主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が控訴人らに対して平成10年4月10日付けでした各懲戒解雇はいずれも無効であることを確認する。 3 被控訴人は,平成10年5月11日以降毎月末日限り,控訴人Aに対し1か月金60万5836円の割合による金員を,控訴人Bに対し1か月金56万0911円の割合による金員をそれぞれ支払え。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 5 この判決は3項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第一控訴の趣旨主文同旨第二事案の概要事案の概要は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第二のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決19頁9行目の「八号及び一一号」を「8号,11号及び13号」と改める。 2 原判決20頁4行目の「に交付した」の前に「及びC(控訴人Aの弟でD代議士秘書)」を付加する。 3 原判決22頁7行目の「本件信用情報」の後に「(ウ)」を付加する。 4 原判決23頁11行目の「八号」を「11号」と改める。 5 原判決23頁11行目と24頁1行目との間に次のとおり付加する。 「 仮に,組合幹部あるいは第三者のもとから本件資料が外部に流出したとしても,本件資料の重要性から,控訴人らは,例えば鍵のかかるロッカーに保管し,かつ文書のリストを作成するなどして本件資料を厳格に保管すべき義務があったのに,これを怠り上記の外部流出を生じさせた管理・保管義務違反があり,就業規則75条2項13号の懲戒解雇事由がある。」 6 原判決26頁3行目と4行目の間に次のとおり付加する。 「 なお,Cへの本件資料の交付は,本件懲戒解雇時に被控訴人が認識していなかった事実であり,これを本件懲戒解雇の事由とすることはできない。」 7 原判決27頁10行目と11行目の間に次のとお 加する。 「 なお,Cへの本件資料の交付は,本件懲戒解雇時に被控訴人が認識していなかった事実であり,これを本件懲戒解雇の事由とすることはできない。」 7 原判決27頁10行目と11行目の間に次のとおり付加する。 「(5) 控訴人らの行為の就業規則75条2項13号該当性被控訴人の主張を否認ないし争う。 過失による秘密漏洩行為がそもそも懲戒解雇事由に該当するのか疑問である。」 8 原判決37頁6行目と7行目の間に次のとおり付加する。 「(四) 本件懲戒解雇は就業規則75条2項の4号,8号及び11号の全てに該当する事由があることを理由にされたものであるから,各号のいずれかについて該当する事由が存しない場合は本件懲戒解雇は無効である。」 9 原判決40頁2行目と3行目の間に次のとおり付加する。 「(六) 就業規則75条2項の4号,8号及び11号の全てについて該当する事由が認められない場合でも,いずれかに該当する事由があれば本件懲戒解雇は有効である。」第三争点に対する判断一本件懲戒解雇に至る経緯争いのない事実,証拠(甲9,10,19,20の1~4,47,48,乙2,5の1~66,6の1~5,7,8,27~31,33,36の1・2,39,40,45,46の1~16,51,52,56,57の1~3,58の1・2,原審証人E,同F,同G,同H,原審各控訴人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる。 1 控訴人Aは,平成6年から組合に執行委員として参加し,平成7年度(平成7年8月から平成8年7月まで)には執行副委員長に選出され,三役交渉等の場を通して,被控訴人における不正疑惑を積極的に追及した。 控訴人Bは,平成4年にα支店に異動したが,そこでの業務を通じてIに関して被控訴人に不正があるとの疑念を有するようになり,控訴人Aとの後 の場を通して,被控訴人における不正疑惑を積極的に追及した。 控訴人Bは,平成4年にα支店に異動したが,そこでの業務を通じてIに関して被控訴人に不正があるとの疑念を有するようになり,控訴人Aとの後記2の接触を契機として,平成8年度から組合執行部に参加し,控訴人Aと共に被控訴人の不正疑惑の追及を行った。 控訴人らは,平成8年度の組合執行副委員長に選出され,さらに,不正疑惑の追及活動を強めた後,平成9年8月をもって組合執行副委員長の任期を終えたが,被控訴人に対して回答を求めている懸案事項が多数あったために,引き続き,旧組合執行部3役として,被控訴人理事らに対する追及活動を継続した。 