平成20(行ウ)13 国民年金保険料納付済期間確認処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年11月13日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文39,608 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,社会保険庁長官が原告の国民年金保険料の納付済期間を確認する処分の義務付けを求める部分を却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 社会保険庁長官が平成18年6月16日付けで原告に対してした年金加入期間確認処分のうち,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和50年4月から平成元年3月までの168月であることを確認する部分を取り消す。 社会保険庁長官は,原告に対し,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和39年3月1日から平成元年4月1日までの301月であることを確認せよ。 第2事案の概要 本件は,社会保険庁長官から,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和50年4月から平成元年3月までの168月であることなどを確認する処分(以下「本件確認処分」という。)を受けた原告が,昭和39年3月1日から平成元年4月1日までの間国民年金保険料を納付したと主張し,本件確認処分中原告の国民年金保険料の納付済期間を確認する部分の取消しを求めるとともに,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和39年3月1日から平成元年4月1日までの301月(以下「本件期間」という。)であることを確認する処分の義務付けを求めた事案である。 法令の定め(1) 社会保険庁長官による確認処分等私立学校教職員共済法(以下「私学共済法」という。)47条の3第1項は,退職共済年金又は遺族共済年金を支給すべき場合には,同法25条にお- 2 -いて読み替えて準用する国家公務員共済組合法76条1項1号に規定する加入者期間等のうち加入者期間(私立学校教職員共済制度の加入者である期間をいう(私学共済法17条1項)。以下同じ。)以外の期間については,社会保険庁長官(当該加入者期間以外の期 条1項1号に規定する加入者期間等のうち加入者期間(私立学校教職員共済制度の加入者である期間をいう(私学共済法17条1項)。以下同じ。)以外の期間については,社会保険庁長官(当該加入者期間以外の期間が他の法律に基づく共済組合の組合員であった期間であるときは,当該共済組合)の確認を受けたところによると規定し,同法47条の3第2項は,上記確認に関する処分に不服がある者は,国民年金法等の定めるところにより,審査機関に審査請求することができると規定する。 私学共済法25条による読替後の国家公務員共済組合法76条1項1号は,加入者期間等について,加入者期間,加入者期間以外の国民年金法5条2項に規定する保険料納付済期間,同条3項に規定する保険料免除期間及び同法附則7条1項に規定する合算対象期間を合算した期間をいうと規定している。 国民年金法5条2項は,同法において,「保険料納付済期間」とは,同法7条1項1号に規定する被保険者(以下「第1号被保険者」という。)としての被保険者期間のうち納付された保険料に係るもの,同項2号に規定する被保険者(以下「第2号被保険者」という。)としての被保険者期間及び同項3号に規定する被保険者(以下「第3号被保険者」という。)としての被保険者期間を合算した期間(以下「保険料納付済期間」という。)をいうと規定する。なお,昭和60年法律第34号による改正(昭和61年4月1日施行,以下「60年改正」という。)前の国民年金法(以下「旧国民年金法」という。)5条3項は,同法において,「保険料納付済期間」とは,納付された保険料に係る被保険者期間を合算した期間(以下「旧保険料納付済期間」という。)をいうと規定していた。 (2)国民年金の被保険者資格等ア旧国民年金法7条1項は,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は,国民 期間を合算した期間(以下「旧保険料納付済期間」という。)をいうと規定していた。 (2)国民年金の被保険者資格等ア旧国民年金法7条1項は,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は,国民年金の被保険者とすると規定するが,同条2項は,被用者- 3 -年金各法の被保険者又は組合員,これら者の配偶者及び大学その他の学校に在学する生徒又は学生等は,同条1項の規定にかかわらず,国民年金の被保険者としないと規定していた。なお,旧国民年金法附則6条は,同法7条2項に該当するものは,被用者年金各法の被保険者及び組合員を除き,同項の規定にかかわらず,都道府県知事に申し出て,被保険者となることができると規定していた。 イ60年改正により国民年金制度は基礎年金制度として再編され,旧国民年金法の下において被保険者から除外されていた被用者年金各法の被保険者又は組合員及びこれらの者の配偶者も,それぞれ第2号被保険者及び第3号被保険者として国民年金の被保険者とされた(60年改正後の国民年金法7条1項。なお,旧国民年金法の下における国民年金の被保険者期間及び旧保険料納付済期間は,60年改正後の国民年金法の適用については,それぞれ第1号被保険者としての国民年金の被保険者期間及び保険料納付済期間とみなされ(昭和60年法律第34号附則8条1項),旧国民年金法の下における被用者年金各法に基づく年金制度の被保険者期間又は組合員期間等は,国家公務員共済組合法76条1項1号に規定する組合期間等(私学共済法25条により「加入者期間等」と読み替えられることとなる。)に算入するものとされている(昭和60年法律第105号附則12条,同年法律第34号附則8条)。)。 (3) 保険料の納付国民年金法87条1項は,政府は,国民年金事業に要する費用に充てるため,保険料を徴収する ものとされている(昭和60年法律第105号附則12条,同年法律第34号附則8条)。)。 (3) 保険料の納付国民年金法87条1項は,政府は,国民年金事業に要する費用に充てるため,保険料を徴収すると規定し,同条2項は,保険料は,被保険者期間の計算の基礎となる各月につき,徴収するものとし,同法88条1項は,被保険者は,保険料を納付しなければならないと規定する。 また,旧国民年金法91条は,1月,2月及び3月分の保険料はその年の4月末日までに,4月,5月及び6月分の保険料はその年の7月末日までに,- 4 -7月,8月及び9月分の保険料はその年の10月末日までに,10月,11月及び12月分の保険料は翌年の1月末日までに,それぞれ納付しなければならないと規定していた。同法92条1項は,保険料を納期限前に納付するには,厚生省令で定める場合を除いて,国民年金印紙による納付の方法によらなければならず,4月から12月までの各月の保険料を納期限の経過後翌年の4月30日までの間に納付するときも,同様とする旨規定し,同条3項は,国民年金印紙による保険料の納付は,国民年金手帳の所定欄に国民年金印紙をはりつけ,これを都道府県知事又は市町村長に提出し,その検認を受けることによって行うものとすると規定していた。また,同条2項は,1月から3月までの各月の保険料をその年の5月1日以降に,4月から12月までの各月の保険料を翌年の5月1日以後に納付するには,国民年金印紙による納付の方法によることができないと規定していた。 (4) 届出国民年金法12条1項は,被保険者は,厚生労働省令(平成11年法律第160号による改正前にあっては厚生省令。以下同じ。)の定めるところにより,その資格の取得及び喪失等に関する事項並びに氏名及び住所の変更に関する事項を市町村長に届け出なければ 省令(平成11年法律第160号による改正前にあっては厚生省令。以下同じ。)の定めるところにより,その資格の取得及び喪失等に関する事項並びに氏名及び住所の変更に関する事項を市町村長に届け出なければならないと規定し,同条3項は,住民基本台帳法(昭和42年法律第81号,同年11月10日施行)22条から24条までの規定による届出があったとき(当該届出に係る書面に同法29条の規定による附記がされたときに限る。)は,その届出と同一の事由に基づく国民年金法12条1項の届出があったものとみなすと規定する。 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記各証拠(書証番号は枝番号を含む。以下同じ。)又は弁論の全趣旨から容易に認めることができる。なお,争いがない事実には認定根拠を付記しない。 (1)原告(甲1,2,29,37,弁論の全趣旨)- 5 -ア原告は,昭和▲年▲月▲日,A(明治▲年▲月▲日生,平成▲年▲月▲日死亡)とB(大正▲年▲月▲日生,平成▲年▲月▲日死亡,Aと併せて「B夫婦」という。)との間に出生した。なお,AとBとの間の子には,原告のほか,C(昭和▲年▲月▲日生),D(昭和▲年▲月▲日生),E(昭和▲年▲月▲日生),F(昭和▲年▲月▲日生)及びG(昭和▲年▲月▲日生)がいる。 イ原告は,昭和39年3月,京都大学法学部を卒業し,昭和45年1月13日にHと婚姻したが,このころ,兵庫県西宮市に転居し,さらに,昭和48年7月に同県宝塚市に転居した上,昭和50年11月には奈良市に転居し,以後同所において居住している。 なお,戸籍の附票には,住所及び住所を定めた年月日等を記載又は記録するものとされているところ(住民基本台帳法17条),原告の戸籍の附票には,原告が,昭和45年1月13日に京都市α区から西宮市へ,昭和48年7月28日に同 住所及び住所を定めた年月日等を記載又は記録するものとされているところ(住民基本台帳法17条),原告の戸籍の附票には,原告が,昭和45年1月13日に京都市α区から西宮市へ,昭和48年7月28日に同市から宝塚市へ,昭和50年11月23日に同市から奈良市へそれぞれ住所を移した旨記載されている。 ウなお,Cは昭和36年11月22日に婚姻し,Dは昭和44年3月3日にI(現○○。Dと併せて「D夫婦」という。)と婚姻し(なお,戸籍の附票では,Iの住民票上の住所が昭和43年2月にDと同じ住所となっている。),Eは昭和52年11月14日に,Fは昭和49年2月16日に,Gは昭和57年3月1日にそれぞれ婚姻している。 (2) 国民年金手帳の交付及び国民年金保険料の納付等(甲7,8,27)原告は,昭和51年3月1日付けで奈良社会保険事務所から国民年金手帳記号番号「○-○」(以下「本件記号番号」という。)の払出しを受け,そのころ,奈良市から国民年金手帳の交付を受けた。 原告は,本件記号番号の払出しを受けた後,昭和50年4月分から昭和51年3月分までの国民年金保険料を納付し,以後平成元年3月分までの国民- 6 -年金保険料を納付している。 原告は,平成元年4月1日,日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)が管掌する私立学校教職員共済制度の加入者となり,これにより第2号被保険者となった。 (3) 本件確認処分(甲3,乙1,3,4)原告は,平成18年5月31日,社会保険庁長官に対し,私学共済法47条の3第1項の規定に基づく年金加入期間の確認を請求したところ,社会保険庁長官は,原告に対し,平成18年6月1日付けで,原告の国民年金加入期間(被保険者期間)は昭和39年3月1日から平成元年4月1日までで,そのうち保険料が納付済の期間は昭和50年4月から平成 社会保険庁長官は,原告に対し,平成18年6月1日付けで,原告の国民年金加入期間(被保険者期間)は昭和39年3月1日から平成元年4月1日までで,そのうち保険料が納付済の期間は昭和50年4月から平成元年3月までの168月であり,厚生年金保険加入期間(被保険者期間)は平成13年5月1日から平成17年6月21日までの49月であることを確認する処分をした。 原告は,平成18年6月14日,社会保険庁長官に対し,再度私学共済法47条の3第1項の規定に基づく確認を請求をしたところ,社会保険庁長官は,原告に対し,同月16日付けで,前同様の確認処分(本件確認処分)をした。 (4)不服申立て及び本件訴え(甲4から6まで,乙5,6,弁論の全趣旨)ア原告は,平成18年7月26日,代理人を通じて,奈良社会保険事務所審査官に対し,口頭で,私学共済法47条の3第2項,国民年金法101条1項の規定に基づく本件確認処分に対する審査請求をした。同審査官は,原告に対し,同日付けで,審査請求の趣旨及び理由をより明確にするよう求めたところ,原告から,同年11月9日付けで審査請求書が提出されたため,同審査請求書を,上記口頭による審査請求の趣旨及び理由を補完するものと理解して受理し,同年12月5日付けで,原告の審査請求を棄却する決定をし,そのころ,同決定に係る決定書謄本が原告に送付された。 イ原告は,上記審査請求に係る決定を不服として,平成19年2月2日付- 7 -けで,社会保険審査会に対して再審査請求をしたところ,同審査会は,同年7月31日付けで,原告の上記再審査請求を棄却する裁決をし,同年8月2日ころ,同裁決に係る裁決書謄本が原告に対して送付された。 ウ原告は,平成20年1月28日,当庁に対し,本件訴えを提起した。 争点及び争点についての当事者の主張(1) 本件確 決をし,同年8月2日ころ,同裁決に係る裁決書謄本が原告に対して送付された。 ウ原告は,平成20年1月28日,当庁に対し,本件訴えを提起した。 争点及び争点についての当事者の主張(1) 本件確認処分の適法性(本件期間における国民年金保険料納付の有無)(争点①)【原告の主張】ア原告の国民年金保険料の納付状況(ア)原告は,昭和34年8月,両親と共に大阪府豊中市に転居した後,昭和39年3月に京都大学法学部を卒業したが,同大学の卒業に際し,Bが,豊中市役所において原告の国民年金加入手続を行い,以後昭和50年3月分まで,Bが原告の国民年金保険料を納付していた。 なお,上記のとおり,原告の国民年金保険料はBにおいて納付していたため,原告の年金手帳や保険料の領収書はBが保管していたところ,Bは,昭和47年に香川県小豆郡β(現同郡γ)に転居し,その後,平成5年に公共事業による用地買収のため同人の自宅が取り壊され,京都市に転居することとなったが,この取壊しの際,上記年金手帳や領収書等の所在が不明となっている。 この点,Iも,Dと婚姻直後の昭和44年4月ころ,豊中市のBの自宅において,IとBとが在宅中に国民年金保険料の集金人が来訪し,その際Bが年金手帳を3冊取り出し,そのうちDの分については,以後Iにおいて保険料を支払うよう申し向けて同人に手交し,他の2冊の年金手帳に係る保険料については,Bにおいて納付しているのを目撃したが,Bが所持していた上記2冊の年金手帳はBと原告のものである以外には考えられないと供述している。Iは,原告が本訴を提起した後に原告へ- 8 -の協力を申し出たものであり,Iの上記供述の信用性は極めて高いというべきである。 なお,原告は,昭和41年4,5月ころに弁護士として開業した直後から,両親の生活費を支援するようになり へ- 8 -の協力を申し出たものであり,Iの上記供述の信用性は極めて高いというべきである。 なお,原告は,昭和41年4,5月ころに弁護士として開業した直後から,両親の生活費を支援するようになり,ほどなく両親の生活費のすべてを賄えるだけの支援を同人らの死亡まで継続するようになったのであるが,Bは,原告の大学卒業時から原告の国民年金に係る手続をして保険料を納付しており,原告としても,原告の保険料を納付することがBの楽しみの一つと考えられたことから,保険料の納付をBにそのまま任せていたものである。 (イ)原告は,昭和50年11月に宝塚市から奈良市に転居した際,Bが高齢になってきていることもあり,Bに対して原告の国民年金保険料の納付を以後原告においてすると伝えた。そして,Hが昭和51年2月ころに奈良市役所に赴いたところ,原告の年金手帳が再交付されるとともに,転居後の原告の保険料が未納となっていると告げられ,その後,昭和50年4月から昭和51年3月分までの原告の保険料の納付書が届いたため,Hがそのままこれを納付したのである。なお,この際,Hは,上記納付書に奈良市への転居前の保険料に係るものが含まれていることには気付かなかった。 さらに,昭和51年4月ころ,奈良社会保険事務所から,昭和49年1月分から昭和50年3月分までの納付書(甲9)が送付されたため,原告が奈良社会保険事務所に電話で確認したところ,同期間について未納となっているとの回答であった。原告は,保険料はすべて納付済であると抗議して再調査を求めたところ,後日,担当者から,電話で,「納付の事実が確認されたので納付の必要はない。破棄してもらって構わない。」との回答があった。そこで,原告は,上記納付書による保険料の納付は行わず,以後昭和51年4月分から平成元年3月分まで保険料を- の事実が確認されたので納付の必要はない。破棄してもらって構わない。」との回答があった。そこで,原告は,上記納付書による保険料の納付は行わず,以後昭和51年4月分から平成元年3月分まで保険料を- 9 -納付したものである。 イ被告の主張について(ア)被告は,社会保険庁,社会保険事務所及び市町村(以下,併せて「社会保険庁側」という。)に原告の保険料納付の記録が存在せず,原告の主張に客観的な裏付けがないことをもって,原告が保険料を納付した事実はないと主張する。 しかし,被告の上記主張は,社会保険庁側の記録が正確なものであり,信用に値するものであることが当然の前提となるところ,社会保険庁側に現存する被保険者記録及び関係帳簿の正確性は甚だしく乏しいものであって,被告の主張はその前提を欠くというべきである。すなわち,平成15年以降,年金に関する多数の問題が明らかとなり,平成19年に至って,巷間「宙に浮いた年金」「消えた年金」などと呼ばれる年金記録問題が発覚したところ,そこでは,平成18年6月時点で基礎年金番号に統合できていない年金記録が5000万件余りも存することが判明するなど,厚生省や社会保険庁の被保険者記録の作成管理が杜撰を極めるものであることが明らかとなった。そして,社会保険庁の被保険者記録にも市町村の紙台帳にも全く記録のないいわゆる「消えた年金」についても,国民年金の被保険者から保険料領収書や年金手帳記載の納付記録といった動かし難い直接証拠を提示され,社会保険庁が被保険者記録の訂正に応じた事例が,平成18年8月から平成19年6月までのわずか11か月の間に571件にも上り,さらに,年金記録確認中央第三者委員会及び年金記録確認地方第三者委員会(以下,併せて「第三者委員会」という。)が,家計簿等の状況証拠を提出した申出を認めて被保険 ずか11か月の間に571件にも上り,さらに,年金記録確認中央第三者委員会及び年金記録確認地方第三者委員会(以下,併せて「第三者委員会」という。)が,家計簿等の状況証拠を提出した申出を認めて被保険者記録の訂正を勧告したものも,平成19年6月から同年12月26日までの間に772件も存在し,これらが被保険者や受給者からの申出に基づいて明らかになったものであることからすると,こうした「消えた- 10 -年金」の事例が極めて多数に上るであろうことは想像に難くない。そして,被告は,国民の言うことについては,保険料の領収書等の客観的証拠がない限り信用できないとするのであるが,何十年も領収書を保管でき,実際に保管している国民は少なく,もとより,これまで政府が,保険料の領収書を保管しておかなければ年金を受給できないことがあると国民に警告したことは一度もなく,以上のような被告の取扱い自体,年金制度に対する国民の信頼を裏切るものである。 以上の諸点に照らせば,被告の主張がその前提を欠くというのみならず,正義・衡平の見地からして,国民年金等の被保険者の保険料納付の事実については,被告において納付がないことの立証責任を負うと解すべきである。 (イ)また,被告は,昭和44年時点で豊中市が同市に住民票のない原告の国民年金保険料を集金することは制度上あり得ないことを理由に,Iの前記供述は信用できないと主張するが,被告の上記主張は,社会保険庁側が法令に従った適正な事務処理を行っていることが前提となるところ,既にその前提が成り立たないことは,年金記録問題に関する報告書(甲18)からも明らかであり,被告が主張する点は,Iの供述の信用性を何ら左右しない。 (ウ)被告は,原告について任意加入の有無や昭和39年に加入手続を行った事実に関する客観的資料が確認できなかっ (甲18)からも明らかであり,被告が主張する点は,Iの供述の信用性を何ら左右しない。 (ウ)被告は,原告について任意加入の有無や昭和39年に加入手続を行った事実に関する客観的資料が確認できなかったため,本件確認処分における原告が国民年金の被保険者資格を取得した年月日は,原告の申告により作成した年金記録に基づくものであると主張する。しかし,社会保険庁側は,客観的資料が見つからないとしながら,原告にその旨通知して調査協力を求めるなどといった当然の措置を執っていない。さらに,客観的資料がないから原告の申告に基づいて記録するというのであれば,保険料納付済期間についても原告の申告に基づいて記録することになる- 11 -はずである。結局,被告の主張は,被保険者記録の作成の責任者は被保険者であるというに等しく無責任きわまりないものであって,苦し紛れのご都合主義か,被保険者記録がいいかげんに作成されている事実を裏付けるもののいずれかであるというほかない。 (エ)被告は,原告が昭和39年4月から2年間司法修習生として裁判所共済組合の組合員であったから,制度上国民年金の被保険者とはなり得ず,したがって,昭和39年3月に同被保険者資格を取得し,以後継続して同被保険者資格を有していたとはおよそ考えられないと主張する。 しかし,昭和39年3月時点では,原告はいまだ司法修習生の身分を取得しておらず,国民年金に加入することに何らの妨げもない。そして,社会保険庁と裁判所共済組合との間の十分な連携がなければ,原告の給料から裁判所共済組合の長期掛金が天引きされる一方,社会保険庁がその事実を認識しないまま,原告の国民年金加入状態が継続し,Bがその保険料を納付し続ける事態が生じても何ら不思議はない。この点,原告や原告代理人に送付されたいわゆる年金特別便(甲27,28 保険庁がその事実を認識しないまま,原告の国民年金加入状態が継続し,Bがその保険料を納付し続ける事態が生じても何ら不思議はない。この点,原告や原告代理人に送付されたいわゆる年金特別便(甲27,28)の記載に照らしても,従前裁判所共済組合と社会保険庁との間で情報提供関係がなかったか,これが甚だ不十分なものであったことがうかがわれる。 (オ)なお,原告については,年金記録確認奈良第三者委員会(以下「奈良第三者委員会」という。)が,本件期間の保険料納付は認められないと判断している。 しかし,第三者委員会において,単なる供述のみから被保険者の申立てを認めた事例は皆無に近いが,これは,第三者委員会における審理において,保険料納付の事実は,被保険者側が主張立証しなければならないとする立場に立脚した上,その判断の基準はいわば法定証拠法則・法定事実認定法則とでも呼ぶべきものに縛られ,供述証拠の信用性等をきちんと吟味する手続が実施されないことに起因するものであり,第三者- 12 -委員会の判断は,本件訴訟に何ら影響を及ぼすものではない。 