令和2(行コ)31 生活保護基準引下げ処分取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月30日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所
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判決文本文160,667 文字)

- 1 -主 文1 原判決を取り消す。 2 別紙1「処分一覧表」の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対してした各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 3 被控訴人国は、控訴人3、4及び6ないし12に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人国は、控訴人14、16及び17に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人国は、控訴人13に対し、1万円及びこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 控訴人13の被控訴人国に対する当審における拡張請求を棄却する。 7 訴訟費用は、第1、2審を通じて、被控訴人らの負担とする。 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 主文第1項ないし第4項と同旨2 被控訴人国は、控訴人13に対し、1万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(当審における附帯請求の拡張と解される部分を含む。)第2 事案の概要等(略語については、特に定めるもののほか、原判決の例による。また、原判決の「,」は「、」と表記する。以下同じ。)1 事案の概要⑴ 生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原審第1事件原告らは、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日厚生省告示第158号- 2 -(保護基準))における生活扶助の基準(生活扶助基準)を改定する厚生労働省告示(平成25年厚生労働省告示第174号(本件告示1)。 よる保護の基準(昭和38年4月1日厚生省告示第158号- 2 -(保護基準))における生活扶助の基準(生活扶助基準)を改定する厚生労働省告示(平成25年厚生労働省告示第174号(本件告示1)。同年8月1日から適用される。)により生活扶助基準が改定されたことに基づき、原判決別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第1事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分1)を受けた。 また、生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原審第2事件原告らは、本件告示1に引き続いて保護基準における生活扶助基準を改定する厚生労働省告示(平成26年厚生労働省告示第136号(本件告示2)。 同年4月1日から適用される。)により生活扶助基準が改定されたことに基づき、原判決別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第2事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分2)を受けた。 ⑵ 本件は、①原審第1事件原告らが、本件各処分1は、憲法25条の理念を受けた生活保護法3条、8条等に違反し、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであるから違法であるなどと主張して、本件各処分1の取消しを求め(原審第1事件・取消訴訟)、②原審第2事件原告らが、本件各処分2には本件各処分1と同様の違法事由があるなどと主張して、本件各処分2の取消しを求め(原審第2事件・取消訴訟)、さらに、③原審原告らが、本件各処分の根拠となった生活扶助基準の改定は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、被控訴人国に対し、それぞれ損害賠償金1万円及びこれに対する違法行為の日(生活扶助基準の改定日であり、原審第1事件原告らについては平 準の改定は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、被控訴人国に対し、それぞれ損害賠償金1万円及びこれに対する違法行為の日(生活扶助基準の改定日であり、原審第1事件原告らについては平成25年8月1日、原審第2事件原告らについては平成26年4月1日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を- 3 -求めた事案である。 ⑶ 原審は、原審原告らの請求をいずれも棄却したため、控訴人ら(原審原告らの一部)が、これを不服として控訴した。 なお、控訴人13(原審第2事件原告)は、控訴状によれば、当審において、被控訴人国に対する損害賠償請求についての附帯請求の起算日を、原審における平成26年4月1日から平成25年8月1日に変更しており、当審において附帯請求の拡張をしたものと解される。 2 関係法令の定め等関係法令の定め等は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決5頁13行目から16行目までを次のとおり改め、17行目の「エ」を「オ」と、24行目の「オ」を「カ」とそれぞれ改める。 「ウ 生活保護法は、9条において、保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行う旨規定し、10条において、保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとするが、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる旨規定する。 エ 生活保護法は、11条において、保護の種類を、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助の8種類とし、要保護者の必要に ることができる旨規定する。 エ 生活保護法は、11条において、保護の種類を、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助の8種類とし、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる旨規定し、12条において、生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(1号)及び移送(2号)の範囲内において行われる旨規定し、30条1項において、生活扶助は、原則として、被保護者の居宅において行う旨規定し、31条1項において、生活扶助は、原則として、金銭給付によって行う旨規定する。」- 4 -⑵ 原判決6頁19行目の「設けているが、」を「設けており、居住する市町村の級地に応じて適用されるが、」と改める。 3 前提事実前提事実は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原審原告1、3、7、10及び19に関する部分を除く。以下同じ。)。 ⑴ 原判決7頁10行目末尾の後に改行の上、次のとおり加え、11行目の「ア」を「イ」と、24行目の「イ」を「ウ」と、9頁6行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改める。 「ア 生活扶助基準(基準生活費)の改定について、生活保護法の施行後、マーケットバスケット方式、エンゲル方式、格差縮小方式が順次採用されてきたが、昭和59年以降は、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式が採用されてきた(なお、各種加算については、物価指数の伸び率を基本として改定されてきたものもある。)。 水準均衡方式による生活扶助基準の改定は、基本的に、標準世帯の生活扶助 調整を図る水準均衡方式が採用されてきた(なお、各種加算については、物価指数の伸び率を基本として改定されてきたものもある。)。 水準均衡方式による生活扶助基準の改定は、基本的に、標準世帯の生活扶助基準に改定率を乗じることによってされている。(甲全4の2、乙全7の2)」⑵ 原判決7頁11行目の「社会保障審議会の下に」の後に「、学識経験者による専門的かつ客観的な評価・検証を行うため、常設部会として」を加え、19行目の「検証結果」を「上記検証及び評価(以下『平成25年検証』ともいう。)の結果等」と改める。 ⑶ 原判決8頁8行目の「家計調査」の後に「(総務省統計局が毎月行っている、一定の統計上の抽出方法に基づき全国の世帯を代表するよう無作為に選定された約9000世帯を対象とした家計の収入・支出、貯蓄・負債等の調査であり、統計法2条6項にいう基幹統計調査の1つである。)」- 5 -を、16行目の「以下、」の後に「厚生労働大臣が」を、17行目の「品目による」の後に「などの修正を行った独自の」をそれぞれ加える。 ⑷ 原判決8頁26行目の冒頭に「厚生労働大臣は、」を加え、9頁2行目から3行目にかけての「となった」を「になるとした(以下、この-4. 78%の下落率ないし下落率4.78%を『本件下落率』ともいう。)」と改め、4行目の「乙全16、」の後に「18、」を、5行目の「28、」の後に「81、82、」をそれぞれ加える。 ⑸ 原判決9頁7行目の「ゆがみ調整」の後に「。ただし、ゆがみ調整による増減額の幅は、基準部会の検証結果の2分の1とすることとした(以下『2分の1処理』ともいう。)。なお、2分の1処理が後記激変緩和措置として実施されたものか否かについては、争いがある。」を加える。 ⑹ 原判決9頁12行目から13行目にかけて ることとした(以下『2分の1処理』ともいう。)。なお、2分の1処理が後記激変緩和措置として実施されたものか否かについては、争いがある。」を加える。 ⑹ 原判決9頁12行目から13行目にかけての「調整」から14行目の「こととした。」までを「調整することとした。」と改める。 ⑺ 原判決9頁16行目の「改定」の後に「(以下、これらの改定を併せて『本件改定』ともいう。)」を加える。 ⑻ 原判決10頁3行目及び11行目の各「本件処分2」をいずれも「本件各処分2」と、同行目の「本件処分1」を「本件各処分1」とそれぞれ改める。 ⑼ 原判決10頁22行目末尾の後に改行の上、次のとおり加える。 「⑷ 生活保護は、憲法25条の理念に基づき、被控訴人国が、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行う制度である(生活保護法1条)が、生活保護基準は、個人住民税の非課税基準、国民健康保険料等の減免基準、賃金、社会保障給付水準等の様々な制度に、制度上ないし事実上連動しており、その引下げは、生活保護受給世帯だけではなく、これを超えて、広く国民全体の生活水準等にも影響を及ぼすものである(例えば、生活保護基準が引き下- 6 -げられる状況の下では、事実上最低賃金の引上げもされず、勤労者全体の給与水準も引き上げられないまま推移してしまうことなどが考えられる。)。(甲全1、64ないし67、392)。」第3 主要な争点及びこれに関する当事者の主張の要旨主要な争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は、後記第4及び第5のとおり各当事者の補充主張の要旨(原審の主張と同旨のものを含む。)を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3及び第4に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決10頁2 5のとおり各当事者の補充主張の要旨(原審の主張と同旨のものを含む。)を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3及び第4に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決10頁24行目及び11頁5行目の各「3条及び8条」をいずれも「3条、8条2項、9条等」と改める。 第4 控訴人らの補充主張の要旨1 争点1(本件各告示による生活扶助基準の改定に生活保護法3条、8条2項、9条等に違反した違法があるか)について⑴ 司法審査の判断枠組みア 本件各告示は、法律に基づく処分の要件を定めるものであるから、本件改定が適法となるためには、本件改定が、厚生労働大臣に対して保護基準の制定権限を委任している生活保護法に適合するものでなければならず(行政手続法2条8号イ)、同法による委任の範囲を超えれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として、違法となる(行政事件訴訟法30条)。 生活保護法8条1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、」と定め、保護の範囲を「需要」によって画することを明確にしており、特に生活扶助については、同法12条1号が「衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」と定めていることに照らしても、同法8条1項は、厚生労働大臣に対し、要保護者の需要を測定する基準を定める権限を授権するものにすぎない。 - 7 -また、同条2項は、厚生労働大臣に対し、上記基準につき、「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮し」(以下「法定事項の考慮」という。)、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」を設定すること(以下「最低限度の需要への合致」という。)を義務付けており、同法9条も、「保護は、要保護者の年齢別、 (以下「法定事項の考慮」という。)、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」を設定すること(以下「最低限度の需要への合致」という。)を義務付けており、同法9条も、「保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。」と定めて、厚生労働大臣の裁量権の行使が需要の存否に限定される趣旨を明らかにしている。 したがって、生活保護基準の改定の適法性要件は、要保護者の最低限度の生活の需要への合致であり、本件改定が、法定事項(国の財政事情等はこれに含まれない。)の考慮をした要保護者の最低限度の生活の需要に基づいていない場合には、直ちに同法3条、8条2項、9条等に違反することになる。 生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき制定されたものであって(1条)、憲法25条1項が保障する生存権の内容を更に具体化することによって厚生労働大臣の裁量権を限定しているものであり、本件改定は、上記生存権そのものの問題でもある。 イ 要保護者の最低限度の生活の需要への合致に関する司法審査は、①生活保護基準を改定することの適法性の場面と、②激変緩和措置の要否を含めた改定の具体的な方法等の適法性の場面とを、明確に区別して行われるべきものである。 そして、上記①の場面においては、司法審査の対象となる厚生労働大臣の判断は、本件改定の時点において生活保護利用世帯には引下げに見合う需要が認められないとした判断(引下げに見合う需要減少に係る判断)と、本件改定後の生活扶助基準の内容が要保護者の健康で文化的な- 8 -生活水準を維持するに足りるものであるとした判断(本件改定後の水準維持に係る判断)に限定され、前者の判断が最も肝要であり、これらの判断に、最低限度 基準の内容が要保護者の健康で文化的な- 8 -生活水準を維持するに足りるものであるとした判断(本件改定後の水準維持に係る判断)に限定され、前者の判断が最も肝要であり、これらの判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合は、その判断は違法なものとなる。このような判断過程審査は、裁判所が、行政機関(被控訴人ら)に対して法規範を当該事案において具体化し適用する判断過程の説明を求め、控訴人らが疑問を提示し反論する点につき、当該判断過程が一応の説得力を有するか否かを審査する(考慮すべき事項を考慮していない場合や、考慮すべきでない事項を考慮した場合、総合考慮において考慮要素の重みづけの評価を誤った場合などは、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用となる。)ものであるから、上記判断過程の十分な説明がされなければ、当該行政作用は当然に違法となる(生活保護基準の改定が基準部会等による審議検討を経て行われていない場合は、厚生労働大臣の判断過程が明らかでなく、後記のとおり、平成25年検証を軽視又は無視するかたちで行われた、2分の1処理とデフレ調整の各判断過程は、いずれも極めて不透明であり、「取扱厳重注意」文書(甲全223の3)や直後に公表された資料や国会答弁等を除き、完全にブラックボックスとなっている。)。また、厚生労働大臣の上記判断は、高度の専門技術的な考察に基づくものでなければならないから、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきである。なお、上記①の場面において法定事項の考慮や最低限度の需要への合致という生活保護法3条、8条2項に適合することを満たしている限りにおいては、国の財政事情等が考慮事項と について審査されるべきである。なお、上記①の場面において法定事項の考慮や最低限度の需要への合致という生活保護法3条、8条2項に適合することを満たしている限りにおいては、国の財政事情等が考慮事項となること自体は、やむを得ない。 次に、上記②の場面においては、司法審査の対象となる厚生労働大臣の判断は、(ⅰ)本件改定に際して激変緩和等の措置を採るか否かの方針- 9 -に関するものと、(ⅱ)これを採る場合において現に選択した措置の相当性に関するものがあって、被保護者の期待的利益の喪失によりその生活に看過し難い影響を及ぼす場合には違法となるもので、上記①の場面と同じく、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきである。 ⑵ ゆがみ調整の違法性について以下のとおり、ゆがみ調整における2分の1処理は、①手続面において、基準部会に諮ることなく厚生労働大臣の独自の判断で行われた点等で、過誤、欠落がある。また、②内容面においては、そもそも2分の1処理の判断過程に関する被控訴人らの主張自体が、原審から当審を通じて合理的理由なく変遷していることから、信用性及び説得力を全く欠いているものであるし、被控訴人らの主張(説明)するような子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置にはなっておらず、生活保護受給世帯の53.4%を占める高齢単身世帯の生活扶助基準の増額幅を2分の1にするという不利益を与えることにより、全体として年間91億2100万円もの追加的な財政削減効果を取得したなどの点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠くものであり、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落がある。したがって、ゆがみ調整における2分の1処理は、裁 の点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠くものであり、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落がある。したがって、ゆがみ調整における2分の1処理は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反するものである。 ア 手続面2分の1処理は、生活扶助基準の改定について、各種の統計や専門家の作成した報告書等に基づき生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討がされてきたという過去の経緯を無視し、基準部会に諮らないまま行われたものであるから、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落がある。 - 10 -仮にそうでないとしても、厚生労働大臣は、基準部会等の専門家(専門家により構成される会議体)の諮問結果と異なる判断をする場合には、そのような判断をすることについて十分な根拠が求められるというべきであるが、そのような根拠は存在しないから、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落がある。 イ 内容面 判断過程に関する被控訴人らの説明が変遷していること2分の1処理の判断過程に関する被控訴人らの主張は、原審から当審を通じて、合理的理由なく、しかも、従前の内容と矛盾ないし抵触して同一性を欠くほどに、変遷している。 2分の1処理を実施した厚生労働大臣の当時の判断過程の内容が事後的に変わることは、あり得ないから、上記のような変遷があることからして、被控訴人らの主張は、それ自体がそもそも信用性及び説得力を全く欠くものでる。 被控訴人らの説明(論証過程)に合理的な根拠がないことa そもそも激変緩和措置といえないこと2分の1処理は、生活扶助基準額が減額と 力を全く欠くものでる。 被控訴人らの説明(論証過程)に合理的な根拠がないことa そもそも激変緩和措置といえないこと2分の1処理は、生活扶助基準額が減額となる年齢階層別、世帯人員別及び級地別の各指数の減額幅を2分の1にするだけでなく、増額となる各指数も同様に2分の1にするものであるから、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することを目的とした激変緩和措置には当たらない。特に、2分の1処理の結果、生活保護受給世帯の53.4%以上を占める60歳以上の単身世帯においては、生活扶助基準額の増額幅が2分の1に減らされるばかりか、ゆがみ調整により生活扶助基準額が減らされた世帯も多数存在することに照らすと、2分の1処理は、大半の生活保護受給世帯にとって生活扶助基準額の減額をもたらすものであり、本来の意味における激変- 11 -緩和措置であるとは、到底いえないものである。 また、平成24年12月に厚生労働省社会・援護局保護課が内閣官房副長官に示した「取扱厳重注意」文書(甲全223の3)では、激変緩和措置として、①減額幅の上限を10パーセントにする措置と、②減額の反映を平成25年から3年にわたって実施することとする措置の2つを記載しているだけで、2分の1処理については記載していない。このことは、上記保護課が平成25年3月11日に配布した会議資料(乙全16)でも、同様である。これらの文書や資料からすれば、厚生労働大臣は、2分の1処理を、激変緩和措置として位置付けていなかったことが明らかである。 b 子どものいる世帯への激変緩和措置とはならないこと前記aの「取扱厳重注意」文書の5枚目の左側の表と右側の表の数値を基礎としても、2分の1処理による子どものいる世帯 。 b 子どものいる世帯への激変緩和措置とはならないこと前記aの「取扱厳重注意」文書の5枚目の左側の表と右側の表の数値を基礎としても、2分の1処理による子どものいる世帯に対する激変緩和の効果は、一切ないか又は極めて限定的なものである。 また、子どものいる世帯の3割ないし4割の世帯類型においては、減額幅の上限を10%とした激変緩和措置の影響もあって、2分の1処理があっても、生活扶助基準額の減額ないし不変の効果を受けている(甲全306、307、345、346、353、354)。 しかも、2分の1処理は、子ども全体の半数程度(49.63%)を占める12歳ないし19歳の年齢階層の67.1%において、激変緩和の効果が生じなかった(甲全356)から、子ども自身に及ぼす影響の観点からみても、子どものいる世帯に対する激変緩和措置と評価することはできない。 したがって、2分の1処理は、子どものいる世帯の負担を軽減することを目的とした激変緩和措置とは到底いえないものである。 c 統計上の限界や更なる検証の予定は根拠にならないこと- 12 -被控訴人らは、2分の1処理の判断過程として、子どものいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐ観点からの激変緩和措置であること(これに理由がないことは、前記bのとおりである。)のほかに、平成25年検証には統計上の限界があったことや、基準部会による定期的な検証において更なる検証・評価が予定されていたことを主張する。 しかし、被控訴人らは、原審の平成27年4月17日付け準備書面⑴において、平成25年検証について、「基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹 控訴人らは、原審の平成27年4月17日付け準備書面⑴において、平成25年検証について、「基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」(14頁)などと主張し、むしろ積極的な評価をしていたもので、統計上の限界や更なる評価、検証の予定等には一切論及していなかったのである。そうすると、被控訴人らの上記主張は、説明に窮したための後付けの弁解にすぎない上、2分の1処理は、生活保護法8条2項が規定する要保護者の最低限度の生活の需要の測定に基づくものではないから、平成25年検証の結果を、2分の1に限定して反映させる具体的な根拠は明らかでないといわざるを得ない。特に、平成25年検証の結果に照らせば、生活扶助基準額が増額となるべき世帯の増額幅を2分の1とするには、それに見合う需要の減少(需要がないこと)の説明を要するというべきであるが、被控訴人らは、そのような需要の減少について、何ら主張していないから、2分の1処理をした後の保護基準が、上記最低限度の生活の需要に合致しているとはいえない。 d 生活保護受給者世帯間の公平は根拠にならないこと被控訴人らは、2分の1処理を採用した判断過程として、平成2- 13 -5年検証の結果の反映による影響を受ける生活保護受給世帯間の公平の観点を挙げている。 しかし、そもそも、ゆがみ調整は、平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、一般低所得世帯の消費実態を展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るものであるから、増額か減額かを問わず一律に2分の1とするの づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、一般低所得世帯の消費実態を展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るものであるから、増額か減額かを問わず一律に2分の1とするのではなく、減額についてのみ2分の1とし、増額については上記結果のとおり反映させるのが、生活保護受給世帯間の公平や生活扶助基準の展開部分の適正化がより一層実現されることになるはずである。増額か減額かを問わず一律に2分の1とすることは、一般低所得世帯の消費実態と比較して、生活扶助基準の展開において、より高い水準にある展開部分の減額幅を半分に抑えるかわりに、より低い水準にある展開部分の改善(増額)を半分にとどめるということであるから、生活保護受給世帯間の公平に反することになり、ゆがみ調整の上記趣旨とも相容れないものである。 e 平成25年検証の本質的な趣旨も根拠にならないこと被控訴人らは、増額幅か減額幅かによって反映の程度を変えるとすれば、生活扶助基準の水準にも影響を及ぼしかねないから、増額又は減額のいずれかに偏って反映させることは、生活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになるなどと主張する。 しかし、平成25年検証は、生活扶助基準の水準に影響を及ぼさないことを本質的な趣旨とするものではない。平成25年検証は、生活扶助基準の相対的な較差の検証・評価を行ったものではあるものの、サンプル世帯と実際の生活保護受給世帯との世帯構成及び地域分布の違いによって生活扶助基準の水準にも影響を及ぼすことは、- 14 -元々想定されていたのである。したがって、被控訴人らの上記主張は、後付けの説明で、平成25年検証の本質的な趣旨と異なるものであり、2分の1処理を何ら正当化するも 影響を及ぼすことは、- 14 -元々想定されていたのである。したがって、被控訴人らの上記主張は、後付けの説明で、平成25年検証の本質的な趣旨と異なるものであり、2分の1処理を何ら正当化するものではない。 小括2分の1処理は、激変緩和措置とはいえないから、改定の適法要件を満たさなければならず、また、平成25年検証の結果につき、基準部会等による追加的・専門的な検討を経ることなく行われたものであるから、平成25年検証との整合性やその基礎資料との合理的関連性が問われなければならない。 しかし、被控訴人らは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や平成25年検証との整合性を主張することなく、生活保護法8条2項が求める最低限度の生活の需要と関係のない事情を主張するにすぎない上、これらの事情は、いずれも2分の1処理を正当化できるものではない。 結局、2分の1処理は、最低限度の生活の需要と合致しておらず、何らの合理的な根拠もなしに、生活保護世帯類型間の不公平を是正するというゆがみ調整の趣旨を半減させるものであるし、生活保護受給世帯の過半数を占める高齢世帯について増額すべきであるという、ゆがみ調整の重要な結果について、その増額幅を半減させるという重大な不利益を与えている点において、その判断及び手続の過程における過誤、欠落があるから、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反するものである。 ⑶ デフレ調整の違法性について以下のとおり、デフレ調整は、①手続面において、物価を指標とする過去に採られたことがない手法であったにもかかわらず、基準部会等の専門家による検討、検証を全く経ていない点で、②内容面において、-4.7- 15 -8%(本件下落率) において、物価を指標とする過去に採られたことがない手法であったにもかかわらず、基準部会等の専門家による検討、検証を全く経ていない点で、②内容面において、-4.7- 15 -8%(本件下落率)という未曽有の改定率を全国・全世帯の要保護者に一律に適用し、法定事項の考慮をしていない点、生活扶助相当CPIがデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の程度を適切に測定する指標には全くなっておらず、始期を平成20年としたことにも全く合理的理由がないなど、要保護者の最低限度の生活の需要(を満たす生計費)の変動を正しく測定していない点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠くものであり、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落があるから、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反するものである。 ア 手続面等生活扶助基準の改定は、国会の審議において保護基準の設定という重要事項が保護課の数名の官僚の作業に委ねられることへの危惧が繰り返し示されていたこと(甲全34・9頁、甲全35・5頁)など、生活保護法の制定に際しての審議の経過から、専門家による審議会等の慎重な検討に基づいて保護基準を決定することが前提とされ、実際にも、本件改定までは、専門家による検討を踏まえて行うことが通例であり、水準均衡方式も、中央社会福祉審議会の昭和58年意見具申に基づき採用され、同方式の採用以降、専門家による専門技術的な検証が繰り返されてきた。 また、水準均衡方式は、一般国民の消費水準との比較で生活扶助基準(の本体部分)を設定する方式であり、政府経済見通しにおける個人消費の伸びに準拠して翌年度の改定率が定められてきたものであるところ、物価は、消費に大きな影響を有す 民の消費水準との比較で生活扶助基準(の本体部分)を設定する方式であり、政府経済見通しにおける個人消費の伸びに準拠して翌年度の改定率が定められてきたものであるところ、物価は、消費に大きな影響を有するものの、上記消費水準を示すものではないため、生活扶助基準の改定にあたって物価を直接考慮することは、水準均衡方式と矛盾するものであり、むしろ、平成16年報告書において、これに先立つ平成15年中間取りまとめにおいて記載されていた「- 16 -消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」という文言が削除されるなど、専門家からは、水準均衡方式において物価を考慮することにつき否定的、消極的な見解が一貫して示され、また、平成25年報告書においても、その作成過程で、複数の委員から、全国一律の物価を用いることは生活保護法8条2項に基づく法定事項の考慮がされない結果となる旨指摘され、最終的に、政府が「他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合」には「それらの根拠についても明確に示されたい」という厳しい注文が付けられるなどしていたものである(なお、各種加算については、特別の需要に基づくものであるから、いったんその需要を満たすために必要な金額が定まると、物価の伸び率に基づいて改定することが許容され得るものであり、本体部分と各種加算とは、その改定の原理が全く異なるものであるから、各種加算について物価が考慮されていたことを正当化の理由とする被控訴人らの説明は誤りである。)。 物価指数を用いた生活扶助基準の改定は、過去に採られたことがなく、従前からの手法の極めて重大な変更であり、上記のとおりの専門家の否定的、消極的な見解からしても、物価を計測するためにどのような指標を用いて、どのように考慮すべきか等の諸点 過去に採られたことがなく、従前からの手法の極めて重大な変更であり、上記のとおりの専門家の否定的、消極的な見解からしても、物価を計測するためにどのような指標を用いて、どのように考慮すべきか等の諸点について、当然ながら、基準部会等の専門家による慎重な検討、検証を経るべきであった。 それにもかかわらず、デフレ調整は、上記のような専門家による検討、検証を全く経ることなしに行われたものであるし、合理的説明を求めている平成25年報告書に反して、その根拠を明確に示すことなしに物価指数を用いるなど、専門家の意見を無視して実施されたものであるから、昭和58年意見具申、平成16年報告書、平成25年報告書等で示されていた専門的知見との整合性を明らかに欠いている。 イ 内容面- 17 - 全国・全世帯に一律で同じ改定率を適用したことデフレ調整は、-4.78%(本件下落率)という改定率を全国の全ての生活保護受給世帯に、一律に適用している。 しかし、物価の変動による可処分所得の実質的変動は、生計費の変動に基づくものであり、生計費の変動は、消費構造が異なる世帯類型ごとに全く異なっているし、物価の動向は、所在地域で全く異なるものである(例えば、平成20年から平成23年までの期間における総務省CPIの下落率は、全国では2.35%であるが、沖縄県では0. 5%にすぎない。甲全221)。 したがって、これらの相違を全く無視したデフレ調整は、生活保護の基準について、要保護者の年齢別、世帯構成別、地域別その他の属性に応じた必要性に裏付けられた最低限度の生活の需要の算定を求める生活保護法8条2項に真っ向から違反するものであり、かつ、考慮すべき事項を考慮していないものとして、違法であることは明らかであ の属性に応じた必要性に裏付けられた最低限度の生活の需要の算定を求める生活保護法8条2項に真っ向から違反するものであり、かつ、考慮すべき事項を考慮していないものとして、違法であることは明らかである。 目的デフレ調整は、物価動向を勘案してデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分だけ生活扶助基準を引き下げることを目的とするものであり、これにより、結果的に、一般国民の生活水準との間の不均衡の是正が図られることはあり得るとしても、そのこと自体が直接の目的ではない(そもそも、物価は、そのままで消費水準を示すものではないから、物価によって一般国民の生活水準との間の不均衡の程度を測定することはできない。)。 上記目的に関する被控訴人らの主張は、原審から当審を通じて変遷しており、当審においては、「実質的な購買力(可処分所得)を維持することは、生活扶助基準の改定に当たり必然的に求められるもので- 18 -はない」、「デフレ調整の改定率に相当する『生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加』が現に認定できるかどうかについては、本件保護基準改定の適法性を左右しない」などと、従前の主張と完全に矛盾する内容の主張をしているから、この点のみからしても、被控訴人らの主張する論証過程は、矛盾し、破綻を来しており、説得力を完全に欠いていることが明らかである。 始期(物価変動率の算定期間の始期)を平成20年としたことa 平成20年は物価が高騰したことデフレ調整の始期は平成20年とされているが、同年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇するなど、特別な事情で一時的に物価が高騰した年であるから、このような特異な の始期は平成20年とされているが、同年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇するなど、特別な事情で一時的に物価が高騰した年であるから、このような特異な年を始期とすれば、その後の物価変動率は、大きな下落率を示すことになる。 b 平成19年から平成20年までの物価上昇が反映されていないこと総務省CPIによれば、平成19年から平成20年にかけて、1. 4%の物価上昇が生じていた。 被控訴人らは、デフレ調整の始期を平成20年とした理由について、平成19年に設置された生活扶助基準に関する検討会(検討会)が実施した評価・検証(以下「平成19年検証」という。)の結果において生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いことが示されつつ、平成20年時点で、上記結果に基づく生活扶助基準の減額改定が行われず、平成20年以降のデフレによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したためであるなどと主張する。しかし、被控訴人らの主張によれば、平成19年から平成20年にかけての上記物価上昇は、生活扶助基準に反- 19 -映されていないことになる(上記物価上昇は、同年12月の消費者物価指数が確定して初めて算出される数値であるから、平成19年度の生活扶助基準を据え置くという判断に際して考慮されていなかったことは、自明である。)。 したがって、デフレ調整の始期を平成19年とせず、また、同年から平成20年にかけての物価上昇を考慮せずに、平成20年以降の物価下落の影響のみを考慮して生活扶助基準を引き下げることは、理論的に破綻しており、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加(要保護者の最低限度の生活の需要の減少)の程度を測定できていない 降の物価下落の影響のみを考慮して生活扶助基準を引き下げることは、理論的に破綻しており、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加(要保護者の最低限度の生活の需要の減少)の程度を測定できていないから、デフレ調整の始期を平成20年とした厚生労働大臣の判断には、考慮すべき事項を考慮していない違法がある。 生活扶助相当CPIを用いたことa 家計調査のウエイトを用いたことデフレ調整の目的(前記)からすれば、物価指数を用いることの問題をおくとしても、デフレ調整において用いられる物価指数は、デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を適切に測定できるものでなければならない。 しかし、厚生労働省は、生活扶助相当CPIの算出に当たり、生活扶助による支出が想定されない品目を除外しただけで、平成22年基準の総務省CPIのウエイト(これは、同年の家計調査における一般世帯の消費支出に基づき作成されたものである。以下、総務省CPIのウエイトを「総務省CPIウエイト」ともいう。)をそのまま用いているところ、生活保護受給世帯と一般世帯とで、消費支出の構成(消費構造)が大きく異なることは、周知の事実であり、実際にも、平成22年の社会保障生計調査と家計調査(いずれも2人以上世帯)を比べると、生活保護受給世帯は、一般世帯に比べ、- 20 -「食料」「住居」「光熱・水道」「家具・家事用品」「被服及び履物」の支出割合が高く、「保健医療」「交通・通信」「教育」「教養娯楽」「その他の消費支出」又は「諸雑費」の支出割合が低いという特徴がある。特に、「教養娯楽」は、一般世帯が11.5%である一方で、生活保護受給世帯は6.4%で、2倍近い差があり(生活保護受給世帯の中で75.8%を占めている単身世帯でみ の支出割合が低いという特徴がある。特に、「教養娯楽」は、一般世帯が11.5%である一方で、生活保護受給世帯は6.4%で、2倍近い差があり(生活保護受給世帯の中で75.8%を占めている単身世帯でみると、5.6%であり、その差は更に大きくなる。)、教養娯楽に含まれる教養娯楽用耐久財のテレビについて、生活保護受給世帯が購入する割合が一般世帯に比べて極めて小さいことは、経験則上十分に推測されることであるし、社会保障生計調査及び家計調査によれば、例えば平成22年について、生活保護受給世帯の「PC・AV機器」に対する支出額は1月当たりわずか737円で、総支出額に占める割合は0.4%にすぎず、一般世帯の支出額(4043円)及び支出割合(1.4%)は、生活保護受給世帯のそれぞれ5.5倍及び3.5倍になっていることが、明らかにされている。 この点について、被控訴人らは、生活保護受給世帯においてもテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及している旨主張するが、物価変動が家計に影響を与えるのは、その財をどれだけ保有しているか(普及率)ではなく、どれだけ購入するか(消費支出)によるのであるから、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財が一般世帯と同様に普及しているからといって、一般世帯の消費構造に基づくウエイトを用いることが正当化されるものではない。 このように、生活保護受給世帯と一般世帯の各消費構造は、大きく異なっているのであるから、一般世帯の消費支出に基づき作成されている家計支出のウエイトをそのまま用いている生活扶助相当C- 21 -PIは、そもそも、デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の有無及び程度を適切に測定し得るものではないから、これを用いることを正当化することはできない。 生活扶助相当C- 21 -PIは、そもそも、デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の有無及び程度を適切に測定し得るものではないから、これを用いることを正当化することはできない。しかも、厚生労働省自身が実施している社会保障生計調査のデータや家計調査の収入階級別データを利用すれば、生活保護受給世帯に4.78%もの可処分所得の実質的増加があったとすることが実態に合わないことは、容易に検証することができたのである。 したがって、デフレ調整は、この点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くものというほかない。 b 指数品目の一部除外により教養娯楽費のウエイトが増幅されたこと厚生労働大臣が、前記aのとおり、生活扶助相当CPIの算出に当たり、平成22年基準の総務省CPIウエイトをそのまま用いたことにより、生活保護受給世帯の消費構造から乖離することとなったものであるが、さらに、総務省CPIの指数品目から一部を除外したため、生活扶助相当CPIの対象となる指数品目のウエイトの合計が、総務省CPIの1万から、6189(平成20年)又は6393(平成23年)に減少し、これにより、生活扶助相当CPIの対象となる指数品目のウエイトの比率が、総務省CPIに比べて、約1.62倍又は約1.56倍に一律増幅されることになった。その結果、「教養娯楽」でみると、総務省CPIウエイトの比率は11.45%であったのに、生活扶助相当CPIにおいては18.55%又は17.86%と大きく増幅され、これは、前記aのとおりの社会保障生計調査における生活保護受給世帯の「教養娯楽」の支出割合(2人以上世帯6.4%、単身世帯5.6%)の、2.8倍又は3.3倍となっている。このように、生活扶助相当C これは、前記aのとおりの社会保障生計調査における生活保護受給世帯の「教養娯楽」の支出割合(2人以上世帯6.4%、単身世帯5.6%)の、2.8倍又は3.3倍となっている。このように、生活扶助相当CPIのウ- 22 -エイトは、「教養娯楽」、その中でも特に物価下落率の大きいテレビ等の「教養娯楽用耐久財」のウエイトが一般世帯以上に増幅され、その結果、生活扶助相当CPIの下落率が大きく増加することになった。このことは、生活扶助相当CPIの算出に当たり、テレビ等の教養娯楽用耐久財について、生活保護受給世帯が一般世帯よりも教養娯楽用耐久財に多くの割合を支出すると想定することを意味するが、統計等の客観的な数値である社会保障生計調査の結果に反するし、そもそも一般常識にさえ反するものである。 したがって、生活扶助相当CPIは、この点において、要保護者の最低限度の生活の需要を正しく測定できないという重大な欠陥があるといわざるを得ず、統計等の客観的な数値である社会保障生計調査との合理的関連性を欠いている。 c 指数方式厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率を算出するに当たり、平成20年と平成23年のいずれについても、平成22年基準の総務省CPIウエイト及び価格指数を用いている。これに対し、総務省CPIと同じ計算方法により計算するとすれば、平成20年の生活扶助相当CPIは平成17年基準のウエイト及び価格指数を用いて計算し、平成23年の生活扶助相当CPIは平成22年基準のウエイト及び価格指数を用いて計算し、両者を平成22年で接続して上記期間における変化率を算出することになる。 上記期間における総務省CPIの変化率は、-2.35%であるが、厚生労 のウエイト及び価格指数を用いて計算し、両者を平成22年で接続して上記期間における変化率を算出することになる。 上記期間における総務省CPIの変化率は、-2.35%であるが、厚生労働大臣の上記計算方法にならい、平成22年基準のウエイト及び価格指数を用いて計算すると、-3.83%となり(甲全149の38頁表11の「系列名C」)、1.5%程度下落率が大- 23 -きくなる(それでも、本件下落率より小さい。)。また、上記のような計算方法の相違の結果、平成20年から平成22年までの期間における物価変動をみると、総務省CPIの計算方法によれば1. 77%であるのに、厚生労働大臣の上記計算方法によれば4.29%となり、2.4倍以上も増大している。このような結果となるのは、厚生労働大臣の上記計算方法が平成22年基準のウエイトを用いていることから、平成22年の家計支出が大きい品目ほど、平成20年の指数に影響を及ぼすという仕組みになっているためである。 平成20年から平成23年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率は-4.78%(本件下落率)であるのに、上記期間における総務省CPIの変化率は-2.35%(仮に厚生労働大臣の上記計算方法によっても、-3.83%)であり、生活保護受給世帯のデフレによる可処分所得の実質的増加分を測定するはずの生活扶助相当CPIの下落率が、一般世帯のそれを表す総務省CPIの下落率よりも著しく大きなものとなっている。これによれば、物価変動による可処分所得の実質的変動は生計費の変動を通じてもたらされるものであるから、デフレによる生計費の減少の程度が、生活保護受給世帯の方が一般世帯よりも大きいということになる。