【DRY-RUN】- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 理 由 被告人A外八三名の弁護人竹沢哲夫外三一名の上告趣意第一点について。 所論は、要するに、原判決は無罪の一審判決を破棄して自判によつて有罪判決を 言い渡し
- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 理 由 被告人A外八三名の弁護人竹沢哲夫外三一名の上告趣意第一点について。 所論は、要するに、原判決は無罪の一審判決を破棄して自判によつて有罪判決を 言い渡した結果、被告人の有する憲法上の権利たる上訴権(憲法三二条、同七六条 一項、同八一条、刑訴法三五一条一項、同四〇〇条)を奪つた違法(控訴裁判所が 原判決を破棄する場合は必ず事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁 判所に移送し、被告人に対する有罪事実の認定、刑の量定、法令の適用等は必ず差 戻又は移送をうけた第一審裁判所でなすべきものとすることによつて被告人の上訴 権行使を可能ならしめなければならず、控訴裁判所が破棄自判によつて有罪とする ことによつて被告人の上訴権を侵害、剥奪することは絶対に許されないものとしな ければならない)があり、その結果憲法一四条にも反した違法があるというに帰す る。 しかし、憲法は、審級制度を如何にすべきかについては憲法八一条所定以外何ら 規定するところがないから、同条所定の事項以外の点については立法をもつて適宜 にこれを定むべきものであり、従つて、事実審査を第二審限りとしても憲法違反な りとすることができないことは、夙に当裁判所大法廷判決の趣旨とするところであ る(判例集二巻三号一七五頁以下参照。また、刑訴四〇〇条但書の規定は、控訴 ) 審がみずから事実の取調をするにおいては、一審の無罪判決を破棄して有罪となし うる趣旨であつて、この場合には被告人の有する憲法三一条、三七条の保障する権 利を害せず、直接審理主義、口頭弁論主義の原則を害するものでないことは、これ また当裁判所大法廷の判例の趣旨とするところである(昭和三一年七月一八日大法 廷判決、判例集一〇巻七号一一四七頁以下、同年九月二六日大法廷判決、判例集一 - 2 - 〇巻九号一三九一頁以下 ことは、これ また当裁判所大法廷の判例の趣旨とするところである(昭和三一年七月一八日大法 廷判決、判例集一〇巻七号一一四七頁以下、同年九月二六日大法廷判決、判例集一 - 2 - 〇巻九号一三九一頁以下参照。されば、本件のごとき場合(後記論旨第三点につ ) いての判断参照)所論理由に基く主張およびこれを前提とする憲法一四条違反の論 旨は、いずれも採ることができない。 同第二点について。 所論は、結局、原判決は、事実の取調をなしたか否かにかかわりなく、一審無罪 の判決を破棄自判の上有罪とした点において、被告人の憲法三一条、三七条による 諸権利を害し、直接審理主義、口頭弁論主義の原則を害し、刑訴法四〇〇条の解釈 を誤り、憲法一四条に反して差別的取扱を強い、憲法七六条三項に反して良心に従 わない裁判官によつてなされた各違法があるというに帰する。 しかし、刑訴四〇〇条但書の規定は、控訴審がみずから事実の取調をするにおい ては、一審の無罪の判決を破棄して有罪となしうる趣旨であつて、この場合には被 告人の有する憲法三一条、三七条の保障する権利を害せず、直接審理主義、口頭弁 論主義の原則を害しないことは当裁判所大法廷判例の趣旨とするところであること は、論旨第一点について述べたとおりである。されば、この点に関する所論は、独 自の見解というのほかなく、採るを得ないし、また、所論憲法一四条違反の主張も その前提を欠くものであつて、採ることを得ない。なお、憲法七六条三項にいう裁 、 、 、 判官が良心に従うとは 裁判官が有形 無形の外部の圧迫ないし誘惑に屈しないで 自己の内心の良識と道徳感に従う意味であることは当裁判所大法廷の判例(判例集 二巻一二号一五六九頁、一一巻三号一〇一三頁)とするところ、原判決が右のごと き良心に反してなされたものと認むべき資料がないから、この点に関する所論も採 用でき であることは当裁判所大法廷の判例(判例集 二巻一二号一五六九頁、一一巻三号一〇一三頁)とするところ、原判決が右のごと き良心に反してなされたものと認むべき資料がないから、この点に関する所論も採 用できない。 同第三点について。 所論は、結局、原判決は、被告人の保有する憲法三一条、三七条の権利を害し、 直接審理主義、口頭弁論主義の原則を害し、刑訴法四〇〇条但書の解釈を誤り、最 - 3 - 高裁判所大法延の判例に反した違法があり、かつ、憲法七六条三項に違反するとい うに帰する。 しかし、原判決が被告人の保有する憲法三一条、三七条の権利を害せず、かつ、 直接審理主義、口頭弁論主義の原則にも反せず、また、刑訴法四〇〇条但書の解釈 、 、 。 、 を誤つたものでもないことは 論旨第一 二点について述べたとおりである 次に 判例違反をいうが、原判決の訴訟手続は、所論判例に適合し毫もこれに違反するも のとは認められない。