求事件について法 - 21 -律的なアドバイス(法律相談)を求めているという原告aの意向を明確かつ容易に理解し得るところ、弁護士に対して提訴予定の訴訟に関する相談をする際に、包括的に法律的なアドバイスを求めることも、訴訟の準備行為として合理性を有するというべきであるから、記載内容が具体性を欠くということはできない。そして、本件発信書④が発信された時点で、原告aが正式に f弁護士に本件訴訟を委任していなかったことを考慮しても、e拘置所長がこれを刑事収容施設法139条1項2号の信書に該当しないと判断したことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきである。この点に関する被告の主張は理由がない。 (2) 本件発信書⑤についてア検討(ア) 本件発信書⑤の各削除・抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄に記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、このうち、同欄の①ないし⑧(枝番号を含む)、⑨-1ないし4、⑨-6ないし8、⑨-1 件発信書⑤の各削除・抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄に記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、このうち、同欄の①ないし⑧(枝番号を含む)、⑨-1ないし4、⑨-6ないし8、⑨-10ない し12の削除・抹消部分は、死刑廃止団体が発刊している機関紙に関する内容等、f弁護士に対し、外部交通許可方針者ではない第三者に接触を図るよう促す内容、e拘置所における外部交通の制限の状況、原告aの意見・感想等である。これらの内容はいずれも、別件訴訟の承継又は原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関連性があるものではなく、原告 aにとって、訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえない。そうすると、上記削除・抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、同条2項により発信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 したがって、上記削除・抹消部分について、e拘置所長が、刑事収容施 - 22 -設法139条1項2号及び同条2項に該当しないと判断したことは、職務上の法的義務に違背したものとはいえない。 (イ) 他方で、本件発信書⑤の別表「削除又は抹消の内容」欄⑨-5の削除部分には、「再審請求弁護人宛ての手紙が抹消される。完全な嫌がらせだと思う。何とかしてほしい。」との記載があり、この記載内容からは、原告 aがf弁護士に対し、原告aが提起を予定している国家賠償請求事件についての法律相談を希望していることを読み取ることができる。また、同欄⑨-9の削除部分には、「(養子Aの)国家賠償訴訟について教えてほしい。」との記載があり、この記載内容からは、原告aが、別件訴訟の訴訟代理 律相談を希望していることを読み取ることができる。また、同欄⑨-9の削除部分には、「(養子Aの)国家賠償訴訟について教えてほしい。」との記載があり、この記載内容からは、原告aが、別件訴訟の訴訟代理人であるf弁護士に対し、別件訴訟を承継すべきか否かを判断するた めの情報提供を求めていることを読み取ることができる。これらの記載内容は、原告aにとって、提訴予定の訴訟や別件訴訟の承継に係る相談という訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要なものであるといえるから、刑事収容施設法139条1項2号の信書に該当するというべきである。 そして、上記削除部分の「何とかしてほしい。」との記載内容はやや抽象的であるものの、本件発信書⑤の宛先は法律の専門的知見を有するf弁護士である上、上記(1)ア(イ)で述べたとおり、原告aが本件発信書④において国家賠償訴訟の件についての法律的なアドバイスを求める記載をしていたことも併せ考慮すれば、当該「何とかしてほしい。」旨の記載が国 家賠償訴訟に関する法律的なアドバイス(法律相談)を求める趣旨であることは容易に理解し得るといえる。また、上記削除部分の「(養子Aの)国家賠償訴訟について教えてほしい。」との記載からは、別件訴訟を承継すべきか否かを判断するための情報提供を求める趣旨を明確に読み取ることができる。 そうすると、e拘置所長がこれらを同号の信書に該当しないと判断した - 23 -ことについては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきである。 (ウ) したがって、e拘置所長が、本件発信書⑤の別表「削除又は抹消の内容」欄⑨-5及び⑨-9の削除部分を削除した措置は、国家賠償法1条1項の適用上、違法であると認めら 情があるというべきである。 (ウ) したがって、e拘置所長が、本件発信書⑤の別表「削除又は抹消の内容」欄⑨-5及び⑨-9の削除部分を削除した措置は、国家賠償法1条1項の適用上、違法であると認められる。 