しかし、収入の少ない生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分が、より収入の多 されるものであるから、デフレによる生計費の減少の程度が、生活保護受給世帯の方が一般世帯よりも大きいということになる。しかし、収入の少ない生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分が、より収入の多い一般世帯のそれよりも大きくなることは、通常あり得ないことであるから、上記のような結果は、統計等との客観的な数値等との合理的関連性がなく、専門的知見との整合性を全く欠いているものである。 総務省CPIは、ラスパイレス式によって作成されており、国際的にも同様である。これによれば、平成20年の物価指数は、平成17年基準のウエイト及び価格指数を用いて計算されることになる- 24 -が、厚生労働大臣の上記計算方法は、平成20年の生活扶助相当CPIを平成22年基準のウエイト及び価格指数を用いている点で特異であり、総務省CPIのデータを用いることと整合性がとれるものではない。 被控訴人らは、生活扶助相当CPIについて、ILOマニュアルにも記載されているロウ指数であり、国際的な基準に沿う妥当なものである旨主張する。しかし、平成20年の生活扶助相当CPIにおいては、「品目」のレベルで計算された項目と、「類」のレベルで計算された項目が混在している上、複数の「品目」から成る「類」の数値は、当該「品目」の合計(又は平均)に必ず一致していなければならないにもかかわらず、例えば、「食パン」「あんパン」及び「カレーパン」の3品目から成る「パン」の類のように、品目のレベルで計算した結果と類のレベルで計算した結果とが一致していないものがみられる。このような不一致の原因は、品目のレベルにおいては、平成22年基準のウエイトのみが用いられている一方で、類のレベルにおいては、平成17年基準のウエイトと平成22年基準のウエイトが併用されている る。このような不一致の原因は、品目のレベルにおいては、平成22年基準のウエイトのみが用いられている一方で、類のレベルにおいては、平成17年基準のウエイトと平成22年基準のウエイトが併用されている(すなわち、平成17年基準のウエイトで加重平均された価格指数に、平成22年基準のウエイトを乗じている。)ためである。ロウ指数は、固定バスケット型指数の一般型であり、品目や類といった指数を構成する全ての項目のウエイト参照時点が特定の一時点に固定されて同一であることが、最も基本的かつ重要な性質であるから、上記のように項目によってウエイト参照時点が異なっている平成20年の生活扶助相当CPIは、明らかにロウ指数ではなく、ロウ指数の特殊なケースであるパーシェ指数にも相当しないものであり(結果としてパーシェ指数と等価になる指数でもない。)、そうである以上、平成20年から平成2- 25 -3年までの期間の全体でみても同じことであり、生活扶助相当CPIは、理論的学術的な裏付けのない、厚生労働省が完全に独自に算出した指数で、専門的知見との整合性を全く欠いているものである。 また、厚生労働省による上記計算方法は、平成20年の生活扶助相当CPIを、平成22年基準のウエイト及び価格指数を用いて計算しているので、その限りで、平成20年から平成22年までの期間をパーシェ指数と同様の計算方式により計算していることになる。 しかし、パーシェ指数は下方バイアスがあり、特に物価が持続的に下落し、価格及び数量が大幅かつ逆方向に変化し続けるIT関連財のような財が存在する場合には、下落率が大きくなるという特徴がある。そして、この時期には、デジタル家電の品質調整が強力に実施されたため、物価指数の下落について、IT及び家電製品の価格指数の下落が大きな影響を与えてい る場合には、下落率が大きくなるという特徴がある。そして、この時期には、デジタル家電の品質調整が強力に実施されたため、物価指数の下落について、IT及び家電製品の価格指数の下落が大きな影響を与えていたが、特にテレビ、ビデオレコーダー、パソコン、カメラは、平成20年から平成23年にかけて毎年30%前後も価格指数が下落していたため、その計算方法自体が大きな下落率を示す要因となっている。生活扶助相当CPIが上記のとおりパーシェ指数の下方バイアスの性質を有することは、生活保護受給世帯の生計費の変動を超えて過大にデフレの効果を測定することになるから、生活扶助基準の改定に当たり生活扶助相当CPIを用いることは、許されないというべきである。 d 平成22年基準のウエイトを用いたこと平成20年から平成22年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率は、-4.29%であるが、この変化率に対する寄与度(ウエイトを加味した特定の指数品目の価格の変動の、物価全体の変動に対する影響の度合いを示す指標であり、当該指数品目について、その他の指数品目の価格は変動せず、当該指数品目の価格のみ- 26 -が変動したと仮定した場合における、総合指数の変化率を表す。)を中分類項目で試算すると、教養娯楽用耐久財の寄与度が-2.72%と際立って大きく、上記変化率の6割以上を占めている。そして、教養娯楽用耐久財の中で各品目の寄与度を更に試算すると、テレビの寄与度が顕著に大きく、生活扶助相当CPIの上記変化率4. 29%のうち1.59%を占めており、次いでパソコン(ノート型)の寄与度が0.56パーセントであり、これらによって上記下落率のうち半分以上を占めていることになる。このように、教養娯楽用耐久財の価格下落の寄与度が非常に大きくなり、それが生活 パソコン(ノート型)の寄与度が0.56パーセントであり、これらによって上記下落率のうち半分以上を占めていることになる。このように、教養娯楽用耐久財の価格下落の寄与度が非常に大きくなり、それが生活扶助相当CPIの大きな下落率をもたらしたのは、生活扶助相当CPIが、平成22年基準のウエイトを用いたことによるものである。 すなわち、平成22年は、平成21年5月から始まった家電エコポイント制度や平成23年7月からの地上デジタル放送への移行の影響で、テレビの消費支出が突出して大きく、その結果、テレビのウエイトは、平成22年基準で大幅に増大した。このことは、各種統計によっても客観的に裏付けられている(総務省CPIのテレビのウエイトは、平成17年基準では37であったのに、平成22年基準では97と2倍以上になっているし、家計調査におけるテレビの消費支出額は、平成17年が1万0370円、平成23年が1万1344円であるのに、その間の平成22年は2万7436円である。テレビの消費量(購入台数)も、平成22年は、その前後の年と比べて異常に多かった。)。このようなテレビのウエイトの増大が、テレビの価格下落とあいまって、消費者物価指数を大きく押し下げたことは、経済財政白書(甲全403)にも報告されており、有識者の間でよく知られていた事象であった。 しかし、平成22年の地上デジタル放送への移行に際しては、生- 27 -活保護受給世帯に無料チューナーが配布されるという施策がとられたのであるから、生活保護受給世帯が、一般世帯と同様に家電エコポイント制度の影響を受けて、テレビを買い替える行動をとるとは考え難いことであり、この時期のテレビのウエイト増大は、生活保護受給世帯の消費支出の増加と結びついておらず、生活扶助相当CPIに 電エコポイント制度の影響を受けて、テレビを買い替える行動をとるとは考え難いことであり、この時期のテレビのウエイト増大は、生活保護受給世帯の消費支出の増加と結びついておらず、生活扶助相当CPIにより把握される物価動向は、生活保護受給世帯が直面した物価動向と明確に乖離するものであった。 このように、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いたことによって、生活保護受給世帯と一般世帯との支出割合の乖離が平常時以上に増幅されることとなり、生活扶助相当CPIは、生活保護受給世帯の消費実態から著しく乖離し、生活保護受給者にとって過大な物価下落率を導出する結果となったものである。したがって、生活扶助相当CPIは、生活保護受給世帯の需要への合致を欠いているものであり、生活保護法8条2項が求める要保護者の最低限度の生活の需要という考慮すべき事項を考慮していない違法がある。 e 異なる品目数により算出した指数を比較したこと平成20年の生活扶助相当CPIは、指数品目が485品目であるのに対し、平成23年の生活扶助相当CPIは、指数品目が517品目であり、両者は、指数品目数が異なっている上、総務省統計局の方法やILOマニュアルに反して接続の処理がされていないから、これらを比較して物価変動率を算出することは、不合理である。 また、厚生労働大臣は、これらの指数品目数の差である32品目の価格指数について、結果的に総合指数で補完する処理をしているが、欠価格のこのような処理方法は、総務省統計局の方法やILOマニュアルから逸脱している。 生活扶助相当CPIの計算においては、上記のとおり、平成22- 28 -年基準のウエイトにつき、平成20年に価格データのない32の指数品目が除外されているが、これは、平成 いる。 生活扶助相当CPIの計算においては、上記のとおり、平成22- 28 -年基準のウエイトにつき、平成20年に価格データのない32の指数品目が除外されているが、これは、平成20年から平成22年までの期間と同年から平成23年までの期間とで異なるバスケットを比較していることを意味する。同一基準年の指数では同一バスケットを比較するのが大前提であり、総務省CPI等消費者物価指数を作成する際に基準改定に伴ってバスケットを変更する場合には、通常、旧基準の指数と新基準の指数の比率をリンク係数として接続するという、いわゆる接続方式が採用されている。この通常の接続方式により試算すると、生活扶助相当CPIの数値は-2.26%となり(このこと自体は、被控訴人国も、衆議院厚生労働委員会において認める旨答弁している。甲全414の11頁)、本件下落率と比べて実に約2.5%も下落幅が小さくなるのである。この点のみからでも、複数の経済学者が指摘するとおり(甲全149の37頁、甲全347の2頁、甲全351の8頁、甲全352の26、27頁、甲全414の11頁等)、生活扶助相当CPIがいかに不適切な指標であるかは、明らかである。 f 厚生労働省に物価指数に関する専門性がなかったことデフレ調整は、実質的な購買力を維持しつつ、デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分だけ生活扶助基準を見直すというのが、厚生労働省の説明資料や国会答弁で説明された目的であり、その目的のために生活扶助相当CPIという指標が作成されたはずである。ところが、以上のとおり、生活扶助相当CPIにより算出された本件下落率は、生活保護受給世帯の現実の消費実態からかけ離れたもので、デフレによる可処分所得の実質的増加分を示すものではない。この である。ところが、以上のとおり、生活扶助相当CPIにより算出された本件下落率は、生活保護受給世帯の現実の消費実態からかけ離れたもので、デフレによる可処分所得の実質的増加分を示すものではない。このようなことになったのは、厚生労働省において、物価指数についての専門性が十分なかったためと考えられ、- 29 -消費者物価指数の作成方法や当時の物価状況をよく知らない職員によって生活扶助相当CPIが作成されたと考えざるを得ない。 その結果、デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分を遥かに超える生活扶助基準を引き下げる本件改定が行なわれたものであり、デフレ調整の判断過程における明らかな誤りであって、本件下落率は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いており、厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落があるから、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反するものである。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて考慮したことの違法性についてア ゆがみ調整は、体系と水準の一体的検証であったこと被控訴人らは、①基準部会は、基準体系及び地域差のゆがみについては指数化することによって徹底した検証を行ったが、生活扶助基準額の絶対値として見た場合に妥当な水準にあるか否かといった絶対水準の検証を行っていないから、②ゆがみ調整は、生活扶助基準額の絶対水準、すなわち、金額として高い、低いという、絶対値として見た場合の生活扶助基準額を適切な水準に調整するものではないとして、ゆがみ調整だけでは十分でなく、デフレ調整により、生活扶助基準額の絶対水準の調整を併せて行うことが必要である旨主張する。 上記①の点について、平成25年検証が行ったゆがみ調整に いとして、ゆがみ調整だけでは十分でなく、デフレ調整により、生活扶助基準額の絶対水準の調整を併せて行うことが必要である旨主張する。 上記①の点について、平成25年検証が行ったゆがみ調整においては、標準世帯を措定して、その生活扶助基準と一般世帯の消費水準を比べて高いか低いかという検証は行っていないという意味であれば、正しいといえる。しかし、そうであるからといって、上記②のように、ゆがみ調整は生活扶助基準の絶対水準の調整をするものではないということにはならない。 すなわち、平成25年検証における基準部会の議論の経過(甲全79- 30 -の5、甲全80の1・2、甲全82の1等)によれば、基準部会のメインテーマは、一貫して、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と均衡しているか否かという水準の検証であったことが明らかである。そして、第10回部会では、厚生労働省保護課から、体系の検証と水準の検証を一体的に行うという方向性が示され(甲全82の2・3頁、4頁)、第11回部会において、A課長補佐が、「前回の部会におきまして、今回の検証は年齢及び人員並びに級地の3つの要素、この3要素に焦点を当て、詳細な消費実態の分析に基づく評価検証を行い、その結果を踏まえた上で水準の検証を行うといったことを基本方針としてご了解いただいたところでございます」、「今回改めてこの場で御報告をさせていただき、委員の皆様との認識を共有させていただきたいと考えております」とわざわざ確認をしている(甲全83の1・4頁、乙全43・10枚目)。また、体系と級地の指数の乖離を検証するだけで水準の調整を行わないのであれば、比較の対象である一般世帯を低所得層に限定する必要はなく、より上位の2つくらいを除いた全階層で行う方法も考えられるにもかかわらず、年間収入階 数の乖離を検証するだけで水準の調整を行わないのであれば、比較の対象である一般世帯を低所得層に限定する必要はなく、より上位の2つくらいを除いた全階層で行う方法も考えられるにもかかわらず、年間収入階級第1・十分位層(以下「第1・十分位」といい、他の層についても、これに準じて表記する。)を比較対象としたのは、体系・級地の「歪み」と水準の検証を一体化して行うためである(甲全203・16頁)。そして、何よりも、平成25年報告書は、第1・十分位のデータを用いるに際して行った確認として、「今回の検証に際しては、水準の検証と体系並びに級地の検証を一体的に行うことに鑑み、体系(年齢、世帯人員)並びに級地の検証に際しても第1・十分位のデータを用いている」と明記していることからも、平成25年検証が、体系の検証と水準の検証を一体的に行ったことは明らかであり、第11回部会の途中で上記のような検証方針が変更されたこともない。 平成25年検証は、生活扶助基準の相対的な較差の検証を行ったもの- 31 -ではあるが、もともと、サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違いによって生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)にも影響を及ぼすことが前提とされていた(被控訴人らの上記②の主張が、ゆがみ調整は生活扶助基準の水準に影響を与えることを予定していなかったという趣旨であれば、明らかに誤りである。)。 したがって、基準部会は、平成25年検証において、生活扶助基準の水準の検証を体系(年齢・世帯人員・級地)の「ゆがみ」の調整の中に一体化させて行ったことが明らかである。 イ ゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことは、物価の二重評価になること被控訴人らは、デフレ調整は、水準均衡方式によっては生活扶助基準に反映されていなかっ ことが明らかである。 イ ゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことは、物価の二重評価になること被控訴人らは、デフレ調整は、水準均衡方式によっては生活扶助基準に反映されていなかった平成20年から平成23年までのデフレによる物価の下落を同基準に適切に反映したもので、物価変動を過剰又は二重に評価するものではない旨主張する。 しかし、ゆがみ調整は、平成21年の全国消費実態調査の個票データを基礎として、生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費支出との間の比較・検証を行ったものであり、一般低所得世帯の消費支出に基づく生活扶助基準の改定を意味することは明らかである。そして、総務省統計局の家計調査における支出金額については、物価水準の変動の影響が反映した名目増減率に基づく統計値と、その影響を除去した実質増減率に基づく統計値を集計しているが、ゆがみ調整における比較対象のサンプルである平成21年の全国消費実態調査の個票データは、対象世帯の消費支出の実額が記載された生データであるから、人為的に物価変動の影響を除去した統計値ではなく、物価変動の影響を反映した統計値(名目的増減率に基づく支出金額)であることになる。したがって、ゆがみ調整が、物価変動の影響を反映した消費支出の統計値に基づいて- 32 -生活保護基準に増減をもたらすものである以上、さらにデフレ調整を行った本件改定は、明らかに物価の二重評価をしたことになる。 ウ 小括以上のとおり、平成25年報告書は、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調整を行うことにより生活扶助基準の水準の妥当性も調整されることを前提として作成されたものであり、具体的な被保護者に対する関係においては、生活扶助基準の水準が調整される結果となり、これにより、生活扶助基 行うことにより生活扶助基準の水準の妥当性も調整されることを前提として作成されたものであり、具体的な被保護者に対する関係においては、生活扶助基準の水準が調整される結果となり、これにより、生活扶助基準額に変動が生じるものである。 そうすると、デフレ調整をゆがみ調整とともに行うに際しては、ゆがみ調整の結果として及ぼされることになる生活扶助基準への影響を考慮した上で、なお物価を勘案した生活扶助基準の水準の調整(デフレ調整)を行う必要があるか否かを、統計等の客観的な数値等や専門的知見をもって説明する必要があるというべきであるが、被控訴人らは、この点について十分な説明をしていない。 したがって、デフレ調整の必要性に係る厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いているというほかない。 2 争点3(本件各告示による生活扶助基準の改定の国家賠償法上の違法性及び控訴人らの損害)について⑴ 厚生労働大臣の職務上の注意義務違反ア 本件各告示は、厚生労働大臣が生活保護法8条1項の委任に基づいて定めた生活保護基準を公示するものであり、厚生労働大臣の職務上の行為であって、その判断過程に恣意的な判断が介入することは許されない。 そのため、厚生労働大臣は、生活保護基準引下げを判断するに際しては、職務上、①引下げの正当性(具体的な必要性及び相当性(許容性))を立証する責任(すなわち注意義務)、②要保護者の生活状況に関する法- 33 -定考慮事項を考慮すべき注意義務、③財政事情等の生活外的要素を考慮しないようにする注意義務、④統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を図る注意義務を負っている。 イ しかし、前記のとおり、本件改定は、手続面において、前記② 要素を考慮しないようにする注意義務、④統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を図る注意義務を負っている。 イ しかし、前記のとおり、本件改定は、手続面において、前記②及び③の点で、要保護者の年齢別、世帯構成別、地域別等の事情という法定考慮事項を考慮せず、他方、国の財政事情等という不可考慮事項を考慮し、また、前記④の点で、基準部会で全く議論されていないデフレ調整を行い、かつ、ゆがみ調整に関する基準部会の検証結果の反映を一律に2分の1としており(2分の1処理)、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を完全に無視したものである。 内容面において、デフレ調整は、前記①の点で、その必要性が全くなく、前記②の点で、要保護者の年齢別、世帯構成別、地域別等の事情という法定考慮事項を考慮しない生活扶助相当CPIを用いており、前記④の点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠いている。また、ゆがみ調整は、前記④の点で、生活扶助基準と第1・十分位の消費支出を比較し、異なる集団の比較可能性を無視したこと、基準部会報告書の乖離率を一律2分の1にしたことで、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いているし、基準部会の議論を経ることなく、従来から採用されてきた水準均衡方式を逸脱して物価を本格的に考慮し、デフレ調整とゆがみ調整を併せて行うことで、物価の二重評価をしたものである。 これらの点は、厚生労働大臣が少なくとも注意義務を尽くせば容易に分かることであり、厚生労働大臣が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく本件各告示をしたことにより、控訴人らは、各処分庁から違法な処分(本件各処分)を受け、後記のような損害を被った。 したがって、厚生労働大臣が 大臣が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく本件各告示をしたことにより、控訴人らは、各処分庁から違法な処分(本件各処分)を受け、後記のような損害を被った。 したがって、厚生労働大臣が本件各処分をしたことは、国家賠償法1- 34 -条1項の適用上違法であり、被控訴人国は、控訴人らに対し、損害賠償義務を負う。 ⑵ 控訴人らが被った損害ア 控訴人らは、本件各処分により、食事回数や食べる量を減らしたり、食事内容をより悪化させたりし、電気・ガス・水道代を節約し、衣服の購入も控え、新聞を解約し、娯楽や文化的活動を行うこともできず、他者との交流をより一層控えるなどした。食事が不十分であれば当然「健康」を害するし、電気・ガス・水道代を節約するためエアコン等の使用や入浴を控えれば「健康」を害する。他者との交流が途絶え、自宅に引きこもりがちになれば、気持ちが塞ぎ、運動不足にもなって「健康」を害する。衣食住を欠けば、単にそれが不十分であるというだけでなく、人間としての自尊心も害される。周囲との交流を絶たれて孤立し、親戚の葬儀にさえ参加できない状態では、到底文化的とはいえない。 以上のとおり、控訴人らは、本件各処分によって、生活実態がより過酷になり、健康で文化的な最低限度の生活を下回る生活を強いられたものであり、そのために、肉体的、精神的な健康が損なわれていくことに対する不安感はもとより、他者とのふれあいの中で人生を送ることが否定され、人として当然にもっているはずの人生の発展可能性が奪われてしまったことに対する絶望感等、極めて甚大な精神的苦痛を被った。 イ 控訴人らの前記アの精神的苦痛は、本件各処分以降、現在まで継続しているものであり、本件各処分が取り消され、事後的に金銭が支払われたとしても、回復できない 極めて甚大な精神的苦痛を被った。 イ 控訴人らの前記アの精神的苦痛は、本件各処分以降、現在まで継続しているものであり、本件各処分が取り消され、事後的に金銭が支払われたとしても、回復できない損害である。 したがって、被控訴人国は、控訴人ら各自に対し、それぞれ、少なくとも1万円を賠償する義務を負う。 第5 被控訴人らの補充主張の要旨1 争点1(本件各告示による生活扶助基準の改定に生活保護法3条、8条2- 35 -項、9条等に違反した違法があるか)について⑴ 司法審査の判断枠組みア 憲法25条、生活保護法3条及び8条2項の規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、保護基準を改定するに際し、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持できるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。 そうすると、保護基準の改定に当たって、いかなる統計的な手法を用いるかなど、具体的な手法を決める上でいかなる考慮要素を重視するかなどについても、同様の裁量権が認められる。 生活保護法8条1項は、厚生労働大臣が要保護者の需要を測定するための基準(保護基準)を定め、当該基準に基づき保護の程度が決定される旨規定するところ、同項は、保護基準の内容について格別に定めるものではなく、その規 1項は、厚生労働大臣が要保護者の需要を測定するための基準(保護基準)を定め、当該基準に基づき保護の程度が決定される旨規定するところ、同項は、保護基準の内容について格別に定めるものではなく、その規定上、保護基準の設定及び改定に係る厚生労働大臣の裁量権を限定するものではない。また、保護基準については、同条2項により、同項に規定する事情を踏まえて「最低限度の生活の需要」を具体化したものであることが求められているところ、「最低限度の生活の需要」は、憲法25条に規定する「健康で文化的な最低限度の生活」や生活保護法3条に規定する「最低限度の生活」を営むために必要な生活需要にほかならない。 したがって、憲法25条及びその趣旨を実現するために制定された生- 36 -活保護法は、「最低限度の生活」を保護基準において具体化するに当たって、これを厚生労働大臣の高度の専門技術的な考察及びこれに基づく政策的判断に委ねたものであり、その裁量権の範囲は極めて広範なものである。 イ 前記アのとおり、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権の範囲は極めて広範であることから、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断については、その当不当が直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められるような場合でなければ、その判断は違法となり得ない。したがって、保護基準の改定については、①当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる 、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に限り、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる。 上記のような判断過程審査は、「最低限度の生活」の具体化である保護基準についての審査であり、判断の過程又は手続の審査の名の下に、厚生労働大臣の極めて広範な裁量に委ねられるべき「最低限度の生活」の具体化そのものについてまで裁判所の審査を及ぼすことは、判断過程審査の名目で実際には判断代置審査を行っていることとなり、厚生労働大臣の極めて広範な裁量権と相容れないものである。 一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合にお- 37 -ける判断過程審査とは、裁判所が、原告が納得できないと主張する点について、被告(行政庁)の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する方法であり、あくまで厚生労働大臣の判断の過程において現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと同大臣の判断過程との間に論理の飛躍や連関を欠くところがないか否かという観点から、上記判断と統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがないか否かを審査すること(論証過程の追試的検証)を意味するにとどまるものであり、裁判所が、独自の観点から、特定の衡量利益や考慮事項を選び出し、これを拠り所とすることは、判断過程審査 欠けるところがないか否かを審査すること(論証過程の追試的検証)を意味するにとどまるものであり、裁判所が、独自の観点から、特定の衡量利益や考慮事項を選び出し、これを拠り所とすることは、判断過程審査に適合しない。 ウ 以上のとおり、ゆがみ調整及びデフレ調整の適法性は、厚生労働大臣の判断について、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるか否かという判断枠組みにより判断されるべきであり、具体的には、論証過程の追試的検証として、被控訴人が説明するゆがみ調整及びデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程について、それが一応納得できるものか否か、現に用いられた統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになり、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど、憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反すると評価できるほど明らかに合理性を欠くと認められることになるような過誤、欠落がある場合でなければ、違法とならないというべきである。 ⑵ ゆがみ調整の違法性について ア ゆがみ調整に係る判断に至る経緯等 生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を設定し、その最低生活費- 38 -を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して展開することによってあらゆる世帯に適用可能な基準として設定されている。そのため、上記展開に用いられる「展開のための指数」は、生活保護受給世帯間における相対的な較差を示すものである。 展開のための指数は、専門委員会が取りまと 能な基準として設定されている。そのため、上記展開に用いられる「展開のための指数」は、生活保護受給世帯間における相対的な較差を示すものである。 展開のための指数は、専門委員会が取りまとめた平成16年報告書において、生活扶助基準の展開部分に関し、「世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない」などと、その見直しを検討する必要がある旨指摘された。また、生活扶助基準検討会が取りまとめた平成19年報告書においても、「生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。」という基本的な考え方が示されるとともに、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別にみると、20歳ないし39歳と40歳ないし59歳は生活扶助基準が相対的にやや低めであるのに対し、70歳以上は相対的にやや高めであること、世帯人員別にみると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利であるという実態がみられること、地域別にみると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差が縮小していることなど、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分について、一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが指摘された(しかし、厚生労働大臣は、これらの指摘を踏まえた保護基準の改定を行わなかった。)。 さらに、平成23年2月に設置された基準部会による平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、- 39 -展開のための指数は、一般低所得世帯の消費実態による指数との間に乖離 成23年2月に設置された基準部会による平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、- 39 -展開のための指数は、一般低所得世帯の消費実態による指数との間に乖離が認められ、必ずしも一般低所得世帯の消費実態の相対的な較差を反映したものとなっておらず、生活保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていることが判明した。また、上記基準部会が公表した平成25年報告書においては、上記結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。」、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。」とされた。基準部会は、保護基準につき専門的かつ客観的に評価・検証を行うため、法令に基づき設置された機関であり、学識経験者によって構成されていることから、平成25年検証の結果は基本的に信頼性が高いものと考えられ、これを踏まえて生活扶助基準の展開に関する指数を見直す必要性は高かった。 以上の経緯等を踏まえ、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯間の公平を確保するため、平成25年検証の結果に基づき、専門家が検討した分析手法に基づいて収集された消費実態に関する事実関係を前提に、専門家の示した方向性に沿うかたちで、ゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態の相対的な較差を生活扶助基準の展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものであり、このような厚生労働大臣の判断過程に関して、統計等の客観的な数値等 帯の消費実態の相対的な較差を生活扶助基準の展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものであり、このような厚生労働大臣の判断過程に関して、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない(ただし、後記イのとおり、2分の1処理を行っ- 40 -ている。)。 イ 2分の1処理 2分の1処理を行った理由平成25年検証は、初めて展開のための指数の詳細な分析を行ったものであるが、平成25年報告書において、「具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。」、「今回の本部会で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。」とされ、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。」とされていた。 また、基準部会は、常設部会として設置されており、平成25年報告書において「これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。」とされていることからも明らかなとおり、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われるこ 助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。」とされていることからも明らかなとおり、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われることとされており、展開部分についても、更なる検証が予定されていた。そのため、平成25年検証の結果の取扱いとして、検証作業において算出された指数を機械的に全て反映させることが求められるべきものではないことは、明らかであった。 さらに、平成25年検証は、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の- 41 -展開のための指数について、検証を行ったものであるところ、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せによって様々であることが見込まれた。しかも、平成25年報告書のとおり、平成25年検証において算出された指数を生活扶助基準の展開部分にそのまま反映させた場合、夫婦子1人世帯(子は18歳未満)が8.5%、夫婦子2人世帯(子は18歳未満)が14.2%、母子世帯(18歳未満の子1人)が5.2%の減額率となることから、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想され、検証結果に関する留意事項として「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には・・・とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。」と明記されており、平成25年検証自体が上記の観点からの対策を講じることを要求していたということができる。 一律に2分の1とした理由ゆがみ調整については、平成25年検証の結果に関し、例えば、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるというように、反映の程度を部分的に変えるということは、理 結果に関し、例えば、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるというように、反映の程度を部分的に変えるということは、理論的にはあり得るが、このように世帯によって改定比率を変える反映の方法は、上記結果の取扱いの公平性を欠いている。 また、増額又は減額のいずれかに偏って反映させることは、生活扶助基準の相対的な較差の検証・評価という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる。すなわち、減額か増額かによって反映の程度を変えるとすれば、生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねないところ、このような反映方法は、生活保護基準の年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開のための指数について評価- 42 -・検証を行うという平成25年検証の目的と相容れず、その本質的な趣旨を改変することになるというべきである。 そのため、厚生労働大臣は、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、子どものいる世帯への配慮や、検証結果に統計上の限界があった平成25年検証に続く基準部会による次回の更なる検証を見据えた措置(激変緩和措置)として、平成25年検証の結果の反映の程度を、減額か増額かを問わず、公平に一律で2分の1としたものである。そして、2分の1処理によっても、平成25年検証の結果、明らかとなった年齢階級別、世帯人員別及び級地別の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との乖離が、その乖離の程度に比例して一定の割合で解消されることには変わりがなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するという、ゆがみ調整の本質的部分の趣旨にも沿うものであるから、2分の1処理に係る厚生労働 割合で解消されることには変わりがなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するという、ゆがみ調整の本質的部分の趣旨にも沿うものであるから、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるとことがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 生活保護法3条及び8条2項にいう「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であり、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、「最低限度の生活」に相当する生活扶助費の額は、特定の統計資料等から一義的に導かれるような性質のものではないし、上記のとおり、平成25年検証の手法は透明性の高い合理的なものと評価することができる一方、当該手法が唯一のものであるということはできず、統計手法やサンプル数に由来する一定の限界もあるから、平成25年検証の結果をそのまま反映させた生- 43 -活扶助費の額が直ちに「最低限度の生活」に相当するものであるということはできない。したがって、2分の1処理は、増額幅が2分の1になる生活保護受給世帯に対して「最低限度の生活」を下回る生活を強いることを意味するものではない。 なお、本件改定においては、2分の1処理を含めたゆがみ調整により約90億円の財政削減効果が生じると試算された(乙全16)が、ゆがみ調整は、2分の1処理を含め、そのような財政削減効果を目的として行われたものではない(厚生労働大臣の実際の判断過程において、2分の1処理を行わない場合の財政影響の試算は行われていないが、仮に、2分の1処理を行わず、平成25年検証の結果を全て反映さ 目的として行われたものではない(厚生労働大臣の実際の判断過程において、2分の1処理を行わない場合の財政影響の試算は行われていないが、仮に、2分の1処理を行わず、平成25年検証の結果を全て反映させた場合には、増額幅及び減額幅のいずれもおおむね2倍となるため、証人B(当審。以下「B証人」という。)の証言のとおり、財政削減効果も約2倍になっていたものと考えられる。)。 ⑶ デフレ調整の違法性についてア 基準部会等の専門家による検討、検証を経ていないこと本件改定に当たり、デフレ調整については、基準部会等の専門家による検討、検証を経ていないが、保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家による検討、検証を経ていないことは、直ちに厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではない。 すなわち、 厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家に諮問し又はその意見を求めることなどを義務付ける法令上の根拠規定はないし、生活保護法及びその関連法規上、上記改定に当たり基準部会等の専門家による検討、検証が必要である旨の規定もないから、厚生労働大臣は、上記改定に当たり、基準部会等の専門家による検討、検証を経ることを義務付けられていない。また、厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、- 44 -社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること等を任務として、国家行政組織法に基づき設置された行政機関で、幅広い分野での専門的知見を有する職員が配置され、生活保護に関する国の行政事務についても、生活保護行政の責任者として、保護基準の設定改定に限らず、法令の制定改廃や、保護の決定実施(運用)に係る で、幅広い分野での専門的知見を有する職員が配置され、生活保護に関する国の行政事務についても、生活保護行政の責任者として、保護基準の設定改定に限らず、法令の制定改廃や、保護の決定実施(運用)に係る事務処理基準の策定、生活扶助以外の医療扶助、介護扶助等に関する事務等を所掌し、各種の統計調査や地方自治体との実務に関する会議や研修会等により、生活保護制度に係る客観的な実態把握等を行うなどしており、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)は、これまでの生活保護の各扶助や各種加算の改定に当たり、統計データの収集分析や、審議会等の専門機関における議論を通じて、専門技術的知見を蓄積しているから、生活保護制度や生活保護受給世帯の状況について精通し、生活扶助基準を適切に設定する上で必要となる専門技術的知見を有している。このような生活保護法の規定や保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量判断の性質からすると、生活保護法が、保護基準の設定及び改定について、8条で抽象的に規定するのみで、基準部会等の専門機関の意見を聴取することを求めていないのは、高度に専門技術的かつ政策的な判断を要する保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)が専門技術的知見を有することを前提に、終局的には、厚生労働大臣の政策判断に委ねる趣旨であると解される。 これらの事情によれば、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たり、基準部会等の専門家の関与の在り方や、これを諮問した場合における検討、検証の結果をどのように考慮するかについて、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきであり、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家による検討、検証を経てい- 45 -ないことが、直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味する 権を有しているというべきであり、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家による検討、検証を経てい- 45 -ないことが、直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではない。 イ デフレ調整に係る判断の経緯等 デフレ調整に至るまでの経過生活扶助基準については、平成25年検証の直前の専門機関による検証である平成19年検証において、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたものの、厚生労働大臣は、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くこととした。 その後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、完全失業率が大幅に上昇して高止まり、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢(デフレ)にあり、平成21年全国消費実態調査によれば、平成16年全国消費実態調査に比べ、夫婦子1人世帯を含む2人以上世帯の消費支出が約6.0パーセント下落し(乙全101)、また、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円で(乙全100)、約11.6パーセント下落しており、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額を約12.6パーセント下回るものとなっていた。しかも、上記の経済動向を踏まえるならば、平成21年以降の消費支出額が増加することは考えにくい状況にあった。 他方、このように一般国民の生活水準が低下している間も、生活扶助基準は据え置かれていた。すなわち、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたこと 扶助基準は据え置かれていた。すなわち、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まっている状- 46 -況にあったことを踏まえて、平成21年度の生活扶助基準について、改定を行わずに据え置いた。また、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、改定を行わずに据え置いた。