平成17(行ウ)9 損害賠償履行請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年4月13日 仙台地方裁判所
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判決文本文29,731 文字)

- 1 -主文 被告は,被告補助参加人A監査法人及び同Bに対し,連帯して,7億7908万1788円及びこれに対する平成11年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をするよう請求せよ。 訴訟費用は,原告らと被告との間に生じたものについては被告の負担とし,原告らと被告補助参加人らとの間に生じたものについては被告補助参加人らの負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,仙台市の住民である原告らが,学校法人が文部大臣(当時)に内容虚偽の財産目録を提出して大学設置認可を受けて四年制大学を開設したことについて,財産目録の監査を担当した被告補助参加人Bに過失があり,そのため,仙台市が,大学設置認可がなければ支出しなかったはずの学校法人に対する補助金相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,仙台市の長である被告に対し,被告補助参加人らに対する損害賠償請求権(被告補助参加人A監査法人については,当時の公認会計士法34条の22第3項,商法78条2項,民法44条1項に基づく請求権)を行使するよう求めた事案である。 前提事実(認定根拠を示すほかは,当事者間に争いがないか,又は,明らかに争いがない)。 (1)当事者ア原告らは,仙台市の住民である。 イ被告は,仙台市の長である。 ウ被告補助参加人A監査法人以下参加人監査法人というは財務(「」。),- 2 -書類の監査又は証明等を目的とし,平成12年4月,合併により,C監査法人の地位を包括的に承継した有限責任監査法人であり,被告補助参加人B以下参加人Bというは平成9年当時C監査法人の代表社員(「」。),,を務めていた公認会計士である。 (2)本件補助金支出の に承継した有限責任監査法人であり,被告補助参加人B以下参加人Bというは平成9年当時C監査法人の代表社員(「」。),,を務めていた公認会計士である。 (2)本件補助金支出の経緯等ア仙台市は,私学の資源・活力を活かしながら高等教育機関への進学機会の拡大を図ることを目的として,平成9年4月14日,仙台市大学整備促進補助金交付要綱以下本件要綱というを制定し同年5月1日か(「」。),ら施行した。 イ学校法人D大以下D大というは平成9年以前から短期大学(「」。),,及び専門学校を設置運営していたが,新たに四年制大学の開設を計画し,文部省に提出する事業財源に関する書類を整えるため丙5同年5月1(),2日付けで,被告に対し,本件要綱に基づく仙台市大学整備補助金(以下本件補助金という8億1000万円の交付申請以下本件交付申「」。)(「請」という)をした。 。 本件交付申請においては,大学設置に要する経費のうち,補助対象経費に土地賃借料及び初年度経常経費を加えた計61億5251万円余の財源として,学生・生徒納付金15億7800万円,資産運用収入6000万円,寄附金37億0451万円余,本件補助金8億1000万円を当てる計画とされていた。 ウ被告は,本件交付申請を受け,仙台市議会平成9年第2回定例会(同年6月開催)に債務負担行為の補正予算案を提出し,同月23日に議決を経た後,同年7月23日付けで,概算額8億1000万円の本件補助金の交付決定をしたがこれには本件補助金は仙台市補助金等交付規則及び要,,「綱の適用を受けるものであり,これらの規定を遵守して補助事業を行うこと」等の条件が付されていた。 - 3 -エD大は,平成9年9月30日付けで,文部 補助金は仙台市補助金等交付規則及び要,,「綱の適用を受けるものであり,これらの規定を遵守して補助事業を行うこと」等の条件が付されていた。 - 3 -エD大は,平成9年9月30日付けで,文部大臣に対し,大学設置認可申請以下本件設置認可申請というをするとともに寄附行為変更認(「」。),可申請をしたが,その際,添付書類として,D大の平成9年8月20日現(「」。)(,)。 在の財産目録以下本件財産目録というを提出した甲1丙1オC監査法人は,本件設置認可申請に当たり,財務書類の監査を受任し,,(「」代表社員である参加人Bにおいて本件財産目録の監査以下本件監査というを実施したが参加人Bは本件監査の結果本件財産目録の記。),,,載事項が,すべて事実に基づいており,その表示は明瞭であり,かつ,その評価は本件財産目録に注記のとおりであることを認める旨の平成9年8月30日付けの監査報告書以下本件報告書というを作成し文部(「」。),大臣に提出された本件財産目録には,本件報告書が添付された(丙1,弁論の全趣旨。 )カ文部大臣は,平成10年12月22日,本件設置認可申請に対し,大学設置認可以下本件設置認可というをしD大は平成11年4月(「」。),,1日,本件設置認可に基づき,四年制大学を開設した。 キD大は,平成11年4月5日,被告に対し,補助事業の実績報告書を提出したが,そこでは,大学設置に要した経費のうち,補助対象経費である校地,校舎等の整備費及び教具,備品等の購入費に土地賃借料及び初年度計上経費を加えた合計65億9038万円の財源として,学生,生徒納付金18億0159万円,資産運用収入6000万円,寄附金39億1879万円 等の整備費及び教具,備品等の購入費に土地賃借料及び初年度計上経費を加えた合計65億9038万円の財源として,学生,生徒納付金18億0159万円,資産運用収入6000万円,寄附金39億1879万円及び本件補助金8億1000万円を充てるとされていた。 ク被告は,平成11年4月20日,上記キの実績報告書に基づき,本件補助金の額を8億1000万円と確定し,仙台市は,同月22日にD大から本件補助金の交付請求があったことを受けて,同月30日,D大に対し,本件補助金8億1000万円を支出した。 ケ被告は,平成16年5月28日,本件財産目録の内容である現金寄附及- 4 -び現物寄附の大半が虚偽であったこと等を理由として,本件補助金の交付決定を取り消し(甲1。なお,乙4の1及び2によれば,取消の日は平成16年6月22日とされている,仙台市は,平成20年4月30日まで。)に,D大から本件補助金について合計3091万8212円の返還を受けた。 (3)原告らによる住民監査請求等ア原告らは,平成17年2月24日,仙台市監査委員に対し,本件補助金の支出について,被告に仙台市が被った損害賠償請求をするなど損害の填補するため必要な措置を講ずるよう勧告すること求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という)をした。 。 イ仙台市監査委員会は,平成17年3月10日付けで本件監査請求を却下した。 ウ原告らは,平成17年4月8日,本訴を提起した(顕著な事実。 )(4)大学設置認可基準(甲14,文部科学省に対する調査嘱託の結果)本件設置認可申請当時,認可の前提として,財政計画等の適否の観点から学校法人の寄附行為変更が認可されることが必要とされており,文部省は,寄附行為変更の認可基準として,①施設及び設備について,申請時において(「」。),施設及 て,財政計画等の適否の観点から学校法人の寄附行為変更が認可されることが必要とされており,文部省は,寄附行為変更の認可基準として,①施設及び設備について,申請時において(「」。),施設及び設備の整備に要する経費以下設置経費というの財源として設置経費に相当する額の寄附金,積立金,資産売却収入その他学校法人の負債とならない収入を収納していること,②経営に必要な財産について,設置経費の財源としての寄附金のほか,申請時において,大学等の開設年度の経常経費に相当する額の寄附金が収納されていること,③設置経費の財源としての寄附金及び開設年度の経常経費に相当する額の寄附金について,その真,,実性を確かめ得るもののみを算入するものとし寄附能力のない者の寄附金寄附者が借入金により調達した寄附金などについては算入しないものとすること,④既設校等について,学校法人の資産状況が,純資産額に対する前受- 5 -金を除く総負債額の割合以下負債率というが原則として4分の1以(「」。)下であること等の基準(以下「本件認可基準」という)を定めていた。 。 