主文 1 反訴原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,反訴原告の負担とする。 事実及び理由 第1 反訴請求反訴被告は,反訴原告に対し,952万0342円及びこれに対する平成11年12月1日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,反訴原告にトラック運転手として勤務していた反訴被告が,後記1(2)ア記載の条件による稼動形態(以下「償却方式」又は「本件償却方式」という。)で稼働していたところ,反訴原告を退職するに際し,反訴原告の反訴被告に対する貸付金として扱われる金額が増加して,反訴被告の退職時において収支を精算するとマイナス952万0342円となったことから(以下「本件清算金」という。),反訴被告が,償却方式はいわゆるナンバー貸しに当たり無効であること等を主張して,反訴原告に対し清算金債務不存在確認等を求めて訴訟を提起したのに対し,反訴原告が,本件清算金の支払を求めて反訴を提起した事案である(なお,反訴提起に伴い,反訴被告は上記債務不存在確認等請求訴訟を取り下げた。)。 1 争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者反訴原告は,一般貨物自動車運送業を営む株式会社であり,反訴被告は昭和63年ころから反訴原告にトラック運転手として勤務し,平成12年1月末日をもって反訴原告を退職した者である。 (2) 償却方式により稼動する旨の契約締結及び更新等ア償却方式により稼動する旨の契約締結及び具体的契約内容反訴原告と反訴被告は,平成元年8月ころ,反訴被告の稼動形態につき,下記(ア)ないし(ク)の条件による稼動形態に切り替える旨の合意をし,同稼動形態で稼動を始めた(乙9,反訴被告本人)。 (ア) 反訴被告は,反訴原告が購入したトラック(中古車)を反訴原告から買い き,下記(ア)ないし(ク)の条件による稼動形態に切り替える旨の合意をし,同稼動形態で稼動を始めた(乙9,反訴被告本人)。 (ア) 反訴被告は,反訴原告が購入したトラック(中古車)を反訴原告から買い受けた上,当該車両を専属的に使用して,反訴原告が受注した運送業務に従事する。 (イ) 反訴被告は,車両価格に車検代を加算した金員を,月賦により毎月末に運賃収入から差し引くことにより,反訴原告に返済する。 (ウ) 自動車保険料,ガソリン代,高速道路使用料,修理代等の経費を反訴被告の運賃収入から差し引く。 (エ) 反訴原告の事務経費として,定額分5万円(その趣旨については争いがある。)と,運賃収入比例分として,月額運賃収入の10パーセントを差し引く(以下,この比例割合を「事務経費率」という。)。 (オ) 毎月の運賃収入から,上記(イ)ないし(エ)の経費等を差し引いた残額が,40万円を下回る場合にも,反訴原告は,反訴被告に対し40万円を最低保障として支払うこととし(以下,最低保障として支払われる金額を「最低保障額」という。),その差額は反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理する(以下,貸付金として処理することを「マイナス計上」という。)。 (カ) 毎年6月と12月に精算し,黒字分が出れば,反訴原告は反訴被告に対し当該黒字分を賞与として支払う。 (キ) 反訴原告から反訴被告へ最低保障額相当分の給与を支払う際には,最低保障額から所得税,社会保険料を控除する。 (ク) 反訴被告の退職時に,全期間の収支を精算した結果がマイナスであった場合には,当該マイナス分の金額につき,反訴原告の反訴被告に対する債権として扱う。 上記の精算の結果,車両の月賦返済が完了している場合には,反訴原告が反訴被告の使用車両を時価額で買い取る。 イ償却方式による契約の更新(2台目のトラ き,反訴原告の反訴被告に対する債権として扱う。 上記の精算の結果,車両の月賦返済が完了している場合には,反訴原告が反訴被告の使用車両を時価額で買い取る。 イ償却方式による契約の更新(2台目のトラックについての契約)反訴被告は,平成7年1月ころ,1台目に購入した車両の耐用期限が到来したため,反訴原告に2台目の車両に買い替えてもらい,償却方式による稼動形態を継続した。 ウ事務経費率,最低保障額の変動経過(ア) 事務経費率は,平成4年5月に,15パーセントに引き上げられ,同時に,最低保障額が45万円に引き上げられた(証人A,ただし,事務経費率の引上げにつき反訴被告の同意があったか否かにつき争いがある。)。 (イ) また,平成11年2月からは最低保障額が40万5000円に引き下げられた。 (3) 反訴被告の退職の経緯反訴被告は,反訴原告に対し,平成11年12月末日をもって退職したい旨申し入れ,反訴原告はこれに同意したが,その際,反訴原告が反訴被告に本件清算金等を支払うよう請求した。 結局,反訴被告はその後,平成12年1月には,同月14日のみ勤務し,反訴原告は,反訴被告が同年1月末日付けで退職した旨の処理をした。 (4) 本件訴訟に至る経過ア反訴原告は,平成11年11月30日,反訴被告の退職の申入れに際し,反訴被告に対し,前記償却方式の清算金962万0342円(ただし,内10万円は,償却方式による清算金債務とは別に発生した,反訴被告に対する貸金である。)の支払を求めた。 イ反訴被告は,平成12年2月初めころ,現金180万円を持参して反訴原告のB社長に面談し,「持参した180万円を支払うほかに,使用車両のトラックを引き渡すことで,精算してもらえないか。」との趣旨の申入れをしたが,B社長は,反訴被告の上記申入れを拒否した。 ウその後,反訴 社長に面談し,「持参した180万円を支払うほかに,使用車両のトラックを引き渡すことで,精算してもらえないか。」との趣旨の申入れをしたが,B社長は,反訴被告の上記申入れを拒否した。 ウその後,反訴被告は,反訴原告に対し,清算金債務不存在確認等請求訴訟(前記のとおり取り下げられた本件における本訴〔当庁平成12年(ワ)883号〕)を提起し,反訴原告は本件反訴を提起した。 2 争点(1) 本件償却方式は,労基法27条,貨物自動車運送事業法27条,公序良俗に反し無効か。 (反訴被告の主張)ア反訴原告は,本件において,償却方式は労基法27条に規定する雇用形態に該当すると主張している。 ところで,同条は,少なくとも時間給に見合う程度の最低保障を定めて,仕事の繁閑や質量判定による不当な切り下げを阻止しようとするものである。 