平成20(行コ)24 漁業権不免許処分取消等,解散届提出義務不存在確認請求各控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成18年(行ウ)第10号等)

裁判年月日・裁判所
平成21年9月11日 福岡高等裁判所 その他
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判決文本文12,778 文字)

- 1 -主文 本件各控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人知事(以下,略称は原判決に従う。)が平成17年9月1日付けで控訴人に対してしたα区第××号区画漁業権の不免許処分を取り消す。 被控訴人知事が平成17年9月1日付けで控訴人に対してしたα区第××号に係るA漁業協同組合第1種区画漁業権(のり養殖業)行使規則の不認可処分を取り消す。 控訴人が,被控訴人知事に対し,水協法68条5項に定める解散届を提出する義務がないことを確認する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要等 事案の概要( )本件は,控訴人が水協法68条4項に定める組合員数20人を下回り, 当然に解散したとして,被控訴人知事が,控訴人に対し,同法68条5項所定の解散届を提出するよう行政指導するとともに,平成17年9月1日付けで控訴人に対してα区第××号区画漁業権の不免許処分及びα区第××号に係るA漁業協同組合第1種区画漁業権(のり養殖業)行使規則の不認可処分をしたところ,控訴人が,未だ解散していない旨主張して,被控訴人県に対し,本件各処分の取消し(甲事件)を求めるとともに,実質的当事者訴訟として,被控訴人知事に対する解散届提出義務が存在しないことの確認(乙事件)を求めた事案である。 ( )原審は,控訴人らの各請求をいずれも理由がないとして棄却したので, - 2 -控訴人はこれを不服として控訴した。 前提事実と争点及び当事者の主張3,4項のとおり,当審で当事者が補足した主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1,2のとおりであるから,これを引用する。 当審で控訴人が補足した主張( ) 張3,4項のとおり,当審で当事者が補足した主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1,2のとおりであるから,これを引用する。 当審で控訴人が補足した主張( )Bの漁業従事状況と組合員資格について ア漁業従事状況について(ア)Bは,中学卒業後すぐに父の漁業を手伝う形で漁に出るようになり,昭和35年,大牟田でCという漁業者に雇われ,潜りをするようになり,翌年,タイラギ潜水器漁業の貝剥きをしていた女性と結婚し,それ以降,夫婦で漁船漁業を営んできた。タイラギ潜水器漁業の漁期以外の漁業としては,源式網漁業,三重流しさし網漁業,固定式さし網漁業,アサリ漁などをしており,1年を通して漁に出ていた。 平成4年,Bは,妻が○であることを告知されたことがきっかけで,夫婦で海に出る生活をやめ,それ以降,他人の船に雇ってもらうようになった。ただし,アサリ漁の自営は続けた。平成7年,妻が病気で動けなくなり,病院代と生活費を稼ぐため,トンネル坑夫の出稼ぎに行き始めた。もっとも,このトンネル坑夫としての仕事は,ある現場での工事が終了すれば,離職することになってしまう期間限定の雇用であり,それ以降,工事現場を転々としている。出稼ぎを始めた後も,Bは,漁業を継続していた。 タイラギ潜水器漁業については,平成▲年▲月にBの妻が死亡しているが,その後,2年間は,他人の船に雇ってもらって潜っている。また,ある現場を離職し次の現場に赴くまでの間は,大牟田で,アサリ漁を自営するか,兄の刺し網漁の手伝いをしていた。さらに,トンネル坑夫として従事している間も,休みのときは,アサリ漁を自営するか,刺し網漁の手伝- 3 -いをしていた。 (イ)平成16年に入ると,Bは,静岡県のβのDの現場が終了した後,山口県γの現場に行くまでの約5か月 事している間も,休みのときは,アサリ漁を自営するか,刺し網漁の手伝- 3 -いをしていた。 (イ)平成16年に入ると,Bは,静岡県のβのDの現場が終了した後,山口県γの現場に行くまでの約5か月間,大牟田で漁業で生計を立てていた。 