争点及びこれに関する当事者の主張本訴の争点は本件監査請求の適法性争点1本件監査における参加人B,(),の過失の有無争点2参加人Bの過失と本件補助金支出との因果関係等の有(),無(争点3)であり,これに関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)争点1(本件監査請求の適法性)についてア被告及び参加人らの主張住民監査請求においては,監査の対象とする一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実以下当該行為等というについて監査委員が(「」。),行うべき監査の端緒を与える程度に特定するだけでは足りず,当該行為等を他の事項から区別して特定認識で 務会計上の行為又は怠る事実以下当該行為等というについて監査委員が(「」。),行うべき監査の端緒を与える程度に特定するだけでは足りず,当該行為等を他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示する,,,,ことを要しまた当該行為等が複数である場合には当該行為等の性質目的等に照らし各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するものというべきであり,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても,監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは,監査請求は,請求の特定を欠くものとして不適法である(最高裁平成2年6月5日第二小法廷判決・民集44巻4号719頁。 )本件監査請求のうち参加人らに対する損害賠償請求に係る部分は,対象となる不法行為の主体は特定されているものの,これらの者に対する損害賠償請求権が成立する不可欠の要件である過失及び因果関係について,会計監査における過失が仙台市に対する不法行為の要件としての過失となること及びその過失と仙台市が受けたとされる損害との間に相当因果関係が存在することについての主張及び資料の提出がなく,これらの者が損害賠- 6 -償義務を負担することとなる理由について個別的,具体的な摘示がないから,請求の特定を欠き不適法であって,したがって,本訴は適法な監査請求を経ていない。 イ原告らの主張住民監査請求においては,対象とする当該行為等を他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,対象が特定の 別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,対象が特定の当該行為等であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されていれば足り,この理は,当該行為等が複数である場合であっても異なるものではない(最高裁平成16年11月25日第一小法廷判決・民集58巻8号2297頁。 )本件監査請求の監査請求書には,参加人らは,四年制大学の設置認可がされた場合,D大が補助金を受給することを十分に予見し得た以上,四年制大学の設置認可が適法にされるよう財務書類を精査し,もって,違法な補助金支出を回避させることが可能であったにもかかわらず,それを怠り違法に補助金を支出させた点に重大な過失が認められる旨が記載されており,過失を他の事項と容易に区別し特定できるよう摘示しているから,本件監査請求は適法である。 (2)争点2(本件監査における参加人Bの過失の有無)についてア原告らの主張(ア)監査基準について学校法人に対する監査の一般的な基準として,日本公認会計士協会は,「学校法人監査手続一覧表(昭和48年4月17日制定。以下「手続一」,覧表というを定めているが手続一覧表の冒頭の記載からすれば監」。),,査人は,手続一覧表に記載された事項を基本にしつつも財務書類の適正を- 7 -確証するに至るまで必要な監査手続を行うべき義務を負い,さらに,手続一覧表の個々の監査手続について計算突合,証憑突合,質問等の記載がなくとも,これらは,学校法人の監査において必須の手続であるというべきである。 (イ)現物寄附に係る監査手続についてa本件財産目録に現物寄附として記載された物品には,実際にはD大がリ の記載がなくとも,これらは,学校法人の監査において必須の手続であるというべきである。 (イ)現物寄附に係る監査手続についてa本件財産目録に現物寄附として記載された物品には,実際にはD大がリースにより取得したものが含まれていたところ,手続一覧表には,現物寄附の監査手続に関する確認資料として領収書が挙げられているのであるから,参加人Bは,現物寄附として記載された物品につき領収書の確認をする義務があるほか,現存する限りの寄附申込書の合計金額を計算し本件財産目録と合致するか確認し,現実に寄附をしたかを寄附者とされる者に質問して確認すべき義務があるところ,参加人Bはかかる義務を怠り,架空の現物寄附を看過した。 なお,上記確認義務は,現物寄附の当事者間に共謀があって,監査人からの要求に対し偽造の領収書が提出される可能性が高かったとしても否定されない。 b手続一覧表には,①固定資産の増加額,減少額及び残高の確認について,土地,建物の以外の固定資産についても固定資産台帳等と照合し,実在していることを確かめることとされ,②権利保全,財産保全に必要な措置が行われているかの確認について,所有権移転登記の行われていない土地,建物については,その理由を吟味し,売買契約書,その他関,,係書類を閲覧して所有権の有無を確かめることとされ確認資料として登記簿謄本,売買契約書,損害保険証券等が挙げられており,かかる監査基準からすれば,車両等の登録制度が設けられている物品についても権利関係を示す最も基本的な車検証ないし自動車登録の確認義務があるというべきである。 - 8 -参加人Bは,現物寄附に係る物品のうちスクールバス2台について,車検証及び自動車登録を確認せず,D大がこれらをリースにより取得したことを看過したのであるから,車検証及び自動車登録の確認義 - 8 -参加人Bは,現物寄附に係る物品のうちスクールバス2台について,車検証及び自動車登録を確認せず,D大がこれらをリースにより取得したことを看過したのであるから,車検証及び自動車登録の確認義務に違反した過失がある。 (ウ)土地売却益に係る監査手続について,(「」。)D大は仙台市青葉区茂庭字真理所在の土地以下本件土地というについて,平成8年8月22日に売買により取得し,平成9年3月24日にその一部を真実転売していないのに取得価額の2倍以上である11億100万円で転売したかのように装って,転売による資産売却収入を前提とした本件財産目録及び資金収支計算書を作成して本件設置認可申請をしたが,参加人Bは,これらの書類の不適正を看過した。すなわち,土地が売買されたことの確認は,権利証及び登記簿謄本によるべきであり,手続一覧表にもその旨定められているところ,参加人Bは,権利証及び登記簿謄本によって転売先へ所有権移転登記がされていることを確認し,所有権移転登記がされていない場合にはその理由を吟味すべき義務があったのに,これを怠った過失がある。 転売によって土地売却益が生じることは珍しいことでないにしても,取得後わずか半年で取得価額の2倍以上の金額で売却されたのは異常であって,手続一覧表でも,このような場合には,資産売却収入及び資産処分差額の内容を分析し妥当性を確かめる必要がある旨定められているところ,参加人Bは,固定資産課税評価額等による売却収入の妥当性分析すらして,,。 いないのであるからこの点においても参加人Bの過失は明らかである(エ)現金寄附に係る監査手続について本件設置認可申請時に提出された寄附者一覧表には,114件,合計49億8480円の現金寄附がされた旨記載されているが,これらのうち24件,合計40億95 ある(エ)現金寄附に係る監査手続について本件設置認可申請時に提出された寄附者一覧表には,114件,合計49億8480円の現金寄附がされた旨記載されているが,これらのうち24件,合計40億9500万円は,虚偽の現金寄附であった。 - 9 -手続一覧表によれば,監査人は,現金寄附の監査の際,現に寄附があったかどうか,とりわけ借入金収入等の寄附金収入に算入してはならないものを計上していないかどうか確認するため,①寄附申込書を確認し,②仕訳票,通帳に寄附したとされる額に相当する金額及び寄附申込者に相当する氏名の記載があるかどうかを照合する義務があったのに,参加人は,これを怠った。 また,D大は特定公益増進法人に該当するところ,税務上,特定公益増進法人に対する寄附金は,寄附金控除として寄附者の所得から控除されることとなるが,その際,特定公益法人から特定公益増進法人証明書の交付を受けることとされているので,真にD大に対する現金寄附がされていれば,寄附者に対し特定公益増進法人証明書が交付されているはずであり,監査人は,その有無を確認すれば,現金寄附がされたかを容易に確認できるのであるから,現金寄附の監査に当たってこれを確認する義務を負うというべきであるところ,参加人は,これを怠った。 (オ)預金残高及び借入金残高に係る監査手続について会計監査において財務書類の信憑性を判断するに当たっては,監査対象者の有する預金残高及び借入残高の正確な確認が不可欠であり,監査対象者による不正申告を防止するためには,監査人が,監査対象者を介することなく,直接,金融機関に対し預金残高及び借入残高を確認する必要がある。 参加人Bは,D大に対し金融機関に対する残高確認依頼書等1綴りを交,,付してD大自身で金融機関から残高確認書を取得させてその提出を求めその結 関に対し預金残高及び借入残高を確認する必要がある。 参加人Bは,D大に対し金融機関に対する残高確認依頼書等1綴りを交,,付してD大自身で金融機関から残高確認書を取得させてその提出を求めその結果,D大から内容虚偽の残高確認書の提出を受けて,これを基礎として本件財産目録の監査をしたのであるから,参加人Bには過失がある。 (カ)金融庁の処分について参加人Bは,本件監査について,金融庁から,公認会計士法30条3項- 10 -が準用する同条2項の「相当の注意を怠り,重大な虚偽等のある財務書類を重大な虚偽等のないものとして証明した場合」に該当するとして6か月の業務停止という懲戒処分がされたのに対し,一切の異議を申し立てずにこれを受け入れたのであり,参加人Bも本件監査に際し弁解の余地のないほど明白な注意義務違反があったことを自認していたとみるべきである。 イ参加人らの主張(ア)監査基準について大学の設置認可申請時の財産目録の監査においては,日本公認会計士協会の定める「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る財産目録監査の取扱い平成7年1月18日制定平成9年3月25日改訂以下財産目録」(,。 「監査取扱いというに従って監査を行うことになるがこれには認可」。),,申請時における監査の基準として特別の定めはなく監査人は一般に公正,「妥当と認められる監査基準に準拠し,必要と認めた監査手続により監査を実施する」と定められているにすぎず,したがって,大学の設置認可申請時の財産目録の監査の具体的な基準としては,手続一覧表によることとなる。 参加人Bは,本件監査に当たり,以下のとおり,手続一覧表及び一般に公正妥当と認められる監査基準に準拠して,必要な監査手続を行い,さらに,これら基準で求められている以上の監査を行った ることとなる。 参加人Bは,本件監査に当たり,以下のとおり,手続一覧表及び一般に公正妥当と認められる監査基準に準拠して,必要な監査手続を行い,さらに,これら基準で求められている以上の監査を行った。 (イ)現物寄附に係る監査手続についてa参加人Bは,現物寄附について,①現物寄附の内容の把握として,現物寄附の募集要項,募金趣意書の閲覧,②寄附を受ける側の機関決定として,D大の理事会議事録,評議員会議事録の閲覧,③寄附者の意思確認として,寄附申込書原本,寄附者の印鑑証明書原本,寄附者の社内稟議書,決算書との照合,④寄附者の資力のチェックとして,寄附者の決算書類,所得証明の確認,⑤寄附物品の受領について,寄附物品の実査- 11 -(),,,現物確認⑥寄附物品の収入計上価額の妥当性の検証として見積書納品書,鑑定評価書等の書類の検証,固定資産台帳との照合といった監査手続をとり,現物寄附が手続的,実体的に有効にされたこと,寄附物品が受領されていること,現物寄附の計上額が妥当であることを確認した。 現物寄附に係る監査手続としては,通常,監査対象者が所持する書類を確認するのが原則で,第三者が所持する書類を取り寄せて確かめるこ,,,,とは例外であるところ本件監査ではD大が所持する見積書納品書鑑定評価書等から現物寄附物品の収入計上価額の妥当性について確認することができたのであるから,寄附者が現物寄附に係る物品の購入先から発行を受けた領収書を確認することまで求められるものではなく,手続一覧表において,領収書が確認すべき資料として挙げられているのも,例示列挙の趣旨である。 なお,本件財産目録に記載された現物寄附については,事後的に,D,,大と寄附者との共謀による架空のものがあったことが判明したが仮に,,,参加人Bが られているのも,例示列挙の趣旨である。 なお,本件財産目録に記載された現物寄附については,事後的に,D,,大と寄附者との共謀による架空のものがあったことが判明したが仮に,,,参加人Bが本件監査に際し寄附者に対し領収書を徴求したとしてもD大又は寄附者によって領収書が偽造された可能性が高く,このような共謀による架空の現物寄附については,正当な注意を払っても,これを発見することは不可能である。 b車両等の登録制度が設けられている物品に係る現物寄附の監査手続としては,公示方法の確認よりも,現物寄附が手続的,実体的に有効になされているかどうかと現物の存在を確かめることが重要であり,手続一覧表においても,車検証等の登録名義の確認は求められていない。 参加人Bは,スクールバス2台についても,寄附申込書,寄附者の印鑑証明書及び見積書を確認するとともに,現物の実査をしており,手続一覧表で求められている以上の監査手続をとった。 - 12 -(ウ)土地売却益に係る監査手続について参加人Bは,本件土地の転売による土地売却益について,購入時及び売却時の売買契約書,県からの林地開発許可変更申請書,購入及び売却についての理事会議事録並びに購入及び売却に伴う入金及び出金が記帳された預金通帳を確認するとともに,購入時には,現地を視察し,売却時には,D大から高い価格で転売できた事情について説明を受け,さらに,転売価格に相当する金額が転売先から入金された事実も確認しており,手続一覧表で求められている以上の監査手続をとった。 なお,本件土地の転売価格は,仙台市内の土地の相場として妥当なものであった。 (エ)現金寄附に係る監査手続について参加人Bは,現金寄附について,①寄附の内容の把握として,現金寄附の募集要項,募金趣意書の閲覧,②寄附を受ける側の機関決定 地の相場として妥当なものであった。 (エ)現金寄附に係る監査手続について参加人Bは,現金寄附について,①寄附の内容の把握として,現金寄附の募集要項,募金趣意書の閲覧,②寄附を受ける側の機関決定として,D大の理事会議事録,評議員会議事録の閲覧,③寄附者の意思確認として,寄附申込書原本,寄附者の印鑑証明書原本,寄附者の社内稟議書,決算書との照合,④寄附者の資力の確認として,寄附者の決算書類,確定申告書控の確認,⑤寄附金の入金の確認として,通帳及び仕訳日記帳(総勘定元帳)との照合,⑥寄附金の受領の確認として,領収書控の照合と特定公益増進法人証明書原本の閲覧といった監査手続をとり,最終的には,寄附者一覧表,寄附申込書及び総勘定元帳の現金寄附(特別寄附金)に関する部分の各合計金額が現金寄附の総額となることについて照合し,金額が合致することを確認した。 なお,上記のような監査手続がとられた場合,さらに,寄附者に対し質問することは不要である。 (オ)預金残高及び借入金残高に係る監査手続について参加人Bは,①平成9年8月20日現在の銀行別預金残高表と同日現在- 13 -の残高試算表を照合して両表の預金残高が一致していることを確かめた上,,,で②両表に計上された預金残高を金融機関発行の残高証明書と照合し③金融機関から直接入手した残高確認書により預金残高を確認し,④財産目録と照合することによって,現金寄附の合計額を超える現金が預金残高として実在することを確認した。 ,,,,,ところで監査人が直接金融機関に対し残高確認をする場合には金融機関の守秘義務解除のため,監査対象者の記名及び届出印が押捺された残高確認依頼書が必要となるが,参加人Bは,D大に対し,残高確認依頼書を,取引のある金融機関の数(5行6支店)に誤記を想定した余 金融機関の守秘義務解除のため,監査対象者の記名及び届出印が押捺された残高確認依頼書が必要となるが,参加人Bは,D大に対し,残高確認依頼書を,取引のある金融機関の数(5行6支店)に誤記を想定した余部を加えた数だけ交付して,記名押印を求めたが,誤記を想定して余部を交付することに特段の問題はないし,残高確認依頼書は単純な複写式の用紙であり,印刷業者等に依頼すれば容易に作成が可能なものであるから,余部の残高確認依頼書を交付したことについて,参加人Bに過失はない。 また,参加人Bは,D大から記名押印された残高確認依頼書の交付を受けた上,自ら,直接,金融機関に対し,返信先をC監査法人とする返信用封筒を同封した残高確認依頼書を郵送して,C監査法人宛てに残高確認書を返送するよう依頼し,その後,金融機関から,C監査法人宛てに残高確認書が郵送されたのであるから,参加人Bに,金融機関の残高確認書を直接取得しなかった過失はない。 