高刑集第75巻1号 1令和5年(う)第338号強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件令和5年6月16日東京高等裁判所第5刑事部判決【原審】令和3年(わ)第1348号、令和3年(わ)第1396号、令和4年(わ)第13号、令和4年(わ)第105号、令和4年(わ)第300号、令和4年(わ)第468号、令和4年(わ)第616号、令和4年(わ)第837号、令和4年(わ)第1068号、令和4年(わ)第1162号令和5年1月20日東京地方裁判所立川支部判決【参照】児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、4項 主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中80日を原判決の刑に算入する。 理由 1 本件は、被告人が、当時7歳から12歳までの20名を超える児童に対し、わいせつな行為を行い、その状況を撮影するなどして児童ポルノを製造した事案である。 弁護人米村哲生の控訴趣意は、法令適用の誤り、理由齟齬及び量刑不当の主張である。 2 法令適用の誤り及び理由齟齬の論旨は、原判決が認定した犯罪事実のうち、「ひそかに、被告人が被害者の陰茎を手で触るなどの姿態を動画撮影する」などした行為(原判示第2の2、4、5、21)及び「ひそかに、被告人が被害者の陰茎を手で触るなどの姿態をとらせ、これを動画撮影する」などした行為(原判示第2の7、9、11、13、15)については、児童-1- 高刑集第75巻1号 2買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等 2の7、9、11、13、15)については、児童-1- 高刑集第75巻1号 2買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項の罪が成立するから、同条5項の罪の成立を認めた原判決には法令適用の誤り又は理由齟齬があるというのである。すなわち、同条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定しており、同条5項の罪が成立するためには同条4項の罪が成立しない場合であることを要すると解すべきであるところ、被告人は、前記各事件において、被害者らに所定の姿態をとらせて撮影するなどしたものであり、いずれについても同条4項の罪が成立するから、同条5項の罪は成立しないというのである。 しかしながら、原審記録によれば、前記各事件は、いずれも、被告人が、各児童に所定の姿態をとらせた上、ひそかにその姿態を撮影するなどした行為に係るものと認められるところ、これらについて、訴追裁量を有する検察官が同条5項のひそかに所定の児童の姿態を撮影するなどした事実を摘示した上で同条5項の罪により公訴を提起し、被告人及び原審弁護人は事実及び犯罪の成立を争わず、原判決においてその事実が認定されて犯罪の成立が認められたものであり、同条5項の罪の成立を認めた原判決の法令の適用に誤りはない。所論は、同条5項の罪が成立するためには同条4項の罪が成立しない場合であることを要するというが、同条4項の罪が成立しないことが同条5項の罪の成立要件であるとの趣旨であれば、そのように解すべき合理的理由はなく、賛同できない。 なお、検察官は、原判示第2の7、9、11、13、15の各事件について、同条5項の罪により公訴提起しつつ、ひそかに所定の姿態を動画撮影するなどした事実のほか、被告人が児童にその姿態をとら ない。 なお、検察官は、原判示第2の7、9、11、13、15の各事件について、同条5項の罪により公訴提起しつつ、ひそかに所定の姿態を動画撮影するなどした事実のほか、被告人が児童にその姿態をとらせた事実を公訴事実に記載し、原判決も、同条5項の罪の成立を認めた上で、公訴事実と同一の事実を認定・記載したものである。検察官の公訴提起が同条5項の罪によるものであることは明白であり、被告人が所定の姿態をとらせた旨の記載は、余事記載に当たるが、その記載は裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそ-2- 高刑集第75巻1号 3れのあるものとはいえないし、その記載によって被告人の防御に支障を生じさせるものともいえないから、公訴提起の手続に違法があるとはいえない。 また、原判決の被告人が所定の姿態をとらせた旨の認定・記載は、同条5項の罪の犯罪事実の記載としては不必要かつ不適切というべきであるが、同条5項の罪の犯罪事実は漏れなく認定・記載されており、法令の適用の記載からも同条5項の罪の成立を認めたことが明らかであるから、原判決に理由齟齬の違法があるとはいえない。 法令適用の誤り及び理由齟齬の論旨は理由がない。 3 量刑不当の論旨は、被告人を懲役13年に処した原判決の量刑は重すぎて不当であるというのである。 原判決は、各犯行の手口は幼い被害者らの未熟さを悪用した巧妙なもので、行為態様もわいせつ性が高く、一部の事件では動画撮影にも及んでおり、卑劣で悪質というほかないし、一方的に被害者らの性的自由や尊厳を大きく侵害しており、結果は重大である、被告人は、サッカークラブのコーチとして被害者らの安全を預かる立場にありながら、その立場を利用して4年間にわたり各犯行を繰り返したもので、被告人の刑事責任に を大きく侵害しており、結果は重大である、被告人は、サッカークラブのコーチとして被害者らの安全を預かる立場にありながら、その立場を利用して4年間にわたり各犯行を繰り返したもので、被告人の刑事責任には重大なものがあるとした上、被告人が反省と謝罪の言葉を述べていることや、一部の被害者に対し被害弁償金各30万円を支払うなどしたこと等を考慮して、被告人を前記の刑に処したものである。 原判決の量刑判断は、当裁判所も支持することができる。所論は、本件は暴行や脅迫を用いたものでないし、わいせつ行為の内容も重いものでなく、製造された児童ポルノも短時間のものであって、流出等の被害もない、被告人の反省を考慮すべきであるというが、行為の悪質性や被害の重大性に関する原判決の評価は相当であるし、被告人の反省と謝罪については原判決も相応に考慮している。原判決の量刑が重すぎて不当とはいえない。 量刑不当の論旨も理由がない。 4 よって、刑訴法396条、181条1項ただし書、刑法21条により、-3- 高刑集第75巻1号 4主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官伊藤雅人裁判官島戸純裁判官江見健一) -4-
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