この間の6月には,A漁業協同組合の通常総会が開催されているが,その際,議長を務めている。山口県γの現場は,わずか半年だけの雇用にすぎず,平成17年3月初めには,離職し,大牟田に戻って漁業に従事した。 しかし,δ海異変のために,漁船漁業は壊滅状態だったので,生計を維持できるほどの漁獲が上がらず,ついには,組合員費を負担するのが苦しくなり,同月18日,A漁業協同組合に対して退休願いを提出した。その際,潜水道具は自宅で保管することにしたが,源式網,アサリネットなどは漁協の蓄養場で保管してもらうことにした。その後,Bがトンネル坑夫として就職できたのは,同年7月である。 平成20年7月3日に再びA漁業協同組合に加入している。 イBの組合員資格について(ア)Bの調査段階における電話による回答の内容は,一見すると,本人の陳述書の内容と齟齬するようにも読めるが,Bによれば,「私にとっては,タイラギ潜水器漁業がイコール漁業でしたので,その意味で答えたのであれば,ありうる内容です。」とされている。すなわち,Bの調査段階における電話による回答の内容は,タイラギ潜水器漁業に限った回答にすぎず,それ以外の漁業着業状況については回答していないと考えれば,本人の陳述書の内容とも齟齬しない。 (イ)平成17年3月末時点での過去の実績の評価として,Bは,かつての主たる漁業であったタイラギ潜水器の自営はやめたけれども,その後も他の漁業に従事していたといえる。また,アサリ漁というものは,漁期の限定がない漁業であり,社会通念からすると,一年 て,Bは,かつての主たる漁業であったタイラギ潜水器の自営はやめたけれども,その後も他の漁業に従事していたといえる。また,アサリ漁というものは,漁期の限定がない漁業であり,社会通念からすると,一年中漁期であるアサリ漁を過去にしていれば,90日を満たさないはずがない。帰省時にアサリ漁が- 4 -できるかなどを調査することも着業準備行為である。 「弟の漁業をしばらく手伝っていた2年間」は,漁業従事者である。Bは,調査段階の電話による回答内容で,Bが雇われていない期間を「12年か,10年」と答えているだけである。Bは「家内が死んでから」とも回答しているが,死亡したのは平成▲年▲月であるので,少なくともそれ以降である。 (ウ)Bが従事したトンネル坑夫の仕事は,期間限定の仕事であり,漁業との兼業を困難ならしめるような仕事ではない。資格審査時点の直近1年間で見れば,5か月間もトンネル坑夫として出稼ぎに行くことなく,大牟田で漁業をしていたのであるから,その一事だけで,Bの過去の実績は十分認めることができる。さらに,漁業を再開しようと思えばできるだけの漁具をその後も保管し,現に漁業を再開しているという事実や賦課金の支払状況等からすると,漁業継続の意思があったと解するのが合理的である。 ( )水協法と組合員資格の判断基準等について ア水協法の沿革等について(ア)水協法上,地区漁協の正組合員資格は,住居要件と漁業日数要件とが規定され(水協法18条1項1号),定款がこれに加えて経営規模とか従業員数あるいは国籍とか居住年数とかの条件を付することを認めず,定款で任意に選択できるのは限られた範囲内での漁業の日数のみである。漁業日数でさえ120日以上の日数要件を設けることができない。そもそも,漁協に限らず,およそ協同組合にとって組合員の資格の範囲をど 定款で任意に選択できるのは限られた範囲内での漁業の日数のみである。漁業日数でさえ120日以上の日数要件を設けることができない。そもそも,漁協に限らず,およそ協同組合にとって組合員の資格の範囲をどのように決めるかは,重要な事項であり,結社の自由(憲法21条)等からしても,自主的に決定できる事項である。にもかかわらず,各種協同組合中,漁協のみがかかる規定になっているのは,その生い立ちによる。 (イ)戦後,戦時中の団体制度を廃止し,漁民が自主的に組織する協同組合組織とすることによって民主的な運営を通じて,漁民の経済的,社会的地- 5 -位の向上と,水産業の生産力の発展をはかり漁村の民主化を推進する民主的な水産業協同組合法が誕生した。このように漁協は,地区内に漁業者の生産活動の場を規制する管理漁業権の主体として発生したのであり,その歴史的沿革に基づいて,漁協が経済事業主体としての発展を目指す一方で,漁協が漁業権管理主体としての役割を担い組合員資格について定款によらず法律により規定することにしたのである。