D大は,残高確認の過程において,金融機関から真実の残高確認書等を回収し,E銀行については,C監査法人から交付された残高確認依頼書等1綴りを利用し,銀行名,支店長名等の印章を偽造して内容虚偽の残高確認書を作成した上,これをC監査法人宛て郵送し,F銀行及びG銀行については,金融機関に依頼して,表の口座と裏の口座に分けて残高確認書の発行を受けて,表の口座についてのみC監査法人宛て郵送したようであるところ,参加人Bにおいて,金融機関が残高確認書を監査対象者たるD大- 14 -,,,に交付しD大がこれを偽造してC監査法人宛て郵送することあるいは金融機関がD大の求めに応じて,表の口座と裏の口座に分けて残高確認書を発行し,表の口座の残高確認書のみがC監査法人宛て郵送されることを予見,防止することはできない。 ,,,,なおD大 いは金融機関がD大の求めに応じて,表の口座と裏の口座に分けて残高確認書を発行し,表の口座の残高確認書のみがC監査法人宛て郵送されることを予見,防止することはできない。 ,,,,なおD大は現金寄附に係る金員について預金口座の振替をしたが参加人Bは,振替先の預金口座も含めて,残高証明書及び残高確認書を確認したし,D大から,預金口座の振替について,利率の有利な通知預金又は定期預金にするためである旨説明を受け,個々の振替が,同一銀行内で利率の有利な通知預金又は定期預金への移動であって,振替自体が不自然ではなく,現金が行方不明になっていないことを確認した。 (カ)金融庁の処分について金融庁の懲戒処分は,多分に行政監督上の政策的,指導的な観点からされたものであり,参加人らは,必要十分な監査を実施したという認識であったが,監督官庁である金融庁の行政監督上の指導を甘受したにすぎないのであって,このことから民事上の不法行為における過失が認められるわけではない。 (3)争点3参加人Bの過失と本件補助金支出との因果関係等の有無につい()てア原告らの主張(ア)予見可能性について我が国において,補助金なしに独立採算で経営が成り立っている大学が存在しないことは周知の事実であり,大学開設時に一定の補助金を受けることは誰しも認識又は予見でき,また,C監査法人は,これまで様々な学校法人の監査を担当した経験があり,担当した学校法人はすべて例外なく地方公共団体の補助金を受給していたところ,参加人Bは,C監査法人の代表社員として,このような補助金受給の事実を知悉してい- 15 -た。そして,D大が設置運営する3校の短期大学ないし専門学校もそれぞれ地方公共団体から補助金を受給していたところ,参加人Bはその旨が記載された計算書類を監査し 金受給の事実を知悉してい- 15 -た。そして,D大が設置運営する3校の短期大学ないし専門学校もそれぞれ地方公共団体から補助金を受給していたところ,参加人Bはその旨が記載された計算書類を監査したこともあったから,D大が四年制大学を開設した場合にも地方公共団体,取り分け,その所在地である仙台市から補助金を受給することも認識し,又は予見することが十分に可能であった。 (イ)因果関係について,,,D大は本件設置認可申請の際に架空の寄附金40億9500万円架空の現物寄附12億9016万6060円,架空の土地売却収入11億1000万円の合計64億9516万6060円を収納したものとして本件財産目録に計上していたのであり,これら架空の寄附金等の合計額は,資産総額217億9195万1700円の29.8パーセントを占めているのであって,D大の真の財務状況にかんがみれば,本件設置認可申請時に,本件認可基準を満たしていないことは明らかである。 また,参加人Bが,注意義務を尽くした本件監査を実施していれば,架空の現物寄附ないし現金寄附,架空の土地売却益が本件財産目録に記載されていること,及び,本件財産目録に計上されていない簿外債務があることを認識し,本件財産目録に不適正意見を述べることとなり,このような財産目録が提出された場合,大学設置認可がされる可能性は全くなく,負債率を考慮せずとも,大学設置認可を前提とする本件補助金が交付されることはなかったから,参加人Bの過失と本件補助金支出との間には因果関係がある。 (ウ)D大の故意行為の介在について一般に学校法人が地方公共団体に対し補助金申請をすることは通常容易に予見できる事項であり,参加人Bは,D大の財産目録を監査して,D大が設置運営する短期大学ないし専門学校が従前補助金を受給してい- に学校法人が地方公共団体に対し補助金申請をすることは通常容易に予見できる事項であり,参加人Bは,D大の財産目録を監査して,D大が設置運営する短期大学ないし専門学校が従前補助金を受給してい- 16 -たことを認識していたところ,かかる事情にかんがみれば,参加人Bの注意義務違反が違法な大学設置認可取得及びそれに引き続く補助金受給の危険性といった結果を惹起することは当然予想された以上,D大の故意による不法行為が介在しても,そのことによって因果関係が中断することはない。 イ参加人らの主張(ア)予見可能性について一般に,大学設置認可後に国から補助金を受けることはあっても,地方公共団体から補助金を受けることは稀であって,平成3年から平成7年までの間に新設された全国の58大学のうち,地方公共団体から補助金等の支援を受けたのは24校であり(補助金による支援に限れば,より少ないことになる,仙台市から本件要綱に基づく補助金が交付されたのも,D。)大1校のみである。 また,本件監査の対象は,あくまでも本件財産目録であり,D大の財源,,,や収支計画ではなく本件監査当時本件補助金は交付されていない以上当然,本件財産目録の資産の部には本件補助金は計上されていなかった。 さらに,D大が,本件設置認可後に,参加人Bが監査した本件財産目録を偽造して本件補助金の交付申請をすることなど,参加人Bが認識,予見し得べきもない。 したがって,本件監査当時,参加人Bが本件補助金の交付を認識,予見することはできなかったのであり,実際に,参加人Bが本件補助金の交付申請及びその支出を知ったのは,本件補助金が支出された平成11年4月よりも後のことであった。 (イ)因果関係について本件認可基準において,本件財産目録の記載が関係するのは負債率のみであり,原則としてこれ その支出を知ったのは,本件補助金が支出された平成11年4月よりも後のことであった。 (イ)因果関係について本件認可基準において,本件財産目録の記載が関係するのは負債率のみであり,原則としてこれが4分の1以下であることが必要とされていると- 17 -ころ,参加人Bが監査した本件財産目録上の負債率は11.5パーセントであり,仮に,原告らが主張する架空の現物寄附12億9016万6060円及び架空の土地売却益6億2700万円を考慮しても,本件財産目録の純資産額が19億1716万6060円減少し,負債率も12.6パーセントとわずか1.1パーセント上昇するにすぎず,本件認可基準は満たされていたのであるから,参加人Bが,本件監査当時,架空の現物寄附及び架空の土地売却益を指摘しても,結局,D大が指摘に応じて本件財産目録を修正し,参加人Bもこの修正によって適正意見を表明して,本件認可基準を満たす財産目録が提出されたことになる。 また,文部大臣は,本件設置認可申請がされた平成9年9月30日から約1年3か月にわたって,認可権者としての権限に基づき,D大から膨大な資料の提出を受け,さらに,現物寄附の実査をするなど,本件財産目録について独自に審査を実施し,その結果,平成10年12月22日に本件設置認可をしたのであって,文部大臣は,本件設置認可の約1年4か月も前の平成9年8月30日に作成された本件報告書に依拠して,本件設置認可をしたものではない。 したがって,参加人Bによる本件監査と,本件設置認可,ひいては,本件補助金支出との間に因果関係はない。 (ウ)D大の故意行為の介在についてD大は,本件設置認可後に,被告に対し,文部大臣に提出した本件財産目録とは異なる偽造した財産目録を提出して,補助金の交付請求をしたのであり,本件監査と本件補助金支出との間には, 意行為の介在についてD大は,本件設置認可後に,被告に対し,文部大臣に提出した本件財産目録とは異なる偽造した財産目録を提出して,補助金の交付請求をしたのであり,本件監査と本件補助金支出との間には,このような故意による不法行為が介在したから,両者の間の因果関係は中断した。 このような場合に,本件監査と本件補助金支出につき間接的な因果関係を認めると,本件設置認可後にD大がしたあらゆる不法行為について参加人らが責任を負うことになり著しく不当である。 - 18 -第3当裁判所の判断 争点1(本件監査請求の適法性)について住民監査請求においては,対象とする当該行為等を,他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,対象が特定の当該行為等であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば,これをもって足りるのであり,上記の程度を超えてまで当該行為等を個別的,具体的に摘示することを要するものではない。 