【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴人の各予備的請求を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 第一、 当事者の求めた裁判 一、
主 文 本件控訴を棄却する。 控訴人の各予備的請求を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 第一、 当事者の求めた裁判 一、 控訴人 (1) 原判決を取消す。 (2) (本位的請求の趣旨) 被控訴人は控訴人のために、朝日新聞大阪本社発行の朝日新聞、染織新報本社発 行の染織新報、大阪新聞社発行の大阪新聞、京都新聞社発行の京都新聞各紙上社会 面(但し染織新報の場合のみ第一面)に五号活字をもつて、原判決二枚目表初行目 から同裏八行目までに記載の鑑定誤認陳謝状と題する広告を掲載せよ。 (第一次予備的請求の趣旨)(当審拡張) 被控訴人は控訴人のために、右と同一の各紙上に五号活字で、別紙記載の広告を 掲載せよ。 (第二次予備的請求の趣旨)(当審拡張) 控訴人製造にかかる正絹栗東縮緬について、被控訴人が大阪合繊株式会社の委任 により昭和三九年六月二六日「経糸は絹、緯糸はアセテート混紡糸である」とした 検査鑑定は、事実に反していたため、控訴人の右製品ないし、控訴人の名誉を毀損 したことを確認する。 (3) 訴訟費用は第一、二審と、も被控訴人の負担とする。 二、 被控訴人 主文同旨 第二、 双方の主張および証拠関係は、次のとおり附加するほか、原判決事実摘 示のとおりである(原判決八枚目裏三行目の「京都市染識試験場」は「京都市染織 試験場」の誤記)。 (控訴人の主張) (1) 控訴人の如き法人も、自然人と全く同一ではないが、法によつて保護せ られるべき人格的利益を有し、社会的評価としての名誉(客観)および名誉感情 (主観)の両者の侵害について損害賠償請求権を有する。 (2) 第一次予備的請求について 控訴人の本位的請求が許されないとすれば、第一次予備的請求の趣旨のとおり新 聞紙上に判決認定 )および名誉感情 (主観)の両者の侵害について損害賠償請求権を有する。 (2) 第一次予備的請求について 控訴人の本位的請求が許されないとすれば、第一次予備的請求の趣旨のとおり新 聞紙上に判決認定事実要旨の掲載を求める。 (3)第二次予備的請求について 右第一次予備的主張も理由がないとすれば、第二次予備的請求の趣旨のとおり確 認を求める。 (被控訴人の主張) (1) 本件につき名誉毀損の成立しない理由は次のとおりである。 一 Aの行為は、不法行為における行為としての定型性を欠き、不法行為とは言 い得ない。それは次のいずれの理由からしても明らかである。 (一) 本件試験成績表は、不特定又は多数人に伝播される性質のものではな い。現に本件では試験成績表が不特定又は多数人の間に伝播された事実はないし、 仮りにかかる事実があつたとしても、それは専ら第三者の行為が介在した結果であ つて、Aの行為とは何の関係もない事である。 (二) 試験鑑定そのものは、自然科学的実験結果の表明であつて、価値評価は 全く含んでいない。同一材料のみで織られた布と混紡とは用途によつてその利用価 値が異るのであつて、混紡即ち悪製品とはならない。従つて、試験成績表のみによ つて、布に対する評価を損傷するということはありえない。 (三) 名誉毀損となる為には、被害者が特定されていなければならないが、本 件試験成績表からは、それに添付された布片が控訴人の作成にかかることを推定す ることは不可能であつて、被害者を特定することはできない。 (四) 試験鑑定は、試験に供された特定の資料に対する試験の結果であつて、 同種製品やその特定資料を作成している者の全製品について試験の結果が及ぶもの ではない。この点被控訴人が現に行つている輸出検査とは全く性質の異なるもので ある。 二 Aの行為と控訴人の主張 であつて、 同種製品やその特定資料を作成している者の全製品について試験の結果が及ぶもの ではない。この点被控訴人が現に行つている輸出検査とは全く性質の異なるもので ある。 二 Aの行為と控訴人の主張の損害との間には因果関係がない。 (2) 控訴人の第一次予備的請求は未だ学説として確定的地位を占めている考 え方でもなければ、判例で採用されたものでもない。 (3) 万一、右予備的請求が許容される場合は、控訴人は、行為時である昭和 三九年六月二九日から三年以上経過後にその請求をしたのであるから、被控訴人は 消滅時効を援用する。 (4) 控訴人の第二次予備的請求は、過去の事実関係の確認を求めるものであ るから、不適法として却下さるべきである。 (証拠関係)(省略) 理 由 第一、 控訴人の製造した栗東古代なる白生地を訴外株式会社藤井商店が染着尺 とした内の一反を訴外Bが呉服店から購入したところ、他人から正絹でないと謂わ れたため、知人Cのすすめにより、右反物の端の縦一〇種、横二〇糎の部分を切り 取つて、これにつき右Cの勤務先なる大阪合繊株式会社名義で被控訴人に絹以外の ものが混つていないかどうかにつき試験鑑定を依頼したところ、その検査員Aがア セテート混紡糸であると判定し、その試験方法と結果とを記載した試験成績表を依 頼人に交付したが、事実は正絹であつて、右判定につき検査員に誤まりがあつたと 認定すべきことに関する当裁判所の判断は原判決理由一ないし四項のとおり(一部 弁論の全趣旨による認定を追加)である。 第二、 しかしながら、当審証人Dの証言およびこれにより成立を認められる乙 第四号証に原審証人Eの証言を綜合すると、次のとおりの認定および判断をするこ とがどきる。 <要旨>被控訴人は輸出検査法の指定を受けている繊維製品の検査機関であつて、 びこれにより成立を認められる乙 第四号証に原審証人Eの証言を綜合すると、次のとおりの認定および判断をするこ とがどきる。 <要旨>被控訴人は輸出検査法の指定を受けている繊維製品の検査機関であつて、 主たる業務内容は同法に基づく</要旨>輸出検査と同法に基づかない輸出品或いは一 般内地品の依頼検査であり、その付属業務として試験鑑定を行なつている。その内 の前者すなわち商品検査は、その対象である商品の全数量を検査員が確認した上 で、その内から一定の規則に従つて一定の数量を抜取り検査するものであつて、こ れにより全商品が検査の対象となり、その品質の善悪が判定される。これに反し、 後者すなわち試験鑑定にあつては、通常は繊維を取扱う専門業者の依頼により、特 定のサンプルについてその製品の特性を調べるものであつて、右サンプルがどのよ うな商品の一部であるか、或いはそのメーカー又は取扱卸小売商が何人であるが、 また、依頼者が試験の結果をどのような目的に使用するかなどは全く聞かずに行な うものである点において前記商品検査と根本的に相違があり、右サンプルの試験に よつて、これを切り取る以前の商品全体の品質判定を行なうことは不可能であり、 況んやそのメーカーの同種全商品の品質の善悪の判断とも全く無関係である。そし て本件の試験が右後者の業務として行なわれたことはもちろんであるとともに、前 記のとおり、此の種の試験の依頼者が普通専門業者であり、本件においても大阪合 繊株式会社名義で依頼されており、Bの名は被控訴人に全く告げられていないこと を考えると、検査と試験の相違が右Bに理解されなかつたことも已むを得ない事柄 であつて、もとより被控訴人を責めることはできない。 かように考えてみると、本件試験鑑定は本来不特定多数人に伝播される性質のも のではなく、試験成績表を依頼者に交付することによつて終 已むを得ない事柄 であつて、もとより被控訴人を責めることはできない。 かように考えてみると、本件試験鑑定は本来不特定多数人に伝播される性質のも のではなく、試験成績表を依頼者に交付することによつて終了するとの前掲事実被 控訴人の(1)の一、の(一)の主張、右試験鑑定は単に自然科学的実験結果の表 明であつて、これのみによつて布に対する評価を損傷することはあり得ないとの同 じく(二)の主張、名誉毀損となるための被害者の特定がないとの(三)の主張、 試験鑑定の結果は同種製品に及はないとの(四)の主張はいずれも理由があり、従 つてまた、右試験鑑定の性質上、これにより、何人かの名誉を毀損するような事実 は到底予見し得べきところではないから、控訴人主張の損害との間に相当因果関係 がないとの被控訴人の(1)の二、の主張も採用に値すると謂わなければならな い。 たしかに、本件試験鑑定の結果が依頼者大阪合繊株式会社からBに伝えられ、次 いで前記のとおり検査と試験の相違を理解していない同人から順次呉服小売商、染 物商を経て、控訴人に右試験鑑定の結果が伝えられる間に、控訴人の商品の品質そ のものについてまで誤まつた報道が業界に弘まつて、結果的には控訴人の信用が害 されるに至つたのであるから、控訴人の側から見れば右試験鑑定に誤まりがあつた 以上、被控訴人の責任を当然追究できる筈であると考えるのも、常識的には無理か らぬ節もあると思われる。しかし本件試験鑑定の性質が前記のとおりのものである がぎり、その誤まりと控訴人主張の損害との間に存在する関係は、法律上は単に自 然的因果関係(条件)であるに止まり、名誉毀損の責任を被控訴人に帰することは できないものと解するほかはないのである。 第三、 以上の次第であるから被控訴人に右の責任があることを前提とする控訴 人の本位的請求および各予備的請求は、その 、名誉毀損の責任を被控訴人に帰することは できないものと解するほかはないのである。 第三、 以上の次第であるから被控訴人に右の責任があることを前提とする控訴 人の本位的請求および各予備的請求は、その余の争点につき考察するまでもなく、 すでにこの点において失当と謂わなければならない。してみると理由を異にする も、原判決は結局相当であるから、民訴法三八四条八九条を適用して主文のとおり 判決する。 (裁判長裁判官 沢井種雄 裁判官 岩本正彦 裁判官 常安政夫)
▼ クリックして全文を表示