なお、憲法七六条三項違反の主張を採り得ないことは、論旨 第二点について述べたとおりである。 そして、原審は、本件につき一〇回にわたる各公判期日毎に全被告人およびその 弁護人に対して適式の召喚をなしており、かつ、全被告人の弁護人および出頭した 被告人ら立会の上、証人十数名の尋問(なお、記録によれば原審では被告人側は全 然証人尋問の請求をしていない、並びに、検祭官および弁護人申請の合計三十数 ) ケ所の検証等自ら事実の取調をした上、第一審裁判所において取り調べた証拠のほ か、自らなした取調の結果をも資料として(この点について後記論旨第四点第一に )、 、 、 ついての判断参照 騷擾等につき無罪を言い渡した第一審判決を破棄して 更に 自ら判決をしたものであること記録上明白であるから、本件につき刑訴四一一条一 号を適用すべきものとは認められない(なお、被告人Bについては、銃砲等所 擾等につき無罪を言い渡した第一審判決を破棄して 更に 自ら判決をしたものであること記録上明白であるから、本件につき刑訴四一一条一 号を適用すべきものとは認められない(なお、被告人Bについては、銃砲等所持禁 止令違反により第一審は有罪の言渡をなし、原審は控訴棄却の判決をしたものであ るから、同人についての論旨第一点ないし第三点の所論は、すべて、その前提を欠 くもので採るを得ない。 ) 同第四点について。 所論第一は、憲法三一条、三七条違反をいうが、その実質は、単なる訴訟法違反 の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、控訴審が事実の取調 をなし、第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたつては、第一審におい - 4 - て取り調べた証拠は控訴審で再び証拠調をし直すことを必要とせずそのまま証拠能 力を認めて判決の基礎とすることができることは、当裁判所の判例とするところで あり(判例集一三巻二号一〇一頁以下第二小法廷判決参照、また、控訴審が事実 ) の取調をした以上、第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するに当り、第一審に おいて取り調べた証拠のみを挙示することは、なんら違法でないことも、当法廷の 判例とするところであること(判例集一二巻二号二六九頁以下当法廷判決参照)に 鑑みれば、所論の訴訟法違反も認められない。 所論第二は、集団行動の権利の侵害(憲法二一条、二八条違反)をいうが、その 実質は、原判決の事実誤認、単なる法令違反を主張し、原判決の判示に副わない事 実関係を前提とする違憲の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そし て、原判決の確定した事実関係の下では、所論集団行動の権利の侵害ありといえな いことは、当裁判所大法廷がしばしば判示したところに徴し明らかである(憲法二 一条に関し民事判例集一〇巻七号七八五頁以下、刑事判例集一一巻三号九九七頁以 の下では、所論集団行動の権利の侵害ありといえな いことは、当裁判所大法廷がしばしば判示したところに徴し明らかである(憲法二 一条に関し民事判例集一〇巻七号七八五頁以下、刑事判例集一一巻三号九九七頁以 下、昭和三五年(あ)一一二号同年七月二〇日言渡各大法廷判決参照、憲法二八条 に関し判例集三巻六号七七二頁以下、四巻一一号二二五六頁以下、四巻一〇号二〇 一二頁以下、一一巻二号八〇二頁以下、一二巻八号一六九四頁以下各大法廷判決参 照。 ) 所論第三は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであり、同第四 は、違憲をいうが実質は単なる法令違反の主張に帰し、いずれも、刑訴四〇五条の 上告理由に当らない(なお、法令違反の主張については、後記上告趣意第八点ない し第一〇点についての判断参照。 ) 同第五点について。 所論は、単なる訴訟法違反、事実誤認並びにこれらを前提として違憲又は違法を 主張するものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決挙示 - 5 - の証拠によれば、原審の事実認定を肯認することができるから、本件につき同四一 一条一号、三号を適用すべきものとは認められない。 同第六点について。 所論は、憲法九九条違反をいうが、原判決の判示に副わない独自の見解(すなわ ち、原判決は、警察側の犯罪に味方して、人民に敵対し、検察官の不当な政治的な 弾圧意図に加担して、被告人らの正当な行為を処罰するものである旨の主張)を前 提とするものであるから、採ることができない。 同第七点について。 所論は、原判決の事実誤認、単なる法令違反をいう点もあるが、その余は結局要 するに、刑法一〇六条の騒擾罪の規定は、支配階級の利益を守るために、被支配階 級の大衆運動を弾圧するための刑罰法規として運用されて来たものであつて、その 構成要件は、いずれも曖昧で、客観的な厳密性は少しもなく 、刑法一〇六条の騒擾罪の規定は、支配階級の利益を守るために、被支配階 級の大衆運動を弾圧するための刑罰法規として運用されて来たものであつて、その 構成要件は、いずれも曖昧で、客観的な厳密性は少しもなく、同条を適用する裁判 官の主観によつて著しく左右されるから、同条は、憲法三一条に違反する違憲、無 効の法規であるというに帰する。 