ウ以上のとおり,原告は,本件期間に係る国民年金保険料を納付しているのであるから,上記期間を原告の保険料納付済期間として認めなかった本件確認処分は違法であり,取り消されるべきである。 【被告の主張】ア客観的な記録上,原告による保険料納付の事実を認め難いこと国民年金手帳記号番号は,最初の払出時に各社会保険事務所が管轄している市町村ごとに払い出し,その後住所の変更があった場合には,旧住所地を管轄する社会保険事務所から新住所地を管轄する社会保険事務所へ国民年金被保険者台帳(以下「被保険者台帳」という。)が移管されるとともに,新住所地の市町村において,新住所地を管轄する社会保険事務所から国民年金被保険者住所変更通知書の を管轄する社会保険事務所へ国民年金被保険者台帳(以下「被保険者台帳」という。)が移管されるとともに,新住所地の市町村において,新住所地を管轄する社会保険事務所から国民年金被保険者住所変更通知書の送付を受けて被保険者名簿及び索引票を作成することとされ,その後の住所の変更についても同様であり,制度上,一度国民年金手帳記号番号が払い出されば,原則として,改めて従前払い出した記号番号と別の記号番号が払い出されることはない。 そして,原告は,昭和51年3月1日に,特記事項もなく本件記号番号の払出しを受けているのであり,それ以前に保険料を納付していたとされる記号番号の存在をうかがわせる事情は何ら存しないのであるから,原告は,昭和51年3月に初めて国民年金手帳記号番号の払出しを受けたと認めるのが合理的である。さらに,原告が昭和39年3月時点で居住していたとする豊中市を管轄する豊中社会保険事務所保管の被保険者台帳管理簿(国民年金手帳記号番号払出簿)にも原告の氏名は存しない上,原告が昭和39年3月から昭和50年11月まで居住していた住所地の各自治体には,いずれも原告に関する(本件記号番号に係る)保険料の納付記録及び本件記号番号以外の原告に係る国民年金手帳記号番号は存在しないことが判明しており,奈良社会保険事務所が保管する原告の国民年金被保険者台- 13 -帳にも,原告に関し昭和50年3月以前に国民年金保険料が納付された旨の記載はない。 以上のとおり,原告の住所地の自治体及び同自治体を管轄する社会保険事務所において保管する客観的な記録上,保険料納付を示す記載がないこと及び原告に対しては昭和51年3月に初めて国民年金手帳記号番号が払い出されたとみるのが合理的であることからすれば,原告が本件期間に国民年金保険料を納付していた事実は認められない。 イ原 がないこと及び原告に対しては昭和51年3月に初めて国民年金手帳記号番号が払い出されたとみるのが合理的であることからすれば,原告が本件期間に国民年金保険料を納付していた事実は認められない。 イ原告は昭和39年3月に国民年金被保険者資格を取得したとは考えられないこと原告の国民年金被保険者資格の取得及び保険料の納付状況が記録されている国年資格記録(乙10)において,原告の国民年金被保険者資格の取得日が昭和39年3月1日とされているが,これは,原告本人の申告に基づき入力されたにすぎないところ,原告は,同年4月から昭和41年4月までの約2年間,司法修習生の身分を有し,その間共済制度に加入していたのであるから,その加入期間中は,国民年金制度の適用を除外されており,国民年金の被保険者とはなり得なかった。 ウBが原告の国民年金保険料を支払っていたとする原告及びIの供述が信用できないことIは,昭和44年4月ころ,Bが,集金人に2人分の保険料を支払っているのを見たことがあると供述し,原告は,これを根拠に,昭和39年3月からBにおいて原告の国民年金保険料を支払っていたと主張する。しかし,Iの当該供述自体,何ら客観的な裏付けのないものである上,Bが支払っていたとする2人分の保険料が原告とBのものであるという点についても,B自身から聞いたこともないというのであり,単なるIの想像を供述するものにすぎない。さらに,そもそも当時の法制度の下においては,被保険者の住所地以外の自治体による保険料の集金はできなかったのであ- 14 -り,昭和44年当時,原告が住民票を置いていなかった豊中市において,原告の保険料を領収することは不可能なのであって,Iの供述及びこれを前提とする原告の主張は,当時の法制度に整合せず,全く信用性に欠けるものである。 以上に加え,Iの 置いていなかった豊中市において,原告の保険料を領収することは不可能なのであって,Iの供述及びこれを前提とする原告の主張は,当時の法制度に整合せず,全く信用性に欠けるものである。 以上に加え,Iの供述には変遷もあるほか,その内容自体にも不自然,不合理な点もあり,信用することができない。 また,原告自身の供述も,原告本人の推測を述べるあいまいなものにすぎず,信用することはできない。 エさらに,奈良第三者委員会においても,平成19年12月19日付け決定において,原告の本件期間の国民年金保険料については,納付していたものと認めることはできないと判断しているところである。 オまとめ以上の各事情からすれば,原告が,本件期間,国民年金保険料を納付していた事実は認められず,本件確認処分は適法である。 (2) 原告の国民年金保険料の納付済期間を確認する処分の義務付けの可否(争点②)【原告の主張】争点①について述べたとおり,原告は,本件期間の国民年金保険料を納付しているから,社会保険庁長官は,原告に対し,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和39年3月1日から平成元年4月1日までの301月であることを確認する処分をする義務がある。 【被告の主張】私学共済法47条の3第1項は,私学教職員共済制度の加入者に対し,客観的事実(真実)に合致した「加入者期間以外の期間」の確認という応答処分を求める実体上の権利及びこれに基づきその求めに応じて行政庁が適正に手続を進めて応答処分を行うことを要求する権利(申請権)を認めていると- 15 -解される。そうすると,仮に客観的事実(真実)に合致しない「加入者期間以外の期間」を確認したような場合には,それは客観的真実に合致した正しい処分を求めることができるという申請者の実体上の権利を侵害することとなるから,この場合, 的事実(真実)に合致しない「加入者期間以外の期間」を確認したような場合には,それは客観的真実に合致した正しい処分を求めることができるという申請者の実体上の権利を侵害することとなるから,この場合,上記実体上の権利に基づいてされた申請を棄却する処分と評価でき,これは,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の3第1項2号の「当該法令に基づく申請…を…棄却する旨の処分…がされた場合」に当たるということができる。したがって,原告の確認処分の義務付けを求める訴えは,いわゆる申請型義務付けの訴えに当たると解されるが,申請型義務付けの訴えは,併合提起した取消訴訟が認容されることが訴訟要件となるものと解されるところ(同法37条の3第1項2号),本件において,義務付けの訴えに併合提起された確認処分の取消請求が認容されるべきでないことは,争点①について述べたとおりであるから,上記義務付けの訴えは不適法であり,却下されるべきである。 第3争点に対する判断 争点①(本件確認処分の適法性(本件期間における国民年金保険料納付の有無))について(1) 本件確認処分は,私立学校教職員共済制度加入者期間を除く加入者期間等のうち,加入者期間以外の保険料納付済期間を確認するものであり,本件確認処分の適法性は,本件確認処分において確認された加入者期間以外の保険料納付済期間の適否によることとなる。原告は,保険料納付済期間について,本件確認処分で確認された以外には,本件期間に国民年金保険料を納付した事実のみを主張しており,本件確認処分の適法性は,結局,原告が本件期間の国民年金保険料を納付したかどうかによることとなる。 (2) 認定事実前記前提事実に加えて,掲記各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,これを左右するに足りる証拠はない。 - 民年金保険料を納付したかどうかによることとなる。 (2) 認定事実前記前提事実に加えて,掲記各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,これを左右するに足りる証拠はない。 - 16 -ア市町村準則の定め(乙13,弁論の全趣旨)国民年金法及び同法に基づく命令の規定により,市町村が処理すべき国民年金の事務取扱手続についての基準を示すことを目的として,国民年金市町村事務取扱準則(昭和42年3月15日庁発第4号社会保険庁年金保険部長通知,以下「市町村準則」という。)が定められているところ,市町村準則は,その発出当時,次のとおり規定していた。 (ア)市町村においては,国民年金被保険者名簿(以下「被保険者名簿」という。)等を備え(3条1項),被保険者名簿は,被保険者ごとに作成し,国民年金手帳の記号番号,氏名,性別,生年月日及び住所,被保険者の資格取得の年月日,強制加入被保険者又は任意加入被保険者の別,被保険者の資格喪失の年月日並びに保険料の検認の年月日,保険料の前納の期間,保険料の追納の期間,保険料の免除の期間及び保険料の還付の期間等を記載する(5条)。 (イ)はじめて被保険者の資格を取得した者に係る被保険者の資格取得の届書(以下「資格取得届」という。)を受理したときは,資格取得届の記載内容を審査し,被保険者の資格があると認めたときは,被保険者名簿を作成した上,当該資格取得届を当該市町村を管轄する社会保険事務所(以下「管轄社会保険事務所」という。)に送付する(8条1項)。 また,資格取得届の送付に基づき,管轄社会保険事務所から国民年金手帳が送付されたときは,国民年金手帳により被保険者名簿に記号番号を記入し,国民年金手帳の所定欄に市町村の名称及びその所在地を記入し,これを被保険者に交付する(同条2項)。 (ウ)被保険者の 年金手帳が送付されたときは,国民年金手帳により被保険者名簿に記号番号を記入し,国民年金手帳の所定欄に市町村の名称及びその所在地を記入し,これを被保険者に交付する(同条2項)。 (ウ)被保険者の住所変更の届書(以下「被保険者住所変更届」という。)を受理したときは,その記載内容を審査し(その際,変更後の住所は,住民票その他変更後の住所を明らかにすることができる公簿により確認する。),住所の変更を確認したときは,旧住所地が同一の市町- 17 -村の区域内である場合には,被保険者名簿に変更後の住所及び変更年月日を記入し,旧住所地が同一の市町村の区域内にない場合は,被保険者名簿等を作成するとともに,被保険者名簿に旧住所地の市町村名及び変更年月日並びに当該年度における検認年月日等保険料に関する記録を記入し,上記のいずれの場合においても,国民年金手帳の住所欄に変更後の住所及び変更年月日を記入してこれを被保険者に返付した上,被保険者住所変更届又は当該市町村において作成した国民年金被保険者住所変更報告書(以下「被保険者住所変更報告書」といい,被保険者住所変更届と併せて「被保険者住所変更届等」という。)を管轄社会保険事務所に送付することとし,旧住所地の市町村は,管轄社会保険事務所から被保険者の住所を変更した旨の通知書の送付を受けたときは,当該被保険者の被保険者名簿に新住所地の市町村名及び変更年月日を記入する(17条)。 