主文 本件を大阪家庭裁判所に移送する。 理由 第1 本件公訴事実について本件公訴事実は別紙記載のとおりであるが,当公判廷において取り調べた証拠によれば,本件公訴事実を認定することができる。 第2 争点に対する判断 1 本件の争点本件の争点は,保護処分と刑事処分のいずれが相当かである。当裁判所は,保護処分が相当と判断したため,以下理由を説明する。 2 判断公訴事実第2の犯行は,自動車運転経験の全くない被告人が,自身の運転技能の未熟さを認識し,運転を中止することが可能であったにもかかわらず,自動車を運転してみたいという身勝手かつ安易な動機で運転を継続したことにより発生したものであり,危険かつ悪質である。前記犯行により,何ら落ち度のない被害者の生命が奪われ,取り返しのつかない重大な結果が発生している。 遺族の処罰感情が厳しいのも当然である。加えて,被告人は,過去に2度の保護処分を受け,本件当時も保護観察中であったことや,友人に嘘をついて自動車を調達した上,犯行後も救護措置を講じることなく逃走し,更には自身の責任を免れるための働きかけを行っていることなど,犯行前後の情状も悪いことに照らせば,被告人の責任を軽視することは到底できない。 他方で,自動車を運転してみたいという目的自体は反社会的なものではない。 また,被告人は,交通法規を軽視し無免許運転をしていたとはいえ,人を殺傷するなどの悪意はなく,自動車の進行を制御しようと試みていたものの,運転中に冷静な判断・操作ができなくなった結果,人身事故を起こし,本件犯行に至ったものといえる。このような事情からすれば,本件犯行は,悪質なもので あるとはいえるものの,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の 作ができなくなった結果,人身事故を起こし,本件犯行に至ったものといえる。このような事情からすれば,本件犯行は,悪質なもので あるとはいえるものの,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件(少年法20条2項本文)の中では,反社会性が強いとは評価できない。 以上の諸事情に加え,被告人は本件犯行当時16歳5か月と低年齢であること,動機の安易さや犯行前後の行動も被告人の低年齢ゆえの未熟さの表れともいえること,被告人が本件以前に受けた保護処分は,交通犯罪とは異なる犯罪による児童自立支援施設送致及び保護観察であったこと,引き起こした結果の重大性を自分なりに認識し,遺族に対し不十分ながらも謝罪の気持ちを述べていること,本件では,一般国民から選任された裁判員を含む合議体が本件を家裁に移送する決定をしたのに対し,再度の逆送決定がなされた手続経過があり,被告人の負った手続的負担は既に過大になっていることをも併せて考えれば,本件は,保護処分が許される特段の事情が存在し,保護許容性が肯定できる。 そして,保護処分により被告人の更生が期待でき,保護可能性があることは明らかである。 そうすると,本件は,保護処分が相当な事件であると認められる。なお,本件の悪質性,結果の重大性や被告人の性格,資質,環境上の問題点が根深いこと等からすれば,被告人が1年間以上身体拘束を受けたことを考慮しても,相当長期間(仮退院まで4年間程度)の矯正教育を施す旨の処遇勧告を付した保護処分が妥当であると考える。 なお,弁護人は,前記手続経過等から,本件再度の逆送決定は違法であり,これを受けた本件公訴は棄却されるべきである旨主張するが,更に裁判員裁判の結果が適正に反映されず,少年に過大な負担を課す事態となれば別論,現時点では,いまだ刑事訴訟法338条4号により公訴 であり,これを受けた本件公訴は棄却されるべきである旨主張するが,更に裁判員裁判の結果が適正に反映されず,少年に過大な負担を課す事態となれば別論,現時点では,いまだ刑事訴訟法338条4号により公訴提起自体が無効となるほどの違法があるとはいえない。 3 結論よって,少年法55条を適用して,本件(公訴事実第2並びにこれと密接に関連する公訴事実第1及び第3)を大阪家庭裁判所に移送することとし,主文 のとおり決定するとともに,訴訟費用は被告人に負担させないものとする。 (検察官の求刑・懲役4年以上8年以下。弁護人の処遇意見・家庭裁判所への事件移送。)平成29年1月24日大阪地方裁判所第7刑事部 裁判長裁判官長瀨敬昭 裁判官大伴慎吾 裁判官内田健太 (別紙)本件公訴事実被告人は,少年(当時16歳)であるが,第1 公安委員会の運転免許を受けないで,平成27年8月13日午前8時38分頃,兵庫県尼崎市a町b丁目c番d号付近道路において,普通自動二輪車を運転した第2 同日午前9時22分頃,同市ef丁目g番h号付近の幅員約4.8メートルの道路において,普通乗用自動車の運転経験がなく,その進行を制御する技能を有しないで普通乗用自動車を時速約30ないし35キロメートルで走行させたことにより,自車を道路状況に応じ進路を適正に保持して進行させることができず,道路右端の建物への衝突を避けようとしてハンドルを左転把し,自車右後部を同建物に衝突させるとともに,自車を左斜め前方に逸走させ,折から同方向に進行中のA(当時80歳)運転の自転車後部に自車前部を衝突させ,同人を同自転車もろとも路上 してハンドルを左転把し,自車右後部を同建物に衝突させるとともに,自車を左斜め前方に逸走させ,折から同方向に進行中のA(当時80歳)運転の自転車後部に自車前部を衝突させ,同人を同自転車もろとも路上に転倒させた上,自車車底部で同人を轢過するなどし,よって,同人に肋骨多発骨折及び頭部・顔面挫裂傷等の傷害を負わせ,即時同所において,同人を前記肋骨多発骨折に基づく失血により死亡させた第3 第2記載の日時場所において,第2記載の車両を運転中,第2記載のとおり前記Aに傷害を負わせる交通事故を起こし,もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに,同所に自車を放置したまま立ち去り,同人を救護する等必要な措置を講じず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったものである。 以上
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