しかし、事実誤認、単なる法令違反をいう点が刑訴四〇五条の上告理由に当らな いことは、すでに、しばしば判示したところであり、また、刑法一〇六条の騒擾罪 の規定が支配階級の利益を守るために、被支配階級の大衆運動を弾圧するための刑 罰法規として運用されて来たものでないことは、大審院の示した従来の判例中の事 案(例えば、明治四四年(れ)一五三一号同年九月二五日宣告同院判決録一七輯一 五五〇頁以下判決、大正四年(れ)一五〇九号同年一一月六日宣告同録二一輯一八 九七頁以下判決、大正一一年(れ)九一三号同年一二月一一日宣告同院判例集一巻 七四一頁以下判決、大正一五年(れ)一六二五号昭和二年三月四日宣告同判例集六 、 ( ) 、 ( ) 巻六七頁以下判決 昭和二年 れ 一二三九号同年一〇月二七日宣告判決 同年れ 一一八八号同年一二月八日宣告判例集六巻四七六頁以下判決参照)ことに当裁判所 - 6 - の判例の事案(昭和二六年(れ)九〇八号同二八年五月二一日第一小法廷判決、判 例集七巻五号一〇五三頁以下、昭和二八年(あ)五六〇四号同二九年七月一六日第 二小法廷判決、判例集八巻七号一一六九頁以下参照)に徴し明白である。 そして、刑法一〇六条は、 「多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ騒擾ノ罪卜為シ左ノ区別ニ従テ処断 ス 一、首魁ハ一年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 二、他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ卒先シテ勢ヲ助ケタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役 又ハ禁鋼ニ処ス 三、附和随行シ シタル者ハ騒擾ノ罪卜為シ左ノ区別ニ従テ処断 ス 一、首魁ハ一年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 二、他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ卒先シテ勢ヲ助ケタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役 又ハ禁鋼ニ処ス 三、附和随行シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス」 と規定され、その犯罪の構成要件とこれに対する法定刑とは厳格に規定され、こと に犯罪の構成要件は文義上明確であり、かつ、裁判官は、同法条と同条につき従来 なされた多数の判例とに従い法律を適用するものであつて、裁判官の主観によつて 著しく左右されるものでないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き採ることが できない。 同第八点ないし第一〇点について。 同第八点は、違憲をいう点もあるが、実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張 を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。同第九点は、違憲 をいうが、その実質は、単なる法令違反の主張であつて、同条の上告理由に当らな 、 、 、 、 。 いし また 判例違反をいうが 原判決は 所論判例と相反する判断をしていない 同第一〇点は、違憲をいうが、実質は、単なる法令違反の主張であつて、同条の上 告理由に当らない。 そして、原判決が、騒擾罪の成立要件として判示した「騒擾罪は、多衆が集合し て暴行又は脅迫をなすによつて成立するが、その暴行又は脅迫は、集合した多衆の - 7 - 共同意思に出たものであり、いわば、集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場 合であることを要し、その多衆であるためには一地方における公共の平和、静謐を 害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数であることを要する」旨の見解、並 、 「 、 、 びに 右の共同意思に関して判示した 騒擾罪は 群集による集団犯罪であるから その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴 行又は脅迫と認められる場合であることを要 、 、 びに 右の共同意思に関して判示した 騒擾罪は 群集による集団犯罪であるから その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴 行又は脅迫と認められる場合であることを要するが、その多衆のすべての者が現実 に暴行脅迫を行うことは必要でなく、群衆の集団として暴行脅迫を加えるという認 識のあることが必要なのである。