2 控訴人Aは,平成7年の秋頃から,控訴人Bを含む被控訴人の職員から,顧客のIと被控訴人α支店職員との不正な関係の疑惑について事情を聴取し,一方でオンライン端末機を利用して被控訴人管理に係るホストコンピュータにアクセスし,平成8年2月7日に本件信用情報(ア)②を印刷して当該印刷文書を取得するなどして,事実関係の確認及び資料の収集を行った。控訴人Bは,平成8年2月23日に同様の方法で同顧客及びその関係者に係る本件信用情報(ア)④ないし⑦が印刷された文書を取得し,これを控訴人Aに交付した。 さらに,控訴人Aは,Jに対する融資が,Iに対する迂回融資である疑いを持ち,平成8年4月9日に前記同様の方法で同融資等に係る本件信用情報(イ)を取得した上,同年7月26日の三役交渉の場で被控訴人に対し同疑惑を追及した。 3 控訴人Bは,平成8年3月5日ころ,本件批判文書①を作成し被控訴人総務部長に対し差出人の名を記さず郵送し,続いて,同年4月22日ころ,本件批判文書②を作成し被控訴人総務部長に差出人の名を記さず郵送した。同各文書には,被控訴人の人事異動に対する批判が述べられており 務部長に対し差出人の名を記さず郵送し,続いて,同年4月22日ころ,本件批判文書②を作成し被控訴人総務部長に差出人の名を記さず郵送した。同各文書には,被控訴人の人事異動に対する批判が述べられており,人事の是正や被控訴人役員の背任行為の調査を求め,これらの要求を受け容れられない場合には,組合に資料を開示するとし,さらに,同文書の作成者の調査がなされた場合には,資料を公にする旨記載されている。 4 また,控訴人らは,谷製菓に対する融資につき,被控訴人前理事長Kに関連する情実融資,あるいは迂回融資ではないかという疑いを持って調査を行い,平成8年3月以降,控訴人Aにおいて被控訴人が管理する同社に係る本件管理文書④の原本を複写して写しを取得し,控訴人Bにおいて被控訴人が管理する同社の信用情報が記載された稟議箋(本件管理文書③の一部)の原本を複写してその写しを取得する等の資料収集を行ったうえで,3役交渉の場で,被控訴人に対し同疑惑を追及した。 5 控訴人Aは,平成8年5月から7月ころにかけて,本件資料及びその他の同控訴人の収集した被控訴人の不正疑惑に関する資料を,D衆議院議員の公設秘書であるC(控訴人Aの弟)及び宮崎県警に提出した。 なお,上記各提出行為は,組合の機関決定に基づかないで行われた。 6 被控訴人は,控訴人Bから送付を受けた本件批判文書①に基づき,内部調査を実施した結果,元α支店支店長及び係長の顧客との癒着や元β支店副支店長及び支店長代理の名義貸しによる融資の事実が判明したため,平成8年7月29日付けで理事長,専務理事及び常務理事を監督責任に基づいて減棒処分とし,関係職員を懲戒処分(減給1か月または譴責)に付した。 7 平成8年11月14日,Lが,被控訴人会長Gを訪れ,本件資料を示して,「金庫のこのような内部資料が外部に出回っているが, づいて減棒処分とし,関係職員を懲戒処分(減給1か月または譴責)に付した。 7 平成8年11月14日,Lが,被控訴人会長Gを訪れ,本件資料を示して,「金庫のこのような内部資料が外部に出回っているが,金庫は知っておりますか。」などと述べたため,G会長は,これを預かり,被控訴人理事長Kに手渡した。そして,同人は,被控訴人常務理事Hに同資料を複写させた上,G会長に返し,同会長が,同月18日,Lに同資料を返却した。 その後,Lは,G会長に対し,再三にわたって当座預金口座の開設を要求してきたが,Lには平成元年から被控訴人に対する債務不履行があり,また,同人が代表取締役を務める株式会社宮崎新聞社が平成4年に銀行取引停止処分を受けていることにより,当座預金を開設できない状態にあったため,G会長は,同要求を拒否した。 8 被控訴人は,Lが持ち込んだ資料の写しを調査したところ,以下のとおり,控訴人ら及びMによって各オンライン端末機から打ち出された本件信用情報の一部が含まれていることが判明した。 被控訴人のホストコンピュータ内の顧客信用情報にアクセスするには,本支店設置のオンライン端末機に,各職員が持っているオペレータカードを挿入することが必要であり(なお,信用情報は端末機の画面に表示されることはなく,帳票用紙に印刷して初めて判読可能な状態になる。),一方,同アクセスを記録するために,端末機には,フロッピーディスクが収められていて,このフロッピーディスクには,使用されたオペレータカードの番号,アクセスした日時,顧客番号等が記録される。 