同様に、厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、改定を行わずに据え置いた。 デフレ調整を行った理由前記のとおり、生活扶助基準について、改定(引下げ)が行われずに据え置かれてきた結果、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し(生活扶助基準が実質的に引き上げられた。)、生活扶助基準と一般国民の消費実態との間の均衡が一層崩れ、その不均衡が顕著なものとなっていた。平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号は、政府は「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記しているが、当時の社会経済情勢に照らせば、生活扶助基準の適正化は、減額改定をいうものと解するのが当然である。 そして、基準部会による平成25年検証は、生活扶助基準の水準についての検証・評価を行わなかった に照らせば、生活扶助基準の適正化は、減額改定をいうものと解するのが当然である。 そして、基準部会による平成25年検証は、生活扶助基準の水準についての検証・評価を行わなかったものの、上記均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の方が高い状態)が確認されたことから、厚生労働大臣は、一般国民の消費実態との均衡を図るため、「展開のための指数」(相対的な較差)を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活扶助基準を引き下げる必要があると判断したものであり、その判断は、平成16年検証及び平成19年検証により専門機関が示し- 47 -た見解とも整合するものである。 物価変動を指標とした理由a 消費を指標としなかった経緯等生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたところであるが、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の指針にすぎないものであり、元々保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断を拘束するものではない。 水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては、改定の基礎となる指標として一般国民全体の消費支出の動向が用いられており、また、平成16年検証及び平成19年検証においては、一般低所得世帯の消費支出との比較において、生活扶助基準の水準の検証が行われた。厚生労働省は、基準部会による検証作業に向けて平成21年全国消費実態調査の特別集計を行う過程で、平成19年検証と同様の手法により、夫婦子1人世帯について、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準を算定する作業も行っていたが、その結果、前記のとおり、生活扶助相当支出額が平成19年検証時点(平成16年全国消費実 の手法により、夫婦子1人世帯について、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準を算定する作業も行っていたが、その結果、前記のとおり、生活扶助相当支出額が平成19年検証時点(平成16年全国消費実態調査)と比較して約11.6パーセントも下落しており、生活扶助基準額を約12.6パーセント下回る状況であったため、生活保護法8条2項の規定に照らして、生活扶助基準を引き下げる必要性があることは、明らかであった。そして、一般に、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、平成20年以降の経済状況下で、国民の将来不安が高まり、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を引き下げると、減額幅が必要以上- 48 -に大きくなることが想定された。 基準部会は、平成25年検証において、結果的に、生活扶助基準の展開(相対的な較差)に関する部分(体系及び級地)についてのみ評価・検証を行い、生活扶助基準の水準の評価・検証を行わなかったが、平成25年報告書において「厚生労働省において生活扶助基準額の見直しを検討する際には、本報告書の評価、検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と記載し、「展開のための指数」の適正化に加え、更に生活扶助基準の改定をするか否かや、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府の判断に委ねる旨の意向を示していた(この点については、厚生省社会局社会福祉専門官としての勤務経験のあるC放送大学客員教授作成の「生活扶助基準の改定指標に係る取扱いについて」と題する意見書(乙全116。以下「C意見書」という。 いた(この点については、厚生省社会局社会福祉専門官としての勤務経験のあるC放送大学客員教授作成の「生活扶助基準の改定指標に係る取扱いについて」と題する意見書(乙全116。以下「C意見書」という。 )においても、「基準部会の役割」について、「厚生労働省において将来行われる具体的な生活保護基準の『改定』の内容を審議する場ではない。実際の具体的な生活保護基準の『改定』は、基準部会による統計データ等を用いた検証結果だけでなく、世の中の経済的・社会的条件を踏まえた政策的判断として厚生労働省が行うこととされている。基準部会としてもそれを踏まえているからこそ、平成25年報告書では、厚生労働省に対して適切に経済的・社会的条件に配慮するよう申し添えているところである。」とした上で、「平成25年報告書における見解」として、平成25年報告書における上記記載について、「検証結果以外に経済指標を勘案した改定を行うべきか否かについて議論されていなかった中で、厚生労働省が具体的な生活保護基準の改定内容を検討する際に経済指標などを勘案- 49 -する場合には、厚生労働省において合理的説明が可能なものを国民向けに示して対応するよう求めたものである。」旨の意見が記載されている。)。 厚生労働大臣には、保護基準の改定について、専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められており、改定の方式についても法令上の定めはなく、具体的な改定の手法が特定の方法に限られるものではない。そして、消費を基礎とする水準均衡方式についても、上記のとおり、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の指針の1つにすぎないものである。 また、消費を基礎とする水準均衡方式は、昭和58年意見具申以 法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の指針の1つにすぎないものである。 また、消費を基礎とする水準均衡方式は、昭和58年意見具申以降、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けているという社会経済情勢を背景に、生活扶助基準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるという評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであり、基本的に毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきたものである。これに対し、デフレ調整は、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために、約5年に一度行われる専門機関による検証に併せて行われたものであって、毎年度の改定として行われたものではないなど、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは異なる場面で行われたものである。 b 物価(変動)を指標とした経緯等生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられ- 50 -るべき相対的なものであるという考え方が一貫してとられてきた。 そして、一般国民の生活水準との均衡を評価するための指標としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであって、過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことからも明らかなとおり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法ではなく、専門委員会の平成15年中間取りまとめにおいても、「改定の指標の在り方についても検討が必要である。 ・・・例えば、年金 明らかなとおり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法ではなく、専門委員会の平成15年中間取りまとめにおいても、「改定の指標の在り方についても検討が必要である。 ・・・例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」として、消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性が言及されていた。このように、デフレ調整において物価を指標として用いたことは、専門機関において示されてきた専門的知見との整合性を欠くものではない(この点については、C意見書においても、「生活扶助基準の改定の指標として物価動向を参照することについては、専門的知見と整合しないものではない。」旨の意見が記載されている。 )。 消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであり、前記aのとおり、消費を基礎として生活扶助基準を引き下げると、減額幅が必要以上に大きくなることが想定される当時の状況下においては、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の1つである物価を指標として生活扶助基準の改定を行うことは、合理性があると考えられた。これまでにも、生活扶助のうち各種加算は、物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきたし、生活扶助基準の毎年度の改定においても、消費税が導入された平成元年度やその税率が引き上げられた平成9年度にはこれらを踏まえた生活扶助基準の- 51 -増額改定が行われ、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したものであり、本件改定前においても、財やサービスの価格(物価)の変動に着目した生活扶助基準の改定が行われていたといえる 可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したものであり、本件改定前においても、財やサービスの価格(物価)の変動に着目した生活扶助基準の改定が行われていたといえる。 また、基準部会は、前記aのとおり、平成25年報告書において、展開のための指数(相対的な較差)の適正化に加え、更に生活扶助基準の改定をする場合には、合理的説明が可能な経済指標を用いるよう指摘していたところ、平成15年中間取りまとめの上記指摘を踏まえれば、物価がこれに含まれることは明らかであるから、物価を指標とした改定を行うことは、基準部会の指摘にも沿うものである。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の改定について、消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつ、改定による減額幅が必要以上に大きくならないようにするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の1つである物価を指標として、生活扶助基準の改定を行うこととし、平成20年から平成23年までの期間における生活扶助費で支出される品目の物価変動率(本件下落率)を算出し、当該数値に基づき生活扶助基準の水準について適正化を図ったものである。 なお、被控訴人らにおいて、デフレ調整の趣旨目的について「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加」に基づく説明をしていたのは、厚生労働大臣が、平成20年以降の社会経済情勢等を踏まえて物価を指標として生活扶助基準の水準を改定するという判断をしたことについて、物価と可処分所得の関係性に- 52 -着目した説明が可能であるという理解に基づくものである。生活扶助基準の水準の改定については、一貫して一般国民の生活水準との均衡を図 判断をしたことについて、物価と可処分所得の関係性に- 52 -着目した説明が可能であるという理解に基づくものである。生活扶助基準の水準の改定については、一貫して一般国民の生活水準との均衡を図るという基本的な考え方に基づいて行われている(デフレ調整もこのような基本的な考え方を踏まえたものである。)が、このような考え方に照らすと、実質的な購買力(可処分所得)を維持することは、生活扶助基準の改定に当たり必然的に求められるものではなく(C意見書にも同旨の意見が記載されている。)、実質的な購買力(可処分所得)に着目した説明は、物価動向の範囲内で生活扶助基準を改定することを言い換えたものにとどまる。したがって、本件下落率に相当する、生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加が実際に認定できるか否かは、デフレ調整の適法性を左右しない。 物価変動率の算定期間を平成20年から平成23年までとした理由a 始期について厚生労働大臣は、デフレ調整に係る物価変動率の算定期間の始期を平成20年としたが、これは、デフレ調整の目的が、平成20年以降の社会経済情勢による生活扶助基準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正することにあったためである。 すなわち、5年に1度の頻度で行われることとなっていた専門機関による検証は、平成25年検証の直前が平成19年検証であり、厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準の改定について、平成19年検証によって、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費水準と比較して高いという結果が得られており、生活扶助基準を引き下げる必要性が認められたことを踏まえつつ、当時の社会経済情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して、これを据え置くという判断をしており、平成20年 いという結果が得られており、生活扶助基準を引き下げる必要性が認められたことを踏まえつつ、当時の社会経済情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して、これを据え置くという判断をしており、平成20年までの社会経済情勢は、既に同年度の- 53 -改定において斟酌されているということができた。そして、厚生労働大臣は、このようにして定められた平成20年度の生活保護基準が生活保護法8条2項に適合する妥当なものであるといえることを前提に、平成19年検証以来の定期的な検証である平成25年検証を踏まえた本件改定において、平成20年以降の社会経済情勢を斟酌することとしたものである。 また、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落するデフレ状況に至ったことにより、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、生活扶助基準と一般国民の生活水準との間の不均衡が拡大していたものであり、デフレ調整は、このような平成20年以降の社会経済情勢等により拡大した上記不均衡を是正するために行われたものである。 そこで、厚生労働大臣は、上記のとおりの従前の経緯やデフレ調整の目的を踏まえて、デフレ調整に係る物価変動率の算定期間の始期を平成20年としたものである。 なお、総務省CPIは、平成19年から平成20年にかけて1%を超える上昇をしていたが、上記のとおり、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡が確認されていたところであり、厚生労働大臣は、平成19年検証の結果を踏まえつつ、当時の社会経済情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をしたものであり、こ たところであり、厚生労働大臣は、平成19年検証の結果を踏まえつつ、当時の社会経済情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をしたものであり、このようにして定められた平成20年度の生活扶助基準は、生活保護法8条2項に適合する妥当なものであるといえる。したがって、総務省CPIが平成19年から平成20年にかけて上昇していたことから、上記始期を平成20年としたことが不合理であ- 54 -るとはいえない。 b 終期について厚生労働大臣は、本件改定の検討当時、最新の総務省CPIのデータが平成23年のものであったため(平成24年1月27日公表。 乙全51)、デフレ調整に係る物価変動率の算定期間の終期を平成23年とした。 物価変動率の算定方法(生活扶助相当CPIの設定)厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、物価変動率を算定するための指標として、総務省CPIに基づき、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費により支出される品目の価格指数を品目別ウエイトにより加重平均することで算定した指数である生活扶助相当CPIを用いた。 a 生活扶助費で支出される品目のデータを用いた理由総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等、生活扶助費で支出されない品目が多数含まれているところ、生活扶助基準の改定の指標とする物価変動率を算定するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当でないと考えられた。 また、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費で支出される費目に係るデータを用いる手法は、水準均衡方式において一貫して採用され(水準均衡方式による生活扶助基準の毎 れた。 また、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費で支出される費目に係るデータを用いる手法は、水準均衡方式において一貫して採用され(水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては、民間最終消費支出の伸びが改定の指標とされているが、生活扶助費で支出されない費用を除外して算出されている。乙全33の1頁)、かつ、基準部会等の専門家においても一貫して是認、採用されていた手法であった。その上、生活扶助相当CPIの対象品目は、基準部会等の専門機関による検証において消費実態の分析に用いら- 55 -れている品目によるものであり、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであるため、品目の選定に係る判断自体に恣意的判断が入り込む余地がなく、十分な合理性があると考えられた。 そのため、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費で支出される品目の価格指数及びウエイトを用いて、物価変動率を算定することとしたものである(C意見書においても、このような手法は、専門機関において是認されてきた従前からの取扱いに倣ったものといえ、過去の専門的知見とも整合する旨の意見が記載されている。)。 b 総務省CPIウエイトを用いた理由(社会保障生計調査に基づくウエイトを用いなかった理由) 生活扶助基準は、昭和59年度以降、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方(水準均衡方式)に立脚して改定されており、一般国民の消費を表す家計調査に基づき作成されている総務省CPIウエイトを用いることは、上記の考え方と整合するものである。そして、デフレ調整は、水準均衡方式と同じく、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生 計調査に基づき作成されている総務省CPIウエイトを用いることは、上記の考え方と整合するものである。そして、デフレ調整は、水準均衡方式と同じく、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準の変化を通じた相対的なものとして、生活扶助基準を改定するものであるから、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、総務省CPIウエイトを用いるのが適切であると考えられた。 他方、第1・十分位や第1・五分位等の低所得世帯のウエイトや、社会保障生計調査によるウエイトは、上記のような従来の考え方との整合性という観点から、生活扶助相当CPIの算定に用- 56 -いるウエイトとして適切とはいえないものであった(C意見書にも同旨の意見が記載されている。)。 また、物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、個々の指数品目の価格指数に各品目のウエイトを乗じて加重平均することにより算出されているところ、総務省CPIにおいては、家計調査に基づき作成されたウエイトが用いられている。統計法上の基幹統計調査である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出等の把握を目的としたものであるから、生活扶助相当CPIの算出に用いられるウエイトを把握するために、最も適したデータといえる。 他方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護者の家計収支の状況を調査する一般統計調査であり、物価動向を把握するためのウエイトとして用いることを想定したものではないし、品目別 活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護者の家計収支の状況を調査する一般統計調査であり、物価動向を把握するためのウエイトとして用いることを想定したものではないし、品目別のウエイトとして利用できるかたちに加工されたものでもない。また、調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、当該自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われ、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計されている(乙全83)。このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があ- 57 -ることは、否定できない。その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の生活実態を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に把握するための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトを把握できても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトを把握できないため、社会保障生計調査に基づくウエイトを用いた場合、詳細な品目ごとの消費支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想される。 なお、家計調査には、第1・十分位の消費支出のデータもあるが、このデータをウエイトとして用いることは、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関 予想される。 なお、家計調査には、第1・十分位の消費支出のデータもあるが、このデータをウエイトとして用いることは、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという従前の改定の考え方とも一貫しなくなる上、上記データは、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しない(乙全109)ため、家計調査の第1・十分位の消費支出をウエイトとして用いた場合にも、総務省CPIの詳細な品目ごとの消費支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 以上のとおり、厚生労働大臣は、家計調査による第1・十分位の消費支出に基づくウエイトや、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて、物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査や社会保障生計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により作成された年間収入階級を限定しない総務省CPIウエイト(一般国民全体のウエイト)を用いることとしたもの- 58 -である。 c 平成22年基準のウエイトを用いた理由本件改定が行われた平成25年当時、総務省CPIウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準によるものと、平成22年基準によるものが存在したところ、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算出するためには、その算出時点に可能な限り近接した時点の消費構造を示すデータを用いるのが相当であると考えられた。このような観点からみると、仮に、平成17年基準のウエイトを用いた場合、平成17年以降の消費構造の変化が の算出時点に可能な限り近接した時点の消費構造を示すデータを用いるのが相当であると考えられた。このような観点からみると、仮に、平成17年基準のウエイトを用いた場合、平成17年以降の消費構造の変化が反映されず、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しない結果になることが予想された。これに対し、平成22年基準のウエイトは、物価変動率の算定期間に接着したものであり、現実の消費実態を反映したものとして相当であると考えられた。そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの期間における物価変動率を算出するに当たり、平成22年基準のウエイトを用いることとしたものであり、このような厚生労働大臣の判断は、以下のとおり、ILOマニュアル等に照らしても適切なものである。 我が国を含む多くの国では、消費者物価指数を算出する際、ウエイトを基準時点(価格参照時点)に固定するラスパイレス指数を用いているが、これは、直近時点の取引ウエイトを知ることが困難であるとの実務上の理由によるものにすぎず、他の指数が劣っていることを意味するものではない。 また、総務省CPIウエイトは、家計調査の結果に基づき5年ごとに改定されており、同じウエイトを5年間用いているが、これは、ウエイトの更新は、特に世帯支出の調査を新たに実施しな- 59 -ければならないとすれば時間が掛かるし費用も高くなるなど、時間と費用の双方の節約という実際上の長所によるものであるから、同じウエイトを5年間用いなければ合理性を欠くわけではない。 むしろ、ILOマニュアルにおいては、「現在の消費パターンにできるだけ近づけるために各年の初めにウェイトを更新する国もある」などと記載されているほか、「価格参照時点より早い時点で得られた数量を使うロウ指 、ILOマニュアルにおいては、「現在の消費パターンにできるだけ近づけるために各年の初めにウェイトを更新する国もある」などと記載されているほか、「価格参照時点より早い時点で得られた数量を使うロウ指数は、ラスパイレスを上回り勝ちであり、その程度は、ウェイト参照時点が時間的に早く戻れば戻るほど、大きくなる」、「どんな買い物かご指数でも、関係する時点が時間的に過去に戻れば戻るほど、数量はますます時代遅れになり、適切さを欠くことになるのは避けられない。引き起こされるバイアスを最小にするために、ウェイトはできる限り頻繁に更新されるべきである」と記載されていることからも、ウエイト参照時点を物価指数の算定期間にできるだけ近接させることが望ましいといえる。 生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点として平成20年から平成23年までの期間における物価指数の変化率を算出しているところ、このように算出対象期間の間の任意の時点でウエイトを採る方法は、ILOマニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法である。 このような中間年指数は、パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に来るロウ指数が得られ、理想的な目標指数に非常に近いと説明される算定方式である。 d 特定の品目を他の品目と異なる取扱いをすることの可否 以上のとおり、生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定やウエイトの算定は、従前の改定手法との整合性や専門機関におけ- 60 -る検証手法等を踏まえたものであり、恣意的な判断が介在しないように配慮されたものである。仮に、多数ある指数品目のうち、ある特定の品目に限り、生活扶助相当CPIの指数品目から除外し、又はそのウエイトを調整するのであれば、厚生 であり、恣意的な判断が介在しないように配慮されたものである。仮に、多数ある指数品目のうち、ある特定の品目に限り、生活扶助相当CPIの指数品目から除外し、又はそのウエイトを調整するのであれば、厚生労働大臣は、その必要性や合理性について、統計等の根拠に基づいて的確に説明することが求められる。 しかし、家計調査のウエイトのデータ(乙全27の40頁以下)と社会保障生計調査に基づくウエイトのデータ(乙全111)とを比較すると、両者の違いは、特定の品目に限られるものではないし、その違いの程度も一様でない。また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、生活保護受給世帯におけるパソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーの普及率は約7割、電子レンジや洗濯機の普及率は約9割、カラーテレビや冷蔵庫の普及率はほぼ10割となっており(乙全37)、生活保護受給世帯においても、教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度を教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わらない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目(例えば教養娯楽費)に限り、生活扶助相当CPIの指数品目から除外し、又はそのウエイトを調整することを検討したとしても、生活扶助費で支出される品目以外を機械的に除外するという方法と比べて、かえって恣意的な方法となるおそれがある。 なお、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設定に当たり、- 61 -平成20年以降の物価変動率をより正確に把握することを1 、かえって恣意的な方法となるおそれがある。 なお、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設定に当たり、- 61 -平成20年以降の物価変動率をより正確に把握することを1つの重要な考慮要素として斟酌しているものの、考慮すべき要素はそれに限られるわけではなく、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かりやすさ)も考慮したものである。 すなわち、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、生活扶助相当CPIの変動率を考慮要素の1つとし、これが生活保護受給世帯と一般国民との不均衡を是正するのに相当なものかという観点からの検討を行っており、さらに、激変緩和措置として、ゆがみ調整とデフレ調整を併せた減額幅の上限を10%としており、最終的には、このような激変緩和措置後の生活扶助基準額をもって生活保護法3条、8条2項にいう最低限度の生活を下回るものではないと判断したものである。そして、基準部会が行う評価・検証は、その時点における保護基準について専門技術的な見地から客観的に評価するものであり、政策的な判断が介在しない一方で、生活扶助相当CPIは、平成20年以降の社会経済情勢等により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図りつつ、生活扶助基準の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく物価を指標として改定を行うという政策的判断があり、このような判断に基づき設定されるものであるため、その設定に当たっては、その用いる資料等の取捨選択や考慮する要素についても、厚生労働大臣の政策的判断に関する合目的的な裁量が認められるというべきである。そうすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、これに っては、その用いる資料等の取捨選択や考慮する要素についても、厚生労働大臣の政策的判断に関する合目的的な裁量が認められるというべきである。そうすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、これにより算出される物価変動率の正確性が重要な考慮要素の1つであるものの、唯一絶対のものとはいえず、恣意的な判断- 62 -が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かりやすさ)も考慮要素となり得るものである(平成15年中間取りまとめにおいても、改定の指標の在り方について「国民にとってわかりやすいものとすることが必要」とされている。)。 したがって、生活扶助相当CPIの設定に関する判断過程審査においても、上記のような前提を踏まえて判断されなければならず、生活扶助相当CPIにより求められる物価変動率の正確性を殊更に強調することは、厚生労働大臣の判断過程を正解しないものであり、結果として判断過程審査の枠組みを逸脱するものである。 e 本件下落率の算定過程厚生労働大臣は、総務省CPIのデータ(生活扶助費で支出される品目の平成20年と平成23年の各価格指数及び平成22年基準のウエイト)を用いて、平成20年から平成23年までの期間における物価変動率を算出することとしたが、その具体的な過程は、次のとおりである。 まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」から、生活扶助費で支出される平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準のウエイト(乙全29の黄色箇所)を抜き出し、一覧表にまとめる(乙全30がその一覧表である。)。次に、上記一覧表中の「②CPI」欄に記載されている 及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準のウエイト(乙全29の黄色箇所)を抜き出し、一覧表にまとめる(乙全30がその一覧表である。)。次に、上記一覧表中の「②CPI」欄に記載されている各品目別の価格指数に、「ウェイト」欄記載のウエイトの数値を乗じ(それが「①×②」欄記載の数値である。)、さらに、「①×②」欄記載の数値を合計すると、平成20年が646627.9、平- 63 -成23年が635973.1となる。これらの数値を、生活扶助費で支出される品目のウエイトの合計である6189(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除すると、 平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5となる。 その結果、上記期間における生活扶助相当CPIの変化率は、-4.78%((99.5-104.5)÷104.5)×100)と算出される。 なお、デフレ調整においては、平成22年の基準改定による新規採用品目32品目の価格を観察できなかったことから、上記品目(欠価格品目)の価格指数を除外して平成20年の生活扶助相当CPIを算定しており、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとでは、計算上の指数品目数が異なっている。 もっとも、欠価格品目の価格を計算上除外して物価指数を算出した場合、その価格動向が他の全ての品目の(平均的な)価格動向と同じと仮定したことになる(乙全92の8頁。甲全230の1の283頁)。生活扶助相当CPIにおける欠価格の上記処理方法は、生活扶助相当CPIは、元々総務省CPIの指数品目の一部だけを対象に算出しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目とそうでない品目が混在することとなり、同じ「類」に属する他の品目の特定は難し 活扶助相当CPIは、元々総務省CPIの指数品目の一部だけを対象に算出しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目とそうでない品目が混在することとなり、同じ「類」に属する他の品目の特定は難しいこと、欠価格は、その性質から正解となる価格の動向は観察不能であり、どのような処理をしても真の価格動向との差は避けられないこと、欠価格となっている32品目は、ウエイトにして約3%にすぎず、その影響は限定的と予想されることからすれば、実務上の妥当な処理と評価できるものである。 本件下落率をもってデフレ調整における改定率とした理由- 64 -厚生労働大臣は、前記eのとおり、平成20年から平成23年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率を-4.78%(本件下落率)と算出した。 そして、厚生労働大臣は、平成21年全国消費実態調査によれば、夫婦子1人世帯について、一般低所得世帯の消費水準が生活扶助基準額を大幅に下回る状況であることを確認しており、仮に消費実態に基づいて基準額の改定を行えば、実際に行われた本件改定以上に大幅な減額改定となることを認識していたものであり、平成20年以降の物価下落は、同年9月のリーマンショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落している状況にあったことから、同年以降の社会経済情勢等に照らして、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に生じた不均衡を是正する改定をするに当たっては、その改定率を、上記期間における生活扶助相当CPIの変化率と同じく-4.78%とするのが相当であると判断したものである。 基準部会等の専門家に対して意見を求めなかった理由 ては、その改定率を、上記期間における生活扶助相当CPIの変化率と同じく-4.78%とするのが相当であると判断したものである。 基準部会等の専門家に対して意見を求めなかった理由厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、基準部会等の専門家に対して意見を求めなかったが、その理由は、これを義務付けられているものではないこと(前記ア)に加え、以下のとおりであり、基準部会等の専門家による検討・検証を経ていないことは、専門的知見との整合性に欠けること、ひいては裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味しない。 a 平成25年検証において生活扶助基準の水準の検証が行われなかったこと基準部会は、生活扶助基準の水準についても検証を行うことを検- 65 -討しており、厚生労働大臣は、基準部会による検証結果を踏まえて生活扶助基準を改定することも想定していたが、結果的に、基準部会において生活扶助基準の水準の検証は行われなかった。 b 厚生労働大臣は生活保護基準改定に係る専門技術的知見を有していること厚生労働大臣は、生活保護行政の責任者として必要となる専門技術的知見を蓄積しており、保護基準の改定に係る判断は、専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものであり、デフレ調整の内容は、それまでの生活扶助基準の改定の基本的な考え方や専門機関による検証と齟齬するものではなかった。 c 社会保障制度改革推進法の附則により、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが求められていたこと平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)の附則2条1号には、政府は「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する ていたこと平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)の附則2条1号には、政府は「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記されていた。 当時の社会経済情勢に照らせば、生活扶助の給付水準の適正化は、減額改定をいうものと解するのが当然であるといえ、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていた。生活保護については予算措置を伴うことから、保護基準の改定内容を平成25年度予算案に盛り込むための時間的制約もあった。 d 厚生労働大臣が行う保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないこと基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設部会であるが、その設置の趣旨及び審議事項は、生活保- 66 -護基準の定期的な評価・検証であって、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について審議検討することや、経済的・社会的条件を通じた政策的判断をすることは、その設置の趣旨及び審議事項ではない。このように、基準部会は、厚生労働大臣の判断における考慮要素の1つとして、専門的知見を集約して得られた事実の説明やその事実に係る分析、評価に関する意見を提供することが求められるものの、それを踏まえた政策的判断を求められているものではない。 そのため、仮にデフレ調整の当否等について専門家からの意見を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるかなどの検討が必要となり、専門家による検討自体に必要な期間を合わせれば、専門家からの意見聴取には相当の期間を要することが見込まれた。 を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるかなどの検討が必要となり、専門家による検討自体に必要な期間を合わせれば、専門家からの意見聴取には相当の期間を要することが見込まれた。 デフレ調整の実施以上のとおりで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の適正化を図るため、本件下落率を算出した上、この数値に相当する分を減額することが、平成20年以降の社会経済情勢等による生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正する上で相当であると判断して、デフレ調整を行うこととしたものであり、厚生労働大臣の判断過程に関して、控訴人らの主張するような統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 ウ 本件改定後に行われた基準部会による検証等デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことは、本件改定後に行われた基準部会による検証等によっても裏付けられている。 - 67 - すなわち、本件改定後に行われた基準部会による検証においては、平成26年度以降の経済指標(世帯消費、消費者物価指数及び賃金)の変化を生活扶助基準の水準に反映させるべきかについても議論がされたが、その議論の基礎とされた統計資料によれば、平成20年から平成23年までの期間における上記経済指標の変化率は、全てマイナスを示しており、収入及び生活維持に必要な金額は実質的に減少していると評価される状況にあった。 上記検証においては、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証がされたところ、上記水準は、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態とおおむね均衡するこ た。 上記検証においては、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証がされたところ、上記水準は、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたと評価されており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはないものであった。 また、本件改定後の平成26年全国消費実態調査においても、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2パーセント低下していたから、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断について、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がおよそ認められないことがより一層明らかとなった。 ⑷ 激変緩和措置厚生労働大臣は、本件改定における激変緩和措置として、①ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10%とした上で、②その結果の反映を平成25年度から3年にわたる期間で段階的に実施することとした。 2 争点3(本件各告示による生活扶助基準の改定の国家賠償法上の違法性及び控訴人らの損害)について控訴人らの主張は、否認ないし争う。 - 68 -本件改定は、生活保護法3条、8条2項、9条等に違反するものではなく、国家賠償法1条1項の適用上、違法なものでもない。 第6 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び口頭弁論の全趣旨(民事訴訟法247条)によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 生活保護法の制定ア 生活保護法は、旧生活保護法(昭和21年法律第17号。以下「旧法」という。)を廃止し、これに代わるものとして、昭和25年に制定 よれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 生活保護法の制定ア 生活保護法は、旧生活保護法(昭和21年法律第17号。以下「旧法」という。)を廃止し、これに代わるものとして、昭和25年に制定された。 イ 旧法は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、国が差別的又は優先的な取扱いをすることなく平等に保護して、社会の福祉を増進することを目的とし(1条)、保護の種類の一つとして生活扶助を掲げていたものの(11条1項1号)、保護の程度及び方法については勅令で定めるものとし(同条2項)、保護は生活に必要な限度を超えることができない旨規定するのみで(10条)、同法が保障する生活の程度についての規定は置いていなかった。 