言い換えれば,漁業の継続に不可欠な漁業権を,漁民個人にではなく漁村から発展した漁協という組織に帰属させた以上は,漁業を現実に営む漁民個人が漁協から恣意的に排除されないように漁民資格が法定されたものである。 以上のとおり,漁協の地区内に住所を有する漁業者は,漁業日数による若干の違いを別にすれば,定款の規定を待たずに,法律上ほとんど自動的に正組合員資格を有することになるというのが漁協の組合員資格の特色であり,したがって,漁協の組合員資格に関する法の規制は,法律の定める規制以上に,漁協でさえ,その組合員資格を制限できないという点に主眼があるのであり,組合員資格を制限する方向での解釈は,水協法の解釈としては妥当しないというべきである。 イ具体 制は,法律の定める規制以上に,漁協でさえ,その組合員資格を制限できないという点に主眼があるのであり,組合員資格を制限する方向での解釈は,水協法の解釈としては妥当しないというべきである。 イ具体的資格要件について「事業としての漁業」は,漁撈行為のみをいうのではなく,資材の調達等の準備行為から生産物の販売に至るまでの一連の多様な行為をいい,これらの行為を行う日数がすべて漁業を営む日数に計算されるもので,資材の調達等の準備行為から生産物の販売に至るまでの一連の行為の具体的内容も漁業種によって当然異なるものである。 そして,漁業日数については,同一人が数日は漁業を営み,数日は他人の営む漁業に従事する場合も,当然これを合算して漁業要件日数を算定すべきであり,病気あるいは漁協の常勤役員に就任した事等,一時的理由により漁業日数要件を欠くこととなったが,その事由が消減したと- 6 -きは再び漁業に復帰することが明白な場合も,漁民たる資格は継続するとされるものであり,過去の実績のみで判断されるべきものではない。 漁業種,漁船・漁具の有無,漁協への申出の趣旨,賦課金支払状況,出資金の返還を求めたかどうかなども,現在及び将来におけるその意思及び能力,その他客観的状況を示す事実であり,漁業日数要件の総合的判断の判断要素にされるべきである。 ウ水協法上のあるべき判断基準と被控訴人知事による審査手続について(ア)Bが資格を喪失しているかどうかは,第一次的には控訴人の認定が必要であるところ,控訴人はその認定はしていない。また,仮に一定の要件下で被控訴人知事が認定できる場合があるとしても,その要件は厳格に解釈・適用されるべきであるが,本件ではそれに該当しない。 (イ)被控訴人知事が漁協の組合員の資格審査を強化し始めたのは,平成17年8月ころからであるが, できる場合があるとしても,その要件は厳格に解釈・適用されるべきであるが,本件ではそれに該当しない。 (イ)被控訴人知事が漁協の組合員の資格審査を強化し始めたのは,平成17年8月ころからであるが,その実態調査票は,「過去の実績」を記載する欄しか存在せず,「平成17年3月31日現在」という一律の審査基準を設け,「主な漁業種類」しか記載できないなど,水協法上の正組合員資格概念とは到底相容れない内容になっている。このように,水協法上の正組合員資格概念を制限することは,資格要件を増やしたに等しく,漁協が定款によってでさえ一定の範囲でしか制限できないとする水協法に明らかに反する。 ( )Bの組合員資格認定の経過について アBが持参した「退休願」には,「一身上の都合により退休させてください。」と記載されていたのであって,Bは,その後漁業を行わないというつもりではなかったので,漁業を辞めるということではなく,できれば「しばらく休む」という形にしておいてほしいという気持から,「脱退届」ではなく,「退休願」としたのである。Bは,被控訴人県からの事情聴取に対しても,上記「退休願」について「『脱退届』のつもりだったが,記載を間違え- 7 -た。」旨回答している。 イ「資格喪失届」は,組合に対し,資格喪失認定の契機を申し出るものに過ぎない。しかし,資格喪失による脱退の効力が発生するためには,漁協理事等による資格喪失認定が必要であるから,その契機として重要な資格喪失届について,定款11条において1条を設けて規定したものといえる。このように,資格喪失届が,漁協に対して資格認定権限の発動を求めるものである以上,抽象的な記載や趣旨不明瞭な記載では足りず,自らが資格喪失した旨を明示する内容でなくてはならない。