これを本件監査請求についてみると,証拠(甲2ないし4)によれば,①本件監査請求に係る監査請求書には,請求の趣旨として,仙台市には,本件補助金の違法不当な支出により仙台市が被った損害につき,本件設置認可申請時から平成15年度までD大の理事及び監事の職にあった者,同期間D大に対する寄附の偽装や二重帳簿の作成に関与した職員,並びに,同期間D大の会計監査を担当していた参加人らに対し,本件補助金支出額相当額の損害賠償請求権が存在するところ,被告に対し,上記関係者に対し損害賠償請求するなど損害填補のため必要な措置を講ずるよう勧告することを求める旨記載されていたこと,②本件監査請求に係る 金支出額相当額の損害賠償請求権が存在するところ,被告に対し,上記関係者に対し損害賠償請求するなど損害填補のため必要な措置を講ずるよう勧告することを求める旨記載されていたこと,②本件監査請求に係る措置請求書には,仙台市の参加人らに対する損害賠償請求権について,参加人らは,本件設置認可申請が認可された場合,D大に本件補助金が支出されることを十分に予見し得た以上,認可が適法になされるよう財務書類を精査し,もって,違法な補助金支出を回避させることが可能であったにもかかわらず,これを怠り,違法に本件補助金を支出させた点に重大な過失が認められる旨記載されていたこと,③本件監査請求に係る措置請求書,,,には事実を証する書面として大学設置認可時の財産目録に架空の現金寄附現物寄附があったとするD大緊急調査委員会第一委員会の最終報告要旨,金融庁が,D大の設置認可申請時に文部大臣に提出した財務書類に重大な虚偽があ- 19 -ったのに虚偽はない旨証明した参加人らに過失があったとして,参加人らに対し懲戒処分ないし戒告処分をした旨の新聞記事等が添付されていたことの各事実が認められ,これらの事実に照らせば,参加人らに係る本件監査請求の対象について,本件財産目録に係る本件監査における参加人Bの過失を責任原因とする損害賠償請求権を行使しないことが怠る事実であることを監査委員が認識することができる程度に特定されていたというべきであるから,本件監査請求は対象の特定において欠けるところはなく,適法である。 争点2(本件監査における参加人Bの過失の有無)について(1)認定事実前提事実に証拠(甲11,13,18,19,丙1,26ないし40(枝番を含む,44,丙46の1ないし3の存在自体,証人B,文部科学省,。)株式会社K銀行,F銀行及びG銀行に対する調査嘱 認定事実前提事実に証拠(甲11,13,18,19,丙1,26ないし40(枝番を含む,44,丙46の1ないし3の存在自体,証人B,文部科学省,。)株式会社K銀行,F銀行及びG銀行に対する調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 アD大は,遅くともH短大の設置認可申請の準備をしていた平成4年ころから,取引関係のある金融機関に複数の口座を開設し,これらの口座を,文部省等に提出すべき財務書類を作成するに当たって計上する表の口座と計上しない裏の口座に分類し,裏の口座については表の口座とは異なる名義によって開設し,借入金,未払金等については,裏の口座を利用して取引し,真の財政状況を反映した総勘定元帳等の帳簿とは別に,裏の口座による取引については計上しない虚偽の帳簿を作成するなどして,上記短期大学の設置認可申請及び日本私立学校振興共済事業団に対する経常費補助金申請の際に,虚偽の帳簿に基づき作成した財務書類を提出していた。 イD大は,上記アの虚偽の帳簿に基づく財務書類の監査について,監査人,,から残高確認依頼書等1綴りの交付を受けていたため必要が生じる都度取引関係のあった金融機関に対し,口座ごとに監査人が指定した残高確認書に預金残高等の証明をするよう依頼し,発行を受けた残高確認書のうち- 20 -表の口座に係るもののみを監査人に提出していた。 D大は,表の口座と裏の口座で名義を使い分けていたため,容易に口座ごとの残高確認書の発行を受けることが可能であったが,表の口座と裏の口座とで名義が同一であったE銀行については,口座ごとに残高確認書を発行するよう依頼していた。 ウD大は,本件設置認可申請をする際,D大の真の財務状況では,本件認可基準を満たすことができないことから,融資金を寄附金収入によるもの,,と仮装 ごとに残高確認書を発行するよう依頼していた。 ウD大は,本件設置認可申請をする際,D大の真の財務状況では,本件認可基準を満たすことができないことから,融資金を寄附金収入によるもの,,と仮装するなどして虚偽の財産目録等の財務書類を作成しようと企図し少なくとも,以下のような経理操作をした。 (ア)平成9年2月28日,G銀行から10億円の証書貸付を受け,同年5月25日,上記の融資金を同行に開設した表の口座に寄附者名義で振込入金し,架空の現金寄附を装った。 (イ)平成9年6月16日,I建設からE銀行の裏の口座に借入金15億円の入金を受け,同日,これをE銀行の表の口座に寄附者名義で振込入金し,架空の現金寄附を装った。 (ウ)平成9年6月23日,I建設からE銀行の裏の口座に借入金10億円の入金を受け,同日,このうち5億円をE銀行の表の口座に寄附者名義で振込入金し,架空の現金寄附を装った。 (エ)平成9年6月24日から同月30日にかけて計10回にわたり,上記(ウ)の借入金残額5億円を,E銀行の表の口座に寄附者名義で振込入金し,架空の現金寄附を装った。 (オ)リースにより調達した物品の多くを,現物寄附により取得したものであるかのように装った。 (カ)本件土地の一部について,真実は売却された事実がないのに,借入金を原資に11億1000万円を売却代金として表の口座に入金し,売- 21 -却代金相当額から簿価を控除した額の資産売却収入があるかのように装った。 (キ)上記(ア)ないし(ウ)の負債を含む多額の負債を裏の口座で管理し,本件財産目録等の財務書類に計上しなかった。 エC監査法人は,D大が本件設置認可申請をするに当たり,D大が作成した財務書類の監査を受任し,参加人Bは,D大の平成9年8月20日現在の本件財産目録に係る本件監査を 等の財務書類に計上しなかった。 エC監査法人は,D大が本件設置認可申請をするに当たり,D大が作成した財務書類の監査を受任し,参加人Bは,D大の平成9年8月20日現在の本件財産目録に係る本件監査を実施したが,本件監査に際し,参加人Bがとった監査手続の概要は,以下のとおりである。 ,,(ア)参加人BはD大から提出された現物寄附に係る関係書類について①募集要項及び募金趣意書によって寄附の内容を把握し,②D大の理事会議事録及び評議員会議事録によって現物寄附の募集が権限ある機関の承認を得ていることを確認し,③現物寄附全件について寄附者一覧表と,,寄附申込書を照合し寄附申込書と寄附者の印鑑証明書の原本を照合し現物寄附のうち特に重要性が高いと判断したものについては,寄附者の社内稟議書及び決裁書を閲覧して寄附者の意思確認をした上,寄附者の決算書類及び所得証明により寄附者の資力を確認し,④寄附物品の金額が500万円以上のものについては実査をしてD大による寄附物品の受領を確かめ,⑤現物寄附全件について,見積書,納品書,鑑定評価等の価額の妥当性の根拠となる証憑書類を確認して寄附物品の収入計上価額の妥当性を検証した。 一方,参加人Bは,現物寄附に係る物品の収入計上価額の妥当性を検証するに当たって,寄附者が現物を購入した際の領収書による確認をせず,うちスクールバス2台については,自動車登録の所有名義がD大に移転していることを確認しなかった。 ,,(イ)参加人BはD大から提出された現金寄附に係る関係書類について- 22 -①募集要項及び募金趣意書によって寄附の内容を把握し,②D大の理事会議事録及び評議員会議事録によって,現金寄附の募集が権限ある機関の承認を得ていることを確認し,③現金寄附全件について寄附者一覧表と寄附申込書を照合し,概ね全件 って寄附の内容を把握し,②D大の理事会議事録及び評議員会議事録によって,現金寄附の募集が権限ある機関の承認を得ていることを確認し,③現金寄附全件について寄附者一覧表と寄附申込書を照合し,概ね全件について寄附申込書と寄附者の印鑑証明書の原本を照合し,現金寄附のうち特に重要性が高いと判断したものについては,寄附者の社内稟議書及び決裁書を閲覧して寄附者の意思確認をした上,寄附者の決算書類及び所得証明により寄附者の資力を確認し,④寄附額が1000万円以上のものについてはD大の預金通帳に寄附者名で振込入金が記帳されていることを確かめ,⑤現金寄附全件について,総勘定元帳に寄附金額及び寄附者名が記載されていることを確認し,⑥寄附額が1000万円以上のものについては,D大が寄附者に対し発行した領収書の控えがあることを確認し,⑦寄附者一覧表の合計金額,寄附申込書の合計金額,総勘定元帳の現金寄附に関する部分の合計金額が現金寄附の総額となり,金額が合致することを確認した。 (ウ)参加人Bは,本件財産目録に係る平成9年8月20日現在のD大の預金残高及び借入金残高を確認するに当たり,D大に対し,金融機関に送付すべき残高確認依頼書等1綴りを交付し,D大に残高確認書を取得するよう求め,直接,金融機関に対し,残高確認の依頼をしなかった。 ,,,(エ)参加人BはD大から本件土地の購入時及び売却時の売買契約書本件土地の購入及び売却についてのD大の理事会議事録並びに本件土地の購入及び売却に伴う入金及び出金が記帳された預金通帳の提出を受け,売却が所定の手続を踏んで行われたこと,売却収入と帳簿価額との差額のみが消費収入項目に計上されたことを確認し,購入時に,現地を視察し,売却時に,D大から,売却価格の妥当性について,本件土地は旧所有者の都合もあってD大にとっては たこと,売却収入と帳簿価額との差額のみが消費収入項目に計上されたことを確認し,購入時に,現地を視察し,売却時に,D大から,売却価格の妥当性について,本件土地は旧所有者の都合もあってD大にとっては安く購入できた大規模な土地で,交通量の多い環状線に面した場所にあり,その一部であるグラウン- 23 -ド用の土地の余剰部分を転売先に対し有利な価格で売却できた旨説明を受けた。 (2)事実認定の補足説明上記(1)エ(ウ)の事実認定について,補足して説明する。 まず,D大における財務部門の責任者を務めていたJは,本件補助金の不正受給を含む補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反被疑事件について,捜査機関に対し,本件監査に際し,理事長の指示に基づき,以前のH短大の設置認可申請に係る監査の際と同様に,C監査法人から受領していた残高確認依頼書等1綴りを利用して,参加人BないしC監査法人が指定する残高確認書に金融機関から表の口座に関する預金残高等の証明を得てこれをC監査法人に提出したが,E銀行については,平成9年5月に総会屋に対する利益供与事件が発覚したこともあり,表の口座のみの残高確認書の発行を拒否されたため,表の口座と裏の口座を併せた残高確認書の発行を受けた上,銀行名,支店長名等の印章を偽造して,これら偽造印を使用し,真実は,E銀行からの貸付金残高及び当座貸越残高が35億9992万円であるのに,貸付金残高及び当座貸越残高が該当なしと記載された残高確認書を偽造し,C監査法人に提出した旨供述する(甲18,19。 )Jの供述は,本件監査により不正経理が発覚しないための方法につき具体的に言及するものであって,その信用性を疑わせるような事情は特段うかがえず,参加人らが,E銀行仙台支店,F銀行仙台支店及びG銀行仙台支店から直接残高確認書の送付を受 が発覚しないための方法につき具体的に言及するものであって,その信用性を疑わせるような事情は特段うかがえず,参加人らが,E銀行仙台支店,F銀行仙台支店及びG銀行仙台支店から直接残高確認書の送付を受けたと主張する返信用封筒(丙46の1ないし3)には,いずれも差出人の記載がないところ,一般に,金融機関が監査人に対し残高確認書等の重要書類について郵送する場合に,差出人を記載しないことは想定し難く,このような事態がそれぞれ独立した3つの金融機関との関係で同時に生じることは不自然であることにも裏付けられている。 参加人らは,参加人BがD大に対し残高確認依頼書等1綴りを交付してい- 24 -,,,,たことは自認しつつも届出印の押捺等を得た後は参加人B自らが直接金融機関に対し残高確認依頼書,返信用封筒等を送付したが,E銀行については,D大が,金融機関から残高確認書等を回収した上,残高確認書を偽造して,C監査法人宛て郵送し,F銀行及びG銀行については,表の口座と裏の口座に分けて残高確認書を発行するよう求め,表の口座の残高確認書のみをC監査法人宛て郵送したようである旨主張し,参加人Bも証人としてこれに沿う証言をする(丙45同旨)けれども,参加人Bは残高確認の関係でD大まで直接赴いた旨証言しており,そうであれば,届出印の押捺等を得るだけのために残高確認依頼書等1綴りを交付しておく必要性自体に疑問がある(なお,参加人Bは,監査対象者に対し残高確認依頼書等1綴りを預けておくことは基本的にはあってはならないとも証言する上一般に複数の金。),,融機関が揃いも揃って監査人から直接送付を求められた残高確認書を監査対象者に交付することは想定し難く(なお,全国銀行協会連合会は,平成4年1月16日,日本公認会計士協会に対し,監査人による銀行取引 融機関が揃いも揃って監査人から直接送付を求められた残高確認書を監査対象者に交付することは想定し難く(なお,全国銀行協会連合会は,平成4年1月16日,日本公認会計士協会に対し,監査人による銀行取引の確認について,銀行が預金,貸付金等の残高の証明をして,直接監査人に送付する取扱いである旨記載した文書を発している丙44とりわけE銀行につ()。),,,,,いてはJが供述するところによればD大が残高確認書を偽造した契機はE銀行が表の口座と裏の口座とを分けて残高確認書を発行することを拒絶したことにあると認められるのであって,残高確認書の発行に関してこのような厳格な態度を示したE銀行が,監査人である参加人BないしC監査法人からの依頼にもかかわらず,監査対象者であるD大の求めに応じて,残高確認書を交付するとは,特に考え難いといわなければならない。 なお,参加人らに対する金融庁の懲戒処分においては,C監査法人ないし参加人監査法人は,平成11年度から平成13年度までのD大に関する私立学校振興助成法監査の際,残高確認等のための取引先銀行に対する確認状の投函をD大に依頼していた事実が認定された(甲6。 )- 25 -以上のような証拠関係にかんがみると,参加人Bは,本件監査に際し,D大に残高確認依頼書等1綴りを交付し,D大を介して,金融機関に残高確認の依頼をすることとしたため,D大において,これを利用して本件財産目録の記載に沿った不実の残高確認書がC監査法人に郵送されるよう工作した事実が認められ,これに反する参加人Bの証言等は採用できない。 (3)本件監査当時における監査基準についてア公認会計士は,財産目録等の財務書類の監査及び証明を業務とする者であるが,監査及び会計の専門家として,独立した立場において,財務書類その他の財務に関する )本件監査当時における監査基準についてア公認会計士は,財産目録等の財務書類の監査及び証明を業務とする者であるが,監査及び会計の専門家として,独立した立場において,財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより,会社等の公正な事業活動,投資者及び債権者の保護等を図り,もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする(平成15年法律第67号による改正後の公認会計士法が,公認会計士の使命につき同旨の規定を設けたのは,公認会計士の監査証明業務の重要性を確認した趣旨と解される。 。)このような公認会計士の専門家としての地位,社会的使命等にかんがみれば,公認会計士は,監査証明業務を遂行するに当たり,監査当時において一般に公正妥当と認められる監査基準に準拠し,必要と認めた監査手続により監査を実施する注意義務を負っているというべきである。 なお,会計監査の第一次的な目的は,監査対象者の財務書類が適法かつ適正に作成されているか否かを審査するところにあり,捜査機関のような強制的な捜索差押権限等は有していないから,監査対象者の違法ないし不正の発見を主たる目的とすることはできないが,他方,財務書類に虚偽の記載があると疑いが生じた場合には,その虚偽記載の有無も監査の対象となるというべきであり,監査人としては,監査対象者の監査上の危険を検証して,財務書類に不自然な兆候が現れた場合は,不正のおそれも視野に入れて,慎重な監査を行うべきである。 イそして,証拠(丙14ないし16)によれば,本件監査当時,日本公認- 26 -会計士協会は,学校法人の寄附行為等の認可申請に係る財産目録監査について,財産目録監査取扱いを,学校法人の監査手続の具体的な指針について,手続一覧表を,手続一覧表中の寄附金収入監査手続に関して留意すべき事項について寄付 寄附行為等の認可申請に係る財産目録監査について,財産目録監査取扱いを,学校法人の監査手続の具体的な指針について,手続一覧表を,手続一覧表中の寄附金収入監査手続に関して留意すべき事項について寄付金収入に関する会計処理及び監査上の取扱いについ,「て(Ⅰ(昭和49年3月20日学校会計委員会報告第15号。