平成26(わ)1184 銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年8月24日 福岡地方裁判所
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判決文本文139,868 文字)

令和3年8月24日宣告平成26年(わ)第1184号銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人被告事件(以下「元組合長事件」という。)平成26年(わ)第1284号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「看護師事件」という。)平成27年(わ)第668号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「歯科医師事件」という。)平成27年(わ)第918号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「元警察官事件」という。) 主文 被告人Xを死刑に処する。 被告人Yを判示第1の罪について無期懲役に,判示第2の1,2,第3及び第4の各罪について無期懲役に処する。 被告人Yに対し,未決勾留日数中1500日を判示第1の罪の刑に算入する。 理由 以下,罪となるべき事実及び事実認定の補足説明において,人名については,特記する場合を除き,再出時以降は本名の姓のみを記載する。また,肩書や役職等については,いずれもその出来事があった当時のものを記載する。なお,理由中のAないしPは別紙記載の者を指す。 (罪となるべき事実)第1 元組合長事件被告人両名は,U1,U2,U3らと共謀の上,平成10年2月18日午後7時3分頃,北九州市s1区(以下省略)のキャバレー「p1」前路上において,法定の除外事由がないのに,Q1(当時70歳)に対し,殺意をもって,至近距離から 所携の回転弾倉式けん銃2丁で弾丸合計5発を発射し,そのうち4発をQ1の頭部,左胸部等に命中させ,よって,同日午後8時5分頃,同区(以下省略)のf病院において,Q1を頭部及び左胸部の射創による脳挫傷兼失血により死亡させて 2丁で弾丸合計5発を発射し,そのうち4発をQ1の頭部,左胸部等に命中させ,よって,同日午後8時5分頃,同区(以下省略)のf病院において,Q1を頭部及び左胸部の射創による脳挫傷兼失血により死亡させて殺害するとともに,不特定若しくは多数の者の用に供される場所においてけん銃を発射した。 第2 元警察官事件平成24年4月19日当時,被告人Xは指定暴力団五代目甲1會(以下「甲1會」という。)総裁,被告人Yは甲1會会長,V1は甲1會理事長兼五代目甲2組組長,V2は甲1會上席専務理事兼甲2組若頭,V3は甲1會専務理事兼甲2組筆頭若頭補佐,V4は甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐,V5は甲1會専務理事兼甲2組組長付,V6は甲1會理事兼甲2組組員,V7,V8及びV9はいずれも甲1會幹事兼甲2組組員であったものであるが,被告人両名は,V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8及びV9と共謀の上,組織により,元福岡県警察警察官のS(当時61歳)を殺害することになってもやむを得ないと考え,甲1會の活動として,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,いずれも法定の除外事由がないのに 1 同日午前7時5分頃,不特定若しくは多数の者の用に供される場所である北九州市s2区(以下省略)付近路上において,V5が,Sに対し,殺意をもって,所携の自動装てん式けん銃で,Sの身体を目掛けて弾丸2発を発射し,同人の左腰部及び左大腿部に1発ずつ命中させ,もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが,同人に約1か月間の入院及び通院加療を要する左股関節内異物残留,左大腿部銃創の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らず,さらに,引き続き,同所において,V5が,所携の前記けん銃で,地面に向けて弾丸1発を発射し, 2 前記日時場所において,同 節内異物残留,左大腿部銃創の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らず,さらに,引き続き,同所において,V5が,所携の前記けん銃で,地面に向けて弾丸1発を発射し, 2 前記日時場所において,同記載のけん銃1丁を,これに適合するけん銃実包3発と共に携帯して所持した。 第3 看護師事件平成25年1月28日当時,被告人Xは特定危険指定暴力団五代目甲1會総裁,被告人Yは甲1會会長,V1は甲1會理事長兼五代目甲2組組長,W1は甲1會理事長補佐兼丙1組組長,V2は甲1會上席専務理事兼甲2組若頭,V3は甲1會専務理事兼甲2組風紀委員長,V4は甲1會専務理事兼甲2組筆頭若頭補佐,W2は甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐,W3は甲1會専務理事兼甲2組組長秘書,V5は甲1會専務理事兼甲2組組長付,W4は甲1會専務理事兼甲2組組織委員,W5は甲1會専務理事兼甲2組組織委員,W6は甲1會常任理事兼丙1組組員であったものであるが,被告人両名は,V1,W1,V2,V3,V4,W2,W3,V5,W4,W5及びW6と共謀の上,組織により,T(当時45歳)を殺害することになってもやむを得ないと考え,同日午後7時4分頃,福岡市t区(以下省略)のn1北側歩道上において,甲1會の活動として,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,W2が,Tに対し,殺意をもって,所携の刃物で,左側頭部を目掛けて突き刺すなどし,もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが,Tに約3週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創,顔面神経損傷,右前腕部刺切創及び左殿部刺創の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らなかった。 第4 歯科医師事件平成26年5月26日当時,被告人Xは特定危険指定暴力団五代目甲1會総裁,被告人Yは甲1會会 右前腕部刺切創及び左殿部刺創の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らなかった。 第4 歯科医師事件平成26年5月26日当時,被告人Xは特定危険指定暴力団五代目甲1會総裁,被告人Yは甲1會会長,V1は甲1會理事長兼五代目甲2組組長,V4は甲1會専務理事兼甲2組本部長,W4は甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐,V5は甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐・組長付,V6は甲1會理事兼甲2組組員であったものであるが,被告人両名は,V1,V4,W4,V5及びV6と共謀の上(ただし,W4,V5及びV6とは組織的殺人の限度で共謀の上),北九州市内及びその周辺を主たる縄張とする甲1會の不正権益を維持・拡大する目的で,組織により,Q3(当時29歳)を殺害することになってもやむを得ないと考え,同日午前8時29分頃, 北九州市s1区(以下省略)所在のg2前駐車場において,甲1會の活動として,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,V5が,Q3に対し,殺意をもって,所携の刃物で,胸部,腹部,背部,大腿部等を目掛けて多数回突き刺すなどし,もって団体の不正権益を維持・拡大する目的で,かつ,団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが,Q3に入院加療約14日間及び外来加療約3か月間を要する見込みの左大腿部刺創,腹部刺創,胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らなかった。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 二代目甲1連合甲3一家,甲1會及び三代目甲2組の概要等元組合長事件についての判断の前提として,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 二代目甲1連合甲3一家及び甲1會の概要等昭和62年6月,それまで抗争を繰り返していた甲1会と甲3一家が合併し,甲1連合甲3 判断の前提として,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 二代目甲1連合甲3一家及び甲1會の概要等昭和62年6月,それまで抗争を繰り返していた甲1会と甲3一家が合併し,甲1連合甲3一家(以下,代替わりの前後を問わず,単に「甲1連合」ということがある。)が結成され,Z4が総裁,Z5が総長,Z6が若頭,被告人Xが本部長となった。 平成2年12月,代替わりして二代目甲1連合甲3一家が発足し,Z5が総裁,Z6が総長,被告人Xが若頭となった。甲1連合は,北九州市s1区内に主たる事務所を置き,北九州市及びその周辺地域等を縄張としていた。 平成11年1月,甲1連合は,団体の名称を改めて,三代目甲1會(以下,代替わりの前後を問わず,単に「甲1會」ということがある。)となり,Z6が会長,被告人Xが理事長となった。また,平成12年1月,四代目甲1會が発足し,Z6が総裁,被告人Xが会長となった。 2 三代目甲2組の概要等 三代目甲2組(以下,代替わりの前後を問わず,単に「甲2組」ということがある。)は,甲1連合の二次団体であり(前身の甲1会,平成11年の団体の名称変更後の甲1會との関係も同様である。),平成10年当時の本部事務所は北九州市s1区s9にあった。 被告人Xは,昭和61年頃,三代目甲2組の組長となり,平成2年12月に甲1連合(二代目)が発足した際,当時,甲2組内丙2組の若頭をしていた被告人Yを三代目甲2組内序列2位の若頭に抜てきし,平成15年2月,刑務所から出所してきて間もない被告人Yに代を譲り,四代目甲2組組長に就任させるまでその地位にいた。 元組合長事件が発生した平成10年2月当時,三代目甲2組には,組長の被告人X及び若頭の被告人Yのほか,序列3位の本部長のU3,若頭補佐のU1,行動隊長のU2らがお 就任させるまでその地位にいた。 元組合長事件が発生した平成10年2月当時,三代目甲2組には,組長の被告人X及び若頭の被告人Yのほか,序列3位の本部長のU3,若頭補佐のU1,行動隊長のU2らがおり,被告人Yが組長を務める甲2組内丙3組には本部長のZ7がいた。甲2組には,U3,U1,U2のように,甲2組組員でありながら,甲2組内に三次団体(それぞれ丙4組,丙5組,丙6組)を組織して組長となる組員がいたが,このような甲2組内の三次団体の組長同士の間に,互いに指示をしたり,従ったりという関係はなかった。また,甲1連合には,甲2組出身者が組長を務める丙2組等の二次団体があり,甲2組一門を形成していた(以下,一門を含めて「甲2組」ということがある。)。 第2 元組合長事件について 1 事件の概要及び当裁判所の判断の結論元組合長事件の犯行(以下,元組合長事件の項では,この銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)違反,殺人の犯行を「本件犯行」といい,当該事件を「本件」ということがある。)の状況等について,次の事実が証拠上容易に認められる。 平成10年2月18日午後7時3分頃,北九州市s1区s8町所在のキャバレー「p1」前路上において,二人の男が,同市s4区にあるj1漁業協同組合(以下 「j1漁協」といい,漁業協同組合を「漁協」という。)の元組合長であるQ1に対し,殺意をもって,至近距離から所携の回転弾倉式けん銃2丁で弾丸合計5発を発射し,そのうち4発をQ1の頭部,左胸部等に命中させ,よって,同日午後8時5分頃,同区内の病院で,Q1を頭部及び左胸部の射創による脳挫傷兼失血により死亡させた。 そして,関係証拠から認定できる事実を総合すれば,本件犯行の実行犯の一人はU1であり,また,U2及びU3が本件犯行に関与している で,Q1を頭部及び左胸部の射創による脳挫傷兼失血により死亡させた。 そして,関係証拠から認定できる事実を総合すれば,本件犯行の実行犯の一人はU1であり,また,U2及びU3が本件犯行に関与していること,被告人両名が,判示第1の共犯者であるU1,U2及びU3らと本件犯行を共謀した事実が認められる。以下,詳述する。 2 U1が本件犯行の実行犯の一人と認められること⑴ 認定事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア本件当時,甲2組若頭補佐のU1は,内妻のc4と,当時のc4方である北九州市s1区内のマンション(以下「旧c4方」という。)で同棲していたところ,本件前日である平成10年2月17日の夜,c4は,旧c4方の玄関を入ってすぐ左側にある風呂場の前の廊下に回転式のけん銃が1丁置かれており,U1がその風呂場の壁をドライバーのようなものでほじくり返す仕草をしているのを目撃するとともに,U1から,道具(けん銃)が暴発した,弾がこの中に入って見つからない旨,焦った様子で告げられた。 イ本件当日(同月18日)の夕方午後5時か6時頃,U1は,北九州市s1区所在の甲1連合内二代目丙7組の事務所を訪れた。同組組長のZ2とU1は,同日午後6時前頃,連れ立って同事務所近くのc6が経営する喫茶店「p2」に入店したが,同日午後7時頃にU1は何らかの用事で店外へ出て行き,少ししてからZ2も店外へ出て行った。なお,前記p2と本件犯行現場間の直線距離は約700メートルであった。 ウ U1は,本件当日,Q1が殺害されたことを知った後,c4に対し,当時U 1とc4が住んでいたマンション(旧c4方)が本件犯行現場の近くであることから自身が本件犯行の犯人であると一番疑われるとして,c4に対し,しばらく身を隠す旨告げて,その後c4と共に北九 1とc4が住んでいたマンション(旧c4方)が本件犯行現場の近くであることから自身が本件犯行の犯人であると一番疑われるとして,c4に対し,しばらく身を隠す旨告げて,その後c4と共に北九州市内のラブホテルを転々としていた。 エ平成15年6月25日,旧c4方の検証及び捜索差押えにおいて,c4が指示した風呂出入口南側の壁の内側の石膏ボードを支える軽鉄スタット内部から銀色,鉛製様の弾頭様のものが発見された。同弾頭様のものは,左回転6条の腔旋痕を有する回転弾倉式けん銃の発射弾丸であり,この弾丸1個と,Q1の体内から摘出された弾丸4個のうち2個及び本件当日に現場路上で発見された弾丸1個とは,同一のけん銃によって発射された弾丸であった。 ⑵ 小括前記1で認定したとおり,実行犯2名がけん銃2丁を用い,被害者のQ1に向けて至近距離から銃弾5発を発射するという本件犯行の態様からは,暴力団組織等の犯罪組織が本件犯行に関与したことが強く推認されるところ,前記⑴の各認定事実によれば,U1が,本件前日の夜,旧c4方においてけん銃を暴発させ,そのけん銃が本件当日に実行犯により本件犯行に用いられたこと,そのU1が,本件犯行の直前の時間帯頃に,本件犯行現場から直線距離で約700メートルの地点にある喫茶店から,何らかの用事で出て行ったこと,U1は,Q1殺害の事実を知った後,本件犯行の犯人であると疑われるとして,c4と共にしばらく身を隠したことが認められ,以上の各事実によれば,本件当時甲2組の若頭補佐をしていたU1が本件犯行の実行犯の一人であることが強く推認され,U1が単なるけん銃の調達役にすぎなかったとは考えられない。 前記の点について付言すると,Z2は,平成29年に別の被告人の公判において,U1が前記喫茶店から出ていったときに,おやじの用事 認され,U1が単なるけん銃の調達役にすぎなかったとは考えられない。 前記の点について付言すると,Z2は,平成29年に別の被告人の公判において,U1が前記喫茶店から出ていったときに,おやじの用事で行く,用事をしてくるというようなことを言った,おやじとは被告人Xのことだと思う旨供述しているところ,検察官は,このZ2供述に表れたU1の発言をもって本件犯行への被告人Xの関与を示す事実の一つとして主張しているものと解される。この点,Z2は, 前記公判において,U1が被告人Xを尊敬し,被告人Xに対する忠誠心を抱いていたことを示す複数のエピソードに言及するとともに,「ちょいちょい僕のところへ(U1が)遊びに来て帰るときには,おやじの用事というようなことで出ていく。」旨供述しており,被告人Xを尊敬するなどしていたU1が,Z2のもとを退去するときに,被告人Xの用事という意味合いの「おやじの用事」という発言を度々していたことがうかがわれる。そして,Z2は,平成14年8月作成の検察官調書において,U1が前記喫茶店を出ていく際に「オヤジの用事を済まして,戻ってくる。」というようなことを言った旨供述する一方で,同年7月作成の検察官調書では,U1が同じ場面で「用事をすまして戻ってくる。」というようなことを言った旨供述しており,これらの供述調書作成時点で本件から4年以上が経過していたことも踏まえると,U1が前記喫茶店を出る際にZ2に対して「おやじの用事」と告げた可能性は低くないものの,Z2において他の機会の発言と混同している可能性は否定できないから,何らかの用事がある旨を告げたという限度で認定した。 ⑶ 弁護人の主張に対する判断被告人両名の各弁護人(被告人Xの弁護人の主張と被告人Yの弁護人の主張はおおむね同様であるため,被告人両名の各弁護人 らかの用事がある旨を告げたという限度で認定した。 ⑶ 弁護人の主張に対する判断被告人両名の各弁護人(被告人Xの弁護人の主張と被告人Yの弁護人の主張はおおむね同様であるため,被告人両名の各弁護人を,以下,単に「弁護人」という。)は,前記⑴の各認定事実を争うので,これらを認定した理由を説明する。 ア c4供述の信用性まず,前記⑴ア(旧c4方でのけん銃の暴発)及びウ(本件後のU1とc4の行動)の各事実の認定に用いたc4の各検察官調書における供述の信用性について補足すると,c4の供述内容は,具体的かつ詳細であり,その供述の信用性を疑うべき事情は見当たらない。元組合長甲26,28及び30号証の各検察官調書は,平成14年7月頃,a6検察官がc4の取調べを担当し,c4の心情等にも留意しながら,c4の供述を録取して作成されたものであり,U1が,自身が本件犯行の犯人であると一番疑われるとして本件後しばらく身を隠したというのも,旧c4方と本件犯行現場が実際に非常に近い距離にあるという事実とよく整合している。看 護師甲305号証の検察官調書は,前記⑴エの平成15年6月25日実施の検証等において弾丸が発見された後の同年7月2日に作成されたものであるところ,同調書中のc4供述は,従前c4が捜査官に供述していたとおり,前記弾丸が旧c4方の壁の中から発見されたという客観的事実によって裏付けられている。また,c4の取調べを担当し,看護師甲305号証の検察官調書を作成したa7検察官によれば,c4は,旧c4方での検証の結果がU1の公判における決定的な証拠になるのではないかと思い,検証への協力に躊躇していたが,検証に協力して実際に弾丸が出てきてしまったので検察官による供述調書作成にも協力することにしたというのであり,けん銃暴発に関するc4の供述調 になるのではないかと思い,検証への協力に躊躇していたが,検証に協力して実際に弾丸が出てきてしまったので検察官による供述調書作成にも協力することにしたというのであり,けん銃暴発に関するc4の供述調書が作成された経緯も自然なものとして理解できる。よって,前記各検察官調書におけるc4の供述は十分信用できる。この点,弁護人は,c4は,平成13年12月にU1に離婚を申し出た際にU1から日本刀で脅されたことでU1に対して著しい恐怖心を抱いており,U1になるべく長く刑務所にいてほしいとの思いから虚偽供述をする動機があると主張する。しかし,c4が従前捜査官に供述したとおりに弾丸が旧c4方の壁の中から発見されているという事実によりc4供述が客観的に裏付けられているのは前記のとおりであるし,a7検察官によれば,c4は公判中のU1の体調を本当に心配している様子だったというのであり,U1との離婚の際にトラブルがあったことがc4供述の信用性を損なうものではない。 なお,当裁判所は,c4の検察官調書を含め,死亡した供述者の同調書を複数採用しているところ,弁護人は,死亡した供述者の検察官調書が刑訴法321条1項2号前段書面として証拠能力を取得するためには,当該検察官調書に録取された供述者の供述につき,同項3号ただし書と同様に信用性の情況的保障の要件(「その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるとき」)が必要である旨主張して,死亡供述者の調書採用に異議を述べている。 しかしながら,刑訴法321条1項2号前段は,検察官調書について,「その供述者が死亡(した)ため公判準備若しくは公判期日において供述することができない とき」は,これを証拠とすることができるとのみ規定し,情況的保障の要件を規定していない。これは,供述者の死亡等の理由で供述の 公判準備若しくは公判期日において供述することができない とき」は,これを証拠とすることができるとのみ規定し,情況的保障の要件を規定していない。これは,供述者の死亡等の理由で供述の再現を図ることができない場合に,伝聞法則の例外として伝聞証拠に証拠能力を付与する趣旨の規定と理解できるから,供述不能の要件に該当すれば証拠能力が肯定され,供述がされた情況については,専ら,当該調書の証明力を判断する際の一事情として考慮すべきものと解するのが相当である(以上につき最高裁昭和31年12月25日第三小法廷判決・裁判集刑事116号367頁等参照)。 イ Z2及びc6の各供述の信用性次に,前記⑴イの事実(U1が本件犯行の直前の時間帯頃に喫茶店「p2」から出て行ったこと等)は,主としてZ2及びc6の各供述により認められるが,両名の供述の信用性が問題となるので,以下検討する。 Z2は,要旨,本件当日,午後5時か6時頃,U1が,北九州市s1区所在の二代目丙7組事務所に来た後,U1を誘って近くの「p2」という喫茶店にコーヒーを飲みに行ったこと,午後6時半か7時か7時半ぐらいまでの間に,U1が,「用事をしてくる。」などと言って一人で「p2」を出て行ったこと,その後自分も事務所に戻ったことを供述している。 また,喫茶店「p2」を経営していたc6は,要旨,本件当日,午後6時前くらいの時間帯にU1とZ2が二人一緒にp2に来店したこと,午後7時頃にU1がp2から出て行き,更にZ2も出て行き,店内に客がいなくなったので,その後すぐに店を閉めたこと,その後,p1方向が騒然としており,その日かその次の日には,Q1がp1前で殺された旨を誰かから聞いたことを供述している。 このように,本件当日の夕方,U1がZ2と共にp2を訪れ,程なくして退店したという ,p1方向が騒然としており,その日かその次の日には,Q1がp1前で殺された旨を誰かから聞いたことを供述している。 このように,本件当日の夕方,U1がZ2と共にp2を訪れ,程なくして退店したという経緯に係るZ2及びc6の各供述は,いずれも具体的かつ自然なものである上,相互に整合し,信用性を高め合っている。 両名の供述の個別の事情についてみると,Z2は,平成14年に,警察官や検察官から聴取を受けて前記供述と同旨の調書を作成したが,平成15年にU1ら を被告人とする本件の公判に検察側証人として出頭した際には,裁判所で甲1會の顔見知りの人物を多数目にし,報復される恐怖を感じて宣誓を拒絶したというのである。Z2は,こうした恐怖もありながら,平成29年に行われた別の被告人の公判や当公判廷に証人として出廷し,甲1會による報復の危険を冒してまで前記の内容の供述をしたことを踏まえると,Z2が,本件に先立ち,甲1連合からいわゆる指詰めを求められ,U1に切断してもらってこれに応じたという経緯があることや,平成14年に甲1會から絶縁所払い処分を受けたことといった事情を踏まえても,Z2が本件についてあえて虚偽の供述をしたとは考え難く,Z2供述は信用に値するといえる。 a 次に,c6の供述についてみると,弁護人は,前記各検察官調書を含むc6の各検察官調書を作成した検察官は,主任検察官からあらかじめ渡されたメモに基づいて調書を作成し,その内容は直前に作成されたc6の警察官調書とほぼ同文であること,c6の病床において,警察官調書作成に関与した警察官2名を立ち会わせたまま事情聴取が行われており,実際に警察官が事情聴取に介入した場面もあること,c6の過去の供述に対する確認作業もほとんどなされていないことなどから,c6の検察官調書における供述は信 名を立ち会わせたまま事情聴取が行われており,実際に警察官が事情聴取に介入した場面もあること,c6の過去の供述に対する確認作業もほとんどなされていないことなどから,c6の検察官調書における供述は信用できないと主張しているので,以下検討を加える。 b⒜ c6の検察官調書を作成した経緯について,当時福岡地方検察庁小倉支部(以下「福岡地検小倉支部」という。)で勤務していたa8検察官は,要旨,以下のとおり供述する。 私は,平成26年9月16日,18日及び20日に北九州市s1区所在の病院の病室でc6の事情聴取を行い,供述調書を作成した。 同月15日,本件の主任検察官から,c6が本件に関し警察官に対して供述をしているとして,供述内容を記載したメモを渡され,c6の事情聴取をしてc6がこのメモの内容の話をするのであればそのとおり供述を録取してきてほしい,c6は重い病気で入院していて,気難しい人のようなので,事情聴取の時間は30分くら いしか取れないかもしれない,などと依頼された。私は,事情聴取と調書作成を短時間で終わらせるため,主任検察官から渡されたメモの内容をあらかじめモバイルパソコンに入力して準備した。 同月16日,私は,検察事務官1名及び警察官2名の立会いの下,病室でc6の体調を確認した上で事情聴取を行った。c6に質問する際は,できるだけポイントとなる部分は誘導にならないよう気をつけており,c6は,はっきり受け答えをしていた。Q1が殺害された事件が発生したことを聞いた日については,主任検察官から渡されたメモでは事件当日となっていたが,私の前では,c6は,事件の翌日だったと思うと言っていた。そのやり取りを聞いていた警察官が,事件当日と言っていなかったかとc6に問いただしており,c6は,当日だったかもしれないけど,今の記憶で が,私の前では,c6は,事件の翌日だったと思うと言っていた。そのやり取りを聞いていた警察官が,事件当日と言っていなかったかとc6に問いただしており,c6は,当日だったかもしれないけど,今の記憶ではやっぱり翌日だったと思うと言っていたので,c6が述べるとおりに供述を録取した。私は,検察官の事情聴取に警察官が入ってくるのはよくないと思い,その後は警察官が話に入ってこないように注意しており,その他には警察官が事情聴取中にc6に話をしたことはなかった。この日作成した供述調書は2通あり,作成する際は,あらかじめ入力していたメモのデータをc6の話を聞きながら適宜修正し,1文1文ゆっくり読み上げて確認を取り,その後,打ち込んだ内容をプリントアウトしたものをc6に渡して読み聞かせをした。私は,読み聞かせをしている間もc6の顔を見ていたが,たまに他のところを見ていたり,ぼーっとしていたりしたので,そういうときは,c6さん,ちゃんと聞いてる,などと言って注意を引くようにしていた。 同月18日,私は,同月16日と同じく,検察事務官1名及び警察官2名の立会いの下,病室でc6の体調を確認した上で事情聴取を行った。私は,同月16日の供述の内容をc6に確認したが,c6は,おおむね同様の供述をしていた。平成11年と平成14年にc6が警察官に話していた内容について確認すると,c6は,そんなこと言ったかな,警察官が何度も事情聴取に来ていたので適当な話をしたことはあったと言っていた。c6に今どういう心境で私の前で話をしているかを尋ね ると,c6は,自分ももうこの年になって腹決めをしたというようなことを言っていた。この日は供述調書を作成することはしなかった。 同月20日,私は,同月16日及び18日と同じく,検察事務官1名及び警察官2名の立会いの下,病室 の年になって腹決めをしたというようなことを言っていた。この日は供述調書を作成することはしなかった。 同月20日,私は,同月16日及び18日と同じく,検察事務官1名及び警察官2名の立会いの下,病室でc6の体調を確認した上で事情聴取を行った。同月16日に作成した調書2通の読み聞かせを行ったところ,c6は,c6の交際相手に関する記載以外は間違いないと述べた。そこで,私は,同月16日に行ったのと同じ方法で,前記の間違った記載を訂正する調書1通を含め検察官調書を3通作成し,c6にそれぞれ署名指印をしてもらった。 ⒝ a8の供述は具体的かつ詳細であり,内容に不自然,不合理な点はない上,主任検察官からもらったメモを基に事情聴取の準備をしたことや,警察官2名を事情聴取に立ち会わせ,その警察官が事情聴取に介入したことがあったことなどの事実も正直に話していることを踏まえると,c6の検察官調書の作成状況は,a8が供述するとおりであったと認められる。これによれば,a8検察官は,主任検察官から渡されたメモの内容を参考にしつつも,c6が供述するとおりの内容を録取してc6の各検察官調書を作成したと認められ,同調書の作成状況に,c6供述の信用性に不当な影響を及ぼすような事情はうかがわれない。 なお,弁護人が指摘するように,c6に対する各事情聴取時にはいずれも警察官が2名立ち会っており,このうち初回の事情聴取時において,警察官が,c6に対し,Q1が殺害された事件が発生したことを聞いた日について,従前は事件当日であった旨供述していたのではないかと問いただしているが,c6が供述を変えることはなく,a8検察官は,c6の供述どおりの検察官調書を作成しているし,その後は検察官の事情聴取に警察官が介入することがないよう注意していたのであり,警察官の立会や介入の事実がc6の供述 を変えることはなく,a8検察官は,c6の供述どおりの検察官調書を作成しているし,その後は検察官の事情聴取に警察官が介入することがないよう注意していたのであり,警察官の立会や介入の事実がc6の供述に不当な影響を与えたとはうかがわれない。 また,弁護人は,c6の検察官調書の内容が警察官調書の内容とほぼ同文であるとも主張するが,a8検察官がc6から3日間にわたり事情聴取を行い,これに基づいて供述調書を作成している以上,結果的に検察官調書の内容が警察官調書の内容 と似たものとなったとしても,格別問題視すべき点はない。 ⒞ そして,c6の前記の供述は,過去にc6が警察官に述べた内容とは異なっているものの,c6は,供述を変更した心情についても相応に納得できる説明をしていること,c6は,かつて甲1連合のZ5総長と親しい関係にあったものの,本件当時は甲1連合の組員が客としてよく来ていた喫茶店の経営者にすぎず,供述時には病床にいたc6が警察官やa8検察官に対してあえてU1や被告人両名に不利なうそを言う理由は見当たらないことも踏まえると,c6の前記供述は十分信用できる。 ウ U1が暴発させた弾丸と本件犯行に用いられた弾丸が同一のけん銃により発射されたこと最後に,前記⑴エの事実(U1が暴発させた弾丸1個と,本件犯行による発射弾丸のうち3個が同一のけん銃により発射されたこと)について検討する。 本件の捜査過程で発見・押収ないし領置された各弾丸とb10 による鑑定(以下「b10 鑑定」という。)に供された各弾丸の同一性検察官は,平成29年に行われたb10 鑑定(その鑑定書は元組合長甲158)において鑑定資料となった弾丸1個はU1の内妻であったc4の事件当時の自宅(旧c4方)から発見・押収されたものであり,b10 鑑定において前 9年に行われたb10 鑑定(その鑑定書は元組合長甲158)において鑑定資料となった弾丸1個はU1の内妻であったc4の事件当時の自宅(旧c4方)から発見・押収されたものであり,b10 鑑定において前記弾丸1個と対照された弾丸5個は本件犯行の現場及び被害者の遺体から発見・領置されたものであると主張する。これに対し,弁護人は,前記各箇所から発見・押収ないし領置された弾丸6個(以下,これらの弾丸をまとめて「本件弾丸」といい,個別の弾丸には後記のとおり①ないし⑥の番号を付す。)について,押収ないし領置の時点から鑑定作業時に至るまで,その保管の連鎖は検察官により証明されていないと主張する。 そこで,以下,本件弾丸とb10 鑑定に供された弾丸6個との同一性を検討する。 a 本件弾丸の発見・押収状況等関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 ⒜ 本件犯行の現場及び被害者の体内から発見・領置された弾丸について 福岡県小倉北警察署(以下「小倉北署」という。)応援派遣福岡県警察本部刑事部鑑識課警察官は,平成10年2月18日午後8時35分から同日午後11時15分頃まで,前記1のキャバレー「p1」前路上及び付近一帯において,実況見分を行い,同現場路面上の血液内から鉛色の弾丸1個を発見し,同署警察官がこれを領置した(以下「本件弾丸①」という。)。 g1大学法医学教室の医師は,同月19日,Q1の死体の司法解剖を行い,その際,Q1の体内から摘出した弾丸4個について,同日,任意提出し,小倉北署警察官がこれを領置した(以下,領置調書の押収品目録記載の番号順に「本件弾丸②ないし⑤」という。)。 ⒝ 旧c4方から発見・押収された弾丸について小倉北署応援福岡県警察本部刑事部捜査第四課警察官は,平成15年6月25日,北九州市s1区(以下省略)n2 順に「本件弾丸②ないし⑤」という。)。 ⒝ 旧c4方から発見・押収された弾丸について小倉北署応援福岡県警察本部刑事部捜査第四課警察官は,平成15年6月25日,北九州市s1区(以下省略)n2▲▲▲号室(旧c4方)において,現居住者及び元居住者(c4)の立会いと,福岡県警察科学捜査研究所(以下,同研究所を「科捜研」という。)物理科技術吏員(b18)及び内装業者2名の協力の下,同室の検証及び捜索差押えを実施した。その際,c4が指示した旧c4方風呂出入口南側の壁の内側の石膏ボードを支える軽鉄スタット内部から銀色,鉛製様の弾頭様のものが発見され,前記警察官はこれを差し押さえた(以下「本件弾丸⑥」という。)。 b 本件弾丸の移動・保管の状況等関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 ⒜ 平成10年2月頃から平成14年7月頃までの本件弾丸の移動・保管の状況あ小倉北署長は,平成10年2月19日付けで,科捜研に対し,本件の犯行現場等から発見・領置された本件弾丸①ないし⑤について,発射けん銃の異同識別等を鑑定事項として,鑑定嘱託をした。 い小倉北署担当者は,翌20日に科捜研に鑑定資料である弾丸5個(本件弾丸①ないし⑤)を持参し,科捜研の庶務科では,鑑定物件処理簿で前記あの鑑定嘱託を受け付け(受付番号第3567号),鑑定資料を受け取った。科捜研では,同日中 に,庶務科から鑑定を行う物理科に本件弾丸①ないし⑤が移され,科捜研技術吏員で物理科長のb1が鑑定資料管理簿を作成した。 う b1は,同日,科捜研において鑑定を行い,本件弾丸①ないし⑤はいずれも口径0.38インチ回転弾倉式けん銃用スペシャル型発射弾丸であり,弾丸の旋条痕などから,発射銃器の種別及び丁数として,左回転6条の旋条痕を有する回転弾倉式けん銃1丁と右回転5条 ①ないし⑤はいずれも口径0.38インチ回転弾倉式けん銃用スペシャル型発射弾丸であり,弾丸の旋条痕などから,発射銃器の種別及び丁数として,左回転6条の旋条痕を有する回転弾倉式けん銃1丁と右回転5条の旋条痕を有する回転弾倉式けん銃1丁の合計2丁であると判断し,その結果を即日小倉北署に電話回答した。b1は,平成11年4月27日,鑑定に係る弾丸5個を並べた写真2葉と,弾丸の異同識別を行った際の特徴痕の一致を示す写真3葉をつけた鑑定書を作成した。(以下,この鑑定を「b1鑑定」という。)え本件弾丸①ないし⑤は,物理科内に設置されている鑑定資料保管室内のロッカー(保管庫)の中で前記受付番号が付された封筒に入れて保管されていたところ,科捜研では,既往犯罪の有無について全国的な検査を行うため,平成10年2月24日,警察庁科学警察研究所(以下「科警研」という。)に対し,旋条痕の明確な2個の弾丸(右回転5条のもの,左回転6条のもの各1個。順に,本件弾丸③及び⑤)を, 銃器弾丸類送付書と共に発送した。 お科警研の鑑定係長のb2は,同月26日,科捜研から発送された銃器弾丸類送付書及び鑑定資料(本件弾丸③及び⑤)を鑑定受付処理簿で受け付けた(福警科研第3567号)。前記鑑定資料等は,鑑定係長のb2から鑑定を行う機械第二研究室の室長b3に引き継がれた。b3は,本件弾丸③及び⑤を,事件番号ごとに科警研で付されるC番号と当該弾丸の腔旋痕の種類(5-Rと6-L。それぞれ右回転5条,左回転6条の意味。)等を記載したカードと併せて,機械第二研究室内の口径や腔旋痕の種類別に現場弾丸を保管できるキャビネット(現場弾丸類保管庫)に整理して保管していた。 ⒝ 平成14年7月頃から平成15年6月頃までの本件弾丸の移動・保管の状況あ福岡地検小倉支部検察官は,平成14年7 現場弾丸を保管できるキャビネット(現場弾丸類保管庫)に整理して保管していた。 ⒝ 平成14年7月頃から平成15年6月頃までの本件弾丸の移動・保管の状況あ福岡地検小倉支部検察官は,平成14年7月17日及び同月18日,U2, U1及びZ7を,殺人,銃刀法違反事件(本件)等で起訴した。 い福岡県警察本部刑事部捜査第四課特別捜査班長(以下「特捜班長」という。)のb5は,U1らが起訴された後の同月20日過ぎ頃,担当検察官から本件の証拠品の送致の依頼を受けたことから,科捜研に対して,本件弾丸①ないし⑤の返送の依頼をし,さらに,これを受けて,科捜研は,科警研に鑑定嘱託していた前記弾丸2個(本件弾丸③及び⑤)の返送の依頼をした。 う科警研総務部総務課鑑定係のb4は,同月24日,返送用の封筒に前記弾丸2個(本件弾丸③及び⑤)を入れ,機械第二研究室作成に係る「現場弾丸の返送について」と題する書面等を同封して,科捜研に発送し,併せて鑑定受付処理簿に資料を返却した旨記載した。 え科捜研は,同年8月20日,科警研から返却を受けた本件弾丸③及び⑤を含む本件弾丸①ないし⑤を福岡県警察本部(実際には前記特別捜査班。以下「特捜班」という。)に返却し,科捜研物理科に備えられた鑑定資料管理簿及び同庶務科に備えられた鑑定物件処理簿に,資料が返却ないし返還された旨がそれぞれ記載された。 そして,本件弾丸①ないし⑤は,後記おの検察庁送致時まで,特捜班の執務室である小倉北署3階会議室のキャビネット等で保管された。 お同月21日,特捜班は,本件弾丸①ないし⑤を福岡地検小倉支部へ送致した。 か同日,福岡地検小倉支部の検務第1担当証拠品係のa1検察事務官は,前記おのとおり特捜班から送致された本件弾丸①ないし⑤の証拠品受入手続を行い,領置票に,同日,発 を福岡地検小倉支部へ送致した。 か同日,福岡地検小倉支部の検務第1担当証拠品係のa1検察事務官は,前記おのとおり特捜班から送致された本件弾丸①ないし⑤の証拠品受入手続を行い,領置票に,同日,発射弾丸5個を符号82ないし86として受け入れた旨記載した。 a1検察事務官は,その際,証拠品である本件弾丸①ないし⑤をそれぞれ封入したビニール袋ないしプラスチックケースに,各領置番号等を記載したラベルを貼るとともに,各領置調書に領置番号(平成14年領第1008号)を付記した。a1検察事務官は,本件弾丸①ないし⑤を,領置番号順に整理された福岡地検小倉支部の証拠品倉庫に保管した。 ⒞ 平成15年6月頃から平成29年7月頃までの本件弾丸の移動・保管の状況 あ特捜班長のb6は,平成15年6月25日,旧c4方で発見・押収された本件弾丸⑥と本件弾丸①ないし⑤との異同識別鑑定を行うため,福岡地検小倉支部(担当はa7検察官)に対し,本件弾丸①ないし⑤の借用依頼をし,その了承を得た。 なお,押収された本件弾丸⑥は,後記おの鑑定に出されるまで,特捜班長の部屋のロッカーに保管されていた。 い小倉北署長は,同月26日,科捜研(所長)に対し,本件弾丸⑥について,本件弾丸①ないし⑤との関連性(弾丸の異同識別)等を鑑定事項として,鑑定嘱託をした。 う b6警察官は,前記鑑定嘱託に当たり,同日,部下のb7警察官に対し,特捜班長の部屋のロッカーで保管していた本件弾丸⑥を渡し,重要な証拠であるから直接科捜研に持参するように指示した。