旧住所地の市町村は,被保険者が他の市町村の区域内に住所を変更した事実を住民票により確認したときは,当該被保険者について管轄社会保険事務所から住所を変更した旨の通知書の送付をうけたときを除き,被保険者住所変更報告書を作成し,当該報告書に「住民票により確認」と付記した上でこれを管轄社会保険事務所に送付し,被保険者名簿に変更後の住所 所から住所を変更した旨の通知書の送付をうけたときを除き,被保険者住所変更報告書を作成し,当該報告書に「住民票により確認」と付記した上でこれを管轄社会保険事務所に送付し,被保険者名簿に変更後の住所及び変更年月日を記入する(18条1項)。 (エ)新住所地の市町村は,管轄社会保険事務所から国民年金被保険者住所変更通知書の送付を受けたときは,被保険者名簿を作成し,旧住所地の市町村名及び変更年月日並びに当該年度における検認年月日等保険料に関する記録を記入する(同条2項)。 (オ)旧国民年金法92条3項又は93条2項の規定による検認を行うときは,国民年金手帳の国民年金印紙検認台紙(以下「検認台紙」という。)の所定欄に所定の金額の印紙がはりつけられていることを確認し- 18 -た上で,昭和61年厚生省令第17号による改正前の国民年金法施行規則(以下「旧規則」という。)70条2項に規定する印章(以下「検認印」という。)を用いて検認台紙の紙面と印紙の彩紋にかけて消印するとともに,これに対応する国民年金手帳の国民年金印紙検認記録欄(以下「検認記録欄」という。)の各月欄に検認印を用いて記録する(28条1項)。検認を行ったときは,国民年金印紙検認票(以下「検認票」という。)を作成し(同条2項),検認を行ったとき又は管轄社会保険事務所から国民年金印紙検認通知書の送付を受けたときは,検認票又は当該通知書により当該被保険者名簿にその検認した保険料に係る年月及び検認年月日を記入するものとする(29条)。旧規則17条の規定に基づく検認の結果の報告は,検認票等を整理した上で,国民年金印紙検認票等送付書を添えて管轄社会保険事務所に送付して行うものとする(30条)。 イ社会保険事務所準則の定め(乙13,弁論の全趣旨)社会保険事務所における国民年金に関する事務の取 上で,国民年金印紙検認票等送付書を添えて管轄社会保険事務所に送付して行うものとする(30条)。 イ社会保険事務所準則の定め(乙13,弁論の全趣旨)社会保険事務所における国民年金に関する事務の取扱いについては,国民年金社会保険事務所事務取扱準則(昭和42年3月15日庁保発第3号,以下「社会保険事務所準則」という。)が定められているところ,社会保険事務所事務準則は,その発出当時,次のとおり規定していた。 (ア)社会保険事務所には,国民年金手帳記号番号払出簿(以下「手帳払出簿」という。)及び被保険者台帳等を備えるものとし(3条),手帳払出簿及び被保険者台帳の保存年限は永年とする(71条)。 手帳払出簿は,原則として国民年金手帳の記号番号を払い出したつど整理するものとし(5条),被保険者台帳は,被保険者の住所地の属する市町村別に区分し,国民年金手帳の記号番号順に配列して整理保管するものとする(6条)。 (イ)資格取得届については,国民年金手帳の記号番号を決定し,手帳払- 19 -出簿の所定欄に所要事項を記入した上,被保険者台帳及び国民年金手帳を作成し,国民年金手帳を市町村長に送付する等により処理するものとする(17条)。 (ウ)被保険者住所変更届等については,旧住所地が管轄区域内にあるときは,被保険者住所変更届等に記載されている国民年金手帳の記号番号及び被保険者の氏名を被保険者台帳と照合して確認し,被保険者台帳の所定欄に変更後の住所及び変更年月日を記入し,この場合において旧住所地が同一の市町村の区域内にないときは,旧住所地を管轄する市町村長に新住所地の市町村名及び変更年月日を通知し,旧住所地が管轄区域内にないときは,旧管轄事務所から当該被保険者に係る被保険者台帳の移管を受けた上,前同様の手続をとり,被保険者台帳を移管した旧管轄事 長に新住所地の市町村名及び変更年月日を通知し,旧住所地が管轄区域内にないときは,旧管轄事務所から当該被保険者に係る被保険者台帳の移管を受けた上,前同様の手続をとり,被保険者台帳を移管した旧管轄事務所は,旧住所地を管轄する市町村長に新住所地の市町村名及び変更年月日を通知するものとする(29条)。 (エ)被保険者台帳の移管は,新管轄事務所が国民年金被保険者台帳移管要求書(以下「台帳移管要求書」という。)を作成して旧管轄事務所に送付し,台帳移管要求書の送付を受けた旧管轄事務所は,当該被保険者に係る被保険者台帳の写を作成し,国民年金被保険者台帳送付書を作成してこれを被保険者台帳に添えて新管轄事務所に送付するとともに,被保険者台帳の写の備考欄に新管轄事務所名及び移管年月日を記入し,別に保管するものとする(19条)。 (オ)旧国民年金法92条3項又は93条2項の規定による検認を行ったときは,被保険者台帳の保険料に関する記録欄の該当月欄に検認年月日を記入し又は管轄社会保険事務所に検認通知書を送付し(58条),市町村から検認票の送付を受けたときは,検認票に基づき,被保険者台帳の保険料に関する記録欄に所要の記入をするとともに,検認票に記載されている金額を確認するものとする(59条)。被保険者が,保険料を- 20 -納付したとき(印紙により納付したとき,印紙以外により前納したとき又は追納したときを除く。)は,被保険者台帳の保険料に関する記録欄の該当月欄に保険料納付年月日を記入するものとする(61条)。 ウ原告に係る事実経緯等(ア)原告は,大阪市δにおいて出生後,大分市に転居し,同市において家族と共に生活していたが,B夫婦は,Dらと共に,昭和34年10月,同市から豊中市εへ転居し,原告も,昭和35年3月に高校を卒業するとともに,豊中市の両親の いて出生後,大分市に転居し,同市において家族と共に生活していたが,B夫婦は,Dらと共に,昭和34年10月,同市から豊中市εへ転居し,原告も,昭和35年3月に高校を卒業するとともに,豊中市の両親の自宅に転居した。(甲1,原告本人,弁論の全趣旨)(イ)原告は,同年4月,京都大学法学部に入学したが,その後も豊中市の自宅から通学し,昭和39年3月,同大学を卒業した。 原告は,同年4月1日,司法修習生になるとともに国家公務員共済組合法に基づき設立された裁判所共済組合に加入し,昭和41年4月7日,司法修習生の修習を終えて裁判所共済組合の組合員の資格を喪失し,そのころ,大阪弁護士会に弁護士登録し,以後現在に至るまで,同弁護士会所属弁護士として活動している。 なお,原告の司法修習における実務修習地は大阪であったため,同実務修習中は,豊中市のB夫婦の自宅から通勤していた。 また,原告は,昭和41年に弁護士登録した後しばらくして,原告の所属事務所が用意した京都市α区所在の居宅に転居するとともに同所に住民票を移した。もっとも,原告は,京都市α区へ住民票を移した後も,豊中市のB夫婦の自宅で過ごすことも多く,京都市α区の自宅と豊中市のB夫婦の自宅とで,原告が生活する割合は同程度であった。(甲2,36,原告本人,弁論の全趣旨)(ウ)Dは,豊中市のB夫婦の自宅において同人らと共に生活していたが,昭和40年ころには同所において写真館を営むようになった。そして,- 21 -Dは,昭和44年3月,Iと婚姻し,婚姻後当初は,夜間は他に賃借したアパートで寝泊まりしていたものの,日中は豊中市のB夫婦の自宅で同人らと共に生活し,同所で写真館を営んでいたが,同年5月6日,同市から大阪府箕面市へ転居した。もっとも,Dは,箕面市への転居後も,豊中市のB夫婦の自宅で写真館を のの,日中は豊中市のB夫婦の自宅で同人らと共に生活し,同所で写真館を営んでいたが,同年5月6日,同市から大阪府箕面市へ転居した。もっとも,Dは,箕面市への転居後も,豊中市のB夫婦の自宅で写真館を引き続き営んでおり,D夫婦は,日中は専ら同所に滞在していた。 なお,Dの国民年金手帳には,Dが,昭和35年10月1日(当時23歳)に強制加入被保険者資格を取得して昭和36年4月1日に同手帳の交付を受けたが,昭和38年1月1日に同資格を喪失し,昭和39年8月25日に再度強制加入被保険者資格を取得したことが記載され,その検認記録欄には,昭和36年度から昭和44年度の6月までについては,豊中市の検認印が押捺され(昭和44年度の4月から6月に係る検認印は,昭和44年4月8日付け。なお,昭和38年1月から昭和39年7月までについては還付した旨付記されている。),昭和44年度の7月以降については,箕面市の検認印(同月分については同年8月8日付け)が押捺されている。(甲29,23,24,31,証人I)(エ)昭和44年4月当時,豊中市のB夫婦の自宅には,D夫婦のほか,F(当時21歳)及びG(当時18歳)も同居していた。このうち,Fは,同年3月ころに専門学校を卒業し,同年4月ころから保育士として勤務するようになった。(証人I,弁論の全趣旨)(オ)原告は,昭和45年1月13日,Hと婚姻し,このころ,西宮市に新居を建て,京都市α区から同所へ住所を移した。さらに,原告及びHは,昭和48年7月28日,西宮市から宝塚市へ住所を移した。(前提事実,原告本人,弁論の全趣旨)(カ)原告は,昭和47年5月,香川県小豆郡β(現同郡γ)に両親のための居宅(以下「本件ζ建物」という。)を新築し,B夫婦は,そのこ- 22 -ろ,豊中市の自宅を引き払い,上記居宅に住所を移し (カ)原告は,昭和47年5月,香川県小豆郡β(現同郡γ)に両親のための居宅(以下「本件ζ建物」という。)を新築し,B夫婦は,そのこ- 22 -ろ,豊中市の自宅を引き払い,上記居宅に住所を移した。 また,このころ,D夫婦も,自らが経営する写真館を豊中市ηへ移転した。(甲10,22,31,原告本人,弁論の全趣旨)(キ)原告及びHは,昭和50年11月23日,宝塚市から奈良市へ住所を移した。 原告は,昭和51年3月1日付けで,Hと共に奈良市から年金手帳の交付を受けたが,同年金手帳には,はじめて被保険者となった日として,「昭和39年3月1日」と記載されている。(前提事実,甲7,8,乙7)(ク)原告は,昭和51年4月5日,奈良市分任出納員に対し,昭和50年4月分から昭和51年3月分までの国民年金保険料1万4000円を納付した。 また,このころ,原告は,昭和49年1月分から昭和50年3月分までの国民年金保険料に係る納付書の交付を受けたが,原告は,同納付書による保険料の納付を行わなかった。なお,上記納付書は,その使用期限が昭和51年4月30日とされているほか,「39.3.1取得」との記載がある。(甲8,9)(ケ)本件ζ建物の所有者であった原告は,同建物の敷地が香川県が施行する農道整備事業に用いられることとなったため,平成5年4月12日,香川県との間で,原告が平成6年3月31日までに上記土地上の本件ζ建物を工事施行区域外に移転し,香川県が,これに対して補償金を支払うことなどを内容とする物件移転補償契約を締結した。 B夫婦は,平成5年,上記契約に従い,本件ζ建物を引き払って香川県から京都市へ転居した。(甲11,原告本人,弁論の全趣旨)(コ)原告は,平成元年4月1日,事業団が管掌する私立学校教職員共済制度の加入者となった。(前提事実) 従い,本件ζ建物を引き払って香川県から京都市へ転居した。(甲11,原告本人,弁論の全趣旨)(コ)原告は,平成元年4月1日,事業団が管掌する私立学校教職員共済制度の加入者となった。(前提事実)- 23 -エ原告に係る国民年金被保険者記録の調査等(ア)奈良社会保険事務所において保管している原告に係る被保険者台帳には,昭和38年度から昭和49年度までについては国民年金保険料が納付されていないが,昭和50年4月以降昭和59年度までの保険料については納付されている旨記載されており,社会保険庁において管理している原告に係る国年資格記録にも,昭和39年3月1日に国民年金の被保険者資格を取得し,平成元年4月1日に同被保険者資格を喪失したが,昭和38年度から昭和49年度までの間国民年金保険料が納付されておらず,昭和50年度以降についてのみ同保険料が納付されている旨記録されている。