イ被告の主張についてこれに対し、被告は、f弁護士が原告aと何らかの契約をしたり、民事訴訟や再審請求等の相談を受けたりしていなかったこと、本件発信書⑤の別表「削除又は抹消の内容」欄⑨-5の削除部分における「何とかしてほしい」という内容も極めて抽象的であることなどから、この記述についても、原告 aがf弁護士に対し実質的に「訴訟の遂行」のための相談やアドバイス等を求めているとまでは評価できず、刑事収容施設法139条1項2号に該当しない旨主張する。 しかし、上記ア(イ)で説示したとおり、原告aが本件発信書④において国家賠償訴訟の件についてのアドバイスを求める記載をしていたことも併せ 考慮すれば、上記「何とかしてほしい。」との記載内容は、国家賠償訴訟に関する法律的なアドバイス(法律相談)を求める趣旨であることは容易に理解し得るといえることから、本件発信書④が発信された時点で原告aがf弁護士に本件訴訟を委任していなかったことを考慮しても、e拘置所長がこれらを同号の信書に該当しないと判断したことについては、職務上通常尽くす べき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきである。この点に関する被告の主張は理由がない。 (3) 本件発信書⑧についてア本件発信書⑧の各抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄に記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、このうち、同欄の①、②及び④の 抹消部分は、原告aが養子Aに関する悪い知らせではないかと連想したこ - 24 -と、 除又は抹消の内容」欄に記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、このうち、同欄の①、②及び④の 抹消部分は、原告aが養子Aに関する悪い知らせではないかと連想したこ - 24 -と、原告aと養子Aの外部交通が部分的に許可となったことに関すること、天候や新型コロナウイルス感染症の感染状況などである。これらの内容はいずれも、別件訴訟の承継に関する内容又は原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関連性があるものとは認められず、原告aにとって重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえない。そうすると、上記各 抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、同条2項により発信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。したがって、上記各抹消部分について、e拘置所長が、刑事収容施設法139条1項2号及び同条2項に該当しないと判断したことは、職務上 の法的義務に違背したものとはいえない。 イ他方で、本件発信書⑧の別表「削除又は抹消の内容」欄の③の抹消部分には、「“共同原告として国賠の準備をする”と言われても、現段階では外部交通が完全に遮断されているので打合せも出来ません。…特別発信も、国相手の国賠の打合せなら必ず発信妨害してくるだろうし…。…この共同原告の 件、どう思いますか?良いアドバイス等あればご教示お願いします。」との記載があり、この記載内容からは、原告aが、別件訴訟の訴訟代理人であるf弁護士に対し、別件訴訟の承継に関し法律的なアドバイス(法律相談)を求めていることを明確に読み取ることができる。これらの記載内容は、原告aにとって、別件訴訟の承継に係る相談という訴訟の遂行等と同程度に重大 別件訴訟の承継に関し法律的なアドバイス(法律相談)を求めていることを明確に読み取ることができる。これらの記載内容は、原告aにとって、別件訴訟の承継に係る相談という訴訟の遂行等と同程度に重大 な利害に係る用務の処理のために必要なものであるといえるから、刑事収容施設法139条1項2号の信書に該当するというべきである。 そして、本件発信書⑧に係る措置がされたのは令和4年7月21日であり、e拘置所が、f弁護士との外部交通につき、①別件訴訟の承継に関する内容及び②原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関する内容に 限り許可する方針とした同年6月29日よりも後のことであることも踏ま - 25 -えると、e拘置所長がこれらを同号の信書に該当しないと判断したことについては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきである。 ウしたがって、e拘置所長が、本件発信書⑧の別表「削除又は抹消の内容」欄の③の抹消部分を抹消した措置は、国家賠償法1条1項の適用上、違法で あると認められる。 (4) 本件発信書⑥、⑦、⑨~⑰について本件発信書⑥、⑦、⑨~⑰の各抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄記載のとおりであり(前提事実(3)イ(イ))、原告aの意見や感想、外部交通の状況の説明、e拘置所における処遇や外部交通の制限に関する状況説明 とこれに対する不満、原告aの近況、e拘置所職員の氏名、挨拶等であって、これらの内容はいずれも、別件訴訟の承継に関する内容又は原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関連性があるものとは認められず、原告aにとって訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえない。 そうすると、上記各抹消部分は 定している国家賠償請求事件に関連性があるものとは認められず、原告aにとって訴訟の遂行等と同程度に重大な利害に係る用務の処理のために必要であるとはいえない。 そうすると、上記各抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、同条2項により発信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 したがって、上記各抹消部分については、e拘置所長が、刑事収容施設法1 39条1項2号及び同条2項に該当しないと判断したことは、職務上の法的義務に違背したものとはいえない。 (5) 小括以上のとおり、①本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分、②本件発信書⑤の同欄⑨-5及び⑨-9の削除部分、③本件発信書⑧ の同欄③の抹消部分は、いずれも刑事収容施設法139条1項2号所定の信書 - 26 -に該当する上、e拘置所長がこれらを同号の信書に該当しないと判断したことについては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記判断をしたと認め得る事情があるというべきであるから、本件各措置②のうち、上記①ないし③の抹消又は削除部分について、e拘置所長がこれらを同号所定の信書に該当しないと判断し、削除又は抹消した各措置は、いずれも国家賠償法 1条1項の適用上、違法であると認められる。 4 争点3(本件各措置③の国家賠償法上の違法性の有無)について(1) 認定事実本件各措置③に至る経緯に関し、後掲の各証拠によれば、次の各事実が認められる。 ア養子A(乙11、35、37)養子Aは、本件各措置③の当時、g拘置所に収容されていた者であり、原告aの養子であった者である。 原告aは、e拘置所長に ば、次の各事実が認められる。 ア養子A(乙11、35、37)養子Aは、本件各措置③の当時、g拘置所に収容されていた者であり、原告aの養子であった者である。 原告aは、e拘置所長に対し、養子Aと外部交通の必要性がある旨申請したが、e拘置所長は、令和2年12月16日、養子Aにつき、外部交通許可 方針者に当たらないとした。 イ養子Aからf弁護士への書籍等の交付(乙35)養子Aは、f弁護士に対するg拘置所内での書籍等の交付(窓口での宅下げ)を申請し、f弁護士は、令和4年6月29日、本件書籍等と全く同一のタイトルの書籍等4冊の交付を受けた。 ウ f弁護士から原告aへの本件書籍等の送付(乙13、35~37)f弁護士から原告a宛てに郵送された本件書籍等は、令和4年7月4日、e拘置所に到達した。本件書籍等が入っていた封筒の消印日は、同年6月29日である。 なお、本件書籍等のうち、「死刑と人権 207号」には、養子Aによる 投稿として、養子Aの近況や、養子Aが起こした事件の内容が掲載されてい - 27 -る。 (2) 検討ア本件受信書抹消措置について本件受信書には、「件名」として「国家賠償請求について」との記載があるものの、本件受信書の抹消部分の内容は、別表「削除又は抹消の内容」欄 記載のとおり、本件書籍等のタイトルと、これを送付する旨の記載があるのみであり、別件訴訟や本件訴訟と関連する記載はないことから、原告aの重大な利害に係る用務の処理のために必要なものとはいえない。 したがって、本件受信書の抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、本件受信書の抹消部分につき、 同条2項により受信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが 書の抹消部分は、刑事収容施設法139条1項2号に該当するとはいえず、また、e拘置所長が、本件受信書の抹消部分につき、 同条2項により受信を許すべき事情があるとは認められないと判断したことが、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。したがって、e拘置所長がした本件受信書抹消措置は国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 イ本件書籍等不交付措置について (ア) 判断枠組み刑事収容施設法は、物品の取扱いについて、刑事施設の職員が、被収容者に交付するため当該被収容者以外の者が刑事施設に持参し、又は送付した物品について、検査を行うことができる旨定める(44条)とともに、刑事施設の長は、上記物品が、46条1項各号のいずれか(例えば、①被 収容者に交付することにより、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるものであるとき、②自弁により使用し、若しくは摂取することができることとされる物品又は釈放の際に必要と認められる物品以外の物品であるとき等)に該当するときは、その物品を持参し、又は送付した者に対し、その引取りを求めるものとしている(同項)。