併せて,b6警察官は,b7警察官に対し,科捜研に行く前に検察庁に立ち寄り,本件弾丸①ないし⑤を借り受けて,一緒に科捜研に持参するように指示した。 え同日,福岡地検小倉支部では,本件弾丸①ないし⑤について,a7検察官への仮出 に対し,科捜研に行く前に検察庁に立ち寄り,本件弾丸①ないし⑤を借り受けて,一緒に科捜研に持参するように指示した。 え同日,福岡地検小倉支部では,本件弾丸①ないし⑤について,a7検察官への仮出し手続(証拠品を証拠品倉庫から出して検察官に交付する手続)が行われ,本件弾丸①ないし⑤は,仮出しを受けたa7検察官又はその立会検察事務官から,同支部を訪れたb7警察官へ,借用書と引き換えに引き渡された。b7警察官は,b6警察官から受け取った本件弾丸⑥及び福岡地検小倉支部で借り受けた本件弾丸①ないし⑤を,鑑定嘱託書及び前記借用書の写しとともに科捜研に持参した。 お同日,科捜研では,庶務科において,前記いの鑑定嘱託を鑑定物件処理簿で受け付けるとともに(受付番号第7842号),鑑定資料である弾丸1個(本件弾丸⑥)及び対照資料である弾丸5個(本件弾丸①ないし⑤)を受け取り,これらを庶務科から物理科に引き継ぎ,物理科では,同科技術吏員のb18 が鑑定資料である本件弾丸⑥について鑑定資料管理簿を作成した。b18 は,同日以降,前記嘱託に係る鑑定を担当し(以下,この鑑定を「b18 鑑定」という。),その鑑定期間中,本件弾丸①ないし⑥を鑑定資料保管室内のロッカー(保管庫)に保管していた。b18 鑑定 終了後の同年7月18日,b6警察官は,科捜研の物理科でb18 から本件弾丸①ないし⑥を受け取り,鑑定資料管理簿に鑑定資料の弾丸1個(本件弾丸⑥)を受領した旨を記載し,科捜研の受付でも,鑑定物件処理簿にその受領の旨を記載した。 か b6警察官は,同日,科捜研から返却を受けた本件弾丸①ないし⑥のうち,福岡地検小倉支部から借用していた本件弾丸①ないし⑤については同支部に持参して返還し,本件弾丸⑥については小倉北署に持ち帰り,同署総務課証拠品係のb8 捜研から返却を受けた本件弾丸①ないし⑥のうち,福岡地検小倉支部から借用していた本件弾丸①ないし⑤については同支部に持参して返還し,本件弾丸⑥については小倉北署に持ち帰り,同署総務課証拠品係のb8警察官に証拠品として保管管理するよう依頼し,b8警察官は,同署の拳銃庫に本件弾丸⑥を保管した。 き同月23日,b6警察官は,証拠品係から本件弾丸⑥の払出手続をしてこれを受け取った後,小倉北署刑事課事件係を介し,被疑者U1に係る銃刀法違反,火薬類取締法違反事件の関係書類追送書(証拠金品総目録添付のもの)及び追送書類と共に本件弾丸⑥を福岡地検小倉支部に送致した。 く福岡地検小倉支部の検務第1担当証拠品係のa2検察事務官は,同日,前記きの各書類及び本件弾丸⑥を受け取り,関係書類追送書にその受付年月日(平成15年7月23日)を記載するとともに,証拠金品総目録と本件弾丸⑥を封入したビニール袋に貼ったラベルに,その領置番号(平成15年領第973号)等を記載した。 け a2検察事務官は,同年8月8日,本件弾丸⑥について,U1外の殺人,銃刀法違反事件(本件)への領置替(別事件の証拠品として使う場合などに領置番号を変更する手続)を行い,領置番号平成14年領第1008号の領置票に前記領置替に係る本件弾丸⑥を符号119として記載し,併せて,前記証拠金品総目録について,領置番号の「平成15年領第973号」の記載を二本線で消して「14-1008」「領置替」と,証拠品の弾丸の符号の「8」の記載を二本線で消して「119」とそれぞれ記載した。 こまた,a2検察事務官は,同日,領置替に伴い,証拠品である本件弾丸⑥を封入したビニール袋に貼ったラベルについても前記けと同様の領置番号の記載の修 正を行い,これを,平成14年領第1008号の他の証拠品(本件 日,領置替に伴い,証拠品である本件弾丸⑥を封入したビニール袋に貼ったラベルについても前記けと同様の領置番号の記載の修 正を行い,これを,平成14年領第1008号の他の証拠品(本件弾丸①ないし⑤を含む。)と共に福岡地検小倉支部の証拠品倉庫に保管した。 ⒟ 平成29年7月頃以降の本件弾丸の移動・保管の状況あ福岡地方検察庁(本庁。以下「福岡地検」という。)公判部特別公判室のa4検察事務官は,平成29年7月中旬頃,同公判部所属(福岡地検小倉支部の検察官事務取扱も併任)のa9検察官の指示を受けて,本件弾丸①ないし⑥を科警研に鑑定嘱託するため,福岡地検小倉支部からの仮出し手続をすることにした。福岡地検小倉支部の検務第1担当証拠品係のa3検察事務官は,a4検察事務官から前記仮出し依頼を受けて,その頃,領置票の記載を基に,証拠品倉庫に保管されていた本件弾丸①ないし⑥の現物を確認した。 い a3検察事務官は,同年8月3日,福岡地検小倉支部において,a4検察事務官に対し,a9検察官作成名義の借用書と引き換えに,本件弾丸①ないし⑥を引き渡した。 う a4検察事務官は,同日,福岡地検(本庁)に戻り,鑑定嘱託事務を担当する前記特別公判室のa5検察事務官に対し,a3検察事務官から受け取った本件弾丸①ないし⑥を前記特別公判室の執務室で引き渡した。a5検察事務官は,以後,前記弾丸6個を同執務室のキャビネットで保管した。 え同年9月11日,福岡地検のa10 検察官は,科警研(所長)に対し,本件弾丸①ないし⑥について,本件弾丸⑥と本件弾丸①ないし⑤の発射けん銃の異同識別等を鑑定嘱託事項として,鑑定嘱託をした。 お同日,a10 検察官及びa5検察事務官は,科警研に赴き,科警研総務部総務課鑑定係長のb9に対し,鑑定嘱託書及び鑑定資料(本件弾 の発射けん銃の異同識別等を鑑定嘱託事項として,鑑定嘱託をした。 お同日,a10 検察官及びa5検察事務官は,科警研に赴き,科警研総務部総務課鑑定係長のb9に対し,鑑定嘱託書及び鑑定資料(本件弾丸①ないし⑥及びb18鑑定の鑑定書謄本。なお,参考資料としてb1鑑定の鑑定書等の本件弾丸に関わる捜査資料も併せて編綴されていた。)を引き渡した。 か b9は,前記えの鑑定嘱託を鑑定受付処理簿で受け付け(受付番号第887号),弾丸6個(本件弾丸①ないし⑥)を受け取り,鑑定・検査資料出納管理票を作 成した。そして,本件弾丸①ないし⑥は,前記出納管理票と共に,科警研法科学第二部の部長を経て,同部機械研究室の主任研究官であるb10 に引き継がれた。 き b10 は,b18 鑑定の鑑定書謄本添付の写真7枚も参照しつつ,本件弾丸①ないし⑥について,発射けん銃の異同識別等の鑑定を行い(b10 鑑定),平成29年12月7日に鑑定書を作成した。 c 前記bの事実を認定した理由⒜ 弾丸の移動・保管等に関する各証人は,警察官や検察事務官等の公務員として,事件現場等の実況見分や検証,弾丸の鑑定嘱託及び鑑定,証拠品の送致等の業務に携わる中で,弾丸を移動させた経緯,移動の際の弾丸の同一性の確認状況,庁内での弾丸の移動・保管の状況等について,それぞれの当時の勤務先における役職や個々の業務の目的等に照らして自然な内容を供述しており,不審な点はうかがわれない。また,各供述内容は,鑑定嘱託や鑑定,検察庁への送致,起訴といった客観的な時系列ともよく整合している。 ⒝ 弾丸の授受に関して渡した者と受け取った者との供述がほぼ一致していることは,供述の信用性を相互に高め合っている。また,前記bの認定事実中にはかなり古い時期の出来事も含まれており,本件弾丸の授受に ⒝ 弾丸の授受に関して渡した者と受け取った者との供述がほぼ一致していることは,供述の信用性を相互に高め合っている。また,前記bの認定事実中にはかなり古い時期の出来事も含まれており,本件弾丸の授受について具体的な記憶がない証人もいるが,そのような者であっても,当時の勤務先において定められた手続等に従い物の受取や返還等の手続を適正に行った旨明確に供述しており,かつ,その多くの部分が,物の移動・保管に係る書面等により裏付けられている。 ⒞ 以上のとおり,前記bの認定事実中に記載された多くの関係者(証人)の供述内容に加え,前記b掲記の関係書証や証拠物等を併せれば,本件弾丸とb10 鑑定に供された弾丸6個とが同一であることが認定できる。 ⒟ 弁護人は,検察官は弾丸の保管の連鎖を証明できていないと主張する。 しかし,警察庁の指針や法務省の規定に沿った簿冊等の書類が残されていないものがあることについては弁護人が指摘するとおりであるが(各証人もこれを認めている。),それらの書類がないのは保管期間経過により廃棄されたことが理由である ものが少なくない上,前記書類が存在しないからといって,直ちに本件弾丸の移動・保管の過程に合理的な疑いが残るというものではなく,他の証拠によって証明できているのは前述のとおりである。以下,弁護人指摘の点につき個別に言及する。 あ弁護人は,平成10年2月19日付けでなされた弾丸5個に係る鑑定嘱託について,鑑定嘱託書が作成・提出されて受付印が押された数日後に,2通目の鑑定嘱託書が作成・提出され,この2通目については実際の押印日ではなく,日付をバックデートして同月20日付けで受付印が押されている,科捜研の鑑定資料管理簿には,平成11年4月27日に科捜研から科警研へ弾丸5個を貸し出したとの記載があるが,平成 実際の押印日ではなく,日付をバックデートして同月20日付けで受付印が押されている,科捜研の鑑定資料管理簿には,平成11年4月27日に科捜研から科警研へ弾丸5個を貸し出したとの記載があるが,平成10年2月24日に科捜研から科警研へ弾丸2個が発送されていたのであるから,その頃科捜研には弾丸が3個しかないはずであり,科警研に貸し出したとする弾丸の個数に矛盾があるし,同じ科捜研の鑑定物件処理簿には貸し出した旨の記載がなく,また,借り受けたという科警研にもそのような記録がないと主張する。しかし,の点は本件弾丸の移動・保管について直ちに疑義を生じさせるものではない。むしろ,小倉北署から科捜研に対して鑑定嘱託がなされ,本件犯行現場等で発見・領置された弾丸5個についてb1が現に鑑定書を作成していることからも,その際本件弾丸①ないし⑤が小倉北署から科捜研に移動されたことは明らかである。 の点も,確かに,科捜研の鑑定資料管理簿には弁護人指摘の記載があるが,他方で,科捜研内で前記鑑定嘱託に係る弾丸を保管していたb1は,その記載がある理由について記憶はないものの,平成11年4月27日に科捜研から科警研に弾丸5個を貸し出した事実はない旨明確に供述している(ちなみに,同日は,b1鑑定に係る鑑定書の作成日である。)。この時期に科捜研から科警研へ弾丸を移動させる理由は想定できず,科捜研のその他の帳簿や科警研の帳簿にこれに関する記載が一切ないことも踏まえると,本件弾丸①ないし⑤又はそのいずれかが弁護人指摘の頃に科捜研から科警研に貸し出されたとの疑いは生じない。 い弁護人は,b7警察官は,平成15年6月26日,福岡地検小倉支部から借り出した弾丸5個を科捜研に持参したと供述するが,これを明らかにする記録は ない,b6警察官は,同年7月18日, 人は,b7警察官は,平成15年6月26日,福岡地検小倉支部から借り出した弾丸5個を科捜研に持参したと供述するが,これを明らかにする記録は ない,b6警察官は,同年7月18日,科捜研から前記弾丸5個を受領した上,同日,福岡地検小倉支部に返還したと供述するが,前記受領及び返還を裏付ける記録はないと主張する。しかし,の点については,平成15年6月ないし7月頃,科捜研のb18 が,小倉北署からの鑑定嘱託に基づき,弾丸6個を対象として,その異同識別に関する鑑定を行っているのであり,b7警察官が,b18 鑑定に先立ち,検察庁から借り受けた5個の弾丸を含めて,科捜研に弾丸6個を持参したことは明らかである。 の点については,帳簿等の記録がないのは弁護人が指摘するとおりであるが,当該弾丸5個(本件弾丸①ないし⑤)は鑑定の対照資料という扱いであり,鑑定資料(本件弾丸⑥)そのものではないために科捜研の鑑定物件処理簿等に授受の記録が残されていないのであるし,鑑定のために検察庁から借用した弾丸5個について鑑定終了後に科捜研から返却を受けて検察庁に返還するのは自然な流れといえる。また,当時福岡地検小倉支部の検務第1担当証拠品係で勤務していたa2検察事務官も,仮出した証拠品が最終的に所在不明になったことはないと明確に供述している。その後,現に福岡地検小倉支部で弾丸6個(本件弾丸①ないし⑥)が保管されていたこと(前記b⒟あ等参照)に照らしても,b6の前記供述の信用性に疑いを入れる余地はない。 う弁護人は,平成15年6月25日の旧c4方で弾丸1個を押収した際の同弾丸の写真は,他の弾丸と区別するに足りるだけの明確な特徴を映していないし,b6警察官が現場でチャック付きビニール袋に個票を入れ,押収日,押収場所等を記載した状況を撮影した写真もない 押収した際の同弾丸の写真は,他の弾丸と区別するに足りるだけの明確な特徴を映していないし,b6警察官が現場でチャック付きビニール袋に個票を入れ,押収日,押収場所等を記載した状況を撮影した写真もない,b6警察官が平成15年7月18日に科捜研から受領した弾丸1個について,小倉北署における出納状況を明らかにする記録はなく,同弾丸に関する証拠物件保存票その他の保管記録もないと主張する。しかし,の点については,b7警察官が,前記押収の翌日に上司であるb6警察官から弾丸1個を渡され,重要な証拠であるから直接科捜研に持参するよう指示されたと供述しており,この供述の信用性に疑いはなく,その供述どおりの事実が認められる。このようにb6警察官が旧c4方で押収された弾丸を極めて慎重に扱ってい ることからすると,同警察官が供述するとおり,本件弾丸⑥の押収の際,同警察官が,他の証拠品と区別して管理するために,押収日,押収場所,押収品目等を記載した個票を貼付したチャック付きビニール袋に本件弾丸⑥を入れ,さらに,押収日,押収場所,押収品目を記載した証拠品用の封筒に当該ビニール袋を入れたとの事実が認定できる。そして,b7警察官がb6警察官から弾丸1個を渡されたその日のうちにb7警察官により科捜研に鑑定資料の弾丸1個が持ち込まれ,鑑定物件処理簿及び鑑定資料管理簿にその旨の記載がされていることからすると,ここで科捜研に持ち込まれたのは本件弾丸⑥であるとしか考えられない。弁護人が主張するような各写真が存在しないことはこの認定を左右しない。また,の点については,b6警察官は,科捜研から持ち帰った旧c4方から発見・押収された弾丸については,特捜班で証拠を預かることも規程上可能だったが,大事な証拠だったので,新設した証拠品係に預けた旨供述し,当時小倉北署 ,b6警察官は,科捜研から持ち帰った旧c4方から発見・押収された弾丸については,特捜班で証拠を預かることも規程上可能だったが,大事な証拠だったので,新設した証拠品係に預けた旨供述し,当時小倉北署総務課証拠品係に勤務していたb8警察官も,b6警察官から,この証拠品は大事な品物だから,証拠品係の方で保管してくださいと言われ,通常と異なる処理だったのでよく覚えている旨,b6供述と合致する供述をしており,いずれも十分な信用性が認められるから,前記各供述どおりの事実が認定できる。そして,旧c4方から発見・押収された弾丸1個について,b6警察官が科捜研から持ち帰った5日後の平成15年7月23日に福岡地検小倉支部に送致した旨の関係書類追送書が存在することに照らすと,前記検察庁送致までの間,本件弾丸⑥が小倉北署において保管されていたことは優に認められるのであって,証拠物件保存票等が存在しないことはこの認定を左右しない。 え弁護人は,平成29年8月3日のa9検察官の福岡地検小倉支部からの弾丸6個の仮出しに関し,証拠品事務規程所定の証拠品仮出票はなく,領置票にも仮出しの記載はない,a4検察事務官は,福岡地検小倉支部から福岡地検本庁に弾丸6個を持ち帰り,特別公判室のキャビネットで保管していたと供述するが,福岡地検本庁による弾丸6個の受入れを明らかにする保管記録及びその保管状況を明らかにする記録は全くない,a5検察事務官は,同日から同年9月11日までの間, 同キャビネットで前記弾丸6個を保管していたと供述するが,その保管状況等を明らかにした記録はないと主張する。しかし,の点については,a9検察官作成名義の借用書によって仮出しの事実が裏付けられているし,の点については,a4検察事務官とa5検察事務官が一致して弾丸6個を保管していた 記録はないと主張する。しかし,の点については,a9検察官作成名義の借用書によって仮出しの事実が裏付けられているし,の点については,a4検察事務官とa5検察事務官が一致して弾丸6個を保管していた旨供述しているほか,科警研での鑑定のため福岡地検小倉支部から借り出した弾丸6個を同鑑定までの間特別公判室のキャビネットで保管するという内容も自然であることから,a4検察事務官及びa5検察事務官の各供述は信用でき,各供述どおりの事実が認定できる。 お弁護人は,科警研のb10 は,鑑定前に科捜研において弾丸の状態を確認したと供述するところ,その供述どおりであれば,その時期に福岡地検本庁から科捜研に弾丸6個が持ち出されたことになるが,この持ち出しに関する証拠がないと主張する。確かに,b10 は,鑑定に先立ち,再鑑定が可能であるか否かを判断するために科捜研において弾丸の現物を確認したと供述しているが,そのような確認のために福岡地検から持ち出された弾丸6個と異なる弾丸6個をb10 鑑定のためにあえて同地検が科警研に持ち込むなどという事態はおよそ考え難く,福岡地検がb10の前記確認のために科捜研に持ち出した弾丸6個がそのままb10 鑑定に供されたと認めるのが相当である。 か以上によれば,弁護人の主張はいずれも失当であり,採用の限りでない。 d 小括以上のとおり,本件弾丸とb10 鑑定に供された弾丸6個とが同一であることが認定できる。 b10 鑑定の科学性,信用性当裁判所は,本件に関し,b10 鑑定に係る鑑定書を証拠採用し取り調べた。 検察官は,b10 鑑定を根拠に,本件犯行現場に遺留された弾丸1個(本件弾丸①)及び被害者の体内から摘出された弾丸2個(本件弾丸④及び⑤)と,旧c4方から発見された弾丸1個(本件弾丸⑥)とが同一のけん銃から ,b10 鑑定を根拠に,本件犯行現場に遺留された弾丸1個(本件弾丸①)及び被害者の体内から摘出された弾丸2個(本件弾丸④及び⑤)と,旧c4方から発見された弾丸1個(本件弾丸⑥)とが同一のけん銃から発射されたものであると 主張する。これに対し,弁護人は,b10 鑑定に係る鑑定書には証拠能力がなく,証拠排除されるべきであり,それを措くとしてもb10 鑑定には信用性がなく,本件弾丸①,④及び⑤と本件弾丸⑥とが同一のけん銃から発射されたものと認定することはできない旨主張する。 a 検討⒜ b10 の供述によれば,b10 が今回用いた鑑定の手法(以下,この手法による鑑定を「発射銃器の異同識別鑑定」という。)は,発射弾丸につき,比較顕微鏡や撮影した写真を用いて外観を検査し,発射の際に弾丸に印象される痕跡を比較対照することにより,各発射弾丸が同一の銃器から発射されたものであるか否かを判別するというものであること,これは,同一の銃器から発射された弾丸には,①銃身の1本1本により異なる加工の痕跡,②使用に伴う銃腔の摩耗,③銃身内部の付着物等を原因として,同じような痕跡が印象されるという,経験科学的な知見を基礎とするものであること,日本全国の科学捜査研究所のほか,アメリカ合衆国やフィリピン共和国でも同様の手法が用いられた鑑定が行われていることが認められる。 以上の知見・手法に基づき,b10 は,本件弾丸①ないし⑥について,比較顕微鏡等を使用して比較対照し,同一の銃器由来の痕跡があるか,及び,異なる銃器由来の痕跡がないか,という観点からそれぞれの弾丸の腔旋痕の対応関係を検討して,本件弾丸⑥と本件弾丸①,④及び⑤とが同一のけん銃から発射されたと考えられる旨判断したものであって,こうしたb10 鑑定で用いられた知見や判断の手法に不合理な れの弾丸の腔旋痕の対応関係を検討して,本件弾丸⑥と本件弾丸①,④及び⑤とが同一のけん銃から発射されたと考えられる旨判断したものであって,こうしたb10 鑑定で用いられた知見や判断の手法に不合理な点は認められない。 ⒝あこれに対し,弁護人は,同一メーカーが製造した同一口径の弾丸であってもその直径・固さ,雷管内の火薬量や火薬の燃焼状態は厳密には各弾丸ごとに異なる上,弾丸の発射過程には様々な偶然性が介在し,これらを原因として,同一銃器によって同一メーカーが製造した同一口径の弾丸を発射した場合であっても,線条痕は弾丸ごとに異なるため,発射銃器の異同識別鑑定の手法は,二つの線条痕が似ているか似ていないかを判断しているにすぎないところ,その判断に学問的な統一 基準はなく,鑑定人個人の感覚で主観的に行っているにすぎないから,b10 鑑定はその科学的原理が理論的正確性を有するとはいえない,と主張する。 しかし,b10 の供述によれば,発射銃器の異同識別鑑定においては,複数の弾丸の痕跡を比較対照する際,銃器・弾丸の製造過程,銃器の構造及び弾丸の発射機序等に関する専門知識,銃器鑑定に関するこれまでの研究結果等を踏まえて,銃器・銃身ごとに異なる形状の痕跡を適切に観察・分析し,結論を導くものとされていること,当該手法についてはb10 自身が実際に同一ないし同種の銃から複数の弾丸を発射して検証したことがあるほか,過去には科警研による検証も行われて研究結果が公表されていること,当該手法についての国際学会も定期的に開催されていることが認められるから,発射銃器の異同識別鑑定は,十分な科学的根拠を有するものというべきである。この点,複数の弾丸が同一の銃器から発射されたか否かを判断するための,指紋照合のような画一的な基準が未だ確立されていないのは弁 発射銃器の異同識別鑑定は,十分な科学的根拠を有するものというべきである。この点,複数の弾丸が同一の銃器から発射されたか否かを判断するための,指紋照合のような画一的な基準が未だ確立されていないのは弁護人が指摘するとおりであるが,前記のとおり,発射銃器の異同識別に携わる鑑定人は,銃器の構造等に関する専門知識等を踏まえつつ,弾丸の痕跡を適切に観察・分析して結論を導くものとされており,現にb10 は,専門的知見に基づく判断過程の論理性を言語化して合理的に説明することができているのであって,画一的な基準がないからといってその科学性が否定されることにはならない。また,弁護人は,二つの弾丸の線条痕を比較した同じ写真を見ても,b10 が科警研で鑑定したときに「似ている」と判断した線条痕の本数と,b10 が公判廷で「似ている」と判断した線条痕の本数が明らかに異なっているのは,線条痕鑑定の非科学性を示すものであるという指摘もする。しかし,b10 は,弁護人が法廷で提示しb10 が書き込みをしたのはA4のフルサイズのプリントであること,一方で,もともと条痕が対応しているかどうかの判断は解像度の高い画像を用いて行っているが,鑑定書を作成するに当たっては,写真データの容量を考慮して解像度を落とした画像を使用するため,その解像度でプリントアウトしたときに見えるか見えないかも含めて考慮して最終的に鑑定書の中で指し示す痕跡を決定していることを供述しており,その説明に不合 理な点はない。 いさらに,弁護人は,以下の理由を挙げて,b10 鑑定の実施方法には様々な問題があると主張する。 すなわち,b10 は,鑑定受託の前に,福岡地検の検察官等から本件の内容の詳細について説明を受けている上,鑑定受託に当たり,鑑定嘱託書及び鑑定資料である発射弾丸6個 々な問題があると主張する。 すなわち,b10 は,鑑定受託の前に,福岡地検の検察官等から本件の内容の詳細について説明を受けている上,鑑定受託に当たり,鑑定嘱託書及び鑑定資料である発射弾丸6個のほかに,b18 鑑定の鑑定書等,本件に関する多数の資料を提供され,b18 鑑定がU1を有罪と認定する根拠の一つとなっていたことを知らされていたから,鑑定嘱託者である福岡地検の検察官が,b18 鑑定と同様の鑑定意見,すなわち,本件弾丸⑥と本件弾丸①,④及び⑤とが同一のけん銃から発射されたものとする鑑定結果を欲しがっていることを容易に知ることができたのであって,それらの資料,情報が鑑定を行うb10 に大きな予断を与えるとともに,それが検察官の期待に応えようとする強いバイアスとなった,b10 鑑定における弾丸の全長や腔旋痕角の計測結果と,それ以前に別の鑑定人により同一の弾丸についてなされた計測結果とが異なっているのは,いかに杜撰な鑑定作業が行われたかを示している,b10 は,線条痕を比較顕微鏡で比較するときは倍率を15倍程度とし,大きな倍率は用いないとしているところ,高い倍率で観察すれば「異なる」としか判断できない線条痕でも,倍率を下げて観察すれば細かいところが見えなくなり,その違いが分からなくなるので「似ている」ように見えることがある,線条痕が一致しているかどうか,あるいは似ているかどうかの判断は,弾丸の同じ部位に付けられた線条痕を比較してなされるべきところ,b10 は,弾丸の異なる位置の線条痕を対比しており,判断の客観性は全くない,というのである。 しかし,については,b10 の供述及びb10 鑑定に係る鑑定書によれば,b10 は,鑑定資料を自ら観察・分析した結果得られた情報に基づいてb10 鑑定の結論を導いたことが認められる。また,b1 しかし,については,b10 の供述及びb10 鑑定に係る鑑定書によれば,b10 は,鑑定資料を自ら観察・分析した結果得られた情報に基づいてb10 鑑定の結論を導いたことが認められる。また,b10 は,b18 鑑定の鑑定書がU1の有罪判決でどのように扱われたかは知らなかったとも供述しており,b10 が鑑定に際して得た弁護人指摘の資料や情報が,b10 鑑定の判断の公平・公正さを阻害したとは認められない。 については,b10 は,弾丸の全長の測定結果の違いは,底部側が損傷し突起状になった部分を含めたか否かの違いで生じたものであり,弾丸の腔旋痕角の測定結果の違いは,基準となる場所の取り方や計測機器の違いが要因ではないかと説明しており,こうした説明に不合理な点は見当たらない。 については,b10 は,弁護人のいうような高倍率での観察・計測を行うと,かえって誤差(ノイズ)が生じ,銃器由来の痕跡(線条痕)であるのか,それとも弾丸製造時の痕跡であるのかが分からなくなるので,全体像を把握でき,かつ銃器由来の痕跡が確認できる程度の倍率で観察を行っていると供述しており,この供述に不合理な点は見当たらない。 については,b10 は,弾丸には線条痕のほか,損傷等により銃器由来ではない痕跡が付くこともあるところ,比較対照するそれぞれの弾丸について,銃器由来ではない痕跡の影響がなく線条痕の状態を鮮明に確認できる部分を見いだしていくと,各弾丸の異なる部位を比較せざるを得ない場合がある,鑑定に際しては,どこか1か所で付けられた痕跡だけを追っているわけではなく,弾丸が発射されて停止するまでの一連の流れの中で印象された痕跡を観察しているので,見ている場所が違うということが必ずしも見ている痕跡が違うということと直結するものではないとの趣旨の供述をしてい く,弾丸が発射されて停止するまでの一連の流れの中で印象された痕跡を観察しているので,見ている場所が違うということが必ずしも見ている痕跡が違うということと直結するものではないとの趣旨の供述をしているところ,これらの供述に不合理な点は見当たらない。 その他にも,弁護人は,b10 鑑定の実施方法の問題につき縷々主張するが,主張を踏まえて検討しても,不適切な点があるとは認められない。 b 小括以上を踏まえると,b10 鑑定については,用いられた知見・手法に不合理な点はなく,鑑定の実施方法にも不適切な点は認められない。そして,b10 の供述によれば,b10 は,科警研に勤務し,b10 鑑定を行った当時既に発射銃器の異同識別鑑定について十分な知識,経験を有していたと認められることも考慮すれば,以上のような専門的知見・手法に基づくb10 鑑定に係る鑑定書の内容は十分信用に値するといえ,もとより同鑑定書の証拠能力にも欠けるところはない。よって,b10 鑑定等によれば,被害者に向けて発射された5個の弾丸のうち,犯行現場に遺留された弾 丸1個(本件弾丸①)及び被害者の体内から摘出された弾丸2個(本件弾丸④及び⑤)と,旧c4方から発見された弾丸1個(本件弾丸⑥)とは,同一のけん銃から発射されたものであると認められる。 ⑷ 結論以上によれば,本件当時甲2組若頭補佐であったU1が,本件犯行の実行犯の一人であったと認められる。 3 犯行使用車両の調達等とU2及びU3の本件犯行への関与⑴ 前提事実関係証拠によれば,平成10年2月18日,本件犯行の実行犯2名は,Q1殺害の犯行に及び,uナンバー(u▲▲つ▲▲▲▲)を付けた白色日産サニー(以下「本件サニー」という。)に乗って現場から逃走したこと,実行犯又はその関係者が,北九州市s1区 件犯行の実行犯2名は,Q1殺害の犯行に及び,uナンバー(u▲▲つ▲▲▲▲)を付けた白色日産サニー(以下「本件サニー」という。)に乗って現場から逃走したこと,実行犯又はその関係者が,北九州市s1区(以下省略)のEが管理する月極駐車場に本件サニーを無断駐車していたため,Eが,同日,同駐車場近くの同区(以下省略)n3前路上に本件サニーを移動させたこと,本件サニーは本件から9日後の同月27日に,同所で発見されたことが認められる。 ⑵ 本件サニー調達の経緯等ア U2,c3らによる本件サニーの窃取関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 U2(甲2組行動隊長)は,本件の2日前である平成10年2月16日(以下の⑵ないし⑷においては,平成10年の出来事について年の記載を省略する。),知人のc3に対して自動車を用意するよう指示し,その際テンプラナンバー(金融流れの車に付いていたナンバープレート)を付けることと,指紋を必ず拭き取ることなどを注意した。c3は,U2の指示を受けて,それ以前にも自動車窃盗を一緒に行っていたC及びDに対し,k1のc8のところから自動車を盗んでくること,車には指紋を残さないこと,s2区内に止めてある別の車からナンバープレートを取って,盗んだ車に付け替えることなどを指示した。C及びDは,c3の指示を受け, 同日夜,北九州市s5区s10 にあるk1(ただし,当時の会社名は名称変更により有限会社k2)の駐車場から,白色日産サニー(本件サニー)を盗むとともに,別の車から取ったナンバープレート(u▲▲つ▲▲▲▲)を本件サニーに付け替えた。 U2は,c3に対し,盗んだ車を同市s1区s9にあるm1の近くの駐車場に駐車するように指示し,c3がC及びDにそのことを伝達すると,C及びDは,指示どおりに本件サニーを同駐車場に ニーに付け替えた。 U2は,c3に対し,盗んだ車を同市s1区s9にあるm1の近くの駐車場に駐車するように指示し,c3がC及びDにそのことを伝達すると,C及びDは,指示どおりに本件サニーを同駐車場に駐車し,エンジンキーをタイヤの上に置いて帰った。 なお,以上のU2とc3間,c3とC及びD間の各連絡はいずれも携帯電話を使用して行われた。 イ U3の関与c3の検察官調書における供述内容c3は,平成14年7月17日付け各検察官調書において,要旨,以下の内容の供述をしている。 私は,2月16日午前中,U2から足のつかない車を用意してくれと指示を受け,その際,c8の駐車場から車を盗むことについてU2から了承を得た。私は,当時福岡にいたことから,北九州にいるCに依頼をしようと考え,Cに電話をかけたところ,つながらなかったので,Dに電話をかけ,Dと一緒にいたCに電話を代わってもらい,CにU2からの指示を伝えた。また,盗み出す車には,s2区内の空き地に放置したマークⅡに取り付けていたuナンバーのナンバープレートを外して取り付けるよう指示をした。その後,私がCに電話をかけたところ,Cから「サニーの白色セダンがあった。これが一番程度がよさそう。」などとサニーを盗むことについて了解を求められたので,これを了解し,併せて,車には指紋を付けないようになどと釘を刺した。その後,私は,U2に電話をかけ,「Cが白色のサニーを盗みました。uの板を付けてます。車はどこに持って行きましょうか。」などと,uナンバーのナンバープレートを付けた自動車の移動場所を尋ねたところ,U2は,電話口で「おう,分かった。ちょっと待っとけ。」などと言うと,私との電話をつないだ状態で別の電話でどこかに電話をかけたようで,電話越しに「U3の親分ですか。U 2です。車は白 は,電話口で「おう,分かった。ちょっと待っとけ。」などと言うと,私との電話をつないだ状態で別の電話でどこかに電話をかけたようで,電話越しに「U3の親分ですか。U 2です。車は白でuの板です。どこに置きましょうか。車はとりあえず,こっちに置いとっていいですか。」「失礼します。」などと言ったのが聞こえた。U2は,更に私に対して,「車はm1の前に,砂利敷きの駐車場があるけのお。駐車場の左奥に置いとけ。鍵は運転席側前のタイヤのところに置いとけ。」などと言った。私は,Cに電話をかけてその駐車場の場所を伝えると,その後,Cから駐車場にサニーを置いたという連絡を受けたので,U2に対して,サニーを駐車場に置いた旨伝えた。翌17日にも,U2から,引き渡したサニーに指紋が付いていないかといった念押しの電話がかかって来たように思う。さらに,同月18日の夕方には,U2から,酒を飲みに行っておけなどとアリバイ作りを電話で指示されたほか,同日午後9時26分頃には,U2から電話があり,折り返し電話をかけたところ,U2から「終わった。」などと言われた上,口止めもされた(なお,以上の点について,c3は,U2外2名が起訴された本件等の公判でも,証人として同旨の供述をしている)。 従前,私がU3組長の名前を隠していたのは,警察の取調べでU3組長のことは余り聞かれなかったので,話さないで済ませたい気持ちがあったのと,私の口からU3組長の名前を出せば,私が丙6組や丙3組だけでなく,丙4組からも狙われるという恐怖心があり,丙4組の本部長が私の親戚と交際していることから,私の親戚にまで何かされるのではないかという心配もあったからである。しかし,逮捕されたU2らが立場上本当の話をできないでいることがかわいそうに思えてきて,U3のことを私が話せば,U2もあきらめて ,私の親戚にまで何かされるのではないかという心配もあったからである。しかし,逮捕されたU2らが立場上本当の話をできないでいることがかわいそうに思えてきて,U3のことを私が話せば,U2もあきらめて自白し,結果としてU2の刑が軽くなるのではないかと考え,世話になったU2が少しでも楽になるようにとの思いから,U3の話を出した。また,従前は,Cが携帯電話を2台持っていて,使い分けていたことをすっかり忘れてしまっており,出来事の順番についての自分の記憶よりも通話履歴に沿うように説明をしていたが,今回,Cがもう1台の携帯電話で電話をかけてきた可能性があることを念頭に改めて通話記録を見直したところ,2月16日午後11時23分からの私とU2の通話で,私がuナンバーを付けた白色の車を盗ませたことをU2に話した際,U2がその電話をつなぎっぱなしにしてU3組長 に盗んだ車を持って行く場所を聞き,すぐに私にその場所を指示してきたというのが正しいと考えるようになった。そのような時系列は,U2に盗んだ車を止める駐車場の場所を尋ねた際には既に車種を伝えていたという記憶とも一致するものである。 c3の前記各検察官調書における供述の信用性c3の前記各検察官調書における供述に不自然,不合理な点はなく,C及びDの本件各公判調書中の供述部分や関係者間の通話記録とも矛盾はない。c3供述は,U2やU3にとって不利益な内容を含むものであるが,このうちU2に関する部分についてみると,c3には,世話になっていたU2に不利益な虚偽の供述をする動機はなく,後述のP供述により認められるU2の関与状況とも整合的な内容であり,基本的な信用性に疑いはない。また,U3に関する部分についてみると,従前の供述内容からの変遷が認められるが,U3の名前を出すことにしたという経緯や より認められるU2の関与状況とも整合的な内容であり,基本的な信用性に疑いはない。また,U3に関する部分についてみると,従前の供述内容からの変遷が認められるが,U3の名前を出すことにしたという経緯や動機は自然なものであるし,c3には,丙4組に狙われる立場になる等のリスクを冒してまで,通話記録にも表れていないU3に関し,その関与をうかがわせるような虚偽の供述をする動機は何ら見当たらないから,この部分についても十分な信用性が認められる。これに対し,弁護人は,c3のU2に関する供述は,多数の自動車窃盗の余罪を警察に見逃してもらうことと引換えに行われた疑いが濃厚であるとして,利益誘導による虚偽供述の可能性を主張する。しかし,c3自身は,警察による利益誘導の事実を明確に否定しているし,c3に多数の余罪があったとしても,それらが立件・起訴に至るかは証拠の確実性や被害者の処罰意思など諸般の事情に左右されることは明らかであって,余罪が立件・起訴に至らなかったことが当然に利益誘導の疑いをもたらすものではないから,弁護人の主張は失当である。弁護人はまた,c3は,平成10年の段階では,警察官に対して,盗んだ車をどこに持っていくのかをU2から指示された通話と,U2に盗んだ車の車種を報告した通話とは,別の機会に行われたと供述していたのに,c3の前記各検察官調書では,これらが同一の機会に行われたと供述しており,事件発生に近い平成10年時点での供述の 方が信用性は高く,時間が経過した後に作成された検察官調書における供述は信用できないと主張する。しかし,c3の前記各検察官調書を作成したa6検察官によれば,取調べの中で捜査機関が把握していなかったU3の関与についてc3が供述を始め,通話履歴の説明にも変遷が見られたため,c3に対して改めて通話記録を示し の前記各検察官調書を作成したa6検察官によれば,取調べの中で捜査機関が把握していなかったU3の関与についてc3が供述を始め,通話履歴の説明にも変遷が見られたため,c3に対して改めて通話記録を示して記憶をたどらせたところ,c3が熟慮の末,前記の供述をするに至ったので,その供述するとおりに検察官調書を作成したというのであり(その旨述べるa6検察官の供述の信用性に疑いはない。),a6検察官による取調べの際のc3の供述態度は真摯なものであったと認められる上,通話記録に照らしても,警察官に供述した内容でなければ関係者間の連絡状況の説明がつかないわけではなく,むしろ,Cからc3への2月16日の通話履歴が全く存在しないことは,当時Cが警察に把握されている以外の携帯電話を所持していたことをうかがわせる事情といえることなども踏まえれば,前記供述の変遷により,c3の前記各検察官調書における供述の信用性に疑問は生じないというべきである。 ウ小括信用できるc3供述等によれば,本件の2日前に,U2が,c3に対し,電話で,足のつかない自動車を盗んで入手し,その車に別の自動車のナンバープレートを取り付けるよう指示し,併せて自動車に指紋を付けないよう注意したこと,c3は,U2の指示を受け,C及びDに指示して自動車(本件サニー)を盗ませたこと,その後,c3がU2に電話をかけ,Cらが本件サニーを盗んで入手した旨報告するとともに,その置き場所を尋ねると,U2は,c3との電話をつないだままU3に電話をかけ,本件サニーの運搬先を確認した上で,その場所に置くようc3に指示したこと,U2は,その後も本件サニーに指紋が付いていないかを気にしており,本件当日の夕方には,アリバイ作りをc3に指示し,同日の本件発生後の時間帯には,c3に対し,「終わった。」などと言った上,口止めを と,U2は,その後も本件サニーに指紋が付いていないかを気にしており,本件当日の夕方には,アリバイ作りをc3に指示し,同日の本件発生後の時間帯には,c3に対し,「終わった。」などと言った上,口止めをしたことが認められる。 ⑶ 本件後の事情(本件サニーの確認状況等)ア Pの検察官調書及び公判における各供述内容 本件当時三代目甲2組内丙6組若頭補佐兼事務局長であったPは,検察官調書において,要旨,以下の内容の供述をしている。 本件の3日後である2月21日,自宅にいた私はU2からの電話で北九州市s1区s9にある甲2組本部事務所に呼び出された。同所まで行き,車でやって来たU2と合流すると,U2が私にその車を運転するよう指示したので,私は運転席に,U2は助手席に乗って出発した。U2の指示に従って,甲2組本部事務所から国道3号線に出てs6交差点を過ぎ,2つ目の信号の交差点で右折すると,住宅街に入り,途中でY字の二股路に差し掛かった。その先をU2の指示に従って徐行したり,同じ道を反対側から徐行したりしていると,U2は「もうちょっとゆっくり行け。」と更に速度を落として徐行するよう指示してきた。U2は,進行方向右前方の道路脇に駐車されているuナンバーの白色の日産サニーをじっと見ており,「何でこんなところに置いとるんか。」と不機嫌な表情で,吐き捨てるように言った。前記サニーを見た後は,甲2組本部事務所に戻り,U2を事務所前で降ろした。車を向かいの駐車場に止めて事務所に戻ると,U2の姿は見えず,会議室に入っていることが分かった。