また,奈良社会保険事務所が保管している手帳払出簿にも,昭和51年3月1日にHと同時に原告について本件記号番号が払い出された旨記載されており,他に台帳の移管等の事情は記載されていない。(乙7,9,10)(イ)奈良社会保険事務所は,平成18年9月21日,上京社会保険事務所長に対し,原告の氏名,生年月日,性別,本件記号番号,現住所及び原告の戸籍の附票に記載された京都市α区の住所を記載して,昭和39年3月から昭和45年1月までの納付記録についての調査を依頼するとともに,α区役所への照会も併せて依頼したところ,上京社会保険事務所長は,平成18年10月12日,奈良社会保険事務所に対し,昭和39年当時の手帳払出簿は残存しており,昭和38年から昭和42年までの払出しを確認したが,原告に係る番号は見当たらなかった旨回答した。 (乙8)(ウ)奈良社会保険事務所は,平成18年9 対し,昭和39年当時の手帳払出簿は残存しており,昭和38年から昭和42年までの払出しを確認したが,原告に係る番号は見当たらなかった旨回答した。 (乙8)(ウ)奈良社会保険事務所は,平成18年9月21日,西宮社会保険事務所長に対し,原告の氏名,生年月日,性別,本件記号番号,現住所並びに原告の戸籍の附票に記載された西宮市及び宝塚市の各住所を記載して,西宮市については,昭和45年1月から昭和48年7月までの,宝塚市- 24 -については昭和48年7月から昭和50年11月までの,各納付記録についての調査を依頼するとともに,西宮市役所及び宝塚市役所への各照会も併せて依頼したところ,西宮社会保険事務所長は,平成18年9月25日,奈良社会保険事務所に対し,西宮市に関しては,西宮市に照会したが該当はなく,手帳払出簿を探しても該当はなく,宝塚市に関しては,宝塚市では被保険者記録関係分の保存がないためこの間の記録は番号収録のとおりであり,手帳払出簿にて探したが該当はない旨回答した。 (乙8)(エ)本件確認処分に係る再審査請求事件の審理において,原告が,昭和39年3月当時豊中市に住所を有していたことなどを供述したことから,社会保険庁長官は,豊中社会保険事務所長に対し,昭和36年7月から昭和50年3月までの原告に係る国民年金加入記録の有無の確認を依頼するとともに,豊中市役所への確認も併せて依頼したところ,豊中社会保険事務所長は,平成19年7月,同社会保険事務所が保管する上記期間の被保険者台帳管理簿(手帳払出簿)において払出し(加入)の事実をすべて確認したが原告の氏名はなかったこと及び豊中市長から上記期間の被保険者名簿を検索したが,原告の名簿は確認できなかった旨の回答を受けたことを回答した。(乙11,弁論の全趣旨)オ奈良第三者委員会による判断( が原告の氏名はなかったこと及び豊中市長から上記期間の被保険者名簿を検索したが,原告の名簿は確認できなかった旨の回答を受けたことを回答した。(乙11,弁論の全趣旨)オ奈良第三者委員会による判断(乙12,14,弁論の全趣旨)(ア)総務省には,総務大臣の求めに応じ,年金記録に係る苦情のあっせんに当たっての基本方針その他重要事項を調査審議することなどの事務をつかさどるものとして,年金記録確認中央第三者委員会が置かれている(総務省組織令附則22条)。 また,総務大臣の求めに応じ,年金記録に係る苦情のあっせんに関する調査を行い,当該調査の結果及び基本方針に基づき,あっせん案を作成するものとして,各行政評価事務所等に,それぞれ,一の年金記録確- 25 -認地方第三者委員会を置くものとされているところ(同令附則23条),奈良県を管轄区域として奈良市に置かれた奈良行政評価事務所にも,年金記録地方第三者委員会として,奈良第三者委員会が設置されている。 (イ)総務大臣が定めた上記あっせんに当たっての基本方針では,第三者委員会は,社会保険庁側に記録がなく,直接的な証拠(領収書等)を持たない方々のために,誠実に責任を果たし,申立人の申立てを十分に汲み取って収集した資料を検討し,年金記録の訂正に関し公正な判断を示すことをその基本的な考えとし,具体的には,判断の基準は,申立ての内容が社会通念に照らして「明らかに不合理ではなく,一応確からしいこと」とし,その判断を行うに当たっては,類型に対応した肯定的な関連資料及び周辺事情に基づいて検討するが,こうした関連資料及び周辺事情がない場合においても,申立人の申立内容等に基づき,総合的に判断するものとされている。(甲32,乙14)(ウ)奈良第三者委員会は,原告からの本件期間の国民年金保険料納付の有無に係る苦情 周辺事情がない場合においても,申立人の申立内容等に基づき,総合的に判断するものとされている。(甲32,乙14)(ウ)奈良第三者委員会は,原告からの本件期間の国民年金保険料納付の有無に係る苦情申出につき審議した上,平成19年12月26日,①Bが原告の国民年金保険料を納付していたことを示す関連資料(家計簿,確定申告書等)がないこと,②原告自身に国民年金手帳がどのようなものであったか等の具体的記憶はなく,原告自身が国民年金の加入及び保険料の納付に関与していないため,国民年金の加入状況及び保険料の納付状況等が不明であること,③西宮市が作成した被保険者名簿に原告に係る国民年金保険料の納付記録が確認できなかったこと,④原告の納付記録によれば,昭和51年3月1日に国民年金手帳記号番号が払い出された後,同年4月に昭和50年4月から昭和51年3月までの保険料が納付されたことになっているなど,Bが継続して納付していたとの原告の申立内容に反し,本件期間が未納であったことをうかがわせる事情があること,⑤豊中市を含む原告が居住していた市を管轄する社会保険事- 26 -務所に保管されている国民年金手帳記号番号払出簿には原告の国民年金手帳記号番号が払い出された記録は確認できず,別の手帳記号番号が払い出されていたことをうかがわせる事情が見当たらないことなどから,原告が本件期間の国民年金保険料を納付していたものと認めることはできないと判断し,その結果,総務大臣は,原告に係る年金記録を訂正する必要はないと判断して社会保険庁長官に対して通知した。(乙12)(3) 検討ア前記前提事実及び上記認定事実によると,原告は,昭和16年に出生し,昭和35年3月に高校を卒業した後は,豊中市のB夫婦の自宅を住所とするとともに同所に住民票を置いていたが,その後,昭和41年4 ア前記前提事実及び上記認定事実によると,原告は,昭和16年に出生し,昭和35年3月に高校を卒業した後は,豊中市のB夫婦の自宅を住所とするとともに同所に住民票を置いていたが,その後,昭和41年4月ころに弁護士登録した後しばらくして京都市α区に転居し,その際豊中市から同所へ住民票を移したものと認められる。さらに,原告は,昭和45年1月13日には京都市α区から西宮市へ,昭和48年7月28日には同市から宝塚市へ,昭和50年11月23日には同市から奈良市へそれぞれ住所を移しており,原告の戸籍の附票にも上記のとおり記載されていることからすると,原告は,上記各住所の移転に際しても,住民基本台帳法に規定する転出入の各届出をそれぞれしているものと認められる。 イ他方,国民年金法及び同法に基づく命令の規定により市町村及び社会保険事務所が処理すべき国民年金の事務取扱については,それぞれ市町村準則及び社会保険事務所準則が定められているところ,これら各通達によれば,資格取得届を受理した市町村は,その記載内容を確認し,被保険者名簿を作成した上,当該資格取得届を管轄社会保険事務所に送付し,当該資格取得届の送付を受けた社会保険事務所は,国民年金手帳の記号番号を決定した上で備え付けられた手帳払出簿に所定事項を記入し,被保険者台帳及び国民年金手帳を作成して国民年金手帳を市町村長に送付し,国民年金手帳の送付を受けた市町村は,国民年金手帳の記載により被保険者名簿に- 27 -記号番号を記入するなどした上,同手帳を被保険者に交付するものとされ,検認を行った際や被保険者が保険料を納付した場合にはその旨被保険者名簿及び被保険者台帳にそれぞれ記録し,被保険者台帳及び手帳払出簿は永年保存するものとされている。 また,国民年金法12条1項は,被保険者は住所の変更に関する事項を 料を納付した場合にはその旨被保険者名簿及び被保険者台帳にそれぞれ記録し,被保険者台帳及び手帳払出簿は永年保存するものとされている。 また,国民年金法12条1項は,被保険者は住所の変更に関する事項を市町村長に届け出なければならないとして住所変更の際の届出義務を規定しているが,昭和42年11月10日には,住民基本台帳法22条から24条までの規定による届出があったときは,その届出と同一の事由に基づく国民年金法12条1項の届出があったものとみなすと規定する同条3項が施行され,国民年金法に基づく届出と住民基本台帳法に基づく届出との連携が図られていた。そして,市町村準則及び社会保険事務所準則によれば,被保険者住所変更届を受理した市町村は,その内容を審査して被保険者住所変更届等を管轄社会保険事務所に送付し,被保険者住所変更届等の送付を受けた社会保険事務所は,旧住所地が管轄区域内にあるときは,被保険者台帳の所定欄に変更後の住所及び変更年月日を記入し,旧住所地が同一の市町村の区域内にないときは,旧住所地を管轄する市町村長に新住所地の市町村名及び変更年月日を通知し,旧住所地が管轄区域内にないときは,台帳移管要求書を作成して旧管轄事務所に送付して同事務所から当該被保険者に係る被保険者台帳の移管を受けた上,被保険者台帳の所定欄に変更後の住所及び変更年月日を記入し,被保険者台帳を移管した旧管轄事務所は,旧住所地を管轄する市町村長に新住所地の市町村名及び変更年月日を通知するものとされ,管轄社会保険事務所から被保険者の住所を変更した旨の通知の送付を受けた旧住所地の市町村は,当該被保険者の被保険者名簿に新住所地の市町村名及び変更年月日を記入するものとされている。 これらによれば,本件期間のうち少なくとも市町村準則及び社会保険事- 28 -務所準則の発出後であ 村は,当該被保険者の被保険者名簿に新住所地の市町村名及び変更年月日を記入するものとされている。 これらによれば,本件期間のうち少なくとも市町村準則及び社会保険事- 28 -務所準則の発出後である昭和45年の西宮市への転居以後の原告の住所変更については,これらの通達に従った取扱いがされていたものと推認される。 ウ以上によれば,本件期間においては,いったん国民年金への加入手続が行われれば,その際国民年金手帳記号番号が払い出されてその旨手帳払出簿に記載されるとともに被保険者名簿及び被保険者台帳が作成され,その後被保険者の住所に変更があった場合でも,新たに国民年金手帳記号番号が払い出されたり被保険者台帳が作成されることなく当該被保険者の保険料納付記録が記載された被保険者台帳が旧管轄事務所から新管轄事務所に移管されることとされていたのであり,国民年金の加入手続を行った際の管轄社会保険事務所には,当該被保険者に係る国民年金手帳記号番号の払出しの事実を記載した手帳払出簿が,現在の住所地の管轄社会保険事務所には,保険料の納付事実について記載された被保険者台帳がそれぞれ保管されることになる。 そうすると,原告が,本件期間中に国民年金の加入手続を行い,保険料を納付していたのであれば,当該加入手続を行った際の住所地を管轄する社会保険事務所には,原告に対する国民年金手帳記号番号の払出しの事実が記載された手帳払出簿が,現在の管轄社会保険事務所である奈良社会保険事務所には,本件期間における保険料の納付事実が記載された原告の被保険者台帳がそれぞれ保管されていることになる。 