そして,脱退届や,休業届等,資格喪失届とは異な 協に対して資格認定権限の発動を求めるものである以上,抽象的な記載や趣旨不明瞭な記載では足りず,自らが資格喪失した旨を明示する内容でなくてはならない。そして,脱退届や,休業届等,資格喪失届とは異なる届出が提出された場合,漁協は,当然,当該組合員に組合員資格があることを前提として扱い,通常は資格喪失認定を行うことなどないのであるから,仮に,実体的に資格を喪失している可能性のある者から脱退届や休業届が提出されたとしても,漁協がこれを資格喪失届として扱うことは,あり得ない。また,法的にみても,資格喪失したものが何らかの届出を行ったからといって,その届出を「資格喪失届」と評価することができないのは,当然のことである。 ウ控訴人理事は,「退休願」を受領する際,Bから,これまで支払い続けてきた賦課金を支払うのが大変になり,断腸の思いでこの届出を書いたこと,本当はずっと漁業を続けたいと考えていることなどを聞き,書面の体裁にかかわらずこれを「脱退届」として扱うこととしたものである。 被控訴人らの主張( )Bの漁業従事状況と組合員資格の喪失について アBは,被控訴人県の調査の際も,14,5年前から自分の船では漁業をしておらず,他船にも手伝いで乗っており,10年か12年前からは人から雇われても漁業はしていないと答え,同人の娘も10年か12年前から漁業をしていないことを再確認されて,何ら異議を述べていない。Bが漁業をやめた時期は,タイラギ潜水器漁業の許可申請をしなくなった時期と- 8 -も整合する。調査時点である平成17年夏から10年ないし12年前ころ(平成5年から平成7年ころ)は,ちょうどタイラギの漁獲量が落ち込んでいる時期であり,Bが調査段階で漁業をしなくなったと供述していた平成5年から平成7年ころ(10年ないし12年前ころ)は,「タイ ろ(平成5年から平成7年ころ)は,ちょうどタイラギの漁獲量が落ち込んでいる時期であり,Bが調査段階で漁業をしなくなったと供述していた平成5年から平成7年ころ(10年ないし12年前ころ)は,「タイラギが採れなくなったころ」に当たるのであり,不自然な点はない。 イまた,アサリを採っていた期間は相当限定されていることからすれば,90日以上もアサリ漁に携わっていたはずはない。Bは,陳述書(甲41)においては,アサリ漁をしていたかのように述べるが,平成18年の審問時においても,Bが漁業を継続していたのかどうかが問われていたのであり,仮にBがアサリ漁の自営や手伝いなどで漁業を継続していたのであれば,審問時においても当然その旨を供述するはずであるが,漁業をやめている旨の供述に終始していることからすれば,実際にはBに漁業の実態はなかったのであり,陳述書の内容は,本件訴訟のために取り繕ったものと解さざるを得ない。 ウBは,遅くとも平成7年頃には漁業実態がなく,実体上組合員資格を喪失し,法定脱退となっていたものであり,控訴人のBの組合員資格についての新たな主張・立証は,時機に遅れた攻撃防御方法にあたり,安易に認めることは許されない。 ( )組合員資格喪失の認定について ア組合員資格の審査が第一次的には漁協の権限とされるとすれば,組合員の多くが漁業を営まなくなり,漁業者とはいえなくなったとしても,漁協理事等が資格喪失を認定しなければ,組合員資格は認められ,漁協は存続し続けることになるが,これを認めれば,「漁民及び水産加工業者の協同組織の発達を促進し,もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図」るという目的(水協法1条)を実現するべく,法が一定の組合員数を要求した趣旨(水協法68条4項)が完全に没却されてしま- 9 -うこ もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図」るという目的(水協法1条)を実現するべく,法が一定の組合員数を要求した趣旨(水協法68条4項)が完全に没却されてしま- 9 -うことになり,余りに不当な結果となる。水産業協同組合が公共的な性格も有していること,必要な限度において行政庁の指導,監督も必要となることは原審主張のとおりである。 イ漁協が適正な事業運営を行い,組合員資格の審査を適正に行っていれば問題は生じないはずであり,控訴人が危惧する事態は杜撰な資格審査しか行わない漁協でしか起こり得ない。