そのとき事務所には,当番である丙4組の組員3名や,なぜか当番ではない丙3組組員2名がいた。しばらく待っていると,事務所の会議室からまず被告人Yが出て来て,それからU3とU2が出て来た。 他方,Pは,公判では 所には,当番である丙4組の組員3名や,なぜか当番ではない丙3組組員2名がいた。しばらく待っていると,事務所の会議室からまず被告人Yが出て来て,それからU3とU2が出て来た。 他方,Pは,公判では,本件の二,三日後に,U2が車でPの自宅を訪ねてきて,その車の運転席に乗り,U2が助手席に乗って自宅を出発し,U2の指示に従い,国道3号線をh1駅方面へ向かい,砂津交番の手前を左折し,徐行していると,白色のサニーが止まっており,U2が「こんなところへ止めやがって。」と怒ったような口ぶりで言っていた,サニーを見た後はどこにも立ち寄らずに自宅に帰っており,甲2組本部事務所には行っていない旨供述している。 イ Pの前記各検察官調書における供述の信用性Pの前記各検察官調書における供述内容は具体的であり,特段不自然,不合理な点はない。この点,弁護人は,Pの検察官調書記載の供述によれば,P運転の車の 走行経路はかなりの遠回りとなり,不自然で不合理であるのに対し,Pが公判で供述する走行経路は自然で合理的であると主張するが,走行に要する時間は道路状況等によっても異なるのであり,U2がPに経路を指示して運転させていることも踏まえると,最短距離でなくとも幹線道路を走行するなど運転しやすい経路を選択することにも十分な合理性があるといえるから,弁護人の主張は失当である。 Pの前記各検察官調書における供述は,U2,U3のみならず,被告人Yにとっても不利益な事実を述べるものである。Pは,平成7年頃にU2の若い衆となり,丙6組組員や同組本部長を経て,U2死亡後には五代目甲2組組員となり,五代目甲1會専務理事兼五代目甲2組組長付や同組風紀委員を歴任するなどして,平成二十六,七年頃に同組を辞めるまで20年近くにわたって甲1連合や甲1會ないしこれらの傘下の には五代目甲2組組員となり,五代目甲1會専務理事兼五代目甲2組組長付や同組風紀委員を歴任するなどして,平成二十六,七年頃に同組を辞めるまで20年近くにわたって甲1連合や甲1會ないしこれらの傘下の組員として活動していた。このようなPに,あえて検察官に対して虚偽の事実を述べてまで,同調書作成当時甲1會の会長であった被告人Yを陥れるような動機があるとは到底うかがわれない。 Pは,公判において,捜査段階で虚偽の供述をしたと述べ,その経緯について,U2とサニーを見に行く際自宅から発着した旨供述すれば,自宅の捜索を受けて,当時自宅に隠していたけん銃の弾丸が発見されてしまうと考え,甲2組本部事務所に行ったと警察官にうそを話した,同所で被告人Y,U3,U2を見たという話まで付け加えたのは,供述の信ぴょう性を上げるためである,それを覆すことができないまま検察官にも同じ話をしてしまったが,自身の供述調書のせいで被告人Yが有罪になっては困ると考え,平成27年2月頃から検察官に対して供述調書にうそがあるということを話すようになった旨弁解する。しかし,Pによれば,当該虚偽供述をした時点で,既に別件の覚せい剤取締法違反の被疑事実により一度自宅の捜索を受け終わっていたというのであるし,自宅が捜索を受けるのを避けるために甲2組本部事務所へ行ったといううそをつく必要はなく,ましてや同所に被告人Yらがいたなどといううそを重ねる必要もないのであって,Pの弁解は信用し難い。Pが自身の供述調書のせいで被告人Yが有罪になっては困ると考えたとする点は,甲 1會の最高幹部である被告人Yをかばおうとする心境を吐露したものであると認められる。 そうすると,Pの前記各検察官調書における供述内容は十分信用に値するというべきであり,Pの公判供述のうち,これと異なる部分に 部である被告人Yをかばおうとする心境を吐露したものであると認められる。 そうすると,Pの前記各検察官調書における供述内容は十分信用に値するというべきであり,Pの公判供述のうち,これと異なる部分については信用できない。 ウ小括信用できるPの前記各検察官調書における供述等によれば,本件の3日後,U2は,甲2組本部事務所にPを呼び出し,Pに指示して同所から車を運転させ,前記n3前路上に駐車されていた本件サニーを確認し,その駐車場所に不満を述べたこと,その後,PがU2を甲2組本部事務所まで車で送ると,U2は,同事務所内の会議室に入り,被告人Y及びU3と何らかの話合いをしたことが認められる。 ⑷ まとめア U2は,本件の2日前(2月16日),c3に指示して,本件で実行犯2名が用いた本件サニーを盗ませているところ,本件サニーに別の自動車のナンバープレートを取り付けるよう指示するとともに,併せて指紋を拭き取ることなどを注意し,その後も本件サニーに指紋が付いていないかを気にしていたのであり,本件サニーが重大犯罪に使用されることを認識していたと推察される。 イそして,U2は,c3との電話をつないだままU3に電話をかけ,U3に対し,盗んだ車の置き場所について指示を仰いでいることから,犯行使用車両の調達をU2に指示したのはU3であったと推認できる。 ウまた,U2は,本件の3日後(同月21日),甲2組本部事務所からPに車を運転させて路上に駐車されていた本件サニーを自ら確認し,その駐車場所に不満を述べた後,同事務所に戻り,会議室において,被告人Y及びU3と何らかの話合いをしている。話合いが持たれたタイミングと,前記3名の本件当時の甲2組内での地位(被告人Yが甲2組若頭(序列2位),U3が同組本部長(序列3位),U2が同組行動隊長)も踏まえる U3と何らかの話合いをしている。話合いが持たれたタイミングと,前記3名の本件当時の甲2組内での地位(被告人Yが甲2組若頭(序列2位),U3が同組本部長(序列3位),U2が同組行動隊長)も踏まえると,この話合いの際に,本件犯行の実行犯が用いた本件サニーの処理等に関して協議が行われたことがうかがわれる。 エこれらの事実は,U2及びU3が犯行使用車両(本件サニー)の調達やその事後処理に深く関わっていることを示している。以上に加え,U2が,本件当日夕方,c3に対してアリバイ作りを指示し,同日の本件発生後の時間帯には,c3に対して「終わった。」などと言った上,口止めもしていることを併せ考えると,U2及びU3の本件犯行への関与が推認できる。U2及びU3が甲2組の幹部組員であることに照らすと,本件犯行には甲1連合甲2組が組織的に関与した疑いが濃厚といえる。 オこの点,弁護人は,U2が駐車場所に不満を述べたことは,自分が用意した本件サニーが殺人事件に使われることを知らなかったとしても合理的な説明がつくことであり,本件犯行への関与を推認させるものではないと主張する。しかし,U2は,c3に対して自動車を調達するよう指示し,その際に指紋を拭き取ることなどを注意しているのであり,本件直後のc3に対する発言内容等からも本件犯行の内容を認識していたことが推認できるのであって,弁護人の主張は理由がない。また,弁護人は,U2が,本件についての自身の刑事裁判において,一貫して無罪を強く訴え,裁判確定後も弁護士に再審請求の依頼をしていたと主張するが,U2が自身の刑事裁判で一貫して無罪を主張していたという事実自体から,関係証拠により認められるU2の本件犯行への関与の事実に疑いが生じるものではない。 4 被害者及びその一族と甲1連合及び被告人両名 2が自身の刑事裁判で一貫して無罪を主張していたという事実自体から,関係証拠により認められるU2の本件犯行への関与の事実に疑いが生じるものではない。 4 被害者及びその一族と甲1連合及び被告人両名との関係⑴ 被害者及びその一族について関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 本件の被害者であるQ1は,昭和50年代,砂利の販売等をするk3を経営するとともに,北九州市s4区内のj1漁協の組合長を務め,白島石油備蓄基地の建設に伴う漁業補償交渉を取りまとめるなどした。Q1は,昭和57年には証人威迫,横領被疑事件により逮捕され,同組合長の職等を辞任したが,その後も,j1漁協のみならず,北九州市内の全ての漁協に強い影響力を有していた。Q1は,息子のQ2が昭和58年に設立した港湾土木資材販売を業とするk4株式会社(後の株式 会社k4。以下「k4」という。)の経営にも関与していた。Q1は,昭和50年代には甲3一家総長であったZ5と面識を持ち,その後,平成3年4月に当時の甲1連合総裁であったZ5が死亡するに至るまで,親密な交際をしていた。 また,Q1の弟であるR1は,平成4年頃まで,港湾土木工事等を業とする株式会社k5(以下「k5」という。)の代表取締役をしていたが,その頃,息子のR2にその地位を譲り,自身は同社の相談役となった。そして,R1は,平成8年に発表されたr構想(なお,第1期の整備事業費は1000億円)の際は,j1漁協の専務理事としての立場にあったほか,r構想に関連する漁業権を有する10漁協で構成された漁業補償交渉委員会の委員長に就任して北九州市との間の補償交渉に携わり,平成9年10月,前記10漁協への漁業補償金を約74億円として妥結することに成功した。 港湾建設工事や産業廃棄物の投棄事業を行う際には,漁業権が侵害 員長に就任して北九州市との間の補償交渉に携わり,平成9年10月,前記10漁協への漁業補償金を約74億円として妥結することに成功した。 港湾建設工事や産業廃棄物の投棄事業を行う際には,漁業権が侵害される漁協の承諾を得る必要があるため,港湾建設工事等に参入しようとする業者は,当該漁協の意向を重要視していたところ,Q1及びR1は,前記のとおりj1漁協を始めとする北九州市内の漁協に強い影響力を有するとともに,港湾建設工事に関連する事業も営んでいたことから,R1,Q1らのR・Q一族(以下「Q一族」という。)は,北九州地区の港湾建設工事等における下請業者の選定等に関し,強い影響力を有すると見られていた。 ⑵ 被告人両名及び甲1連合によるQ一族への接触の経緯等関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア平成2年頃から平成4年頃まで,被告人X(平成2年12月から甲1連合若頭)は,k4へ中元・歳暮を贈っていた。また,平成3年暮れから平成4年頭頃には,被告人Yの誘いで,被告人X,被告人Y,Q1及びQ2が北九州市s1区内の「p3」という店で会食をし,同年3月か4月には,被告人Yの誘いで,被告人Yほか数名とQ2が会食をした。しかし,同年8月,k4及びk5が暴力団との親交を理由に行政機関からの指名停止処分を受け(k4は平成7年夏頃,k5は平成8 年にそれぞれ同処分が解除された。),Q1,Q2,R1らは甲1連合と距離を置くようになった。そうした中,平成4年暮れから平成5年初頭頃,Q1が,北九州市s1区内の飲食店「p4」で,来店した被告人Xに挨拶することを拒絶したという出来事を契機として,甲1連合側から「親子共々1週間以内に北九州から出て行け」などと脅され,Q1とQ2は福岡市内のホテルm2内の中華料理店「p5」で被告人Yに謝罪し,さら 拶することを拒絶したという出来事を契機として,甲1連合側から「親子共々1週間以内に北九州から出て行け」などと脅され,Q1とQ2は福岡市内のホテルm2内の中華料理店「p5」で被告人Yに謝罪し,さらにQ2は被告人Yからの要求を受けて1000万円を支払った。 イ r構想が発表された後の平成9年に入って以降,甲2組の幹部を含む同組組員や被告人Xの舎弟の組員は,Q1,Q2及びR1に対して,以下のないしのとおり,再三にわたり接触を試み,あるいは圧力を掛け,甲1連合との利権交際をするよう要求したが,Q1,Q2及びR1はいずれも交際を拒絶した。 平成9年1月,甲2組内丙4組組長のU3は,Q2と面会し,「いよいよj1に大きな仕事が始まる。お前とおやじとR1とR2がターゲットになっている。分かっているだろうな。」などと述べたほか,同じ頃,知人を通じてR1に対しても面会を求めた。 Q1は,証人威迫等の罪により有罪判決を受け,平成7年5月から服役し,平成9年5月に出所したところ,甲2組内丙5組組長のU1は,同月頃,出所後のQ1を訪ねるなどして三度にわたりk4を訪問し,対応したQ2及びk4の専務に対し,「長崎にいい砂があるので買ってほしい。」などと述べ,自身と関係のあるk6なる業者から砂を購入するよう求めた。 同年7月頃,甲1連合内丙8組組長であり被告人Xの舎弟であるZ8は,k5に電話をかけ,R1に対し,「お前たちだけ良い飯食よる。とにかく会え。」「会わんとどうなるか知らんぞ。会社に押し掛けて会社や子供をぶっつぶすぞ。」などと言って面会するよう求めた。 同年9月,甲1連合内甲2組幹事長兼丙9興業組長であったZ9は,k4を訪れ,Q2に対し,「s4は俺の縄張りじゃ,おまえたち大概にしとけよ。」などと述べた。 ウ平成9年7月 同年9月,甲1連合内甲2組幹事長兼丙9興業組長であったZ9は,k4を訪れ,Q2に対し,「s4は俺の縄張りじゃ,おまえたち大概にしとけよ。」などと述べた。 ウ平成9年7月に設立された砂・砂利の採取販売事業を営むj2砂利事業協同組合の代表理事であったc5及び同組合の専務理事であったc7は,北九州で事業をするに当たって甲1連合に挨拶をすべく,暴力団三代目丁会を介して,同年11月12日,北九州市s4区の料亭「p6」で,当時甲1連合若頭であった被告人Xと面会した。その際,被告人Xは,c5やc7に対し,「砂の世界は難しいもんね。 Qがいるもんね。やりたいことも行き詰まるよ。何とかQを含めて,砂業界を統一せんと,本当の意味で,砂業界で仕事をするのは難しいですよ。」「砂利事業はs4のQが絡んでいるから大変ですよ。あそこには,私どもも何も絡めないんです。」などと述べた。 エ Q1が殺害された後,平成10年4月以降,被告人Yが,知人を介して再三Q2との接触を図った上,同年5月頃,Q2に対し,電話で,「20年,30年警察とやっていくつもりね。表を歩けるようにせんといけんのじゃないんね。自分はR1のことは好かんけど,二人でよく話し合って連絡をしてちょうだい。このことは,警察,そして誰にも言ったらいけんよ。」などと述べたり,平成11年初め頃,甲1會組員で被告人Yの弟分的な関係にあるW1が,k4を訪れ,Q2に対し,「自分が来たら誰から頼まれたかわかるでしょう。このまま小さくやっていくんですか。このまま甲1會を無視していくのか,はっきり返事が欲しい。」などと述べたりした。 ⑶ 検討ア前記認定事実によれば,Q1を始めとするQ一族は,北九州地区の港湾建設工事における下請業者の選定等に関し,強い影響力を有すると見られていたところ,当時甲 い。」などと述べたりした。 ⑶ 検討ア前記認定事実によれば,Q1を始めとするQ一族は,北九州地区の港湾建設工事における下請業者の選定等に関し,強い影響力を有すると見られていたところ,当時甲1連合若頭兼甲2組組長であった被告人Xは,平成3年頃以降,被告人Yと共にQ1及びQ2と会食をするなどして,Q一族に接近を図ったことがあったこと,r構想発表後の平成9年1月以降,甲2組の幹部を含む甲1連合の組員らが,代わる代わるQ1らに接触を図ったり,圧力を掛けたりして,利権交際をするよう要求したものの,Q1らから拒絶されていたこと,被告人Xは,同年11月には,北九州の砂利事業者が参加した宴席で,砂利事業にはQ1が絡んでいるので甲1連合も 利権介入ができない旨の発言もしており,被告人XがQ一族の利権に重大な関心を抱くとともに,Q一族がいる限り,その利権に甲1連合が食い込むことは困難であるとの認識を示していたことが認められる。そして,平成9年以降の甲2組の幹部を含む甲1連合の組員らによるQ1らへの働きかけの状況,殊にU3が「ターゲットになっている。」などと組織としてQ2らに狙いを定めているという趣旨の発言をしていることや,接触等を試みた組員の顔ぶれも見ると,こうした働きかけに甲1連合若頭兼甲2組組長であった被告人Xの関与がなかったとは到底考えられない(なお,平成四,五年頃から平成8年までQ1らへの働きかけの形跡が見られない点は,その間,k4及びk5が指名停止処分を受けていたことを踏まえると,不自然とはいえない。)。 この点,弁護人は,平成9年にQ一族の身の回りで起きた事件は,いずれもs4地区を自分たちの縄張と考え活動地盤にしていたU3,Z8,Z9らが起こしたものであって,被告人両名が関わったことを示す証拠は一切なく,U1について 成9年にQ一族の身の回りで起きた事件は,いずれもs4地区を自分たちの縄張と考え活動地盤にしていたU3,Z8,Z9らが起こしたものであって,被告人両名が関わったことを示す証拠は一切なく,U1については,Q1から出所後に訪ねてくるように言われたからであり,U1の動きは極めて個人的なものであって,やはり被告人両名と関係がないと主張する。しかし,少なくともU3に関しては,前記認定のとおり,甲2組内の同じ三次団体の組長であるU2に指示して本件サニーを調達させており,単なる自分の縄張内での動きとしては説明できないし,その他の者についても,甲1連合の直轄組長や三次団体の組長らがこの時期に互いに全く無関係にQ一族に接触等を試みたとはおよそ考え難い。 イまた,被告人Yは,甲2組の若頭となった後の平成3年ないし平成4年頃,被告人Xと共にあるいは被告人X以外の数名の者と共にQ2らと会食をするなどして,Q一族に接近を図ったことがあったが,平成9年に入り,甲2組の幹部を含む甲1連合の組員がQ1らに対して,複数回にわたり利権交際を迫っていたのに引き続き,本件の約3か月後には,自らもQ2に接触して利権交際に応じるよう要求していたものであり,このような一連の経緯に照らすと,被告人Yも,当時甲2組組長であった被告人Xと同様,Q一族の利権に重大な関心を抱いていたことが認めら れる。 ⑷ 弁護人の主張に対する判断前記⑵の各事実については弁護人が争っているところ,当裁判所は,前記⑵アイエの各事実を,主としてQ2の供述,前記⑵ウの事実をc5及びc7の各検察官調書における供述によりそれぞれ認定したので,これらの者の供述の信用性を肯定した理由等について,以下説明する。 ア Q2供述の信用性Q2の供述は,具体的かつ詳細で,内容も自然である上,全般的にR 書における供述によりそれぞれ認定したので,これらの者の供述の信用性を肯定した理由等について,以下説明する。 ア Q2供述の信用性Q2の供述は,具体的かつ詳細で,内容も自然である上,全般的にR1の供述とも整合的である(なお,R1の検察官調書は,平成14年7月12日に,a11 検察官が作成したものであるが,同検察官は,R1に対して,供述の根拠を尋ねつつ,体験事実と推測事実を区別して録取したと供述しており,このような同調書の作成経過も踏まえればR1供述には十分な信用性が認められる。)。Q2は反対尋問にも動揺していない。個別のエピソードについてみても,U1がk6なる業者から砂を購入するよう求めた件については,k4の専務であり,Q1の指示を受けてU1の応対をした証人Bの供述とよく整合し,本件後に被告人YとW1がそれぞれ接触してきた件については,Q2が作成した当時の自身の手帳による裏付けがある。Q2が供述する「p3」「p4」「p5」がいずれも被告人Xの行きつけの店であることも,Q2供述の信用性を補強している。Q2は,父親のQ1を殺害され,長男のQ3も刃物で刺される被害に遭っているが,本件当時は甲1連合甲2組の幹部であり,最終的に甲1會最高幹部にまでなった被告人両名にとって不利益な虚偽の供述をあえてするとは考え難い。 なお,p4の件については,①Q1の知人のc1は,当日ホテルでQ1らと軽く食事をした後,Q1らに少し遅れてp4に入ると,ホテルで食事をしていたときは普通の様子だったQ1が,険しい表情をして「もう店を出たい。」と自分に話した,などと供述し,②c1が経営する会社の従業員であるc2は,当日ホテルで食事をしているときのQ1は嬉しそうだった,Q1とp4に入店後,一見して組関係の人 間と分かる黒の背広を着た男が六,七人入っ ,②c1が経営する会社の従業員であるc2は,当日ホテルで食事をしているときのQ1は嬉しそうだった,Q1とp4に入店後,一見して組関係の人 間と分かる黒の背広を着た男が六,七人入ってきてQ1らが座っている横の通路を通って奥の方へ移動していった,その後二,三分してQ1が店を出ようと言い出したが,そのときのQ1の表情は暗かった,エレベーターで下りて10メートルか20メートル歩いたところで先ほどの黒のスーツを着た男がp4の入っているビルの方向から近づいてきて,「帰らんでもいいやないか。」「挨拶ぐらいしてくださいよ。」とQ1に哀願するような感じで言っていたが,Q1は無視していた,などと供述する。いずれの供述にも信用性に疑問を挟む事情はなく,供述どおりの事実が認められるところ,これらの事実に加え,p4での出来事が起きた後,Q2が甲2組事務所の組員から「うちの親分をヨゴレとはどういうことだ。クラブでヨゴレが来たから帰った。うちの親分と同格と思うな。」などと恫喝されていることも併せ考えれば,Q1が被告人Xとp4で遭遇したが,同被告人への挨拶を拒絶した事実が認められる。この点,弁護人は,Q1に声をかけた人物はp4の従業員であった可能性が高いと主張するが,前記認定事実に照らせば,その可能性は否定される。 ちなみに,Q2は,平成3年の10月か11月頃,c9及びc10 がQ1のところに1000万円を借りに来たことから,翌日,Q1から指示を受けて同額の現金を準備し,c9を借主,c10 を保証人とする借用書を作成して,1000万円を貸し付けた旨供述するところ,弁護人は,Q2の前記供述は,伝聞を直接体験と改変した疑いが濃厚で,内容としても不可解であり,同貸付けの事実を否定する証人c9の供述に照らしても信用できない旨主張する。そこで検討すると, するところ,弁護人は,Q2の前記供述は,伝聞を直接体験と改変した疑いが濃厚で,内容としても不可解であり,同貸付けの事実を否定する証人c9の供述に照らしても信用できない旨主張する。そこで検討すると,Q2は,k4の社長室の机に座っていた自分の目の前で見聞きするなどした出来事であるとしてc9らの借金の件を供述するところ,その供述内容に特段不合理な点はない。一方,c9は,昭和51年から平成6年頃に至るまで,長年にわたりZ6の側近として活動した者であるが,平成7年にv市議会議員になって以降も,被告人Xと中元・歳暮のやり取りをしたり,母親の葬式で被告人Xからの香典を受け取ったりするなど,甲1連合や甲1會との関係を有していたというのであり,その供述態度にも照らすと,いわば甲1會側の人物といえる。そして,c9は,c10 について,高校の同級 生でZ6が組長をしていた丙10 組に入った時期も同じ頃である旨や,甲1連合の事務局長として金の管理もしていた旨を供述しているが,これらの点は,c9,c10両名が連れだって金を借りに来たというQ2の供述と整合し,その供述内容を裏付ける事情といえる。これらの事情に加え,Q2がc9やc10 に対して金銭を貸し付けたとあえてうそを述べる理由がないことも踏まえると,c9の供述によってもQ2の供述の信用性は揺らがない。 以上のとおり,前記⑵アイエの各事実に係るQ2の供述は基本的に信用に値するといえる。 イ c5及びc7の各供述の信用性c5及びc7の各供述は具体的である上,「p6」の伝票や領収証により客観的に裏付けられている。Q1が砂の世界でどれぐらいの力を持っているかに関して,被告人Xが具体的数値を上げて言及したことにつき,c5の検察官調書には90パーセントとの記載がある一方で,c7のそれには記載がな 付けられている。Q1が砂の世界でどれぐらいの力を持っているかに関して,被告人Xが具体的数値を上げて言及したことにつき,c5の検察官調書には90パーセントとの記載がある一方で,c7のそれには記載がないものの,p6での出来事の概要について,両名の供述は相互に合致し,信用性を高め合っている。c5及びc7をそれぞれ取り調べた検察官の各供述によれば,c5及びc7は,前記各検察官調書作成時点で,古い出来事(特にc7については約17年も前の出来事)について供述しているが,いずれも供述時点で保持していた記憶に基づき事実を語っていると認められることも踏まえると,両名の供述は十分信用できる。これに対し,弁護人は,前記伝票には19名が5000円のコース料理を頼んだことが記載されているが,別室で待機した者が食事をしていないとすれば,人数からしてもc5らが供述する会食の際のものとは違う上,甲1連合最高幹部に挨拶する目的でわざわざ招待したにしては,一人前5000円という値段が安すぎると主張する。しかし,この会合は夜ではない午後の時間帯に開かれたものである上,j2砂利事業協同組合側が飲食代金を支払っていることや,別口料理としてあわびも注文されていることからすると,一人前の値段が不相応に安いなどとはいえない。参加者についてのc7とc5の各供述は,会食が2つのグループに分けて行われ,うち1室に被告人 X,c11 会長,c7,c5ら7名が同席し,もう1室に付き添いで来た組員らとc12(c5の内妻),c13 が同席したという内容で一致しており,c5は,甲1連合側と丁会側を併せて付き添いの組員は10人前後いたと供述している。そうすると,c5らが供述する当日の出席人数は伝票の19名という記載と整合している。弁護人は,被告人Xらとは別の部屋で待機していた者が食 と丁会側を併せて付き添いの組員は10人前後いたと供述している。そうすると,c5らが供述する当日の出席人数は伝票の19名という記載と整合している。弁護人は,被告人Xらとは別の部屋で待機していた者が食事をしていないのではないかと指摘するが,c5は食事を取ってもらうことにしたと供述しており,これに反する証拠もない。また,弁護人は,c7の平成14年当時の警察官調書と平成26年当時の前記検察官調書とでは供述内容に明らかな違いがあるとも主張するが,全体として見れば,供述内容に実質的な相違はないと認められる。よって,弁護人の主張はいずれも理由がない。 5 甲1連合ないし甲1會における収益の分配⑴ Z3の供述についてアかつて甲1會甲2組の組員であったZ3は,公判で,要旨,以下のとおり供述している。 平成5年に刑務所から出所した後,甲2組では,組員が建設業者から得た地元対策費とも呼ばれるカスリの全額を親分である被告人Xに持っていくルールとなっていた。自分が被告人Xに建設業者から得た地元対策費の現金を持って行ったことは,覚えている限りで1回ある。北九州市s4区の工場の建設工事でk7という建設会社から700万円ぐらいの地元対策費を受け取り,平成13年に新築された被告人Xの自宅(新本家)1階仏間で,その現金を被告人Xに渡したところ,被告人Xが,目の前で,「これは山(Z6総長)の分,これは俺(被告人X)の分」などといいながら,Z6の分,被告人Xの分,自分を含む担当者の分及び事務局の分とおおむね4か所に現金を分けていたが,担当者の分は200万円で,Z6と被告人Xの取り分は大体同じで,いずれも担当者の分より多く,事務局の分は担当者分より少なかった。建設業者からの地元対策費に限定せずに,被告人Xにみかじめ料を上納したことは他にもあり,平成6年か7年頃,m Xの取り分は大体同じで,いずれも担当者の分より多く,事務局の分は担当者分より少なかった。建設業者からの地元対策費に限定せずに,被告人Xにみかじめ料を上納したことは他にもあり,平成6年か7年頃,m3という施設の売主と買主を結び付けた 際には,買主から2000万円のみかじめ料を受け取り,甲1連合本部2階の宿直室で被告人Xと二人だけで会って,被告人Xにその2000万円全額を差し出した。 すると,被告人Xは,「これ山の分の,俺の分の」などと言いながら,先ほどと同様に現金を分けていた。自分を含む担当者の分は500万円で,Z6と被告人Xの取り分は同じぐらいで担当者の分よりは多く,事務局の分は100万円だった。 イ Z3の供述は,自身の体験した事実を具体的かつ詳細に述べるものであり,反対尋問にも動揺はない。そして,Z3の供述内容は,かつて所属していた暴力団組織の上位者である被告人Xにとって明らかに不利益となる内容であるところ,平成29年12月に甲1會を辞めるまで,初代甲2組の時代から長年にわたり甲2組組員として活動していた古参の組員であるZ3が,殊更に被告人Xに不利益となる虚偽の供述をする動機は見当たらない。加えて,建設会社からの地元対策費等を被告人Xに持参したときに被告人Xが自らこれをZ6,被告人X,担当者及び甲1會の取り分に分けていた旨を述べるZ3の供述は,後述するGの供述と極めてよく整合し,相互に供述の信用性を高め合っている。そうすると,Z3の前記アの供述は十分信用できる。 この点,弁護人は,①Z3が甲1會を離脱するに当たり,警察が協力して生活保護を受給する手続を早めてくれたことに恩義を感じ,捜査機関に迎合する素地があった,②被告人XがZ3を呼び出して地元対策費等を自ら受け取ること自体が不自然であるし,その金の配分をZ3に 協力して生活保護を受給する手続を早めてくれたことに恩義を感じ,捜査機関に迎合する素地があった,②被告人XがZ3を呼び出して地元対策費等を自ら受け取ること自体が不自然であるし,その金の配分をZ3に説明し,金を数えて分配するのは更に不自然である,③Z3は,平成30年の時点では,地元対策費を被告人Xのところに持参したことを全く供述していなかったところ,その後に持参したと言い出したが,その回数も法廷供述とは異なっている,などとして,Z3の公判供述は全く信用できない旨主張する。しかし,①については,警察官から生活保護受給の支援を受けたからといって,甲1會を離脱したZ3が,甲1會組員によって報復されかねない危険を冒してまで,その最高幹部である被告人Xにとって明らかに不利益となる虚偽の供述をするとは考え難い。②については,被告人Xが地元対策費等を自ら受け取る こと自体が特段不自然であるとはいえないし,これを持参したZ3にもその中から担当者としての取り分がある以上,Z3の目の前で被告人Xが配分を説明しながら現金を分けたとしても,そのことが格別不自然であるとはいえない。③については,Z3が捜査機関の取調べを受け始めた当初から被告人Xに地元対策費等を持参した事実を供述していないのは弁護人指摘のとおりであるが,長年にわたり甲2組組員として活動し,平成29年に甲1會を離脱したばかりのZ3が,被告人Xに明らかに不利となる事実について供述を始めるまでに時間を要したとしても,そのことが不合理であるとはいえない。地元対策費を持参した回数について,捜査段階では複数回あるような説明をしていたのを公判では1回と説明しているが,公判時点で「覚えている限り」1回と述べているのであり,記憶に確かな回数を供述しているものと認められる。その他にも弁護人は,Z3が は複数回あるような説明をしていたのを公判では1回と説明しているが,公判時点で「覚えている限り」1回と述べているのであり,記憶に確かな回数を供述しているものと認められる。その他にも弁護人は,Z3が虚偽供述を重ねていると縷々主張するところ,Z3が平成5年に出所した際にもらった放免祝いの金額などについて,一部記憶の正確性に疑問が残る部分はあるものの,前記アを含む供述の核心部分については,事実をありのままに語っているものと認められ,信用性に疑いを入れる余地はない。弁護人の主張は理由がない。 よって,信用できるZ3の供述によれば,Z3が平成6年か7年頃に2000万円のみかじめ料を,平成13年頃以降に約700万円の地元対策費を,それぞれ被告人Xに渡し,被告人Xは,これをZ6,被告人X,担当者及び事務局の取り分に分配した事実が認められる。 ⑵ Gの供述についてアまた,U3の親交者であったGは,公判で,要旨,以下のとおり供述している。 平成13年頃から平成19年にかけて,建設業者から地元対策費の現金を回収し,被告人X,被告人Y又はU3に渡していた。トータルで十数回渡したうち,U3に渡したのは数回,被告人両名に渡したのはそれぞれ五,六回だった。地元対策費の現金を渡す相手は,原則U3だったが,U3の体調が悪いときには四代目甲1會会 長の被告人Xに渡し,被告人Yが刑務所から戻って甲1會理事長になってからは被告人Xの指示で被告人Yに渡していた。地元対策費の金額は1回当たり一千万円から数千万円で,工事金額に対する割合が工事の規模や種類によって決まっていた。 被告人Xに地元対策費を渡すときには,被告人Xの家(本家)に行って,1階応接間で被告人Xと二人だけで会い,紙袋から現金を出すと,被告人X本人が,金額を確認し,「これは総裁(Z6)の て決まっていた。 被告人Xに地元対策費を渡すときには,被告人Xの家(本家)に行って,1階応接間で被告人Xと二人だけで会い,紙袋から現金を出すと,被告人X本人が,金額を確認し,「これは総裁(Z6)の分だから,これは俺(被告人X)のだから,これはU3の分だから,これは會の分だから」と説明しながら,3:3:3:1の割合で現金を4つの山に分けていた。窓口であるU3の取り分の3割以外の7割の現金について,被告人Xは甲1會総務委員長のZ10 に渡していた。被告人Yに現金を届けるようになってからも,窓口の3割がU3と被告人Yで折半となった以外は取り分に変更はなかった。被告人Yから地元対策費の現金の分け方について説明を受けたことがあり,実際に被告人Yが自分の目の前で現金を分けるのを数回程度見たこともある。 イ前記アのGの供述は,具体的かつ詳細である上,実際に体験した者でなければ語り得ない被告人Xとのエピソードなども多数供述しており,反対尋問にも動揺はない。そして,被告人Xに地元対策費を持参したところ,被告人Xが自らこれをZ6,被告人X,担当者及び甲1會の取り分に分けていた旨を述べるGの供述は,前述のZ3の供述と極めてよく整合し,相互に供述の信用性を高め合っている。かつてU3の親交者であったが,平成19年に銃撃されたことから甲1會と縁を切り,以後地元を離れ名前を変えて生活しているGが,報復の恐れを感じながらも,甲1會最高幹部の被告人両名に不利益となる虚偽の供述をあえてすることは考え難いから,その供述は十分信用でき,Gが供述したとおりの事実が認められる。この点,弁護人は,①被告人Xが,子分の一人であるU3の企業舎弟にすぎないGから違法な犯罪収益金を直接受け取ること自体が考え難いのに,そのような金を受け取っただけでなく,Gの目の前で「これは総裁の分だか ,弁護人は,①被告人Xが,子分の一人であるU3の企業舎弟にすぎないGから違法な犯罪収益金を直接受け取ること自体が考え難いのに,そのような金を受け取っただけでなく,Gの目の前で「これは総裁の分だから,これは俺のだから」などと唱えながら金を分け,金の配分先までGに教える必要などおよそ考えられない,②G は,公判では,最初に受け取った地元対策費を被告人Xに直接渡したと供述し,その後も平成19年までに複数回地元対策費を被告人Xに直接渡したと供述しているが,Gの法廷外供述は,すべてU3に直接渡したというものであり,被告人Xに直接渡したという記載は一切なく,何故供述が変わったかの合理的説明もない,③Gは,被告人XがGに対して,他の者には打ち明けないプライベートなことを頼む関係にあったと供述するが,そのようなGの供述は信用できないし,信用できる範囲でも単に不動産に関する知識を求められたという程度のものにすぎない,などとして,Gの供述を信用することは到底できない旨主張する。しかし,①については,当時,被告人XとGは,被告人Xがその親族等に関わるプライベートな案件についてGに依頼をするような親しい関係にあったことに照らすと,被告人XがGから地元対策費を自ら受け取ること自体が不自然であるとはいえないし,その中に担当者であるU3の取り分があることも踏まえれば,これを持参したGの目の前で被告人Xが配分を説明しながら現金を分けたとしても,そのことが格別不自然であるとはいえない。②については,Gは,平成26年から平成27年にかけて警察官や検察官から事情聴取を受け,GがU3と知り合った平成4年頃から甲1會と関係を断ち切る平成19年に至るまで,10年弱前から20年以上前までの話を聞かれる中で,時間をかけて記憶を喚起しながら供述をしていったものと認 情聴取を受け,GがU3と知り合った平成4年頃から甲1會と関係を断ち切る平成19年に至るまで,10年弱前から20年以上前までの話を聞かれる中で,時間をかけて記憶を喚起しながら供述をしていったものと認められるところ,当初は,原則どおりU3を介して甲1會に金が渡っていたことしか思い出せなかったとしても,そのことが格別不合理であるとはいえない。③については,弁護人の指摘を踏まえても,Gが被告人Xの親族等に関わるプライベートな案件を知らされていたことに疑いはない。被告人Xの自宅が平成13年に新築された際,被告人XがGを新築披露パーティーに招待している事実からも,当時,被告人XがGに一定の信頼を寄せていたことは明らかといえる。弁護人の主張は理由がない。 よって,信用できるGの供述によれば,平成13年頃から平成19年までの間,Gが建設業者から受け取った一千万円ないし数千万円の地元対策費を,U3のほか,被告人X及び被告人Yに渡し,被告人両名は,これをZ6及び被告人Xの取り分を 各3割とするなどして分配した事実が認められる。 ⑶ 小括前記⑴,⑵のとおり,三代目甲2組当時,甲1連合ないし甲1會傘下の甲2組組員が暴力団の威力を背景に建設会社等から得ていたとうかがわれる高額なみかじめ料(上納金)は,三代目甲2組組長であった被告人Xを含む甲1連合ないし甲1會の最高幹部らの間で分配されていたものである。 平成8年にr構想が発表されて以降,北九州地区では,同構想における多額の漁業補償金の分配や大規模港湾建設工事の業者選定等が現実化しつつあったと考えられるところ,甲1連合ないし甲1會における前記の収益の分配構造に照らすと,仮に,甲2組等からの利権交際要求にQ一族が応じた場合には,これらの漁業補償金の分配や工事業者からのみかじめ料といった巨額の れるところ,甲1連合ないし甲1會における前記の収益の分配構造に照らすと,仮に,甲2組等からの利権交際要求にQ一族が応じた場合には,これらの漁業補償金の分配や工事業者からのみかじめ料といった巨額の利権の相当部分について,甲1連合ないし甲1會の最高幹部の地位にあった被告人Xが取得することが当然に見込まれていたものと推認できる。 6 その余の本件後の事情本件後の事情として,さらに,以下の各事実が認められる。 ⑴ 本件当時甲2組若頭であった被告人Yによるかん口令ア本件当時甲2組組員であったPは,検察官調書において,要旨,平成10年3月10日,本件後最初の定例の甲2組幹部会(以下「本件定例会」という。)が同組本部事務所の会議室で行われ,当時若頭であった被告人Yから,参加した60人くらいの同組組員(U2,U3,U1らの同組内の三次団体の組長のほか,一般の組員を含む。)に対して,「Qの件については,警察に対してはもちろん,組員同士においても一切話をしてはならない。」と指示があった旨の供述をしている。 Pの前記供述内容は,相応に具体的であり,特段不自然,不合理な点はない。そして,この供述は,被告人Yが本件を特定してかん口令を敷いたという被告人Yにとって不利益な内容であるところ,長年にわたり甲1會(前身の団体を含む。)ないしその傘下の組員として活動していたPが,あえて検察官に対して虚偽の事実を述 べて,前記検察官調書作成当時に甲1會会長であった被告人Yを陥れるような動機があるとは到底うかがわれないのは前述したとおりである。以上によれば,Pの前記検察官調書における供述は信用できる。 イこれに対してPは,公判において,本件定例会での話の内容は覚えてはいない,被告人Yは,甲2組の定例会では毎月決まって,うわさ話はするな,人の誹 ば,Pの前記検察官調書における供述は信用できる。 イこれに対してPは,公判において,本件定例会での話の内容は覚えてはいない,被告人Yは,甲2組の定例会では毎月決まって,うわさ話はするな,人の誹謗中傷的なことは話すなと注意をしており,Q事件(本件)についてだけの話とは思わなかったなどと供述している。Pが公判でこのような供述をするのは,前記検察官調書の作成後時間が経過し,記憶が劣化していることのほか,Pの前記のような長年の組員としての経歴に照らし,甲1會の最高幹部である被告人Yの面前で,同被告人に不利益な供述をするのが困難であるという事情が考えられ,前述のとおり,Pは,検察官に対し,自身の供述調書のせいで被告人Yが有罪になっては困るという話をした事実を認めている。以上のような状況下でなされたPの公判供述は信用できない。 ウ信用できるPの前記検察官調書における前記供述によれば,本件定例会において,当時甲2組の若頭であった被告人Yが,本件に関し,同組組員らに対し,かん口令を敷いたとの事実が認められる。 ⑵ 甲1會等によるU1及びU2の処遇並びに受刑中のU1への差し入れ等ア U1及びU2の処遇前記第1の認定事実及び関係証拠によれば,本件当時,U1は甲1連合三代目甲2組の若頭補佐兼丙5組組長であり,U2は同甲2組の行動隊長兼丙6組組長であったこと,両名は,平成12年1月に四代目甲1會が発足した際に,いずれもその直轄組長に昇格したことが認められる。