しかしながら,前記認定事実によると,原告の昭和39年3月ころの住所地を管轄する豊中社会保険事務所において,同事務所が保管する昭和36年7月から昭和50年3月までの間の手帳払出簿を確認して になる。 しかしながら,前記認定事実によると,原告の昭和39年3月ころの住所地を管轄する豊中社会保険事務所において,同事務所が保管する昭和36年7月から昭和50年3月までの間の手帳払出簿を確認しても原告の氏名はなく,その後の管轄社会保険事務所である上京社会保険事務所及び西宮社会保険事務所が保管する各手帳払出簿にも原告の名前は見当たらず,しかも,本件期間中に原告の住所があった複数の自治体のいずれにも原告- 29 -に係る被保険者名簿その他の保険料納付の事実をうかがわせる資料は何ら残っていない。他方,原告の現在の管轄社会保険事務所である奈良社会保険事務所が保管する手帳払出簿には,昭和51年3月1日に原告に本件記号番号が払い出されたことが記載され,他に台帳移管等の事情は付記されておらず,同事務所において保管する原告に係る被保険者台帳にも,原告が昭和38年度から昭和49年度までの間国民年金の保険料を納付していないことが記載されている。以上のような原告の国民年金に係る客観的な記録の内容に加え,保険料を納付していれば本来原告において所持しているはずの,本件期間に係る検認記録欄に検認印が押捺された国民年金手帳や,本件期間の保険料の領収書等の客観的な資料が一切証拠として提出されていないことからすれば,原告が本件期間の国民年金保険料を納付していたとは認め難く,かえって,この間の国民年金保険料は納付されていなかったと考えるのが合理的である。 (4) 原告の主張についてア原告は,原告が昭和39年3月に大学を卒業するに際し,Bが豊中市役所において原告の国民年金加入手続を行い,以後昭和50年3月に至るまで,Bにおいて原告の国民年金保険料を納付していたと主張する。 しかしながら,前記法令の定め記載のとおり,旧国民年金法においては,国家公務員共済組合法その 金加入手続を行い,以後昭和50年3月に至るまで,Bにおいて原告の国民年金保険料を納付していたと主張する。 しかしながら,前記法令の定め記載のとおり,旧国民年金法においては,国家公務員共済組合法その他の被用者年金各法の被保険者及び組合員は,国民年金の被保険者から除かれ,任意加入の対象ともされていなかったところ,前記認定事実のとおり,原告は,昭和39年4月に司法修習生となり,昭和41年4月に司法修習生の修習を終了するまでの間,裁判所共済組合の組合員であったのであるから,この間,国民年金の被保険者とはなり得ず,したがって国民年金保険料の納付義務も負っていなかったものである。それにもかかわらず,この間についてもBにおいて原告の国民年金保険料を納付していたということは通常考え難いというべきであり,昭和- 30 -39年3月以降Bが原告の国民年金保険料を納付していたとする原告の主張は不合理というべきである。 この点,原告は,原告が大学を卒業した昭和39年3月時点では,原告はいまだ司法修習生の身分を取得しておらず,裁判所共済組合に加入していなかったから,国民年金に加入することに何ら妨げはなく,その後,裁判所共済組合と社会保険庁との連携が不十分であったため,裁判所共済組合の組合員として長期掛金が給与から天引きされると同時に,Bにおいても原告の国民年金保険料の納付を継続することも十分考えられるなどと主張する。 確かに,前記認定事実によると,原告が昭和51年ころに交付を受けた国民年金手帳及び保険料の納付書には,原告が昭和39年3月1日に国民年金の被保険者資格を取得したと記載され,社会保険庁において管理している原告に係る国年資格記録にも,原告が同日に国民年金の被保険者資格を取得したことが記録されていることが認められる。 しかしながら,原告の昭和39年3 を取得したと記載され,社会保険庁において管理している原告に係る国年資格記録にも,原告が同日に国民年金の被保険者資格を取得したことが記録されていることが認められる。 しかしながら,原告の昭和39年3月当時の住所地であった豊中市を管轄する豊中社会保険事務所においても,その保管する手帳払出簿に原告の氏名はなかったというのであり,当時の市町村及び社会保険事務所における国民年金に係る事務の取扱い等に照らして,原告が昭和39年3月に国民年金の加入手続をして国民年金手帳記号番号の払出しを受けたとは認め難いことは前述のとおりである。これに加えて,大学の卒業日が3月1日となることは通常考え難いことをも併せ考えれば,上記原告の国民年金手帳及び国年資格記録の原告の被保険者資格の取得日は,原告からの申告に基づき記載又は記録されたにすぎないという被告の主張にも相応の根拠があるということができる。したがって,上記国民年金手帳や国年資格記録における被保険者資格取得日の記載ないし記録は,原告又はBが昭和39年3月1日に国民年金の加入手続を行ったことを推認させるものであると- 31 -いうことはできないし,まして同日以降の国民年金保険料の納付の事実を裏付けるものではないというべきである。 そして,当時の裁判所共済組合と社会保険庁との連携が十分であったかという点は措くとしても,前記のとおり,裁判所共済組合の組合員は,国民年金の被保険者から除外されており,原告についても,司法修習生として,裁判所共済組合の組合員の資格を取得すれば,本来,国民年金の被保険者資格を失う立場にあったのである。そうであるところ,前記認定事実によれば,原告は,昭和39年3月当時,豊中市の自宅においてBと同居していたのであるから,Bにおいても,翌4月には原告が司法修習生として採用され,給与をもら のである。そうであるところ,前記認定事実によれば,原告は,昭和39年3月当時,豊中市の自宅においてBと同居していたのであるから,Bにおいても,翌4月には原告が司法修習生として採用され,給与をもらう立場となって国民年金の被保険者ではなくなることも容易に認識できたと認められる。それにもかかわらず,Bが,同年3月に原告についてあえて国民年金の加入手続をし,以後保険料の納付を継続したというのは不自然であるといわざるを得ない。 イまた,Bが本件期間を通じて原告の国民年金保険料を納付していたという原告の上記主張については,これに沿う原告及びIの供述があるのみで,これを裏付ける客観的証拠はない上,上記原告及びIの供述についても,以下の各点を指摘することができる。 (ア)Iは,昭和44年4月ころ,豊中市のB夫婦の自宅において,保険料の徴収員が来訪した際,Bが,3冊の年金手帳を取り出し,そのうちDのものについては以後Iにおいて支払うよう申し向けて同人に手交し,他の2冊の年金手帳については保険料を納付して同手帳に検認印を押捺してもらっているところを目撃したことがあるところ,上記2冊の国民年金手帳は,原告とBのものとしか考えられないと供述する。 しかしながら,旧国民年金法92条1項は,保険料を納期限前に納付するには,厚生省令で定める場合を除いて,国民年金印紙による納付の方法によらなければならないと規定し,同条3項は,国民年金印紙によ- 32 -る保険料の納付は,国民年金手帳の所定欄に国民年金印紙をはりつけ,これを都道府県知事又は市町村長に提出してその検認を受けることにより行うと規定していたところ,前述した法令の規定内容,市町村準則及び社会保険事務所準則によれば,昭和44年当時,納期限前の保険料等の納付については,検認や被保険者名簿及び被保険者台帳へ けることにより行うと規定していたところ,前述した法令の規定内容,市町村準則及び社会保険事務所準則によれば,昭和44年当時,納期限前の保険料等の納付については,検認や被保険者名簿及び被保険者台帳への記入等の事務が必要とされていたものであり,上記名簿等がない当該被保険者の住民票が存在する地以外の自治体がこれを領収して検認することはできなかったものと認められる。そうであるところ,前記認定事実によると,原告は,昭和41年4月に弁護士登録した後しばらくして豊中市のB夫婦の自宅から京都市α区に転居するとともに住民票も同所に移し,昭和44年時点では京都市α区に住民票上の住所を有していたのであるから,当時,原告の住所地ではない豊中市が原告の保険料を領収することは制度上予定されておらず,当時住所地の異なっていた原告とBの各国民年金手帳に同一の徴収員が検認印を押捺するとは考え難いのであって,Iの上記供述は,当時の保険料の徴収事務と矛盾し不合理というべきである。 また,Iが,昭和44年にBが保険料を納付しているところを目撃したとする国民年金手帳が,原告のものであるという点についても,I自身が同国民年金手帳の記載内容を確認したわけでも,Bから直接その旨確認したわけでもなく,ただ原告以外には該当者がいないという理由から推測して供述しているにすぎない(証人I7頁)。しかしながら,前記前提事実及び認定事実によると,昭和44年4月当時,B夫婦の未婚の子のうち,原告及びDのほか,F及びE(当時25歳)が既に成人しており,Fについては,同年4月から保母として豊中市に採用されたと述べるだけで(証人I3頁),Fの年金や地方公務員共済組合関係の資料は何も提出されず不明であり,Eについては,当時大学生であったと- 33 -いうのであり(証人I3頁),国民年金の任意加入 れたと述べるだけで(証人I3頁),Fの年金や地方公務員共済組合関係の資料は何も提出されず不明であり,Eについては,当時大学生であったと- 33 -いうのであり(証人I3頁),国民年金の任意加入の対象者で住民票を豊中市においていた可能性もある。また,A(同年7月で60歳)の年金関係も厚生年金をもらっていたと思う(証人I6頁)というだけではっきりせず,仮に,昭和44年4月当時Bが国民年金手帳を2冊所持していたとしても,これらがBと原告のものであったと認めることはできない。 なお,原告は,以上の点について,住民票の移転手続の際に国民年金関係の住所の転出処理が適正にされていなければ,集金人が漫然と原告の保険料の集金を続けることも考えられるし,法令に従った処理がされていたとは限らないなどと主張するが,前記認定のとおり,昭和44年5月6日に豊中市のB夫婦の自宅から箕面市に住所を移したDの国民年金手帳には,昭和44年7月以降の国民年金保険料について箕面市の検認印(同月分については同年8月8日付け)が押捺されており,原告についてのみ京都市α区への転居後も豊中市が原告の保険料を領収していたとは考え難い上,原告が西宮市に転居した後,Bがβに転居した後においても,原告が格別関与することなくBが原告の保険料を納付していたとは想定できず,原告の上記主張を採用することはできない。 (イ)原告は,昭和39年3月に,Bが豊中市役所において原告の国民年金の加入手続をし,その後Bから原告の国民年金手帳を見せてもらったことがあり,Bが郵便局から保険料を納付する際に用いた領収書等を見たことがあると供述する。 しかしながら,原告が見たとする国民年金手帳及び領収書等はいずれも本訴において証拠として提出されていない上,国民年金手帳を見たという点についても,その時期を特定 収書等を見たことがあると供述する。 しかしながら,原告が見たとする国民年金手帳及び領収書等はいずれも本訴において証拠として提出されていない上,国民年金手帳を見たという点についても,その時期を特定することもできず,あまりはっきりした記憶がないというのであり(原告本人3頁),郵便局において納付する際用いた領収書等を見せてもらったという点についても,当該領収- 34 -書等が国民年金保険料のものであることを直接確認したわけではなく,単に同書面に原告の氏名が記載されており,国民年金保険料の領収書のほかに思い当たる点がないというにすぎず,Bが原告の国民年金手帳を所持していた事実や,郵便局で原告の保険料を納付し,領収書を保管していた事実等を認めることはできない。 