旧法の制度に対しては、昭和24年9月13日、生活保護制度の改善強化に関する勧告が社会保障制度審議会によりされたことから、政府において同勧告に沿った内容の法案(憲法25条1項の規定と同様に、「健康で文化的な生活水準を維持することができる」生活を最低限度の生活として保障する旨を明記したもの)を国会に提出し、両議院での審議を経て、昭和25年法律第144号として生活保護法が制定、公布され、即日施行された(同法附則1項参照)。また、生活保護法の施行に伴い、旧法は廃止された(生活保護法附則2項)。 ⑵ 生活扶助基準の改定方式の経緯- 69 -ア 生活保護法の施行当初は、生活扶助基準の改定方式として、旧法において昭和23年以降採用されていたマーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類費、家具什器費、入浴料といった個々の品目を1つ1つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が引き続き採用され、昭和36年4月以降は、エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理 、家具什器費、入浴料といった個々の品目を1つ1つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が引き続き採用され、昭和36年4月以降は、エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて、別に低所得世帯の実態調査から当該飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)が採用された。(甲全4の2、乙全7の2)イ 社会福祉審議会生活保護専門分科会は、当面の生活保護水準の改善について検討を行い、昭和39年12月16日付けで、それまでの審議の内容を中間報告として取りまとめ、厚生大臣(当時)に対し、これを提出した。 厚生大臣は、これを踏まえ、昭和40年4月以降、生活扶助基準の改定方式として、格差縮小方式(民間最終消費支出の伸び率を基礎として、その伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般世帯と生活保護受給世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を採用した。 (以上につき、甲全4の1・2、甲全160、乙全7の2、乙全34)ウ 中央社会福祉審議会生活保護専門分科会は、格差縮小方式の下における生活保護の現行水準の評価、現行生活扶助基準改定方式の適否等について審議を行い、昭和55年12月付けで、それまでの検討状況を中間的に整理し、今後の検討の方向性を明らかにするものとして、「生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ」を作成した。 上記中間的とりまとめは、概要、①生活保護の現行水準について、「昭和40年度以降、低所得世帯との消費支出水準格差を縮小することを目的とした格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されてきた結果、- 70 -当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべきである。 しかし、消費支出の内容を 出水準格差を縮小することを目的とした格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されてきた結果、- 70 -当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべきである。 しかし、消費支出の内容を詳細に分析すると、栄養摂取の態様については主食の比率が高いこと等未だ貧困性が強く認められ、さらに地域社会の成員としてふさわしい生活を営むために不可欠な交通費、教育費、交際費等社会的経費は一般世帯のみならず第1・10分位階級等の世帯と比較しても著しいひらきがあることなどを勘案すると被保護世帯の消費支出の水準は今後さらに改善を要するものと認められる。」などとし、また、②生活扶助基準改定方式について、「生活保護の目的は国民の最低生活、即ち、最低限度の消費支出を保障することであり、その具体的保障水準を表す生活扶助基準は、当該年度に予想される一般国民の消費生活の動向に対応して設定されなければならない。それ故、生活扶助基準改定方式としては、消費支出を指標とし、かつ、予想される生活水準に対応できるものであることが前提となる。」、「現行の生活扶助基準改定方式は、・・・低所得世帯と被保護世帯の消費支出水準格差を縮小する、いわゆる格差縮小方式であり、前述のごとくその格差縮小が十分でない現状においては、現行方式の考え方は妥当性を有するものと認められる。」などとしていた。(乙全9)厚生省の審議会である中央社会福祉審議会は、生活保護専門分科会における検討を踏まえ、昭和58年12月23日付けで、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(昭和58年意見具申)を取りまとめ、厚生大臣に対し、提出した。昭和58年意見具申は、概要、①冒頭で、「第2次石油危機を契機とする長期の景気停滞のもとで、わが国の経済は、雇用機会や賃金上昇率の低下などの現象が顕在 具申)を取りまとめ、厚生大臣に対し、提出した。昭和58年意見具申は、概要、①冒頭で、「第2次石油危機を契機とする長期の景気停滞のもとで、わが国の経済は、雇用機会や賃金上昇率の低下などの現象が顕在化しているほか、人口の急速な高齢化も進行しており、生活基盤のぜい弱な低所得者階層が増加する傾向にある。一方、国家財政は、益々窮迫の度を加えており、限られた財源のより効果的な配分を確保するため、各種施策- 71 -についての見直しが要請されているが、国民生活の最後の拠り所として要保護者の最低生活を守る責務を負わされている生活保護制度は、常にその基本的立場を堅持して、国民の付託に応えなければならないことは、改めて言うまでもない。当審議会は、このような認識のもとに、生活保護制度の機能が、将来にわたり堅持されることを期待して、当審議会生活保護専門分科会において、①現行生活扶助基準の評価とそれを受けた生活扶助基準改定方式のあり方、及び②老齢加算等のあり方について検討を行ってきたが、このたび当面の問題についての意見が、一応まとまったので、ここに具申するものである。」と謳った上で、②生活扶助基準の評価について、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであることは、既に認められているところである。」、「国民の生活水準が著しく向上した今日における最低生活の保障の水準は、単に肉体的生存に必要な最低限の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度のもの、即ち家族全員が必要な栄養量を確保するのはもちろんのこと、被服及びその他の社会的費用についても、必要最低限の水準が確保されるものでなければならない。」、「このような考え方に基づき、総理府家計調査を所得階層 全員が必要な栄養量を確保するのはもちろんのこと、被服及びその他の社会的費用についても、必要最低限の水準が確保されるものでなければならない。」、「このような考え方に基づき、総理府家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果、現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、生活保護世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。」などとし、さらに、③生活扶助基準改定方式について、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当た- 72 -っては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整がはかられるよう適切な措置をとることが必要である。」、「また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。」などとしていた。(乙全8)なお、昭和58年意見具申において、上記のとおり、当時の生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得たとされているが、これは、昭和54年家計調査特別集計結果による収入階級別消費支出額(当時の標準世帯である勤労者4人(有業1人)世帯)について、「変曲点」の概念を用いて検証した結果である(この考え方は、収入階級ごとの消費支出額を比較すると、所得の減少に による収入階級別消費支出額(当時の標準世帯である勤労者4人(有業1人)世帯)について、「変曲点」の概念を用いて検証した結果である(この考え方は、収入階級ごとの消費支出額を比較すると、所得の減少に伴って、消費支出はゆるやかに減少するものであるが、ある所得階層以下になると、それまでのゆるやかな低下傾向と離れて、急激に下方へ変曲する所得分位のあることが認められるとし、これを「変曲点」と解釈して、社会的に必要不可欠な消費水準があると仮定すると、所得が減っていってもこの消費水準を維持しようとするが、ある水準の所得を超えて低くなると、この消費水準を維持することができなくなり、急激に消費水準が低下するため、このような変曲点が生ずると解釈し、この変曲点を境として、それ以下の水準では最低生活を営むことが難しくなるとするものである。)。(乙A10、32、33)厚生大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年4月以降、生活扶助基準の改定方式については、一般国民生活における消費水準との比較において相対的なものとして設定するとの観点から、水準均衡方式(改定時点の生活扶助基準が、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当- 73 -であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式)を採用し、毎年度、政府経済見通し(翌年度にかけての経済財政運営の基本的態度やそれに基づく経済の姿について、政府の公式見解を表明するものであり、通常、各年度の予算政府案(概算)の閣議決定前に閣議了解され、予算案の国会提出と同時に閣議決定されている。)の民間最終消費支出(物価の変動分を除外しない名目値)の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するとともに、人口増減の影響を調 解され、予算案の国会提出と同時に閣議決定されている。)の民間最終消費支出(物価の変動分を除外しない名目値)の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するとともに、人口増減の影響を調整して、生活扶助基準の改定率(民間最終消費支出の伸びと必ずしも一致するものではない。)を算定していた。(甲全4の2、乙全7の2、乙全8、10、21、33、65)⑶ その後の検討等ア 平成15年中間取りまとめ 日本の社会経済情勢は、水準均衡方式が採用された昭和59年以降、平成3年頃まで、完全失業率が低下傾向にあり、賃金、物価及び消費支出がいずれも増加傾向にあったが、いわゆるバブル景気の終了に伴い、平成4年頃から、完全失業率が上昇するとともに、賃金、物価及び消費支出の増加率がいずれも鈍化し、平成10年ないし11年頃以降、賃金、物価及び消費支出がいずれも下落するデフレ状況となった。 (乙全11)そして、平成12年5月、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案に対する衆議院及び参議院の各附帯決議により、「生活保護の在り方について、十分検討を行うこと」とされた。(乙全12の1・2)また、平成15年6月、社会保障審議会の意見において、「生活保護については、他の社会保障制度との関係や雇用政策との連携など- 74 -にも留意しつつ、今後、その在り方についてより専門的に検討していく必要がある。」などとされ、財務省の審議会である財務制度等審議会の建議において、「近年の物価・賃金動向等の社会経済情勢の変化を踏まえるとともに年金制度改革における給付水準の見直しとも一体的に検討すれば、生活扶助基準・加算の引下げ・廃止、・・・など制度・運営の両面にわたり多角的かつ抜本的な検討が必要 の社会経済情勢の変化を踏まえるとともに年金制度改革における給付水準の見直しとも一体的に検討すれば、生活扶助基準・加算の引下げ・廃止、・・・など制度・運営の両面にわたり多角的かつ抜本的な検討が必要である。」などとされ、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護その他福祉の各分野においても、制度、執行の両面から各種の改革を推進する」、「年金・医療・介護・生活保護などの社会保障サービスを一体的にとらえ、制度の設計を相互に関連づけて行う。」、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である。」との基本方針が示された。(乙全12の1・2)以上のような状況の下で、厚生労働大臣は、水準均衡方式に基づき、生活扶助基準について、昭和59年度から平成12年度までは、毎年、増額改定(平成2年度以降、増額率は漸減傾向)を行い、平成13年度及び平成14年度は、いずれも据え置き、平成15年度及び平成16年度は、いずれも若干の減額改定をした。(乙全10) 厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)は、平成15年7月28日、社会保障審議会運営規則8条に基づき、その福祉部会の下に、生活保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について議論することを目的として、学識経験者を中心とする12名の委員により構成される、生活保護制度の在り方に関する専門委員会(専門委員会)を設置した。(乙全12の1・2)- 75 -専門委員会は、同年8月6日以降、月1回程度の頻度で開催され、生活扶助基準の在り方や、生活扶助基準 り方に関する専門委員会(専門委員会)を設置した。(乙全12の1・2)- 75 -専門委員会は、同年8月6日以降、月1回程度の頻度で開催され、生活扶助基準の在り方や、生活扶助基準の改定を賃金や物価等に基づき行うことについて議論をし、委員長から、「例えば年金等は物価スライドで来ていますので、そっちの方がわかりやすいと言えば、分かりやすいわけです。ですから、当然、何を勘案するかということは議論の対象になり得ますので、そういうものとして意見をお出しいただければいいと思います。」などと問いかけがされたが、委員からは、物価を指標として生活扶助基準の改定を行うことは、一般国民の生活水準との相対性を確保することを目的とした水準均衡方式から相当外れることになるため、慎重に行う必要がある、民間最終消費支出を取らないで物価を前提とした議論でこれを行うということは、国民の生活の質向上に見合ったものを担保しないということになる、消費者物価指数の伸びを用いるという議論は、意見としてはそう多数の意見が出た記憶がないなどの意見が出された。(甲全68、69) 専門委員会は、平成15年12月16日付けで、専門委員会の生活扶助基準についての考え方を差し当たり示すものとして、「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(平成15年中間取りまとめ)を公表した。平成15年中間取りまとめの概要は、次のとおりである。(乙全13)a 生活扶助基準の評価生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。このような考え方に基づき、第1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準に においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。このような考え方に基づき、第1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果は、次のとおりである。 - 76 -第1/10分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い。 第1/10分位(第1~第5/50分位)のうち、食費、教養娯楽費等の減少が顕著な分位である第1~第2/50分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い。 第1/10分位のうち、残りの第3~第5/50分位の消費水準(結果として第1/5分位の消費水準に近似)と勤労控除額を除いた生活扶助基準額とを比較すると均衡が図られている。しかし、被保護世帯の消費可能額である勤労控除額を含めた生活扶助基準額と比較すると、後者が高い。 b 生活扶助基準第1類費及び第2類費の設定の在り方標準3人世帯を基準として具体的な世帯類型別にこれを展開してみると、いくつかの問題がみられる。 第1類費の年齢別格差マーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別栄養所要量及び一般低所得世帯の年齢別消費支出額と比較して検証したところ、概ね妥当であるが、年齢区分の幅についてはもう少し大きく取るべきだという意見もあるなど、その在り方については引き続き検討することが必要である。また、0歳児については、人工栄養費の在り方を含めた見直しが必要である。 世帯人員数別の生活扶助基準生活扶助基準額は、個人消費 は引き続き検討することが必要である。また、0歳児については、人工栄養費の在り方を含めた見直しが必要である。 世帯人員数別の生活扶助基準生活扶助基準額は、個人消費部分(第1類費)と世帯共同消費部分(第2類費)によって構成されているが、この両者の割合は一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きい。 また、このように相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わさ- 77 -れるために、多人数世帯ほど基準額が割高になることが指摘されている。 これを是正するために、3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要である。 また、世帯人員別に定めた第2類費の換算率については、一般低所得世帯における世帯人員別第2類費相当支出額の格差を踏まえ、多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。 単身世帯の生活扶助基準単身世帯の生活扶助基準における第1類費及び第2類費の構成割合については、現在の3人世帯を基軸とする基準設定では、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっていない。 したがって、一般に単身世帯数が増加している中で、とりわけ被保護世帯の約7割が単身世帯であること、単身世帯における第1類費及び第2類費については一般世帯の消費実態からみて、これらを区分する実質的な意味が乏しいことも踏まえ、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 c 生活扶助基準の改定方式の在り方この改定方式(水準均衡方式)は ては、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 c 生活扶助基準の改定方式の在り方この改定方式(水準均衡方式)は概ね妥当であると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 また、定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、- 78 -民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 なお、急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要である。 イ 平成16年報告書について 専門委員会は、平成15年中間取りまとめ以降引き続き行った生活保護基準の妥当性の検証・評価等を踏まえ、平成16年12月15日付けで、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(平成16年報告書)を公表した。平成16年報告書のうち生活保護基準の在り方(生活扶助基準の評価・検証等と級地)に関する部分の概要は、次のとおりである。(甲全3、乙全4)a 生活扶助基準の評価・検証等 評価・検証水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯 る。(甲全3、乙全4)a 生活扶助基準の評価・検証等 評価・検証水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた- 79 -生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当支出額よりも高くなっていること、各種控除が実質的な生活水準に影響することも考慮する必要がある。 また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。 設定及び算定方法現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算出される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に次の点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 ⅰ 多人数世帯基準の是正かねてより、生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが、これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くな がある。 ⅰ 多人数世帯基準の是正かねてより、生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが、これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなり、スケールメリット効果が薄れるためである。 このため、中間とりまとめにおいて指摘した第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか、世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。 ⅱ 単身世帯基準の設定中間とりまとめで指摘したとおり、単身世帯の生活扶助基準についても、多人数世帯の基準と同様、必ずしも一般低所得世- 80 -帯の消費実態を反映したものとなっていない。また、被保護世帯の7割は単身世帯が占めていること、近年、高齢化の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後もさらにその傾向が進むと見込まれる。これらの事情にかんがみ、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが必要である。 ⅲ 第1類費の年齢別設定の見直し中間とりまとめにおいても指摘したとおり、人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や、第1類費の年齢区分の幅の拡大などについても見直しが必要である。 b 級地現行級地制度については昭和62年度から最大格差22.5%、6区分制とされているが、現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたところである。このため、市町村合併の動向にも配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 厚生労働大臣は、平成 れたところである。このため、市町村合併の動向にも配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 厚生労働大臣は、平成16年報告書において、勤労3人世帯の生活扶助基準について低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった旨の結果が示されるとともに、多人数世帯基準の是正の必要性等が指摘されたことを踏まえ、平成17年度の生活保護基準の改定において、同年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、生活扶助基準を据え置くこととする一方で、生活扶助基準の展開部分に関し、同年度以降、第1類- 81 -費について、4人世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の逓減率を導入し(3年間で段階的に実施)、第2類費について、4人以上世帯の生活扶助基準を抑制する旨の見直しを行った。(甲全290、乙全7の3、乙全74)また、厚生労働大臣は、平成18年度及び平成19年度の生活保護基準の各改定において、それぞれ、各年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、いずれも生活扶助基準を据え置くこととした。(甲全291、乙全75、76)ウ 平成19年報告書について 平成16年報告書において、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとされていたこと、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、生活扶助基準に 極めるため全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとされていたこと、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しと級地の見直しを行うなどとされたことから、平成19年10月、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うため、生活扶助基準に関する検討会(検討会)が設置された。この検討会は、5名の学識経験者等で構成された組織であるが、国家行政組織法に基づく審議会等に当たるものではなく、厚生労働省社会・援護局長が行政運営上の参考に資するため、有識者の参集を求めて意見聴取を行った会議体である。 (甲全4の1、74の2、乙全14の1・2)検討会は、平成19年10月19日から同年11月30日までの約1か月半の間に5回の会議を開催し、平成16年全国消費実態調査の結果等を用いて、主な検討項目である①水準の妥当性(生活扶助基準- 82 -の水準が、生活保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか)、②体系の妥当性(生活扶助基準において第1類費と第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうか)、③地域差の妥当性(現行の級地制度においては、最も高い級地と最も低い級地の基準額の較差が22. 5%となっているが、これが地域間における生活水準の差を反映しているかどうか)等に関して、主に統計的な分析をもとに、専門的かつ客観的に評価・検証を実施した(平成19年検証)。(甲全4の1、74の3) 検討会は、平成19年11月30日付けで、「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書)を公表した。平成19年報告書の概要は、次 平成19年検証)。(甲全4の1、74の3) 検討会は、平成19年11月30日付けで、「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書)を公表した。平成19年報告書の概要は、次のとおりである。(甲全4の1、乙全5)a 評価・検証の方法生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である。 b 生活扶助基準の水準 基本的な考え方被保護世帯のうち3人世帯は5.5%(平成18年度平均)にすぎないことを踏まえ、夫婦子1人世帯だけではなく、被保護世帯の74.2%(同)を占める単身世帯にも着目し、評価・検証を実施した。 消費実態との比較による評価・検証夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位における生活扶助相当支出額は世帯当たり14万8781円であったのに対し、- 83 -それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっている。なお、第1・五分位で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、生活扶助基準額がやや低めとなっている。 単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。なお、第1・五分位で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。 の生活扶助基準額は世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。なお、第1・五分位で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたが、第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、今回、これを変更する理由は特段ないと考える(ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある。)。 c 生活扶助基準の体系 基本的な考え方生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、- 84 -必要な見直しを行っていくことが必要である。 平成16年報告書の指摘を受けて、既に平成17年度より、第1類費について4人以上の世帯の場合に、一定程度、規模の経済(スケールメリット)を考慮に入れて設定しているところであるが、見直し後の世帯人員別、年齢階級別の基準額について、改めて消費実態を反映しているか評価・検証を実施した。 消費実態との比較による評価・検証世帯人員別に設定さ が、見直し後の世帯人員別、年齢階級別の基準額について、改めて消費実態を反映しているか評価・検証を実施した。 消費実態との比較による評価・検証世帯人員別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率で、4人世帯は生活扶助基準額が2.27と、生活扶助相当支出額の1.99に比べて相対的にやや高め、5人世帯でも生活扶助基準額が2.54と、生活扶助相当支出額の2.14に比べて相対的にやや高めになっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られる。 年齢階級別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、単身世帯の第1~3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率で、20~39歳では生活扶助基準額が1.05と、生活扶助相当支出額の1. 09に比べて相対的にやや低め、40~59歳では生活扶助基準額が1.03と、生活扶助相当支出額の1.08に比べて相対的にやや低めとなっている。一方、70歳以上では生活扶助基準額が0.95と、生活扶助相当支出額の0.88より相対的にやや高めであるなど消費実態からやや乖離している。 - 85 -現在の生活扶助基準は、年齢階級別に設定された個人的経費の第1類費と、世帯人員別に設定された世帯共通経費の第2類費に分けられているが、実際の消費実態がこうした考え方に当てはまるか評価・検証を行った。その結果、個人的経費である第1類費相当の支出額に 費の第1類費と、世帯人員別に設定された世帯共通経費の第2類費に分けられているが、実際の消費実態がこうした考え方に当てはまるか評価・検証を行った。その結果、個人的経費である第1類費相当の支出額についても世帯人員によるスケールメリットがみられ、また、世帯共通経費である第2類費相当の支出額についてもその世帯員の年齢階級別で差がみられた。したがって、第1類費と第2類費に区分された基準額が実際の消費実態を反映しているとはいえない状況となっているといえる。このため、世帯人員別のスケールメリットを消費実態に合わせて反映させるためには、必ずしも第1類費、第2類費に区分する必要性はないと考えられる。 d 生活扶助基準の地域差 基本的な考え方平成16年報告書において、「一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められ」、「今後詳細なデータによる検証」を実施する必要があるとされたことから、今回、改めて消費実態について評価・検証を実施した。 消費実態との比較による評価・検証現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、直近である平成16年の消費実態を比較すると、地域差が縮小している傾向がみられる。 世帯類型、年齢階層などで実際の生活様式は異なるとしても、平均的には、現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきているといえる。 厚生労働大臣は、平成20年度の生活保護基準の改定において、平- 86 -成19年報告書上、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いなどの検証結果が示されたことから、生活扶助基準を上記消費実態に適合させる方向での見直しを検討したが、 おいて、平- 86 -成19年報告書上、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いなどの検証結果が示されたことから、生活扶助基準を上記消費実態に適合させる方向での見直しを検討したが、原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、生活扶助基準を据え置くこと(改定の見送り)とし、また、平成21年度の生活保護基準の改定においても、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇の家計への影響が大きいこと、同年9月のいわゆるリーマンショックに端を発した世界的な金融危機が実体経済に深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられることから、このような社会経済情勢等に鑑みて、生活扶助基準を据え置くこと(改定の見送り)とした。その後、厚生労働大臣は、平成22年度の生活保護基準の改定において、完全失業率が高水準で推移するなどの厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況に鑑みて、また、平成23年度及び平成24年度の各生活保護基準の改定においても、経済・雇用情勢等を総合的に勘案した上で、いずれも生活扶助基準を据え置くこと(改定の見送り)とした。(甲全244~248、292~297、乙全15、69~72、77)エ 平成25年検証(平成25年報告書)について 日本の経済は、平成20年以降、平成24年まで、①一般勤労者世帯の賃金は、事業所規模5人以上の調査産業計の1人当たり平均月間現金給与総額でみると、年ごとに順に、-0.3%、-3.9%、+0.5%、-0.2%、-0.7%で、②総務省CPI(全国・総合)は、平成20年には+1.4%であったが、その後は年ごとに順に、-1.4%、-0.7%、-0.3%、0.0%で、③全国勤労者世帯の家計消費支出の名目値は、平成20年 で、②総務省CPI(全国・総合)は、平成20年には+1.4%であったが、その後は年ごとに順に、-1.4%、-0.7%、-0.3%、0.0%で、③全国勤労者世帯の家計消費支出の名目値は、平成20年には+0.5%であったが、その後は年ごとに順に、-1.8%、-0.2%、-3.0%となっ- 87 -たものの、平成24年には+1.6%となった。また、高齢化や厳しい社会・経済状況もあいまって、完全失業率は、平成20年に4.0%であったが、平成21年に5.1%、平成22年に5.0%、平成23年に4.6%、平成24年に4.3%で、生活保護の受給者数は、平成23年7月に過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加しており、これに伴い、生活保護費負担金は、年々増加し、平成23年度には約3.5兆円に上っていた。 このような状況を受けて、生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しの必要性が指摘され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号には「不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと。」と記載された。(以上につき、甲全6、7、83の1、84の1、乙全6、11) 社会保障審議会は、平成16年報告書において、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、5年に一度の頻度で検証を行う必要がある旨指摘されたことを受けて、平成19年の検討会による生活扶助基準の検証(平成19年検証)に引き続き、生活保護基準の定期的な評価・検証について、学識経験者による専門的かつ客観的な審議を行うことを目的として、平成23年2月、社 平成19年の検討会による生活扶助基準の検証(平成19年検証)に引き続き、生活保護基準の定期的な評価・検証について、学識経験者による専門的かつ客観的な審議を行うことを目的として、平成23年2月、社会保障審議会令6条1項、社会保障審議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に、常設部会として、8名の学識経験者で構成される生活保護基準部会(基準部会)を設置した。(甲全6、79の2~4、乙全6、22、24) 基準部会は、平成23年4月19日から平成25年1月18日まで合計13回にわたり部会を開催して検証(平成25年検証)を行い、- 88 -同日付けで、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書)を公表した。平成25年報告書の概要は、次のとおりである。(甲全6、7、乙全6、114、115)a 検証方針と検証概要生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係で相対的に決まるものと認識されている。しかし、現行の生活扶助基準の算定については、平成16年報告書において、世帯人員別にみると、生活扶助基準が必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したスケールメリットとなっていないため、体系の設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある旨の指摘がされた。また、平成19年報告書においても、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から、必要な見直しを行っていくことが必要であるという考え方が示され、生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別な いう考え方が示され、生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当であるとされた。これらの指摘を踏まえ、基準部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。 今回の検証においては、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、第1・十分位を設定した。 その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、- 89 -世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについて、より詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 今回の検証においては、一部統計的分析手法である回帰分析を採用した。その理由は、第一は、全国消費実態調査の調査客体には10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった点を考慮したこと、第二は、今回の検証結果の妥当性を補強するため、回帰分析を用いた結果と概ね遜色がないかどうかを確認するとしたことである。 b 検証に使った統計データ今回の検証においては、国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要が 用いた結果と概ね遜色がないかどうかを確認するとしたことである。 b 検証に使った統計データ今回の検証においては、国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いた。 今回の検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。この指数は、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。その理由は、①生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能であるが、これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中- 90 -位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合は、やや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこと、⑤OECDの国際的基準によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得をスケールメリットを考慮して世帯人数の平方根で除したもの)の中位置(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は、相対的貧困層にあるとされるところ、今回の検証に用いた平成21年全国消費実態調査によれば、第1・十分位に属する世帯の大部分は、上記基準で相対的貧困線以下 データの真中の値)の半分に満たない世帯は、相対的貧困層にあるとされるところ、今回の検証に用いた平成21年全国消費実態調査によれば、第1・十分位に属する世帯の大部分は、上記基準で相対的貧困線以下にあることを示していること、⑥分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることである。 c 検証方法 生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)ⅰ 年齢階級別の基準額の水準まず、年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態と比べてどれほどの乖離があるかを検証した。 分析(回帰分析を採用した。)に際しては、スケールメリットが最大に働く場合と最小に働く場合のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 ⅱ 世帯人員別の基準額の水準第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員- 91 -別の平均消費水準を指数化(単身世帯を1)し、現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、上記で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 生活扶助基準の地域差世帯人員別の検証と同様に、平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に 帯人員による影響のみを評価できるようにした。 生活扶助基準の地域差世帯人員別の検証と同様に、平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化(1級地-1を1)したものと、現行の基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに、上記で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差による影響のみを評価できるようにした。 d 検証結果 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0~2歳の生活扶助相当支出額(消費実態)を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11歳が1.12、12~19歳が1. 37、20~40歳が1.31、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上が1.06となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となってい- 92 -る。 このように、年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められた。 世帯人員別(第1類費、第2類費)の基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額(消費実態)を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2人世帯が1.76、3 2類費)の基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額(消費実態)を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.54、2.01、2.34、2.64となっている。 このように、第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 同様に、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額(消費実態)を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、2人世帯が1.18、3人世帯が1. 31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている。 他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.34、1. 67、1.75、1.93となっている。 このように、第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人数が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 級地別(第1類費+第2類費)の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額(諸費実態)を1としたときの各級地別の指数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、- 93 -1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0. 88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっている。 このように、 3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっている。 