令和5年3月27日判決言渡令和4年(ネ)第10089号発信者情報開示請求控訴事件(原審東京地方裁判所令和4年(ワ)第1543号)口頭弁論終結の日令和5年1月23日判決 株式会社NTTぷらら訴訟承継人控訴人株式会社NTTドコモ 同訴訟代理人弁護士北山智也 同桑原秀明同横山経通 被控訴人株式会社ケイ・エム・プロデュース 同訴訟代理人弁護士戸田泉同角地山宗行 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要等(略語は原判決のそれに従う。) 1 事案の要旨 本件は、被控訴人が、氏名不詳者らがいわゆるファイル交換共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、原判決別紙著作物目録記載の各動画(本件各動画)を送信可能化したことによって、本件各動画に係る被控訴人の送信可能化権を侵害したと主張して、控訴人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任 制限法)5条1項に基づき、原判決別紙発信者情報目録記載の各情報(本件発信者情報)の開示を求める事案である。なお、原審においては、令和3年法律第27号による改正前のプロバイダ責任制限法が適用されていたため、被控訴人は、同改正前のプロバイダ 情報目録記載の各情報(本件発信者情報)の開示を求める事案である。なお、原審においては、令和3年法律第27号による改正前のプロバイダ責任制限法が適用されていたため、被控訴人は、同改正前のプロバイダ責任制限法4条1項に基づいて請求していた。 原判決が被控訴人の請求を認容したため、これを不服とする控訴人が控訴し た。 2 前提事実前提事実は、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」という記載を省略する。)第2の2(原判決2頁13行目から4頁17行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、証拠を摘示する場合には、特に記載 のない限り、枝番を含むものとする。)。 3 争点本件の争点は、いわゆるHandshakeに係る通信の発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか否かである。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点に関する当事者の主張は、後記2のとおり当審における補充主張を付加するほかは、原判決第3(原判決4頁21行目から5頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における補充主張〔控訴人の主張〕 ⑴ 「Handshake」の内容の明確性について 被控訴人は、「Handshake」とは、被控訴人による調査において、本件検知システムがトラッカーサーバに接続し、本件各動画のファイルの提供者のリストを要求したところ、トラッカーサーバから、自身にアクセスしている当該ファイルの提供者のIPアドレスが記載されたリストが提供されたため、その後に、実際に当該リストに記録されていた各ユーザーに接続し たのに対して、応答が確認されたというものであるとし、「Handshake」の時点において本件各動画に係る被控訴人の送信可能化権が侵害された 、実際に当該リストに記録されていた各ユーザーに接続し たのに対して、応答が確認されたというものであるとし、「Handshake」の時点において本件各動画に係る被控訴人の送信可能化権が侵害されたとし、これらの応答に係る発信者の情報である原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載の情報が、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当すると主張する。 しかし、この応答確認の内容としては、甲7(技術説明用資料)の19枚 目の図及び「⑤実際に当該リストに載っていた各ユーザーに接続をして、各ユーザーが応答することの確認」という記載があるのみであって、その具体的内容は全く明らかにされていないから、「Handshake」の時点において本件各動画に係る被控訴人の送信可能化権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 ⑵ 「Handshake」の応答結果が原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであるかについて「Handshake」による応答の日時及び応答のあったIPアドレスが、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであることについて、具体的に立証されていないから、同目録⑴ないし⑷記載の日時及びIPアドレス で特定される通信記録に係る発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情報」であるか明らかでない。 〔被控訴人の主張〕⑴ 「Handshake」の内容の明確性について「Handshake」は、ファイルのアップロードを行おうとするユー ザーが、アップロードの直前に、アップロードを要求してきた他のユーザー に対して行う通知に係る通信である。原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のIPアドレス、ポート番号及び発信時刻は、「Handshake」が行われた際のものであり、各発信時刻において、各IPアドレス及びポート番号を有する発信 通信である。原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のIPアドレス、ポート番号及び発信時刻は、「Handshake」が行われた際のものであり、各発信時刻において、各IPアドレス及びポート番号を有する発信者が、本件各動画の全部又は一部を不特定多数の者からの求めに応じて自動的に送信し得るようにしていたことを示すものである。 