そして、上記の「刑事 施設の規律及び秩序を害するおそれ」の有無を判断するに当たっては、刑 - 28 -事施設内の実情に通暁し、刑事施設の規律及び秩序の維持その他適正な管理運営の責務を負う刑事施設の長による個々の場合の具体的状況の下における裁量的判断にまつべき点が少なくない。 したがって、上記の「おそれ」があるとした刑事施設の長の認定に合理的な根拠があり、その防止のために当該物品の交付を禁止する措置が必要 であるとした判断に合理性が認められる限り、当該措置は適法として是認すべきものと解するのが相当である。 (イ) 検討本件書籍等は があり、その防止のために当該物品の交付を禁止する措置が必要 であるとした判断に合理性が認められる限り、当該措置は適法として是認すべきものと解するのが相当である。 (イ) 検討本件書籍等は、f弁護士が原告aに郵送により差し入れようとしたものであるが、f弁護士から原告a宛てに郵送された本件書籍等がe拘置所に 到達したのは令和4年7月4日であり(前提事実(4)ア)、その5日前である同年6月29日に、f弁護士が養子Aから本件書籍等と全く同じタイトルの書籍等の交付を受けていること(認定事実イ)、原告aに郵送された本件書籍等が入っていた封筒の消印日は、f弁護士が養子Aから書籍等の交付を受けた日と同じ日であり、本件書籍等のうち、「死刑と人権 7号」には、養子Aによる投稿として、養子Aの近況や、養子Aが起こした事件の内容が掲載されていること(認定事実ウ)などの事情に照らせば、本件書籍等は、f弁護士が養子Aから交付を受けた書籍等であると認められる。また、上記各事情に照らせば、本件書籍等の差入れは、養子Aが、f弁護士を介して原告aに本件書籍等を交付することを企図してされた ものである可能性があると認められる。 そして、本件書籍等不交付措置がされた令和4年7月当時、養子Aは外部交通許可方針者とされていなかったこと(認定事実ア)、f弁護士は、外部交通許可方針者とされていたものの、その範囲は①別件訴訟の承継に関する内容及び②原告aが提起を予定している国家賠償請求事件に関す る内容に限られており(前提事実ウ)、本件各書籍等は、上記①及び②の - 29 -いずれとも関連性がないか、又は乏しいものであって、上記①又は②に係る用務の処理のために差し入れられたものであるとは認められない。そうすると、e拘置所長が、本件書籍等 記①及び②の - 29 -いずれとも関連性がないか、又は乏しいものであって、上記①又は②に係る用務の処理のために差し入れられたものであるとは認められない。そうすると、e拘置所長が、本件書籍等の差入れを許した場合には、刑事収容施設法に定める差入れの制限の潜脱を認めることと実質的に同じであり、不正な物品の授受を通じてe拘置所の規律及び秩序を害するおそれがあ るとして、刑事収容施設法46条1項1号に該当すると判断したことについて、不合理な点があったということはできず、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。 したがって、e拘置所長がした、本件書籍等不交付措置は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 5 争点4(損害の発生及び数額)について(1) 原告aが被った精神的損害上記3(1)~(3)で述べたとおり、本件各措置②のうち、①本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分、②本件発信書⑤の同欄⑨-5及び⑨-9の削除部分、③本件発信書⑧の同欄③の抹消部分を削除又は抹消し たe拘置所長の各措置は、いずれも国家賠償法1条1項の適用上、違法であると認められ、原告aは、これらの各措置により精神的苦痛を被ったものと認められる。そして、上記各措置により削除・抹消された部分は、上記各発信書のごく一部ではあるものの、その内容は、原告aにとって訴訟の遂行等と同程度に法律上の重大な利害に係る用務の処理のために必要なものと認められるこ となど、本件に現れた一切の事情に照らせば、上記各措置により原告aが受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は、上記各措置1件あたり2万円(合計6万円)と認めるのが相当である。 (2) 原告aが被った経済的損害(弁護士費用)本件事案の内容、訴 により原告aが受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は、上記各措置1件あたり2万円(合計6万円)と認めるのが相当である。 (2) 原告aが被った経済的損害(弁護士費用)本件事案の内容、訴訟の経緯及び原告aに生じた精神的損害の額等に照らせ ば、上記各措置と相当因果関係を有する弁護士費用相当の損害の額は、600 - 30 -0円と認められる。 