平成15(行ウ)6 不動産差押処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年1月27日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,982 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 原告(請求の趣旨)(1) 被告が原告に対し,平成14年8月6日付けで別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件各土地」という。)についてした差押え(以下「本件差押処分」という。)を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の骨子(1) 被告は,原告に対し,本件各土地に係る平成5年度から平成9年度までの各年度分の特別土地保有税に関する課税処分(以下「本件課税処分」という。)をしたが,原告が指定納期限までに特別土地保有税等を納付しなかったので,本件各土地を差し押さえた。 (2) 本件は,原告が,被告に対し,本件課税処分が違法であると主張して,本件差押処分の取消しを求める事案である。 2 前提となる事実(末尾括弧内に証拠の記載がなければ,当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告の本件各土地の所有権取得原告は,平成元年8月10日ころ,本件各土地の所有権を取得した(乙7の1)。 (2) 本件課税処分等ア申告書の不提出原告は,神戸市北区長に対し,本件各土地に係る平成5年度から平成9年度までの各年度分の特別土地保有税に係る申告書を,地方税法(以下「法」という。)で定められた提出期限までに提出しなかった(乙6)。 イ本件課税処分そこで,被告は,平成10年1月14日付けで,法 地保有税に係る申告書を,地方税法(以下「法」という。)で定められた提出期限までに提出しなかった(乙6)。 イ本件課税処分そこで,被告は,平成10年1月14日付けで,法606条2項に基づき,本件各土地に係る平成5年度から平成9年度までの各年度分の特別土地保有税の課税標準額及び税額,並びに法609条2項により徴収すべき不申告加算金額を次のとおり決定し(本件課税処分),指定納期限を同年3月4日として,原告に対し,同年2月4日付けで,平成5年度ないし平成8年度相当分及び平成9年度分の特別土地保有税の各決定通知書を送付した(乙5の1~5)。 (ア) 課税標準額各年度分とも3億2754万円(イ) 税額各年度分とも458万5100円(ウ) 不申告加算金額各年度分とも68万7700円ウ異議申立て等(ア) 原告は,本件課税処分を不服として,被告に対し,平成10年4月7日付けで異議の申立てをしたが,被告は,平成11年8月10日付けで,これを棄却する旨の決定をし,同月11日,同決定書謄本は原告に送達された(乙7の1・2)。 (イ) そして,原告は,本件課税処分の取消しを求める訴えを提起しなかった。 (3) 本件差押処分等ア特別土地保有税等の不納付ところが,原告は,指定納期限である平成10年3月4日までに,本件課税処分に係る特別土地保有税及び不申告加算金並びに延滞金を納付しなかった。 イ本件差押処分そこで,被告は,平成14年8月6日付けで,本件各土地を差し押さえ(本件差押処分),原告に対し,同日付で差押書を送付した(乙2)。 かった。 イ本件差押処分そこで,被告は,平成14年8月6日付けで,本件各土地を差し押さえ(本件差押処分),原告に対し,同日付で差押書を送付した(乙2)。 ウ異議申立て及び本件訴訟の提起(ア) すると,原告は,本件差押処分を不服として,被告に対し,平成14年10月5日付けで異議の申立てをしたが,被告は,同年12月11日付けでこれを棄却する旨の決定をし,そのころ,同決定書謄本は原告に送達された(乙2)。 (イ) そこで,原告は,平成15年1月28日,本件差押処分の取消しを求めて本件訴えを提起した。 3 争点本件の争点は,抽象的には本件差押処分の違法性の有無であるが,具体的には次の各点である。 (1) 本件課税処分の違法性の有無及びその程度(2) 本件差押処分に本件課税処分の違法性が承継されるか。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 争点(1)(本件課税処分の違法性)について本件課税処分は,次のとおり,違法である。 ア特別土地保有税の立法目的は,いわゆる投機目的での土地取得を可及的に防止しようとするものであるが,原告が本件各土地を取得した目的は,投機目的ではなく,飲食店舗を開設するためのものであった。 イにもかかわらず,原告が本件各土地で飲食店舗を開設するに至らなかったのは,次のとおり,専ら被告の対応の拙さを原因とするものである。 (ア) 原告は,本件各土地とその隣接する河川敷を併せて開発することを考えていたため,平成元年6月10日付けで,被告に対し,同河川敷の払下げ申請を行ったが,被告は,平成4年5月1日に至るまで,その認可を行わなかった。 (イ) 本件各土地は,原告 発することを考えていたため,平成元年6月10日付けで,被告に対し,同河川敷の払下げ申請を行ったが,被告は,平成4年5月1日に至るまで,その認可を行わなかった。 (イ) 本件各土地は,原告による開発準備中,同土地の前を走る県道神戸三田線の拡幅計画により,その一部が収用の対象となる予定となった。 そこで,原告は,被告に対し,再三にわたり土地収用及び拡幅工事の時期,規模,工事期間等を明らかにするよう求めたが,被告はこれを一向に明らかにしなかった。 このように,店舗営業に大きく影響を及ぼす工事期間や収用部分の範囲等が明らかにされなかったので,原告としては,巨額の資本を投下して店舗営業を開始することができなかった。 ウ以上のとおり,本件各土地で予定していた飲食店舗の開設が実現されなかった原因が,専ら被告の対応の拙さにある本件では,法603条の2第1項の適用により,原告の納税義務が免除されるべきであり,本件各土地について特別土地保有税を課した本件課税処分は,法の適用を誤ったものであり,違法である。 (2) 争点(2)(違法性の承継)についてア課税処分の違法性は,当然に滞納処分に承継されると解すべきである。 その理由は,次のとおりである。 (ア) 課税処分と滞納処分は,いずれも徴税の手続としてなされる処分である。 (イ) 徴税は,行政の根幹にかかわり広く国民の理解と納得を得て行われるべきものであるから,滞納処分に対する異議申立手続において課税処分の瑕疵の有無を検討することにより,国民に徴税に対する異議申立ての機会を可及的に保障すべきである。 イ仮に,上記アのとおり違法性の承継が原則として認められないとしても,課税処 税処分の瑕疵の有無を検討することにより,国民に徴税に対する異議申立ての機会を可及的に保障すべきである。 イ仮に,上記アのとおり違法性の承継が原則として認められないとしても,課税処分の違法性が重大なものである場合には,例外的にその違法性が滞納処分に承継されるとすべきである。 そして,前記(1)ア・イの事情によれば,本件課税処分の違法性は重大であるから,例外的にその違法性の承継が認められるべきであり,本件差押処分は違法となるというべきである。 2 被告の主張(1) 争点(1)(本件課税処分の違法性)についてア被告は,本件課税処分を法に従って適法に行っており,同処分について,課税要件の根幹にかかわる内容の過誤,あるいは不可争的効果の発生を理由として原告に本件差押処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認めるような事情は存在しない。 イよって,本件課税処分に重大かつ明白な違法はなく,無効事由は存在しない。 (2) 争点(2)(違法性の承継)について滞納処分は,課税処分とは法的に別個の処分であるから,課税処分に重大かつ明白な違法性がない限り,課税処分の違法性を承継しない。そして,本件課税処分には重大かつ明白な違法はなく,無効事由は存在しないので,本件差押処分が違法であるとは認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件課税処分の違法性)について(1) 原告の主張原告の主張は,要するに,原告が当初予定していた本件各土地上の飲食店店舗の開設が実現していれば,当然に法603条の2第1項による納税義務免除の適用を受けていたはずであったのに,専ら被告の対応の拙さを原因として,これを実現できなかったのであるから 件各土地上の飲食店店舗の開設が実現していれば,当然に法603条の2第1項による納税義務免除の適用を受けていたはずであったのに,専ら被告の対応の拙さを原因として,これを実現できなかったのであるから,現実に本件各土地上に店舗を開設していなくても,法603条の2第1項を適用して原告の納税義務は免除されるべきであり,本件課税処分には上記適用を否定した点に違法があるとするものである。 (2) 法603条の2第1項の適否についてア法603条の2第1項の解釈(ア) 特別土地保有税は,土地の投機的な取得を抑制するとともに,土地の供給を促進することを目的として創設されたものであり,既に社会通念上相当程度の水準に利用がされている土地についてまで同税を課すことは相当でないことから,法603条の2各項は,かかる場合における納税義務の免除の制度を定めている。 もっとも,具体的な個々の土地について上記利用がなされているか否かを判断することは困難であることから,その具体的な運用における課税の不公平を避けるため,法603条の2第1項は,納税免除の要件として一定の外形的な基準を設けている。 