また,仮に,漁協の資格審査が不十分であっても,行政庁が漁協の健全な発達を図るために必要な限度で監督権限を行使することによって,上記のような事態は回避することができるものである。なお,仮に上記のような事態が生じたとしても,漁協は解散の登記をするまでは,解散の事実を対外的に主張することはできないのであるから(水協法9条,106条),取引の安全を著しく害するということにはならない。 ウ被控訴人県が行った調査は,控訴人が適正に業務を執行しているかどうかを確認するためであり,個々の漁民に対して指導,監督権限を行使したものではない。行政庁の漁協に対する指導,監督の一環として,行政庁が直接に個々の組合員の資格の有無について実態調査をすることはさしつかえないのであり,仮に,控訴人が主張するように行政庁が個々の漁民に対する調査を行うことが許されないとすれば,漁協に対する実効的な指導,監督を行うことは不可能であり,極めて不当な結果となることは明らかである。 ( )Bの脱退認定について ア退休願は,要は組合員の地位を喪失したい趣旨であり,実質,出資金の返還請求は,出資金自体が組合員である地位に附随して少なくとも1口は出資しなければな である。 ( )Bの脱退認定について ア退休願は,要は組合員の地位を喪失したい趣旨であり,実質,出資金の返還請求は,出資金自体が組合員である地位に附随して少なくとも1口は出資しなければならないとされていることの関係から,その返還を受けることは,控訴人組合においても,組合員の地位を喪失したと認めるべき筋合いのものである。 - 10 -イ定款第9条「加入」では,出資口数を記載した加入申込書を提出させたうえ,出資の払込みをさせた後に組合員名簿に記載するとの厳格な扱いがされている。Bが出資金の返還を受けたとの認識であったことは間違いがなく,そして,平成17年6月5日の通常総会では,脱退が承認されたのであるから,Bが組合員でなくなったことは明らかである。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,原審の判断は相当と判断する。その理由は,2項に当審で控訴人が補足した主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 当審で控訴人が補足した主張について( )Bの稼働状況等と組合員資格の喪失について ア控訴人は,Bには漁業従事者として評価される実態があったもので,平成17年3月当時も組合員資格を保有していた旨の補足的主張をし,甲38ないし43によれば,Bの妻は,平成▲年▲月に死亡したこと,Bは,平成16年の組合の控訴人組合の通常総会で議長を務めたこと,Bは,平成20年7月3日の再加入の申込書を提出していることが認められ,また,Bの陳述書(甲41)には,トンネル掘りのために出稼ぎをしていたが,帰省したときには,タイラギ漁業をしていたなどの控訴人主張に副う記載があり,また,原判決第3,3( )オのとおり,Bは,本件過料事件の審 問の際には,一部これに副う供述をしている ぎをしていたが,帰省したときには,タイラギ漁業をしていたなどの控訴人主張に副う記載があり,また,原判決第3,3( )オのとおり,Bは,本件過料事件の審 問の際には,一部これに副う供述をしている。 イしかしながら,タイラギ漁業をしていたのも,最後は平成8年頃だったというのであり,アサリ漁業で他漁船に乗せてもらったとしても,自営とはいえない上,その間の収入額等を認めるべき資料もない。また,漁船の所有や漁網の保管等をもって,直ちに漁業従事の意思の表れとまで認めることはできない。 Bに対する漁業従事の実態の調査は,原判決第3,1( )ウエオのとお - 11 -りであり,B自身は,Eからの事実確認の電話(乙12)でも,終始「漁業を辞めて10数年になる。」と繰り返し述べており,「自宅も空家同然になっている。」というのであるから,Bの妻の死亡が平成▲年であることからすれば,空家同然となったのは,同年以降といえるものの,控訴人においてもBの妻がそのころに病気になったので,出稼ぎに行くようになった旨の主張をしていることも考え併せると,平成7年前後にBの出稼ぎが常態化したと認めるのが相当である。