令和6(ワ)24399 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年9月1日 東京地方裁判所
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判決文本文5,723 文字)

令和7年9月1日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(ワ)第24399号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和7年6月16日判決 主文 1 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和6年8月19日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、放送法所定の国際放送業務(放送法20条1項4号及び5号)として、「NHKワールドJAPAN(ラジオ)/NHKワールド・ラジオ日本」という番組を放送する法人である原告が、同番組の令和6年8月19日午後1時1分から午後1時15分までの放送回(生放送)においてアナウンスを担当していた被告に対し、被告が、「靖国神社の石柱に落書き器物損壊事件とし て捜査警視庁」というニュースを読む際に、原稿には存在しない「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土です。」等の発言を行ったことが不法行為に当たり、これにより損害を被ったとして、損害金1100万円(弁護士費用100万円含む。)及びこれに対する不法行為の日である同日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 原告の主張 ⑴ 当事者等ア原告は、放送法に基づいて設立された法人であり(放送法16条)、公共放送機関として、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の 立された法人であり(放送法16条)、公共放送機関として、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放 送及び協会国際衛星放送を行うこと(放送法15条)を目的とする法人である。 イ被告は、原告から原告の放送番組の制作関連業務などを委託された訴外株式会社NHKグローバルメディアサービスから、ニュース原稿の中国語への翻訳と中国語によるアナウンスの業務を委託されていた外部スタッフ であった者である。 ⑵ 国際放送業務放送法により、「邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送を行うこと」及び「邦人向け協会国際衛星放送及び外国人向け協会国際衛星放送を行うこと」は、原告の必須業務とされている(放送法20条1項4号及び5号。以 下これらの業務を総称して「国際放送業務」という。)。 ⑶ 本件番組原告は、国際放送業務の一環として、「NHKワールドJAPAN(ラジオ)/NHKワールド・ラジオ日本」という、短波、中波、FM波、衛星を通じて日本の最新情報や話題を17の外国語と日本語で放送するコンテンツ を、海外及び日本国内において提供しており、令和6年8月19日午後1時1分から午後1時15分までの間に、「NHKワールドJAPAN(ラジオ)」の「ニュース(中国語)」(以下「本件番組」という。)が、原告の短波ラジオと衛星ラジオの国際放送で生放送され、ラジオ第2放送でも同時放送された。 ⑷ 被告による不法行為 被告は、本件番組において、「靖国神社の石柱に落書き器物損壊事件として捜査警視庁」という項目のニュース原稿を中国語で読み上げ れた。 ⑷ 被告による不法行為 被告は、本件番組において、「靖国神社の石柱に落書き器物損壊事件として捜査警視庁」という項目のニュース原稿を中国語で読み上げた際、突然、「落書きには『軍国主義』『死ね』などの抗議の言葉が書かれていた」「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土です。」「南京大虐殺を忘れるな。」「慰安婦を忘れるな。」などという、原稿には一切存在しない個人的な発言 (以下「本件発言」という。)を中国語や英語を用いて行い、これにより、それらニュース原稿にない本件発言が本件番組で放送された。 原告の国際放送業務においてアナウンスを担当する者は、原告が国際放送基準に依拠して製作したニュース原稿をその原稿どおりにアナウンスすることが義務付けられており、ニュース原稿にない個人的な発言をすることは禁 じられているところ、被告は故意に本件発言をすることにより、原告の国際放送業務を妨害するとともに、公共放送機関としての信用を著しく失墜させるという違法行為を行った。 ⑸ 損害ア原告は、国民の受信料により運営される公共放送機関として、国際放送 の番組においては、日本の「重要な政策および国際問題にたいする公的見解ならびに日本の世論の動向を正しく伝える」ことにより、国民の信頼を得ることを何より重要視していたものであるが、日本の国際問題に対する公的見解と異なる被告の本件発言により、国際放送業務を妨害され、国内外からの原告に対する信用を著しく低下させられた。 また、原告は、本件発言から令和6年9月1日の午後8時に至るまでの間、本件発言に関する視聴者からの「原告はどのように責任をとるのか」「尖閣諸島は日本の領土だとしっかり放送で言ってほしい」等、約4000件もの批 、本件発言から令和6年9月1日の午後8時に至るまでの間、本件発言に関する視聴者からの「原告はどのように責任をとるのか」「尖閣諸島は日本の領土だとしっかり放送で言ってほしい」等、約4000件もの批判の声に対して、対応に追われた。 そして、原告は、本件発言に対する事後的な対応として、別紙記載の経 緯の説明やお詫び等の放送、インターネットでの公表、広報対応といった 対応を行った。 以上のとおり、本件発言により、原告による国際放送業務の遂行が妨害され、原告の信用が著しく毀損され、その信用を回復するための事後処理に多大な労力と放送資源を費やしたこと等により、原告が被った損害は、1000万円を下らない。 イまた、弁護士に損害賠償請求訴訟を委任せざるを得なくなった結果、弁護士費用にかかる損害として100万円が生じた。 ⑹ よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、上記損害の合計額である金1100万円及びこれに対する不法行為の日である令和6年8月19日から支払済みまでの民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払いを求 める。 ⑺ 被告は、公示送達による呼出しを受けたが、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。 第3 当裁判所の判断 1 原告の主張に対する判断 ⑴ア甲3、甲5、甲13によると、前記第2の2⑴アの事実が認められる。 イ甲1、甲2によると、前記第2の2⑴イの事実が認められる。 ⑵ 甲4、甲6、甲13によると、前記第2の2⑵の事実が認められる。 ⑶ 甲4よると、前記第2の2⑶の事実が認められる。 ⑷ 甲4、甲13によると、前記第2の2⑷の事実が認められる。 ⑸ 被告が本件発言を行ったことは、 2⑵の事実が認められる。 ⑶ 甲4よると、前記第2の2⑶の事実が認められる。 ⑷ 甲4、甲13によると、前記第2の2⑷の事実が認められる。 ⑸ 被告が本件発言を行ったことは、これにより原告の国際放送業務を妨害し、また、原告の信用を毀損したものといえるため、不法行為にあたると認められる。 ⑹ 本訴状が公示送達の方法により被告に送達されたこと及び訴状の掲示が令和7年3月26日であることは当裁判所に顕著である。 2 損害について 被告の本件発言によって、原告が本件発言当時有していた、国際放送業務における放送内容の客観性や正確性についての社会的信用が大きく毀損されたことや、本件発言がニュース原稿から逸脱し、かつ生放送でなされたという行為の悪質性、本件発言後原告において生じた多大な労力に加えて、本件発言が原告内部の問題にとどまらず、原告役員らが責任をとる事態にまで発展したこと (甲7(枝番のものを含む。以下同じ。)ないし甲9、甲11ないし甲14)等、本件各証拠及び弁論の全趣旨に基づいて認定できる本件に関する諸般の事情を総合的に考慮すると、被告の本件発言によって原告に生じた損害は、1000万円と認めるのが相当である。 そして、上記のとおり、被告の本件発言により原告に生じた損害は1000 万円と認められるところ、被告の本件発言と相当因果関係の認められる弁護士費用相当損害額は、上記認容額や本訴の経緯等を踏まえ、合計100万円とするのが相当である。 以上より、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、合計1100万円の損害賠償請求権及びこれに対する本件発言がなされた令和6年8月19日から支 払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権を有する。 第 、不法行為に基づき、合計1100万円の損害賠償請求権及びこれに対する本件発言がなされた令和6年8月19日から支 払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権を有する。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第32部 裁判長裁判官足立堅太 裁判官能登谷宣仁 裁判官大胡裕昭 別紙 <放送>8月19日午後8時30分 NHKワールドJAPAN(ラジオ)「ニュース(中国語)」午後9時総合テレビ「ニュースウオッチ9」午後10時ラジオ第1放送 「NHKジャーナル」(日本語)8月20日午後1時01分 NHKワールドJAPAN(ラジオ)「ニュース(中国語)」とラジオ第2放送「中国語ニュース」8月26日午後1時01分 NHKワールドJAPAN(ラジオ)「ニュース(中国語)」とラジオ第2放送「中国語ニュース」午後5時50分総合テレビ・ラジオ第1放送「NHKからのお知らせ」(日本語)8月27日午前11時30分 NHKワールド JAPAN(テレビ)「CommentonAugust 19th NHK'sChineseRadioNews」(英語)午後2時 NHKワールド JAPAN(ラジオ)「CommentonAugust 19th NHK'sChineseRadioNews」(英語)9月2日午前10時43分 NHKワールド JAPAN(テレビ)「HELLO! NHKWORLD-JAPAN」副題「ProgramStandardsforInter ws」(英語)9月2日午前10時43分 NHKワールド JAPAN(テレビ)「HELLO! NHKWORLD-JAPAN」副題「ProgramStandardsforInternationalBroadcast」(英語) <インターネット>▼NHKニュースWEB8月19日 NHK ラジオ国際放送などで不適切発言尖閣諸島などでhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20240819/k10014553331000.html▼NHKワールド JAPANオンライン8月19日 ▽中国語サイト「靖国神社石柱上被涂鸦东京警视厅正在调查」記事の終わりにお詫び掲載https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/news/20240819_08/8月26日 ▽中国語サイト「关于8月19日播出的国际广播华语新闻」「お詫び」と日本政府公式見解について外務省の関連ページのリンクを掲載https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/news/20240826_ML06/8月27日 ▽英語サイト8月27日放送の「CommentonAugust 19th NHK'sChineseRadioNews」の動画を掲載(掲載は令和6年9月10日に終了予定)https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/shows/6099010/9月2日▽英語サイト9月2日に「HELLO! NHKWORLD-JAPAN」で放送した「ProgramStandardsforInternationalBroadcast」の動画を掲載(掲載は令和6年9月16日に終了予定)h ! NHKWORLD-JAPAN」で放送した「ProgramStandardsforInternationalBroadcast」の動画を掲載(掲載は令和6年9月16日に終了予定)https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/shows/2104999/ <広報対応>8月19日ブリーフィングで記者説明報道資料「NHKラジオ国際放送などでの不適切発言について」https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240819.pdf8月22日報道資料「NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言への対応について」https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240822.pdf報道資料「NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言の経緯と対応について」https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240822_2.pdf8月25日報道資料「NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言について」https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240825.pdf8月28日報道資料「NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言の経緯と対応について(8月28日更新)」https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240828.pdf rpress/pdf/2024/20240828.pdf

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