反訴被告の場合,この一定額とは,当初は月額45万円であり,平成11年2月分からは月額40万5000円と定められたものである。 しかしながら,実際には,反訴原告は,本件償却方式の内容に従って,事務経費,高速代,修理代等を差し引くなどしたうえ差額を反訴被告への貸付金として処理しており,上記保障額は有名無実のものとなっている。 仮に,反訴被告が平成元年8月から平成11年12月末の退職時まで10年5か月の間,平均的レベルの生活を営んでいたと推認されたとしても,その間の分として本件清算金債務が発生したとなると,平均的レベルの生活とはほど遠いものになる。 このように,本件償却方式による契約は,実質的に労基法27条に反するものであり,その限度で無効である。 なお,同条は,「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については,使用者は,労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と規定しているだけで,保障すべき賃金額を具体的に定めていな る。 なお,同条は,「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については,使用者は,労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と規定しているだけで,保障すべき賃金額を具体的に定めていない。この点について,保障給の額を同法26条の休業手当との関連から平均賃金の100分の60程度とする見解があるが,休業手当などという本条の趣旨とは異なるものをもって目安とすることは妥当でない。 同法27条の趣旨からみても,通常の実収賃金と同じ程度の収入を目安にすべきである。 イ反訴原告は,前記1(2)ア(エ)記載のように,毎月定額5万円を運賃収入から控除していたが,これはいわゆるナンバー貸し賃であり,違法なものである。 すなわち,上記定額5万円は,反訴原告が,いわゆる緑ナンバーを反訴被告に貸し与えた代償として控除されていたものであるから,本件償却方式は,貨物自動車運送事業法27条の名義貸し,事業の貸渡し等であり,罰則(同法70条2号)のある強行法規に違反した不法なものであって,公序良俗に反し無効である。 したがって,反訴被告は,本件償却方式に基づく清算金支払義務を負うことはない。 また,少なくとも,反訴原告がなした月額5万円の控除は違法であり,かつ,公序良俗に反し無効なものであるから,当該部分についての反訴原告の請求は許されない。 (反訴原告の主張)ア反訴被告が償却方式による稼動形態に切り換えた経緯(ア) 平成元年7月,反訴被告の同僚である訴外Cが,償却方式による稼動を強く希望したことから,B社長はこれを了承し,Cに専属使用させる車両を購入することとしたが,その際,日野10トン車の中古車で,同程度の車両が2台あったため,B社長は,1台は反訴原告が通常形態で使用する車両に充てるつもりで,その2台を同時に購入した。 (イ) 上記(ア)の事情を知っ したが,その際,日野10トン車の中古車で,同程度の車両が2台あったため,B社長は,1台は反訴原告が通常形態で使用する車両に充てるつもりで,その2台を同時に購入した。 (イ) 上記(ア)の事情を知った反訴被告が,自分もCと同様,償却方式で稼動したいとB社長に懇願してきたが,同社長は,反訴被告の勤務態度が芳しくないと考えていたことから,反訴被告の上記申入れを断った。 (ウ) その後,反訴原告のD部長がB社長に口添えをしたことにより,B社長は反訴被告が償却方式により稼動することを了承し,反訴被告は,平成元年12月から,前記2台の車両のうち残りの1台を使用して,償却方式により稼動することとなった。 イ 2台目の車両に買い替えての償却方式の継続(ア) 上記アのように,償却方式への稼動形態は,Cが償却方式へ切り換えたことの影響を受けた反訴被告が自ら希望して開始したものであるが,Cは,前記の専用車両の耐用期限が来て,償却方式を継続するには車両の買い替えが必要となった時点において,車両の買い替えをしないで,使用車両を反訴原告に買い取ってもらい,債権債務の精算をした上で,平成6年2月に円満に退社した。 (イ) Cは,自らが退職する際,反訴被告に対して,運賃収入の低落傾向が続いている景気動向から,2台目に買い替えてまで償却方式を継続することの危険性を話し,1台目の耐用期限が来た段階で債権債務の精算をするのが賢明だとアドバイスをした。 (ウ) しかし,反訴被告は,償却方式の場合の最低保障額が高額であることから,車両を買い替えてでも同方式を継続したいとして,平成7年1月,車両を買い替えた上,償却方式による稼動形態を継続してきた。 ウ償却方式と労基法27条の関係について(ア) 本件償却方式による稼動形態は,労基法27条に規定する「出来高払制で賃金を支払う雇用形 ,車両を買い替えた上,償却方式による稼動形態を継続してきた。 ウ償却方式と労基法27条の関係について(ア) 本件償却方式による稼動形態は,労基法27条に規定する「出来高払制で賃金を支払う雇用形態」に該当するものである。 (イ) そして,同条は,使用者は,労働時間に応じて一定額の賃金の保障をしなければならないとしているところ,反訴被告は,償却方式は,同条に違反すると主張する。 (ウ) しかし,反訴被告の場合には,賞与の支払も受けており,多いときには約200万円もの高額の賞与の支払を受けている。 加えて,反訴被告は,平成元年8月から平成11年12月末の退職時まで,10年5か月の長期間にわたって,反訴原告に勤続していた事実にかんがみれば,反訴被告は,この間少なくとも平均的レベル程度の生活を営んでいたものと推認し得るから,「労働時間に応じた一定額の賃金の保障」を得ていたものと推認できる。 したがって,償却方式は労基法27条に違反するものではない。 エ反訴被告は,反訴原告が,事務経費のうち定額分として控除していた月額5万円につき,ナンバー貸し賃として支払を受けていたものであるから,貨物自動車運送事業法27条に違反するものであると主張する。 しかし,反訴原告と反訴被告との間の償却方式による稼動形態は,反訴原告が受注した運送業務についてのみ反訴被告が従事するものであるから,同条に規定する「名義貸し」には該当しないものである。 (2) 反訴被告退職時における清算金債務額はいくらか。 (反訴原告の主張)ア帳簿等の記帳について(ア) 経費については,反訴原告の事務担当社員が帳簿に記帳していた。 (イ) 反訴原告は,(ア)の経費帳簿に基づき,毎月償却制台帳を作成しており,毎年6月と12月に半年分の集計をして,償却制台帳の写しを反訴被告に交付していた。 (ウ 務担当社員が帳簿に記帳していた。 (イ) 反訴原告は,(ア)の経費帳簿に基づき,毎月償却制台帳を作成しており,毎年6月と12月に半年分の集計をして,償却制台帳の写しを反訴被告に交付していた。 (ウ) なお,車両代金の返済分については,別途記帳していた。 イ反訴被告の平成10年11月末日時点における清算金債務額反訴被告は,平成元年12月から,償却方式により稼動していたが,平成10年11月末日時点における償却方式の収支決算に基づく,反訴原告の反訴被告に対する清算金債務額は,992万8434円であった。 ウ反訴被告の債務承認下記(ア)ないし(ウ)の事情に照らせば,反訴被告は,上記イの時点における,反訴被告の反訴原告に対する清算金債務額が上記イ記載の金額であることについて,明示若しくは黙示の承認をしていたものである。 (ア) すなわち,上記ア(イ)のとおり,反訴原告は反訴被告に対し,毎月末における清算金債務額と収支明細を記載した償却制台帳の写しを,毎年6月末と12月末に交付していた上,償却制台帳及び反訴被告専用車両による毎月の運賃収入や経費明細の帳簿は,反訴原告に保管されており,反訴被告はいつでも閲覧をすることが可能な状況にあった。 (イ) また,反訴被告は,日常的に,自分自身で一応の計算をしており,反訴原告に尋ねるまでもなく,おおむねの収支の状況を把握していた。 (ウ) したがって,計算に疑義があれば,いつでも,反訴原告に対し,説明を求めたり,異議の申出をすることができたものであるところ,反訴被告は,退職するまでの間一度もそのようなことをしなかった。 エ反訴被告退職時における清算金債務額上記ウの債務承認後である平成10年12月から平成11年11月までの毎月末における収支明細は別表1のとおりであり,反訴被告退職時には,反訴被告の清算金債務額 エ反訴被告退職時における清算金債務額上記ウの債務承認後である平成10年12月から平成11年11月までの毎月末における収支明細は別表1のとおりであり,反訴被告退職時には,反訴被告の清算金債務額は952万0342円である。 (反訴被告の主張)反訴被告は,平成10年11月末日時点の清算金債務額が992万8434円であることにつき,明示にしろ,黙示にしろ,承認したことはない。したがって,反訴原告が主張する反訴被告退職時における清算金債務額952万0342円の累積の経緯は不明であり,同額の本件清算金の請求は棄却されるべきである。 (3) 事務経費率引上げにつき,反訴被告の承諾があったか(事務経費率引上げ前後の差額分につき,運賃収入から控除したことは違法か)。 (反訴原告の主張)ア事務経費のうち,運賃収入に対する比例部分の割合につき,平成4年5月に,10パーセントから15パーセントに引き上げられたが,このとき,毎月の最低保障額を40万円から45万円に引き上げている。この最低保障額の引上げについては,反訴被告からの要望であることを反訴被告本人尋問において反訴被告自身が認めているところである。 上記のような事情に照らせば,反訴被告は,事務経費率の引上げにつき明示の同意をしていたといえる。 イ仮に,反訴被告が,明示の同意をしていないとしても,反訴被告は,前記のように半年に1度償却制台帳の写しの交付を受けており,同台帳には,経費明細が記載されていたことから,反訴被告は,事務経費率の引上げにつき,事後的に承諾していると解される。 (反訴被告の主張)ア事務経費率が15パーセントに引き上げられたことは認めるが,この引上げは反訴被告の同意なしになされたものである。 イしたがって,引き上げられた事務経費率5パーセント分に該当する部分についての反訴原告の 経費率が15パーセントに引き上げられたことは認めるが,この引上げは反訴被告の同意なしになされたものである。 イしたがって,引き上げられた事務経費率5パーセント分に該当する部分についての反訴原告の請求は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実等上記当事者間に争いのない事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。 (1) 償却方式による稼動形態となった経緯についてア反訴被告は,昭和63年ころ,正社員のトラック運転手として,反訴原告に入社したが,平成元年8月ころ,償却方式による稼動形態に切り換えた(甲1,乙9)。 なお,反訴原告は,償却方式に切り換える以前は,固定給部分と歩合給部分からなる給与体系の下で稼動していた(証人A,以下,償却方式に切り換える前の稼動形態を「通常の稼動形態」という。)。 イ本件償却方式への切り換えは,反訴被告が希望したものである(甲1)。B社長は,当初,反訴被告が償却方式に切り換えることについては消極的であったが,反訴原告のD部長の口添えもあったことから,反訴被告が償却方式に切り換えることを了承した。 なお,反訴被告が償却方式に切り換えるよりも数か月前に,Cが償却方式に切り換えて稼動を始めたと認められ,このことが反訴被告の償却方式への切り換えに多少影響しているということができるが,反訴被告が償却方式に切り換えた主な動機は,①毎月受領する最低保障額が,通常の稼動形態による場合の給与よりも高額であること,②状態の良い車両を自己専用車両として与えられることにあったと認められる(反訴被告本人)。 ウ反訴被告は,自己専用車両として,日野10トン車の4年落ち中古車を反訴原告から買い与えられ,当該車両代金を月賦の形式で反訴原告に返済することとなった。 (2) 償却方式の内容について(乙 人)。 ウ反訴被告は,自己専用車両として,日野10トン車の4年落ち中古車を反訴原告から買い与えられ,当該車両代金を月賦の形式で反訴原告に返済することとなった。 (2) 償却方式の内容について(乙9,証人A,反訴被告本人)ア反訴被告は,専属的に前記車両を使用して,反訴原告が受注した運送業務に従事することにより,反訴被告の運賃収入から,車両価格及び車検代を,月賦により毎月末に控除する方法で反訴原告に返済する。 イ自動車保険料,ガソリン代,高速道路使用料,及び修理代等の経費を,反訴被告の運賃収入から差し引く。 ウ事務経費として,月額運賃収入の10パーセント及び定額5万円を運賃収入からそれぞれ控除する。 なお,上記定額5万円は,「ナンバー代」と称されていた(乙9)。 エ最低保障額は当初月額40万円とされ,反訴原告は,毎月15日に,40万円から所得税及び社会保険料を控除した金員を反訴被告に支払っていた。 