このように、級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている 年齢・世帯人数・地域の影響を考慮した場合の水準ⅰ 前記からまでの検証結果(別紙2「生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との比較」は、これを表にしたものである。)を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、次のようになった。 例えば、現行の基準額(第1類費、第2類費、冬季加算、子どもがいる場合は児童養育加算、1人親世帯は母子加算を含む)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、①夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べて-2.9%、世帯人員による影響が-5.8%、地域による影響が+0.1%で、これらを合計した影響が計-8.5%となった。同様に、②夫婦と18歳未満の子2人世帯では順に-3.6%、-11.2%、+0. 2%、計-14.2%となり、③60歳以上の単身世帯では順に+2.0%、+2.7%、-0.2%、計+4.5%となり、④ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では順に+2.7%、-1. 9%、+0.7%、計+1.6%となり、⑤20~50代の若年単身世帯では順に-3.9%、+2.8%、-0.4%、計-1.7%となり、⑥母親と18歳未満の子1人の母子世帯で- 94 -は順に-4.3%、-1.2%、+0.3%、計-5.2%となった。 このように、世帯員の年齢、世帯人員、居 -1.7%となり、⑥母親と18歳未満の子1人の母子世帯で- 94 -は順に-4.3%、-1.2%、+0.3%、計-5.2%となった。 このように、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々である。 ⅱ 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 e 検証結果に対する留意事項今回試みた検証手法は、平成19年報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているかを詳細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。 しかし、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は、金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析す- 95 -る際にサンプルが極めて少数 ると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析す- 95 -る際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 今回採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても、委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。さらに基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。とりわけ、第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても、留意が必要である。 今般 いと考えられることに留意すべきである。また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても、留意が必要である。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮- 96 -する必要がある。 さらに、基準額の見直しによる影響の実態を把握し、今後の検証の際には参考にする必要がある。 平成25年報告書に、前記dⅱの文言が入れられた経緯は、以下のとおりである。 基準部会において平成25年報告書を取りまとめるにあたり、同年1月16日開催の第12回部会の席上で、厚生労働省社会・援護局保護課から「生活保護基準部会報告書(案)」が示されたが、同案には、「検証結果」の項目中で、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」と記載されていた(同案7頁)。 当該記載については、厚生労働省社会・援護局保護課から、要旨、「年齢階級別、世帯人員別、級地別による生活扶助基準の見直しを行っても、第1・10分位との間に一定の差が存在するため、一般的に合理的説明が可能であれば、消費に影響を及ぼす因子を加味することは1つの考えであるが、何をもって合理的かということについても様々な考え方があり得る中で、例えば政府が発表している経済指標とか、誰が見ても数字として固まっているものを加味するということは、正当化できるだろうということであり、加味するに当たっては、相当 いても様々な考え方があり得る中で、例えば政府が発表している経済指標とか、誰が見ても数字として固まっているものを加味するということは、正当化できるだろうということであり、加味するに当たっては、相当程度皆様から合意が得られるものでなければならないだろうという意味合いにおいて、例えばということで『経済指標など』と書かせていただいている。」、「例を挙げれば、消費者物価指数や賃金の動向などは考え得る。」旨の説明がされた。 上記説明に対し、出席の委員から、要旨、「基準部会においては、年齢、人員、級地という3要素しか議論していない。例で挙げられた- 97 -消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないことを明確にしていただきたい。」、「これも懸念であるが、直面する物価指数は、全国レベルの物価指数というものもあるが、実は地域によって、あるいは高齢世帯かどうかという世帯構成によって、さらに所得階級によって異なっている可能性がある。要するに、消費品目で物価指数というものは全く変わってくるので、そのようなことにも留意する必要がある。」、「基準部会においては物価指数については何も議論していないということと、全国一律の物価指数を当てはめることになれば、健康で文化的な最低限度の生活を具現化している生活保護基準というものがいろいろなものに参照されているという性質を考えた場合、非常に慎重に考えなければならない。」などの意見が出された。また、別の委員からも、要旨、「基準部会において合理的説明がついたのは級地と年齢と人員数のみで、それ以外については合理的説明がつかなかったということである。」、「私たちは、平成21年のデータを使って見ているだけであり、物価の状況とか全く見ていないし、議論していない中で、誰にでも納得できるということを誰が ては合理的説明がつかなかったということである。」、「私たちは、平成21年のデータを使って見ているだけであり、物価の状況とか全く見ていないし、議論していない中で、誰にでも納得できるということを誰が判断するのかといったときに、基準部会で判断したことではないということは、明確にしていただきたいと思います。」、「『それらについても根拠を明確にして改定されたい。』は、かなり強い文言であり、議論していないことを『改定されたい』ということは、やはりできないと思います。 ここのところは、基準部会の委員として非常に気になるところです。 」などの意見が出されたもので、「消費者物価指数や賃金の動向」を根拠に改定することについては、「相当程度皆様から合意が得られる」ことはなかったのである。 これらの意見を踏まえた議論を受けて、上記の記載は、平成25年報告書において、前記dⅱのとおり、「厚生労働省において生活- 98 -扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」という文言(表現)に修正された。(甲全6、84の1・3、乙全6、25) 研究者からの指摘この時期の生活保護制度の見直しに関する議論については、平成24年11月、研究者から、雑誌に投稿した記事中で、「生活保護改革への意見」として、物価が下落しているという一般的なイメージがあるとしても、あらゆる商品価格が一律に下落しているわけではなく、例えば、平成22年と平成23年の1年間でも、教養娯楽用耐久財であるテレビ30.9%、ビデオレコーダー40.0%、パソコンのデスクトップ型39.9%、ノート型24.0%、カメラ28.0%の はなく、例えば、平成22年と平成23年の1年間でも、教養娯楽用耐久財であるテレビ30.9%、ビデオレコーダー40.0%、パソコンのデスクトップ型39.9%、ノート型24.0%、カメラ28.0%の下落となっている反面、衣食住に要する費用は、食料0.4%、住居0.2%、被服及び履物0.3%と下落幅は極めて小さく、これらと並んで日常生活に欠かせない光熱・水道は3.3%の上昇、交通・通信は1.2%の上昇をしてさえいることなどを指摘し、「いかなる品目に着目するかによって物価変動についての評価が異なってくることにも留意しておかなければならない。一定の余裕があり、頻繁にパソコンやテレビ等を買い替えることができる層にとっては物価が下落していると感じられる状況であっても、・・・日々の食費や光熱水費を節約しながら生活を維持している生活保護受給者など貧困層の生活実態からみれば事情はまったく異なるのである。物価の下落を根拠に生活保護基準引き下げを主張する議論は、意識的にか無意識的にか、こうした実態を無視したものだと言わざるを得ない。」、「生活保護制度がこれほどの攻撃を受けるのはなぜであろうか。財政的には、吉永- 99 -らが明示した通り、生活保護基準が課税最低限や賃金水準、各種社会保障制度の給付水準を規定しているため、ここに手をつければ自動的に賃金や社会保障の水準を低下させることができるからであろう。」、「生活保護法第1条に規定されている通り、生活保護基準は、日本という国における健康で文化的な最低限度の生活水準として設定されているものであり、実際にも賃金や社会保障給付水準を規定している。 その生活保護基準を引き下げることは、国際社会に向けても、日本という国のレベルが、政治的にも経済的にも、全体として低下したのだと宣言することを意味するのではないだ や社会保障給付水準を規定している。 その生活保護基準を引き下げることは、国際社会に向けても、日本という国のレベルが、政治的にも経済的にも、全体として低下したのだと宣言することを意味するのではないだろうか。」などの指摘がされていた。(甲全392)オ 厚生労働省内における生活保護制度見直しの検討基準部会は、前記エのとおり、平成25年1月18日、平成23年4月から行われてきた平成25年検証の成果である平成25年報告書を公表したが、厚生労働省内では、これより前に、平成25年報告書の取りまとめに向けた作業と並行して、平成25年度以降に行う生活保護制度の見直しについて、具体的な検討を行っていた。その概要等は、以下のとおりである。(甲全141、223の1~3、甲全224、B証人) 全体像として、「生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総合的に取り組むとともに、生活保護基準の見直しを行う。」とした上、「1.生活保護法の改正」、「2.生活困窮者の就労・自立支援のための新法の制定」及び「3.生活保護基準の見直し」を行うものとし、生活保護基準の見直しのポイントとして、「以下の考え方により生活保護基準の見直しを実施」として、「①年齢・世帯人員・地域差による影響の調整、②前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向の勘案、③必要な激変緩和措置の実施」を挙げていた。 - 100 - 前記①(年齢・世帯人員・地域差による影響の調整)については、「今回の基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響の調整」としていた。 前記②(前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向の勘案)については、「物価動向を勘案する理由」として、「前回の見直し(平成20年)以降、基準額は見直されて 響の調整」としていた。 前記②(前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向の勘案)については、「物価動向を勘案する理由」として、「前回の見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていないが、その間、デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の見直しを行う。」とし、「物価動向を勘案する起点」として、「前回の検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断として、平成20年度以降の基準を据え置くことが妥当とされたことから、物価動向を勘案する起点は平成20年以降とする。」としていた。 前記③(必要な激変緩和措置の実施)については、「基準の見直し幅の上下限の設定」及び「基準の見直しの段階的実施」の2つを挙げていた(なお、ここに2分の1処理は挙げられていない。)。 厚生労働省において「世帯類型ごとの基準額」の試算等を行った結果は、別紙3のとおりであった。ここでは、「基準部会における検証結果である年齢・世帯人員・地域差による影響を完全に調整した場合」の基準額の試算等を行った上、「見直し後の基準額」として、「年齢・世帯人員・地域差による影響の調整を1/2とし、平成20年から23年の物価動向を勘案した場合(世帯ごとの増減幅は最大10%とした上で、平均値を算出。)」の基準額の試算等が行われている。 そして、厚生労働省において見直し後の基準額に基づいて試算した財政効果は、別紙4のとおりであった。 生活保護基準の見直しの施行時期については、「システム改修、地方自治体への周知徹底に要する期間等について、見極める必要がある。 - 101 -」とし、「施行が遅れると、その分、25年度の財政効果が縮減されることになる。」としていた。 修、地方自治体への周知徹底に要する期間等について、見極める必要がある。 - 101 -」とし、「施行が遅れると、その分、25年度の財政効果が縮減されることになる。」としていた。 また、「今後のスケジュール案」として、「1月18日 生活保護基準部会で報告書とりまとめ」、「1月23日 社会保障審議会特別部会で報告書とりまとめ予定」、「1月末 25年度政府予算案閣議決定」とし、「具体的な生活扶助基準額の見直しについては、生活保護基準部会の報告書を考慮しつつ、予算編成過程で政府として判断。 」としていた(なお、このようなスケジュール案や以上の内容等からすると、厚生労働省では、生活保護基準部会で平成25年1月18日に平成25年報告書をとりまとめるより相当前から、以上のような生活保護制度見直しの検討を行っていたことが認められる。)。 カ 厚生労働省社会・援護局保護課は、基準部会により平成25年報告書が公表された9日後の同年1月27日、「生活扶助基準等の見直しについて」(乙全112)を公表した。その概要は、以下のとおりである。 「生活扶助基準等の見直しの考え方と影響額」として、「①今回の生活保護基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整【財政効果:90億円】」、「②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向を勘案【財政効果:本体分510億円、加算分70億円】」、「3年間の効果額:約670億円(25年度効果額:約150億円)」とし、「以下の激変緩和措置を講じる。」として、「現行基準からの増減幅は、過去の類例等を参考に、±10%を限度となるように調整する」、「平成25年8月から27年度まで、3年程度をかけて段階的に実施する」の2つだけを挙げた(2分の1処理については挙げていない。)。 は、過去の類例等を参考に、±10%を限度となるように調整する」、「平成25年8月から27年度まで、3年程度をかけて段階的に実施する」の2つだけを挙げた(2分の1処理については挙げていない。)。 「個々の世帯に着目した見直しの概要(ミクロベース)」として、「①ゆがみ調整分 体系及び級地の歪みの調整結果を反映。」、「②- 102 -デフレ調整分4.78% 前回見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていないが、その間デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の改定を行う。」などとし、「生活扶助基準額の見直しの具体例」として、別紙5のとおり試算したものを挙げた。 「生活扶助にかかる物価の動向について」として、「『生活扶助』は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活を賄うもの。」、「このため、生活扶助に相当する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には、品目別の消費者物価指数のうち、①家賃、教育費、医療費など生活扶助以外の他扶助で賄われる品目、②自動車関係費、NHK受信料など原則生活保護受給世帯には生じない品目を除いた品目を用いて、生活扶助相当CPIを算出した。」とし、これを「H20平均104.5」、「H23平均99.5」であるとして、「99.5/104.5-1=4.78」とした。 「平成20年からの物価を勘案することについて」として、「今回の生活保護基準部会における検証は、平成21年全国消費実態調査を用いて、年齢・世帯人員・級地ごとに、現行の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を比較し、その歪みを検証したものである。」、「具体的には、調査対象となった一般低所得世帯が現行の生活扶助基準額で生活扶助を受給 ・級地ごとに、現行の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を比較し、その歪みを検証したものである。」、「具体的には、調査対象となった一般低所得世帯が現行の生活扶助基準額で生活扶助を受給した場合の受給額の平均と、仮に一般低所得世帯の消費実態に即した生活扶助基準額を設定したとして、それに基づいて受給した場合の受給額の平均が等しくなるという前提を置くことにより、基準額と消費実態の乖離を、指数を用いて相対的に比較した。このため、今回の検証結果を反映させたとしても、基準と一般低所得世帯との消費の年齢、世帯人員、級地による乖離が調整されるのみであり、デフレ等による金額の絶対水準の調整がなされる- 103 -ものではない。」、「今回物価を勘案した考え方は、前回の検証(平成19年)結果を踏まえた上で、平成20年度の基準額が定められ、以後もその基準額が据え置かれてきた経緯に鑑み、平成20年から勘案することとしたものである。」とした。 キ 前記カの公表に対する研究者の指摘前記エの研究者は、厚生労働省が平成25年1月27日付けで、前記カの「生活扶助基準等の見直しについて」を公表したことに対し、同年2月、前記エと同じ雑誌に投稿した記事中で、「このたび強行されようとしている過去最大の生活扶助基準引き下げは、その大部分が審議会での検証結果にではなく、デフレによる物価の下落に、その正当性の根拠を求めているということになる。しかしながら、前稿において指摘しておいた通り、生活必需品から嗜好品まであらゆる商品価格が一律に下落しているわけではない。また、この10年間を観察しても、一貫して物価が下落しているのは日常的に購入しなければならない生活必需品ではなく、頻繁に購入することはないような品目に偏っている。こうしたことを考慮に入 けではない。また、この10年間を観察しても、一貫して物価が下落しているのは日常的に購入しなければならない生活必需品ではなく、頻繁に購入することはないような品目に偏っている。こうしたことを考慮に入れれば、消費者物価指数が平均的に物価下落を示しているからといって、そのことを理由に生活扶助基準引き下げを強行することは許されないというべきである。」などとして、具体的な検討を行った。 そして、その結果として、「厚生労働省が生活扶助基準引き下げの根拠として提示している『生活扶助相当CPI』4.78%下落という数値は、ここにみてきたような『ウエイト』を考慮せず、生活扶助費の多くがそこに費やされる食費や光熱水費のような品目から、生活扶助費で購入することがほとんどないテレビやパソコンなどのような品目まで、あらゆる品目を単純に平均して算出している可能性が高い。そうだとすれば、大型テレビや高価なパソコンなどを頻繁に買い替えるような高額- 104 -所得者を含めた消費傾向の影響を強く受けながら、最低生活費が算定されるという看過し得ない問題が生じることになる。」と指摘し、「この点について、厚生労働省はいかなる計算方法をもってこの数値を算出したのか、その計算方法の妥当性をいかに認識しているのかについて公表し、広く意見を聴取したうえで、あらためて生活扶助基準についての見解を発表する責務がある。」とした。 その上で、「今般の厚生労働省の意図的・政治的な数値操作がいかに欺瞞に満ちたものであるかを指摘して、本稿の結びに代えることとしたい。」として、消費者物価指数の変化率の表を掲げ、「厚生労働省にとっては、比較対象とする年次を2008年と2011年に求めることが最も有効であることが明らかであろう。前掲『生活扶助基準等の見直しについて』で『 、消費者物価指数の変化率の表を掲げ、「厚生労働省にとっては、比較対象とする年次を2008年と2011年に求めることが最も有効であることが明らかであろう。前掲『生活扶助基準等の見直しについて』で『“生活扶助”は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活を賄うもの』であると解説する厚生労働省にとって、『食料』『光熱・水道』はそろって物価が下落している必要があり、それが提示できるのはこの両年を比較対象とした場合以外にはあり得なかったのである。」、「起点を2004年に求めた場合は『食料』にも物価上昇がみられるうえに、『光熱・水道』にいたっては14.5%もの上昇となっており、このような数値を採用したのでは、生活扶助基準の引き下げどころか、むしろその引き上げを検討せざるを得なくなるからである。」などと批判した。 (以上につき、甲全393、乙全112)ク また、この頃、厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年2月19日付けで、「全国厚生労働関係部局長会議資料」(甲全7)を作成した。当該資料の「4.生活保護基準の見直しについて」の項目中には、おおむね以下のような内容が含まれている。 「生活保護基準の見直しの考え方」について、「①今回の基準部会- 105 -における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整」、「②前回見直し以降の物価の動向を勘案」として「<物価動向を勘案する理由>前回の見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていないが、その間、デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の見直しを行う。」及び「<物価動向を勘案する起点>前回の検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断として、平成20年度以降の基準を据え置くことが妥当 つ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の見直しを行う。」及び「<物価動向を勘案する起点>前回の検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断として、平成20年度以降の基準を据え置くことが妥当とされたことから、物価動向を勘案する起点は平成20年以降とする。」とし、「③激変緩和措置」として「<基準の見直し幅の上下限を設定>見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、過去の類例等を参考に、±10%を限度とする。」及び「<基準の見直しの段階的実施>生活扶助基準額の見直しは、平成25年度から、3年間をかけて段階的に実施する。」(なお、2分の1処理については挙げていない。)とした。 「生活扶助基準等の見直しの考え方と影響額」について、「<生活扶助基準について以下の考え方に基づき見直す>3年間の効果額:約670億円(25年度効果額:約150億円)」、「①今回の生活保護基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整【財政効果:90億円】」、「②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向を勘案【財政効果:本体分510億円、加算分70億円】」とした上、「※生活扶助基準の見直しにあたっては、以下の激変緩和措置を講じる。」として「見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、過去の類例等を参考に、±10%を限度となるように調整する。」及び「生活扶助基準額の見直しは、平成25年8月から27年度まで、3年程度をかけて段階的に実施する。」の2つだけを挙げた(なお、2分の1処理については挙- 106 -げていない。)。 ⑷ 本件改定ア 本件改定の概要 厚生労働大臣は、平成25年報告書で、年齢階級別、世帯人員別、級地別でみると当時の生活扶助基準が一般低 - 106 -げていない。)。 ⑷ 本件改定ア 本件改定の概要 厚生労働大臣は、平成25年報告書で、年齢階級別、世帯人員別、級地別でみると当時の生活扶助基準が一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態と乖離しているなどの検証結果が示されたとし、生活扶助基準の展開部分を適正化して生活保護受給世帯間の不公平を是正することが目的であるとして、平成25年検証の結果に基づく一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させるが、反映の程度は上記結果の2分の1とすること(2分の1処理)を内容とする、生活扶助基準の改定を行うこととした(ゆがみ調整。ただし、2分の1処理については、後記イのとおり、一般国民にも基準部会の委員らにも知らされなかった。)。(甲全7、141、乙全16)また、厚生労働大臣は、平成19年報告書において、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いなどの検証結果が示されていたが、当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれる状況が続き、その間においても、賃金、物価及び家計消費はいずれも下落するデフレ状況が継続していたから、平成20年から平成23年までの期間の物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価することができるなどとして、生活扶助相当CPIを用い、上記期間の物価下落率を4.78%(本件下落率)と算定して、これを生活扶助基準に一律に反映させる(本件下落率に相当する割合を生活扶助基準額から一律に控除する)ことを内容とする、生活扶助基準の改定(引下げ)を行うこととした(デフレ調整)。(前提事実、甲全7、乙全16)そして、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調整を合わせて行- 107 -うことにより、生活扶助基準額が大幅に げ)を行うこととした(デフレ調整)。(前提事実、甲全7、乙全16)そして、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調整を合わせて行- 107 -うことにより、生活扶助基準額が大幅に減額になる世帯が生ずることが見込まれるとし、激変緩和措置として、生活扶助基準からの増減額の幅が±10%を超えないように調整し、かつ、生活扶助基準の引下げを平成25年度から3年間かけて段階的に実施することとした。(前提事実、甲全7、乙全16) 厚生労働大臣は、本件改定に先立ち、本件改定による財政効果について、平成27年度までの3年間の合計で約670億円(ゆがみ調整による財政効果が約90億円、デフレ調整による財政効果が約580億円(本体分510億円、加算分70億円))と見積もった。(乙全16、18、112) 厚生労働大臣は、平成25年5月16日に本件告示1による生活扶助基準の改定を、平成26年3月31日に本件告示2による生活扶助基準の改定をそれぞれ実施した(本件改定)。 本件改定後の生活扶助基準額(乙全1の5枚目~11枚目(76~82頁)の「基準額②」欄記載の金額)は、本件改定前の生活扶助基準額(同「基準額①」欄記載の金額)について、最初にゆがみ調整を行い、次にデフレ調整を行うことにより、算出された金額である。(乙全1)イ ゆがみ調整について ゆがみ調整の概要本件改定におけるゆがみ調整は、平成25年検証の結果で示されていた、生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態との間の年齢階級別、世帯人員別及び級地別による各較差を是正し、生活保護受給世帯間の不公平を是正するため、上記消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させてこれを適正化すること(ただし、反映の程 態との間の年齢階級別、世帯人員別及び級地別による各較差を是正し、生活保護受給世帯間の不公平を是正するため、上記消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させてこれを適正化すること(ただし、反映の程度は上記結果の2分の1とする。2分の1処理)を内容とする生- 108 -活扶助基準の改定である。 ゆがみ調整は、前記アのとおり、一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより、生活扶助基準の展開部分を適正化して生活保護受給世帯間の不公平の是正を図ることを目的として行われたもので、生活扶助基準を一般低所得世帯の消費実態と比較することにより、生活扶助基準を引き下げるために行われたものではないとされており、このような目的からすれば、ゆがみ調整の結果として、財政効果が生まれるような生活扶助基準の引下げが生じる事態とはならないはずである。 しかし、厚生労働省においては、前記アのとおり、ゆがみ調整によって、約90億円の財政効果(生活扶助費の削減)があると試算していたもので、実際にも、これを行うことによって同程度の生活扶助費の削減効果が生じたものと認められる(なお、この点について、B証人は、「ゆがみ調整は、生活保護基準部会による平成25年検証を踏まえたものであり、一般低所得世帯における世帯の構成割合が生活保護受給世帯におけるそれと同じであれば、財政的にはプラスマイナスゼロになります。もっとも、生活保護受給世帯における世帯の構成割合が、一般低所得世帯におけるそれとは異なっていたことから、全体としては増額分より減額分が大きくなり、結果的に約90億円の財政影響が生じたものです。」などと説明している。)。(乙全113、B証人) 2分の1処理についてa 2分の1処理は、厚生労働 より減額分が大きくなり、結果的に約90億円の財政影響が生じたものです。」などと説明している。)。(乙全113、B証人) 2分の1処理についてa 2分の1処理は、厚生労働省内で「取扱厳重注意」として取り扱われた書類に記載されていて、外部には明らかにされていなかったものであり、本件改定当時、一般国民に対して明らかにされていなかったばかりでなく、基準部会の委員らに対しても全く示されてお- 109 -らず、本件訴訟の原審においても、当初の審理段階では、被控訴人らの主張にも全く表れていなかったのである。(甲全141、223の3、甲224)b 本件において、被控訴人らが、2分の1処理について主張するようになった経過は、以下のとおりである。 本件は、平成26年7月に第1事件に係る訴えが提起され、平成27年3月20日の第1回口頭弁論以降審理が重ねられてきたが、平成29年9月までの間、2年以上にわたって、被控訴人らは、2分の1処理に関する主張を全くしていなかった。すなわち、被控訴人らは、本件改定の説明ないしゆがみ調整の内容の説明として、2分の1処理に関する主張をしていなかっただけではなく、激変緩和措置としても、「生活扶助基準の見直しについては、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、①平成25年度から3年間をかけて段階的に実施する(期末一時扶助を除く)とともに、②見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、プラスマイナス10パーセントを超えないように調整している」などと主張していたのであって(答弁書45頁、平成27年4月17日付け準備書面⑴28~30頁、平成29年9月4日付け準備書面(12)7頁等)、2分の1処理は、激変緩和措置の内容としても、全く主張していなか 張していたのであって(答弁書45頁、平成27年4月17日付け準備書面⑴28~30頁、平成29年9月4日付け準備書面(12)7頁等)、2分の1処理は、激変緩和措置の内容としても、全く主張していなかったのである。 北海道新聞社の編集委員は、平成25年8月、厚生労働大臣に対し、請求する行政文書の名称等を「2013年度から3カ年かけて生活保護基準額を670億円(6.5%)減額し、期末一時扶助金70億円を減らし生活扶助費を計740億円(7.3%)カットする決定にあたり①厚労省とD・内閣官房副長官との協議、打ち合わせの全てのメモ、文書②厚労省と自民党の協議、打ち合わせの全て- 110 -のメモ、文書」とする旨の行政文書開示請求をし、一部不開示とされたが、その後、審査請求を経て、平成27年9月、「取扱厳重注意」と赤字で付記された「生活保護制度の見直しについて」と題する文書(甲全223の3。以下「本件開示文書」という。)の開示を受けた。同社は、本件開示文書に「年齢・世帯人員・地域差による影響の調整を1/2とし」と記載されていたことなどから、平成28年6月18日、本件改定において2分の1処理がされている旨を新聞報道した。なお、本件開示文書は、厚生労働省内部で生活扶助基準引下げについて検討していた内容を記載したもので、その概要は、前記⑶オのとおりである。(甲全141、223の1~3、甲全224)控訴人らは、被控訴人らに対し、平成29年10月10日付け求釈明申立書⑸において、2分の1処理を行ったか否かやその内容等に関する釈明を求めた。 そのため、被控訴人らは、平成30年6月8日付け準備書面(16)で、上記求釈明の一部につき回答し、初めて、「ゆがみ調整については、基準部会の検証結果を反映させる比率を 釈明を求めた。 そのため、被控訴人らは、平成30年6月8日付け準備書面(16)で、上記求釈明の一部につき回答し、初めて、「ゆがみ調整については、基準部会の検証結果を反映させる比率を2分の1とした事実があり、ゆがみ調整の結果、増額になる場合についても反映させる比率を2分の1としている。」と主張して、2分の1処理を行ったことを認め、「基準部会の検証の結果判明した年齢別・世帯人員別・級地別の較差に係る指数を生活扶助基準額改定の考慮要素としてそのままに反映させた場合、世帯によっては保護基準額が大幅な減額になってしまうことから、厚生労働大臣の政策的判断として、基準部会の検証結果を反映させる比率を2分の1としたものであり、これは基準部会の検証結果をできるだけ公平に反映しつつ、生活保護受給世帯への影響を一定程度に抑えるための措置である。」など- 111 -とし、「基準部会の検証結果を反映させる比率を2分の1としたことについて、これまで原告らから主張されておらず、被告らは、本件訴訟の主たる争点と直接関係すると考えていないことから、これまで主張を行っていない。」(3、4頁)などとしていたが、これ以降は、2分の1処理が存在することを前提とした主張をするようになった(なお、2分の1処理について、被控訴人らは、上記のとおり「本件訴訟の主たる争点と直接関係すると考えていないことから、これまで主張を行っていない」などと主張しているが、本件訴訟においては、厚生労働大臣が行った本件改定の統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無が審理されているものであるところ、平成25年報告書に基づくゆがみ調整を2分の1しか反映させないということは、本件改定に関する極めて重要な事実であるから、2分の1処理がされていることを踏まえるこ 無が審理されているものであるところ、平成25年報告書に基づくゆがみ調整を2分の1しか反映させないということは、本件改定に関する極めて重要な事実であるから、2分の1処理がされていることを踏まえることなしに、本件改定の統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無を審理することなどあり得ないことであって、それまでの間、被控訴人らが、2分の1処理について明らかにしてこなかったことは、訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に反するものといわざるを得ない。また、前記⑶カ及びクのとおり、厚生労働省社会・援護局保護課が平成25年1月27日に行った「生活扶助基準の見直しについて」の公表や同年2月19日付けで作成した全国厚生労働関係部局長会議資料においても、2分の1処理を行うことについては一切触れていないのであり、北海道新聞で記事とされるまで全く明らかにされてこなかったもので、国民に対する関係においても、極めて不誠実なものといえる。このような点からすると、被控訴人らが本件改定の経過や内容について具体的な説明を行っていない部分に、これに劣らない重要な事実が含まれている- 112 -可能性も否定できないのである。)。 c 被控訴人国は、2分の1処理に関し、その検討作業の内容について、現に公にされているところを超えて、本件訴訟において、これを具体的に説明したり、検討に用いた資料等を書証として提出したりするなどしなかった。 そして、本件改定についての厚生労働省の担当者であったB証人も、当審での証人尋問において、控訴人らの「本件保護基準改定に際し、『2分の1処理』を行うことは、いつから検討を始め、具体的にどのような検討作業を行ったか、明らかにされたい。」、「厚労省において、報告書どおりの『ゆがみ調整』が行われた の「本件保護基準改定に際し、『2分の1処理』を行うことは、いつから検討を始め、具体的にどのような検討作業を行ったか、明らかにされたい。」、「厚労省において、報告書どおりの『ゆがみ調整』が行われた場合、『ゆがみ調整』の効果としては、生活保護利用世帯の半数以上を占める単身高齢世帯(60歳以上の単身世帯)の生活扶助費が増額になることを認識していたか。」及び「厚労省において、『2分の1処理』を講じた場合、『ゆがみ調整』の効果としては、生活保護利用世帯の半数以上を占める単身高齢世帯(60歳以上の単身世帯)の生活扶助費の増額幅が2分の1になることを認識していたか。」という各尋問事項に対し、厚生労働大臣が、同証人の尋問に先立ち、令和5年3月2日付け「民事訴訟法191条1項の承認請求に対する回答」(以下「本件承認請求回答」という。)において、いずれも、「課や局の内部又は相互間並びに省幹部又は関係省庁との間における審議、検討又は協議の内容、担当職員の作成した資料の内容など、厚生労働省における意思形成過程(当該部分に関する職員個人の認識や見解等を含み、現に公にされているものを除く。以下『厚生労働省における意思形成過程』という。)に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」としたため、上記各尋問事項に関する控訴人ら代理人の質問に対し、現に公にされているものを- 113 -除き、具体的な回答をしなかった。また、控訴人らの「子どものいる世帯に対する影響」、「財政削減効果」及び「専門家による検討がないこと」に関する各尋問事項に対しても同様であり、いずれも、厚生労働大臣が本件承認請求回答で「厚生労働省における意思形成過程に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」としたため、上記各尋問事項に関する控訴人ら代理人の質問に対し、現に公に れも、厚生労働大臣が本件承認請求回答で「厚生労働省における意思形成過程に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」としたため、上記各尋問事項に関する控訴人ら代理人の質問に対し、現に公にされているものを除き、具体的な回答をしなかった(なお、公務員の尋問に関し監督官庁が承認するか否か(民事訴訟法191条)については、その裁量に係るものではあるが、当該訴訟における承認を拒んだ尋問事項の重要性やその性質、監督官庁と当事者との関係等により、特に監督官庁が一方当事者に属している場合には、承認を拒んだ尋問事項に関する事実関係の認定について、口頭弁論の全趣旨としてしん酌される(同法247条)ことがあるというべきである。)。 ウ デフレ調整について デフレ調整の概要a 本件改定におけるデフレ調整は、おおまかにいうと、総務省CPIの指数品目から、①生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、医療費等)と②原則として保有が認められず又は免除されるために生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関連費、NHK受信料等)をいずれも除外したものを、対象とする指数品目(以下「生活扶助相当品目」ともいい、また、除外される上記①及び②の各品目を併せて「非生活扶助相当品目」ともいう。)として、総務省CPIの算出に当たり用いられている平成22年基準のウエイトを用いるなどして算出された指数、すなわち生活扶助相当CPIを用いて、平成20年の生活扶助相当CPIと- 114 -平成23年の生活扶助相当CPIとの変化率から求めた平成20年から平成23年までの期間における物価下落率4.78%(本件下落率)を、2分の1処理を加えたゆがみ調整をした後の生活保護基準額から減額((1-0.0478)を乗ずる)して、生 率から求めた平成20年から平成23年までの期間における物価下落率4.78%(本件下落率)を、2分の1処理を加えたゆがみ調整をした後の生活保護基準額から減額((1-0.0478)を乗ずる)して、生活扶助基準を引き下げるものである。 b 被控訴人らは、デフレ調整が実施された経緯について、原審の第1回口頭弁論期日(平成27年3月20日)において陳述した答弁書で、「近年、デフレ傾向が続く中、生活扶助基準額は据え置かれてきた。一般的に、可処分所得が変わらない状況において消費者物価指数が下がれば、実質的な購買力は上昇する。そうすると、消費者物価指数がマイナスとなっている中で、生活扶助基準額が据え置かれているということは、実質的に見れば、生活扶助基準の引上げと同視することができ、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加してきたといえる。」、「厚生労働大臣は、一般国民の生活実態との均衡を図るため、実質的な購買力を維持しつつ、社会保障・福祉分野で一般的に用いられる客観的な経済指標である物価(消費者物価指数)の動向を勘案して生活扶助基準額の見直しを行うこととしたものである。」などと主張し(44頁)、同年4月17日付け準備書面⑴でも、「平成19年の時点で、生活扶助基準検討会による平成19年検証により、当時の生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いという結果が得られていたことから、一般低所得者世帯の消費実態との適合性を考慮した生活扶助基準の見直しがされるべき状況にあったものの、その当時の原油価格の高騰や平成20年9月以降の世界金融危機が実体経済に深刻な影響を与えており、国民の将来不安が高まっていることなどを考慮して、生活扶助基準の見直しは見送られてきた。しかしながら、完全失業率が- 115 -急激に悪化し、また、賃金、物 が実体経済に深刻な影響を与えており、国民の将来不安が高まっていることなどを考慮して、生活扶助基準の見直しは見送られてきた。しかしながら、完全失業率が- 115 -急激に悪化し、また、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況に陥いる中で、生活保護受給者数も急激に増加していった。」、「デフレ傾向が続き、消費者物価指数がマイナスとなっているにもかかわらず生活扶助基準額が据え置かれていたことは、実質的に見れば生活扶助基準の引上げと同視することができ、これにより生活保護受給世帯の可処分所得も実質的に増加している状況にあった。」、「保護基準は『最低限度の生活の需要』を超えている場合であっても、法8条2項に反するものとなることから、上記のとおり、早急な生活扶助の給付水準の適正化の実施が政策課題とされていることを背景として、上記の生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加を勘案して生活扶助給付水準の適正化を図る必要があることは明らかである。」などと主張していた(17、18頁)。 ところが、その後審理が進んでいく中で、被控訴人らは、その主張を変化させ、当審の口頭弁論終結時の期日(令和5年7月14日)において陳述された令和5年5月31日付け準備書面(12)では、「実質的な購買力(可処分所得)を維持することは、生活扶助基準の改定に当たり必然的に求められるものではない(乙(全)第116号証6ページ)。」、「デフレ調整は、一般国民の生活水準との均衡を図るという生活扶助基準の改定の考え方を前提とした上で、物価動向を基礎として生活扶助基準の改定を行うこととしたものであり、実質的な購買力(可処分所得)に着目した説明は、物価動向の範囲内で生活扶助基準を改定することを言い換えたものにとどまる。したがって、デフレ調整の改 して生活扶助基準の改定を行うこととしたものであり、実質的な購買力(可処分所得)に着目した説明は、物価動向の範囲内で生活扶助基準を改定することを言い換えたものにとどまる。したがって、デフレ調整の改定率に相当する『生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加』が現に認定できるかどうかについては、本件保護基準改定の適法性を左右しないので- 116 -ある。」などと主張するに至った(69、70頁)。 c 被控訴人ら(被控訴人国)は、デフレ調整や生活扶助相当CPIに関し、その検討作業の内容について、現に公にされているところを超えて、本件訴訟において、これを具体的に説明したり、検討に用いた資料等を書証として提出するなどしなかった。そして、B証人も、厚生労働大臣が、同証人の尋問について、本件承認請求回答において、控訴人らの「本件保護基準改定に際し、『デフレ調整』を行うことは、いつから検討を始め、具体的にどのような検討作業を行ったか明らかにされたい。」との尋問事項に対し、「厚生労働省における意思形成過程に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」としたため、上記尋問事項に関する控訴人ら代理人の質問に対し、現に公にされているものを除き、具体的な回答をしなかった。また、生活扶助相当品目の除外の点についても、控訴人らの「生活扶助相当CPIの基礎となる品目の選定にあたり、生活扶助相当品目以外の品目の除外は、誰がどのように決定したのか。 」、「生活扶助相当CPIと同様に平成22年の一般世帯のウエイトを用いて同一期間の一般物価を計算しても下落率は3.83%である(甲全149の38頁表11の『系列名C』参照)のに対し、生活扶助相当CPIの下落率が4.78パーセントと大きく増えているのは、生活扶助相当品目以外の品目を除外した 算しても下落率は3.83%である(甲全149の38頁表11の『系列名C』参照)のに対し、生活扶助相当CPIの下落率が4.78パーセントと大きく増えているのは、生活扶助相当品目以外の品目を除外したことによるものではないか。これは、生活扶助相当品目以外の品目の除外によって、生活保護利用世帯において一般世帯と比較して支出割合の少ないテレビやパソコン等、価格下落率の大きな電化製品等の『寄与度』が大きくなり、その結果、生活扶助相当CPIの下落率が大きくなったのではないか。