また,U1及びU2の両名は,甲1連合あるいは甲1會の内部において本件に関与したことで処分を受けた事実はないことがうかがわれる。 イ受刑中の組員のための貯金(積立金)平成19年12月から平成23年頃まで甲1會事務局員を務めたFは,公判で, 要旨,以下のとおり供述してい 事実はないことがうかがわれる。 イ受刑中の組員のための貯金(積立金)平成19年12月から平成23年頃まで甲1會事務局員を務めたFは,公判で, 要旨,以下のとおり供述している。 私は,甲1會事務局員として,Z10 総務委員長等の下,甲1會の組員名簿の管理等のほか,運営費(旧共済金を含む。以下同じ。)の集計を行っていた。運営費は,甲1會の各二次団体の担当者が取りまとめて甲1會事務局に持参する金銭で,毎月総額約2000万円が集められていたが,甲1會組員のうち,事務局員や逮捕勾留,実刑判決を受けて刑事施設に収容中の者などは,その支払を免除されていた。集められた運営費の使途は,いわゆる本家(被告人X方)の維持費,甲1會本部や事務局に要する諸経費及び貯金の3つに分けられていた。このうち,貯金とは,甲1會の組織のために事件を起こして服役した甲1會組員(いわゆる「ジギリ」を行った者)のための積立金であり,その者が刑務所から出所した場合にはその者に係る貯金は終了していた。私は,Z10 総務委員長から組名,組員名,貯金額の書かれたリストを交付されており,毎月,そのリストの貯金額の合計を運営費から取り分けた上,リストの記載に従って各組ごとに分けて作った封筒に各組ごとの貯金額の総額を入れ,それらの封筒をZ10 総務委員長に渡していた。U2及びU1の各貯金額は,いずれも毎月20万円であった。貯金とは別に,破廉恥事件以外で一定期間以上服役した組員に対しては,出所後の最初の定例会で出所祝い金が支払われていた。 以上のFの供述は,ジギリをした者が貯金の対象者とされていたとの点について,各受刑者とその者が起こした事件とを,個別の事件の内容も交えつつ結び付けて挙げるなど,具体的かつ詳細である上,全体としてみても,特段不自然,不合理な点はないか 金の対象者とされていたとの点について,各受刑者とその者が起こした事件とを,個別の事件の内容も交えつつ結び付けて挙げるなど,具体的かつ詳細である上,全体としてみても,特段不自然,不合理な点はないから信用でき,その供述するとおりの事実が認められる。 ウ受刑中のU1への差し入れ等平成23年6月から平成27年5月まで,五代目甲1會五代目甲2組事務長(後に事務局長に役職名が変更)を務めたZ1は,公判で,甲2組の運営費から,毎月5万円をU1の内妻(c14)宅へ持参したり,複数回,不定期に,U1が服役する刑務所へ前記内妻(c14)の名前で50万円あるいは100万円程度の現金を郵送したりしていた旨供述するところ,このZ1の供述も,全体として,具体的かつ詳 細であり,特段不自然,不合理な点はない上,前記各支払等の事実については,Z1が前記任務中に作成していたという各月別の支払明細表やU1が服役している刑務所の領置金収受簿による裏付けもあるから信用でき,その供述するとおりの事実が認められる。 エ小括そうすると,U1及びU2はいずれも,本件後甲1會内で昇格を果たしており,本件に関与したことで甲1連合あるいは甲1會内で処分を受けていないことがうかがわれる(なお,関係証拠によれば,U3も四代目甲1會発足時に,U1,U2とともに甲1會の直轄組長に昇格したことが認められる。)ばかりか,かえって,甲1會及び甲2組により,同事件で服役中の両名のために少なくない額の現金が積み立てられ,U1に対しては服役する刑務所に多額の現金が差し入れられるなどしているのであって,これらのことは,甲1會が組織として,その組員であるU1及びU2が本件犯行に関与したことを肯定的に捉えていることを推測させる事情といえる。 これに対し,弁護人は,U1,U2,U3の いるのであって,これらのことは,甲1會が組織として,その組員であるU1及びU2が本件犯行に関与したことを肯定的に捉えていることを推測させる事情といえる。 これに対し,弁護人は,U1,U2,U3の地位が昇格したといっても,被告人Xが四代目甲1會を継承したときに,甲2組の幹部組員を甲1會の直轄にしたというだけのことであるとか,甲2組がU1らに対して金銭を差し入れていたことは,ヤクザ組織がもともと一種の互助組織としての性格を有していることからすれば何の疑問もない旨主張する。しかし,U1らの地位の昇格については,代目継承に伴う措置という面があるにせよ,これらの者が本件犯行に関与したことを甲1會が否定的に捉えていないことは明らかである。U1らへの金銭差し入れについても,全ての服役者に対して行われているものではないし,とりわけU1に対しては多額の金銭が差し入れられるなどしていることから,本件との関連性が認められる。弁護人の主張は理由がない。 ⑶ 甲1會幹部によるc6に対する口裏合わせの依頼ア c6の供述についてc6は,検察官調書において,要旨,以下の内容の供述をしている。 平成14年に,U1らが本件で逮捕されると,現在は甲1會丙11 組組長のZ11 が私のところにやってきて,「頼むけん,無期懲役か無罪か,かかっているので,時間をずらしてほしい。」と,U1とZ2がp2にいた時間をずらすうその供述をするよう頼んできた。当時,甲1會は甲2組一色の時代であったことから,正式な組員ではなく甲3一家の残党という立場の私は,甲2組初代組長であったZ12 の子分であるZ11 の頼みを断ることができず,それを受け入れることとして,Z11 と一緒に,北九州市s1区のc16 弁護士の事務所に行った。同事務所に着くと個室に案内され,c16 あったZ12 の子分であるZ11 の頼みを断ることができず,それを受け入れることとして,Z11 と一緒に,北九州市s1区のc16 弁護士の事務所に行った。同事務所に着くと個室に案内され,c16 弁護士が,既に文字が印刷されていた紙に署名をするよう言ってきたので,私は内容を見ずにその紙に自分の名前を書いた。 c6は,Z11 の依頼を断れなかった諸事情やc16 弁護士の事務所の様子等について,具体的なエピソードを交えるなどして述べているところ,c16 弁護士とc6との間のトラブルなど,c16 弁護士がc6から恨みを買うような事情はなく,c6があえてうそを言う理由は見当たらない。なお,c6の検察官調書の作成状況に関し,供述の信用性に不当な影響を及ぼすような事情がうかがわれないことは前述したとおりである。そうすると,c6の前記供述には十分な信用性が認められる。 イ c16 弁護士の供述について他方,c16 弁護士は,公判で,要旨,以下のとおり供述している。 私は,本件に関し,U1,U2らの弁護を担当していた。U1が,p2のマスター(c6)はいつも午後8時頃風呂に行くが,事件当日,自分はマスターが風呂に行くか帰って来た頃にp2を出たと述べるので,その事実を確認するために,平成18年5月の第1審判決後にc6と電話で連絡を取り,同年8月下旬頃,c6に事務所に来てもらったことがある。c6は,午後6時半か午後7時頃に甲1會のZ11と一緒に来訪し,「事務所の場所が分からなかったので,昔からの友達のZ11 さんに案内してもらいました。」と述べていた。私は,Z11 を事務所の待合スペースで待たせ,c6と二人で相談室で話すこととし,c6に対して,普段風呂に行くのか,風呂に行く時間は決まっているのか,それは何時頃なのかなどと質問をしたが,c 1 を事務所の待合スペースで待たせ,c6と二人で相談室で話すこととし,c6に対して,普段風呂に行くのか,風呂に行く時間は決まっているのか,それは何時頃なのかなどと質問をしたが,c 6の回答は,風呂には行くが,時間ははっきりしないなどというものだった。c6が事務所にいたのは15分かもう少し長いくらいだったが,c6に対して,文書に署名押印するよう求めた事実はない。その後,c6はZ11 と一緒に帰ったと思う。 c16 弁護士の供述によれば,Z11 と一緒に事務所に来訪したc6は,昔からの友達のZ11 に道案内をしてもらった旨述べたというのであるが,Z11 は,同事務所でc6の聴取が終わるまで待っていて,c6と一緒に帰っており,単なる道案内のためにZ11 が同道したのかは甚だ疑わしい。c16 弁護士が,被告人Yら甲1會幹部に対し,c6がU1らの控訴審における重要な証人になり得る旨の説明をしていることや,Z11 の甲1會内での地位も考慮すると,前記の疑念は一層大きいものとなる。 むしろ,Z11 がc6に同道してc16 弁護士の事務所を来訪している事実自体が,c6供述の信用性を支える外形的事情といえる。弁護人は,c16 供述が信用できることは,U1らの控訴審において,c6の供述に関する何らの書面も弁護側から請求されていないという事実によって極めて明白である旨主張するが,c6による書面が作成されていてもこれを請求するかどうかはその証拠価値等を踏まえた判断によるのであり,当該書面が請求されていないからといってc6供述が当然に虚偽であるということにはならない。結局,c16 弁護士の供述は,c6供述に比して信用性に乏しいといわざるを得ない。 ウ小括以上のとおり,c6供述によれば,U1らに対する本件の裁判が係属している最中,Z11 とにはならない。結局,c16 弁護士の供述は,c6供述に比して信用性に乏しいといわざるを得ない。 ウ小括以上のとおり,c6供述によれば,U1らに対する本件の裁判が係属している最中,Z11 からc6に対し,U1とZ2がp2にいた時刻をずらすようにとの口裏合わせの依頼がなされ,c16 弁護士の事務所において,その口裏合わせの内容に沿ったものと推察される文書にc6が署名をした事実が認められる。 Z11 は,甲1會甲2組時代の初代甲2組組長であったZ12 の子分で,本件当時は甲1連合組織委員長,平成12年の四代目甲1會発足当時は甲1會執行部総本部長を務めた人物であると認められる。このような初代甲2組からの古参組員で甲1會の幹部組員であったZ11 が,U1の本件への関与について重要な供述をしているc 6に対し,口裏合わせを依頼していることからは,甲1會の幹部らが,本件について,U1が甲2組の単なる一組員として起こした事件ではなく,その刑事裁判の帰趨が甲1會や甲2組の組織に対して大きな影響を及ぼし得る事件であると認識していたことを推認させる。 7 結論⑴ 被告人両名の本件犯行への関与以上で認定したとおり,本件犯行の実行犯の一人は甲2組若頭補佐のU1であったこと,本件の犯行使用車両(本件サニー)の調達は甲2組行動隊長のU2や,甲2組本部長のU3といった甲2組の幹部組員が関与して行われ,本件の3日後にはU2,U3に甲2組若頭の被告人Yも加わって同車両の処理等に関して協議が行われたことがうかがわれること,本件後に初めて開かれた甲2組の定例会において,被告人Yが甲2組組員らに対して本件についてかん口令を敷いたこと,U1に対する本件に関する刑事裁判が係属中に,甲1會幹部のZ11 がc6に対し,U1のアリバイに関して口裏合わ 2組の定例会において,被告人Yが甲2組組員らに対して本件についてかん口令を敷いたこと,U1に対する本件に関する刑事裁判が係属中に,甲1會幹部のZ11 がc6に対し,U1のアリバイに関して口裏合わせを依頼したこと,本件で服役したU1やU2のために甲1會及び甲2組により少なくない額の現金が積み立てられ,U1に対しては多額の差し入れ等がされていることなど,関係証拠上認められる諸々の事情に照らすと,本件が甲2組の幹部を含む甲1連合の組員らにより組織的に敢行された犯行であることは明らかである。 そして,本件当時甲2組序列1位,2位の組長及び若頭であった被告人両名がQ一族の利権に重大な関心を抱き,平成9年以降,甲2組の幹部組員や甲1連合の組員がQ1,Q2及びR1に執ように利権交際を求めたものの,これをQ1らに拒絶され,同年11月には,被告人Xが,Q一族がいる限り,北九州地区の砂利事業,すなわち港湾建設工事等に関する利権に食い込むことは困難であるとの認識を示す中で本件が起こっているところ,とりわけ被告人Xには,Q一族へ圧力をかけて利権交際要求を成功させるため,本件犯行を行う動機が十分にあった。また,被告人Yは,本件の約3か月後,自らQ2に甲1連合との利権交際を要求している。 さらに,甲1連合の先代総長と親密な交際をしていたQ1を殺害するという決断を被告人Xの配下の組員が独断で行うことができるとは考え難いこと,甲1連合ひいては甲2組は厳格な統制がなされる暴力団組織であって,本件犯行の実行や犯行使用車両の調達等で重要な役割を果たしたU1,U2,U3らは,互いに指示をしたり,従ったりという関係にはなく,これらの者にいずれも犯行を指示できる組織の上位者としては,甲1連合若頭であり甲2組組長の被告人Xと,被告人Xの意向を受けた同組若頭 U2,U3らは,互いに指示をしたり,従ったりという関係にはなく,これらの者にいずれも犯行を指示できる組織の上位者としては,甲1連合若頭であり甲2組組長の被告人Xと,被告人Xの意向を受けた同組若頭の被告人Yがまず想定されるところ,とりわけU1については,被告人Xを尊敬し,被告人Xに対する忠誠心を抱いていた者であり,その指示ないし意向により本件犯行を実行したとしても何ら不自然ではないこと,被告人Xが,自ら同組の若頭に抜てきし,その後同組組長の地位を承継させるほど信頼を厚く置いていた同組若頭(序列2位)の被告人Yを飛ばして,同組本部長(序列3位)のU3以下の甲2組組員に対して,直接本件犯行に関する指示を行い,あるいは本件犯行に及ぶことを承認するとは考え難いことなども総合すると,本件犯行に被告人両名の関与がなかったとは到底考えられず,これに一切関与していない旨を述べる被告人両名の各供述は信用できない。 以上検討したところによれば,被告人Xは,本件犯行に首謀者として関与し,被告人Y以下の甲2組組員らに犯行を指示したものと認められ,被告人両名が,判示第1の各共犯者(U1,U2,U3のほか,U1以外の氏名不詳の実行犯の一人等)と本件犯行を共謀した事実が優に認められる。 ⑵ Z7の関与が認められないことなお,検察官は,Z7も本件犯行に深く関与した共犯者であると主張し,その根拠として,①U2が,本件犯行後,c3と一緒に飲んでいるときに,電話で「Z7をどこか別の場所に移さないかんのじゃないですかね。」などと言ったこと,②U2が,本件犯行の約4か月後,c3と共に北九州市s3区内のガソリンスタンドに行った際,同所に来ていたZ7に対し,同行していたc3の面前で,「こんなところにおって大丈夫なんか。」「北九州にはおれんめいもん。」などと言い,Z7が「大丈夫 共に北九州市s3区内のガソリンスタンドに行った際,同所に来ていたZ7に対し,同行していたc3の面前で,「こんなところにおって大丈夫なんか。」「北九州にはおれんめいもん。」などと言い,Z7が「大丈夫 です。」などと答えたところ,「今話さん方がいいやろう。気を付けれよ。今が一番大切なときやけの。」と言葉を掛けたことの2点を挙げる。 しかし,U2が述べている,Z7が別の場所に移動する必要性や北九州にはいられない理由が,Z7が本件犯行に関与したことによるものであるか否かは証拠上不明であり,別の事件であった可能性は否定できない。また,U2がc3の面前で前記①②の各発言をしたこと自体から,Z7が本件犯行に深く関与しているなどと合理的に推認することもできず,他にZ7が本件犯行に関与していることをうかがわせる証拠はないから,この点の検察官の主張は採用できない。 8 公訴権濫用の主張について弁護人は,被告人両名に対する本件の起訴は,明らかに嫌疑が不十分であるにもかかわらず,甲1會組員らに対する被告人両名の影響力を遮断したいとか,甲1會の組織を壊滅に持ち込みたいといった政策的目的に基づいて,検察官が強引に起訴したものであり,客観的な訴追裁量を逸脱し,職権濫用の故意も認められ,公訴権を濫用した極めて不当かつ違法な起訴であるから,本件公訴は無効であり,公訴が棄却されるべきである旨主張する。 しかしながら,検察官は公訴の提起をするかしないかについて広範な訴追裁量権を有しており,その裁量権の逸脱によって公訴の提起が無効になるのは,例えば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られると解されるところ(最高裁昭和55年12月17日第一小法廷決定・刑集34巻7号672頁参照),既に検討したとおり,本件については,被告人両名に殺人 自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られると解されるところ(最高裁昭和55年12月17日第一小法廷決定・刑集34巻7号672頁参照),既に検討したとおり,本件については,被告人両名に殺人,銃刀法違反の罪が成立するのであって,全ての証拠を検討しても,本件の公訴提起自体が職務犯罪を構成するような違法なものであることをうかがわせる事情は何ら見当たらない。弁護人の主張は失当である。 第3 五代目甲1會における被告人Xの立場及び被告人両名の関係性等元警察官事件,看護師事件及び歯科医師事件の3事件については,被告人両名の共謀の有無を検討するに当たり,いずれも,五代目甲1會における被告人Xの立場 及び被告人Xと被告人Yの関係性等が問題になることから,これら3事件についての判断に先立ち,この点をまず検討することとする。 1 五代目甲1會における被告人Xの立場平成23年7月に五代目甲1會が発足して,被告人Xが総裁,被告人Yが会長,V1が理事長となった。この五代目甲1會においては,対外的にも組織内においても,総裁の被告人Xが最上位の扱いを受け,これに会長の被告人Y,理事長のV1以下が続く序列が厳格に定められていた。 すなわち,対外的には,他団体の最高幹部も出席した五代目甲1會の継承時の式典の際に,Z6から被告人Xへ四代目が継承された際とは異なり,媒酌人により,被告人Xは引退せず,席改め(被告人Yが上座に席を改めること)もしない旨の宣言がされ,五代目甲1會が他団体に発出した賀状においても,総裁である被告人Xの名前が冒頭に記載され,会長である被告人Yの名前はその次に,理事長であるV1の名前はそれ以降に記載されていた。 甲1會の組織内においても,被告人Xは,五代目甲1會発足後に開催された事始め式(新年会)に出席した際,当代 ,会長である被告人Yの名前はその次に,理事長であるV1の名前はそれ以降に記載されていた。 甲1會の組織内においても,被告人Xは,五代目甲1會発足後に開催された事始め式(新年会)に出席した際,当代会長である被告人Yの前を歩き,幹部組員による被告人両名への挨拶等も,「総裁,会長」と,被告人Xが被告人Yより上位者であることを明示した言い方でなされていた。また,被告人X方は,従前から組員に「本家」と呼ばれて神聖視され,被告人Xが四代目甲1會会長であった時代から,甲1會の様々な二次団体の多数の組員が,24時間交替制の当番を務め,あるいは部屋住みとして被告人Xの身の回りの世話等を行っており,これら部屋住みにかかる費用や,被告人X方の家事手伝いをする家政婦の給料は,五代目甲1會が発足した平成23年頃以降,甲1會の事務局から支出されていた。そして,会長の被告人Yや理事長のV1はほぼ毎日,その他の甲1會の幹部組員も頻繁に,被告人Xに対して朝の挨拶をするためだけの目的で被告人X方を訪れていた。なお,この挨拶の際,被告人Yは,使用車両を被告人X方敷地内に入れていたが,V1はその使用車両を同敷地内には入れず,手前の路上で下車し,走って被告人X方に向かっていた。被 告人X方においても,被告人Yは,被告人Xの私的な空間である2階に上がっていたが,V1が2階に上がることはなかったし,朝2階から階段を降りてくる被告人Xを迎える際には,V1以下の幹部組員は1階廊下に正座して出迎えていたが,被告人Yがそうした出迎えに加わることはなかった。 2 被告人両名の関係性被告人Xは,かねてより被告人Yを高く評価しており,平成2年には三代目甲2組組長として同組の若頭に被告人Yを抜てきし,平成12年1月に自身が四代目甲1會会長となった際には,被告人Yが服役中で 係性被告人Xは,かねてより被告人Yを高く評価しており,平成2年には三代目甲2組組長として同組の若頭に被告人Yを抜てきし,平成12年1月に自身が四代目甲1會会長となった際には,被告人Yが服役中であったことから代替わりすることなく甲2組組長を兼ね,その後,被告人Yの出所を受けて,平成15年2月に被告人Yに代を譲って四代目甲2組組長に就かせるとともに,四代目甲1會理事長に就かせ,その後,平成23年7月の五代目甲1會発足に際しては,被告人Yに代を譲って会長に就かせ,自らは総裁となった。 被告人Yは,三代目甲2組若頭の時代から,被告人X方をほぼ毎朝挨拶のために訪れ,その際には,前述のとおり被告人Xの私的な空間である2階にまで上がるなどしていたほか,月数回程度は被告人Xと電話で話をすることもあり,両名が意思疎通をする機会は十分にあったと認められる。 このように,被告人両名の関係は良好かつ親密であり,被告人Yは,自身を甲1會会長の地位に引き上げた被告人Xを慕うとともに尊敬し,一方,被告人Xも被告人Yのことを信頼していた。 3 五代目甲1會における重要な意思決定の在り方五代目甲1會が厳格な序列の定められた暴力団組織であることを踏まえれば,その当代会長である被告人Yが実権を握り,甲1會の重要事項について意思決定をしていたことが優に推認できる。また,五代目甲1會においては,前記のとおり,対外的にも組織内においても,総裁である被告人Xが最上位の扱いを受けていたところ,組織内において被告人Xが特別な存在として見られていることも考えると,被告人Xは,五代目甲1會内で実質的にも最上位の立場にあり,甲1會の重要事項に ついての意思決定に関与していたことが推認できる。 そして,前記1,2で論じた被告人両名の関係性等,とりわけ,被告人Yを甲 1會内で実質的にも最上位の立場にあり,甲1會の重要事項に ついての意思決定に関与していたことが推認できる。 そして,前記1,2で論じた被告人両名の関係性等,とりわけ,被告人Yを甲1會会長の地位に引き上げたのは被告人Xであり,被告人Yが被告人Xを慕うとともに尊敬し,毎朝被告人X方を訪問して忠誠を示すかのような振る舞いをしていることを踏まえると,被告人Yが総裁である被告人Xの意向を確認せず,独断で重要な意思決定をしたりすることは考え難い。一方,被告人Xも,当代会長であり,信頼を寄せている被告人Yの意向を無視して重要な意思決定をするとは考え難い。 そうすると,五代目甲1會における重要な意思決定は,被告人両名が相互に意思疎通をしながら,最終的には被告人Xの意思により行われていたものと推認するのが合理的である。 4 弁護人の主張についてこれに対し,弁護人は,五代目甲1會発足以降,被告人Xは当代を退いて隠居する総裁という立場にあり,甲1會の運営に一切の権限を有さず,実際にも加わっていなかった,被告人Xが五代目甲1會において序列1位であったことに間違いはないが,それは形式上の序列にすぎない旨主張するので,以下検討する。 前記のとおり,被告人Xは,五代目甲1會内において実質的にも最上位の立場にあり,甲1會の重要事項について意思決定を行っていたと認められるところ,このことを端的に示すエピソードが,①五代目甲1會執行部の慶弔委員長であったZ13が絶縁処分を受けた件と②甲1會の本部事務所の売却の件である。 まず,①の点についてみると,五代目甲1會発足直後である平成23年7月,Z 13 は,被告人両名ら幹部組員と共に他団体へ挨拶に赴いた際,同団体の幹部へ総裁である被告人Xを紹介することを失念したことから,甲1會において最も重い処分であ 甲1會発足直後である平成23年7月,Z 13 は,被告人両名ら幹部組員と共に他団体へ挨拶に赴いた際,同団体の幹部へ総裁である被告人Xを紹介することを失念したことから,甲1會において最も重い処分である絶縁処分を受けた。絶縁処分は執行部名義でなされるのが通例であるが,Z 13 の絶縁処分に際しては,総裁である被告人X名義での絶縁状が作成され,全国の任侠団体に発送された。絶縁処分の原因や,通例とは異なり絶縁状が総裁である被告人X名義で作成・発出されたことに照らすと,当該処分には被告人Xの意向が強 く働いたものと推認される。そして,会長である被告人Yが,被告人Xの意向を汲んでZ13 の絶縁処分を決定し,これを被告人X名義で対外的に告知したものと認められる。 この点,被告人両名は,総裁名義の絶縁状は間違いであり,その後執行部が再通知状を出し直した旨供述する。確かに,五代目甲1會執行部作成名義の絶縁再通知状と題するはがきの存在は認められるが,その題名や,絶縁処分を念のため再通知する旨の記載内容に照らし,当初の絶縁状を撤回したり誤りを訂正したりするものでないことは明らかである。被告人Yが,総裁名義で絶縁状を出すことは全国の指定暴力団のどこもやらない大間違いであると述べる一方で,この絶縁状を送った組員に対する処分はしていない旨述べていることも踏まえると,当初の絶縁状が間違いである旨の被告人両名の供述は信用できない。 次に,②の点についてみると,被告人両名の供述によれば,北九州市s1区s11にあった甲1會本部事務所(甲1会館)の土地及び建物の所有者は有限会社k8であったところ,その代表取締役は,Z5あるいはZ6から被告人Xに引き継がれ,五代目甲1會発足後も被告人Xのままであり,被告人Yはその取締役にすぎなかったこと,令和2年に同本部事 有者は有限会社k8であったところ,その代表取締役は,Z5あるいはZ6から被告人Xに引き継がれ,五代目甲1會発足後も被告人Xのままであり,被告人Yはその取締役にすぎなかったこと,令和2年に同本部事務所が売却された際には,被告人Xが前記k8の代表取締役として売却のための契約書に署名押印したことが認められる。 このように,被告人Xは,五代目甲1會の総裁となって以降も,甲1會執行部の一員である幹部組員の絶縁処分や,甲1會本部事務所という五代目甲1會にとって最重要施設ともいうべき不動産の売却にかかわっており(同本部事務所は被告人Yの一存では法律上売却できなかったものである。),単なる隠居ではなく,甲1會内における実権を依然として有しているといえる。 また,弁護人は,五代目甲1會において具体的な意思決定を行うのは,毎年行われる事始めの際に被告人Yから軍配を貸与された理事長であるV1以下の執行部であり,被告人YがV1に対し甲1會の運営,活動について自分から指示をすることはない旨主張する。 しかしながら,甲1會の通常の運営,活動については,V1以下の執行部に委ねられていたとしても,甲1會の重要事項に関し,同執行部が会長である被告人Yや総裁である被告人Xの意向を無視してこれを判断し,実行するなどということは,甲1會という組織の在りように照らし,考え難い。 弁護人の主張はいずれも理由がない。 第4 元警察官事件について 1 事件の概要及び当裁判所の判断の結論元警察官事件の犯行(以下,元警察官事件の項では,この組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反,銃刀法違反の犯行を「本件犯行」といい,当該事件を「本件」ということがある。)の状況等について,次の事実が証拠上容易に認められる。 罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反,銃刀法違反の犯行を「本件犯行」といい,当該事件を「本件」ということがある。)の状況等について,次の事実が証拠上容易に認められる。 平成24年4月19日午前7時5分頃,元福岡県警察の警察官であるSが通勤のため本件現場に差し掛かると,Sに対向して原動機付自転車(以下「本件原付」という。)で進行してきたV5は,Sから見て左斜め前に至ったところで本件原付を止め,これにまたがり両足を踏ん張った状態で,左側に約90度体をひねりながら,25口径の自動装填式けん銃(以下「本件けん銃」という。)で,自身の左側真横約1.2ないし約1.5メートルの地点を歩行中のSの左大腿部を狙って続けざまに複数回引き金を引いた。V5は,本件原付で更に数メートル進んだところで地面に向けて引き金を引いた後,本件原付で現場から逃走した。Sは,V5の前記銃撃により,約1か月間の入院及び通院加療を要する左股関節内異物残留,左大腿部銃創の傷害を負った。 そして,関係証拠から認定できる事実を総合すれば,実行犯であるV5に殺意が認められるとともに,被告人両名が,判示第2の各共犯者と本件犯行を共謀した事実が認められる。以下,詳述する。 2 実行犯であるV5の殺意等⑴ 本件の犯行態様及びその危険性 ア V5は,25口径の真正けん銃(本件けん銃)を用い,Sに向けて2発発射し,その後,地面に向けて2発発射した旨供述するところ,Sの負傷状況等も踏まえると,Sに命中した弾丸は2発であったと認められる。 すなわち,Sの身体には,左腰部から外側の左大腿にかけて3か所の銃創が生じたところ,1番頭側の傷は,体内の左股関節内(大腿骨骨頭後ろ側)に遺留された弾丸に通じる射入口であることが明らかである。頭側から2番目及 Sの身体には,左腰部から外側の左大腿にかけて3か所の銃創が生じたところ,1番頭側の傷は,体内の左股関節内(大腿骨骨頭後ろ側)に遺留された弾丸に通じる射入口であることが明らかである。頭側から2番目及び3番目の傷は,創洞がいずれも大腿骨の大転子部に通じていること,一般に弾丸の射入口は比較的円形できれいな創ができ,射出口は楕円形ないしは辺縁部に裂創を伴うとされているところ,2番目の傷はほぼ円形で辺縁部が比較的きれいであるのに対し,3番目の傷は斜めに楕円形になっていて辺縁部に裂創があることからすると,弾丸が2番目の傷(射入口)から入り,大腿骨の大転子部に当たって跳ね返り,3番目の傷(射出口)から体外に排出されたと認められる。以上の事実は,搬送先病院の医師2名及び法医学専門の教授の各供述のほか,Sの搬送先病院において本件当日に撮影されたSの負傷部位の写真,CT画像及び同病院のカルテから認定したが,これらの医師や法医学の教授の各供述は,それぞれの専門的な知識,経験に基づき,Sの負傷部位の写真やCT画像を確認し,医師2名については更に実際にSの負傷部位を確認した体験事実に基づき供述しているものであり,その供述内容に不自然,不合理な点はないから,前記医師及び教授の各供述の信用性は十分に認められる。 そして,現場に残された打殻薬きょうは3個であることからすると,V5が発射した弾丸は合計3発であったと認められるから(なお,科捜研職員のb12 も,前記打殻薬きょう3個が同一銃器から発射されたものと判断される旨の鑑定を行っており,その信用性に疑いはない,V5はSに向けて弾丸2発を発射してこれらを命中させた後,更に二,三メートル進んでから地面に向けて弾丸1発を発射したと認められる。Sは,別の被告人の公判において,けん銃で撃たれたときに銃声が合計3発聞こえた旨 けて弾丸2発を発射してこれらを命中させた後,更に二,三メートル進んでから地面に向けて弾丸1発を発射したと認められる。Sは,別の被告人の公判において,けん銃で撃たれたときに銃声が合計3発聞こえた旨供述するところ,前記の認定は,Sの供述とも整合する。なお,V5は前記のとおり地面に向けても2発発射した旨供述するが,この点のV5供述は現 場に残された打殻薬きょうの数と矛盾する上,V5が地面に向けて発砲したのは,Sを銃撃した後直ちにその場から逃走するという短時間の緊迫した状況下での出来事であり,V5がV2の指示であると認識していた内容と実際に発射した回数とで記憶を混同させている可能性も否定できないことから,V5供述のうち地面に発射した回数の部分は信用できない。 この点,弁護人は,V5がSの大腿部を狙って実際に発射した2発の弾丸のうち1発はかろうじて大腿内部に射入したが,もう1発は着衣のすべてに穴を開けて大腿部表面に着弾したものの,威力が弱くて弾き飛ばされ,V5が地面に向けて発射した弾丸1発が跳弾となってSの大腿部に当たり,背広ズボンとカッターシャツに穴を開けたものの,トランクスと肌着シャツを貫通することができず,トランクスの上から大腿部の表皮に挫創をつけて跳ね飛ばされたと主張する。そして,弁護人は,このように考えないと,Sのトランクスと肌着シャツに弾丸が通過したと思われる穴がそれぞれ2か所しか開いていないこと,トランクスの一番下の部位に弾丸が外から当たった際に出来た圧痕と見られる白い窪んだ跡(しかも,その裏の部分には皮膚片と見られるものが付着している。)がつけられており,その下の部位に血痕が広がっていること,他方で,Sの背広ズボンやカッターシャツにはそれぞれ3か所の穴が開いていることが合理的に説明できないとし,看護師甲319 ものが付着している。)がつけられており,その下の部位に血痕が広がっていること,他方で,Sの背広ズボンやカッターシャツにはそれぞれ3か所の穴が開いていることが合理的に説明できないとし,看護師甲319号証のカルテに,「左大腿骨大転子部付近に2箇所射入口らしき挫創あり」「射出口なし」「大転子部の挫創については,体内を通過した痕跡ないため,射入せずはねとばされた際の創と思われる」と明記されているのは,H医師やL医師がSを診察した当時の見解は,大転子部の2か所の挫創は,弾丸が当たって跳ね飛ばされた際に出来た傷であるというものであったことは疑う余地がないと主張する。 しかし,Sの治療を行ったL医師が,頭から2番目,3番目の傷の創洞がいずれも大転子部につながっていることを確認している旨公判で明言していることから,3発の弾丸がSに命中した可能性は否定される。弁護人の主張を前提とすると,同じけん銃からSに向けて発射された2発の弾丸のうち,1発の弾丸は大腿内部に進 入し骨に当たって反転するほどの威力がありながら,もう1発の弾丸は体表で跳ね返される威力しかなかったということになり,それ自体が不合理である。Sの着衣の穴の数についても,Sが銃撃された際にトランクスと肌着シャツがよれるなどしていたとすれば説明が可能であるし,トランクスの一番下の部位にある白い跡についても,何らかの液体が乾いた跡のようには見えるが,弾丸が外から当たった際に出来た圧痕であるなどといえるかは疑問であり,V5が発射した弾丸が3発ともSに命中したことを根拠付けるものではない。また,カルテの記載についても,これを記載したH医師の供述によれば,救急搬送当時の限られた情報から推定した記載である上,同医師に銃創を治療した経験がないために不正確な表現になってしまったものと認められ ,カルテの記載についても,これを記載したH医師の供述によれば,救急搬送当時の限られた情報から推定した記載である上,同医師に銃創を治療した経験がないために不正確な表現になってしまったものと認められるから,弁護人の主張の裏付けとはならない。弁護人の主張は失当である。 イ本件の犯行態様は,前記アのとおり,けん銃を用いてSの身体の枢要部に近い部位に2発の弾丸を撃ち込むというものであったところ,このうち弾丸1発は,Sの左腰部からやや下向きに射入して左大腿骨に当たり,反転して,骨頭裏の,大腿動脈から水平距離でわずか約7センチメートルの位置に達している。V5が本件犯行に用いたけん銃(本件けん銃)は,25口径と比較的小型のものであったが,真正けん銃であり,人を殺傷する能力を十分備えたものであることは常識的に明らかであって,現に,V5がSに向けて至近距離で前記けん銃を発射することにより,弾丸が,背広などの着衣を突き破ってSの体内に進入し,大腿骨に当たって反転して停止するまで進行するほどの威力があるものであった(なお,弁護人は,投棄場所から発見された本件けん銃の弾倉に装填されていた未使用の実包2発のうち1発は雷管不良のために発射能力がなく,残りの1発は単位断面積あたりの活力が16J/㎠で殺傷能力がなかったとし,V2がV5に渡した弾丸は発射能力がないか,あるいは殺傷能力に劣る粗悪品であった旨主張するが,現にSの体内に2発の弾丸が進入しているのであるし,後日発見された未使用の実包2発についても,V5により川に投棄され,水中に数年間放置されていたことを考えると,それらが発射能 力を欠くなどしていた事実により,本件けん銃及びこれから発射された弾丸の殺傷能力が否定されることにはならない。)。したがって,銃口の向きがわずかにそれたり,Sが少し れらが発射能 力を欠くなどしていた事実により,本件けん銃及びこれから発射された弾丸の殺傷能力が否定されることにはならない。)。したがって,銃口の向きがわずかにそれたり,Sが少し身体を動かしたりすれば,弾丸が大腿動脈や重要な臓器を損傷し,早期に大量出血して出血性ショック等により死に至る可能性は十分にあったと認められる。なお,Sは,病院搬入時には生命に危険がない状態であったが,これは,結果として弾丸が動脈等を損傷しなかったからにすぎず,V5の銃撃行為がSを死亡させる危険性の高いものであったことに疑いはない。 ウ V5がSを銃撃した態様は,前記のとおり,本件原付にまたがり両足を踏ん張った状態で,左側に90度ぐらい体をひねりながら,歩行中のSの大腿部という動いている標的に一瞬で狙いを定めて射撃するというものであったところ,V5とSとの距離が約1.2メートルないし約1.5メートルであったことや,V5が用いたけん銃が25口径と発射時の反動が比較的少ないものであったことを踏まえても,射撃方法として非常に難易度の高いものであったと考えられる(福岡県警察の警察官で,拳銃教師・拳銃師範として,長年にわたり同警察の警察官に対してけん銃射撃の訓練指導を行っているb19 も,そのような射撃方法の命中精度はかなり悪いと思うとの意見を述べている。)。そして,このことは,着弾部位をより不安定にさせ,結果としてSを死亡させる危険性を一層高める事情といえ,実行犯のV5自身,Sの太腿(股関節より下で膝より上)を狙ったが,歩行中のSの上下運動により,着弾部位がずれた可能性があることを認める供述をしている。 ⑵ V5の殺意以上⑴の検討によれば,V5の銃撃行為がSを死亡させる危険性の高い行為であったことは明らかであり,V5はその危険性を基礎づける事実を十 れた可能性があることを認める供述をしている。 ⑵ V5の殺意以上⑴の検討によれば,V5の銃撃行為がSを死亡させる危険性の高い行為であったことは明らかであり,V5はその危険性を基礎づける事実を十分認識していたと認められる。すなわち,V5は,人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かって本件犯行を行ったといえるから,V5には,Sに対する少なくとも未必的な殺意があったと認められる。 この点,弁護人は,V5は,海外の射撃場でけん銃射撃の経験を積み,射撃の腕 前に自信を持っていたところ,そのV5が,至近距離から,V2の指示どおりSの左大腿部を狙ってけん銃を発射し,おおむねV5の狙った部位に弾丸が命中しているのであるから,V5にはS殺害の意図がなかったばかりか,Sの死という結果が発生する可能性の認識もなかったと主張する。 しかし,いずれにせよ,V5は,Sの身体の枢要部に近い部位に真正けん銃で弾丸を撃ち込むという危険な態様であること,つまり,常識的に見てSが死に至る危険性が高い行為であることを十分に認識しながらこれを実行していると認められる以上,弁護人指摘の各事情をもって,V5に少なくとも未必的な殺意があったとの前記認定は左右されない。 ⑶ 他の共犯者らの犯意ア V2及びその上位者の殺意弁護人は,V5に銃撃の指示をしたV2についても殺意はなかったとして,次のとおり主張する。 すなわち,V2は,V5に対して銃撃の指示をする際,「足元を2発撃て。それが無理だったら地面に向かって撃て。」と述べ,その際,Sの足の爪先を狙えという仕草をしていたのであり,爪先を狙ってけん銃を発射してもSの生命に危険が及ぶことはあり得ないし,V2にとって,けん銃射撃に熟達したV5が誤ってSの身体の枢要部に弾丸を命中させることは考えられ という仕草をしていたのであり,爪先を狙ってけん銃を発射してもSの生命に危険が及ぶことはあり得ないし,V2にとって,けん銃射撃に熟達したV5が誤ってSの身体の枢要部に弾丸を命中させることは考えられないことであり,しかも,V2は,V5に対して,足元を撃つのが無理であれば地面に向かって撃てとまで念を入れて指示しているのであって,そのような指示をしたV2に,V5のけん銃発射によってSの生命に危険が及ぶ可能性があるとの認識があったとは到底認められない,というのである。 この点に関し,V5は,V2から,Sの爪先の方を撃つようにとの指示を受けたが,爪先の方は狙いにくいと思ったので太腿を狙うと返答したところ,V2は「ああ」とか「うう」とかいう言葉を言っていた旨供述しており,このV5の供述の信用性を疑うべき事情はない。そうすると,V2は,爪先を狙うようV5に指示した ものの,V5から太腿を狙う旨の返答を受けてこれを承諾したものと認められる。 結局のところ,V2は,V5が,けん銃というそれ自体殺傷能力の高い凶器を用い,Sの太腿という身体の枢要部に近い部位を狙って狙撃することを容認していたことになるから,V2についても,少なくとも未必的な殺意があったと認められる。