以下「寄)」附金収入監査取扱いというをそれぞれ定めていたことが認められこ」。),れらが本件監査当時における一般に公正妥当と認められる監査基準であったというべきであるが,手続一覧表(丙15)が定める監査手続の概要は以下のとおりである。 (ア)学校法人の監査を実施するに当たって,監査人は自己の監査意見を保証するに足る十分な証拠を入手できるよう,あらかじめ学校法人の実情に適した監査計画を設定して,監査手続の適時性と秩序性,監査対象の,,重要性と相対的危険性その他の諸要件を十分に考慮しなければならずいかなる監査手続を選択し,それをどの程度適用するかは,監査人が職業的専門家として自己の判断において決定しなければならない。 また,手続一覧表は,学校法人の監査に当たって採用される一般的,共通的な手続をリスト・アップしたものであって,必ずしも必要かつ十分な監査手続のすべてを列挙したものではなく,したがって,実際の監査に当たっては,監査人は学校法人の規模,会計制度の運用状況,内部統制の信頼性の程度等を総合的に勘案し,手続一覧表に記載された手続を取捨選択し,又はこれを補充し監査を行う必要がある。 (イ)手続一覧表においては特に必要のある場合を除き要点及び留,「」「意事項」において,①総勘定元帳,各種補助簿,試算表,決算書等の突,,,,,合②その他の計算突合証憑突合帳簿突合質問の記載等を省略し「資 場合を除き要点及び留,「」「意事項」において,①総勘定元帳,各種補助簿,試算表,決算書等の突,,,,,合②その他の計算突合証憑突合帳簿突合質問の記載等を省略し「資料」において,特に必要のある場合を除き,総勘定元帳,各種補助- 27 -簿,入金伝票,出金伝票,振替伝票,日計表,月計表,各種統計表,当年度及び過年度の決算書,当年度及び過年度の予算書の記載を省略している。 (ウ)寄附金収入の監査手続について要点として①寄附金収入は所,「」,定の手続によって洩れなく計上されているか,②寄附金収入に算入してはならないものが混入していないかの2点が挙げられ留意事項とし,「」て,①寄附金の募集から寄附金受領までの関係書類,証拠資料と寄附金受入記帳とを突合する,②寄附金収入監査取扱いに留意する等の7点が挙げられ資料として寄附取扱規程寄附申込書納入票寄附金,「」,,,,受領書控,理事会議事録,評議員会議事録,寄附募集趣意書,寄附者名簿等が挙げられている。 なお,寄附金収入監査取扱いにおいては,監査人は,特に,①寄附金募集は,権限ある機関の承認を受けて行われているか,②寄附金募集に際し募集要項等が作成され,寄附金の使途,募集目的等が明確にされているか,③寄附金の申込み及び払込みは,すべて所定の様式によって申込人から直接に学校法人又は後援団体等へされているかの各事項について留意することとされている。 (エ)資産売却収入の監査手続について要点として資産売却収入に,「」,ついては確実な証拠に基づき総額が適正に計上されているか等の2点が挙げられ留意事項として売却は所定の手続を踏んで行われている,「」,ことを,その決定,承認から売却金額を受領するまでの関係書 いては確実な証拠に基づき総額が適正に計上されているか等の2点が挙げられ留意事項として売却は所定の手続を踏んで行われている,「」,ことを,その決定,承認から売却金額を受領するまでの関係書類によっ,,,て確かめるなお臨時巨額のものは特に注意する等の2点が挙げられ「資料」として,固定資産管理規程,固定資産台帳,有価証券台帳,理事会議事録,評議員会議事録,稟議書,契約書等が挙げられている。 ,「」,,(オ)固定資産の監査手続について要点として①固定資産の増加額減少額及び残高は妥当か,②権利保全,財産保全に必要な措置が適正に- 28 -行われているか等の6点が挙げられ留意事項として①現物寄附と,「」,して取得した資産が適正に計上されていることを確かめる,②土地,建物等一覧表と権利証,登録簿謄本,土地所在図,実測図,売買契約書及び公図とを照合し,原則として現場視察し,貸借対照表に計上されているすべての土地,建物が実在していることを確かめる,③土地,建物以外の固定資産についても固定資産台帳等と照合し,実在していることを確かめる,④所有権移転登記の行われていない土地,建物については,その理由を吟味し,売買契約書,その他の関係書類を閲覧し,所有権の有無を確かめる等の32点が挙げられ資料として権利証登記簿,「」,,謄本,土地所在図,固定資産台帳,見積書,納品書,仕様書,評価鑑定書等が挙げられている。 (カ)流動資産の監査手続について要点として現金及び預金の残高,「」,は妥当か等の3点が挙げられ留意事項として預金については預金,「」,先に対し確認を行う等の18点が挙げられ資料として預金残高証,「」,明書等が挙げられている。 (キ)固定負債に対する監査手続に げられ留意事項として預金については預金,「」,先に対し確認を行う等の18点が挙げられ資料として預金残高証,「」,明書等が挙げられている。 (キ)固定負債に対する監査手続について要点として借入金はすべ,「」,,「」,て洩れなく計上されているか等の3点が挙げられ留意事項として借入金については借入先に対し確認を行う,②勘定分析を行い,さらに責任者に対する質問等により,すべての借入金が計上されていることを確かめる等の12点が挙げられ資料として残高証明書残高確認,「」,,書等が挙げられている。 (4)参加人Bの過失の有無についてア現物寄附に係る監査について手続一覧表では,固定資産の監査手続について,固定資産の増加額,減少額及び残高は妥当か,権利保全,財産保全に必要な措置が適正に行われているかが要点として挙げられ留意事項として土地建物等一「」,「」,,- 29 -覧表と権利証,登記簿謄本,土地所在図,実測図,売買契約書及び公図とを照合し,原則として現場視察し,貸借対照表に計上されているすべての土地,建物が実在していることを確かめ,所有権移転登記の行われていない土地,建物については,その理由を吟味し,売買契約書その他の関係書類を閲覧し,所有権の有無を確かめることとされているのであるから,土地,建物については,確実な所有権取得を確認する観点から,対抗要件である所有権移転登記の有無を確認することが重要な監査手続と位置付けられているというべきところ,車両については,通常の動産とは異なり,自動車登録制度が設けられ,自動車登録を経なければ第三者に所有権の取得を対抗できないとされていること(道路運送車両法5条)のほか,本件財産目録上,現物寄附がされたとされるスクー 常の動産とは異なり,自動車登録制度が設けられ,自動車登録を経なければ第三者に所有権の取得を対抗できないとされていること(道路運送車両法5条)のほか,本件財産目録上,現物寄附がされたとされるスクールバス2台の価額が計4158万円と寡額とはいい難いことからすれば,参加人Bは,本件財産目録の監査に当たり,スクールバス2台については,土地,建物に準じて,確実な所有権取得を確認するため,自動車登録を確認する義務を負っていたというべきである(車両に関する自動車登録の確認自体は,手続一覧表には明記されていないが,手続一覧表の記載の監査手続が必要十分なものではなく,必要に応じて,取捨選択し,補充しなければならないことは,手続一覧表に明記されている。 。)しかるに参加人Bは上記(1)エ(ア)に認定のとおりスクールバス2,,,台について自動車登録による所有名義の確認をしなかったというのであるから,参加人Bには過失があるというべきである。 なおその余の現物寄附については上記(1)エ(ア)に認定の事実によれ,,ば,参加人Bは,手続一覧表に準拠した監査手続をしており,このような監査手続が実施されれば,これらの書類に不正な経理操作をうかがわせる事情が認められない限り,原告らが主張するような確認をしなくとも,書類から認められる現物寄附があったとの心証を抱くことに合理性があると- 30 -いい得るところ,参加人Bがした監査手続によって,不正な経理操作をうかがわせる事情が判明した事実を認めるべき証拠はないから,参加人Bに過失があるとはいい難い。 イ土地売却益に係る監査手続について手続一覧表において,資産売却収入の監査手続については,売却先への所有権移転登記の確認及び土地売却益の妥当性は「要点」として挙げられておらず,しかも,土地取引は相 土地売却益に係る監査手続について手続一覧表において,資産売却収入の監査手続については,売却先への所有権移転登記の確認及び土地売却益の妥当性は「要点」として挙げられておらず,しかも,土地取引は相対取引で代金は当事者間の交渉で定まるものであって,売却代金額が相当か否かは一概に判断できるものではないから,監査においては,購入及び売却それぞれについて,代金相当額の支出及び収入が計上されているか,土地の帳簿価額と売却代金との差額が収,,支として計上されているかが重要であると考えられるところ参加人Bは上記(1)エ(エ)に認定のとおり本件土地の一部の売却代金について買主名,義による入金がされていること等を確認した上,D大から本件土地の一部を購入時よりも高額で売却できた理由についても一応聴取したのであるから,本件監査で実施した以上の監査手続をとらなかったことをもって,参加人Bの過失があったということはできない。 