この共同意思は、多衆の合同力を恃んで自ら暴行 又は脅迫をなす意思ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思と、かかる暴行又は 脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思とに分たれ、集合した多衆が前者の意 思を有する者と後者の意思を有する者とで構成されているときは、その多衆の共同 意思があるものとなるのである。共同意思は、共謀ないし通謀と同意義でなく、す なわち、多衆全部間における意思の連絡ないし相互認識の交換までは必ずしもこれ を必要とするものではない。事前の謀議、計画、一定の目的があることは必要でな いし、また、当初からこの共同意思のあることは必要でなく、平穏に合法的に集合 した群集が、中途から、かかる共同意思を生じた場合においても本罪の成立を妨げ ない」旨の見解については、当裁判所は、いずれも、これを正当として是認する。 そして、所論は、原判示の未必的共同意思について論難する。けれども、原判決 は、論旨も指摘するように、未必的共同意思については「事態の発展や相手方の 、 出方如何により時と場合によつては更に暴行脅迫等の所為に出るかも知れず……そ の暴行脅迫の所為に出る者は多衆を恃んでなすもので、他の群集はこれに同調し少 くともこれを認容するという未必的共同暴行脅迫の意思」といつているだけで、そ の意義については、必ずしも明確に判示していないのである。しかし、元来騒擾罪 の成立に必要な共同意思とは、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多 う未必的共同暴行脅迫の意思」といつているだけで、そ の意義については、必ずしも明確に判示していないのである。しかし、元来騒擾罪 の成立に必要な共同意思とは、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多衆 - 8 - の合同力による暴行脅迫の事態の発生を予見しながら、あえて、騒擾行為に加担す る意思があれば足りるのであつて、必ずしも確定的に具体的な個々の暴行脅迫の認 識を要するものではないのであるから、原判決の未必的共同意思の判示は、この趣 旨において首肯できないことはない。 ところで、原判決が挙示の証拠で適法に確定したところによれば、被告人C、同 D、同E、同F、同G、同H、同I、同Jらは、判示騷擾に際し、多衆の威力を以 て本件掲示板問題に関する交渉を党側に有利に解決する意図の下に平市署側との交 渉に当る考で、あるいは、午後三時三〇分過ころ市署前において先着の群集と警察 官とが衝突したことを知り判示時間ころ市署前に到り、あるいは、午後三時三〇分 ころ同署前において多衆が共同して暴行するのを認識しながらこれを共にする意思 で自らも暴行をし又はこの多衆に参加して署前にとどまり、次いで、同被告人らは そのころ多衆の代表者らが署内に入り多衆の不法な威力を示し警察側を脅迫して交 渉すること、および、多衆は右交渉を支援することにより右脅迫行為を共にするこ とを察知し、かつ、多衆が右交渉に際して共同して暴行脅迫に出るかもしれないと 思いながらこれを共にする意思で、各自代表者の一人として他の代表者とともに右 交渉に当るため署内に立ち入り、午後五時半ころからは多衆が同署を不法に占拠す ることを知りながらこれを共にする意思をも持ち午後一一時過ころまで代表者の一 人として本件の交渉に関与して署内に滞留し、あるいは、更らに判示のごとく脅迫 その他の行為をして、以て卒先助勢又は他人を指揮したというの りながらこれを共にする意思をも持ち午後一一時過ころまで代表者の一 人として本件の交渉に関与して署内に滞留し、あるいは、更らに判示のごとく脅迫 その他の行為をして、以て卒先助勢又は他人を指揮したというのであり、その余の 被告人ら(但し被告人Bを除く)は、判示騒擾に際し、本件掲示板問題に関する交 渉を支援するため、判示日時ころ平市署前に到り、あるいは、多衆が署前で判示の ごとく共同して暴行するのを認識しながらこれを共にする意思でもしくはこれに同 調して判示暴行をなし又はこの多衆に参加して署前にとどまり、次いで、そのころ 代表者が署内に入り前示群集の暴行に因り畏怖するK署長ら警察側に対し署内外の - 9 - 群集の不法な威力を示すことにより相手方をして応待のいかんではこの力により如 何なる危害が及ぶも測られないと畏怖せしめて交渉すること、および、群集は右交 渉を支援することにより代表者と右脅迫行為を共にすることを察知しながら、右交 渉を支援する趣旨で、あるいは、更に午後五時半ころからは多衆が同署を、不法に 占拠することを知りながらこれと共にする意思で署内外に滞留し、あるいは、署前 で多衆と労働歌を合唱して交渉を支援する等以て判示卒先助勢行為又は附和随行々 為をしたというのである(なお、後記論旨第一二点について建物の不法占拠又は不 法侵入が騒擾罪における暴行に当る旨の判断参照。