さらに,旧国民年金法の下においては,納期限の前等に納付する保険料については,当該被保険者の住所地の自治体において領収することとされていたことは前記のとおりであり,原告は昭和41年4月ころに弁護士登録した後しばらくして京都市α区へ転居し,他方,Bも昭和47年5月ころ香川県へ転居しているところ,Bがどのようにして住所地の異なる原告の保険料を納付していたのかという点については,原告の供述によっても明らかではない。 ウまた,前記認定事実記載のとおり,原告は,昭和51年3月1日に国民年金手帳の交付を受けた後,同年4月5日に昭和50年4月分から昭和51年3月分の保険料を奈良市に納付し,昭和49年1月分から昭和50年3月分までの国民年金保険料に係る納付書の交付を受けたものの,同納付書による保険料の納付はしていない。原告は,この点につき,上記納付書の交付を受けたため,奈良社会保険事務所に電話をして抗議したところ,後に,同事務所職員から上記納付書に係る期間の保険料納付の事実を確認したから,上記納 はしていない。原告は,この点につき,上記納付書の交付を受けたため,奈良社会保険事務所に電話をして抗議したところ,後に,同事務所職員から上記納付書に係る期間の保険料納付の事実を確認したから,上記納付書は破棄してもらって構わない旨の回答を受けたと供述する。 しかしながら,仮に,奈良社会保険事務所において,原告から本件期間の保険料が納付済であると指摘を受け,その旨確認できたのであれば,原告の被保険者台帳の記載内容を修正することはもとより,原告に交付している保険料の納付書についてその破棄を依頼するだけでなく,2重に納付されたこととなる昭和50年4月分から昭和51年3月分の保険料につい- 35 -ても,還付その他の措置を執ることになるものと考えられる。そうであるにもかかわらず,原告の被保険者台帳(乙9)には,原告からの指摘を踏まえた訂正等は何らされていないと認められる上,納付済みの昭和50年4月分から昭和51年3月分までの保険料につき還付その他の措置が執られたことはない。そうすると,奈良社会保険事務所の職員が,本件期間の保険料納付の事実が確認できたから上記納付書を破棄してよいと回答したというのは他の客観的証拠に照らして不自然というほかなく,社会保険事務所職員が納付済みの昭和50年4月分からの保険料を誤解して原告に回答した可能性や,原告が同職員の回答を誤解した可能性を否定できず,原告の上記供述を採用することはできない。 エ以上認定説示したところによると,Bが昭和39年3月に原告に係る国民年金の加入手続を行い,以後Bにおいて原告の国民年金保険料を納付していたとする原告の主張は,国民年金に係る当時の法制度や関係証拠に照らして不合理なものである上,これに沿う証拠は原告及びIの供述のみでこれを裏付ける証拠はないところ,その原告及びIの供述も,推測 していたとする原告の主張は,国民年金に係る当時の法制度や関係証拠に照らして不合理なものである上,これに沿う証拠は原告及びIの供述のみでこれを裏付ける証拠はないところ,その原告及びIの供述も,推測の域を出るものではなく,その供述内容にも不自然な点がある。そうであるとすれば,原告及びIの供述に,後述する社会保険庁側における記録の不正確性等の問題を踏まえてもなお,本件期間における原告の国民年金保険料納付の事実を認めることはできず,原告の主張を採用することはできない。 オ(ア)原告は,平成15年以降,年金に関する多数の問題が明らかとなり,平成19年にはいわゆる年金記録問題が発覚し,社会保険庁側に現存する被保険者記録や関係帳簿の正確性が甚だしく乏しいものであることが明らかとなっており,そのような不正確な記録に基づく被告の主張はその前提を欠く上,正義・衡平の見地からすれば,国民年金の被保険者の保険料納付等の事実については,被告において納付がないことの立証責任を負担すべきであると主張する。 - 36 -(イ)確かに,証拠(甲12から19まで,25)によれば,平成9年1月1日から基礎年金番号制度が導入されたものの,平成18年6月時点で基礎年金番号に統合されていない年金記録が5000万件余り存在し,平成19年にはこうした年金記録問題が新聞等において広く報道され,多くの国民の関心を集めることとなったこと,そうした中,同年6月には総務大臣の下に年金記録問題発生の経緯や原因等についての調査・検証を行うための年金記録問題検証委員会(以下「委員会」という。)が設置されて上記問題に関する調査・検証が行われ,委員会は同年11月に調査・検証の結果を報告書として公表したこと,同報告書においては,年金記録問題の根本は,厚生労働省及び社会保険庁の基本姿勢として, 設置されて上記問題に関する調査・検証が行われ,委員会は同年11月に調査・検証の結果を報告書として公表したこと,同報告書においては,年金記録問題の根本は,厚生労働省及び社会保険庁の基本姿勢として,国民の大切な年金に関する記録を正確に作成し,保管・管理するという組織全体としての使命感や国民の信任を受けて業務を行うという責任感が欠如していたことにあり,社会保険庁は,年金記録については,従前年金給付の裁定請求時や相談時に確認し,その時点で齟齬があれば直せばよいという事務処理上の考え方を採ってきた上,紙テープによる記録から磁気テープへの移行過程での入力ミス等に起因する記録の誤りが存在したと考えられるほか,年金制度導入以来,年金手帳記号番号中心のシステム設計やデータ整備が行われており,被保険者又は被保険者であった者の特定等のために重要な情報である氏名(カナ氏名を含む。)や生年月日等が軽視されていたことが前記基礎年金番号への未統合記録を始めとする不備記録の一因となっており,さらに年金記録に関するシステムも,被保険者の記録を長期にわたり正確に管理するという年金制度の特質を踏まえたものとはなっていないといった問題点が存すると指摘されていること,社会保険庁には国民年金の被保険者らから平成18年8月から平成19年6月までの間に約398万件の年金相談が寄せられ,そのうち,571件については社会保険庁にも市町村にも国民年金の保- 37 -険料納付の記録が残っていなかったものの,領収書や年金手帳の納付記録に基づき国民年金記録の訂正,回復の措置が執られたこと,平成19年には,上記のような年金記録問題を受け,総務省に第三者委員会が設置されたが,同委員会においても,保険料の納付記録が残っていない者から年金記録の回復申立てを受け,同年12月26日までにそのうち7 年には,上記のような年金記録問題を受け,総務省に第三者委員会が設置されたが,同委員会においても,保険料の納付記録が残っていない者から年金記録の回復申立てを受け,同年12月26日までにそのうち772件については,預金通帳,家計簿及び家族の供述等の資料に基づいて年金記録を訂正すべきであるとするあっせん案を作成し,総務大臣においてその旨社会保険庁長官に対して通知して訂正が行われたこと,以上の各事実が認められる。 以上によれば,国民年金を始めとする各公的年金制度についてはその記録の管理等について不備が存したことが指摘されており,正確を欠く記録も少なからず存在していることが認められ,こうした状況の下,多数の被保険者が社会保険庁や第三者委員会に対して年金記録に係る苦情申出をするなど,国民の間にも年金記録の正確性に対する不安ないし不信感が醸成されている様子もうかがわれる。 そして,国民年金制度は,我が国における所得保障制度の基礎をなすものであるところ,国民年金法は拠出制(保険方式)を採用し,保険料納付済期間等が一定期間以上であることを基礎年金の支給要件等とし(同法26条,27条柱書き,30条1項,37条等参照),のみならず,基礎年金に上積みされる被用者年金各法に基づく年金についても,保険料納付済期間等が一定期間以上であることがその支給要件とされるなど(厚生年金保険法42条,私学共済法25条,国家公務員共済組合法76条1項等参照),国民年金の保険料の納付の事実の有無は各国民の生活の維持に直結するものであることからすれば,国民年金法は,保険料の納付の事実等が正確に記録されることを当然の前提としているものと解され,本来そのような年金記録の作成及び管理等については慎重- 38 -を期すべきものであって,上記のような正確性を欠く年金記録が存するな 実等が正確に記録されることを当然の前提としているものと解され,本来そのような年金記録の作成及び管理等については慎重- 38 -を期すべきものであって,上記のような正確性を欠く年金記録が存するなどといった事態が生じることはもとより同法の全く予定するところではないといえる。 (ウ)しかしながら,他方で,前記法令の定め並びに市町村準則及び社会保険事務所準則等によれば,国民年金の加入手続が最初に執られた際に手帳払出簿に記載されるとともに当該被保険者に係る被保険者台帳が作成され,以後保険料が納付された場合には,上記被保険者台帳及び被保険者名簿に記載されるものとされ,そのうち被保険者台帳については永年保存されるものとされていたのであり,適正に事務が処理されている限り,国民年金保険料の納付等の事実について正確に記録される仕組みが採用されていたということができ,実際にも,多数の年金受給権者に対して被保険者台帳等の記載に基づいて年金が支給されていることは明らかである。そうであるとすれば,被保険者台帳その他の年金記録の記載ないし記録は,上記委員会の報告書の指摘等に照らしてこれのみから直ちに保険料納付済期間等を即断することはできないとしても,これを判断するための資料として相当の証拠価値を有することは否定することができない。 そして,国民年金の被保険者資格を取得した者については国民年金手帳が交付され(国民年金法13条1項),国民年金印紙による方法により保険料を納付した場合には,国民年金手帳の検認記録欄に検認印による確認がされることになり,現金で納付した場合には領収書が交付され,被保険者側にも,保険料の納付を裏付ける資料が残ることになる仕組みが採用されているということができる。さらに,国民年金保険料は,被保険者自身(並びにその配偶者及び世帯主)が納付 は領収書が交付され,被保険者側にも,保険料の納付を裏付ける資料が残ることになる仕組みが採用されているということができる。さらに,国民年金保険料は,被保険者自身(並びにその配偶者及び世帯主)が納付義務を負い,しかも通常その家計から継続的に支出される性質のものであることからすれば,被保険者の預貯金の出入金記録や家計簿の記載等被保険者自身ないしそ- 39 -の近しい者が通常有する資料によってもその納付の事実を裏付けることが可能である場合も多いと考えられることなども併せ考えれば,被保険者において保険料の納付の事実を立証することが,不可能又は著しく困難であるとまでは認められない。第三者委員会において,申立人の申立てを十分に汲み取って収集した資料を検討し,年金記録の訂正に関し公正な判断を示すことをその基本的な考えとし,具体的には,判断の基準は申立ての内容が社会通念に照らして「明らかに不合理ではなく,一応確からしいこと」とし,その判断を行うに当たっては類型に応じた肯定的な関連資料及び周辺事情に基づいて検討するが,こうした関連資料及び周辺事情がない場合においても,申立人の申立内容等に基づき,総合的に判断するものとされているのも,上記を前提としているものと考えられる。 