この点については、厚労省において、当時認識していなかったのか。認識していたとすれば、どのように考慮したの- 117 -か。」、「生活扶助費から遊興目的での海外旅行の費用を支出することは認められていない(そのような支出は収入認定される)のではないか。それにもかかわらず、生活扶助相当品目に『海外パック旅行』が含まれているのはなぜか。他方で、自動車は例外的にその保有が認められる場合があるものの、自動車関係経費は生活扶助相当品目から除外されているが、『海外パック旅行』が自動車と異なる取扱いとされた理由は何か。」及び「生活扶助相当CPIの基礎となる品目の選定について、異なるシミュレーション(選定品目を変えてみること)で検討作業を行ったことはあるか。」という各尋問事項に対し、いずれも、厚生労働大臣が本件承認請求回答で「厚生労働省における意思形成過程に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」としたため、B証人は、上記各尋問事項に関する控訴人ら代理人の質問に対し、現に公にされているものを除き、具体的な回答をしなかった。これは、デフレ調整についての「『デフレ調整』の始期を平成20年としたこと」、「生活扶助相当CPIの算出方法」、「平成22年基準のウエイトを用いたこと」、「 るものを除き、具体的な回答をしなかった。これは、デフレ調整についての「『デフレ調整』の始期を平成20年としたこと」、「生活扶助相当CPIの算出方法」、「平成22年基準のウエイトを用いたこと」、「一般世帯の家計出のウエイトをそのまま用いたこと」及び「専門家による検討がないこと」に関する控訴人らの尋問事項に対しても同様であり、本件承認請求回答で「厚生労働省における意思形成過程に係る部分を除き、尋問事項書記載の範囲で承認する。」とされ、これらの事項について、B証人は、控訴人ら代理人の質問に対し、現に公にされているものを除き、具体的な回答をしなかった(なお、監督官庁の尋問の承認(民事訴訟法191条)に関しては、前記イcのとおり、口頭弁論の全趣旨としてしん酌される(同法247条)ものである。)。 物価指数- 118 -物価指数は、基準となる時点(基準時)の物価を100として、比較する時点(比較時)の物価を相対的に比較した数値である。 物価指数を算出するための算式は複数存在するところ、国際労働機関(ILO)が作成した「消費者物価指数マニュアル 理論と実践」(ILOマニュアル)は、比較される時点間(基準時から比較時まで)において、一般に「買い物かご」又は「マーケットバスケット」ともいわれる、物価を測定する一定の財及びサービスの品目及びその数量の全部を購入するために要する全費用の割合の変化として定義される指数を、「ロウ指数」と呼称し、非常に普及した一般的な物価指数の種類の1つであるとしている。 ILOマニュアルは、消費者物価指数において用いられるウエイト参照時点(「買い物かご」の内容を固定する時点)について、基準時と比較時の間のいつの時点でもよい旨説明しているところ、ウエイト参照時点 ILOマニュアルは、消費者物価指数において用いられるウエイト参照時点(「買い物かご」の内容を固定する時点)について、基準時と比較時の間のいつの時点でもよい旨説明しているところ、ウエイト参照時点を基準時とする方式をラスパイレス式といい、これにより算出される指数をラスパイレス指数という。また、ウエイト参照時点を比較時とする方式をパーシェ式といい、これにより算出される指数をパーシェ指数という。ラスパイレス指数は、専ら基準時のウエイトのデータにより算出可能であり、比較時のウエイトのデータを必要としないため、作成コストの点で優れている反面、基準時から比較時までの期間が長期化すると、物価変動を過大に評価する可能性の高いことが知られている。また、物価指数は、財及びサービスの種類及びその数量を一定の時点(ウエイト参照時点)で固定するものであるが、消費者は、物価が下落した品目の消費量を増加させ、物価が上昇した品目の消費量を減少させる傾向にあると考えられることから、一般に、基準時から比較時までの期間が長くなるにつれ、ラスパイレス指数はパーシェ指数よりも大きくなることが知られている。 - 119 -物価指数を算出するに当たっては、①指数の対象となる集団(その指数が、何の、誰にとっての物価の変動をとらえようとするのか)、②指数算式、③ウエイト、④指数品目の範囲、及び⑤価格収集時点(流通過程のどの段階の価格をとるか)の各点が問題となる(なお、上記⑤は、消費者物価指数(CPI)であれば当然に購入者価格(小売価格)となる。)が、物価指数は、どのような計算方法を用いるかによって算出される数値が異なってくるから、意図的に算出される数値を操作することが可能である。したがって、物価指数の計算方法は、恣意的に用いられることがないように、どのような目 な計算方法を用いるかによって算出される数値が異なってくるから、意図的に算出される数値を操作することが可能である。したがって、物価指数の計算方法は、恣意的に用いられることがないように、どのような目的に利用するかを明確にした上で、その目的に適切なものであることが必要であり、十分に合理的で、かつ論理的に整合性のあるもの、すなわち、学術的に合理的で論理的整合性があるものとして承認されているものであることを要し、少なくとも学術的、論理的な批判に十分に耐えうるものであることが不可欠というべきである。 (以上につき、甲全149、235、300、352、乙全57、58、証人E(原審。以下「E証人」という。)、証人F(当審。以下「F証人」という。)) 消費者物価指数(CPI)a 消費者物価指数(CPI)は、全国の世帯が購入する財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を総合的に(平均的に)測定するものであり、上記世帯の消費構造(買い物かご、マーケットバスケット)を一定のものに固定し、これと同等のものを購入した場合に要する費用が物価の変動によってどのように変化するかを指数値で表したものである。 b 総務省CPI消費者物価指数は、日本においては、総務省統計局によりILO- 120 -マニュアルに沿って毎月作成され、毎月1回、全国の前月分指数及び東京都区部の当月中旬速報値指数が公表されるほか、12月分指数の公表時には年平均指数が、3月分指数の公表時には年度平均指数がそれぞれ公表されており(総務省CPI)、①日本銀行の金融政策決定の重要な判断材料、②国や地方自治体の消費者行政、③家計支出や賃金などの実質化のデフレーター、④公的年金の給付額等を物価の動きに応じて改定するための算出基準な 務省CPI)、①日本銀行の金融政策決定の重要な判断材料、②国や地方自治体の消費者行政、③家計支出や賃金などの実質化のデフレーター、④公的年金の給付額等を物価の動きに応じて改定するための算出基準などとして利用されているが、その概要は次のとおりである。 指数算式ラスパイレス式 基準時(ウエイト参照時点)基準時は、消費構造が新たな財又はサービスの出現や嗜好の変化などによって変化し、長期間固定すると次第に実態と合わなくなるため、5年に1回、西暦年の末尾が0又は5の年に改定し、指数品目及びウエイトを定期的に見直している。本件の前後では、平成17年(2005年)、平成22年(2010年)及び平成27年(2015年)に改定されている。 指数品目指数品目(買い物かごに入れる品目)は、家計調査の結果を基に、世帯が購入する多種多様な財及びサービス全体の物価変動を代表できるよう、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の面で代表性があること(同じ種類の商品の値動きに対して代表性のあること)、継続調査が可能であることなどの観点から選定される。 なお、平成22年基準時においては、588品目が選定されていた。 - 121 - ウエイト個々の財及びサービスの価格等を総合する際には、各々の支出割合に応じた「重み」(ウエイト)を当該品目に加味する。 ウエイトは、固定方式で、基準時(ウエイト参照時点)における総消費支出額を1万として、各品目の支出額を比例換算した値(1万分比)で表されており、家計調査によって得られる基準時となる年の平均1箇月間の1世帯(総世帯ウエイトを除いて2人 ト参照時点)における総消費支出額を1万として、各品目の支出額を比例換算した値(1万分比)で表されており、家計調査によって得られる基準時となる年の平均1箇月間の1世帯(総世帯ウエイトを除いて2人以上の世帯)当たりの品目別消費支出額を用いて作成されている(総務省CPIウエイト)。 価格指数品目として選ばれた品目について、毎月同等の商品の価格を調査できるよう、調査する商品の機能、規格、容量等を規定する。このような規定を銘柄といい、調査銘柄は、指数品目の価格変動を代表するものとなる。 調査銘柄の価格は、原則として、統計法に基づく基幹統計調査である小売物価統計調査によって得られた市町村別及び品目別の小売価格を採用している。ただし、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)及びカメラの3品目については、技術革新が著しく市場における製品のライフサイクルが極めて短いため、全国の主要な家電量販店で販売された全製品のPOP情報による販売価格を採用している。 品質調整小売物価統計調査は、調査品目ごとに調査する商品の銘柄を指定し、同じ品質の財及びサービスを毎月継続して調査している。 しかし、現実には、商品の製造中止や出回りの変化などに伴う銘柄の改正、調査地区の変更などが行われる。このような場合、当- 122 -月価格と前月価格との間に生ずる価格差の中には、品質の変化など物価変動以外の要因による価格差が含まれることがある。したがって、消費者物価指数の算出に当たっては、このような物価変動以外の要因による価格差を除去(品質調整)して比較時価格を算出する必要がある。品質調整には幾つかの方法があり、比較時価格の算出に当たっては、新・旧の財又はサービスの品質差の有 は、このような物価変動以外の要因による価格差を除去(品質調整)して比較時価格を算出する必要がある。品質調整には幾つかの方法があり、比較時価格の算出に当たっては、新・旧の財又はサービスの品質差の有無、品質差の態様、市場の価格形成の状況等をよく吟味して、最も相応しい方法を適用しなければならない。 指数の計算指数の計算は、最初に、比較時価格を基準時価格で除して算出した品目別価格指数を各品目のウエイトで加重平均して最下位類の指数を算出し、次に各最下位類の指数を当該類ウエイトで加重平均して上位類の指数を算出する。同様にして、小分類指数、中分類指数、10大費目指数、総合指数の順に積み上げる。 全国の指数は、最初に、各調査市町村の品目別価格指数を各調査市町村の品目別ウエイトで加重平均して、全国の品目別価格指数を算出し、次に、全国のウエイトを用いて、上記の方法により順次上位類を計算して総合指数を算出する。なお、都市階級別、地方別の指数も全国の場合と同じ方法により算出する。 作成系列作成される指数の主な系列は、基本分類指数、財・サービス分類指数、世帯属性別指数、品目特性別指数である。 このうち基本分類指数は、全体の物価の動きを総合した総合指数と、その内訳を消費の目的により費目別に分類した指数であり、後者は、10大費目(指数品目を①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品、⑤被服及び履物、⑥保健医療、⑦交通・通信、- 123 -⑧教育、⑨教養娯楽、⑩諸雑費の10費目に分類したものであり、これらが更に中分類や小分類に細分類される。)、中分類及び小分類という各段階別分類の指数と、品目別指数から成る。 指数の接続 楽、⑩諸雑費の10費目に分類したものであり、これらが更に中分類や小分類に細分類される。)、中分類及び小分類という各段階別分類の指数と、品目別指数から成る。 指数の接続総務省CPIは、前記のとおり、5年ごとに基準時及びウエイト参照時点が改定されるところ、消費者物価指数は時間の経過による物価の動きをみるものであるため、改定前にさかのぼって指数を比較することが可能となるよう、改定の都度、改定前の指数を改定後の指数に換算し、新旧の両指数が接続するようにしている。 このような指数の接続は、地域並びに総合、類及び品目ごとに、各基準年の指数を次の基準年に当たる年の年平均指数で除することにより行われる。例えば、平成17年基準を平成22年基準に接続する場合、平成22年基準の接続指数は、平成17年基準の指数を平成17年基準の平成22年の年平均指数で除し、これに100を乗じることにより、計算される。 c 平成17年から平成23年までの期間の総務省CPI(全国・総合)について、平成22年(2010年)を100.0として表すと、平成17年が100.4、平成18年が100.7、平成19年が100.7、平成20年が102.1、平成21年が100. 7、平成22年が100.0、平成23年が99.7となり(なお、平成17年(2005年)を基準年とする平成17年から平成21年までの上記指数は、平成22年を基準年とする指数の接続を行った結果である。)、平成20年から平成23年までの期間における総務省CPIによる物価の変化率は、-2.35%となる。 上記期間の総務省CPIについて、10大費目ごとの指数(前年- 124 -比)をみると、別紙6「第16表 消費者物価指数上昇率(全国)」( る物価の変化率は、-2.35%となる。 上記期間の総務省CPIについて、10大費目ごとの指数(前年- 124 -比)をみると、別紙6「第16表 消費者物価指数上昇率(全国)」(乙11の5枚目)に記載のとおりである。また、物価の変動は、総務省CPIの平成20年から平成23年までの下落率が、全国では2.35%であるのに、沖縄県では0.5%となっているように、地域によっても全く異なっている。 (以上につき、甲全100、102、112、149、221、228、230の1及び2、231、232、301、352、乙全11、27~29、57、58、99、E証人、F証人) 消費者物価指数と生計費の変動の関係生計費とは、一定の水準の生活があったとして、その生活を維持するために必要な費用であり、生計費の変動とは、ある2時点間での生計費の変化をとらえるものである。このような生計費は、物価の変動による影響を受けるが、世帯類型によって消費実態(消費構造)が異なるため、生計費に影響を及ぼす物価変動の具体的内容は、世帯類型ごとに異なってくる(すなわち、当該世帯が購入しない物の価格が変動しても、当該世帯の生計費は通常変動しない。)し、物価の変動による生計費の変動、ひいては可処分所得の実質的変動の有無及び程度も、同様であり、世帯類型ごとに異なってくる。 したがって、物価の変動による、ある集団における可処分所得の実質的変動の有無及び程度を測定するためには、当該集団の消費実態に合致したものから算出されることが必要であり、具体的には、①対象集団の設定について、消費構造の同質性が確保される集団とされること、②対象品目の設定について、その集団が実際に購入する品目であること、③品目を代表する銘柄の設定につ が必要であり、具体的には、①対象集団の設定について、消費構造の同質性が確保される集団とされること、②対象品目の設定について、その集団が実際に購入する品目であること、③品目を代表する銘柄の設定について、その集団が実際に購入する銘柄であり、その集団にとって当該品目を代表する銘柄であること、④指数を算出する際に用いる価格の特定について、その集団が- 125 -実際に直面する価格であること(その集団が購入しない店舗における価格が変動しても、その集団の可処分所得は実質的に変動しない。)、⑤その集団の消費構造に基づくウエイトであること(例えば、その集団が多く購入するもののウエイトを小さくし、その集団が購入することの少ないもののウエイトを大きくしたのでは、その集団の消費実態とは異なるものになってしまう。)、⑥指数算式の決定について、少なくとも学術的に承認された指数算式であること(ILОマニュアルで「最良指数」とされているものが望ましい。)、及び⑦品質調整について、品質調整済みの指数の動きは、実際に直面する価格の動きと異なることに留意すること(性能が良くなっても、価格が同じであれば、可処分所得は実質的に変動しない。)が必要である。 そうすると、上記の点において、消費者物価指数は、前記のとおり消費者全体を対象集団とした平均的(総合的)なものであるから、消費者全体のうち特定の集団における、物価変動による生計費の変動、ひいては可処分所得の実質的変動を、測定するための手段としては、不適切である(また、総務省CPIは、ウエイト参照時点を基準時とするラスパイレス式であり、代替バイアスと呼ばれる現象(全ての財及びサービスの価格が同じ割合で変化するとは限らず、消費者は、価格が相対的に大きく上昇した財及びサービスの購買量を減らし、価格の上昇 するラスパイレス式であり、代替バイアスと呼ばれる現象(全ての財及びサービスの価格が同じ割合で変化するとは限らず、消費者は、価格が相対的に大きく上昇した財及びサービスの購買量を減らし、価格の上昇が小さかった財及びサービスの購買量を増やす現象)が反映されないなどの問題があるため、そもそも生計費の完全な尺度ではない。 )。 (以上につき、甲全149、300、339、340、348、352、421、乙全27、E証人、F証人) 生活扶助相当CPIa 生活扶助相当CPIは、生活扶助に相当する消費品目の物価の動- 126 -向を勘案するためであるとし、同品目を対象とする消費者物価指数として、厚生労働省が独自に考案した指数であり、おおまかにいうと、総務省CPIの算出の基礎となっている指数品目から非生活扶助相当品目を除外した品目(生活扶助相当品目)について、総務省CPIの算出に当たり用いられている価格指数及びウエイトを独自のやり方で用いるなどして指数化したものである。 厚生労働大臣は、デフレ調整において、平成22年をウエイト参照時点とし(固定方式)、総務省CPIの算出に当たり用いられている価格指数及びウエイトを用いるなどして、平成20年の生活扶助相当CPIが104.5、平成23年の生活扶助相当CPIが99.5とそれぞれなり、その結果、平成20年から平成23年までの期間の物価下落率は4.78%(本件下落率)になると判断した。 すなわち、おおまかにいうと、厚生労働大臣は、平成20年の生活扶助相当CPIについて、総務省CPIの平成22年(2010年)基準の指数品目のうち平成20年においても総務省CPIの算出の基礎となっている指数品目(平成20年総務省CPIは平成17年(2005年) 助相当CPIについて、総務省CPIの平成22年(2010年)基準の指数品目のうち平成20年においても総務省CPIの算出の基礎となっている指数品目(平成20年総務省CPIは平成17年(2005年)を基準年とするため、平成17年基準の指数品目となる。)から、非生活扶助相当品目を除いた485品目をもって、生活扶助相当CPIの算出の基礎となる指数品目(生活扶助相当品目)とした上で、平成22年をウエイト参照時点として、上記485品目について、同年の価格を100とした場合の平成20年時点の価格指数(総務省CPIのもの)にウエイト(総務省CPIウエイト)を乗じ、その数値の合計(64万6627.9)を上記ウエイトの合計(6189)で除することにより、104.5(小数点2桁以下四捨五入)と算出した。 また、厚生労働大臣は、平成23年の生活扶助相当CPIについ- 127 -て、平成22年指数品目から非生活扶助相当品目を除いた517品目をもって、生活扶助相当CPIの算出の基礎となる指数品目(生活扶助相当品目)とした上で、上記517品目について、同年の価格を100とした場合の平成23年時点の価格指数(総務省CPIのもの)にウエイト(総務省CPIウエイト)を乗じ、その数値の合計(63万5973.1)を上記ウエイトの合計(6393)で除することにより、99.5(小数点2桁以下四捨五入)と算出した。 なお、両者で生活扶助相当品目が異なっている(485品目と517品目)理由は、総務省CPIの基準時が平成17年から平成22年に改定されるに当たり、指数品目の廃止や追加等がされており、廃止された指数品目は、平成22年を基準時とする平成20年の物価指数を算定することができないため、同年の生活扶助相当品目から除外されるとともに、追加 るに当たり、指数品目の廃止や追加等がされており、廃止された指数品目は、平成22年を基準時とする平成20年の物価指数を算定することができないため、同年の生活扶助相当品目から除外されるとともに、追加された指数品目(非生活扶助相当品目を除く。)は、平成23年の生活扶助相当品目にのみ含まれるためである。 上記の結果、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの期間の物価下落率を、-4.78%((99.5-104.5)÷104.5×100。小数点3桁以下四捨五入。本件下落率)と判断した。 (以上につき、前提事実、乙全28~30)b 前記aの本件下落率(-4.78%)については、生活扶助相当品目のうち教養娯楽用耐久財(中分類項目)、その中でも、特にテレビを筆頭に、ビデオレコーダー、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン及びカメラの合計5品目(以下「テレビ等5品目」という。)の価格の下落が、顕著に影響している。 - 128 -すなわち、本件下落率に対するテレビ等5品目の寄与度(前記第4の1⑶イdのとおり、ウエイトを加味した特定の指数品目の価格の変動の、物価全体の変動に対する影響の度合いを示す指標であり、当該指数品目について、その他の指数品目の価格は変動せず、当該指数品目の価格のみが変動したと仮定した場合における、総合指数の変化率を表す。)を試算すると、次の算式のとおり、-3. 28%(小数点3桁以下四捨五入)になると試算され、本件下落率(-4.78%)の7割近く(3.28÷4.78≒0.686)の原因をテレビ等5品目の価格の下落が占めている。 算式 テレビ等5品目の寄与度=(平成23年のテレビ等5品目の価格指数×そのウエイト 686)の原因をテレビ等5品目の価格の下落が占めている。 算式 テレビ等5品目の寄与度=(平成23年のテレビ等5品目の価格指数×そのウエイト-平成20年のテレビ等5品目の価格指数×そのウエイト)÷平成23年の総合ウエイト÷平成20年の総合指数×100=(1万0107.7-3万2030.3)÷6393÷104.5×100≒-3.281また、上記算式の数値のうち平成23年の総合ウエイトを、総務省CPIウエイトの総和である1万として計算すると、上記寄与度は-2.10%(小数点3桁以下四捨五入)となる。これによれば、生活扶助相当CPIが非生活扶助相当品目を指数品目から除外して算出されることにより、テレビ等5品目を含め、除外されなかった指数品目のウエイトが総合ウエイトに占める比率が、相対的に一律で大きくなっていることも、上記寄与度に相当程度影響しているこ- 129 -とが分かる。 上記のような現象が生じた原因としては、生活扶助相当CPIは、平成20年から平成23年までの期間で算出されたものであるが、両年共にウエイト参照時点を平成22年としているところ、同年においては、平成21年5月に開始した家電エコポイント制度の開始や平成23年7月の地上デジタル放送への完全移行に備えた需要増加という特殊な事情からテレビの消費量(購買量)がその前後の年に比べて突出して大きかった(家計調査におけるテレビの消費支出額は、平成17年が1万0370円、平成18年が1万1485円、平成19年が1万2939円、平成20年が1万3701円、平成 の前後の年に比べて突出して大きかった(家計調査におけるテレビの消費支出額は、平成17年が1万0370円、平成18年が1万1485円、平成19年が1万2939円、平成20年が1万3701円、平成21年が1万8326円と徐々に増加して、平成22年の2万7436円(平成17年の約2.65倍、前年の平成21年と比べても約1.50倍)となったが、翌年の平成23年には1万1344円(平成22年の半分以下(0.41倍))に戻っている。)結果、テレビのウエイトが大きく増加した(平成17年基準の37から、平成22年基準の97(約2.62倍)になった。)ことや、テレビの価格指数が(品質調整の影響を含めて)平成21年から平成23年にかけて前年比で毎年30%前後も下落していた(平成20年の205.8から平成23年の69.1になった。)ことが挙げられる。 (以上につき、甲全112、137、149、251、300、347、351、352、397~406、乙全27~30、E証人、証人G(原審)、F証人)c 生活扶助相当CPIは、前記及びの観点からすると、物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増減(要保護者の最低限度の生活の需要の高低)を測定する指数として、特に次の- 130 -ないしのとおりの難点がある上、これとは別の観点からも、後記のとおりの問題点がある。 対象集団の設定生活扶助相当CPIは、一般世帯を対象とする家計調査によって得られたデータを用いており、生活保護受給世帯と異なる集団を対象としている。 ウエイトの設定生活扶助相当CPIは、総務省CPIウエイトをそのまま用いているが、総務省CPIウエイトは、一般世帯を対象とする家計調査 集団を対象としている。 ウエイトの設定生活扶助相当CPIは、総務省CPIウエイトをそのまま用いているが、総務省CPIウエイトは、一般世帯を対象とする家計調査によって得られたデータを用いて作成されているものである上、生活保護受給世帯の消費構造と一般世帯の消費構造は相当程度異なっているから、総務省CPIウエイトは、生活保護受給世帯の消費構造を表しているとは到底いえない(詳細は、後記2⑶イbないしeの認定及び判断のとおりである。)。 指数算式の決定生活扶助相当CPIの指数算式は、国際的な規準上、パーシェ指数ではないし、パーシェ指数と結果的に等価になる指数でもなく、ロウ指数とさえいえないものであり(なお、仮に生活扶助相当CPIをロウ指数であると評価したとしても、直ちに合理性があるといえるような性質のものでもない。)、本件改定において厚生労働大臣が用いた独自の指数で、理論的に難のあるものである。 すなわち、物価指数の算出においては、「類」の指数は、そこに含まれる「品目」を集計して算出されるものであるから、「品目」の合計(平均)は、「類」に一致するはずである。ところが、生活扶助相当CPIは、平成17年基準のウエイトと平成22年- 131 -基準のウエイトを併用している部分があり、「品目」の数値と「類」の数値が一致しないから、この点においても、恣意的に作成されたものといわざるを得ない。そして、ロウ指数といえるためには、項目によって恣意的に異なるウエイト参照時点が選択されることがないように、全ての項目のウエイト参照時点が同一でなければならないから、上記のように異なる時点のウエイトが併用されている生活扶助相当CPIは、ロウ指数とはいえないものであ 照時点が選択されることがないように、全ての項目のウエイト参照時点が同一でなければならないから、上記のように異なる時点のウエイトが併用されている生活扶助相当CPIは、ロウ指数とはいえないものであり、したがって、ロウ指数の一種であるパーシェ指数ともいえないのである。 加えて、生活扶助相当CPIは、学術的に例のない、異なる指数算式を組み合わせる(平成17年を基準時とする指数系列と平成22年を基準時とする指数系列とを、平成22年のウエイトに合わせて結合させ、1つの指数系列を作成するものであり、総務省統計局の接続方式等とは全く異なる方法で、異なる指数系列を結合させている。)という独自の方法によって、指数が算出されるものである。 異なる「買い物かご」を比較するという不合理な方法が採られていること総務省CPIの基準時が平成17年から平成22年に改定されるに当たり指数品目の廃止や追加等がされたため、平成20年の生活扶助相当CPIは、指数品目が485品目である一方で、平成23年の生活扶助相当CPIは、指数品目が517品目であり、両者の指数品目数が32も異なっている(すなわち「買い物かご」が異なっている)ため、個々の指数品目のウエイト比の相対的な大きさも両年で異なっている(しかも、このことは、生活扶助相当CPIを作成する時点で自明である。)にもかかわらず、総- 132 -務省統計局の方式やILOマニュアルに沿った接続の処理が行われていない。 (以上につき、甲全103、111、149、206、236、237、300、347、350~352、397~406、421、E証人、F証人)エ 激変緩和措置について本件改定においては、激変緩和措置として、①平成25年 206、236、237、300、347、350~352、397~406、421、E証人、F証人)エ 激変緩和措置について本件改定においては、激変緩和措置として、①平成25年度から3年間にわたり段階的に実施する(期末一時扶助を除く。)とともに、②改定前基準額からの増減幅が±10%を超えないように調整された(なお、被控訴人らは、それまで明らかにしてこなかった2分の1処理のあることが新聞報道等で指摘されるなどし、現時点では、2分の1処理のあることを認めた上、これも激変緩和措置である旨主張している。)。 2 争点1(本件各告示による生活扶助基準の改定に生活保護法3条、8条2項、9条等に違反した違法があるか)について⑴ 判断枠組み以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第5の3⑴に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決66頁19行目の「国の財政事情を無視することができず、また、」を「国の財政事情を含めた」と改め、22行目の「1235頁」の後に「、平成22年(行ツ)第392号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁、平成24年(行ツ)第302号・同年(行ヒ)第355号同26年10月6日第一小法廷判決」を加え、23行目から24行目にかけての「改定するに際し、生活扶助基準の改定の必要があるか否か」を「引き下げる内容の改定をするに際し、改定前の生活扶助基準が要保護者の最低限度の生活- 133 -の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっているか否か」と改める。 イ 原判決67頁2行目の「生活扶助基準」から5行目の「影響」までを「生活扶助は、衣食その他日常生活 - 133 -の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっているか否か」と改める。 イ 原判決67頁2行目の「生活扶助基準」から5行目の「影響」までを「生活扶助は、衣食その他日常生活の需要に応じてされるものであり(生活保護法12条1号)、そのうち基準生活費は、食費や被服費、光熱水費、家具什器類費等、日常生活上不可欠な支出に係る需要を満たすためのものであるから、生活扶助基準を引き下げる内容の保護基準の改定は、改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっているか否かにかかわらず、現にその保護を受けて生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準により具体化されていた日常生活に係る期待的利益の喪失を来す側面があることも、否定し得ないところである。したがって、厚生労働大臣は、生活扶助基準を引き下げる内容の保護基準の改定をするに当たっては、当該改定の必要性を踏まえつつ、被保護者の上記のような期待的利益」と改める。 ウ 原判決67頁17行目の「検討されている」から68頁1行目の「べきである」までを「検討されている。これらの諸点に鑑みると、本件改定については、①これを行った厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②本件改定に際して激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法なものになるというべきであり、裁判所が上記①及び②の各点を判断するに当た や生活への影響の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法なものになるというべきであり、裁判所が上記①及び②の各点を判断するに当たっては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審査- 134 -するのが相当である」と改める。 エ 原判決68頁5行目の「2367頁」の後に「、平成24年(行ツ)第302号・同年(行ヒ)第355号同26年10月6日第一小法廷判決」を加える。 オ 原判決71頁4行目の「9条」を「2条1項」と改め、同行目の「締約国において、」の後に「同規約9条、11条1項等の定める」を加え、8行目の「定めたものではない」の後に「し、控訴人らの主張するような原則を定めたものであるとも解されない」を加え、10行目の「達成する」から11行目の「9条により」までを「達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する』と規定しているように、社会権規約2条1項、9条、11条1項等により、直ちに」と、16行目の「9条及び」を「2条1項、9条、11条1項等や」と、17行目の「裁量権が制約される」を「裁量権が直ちに制約されるものではなく、後退的な措置が禁じられている」とそれぞれ改め、18行目末尾の後に改行の上、次のとおり加える。 「 ただし、生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるものであることが求められるものであり(生活保護法3条、8条2項)、日常生活に必要な基本的かつ経常的な費用についての最低生活費を定めたものである生活扶助基準の引下げを内容とする改定は、その性質上、 ものであることが求められるものであり(生活保護法3条、8条2項)、日常生活に必要な基本的かつ経常的な費用についての最低生活費を定めたものである生活扶助基準の引下げを内容とする改定は、その性質上、これによって最低限度の生活を営むことさえ困難にする可能性があると考えられるから、極めて慎重に行われるべきものである。」カ 原判決71頁19行目から72頁9行目までを削除し、10行目の「エ」を「ウ」と改め、24行目の「(前記1⑴イ)」、73頁1行目の- 135 -「(前記1⑵ア)」及び3行目の「(前記1⑵イ、エ)」をいずれも削除し、9行目の「厚生労働大臣」から10行目の「1号)」までを「、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議すること、当該重要事項に関して厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べること等の事務をつかさどる旨規定しているにとどまる(同法7条1項)から、同法上」と改める。 ⑵ ゆがみ調整の違法性ア 2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断について 認定事実⑷イのとおり、ゆがみ調整は、平成25年検証の結果で示されていた、生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態との間の年齢階級別、世帯人員別及び級地別による各較差を是正するため、上記消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることを内容とする生活扶助基準の改定であり、上記結果を踏まえたものであるものの、これをそのまま生活扶助基準に反映させることなく、2分の1の範囲でのみ反映させるものである(2分の1処理)。 被控訴人らは、2分の1処理を行った理由につき、前記第5の1⑵イのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、平成25年検証の結果を生活扶助 被控訴人らは、2分の1処理を行った理由につき、前記第5の1⑵イのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、平成25年検証の結果を生活扶助基準の展開部分にそのまま反映させることにより不利益を受ける、子どものいる世帯への配慮や、検証結果に統計上の限界があった平成25年検証に続く基準部会による次回の更なる検証を見据えた措置(激変緩和措置)として、上記結果の反映の程度を、減額か増額かを問わず、一律に2分の1としたなどと主張する。 a 認定事実⑷イのとおり、被控訴人らは、原審の審理において、2分の1処理につき、当初から激変緩和措置の一内容として主張していたものではなく、また、本件開示文書においても、2分の1処- 136 -理があることには触れているのに、激変緩和措置としては、「基準の見直し幅の上下限の設定」と「基準の見直しの段階的実施」の2点が記載されているだけで、2分の1処理は記載されていなかったものである。これに加え、厚生労働省社会・援護局保護課が作成した平成25年2月19日付けの「全国厚生労働関係部局長会議資料」及び同年3月11日付けの「社会・援護局関係主管課長会議資料」においても、激変緩和措置として、本件開示文書と同様に上記の2点だけが記載されていること(認定事実⑶ク、乙全16)、B証人は、当審における証人尋問で、本件改定に際して、2分の1処理の検討をいつから始めてどのような検討作業を行ったかなどの点につき、現に公にされているものを除いて具体的な回答をしなかったことなどに照らすと、厚生労働大臣が、本件改定を行うに当たり、2分の1処理を、被控訴人らが現在主張しているような激変緩和措置として行うこととするという判断をしていたものであるかについては、非常に疑わ となどに照らすと、厚生労働大臣が、本件改定を行うに当たり、2分の1処理を、被控訴人らが現在主張しているような激変緩和措置として行うこととするという判断をしていたものであるかについては、非常に疑わしいものといわなければならず、直ちに被控訴人らの主張を採用することはできない。 これについて、被控訴人らは、原審の審理において、当初、2分の1処理に関する主張をしていなかったことにつき、控訴人らから主張されておらず、本件訴訟の主たる争点と直接関係すると考えていなかったからであるなどと説明する。しかし、そもそも、2分の1処理があること自体、厚生労働省内で検討されていただけで、一般国民には、本件改定があっても明らかにされていない(ゆがみ調整について平成25年検証を行った基準部会の委員らに対してさえ知らされていない)のであるから、厚生労働省内部の検討内容を知らない控訴人らが指摘して争点とできるような状況にはなかったのであって、このような説明は、前提を欠くもので、極めて不誠実な- 137 -ものといわざるを得ない。また、被控訴人らは、上記2点の激変緩和措置については、控訴人らが訴状で主張していなかったにもかかわらず、既に原審の答弁書の中で、自ら積極的に主張しているのであって、同じく激変緩和措置と位置付けられるという2分の1処理の点に限り、その主張を敢えて差し控えるべき合理的理由は、何ら見当たらないのであるから、被控訴人らの上記説明は、この点においても全く説得力がない。そして、2分の1処理は、平成25年検証の結果を半分しか考慮しないというものであるところ、専門家らによる検討結果をそのまま取り入れるか、これに変更を加えて取り入れるか、あるいはこれを取り入れないかという非常に重要な政策的判断であり、厚生労働大臣の裁量権に属するもの うものであるところ、専門家らによる検討結果をそのまま取り入れるか、これに変更を加えて取り入れるか、あるいはこれを取り入れないかという非常に重要な政策的判断であり、厚生労働大臣の裁量権に属するものであったとしても、これを明らかにして、その是非を問うことが必要不可欠というべき性質のものである。そうすると、上記のような事柄の重要性に鑑みれば、そもそも単なる訴訟上の主張立証の問題に矮小化してしまうことはできないもので、訴訟上での指摘の有無にかかわらず、国民に対して明らかにされるべきものといわなければならない。また、2分の1処理がされることによって、これを行わない場合と比べ、財政効果がどのように変わるのかということも非常に重要であり、この点においても、具体的根拠をもって国民に対して説明されるべき事柄である(なお、B証人は、2分の1処理がなかった場合の財政効果はその2倍程度である旨証言し、被控訴人らはこれを引用するが、上記証言自体、抽象的、感覚的なもので、到底十分なものとはいえず、その余の措置も考慮に入れた上で、実際にどのようなものであるかを、被控訴人らにおいて具体的に説明すべきである。 )。 この点に関しては、例えば、第11回基準部会において、事務局- 138 -から提示された資料について、委員から、「テクニカルに非常に透明性が高い、何をやるかということまでこと細かに書いてある」、「きょうの資料2は非常にテクニカルで、私たちのような専門家と世の中の人から言われるような者であっても理解するのに時間がかかりますし、これは恐らく一般の方々に何をしたかをわかっていただくのは非常に難しいと思います。そこで、説明する機会や何らかの工夫をしていただかないと、何かわけのわからない数式がいっぱい並んでいて、後でぽんと出てきて、これで私 の方々に何をしたかをわかっていただくのは非常に難しいと思います。そこで、説明する機会や何らかの工夫をしていただかないと、何かわけのわからない数式がいっぱい並んでいて、後でぽんと出てきて、これで私たちの保護基準が上がるのか下がるのかがわからないという状況だと非常に不信感も出てくる。」などの意見が出され、部会長が「事務局のほうには、分析の手法のフローチャートをわかりやすく示すとともに、効果もわかりやすい形で発表できるように工夫していただきたいと思います。 ただ、別の専門家が同じ手法を使って同じ方法をやっても同じ結果になるような形で、再現可能な形で発表をしなければいけないと思いますので、ブラックボックスでという話にはならないように、丁寧に説明をしなければいけないと思います。」などと述べているように、平成25年検証の検証結果は、保護基準の改定につながるものであり、その分析の手法や分析に基づく効果について、その性質上、①透明性があり、②一般国民に分かりやすく、かつ③専門家が検証可能であることが要請されていたことは明らかである(甲全83の1)。ところが、このような要請を満たす平成25年検証の検証結果を受けたゆがみ調整について、その間に2分の1処理が挟まれていることが、ブラックボックスにされ、①不透明で、②一般国民に知らされず、③専門家も検証できなくされていたのである(なお、被控訴人らは、後に検討するデフレ調整において物価を指標とすることについて、「国民に対する説明」ないし「説明の分かりや- 139 -すさ」を主張しているが、ここでは、国民に対して説明されず、「分からないように」されていたのである。)。 また、このように本質的なもので、極めて重要な点について、それが判明するまで長らくブラックボックスにされていたということ て説明されず、「分からないように」されていたのである。)。 また、このように本質的なもので、極めて重要な点について、それが判明するまで長らくブラックボックスにされていたということは、厚生労働省ないし被控訴人国は、本件について判断過程審査が行われるべきである旨主張しながら、判断過程の極めて重要な部分を秘していたものであり、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無が審査されるべき場面において、これに関する重要な事実を明らかにしないことがあるということを示すものであって、このような訴訟態度も、口頭弁論の全趣旨(民事訴訟法247条)としてしん酌されるべきである。 b 前記aの点をおくとしても、被控訴人らが主張する前記の理由のうち、子どものいる世帯への配慮による激変緩和措置をいう点については、確かに、認定事実⑶エのとおり、平成25年検証の結果において、その結果を生活扶助基準の展開部分にそのまま反映させると、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより各世帯への影響は様々であると断りつつ、例として、夫婦と18歳未満の子1人世帯は-8.5%、夫婦と18歳未満の子2人世帯は-14.2%、母親と18歳未満の子1人の母子世帯は-5.2%のそれぞれ減額となる旨示されており、平成25年報告書に留意事項として「生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。」と記載されていたことが認められる。 しかし、上記認定の事実から、平成25年検証の結果を反映させた場合に従前よりも生活扶助基準が引き上げられる生活保護受給世- 140 -帯との関係 記載されていたことが認められる。 しかし、上記認定の事実から、平成25年検証の結果を反映させた場合に従前よりも生活扶助基準が引き上げられる生活保護受給世- 140 -帯との関係において、上記結果の反映の程度を2分の1の範囲とすることの合理性が、裏付けられるものではない。 いわゆる激変緩和措置は、一般に、従前の取扱いを変更することによって不利益を受ける者がいることを前提に、不利益を受ける者の負担等に配慮して、その不利益を緩和することを目的とするものであり、これを生活扶助基準の引下げについてみれば、従前の生活扶助基準による扶助が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者の期待的利益に配慮するものとなるから、平成25年検証の結果を反映させた場合に従前よりも生活扶助基準が引き下げられる生活保護受給世帯との関係においては、その反映の程度を2分の1の範囲とすることは、上記引下げによる不利益を緩和するものであり、激変緩和措置であるということができる。しかし、平成25年検証の結果を反映させた場合に従前よりも生活扶助基準が引き上げられる生活保護受給世帯との関係においては、その結果をそのまま反映させることは何ら不利益でないのであるから、その反映の程度を2分の1の範囲とすることは、上記の意味における激変緩和措置でないことは明らかである。 また、ゆがみ調整は、平成25年検証の結果において、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との間に年齢階級別、世帯人員別、級地別による各較差がある旨示されたことを踏まえて、上記消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより、生活保護受給世帯間の不公平の是正を図ることを目的(趣旨)とするものであるところ、上記結果の反映の程度を2分の1の範囲とすれば 踏まえて、上記消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより、生活保護受給世帯間の不公平の是正を図ることを目的(趣旨)とするものであるところ、上記結果の反映の程度を2分の1の範囲とすれば、上記不公平の是正が十分に行われないこととなる。この点について、被控訴人らは、原審において、上記結果を生活保護受給世帯の全てにできるだけ公平に反映しつつ、生活保護受給世帯への影響を一定程- 141 -度に抑えるための(激変緩和)措置として、厚生労働大臣の政策的判断として上記結果を反映させる比率を増額及び減額共に2分の1に抑えることとしたなどと、上記結果の反映の程度を公平に一律で2分の1の範囲とした旨主張し、当審において、2分の1処理によっても、平成25年検証により明らかとなった生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との乖離がその乖離の程度に比例して一定の割合で解消されることには変わりがなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するという、ゆがみ調整の本質的部分の趣旨に沿うものであるなどと主張する。しかし、被控訴人らは、「ゆがみ調整は、・・・一般低所得世帯における世帯の構成割合が生活保護受給世帯におけるそれと同じであれば、財政的にはプラスマイナスゼロになります。」などと説明している(認定事実⑷イ)のであるから、この説明を前提とする限り、2分の1処理は、厚生労働大臣の判断としては、生活保護受給世帯間で、ゆがみにより生じていた不利益が解消されるべき者の負担によって、ゆがみにより生じていた利益が解消されるべき者の利益を一部残存させることとしたものであるとみるほかになく、上記結果をそのまま反映させる場合に比べて生活保護受給世帯間の不公平を残存させる結果となるから、むしろ公平とはいえないし、ゆがみ調整の本質的 を一部残存させることとしたものであるとみるほかになく、上記結果をそのまま反映させる場合に比べて生活保護受給世帯間の不公平を残存させる結果となるから、むしろ公平とはいえないし、ゆがみ調整の本質的な部分を半減させてしまうものであるから、上記目的(趣旨)にも反するというべきであって、被控訴人らの上記主張は、いずれも明らかに不合理な説明である(一般的、抽象的には良い響きが感じられる「公平」という言葉を使うなどして、実際には「不公平」を残存させていることを取り繕っているものともいえる。)