されば、右被告人ら(被告人 ) Bを除く)が、本件騒擾に際し、むしろ、あるいは、確定的な共同意思があつたこ とを看取するに難くはなく、少くとも、いわゆる未必的共同意思があつたことは、 明白であるといわなければならない。従つて、本件につき刑訴四一一条一号を適用 すべきものとは認められない(但し、被告人Bは、銃砲等所持禁止令違反だけで処 罰されたものであるから、同人に関する所論騒擾の共同意思についての法令違反の ない。従つて、本件につき刑訴四一一条一号を適用 すべきものとは認められない(但し、被告人Bは、銃砲等所持禁止令違反だけで処 罰されたものであるから、同人に関する所論騒擾の共同意思についての法令違反の 主張は、その前提を欠くものであつて、採るを得ない 。 。) 同第一一点について。 所論は「公共の平和、静謐」なる観念につき独自の見解を有し、これを前提と 、 して、本件では、被告人らは公共の静謐を害したものではなく、却つて、警察がこ れを害し、国民の憲法上の権利を侵害したとの主張をなすもので、結局原審の事実 誤認を前提とする単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当るも のとは認められない。 同第一二点について。 所論は、違憲をいう点もあるが、実質は、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四 〇五条の上告理由に当らない。そして、当裁判所は、騒擾罪における暴行なる観念 は、広義のものであつて、物に対する有形力の行使をも含むものと解するを相当と - 10 - し、従つて、原判決が建物の不法占拠又は不法侵入を騒擾罪における暴行に当るも のとした判断を是認する。また、騒擾罪の成立要素である暴行、脅迫は、他の罪名 に触れない程度のものであるをもつて足りるから、その暴行、脅迫が他の罪名に触 れる場合には、その行為は一面騒擾罪を成立せしめると同時に他の罪名にも触れる 旨の大審院判例(大正三年二月二四日大審院判決、同判決録二〇輯一九五頁以下、 大正一一年一二月一一日同院判決、同判例集一巻七四一頁以下参照)を支持するか ら、原判決が本件騒擾の点と建造物侵入の点とを一個の行為で二個の罪名にふれる 場合として刑法五四条一項前段一〇条を適用したのは正当であると認める(なお、 大正八年五月二三日大審院判決、同判決録二五輯六七三頁以下参照。 ) 同第一三点について。 所論は、憲法一二条、九七条に基く 場合として刑法五四条一項前段一〇条を適用したのは正当であると認める(なお、 大正八年五月二三日大審院判決、同判決録二五輯六七三頁以下参照。 ) 同第一三点について。 所論は、憲法一二条、九七条に基く国民の抵抗権(革命権の一分肢)の行使なる 独自の違法性阻却事由を前提として、原判決の違憲を主張するものであつて、その 実質は、原判決の本件動機原因並びに平市署における暴行脅迫の程度及び共同意思 の存在等に関する事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理 由に当るものとは認められない。 同第一四点について。 所論は、違憲をいうが、実質は、単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条 の上告理由に当らない。そして、被告人Eに対する内郷町署における職務強要の事 実は、本来の起訴状中に簡略ながら記載され、その後第一審において許可された訴 因罪名罰条追加請求書に公訴事実として詳細記載し、その罪名、罰条も明示されて いることが記録上明らかであるから、公訴事実の同一性あることも明白である。さ れば、原審がこれにつき判決をしても所論の訴訟法違反は認められない。また、被 告人Lに対する本件公訴事実は、騒擾、建造物侵入のみであつて、職務強要の事実 は存しない。されば、原判決は、同被告人に対しては、内郷町署における職務強要 - 11 - 、 、 の訴因に関して所論の判示並びに判決をしていないから同被告人に対する所論は その前提を欠き採るを得ない。 被告人本人M外五四名連名の上告趣意について。 所論は、違憲をいう点もあるが、実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出 でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決が所論 のごとく平市署前における群衆側の所為には正当防衛をもつて目すべき余地が存し ない旨、並びに、平市警察署を中心とする騒擾罪を認めたことその他原判決の事 四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決が所論 のごとく平市署前における群衆側の所為には正当防衛をもつて目すべき余地が存し ない旨、並びに、平市警察署を中心とする騒擾罪を認めたことその他原判決の事実 認定は、挙示の証拠で肯認することができ、その事実認定に基く法律判断もこれを 是認することができるし、また、原判決の確定した事実関係の下においては、被告 人らの所為をもつて憲法二五条、二一条、二八条等の権利行為を以て目すべきもの でないことは、当裁判所大法廷のしばしば判示したところである(憲法二五条に関 し判例集二巻一〇号一二三五頁以下、憲法二一条、二八条に関しては弁護人の上告 趣意第四点第二についての判断参照。