そうであるとすれば,被保険者がその保険料の納付の事実についての立証責任を負うとすることが正義の観念に反するとまでいうことはできないのであって,原告が本件期間の保険料を納付していないことを,被告において立証すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 (エ)そして,年金記録については,これが保険料納付済期間を確認する際の資料として相当の証拠価値を有することは前示のとおりであって,上記(イ)のような問題点が指摘されているとしても,そのことから直ちに,本件期間の保険料納付 いては,これが保険料納付済期間を確認する際の資料として相当の証拠価値を有することは前示のとおりであって,上記(イ)のような問題点が指摘されているとしても,そのことから直ちに,本件期間の保険料納付の記録が存在しない原告について,本件期間の保険料の納付の事実を推認することができるわけではないことはもとより当然である。のみならず,本件においては,原告の被保険者台帳の記載その他の年金記録の記載ないし記録内容だけではなく,原告及びIの供述等の証拠を十分検討してもなお原告の本件期間の保険料納付の事実を認めることができないことは既に認定説示したとおりである。 - 40 -以上のとおりであるから,この点についての原告の前記主張を採用することはできない。 (5) 小括以上認定説示したところによれば,原告が本件期間に係る国民年金保険料を納付したものとは認められないから,原告の国民年金保険料の納付済期間が昭和50年4月から平成元年3月までの168月であると確認した本件確認処分が違法であるということはできない。 争点②(原告の国民年金保険料の納付済期間を確認する処分の義務付けの可否)について(1) 私学共済法47条の3第1項の確認処分に係る申請権の有無及び範囲等ア私学共済法47条の3第1項は,退職共済年金又は遺族共済年金を支給すべき場合には,同法25条において読み替えて準用する国家公務員共済組合法76条1項1号に規定する加入者期間等のうち加入者期間以外の期間については,社会保険庁長官(当該加入者期間以外の期間が他の法律に基づく共済組合の組合員であった期間であるときは,当該共済組合)の確認を受けたところによると規定し,加入者期間等のうち,事業団が管掌しない他の公的年金制度に係るものについては当該各制度の管掌する政府又は共済組合(以下「管掌機関」と であるときは,当該共済組合)の確認を受けたところによると規定し,加入者期間等のうち,事業団が管掌しない他の公的年金制度に係るものについては当該各制度の管掌する政府又は共済組合(以下「管掌機関」という。)においてする確認処分に基づくべきことを定めている。 そして,私学共済法に基づく退職年金又は遺族共済年金については,加入者期間等が25年以上であること等がその支給要件とされた上(私学共済法25条,国家公務員共済組合法76条1項,88条1項4号),それらの給付を受ける権利は,その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて事業団が決定することとされているところ,受給権者が事業団に対して給付の決定の請求をする場合において,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間を有する者にあっては,当該期間に係る管- 41 -掌機関の確認を受けた年金加入期間確認通知書を添付しなければならないとされている(退職共済年金につき,私立学校教職員共済法施行規則24条2項3号)。すなわち,私学共済法上,退職共済年金等の支給要件である加入者期間等のうち,加入者期間以外の期間については,受給権者において,他の各公的年金制度の管掌機関の確認を受けることが予定され,事業団と他の管掌機関との間で直接加入者期間等のうち加入者期間以外の期間が確認されることは予定されていない。 また,前記のとおり,60年改正前においては,国民年金制度は他の各公的年金制度と並列するものとされ,その支給要件も,各公的年金制度への各加入期間等に応じて定められており,そこでは,各年金制度への加入期間の短い者についてもその老後の生活の安定を図るため,各公的年金制度の加入期間を通算して所定の年数に達する場合にはその加入期間に応じて通算老齢年金又は通算退職年金(以下,併せて「通算老齢年金等」とい 間の短い者についてもその老後の生活の安定を図るため,各公的年金制度の加入期間を通算して所定の年数に達する場合にはその加入期間に応じて通算老齢年金又は通算退職年金(以下,併せて「通算老齢年金等」という。)を支給する通算年金制度が採用されており,通算年金通則法(昭和36年法律第181号)が同制度の通則を規定していた。通算年金通則法7条は,1項において,一の公的年金制度において他の公的年金制度に係る通算対象期間に基づいて通算老齢年金等を支給すべき場合には,当該通算対象期間については,当該他の公的年金制度における政府,組合その他の管掌機関の確認したところによると管掌機関による確認処分について規定した上,3項において,被保険者若しくは組合員又は被保険者若しくは組合員であった者は,通算老齢年金等を請求するため必要があるときは,当該管掌機関に対し,同条1項の規定による確認を請求することができると規定し,上記の者が管掌機関に対して確認処分を求める請求権(申請権)を有することを明らかにしていた。そして,60年改正により,国民年金制度が他の公的年金制度にも共通する基礎年金制度として再編され,通算年金制度の意義が失われたことから通算年金制度が廃止され,通算年- 42 -金通則法も廃止されたが,同改正後も各公的年金制度の加入者を一元的に管理する仕組みが整備されていないため,通算年金制度の下における通算対象期間の確認の仕組みを踏襲して,公的年金の受給資格を発生させるために他の公的年金に加入していた期間を算入する必要がある場合には,確実を期すために当該期間については当該公的年金制度の管掌機関が確認したところによるものとし,私学共済法を始めとして被用者年金各法にその旨の規定が置かれたものである(同法47条の3第1項のほか,国家公務員共済組合法113条1項等 は当該公的年金制度の管掌機関が確認したところによるものとし,私学共済法を始めとして被用者年金各法にその旨の規定が置かれたものである(同法47条の3第1項のほか,国家公務員共済組合法113条1項等。なお,国民年金法については同法附則7条の5第2項参照。)。以上のような経緯にかんがみると,私学共済法47条の3第1項に規定する確認処分と通算年金制度の下での通算年金通則法7条1項に規定する確認処分とで,その申請権の有無について別異に解すべき理由はない。 以上認定説示した私学共済法47条の3第1項に規定する確認処分の性質及び同条の沿革等に照らせば,同項は,管掌機関による確認処分を規定するにとどまらず,加入者等の管掌機関に対する確認処分に係る申請権をも規定したものと解するのが相当である。 イところで,上記のような私学共済法47条の3第1項の趣旨に加え,同条2項が,同条1項の規定による確認に関する処分に不服がある者は,審査請求することができると規定した上で,同条3項において,加入者期間以外の期間に係る同条1項の規定による確認に関する処分についての不服を,当該期間に基づく退職共済年金又は遺族共済年金に関する処分についての不服の理由とすることはできないと規定し,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間については,各管掌機関において行う確認処分及びこれに係る不服申立手続において確定されるべきものとしていることなどからすれば,私学共済法47条の3第1項に規定する各管掌機関による確認は,確認対象期間のうち,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間を確認す- 43 -るとともに,その余の期間についても,その期間が当該管掌機関において確認すべき期間に含まれないとの判断を含むものと解される。そして,同項に基づく確認処分は,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間 -るとともに,その余の期間についても,その期間が当該管掌機関において確認すべき期間に含まれないとの判断を含むものと解される。そして,同項に基づく確認処分は,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間を確認するものではあるが,事業団を含めた他の管掌機関による加入者期間の確認等を前提としないものであるから,その対象期間は,確認処分までのすべての期間に及ぶものと解すべきであり,同項に規定する申請権も,確認処分までの全期間についての確認を求めるものであるというべきである。 さらに,前記のとおり,私学共済法に基づく退職共済年金及び遺族共済年金については,加入者期間等が25年以上であること等がその支給要件とされており,加入者期間等が,実体的な権利である退職共済年金及び遺族共済年金の支給に直接結びつけられているものであることからすれば,私学共済法47条の3第1項の規定する確認申請は,単に,確認処分までの全期間について,加入者等期間等のうち加入者期間以外の期間とその余の期間についての確認を求めるものではなく,確認処分までの全期間について,これが加入者期間等のうち加入者期間以外の期間に含まれることの確認を求める趣旨を含むものと解すべきである。 したがって,加入者等が各管掌機関に対し,期間を限定することなく確認を求めた申請に基づき,私学共済法47条の3第1項に規定する確認処分がされた場合において,当該確認処分が同確認処分までの一部の期間につき加入者期間等のうち加入者期間以外の期間を確認するものであるときは,その余の期間について,実質的に申請に対する一部拒否処分がされたものと評価することができる。 (2) 義務付けの訴えの適法性上記⑴で検討したところによれば,本件確認処分は,原告が私学共済法47条の3第1項に基づき平成18年6月14日付けでした確認申請につ れたものと評価することができる。 (2) 義務付けの訴えの適法性上記⑴で検討したところによれば,本件確認処分は,原告が私学共済法47条の3第1項に基づき平成18年6月14日付けでした確認申請につき,加入者期間等のうち加入者期間以外の期間が昭和50年4月から平成元年3- 44 -月まで及び平成13年5月から平成17年6月までの合計217月であることを確認するとともに,その余の期間については社会保険庁長官が確認すべき加入者期間等のうち加入者期間以外の期間には含まれないとの判断を含むものであって,これは,「行政庁に対し一定の処分…を求める旨の法令に基づく申請…がされた場合において」「当該法令に基づく申請…を却下し又は棄却する旨の処分…がされた場合」(行訴法3条6項2号,37条の3第1項2号)に該当するから,原告の請求2項に係る義務付けの訴えは,申請型義務付けの訴えに該当するものと解される。 そして,申請型義務付けの訴えにおいては,併合提起された処分に係る取消訴訟等に係る請求が認容されるべき場合であることが,その適法要件になると解されるが(同法37条の3第1項2号参照),本件において,上記義務付けの訴えに併合提起された本件確認処分の取消しを求める訴えに係る請求は理由がなく,棄却されるべきことは争点①について説示したとおりであるから,上記義務付けの訴えは不適法というほかない。 第4 結論 以上によれば,本件訴えのうち,請求2項の義務付け請求に係る部分は不適法であるから却下すべきであり,その余の原告の請求は理由がないから棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部山田明裁判長裁判官- 45 -徳地淳裁判官釜村健太裁判官 文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 山田明裁判長 徳地淳裁判官 釜村健太裁判官

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