オ反訴被告の月額運賃収入から,上記イないしエの経費等を控除した残額が最低保障額を下回る場合であっても,反訴原告は反訴被告に対し最低保障額分の給与を支給することとし,その場合の差額は反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理されていた。 カ毎年6月と12月に,半年分の集計をして精算し,反訴被告にとって黒字分が生じた場合には,反訴原告はこれを賞与として反訴被告に支払うものとされた。 また,上記精算の結果,反訴被告にとって赤字となる場合には,これを反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理することとされた。 キ反訴被告の退職時に,全期間の収支を精算して,これがマイナスとなっている場合には,反訴原告は反訴被告に対する債権として,その支払請求をする。 なお,その際,車両の月賦返済が終わっている場合には,反訴原告が車両を買い上げることとなっていた。 ,これがマイナスとなっている場合には,反訴原告は反訴被告に対する債権として,その支払請求をする。 なお,その際,車両の月賦返済が終わっている場合には,反訴原告が車両を買い上げることとなっていた。 (3) 償却方式による稼動の継続についてア反訴被告は,上記日野10トン車の耐用期限が到来したため,平成7年2月,反訴原告に車両を買い替えてもらった上,償却方式による稼動を継続することとした(反訴被告本人)。 イこの買い替えてもらった2台目の車両は,三菱ふそうの4年落ちトラックであり,車両代金(反訴被告が反訴原告に返済すべき金額,以下同じ)は760万円,その他車検代等で123万9281円とされた(乙6,証人A,反訴被告本人)。 (4) 償却方式の運用状況等についてア帳簿等の記帳等(ア) 反訴原告は,毎月の運賃収入から控除されるべき経費(車両修理代,軽油代,高速道路使用料等)を,帳簿に記帳していた(乙1)。 (イ) また,反訴原告は,(ア)の経費帳簿に基づき,毎月償却制台帳を作成しており,毎年6月と12月に半年分の集計をして,償却制台帳の写しを反訴被告に交付していた(乙2,3,証人A,反訴被告本人)。 (ウ) 反訴原告は,車両代金の返済分については,別途記帳していた(乙6)。 イ最低保障額及び事務経費率の変動経過(ア) 事務経費率は,平成4年5月から15パーセントに引き上げられたが,同時に,最低保障額も45万円に引き上げられた(証人A)。 (イ) その後,最低保障額は,遅くとも平成4年11月分からは,45万5000円に引き上げられ,平成7年4月分からは再び45万円に引き下げられた(乙3,なお,この間,事務経費率は15パーセントのままであった。)。 (ウ) そして,平成11年1月分から,最低保障額が40万5000円に引き下げられ,同時に事務経費率 再び45万円に引き下げられた(乙3,なお,この間,事務経費率は15パーセントのままであった。)。 (ウ) そして,平成11年1月分から,最低保障額が40万5000円に引き下げられ,同時に事務経費率が10パーセントに引き下げられた(乙7)。 ウ車両代金の返済(ア) 反訴被告は,反訴原告に対し,遅くとも平成4年末ころまでには,上記日野10トン車の車両代金(金額については争いがあるが,これを明確に示す証拠はない。ただし,2台目の車両が1台目と同じく4年落ちの中古車で,車両代金760万円とされていることにかんがみれば,1台目の車両代金も上記金額に近いものであったと推認される。)を返済した(反訴被告本人)。 (イ) また,反訴被告は,2台目の車両代金についても,平成9年1月31日,反訴原告に対する返済を終えた(乙6)。 (ウ) なお,前記償却方式の内容によれば,上記のように車両代金の返済を終えている以上,2台目の車両への買い替え時及び反訴被告の退職時には,反訴原告が車両を時価額で買い取ることになっているが,反訴被告が専属使用した上記2台の車両につき,反訴原告が時価額で買い取る処理をしていないものと認められる(反訴被告本人)。 エ現在,反訴原告において,償却方式で稼働している運転手は1名のみである(証人A)。 (5) 償却方式に切り換えた後の収支の状況についてア反訴被告は,前記のとおり,平成元年8月ころから償却方式による稼動形態に切り換えたが,償却方式における平成10年12月分から平成12年1月分までの収支の状況の詳細は,別表1及び同2のとおりである(乙7)。 イ反訴被告の平成4年11月分から平成7年10月分まで及び平成10年5月分から平成10年11月分までの各月の運賃収入,経費の合計額,収支の状況は別表3のとおりである(乙2,3,なお,平成 乙7)。 イ反訴被告の平成4年11月分から平成7年10月分まで及び平成10年5月分から平成10年11月分までの各月の運賃収入,経費の合計額,収支の状況は別表3のとおりである(乙2,3,なお,平成7年9月分及び同年10月分の運賃収入欄の金額は,当該2か月分の合計額を2分した金額である。)。 ウなお,反訴被告が償却方式で稼動した期間のうち,稼動開始から平成4年10月分まで及び平成7年11月分から平成10年4月分までの収支の状況については,これを認定するに足りる的確な証拠はない。 (6) 反訴被告の退職の経緯ア反訴被告は,平成11年11月に,反訴原告に対し,同年12月末日をもって退職したい旨の申入れをしたが,これに対してB社長は,本件清算金の支払を求めた。 反訴被告は,同年12月は平常どおり稼動し,平成12年1月中には同月14日のみ稼動して,最終的には平成12年1月31日を退職日とする処理がなされた(乙9,反訴被告本人)。 イその後,同年2月ころ,反訴被告は,B社長に対し,現金180万円を持参して,当該金員の支払をもって本件清算金の支払に代えたい旨の申し出をしたが,B社長はこれを拒否し,本件清算金債務を全額弁済するように反訴被告に告げた。 2 争点(1)について(1) 本件償却方式の法的分析アまず,本件において,反訴被告は,車両を反訴原告から買い受けて専属使用しているものの,当該車両が反訴被告名義にされることは予定されておらず(証人A),上記車両売買の目的としては,当該車両を「専属使用できる」という点に重きが置かれていたと認められる。