そして,タイラギ漁業の漁業許可については,Bがその所有の「○○」で申請して許可を得たのは,平成3年11月22日付けが最後であり,平成17年1月27日付けで所有の漁船「○○」の登録を抹消していること,原判決第3,3( )オの本件過料事件の出廷カードにもその職業を「トンネル抗 夫」と記載していること,家族であるFからのBの稼働状況についての事情聴取内容(甲13中のもの)は,漁船抹消等の事実の裏付けもあり,これに作為がなされたとは到底いえないこと,5か月の大牟田での稼働が現実にされていたとみる資料はなく,漁業の着業準備期間等の状態にあったと評価するに足る のもの)は,漁船抹消等の事実の裏付けもあり,これに作為がなされたとは到底いえないこと,5か月の大牟田での稼働が現実にされていたとみる資料はなく,漁業の着業準備期間等の状態にあったと評価するに足る資料もないことなどに照らせば,Bについては,原判決第3,3( )イのとおり,平成7年ころからは漁業に従事している といえる状況にはなく,組合員資格の喪失が認められるというべきである。 これに反する控訴人の主張は,到底採用することができない。 ( )法定解散と認定手続等について ア控訴人は,水協法による漁協設立の趣旨や沿革に照らし,組合員資格が制限されるべきではなく,法定解散とされるには,手続上も所属組合による資格喪失の認定が必要である旨の主張をし,確かに,平成17年3月までの間,Bからの組合員資格喪失の届出はされておらず,また,Bは平成16年度までの組合員としての賦課金の負担をしてきたものである。 - 12 -イしかしながら,「組合は,組合員が20人未満になったとの事実が発生したときに解散の効果が生じる」(水協法68条4項)のであり,その組合員資格について同法18条1項1号は,「当該組合の地区内に住所を有すること」や「定款で定める漁業従事日数を超える漁民であること」を要件としており,これを充足しないこととなった組合員は,その資格を喪失し,したがって,そのために法定組合員数を欠くこととなったときは,法定解散の要件も充たすことになるものである。そして,資格喪失の場合には,「死亡又は解散及び除名」と同列のものとして,予告を必要とすることもなく,当然に脱退することとされている(原判決第2,1( )イ)の であるから,組合員の資格喪失により法定組合員数を欠くことになったときには,当然に法定解散の効果が生ずると解するほかはないというべきで 当然に脱退することとされている(原判決第2,1( )イ)の であるから,組合員の資格喪失により法定組合員数を欠くことになったときには,当然に法定解散の効果が生ずると解するほかはないというべきである。 控訴人は,当該届出をした組合員の意向や漁業従事状況の把握が不十分な場合もあり,事実発生のみをもって資格喪失と認めるべきではない旨の主張をするが,かかる規定が設けられたのは,団体としての漁協組合の設立の趣旨に沿わないことが当該組合員や組合からみても比較的明確な事実が発生した際には,その団体の存続を許さないとの趣旨のものであると解され(漁協自体が公共的性格を有しているところ,組合員資格を有しない非漁業者が含まれる漁協が存在する等の批判等があり,組合員資格の有無が純然たる内部問題とはいえないことにつき原判決第3,3( )イ(ア)), また,組合員住所の変更や漁業従事状況等は,当該組合においても容易に知り得ることも考慮すれば,上記取扱いが不都合なものとして排斥されるべきであるとはいえない。当該組合員からの脱退の届出がされないときには,法定組合員数の欠如が顕在化しないことがあるとしても,これをもって法定解散を否定すべき事情とまで評価することはできない。 ウ控訴人の主張は,組合員の漁業従事実態が形骸化した状況にあっても,- 13 -その所属団体の存続を当該組合に委ねるべきであるとの主張ともいえるのであって,採用することができない。 ( )退休願とBの組合員資格喪失手続の関係について ア控訴人は,Bが平成17年3月に控訴人に提出した「退休願」は,実質は「脱退届」であり,次期の事業年度末である平成18年3月31日の経過をもって組合員の資格を喪失する旨の主張をするほか,控訴人の内部手続上は,同月31日時点でもBが組合員資格を喪失しているもの 実質は「脱退届」であり,次期の事業年度末である平成18年3月31日の経過をもって組合員の資格を喪失する旨の主張をするほか,控訴人の内部手続上は,同月31日時点でもBが組合員資格を喪失しているものではないとしてるる主張し,手続的には,資格喪失者は,定款11条に従い,資格喪失の場合には,「直ちにその旨を組合に届け出なければならない」(甲7)のに,Bから提出されたのは「退休願」であって,その届出がされたのも前記平成7年からは10年近く経過してからであるから,資格喪失届出と同一であるとは直ちには断定し難いものがあったといわねばならない。 