弁護人は,V2があえて殺傷能力の低い25口径の本件けん銃を入手してV5に渡したことなどをもって,V2に殺意がないことを示す事情であるとも主張するが,失当である。 また,後述のとおり,本件犯行には甲1會内におけるV2の上位者の関与も認められるところ,狙う場所を爪先から太腿に変更することについて特段V2が異を唱えなかったことなどからすると,Sの身体のどの部分を狙って銃撃するかといった犯行態様の詳細については,統括役のV2以下の判断に委ねられていたと考えられ,そのことからすれば,S ついて特段V2が異を唱えなかったことなどからすると,Sの身体のどの部分を狙って銃撃するかといった犯行態様の詳細については,統括役のV2以下の判断に委ねられていたと考えられ,そのことからすれば,Sを銃撃することを容認していたV2の上位者にもSに対する少なくとも未必的な殺意があったことが推認できる。 イ V3の犯意後記のとおり,V3は,本件犯行後,実行犯であるV5が着用していた衣服等やヘルメットを処分しているところ,V2から荷物の処分を依頼されたのは本件後であるとして,犯意を否定する供述をしている。 この点,V2は,検察官調書において,要旨,本件の前日か前々日くらいに,V3に,「s12(丙12 組事務所)にバッグに入った荷物が来たら,跡形もなく処分しとって。分からんかったら,V6に聞いて。」と頼んだ,本件当日には,V3に,電話か本家(被告人X方)で直接,「s12 にバッグが置いてあるから処分しとって。」と頼んだところ,V3は「わかりました。」と言っていた旨の供述をしている。このV2の供述の信用性を否定すべき事情はなく,同供述によれば,V3は,本件犯行に先立ち,甲2組の上位者であるV2から,後日丙12 組事務所に運ばれてくるバッグに入った荷物を処分するよう依頼されていたと認められる。甲1連合ないし甲1會におけるV3の経歴にも照らすと,V3は,V2の依頼がけん銃等を用いて人を 殺傷することを含む重大な事件の証拠隠滅工作であることを十分に理解していたと推認でき,V3の犯意は優に認められる。 弁護人は,V2の前記供述のうち,事件に先立ってV3に荷物の処分を依頼していたとする部分について,検察官の誘導によって意図的に歪められた供述であって正確性を欠き,証拠能力も欠く旨主張するが,当裁判所がV2の前記検察官調書の採否に当たり 先立ってV3に荷物の処分を依頼していたとする部分について,検察官の誘導によって意図的に歪められた供述であって正確性を欠き,証拠能力も欠く旨主張するが,当裁判所がV2の前記検察官調書の採否に当たり,検察官から提示を受けて内容を確認した同調書作成時の取調べ状況を録音録画した記録媒体には,検察官が,V2に対し,V3への荷物の処分の依頼時期を何度か確認し,これにV2が自発的に答えた内容がそのまま同調書に録取される状況が記録されており,弁護人のいうような疑いはない。 3 本件犯行の共謀について(組織的犯罪処罰法違反の要件該当性を含む。)⑴ 甲1會甲2組組員らによる本件犯行の準備,実行及び犯行後の状況関係証拠によれば,以下のアないしウの事実が認められる。 ア犯行準備状況平成24年3月末から同年4月初め頃,甲1會幹事兼甲2組組員であるV7及び同V9は,甲1會上席専務理事兼甲2組若頭兼甲2組内丙13 組組長であるV2の指示を受けて,S方から出てくる人物や車両を監視するなどしていたが,なかなかSの姿を確認できないでいたところ,同月中旬頃,Sが通勤の際用いていたh2駅付近において,甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐のV4からSの容貌を教えられた。 V7及びV9は,その後,V2の指示により,単独で又は共同して,S方付近に繰り返し赴き,Sの行動を監視して,S方からの出勤や帰宅の方法,経路及び時間帯等を調べるなどして,随時これをV2に報告した。 V2は,同月17日頃,甲1會専務理事兼甲2組組長付であるV5をV4運転の車両で案内しながら,V5に対し,バイクを運転して現場まで行き,ある人物を襲撃することを指示し,バイクに乗車する場所,襲撃場所及び逃走経路等を教示すると,同月18日頃,V5に対し,本件けん銃及び連絡用の携帯電話1台を渡した上,本件けん銃でSと て現場まで行き,ある人物を襲撃することを指示し,バイクに乗車する場所,襲撃場所及び逃走経路等を教示すると,同月18日頃,V5に対し,本件けん銃及び連絡用の携帯電話1台を渡した上,本件けん銃でSという元警察官を銃撃するよう指示した。また,V2は,同月17 日又は同月18日頃,甲1會専務理事兼甲2組筆頭若頭補佐兼甲2組内丙12 組組長であるV3に対し,実行役が犯行時に使用した着衣やヘルメット等を犯行後に処分するよう指示した。さらに,V2は,同日頃,甲1會理事兼甲2組組員であるV6や甲1會幹事兼甲2組組員のV8に対し,犯行前後における実行役のV5の送迎や,犯行後における犯行に使用したバイクの投棄を指示した上,V6及びV8を案内して,V5との合流場所やバイクの投棄場所を教示した。加えて,V2は,V7に対し,犯行当日の朝にS方付近に待機し,Sが通過するのを確認したら,指定された電話番号に電話をかけた後,V8を迎えに行くことと,バイクを調達することを指示した。これを受けて,V7は,V6と共に,同月19日未明,北九州市s2区内の団地で本件原付を窃取し,V2から指示された本件現場付近の駐車場に隠匿した。 イ犯行状況等同月19日早朝,V6及びV8は,V6の普通乗用自動車で丙12 組事務所を出発し,前記合流場所でV5を後部座席に乗車させた。V5は,同車内に用意された作業着等に着替え,本件原付が用意された前記駐車場で降車すると,用意されていたフルフェイスのヘルメットを被って本件原付に乗り,本件現場付近で待機した。一方,V7は,V2の指示どおり,Sの通勤経路が見渡せる地点で待機し,同日午前7時5分頃,Sが徒歩でh2駅に向かう姿を認めると,自身の携帯電話からV5が持つ連絡用の携帯電話に合図の電話をかけた。V5は,V7からの電話を受けると り,Sの通勤経路が見渡せる地点で待機し,同日午前7時5分頃,Sが徒歩でh2駅に向かう姿を認めると,自身の携帯電話からV5が持つ連絡用の携帯電話に合図の電話をかけた。V5は,V7からの電話を受けると,本件原付を発進させ,徒歩で対向進行して来たSに近づき,本件犯行に及んだ。 ウ犯行後の状況本件犯行後,V5は,本件原付で現場から逃走し,本件けん銃を川に投棄した後,V8及びV6と合流した。そして,V5は,着用していたヘルメットと本件原付をV8に渡すと,V6が運転する自動車に乗り換え,その車中で本件犯行時に着用していた靴,手袋,作業着の上下等をボストンバッグに詰め,これを車内に残して自宅近くで降車した。V6は,V5が車中に残した前記作業着等の入ったボストンバッグを丙12 組事務所に持参し,甲1會幹事兼甲2組組員兼甲2組内丙12 組組員の Z14 に渡した。V3は,丙12 組事務所で,Z14 から,V6が持ってきた荷物がある旨告げられ,Z14 と共にs13 の海岸を訪れ,前記ボストンバッグとその中身を焼却処分した。一方,V8は,本件原付を用水路に捨てて処分した後,V5から受け取った前記ヘルメットを,V8を迎えに来たV7運転の車に持ち込み,その後,V7が同ヘルメットを丙13 組事務所に置いた。V3は,Z14 を介して丙13 組事務所にあった同ヘルメットを受け取ると,Z14 と共にs14 の海岸を訪れ,同ヘルメットを焼却処分した。 ⑵ V1の本件犯行への関与ア本件の約1年前にV1が自らS方の視察をしたこと関係証拠によれば,平成23年3月中旬頃の夕方,Sが自宅玄関のところにいると,S方前の道路を人が歩くのと同程度の速度で通過していく車両があったこと,Sが同車両のフィルムが貼られた窓越しに車内の様子を見たところ,助手席側後 23年3月中旬頃の夕方,Sが自宅玄関のところにいると,S方前の道路を人が歩くのと同程度の速度で通過していく車両があったこと,Sが同車両のフィルムが貼られた窓越しに車内の様子を見たところ,助手席側後部座席に乗車した人物がカメラか携帯電話のようなものを右手に持っているのが見えたこと,Sが自宅から外に出ると同車両が急加速して離れて行ったこと,SはV1との面識を有していたが,助手席側後部座席にいた人物の髪の毛や顔の形の特徴から,当該人物がV1ではないかと思い,同車両のナンバーを確認し,同僚の警察官Iに電話で問い合わせたところ,同ナンバーがV1の使用車両(ワゴン車)として捜査機関に把握されていたことが認められる。これらの事実に加え,五代目甲2組組長となっていたV1の組長付を平成24年2月以降務めたAが,V1の使用車両はアルファードであり,着席位置は助手席の後の席と決まっていた旨供述していることも踏まえると,車両内でカメラか携帯電話のようなものを右手に持っていたという前記人物は,V1であったと推認できる。 V1の車両内での行動に加え,Sが近づいたところ同車両が急加速して離れて行ったこと,S方は住宅街にある上,S方前の道路の幅員は狭く,この道路が周辺の幹線道路に通じるう回路として用いられることは想定しにくいことからすると,V1は,本件の約1年前に,何らかの意図をもってS方前を訪れ,S方の視察をした ものと認められる。 イ V1がV2を介してV5に対し,本件犯行の報酬を渡したことV2の指示を受けて実行役を担ったV5は,本件犯行後の事情等について,要旨,以下のとおり供述する。 本件当時,私は,甲2組においてV1組長の組長付の役職にあり,その仕事として,組長に随行する際,かばんに入った組長の財布を預かり,朝夕2回,その中身の金額 について,要旨,以下のとおり供述する。 本件当時,私は,甲2組においてV1組長の組長付の役職にあり,その仕事として,組長に随行する際,かばんに入った組長の財布を預かり,朝夕2回,その中身の金額を確認し,収支を記録していた。本件から2週間くらい経った頃,私は,組長付の仕事で甲2組本部事務所にいた。2階のリビングで待機していると,V2が,組長と一緒にいた会議室から出てきて,私を2階のキッチンへ呼び,茶封筒を渡してきた。私は,茶封筒の中身が本件犯行を実行したことに対するお金であると思い,「こんなんもらうためにやったんじゃありません。」と言って返したが,V2が「いいから取っておけ。」と言って胸ポケットの中に茶封筒を入れてきたので,そのまま受け取った。後で確認すると,茶封筒には現金50万円が入っていた。茶封筒の中の50万円を見たとき,その茶封筒をもらう20分くらい前に組長の財布の中の現金の収支を確認した際,ちょうど50万円がなくなっていたということに思い当たった。 以上のV5の供述は,具体的かつ詳細である上,全体としてみても,特段不自然,不合理な点はないから信用に値し,供述するとおりの事実があったと認められる。 そして,茶封筒を授受した際のV2とV5の会話からすると,その中身の現金50万円は,本件犯行の実行役としての報酬であったと考えられる。このことに,V2がV1も在室していた会議室から出てきてV5に現金を渡したことや,その直前にV1の財布から50万円が減っていたことを踏まえると,V1が,V2を介して,V5に対し,本件の実行役を担った報酬として現金50万円を渡したものと認められる。 ウ小括既に述べたとおり,本件犯行は,甲2組若頭のV2以下,複数の甲2組幹部を始 めとする多くの甲2組組員が関与し,役割を分担した上で実 50万円を渡したものと認められる。 ウ小括既に述べたとおり,本件犯行は,甲2組若頭のV2以下,複数の甲2組幹部を始 めとする多くの甲2組組員が関与し,役割を分担した上で実行されたものであるところ,そのこと自体から,甲2組序列1位の組長であるV1もまた,本件犯行の共謀に加わり,その実行を指示したことが強く推認される。 V1が,本件犯行の約1年前に自らS方の視察をし(前記ア),現に本件犯行はS方近くで敢行されたことや,本件犯行後,V2を介してV5に対し,本件犯行の実行役を担った報酬として50万円を渡したこと(前記イ)も併せ考えると,V1が本件犯行の計画段階からその共謀に加わり,V2に対してS襲撃を指示した事実が認められる。 そして,これまで検討したところによれば,本件犯行には,甲2組序列1位の組長であるV1以下,序列2位の若頭であるV2,筆頭若頭補佐のV3,若頭補佐のV4,組長付のV5といった複数の甲2組幹部を始めとする多くの甲2組組員が関与したこと,それらの組員が,V2の統括の下,Sの行動確認,犯行使用道具等の準備,実行役やその送迎役,犯行使用道具等の処分といった細分化された役割を分担した上で本件犯行が実行されたことが認められ,本件犯行は,甲1會甲2組の指揮命令系統に従って,組織的に準備・遂行されたものであると認められる。 ⑶ 被告人両名の本件犯行への関与ア V1が被告人両名に無断で本件犯行に及ぶとは考え難いこと本件犯行は,V1以下甲1會内の甲2組組員が,組織的に,退職した警察官であるSをけん銃で襲撃した事件である。けん銃は一般市民には通常入手が困難であって,けん銃を用いるという犯行態様自体から,暴力団組織等の犯罪組織の関与が相当程度疑われる上,後述のとおり,本件の被害者であるSは福岡県警察の警察官と ある。けん銃は一般市民には通常入手が困難であって,けん銃を用いるという犯行態様自体から,暴力団組織等の犯罪組織の関与が相当程度疑われる上,後述のとおり,本件の被害者であるSは福岡県警察の警察官として長年甲1會の捜査に従事し,被告人Xを始めとする最高幹部と直接話の出来る数少ない捜査員であったのであるから,Sをけん銃で襲撃すれば,即座に最高幹部を含む甲1會組員の関与が疑われ,弁護人も指摘するとおり,それまでも厳しかった警察の甲1會に対する取締りがより一層強化され,甲1會にとって重大なリスクがあることは容易に想定できる。五代目甲1會における被告人両名の地位・関係性, 重要な意思決定の在り方(前記第3)を考慮すると,このような甲1會全体に重大な影響を及ぼしかねない事件を,V1以下の甲1會甲2組組員が被告人両名に無断で起こすとは到底考え難い。 また,被告人Yは,平成15年の出所直後に四代目甲1會理事長兼甲2組組長になると,その後V1を甲2組若頭とし,平成23年6月にはV1に甲2組の跡目を譲って,五代目甲2組組長に就任させ,同年7月に自らが五代目甲1會会長になると,今度はV1を後任の甲1會理事長とするなど,甲1會及び甲2組の要職にV1を抜てきしており,V1に信頼を寄せ,またかわいがってもいた。このように,被告人Yから厚い信頼を受け,寵愛されていたV1が,甲1會全体,ひいては会長であり,自らを引き上げてくれた被告人Yや更にその上位の総裁である被告人Xにまで捜査の手が及びかねないような本件犯行を,被告人Yに無断で行うとはおよそ考えられない。確かに,V1は,平成20年10月に暴力行為等処罰に関する法律違反の被疑事実で同事件を担当するSに逮捕され,その後20日間勾留されたことがあり,Sに対して悪感情を抱く契機となり得る出来事がなかった 。確かに,V1は,平成20年10月に暴力行為等処罰に関する法律違反の被疑事実で同事件を担当するSに逮捕され,その後20日間勾留されたことがあり,Sに対して悪感情を抱く契機となり得る出来事がなかったとはいえないものの,当該出来事の内容等に照らすと,先に述べたような甲1會全体に重大な影響を及ぼし得る行為を独断で行うまでの強い動機につながるものとはいい難いし,その他にV1にS襲撃に関する個人的な動機があったとも証拠上うかがわれない。 以上のとおり,V1以下甲1會内の甲2組組員が,甲1會の最高幹部と直接話の出来る数少ない捜査員であり,本件当時は既に退職していた警察官であるSを組織的にけん銃で襲撃した事件であるという本件の内容,性質に加え,被告人YとV1の関係性等も踏まえれば,被告人両名が本件犯行に関与していたことが強く推認されるというべきである。 イ Sと被告人両名の確執の経緯検察官は,本件犯行に被告人両名が関与していたことを示す間接事実として,被告人両名が,かつてSを信頼していたものの,平成20年頃からSに裏切られたという強い不快感を抱いていたことを挙げ,そのことを示す具体的な出来事を指摘す るので,以下検討する。 認定事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 aSは,昭和45年に福岡県警察の警察官に任官し,昭和53年以降,暴力団捜査,主として甲1會(この項ではその前身の団体を含む。)の組員が起こした事件の捜査を担当し,その中で被告人Xとは昭和60年頃から,被告人Yとは平成に入った頃から面識を持つようになり,捜索等により甲1會の事務所や被告人Xの自宅を訪れた際には,被告人Xあるいは被告人Yと話をして甲1會の情報を入手していた。被告人Xは,警察官の同僚がSを呼ぶのをまねて,Sのことを「◎さん」と愛称で呼 索等により甲1會の事務所や被告人Xの自宅を訪れた際には,被告人Xあるいは被告人Yと話をして甲1會の情報を入手していた。被告人Xは,警察官の同僚がSを呼ぶのをまねて,Sのことを「◎さん」と愛称で呼んでいた。また,Sは,甲1會最高顧問のZ15 とも面識を持ち,Z15 を介して甲1會の幹部と話をすることもあった。平成15年には,当時四代目甲1會会長であった被告人X方へ福岡県警察が100名弱の態勢で捜索に向かった際,組員が門を開けず,警察官と組員との間で押し問答となったときに,捜査担当でないSが後からやって来て,SとZ15 が話をして門が開いたという出来事もあった。甲1會への警察による取締りが厳しくなった平成15年以降Sが退職する平成23年までの間,被告人両名や甲1會の最高幹部と話ができる関係にあった警察官は,Sのほかには1名しかいなかった。 b 被告人Yは,平成11年に8000万円を恐喝したとされる事件で有罪判決を受けて服役したが,Sは,その事件に関し,被害届の提出に応じない被害者にその知り合いを通じて被害届を提出させていた。被告人Yは,同判決の約1か月後に被告人Yの取調べのため福岡拘置所を訪れた警察官のb13 らに対し,(前記恐喝事件の捜査主任官の)b20(警部),b21(管理官),Sの名前を挙げて,「この3人は許さん。」と言い,Sについて,「あいつは俺のことを嫌うとるらしいが,俺もあいつのことは好かん。」「Sは正義感の強い男ち言われよるようやが,汚いことしようやないか。」と話したほか,名前を挙げた3人について,「俺は直接はやらんよ,間に何人かの人間を入れてやるよ。」などと仕返しをほのめかす話を強い口調で興奮気 味に語った。 c 平成21年4月にSらが甲1會の情報を得ようと元甲1會組員のZ16 と広島で接触した際,S の人間を入れてやるよ。」などと仕返しをほのめかす話を強い口調で興奮気 味に語った。 c 平成21年4月にSらが甲1會の情報を得ようと元甲1會組員のZ16 と広島で接触した際,Sは,被告人Xを呼び捨てにしつつ,「Xが20億持っている。」「Xが戊組から狙われている。」などと被告人Xを批判する発言をし,そのことが被告人Xの耳に入った。その後,同月にSが部下のb14 を同行してm4カンツリークラブへ視察に行き,被告人Xと会った際,被告人Xは,Sに対し,Z16 と接触したことを批判した上,「あんた,最後になって悪いもん残したな。」などと言った。 d 平成22年7月にSの捜査指揮により被告人Yの自宅の捜索が行われた。当日は被告人Yが不在であったため,Sらは当初捜索を実施せず,いったん警察署に引き上げたが,上司である課長の指示で再度被告人Y宅に戻り,被告人Y不在のまま,被告人Yの妻及びV1らを立会人として捜索を実施した。差押えの対象物は発見されず,捜索は約20分で終わり,Sが警察署に戻ると,被告人YからSの携帯電話に連絡があり,被告人Yは,Sに対し,「家の中をがちゃがちゃにした,引き出しをひっくり返した。」などと抗議した。 e 平成23年4月ないし同年5月頃,Sの再就職先の病院でSが偶然被告人Xに会った際,被告人Xは,Sに対し,「◎さん,甲2組を目の敵にしてたらしいな,あんたが全部甲2組の事件をしよったらしいのう,あんたを信用しとったのに,あんたがそんなことしたらつまらんばい,今も刑事のまねしよんな,今も情報を流しよるらしいね。」などと怒った様子で言った。その約半年後に同病院でSが偶然被告人Xに会った際,Sが何の用事で来たかを尋ねると,被告人Xは「気分が悪い。」と言ってその場を立ち去った。 事実認定の補足説明前記の各事 怒った様子で言った。その約半年後に同病院でSが偶然被告人Xに会った際,Sが何の用事で来たかを尋ねると,被告人Xは「気分が悪い。」と言ってその場を立ち去った。 事実認定の補足説明前記の各事実(ただし前記bを除く。)は,主としてSの供述,前記bの事実は,b13 の供述により,それぞれ認定した。弁護人の主張に鑑み,前記の各事実を認定した理由について,以下必要な限度で補足する。 a まず,前記bについて,弁護人は,被告人Yが恐喝事件の捜査に関与して いないSを恨むことはあり得ないと主張するが,被告人Yの発言に関するb13 の供述は具体的で迫真性があり,信用性に疑問はなく,Sが被害者に被害届を提出させたことを何らかの経緯で知った被告人Yが前記の発言をしたと認められる。 b 次に,前記cについて,弁護人は,m4カンツリークラブでの「あんた,最後になって悪いもん残したな。」との被告人Xの発言は,Sとb14 が連名で作成した報告書に記載されていないことを指摘する。しかし,S及びb14 は,被告人Xのそうした発言があった旨をそれぞれ具体的に供述しており,両名の供述は相互にその信用性を補完し合っている。そして,b14 は,報告書にSと被告人Xのやり取りをいったん全て記載したが,班長のSの指示で必要がない箇所を削除するなどしたと供述するところ,この点につきSは,被告人Xの当該発言は小言だと思ったので記載しなくていいと言ったかもしれない旨,b14 の説明に符合する供述をしている。b14 の同僚のIも,当時Sが「m4カンツリークラブに視察に行ったときにX会長から小言を言われた。」と言っていた旨,S及びb14 の各供述と整合する供述をしていることにも照らすと,前記報告書に記載がないことが,被告人Xの前記発言がなかったとの疑い に視察に行ったときにX会長から小言を言われた。」と言っていた旨,S及びb14 の各供述と整合する供述をしていることにも照らすと,前記報告書に記載がないことが,被告人Xの前記発言がなかったとの疑いを生じさせるものではない。 c また,前記dについて,弁護人は,被告人Y宅の捜索は短時間,部屋を一通り見て回った程度にすぎなかったことは明らかであり,そうであるのに,被告人YがSにわざわざ電話をかけて,「家の中をがちゃがちゃにした。」などと文句を言うことは到底考えられない旨主張するが,被告人Yが,自身が不在の際に家族の目の前で自宅の捜索を実施されたことに対して立腹したことは特段不自然ではない。b 14 は,Sが被告人Y宅への捜索実施後に警察署へ戻った際に被告人Yから電話連絡を受け,驚き焦りながら早口で「そんなことはしていない。」などと弁明していた様子を目撃しており,被告人Yから抗議の電話を受けた旨のS供述の信用性が裏付けられている(なお,被告人Yから電話連絡を受けたのは帰宅後だとSが供述している点は,Sの記憶違いと考えられる。)。 d さらに,前記eについて,弁護人は,Sが甲2組の事件を全部していたと か,退職後のSが甲1會の情報を警察に流すといった,あり得ないことを前提に被告人Xが文句を言ったというのは不合理であると主張するが,被告人Xの発言に関するSの供述は具体的で迫真性がある上,Sは,本件当日に行われた警察による事情聴取の際に,被害に遭った原因に関して,「Sが甲2組を集中的に狙っている。」という話を甲1會組員から聞いた旨,前記出来事に符合する供述をしており,信用性に疑問は生じない。 e 弁護人は,Sは,本件当日から平成26年に至るまで,捜査官に対し,襲撃された理由で思い当たることとして,被告人Xに関するエピソード( 記出来事に符合する供述をしており,信用性に疑問は生じない。 e 弁護人は,Sは,本件当日から平成26年に至るまで,捜査官に対し,襲撃された理由で思い当たることとして,被告人Xに関するエピソード(前記ce)についての説明を全くしていないが,このことはS供述の信用性を大きく減殺するものである旨主張する。 この点につき,Sは,被告人Xの名前を出して被告人Xが逮捕されれば,また狙われると思い,怖くて被告人Xの名前を出せなかったという説明をしている。これに対し,弁護人は,元警察官のSが,けん銃で銃撃されるという重大な被害に遭いながら,その原因と思う事情を捜査官に話さないなどということがあり得るのかとか,もしそのような心情であったとしても,被告人Xが元組合長事件などで逮捕された平成26年9月以降の同年中にも前記エピソードを自ら警察に説明しようとするはずだとして,Sの説明に疑問を呈するが,甲1會の捜査に長年従事し,甲1會という暴力団組織の実態を熟知していたSが,退職して一民間人となった後に後難を恐れ,総裁である被告人Xの関与をうかがわせるようなエピソードを捜査官に供述することを控えていたことや,被告人Xの逮捕後も直ちにはそうした供述をすることができなかったことが,不自然,不合理であるなどとはいえず,弁護人指摘の供述経過がS供述の信用性を減殺するものではない。 小括以上の検討によれば,被告人両名とSとの間に確執があったことを示す複数のエピソードが認められ,これらは本件犯行の動機となり得る事情ということができ(なお,検察官は,V1が平成20年10月に逮捕・勾留された際に被告人Yの釈放要 求をSに拒絶されたとする件も指摘するが,その内容に照らし,動機となり得るほどの事情とはいえない。),被告人両名が本件犯行を共謀したとの推認 に逮捕・勾留された際に被告人Yの釈放要 求をSに拒絶されたとする件も指摘するが,その内容に照らし,動機となり得るほどの事情とはいえない。),被告人両名が本件犯行を共謀したとの推認を支える事情と認められる。ただし,検察官が主張するように,「被告人両名が,かつてSを信頼していたものの,平成20年頃からSに裏切られたという強い不快感を抱いていた」といえるかについては,こうした見方も出来る一方で,被告人両名が平成20年以降もSとの関係を絶つことはせず,被告人XにおいてはSを「◎さん」と愛称で呼び続けていたことや,個々のエピソードの時期・内容なども併せ考えると,そのように断定することは困難といわざるを得ず,結局のところ,証拠上,本件犯行の直接の動機は不明というほかない。 本件犯行の目的について本件犯行について,検察官は,甲1會に対する取締りを強化した警察に対するけん制とともに,世間一般に対して甲1會の威を示すことをもくろんで実行された示威的な犯行であるとし,このような本件犯行の目的から,その意思決定には,甲1會の首領が関与していることは明らかであると主張する。そして,検察官は,本件犯行の目的が前記のとおりであるといえる根拠として,①平成15年以降甲1會に対する警察の取締り等が強化され,警察と甲1會の緊張関係が高まっていったこと,②本件犯行の被害者であるSは,他の警察官が甲1會幹部組員と接触することができない中,甲1會の最高幹部と直接交渉することができた数少ない警察官であったこと,③本件犯行は,そのようなSに対して,甲1會が自ら主張する縄張内の公道上において,けん銃を使用して銃撃するというものであったことを挙げ,襲撃の対象や方法等から,誰もが直ちに甲1會による犯行と認識し,甲1會から警察に対する宣戦布告ないしけん制と受け 張する縄張内の公道上において,けん銃を使用して銃撃するというものであったことを挙げ,襲撃の対象や方法等から,誰もが直ちに甲1會による犯行と認識し,甲1會から警察に対する宣戦布告ないしけん制と受け取られるものであり,甲1會の活動であることをあたかも顕示する態様であったなどと主張している。 そこで検討すると,証拠上,前記①ないし③の各事実は認められるものの,本件犯行が検察官主張の目的で実行されたとまでは認められない。 すなわち,本件犯行当時,Sは,北九州市内の自宅に住み,仕事のある平日は同 じ市内の勤務先の病院まで通勤していたというのであるから,その日常の行動範囲は自ずと北九州市内,つまり甲1會が縄張と主張する地域と重複することになる。 また,これまで認定したところによれば,V2以下,本件犯行のいわば実働部隊は,Sの自宅の所在を知った上で,付近でSを待ち伏せるなどして出退勤の時間や経路を確認し,その情報を元に,実行犯の逃走経路や送迎方法等を検討して,本件犯行に及んでいる。これらのことからすれば,本件犯行現場が甲1會の主張する縄張の範囲内であったのは,Sを襲撃するという目的や,Sの日常の行動範囲,さらにはその行動範囲の中で実働部隊にとって襲撃・逃走に適した場所であったという点から,結果的にそうなったにすぎない側面が強いというべきである。既に検討したとおり,本件犯行の直接の動機は不明であり,Sが甲1會捜査を担当する警察官の中で一目置かれていた点を考慮しても,同人を襲撃対象として選定した意図を,検察官主張のように断定することは困難といわざるを得ない。 要するに,本件犯行が,結果として,警察をけん制し,世間一般に対して甲1會の威力を誇示する効果を持つものであったとしても,それらを目的として本件犯行が実行されたとまでは認め難い。 わざるを得ない。 要するに,本件犯行が,結果として,警察をけん制し,世間一般に対して甲1會の威力を誇示する効果を持つものであったとしても,それらを目的として本件犯行が実行されたとまでは認め難い。 ウまとめV1以下甲1會内の甲2組組員が元警察官であるSを組織的にけん銃で襲撃した事件であるという本件の内容,性質に加え,被告人YとV1の関係性等も踏まえれば,被告人両名が本件犯行に関与していたことが強く推認されるのは前述したとおりである。そして,五代目甲1會における重要な意思決定は,被告人両名が相互に意思疎通をしながら,最終的には被告人Xの意思により行われていたものと認められるところ,本件犯行は,その性質上,甲1會全体や,被告人両名ら最高幹部を含む甲1會組員に対する警察の取締りをより一層強めることになるものであり,その実行の決定は甲1會にとって極めて重要な意思決定というべきであるから,被告人両名が意思疎通をしながら,最終的には被告人Xの意思により決定された行為であると推認される。 ⑷ 本件犯行が団体の活動として組織により行われたこと前記のとおり,本件犯行の直接の動機は不明であり,また,警察をけん制し,世間一般に対して甲1會の威力を誇示することを目的として本件犯行が実行されたとまでは認められない。 もっとも,これまで認定したとおり,本件犯行は,福岡県警察の警察官として長年甲1會の捜査に従事し,被告人Xを始めとする最高幹部と直接話の出来る数少ない捜査員であったSを甲1會が組織によりけん銃で襲撃するというものであった。 こうした被害者の属性や,襲撃の態様・組織性に照らすと,本件犯行は,甲1會の意に反するものとなっていた,あるいは,警察による甲1會捜査のいわば象徴となっていたSを甲1會組員が組織的に襲撃することによって した被害者の属性や,襲撃の態様・組織性に照らすと,本件犯行は,甲1會の意に反するものとなっていた,あるいは,警察による甲1會捜査のいわば象徴となっていたSを甲1會組員が組織的に襲撃することによって,甲1會の結束を高めるという効果又は利益を,団体としての甲1會に帰属させるものであるといえる。したがって,本件犯行は,団体の活動として行われたと認められる。 また,前記のとおり,本件犯行は,被告人Xが,被告人Yと意思を相通じた上で決定したものであり,これを受けて被告人YがV1に本件犯行を指示し,V1が配下の甲1會甲2組組員に指示するという順次の指示命令を経て準備・遂行され,かつその遂行に当たっては,多くの甲1會甲2組の組員が細分化された役割を分担して行ったものである。したがって,本件犯行は,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,これを実行するための組織により行われたと認められる。 ⑸ 結論以上検討したところによれば,被告人両名が,判示第2の各共犯者と本件犯行を共謀した事実が優に認められる。 第5 看護師事件について 1 事件の概要及び当裁判所の判断の結論看護師事件の犯行(以下,看護師事件の項では,この組織的犯罪処罰法違反の犯行を「本件犯行」といい,当該事件を「本件」ということがある。)の状況等につい て,次の事実が証拠上容易に認められる。 平成25年1月28日午後7時4分頃,看護師であるTが,福岡市t区所在の自宅マンション付近路上を歩いていると,W2がTの背後から近づき,所携の刃物(以下,看護師事件の項では,この刃物を「本件刃物」という。)で,その左側頭部等を目掛けて数回突き刺すなどし,Tに約3週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創,顔面神経損傷,右前腕部刺切創及び左殿部刺創 護師事件の項では,この刃物を「本件刃物」という。)で,その左側頭部等を目掛けて数回突き刺すなどし,Tに約3週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創,顔面神経損傷,右前腕部刺切創及び左殿部刺創の傷害を負わせた。 そして,関係証拠から認定できる事実を総合すれば,実行犯であるW2に殺意が認められるとともに,被告人両名が,判示第3の各共犯者と本件犯行を共謀した事実が認められる。以下,詳述する。 2 実行犯であるW2の殺意等⑴ Tの負傷結果及び本件犯行の態様ア Tは,本件犯行により,約3週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創,顔面神経損傷,右前腕部刺切創及び左殿部刺創の傷害を負った。 まず,左眉毛上部刺切創についてみると,この傷は,刃物の刃先が左耳上部から左耳前部方向(垂直方向)にかけて刺入した後,角度を変え,左眉毛上部方向(水平方向)に皮膚面に接しながら動いたことにより形成されたもので,左眉毛上方向への長さは約七,八センチメートル,最も深い左耳上部付近では側頭筋の筋膜を離断して側頭筋にまで達し,これにより,顔面神経や浅側頭動脈の本管又は分岐後の前頭枝,頭頂枝若しくは側頭枝が切断されていた。また,右前腕部刺切創についてみると,この傷は,刃物が右前腕部内側の小指側に刺入した後,親指側方向に引かれたことにより形成されたもので,長さは約四,五センチメートル,筋層にまで達する深さであった。さらに,左殿部刺創は,深さが約2センチメートルであった。 なお,本件犯行時にTが着ていたダウンコートの右前腕部に相当する部分が切損しているところ,その位置や形状によれば,当該損壊は,Tの右前腕部刺切創と同時に形成されたものと認められ,同様に前記ダウンコートの殿部相当部にできた切損は,Tの殿部刺創と同時に形成されたものと認められる。 るところ,その位置や形状によれば,当該損壊は,Tの右前腕部刺切創と同時に形成されたものと認められ,同様に前記ダウンコートの殿部相当部にできた切損は,Tの殿部刺創と同時に形成されたものと認められる。また,本件犯行時にT が所持していた革製のショルダーバッグ(以下「本件ショルダーバッグ」という。)の表面中央部には,内面に貫通する長さ約3センチメートルの裂け目があり,内面でこの裂け目に接するチャック付きポケットの裏面及び同ポケットの上部チャック部分付近にも裂け目があるところ,これらはいずれも本件犯行の際に形成されたものと認められる。 イ Tが負った左眉毛上部刺切創は側頭筋に,右前腕部刺切創は筋層にそれぞれ達していることに加え,前述したダウンコート及び本件ショルダーバッグの各破損の事実も踏まえると,これらの傷害は,相当強い力によって形成されたものと認められ,左殿部刺創も含むTの傷害の形成状況に照らすと,いずれも先端がとがった鋭利な刃物によって形成されたものと認められる。この点,W2は,本件刃物の先端がとがっていない旨,凶器を購入して準備しW2に渡したV4も,本件刃物の先端部分に丸みがあった旨供述するが,W2は刃物の先端が台形のような形状であったとし,他方,V4は,刃物は果物ナイフのような形状であったとしており,両者の供述は合致していない。Tの創傷の状況を写真で確認したc15 医師は,3か所の傷のいずれも創縁がきれいであったこと,前記ダウンコートの破損も切断面がきれいであったことなどを根拠に,これらの全ての傷や損傷が,同じ一つの刃器で生じたものであるとすると,先端がとがった鋭利な刃物によりこれらの傷等が生じたとすれば最も説明がしやすい旨述べているところ,かかるc15 供述には十分な医学的合理性があるといえるから,本件刃物は, 生じたものであるとすると,先端がとがった鋭利な刃物によりこれらの傷等が生じたとすれば最も説明がしやすい旨述べているところ,かかるc15 供述には十分な医学的合理性があるといえるから,本件刃物は,先端がとがった鋭利な刃物であったと認定できる。 ウ前記ア,イに加えて,犯行状況を撮影した防犯カメラ映像(襲撃時間は約4秒間と認められる。),T及びW2の各供述内容も併せると,W2の具体的な犯行態様は,おおむね以下のとおりであったと認められる。 すなわち,歩いているTの背後から走って近づいたW2が,Tの左前方まで行って振り返り,左手でTの前頭部の髪の毛をつかみ,右手に持った先端のとがった鋭利な刃物である本件刃物を用いて,相当強い力でTの左耳上部から左耳前部方向に かけて刺入して突き刺し,引き続いて地面に向けて本件刃物を切り下ろそうとしたが,Tが頭を下げたため,その動きが重なって,刃先が角度を変え,左眉毛上部方向に皮膚面に接しながら動き,刃先が抜けた。その後,両名がもみ合うような状態になり,その間に,本件刃物により,Tの右前腕部が傷つけられ(W2がTの右前腕部を狙って攻撃したとまでは認められない。),また,W2がある程度強い力で本件ショルダーバッグを突き刺した。その後,W2は,Tの左殿部を本件刃物で突き刺し,Tが後ろ向きに転倒すると同時に,Tの後方へ逃走した,というものである。 この点,弁護人は,W2とTの証言及び傷の状況から考えると,Tが,左耳の上に刃先が当たった時,驚いて左側を見ようとして,瞬間的に顔を左側に振ってしまったため,刃先が左眉毛の方向に滑り,その部分を傷つけることになってしまったと理解するのが最も合理的であると主張する。しかし,W2は,本件刃物の刃先をTの左側頭部に当てた後,本件刃物を真下に下げながら手前に ,刃先が左眉毛の方向に滑り,その部分を傷つけることになってしまったと理解するのが最も合理的であると主張する。しかし,W2は,本件刃物の刃先をTの左側頭部に当てた後,本件刃物を真下に下げながら手前に引いたと供述しており,この供述の信用性を疑うべき事情はなく,W2がTの顔面を切る意図で,そのように本件刃物の刃先を勢いよく動かしたものと認められ,この際に左眉毛上部方向への切創が形成されたと考えるのが合理的であるから,W2による本件刃物を切り下ろす動きと,Tが頭を下げた動き(前記防犯カメラ映像で確認できる。)とが重なって,前記の傷が形成されたと認定できる。弁護人の主張は理由がない。 ⑵ Tの死亡可能性及びW2の殺意ア左耳上部,すなわち左側頭部に先端がとがった鋭利な刃物を相当強い力で突き刺す行為は,皮膚の直下を走行している動脈を切断して大量出血を引き起こすおそれがあり,現に,Tは,被害直後に左側頭部付近に拍動性の出血を感じたので自らの手で圧迫して止血し,被害から僅か12分後の本件当日午後7時16分に病院に搬送されたものの,病院搬入直後の同日午後7時25分の時点では,収縮期(最高)血圧が57にまで低下し,大量出血による出血性ショックに陥っていたものであるから,受傷後もTの意識が清明であったとの弁護人の指摘を踏まえても,この突き刺し行為が人の生命に危険を生じさせる行為であることに疑いを抱く余地はな い。しかも,歩いているTにW2が近づき襲撃したという本件の具体的な犯行態様においては,両名の動き次第では,Tの頚部に本件刃物が刺さるなどして,総頚動脈が損傷される事態も想定し得るのであるから,その意味でもTの左側頭部へ本件刃物を相当強い力で突き刺す行為は,同人を死亡させる危険性の高い行為であったといえる。弁護人は,浅側頭動脈は大腿 て,総頚動脈が損傷される事態も想定し得るのであるから,その意味でもTの左側頭部へ本件刃物を相当強い力で突き刺す行為は,同人を死亡させる危険性の高い行為であったといえる。弁護人は,浅側頭動脈は大腿動脈と比較すると細く,その切断面から急激な出血があるわけではないと主張するが,浅側頭動脈が切断されれば止血措置をしないで出血が止まることはなく,そのまま放置すれば確実に死亡するのであって,前記のとおり,Tは病院搬送直後の時点で血圧が相当低下し,焼灼止血を行うとともに輸液投与をするなどしてようやく血圧が回復したのであるから,弁護人指摘の点をもって,前記W2の行為がTを死亡させる危険性の高い行為であったとの前記判断は左右されない。 イそして,W2は,Tの身体の枢要部である左側頭部に先端がとがった鋭利な刃物を相当強い力で突き刺すことを当然認識していたのであり,人が死亡する危険性の高い行為を,そのような行為と分かってあえて実行したものといえるから,Tに対する少なくとも未必的な殺意があったと認められる。 