そして,反訴被告が,反訴原告の従業員として,反訴原告が受注した仕事のみに従事していたことについては争いがなく,反訴被告が労基法の適用を受ける労働者に該当することは明らかである(したがって,本件償却方式 ,反訴被告が,反訴原告の従業員として,反訴原告が受注した仕事のみに従事していたことについては争いがなく,反訴被告が労基法の適用を受ける労働者に該当することは明らかである(したがって,本件償却方式は,貨物自動車運送事業の許可制の潜脱を防止する趣旨の規定である貨物自動車運送事業法27条に違反するものではなく,この点に関する反訴被告の主張は理由がない。)。 イ(ア) 次に,反訴被告は,毎月最低保障額から所得税等を控除した金額を給与として反訴原告から受領していたものではあるが,実際には,月々の運賃収入から,経費等を控除して,それが最低保障額を下回る場合には,その差額は反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理されていたことは,前記認定のとおりである。 (イ) そうすると,反訴原告が毎月受け取る最低保障額相当の給与は,運賃収入から控除されるべき経費として扱われているのと同様であり,運賃収入が低額なためマイナス計上となる場合には,清算金債務が累積していくのであるから,実質的にみれば,反訴被告が受け取る給与のうち,マイナス計上された金額と同額の部分については,反訴被告は給与としてではなく借入金として反訴原告から受領しているのにほかならないものというべきである。 (ウ) そうすると,形式的には,反訴被告の給与体系はその時々の最低保障額による固定給払のように見えるが,その実質は,反訴被告の運賃収入の額に応じて給与の支払を受けているものであり,これは労基法27条にいう「出来高払制その他の請負制で使用する労働者」に該当するものというべきである。 (2) 本件償却方式の仕組み及び機能の分析ア清算金債務累積の原因について(ア) そもそも,本件償却方式の仕組みからすれば,反訴被告の収支がプラスとなるかマイナスとなるかは,反訴被告の運賃収入の多寡に左右されているも 仕組み及び機能の分析ア清算金債務累積の原因について(ア) そもそも,本件償却方式の仕組みからすれば,反訴被告の収支がプラスとなるかマイナスとなるかは,反訴被告の運賃収入の多寡に左右されているものであることは明らかである。 しかしながら,反訴原告が与えた仕事のみに従事するという労働形態からすれば,どの程度の仕事を反訴被告に与えるかは基本的には反訴原告が決定することであり,反訴被告が従事した仕事の単価についても,反訴原告が顧客との交渉等を経て決定するものと考えられるから,反訴被告が,その裁量や才覚をもって運賃収入を増加させることは実際上不可能である。 また,控除されるべき経費についてみると,トラックで長距離を走行する業務である以上,反訴被告の意思や能力にかかわりなく,車両の修理代,燃料代及び高速道路使用料等は必然的に発生するものであると認められる。そして,これらの経費に加え,定額分5万円及び運賃収入の10ないし15パーセントが,反訴原告の事務経費として控除されることになっている。 そうすると,結局,精算の結果マイナス計上となるか否かは,反訴被告の意思や能力とは無関係に決まるものであるといえる。そして,上記の経費項目からすれば,月々のマイナス計上額自体には一定の限度があるとはいえ,その累積を一定限度で留めるような仕組みは設けられていないから,その意味では反訴被告の清算金債務は無制限に累積する可能性があるものである。 (イ) そして,さらにさかのぼれば,反訴被告の運賃収入の多寡を左右するのは,反訴原告が受注する仕事の量や単価,ひいてはその時々の景気動向であると考えられる(なお,証人Bは,反訴被告が顧客との間でトラブルを起こしたことも運賃収入減少の一要因である旨証言しているが,これを裏付ける的確な証拠はなく,上記事実を認めることはできない。) 向であると考えられる(なお,証人Bは,反訴被告が顧客との間でトラブルを起こしたことも運賃収入減少の一要因である旨証言しているが,これを裏付ける的確な証拠はなく,上記事実を認めることはできない。)。 イ本件償却方式における反訴原告・反訴被告の利益状況等(ア)a まず,本件償却方式は,反訴原告にとっては,受注する仕事量が減少して売上げが低下しても,反訴被告に買い与えた車両代金や,反訴被告に支払うべき最低保障額及び車両修理代等の経費については,反訴被告の清算金債務に累積することで常に確保することができる上,事務経費に相当する分についても反訴原告の利益として確保できるという機能を果たしていると認められる。 すなわち,償却方式は,反訴原告にとって,反訴被告からの回収不能の危険を除けば,絶対に損をしない仕組みになっているものである。 b ところで,本件償却方式を開始するに当たっては,反訴被告は自己専用車両を反訴原告から買い受けた形をとることになるが,この車両売買の目的が主に「車両を専属使用すること」にあり,名義変更はそもそも予定されておらず,反訴被告の退職時には反訴原告が時価で買い取ることとされていることは前記認定のとおりであり,上記車両売買は,所有権移転という実質を伴わないものであるといえる。 そして,反訴被告が当該車両を使用して従事するのは,反訴原告から与えられた仕事のみであって,当該車両を使用して自己の裁量で稼動するわけではないことからすれば,車両の使用状況は,通常の稼動形態と変わらないと認められる。すなわち,償却方式であれ,通常の稼動形態であれ,反訴原告にとっては,それを従業員に使用させて自己の受注した仕事に従事させることに変わりはないものである(なお,反訴被告の1台目の専用車両につき,反訴被告が償却方式を希望しなければ,反訴原告は通常の 訴原告にとっては,それを従業員に使用させて自己の受注した仕事に従事させることに変わりはないものである(なお,反訴被告の1台目の専用車両につき,反訴被告が償却方式を希望しなければ,反訴原告は通常の稼動形態を前提に使用するつもりであったと認められる。)。 上記のように,車両の売買が,実際には所有権移転の実質を伴わず,車両の使用状況も通常の稼動形態の場合と変わらないことからすれば,償却方式の場合であっても,車両代金や経費等は原則として反訴原告が負担すべきものであるというべきである。 c さらに,本件償却方式においては,通称ナンバー代として事務経費5万円が控除されることになっているが,反訴被告は反訴原告の従業員にすぎず,ナンバーを借りている立場にない上,実際にも,上記のように,通常の稼動方式の場合と償却方式の場合とで,車両の使用状況自体に変わりがないことからすると,償却方式の場合のみ,ナンバー使用代を労働者に負担させることに実質的な根拠はないというべきである。 