6 まとめ以上述べたとおり、本件各措置②のうち、①本件発信書④の別表「削除又は抹消の内容」欄⑭-2の削除部分、②本件発信書⑤の同欄⑨-5及び⑨-9の削除部分、③本件発信書⑧の同欄③の抹消部分を削除又は抹消したe拘置所長の各 措置は、いずれも国家賠償法1条1項の適用上違法であり、原告aが上記各措置により被った損害の額は、合計6万6000円と認められる。 第4 結論よって、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民訴法64条本文、 61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言については、相当でないからこれを付さないこととする。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官横田典子 裁判官太田章子 裁判官橋本康平 - 31 -別紙1本件書籍等目録 1 曽野綾子「奇蹟」 2 濱嘉之「完全黙秘」 3 早瀬利之「西郷内閣」 4 かたつむりの会「死刑と人権 №207」(2022年4月上旬) - 32 -別紙2関係法令の定め第1 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以 早瀬利之「西郷内閣」 4 かたつむりの会「死刑と人権 №207」(2022年4月上旬) - 32 -別紙2関係法令の定め第1 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。) 1 刑事収容施設法46条1項1号は、刑事施設の長は、被収容者に交付するた め当該被収容者以外の者が刑事施設に持参し、又は送付した現金及び物品が、被収容者に交付することにより、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるものであるときは、その現金又は物品を持参し、又は送付した者(以下「差入人」という。)に対し、その引取りを求めるものとする旨規定する。 2 刑事収容施設法141条により準用される129条1項は、刑事施設の長は、 同法140条の規定による検査の結果、死刑確定者が発受する信書について、その全部又は一部が同法129条1項各号のいずれかに該当する場合には、その発受を差し止め、又は該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる旨規定する。 そして同項3号は、発受によって、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生 ずるおそれがあるときと規定する。 3 刑事収容施設法139条1項は、刑事施設の長は、死刑確定者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下同じ。)に対し、所定の規定により禁止される場合を除き、死刑確定者の親族との間で発受する信書(同項1号)、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業 務上の重大な利害に係る用務の処理のため発受する信書(同項2号)及び発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書(同項3号)を発受することを許すものとする旨規定する。 4 刑事収容施設法139条2項は、刑事施設の長は、死刑確定者に対し、同条1項各 び発受により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる信書(同項3号)を発受することを許すものとする旨規定する。 4 刑事収容施設法139条2項は、刑事施設の長は、死刑確定者に対し、同条1項各号に掲げる信書以外の信書の発受について、その発受の相手方との交友関 係の維持その他その発受を必要とする事情があり、かつ、その発受により刑事 - 33 -施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認めるときは、これを許すことができる旨規定する。 第2 e拘置所死刑確定者外部交通取扱規程(以下「e拘置所規程」という。甲23、乙3) 1 e拘置所規程19条1項は、死刑確定者に対し、刑事収容施設法139条1 項各号に掲げる信書の発受につき、同法が規定するところにより発受が許されない場合を除き、これを許すものとし、同項各号に掲げる信書は、e拘置所規程5条1項により例示したものと同様の範囲をいうものとする旨定め、同項(1)イは、死刑確定者の法律上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者とは、例えば、民事訴訟や再審請求等について、委任又は相談を受けて いる弁護士等のことをいう旨定める。 2 死刑確定者が発信を申請する信書の通数については、刑事収容施設法141条が準用する同法130条の規定に基づき、e拘置所規程23条は、原則として、休庁日を除き、1日1通(電報、レタックスを含む。)とし、その受付は、当該発信日の午前及び午後1回と定める。 以上

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