この点,W2は,V4から,Tに対する襲撃に関し,「顔をはつって尻を刺せ。」「殺さなくていい。」と指示された,「顔をはつる」とは「顔を切る」という意味である旨供述するが,W2の供述を前提としても,V4の指示内容は,襲撃の実行方法等につきTの生命に対する具体的配慮を伴うものではなかったのであるし,W2が本件刃物を用いて実際に前記のような危険な態様の突き刺し行為に及んでいる以上,Tに対する少なくとも未必的な殺意があったとの前記認定は揺らがない。 ⑶ V4及びその上位者の殺意弁護人は,W2にT襲撃を指示したV4にTに対する殺意は認められない旨主張するので検討すると,V4は,W2に対して,Tの顔を切って尻を刺すように指示し,本件刃物を準備してW2に渡して 上位者の殺意弁護人は,W2にT襲撃を指示したV4にTに対する殺意は認められない旨主張するので検討すると,V4は,W2に対して,Tの顔を切って尻を刺すように指示し,本件刃物を準備してW2に渡しているところ,既に説示したとおり,V4の指示内容は,襲撃の実行方法等につきTの生命に対する具体的配慮を伴うものではな かったこと,実際にW2がTを襲撃して重傷を負わせても,W2やV4が甲1會内で何ら処分を受けておらず,W2の行為は上位者の指示に反するものでなかったことが推認されることから,V4にはTに対する少なくとも未必的な殺意があったと認められるほか,後述のとおりV4に本件犯行を指示したと認められるV4の上位者についても,Tに対する少なくとも未必的な殺意があったと推認できる。弁護人の主張は理由がない。 3 本件犯行の共謀について(組織的犯罪処罰法違反の要件該当性を含む。)⑴ V2及びV4の使用する携帯電話についてなされた通信傍受(以下「本件通信傍受」という。)に関連する証拠(以下「本件通信傍受関連証拠」という。)の証拠能力当裁判所は,甲1會組員による本件犯行の準備・遂行状況等を立証する証拠として検察官により請求された本件通信傍受関連証拠を証拠採用し取り調べた。しかるに,弁護人は,その証拠能力を争っていることから,以下検討を加える。 ア当事者の主張弁護人は,要旨以下のとおり主張する。 福岡県警察(以下,この項では「警察」という。)の警察官(以下,この項では「警察官」という。)は,被疑者をV2及びV4,被疑事実を元警察官事件とする傍受令状2通の発付を受け,平成25年1月16日から同年2月21日まで,前記被疑者両名の使用する携帯電話につき通信傍受を実施したものの,いずれの日にも元警察官事件に関連する通信はなかったと 件とする傍受令状2通の発付を受け,平成25年1月16日から同年2月21日まで,前記被疑者両名の使用する携帯電話につき通信傍受を実施したものの,いずれの日にも元警察官事件に関連する通信はなかったと判断し,全ての通信を削除した上で傍受記録が作成された。 ところが,同年1月28日に看護師事件が発生し,同事件の捜査が進展してくると,警察の内部では,犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成28年改正前の同法律。以下「法」という。)13条に基づき該当性判断のため傍受した通信の中に,看護師事件に関連する通信が含まれていたのではないかということが話題に上るようになり,看護師事件の担当捜査員ら及び元警察官事件の担当捜査員らを中心 として,傍受記録に残されなかった前記通信のうち看護師事件に関する犯行指示や犯行の延期,被害者の行動確認,犯行に使用する携帯電話やバイクの準備,犯行の報告や報酬等に関連すると思われる通信についての記憶喚起作業,復元作業が行われた。しかし,警察の内部で,このように看護師事件に関連する通信があったのではないかということが話題に上ったり,さらにはその通信内容の復元作業と見られる行動があったりしたこと自体,法22条5項に違反する重大な違法行為であり,この後の手続の全体に違法性を帯びさせるものである。 警察官は,看護師事件が法14条に規定する他犯罪に該当することを理由として,福岡地方裁判所裁判官(以下,この項では「裁判官」という。)に対し,V4の携帯電話に残されていた約500通信のうち298通信について,法25条3項に基づき,傍受の原記録の聴取請求を行い,これが却下されると,今度は,看護師事件に関する通信は元警察官事件の立証のための間接事実となり,傍受が行われた元警察官事件について,犯罪事実の存否の証明のために必要 き,傍受の原記録の聴取請求を行い,これが却下されると,今度は,看護師事件に関する通信は元警察官事件の立証のための間接事実となり,傍受が行われた元警察官事件について,犯罪事実の存否の証明のために必要があるなどと主張して,再び同じ298通信について傍受の原記録の聴取請求を行った。その際に福岡県警察暴力団対策部長により作成された報告書には,13項目にもわたる具体的な通信内容が列挙されており,法22条4項に違反して通信内容を記録した文書が警察内部に残されていたか,ないしは同条5項に違反して傍受記録に残された以外の通信内容が,警察内部で傍受担当者から他の者に伝達されたり,これを復元したりして利用する違法行為が行われていたことを,優に推認することができる。 前記再度の聴取請求に対し,裁判官は,請求を却下したが,準抗告審は,「本件通信の聴取によって看護師事件の指揮系統等の解明が進むことで元警察官事件における指揮系統等の解明も進むと期待することは十分な合理性がある」などとして,却下決定を取り消した。しかし,法25条3項にいう「傍受が行われた事件」とは元警察官事件であり,看護師事件ではない。両事件は明らかに異なる犯罪事実であり,看護師事件の指揮系統に関わる事実が,元警察官事件の被疑事実の犯罪そのものを構成する事実になったり,その間接事実になったりするなどということはあり得な い。また,聴取請求をした段階では,明らかに看護師事件の指揮系統,指揮態様等は不明なのであるから,必然的に看護師事件をまず解明することを前提とするものとならざるを得ず,このようなことは,法25条3項が定める要件に明らかに反することになる。 前記準抗告審決定の後,福岡地方裁判所(以下,この項では「裁判所」という。)は,傍受の原記録の聴取を許可する決定を行い,警察官は ようなことは,法25条3項が定める要件に明らかに反することになる。 前記準抗告審決定の後,福岡地方裁判所(以下,この項では「裁判所」という。)は,傍受の原記録の聴取を許可する決定を行い,警察官は,これに基づいて傍受の原記録を聴取し,その聴取結果に基づいて,前記298通信のうち84通信について傍受の原記録の複製の作成請求を行い,その許可を得た。さらに,警察官は,V2の携帯電話の傍受の原記録の聴取と複製の作成も必要になったとして,裁判官に対し聴取請求と複製の作成請求を行い,これらの許可を得た。 本件通信傍受関連証拠は,以上のような手続を経て警察官が入手し,これらを利用して検察官が作成するに至ったものである。このように,本件における傍受の原記録の聴取及び複製の作成は,法22条4項ないし5項,25条3項に違反するものであり,ひいては憲法35条,21条2項後段に違反する。 また,警察官が元警察官事件に藉口して,看護師事件の証拠となる通信の請求と複製の作成を裁判官に請求したことは,あたかもそれらの通信が元警察官事件の犯罪事実の証明に使用できるかのように裁判所を欺いたという点で,裁判所を欺罔したものといえる。現に検察官は,本件通信傍受関連証拠を元警察官事件の証拠として一切請求していない。さらには,警察官が元警察官事件に藉口して,傍受の原記録の聴取請求と複製の作成請求を行ったことは,別件による捜索差押令状を裁判官に請求したのと法的に同一視することができるので,このような観点においても前記請求は違法である。したがって,従来の違法収集証拠排除の法理によって,かかる証拠を利用する検察官の立証は許されないことになる。 これに対し,検察官は,本件通信傍受関連証拠は,いずれも適法に収集,作成された証拠であり,違法収集証拠には当たらず,証拠能力を有することは かる証拠を利用する検察官の立証は許されないことになる。 これに対し,検察官は,本件通信傍受関連証拠は,いずれも適法に収集,作成された証拠であり,違法収集証拠には当たらず,証拠能力を有することは明らかであると主張する。 イ本件通信傍受の経緯等関係証拠によれば,本件通信傍受が実施され,その後捜査機関が傍受の原記録を聴取し,その複製を作成した経緯等について,以下の事実が認められる。 警察官は,平成25年1月10日,裁判官に対し,V4及びV2を被疑者,元警察官事件を被疑事実とし,V4が使用する電話番号▲▲▲-▲▲▲▲-▲▲▲▲の携帯電話(以下「V4携帯」という。)及びV2が使用する▲▲▲-▲▲▲▲-▲▲▲▲の携帯電話(以下「V2携帯」という。)を傍受の実施の対象とすべき通信手段とする傍受令状各1通を請求し,同日,請求どおりの内容の各傍受令状の発付を受けた。 警察官は,各傍受令状(なお,傍受ができる期間は延長されている。)に基づき,V4携帯及びV2携帯を対象として通信傍受を実施したが,その期間中である同年1月28日,看護師事件が発生した。 警察官は,同年7月下旬頃,法25条3項に基づき,裁判官に対し,看護師事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,V4携帯で行われた通信のうち同年1月16日から同月29日までの間に法13条1項の規定により傍受した298通信について,傍受の原記録の聴取の許可を請求したが,裁判官は,その後,前記請求を却下する決定をした。 警察官は,前記の却下決定を受けて,同年10月末頃,前記298通信には,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等が明らかとなる通信が含まれており,元警察官事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,法25条3項に基づき,裁判官に対し,傍受の原記録 8通信には,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等が明らかとなる通信が含まれており,元警察官事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,法25条3項に基づき,裁判官に対し,傍受の原記録の聴取の許可を請求したが,裁判官は,その後,前記請求を却下する決定をした。 警察官が,平成26年1月9日,前記及びの各却下の決定に対して,裁判所に準抗告を申し立てたところ,裁判所は,その後,前記の却下決定に対する準抗告を棄却する一方,前記の却下決定を取り消し,更に,前記298通信について傍受の原記録の聴取を許可する決定をした。 これを受けて,警察官は,前記298通信について傍受の原記録を聴取し,そのうち平成25年1月16日,同月20日及び同月22日から同月29日までの間になされた84通信について,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等が明らかとなる通信が含まれていると確認したことから,元警察官事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,平成26年6月23日,法25条3項に基づき,裁判官に傍受の原記録のうち前記84通信に関する部分の複製の作成の許可を請求した。 これに対し,裁判官は,同月26日,前記84通信の傍受の原記録の複製を作成することを許可する決定をするとともに,その複製(DVD-RAM)を警察官に交付した。 看護師甲35,37,40,42,45,47,49,51,53及び55号証は,警察官が前記84通信についての傍受の原記録の複製(DVD-RAM)を複製して作成したDVD-RAMであり,看護師甲343号証は,検察官が前記84通信のうち68通信の内容を反訳した書面である。 また,警察官は,元警察官事件の捜査において,前記84通信について傍受の原記録の複製を精査した結果,V2携帯で行われた通 3号証は,検察官が前記84通信のうち68通信の内容を反訳した書面である。 また,警察官は,元警察官事件の捜査において,前記84通信について傍受の原記録の複製を精査した結果,V2携帯で行われた通信のうち,平成25年1月16日に法13条1項の規定により傍受した1通信について,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等が明らかとなる通信が含まれていることから,元警察官事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,法25条3項に基づき,裁判官に対し,傍受の原記録の聴取の許可を請求し,裁判官は,これを許可する決定をした。 これを受けて,警察官は,前記1通信について傍受の原記録を聴取し,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等が明らかとなる通信が含まれていると確認したことから,元警察官事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして,同年9月3日,法25条3項に基づき,裁判官に傍受の原記録のうち前記1通信に関する部分の複製の作成の許可を請求した。 これに対し,裁判官は,同月19日,前記1通信の傍受の原記録の複製を作成することを許可する決定をするとともに,その複製(DVD-RAM)を警察官に交付した。 看護師甲57号証は,警察官が前記1通信についての傍受の原記録の複製(DVD-RAM)を複製して作成したDVD-RAMであり,看護師甲297号証は,検察官が前記1通信の内容を反訳した書面である。 ウ判断弁護人は,警察官が,元警察官事件について傍受した通信が記録された傍受の原記録を,看護師事件の立証に用いる目的で聴取し,その複製を作成したことは,「傍受が行われた事件に関し」傍受の原記録の聴取等を認めた法25条3項に違反すると主張する。 確かに,警察官が,看護師事件の証拠として利用する意図をも有しながら,傍受の その複製を作成したことは,「傍受が行われた事件に関し」傍受の原記録の聴取等を認めた法25条3項に違反すると主張する。 確かに,警察官が,看護師事件の証拠として利用する意図をも有しながら,傍受の原記録の聴取の許可等を請求したことは明らかといえる。一方で,元警察官事件及び看護師事件の内容及び性質からすると,いずれも甲1會が組織的に関与した疑いが強く,甲1會という組織の特徴や,両事件に関与した疑いがある甲2組幹部らにある程度の重複があることなどに照らせば,両事件の指揮系統や指揮態様等は基本的に同一のものと推認されること,傍受の実施の対象とすべき通信手段として記載された携帯電話を使用していたのは,両事件の犯行の実行において中心的な役割を果たした疑いが強いV4であることなど,本件に特有の事情のもとでは,捜査機関が,看護師事件の指揮系統等の解明が進むことで元警察官事件の指揮系統等の解明も進むと期待することには相応の合理性があると認められる。したがって,甲1會が犯罪を実行する際の指揮系統や指揮態様等を明らかにし,元警察官事件の犯罪事実の存否を証明するために必要があるとして,警察官が傍受の原記録の聴取及びその複製の作成を請求し,裁判所がこれを許可したことは,法25条3項に違反するものではない。 弁護人は,本件通信傍受関連証拠が元警察官事件の証拠として請求されていない 事実を指摘して,原記録の聴取及び複製の作成の請求は,警察官が,本件の通信を元警察官事件の犯罪事実の証明に使用できるかのように裁判所を欺いたとか,別件による捜索差押令状を裁判官に請求するのと法的に同一視することができるなどとして,本件通信傍受関連証拠を証拠として利用することは違法収集証拠排除の法理により許されない旨の主張もする。しかしながら,公訴事実の立証のためにどの 官に請求するのと法的に同一視することができるなどとして,本件通信傍受関連証拠を証拠として利用することは違法収集証拠排除の法理により許されない旨の主張もする。しかしながら,公訴事実の立証のためにどのような証拠の取調べを請求するかは,証拠全体の収集状況等を踏まえた検察官の判断によるところ,共犯者の供述等のより直接的な証拠が得られれば,本件通信傍受関連証拠の立証の必要性は低下するのであるから,証拠として請求されていないことが,裁判所を欺いたとか別件捜索差押と同一視できることの根拠となるものではない。傍受の原記録の聴取及び複製の作成が法25条3項の要件を充たしていることは既に述べたとおりであり,主張は採用の限りでない。 弁護人は,警察官が,傍受の原記録聴取請求のため,傍受記録に残さなかった通信のうち,看護師事件に関連する通信内容を伝達等したことが,法22条5項に違反すると主張する。しかしながら,傍受の原記録聴取を請求するか否かという意思決定や同請求自体に必要な限度で,傍受記録に残さなかった通信の概要を伝達したり報告したりすることを法が禁止しているとは考えられない。この点,当時の通信傍受規則(平成12年8月8日国家公安委員会規則第13号)25条2項が,「(法25条3)項の請求は,順を経て警察本部長に報告し,事前にその承認を受けて行」うものと定めているのは,傍受の原記録の聴取等の請求に必要な限度で警察内部における報告等が行われることを当然に許容していることを示すものといえる。 弁護人は,福岡県警察暴力団対策部長が作成した報告書に具体的な13項目にもわたる通信内容が列挙されていたことが,警察内部で法22条4項に違反する行為が行われていたことを推認させるとも主張するが,傍受実施主任官であったb15,b16,b17 及びb11 は,いずれも通信傍受 たる通信内容が列挙されていたことが,警察内部で法22条4項に違反する行為が行われていたことを推認させるとも主張するが,傍受実施主任官であったb15,b16,b17 及びb11 は,いずれも通信傍受実施時に作成した通信内容を記載したメモやファックスを廃棄した旨明言している上,弁護人が指摘する報告書に記載された通信内容についても,いずれも項目程度の概要にとどまるものであって,前記メモ 等が廃棄されて残っていない中,傍受に関与した者らの記憶に基づいて記載されたとしても不自然ではなく,法22条4項違反の事実は認められない。 よって,本件通信傍受関連証拠は,いずれも証拠能力を有すると認められる。 ⑵ 甲1會甲2組組員ほかによる本件犯行の準備,実行及び犯行後の状況関係証拠によれば,以下のアないしウの事実が認められる。 ア犯行準備状況甲1會専務理事兼甲2組筆頭若頭補佐であるV4は,平成24年11月6日,甲1會専務理事兼甲2組組織委員であるW4に,Tの勤務先であるJRh1駅前の美容形成クリニック(以下「本件クリニック」という。)で施術体験をさせてTの顔を覚えさせると,同月頃,W4及び甲1會専務理事兼甲2組組織委員であるW5にTを尾行させ,その帰宅経路及び自宅マンションを把握した。また,V4は,T襲撃のための連絡用として,他人名義の携帯電話(いわゆる飛ばしの携帯電話)を複数用意し,W4,W5ら複数の甲1會組員に渡していたところ,W4は,V4の指示を受け,複数回にわたり,JRh1駅構内やその周辺でTの行動を確認し,Tが退勤する時刻や同駅から新幹線に乗車する時刻等を,自身が普段使用する携帯電話やV4が渡した飛ばしの携帯電話を用いてV4に報告しており,W5もV4の指示でJRh3駅付近においてTの行動を確認したことがあった。 V4 駅から新幹線に乗車する時刻等を,自身が普段使用する携帯電話やV4が渡した飛ばしの携帯電話を用いてV4に報告しており,W5もV4の指示でJRh3駅付近においてTの行動を確認したことがあった。 V4は,平成24年11月末頃か同年12月初旬頃,甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐であるW2に対し,女性看護師の顔を切って尻を刺せなどと指示をし,平成25年1月頃には,自ら購入して準備した本件刃物をW2に渡した。また,V4は,同月頃,甲1會専務理事兼甲2組組長付であるV5に対し,実行役であるW2をバイクで送迎するよう指示したほか,甲1會常任理事兼丙1組組員であるW6に対し,足が付かないバイクを用意するよう指示した。なお,丙1組は,甲2組出身者であるW1を組長とする甲1會の二次団体であり,甲2組一門として扱われていた。 一方,甲1會専務理事兼甲2組若頭のV2は,同月中旬頃,甲1會専務理事兼甲2組風紀委員長のV3に対し,福岡市t区で事件を起こす旨告げ,自動車を用意し た上での実行役らの送迎や犯行に使用した道具の処分を指示した。さらに,V2は,同月22日,電話でV4に対し,実行役にTの姿を直接見せるよう指示し,これを受けて,V4は,同日,帰宅するTの姿を見せるためにW2と共にJRh1駅に赴いたが,Tが出勤していなかったため,Tの姿を見せることはできなかった。なお,V2は,同月23日,公務執行妨害被疑事件により逮捕され,本件当日は同被疑事件により勾留中であった。 同月24日,Tに対する襲撃が決行される予定であったところ,W4やW5からV4に対してTの行動状況の報告がなされ,W2,V5及びV3が犯行現場周辺に集合して待機したが,W6により用意されていた犯行に使用するバイクを発見することができず,同日の襲撃は中止となった。 同月25日,再度T の行動状況の報告がなされ,W2,V5及びV3が犯行現場周辺に集合して待機したが,W6により用意されていた犯行に使用するバイクを発見することができず,同日の襲撃は中止となった。 同月25日,再度Tに対する襲撃が決行される予定となり,W2,V5及びV4が犯行現場周辺に集合し待機したが,JRh1駅付近でTを探していたW4が本件クリニックを早退していたTの姿を発見することができなかったため,またも襲撃は中止となった。 イ犯行状況等同月28日,W2,V5及びV4が犯行現場周辺に集合した後,W4からV4に対してTの服装や行動状況について報告があった。V4の指示でV5がバイクにW2を乗せて本件犯行現場付近まで移動すると,Tの姿を見付けたW2がバイクを降りて走ってTに近づき,本件犯行に及んだ。 ウ犯行後の状況W2,V5及びV4は,前記バイクを集合場所付近の海中に投棄して逃走した。 また,犯行使用道具等については,V4を介してV3がこれを受け取り,北九州市内で焼却して処分した。 ⑶ V1,W3及びW1の本件犯行への関与等以下の事実認定は,主として本件通信傍受関連証拠に依拠して行った。 ア V1及びW3の関与甲1會理事長兼甲2組組長のV1は,平成25年1月24日午前,V4に対し,電話で,他人名義の電話(飛ばしの携帯電話)を1個用意するよう指示した(看護師甲343通信番号21,22。以下,ア及びイでは同号証については通信番号のみを表記する。)。 通信番号21の通話は,V4使用携帯電話とAの母親名義の携帯電話との間の通話のやり取りを示すものであるが,Aは,平成24年2月以降甲2組組長付として終日組長であるV1の身の回りの世話をするなどしていたこと,同通信においてV4が,Aから替わった話者と敬語で話しており,同通信の やり取りを示すものであるが,Aは,平成24年2月以降甲2組組長付として終日組長であるV1の身の回りの世話をするなどしていたこと,同通信においてV4が,Aから替わった話者と敬語で話しており,同通信の数分後にV4がV3に対して「親分がすぐに電話が要る」旨を伝えていることからすると(通信番号22。 なお,同24も参照),V4に前記指示をしたのは,V3,V4共通の上位者(親分)である甲2組組長のV1であると認められる。 そして,当該指示が1回目の襲撃予定日の午前中に行われたことや,前記のとおり,V4がT襲撃のための連絡用に飛ばしの携帯電話を複数台用意し甲1會組員に渡していたこと,後記のとおり,V4がV1に対して,飛ばしの携帯電話ではなく,自身が普段使用する携帯電話からV1が普段使用する携帯電話に電話をかけた上で本件犯行に係る報酬分配が終了した旨報告してたしなめられたことからすると,V1がV4に飛ばしの携帯電話を用意させた目的は,V1自身がT襲撃に関する連絡に用いるためであったと推認できる。 平成25年1月24日午後6時57分,V4は,甲1會専務理事兼甲2組組長秘書のW3に対し,電話で,「ちょっと微妙,微妙な感じやけ。」と述べ,W3から「一応報告しときますね。」と言われると,「そういうふうに言っちょって。」と答えた。また,同日午後7時19分頃,V1がV4に対し,電話で「ちょー来てん。 こっち。」と言うと,V4は,「はい,分かりました。」などと答え,さらに,同日午後7時23分頃,W3から,電話で「もう着きます。」と尋ねられると,V4は,「はい。s7町。」などと答えた(通信番号30ないし32)。そして,V4は,同日午 後7時32分以降,W2が翌日に行うはずであった被告人Yの警備(会長警備)を別の組員と交代するよう手配したり,W2に などと答えた(通信番号30ないし32)。そして,V4は,同日午 後7時32分以降,W2が翌日に行うはずであった被告人Yの警備(会長警備)を別の組員と交代するよう手配したり,W2に対して翌日の朝に打合せをする必要がある旨伝えたり,W5やV3に対して「報告したら明日もう1回決行になった。」とか「明日またなんですよ。」「今日がダメやったけ。」などと伝えたりした(通信番号33ないし37)。 W3は甲2組組長であるV1に付き従う組長秘書であったところ,前記のとおり,V4がT襲撃の統括役であり,同日は犯行に使用するバイクが見つからずに襲撃実行が中止になったことを踏まえると,V4は,同日のT襲撃が失敗したことを「微妙な感じ」と表現したものであり,W3を介してV1に報告したところ,V1から甲2組のs7町事務所に呼び出され,同日午後7時23分直後頃からV1と面会したものと認められる。そして,同日午後7時32分以降のV4の動きは,会話内容からして翌日のT襲撃に向けたものと優に認められるところ,こうしたV4の動きと,V4・V1の面会との時間的接着性に照らすと,V1が,V4との面会において,翌日(同月25日)のT襲撃の実行を指示し,この指示を受けてV4がT襲撃の準備に動いたものと推認できる。 V4は,同月25日,2回目のT襲撃に失敗したが,その後の同日午後8時3分,W3に対して,電話で,小倉に着いたので甲2組のs7町事務所に向かう旨告げた。その際,V4が「おる。前に。」と尋ねると,W3が「はい,前にいます。」と答え,さらにV4が「ほんなら」「そっち向かうわ。」などと述べているところ(通信番号43),前記のとおり,W3が甲2組組長秘書としてV1に付き従っていたこと,前日にV4はV1からs7町事務所に呼び出され2回目の襲撃指示を受けたこと っち向かうわ。」などと述べているところ(通信番号43),前記のとおり,W3が甲2組組長秘書としてV1に付き従っていたこと,前日にV4はV1からs7町事務所に呼び出され2回目の襲撃指示を受けたことからすると,V1がV4からs7町事務所において,2回目のT襲撃が失敗に終わった旨の報告を受けたことが推認できる。 V4は,本件犯行後の同月28日午後8時25分,W3に電話をかけ,「おなか一杯っち言っとって。」と告げ,同日午後8時28分頃,W3からの電話に対し,「言うた。俺のこと。」などと述べている(通信番号66,67)。V4が,甲2組 組長秘書であるW3に伝言を依頼していることからすると,「おなか一杯」との内容は,甲2組組長であるV1に対する報告であったと認められる。 もっとも,「おなか一杯」というのが文字どおりの意味であれば,報告に値しない事柄である上,V4が同日午後8時34分頃に妻に対して,V4自身の分も含め家族の弁当を購入して帰宅する旨述べていること(通信番号68)からすれば,「おなか一杯」との発言は隠語であると考えられる。 V4のV1に対する報告が本件犯行から1時間半も経たないうちになされたものであることや,報告を聞いたV1の反応をV4がW3に尋ねたところ,W3が「いえ,みんなが,みんながおるけ。」と述べ,他の組員に聞かれるのを差し控える態度をとったこと(通信番号67),V4が1月24日に予定されていたT襲撃の失敗について前記のとおりW3に対して「微妙」と伝えたのに対し,W3がV4に「腹九分くらいですか。」と確認していること(通信番号30)からすると,「おなか一杯」とのV4の発言は,T襲撃の結果を腹具合で示す隠語であって,本件犯行が予定どおり実行されたものであることを意味するものと認められる。 したがって,V1が と(通信番号30)からすると,「おなか一杯」とのV4の発言は,T襲撃の結果を腹具合で示す隠語であって,本件犯行が予定どおり実行されたものであることを意味するものと認められる。 したがって,V1が本件犯行後にW3を介してV4から本件犯行を実行した旨の報告を受けたことが認められる。 V4は,本件犯行翌日である同月29日午後1時43分,W3から甲2組のs7町事務所に呼び出されると,同日午後2時4分以降,順次,W5,W2,V3,W4及びW6を同事務所や甲2組本部事務所に呼び出した。そして,V4は,同日午後2時29分から同日午後2時31分7秒までの間,W3に電話をかけ,「用事言われとったの終わったんよ。」「分配。」「時間差でバラバラであれしてから。」「カシラには,俺が帰ってやるとか言いよった。」と言い,W3から分配がおいしかったか尋ねられると,「俺はそんなにない。」「兄弟やるね,ちょっとやるね。小遣い。」と答え,さらに,W3から,「電話してから,終わりましたち言ったらいいんやないですか。」と勧められると,その直後の同日午後2時31分43秒からV1と電話で話をし,V1に対して「終わりました。」と報告したが,V1から「分かった。」「そん なん電話で言うたらつまらんけな。」とたしなめられた(通信番号81,82等)。 この点に関し,W6は,同日の午後2時14分及び午後2時24分に,V4から電話を受け,甲2組本部事務所に現金を預けておくのでもらうように言われたことから,同事務所に行って金庫から封筒に入った現金15万円を受け取った,以前に上位者の指示で別の2事件に関してバイクを用意するなどした際にもそれぞれ同額の報酬をもらったことや,V4から現金をもらえる心当たりは本件に関しバイクを用意したことのほかになかったことから,封筒に入った 位者の指示で別の2事件に関してバイクを用意するなどした際にもそれぞれ同額の報酬をもらったことや,V4から現金をもらえる心当たりは本件に関しバイクを用意したことのほかになかったことから,封筒に入った15万円は本件犯行への関与についての報酬だと思った旨供述する。この供述は,V4との通話記録とも整合し,反対尋問にも揺らいでいない。W6に虚偽供述をする理由は見いだせないことも踏まえると,同人の供述は十分に信用できるから,W6が同日午後2時過ぎの時間帯に,本件犯行への関与の報酬として現金15万円を受け取った事実が認められる。弁護人は,平成24年4月25日に甲2組本部事務所の検証が行われた際には,同事務所2階の当番部屋の入口を入って右側のシュレッダーと壁の間に金庫があったが,同年9月27日に実施された同事務所の検証時には金庫は存在していないことが客観的な証拠によって明らかとなっており,平成25年1月29日にその金庫から15万円の入った封筒を取り出した旨のW6供述は真っ赤なうそであると主張する。しかし,W6によれば,当該金庫は高さが30センチメートルかそれ以下で,そこまで大きな金庫ではなかったというのであり,同金庫を撮影した写真に照らしても,移動・運搬が困難なほどの重量であったとは考えにくく,前記2度目の検証時に部屋に金庫がなかったことをもって,W6供述が虚偽であるということにはならない。弁護人の主張は失当である。 W6が報酬を受け取った時間帯が,W5,W2,V3及びW4に対するV4の呼出しの時間帯と近接していること,V4が呼び出したのはいずれも本件犯行に関与した共犯者であることに加え,V4とW3間の「分配。」「おいしかった。」「ちょっとやるね。小遣い。」といった会話の内容も踏まえると,V4は,V1から本件犯行に関する報酬の分配を受けた上,他の共 関与した共犯者であることに加え,V4とW3間の「分配。」「おいしかった。」「ちょっとやるね。小遣い。」といった会話の内容も踏まえると,V4は,V1から本件犯行に関する報酬の分配を受けた上,他の共犯者への分配を指示され,これらの者を組 事務所に呼び出して報酬の分配を行い,分配が終わった旨をW3に伝えた後,V1に報告したものと推認できる。なお,V3は,本件犯行に関して報酬をもらっていない旨供述し,W4も本件犯行翌日の昼間にV4から呼び出された事実はないと思う旨供述するが,既に自身の刑が確定していたW6とは異なり,本件公判での供述時点においてなお本件犯行を含む刑事事件について自身の裁判が係属中であったV3及びW4の両名には,自身の本件犯行への関与の程度をあえて低くしようという動機があったといえるほか,W4の供述態度からは当時の記憶が曖昧であることも見て取れるから,両名の各供述は,W6供述に比して信用性に乏しいといえ,前記推認に合理的疑いを差し挟むものではない。 既に述べたとおり,本件犯行は,甲2組若頭のV2以下,筆頭若頭補佐のV4ら複数の甲2組幹部を始めとする多くの甲2組組員が関与し,甲2組の指揮命令系統に従い細分化した役割を分担して,組織的に準備・遂行されたものであるところ,そのこと自体から,甲2組序列1位の組長であるV1もまた,本件犯行の共謀に加わり,その実行を指示したことが強く推認される。 そして,前記ないしで認定したとおり,V1が自らの連絡用の飛ばしの携帯電話を用意させたこと,自ら又は秘書のW3を介してV4からT襲撃の経過及び結果の報告を随時受けていたこと,本件犯行後にはV4に対して本件犯行に関与したことの報酬を渡すとともに,共犯者間での分配をさせたことも併せ考えると,V1が本件犯行の共謀に加わり,V2 襲撃の経過及び結果の報告を随時受けていたこと,本件犯行後にはV4に対して本件犯行に関与したことの報酬を渡すとともに,共犯者間での分配をさせたことも併せ考えると,V1が本件犯行の共謀に加わり,V2やV4に対してT襲撃を指示した事実が認められる。 なお,W3についても,組長秘書としてV1に付き従うというその甲2組内における役割・行動状況や,これまで認定したV4との会話の内容等に照らし,甲2組組長のV1と筆頭若頭補佐のV4をつなぐ連絡役として重要な役割を果たしたといえ,本件犯行の共謀に加わった事実が認められる。 イ W1の関与V4は,平成25年1月25日午前11時2分,甲1會理事長補佐兼丙1組 組長のW1が使用する携帯電話に電話をかけ,「オジキ。白い電話持たれてますか。」「電源お願いします。」「ちょっと電話します。今から。」と述べるなどして電話を切ると(通信番号38),同日午前11時52分,W5が使用する携帯電話にも電話をかけ,「電源入れて。」と指示をして電話を切った(通信番号39)。 V4は,W1にかけた電話がつながっているのに,別の携帯電話(白い電話)の電源を入れるようW1に依頼し,直ちに電話を切っているところ,同様の指示をさほど時間を置かずW5にもしていること,W5にはT襲撃のための連絡用として飛ばしの携帯電話を渡していたこと(前記⑵ア)からすると,V4はW1にもT襲撃の連絡用に飛ばしの携帯電話を渡し,これを利用して捜査機関に通信内容を把握されたりしないように留意しつつ,W1との間で本件犯行に関する連絡をしていたものと推認される。 また,V4は,本件犯行後の同月28日午後10時15分,W2に電話をかけ,「自分が明日。」「多分朝ならな,分からんとですけど。」「多分親分から朝呼ばれて。」「会長んとこ行く ものと推認される。 また,V4は,本件犯行後の同月28日午後10時15分,W2に電話をかけ,「自分が明日。」「多分朝ならな,分からんとですけど。」「多分親分から朝呼ばれて。」「会長んとこ行く前に。」「言われると思うんですよ。」「で,そこで。」「言うやないですか。」「だいたいW1オジキに言うて,W1オジキから親分に報告してもらうのが筋なんやけど。」「多分逆になると思うんですよ。」などと述べた(通信番号72)。 この会話において,V4はW1や親分(V1)への報告に言及するものの,その報告事項を明示していないが,会話の相手は数時間前に本件犯行の実行に及んだW2であること,「言われる」「言う」など通信傍受を警戒していると思われる曖昧な言い方をしていること,当該会話の時点では,V4からV1に対しては,本件犯行の実行が終了した旨の概括的な報告がなされていただけであると推察されること(通信番号66,67参照)などを踏まえると,V4のいう報告事項とは,本件犯行の具体的な経過・結果に他ならないものと認められる。このように,V4は,本件犯行の具体的な経過・結果について,V4からW1に報告し,W1からV1に報告するのが筋である旨述べているところ,このことは,本件犯行計画へのW1の関 与を推認させる。 V4は,前記のとおり,本件犯行翌日である同月29日午後1時43分のW3からの電話で甲2組のs7町事務所に呼び出されると,V1の指示を受け,同日午後2時4分から同日午後2時29分までの間に,W6らへ本件犯行の報酬を分配した(通信番号74,76ないし79,81)。W1は,V4がs7町事務所に呼び出された後の同日午後1時59分,V4からの電話を受け,V4と替わった人物から,「○○○○と△△ですか。」「二人がしたですか。」と尋ねられ,「○ 6ないし79,81)。W1は,V4がs7町事務所に呼び出された後の同日午後1時59分,V4からの電話を受け,V4と替わった人物から,「○○○○と△△ですか。」「二人がしたですか。」と尋ねられ,「○,○○だけ。 ○○だけです。」と答えた(通信番号75)。 V4は,W1へ電話する16分前にV1の秘書であるW3から甲2組s7町事務所に呼び出されていること,V4からの電話を受けたW1が,V4から替わった電話の相手に丁寧語で話しており,当該相手はW1の上位者であるとうかがわれることからすると,W1と電話で会話をした人物は,V1であると推認できる。また,証拠上,「○○○○」「△△」とは,それぞれ丙1組組員のW6及びZ17 を指すと認められるから,W1は,V1からW6及びZ17 の二人がしたのかと尋ねられ,W6だけである旨回答したものと認められる。そして,W1とV1の会話の時期や,その会話の後にW6がV4から連絡を受けて本件犯行に関与した報酬として15万円を受領していることからすれば,V1がW1に対し,W1配下の組員であるW6とZ17 が本件犯行に関与したのかを尋ねたことは明らかであり,V1の質問に対してW1が即座に回答していることからすれば,W1はかねてより,W6の関与等,本件犯行計画を認識し,これを了承していたことが強く推認できる。弁護人は,前記V1とW1の通話の際,V1のすぐそばには本件を統括したV4がいたのであるから,V1が本件について聞くのであればV4に聞けばすぐ分かることであって,V1がW1に尋ねたのは本件以外の別件である旨主張する。しかし,V4はW6に足の付かないバイクの調達を指示したものの,それをW6一人でしたのか他の丙1組組員と一緒にしたのかまで把握していたかは明らかではないし,V1が本件犯行の報酬を与えるに当たって,甲2組一門と はW6に足の付かないバイクの調達を指示したものの,それをW6一人でしたのか他の丙1組組員と一緒にしたのかまで把握していたかは明らかではないし,V1が本件犯行の報酬を与えるに当たって,甲2組一門とはいえ,甲2組とは別の丙1組の組員の関 与の有無を丙1組組長であるW1に念のため確認したことは自然な流れといえるから,V1がW1に尋ねたのが本件以外の別件であるとの弁護人主張の疑いは生じない。 以上の検討によれば,W1が,本件犯行に関する連絡用の飛ばしの携帯電話を所持していたこと,V1から本件犯行に関与した配下組員を尋ねられた際,W6である旨即答したことが認められる。また,本件犯行の統括役を務めたV4が,本件犯行の具体的な経過・結果の報告はW1に対して先に行い,W1からV1に報告するのが筋である旨述べたことも認められるところ,これらの事実関係は,W1が本件犯行に深く関わっていたとしなければおよそ説明のつかないものというべきであるから,W1が本件犯行の共謀に加わった事実が認められる。 ウ Z18 の関与が認められないこと甲1會専務理事兼甲2組組織委員長であるZ18 については,平成25年1月26日,V4から電話で連絡を受けて,同月28日の被告人X方の当番(総裁本家当番)にW2と交代して入ることを了承したこと,その際,V4から「仕事」が理由である旨告げられたこと,同月27日にもV4から,電話で「仕事」が「この間,一回流れた。」旨告げられ,「うん。分かる。」などと答えたことが認められ(通信番号50,53等),W2が一度延期になった甲2組の「仕事」をする予定であることをZ 18 が理解していたことがうかがわれる。しかし,甲2組の「仕事」と言っても様々なものが想定され得るのであり,前記会話からだけでは,Z18 がこの「仕事」の内 甲2組の「仕事」をする予定であることをZ 18 が理解していたことがうかがわれる。