d 上記のように,反訴原告が償却方式により確保できることになる車両代及び燃料代,高速道路使用料等,車両修理費等の経費は,本来ならば反訴原告が負担すべきものである。反訴原告は,これらを反訴被告に負担させつつ,少なくとも事務経費相当額を自己の純利益として得ていたと認められる(なお,別表1ないし3記載の57か月間において,反訴原告は事務経費として合計1189万7967円を控除しているが〔甲2,3,及び7〕,反訴被告は,約10年償却方式で稼動していること,償却方式に切り換えた当初は景気も良好であり,運賃収入も高額であったと推認されることからすれば,反訴原告が,反訴被告の償却方式での稼動期間中に得た純利益は,少なくとも2000万円以上になるものと推定できる。)。 (イ)a 次に,反訴被告にとっては 収入も高額であったと推認されることからすれば,反訴原告が,反訴被告の償却方式での稼動期間中に得た純利益は,少なくとも2000万円以上になるものと推定できる。)。 (イ)a 次に,反訴被告にとっては,償却方式は,運賃収入が多い時には,通常の稼働形態の場合と比べて高い収入を得ることができるものの,運賃収入が少ないときには清算金債務を負うこととなるものであるが,運賃収入の多寡は,主にその時々の景気動向に影響されるものであって,反訴被告の意思や能力と無関係に変動するものであることは前記(2)アのとおりであるから,通常の労働形態と比して高い収入を得ることができるという利益は不確定なものに過ぎない。 そして,そもそも労働契約においては,その時々の景気動向に対処する責任は当該事業の運営主体たる使用者が負うべきものと解するのが相当であり,本件でも,反訴原告が景気動向に対処する責任を負っていることからすれば,反訴被告は,償却方式によって,本来自己が直接負担するはずのない景気変動の危険を直接負担するという不利益を負っているということができる。 b なお,通常の労働形態との比較という点から検討すると,通常の労働形態で反訴被告と同様の仕事に従事した場合の給与は月額35万円ないし45万円程度であり,賞与は年2回各20万円程度であること,償却方式により稼動する場合の最低保障額は,反訴原告会社における通常の労働形態の場合の固定給部分と比して5万円から8万円程度高いことが認められる(乙9,証人A)。 しかし,仮に通常の稼動形態よりも高額の金員を受領していたとしても,その一方で清算金債務が累積していたのであり,賞与についても,一時は200万円程度の賞与が支給されたときもあったものの,支給されたのは最初の数年だけで,その後はほとんど支給されていないと認められるから(反訴被告 算金債務が累積していたのであり,賞与についても,一時は200万円程度の賞与が支給されたときもあったものの,支給されたのは最初の数年だけで,その後はほとんど支給されていないと認められるから(反訴被告本人),結果的にみれば,必ずしも通常の稼動形態と比して反訴被告が金銭的な利益を得ていたとはいえないし,仮に,景気が良好であった時期に,高額な賃金を得ていたことのみをもって,通常の稼動形態と比して反訴被告が金銭的な利益を得ていたと評価し得るとしても,運賃収入減少の危険を反訴被告が負担することや,2台分の車両代金(合計1500万円余りと推定される。),燃料代,高速道路使用料,車両修理費等を負担していること等を総合考慮すれば,反訴被告が,償却方式によって,通常の稼動形態よりも利益を得たとはいい難い。 c 結局,反訴被告が本件償却方式により確実に得た利益は,単に車両を専属使用できるという点のみであるといっても過言ではなく,その反面,反訴被告が負った不利益は,①景気変動等による運賃収入の減少の危険,②本来反訴原告が負担すべき車両代金,経費等の負担,③反訴原告の純利益となる事務経費の控除(このうちナンバー代の控除について,実質的な根拠がないことは前記のとおりである。)など,労働契約である以上,反訴原告が反訴被告に対し,当該不利益を負わせることが不合理なものばかりであるということができる。 d また,B社長は,償却方式による稼動をやめる際には,その時点での清算金債務を返済する必要がある旨反訴被告に告げていたことが認められ(反訴被告本人),また,退職する際にも,清算金債務を返済しなければならないとされていたことからすれば,償却方式は,事実上,反訴被告の退職の自由を制限する機能を有していたと認められる。 本件においては,最終的には反訴被告の退職自体は認められて 金債務を返済しなければならないとされていたことからすれば,償却方式は,事実上,反訴被告の退職の自由を制限する機能を有していたと認められる。 本件においては,最終的には反訴被告の退職自体は認められており,既に退職の処理がなされていることに争いはないが,その経過は前記認定のとおりであり,事実上反訴被告にとって退職を躊躇させる機能を果たしたことは否定できない。 ウ本件償却方式における収支の状況本件償却方式について,その結果たる収支の状況を詳細にみると,証拠上収支の状況が認定できる別紙1ないし3記載の合計57か月分のうち,28か月について収支がマイナス計上となっており,そのマイナス計上分の合計はマイナス756万3100円となる。他方,収支が黒字となっている29か月分の,黒字分合計額は,433万4545円であり,当該57か月分の収支を合計するとマイナス322万8555円となる。 また,2台目の車両代金が控除され始めた平成7年2月分から同年10月分までは,すべての月においてマイナス計上となっており,特に,同年4月,同年9月,同年10月には,その当時の最低保障額である45万円ないし45万5000円を超えるマイナス計上となっている。 上記のように,収支の状況としては,マイナス計上となっている月とそうでない月がほぼ半数ずつあるが,その額を比較すると,概してマイナス額の方がプラス額よりも高い傾向にある。そして,マイナス計上額が反訴原告が受け取る最低保障額を上回っている月もあり,特に車両代金の返済をしている間においてその傾向が著しいが,車両代金の返済を終えたからといって収支がプラスになるというわけではないし,車両代金の返済とは無関係に,マイナス計上額が最低保障額を上回っている月もある。 なお,平成7年11月分から平成10年4月分の収支については,前記のよう いって収支がプラスになるというわけではないし,車両代金の返済とは無関係に,マイナス計上額が最低保障額を上回っている月もある。 