。 したがって、2分の1処理は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性が十分に図られていないことになるし、基準部会が平成2- 142 -5年報告書によって示した専門的知見が十分に反映されないことになるから、これとの整合性を欠くことになるのであって、少なくとも、ゆがみ調整により生活扶助基準の引上げにつながる生活保護受給世帯との関係においては、是正されるべき不利益の一部を放置したまま、後記3の認定及び判断のとおり違法なデフレ調整による不利益をさらに重ねるものであり、これを生活扶助基準の引上げにつながる生活保護受給世帯の、引下げにつながる世帯との「公平」ということで正当化できるものではないというべきである。 c また、被控訴人らが主張する前記の理由のうち、検証結果に統計上の限界があった平成25年検証に続く基準部会による次回の更なる検証を見据えた措置をいう点については、確かに、認定事実⑶エのとおり、平成25年報告書において、「検証結果に対する留意事項」として、「年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によ する留意事項」として、「年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は、金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。」、「今回採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても、委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法という- 143 -ことでもない。さらに基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。」、「これまで生活扶助基準の検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。」などと記載されており、平成25年検証の結果として、生活扶助基準の展開部分を一般低所得世帯の消費実態に合わせようとしても、世帯構成によって様々に異なる差がなお生じると考えられる要因について、その全てを解明するには統計上の限界があることや、常 して、生活扶助基準の展開部分を一般低所得世帯の消費実態に合わせようとしても、世帯構成によって様々に異なる差がなお生じると考えられる要因について、その全てを解明するには統計上の限界があることや、常設部会である基準部会において、平成25年検証後も、生活扶助基準について、定期的な検証を行う予定であることが示されていたとはいえる。 しかし、これらの点は、子どものいる世帯への配慮という点から離れて、それ自体から、平成25年検証の結果の反映の程度を2分の1の範囲とすること、特に、上記結果を反映させた場合に従前よりも生活扶助基準が引き上げられる生活保護受給世帯との関係において上記結果の反映の程度を2分の1の範囲とすることの合理性が直ちに裏付けられるものではない。また、仮に、厚生労働大臣が、被控訴人らが主張するような点を考慮して判断を行っていたのだとすれば、これについても、広く国民に知らされるべきものといえるし、少なくとも25年検証を行った専門家らやその他の専門家らがその当否について判断できるように説明されるべき性質のものというべきである。そして、被控訴人国が、指摘を受けるまで、2分の1処理がされていることさえ明らかにしてこなかったことは、これ- 144 -を明らかにした場合に受けざるを得ない一般国民や専門家からの批判等を避けようとしたためであった可能性も十分に考えられるのである(厚生労働省内では、平成25年報告書が出されるより前に別紙3のような2分の1処理を含めて生活扶助基準額を検討した書類を作成していたのであるから、このような書類を示すなどして2分の1処理を含む本件改定の内容を説明することは極めて容易であったのに、これをあえて行わなかったものといえる。)。 d 被控訴人らは、平成25年検証の結果をそのまま反映 類を示すなどして2分の1処理を含む本件改定の内容を説明することは極めて容易であったのに、これをあえて行わなかったものといえる。)。 d 被控訴人らは、平成25年検証の結果をそのまま反映させた生活扶助基準額が直ちに「最低限度の生活」に相当する額であるということはできないから、2分の1処理は、増額幅が2分の1になる生活保護受給世帯に対して「最低限度の生活」を下回る生活を強いることを意味するものではない旨主張する。 しかし、認定事実⑶エのとおり、平成25年検証は、専門家らで構成される基準部会において、平成23年4月から平成25年1月まで約1年9箇月(13回開催)にわたって行われたもので、平成25年報告書は、平成19年報告書において指摘されていた年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態との間の乖離の有無及び程度が、詳細に分析されたものである。そして、平成25年報告書では、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる旨の結果が示されており、被控訴人らも、当審において、平成25年検証の結果は基本的に信頼性が高いと考えられる旨主張しているものであるし、原審においても、平成27年4月17日付け準備書面⑴で「基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の- 145 -高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」旨主張していた(14頁)ものである。そうすると、上記結果を踏まえた生活扶助基準額の増額幅を2分の1と大きく減じる かな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」旨主張していた(14頁)ものである。そうすると、上記結果を踏まえた生活扶助基準額の増額幅を2分の1と大きく減じることは、異なる合理的説明等のない限り、増額となる被保護者(生活保護受給世帯)の最低限度の生活の需要を下回ることになるとみるべきであるところ、被控訴人らによりそのような合理的説明はされていない(前記c説示の統計上の限界は、生活扶助基準の展開部分を一般低所得世帯の消費実態に合わせようとしても世帯構成によって様々に異なる差がなお生じると考えられる要因に関するものであり、上記結果を踏まえた増額幅を2分の1と大きく減じても、なお要保護者の最低限度の生活の需要を下回ることにはならないといえるほどの事情ではない。)し、厚生労働大臣が、本件改定を行うに当たり、上記結果を踏まえた増額幅を2分の1としても増額となる被保護者の最低限度の生活の需要を下回ることにならないか否かを、相応の統計資料等に基づき検討したことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被控訴人らの上記主張は理由がない。 以上の検討によれば、2分の1処理を行うこととした厚生労働大臣の判断は、少なくとも増額幅についてまで平成25年検証の結果の反映の程度を2分の1の範囲とした点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものであり、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があって、裁量権の範囲の逸脱があったといえるし、少なくともその濫用があったと認められる。 なお、被控訴人らは、そのほかにも、平成25年検証の結果には統- 146 -計上の限界があったなどとして、これも2分の1処理の理由であるとしている その濫用があったと認められる。 なお、被控訴人らは、そのほかにも、平成25年検証の結果には統- 146 -計上の限界があったなどとして、これも2分の1処理の理由であるとしている。しかし、デフレ調整については、後記のとおり、統計上の問題(「限界」を超えるものである。)が山積しているにもかかわらず、-4.78%という本件下落率をそのまま適用しているのであるから、「統計上の限界」を自らの都合がよいように使い分けているものであるし、独自に行ったデフレ調整よりも専門家らによって構成される基準部会が行った平成25年検証の結果が劣っており、こちらのみを2分の1の範囲で反映させることに合理性があると認めるに足りる証拠はないのである。 また、基準部会は、本件改定後の平成28年5月から平成29年12月まで、15回にわたり部会を開催し、①生活扶助基準に関する検証、②有子世帯の扶助・加算に関する検証、③勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証、④級地制度に関する検証、⑤その他の扶助・加算に関する検証並びに⑥これまでの基準見直しによる影響の把握を主たる検討事項として議論し、上記⑥の影響の把握を行った上で、上記①及び②を中心に、その検証(以下「平成29年検証」という。 )の結果を取りまとめ、平成29年12月14日付けで、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成29年報告書)を公表したことが認められる(乙全66)。しかし、平成29年検証においては、本件改定後の生活扶助基準が一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態と概ね均衡することが確認されたとされているが、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額と本件改定後の生活扶助基準額とが概ね均衡することが確認されたにとどまり、そこから展開した様々なその余の世帯類型にお ことが確認されたとされているが、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額と本件改定後の生活扶助基準額とが概ね均衡することが確認されたにとどまり、そこから展開した様々なその余の世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡が確認されるまでには至らなかったものである(乙全66)から、平成29年検証の結果は、上記の認定及び判断を左右す- 147 -るものではない。また、処分の時点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性が欠けていたものを、その後の事情を一部取り出した後付けの説明によって正当化しようとすることは、そもそも許されないものというべきである。 イ 以上によれば、2分の1処理を行ったゆがみ調整は、生活保護法3条、8条2項に違反するもので、違法であると認められる。 ⑶ デフレ調整の違法性ア デフレ調整の実施に係る厚生労働大臣の判断について 基準部会等の専門家による検討、検証を経ていない点についてa 控訴人らは、前記第4の1⑶アのとおり、デフレ調整は、物価を指標とする過去に採られたことがない手法であったにもかかわらず、基準部会等の専門家による検討、検証を全く経ていない点で、昭和58年意見具申、平成16年報告書、平成25年報告書等で示されていた専門的知見との整合性を明らかに欠いており、生活保護法3条、8条2項に違反するなどと主張する。 b 確かに、生活保護法の制定以来、生活扶助基準の改定方式の決定ないしその基本的な枠組みの設定は、中央社会福祉審議会の下に置かれた生活保護専門分科会の審議検討を通じて行われ、昭和59年から採用された水準均衡方式の運用についても、社会保障審議会福祉部会の下に設置された専門委員会や、厚生労働省社 中央社会福祉審議会の下に置かれた生活保護専門分科会の審議検討を通じて行われ、昭和59年から採用された水準均衡方式の運用についても、社会保障審議会福祉部会の下に設置された専門委員会や、厚生労働省社会・援護局長の下に置かれた検討会において、その運用の在り方についての審議検討が行われ、平成23年以降は、社会保障審議会の下に常設部会として設置された基準部会において定期的な検証が行われることとされていたという経緯がある。 しかし、基準部会は、検討会による平成19年検証に引き続き、生活保護基準の定期的な評価・検証について、学識経験者による専- 148 -門的かつ客観的な審議を行うことを目的として、社会保障審議会の下に常設部会として設置された組織であり、その評価・検証の結果を報告書等のかたちで提示、公表することにより、保護基準の改定に関する厚生労働大臣の判断の専門性、合理性を補強、担保することが期待されているとともに、上記判断の過程等を対外的に明らかにする役割をも果たしていると解されるものの、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり基準部会又はその他の専門家(専門家により構成される会議体)の検討、検証を経ることを手続上義務付ける法令上の根拠は、見当たらないから、厚生労働大臣は、保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門家による検討、検証を経ることが法令上義務付けられているとまで解することはできない。そして、このことは、保護基準の改定の内容等によって直ちに左右されるものではない。 したがって、厚生労働大臣が基準部会等の専門家による検討、検証を経ることなくデフレ調整を実施することを判断したからといって、それだけでは、その判断が直ちに専門的知見との整合性を欠いており、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び 等の専門家による検討、検証を経ることなくデフレ調整を実施することを判断したからといって、それだけでは、その判断が直ちに専門的知見との整合性を欠いており、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があるということはできないから、控訴人らの前記aの主張は理由がない。 なお、被控訴人らは、デフレ調整を専門家からの意見を聴取することなく独自で行ったことについて、専門家からの意見を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるかなどの検討が必要となり、専門家による検討自体に必要な期間を合わせれば、相当の期間を要することが見込まれたなどと主張する。しかし、厚生労働省内では、基準部会における検討と並行してデフレ調整も検討していたのであるから、少なくともその段階における検討状況を基- 149 -準部会に示して、その意見を聴取すること可能であったと認められる(そもそも、基準部会は、生活扶助基準の水準についても検証を行うことを検討していたのである。)。 c もっとも、基準部会の前記bのような組織としての性格、役割(なお、平成16年報告書を公表した専門委員会や平成19年報告書を公表した検討会にあっても、同じような性格、役割を有していたといえる。)に照らせば、厚生労働大臣は、基準部会又はその他の専門家(専門家により構成される会議体)による検討、検証を全く経ることなく保護基準を改定する場合には、その判断の過程を十分に明らかにするべきであって、少なくとも、その採用する改定率やこれを算出する指数方式等の合理性は、その判断の過程の一部を取り出した抽象的な説明では足りず、その全体が具体的に説明されなければならないというべきである。とりわけ、デフレ調整のように過去に採られたことのない手法である物価変動 理性は、その判断の過程の一部を取り出した抽象的な説明では足りず、その全体が具体的に説明されなければならないというべきである。とりわけ、デフレ調整のように過去に採られたことのない手法である物価変動の変化率をもって生活扶助基準を大幅に引き下げる内容の保護基準の改定をするというのであれば、その判断は、後に第三者による検証が可能なかたちで厳格にされるべきであり、他の選択肢の検討等も含めたその判断過程の全体が具体的に明らかにされる必要性は、特に高いというべきである。 この点について、被控訴人らは、厚生労働省の専門技術的知見の蓄積等を主張するが、上記説示に加え、本件は、憲法上の生存権に関して「健康で文化的な最低限度の生活」が問題となる局面であることにも照らせば、専門技術的知見に基づいて行ったとする判断の過程は、少なくとも第三者によって判断過程の検討が可能な程度に具体的なものとして主張立証されるべきであって、その具体的な内容を明らかにしない抽象的なものでは足りないというべきであるし、- 150 -その判断は、少なくとも理論的、学術的にも正当性のあるものとして批判に耐え得る程度のものであることが必要というべきであり(ブラックボックスにしておいて、専門技術的知見があるから検討の結果等を信用するよう主張することは、許されないというべきである。また、前記⑵アaのとおり、被控訴人らは、2分の1処理のように極めて重要な事実についても、長らくブラックボックスにしていたのであるから、このことからしても、判断過程の全体が具体的に明らかにされるべき必要性は高いということができる。)、厚生労働大臣ないし厚生労働省が生活保護制度等の行政事務を従前から所掌してきたことは、厚生労働大臣の判断の正当性を基礎付けるものではあり得ないのである(行政機 き必要性は高いということができる。)、厚生労働大臣ないし厚生労働省が生活保護制度等の行政事務を従前から所掌してきたことは、厚生労働大臣の判断の正当性を基礎付けるものではあり得ないのである(行政機関に専門技術的知見があったとしても、判断の基礎となる事実の取捨選択を誤る可能性はあるし、結果的に専門技術的知見に反する判断を行ってしまったり、これを濫用的に用いたりすることは十分あり得るのであって、行政機関に専門技術的知見があるか否かということと、実際に行われた判断が専門技術的知見と整合しているか否かということとは、全く別の事柄である。)。 デフレ調整の必要性ないし目的の点についてa 被控訴人らは、前記第5の1⑶イ及びのとおり、デフレ調整の実施を判断した理由(デフレ調整の必要性ないし目的)について、平成19年検証により、当時の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたのに、平成20年以降、当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれ、同年以降のデフレ状況により生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、生活扶助基準の引き上げがされているのと同視し得る状況となり、生活扶助基準と一般国民の消費実態との間の- 151 -均衡が一層崩れ、その不均衡が顕著なものとなっており、基準部会による平成25年検証は、生活扶助基準の水準についての検証を行わなかったものの、上記均衡が大きく崩れた状態は確認されたから、厚生労働大臣は、一般国民の消費実態との均衡を図るため、「展開のための指数」を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活扶助基準を引き下げる必要があると判断したなどと主張する。 b 確かに、認定事実⑶ウのとおり、平成19年検証の結果によれば、標準世 の指数」を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活扶助基準を引き下げる必要があると判断したなどと主張する。 b 確かに、認定事実⑶ウのとおり、平成19年検証の結果によれば、標準世帯とされている夫婦子1人世帯の第1・十分位における生活扶助相当支出額は14万8781円であった一方で、上記世帯の平均の生活扶助基準額は15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっていたこと(ただし、第1・五分位で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、生活扶助基準額がやや低めとなっている。)、単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位における生活扶助相当支出額は6万2831円であった一方で、上記世帯の平均の生活扶助基準額は7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっていたこと(ただし、第1・五分位で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。)が示されている(なお、平成19年検証は、検討会において、平成16年全国消費実態調査の結果等を用いて生活扶助基準の水準の妥当性等を評価・検証した結果であるから、平成19年検証の結果から直ちに、上記調査の3ないし4年後である平成19年ないし平成20年の当時においても生活扶助基準と生活扶助相当支出額との大小関係が上記説示のとおりであることが裏付けられるものではないが、この点はひとまずさておく。)。 しかし、標準世帯のうち第1・十分位に関する上記の差は、金額- 152 -にして1627円(率にして約1.1%)にすぎなかったものである。この差は、平成15年中間取りまとめ及び平成16年報告書において、勤労(者)3人世帯の生活扶助基準について、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準との比較において検証・評価 ぎなかったものである。この差は、平成15年中間取りまとめ及び平成16年報告書において、勤労(者)3人世帯の生活扶助基準について、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準との比較において検証・評価した結果、前者が高いものの、その水準は基本的に妥当であったという結論が示されていること(認定事実⑶アa、イa)等からみても、僅少であるといえるし、標準世帯のうち第1・五分位で比較すると、生活扶助基準額が生活扶助相当支出額よりやや低めとなっていたものである。他方、単身世帯(60歳以上の場合)のうち第1・十分位に関する上記の差は、金額にして8378円(率にして約13.3パーセント)であるから、標準世帯に関する上記の差と同列に論じることはできない面があるものの、単身世帯(60歳以上の場合)のうち第1・五分位で比較すると、生活扶助基準額と生活扶助相当支出額とが均衡していたものである上、平成19年報告書においては、夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある旨指摘されていたものである。これらの事実に照らせば、平成19年検証の結果から、当時の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていたとまで判断することは、合理的であるとはいい難いところであり、生活扶助基準の引上げがされているのと同視し得る状況にあったということはできず、ましてや、上記結果から、当時の生活扶助基準と一般国民の消費実態との均衡が崩れ、その不均衡が顕著なものになっていたなどと判断し得るものではないことは、明らかである。 また、平成19年から平成23年までの総務省CPI(全国・総- 153 -合)は、平成 崩れ、その不均衡が顕著なものになっていたなどと判断し得るものではないことは、明らかである。 また、平成19年から平成23年までの総務省CPI(全国・総- 153 -合)は、平成19年から平成20年にかけて1.4%上昇した後、同年から平成23年にかけて毎年下落していた(順に-1.4%、-0.7%、-0.3%)ものである(認定事実⑶エ)。しかし、10大費目ごとにみると、別紙6「第16表 消費者物価指数上昇率(全国)」のとおり、食料は、平成19年から平成20年にかけて2.6%上昇し、同年から平成21年にかけても0.2%上昇しており、その後、同年から平成22年にかけて0.3%下落し、同年から平成23年にかけて0.4%下落したもので、平成23年の時点では、平成19年の時点よりも高くなっていた。また、光熱・水費は、平成19年から平成20年にかけて6.0%と大きく上昇した後、同年から平成21年にかけて4.2%下落し、同年から平成22年にかけて0.2%下落したが、同年から平成23年にかけて3.3%上昇したもので、平成23年の時点では、平成19年の時点よりも高くなっていた。このように、生活扶助によって賄われることが想定されており、生活保護受給世帯や一般低所得世帯の家計にとって支出割合の高い(甲全351の12頁、393の7枚目の表3、図4及び5)、日常生活上の基本的かつ継続的な費用である食料や光熱・水費については、いずれも、平成23年の時点で平成19年の時点よりも上昇していたことが認められる。そして、これらの事実は、前記1⑶エ及びキのとおり、本件改定前から、研究者によっても明確に指摘されていたことである(厚生労働大臣に専門技術的知見があるのであれば、上記のような点については、容易に知り得たことであり、十分認識していたものと のとおり、本件改定前から、研究者によっても明確に指摘されていたことである(厚生労働大臣に専門技術的知見があるのであれば、上記のような点については、容易に知り得たことであり、十分認識していたものと考えられる。)。 以上の点を勘案すれば、平成20年以降、生活扶助基準が据え置かれていたことなどによって、平成23年の時点で、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加していたとか、生活扶助基準の引- 154 -上げがされているのと同視し得る状態にあったとか、生活扶助基準と一般国民世帯の消費実態(生活水準)との間の均衡が一層崩れ、その不均衡が顕著なものとなり、生活扶助基準の引下げによる是正を相当とする程度のものになっていたなどとは、到底評価し難いものであり、少なくとも、生活保護受給世帯一般について当てはまる状況でなかったことは、明らかである。 c その上、本件改定においては、デフレ調整の他にゆがみ調整が別途実施されているところ、被控訴人は、前記aのとおり、厚生労働大臣が、生活扶助基準と一般国民の消費実態との均衡を図るため、展開のための指数を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活扶助基準の水準を引き下げる必要があると判断した旨主張する。 しかし、ゆがみ調整により、生活扶助基準の展開部分に平成25年検証の結果が2分の1の範囲ながら反映され、生活保護受給世帯の生活扶助基準額が一定程度変更されることになるから、その変更されることを考慮しても、一般国民世帯の消費実態との均衡を図るために、更に生活扶助基準を引き下げる必要性があるのか否かや、仮にその必要性があるとしても、世帯類型ごとにどの程度引き下げるのが相当かなどの諸点についての判断は、専門技術的な見地からの十分な検討を要すると解されるし、前記c き下げる必要性があるのか否かや、仮にその必要性があるとしても、世帯類型ごとにどの程度引き下げるのが相当かなどの諸点についての判断は、専門技術的な見地からの十分な検討を要すると解されるし、前記cの説示に照らして、その判断の過程の全体が具体的に説明されなければならないというべきである。また、平成25年検証は、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、被控訴人らも主張するように、「専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」ものである- 155 -ところ、デフレ調整は、一律に行うというものであるから、上記のような平成25年検証の結果との整合性を、一律に行うことで、検証結果に反して妥当性を欠くことになったりしないか、様々な組合せについて検討されるべきであるといえる(例えば、前記1⑷ウcのとおり、総務省CPIの平成20年から平成23年までの下落率が、全国では2.35%であるのに、沖縄県では0.5%であるように、居住する地域による違いは大きいものである。)。ところが、厚生労働大臣が以上のような検討を行ったことはうかがわれないし、被控訴人らの主張によっても、厚生労働大臣の上記判断の過程の全体が具体的に説明されているとはいえない(抽象的に専門技術的な知見があるなどと主張するのでは、全く足りない。)ものである。 d 以上の検討に照らせば、デフレ調整の必要性ないし目的に関する厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 なお、被控訴人らは、当審の 、デフレ調整の必要性ないし目的に関する厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 なお、被控訴人らは、当審の最終口頭弁論期日(令和5年7月14日)において陳述された準備書面(12)及び(15)で、本件下落率に相当する、生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的増加が現に認められるか否かは、本件改定の適法性を左右しないなどと主張する。被控訴人らの上記主張は、原審第1事件の第1回口頭弁論期日(平成27年3月20日)以来、当審を含めて8年以上の審理を経過して初めて、上記各準備書面で行われたものであり、被控訴人らのそれまでの主張とも整合せず、その主張内容自体からして、生活保護法8条2項及び9条の規定に照らして到底採用できないものである(なお、デフレ調整によって生活保護受給世帯の実質的購買力が維持されなくなることを実質的に認めているに等しい- 156 -ものであるとはいえる。)。 小括以上によれば、厚生労働大臣がゆがみ調整を行った後にデフレ調整を更に行うこととした判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いていると認められる。 イ デフレ調整の内容に係る厚生労働大臣の判断について 物価指数を用いている(物価変動を指標としている)点についてa 控訴人らは、前記第4の1⑶アのとおり、物価指数を用いた生活扶助基準の改定は、過去に採られたことがなく、従前からの手法の極めて重大な変更であり、平成16年報告書及び平成25年報告書を通じて専門家から否定的、消極的な見解が示されていたことからしても、物価を計測するためにどのような指標を用いて、どのように考慮すべきかな めて重大な変更であり、平成16年報告書及び平成25年報告書を通じて専門家から否定的、消極的な見解が示されていたことからしても、物価を計測するためにどのような指標を用いて、どのように考慮すべきかなどの諸点について、基準部会等の専門家による慎重な検討、検証を経るべきであったにもかかわらず、デフレ調整は、そのような検討、検証を全く経ることなく、その根拠を明確に示すことなく物価指数を用いるなど、専門家の意見を無視して実施されたものであり、昭和58年意見具申、平成16年報告書、平成25年報告書等で示されていた専門的知見との整合性を明らかに欠いているなどと主張する。 これに対し、被控訴人らは、前記第5の1⑶イのとおり、厚生労働大臣は、消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつ、改定による減額幅が必要以上に大きくならないようにするため、平成15年中間取りまとめにおける専門委員会の指摘や平成25年報告書における基準部会の指摘等も考慮して、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の1つである物価を指標として、生活扶助基準の改定を行うこと- 157 -としたなどと主張する。 b 本件改定前の生活扶助基準の改定においては、デフレ調整のような方法で物価指数が直接用いられたこと(物価変動が指標とされたこと)がなく(なお、過去に採用されていたマーケットバスケット方式やエンゲル方式において、物価の変動は考慮されるが、これらの方式における考慮の内容は、デフレ調整の方法とは明らかに異なるものである。)、専門委員会や検討会、基準部会等において、生活扶助基準の改定方式として、デフレ調整のような方法で物価指数を用いる方式が検討、検証されたことはないのであって、厚生労働大臣は、基準部会又は である。)、専門委員会や検討会、基準部会等において、生活扶助基準の改定方式として、デフレ調整のような方法で物価指数を用いる方式が検討、検証されたことはないのであって、厚生労働大臣は、基準部会又はその他の専門家(専門家により構成される会議体)による検討、検証を経ることなく、独自の判断により、デフレ調整を行ったものである。 水準均衡方式は、生活保護において保障すべき最低限度の生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚し、一般国民の消費実態をもって最低限度の生活を判断するための基礎としてきたものであり、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定において考慮されている民間最終消費支出の伸び率は、物価変動分を除外しない名目値が用いられているから、水準均衡方式においても、物価変動が、一般国民の消費実態の変動等を通じて、生活扶助基準の改定の内容に影響している面はある。 しかし、昭和58年意見具申において「賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。」と指摘されている(認定事実⑵ウ)とおり、物価は、消費と関連付けられる諸要素の1つにすぎず、消費実態は、世帯人員の年齢、人数、地域、社会経済情勢の変化など様々な要素- 158 -の影響を受けるのであって、消費と物価が異なる性質を有する別個の経済指標であることは明らかである。また、認定事実⑷ウのとおり、物価の変動による生計費の変動、ひいては可処分所得の実質的変動の有無及び程度も、世帯類型等によって異なるし、この点において、消費者物価指数は、消費者全体を対象集団とした平均的(総合的)なものであるから、消費者全体のうち生活保護受給世帯というような特定の集団 の有無及び程度も、世帯類型等によって異なるし、この点において、消費者物価指数は、消費者全体を対象集団とした平均的(総合的)なものであるから、消費者全体のうち生活保護受給世帯というような特定の集団における、物価変動による生計費の変動等を測定するための手段としては、不適切である。生活扶助基準の改定について、物価の変動を直接考慮することは、それまで行われてきた水準均衡方式と全く異なる考え方に基づくものであって、上記のような専門的知見にもそぐわないというべきであり、それにもかかわらず、物価の変動(物価指数)を用い、物価の変動を生活扶助基準額の減額の根拠(ないしその1つ)とすることについては、専門技術的な見地から、そのことの相当性等の十分な検討を要すると考えられるし、前記アcの説示に照らして、被控訴人らにおいて、その検討、判断の過程の全体が具体的に説明されなければならないというべきであるが、厚生労働大臣が上記のような検討をしたことはうかがわれないし、少なくとも、厚生労働大臣の検討、判断の過程の全体が具体的に説明されているとはいえない。 この点について、被控訴人らは、基準部会が、平成25年報告書において、「厚生労働省において生活扶助基準額の見直しを検討する際には、本報告書の評価、検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と記載し、「展開のための指数」の適正化に加え、更に生活扶助基準の改定をするか否かや、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府の判- 159 -断に委ねる旨の意向を示していた旨主張する。しかし、認定事実⑶エのとおり、①基準部会において、厚生労働省社会・援護局保護課から示された平成25年報告書の案には について、政府の判- 159 -断に委ねる旨の意向を示していた旨主張する。しかし、認定事実⑶エのとおり、①基準部会において、厚生労働省社会・援護局保護課から示された平成25年報告書の案には、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」と記載されており、厚生労働省社会・援護局保護課から、「他に合理的説明が可能な経済指標」の例として、消費者物価指数や賃金の動向などが考え得るなどと説明されたこと、②これに対し、出席の委員から、「基準部会においては、・・・消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないことを明確にしていただきたい。」、「これも懸念であるが、直面する物価指数は、全国レベルの物価指数というものもあるが、実は地域によって、あるいは高齢世帯かどうかという世帯構成によって、さらに所得階級によって異なっている可能性がある。要するに、消費品目で物価指数というものは全く変わってくるので、そのようなことにも留意する必要がある。」、「基準部会においては物価指数については何も議論していないということと、全国一律の物価指数を当てはめることになれば、健康で文化的な最低限度の生活を具現化している生活保護基準というものがいろいろなものに参照されているという性質を考えた場合、非常に慎重に考えなければならない。」などの意見が出され、また、別の委員からも、「基準部会において合理的説明がついたのは級地と年齢と人員数のみで、それ以外については合理的説明がつかなかったということである。」、「私たちは、平成21年のデータを使って見ているだけであり、物価の状況とか全く見ていないし、議論していない中で、 齢と人員数のみで、それ以外については合理的説明がつかなかったということである。」、「私たちは、平成21年のデータを使って見ているだけであり、物価の状況とか全く見ていないし、議論していない中で、誰にでも納得できるということを誰が判断するのかとい- 160 -ったときに、基準部会で判断したことではないということは、明確にしていただきたいと思います。」、「『それらについても根拠を明確にして改定されたい。』は、かなり強い文言であり、議論していないことを『改定されたい』ということは、やはりできないと思います。ここのところは、基準部会の委員として非常に気になるところです。」などの意見が出されたこと、③これらの意見を踏まえた議論を受けて、平成25年報告書においては、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」という文言(表現)に修正されたことという、これに至る過程を踏まえれば、平成25年報告書の上記記載は、その文言のとおり、生活扶助基準の改定に当たって合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合にはその根拠を明確に示すよう求めるものにすぎないと解するのが素直で、相当なものといえるのであり、生活扶助基準の改定に当たっていかなる経済指標を用いるかを政府の判断に委ねる旨の意向を示すようなものではないし、生活扶助基準の改定に当たって物価指数(物価変動率)を単独で直接考慮することを肯定ないし容認するようなものでもないことは、明らかである。被控訴人らの上記主張は、上記のような経過全体を踏まえることなく、その一部のみを取り上げて、しかも、これを自らの都合に合わせて強引な解釈を行うもの し容認するようなものでもないことは、明らかである。被控訴人らの上記主張は、上記のような経過全体を踏まえることなく、その一部のみを取り上げて、しかも、これを自らの都合に合わせて強引な解釈を行うものであり、到底採用できないものである(厚生労働省社会・援護局保護課は、水面下で、物価を使った生活扶助相当CPIを用いて生活扶助基準を引き下げる改定を行おうとしていたところ、その正当性を基礎付けるために上記のような平成25年報告書の案を提示したものと考えられるが、このような目- 161 -論見は、基準部会の委員(専門家)らによって阻止されたというべきである。また、基準部会の委員であったH名誉教授は、原審における証人尋問で、基準部会について、「財政削減のために私たちは利用されたのかもしれない」、「常設部会は、ちょっと便利に使われちゃったかなというようなことで、・・・私個人としては非常に残念な思いがしています。」、「外部から下げろという圧力がある。 そして、部会が専門的な検証をして、下げる口実を作っていくというような構図をこのまま続けていくのは、やはり日本にとって決して良くない」などと証言しているのである。)。 被控訴人らは、生活扶助基準の改定方式として過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことから、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法ではないし、専門委員会が平成15年中間取りまとめにおいて「改定の指標の在り方についても検討が必要である。・・・例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」として、消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性に言及していたことを踏まえれば、平成25年報告書の上記記載にある「経済指標」には物価が 定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」として、消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性に言及していたことを踏まえれば、平成25年報告書の上記記載にある「経済指標」には物価が含まれ、デフレ調整において物価を指標として用いたことは、専門的知見との整合性を欠くものではないなどとも主張する。しかし、マーケットバスケット方式やエンゲル方式において物価の変動が考慮され得るとしても、これらの方式における考慮の内容は、物価変動を直接考慮するデフレ調整の手法とは明らかに異なるものである。被控訴人らが引用する平成15年中間取りまとめの上記記載についても、専門委員会が、平成15年中間取りまとめ以降、引き続き行った生活保護基準の妥当性の検証・評価等を踏まえて公表した、平成16年報告- 162 -書において同旨の記載がないこと(なお、平成15年中間取りまとめの上記記載については、同年12月16日開催の社会保障審議会福祉部会において、複数の出席委員から、「中間の改定を消費者物価指数でやるかどうかまではまだ詰まっていない。そういう方向は一つの考え方としてあり得るということで今回のまとめをした。」、「最終消費支出というのは賃金の伸びに比例するので、単純に物価を基準にして改定するということにはならない。改定のあり方については十分検討する必要がある。」などの意見が出されていたことが認められる。甲全338)からすれば、専門委員会の(総意による)意見として考慮することは、当然ながら相当でないというべきであるし、平成25年報告書の上記記載が生活扶助基準の改定に当たって物価指数(物価変動率)を単独で直接考慮することを肯定ないし容認するようなものでないことは、上記説示のとおりである。 したがって、被控訴人らの上記主張も失当である。 c 準の改定に当たって物価指数(物価変動率)を単独で直接考慮することを肯定ないし容認するようなものでないことは、上記説示のとおりである。 したがって、被控訴人らの上記主張も失当である。 c 被控訴人らは、平成20年以降のデフレの状況下で、消費を基礎として生活扶助基準を引き下げると、減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたなどと主張し、その根拠として、全国消費実態調査のデータによれば、平成16年から平成21年にかけて、2人以上世帯の消費支出が約6%下落し、また、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が14万8781円(同世帯の生活扶助基準額は15万0408円であり、これよりやや高めになっている。)から約13万1500円に約11.6パーセント下落していたことなどの統計調査の結果を挙げる。 確かに、認定事実⑶ウb及び証拠(乙全5、100、101、113)によれば、被控訴人らが上記主張の根拠として挙げる上記統計調査の結果を認めることができる。しかし、被控訴人らは、「- 163 -消費を基礎とする改定を行った場合、デフレ調整における減額率を大きく上回っていた可能性も否定できない。」(令和4年11月21日付け準備書面⑺の42、43頁)、あるいは「平成20年以降の上記の経済状況下では、国民の将来不安が高まり、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。」(令和5年5月31日付け準備書面(12)の60頁)などと主張するにとどまり、消費を基礎として生活扶助基準を改定した場合の減額率(減額幅)の検討内容やその試算値、本件下落率との大小関係等を、具体的に主張するものではないから、被控訴人らの上記 0頁)などと主張するにとどまり、消費を基礎として生活扶助基準を改定した場合の減額率(減額幅)の検討内容やその試算値、本件下落率との大小関係等を、具体的に主張するものではないから、被控訴人らの上記主張は、断片的な情報に基づき抽象的な想定ないし可能性をいうものの域を出ず、厚生労働大臣の判断過程の全体を具体的に明らかにするものとは、到底いえないものであるし、平成25年検証等の基準部会の検討、検証と比べて質及び量共に劣ることは明らかであって、厚生労働大臣が、基準部会又はその他の専門家(専門家により構成される会議体)に諮ることなく独自の判断で、物価変動を直接考慮するという過去に採られたことのない改定方法で生活扶助基準を引き下げるために求められる検討には程遠いものである。そして、被控訴人らの上記主張は、全国消費実態調査の結果を基準とすることが相当でないことをいう限度では正当なものであるとしても、せいぜいこれにとどまるものであり、物価変動(物価指数)を単独で直接考慮することが正当であることの根拠を示しているものではない(減額幅がより大きくなりそうな指標があるので、それよりは減額幅が小さいからよいのではないかなどというような、感覚的ないしイメージ的なものにすぎない。)といわざるを得ない。 - 164 -また、被控訴人らは、生活扶助のうち各種加算は、物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきたし、生活扶助基準の毎年度の改定においても、消費税が導入された平成元年度やその税率が引き上げられた平成9年度には、これらを踏まえた生活扶助基準の増額改定が行われ、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したもので、本件改定前にも、物価変動に着目した生活扶助基準の改定が行われて 改定が行われ、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したもので、本件改定前にも、物価変動に着目した生活扶助基準の改定が行われていた旨主張する。しかし、生活扶助のうち各種加算は、特別の需要に対応するものであるから、この特別の需要を満たすために必要な金額が決められた後に、物価の伸び率を基礎として改定することが不合理なものではないとしても、そもそも異なる場面で用いられるものであるから、生活扶助の本体部分の改定と各種加算の改定とを同列に論ずることはできない(このことは、基準部会における第27回部会の委員からの依頼により作成された「各種加算におけるこれまでの改定方法の経緯」に関する資料(乙全79)中に、「昭和59年(水準均衡方式導入時)」に「加算が対応する特別需要としては、概ね現行の水準で充たされているとの所見のもと、今後も実質的な水準が維持できるよう、生活扶助基準本体と異なった取り扱いにするものとして整理。以降、物価の伸び率を基本として改定」などと記載されていること、上記資料が提出された第28回部会(平成29年1月25日開催)において、H部会長代理が「一番問題は生活扶助で、本体部分と加算は全く違う原理で動いています。」などと発言していること(甲全422)からも、裏付けられる。)のであって、各種加算について物価の伸び率を基礎とした改定が過去に行われてきたことは、生活扶助基準の改定について物価変動を直接考慮することの合理性を基礎付けるものではなく、専門- 165 -的知見との整合性を説明し得るものでもない。また、消費税が導入された平成元年度やその税率が引き上げられた平成9年度において、それぞれその前後の年度よりも大きな生活扶助基準の増額改定が行われている(乙全10) 整合性を説明し得るものでもない。また、消費税が導入された平成元年度やその税率が引き上げられた平成9年度において、それぞれその前後の年度よりも大きな生活扶助基準の増額改定が行われている(乙全10)としても、それは、消費税の導入等の特殊な事情を民間最終消費支出の伸び率を予測するに際して考慮した結果であり、あくまでも消費を基礎とした水準均衡方式に基づくものであると考えられるから、上記のような特殊な改定例から、物価変動を直接考慮して生活扶助基準を改定することについて、専門的知見との整合性を認めることはできないのである。 