しかし,甲2組の「仕事」と言っても様々なものが想定され得るのであり,前記会話からだけでは,Z18 がこの「仕事」の内容をどの程度伝えられていたかは判然とせず,他にZ18 が「仕事」の具体的内容を認識していたことを示す証拠はない。そうすると,Z18 においてW2らが人を襲撃することを未必的にでも認識していたとするには疑問が残る。仮にそのような認識があったとしても,総裁本家当番をW2と交代したという行為のみでは,共同正犯であることを基礎付ける事情としては足りないというべきであるから,Z18 が本件犯行の共謀に加わったとは認められない。 エまとめ以上によれば,甲1會理事長兼甲2組組長であるV1がV2やV4に対して本件犯行を指示し,本件犯行後には,犯行に関与した組員らに報酬を渡していること,本件犯行には甲2組組長秘書であるW3や,甲1會理事長補佐兼丙1組組長であるW1が関与していることが認められる。 そして,これまで検討したところによれば,本件犯行には,甲2組序列1位の組長であるV1以下,序列2位の若頭であるV2,風紀委員長のV3,筆頭若頭補佐のV4,若頭補佐のW2及び組長付のV5といった複数の甲2組幹部を始めとする多くの甲2組組員や,甲2組一門である丙1組組長のW1及び同組組員のW6らが関与したこと,それらの組員が,V4の統括の下,Tの行動確認,犯行使用道具等の準備,実行役やその送迎役,犯行使用道具等の処分,V1との連絡役といった細分化された役割を分担した上で本件犯行が実行されたことが認められ,本件犯行は,甲1會甲2組の指揮命令系統に従って,組織的に準備・遂行されたものであると認められる。 ⑷ 被告人両名の本件犯行への関与ア た役割を分担した上で本件犯行が実行されたことが認められ,本件犯行は,甲1會甲2組の指揮命令系統に従って,組織的に準備・遂行されたものであると認められる。 ⑷ 被告人両名の本件犯行への関与ア被告人Xの関与被告人Xは,本件クリニックの担当看護師であるTに対して強い不満を抱いていたことa 被告人Xの本件クリニックにおける診療経過等関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 被告人Xは,平成24年8月1日,本件クリニックを訪れ,レーザー脱毛について相談し,看護師であるTの説明を受けて施術を受けることにした。同月4日,被告人Xは,Tに対して,亀頭増大手術も受けることを希望し,その日に1回目のレーザー脱毛の施術及び,亀頭にバイオアルカミド4本を入れる亀頭増大手術が実施された。なお,レーザー脱毛の施術はTが担当した。 被告人Xは,前記手術の直後から,本件クリニックに複数回にわたり問合せの電 話をかけ,「患部が化膿しているのではないか。」と尋ねたりしていた。被告人Xが代理の者を来院させて替えのガーゼを要求したが断られたこともあった。 Tは,被告人Xに対する2回目以降のレーザー脱毛施術も担当していたが,同年10月15日の脱毛の施術の際,レーザー照射により痛みを訴えた被告人Xに対し,「Xさんでも痛いんですか。入れ墨を入れるより痛くないでしょう。」などとぞんざいな発言をしたことがあった(被告人Xは,公判で,Tの発言にちょっとカチッときたがぐっとこらえた旨供述している。)。また,この日,Tが,本件クリニックの新入の女性職員に話しかけようとした被告人Xを遮って処置室に案内したこともあった。 被告人Xは,同月18日,予約なしで本件クリニックを訪れ,対応したTの同僚看護師であるNらに対し,同月15日に受けたレーザー脱毛施 話しかけようとした被告人Xを遮って処置室に案内したこともあった。 被告人Xは,同月18日,予約なしで本件クリニックを訪れ,対応したTの同僚看護師であるNらに対し,同月15日に受けたレーザー脱毛施術に関して,「レーザーを当てた部分が炎症を起こしている。」「照射の出力が強かったんじゃないか。」「わざと強く当てたんじゃないか。」などと不満を述べた。また,被告人Xは,これまで本件クリニックで受けた対応について,「初めは(亀頭に入れる本数について)4本入れるつもりではなかったのに,クレジットカードを渡していたからそうしたんじゃないか。」「新しい受付さんと話をしているときも話を遮ったりとか,良心的な対応じゃない。」「担当の専門の弁護士がいるから,いつでも訴えたりできる。」などと不満を述べた上,Nに対して,Tについて,「ああいう人にはなったらいけんよ。」と言った。その際,本件クリニックに不在だったTは,その日の夜に被告人Xに電話をかけ,謝罪した。 被告人Xは,同月20日,本件クリニックを訪れ,Tも同席している中で,担当医師に対して,亀頭増大手術について,手術の結果は失敗ではないのかと尋ねた。 これに対して担当医師は,患部の状態について,特別に処置が必要な状態ではない旨説明をした後,美容整形なので,患者本人が満足でなければ成功とは言えない旨述べた。被告人Xからは,それ以上本件クリニックの責任を追及する発言はなかった。 ⒝ 以上のとおり,被告人Xは,本件クリニックで受けた亀頭増大手術及びレーザー脱毛施術の結果が思わしくなかった上,これらに関する本件クリニックの対応,とりわけ担当看護師であるTの対応が悪いと感じたことから,Tに対して強い不満を抱いていたものと認められ,被告人Xには,本件犯行の動機があったと認められる。 そし れらに関する本件クリニックの対応,とりわけ担当看護師であるTの対応が悪いと感じたことから,Tに対して強い不満を抱いていたものと認められ,被告人Xには,本件犯行の動機があったと認められる。 そして,Tは,本件クリニックに勤務する看護師であったところ,前述したW4の施術体験の点を除き,被告人X以外の甲1會組員とは一切接点がなく,これらの者とトラブルを抱えていたという事情も全くうかがわれないのであり,被告人X以外には甲1會内に犯行動機を有する者はいなかったと認められる。 b 被告人Xの不満は解消していたかこれに対して,弁護人は,被告人Xは,Tの同年10月15日の脱毛の施術に問題があったと考え,同月18日の時点で腹立ちを覚えていたことは事実であるが,同日にNに不満を聞いてもらい,その日の夜のTとの電話でのやり取りによって,Tに対する怒りは完全になくなり,同月20日には,被告人Xは,Tに最後まで自分の治療に当たってくれるように頼んでいるのであるから,被告人XのTに対する怒りは同月20日の時点で完全に解消している旨主張する。 しかしながら,先に認定した一連の経過に照らすと,被告人Xが抱いた不満はかなり強いものであったと認められる上,後記のとおり,本件犯行後に被告人Xが「あの人は刺されても仕方ない。」と発言していることにも照らすと,被告人Xの不満は同年10月20日の時点ではいまだ解消していなかったと認められるから,弁護人の主張は理由がない。 被告人Xは,本件の2日後に本件クリニックを受診した際,Tが本件犯行の被害者であることを知っており,犯行を肯定的に捉える発言もしていたことa 本件の報道状況福岡県警察の各警察署では,夜間の当直勤務時間における報道対応は当直主任が担当することとされ,事件・事故が発生した場合,まず,当直主任が報道連絡 定的に捉える発言もしていたことa 本件の報道状況福岡県警察の各警察署では,夜間の当直勤務時間における報道対応は当直主任が担当することとされ,事件・事故が発生した場合,まず,当直主任が報道連絡票を 作成し,これを県警本部総務部広報課が点検してマスコミ各社へ送付し,その後のマスコミからの事件内容等に関する問合せについては,個別に当直主任が対応することとされていた。本件当時,博多警察署留置管理課長であったJは,本件当夜の当直主任であったところ,本件発生の報を受け,前記の定めに従い,報道連絡票を作成し,その後のマスコミからの問合せに応答したが,これらの際,いずれも被害者であるTの氏名を匿名化して対応した。 実際に,本件の翌日である平成25年1月29日から同月31日までの間,九州で発刊された新聞13紙中,7紙(8紙面)において本件に関する報道がなされたが,被害者については,新聞紙面において,いずれもt区又は現場近くに住む45歳の看護師の女性としか記載されなかった。 b 本件の2日後の被告人Xの本件クリニックでの発言⒜ 本件の2日後である平成25年1月30日,被告人Xは,レーザー脱毛施術を受けるため,本件クリニックを訪れた。Tに代わって被告人Xの施術を担当したNは,その際の被告人Xの発言等について,次のとおり供述する。 被告人Xには,Tが入院したことは伝えていたところ,被告人Xから,Tはどうしたのかと聞かれ,事件に遭ったことは伝えてはいけないと考えていたので,「事故に遭って。」と答えた。更に被告人Xから,「どこで」「いつ」などと事故の内容についていろいろと聞かれたため,隠し切れずに「事件に遭って。」と答えた。すると,被告人Xが「刺されたんか。」と聞いてきたので,なぜTが刺された事実を知っているのかとびっくりし,頭が どと事故の内容についていろいろと聞かれたため,隠し切れずに「事件に遭って。」と答えた。すると,被告人Xが「刺されたんか。」と聞いてきたので,なぜTが刺された事実を知っているのかとびっくりし,頭が真っ白になった。被告人Xは,その日に帰るまでの間に,Tについて,淡々とした口調で,「あの人は刺されても仕方ない。」とも言っていた。 ⒝ 前記⒜のNの供述は,具体的であるほか,被告人Xから「刺されたんか。」と聞かれて,非常に驚いたことや,被告人Xが事件に関わっているのではないかという怖さを感じ,一人では抱え切れなくなって本件クリニックの男性カウンセラーに被告人Xの発言内容を伝えたことなど,当時の心情やそれに基づく自身の行動についても説明していて,自然な内容である。 弁護人は,Nの供述によれば,一連の会話の中で出た「刺されたんか。」「あの人は刺されても仕方ない。」という被告人Xの発言でNは強烈な印象を受けたことになるところ,事件から約2週間後の平成25年2月時点のNの警察官調書には,被告人Xの「あの人は刺されても仕方ない。」との発言があったとの記載は一切なく,同年6月の警察官調書にも,刑事から,あの女は悪い女とかやられて当然といったニュアンスをもった言動がなかったかと聞かれて,「仕方ない。」みたいなことを言われていた記憶がありますと供述した旨の記載があるにとどまり,Nの記憶に残るような強い言葉はなかったことが明らかであると主張する。しかし,Nは,この点についても,被告人Xを犯人と決め付けることになってしまうかと思い,初めは警察にどこまで話していいか分からず,事細かくは伝えていなかったが,やり取りをしていく中で全て伝えた方がいいと思った旨の説明をしており,その供述経過にも不審な点は見当たらない。 以上によれば,被告人Xの発言 まで話していいか分からず,事細かくは伝えていなかったが,やり取りをしていく中で全て伝えた方がいいと思った旨の説明をしており,その供述経過にも不審な点は見当たらない。 以上によれば,被告人Xの発言に関するNの供述は十分に信用でき,その供述するとおりの事実が認定できる。その他Nの供述態度など弁護人が種々主張する点を検討しても,Nの供述の核心部分の信用性は揺らがない。 ⒞ 被告人Xは,公判において,平成25年1月30日の本件クリニックでのNとのやり取りにつき,NからTが事故に遭った旨を聞き,車の事故かねとNに聞いたところ,いいえ,通り魔ですと答えたので,切られるか刺されるかしたのかと思い,そう思ったことを口に出したかもしれない,と供述している。そして,弁護人は,この被告人Xの供述に基づき,被告人XがNに対して「刺されたんか。」と述べたのは,NからTが通り魔に遭ったと聞いたからであって,Nから単に事件に遭ってと言われたのみでそのような発言をしたわけではない旨主張する。 しかし,Nは,通り魔に遭ったという説明を被告人Xにしたのではないかと弁護人から尋ねられたのに対し,していない旨明確に供述している。また,被告人Xの供述によっても,Nは,Tが本件クリニックを休んでいた理由について,当初は事故に遭った旨説明していたというのであり,Tが休んだ理由について質問してくる 被告人Xに対して,Nが慎重に言葉を選んで対応していたことは明らかである。そうすると,被告人Xから車の事故かねと聞かれたNが「いいえ,通り魔です。」と答えたというのは,そのようなNの対応状況からして唐突かつ不自然である。弁護人は,Tの夫が本件クリニックのスタッフに「通り魔」と話していることから,Nが「通り魔に遭った。」と話さない合理的な理由はないと主張するが,失当であ うなNの対応状況からして唐突かつ不自然である。弁護人は,Tの夫が本件クリニックのスタッフに「通り魔」と話していることから,Nが「通り魔に遭った。」と話さない合理的な理由はないと主張するが,失当である。被告人Xの前記供述は信用できず,これに基づく弁護人の主張も採用できない。 c 小括前記a,bによれば,被告人Xは,本件の2日後に本件クリニックを受診した際,被害者が匿名で報道されていた本件につき,Tがその被害者であることやTが刺されたという被害態様を知っており,かつ,本件犯行を肯定的に捉える発言もしていた事実が認められる。 本件犯行は被告人Xの意思決定によるものであることこれまで検討したところによれば,以下の事実が指摘できる。 すなわち,本件犯行は,甲1會序列3位の理事長兼甲2組序列1位の組長であるV1以下,甲2組序列2位の若頭のV2や統括役となった甲2組筆頭若頭補佐のV4を始めとする多くの甲2組組員,さらには甲1會幹部であり甲2組一門の丙1組組長であるW1やその配下のW6までもが関与し,甲2組の指揮命令系統に従い細分化した役割を分担して,組織的に準備・遂行されたものである。 そして,被告人Xは,本件クリニックで受けた亀頭増大手術及びレーザー脱毛施術の結果が思わしくなかった上,これらに関する本件クリニックの対応,とりわけ担当看護師であるTの対応が悪いと感じ,Tに対して強い不満を抱いており,T襲撃に及ぶ動機があった。しかも,被告人XがTに不満を抱いた時期と,V4らにより本件犯行の準備が始められた時期とは矛盾がない。一方,被告人Yや本件犯行に関与した前記甲1會組員らは,Tと一切接点がなく(W4については前記のとおり本件クリニックで施術体験をしたにとどまる。),被告人X以外には甲1會内に犯行動機を有する者はいなかった。 に関与した前記甲1會組員らは,Tと一切接点がなく(W4については前記のとおり本件クリニックで施術体験をしたにとどまる。),被告人X以外には甲1會内に犯行動機を有する者はいなかった。 さらに,被告人Xは,本件の2日後に本件クリニックを受診した際,被害者が匿名で報道されていた本件につき,Tがその被害者であることやTが刺されたという被害態様を知っており,かつ,本件犯行を肯定的に捉える発言もしていた。 これらの事実は,被告人Xが本件犯行の意思決定に関与していなかったとすれば,説明が極めて困難なものというべきであるから,本件犯行は,被告人Xの意思決定によりなされたものと合理的に推認できる。 これに対して,被告人Xは,自分は本件犯行に関与していない,平成24年10月15日から同月18日までの間に,自宅の脱衣所などでTの愚痴を言ったのを部屋住みの組員などが聞き,それが他の組員に伝わった可能性がある旨供述し,弁護人は,この被告人Xの供述に沿って,被告人X以外の人物が被告人Xの腹立ちを知り,その解消を知らないままT襲撃を実行した可能性がある旨主張する。 しかしながら,被告人Xの腹立ちを知った組員が,3か月以上経った後に,その時点での被告人Xの気持ちを確かめもしないまま,T襲撃を実行するということ自体が,にわかには考え難い。しかも,被告人Xは,本件当時もTによるレーザー脱毛施術を受け続けていたのであるから,Tが襲撃されればこの施術にも支障が生じるのは明らかであったこと,本件犯行が甲2組の組織的犯行であることが発覚すれば,Tと唯一接点を有し,かつ,甲2組の上位団体である甲1會の最上位に位置する被告人Xに強い嫌疑が及ぶことも明らかであったことからすれば,組員が,被告人Xから明示の指示や承諾を受けないまま,独断で本件犯行に及ぶことは一 し,かつ,甲2組の上位団体である甲1會の最上位に位置する被告人Xに強い嫌疑が及ぶことも明らかであったことからすれば,組員が,被告人Xから明示の指示や承諾を受けないまま,独断で本件犯行に及ぶことは一層考え難い。本件犯行に関与したV1以下の組員らが粛清ないし処分されていないことも,被告人Xに無断で本件犯行が実行された可能性を否定する事情といえる。よって,被告人X及び弁護人が主張するような可能性はないと認められる。 イ被告人Yの関与前記第3で既に述べたとおり,五代目甲1會における重要な意思決定は,被告人両名が相互に意思疎通をしながら,最終的には被告人Xの意思により行われていたものと推認されるところ,本件は,甲1會総裁である被告人Xの意思決定に基づき, V1を始めとする多数の甲1會甲2組の組員が組織的に準備・遂行した犯行であり,この意思決定が甲1會の重要事項に当たることは明らかであるから,特段の事情がない限り,被告人Xは,被告人Yと意思疎通をした上で,本件犯行を実行するとの最終的な意思決定をしたものと推認できる。 そして,本件犯行には,甲1會の序列3位である理事長のV1と,甲1會執行部の一員である理事長補佐のW1が深く関与しているところ,被告人Yは両名共通の渡世上の親に当たる甲1會会長であり,かつ,両名と個人的にも関係が深いことから,被告人Yも本件犯行に関与していたと考えるのが自然であること,ひとたび甲1會甲2組の組織的犯行であることが発覚すれば甲1會総裁である被告人Xに強い嫌疑が及ぶこととなる本件犯行について,V1以下の組員が甲1會の当代会長である被告人Yに相談なく実行に及ぶとは考え難いことなども踏まえれば,本件犯行の実行に際して被告人Yが排除されていたといった特段の事情がないことは明らかであり,本件犯行は,被告 員が甲1會の当代会長である被告人Yに相談なく実行に及ぶとは考え難いことなども踏まえれば,本件犯行の実行に際して被告人Yが排除されていたといった特段の事情がないことは明らかであり,本件犯行は,被告人Xが被告人Yと意思疎通をした上で最終的な意思決定をしたものであると推認できる。これに反して本件犯行に関与していない旨をいう被告人Yの供述は信用できない。 ⑸ 本件犯行が団体の活動として組織により行われたこと前記第3で既に述べたとおり,五代目甲1會では,対外的にも組織内においても,総裁である被告人Xが最上位の扱いを受けており,継承盃や事始めといった式典における被告人Xの振る舞いや被告人Xに対する組員の接し方に見られるように,総裁である被告人Xの権威を高めることにより甲1會の組織としての結束を図っていたと認められる。前記のとおり,本件犯行は,被告人Xが,自身のレーザー脱毛施術等を担当していた看護師であるTの態度に強い不満を抱いたことが契機・動機となって実行されたものであり,Tを甲1會組員により組織的に襲撃することによって,被告人X,ひいては甲1會の威信を維持するとともに,その結束を固めるという効果又は利益を,団体としての甲1會に帰属させるものといえる。したがって,本件犯行は,団体の活動として行われたと認められる。 また,前記のとおり,本件犯行は,被告人Xが,被告人Yと意思を相通じた上で決定したものであり,これを受けて被告人YがV1らに本件犯行を指示し,V1が配下の甲1會甲2組組員に指示するといった順次の指示命令を経て準備・遂行され,かつ,その遂行に当たっては,多くの甲1會甲2組の組員ほかが細分化された役割を分担して行ったものである。したがって,本件犯行は,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従っ れ,かつ,その遂行に当たっては,多くの甲1會甲2組の組員ほかが細分化された役割を分担して行ったものである。したがって,本件犯行は,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,これを実行するための組織により行われたと認められる。 ⑹ 結論以上検討したところによれば,被告人両名が,判示第3の各共犯者と本件犯行を共謀した事実が優に認められる。 第6 歯科医師事件について 1 事件の概要及び当裁判所の判断の結論歯科医師事件の犯行(以下,歯科医師事件の項では,この組織的犯罪処罰法違反の犯行を「本件犯行」といい,当該事件を「本件」ということがある。)の状況等について,次の事実が証拠上容易に認められる。 平成26年5月26日午前8時29分頃,歯科医師であるQ3が,北九州市s1区所在の当時の勤務先付近の駐車場で自車から降りると,V5がQ3の背後から近づき,所携の刃物(以下,歯科医師事件の項では,この刃物を「本件刃物」という。)で,その背部,胸部,大腿部等を目掛けて多数回突き刺すなどし,Q3に入院加療約14日間及び外来加療約3か月間を要する見込みの左大腿部刺創,腹部刺創,胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負わせた。 そして,関係証拠から認定できる事実を総合すれば,実行犯であるV5に殺意が認められるとともに,被告人両名が,判示第4の各共犯者と,本件犯行,すなわち組織的殺人及び不正権益維持・拡大目的殺人を(ただし,W4,V5及びV6との間では組織的殺人の限度で)共謀した事実が認められる。以下,詳述する。 2 実行犯であるV5の殺意等 ⑴ Q3の負傷結果及び死亡可能性ア被害者であるQ3は,本件とは別の被告人の公判で,本件犯行時の被害状況について,要旨,以下のとおり供述している。 駐車場で車をとめた ⑴ Q3の負傷結果及び死亡可能性ア被害者であるQ3は,本件とは別の被告人の公判で,本件犯行時の被害状況について,要旨,以下のとおり供述している。 駐車場で車をとめた後,助手席側に回ってバッグを取り出すため,助手席のドアを開け,上半身を入れてバッグを取ったところ,背中にどんと突き飛ばされるような感じのすごい衝撃を受けた。相手が乗っかかってくるような感じだったので,体で押しのけて後ろを振り返ると,相対した相手が,両手で持った刃物(ナイフ)で自分の胸を目掛けて刺そうとしてきた。そこで,刃物を持っている相手の両手を包み込むように自分の両手で押さえ,自分の胸が刺されないように下方向に押し下げようとしたが,相手が執ように刃物を突き出してきたことから,刃物を押し下げながらも,自分の体が次々に刺されていった。そして,刃物が自分の太腿に刺さった状態のまま膠着状態になったところ,相手は突然走って逃げて行った。 Q3の供述内容は,具体的かつ詳細で,後述する本件犯行によりQ3が負ったけがの状況とも整合する自然なものであって,十分信用できる。 イQ3は,本件犯行により前記1の傷害を負ったところ,Q3の治療に当たった医師は,Q3の負傷部位の画像写真も踏まえ,Q3が負った具体的な傷は以下の①ないし⑧の8か所であったと供述している。 ・胸部:2か所①胸部正面の長さ及び深さが約1センチメートルの胸骨に達する刺創②左側胸部の長さ及び深さが約1センチメートルの肋骨に達する刺創・左下腹部:1か所③長さ約5センチメートル,深さ約7センチメートルの刺創・左大腿部:4か所④長さ約10センチメートル,深さ約10センチメートルの刺切創⑤深さ及び長さがいずれも約1センチメートルの刺創又は切創⑥長さ約5センチメートル,深さ約2な メートルの刺創・左大腿部:4か所④長さ約10センチメートル,深さ約10センチメートルの刺切創⑤深さ及び長さがいずれも約1センチメートルの刺創又は切創⑥長さ約5センチメートル,深さ約2ないし3センチメートルの切創 ⑦長さ約8センチメートル,深さ約1ないし2センチメートルの切創・背部:1か所⑧長さ約6センチメートル,深さ約7センチメートルの腸骨や第5腰椎の横突起に達する刺創そして,前記医師は,Q3を救急搬送して治療した状況や,前記の傷によりQ3が死亡した可能性等について,以下のとおり供述している。 Q3負傷の現場には,まず救急隊が出動し,Q3が致命的な状態であり,現場で医師の処置が必要と判断されたため,私もドクターカーで現場に赴いた。救急隊が到着した時点でQ3の橈骨動脈の触知が非常に弱い状態であり,私が現場に到着したときには頸動脈の触れも非常に弱い状況であった。Q3は主に左の大腿部から大量に出血しており,活動性の出血のため救急隊が圧迫止血を試みてもなかなか出血が止まらない状況であった。頸動脈の触れの程度からQ3の血圧は少なくとも60未満(50程度)と推測し,Q3の大量出血(現場において少なくとも1リットル以上)や発汗,落ち着かない不穏な様子から総合して,出血性ショックの状態と判断した。現場で輸液を投与し圧迫止血を行って,病院搬送時には血圧も回復してきたので全身の損傷部位を確認してから手術を行ったが,手術中には更に約1リットル出血した。 左大腿部の創傷のうち1か所(前記イ④の傷)は,大腿骨に触れる程度まで達し,深大腿動脈の分枝の動脈が切断されており,輸液投与などの処置を行わなかった場合,そのまま出血して,Q3は,10から15分程度で心停止に至り,死亡する可能性があった。また,左下腹部の創傷 度まで達し,深大腿動脈の分枝の動脈が切断されており,輸液投与などの処置を行わなかった場合,そのまま出血して,Q3は,10から15分程度で心停止に至り,死亡する可能性があった。また,左下腹部の創傷(前記イ③の傷)は,小腸を3か所損傷しているが,小腸はおなかの中で浮いているような臓器であり,刃物がゆっくり入った場合には小腸がそれを避けるので,かなりの速度で刃物が体内に刺入されたと判断した。そして,小腸の後ろに大動脈があることから,更に5センチメートル前後刃物が深く入れば,大動脈に損傷を来す可能性が十分にあった。胸部正面の創傷(前記イ①の傷)は,刃物が胸骨に当たったことで深さ1センチメートルにと どまっているが,Q3から見て左側に一,二センチメートルずれてそのまま刺入されていれば,心臓や肺に損傷を来す可能性は十分あり得た。 前記,の医師の供述は,救急科と外科を専門とする医師として実際にQ3の治療に当たった経験を踏まえ,医学的な所見等を述べたものであり,その供述内容も具体的で不合理な点はなく,十分信用できる。 ウまた,V5の公判供述(第51回)によれば,V5が本件犯行に用いた刃物(本件刃物)は,刃体の長さが約10センチメートル,刃の幅が少なくとも3ないし4センチメートルはある,先端が鋭利な刃物であったと認められるところ,これはQ3の前記負傷結果から推定される刃物の形状と整合している。 ⑵ 本件の犯行態様及びV5の殺意信用できるQ3の供述に,その治療に当たった医師の供述を併せれば,V5は,無防備なQ3の背後から近づき,その背部に1回本件刃物を刺した後,正対したQ3に対し,両手で持った本件刃物でその胸部を突き刺そうとし,Q3から両手をつかまれて抵抗されたにもかかわらず,その胸部や腹部などを目掛けて,相当強い力 き,その背部に1回本件刃物を刺した後,正対したQ3に対し,両手で持った本件刃物でその胸部を突き刺そうとし,Q3から両手をつかまれて抵抗されたにもかかわらず,その胸部や腹部などを目掛けて,相当強い力を込めて繰り返し本件刃物を突き出し,その結果,Q3に前記⑴イの①ないし⑧の8か所の傷を負わせ,Q3をひん死の状態に陥らせたと認められる。V5は,前記⑴ウのような本件刃物の形状を認識していた上,自らがQ3の身体の枢要部目掛けて本件刃物を複数回にわたり相当強い力を込めて突き出す行為をしていることも当然に認識していたと認められるから,V5にQ3に対する殺意があったことは優に認められる。 この点,V5は,公判で,最初はQ3の右側の尻を狙ったつもりだったが,それ以降のことは覚えていない,前後不覚で心理的に目一杯だったので自分の意思とは違って腰の辺りを刺してしまったと思うなどと供述するが,全体的に甚だ曖昧な内容であり,既に認定したQ3の負傷状況や本件犯行態様からすれば,V5がQ3の尻のみを狙ったとは到底考えられず,信用できない。 弁護人は,V5の供述によれば,V5は,V4から被害者の殺害を指示されたわ けではないのはもとより,V5自身も被害者に深い傷を負わせる意図はなく,ただ単に尻かももを五,六回刺そうと思っていただけだというのであるから主観的には未必的殺意すらなかった,V5は,実際にQ3を刺した後も軽傷を負わせただけだと思っていたなどして,V5には未必的殺意も含め殺意はなかった旨主張する。この点,V5は,V4から,「尻かももを五,六回,しゃしゃっと刺してくれ。」などと言われて,その指示どおりに本件犯行に及んだと述べるが,V5の実際の犯行態様は,V4に指示されたという態様から大きくかけ離れており,V5が本件犯行時に我を忘れた心理 しゃしゃっと刺してくれ。」などと言われて,その指示どおりに本件犯行に及んだと述べるが,V5の実際の犯行態様は,V4に指示されたという態様から大きくかけ離れており,V5が本件犯行時に我を忘れた心理状態になっていたことを示す事情も見当たらないことから,V4の指示がV5供述のような内容にとどまるものであったかはかなり疑わしい。仮にV4の指示がそのような内容であったとしても,V5はQ3の身体の枢要部目掛けて複数回にわたり相当強い力を込めて本件刃物を突き出しており,そのことをV5自身が認識している以上,V5に殺意があったという前記認定は左右されない。 ⑶ V4及びその上位者の殺意弁護人は,V4は,被害者の尻かももを四,五回刺してけがを負わせるように,それをV5にやらせるようにと,ある者から指示を受けたので,V5に対し,「尻かももを四,五回刺してけがを負わせろ。」「殺せっちゅうわけやないんやけ,けがを負わせりゃいいだけやけ。」と言ってQ3を襲撃するよう指示したなどと供述していることから,少なくともV4やV4にQ3の襲撃を指示した者には,未必的にもQ3を殺害しようとの意図がなかったことは明白であり,単に傷害の故意があったにすぎない旨主張する。 しかし,V4のV5に対する指示が「尻かももを刺してけがを負わせろ。」というものであったかそもそも疑わしいことは既に説示したとおりである。仮にV4が尻かももを四,五回刺せと上位者から指示され,その旨をV5に伝えたとしても,鋭利な刃物で複数回人の身体を突き刺す行為であり,およそQ3が死亡する事態が生じ得ないとV4が考えていたとは思われないし,殺せというわけではない旨の発言があったとしても,Q3襲撃の指示を受けた際に快い反応を示さなかったV5に向 けて,尻込みしないようにとの意図で掛けた言 考えていたとは思われないし,殺せというわけではない旨の発言があったとしても,Q3襲撃の指示を受けた際に快い反応を示さなかったV5に向 けて,尻込みしないようにとの意図で掛けた言葉と理解するのが自然である。よって,V4にはQ3に対する少なくとも未必的な殺意があったと認められ,また,後述のとおりV4に犯行を指示したと認められるV4の上位者についても,Q3に対する少なくとも未必的な殺意があったと推認できる。弁護人の主張は理由がない。 3 本件犯行の共謀について(組織的犯罪処罰法違反の要件該当性を含む。)⑴ 甲1會甲2組組員らによる本件犯行の準備,実行及び犯行後の状況関係証拠によれば,以下のアないしウの事実が認められる。 ア犯行準備状況甲1會専務理事兼甲2組本部長であるV4は,平成26年2月終わり頃(以下の⑴及び⑶においては,平成26年の出来事について年の記載を省略することがある。)から,甲1會甲2組の複数の組員にQ2の自宅や会社(k4),使用車両等を教えて,継続的にQ2の行動確認をさせたが,同組員からQ2には警察車両が付いて回っているのでQ2の動きを調査するのは難しいなどと報告を受けた。V4は,その後の3月末頃,Q3が北九州市s1区のg2大学で勤務していることや,Q3が使用する自動車(以下「Q3車両」という。)の車種や色,ナンバー等の情報を入手すると,甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐のW4と共に,同大学やその周辺の駐車場で同車両を探し,同大学の近くの駐車場(以下「本件駐車場」という。)に同車両が駐車されていることを確認した。そして,V4は,その頃から4月初め頃にかけて,甲1會甲2組組員に対し,Q3車両の行動全般を確認させ,毎朝8時半前後に,Q3車両が本件駐車場に来ることを把握した。 V4は,5月中旬頃,Q3を襲 た。そして,V4は,その頃から4月初め頃にかけて,甲1會甲2組組員に対し,Q3車両の行動全般を確認させ,毎朝8時半前後に,Q3車両が本件駐車場に来ることを把握した。 V4は,5月中旬頃,Q3を襲撃すると決まったことから,朝の8時半頃,本件駐車場にQ3が現れたときにQ3を襲撃しようと考えた。そして,V4は,その頃,事件現場となる本件駐車場から北九州市s1区のm5神社までの逃走経路をW4と確認するとともに,W4に対し,甲1會理事兼甲2組組員のV6が運転するバイクに甲1會専務理事兼甲2組若頭補佐・組長付のV5が乗ってm5神社まで来るので,V5を自動車に乗せて送っていくことなど,V5の送迎をするように指示した。ま た,V4は,V6に対して,5月中旬頃,事件に使用する足のつかないバイクを用意するように指示し,同月下旬頃には,バイクを運転してV5を送迎するように指示した。V4は,その頃,詳しいことはW4に聞くようにV6に言い,W4は,V4の指示に従い,V6に対して,本件駐車場の場所とm5神社までの逃走経路を教えるとともに,本件駐車場に来る自動車の運転手に対してV5が事件を起こすことなどを伝えた。V6は,同月24日未明,本件犯行に使用するバイクを窃取して用意した。さらに,V4は,5月下旬頃,W4運転車両で,V5を本件駐車場に連れて行き,その際,V5に対して,Q3車両の特徴と到着時刻(午前8時半頃)を伝えた上,同車両の運転手である若い男を刃物で複数回刺して襲撃するよう指示した。 V4は,同月25日,W4に対し,V5の送迎のための白色軽自動車(ワゴンR)を引き渡すとともに,翌日襲撃を決行することやその実行の時間を伝え,併せてその旨をV5とV6に伝えるように指示した。W4は,これを受けて,V6及びV5に対し,翌日の集合時間と集合場所 車(ワゴンR)を引き渡すとともに,翌日襲撃を決行することやその実行の時間を伝え,併せてその旨をV5とV6に伝えるように指示した。W4は,これを受けて,V6及びV5に対し,翌日の集合時間と集合場所などを伝えた。 イ犯行状況等同月26日朝,W4は,V4から預かった自動車でV5を迎えに行き,V5を後部座席に乗せてs1区のm6八幡宮に向かい,同所で前記窃取に係るバイクを運転してきたV6と合流した。V5は,同所までの移動途中及び同所で,車内に用意されていたバッグ内にある作業着等を身に着け,着替えが終わった後に,同バッグ内のポシェットの中にあった刃物(本件刃物)を確認した。その後,V5は,本件刃物が入ったポシェットを持って,V6が運転する前記バイクの後部座席に乗って本件駐車場付近に行き,Q3が本件駐車場に来るのを待ち,Q3が本件駐車場に現れると,前記バイクから降りてQ3に近づき,同日午前8時29分頃,本件犯行に及んだ。 ウ犯行後の状況V5は,本件犯行を終えると,本件駐車場から立ち去り,V6が運転する前記バイクの後部座席に乗って逃走し,m5神社でW4と合流した。V6は前記バイクで, W4は前記白色ワゴンRにV5を乗せてそれぞれ同所から逃走した。W4は,V5を降ろした後,甲2組のs7町事務所で,V4に対し本件犯行を行ったことを報告した。同日夜,V4,W4及びV6は,本件犯行の際に用いられたヘルメットや作業着などを海に投棄し,同月27日,V6は,V4の指示に従い,本件犯行に使用した前記バイクをダム湖に投棄して,それぞれ処分した。 ⑵ V1の本件犯行への関与ア V4への指示者はV1以外に考え難いことV4は,Q2やQ3の行動確認をすること,Q3を刃物で刺して襲撃することについて,全て同一人物から指示された旨供述して 。 ⑵ V1の本件犯行への関与ア V4への指示者はV1以外に考え難いことV4は,Q2やQ3の行動確認をすること,Q3を刃物で刺して襲撃することについて,全て同一人物から指示された旨供述している。V4の供述によれば,V4自身は被害者のQ3やQ2と面識はなく,個人的にQ3を襲撃する事情はないと認められ,他の者の指示により本件犯行に関与したとのV4の供述は信用できる。 V4が,前記⑴のとおり,複数の甲1會甲2組組員を動員して被害者の行動確認等の準備を遂げた上,本件犯行の実行及び犯行後の証拠隠滅を行わせ,自らも証拠隠滅に加担していることからすると,本件は,甲2組が組織的に準備して遂行された犯行と認められる。そして,若頭であるV2は,平成25年11月頃警察に身柄拘束されて以降本件当時まで社会不在の状況にあり,本件当時,V4は,甲2組において,社会内で組長であるV1に次ぐ序列2位の地位にあったと認められるのであって,甲2組における序列や指揮命令系統に照らすと,V4に甲2組による組織的犯行を指示できるV4の上位者は,組長であるV1以外に考え難い(甲1會の序列としては,V1の上位者として総裁である被告人X及び会長である被告人Yがいるが,V4の供述によれば,V4は,被告人Xとは面識がなく,被告人Yとは運転手として面識があったが,会話する機会はほとんどなかったことが認められ,被告人両名が,組長のV1を飛び越して,本部長のV4に直接本件犯行の実行を指示するということは考え難い。)。また,V4の供述によれば,V4にQ3襲撃を指示した人物は,組長付であるV5を実行役として本件犯行を行うことも指示したと認められるところ,仮にV5が捜査機関に検挙されれば,甲2組の組長付が不在の状態 になるのであって,この点からも,V1以外の人物がV4 を実行役として本件犯行を行うことも指示したと認められるところ,仮にV5が捜査機関に検挙されれば,甲2組の組長付が不在の状態 になるのであって,この点からも,V1以外の人物がV4に指示して,V5を実行役とするQ3襲撃を行わせたとは考え難いといえる。 イ V1がW4及びV6に対し,本件犯行の報酬を渡したこと次に,V6は,公判(第51回)で,要旨,本件犯行の約1週間後,甲2組のs7町事務所に呼ばれて行った際,同事務所3階の組長室にいたV1がW4を呼んだことから,W4が同事務所の1階から3階の組長室まで上がって行ったこと,その後W4は,2階に降りて事務所にいたV6を階段のところに呼び出し,持っていた二つの封筒のうち一方の封筒を一旦V6に渡したが,他方の封筒の中身を見て,「あっ,間違った。」「こっちの方やった。」と言いながら,最初に渡したのとは別の封筒をV6に渡したこと,W4は,その際,「隠しとけ。」「すぐポケットに入れておけ。」と言っていたこと,その後V6が受け取った封筒の中身を確認したところ,現金25万円ぐらいが入っていたこと,V6としては,V5を送迎して本件犯行に関与したこと以外に,V1から現金を受け取るような心当たりはないことをそれぞれ供述している。 以上のV6の供述は具体的で,とりわけ,W4から封筒をもらった状況についての説明は臨場感あふれるものである上,V6が本件犯行に関与したこと以外にそれだけ多額の現金をV1から受け取る心当たりがないと述べている点も自然な内容であり,信用できる。 V6の供述によれば,本件犯行後間もない時期に,V1がW4及びV6の分として2つの封筒をW4に渡し,そのうちV6の分については中身が現金約25万円であったと認められるところ,W4及びV6が本件犯行に関与していることや,W4がV6 もない時期に,V1がW4及びV6の分として2つの封筒をW4に渡し,そのうちV6の分については中身が現金約25万円であったと認められるところ,W4及びV6が本件犯行に関与していることや,W4がV6に対して「隠しとけ。」などと述べて秘密裏に封筒を渡していることからすると,V6が受け取った現金約25万円は,V6が認識したとおり,本件犯行に関与したことに対する報酬であったと認められる。 ウ小括以上のとおり,本件は甲1會甲2組により組織的に準備・遂行された犯行である ことから,本部長のV4に犯行を指示できるのは組長であるV1以外に考え難いこと,V1が本件犯行後,同組組員のW4及びV6に対して,本件犯行に関与したことに対する報酬を渡したことを併せ考えると,V1が本件犯行の共謀に加わり,V4に対してQ3襲撃を指示した事実が認められる。 そして,これまで検討したところによれば,本件犯行には,甲2組序列1位の組長であるV1以下,社会内で組長であるV1に次ぐ序列2位の地位にあった本部長のV4,若頭補佐兼組長付のV5,若頭補佐のW4といった複数の甲2組幹部を始めとする多くの甲2組組員が関与したこと,それらの組員が,V4の統括の下,Q2やQ3の行動確認,犯行使用道具等の準備,実行役やその送迎役,犯行使用道具等の処分といった細分化された役割を分担した上で本件犯行が実行されたことが認められ,本件犯行は,甲1會甲2組の指揮命令系統に従って,組織的に準備・遂行されたものであると認められる。 ⑶ 被害者及びその一族と甲1會との関係,被告人YのQ2への働きかけ等ア被害者及びその一族について関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 元組合長事件の項でも言及したように,Q3の祖父であるQ1は,砂利の販売等をする会社(k3)を経営すると の働きかけ等ア被害者及びその一族について関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 元組合長事件の項でも言及したように,Q3の祖父であるQ1は,砂利の販売等をする会社(k3)を経営するとともに,j1漁協の組合長を務め,白島石油備蓄基地の建設に伴う漁業補償交渉を取りまとめるなどしたが,平成10年2月に射殺された。 Q1の弟であるR1は,港湾土木工事等を業とするk5を経営し,r構想に伴う漁業補償交渉をまとめたほか,平成19年に7地区の漁協が合併してj3漁業協同組合(以下「j3漁協」ともいう。)が発足した際は,その代表理事(組合長)に就任した。Q1の子(Q3の父)であるQ2は,港湾土木資材販売を業とするk4を経営し,j3漁協発足後はj1地区の代表理事を務めており,同地区の理事にはQ2のいとこであるR3も選任されていた。R1の子であるR2は,k5の経営をR1から引き継いだほか,平成17年以降,j4協会の会長を務めていた。 k4は,平成25年当時,年間売上高が約40億円で,北九州市における海砂の販売シェアの約4割,生コンの原料となる普通の砂の販売シェアの約2割を占めていた。一方,k5は,平成19年から平成20年代前半頃の年間売上高が約40億円から50億円で,平成10年以降,北九州市内の同業者の中で売上高は1位又は2位の位置にあった。 こうしたことから,Q2らQ一族は,北九州地区の港湾建設工事における下請業者の選定等に関し,本件当時も依然として強い影響力を有すると見られていた。 なお,Q3は,本件当時,歯科医師として勤務し,k4等の親族が営む会社やj3漁協とは全く関係のない生活をしており,甲1會やその組員とは何の接点もなかった。 イ被告人YのQ2への働きかけ及びR3に対する発言等関係証拠によれば,以下の事 し,k4等の親族が営む会社やj3漁協とは全く関係のない生活をしており,甲1會やその組員とは何の接点もなかった。 イ被告人YのQ2への働きかけ及びR3に対する発言等関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 R3は,かつてU3が組長を務める甲1會内甲2組丙4組の預かりの身になったことがあり,被告人Yとは,中元・歳暮のやり取りをしていた。R3の兄R4は,生前被告人Yと親しい付き合いをしており,被告人Yは,毎年の盆,彼岸にはR4の墓参りを欠かさず行っていた。 被告人Yは,平成21年ないし平成22年頃から,R3に対し,j3漁協j1地区が持つ公共工事の利権や,同地区の代表理事(組合長)になる方法について尋ねることが何度かあった。被告人Yは,R3とそのような会話をする中で,R1の後を継いだR2が経営するk5や,Q2が経営するk4について,それぞれ「R1の会社」「Q2の会社」と呼んで,「何であいつらばっかりが仕事ができるのか。」「お前が代表理事になったら(工事を)もらえるんか。」などと,当時,j3漁協の代表理事であったR1や,同漁協j1地区の代表理事であったQ2に対する不満を漏らすことがあった。 平成23年当時,北九州市では,港湾計画の改訂が問題となっており,その改訂の中で大規模なものとしては,s4区のs15 沖に海面廃棄物処分場(s15 東処 分場)を造る計画があった。同処分場の工事主体は国と北九州市であったが,このうち北九州市が担当する部分の総事業費は約192億円を予定し,同市が実施する工事の中では,平成8年に発表されたr構想以来の大規模事業であった。前記処分場の計画地がj1地区を含む地域であったことから,同市の担当者は,平成23年春頃,同地区を含む四ケ浦の漁業権管理委員会の委員長でj3漁協代表理事(組合長) たr構想以来の大規模事業であった。前記処分場の計画地がj1地区を含む地域であったことから,同市の担当者は,平成23年春頃,同地区を含む四ケ浦の漁業権管理委員会の委員長でj3漁協代表理事(組合長)であったR1や,同漁協j1地区の代表理事であったQ2などに港湾計画の改訂案を説明し,漁協側の了承を得ながら同計画を進めていた。平成26年1月には同計画について新聞報道がなされた。なお,本件後の平成27年12月に,北九州市と漁協側との間で漁業補償契約が締結されて,漁業補償金が支払われた。 また,平成25年当時,j3漁協の漁業権に関わるs15 地区の大規模事業としては,事業規模が数千億円に上る火力発電,洋上風力発電の事業があり,その頃その旨の新聞報道もなされていた。そうした中で,同年12月20日,R1が何者かによって射殺された。 被告人Yは,平成26年2月1日,北九州市s3区にあるp7にR3を呼び出し,R3に対し,j1地区での公共事業におけるQ2の権限や発言力,同地区やj3漁協の代表理事(組合長)の選挙の時期,どうすれば同地区やj3漁協の代表理事(組合長)になれるのかなどを尋ねた。 被告人Yは,同月中旬頃にも,前記p7にR3を呼び出し,R3及びQ2に怒っている様子で,R3に対し,「Q2はまだ分からんのか。」「R1があんなんなっとるのに,Q2は本当にわかっとらんのか。」「俺はQ2に対して若いときによくしてもらっとるところもある。あいつには危害を加えたくないけど,俺だけの考えではもうできん。もうこれは會の方針やけの。」などと述べ,これは脅しではなく,甲1會の要求を聞かなければ,甲1會の方針としてQ2に危害を加える旨を,j3漁協の役員会(理事会)が実施される同月26日にQ2に伝えるように指示した。また,被告人Yは,この際,R3に対し,k9という会 1會の要求を聞かなければ,甲1會の方針としてQ2に危害を加える旨を,j3漁協の役員会(理事会)が実施される同月26日にQ2に伝えるように指示した。また,被告人Yは,この際,R3に対し,k9という会社名が書かれたメモを渡し,s4地区での解体工事に,この会社が参入できるようにしてほしいと告げた。R3 は,その後,Q2に対し,電話で,前記k9の解体工事への参入を依頼するも,Q2が同社の参入に向けて動くことはなかった。 R3は,同月26日,j3漁協の役員会(理事会)が開催された後,Q2と二人で会い,Q2に対し,「甲1會は若い者が多いので,何をするやら分からない。」「R2にも注意するように。」「おじさん(R1)があんなんなっとるのに。」などと言って,甲1會の要求を聞くように告げたが,Q2は,「聞かなかったことにする。 お互いなかったことにしよう。」などと述べて,相手にしなかった。なお,被告人Yは,同日,R3に対して,午後1時46分,午後4時52分,午後6時18分の3回にわたり電話をかけており,1回目の電話で役員会が何時から始まるかを,2回目の電話で役員会が終わったかをそれぞれR3に確認し,3回目の電話で,Q2に被告人Yの要求を伝えた旨の報告をR3から受けた。 被告人Yは,3月6日,前記p7にR3を呼び出し,同店駐車場に停車中のR3と二人きりの自動車内で,R3に対し,被告人Yからの要求を伝えたときのQ2の反応や,そのとき以降のQ2との接触状況等について尋ね,R3から,甲1會の意向を伝えたところQ2が焦ったような感じだったが,それ以降Q2とは何も話していない旨の返答を得ると,R3に対し,「Q2は分かっとるのか。R1があんなんなっとるのに,まだ気づかんのか。あいつがもう分からんのなら,分からせるしかない。」などと言った。 Q2とは何も話していない旨の返答を得ると,R3に対し,「Q2は分かっとるのか。R1があんなんなっとるのに,まだ気づかんのか。あいつがもう分からんのなら,分からせるしかない。」などと言った。 R3は,5月12日に強要の罪で逮捕され,その後,同罪で勾留,起訴がなされ,更に詐欺事件でも起訴された後,7月18日に保釈された。R3は,自身が若松警察署で身柄拘束中に起きたQ3襲撃事件(本件犯行)の真相を知ろうと,前記保釈後の同月23日,北九州市s1区にある理容店(k10)で散髪中の被告人Yに会いに行き,同店1階駐車場に停車中の被告人Yと二人きりの自動車内で,被告人Yと面会した。R3が被告人Yに対し,「自分が若松署におったときにQ2のところの子供,やったですよね。」と尋ねると,被告人Yは,「Q2が分からんのやけ,おまえ,やるしかねえやろ息子を。」などと発言した。 ウ R3供述の信用性前記イの認定事実のうち,R3と被告人Yとの面会の事実やその際の被告人Yの発言等については,主としてR3の公判供述から認定しているところ,弁護人がR3供述の信用性を争っているので,信用性を肯定した理由を補足して説明する。 R3供述のうち,R3がp7で被告人Yと複数回会ったことについては,北九州市の防犯カメラ映像に映されたR3使用車両と被告人Y使用車両の客観的な動きや両名間の携帯電話での通話履歴と整合し,j3漁協の役員会(理事会)当日に被告人YからR3に3回にわたり電話があり,R3が役員会の後に(その日の3回目の電話で)被告人Yの要求をQ2に伝えた旨被告人Yに報告したとの点は,被告人YとR3間の当日の通話履歴により裏付けられ,R3と被告人Yが理容店の駐車場で会ったことについては,理容店の店長の供述等によって認められる被告人Yの同店の来店状況 被告人Yに報告したとの点は,被告人YとR3間の当日の通話履歴により裏付けられ,R3と被告人Yが理容店の駐車場で会ったことについては,理容店の店長の供述等によって認められる被告人Yの同店の来店状況と整合している。 また,被告人Yが公共工事における漁協の利権に関心を示し,j1地区の代表理事であったQ2に執ように圧力をかけていたとするR3供述の核心部分については,極めて詳細で迫真性に富んでおり,かねてから甲1會の組員らがs4地区の公共工事における利権を求めてQ一族に圧力をかけてきた経緯とよく整合している上,2月26日のj3漁協の役員会(理事会)の後にR3と話した内容についてのQ2供述(この点は,Q2が記録したというQ2使用携帯電話に残されたメモの記載による裏付けがある。なお,弁護人は,携帯電話のメモに被告人Yの名前が示されていない点を問題視するが,R3がQ2に対して甲1會最高幹部である被告人Yの名前を出すことを差し控えたとしても,格別不自然,不合理ではない。)や,Q2が,3月3日にR2に対してR3からされた話を伝えた旨のQ2及びR2の各供述とも整合する。 しかも,被告人Yの供述するところによっても,R3と被告人Yとの関係は普通で,個人的なトラブルはなかったというのであり,R3が甲1會会長である被告人Yに不利益となる虚偽の供述をする動機は何ら見いだせない。 これに対して,弁護人は,R3は,自分が逮捕・勾留された強要事件や詐欺事件について取調べを受けた際に,甲1會が起こしたと思われる事件についても取調べを受け,さらに,平成26年9月に被告人両名が逮捕された後の同月26日に検察官から元組合長事件に関する取調べを受けて調書も作成されているのに,同年中は被告人Yから同年2月,3月及び7月に聞いたという話を捜査官にしておらず 6年9月に被告人両名が逮捕された後の同月26日に検察官から元組合長事件に関する取調べを受けて調書も作成されているのに,同年中は被告人Yから同年2月,3月及び7月に聞いたという話を捜査官にしておらず,これらの話が平成27年以降になって初めて供述調書として録取されているのは,供述の出方として甚だ不可解で不自然であると主張する。しかし,R3は,前記身柄拘束の際の取調べ時に本件に関する話を捜査官にしなかった事情について,Q3襲撃事件については分からないから話しようがなかったと述べているところ,本件当時逮捕・勾留中であったR3には,保釈後被告人Yに確認するまでは,本件が甲1會甲2組による犯行かどうかははっきりと分からなかったと考えられ,この点のR3の説明が特に不自然とはいえない。また,被告人両名逮捕後の取調べについて,R3は,自身がかつて丙4組の預かりとなっていた時期があり,甲1會や甲2組の全体像を見て知っている分これらの組織が恐ろしい組であると感じていた,被告人両名を含む甲1會組員が大勢逮捕されていっているのを知って,寂しさ半分,他方で,身内が被害を受けて,知っていることだけでも警察に言っておこうという複雑な気分であったと供述している。また,R3は,Q2との間で,平成27年最初頃,Q2の父Q1や叔父のR1の殺害を受けて,身内一丸となって手を握って力を合わせて頑張ろうという話をしたこともきっかけになって,本件に関する被告人Yとの接触状況について供述するようになったとも供述している。このように,R3が,甲1會という組織の恐ろしさを感じる一方,身内が被害を受けた感情もあって,これらの複雑な心境の中で,Q2との間の前記のような会話を受け,本件についての被告人両名や甲1會にとって不利益な事実に関して警察に知っていることを話すようになった経緯は自然なも 受けた感情もあって,これらの複雑な心境の中で,Q2との間の前記のような会話を受け,本件についての被告人両名や甲1會にとって不利益な事実に関して警察に知っていることを話すようになった経緯は自然なものとして理解できる。よって,R3の供述の出方が不自然であるとの弁護人の主張は理由がない。 弁護人は,また,R3は,R1殺害事件への関与を警察に疑われていたことから, 自身への疑いをそらすために,警察が描くストーリーに迎合して,被告人Yとの面会の事実やその際の被告人Yの発言等について,虚偽の供述をしていると主張する。 しかし,R3自身警察からそのような疑いを受けているとは認識していなかったと供述している上,仮にR3が警察からの前記疑いの目を感じていたとしても,被告人Yに不利益な事実をあえて作出してまで述べる動機がないのは前述のとおりである。そもそも,R3が被告人Yの言動等を捜査機関に供述することで,R1殺害事件に関するR3への警察の疑いの目をそらすことができるという関係にあるともいえないから,いずれにせよ弁護人の主張は失当である(なお,弁護人は,警察がR3のQ3襲撃事件への関与も疑っていたとして前同様の主張をするが,本件当時R3が身柄拘束されていたことからすると,その前提自体にわかに首肯し難い。)。 被告人Yは,公判で,被告人Yの発言等に関するR3供述は虚偽であるとした上で,要旨,以下の供述をしている。すなわち,①2月1日に自宅近くのp7でR3と会ったのは,R3から面会を求められ,R3がj1地区漁協の代表理事になりたいのでその選挙の応援をしてほしいと依頼されたからである。②同月26日のR3への3回にわたる電話については,同日実施されたj3漁協の理事会にj3漁協の代表理事(組合長)と同漁協各地区の代表理事を兼任可能とする議案が 応援をしてほしいと依頼されたからである。②同月26日のR3への3回にわたる電話については,同日実施されたj3漁協の理事会にj3漁協の代表理事(組合長)と同漁協各地区の代表理事を兼任可能とする議案が提出されており,これが可決されると,R3がj1地区の代表理事に選任される目がなくなるところ,自身はR3を応援しており,その議案の行方が気になって電話したものであって,1回目の電話で理事会がまだ始まっていないこと,2回目の電話で前記議案が否決されたことをそれぞれR3から聞いたが,後者の電話の際,R3が少し浮かれていたような感じだったので,R3に3回目の電話をして,Q2はやり手だから安心していたら足をすくわれると注意したものである。③7月に理容店でR3と会ったのは,R3が保釈されたので挨拶に来ただけであり,保釈されたことやR3が捕まった事件の内容に関する話以外の話はしていない。そして,弁護人は,以上の被告人Yの供述に沿って,被告人Yの供述に反するR3供述は信用できない旨主張する。 しかし,①の点は,被告人Yの供述によれば,被告人YとR3は,R3が中元や歳暮を被告人Y宅に届けた際や,被告人YがR4の墓参りをした際などにごく短時間話す程度の間柄であったというのに,R3が,このような関係にしかない甲1會会長の被告人Yを,自身がj1地区の代表理事になりたいという専ら個人的な用件で呼び出した上で,選挙応援の依頼もしたということになるが,非常に不自然である。また,被告人Yの供述によれば,被告人Yは,R3からの前記依頼に対し,j5漁協とj6漁協に頼んでみると返答したというのであるが,j1地区の代表理事選挙の投票権を持たない別の地区の漁協に働きかけたところでその効果は期待できないのであって,この点からも,2月1日にp7でR3と会った理由に に頼んでみると返答したというのであるが,j1地区の代表理事選挙の投票権を持たない別の地区の漁協に働きかけたところでその効果は期待できないのであって,この点からも,2月1日にp7でR3と会った理由に関する被告人Yの供述は不自然である。なお,弁護人は,R3使用及び被告人Y使用の各携帯電話の通話履歴によれば,1月31日及び2月1日のいずれもR3が被告人Yに電話をかけているから,被告人Yから同日の呼び出しを受けたとのR3の供述は虚偽である一方,被告人Yの供述が信用できる旨主張するが,R3が供述するように,R3が被告人Yからの着信履歴を見て折り返したなどの事情があったとも考えられるから,弁護人主張の点はR3供述の信用性を減殺する事情にはならない。 ②の点は,被告人Yの供述によれば,R3とは前記の程度の関係にしかなく,また,仮にR3がj1地区の代表理事になったとしても自身に何の利益もなかったというのに,R3に対して2回にわたり電話をして,j3漁協における議案の採否の結果を問い合わせたり,同議案否決の結果を確認してから1時間以上経った後に,改めてR3に気を抜かないように注意するための電話をしたりしたということになるが,この点もかなり不自然である。 ③の点は,R3が,被告人Yの供述によれば前記の程度の関係にしかなかったという甲1會会長の被告人Yに対し,自身が保釈された旨の挨拶をするという用件のみでわざわざ面会を求めたとは考え難く,この点も不自然である。なお,弁護人は,R3が親しいW5にではなく,甲1會会長の被告人Yに本件の真相を問いただしたというのは,不自然,不合理であると主張するが,R3は,W5から事件の真相を 聞き出そうとしなかった理由について,被害者のQ3が自分の身内なので,W5に聞くことすら自分はつらく,W5本人も言うこ 然,不合理であると主張するが,R3は,W5から事件の真相を 聞き出そうとしなかった理由について,被害者のQ3が自分の身内なので,W5に聞くことすら自分はつらく,W5本人も言うことがつらいだろうと思ったなどと説明しているところ,かかる説明に特段不自然,不合理な点はない。 そうすると,被告人Yの供述のうち,R3供述に反する部分は全体として信用できず,これに基づく弁護人の主張も理由がない。 エ小括以上によれば,被告人Yが,従前から,北九州地区の港湾建設工事等に強い影響力を有すると見られていたQ一族による利権に注目していたところ,平成25年から平成26年初めにかけて,北九州市s15 地区において大規模事業が立て続けに公表される中,同年2月頃以降,R3を介して,Q2に甲1會の方針として甲1會との利権交際に応じるように執ように要求したが,Q2がこれに応じなかったこと,また,R1の死後,前記利権に大きく関わるj3漁協の代表理事ないしj1地区の代表理事に誰がなるかに被告人Yが強い関心を寄せていたこと,本件後である同年7月下旬に,被告人Yが,R3に対して,Q2が甲1會の利権交際の要求に応じないことから,その息子であるQ3を見せしめに襲撃した旨,本件犯行の理由を説明したことがそれぞれ認められる。 ⑷ 被告人両名の本件犯行への関与ア被告人Yの関与既に認定した被告人YのQ2への働きかけの経緯,とりわけ,被告人Yが,R3に対し,平成26年3月上旬頃,前年末に射殺されたR1の例を挙げつつ,Q2が甲1會側の要求に応じなければ,Q2に分からせるために行動を起こすという趣旨の発言をし,本件後の同年7月には,Q2が甲1會側の要求に応じなかったことから息子であるQ3をやるしかないという趣旨の発言もしていること,V4による行動確認の時期 らせるために行動を起こすという趣旨の発言をし,本件後の同年7月には,Q2が甲1會側の要求に応じなかったことから息子であるQ3をやるしかないという趣旨の発言もしていること,V4による行動確認の時期や対象も被告人Yの発言内容と整合していることなどに加え,本件犯行に関与したV1以下の組員はQ3と面識がないばかりか,その父親であるQ2との関わりもなかったことや,甲1會の序列と厳格な組織統制を考慮すると,本件犯 行は,甲1會会長の被告人Yが,甲1會理事長兼甲2組組長であるV1に指示して,甲1會専務理事兼甲2組本部長のV4以下の甲1會組員らに実行させたものであると推認できる。 イ被告人Xの関与元組合長事件の項で認定したとおり,被告人Xは,従前からQ一族の利権に重大な関心を抱き,執ように利権への介入を図っており,それを拒絶されるや,平成10年にQ2の父であるQ1を殺害するという元組合長事件を起こしていた。かねてからの被告人Xの関心事であるQ一族の利権介入に大きく関係し,かつ,多数の甲1會組員を組織的に動かすこととなる本件犯行について,甲1會会長である被告人Yが,甲1會総裁である被告人Xへの報告ないし被告人Xからの指示など,被告人Xの関与なしに,Q2の子であるQ3を襲撃するという本件犯行の実行指示を甲1會理事長のV1にするとは到底考え難い。被告人Yは,平成26年2月中旬頃,R3に対し,Q2に個人的には危害を加えたくないが,會の方針なので自分だけの考えではどうにもならない旨の発言をしているが,甲1會においては,被告人Yより上位の者は被告人Xしかいないのであるから,被告人Yがこのような発言をした事実は,甲1會との利権交際の要求に応じなければ危害を加える旨の方針が,甲1會総裁である被告人Xの意向であることを推認させる事情といえる 被告人Xしかいないのであるから,被告人Yがこのような発言をした事実は,甲1會との利権交際の要求に応じなければ危害を加える旨の方針が,甲1會総裁である被告人Xの意向であることを推認させる事情といえる。 そして,本件が発生した平成26年当時,甲1會がQ一族の利権に介入することができた場合には,漁業補償金からの分配のほか,経営状況が好調なk4やk5等のQ一族が経営する会社,あるいは港湾建設工事の下請けに入る甲1會指定の業者等からの莫大な上納金の相当部分を被告人Xが取得することが見込まれたと推察される。 すなわち,既に元組合長事件の項で検討したとおり,三代目甲2組当時,甲1連合ないし甲1會傘下の甲2組組員が暴力団の威力を背景に建設会社等から得ていたとうかがわれる高額なみかじめ料(上納金)は,三代目甲2組組長であった被告人Xを含む甲1連合ないし甲1會の最高幹部の間で分配されていたところ,このよう に暴力団の威力を背景に得た上納金等の不法な収益の相当部分が被告人Xを含む甲1會の最高幹部の懐に入るという利益の分配構造が,五代目甲1會の時代に変更されるような事情は見当たらず,五代目甲1會総裁として組織の最上位の地位にある被告人Xが不法な収益の相当部分を得ていたことが強く推測される。現に,甲1會理事長兼甲2組組長のV1が,建設業者からの上納金と推測される100万円ないし2000万円の現金を被告人Yや甲1會会長代行のZ19,二次団体組長らから受け取り,その約半額を被告人Xの個人資産も管理していた甲1會総務委員長のZ10に渡すなどした後,被告人X方へ行き被告人Xと面会することがあった事実は,五代目甲1會の時代においても,被告人Xが不法な収益の相当部分を得ていたことをうかがわせるものである。そうすると,被告人Xには,本件犯行に及ぶ十分な 人X方へ行き被告人Xと面会することがあった事実は,五代目甲1會の時代においても,被告人Xが不法な収益の相当部分を得ていたことをうかがわせるものである。そうすると,被告人Xには,本件犯行に及ぶ十分な動機があったといえる。 以上に加え,被告人Yがp7にR3を呼び出した平成26年2月1日に,被告人Yが被告人X方を3回訪問するなど,被告人Yと被告人Xが緊密に意思疎通を図っていた状況も踏まえると,本件犯行を実行する意思決定には,被告人Yのみならず被告人Xも関与しており,本件犯行は,甲1會の最高幹部である被告人両名が意思を相通じた上で,最終的には最上位者である被告人Xが意思決定したものと推認できる。 これに対し,被告人Xは,公判で,本件当時,本件犯行の被害者であるQ3のことは,同人がQ1の息子のQ2の長男であることも含めて知らず,また,五代目甲1會の総裁になってからは隠居の身となっていたから,本件犯行に関与していない旨供述する。しかし,被告人Yが被告人Xに無断で本件犯行を実行したとは考えられないこと,被告人Xが五代目甲1會総裁として甲1會の重要事項について最終的な意思決定をしていたことは前述のとおりであるから,本件犯行に関与していない旨の被告人Xの供述は信用できない。 ウ本件犯行が団体の活動として組織により行われたこと前記のとおり,本件犯行は,五代目甲1會総裁である被告人Xが,甲1會会長で ある被告人Yと意思を相通じた上で,犯行実行の意思決定を行ったものであるが,甲1會の意に沿わない者の親族を見せしめとして襲撃することで甲1會の威力を誇示するという効果又は利益を,団体としての甲1會に帰属させるものといえる。したがって,本件犯行は,団体の活動として行われたと認められる。 また,本件犯行は,前記のとおり被告人Xによる本件 の威力を誇示するという効果又は利益を,団体としての甲1會に帰属させるものといえる。したがって,本件犯行は,団体の活動として行われたと認められる。 また,本件犯行は,前記のとおり被告人Xによる本件犯行実行の意思決定を受けた被告人YがV1に犯行の実行を指示し,V1がV4に,V4が更にその配下の甲1會組員らに犯行を指示するという順次の指示命令を経て準備・遂行され,かつ,その遂行に当たっては,多くの甲2組組員が細分化した役割を分担して行ったものである。したがって,本件犯行は,被告人Xの指揮命令に基づき,あらかじめ定められた任務の分担に従って,これを実行するための組織により行われたと認められる。 エ本件犯行が団体の不正権益を維持・拡大する目的で行われたことこれまでの甲1連合ないし甲1會とQ一族との関係,特に平成26年2月以降の被告人YによるR3を通じたQ2への利権交際に応じる旨の要求の経緯や,甲1會の縄張である北九州市内のs15 地区における大規模工事の計画状況等に照らすと,本件犯行は,Q3の親族であるQ2らが有する地元の港湾建設工事等に関する利権への甲1會の介入を実現するため,前記利権交際の要求に応じないQ2の息子を襲撃したものであり,その不正権益を維持・拡大する目的で実行されたと認められる。 そして,既に認定・説示したところによれば,被告人両名がかかる目的を有していたことは明らかである。 ⑸ 結論以上検討したところによれば,本件犯行は,甲1會の不正権益を維持・拡大する目的で,甲1會の活動として,被告人Xの指揮命令に基づき組織により実行されたものであり,被告人Yも被告人Xと意思を相通じてV1を介して配下の甲1會組員に本件犯行を指示しているのであるから,被告人両名が本件犯行を共謀した事実は優に認められる。 な たものであり,被告人Yも被告人Xと意思を相通じてV1を介して配下の甲1會組員に本件犯行を指示しているのであるから,被告人両名が本件犯行を共謀した事実は優に認められる。 なお,証拠上認められる本件犯行への関与の仕方,甲1會又は甲2組における地位,甲1會及び甲2組内での指揮命令系統の実態等に照らすと,被告人両名のほか,少なくともV1及びV4については,甲1會の不正権益を維持・拡大する目的で本件犯行が敢行されることを認識していたものと認められるから,被告人両名とV1及びV4との間では,組織的殺人の共謀のみならず,不正権益維持・拡大目的殺人の共謀も成立していると認められる。他方,その余の共犯者であるW4,V5及びV6については,Q3及びQ2の素性や本件犯行の目的,背景事情についてどこまで認識していたかは証拠上必ずしも判然としないから,本件犯行に関し,不正権益・維持拡大目的の認識を有していたとまでは認め難く,被告人両名とこれら3名の共犯者との間では,組織的殺人の限度で共謀が成立していると認められるが,不正権益・維持拡大目的殺人の共謀が成立しているとは認められない。 (確定裁判) 1 被告人Xは,平成30年7月18日福岡地方裁判所で所得税法違反の罪により懲役3年及び罰金8000万円に処せられ,その裁判は令和3年3月14日確定したものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。 2 被告人Yは,平成11年6月1日福岡地方裁判所小倉支部で恐喝罪により懲役4年に処せられ,その裁判は同月16日確定したものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。 (法令の適用)省略(量刑の理由)第1 被告人Xの量刑について 1 量刑判断の中心となるのは,現に被害者1名が殺害された元組合長事件であ 実は検察事務官作成の前科調書によって認める。 (法令の適用)省略(量刑の理由)第1 被告人Xの量刑について 1 量刑判断の中心となるのは,現に被害者1名が殺害された元組合長事件であるので,まずこの情状について検討する。 平成10年当時甲1連合若頭兼甲2組組長の地位にあった被告人Xは,甲1連合と距離を置こうとする被害者一族を屈服させ,甲1連合ひいては自らが巨額の利権 を継続的に獲得することを目的に,甲1連合甲2組の組員らと共謀の上,漁協の元組合長であった被害者を殺害している。利権獲得目的から暴力団組織が一般市民を襲撃して殺害するという元組合長事件の犯行の罪質が,極めて悪質であるのは言うまでもない。犯行は,巨額の利権獲得をもくろんだ極めて利欲性の高いものであるとともに,目的達成のためには手段を選ばないという卑劣で反社会的な発想に基づき実行されているところ, 暴力団組織との関わりを絶とうとしていた被害者に何ら落ち度はなく,経緯・動機に酌むべき事情は皆無である。 犯行の方法は,凶器であるけん銃2丁や逃走用の車両を調達するなどし,被害者が頻繁に通っていたクラブに来店したところを狙って二人がかりで銃撃するというものであり,組織的・計画的で誠に大胆な犯行である。実行犯2名は,被害者の身体の枢要部目掛けて,それぞれけん銃で銃弾を発射し,路上に転倒した被害者に対して,なおもとどめを刺すべく,更にけん銃で銃弾を発射しており,強固な殺意に基づく執ようかつ極めて残虐な態様の犯行でもある。 被害者は,病院に搬送されたものの,間もなく絶命しており,その結果は余りに重大である。被害者の長男が,実行犯らの処罰にとどまらず,事件に関与した背後の首謀者に対する処罰をも望んでいるのは当然である。 地元の有力者と目されていた被害者が, く絶命しており,その結果は余りに重大である。被害者の長男が,実行犯らの処罰にとどまらず,事件に関与した背後の首謀者に対する処罰をも望んでいるのは当然である。 地元の有力者と目されていた被害者が,繁華街の路上でけん銃2丁により突如銃撃され,無残に殺害されたという元組合長事件の犯行が,地域住民や社会一般に与えた衝撃は計り知れない。 このように,元組合長事件は,その罪質,動機,組織性,計画性,犯行態様の執よう性・残虐性,結果の重大性,遺族の処罰感情,犯行の社会的影響などの点に照らし,悪質極まりない犯行である。 そして,被告人Xは,前記のような経緯・動機から,甲1連合若頭兼甲2組組長として,甲1連合甲2組の組織力や指揮命令系統を利用して犯行を実行することで,これに首謀者として関与したものであり,その刑責は誠に重大というほかない。被害者1名の殺人事件におけるこれまでの量刑傾向をみると,保険金目的殺人や身代 金目的殺人の事案等において死刑の選択がされる傾向が認められるところ,巨額の利権を継続的に獲得することをもくろんで一般市民を殺害した元組合長事件については,上記の保険金目的又は身代金目的の殺人のように,多額ではあっても一時的な金銭の獲得を意図した場合に比して,犯行の利欲性は一層高いと評するのが適切であり,しかもそれが反社会的集団である暴力団組織により計画的に実行されている点において,はるかに厳しい非難が妥当するといわざるを得ず,特段の事情がない限り,被告人Xに対しては極刑を選択すべきである。 2 そこで,進んでその余の3事件(元警察官事件,看護師事件及び歯科医師事件)の情状について検討する。 犯行動機についてみると,元警察官事件の直接の動機は不明であるものの,看護師事件は,被告人Xが,自身の施術等を担当した看護師である 警察官事件,看護師事件及び歯科医師事件)の情状について検討する。 犯行動機についてみると,元警察官事件の直接の動機は不明であるものの,看護師事件は,被告人Xが,自身の施術等を担当した看護師である被害者の態度に強い不満を抱いたことが契機・動機となって実行されたものであるし,歯科医師事件は,被害者の親族が有する地元の港湾建設工事等に関する利権への介入を目的として実行されたものである。元警察官事件の被害者は,かつては警察官として甲1會の取締り等に従事していたが,被害当時は既に退職していて取締り等とは無縁となっており,看護師事件の被害者は被告人Xの脱毛施術等を担当したにすぎず,歯科医師事件の被害者は,甲1會が得ようとしていた前記利権に関わると目される者の血縁者ではあるが,その利権とは無関係の歯科医師にすぎなかった。このように何らの落ち度もない一般市民である被害者らを組織により襲撃した各犯行の動機・経緯に酌むべき余地は皆無であって,元組合長事件同様,卑劣で反社会的な発想に基づく犯行というべきである。 各犯行の方法は,いずれも複数の甲2組組員らが,凶器や犯行使用車両の調達役,被害者の行動確認役,実行役,その送迎役,凶器等の処分役といった役割を分担し,出勤又は帰宅途中の被害者らを路上等で襲撃するというものであり,組織的・計画的で大胆な犯行である。 元警察官事件では被害者の身体に向けてけん銃で複数回銃弾を発射して命中させ,看護師事件及び歯科医師事件では刃物で被害者らの身体の 枢要部付近を切ったり刺したりしているが,殺害意図の強弱に差はあるものの,いずれも非常に危険な態様であって,人命軽視の姿勢には著しいものがある。各被害者は,本件各犯行により重傷を負わされるとともに,多大な精神的苦痛を被り,犯人の処罰を望んでいる。なお,元組合 るものの,いずれも非常に危険な態様であって,人命軽視の姿勢には著しいものがある。各被害者は,本件各犯行により重傷を負わされるとともに,多大な精神的苦痛を被り,犯人の処罰を望んでいる。なお,元組合長事件の被害者の長男は,歯科医師事件の被害者の父親でもあり,自身の父親のみならず息子までもが理不尽な被害に遭った悲痛な胸の内を公判廷で吐露しているが,その心情は察するに余りある。 各犯行は平成24年4月から平成26年5月までの間に相次いでなされたものであるところ,これにより,一般社会,特に甲1會が縄張であると主張する北九州地区において,体感治安が著しく悪化するなど,甚大なる社会的影響が生じたことは明らかである。 そして,被告人Xは,前記のような経緯・動機から,甲1會総裁として,甲1會甲2組の組織力や指揮命令系統を利用してこれら3事件の犯行を実行することで,いずれにも首謀者として関与したものである。特に,看護師事件については,美容形成クリニックで脱毛施術等を担当した女性看護師の対応に被告人Xが不満を抱いたという,ただそれだけの理由から当該看護師を組織を挙げて襲撃しており,犯行動機が理不尽極まりないこと,歯科医師事件については,元組合長事件の犯行から16年を経て,またも同じ地元の港湾建設工事等に関する利権への介入を狙って元組合長事件の被害者の孫を襲撃したものであり,被告人Xの執ようかつ強固な金銭欲が表れていることが指摘でき,被告人Xの刑責は極めて重いというべきである。 3 以上のとおり,被告人Xの量刑については,元組合長事件のみを取り上げても,特段の事情がない限り極刑を選択すべきところ,その余の3事件も併せ考慮すれば,組織的犯罪としての重大性・悪質性が一層顕著となり,極刑を選択すべき必然性はより高まるものというべきである。 被告人Xは,甲1會 情がない限り極刑を選択すべきところ,その余の3事件も併せ考慮すれば,組織的犯罪としての重大性・悪質性が一層顕著となり,極刑を選択すべき必然性はより高まるものというべきである。 被告人Xは,甲1會の組員が一般人を襲撃した複数の事件に関し,被害者らを気の毒に思う旨述べたものの,本件各犯行について自身の関与をいずれも否認し,不合理な弁解に終始した。その供述態度からはおよそ反省の情を見て取ることはでき ない。その他,死刑という究極の刑罰の適用に当たり,高齢であることや看護師事件の被害者に対して実行役の共犯者が被害弁償として1000万円を支払ったことなど,被告人Xのために有利に考え得る事情を最大限考慮しても,極刑を回避すべき特段の事情を見いだすことはできない。したがって,被告人Xについては,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも,一般予防の見地からも,極刑の選択がやむを得ないと認めるほかはない。 第2 被告人Yの量刑について 1 被告人Yについては,元組合長事件とその余の3事件との間に確定裁判が存在するので,前者と後者の量刑をそれぞれ別個に検討する。 2 元組合長事件の犯情のほか,遺族の処罰感情,犯行の社会的影響といった点は,既に被告人Xについて検討したところと同じである。 被告人Yは,平成10年当時甲2組若頭の地位にあり,被告人Xと同様,被害者一族の利権に重大な関心を抱き,利欲的な動機に基づいて元組合長事件に関与したものと認められる。そして,犯行当時の被告人Yの甲2組における立場や,複数の甲2組幹部組員の役割分担によって実行されたという犯行の在りようからすると,被告人Yは,被告人Xと共に,犯行に至る意思決定に深く関与し,犯行を指示したものと認められる。 そうすると,被告人Yの刑責は重大であり,被告人Xにこ よって実行されたという犯行の在りようからすると,被告人Yは,被告人Xと共に,犯行に至る意思決定に深く関与し,犯行を指示したものと認められる。 そうすると,被告人Yの刑責は重大であり,被告人Xにこそ及ばないものの,無期懲役に処された実行役のU1を下回るものではないというべきであるから,被告人Yに対しては,元組合長事件(判示第1の罪)について,無期懲役刑を科すのが相当である。 3 元警察官事件,看護師事件及び歯科医師事件の各犯情や,各被害者の処罰感情,各犯行の社会的影響といった点についても,既に被告人Xについて検討したところと同じである。 被告人Yは,これら3事件の犯行において,いずれも甲1會会長という立場で,被告人Xと相通じるなどしてその意思決定に関与し,不可欠で重要な役割を果たし たものであるから,その刑責は,被告人Xに次いで重い。 被告人Yは,甲1會会長として,甲1會の組員が一般人を襲撃する事件を繰り返し起こしたことについて,被害者らに対してすまないという気持ちはある旨述べたものの,前記3事件の各犯行について,自身の関与をいずれも否認し,不合理な弁解に終始した。その供述態度からは反省の情を見て取ることはできない。こうした被告人Yの態度や,他の共犯者との刑の均衡という観点も踏まえると,被告人Yが比較的高齢であることや看護師事件の被害者に対する共犯者による被害弁償の事実など,被告人Yに有利に考え得る事情を最大限考慮しても ,有期の懲役刑では軽過ぎるというべきであって,被告人Yに対しては,前記3事件(判示第2の1,2,第3及び第4の各罪)についても,無期懲役刑を科すのが相当である。 なお,検察官は,元警察官事件の犯行について,甲1會に対する取締りを強化した警察に対するけん制及び被害者に対する報復とともに,世間一般 3及び第4の各罪)についても,無期懲役刑を科すのが相当である。 なお,検察官は,元警察官事件の犯行について,甲1會に対する取締りを強化した警察に対するけん制及び被害者に対する報復とともに,世間一般に対して甲1會の威力を示すことをもくろんで実行された示威的な犯行であり,甲1會の意に背くことができない風潮を助長し,甲1會の経済的利益獲得に資するという目的をも併せ持っていたとした上で,このような目的で組織的にけん銃を発射することが経済的に引き合わないことを感得させるため,被告人Yに罰金刑を併科すべき旨主張する。しかし,検察官の主張するような目的で元警察官事件の犯行が実行されたとまでは認められないのは,事実認定の補足説明の中で既に述べたとおりである。仮に,元警察官事件の犯行により,結果として甲1會の経済的利益獲得に資するという効果が見込まれるとしても,それは間接的・副次的な効果にとどまり,これを意図して本件犯行が行われたとまでみるのは飛躍があるというべきであるから,元警察官事件に関し,罰金刑を併科することはしない。 第3 結論以上の次第で,被告人両名に対しては,それぞれ主文の刑をもって臨むのが相当であると判断した。 (求刑被告人Xについて死刑,被告人Yについて元組合長事件につき無期懲役, 元警察官事件,看護師事件,歯科医師事件につき無期懲役及び罰金2000万円)令和3年8月25日福岡地方裁判所第3刑事部

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