なお,平成7年11月分から平成10年4月分の収支については,前記のように証拠上認定できないが,平成7年10月及び平成10年5月における各清算金債務の残額を比較すれば,約2年3か月の間に,マイナス計上が600万円以上累積したことになることから,前記の認定し得る収支の状況よりも更にマイナス計上となる月が多かったものと推認される。 (3) 以上を前提に,本件償却方式の有効性について検討する。 ア労基法27条との関係について(ア) 一般に,賃金の支払が,出来高払制その他の請負制による場合は,時間賃金の場合と異なり,仕事の供給量に伴う事業の繁閑によって賃金額が左右され,あるいは仕事の単位量に対する賃金の切下げ,仕事の完成度に対する厳しい評価などとあいまって不当に低い賃金をもたらして,労働者の生活の安定を確保することが難しくなると認められる。 そこで,労基法27条は,上記のような弊害のあることを考慮して,実収賃金の確保ないし減少防止を通して労働者の生活を保障すべく,一定額の賃金保障を使用者に義務づけたものであると解される。 そして,同条が定める保障給とは,「労働時間に応じた一定額」であるから,時間給であるのが原則であり,実労働時間に応じて支払われなければならないものであるから,労働者の実労働時間とは無関係に一定額を保障するものは固定給であって,同条にいう保障給とはいえない。 同条は,使用者に対し,上記のような保障給の定めをし,かつ,当該保障給以上の給与を労働者に支払う義務を課しているというべきである。 ただし,当該労働契約が労基法27条に反して無効となるか否かの判断にあたっては,保障給の定めが明確にはなされていなくても かつ,当該保障給以上の給与を労働者に支払う義務を課しているというべきである。 ただし,当該労働契約が労基法27条に反して無効となるか否かの判断にあたっては,保障給の定めが明確にはなされていなくても,現実に同条の上記の趣旨に合致するような給与体系が確立されており,適正に運用されていると認められれば,当該労働契約が無効であるとはいえないと解される。 (イ) これを本件についてみるに,本件償却方式において,反訴被告の実労働時間に応じた一定額の賃金保障をする旨の定めがなされていたとの事実は認められない。 また,反訴原告は,反訴被告に対し,毎月最低保障額として40万円ないし45万円程度を支払ってきたことが認められるが,前記(1)イで述べたように,これをもって最低保障額を固定額とする固定給払とみることはできない。 そして,本件においては,前記認定のとおり,最低保障額や事務経費率の改定がなされてはいるものの,いずれも反訴原告が反訴被告に対して支払うべき給与を実質的に保障するためになされたものとはいえないし,前記の収支の状況からすれば,そのような効果が生じたとも認められない。 また,ほかに反訴原告が,反訴被告に対し,労基法27条の趣旨に合致する給与支払をなす措置を講じたとの事実を認めることはできない。 結局,本件償却方式においては,労基法27条の趣旨に合致するような給与体系が確立されていたとは認められず,また,その運用に当たっても,同条の趣旨に合致した賃金の支払を確保するような運用がなされていたとは認められないから,本件償却方式は労基法27条に反するものというべきである。 ところで,労基法27条は,単に「一定額を保障」と定めるのみで,保障給として支払われるべき金額を具体的には定めていないが,少なくとも,労働者の給与月額が実質的にマイナスとなることを許容す きである。 ところで,労基法27条は,単に「一定額を保障」と定めるのみで,保障給として支払われるべき金額を具体的には定めていないが,少なくとも,労働者の給与月額が実質的にマイナスとなることを許容するものでないことは明らかである。 そうすると,本件においても,少なくとも,最低保障額を超える清算金債務の累積がなされた月については,その差額分についてのマイナス計上は労基法27条に反し,無効であるというほかない。 イ公序良俗違反の点について(ア) さらに本件償却方式の有効性について,公序良俗違反の観点から検討する。 前記(2)イのとおり,本件償却方式は,その内容において,本来反訴原告が負担すべき運賃収入減少の危険や車両代金,経費等を直接反訴被告に負わせるものとなっているが,これは,労働者が使用者の指揮監督という制限の下で当該事業のために労働力を提供し,これに対して当該事業の運営主体たる使用者が報酬を支払うという労働契約の本質的内容と相容れないものである。 なぜなら,労働契約においては,労働者が当該事業の運営に参画することはそもそも予定されていない以上,当該事業の運営上の危険や,運営のために要する経費を直接負担することもまた予定されていないというべきであるからである。 したがって,上記のような不利益を労働者に負担させることを内容とする労働契約においては,それを是認するに足りるような措置がとられる必要があるというべきである。 そして,本件について具体的にこれをみるに,本件償却方式においては,反訴被告に前記のような負担をさせる仕組みとして,各種の経費の控除やマイナス計上がなされているものであるが,このような仕組みの下では,反訴被告が受け取るべき給与の額は極めて不安定になる上,稼動すればするほど清算金債務が累積するような事態となる危険を内在することと マイナス計上がなされているものであるが,このような仕組みの下では,反訴被告が受け取るべき給与の額は極めて不安定になる上,稼動すればするほど清算金債務が累積するような事態となる危険を内在することとなっているのであって,このような仕組みの労働契約は,労働者の生活保障のために賃金に関するさまざまな規制をなしている労基法の趣旨に反するものであることは明らかである。 加えて,清算金債務が累積した場合には,反訴被告の退職の自由を事実上制限するという機能をも有することも合わせ考えれば,その不合理性は著しいといわざるを得ない。 そうすると,本件償却方式のような仕組みを有する労働契約は,労働者が受領すべき給与について,労基法の趣旨に合致するような仕組みが併せて設けられ若しくは労基法の趣旨に合致するような適正な運用が確保され又は労働者が特別の利益を享受する内容を包含しているなど,労働者が前記のような不利益を負うことを是認するに足りる特段の事情がない限り,労働者に当該不利益を負わせる部分については,公序良俗に反し無効であるというべきである。 (イ) これを本件について具体的にみると,まず,そもそも使用者たる反訴原告は,最低保障額の切下げや事務経費率の調整など,その時々の景気変動に応じた措置を講じて,反訴被告に対して実質的に労基法の趣旨に合致する給与の支払をなし,かつ,清算金債務が無制限に累積することを防ぐべき義務があるというべきであるところ,本件償却方式の内容には,反訴被告に対する給与支払を確保する仕組みや,清算金債務の累積を防止する仕組みは設けられていない。 