したがって、各発信者が、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載の各発信時刻において、被控訴人の送信可能化権を侵害していたことは明らかである。 ⑵ 「Handshake」の応答結果が原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであるかについて本件調査を行ったHDRのデータベースの記録の出力方法を変更し、UN IX時間と日本時間が併記された形でパソコン画面上に表示したものを印刷したのが甲17であり、これによれば、HDRのデータベースに記録されていたUNIX時間のタイムスタンプ(発信時刻)と、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷に記載された日本時間の発信時刻が対応していることが認められる。 したがって、「Handshake」の応答結果は、原判決別紙動画目録⑴ ないし⑷記載のとおりであることが認められる。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所の判断は、次のとおり補正し、後記2のとおり、当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決第4の1(原判決5頁19行目から7頁13行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決7頁12行目の「4条1項」を「5条1項」と改める。 2⑴ 「Handshake」の内容の明確性についてBitTorrentを通じて、他のユーザーからの要求に応じてファイルのアップロードを行おうとするユーザーは、 アップロードの直前に、当該他のユーザーに対し、自身が要求されたファ の明確性についてBitTorrentを通じて、他のユーザーからの要求に応じてファイルのアップロードを行おうとするユーザーは、 アップロードの直前に、当該他のユーザーに対し、自身が要求されたファイルを所持しており、そのファ イルがアップロード可能な状態となっていること等を通知する。この通知に 係る通信が、「Handshake」とよばれるものである(甲7、甲15)。 そうすると、本件において「Handshake」が行われたということは、各発信者が、遅くとも原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載の各発信時刻までに、トラッカーサーバに接続して、自己のIPアドレス等の情報を記録させた上で、本件各動画の全部または一部を取得して端末に保存し、かつ、これ と同時に、BitTorrentのネットワークを介して他のピアからの要求に応じて当該ファイルの送信(アップロード)をすることができる状態にしていたということである。原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のIPアドレス、ポート番号及び発信時刻(甲5、甲17)は、「Handshake」が行われた際のものであり(甲15)、これは、同目録⑴ないし⑷記載の各発 信時刻において、各IPアドレス及びポート番号を有する発信者が、本件各動画の全部又は一部を不特定多数の者からの求めに応じて自動的に送信し得るようにしていたことを示すものである。 したがって、各発信者が、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載の各発信時刻において、被控訴人の送信可能化権を侵害していたことは明らかであるも のと認められる。 ⑵ 「Handshake」の応答結果が原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであるかについて被控訴人は、本件訴訟を提起するに当たり、本件調査の結果として、HDRのデータベースの記録である甲5により Handshake」の応答結果が原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであるかについて被控訴人は、本件訴訟を提起するに当たり、本件調査の結果として、HDRのデータベースの記録である甲5により、各発信者のIPアドレス、ポー ト番号及びタイムスタンプ(発信時刻)等の情報の提供を受けたところ、甲5においては、「Handshake」を行った際の時刻がUNIX時間で表示されていたが、被控訴人は、これらのUNIX時間を日本時間に直して、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載の各発信時刻として記載した(甲15、甲16)。 HDRのデータベースの記録の出力方法を変更し、タイムスタンプ(発信 時刻)についてUNIX時間と日本時間が併記された形でパソコン画面上に表示したものを印刷したのが甲17であり、これによれば、HDRのデータベースに記録されていたUNIX時間のタイムスタンプ(発信時刻)と、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷に記載された日本時間の発信時刻が対応していることが認められる。 したがって、「Handshake」の応答結果は、原判決別紙動画目録⑴ないし⑷記載のとおりであることが認められる。 3 以上によれば、本件発信者情報は、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり、被控訴人は、控訴人に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができる。 したがって、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。 よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 中平健 裁判官 都野道紀
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