イしかしながら,Bが漁業従事者とはいえず,組合員資格喪失の状態にあったことは,( )アイのとおりであり,調査に当たったEからの電話確認 に対するBの応答(乙12)からは,組合脱退の手続について,格別の認識を有していなかったことが窺われるが,漁業に従事しなくなったこと,資格喪失の事実自体は,終始認めていたのであり,脱退の手続自体には,関心がなかったといえるものである。 しかして,予告脱退は,組合員が漁業に従事していても,当該組合員の意思で組合員の地位を失うことを認めているものであり,その場合には,受け入れる組合においても対応期間等を設けるのが相当として,「60日前」や「当該事業年度の終わり」の定め(定款14条1項)がされているというべきである。したがって,同定めは,もっぱら組合の対応を考慮して定められたもので,控訴人が当然に拘束されているということはできないのであって,早期の脱退の手続が可能であれば,控訴人が承認したとして脱退の手続をすることは妨げられていないというべきである。しかして,- 14 -その後,控訴人においては,業務報告書においても,3名の組合員が減少して19名となった旨の報告をし,通常総 したとして脱退の手続をすることは妨げられていないというべきである。しかして,- 14 -その後,控訴人においては,業務報告書においても,3名の組合員が減少して19名となった旨の報告をし,通常総会でも脱退承認がされた(原判決第2,1( ))のであるから,控訴人理事らにおいても,BやGらの組 合員資格は喪失し,正組合員数は19人となったと判断し,その手続をしたと解することもできるのであって,いずれにしても,平成17年3月末をもって控訴人組合員は,法定定員数を下回り,解散となったと認められるものである。 控訴人は,平成18年度末をもってBは退会することになる趣旨の主張をするが,Bからの賦課金徴収は平成16年度分までであることや,同人の退職については,出資金の払戻しが平成17年6月10日付けでされているものの(甲13),BやGについても同年3月31日付けで出資金未払金73万2000円があるとして振替伝票を作成して借方に計上し,未払金に振り替えたこと,同年6月5日の総会でも「脱退の承認」がされ,議事録上でも既に組合員数は,Bらを除いた19名として記載されたこと等を敢えて無視し,定款条項の一部のみを捉えて有利に主張するものであり,これを採用することはできない。 ( )その余の主張について ア控訴人は,被控訴人県の調査の手続が相当ではない旨の主張をし,同被控訴人から各漁協に対し,組合員資格に関する実態調査票(甲8中のもの)の配布がされ,これに基づき,組合員資格の実態の調査がされたこと,同調査票には控訴人主張の質問事項の記載がされていたことが認められる。 しかし,過去の実績が漁民資格の判断に最も有力な資料であることは間違いがなく,「主な漁業種類」の回答を求めているものの,記入要領では,「複数回答可」として「販売額」等も記入するよう求めて められる。 しかし,過去の実績が漁民資格の判断に最も有力な資料であることは間違いがなく,「主な漁業種類」の回答を求めているものの,記入要領では,「複数回答可」として「販売額」等も記入するよう求めているのであり,また,同調査票に疑問があれば,さらに調査することもあり得るところといえるから,これらの調査票の配布をもって被控訴人県が偏頗な調査をし- 15 -たと認めることはできない。 イそのほかの控訴人主張等を考慮しても,原判決の判断は相当であり,これを覆す事由があると認めることはできない。 上記のとおりであって,控訴人の主張を採用することはできず,その請求はいずれも理由がないと認められるから,本件控訴は失当である。 第4 結論 よって,本件各控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部裁判長裁判官牧弘二裁判官川久保政徳裁判官塚原聡

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