ウ現金寄附に係る監査手続について上記(1)エ(ア)に認定の事実によれば参加人Bは現金寄附につき預,,,金残高の確認方法の点はさておき,手続一覧表に準拠した監査手続をしており,このような監査手続が実施されれば,これらの書類に不正な経理操作をうかがわせる事情が認められない限り,原告らが主張するような確認をしなくとも,書類から認められる現金寄附があったとの心証を抱くことに合理性があるといい得るところ,参加人Bがした監査手続によって,不正な経理操作をうかがわせる事情が判明した事実を認めるべき証拠はないから,参加人Bに過失があるとはいい難い。 エ預金残高及び借入金残高に係る監査手続について- 31 -参加人Bは預金残高及び借入金残高の確認につき上記(1)エ(ウ)に認,,定のとおり,手続一覧表が定める監査手続に反して い難い。 エ預金残高及び借入金残高に係る監査手続について- 31 -参加人Bは預金残高及び借入金残高の確認につき上記(1)エ(ウ)に認,,定のとおり,手続一覧表が定める監査手続に反して,D大に残高確認依頼書等1綴りを交付して,D大を介して金融機関に対し残高確認依頼をしたのであるから,参加人Bは,現金寄附の監査手続において,過失があったというべきである。 オ小括以上によれば,参加人Bは,本件監査に当たり,①現物寄附に係るスクールバス2台について,自動車登録の確認を怠ったこと,②直接,金融機関に対し残高確認依頼をしなかったことにつき過失があったというべきである。 争点3(参加人Bの過失と本件補助金支出との因果関係等の有無)について(1) 証拠 甲11 によれば①D大には平成9年8月(,,,),,20日現在で,少なくとも,E銀行に対し35億9992万円,G銀行に対し約9億円,I建設に対し25億円の借入金債務があったが,D大は,これら借入金を含む多額の負債を簿外債務として本件財産目録を作成したこと,②本件設置認可申請の際の寄附者一覧には,114件,合計49億8480万円の現金寄附,51件,合計16億1674万円の現物寄附がされた旨の記載があったが,これらのうち,現金寄附については24件,計40億9500万円,現物寄附については30件,合計12億9016万6060円が架空のものであったこと,③本件設置認可申請に際し必要となる大学校舎等の建設工事代金の支払について,D大にはI建設に対する未払があったこと平成9年3月31日現在で22億3136万円④本件土地の一部の売却(),については,売却代金相当額を収入に計上することによって大学に相当の運営資金が存在することを装うための実態を伴わない こと平成9年3月31日現在で22億3136万円④本件土地の一部の売却(),については,売却代金相当額を収入に計上することによって大学に相当の運営資金が存在することを装うための実態を伴わない売却であったことの各事実が認められ,これらの事実に照らせば,本件設置認可申請時におけるD大の真の財務状況は,本件認可基準を到底満たすものではなかったことが明ら- 32 -かである。 (2)ところで上記2のとおり参加人Bは本件監査に当たり①現物寄附,,,,,,,に係るスクールバス2台について自動車登録の確認を怠ったこと②直接金融機関に対し残高確認依頼をしなかったことにつき過失があったというべ,,,,きであるが参加人Bが直接金融機関に対し残高確認依頼をしていれば少なくとも,E銀行に対する借入金35億9992万円が簿外債務となっていたことが判明したことは容易に推測でき,本件財産目録上,D大の資産総額は約217億9195万1700円,負債総額は25億0325万9586円であったこと(丙1)からすると,E銀行に対する簿外債務を本件財産目録に計上しただけでも,D大の負債率は28パーセントを超え((2,503,259,586 +3,599,920,000) ÷ 21,791,951,700 ≒28.0066本件認可基準),を満たさないこととなるし,その点をさておくとしても,参加人Bが多額の簿外債務を認識するとともに,自動車登録を確認することによりスクールバス2台の現物寄附が架空のものであることを認識するに至れば,監査人として,本件財産目録を適正なものとするようD大に指示するだけでなく,このような多額の簿外債務があり,架空の現物寄附がされた原因ないし理由につきD大に質問し,本件財産目録に記載された他の事項についても て,本件財産目録を適正なものとするようD大に指示するだけでなく,このような多額の簿外債務があり,架空の現物寄附がされた原因ないし理由につきD大に質問し,本件財産目録に記載された他の事項についても,不正な経理操作があり得ることを疑って,通常よりも慎重な監査手続をとることとなり,それによって,D大による他の不正経理の全部ないし一部が発覚し,参加人Bが本件財産目録につき不適正との意見を表明し,あるいは,本件財産目録を補正して本件認可基準を満たすことも困難になったことを合理的に推認でき,すると,本件設置認可を前提とした本件補助金の支出も当然にされなかったということができる。 なお,参加人らは,文部大臣が独自に審査した上で本件設置認可がされたから,本件監査と本件設置認可との間には因果関係がない旨主張するが,本件設置認可は本件報告書が添付された本件財産目録を基礎資料とする審査に- 33 -基づくものである(文部科学省に対する調査嘱託の結果)から,本件財産目録を本件認可基準に適合するよう補正できなければ,本件設置認可がされなかったことは明らかである。 ,(,,,),(3)そして 証拠 甲8の2丙4 及び弁論の全趣旨によれば①一般に,学校法人に対し国庫補助金又は地方公共団体補助金が支出されるのが通例であり,手続一覧表にも,独立の監査手続として,補助金収入に関する監査手続が定められていること,②参加人Bは,平成8年度のD大の資金収支計算書等の監査を担当したことがあるところ,D大は,同年度に,国庫補助金収入3855万8000円,地方公共団体補助金収入3038万5,,528円を計上していたことの各事実が認められこれらの事実に照らせば参加人Bは,本件設置認可があれば,D大が何らかの国庫補助金又は地方公,,共団体補助 地方公共団体補助金収入3038万5,,528円を計上していたことの各事実が認められこれらの事実に照らせば参加人Bは,本件設置認可があれば,D大が何らかの国庫補助金又は地方公,,共団体補助金の交付を受けることを当然予見し得たというべきであり仮に参加人Bが本件補助金自体についてその申請及び交付を具体的に予見していなかったとしても,参加人Bの過失と本件補助金支出との間の因果関係が否定されるものではない。 (4)このほか参加人らは本件監査と本件補助金支出との間に本件財産目,,,録を偽造した財産目録を提出して本件補助金の交付請求をするというD大の故意による不法行為が介在したから,両者の間の因果関係は中断した旨主張し,確かに,本件財産目録と被告に提出された財産目録とには一部相違がある(丙1,2,9)が,本件補助金は,D大が四年制大学の設置に要する経費に充てるとして本件交付申請をし,概算額で交付決定がされたことに端を発するものであり,参加人らが故意行為と指摘するD大の本件補助金の交付請求は,不正経理を隠蔽した四年制大学開設へ向けたD大の一連の不正行為の一貫として,本件交付申請等の延長線上でされたものであって,予期せざる第三者の故意行為の介入とは異なるから,本件監査においてD大の不正経理の一端である本件財産目録の問題点を看過した参加人Bの過失と本件補助- 34 -金支出との間の因果関係が中断されるとは到底いい難く,このように解しても,参加人らが,D大が本件設置認可後にしたあらゆる不法行為につき責任を負うことにはならないことは明らかである。 結論 以上によれば,原告らの請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 仙台地方裁判所第2民事部裁判長裁判官畑一郎裁判官廣瀬孝裁判官遠藤啓 ある。 結論 以上によれば、原告らの請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 仙台地方裁判所第2民事部裁判長裁判官畑一郎裁判官廣瀬孝裁判官遠藤啓佑

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