なお、判例違反をいうが、判例を具体的に ) 示していないから、採用するに由ない。しかも、弁護人の上告趣意第三点について 述べたとおり原審では、一〇回にわたる各公判期日毎に全被告人に対して適式な召 喚をなしており、かつ、全被告人の弁護人および出頭した被告人立合の上証人十数 名の尋問および三十数ケ所の検証等の事実の取調を行つていることが記録上明白で ある。されば、本件につき刑訴四一一条一号又は三号を適用すべきものとは認めら れない(なお、右連名の被告人本人中被告人B、同Nの両名については、原判決 。 は銃砲等所持禁止令違反の公訴事実だけで処罰したものであるから、騒擾について のみの右上告趣意は、両名に関する上告適法の理由として採用することはできな い 。 。) 被告人Oの上告趣意について。 所論は、違憲をいう点もあるが、実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出 - 12 - でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決の確定 した事実関係の下においては、被告人らの所為をもつて憲法二八条の権利行為を以 て目すべきものでないこと、並びに、原審が事実の でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決の確定 した事実関係の下においては、被告人らの所為をもつて憲法二八条の権利行為を以 て目すべきものでないこと、並びに、原審が事実の取調を行つていることは、前示 被告人本人連名の上告趣意について判示したところであり、また、憲法三七条の公 平な裁判所の裁判とは、所論のごときものをいうものでないことは、当裁判所大法 ( 、 )。 廷のしばしば判示したところである 例えば 判例集二巻五号五一一頁以下参照 被告人Pの上告趣意について。 所論は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由 に当らない。なお、原裁判所は、被告人全員に対し各公判期日毎に適式な召喚をな し、事実の取調を行つたことは、前示被告人本人連名の上告趣意について述べたと 、 、 。 おりであつて 本件につき同四一一条一号 三号を適用すべきものとは思われない 被告人Q、同Rの各上告趣意について。 所論は、違憲をいうが、実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないも のであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、本件につき原審が事実の 取調を行つていること等、並びに、刑訴四一一条一号、三号を適用すべきものとは 認められないことについては、前示連名の上告趣意について述べたとおりである。 被告人Sの上告趣意について。 所論は、違憲をいうが、具体的理由を示していないから、上告適法の理由と認め 難い。 被告人Tの上告趣意について。 所論は、事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記 録を調べても、同四一一条三号を適用すべきものとも認められない。 被告人Uの上告趣意について。 所論は、第一審判決をあくまで守るために上告するというのであつて、刑訴四〇 - 13 - 五条の上告理由に当らない。 被告人Vの上告趣意に 適用すべきものとも認められない。 被告人Uの上告趣意について。 所論は、第一審判決をあくまで守るために上告するというのであつて、刑訴四〇 - 13 - 五条の上告理由に当らない。 被告人Vの上告趣意について。 所論は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張を出でないものであつて、 刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決は、被告人を附和随行者とし て罰金二、〇〇〇円に処したものであつて、所論のごとく卒先助勢者として懲役十 月罰金二、〇〇〇円に処したものではない。されば、被告人は、結局原判決の罪名 と科刑とを誤解したものであつて、論旨は採ることができない。 被告人Wの上告趣意について。 所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五 条の上告理由に当らない。また、記録を調べても、同四一一条一号、三号を適用す べきものとも認められない。 よつて、刑訴四一四条、三九六条、一八一条一項但書(被告人X、同Y、同W及 び同Lにつき)に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官 村上朝一、同井本台吉及び中村哲夫公判出席 昭和三五年一二月八日 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 下 飯 坂 潤 夫 裁判官 高 木 常 七
▼ クリックして全文を表示