そして,本件においてなされた最低保障額や事務経費率の改定が,いずれも反訴原告が反訴被告の給与を実質的に保障するためのものとはいえないことは前記のとおりであり,これらの改定によって清算金債務の累積が防 して,本件においてなされた最低保障額や事務経費率の改定が,いずれも反訴原告が反訴被告の給与を実質的に保障するためのものとはいえないことは前記のとおりであり,これらの改定によって清算金債務の累積が防止されていないことも,前記の収支状況から明らかである。 また,本件償却方式においては,毎年2回,半年分の収支を精算することが予定されているが,これは,黒字の場合の賞与額決定のためのものに過ぎず,精算の結果赤字となる場合には,単にその半年分のマイナス計上がそのまま清算金債務として残るのみであると認められるから,年2回の精算をもって,清算金債務の累積を防ぐ措置が講じられているということはできない。 さらに,上記年2回の精算時に,償却制台帳の写しが反訴被告に交付されており,このことは,清算金債務額が累積した場合に,反訴被告が償却方式を継続することの危険性を認識する契機としての機能を事実上果たしているといえるが,反訴被告が上記危険性を認識したとしても,反訴被告自身がその意思で清算金債務の累積を防止することは不可能である上,前記のとおり,B社長は,償却方式による稼動をやめる際には,その時点での清算金債務を返済する必要がある旨反訴被告に告げていたことからすれば,反訴被告が上記危険性を認識しても,清算金債務を返済しない限り償却方式をやめることもできないのであり,償却制台帳の写しを交付することが,清算金債務の累積を防止する機能まで果たしているとは認められない。 結局,本件償却方式の運用上も,上記の反訴原告の義務を果たすような措置が講じられたとの事実は認められない。 (ウ) そうすると,本件清算金債務の累積という結果は,本来反訴原告が負担すべき不利益が,反訴被告に清算金債務という形で転嫁されたものであり,しかもその累積の主要な原因は反訴原告の対応にあるということ ) そうすると,本件清算金債務の累積という結果は,本来反訴原告が負担すべき不利益が,反訴被告に清算金債務という形で転嫁されたものであり,しかもその累積の主要な原因は反訴原告の対応にあるということができるのであって,まさに本件償却方式の仕組み自体の不合理性を顕著に示すものであるといえる。 そして,反訴被告と反訴原告の利益状況をみても,前記のとおり,反訴被告が償却方式により得た利益はほとんど認められないのに対し,反訴原告は,車両代金や経費等を回収した上,前記のとおり純利益として少なくとも2000万円以上を確保したことになるから,本件清算金債務額である952万0342円が未回収であることを考慮しても,過大な利益を得ているというべきである。 (エ) 上記のような償却方式の仕組み及び運用状況並びにこれにより生じた結果を総合考慮すれば,その不当性は著しいといわざるを得ず,これを是認するに足りる特段の事情も認められない。そして,その不当性の結果である本件清算金債務の累積は,運賃収入から経費を控除した残額が最低保障額に満たない場合に,その差額を反訴原告の反訴被告に対する貸付金として扱うとする点から生じているものといえるから,本件償却方式は,少なくとも,上記の点については,公序良俗に反し無効であるというべきである。 (オ) なお,本件償却方式による稼動形態への切り替えは,反訴原告が使用者としての優越的地位を利用して反訴被告に強要したというような事情はなく,むしろ,反訴被告自身が希望してなされたものであると認められるが,反訴被告が,償却方式に切り替える段階において,上記のような著しい不利益を負うことを的確に認識していたかは疑問である。 また,実際の償却方式の条件設定の場面においては,最低保障額や事務経費率の変動について使用者である反訴原告が主導権を握っ いて,上記のような著しい不利益を負うことを的確に認識していたかは疑問である。 また,実際の償却方式の条件設定の場面においては,最低保障額や事務経費率の変動について使用者である反訴原告が主導権を握っていたと認められることからすれば(反訴被告本人),結局,清算金債務の累積状況は反訴原告の対応に左右されるものといえるから,反訴原告がどのように償却方式を運用するかが重要であって,償却方式を反訴被告が希望したという経緯は,前記判断を左右するものではない。 さらに,2台目の車両への買い替えについても,反訴被告の方から希望したものと認められる(なお,反訴原告は,2台目の車両に買い替える前に,Cが反訴被告に対して償却方式をやめる方が賢明である趣旨の忠告をしたと主張するが,この事実を認めるに足りる証拠はない。)。 しかしながら,上記のように償却方式の運用方法が問題であるというべきである上,償却方式をやめるには,その時点での清算金債務を反訴原告に支払わなければならないところ,反訴被告が2台目の車両に買い替えた時点において,既に約200万円の清算金債務の累積があったと認められるから(甲3),反訴被告の希望の有無にかかわらず,反訴被告は上記清算金債務を支払わない限り償却方式をやめることはできなかったのであり,2台目の車両に買い替えを反訴被告が希望したという事情も,前記判断を左右するものではない。 ウ以上によれば,本件償却方式は,労基法27条に反する部分がある上,公序良俗に反するものとして,少なくとも,運賃収入から経費を控除した残額が最低保障額に満たない場合に,その差額を反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理するとの部分については,無効というべきである。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,反訴原告の請求は理由がないから棄却することと 額を反訴原告の反訴被告に対する貸付金として処理するとの部分については,無効というべきである。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,反訴原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官橋本昌純裁判官夏目明徳裁判官大橋弘治(別表省略)
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