以上の特別土地保有税の創設及び同税の納税義務の免除に関する法の趣旨に照らすと,特別土地保有税の納税義務免除の要件該当性については,基準日におけるその土地の外形的事実に基づいて画一的,客観的に判断すべきものと解するのが相当である。 (イ) これを本件についてみると,証拠(甲1~21,乙3,6)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件各土地を取得した直後の平成2年ころから同土地の開発準備を始めたものの,現在に至るまで,店舗建物等の建築には着手しておらず,本件各土地の客観的状況としては,店舗建物等 論の全趣旨によれば,原告は,本件各土地を取得した直後の平成2年ころから同土地の開発準備を始めたものの,現在に至るまで,店舗建物等の建築には着手しておらず,本件各土地の客観的状況としては,店舗建物等の利用に供されていないことが認められ,かかる外形的事実に照らすと,本件課税処分の基準日当時,本件各土地について,法603条の2第1項所定の納税義務免除の要件が存在しなかったことは明らかである。 これに対し,原告は,前記第3の1(1)イのとおり,店舗を開設できなかった原因に関する各事情を主張するが,これらの事情は,上記(ア)の解釈に照らし,上記規定の免除要件の該当性の判断において考慮すべき事項には当たらないというべきである。 イ免除申請の欠缺しかも,法603条の2第1項による納税義務免除の適用を受けるためには,納税義務者が免除申請をすることが必要とされているところ(同条2項),原告が上記申請を行った形跡はうかがわれない。 ウまとめ以上によれば,本件各土地については,本件課税処分の基準日において,特別土地保有税等の法律上の課税要件が存在したことは明らかである。 (3) 課税の権限濫用等についてまた,仮に原告の主張する前記第3の1(1)ア・イの各事情が存在するとしても,これらの事情のもとで本件課税処分を行うことが,直ちに課税庁たる被告の権限濫用等に当たるとは認め難い。 2 争点(2)(違法性の承継)について(1) 違法性の承継について原告は,課税処分の違法性が当然に滞納処分に承継されると主張して,本件課税処分の違法性を理由に本件差押処分の取消しを求めている。 しかしながら,課税処分と滞納処分とは,前者が租税確定手続 原告は,課税処分の違法性が当然に滞納処分に承継されると主張して,本件課税処分の違法性を理由に本件差押処分の取消しを求めている。 しかしながら,課税処分と滞納処分とは,前者が租税確定手続であるのに対し,後者が租税徴収手続であり,両者は別個の法律効果の発生を目的とする別個独立の行為であるから,滞納処分としての差押えは,原則として,その基礎となった租税債権に係る課税処分の違法性を承継しないものと解され,課税処分が無効であるか,違法なものとして取り消されない限り,滞納処分が違法であるということはできない。 (2) 課税処分の無効事由についてそして,行政処分たる課税処分が無効となるのは,当該処分に重大かつ明白な違法がある場合,あるいは,課税処分に課税要件の根幹に関する内容上の過誤が存し,徴税行政の安定とその円滑な運営の要請をしんしゃくしてもなお,不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に上記処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情のある場合に限られると解される(最高裁昭和36年3月7日第三小法廷判決・民集15巻3号381頁,最高裁昭和48年4月26日第一小法廷判決・民集27巻3号629頁参照)。 (3) まとめ以上によれば,課税処分の違法性が当然に滞納処分に承継されるとする原告の主張は採用できず,本件課税処分の瑕疵を理由に本件差押処分が違法となるのは,本件課税処分に上記(2)の無効事由が存在する場合に限られるというべきである。 そして,前記1(2)(3)の認定判断によると,本件課税処分には,重大かつ明白な違法,あるいは,課税要件の根幹に関する内容の過誤が存在し,原告に本件課税処分による不利益を甘受させることが著しく不当と そして,前記1(2)(3)の認定判断によると,本件課税処分には,重大かつ明白な違法,あるいは,課税要件の根幹に関する内容の過誤が存在し,原告に本件課税処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情があるとは到底認められず,本件課税処分に無効事由に当たる程度の違法は存在しないことは明らかである。 それゆえ,本件課税処分に無効事由が存在しない以上,本件課税処分の違法性の承継を理由として本件差押処分が違法となる余地はない。 第5 結論よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官今中秀雄裁判官五十嵐章裕

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