したがって、被控訴人らの上記各主張は、いずれも理由がない。 d これらの検討を踏まえれば、生活扶助基準の改定に当たり物価指数を用いる(物価変動を指標とする)こととした厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 デフレ調整の始期(物価変動率の算定期間の始期)を平成20年とした点についてa 控訴人らは、前記第4の1⑶イのとおり、平成20年は、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇するなど、特別な事情で一時的に物価が高騰した年で、このような特異な年を始期とすれば、物価変動率は大きな下落率を示すことになるし、被控訴人らの後記主張によっても、平成19年から平成20年にかけて1.4%の物価上昇が生じていたことの影響が考慮されていないから、平成20年以降の物価下落の影響のみを考慮して生活扶助基準を引き下げることは、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加(要保護者の最低限度の生活の需要の減少)を正確に測定しているとはいえず、デフレ調整の始期を平成20年とした厚生労働大臣の判断には、考慮- 166 -すべき 護受給世帯の可処分所得の実質的な増加(要保護者の最低限度の生活の需要の減少)を正確に測定しているとはいえず、デフレ調整の始期を平成20年とした厚生労働大臣の判断には、考慮- 166 -すべき事項を考慮していない違法があるなどと主張する。 これに対し、被控訴人らは、前記第5の1⑶イaのとおり、厚生労働大臣は、平成19年検証によって、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費水準と比較して高いという結果が得られており、生活扶助基準を引き下げる必要性が認められたことを踏まえつつ、当時の社会経済情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して、生活扶助基準を据え置くという判断をしており、平成20年までの社会経済情勢等は、既に同年度の生活扶助基準の改定において斟酌されているということができ、このようにして定められた同年の生活扶助基準は生活保護法8条2項に適合する妥当なものといえることを前提に、平成19年検証以来となる定期的な検証(平成25年検証)を踏まえた本件改定において、平成20年以降の社会経済情勢等により生活扶助基準と一般国民の生活水準との間の拡大した不均衡を是正するため、デフレ調整の始期を同年とすることと判断したなどと主張する。 b 平成19年検証は、検討会において、平成16年全国消費実態調査の結果等を用いて生活扶助基準の水準の妥当性等を評価・検証した結果、標準世帯(夫婦子1人世帯)の第1・十分位における生活扶助相当支出額と比較して生活扶助基準額がやや高め(約1.1%)となっていたなどとするものであるから、平成19年検証の結果から直ちに、上記調査の3ないし4年後である平成19年ないし平成20年の当時においても生活扶助基準が一般低所得世帯の消費水準と比較して高いことが裏付けられるものではない。 厚 の結果から直ちに、上記調査の3ないし4年後である平成19年ないし平成20年の当時においても生活扶助基準が一般低所得世帯の消費水準と比較して高いことが裏付けられるものではない。 厚生労働大臣は、平成17年度ないし平成19年度の生活保護基準の改定においては、それぞれ、民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、生- 167 -活扶助基準を維持するという積極的な判断をしているといえるから、平成19年度の生活保護基準の改定の段階では、水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定を通じて、平成19年検証の結果において示された、平成16年全国消費実態調査の結果等に基づく生活扶助基準と一般低所得世帯の消費水準とが不均衡であった状態が維持されていたとみる余地がないわけではない。しかし、認定事実⑶ウによれば、厚生労働大臣は、平成20年度の生活保護基準の改定においては、原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、生活扶助基準の改定自体を見送ることとしたものであり、上記のような積極的な判断をしたとはいえないのであるから、結果的に生活扶助基準が据え置かれている点においては変わりがないとしても、平成19年度までの状況と同視することはできず、平成20年度の生活保護基準の改定の段階でも、上記の不均衡であった状態がそのまま続いていたとみることはできない。むしろ、平成19年から平成20年にかけて、1年の間に総務省CPIが1.4%も上昇していることからすると、上記の状態が有意に変化している可能性があったといえるから、平成20年の生活扶助基準が、要保護者の最低限度の生活の需要(生活保護法8条2項)に適合する妥当なものであったとも、一般低所得世帯の消費水準を下回るものではなかったとも断ずることはできな えるから、平成20年の生活扶助基準が、要保護者の最低限度の生活の需要(生活保護法8条2項)に適合する妥当なものであったとも、一般低所得世帯の消費水準を下回るものではなかったとも断ずることはできないのである。 また、被控訴人らは、平成20年の生活扶助基準は生活保護法8条2項に適合する妥当なものといえることを前提にした旨主張しているが、このような前提とした根拠としては、同年までの社会経済情勢等は同年度の生活扶助基準の改定においてしん酌されていることであるとしており、しん酌されているとした根拠としては、当時の社会情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案して生活扶助基- 168 -準を据え置くという判断をしたことであるとしている。しかし、「当時の社会情勢等(物価上昇を含む。)を総合的に勘案」したという、その具体的な内容については何ら主張立証されていないのであり、結局のところ、「据え置くという判断をした」という事実しかない(据え置くという判断は、その前後の時期においてもされている。)のであって、「平成20年の生活扶助基準は生活保護法8条2項に適合する妥当なもの」であったとすることについて、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有するものであるかの主張立証は、全くされていないのである。 c したがって、被控訴人らの前記aの主張は合理的なものではなく、平成20年をデフレ調整の始期(物価変動率の算定期間の始期)とした厚生労働大臣の判断は、平成19年から平成20年にかけての一時的な物価上昇の事実を合理的理由なく考慮せずに同年以降の物価下落のみを生活扶助基準の改定に反映させたものであるから、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 的理由なく考慮せずに同年以降の物価下落のみを生活扶助基準の改定に反映させたものであるから、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 生活扶助相当CPIを用いた点についてa認定事実⑷ウ及びc並びに後記b以下の認定及び判断のとおり、物価指数の計算方法は、どのような目的に利用するかを明確にした上で、その目的に適切なものであることが必要であり、十分に合理的で、かつ論理的に整合性のあるもの、すなわち、学術的に合理的で論理的整合性があるものとして承認されているものであることを要し、少なくとも学術的、論理的な批判に十分に耐えうるものであることが不可欠というべきであるところ、生活扶助相当CPIは、少なくとも、家計調査によって得られたウエイト(総務省CPIウエイト)をそのまま用いている点や、国際- 169 -的な規準に沿わない独自の指数算式である点で、上記要請に応える物価指数であるとは到底いえないものである。 被控訴人らは、前記第5の1⑶イcのとおり、生活扶助相当CPIはILOマニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されているロウ指数であるなどと主張する。 しかし、認定事実⑷ウcに加えて、生活扶助相当CPIは、複数の経済学者等の専門家が、国際的な規準(ILOマニュアル)に反し、理論的に難のあることを指摘し、不合理な指数である、ロウ指数とすらいえないものであるなどと、異口同音に強く批判し、また、これを用いて算出された本件下落率が、平成20年から平成23年まで(又は平成20年から平成22年まで)の期間について上記規準により試算される物価下落率と不自然に大きく異なることなどを指摘しているのであり(甲全149、300、3 が、平成20年から平成23年まで(又は平成20年から平成22年まで)の期間について上記規準により試算される物価下落率と不自然に大きく異なることなどを指摘しているのであり(甲全149、300、347、351、352、420、421、E証人、F証人。また、本件下落率は、平成20年から平成23年までの期間における総務省CPIによる物価の変化率(-2.35%)とも大きく異なっている。)、上記の意見及び試算は、いずれもそれ自体納得できるものである上、これらの複数の専門家を通じてほぼ一致するものであるから、互いにその正確性、信頼性を高め合っているといえるものである(なお、被控訴人らは、乙全92(I教授の意見書)を提出しているが、上記のE証人及びF証人が被控訴人らからの反対尋問を含む証人尋問を経ているのに対し、証人尋問を経ていない(被控訴人らは、控訴人らからの証人申請に対し、反対までしている。)のであって、その信用性が劣ることは明らかというべきである。しかも、上記意見書自体、「実際に計算される生活扶助相当CPIは、厳密なロウ指数の定義式とは異なっ- 170 -ている」としているのであって、むしろ、ロウ指数ではないことを認めているということができるし、「本意見書は、指数算式の妥当性以外の論点については一切の検証をしておらず、その可否については判断しない」などとしているのであり、当裁判所の以上の認定判断及び以下の認定判断を何ら左右するものではない。 )。 しかも、認定事実⑷ウcのとおり、被控訴人ら(被控訴人国)は、デフレ調整や生活扶助相当CPIに関し、その検討作業の内容について、現に公にされているところを超えて、本件訴訟において、これを具体的に説明したり、検討に用いた資料等を書証として提出するなどしなかったものであり、 活扶助相当CPIに関し、その検討作業の内容について、現に公にされているところを超えて、本件訴訟において、これを具体的に説明したり、検討に用いた資料等を書証として提出するなどしなかったものであり、B証人も、当審における証人尋問で、現に公にされているものを除き、具体的な回答をしなかったものである。 以上によれば、生活扶助相当CPIは、学術的な裏付けや論理的な整合性を欠く指数であるというほかなく、被控訴人らの上記主張も、具体的な裏付けを欠くものであり、全く理由がないものである。 b また、厚生労働大臣がデフレ調整のために生活扶助相当CPIを用いるという判断をしたことは、後記c以下のとおり、物価の下落による生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の有無及び程度を適切に評価し得るものとは到底いえない上、本件下落率についても、控訴人らの主張するように、テレビ等5品目の価格の変化(下落)が大きく影響したものであり、生活保護受給世帯の消費構造は一般世帯の消費構造と相当程度異なる(特にテレビ等5品目の支出割合が大きく異なっている。)にもかかわらず、一般世帯の消費構造を基礎とする総務省CPIウエイトをそのまま用いて算出されて- 171 -いる点で、平成20年から平成23年までの期間における生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の有無及び程度を正確に評価しているとは、到底いえないものであるから、統計等の客観的数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているというべきである。 c すなわち、認定事実⑷ウa及びbのとおり、被控訴人らの主張する平成20年から平成23年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率である-4.78%)に対するテレビ等5品目の寄与度は、-3.28%であり、 a及びbのとおり、被控訴人らの主張する平成20年から平成23年までの期間における生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率である-4.78%)に対するテレビ等5品目の寄与度は、-3.28%であり、上記変化率の大部分(7割近く)はテレビ等5品目の価格の下落によるものということができ、また、上記寄与度については、寄与度の算式上、平成23年の総合ウエイトを、総務省CPIウエイトの総和である1万として計算すると、上記寄与度は-2.10%となることに照らすと、生活扶助相当CPIが総務省CPIの指数品目から除外品目を除いている結果、生活扶助相当品目に係るウエイト総和が総務省CPIウエイトの総和1万から6393(平成23年)に減少し、テレビ等5品目のウエイトの総合ウエイトに占める比率が相対的に大きくなったことが、相当程度影響しているということができる。このことは、生活保護受給世帯の消費実態として、テレビ等5品目を含む教養娯楽用耐久財について、生活保護受給世帯が一般世帯よりも家計消費支出の全体に対して多くの割合を支出することを意味するものであるともいえるが、それは、後記dのとおりの社会保障生計調査の結果に反し、明らかに不合理である。 d厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIを算定する当たり、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いているところ、総務省CPIウエイトは、家計調査によって得られたウエイト参照時点- 172 -となる年の平均1箇月間の1世帯当たりの品目別消費支出額を用いて作成されているものであり、また、家計調査は、総務省統計局が毎月行っている、一定の統計上の抽出方法に基づき全国の世帯を代表するよう無作為に選定された約9000世帯を対象とした家計の収入・支出、貯蓄・負債等の調査であり、統計法2条6項にいう基幹統計調 局が毎月行っている、一定の統計上の抽出方法に基づき全国の世帯を代表するよう無作為に選定された約9000世帯を対象とした家計の収入・支出、貯蓄・負債等の調査であり、統計法2条6項にいう基幹統計調査の1つである(乙全81、82)。これらによれば、生活扶助相当CPIを算定するために用いられたウエイトは、ウエイト参照時点である平成22年における一般世帯の消費構造を表しているものではあっても、生活保護受給世帯の消費構造を表しているものでないことは明らかである。 そこで、更に検討するに、証拠(甲全110、349、394、乙全83、111)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ① 厚生労働省は、生活保護受給世帯の家計収支の実態を明らかにすることによって、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的として、統計法に基づく一般統計調査として、社会保障生計調査を実施している。 社会保障生計調査は、全国の生活保護受給世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け、各ブロックごとに都道府県・指定都市・中核市のうち1~3箇所を調査対象自治体と選定し、1110世帯(ただし、生活扶助を受けていない世帯等は除外する。)を抽出し、これらの世帯を対象として、家計収支の状況や消費品目の種類等を調査するものであり、調査事項のうち消費支出の状況については、級地、世帯類型、世帯業態- 173 -(勤労、その他)及び世帯人員別に、消費支出総額とその構成割合(総務省CPIにおける10大費目に対応する①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品、⑤被服及び履物、⑥保健医療、⑦交通・通信、⑧教育、⑨教養娯楽、⑩その 人員別に、消費支出総額とその構成割合(総務省CPIにおける10大費目に対応する①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品、⑤被服及び履物、⑥保健医療、⑦交通・通信、⑧教育、⑨教養娯楽、⑩その他)を明らかにするものである。 ② 2人以上の世帯について、平成22年(度)における総務省の家計調査の結果と厚生労働省の社会保障生計調査の結果を比べると、生活保護受給世帯の消費支出総額は1箇月当たり平均額が17万3620円であるのに対して、一般世帯のそれは29万0244円であり、両者の間には11万6624円もの大きな差がある(一般世帯は、生活保護受給世帯の約1.67倍である。)。 そして、これらの消費支出総額に占める各費目ごとの支出割合をみると、生活保護受給世帯は、一般世帯に比べて、食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物の各支出割合がいずれも高い反面、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、その他又は諸雑費の各支出割合がいずれも低いという傾向がみられ、特に教養娯楽の支出割合は、生活保護受給世帯が約6.4%であるのに対し、一般世帯は約11.5%で、2倍近い差がある(なお、生活保護受給世帯のうち約4分の3を占めている単身世帯についてみると、約5.6%であり、その差は2倍を超えるものとなる。)。 さらに、教養娯楽のうち教養娯楽用耐久財(テレビ等5品目もこれに含まれる。)の上記支出割合についてみると、生活保護受給世帯が約0.6%であるのに対し、一般世帯は約1.7%であり、3倍近い差がある。 - 174 - 前記の認定事実によれば、平成22年当時、生活保護受給世帯の消費構造と一般世帯の消費構造は、全く異なるものであったことが認められる。一般に、世帯の所得が低 る。 - 174 - 前記の認定事実によれば、平成22年当時、生活保護受給世帯の消費構造と一般世帯の消費構造は、全く異なるものであったことが認められる。一般に、世帯の所得が低くなればなるほど、日常生活上の基本的かつ不可欠な費用である食費や光熱・水費等に係る品目の消費支出額が消費支出総額に占める割合は、大きくなる一方で、教養娯楽のような日常生活の維持にとって必ずしも不可欠とはいえない品目に係る消費支出額の上記割合は、小さくなる傾向にある(甲全351の12頁、393の7枚目の表3、図4、5及び8枚目の図9)が、上記のような傾向は、前記bの認定事実のとおり、統計法に基づく統計調査の結果によっても裏付けられている。 そして、生活保護受給世帯において支出割合が相対的に高い費目は、価格の下落傾向がないか、むしろ上昇している一方で、上記支出割合が相対的に低い費目のうち特に下落率が大きい費目の価格は、実際の市場における価格の下落による影響以上に生活扶助相当CPIの下落に寄与しており、その寄与の程度は極めて大きいものである。そうすると、平成20年から平成23年までの期間に、テレビ等5品目の価格の下落が大きな要因となって物価が下落したことによる世帯の消費実態に対する影響の程度(可処分所得の実質的な増加と評価し得る程度)は、生活保護受給世帯と一般世態とが同程度ということはあり得ず、生活保護受給世帯においては、一般世帯と比べて相当小さくなると考えられ、生活扶助相当CPIを用いて、上記期間に、デフレ状況により生活保護受給世帯に-4.78%に相当するような可処分所得の実質的増加があったと評価することは、到底できないところである。 e したがって、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いて算- 175 世帯に-4.78%に相当するような可処分所得の実質的増加があったと評価することは、到底できないところである。 e したがって、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いて算- 175 -定されている生活扶助相当CPIは、その変化率が物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増減を適切に反映する指標ではないから、平成20年から平成23年までの期間においてデフレ状況による生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加(要保護者の最低限度の生活の需要の減少)の有無及び程度を測定し得るものではなく、厚生労働大臣が、デフレ調整のために生活扶助相当CPIを用いるという判断をしたこと、さらには、本件下落率を用いて生活保護受給世帯の可処分所得に相応の実質的増加があると判断したことは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性がないといわざるを得ない。 なお、被控訴人らは、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、生活保護受給世帯におけるパソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーの普及率は約7割、電子レンジや洗濯機の普及率は約9割、カラーテレビや冷蔵庫の普及率はほぼ10割となっており、生活保護受給世帯においても、教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想され、生活保護費のうちどの程度を教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるもので、教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わらないなどと主張する。 しかし、証拠(乙全37)によれば、テレビ等5品目のうちカラーテレビについては、生活保護受給世帯における普及率と一般世帯の普及率とがいずれも100%に近く、同程度であると認められ 。 しかし、証拠(乙全37)によれば、テレビ等5品目のうちカラーテレビについては、生活保護受給世帯における普及率と一般世帯の普及率とがいずれも100%に近く、同程度であると認められるものの、その余のビデオレコーダーやパソコン、カメラについては、両世帯の普及率が同程度であると認めることはできない(特にパソコン及びカメラについては、一般世帯の普及率が明らかに高く、同- 176 -程度の普及率であるとは到底いえない。)。そして、ここで問題とされているのは、消費支出なのであるから、そもそも普及率とは異なるのであって、被控訴人らの上記主張は、それ自体失当というべきものである(例えば、同じものを購入するとしても、これを4年に1度購入する集団と、2年に1度購入する集団があるとすれば、前者の消費支出は、後者の2分の1となる。そうすると、普及率が同程度であることを主張、立証するだけでは足りず、購入の頻度も同程度であることを主張、立証する必要があるが、被控訴人らは、このような主張、立証を行っていない。)。さらに、社会保障生計調査によれば、平成22年における生活保護受給世帯の「PC・AV機器」の支出額は年間合計8800円余と少額であり(甲全110の11頁)、到底テレビやパソコンの購入が可能な金額ではないことからすれば、生活保護受給世帯における購入頻度が非常に小さいものであることは明らかなのであって、この点からしても、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いることを正当化できるものではない。 以上のとおり、平成22年基準の総務省CPIウエイトを用いることは、物価変動率の算定期間に接着しているということで正当化できるものではなく、生活保護受給世帯の消費実態とかけ離れたものとなるのであって、被控訴人らの上記主張は理由 総務省CPIウエイトを用いることは、物価変動率の算定期間に接着しているということで正当化できるものではなく、生活保護受給世帯の消費実態とかけ離れたものとなるのであって、被控訴人らの上記主張は理由がない。 f これに対し、被控訴人らは、前記第5の1⑶イbのとおり、厚生労働大臣は、家計調査による第1・十分位の消費支出に基づくウエイトや、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いることが可能であったとしても、家計調査や社会保障生計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された年収階級を限定しない総務- 177 -省CPIウエイト(一般国民全体のウエイト)を用いることとしたものであるなどと主張する。しかし、被控訴人らの上記主張によって、生活保護受給世帯の消費構造と大きく異なっている一般世帯の消費構造を基礎とする総務省CPIウエイトを、生活保護受給世帯の消費構造に適合させるための修正等を加えることなく、適合しない状態のまま用いて生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の有無及び程度を測定することが正当化されるものではないから、被控訴人らの上記主張は理由がない。また、被控訴人らが従来の改定の考え方との整合性を主張している点については、そもそも従来の改定の考え方と整合性のない物価を直接考慮するという方法を採りながら、この点のみ従来の改定の考え方との整合性を主張するもので、むしろ、このような主張自体が整合性のないものであって、失当というほかない。 そのほか、被控訴人らは、デフレ調整は生活扶助基準と一般国民の消費実態(生活水準)との均衡を図る観点から行われたものであるから、用いるウエイトが生活保護受給世帯の消費実態に基づくものでなければならないわ か、被控訴人らは、デフレ調整は生活扶助基準と一般国民の消費実態(生活水準)との均衡を図る観点から行われたものであるから、用いるウエイトが生活保護受給世帯の消費実態に基づくものでなければならないわけではない旨主張する。しかし、被控訴人らのこのような主張は、保護基準の改定が要保護者の最低限度の生活の需要との関係で行われなければならない(生活保護法8条2項)という視点に欠けるものであるから、それ自体失当であり、理由がないものである。 小括以上によれば、厚生労働大臣が、物価変動を指標とする独自の生活扶助相当CPIを用い、平成22年基準の総務省CPIウエイトにより、平成20年を算定期間の始期として、平成23年までのその変化率(本件下落率)により、デフレ調整を行うこととした厚生労働大臣- 178 -の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を有しないことは明らかであり、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があって、裁量権の範囲の逸脱があるし、少なくともその濫用があると認められる。 ウ 平成29年検証の結果等について 被控訴人らは、前記第5の1⑶ウのとおり、平成29年検証において、本件改定後の生活扶助基準が一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態と概ね均衡することが確認されたと評価されていること、本件改定後の平成26年全消調査において、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2パーセント低下していたことによって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことは裏付けられるなどと主張する。 しかし、平成29年検証においては、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助 って、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことは裏付けられるなどと主張する。 しかし、平成29年検証においては、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額と本件改定後の生活扶助基準額とが概ね均衡することが確認されたにとどまり、そこから展開した様々なその余の世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡が確認されるまでには至らなかったものである(乙全66)から、平成29年検証の結果によって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落のないことが裏付けられることにはならない。 また、仮に、本件改定後の平成26年全国消費実態調査において、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2パーセント低下していたことが確認されたからといって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落のないことが裏付けられることにはならない。 - 179 -そして、これまでの認定及び判断のとおり、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断について、その過程及び手続に過誤、欠落が認められ、裁量権の範囲を逸脱し、少なくともこれを濫用したものとして違法になると認められるのであるから、本件改定後になって、仮に、本件改定後の生活扶助基準が一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態と概ね均衡することなど、被控訴人らの主張する事実が確認されたとしても、違法であったものが、遡って適法なものとなるものではない。 したがって、被控訴人らの前記の主張は理由がない。 エ 以上によれば、デフレ調整は、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法であると認められる。 なお、被控訴人らは、C意見書を提出して、これ 、被控訴人らの前記の主張は理由がない。 エ 以上によれば、デフレ調整は、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法であると認められる。 なお、被控訴人らは、C意見書を提出して、これを自らの主張の根拠として適宜引用する。C意見書は、「本意見書における『専門的知見等』とは、専門機関による報告書等に記載のある内容のほか、従前から厚生労働省が行ってきた生活扶助基準改定の具体的な取扱いをいう。」とした上、「『一般国民の直面する生活扶助相当品目に係る物価の動向を参照して改定を行うこと』は、改定の手順として専門機関が具体的に指し示すものではないが、全体としては専門的知見等と整合するものといえる。」とし、「『実質的な購買力を維持すること』は、飽くまで当時の政策的配慮にとどまるというべきものであり、どの程度まで生活保護受給世帯の実態を考慮するかについては、厚生労働省における経済的・社会的条件を踏まえた政策的判断によることが妥当といえる。」、「平成25年改定にあたって説明された『実質的な購買力を維持すること』については、単に物価動向の範囲内で改定することを言い換えたもの、すなわち、『一般国民の直面する生活扶助相当品目に係る物価の動向を参照して改定を行うこと』について別の表現により説明したものに過ぎないと理解される。専門的知見に照らしても、『生活保護受給世帯にお- 180 -ける消費構造を前提として実質的な可処分所得を維持すること』が必然的に求められるものではなく、飽くまで当時の政策的な配慮として『実質的購買力を維持すること』に配慮したものと解するべきである。どの程度まで生活保護受給世帯の実態を考慮するかについては、厚生労働省における経済的・社会的条件を踏まえた政策的判断によることが妥当といえる。」などの意見が述べられている。 と解するべきである。どの程度まで生活保護受給世帯の実態を考慮するかについては、厚生労働省における経済的・社会的条件を踏まえた政策的判断によることが妥当といえる。」などの意見が述べられている。 C意見書の上記意見は、デフレ調整についての、被控訴人らの従前の説明と異なるもので、デフレ調整によって、生活保護受給世帯の実質的購買力が維持されなくなることを実質的に認めているに等しいものである。そして、上記意見は、その具体的な判断内容や判断過程、とりわけ「実質的購買力」が維持されるか否か等を問うことなく、厚生労働省の「政策的判断」なるものの結論をそのまま承認するよう述べるものであるとも理解し得るものであるが、仮にそうであるとすれば、政策的判断という名目でいかようにも保護基準の改定を行い得るということになりかねず、法律による行政とは到底いえないし、判断の妥当性や適法性は何ら裏付けられないものである。 また、C意見書は、「本意見書は、専門的知見等との整合性について確認したものであって、実施された改定内容の適否について述べたものではない」としている。そうすると、C意見書の意見は、「実施された改定内容の適否」について「否」であっても「専門的知見等と整合する」という意見であることになってしまうが、「実施された改定内容の適否」について「否」であるものと整合する「専門的知見等」なるものが、そもそも専門的知見等といえるものかが疑問であるというほかなく、そのような厚生労働省の知見等は専門的知見等ではないといわざるを得ない。そして、C意見書にいう「専門的知見等と整合する」ものであっても、「実施された改定内容の適否」については「否」である場合がある- 181 -のであるから、C意見書にいう「専門的知見等と整合する」ことは、本件において 「専門的知見等と整合する」ものであっても、「実施された改定内容の適否」については「否」である場合がある- 181 -のであるから、C意見書にいう「専門的知見等と整合する」ことは、本件において何らの意味も有しないことになり、別途「実施された改定内容の適否」が検討されるべきことになるのである(なお、C意見書の意見が、「実施された改定内容の適否」について「否」であっても「専門的知見等と整合する」から違法ではないというものであるとすれば、到底採用できないものであることは明らかであろう。)。 以上によれば、C意見書及びこれに基づく被控訴人らの主張は、当裁判所のこれまでの認定及び判断を何ら左右するものではない。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を合わせて行うことの違法性ア 本件改定は、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体として同時に行うものであるから、これらがそれぞれ個別に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められるか否かの検討(前記⑵及び⑶)に加え、これらが一体として統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が認められるか否かという観点からも、別途検討されるべきである。 イ 認定事実⑷イのとおり、ゆがみ調整は、生活扶助基準の展開部分に一般低所得世帯(第1・10分位)の消費実態を反映させることにより、生活扶助基準の展開部分を適正化し、生活保護受給世帯間の公平を図ることを目的とするものであり、生活扶助基準を上記消費実態と比較することにより、生活扶助基準を引き下げるために行われるものではない。 しかし、ゆがみ調整(2分の1処理をしたもの)によって、生活扶助費は約90億円も削減されているのであるから、ゆがみ調整の目的が生活扶助基準を引き下げるためのものではないとしても、 ない。 しかし、ゆがみ調整(2分の1処理をしたもの)によって、生活扶助費は約90億円も削減されているのであるから、ゆがみ調整の目的が生活扶助基準を引き下げるためのものではないとしても、結果的には、全体として生活扶助費を引き下げていることは、明らかである(被控訴人らも、ゆがみ調整が「生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)」に影響を及ぼすことを認めている(前記第5の1⑵イ)。)。そして、本件改- 182 -定は、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体として同時に行うもので、デフレ調整のみによっても、生活扶助基準額が4.78%減額される(財政効果は約510億円)ものであるが、これに加え、生活扶助費が約90億円削減されるゆがみ調整が行われれば、ゆがみ調整による減額が加わり、結果として、本件下落率を超えて生活扶助基準額が減額されることになるもので、仮に、デフレ調整に関する被控訴人らの主張(物価が4. 78%下落したから、生活扶助基準額を4.78%引き下げても、生活保護受給世帯の実質的購買力は維持されることなど)を勘案しても、結果として、それ以上に生活扶助基準額が引き下げられることになるのであって、本件下落率算定の始期である平成20年当時の生活保護受給世帯の実質的購買力が維持されないことは明らかである。すなわち、本件下落率を前提に生活保護受給世帯の平成20年当時の実質的購買力を維持するためには、予め試算されたゆがみ調整(2分の1処理をしたもの)による約90億円の生活扶助費の削減(これによる本件下落率を超える生活扶助費の引下げ)が生じないように、ゆがみ調整について更に検討したり、デフレ調整の減額率を本件下落率より小さくしたりすることが必要であると考えられるところ、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体として同時に行うことについて、基準部会等の専門 がみ調整について更に検討したり、デフレ調整の減額率を本件下落率より小さくしたりすることが必要であると考えられるところ、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体として同時に行うことについて、基準部会等の専門家に諮問された形跡はなく、被控訴人らにおいて、上記のとおり本件下落率を超えて生活扶助基準額を減額することについて、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有する旨の説明もない(ゆがみ調整及びデフレ調整に関する個別の説明では足りないものである。)。 そうすると、本件改定に当たり、ゆがみ調整及びデフレ調整を一体として行うことにより、本件下落率を超える生活扶助基準額の減額を行うことになる点について、この点のみでも、統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いているといわざるを得な- 183 -い。 ウ したがって、ゆがみ調整とデフレ調整を合わせて行うこととした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があって、裁量権の範囲を逸脱しており、少なくともその濫用があると認められ、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法であると認められる。 ⑸ まとめ以上によれば、本件改定は、ゆがみ調整で2分の1処理を行った点及び生活扶助相当CPIを用いるなどしたデフレ調整を行った点において、また、これらを合わせて行った点において、いずれも統計等の客観的な数値等との合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠いており、個別にみても全体としても著しく合理性を欠くもので、裁量権の範囲を逸脱していることは明らかであるし、少なくともこれを濫用するものであるといわざるを得ず、生活保護法3条、8条2項に違反するもので、違法であると認められる。 そ を欠くもので、裁量権の範囲を逸脱していることは明らかであるし、少なくともこれを濫用するものであるといわざるを得ず、生活保護法3条、8条2項に違反するもので、違法であると認められる。 そうすると、争点2について判断するまでもなく、本件改定に基づいて行われた本件各処分は、いずれも違法なものと認められ、いずれも取り消されるべきである。 3 争点3(本件各告示による生活扶助基準の改定の国家賠償法上の違法性及び控訴人らの損害)について⑴ 前記2の認定及び判断のとおり、まず、本件改定のうち、ゆがみ調整の2分の1処理は、基準部会による約1年9箇月に及ぶ平成25年検証の結果をそのまま反映させないことの妥当性や反映させる程度等について、同部会に問うこともなく、平成25年報告書が出されるより前の段階で、その準備と並行して、2分の1処理を行う方針で試算を行うなどの準備を進めた上、これを国民に対して説明することなく、あたかも専門家によって- 184 -構成されている基準部会の検討に従ったそのままの結果と受け取られるような発表や説明を行い、ゆがみ調整によって生活扶助基準が引上げられるべき保護受給世帯との関係において是正されるべき不利益の一部をあえて放置したものである。また、デフレ調整は、合理的な根拠もなく、生活扶助相当CPIという学術的にも承認され得ない独自の指数により、生活保護受給世帯の消費実態と乖離したウエイトを用いるなどして、生活扶助基準を-4.78%と大きく引き下げたものであるし、さらに、ゆがみ調整と合わせて行うことでより大きな引下げとしたものであるから、本件改定は、生活保護法3条、8条2項に違反するものとして違法であるばかりでなく、これを行った厚生労働大臣には、少なくとも重大な過失があるものと認められ(厚生労働大臣に専門 げとしたものであるから、本件改定は、生活保護法3条、8条2項に違反するものとして違法であるばかりでなく、これを行った厚生労働大臣には、少なくとも重大な過失があるものと認められ(厚生労働大臣に専門技術的知見があるのであれば、これを適正に行使することによって、前記2で行ったような検討は容易に行うことができたといえるし、その一部については、本件改定より前に、即座に研究者からも指摘されていたのである。)、国家賠償法1条1項の適用上も、違法と評価せざるを得ないものである。 ⑵ 本件改定は、昭和59年以降採用されている水準均衡方式の下で、生活扶助基準引下げの改定が行われたのが、平成15年度及び平成16年度だけで、その引下げの率も-0.9%及び-0.2%と大きなものではなかった(乙全10)のに対し、-4.78%(本件下落率)の引下げを含むもので、過去に例のない、大幅な生活扶助基準の引下げを行ったものである。生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対し、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なものとして行われるものであり(生活保護法12条1号)、生活扶助基準の引下げは、生活保護受給世帯の生計の維持に直接的影響を及ぼすものであるから、本件改定による影響は、生活保護受給者にとって非常に重大なものというべきである。 - 185 -憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、抽象的・相対的な概念であり、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものではあるが、少なくとも本件改定の当時においては、人が3度の食事ができているというだけでは、当面は飢餓や命の危険がなく、生命が維持できているというにすぎず、到底健 関係において判断決定されるべきものではあるが、少なくとも本件改定の当時においては、人が3度の食事ができているというだけでは、当面は飢餓や命の危険がなく、生命が維持できているというにすぎず、到底健康で文化的な最低限度の生活であるといえないし、健康であるためには、基本的な栄養バランスのとれるような食事を行うことが可能であることが必要であり、文化的といえるためには、孤立せずに親族間や地域において対人関係を持ったり、当然ながら贅沢は許されないとしても、自分なりに何らかの楽しみとなることを行うことなどが可能であることが必要であったといえる(なお、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIを算出するに当たり総務省CPIウエイトを用いており、10大費目のうち教養娯楽のウエイトは1145で(乙30)、生活扶助相当CPIのウエイト総和(6189又は6393)の約18%を占めているから、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程において、生活扶助費のうち2割近くを教養娯楽の費用に充てることができる生活が前提となっていたと考えることもできる。)。 しかし、本件改定前の生活保護受給世帯において、上記のような余裕があったことを認めるに足りる証拠はないし、前記2⑶イdの社会保障生計調査の調査結果に照らしても、そのような生活実態であったとは認められない。証拠(甲⑸1、⑼1、(11)1、(13)1、(14)1、(15)1、(18)1、(19)1・2、(21)1、甲全132ないし137、379、控訴人4(原審原告5)、7(同9)、10(同13)、12(同15)及び17(同21)各本人(原審)、証人J(当審))によれば、控訴人らは、本件各処分によって、元々余裕のある生活ではなかったところを、生活扶助費の減額分だけ更に余裕のない生活を、本件各処分1又は本件各処分2 同21)各本人(原審)、証人J(当審))によれば、控訴人らは、本件各処分によって、元々余裕のある生活ではなかったところを、生活扶助費の減額分だけ更に余裕のない生活を、本件各処分1又は本件各処分2を受- 186 -けて以降、少なくとも9年以上という長期間にわたり強いられてきたものと認められるから、いずれも相当の精神的苦痛を受けたものと推認するに難くなく、このような精神的苦痛は、金銭的、経済的な問題の解消によってその全てが解消される性質のものではなく、事後的に本件各処分が取り消されたとしても、その間の生活が取り戻せるものではないことにも鑑みれば、本件各処分が取り消されることにより慰謝される部分があるとしても、その全てが慰謝されるとは認め難いところである。そして、生活扶助は、抽象的・相対的なものであるとしても、我が国の主権者である国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む」権利(憲法25条1項)を基礎とする制度であり、本来、被控訴人国は、その「向上及び増進に努めなければならない」ものである(同条2項)。 これに加え、前記2の認定及び判断のとおり、本件改定が、学術的にも認められるものではない、客観的合理的な根拠のない手法等を積み重ね、あえて生活扶助基準の減額率を大きくしているもので、違法性が大きいことなどの事情を総合的に勘案すると、いずれの控訴人らについても、本件各処分の取消しによってもなお残ると認められる精神的苦痛を慰謝すべき金額は、それぞれの請求額である1万円を下回るものではないというべきである。 ⑶ したがって、被控訴人国は、控訴人3、4及び6ないし12に対し、それぞれ、1万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い、控訴人13、14、16及 国は、控訴人3、4及び6ないし12に対し、それぞれ、1万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い、控訴人13、14、16及び17に対し、それぞれ、1万円及びこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで上記割合による遅延損害金の支払義務を負うと認められる。 4 総括以上によれば、控訴人らの請求は、控訴人13の当審における拡張請求の- 187 -部分を除いて、いずれも理由があるが、同控訴人の被控訴人国に対する損害賠償請求に係る附帯請求の起算日は、本件告示2の適用日である平成26年4月1日になると解され、同控訴人は、同日以降の遅延損害金を請求することができるにとどまるから、上記拡張請求は理由がない。 被控訴人らは、その他にも種々主張するが、いずれも当裁判所の以上の認定及び判断を左右するものではない。 第7 結論よって、控訴人らの原審における請求はいずれも理由があり、これらを棄却した原判決は相当でなく、本件各控訴はいずれも理由があるから、原判決を取り消し、控訴人らの上記請求をいずれも認容し、また、控訴人13の当審における拡張請求は、理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判長裁判官 長 谷 川 恭 弘 裁判官 寺 本 明 広 裁判官 亀 村 恵 子 広 裁判官 亀 村 恵 子

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