被控訴人は,各店舗からアクセス記録用のフロッピーディスクを回収し,本件信用情報の帳票用紙右上の照会日欄に印字された日時に対応するフロッピーディスクを検索し,帳票の右上に印字された年月日時刻をもとに検索した結果,本件信用情 クセス記録用のフロッピーディスクを回収し,本件信用情報の帳票用紙右上の照会日欄に印字された日時に対応するフロッピーディスクを検索し,帳票の右上に印字された年月日時刻をもとに検索した結果,本件信用情報(ア)②及び同(イ)にアクセスする際に用いられたオペレータカードが控訴人Aに交付されたものであり,本件信用情報(ア)④ないし⑦にアクセスする際に用いられたオペレータカードが控訴人BないしMに交付されたもめであることが判明した(ただし,Mは,当該オペレータカードを控訴人Bに頼まれて貸与していたことが後に判明した。)。 他方,本件信用情報(ア)①及び③並びに(ウ)①及び②の信用情報については,これらの情報へのアクセスに対応するアクセス記録用のフロッピーディスクの情報が既に消去済みであったため,当該信用情報にアクセスした者を特定することができなかった。 また,調査の結果,控訴人Aは,同信用情報の外にも,多数の融資取引現況表,顧客結合照会表等の情報(乙36の2)にアクセスし印刷していたことが判明した。 9 上記の調査の結果,被控訴人は,少なくとも本件信用情報の一部について,控訴人らがアクセスして印刷した事実を突き止め,控訴人らがLに対して本件資料を提供したのではないかという疑いを抱いた。 しかし,被控訴人は,Lが持ち込んだ文書の写しが広く出回り,外部から様々な働きかけがあることを懸念し,被控訴人内部の問題として処理することでは済まず刑事事件として対処すべき案件であると判断して,控訴人らに対する懲戒処分はしないまま,平成8年12月5日の役員会において,顧客信用情報にアクセスして印刷した文書を外部に持ち出した行為について刑事告訴することを決定し,平成9年2月6日,γ警察署に,同行為について,被告訴人氏名不詳の窃盗罪事件として告訴した。 しかし, 客信用情報にアクセスして印刷した文書を外部に持ち出した行為について刑事告訴することを決定し,平成9年2月6日,γ警察署に,同行為について,被告訴人氏名不詳の窃盗罪事件として告訴した。 しかし,その後の警察からの要請により,被控訴人は,平成9年12月4日,同告訴を取り下げた。 なお,同取下げ直前の平成9年11月には,被控訴人の役職員が,Iに対する不正融資の嫌疑で事情聴取を受けた。 10 被控訴人は,上記告訴取下げを踏まえて,本件情報の流出問題について責任者の処分を検討することとし,平成10年3月26日,被控訴人役職者5名(N検査部長,O総務副部長,E総務課長,Pα支店長,Qδ支店長)で構成する流出文書調査委員会を発足させ,本件資料のLへの流出について調査を行い,本件資料の調査のほか,同年4月1日から同月8日までの間に関係職員18名から事情聴取した。 同委員会は,控訴人Aに対しては,同月7日午後1時30分から約1時間にわたって,本件資料の流出について事情聴取をした。その際,N検査部長らは,控訴人Aに対し,Lが被控訴人に持ち込んだ文書を示して見覚えがあるか質問したところ,控訴人Aは自分が収集したものもあれば見覚えのないものもある,車のドアが壊され資料がなくなったと思ったことがあったなどと回答した。控訴人Aは,同委員会から翌8日に出頭するよう呼出しを受けていたR(元組合委員長)及び控訴人Bと会い,その日の事情聴取の内容を詳細に報告した。同月8日,事情聴取を受けたRは,同委員会からの質問に対し,組合が被控訴人に対してしている要求に対する回答を先に求める旨発言し,同委員会から質問に回答する意思がないと判断されて質問が終了した。 控訴人Bは,同日,Rからこの経過を聞いたうえで同委員会の質問に臨み,Rに会って話を聞いたが,同控訴人も考え方はR 求める旨発言し,同委員会から質問に回答する意思がないと判断されて質問が終了した。 控訴人Bは,同日,Rからこの経過を聞いたうえで同委員会の質問に臨み,Rに会って話を聞いたが,同控訴人も考え方はRと一緒である旨,何のことかわからないので録音させてもらう旨発言して,録音機を卓上に置き,委員会から2年前の怪文書事件について何か知っているかとの質問を受けて,そのような話があったが,同控訴人は何も知らない旨返答した。同委員会は,同控訴人の同発言及び態度から,同控訴人には質問に応じる意思がないと判断して,同控訴人に対する事情聴取は約2分間で終了した。 11 被控訴人は,同調査委員会の調査結果に基づき,平成10年4月9日,常勤理事会において,本件資料のLに対する漏えいの件につき,控訴人らの関与が明らかであるとして控訴人らを懲戒解雇に処することを決議し,翌10日,控訴人らに対し,本件懲戒解雇を行った。 二争点1(就業規則75条2項4号の懲戒解雇事由該当行為の存否)について 1 一で認定したとおり,本件信用情報のうち,控訴人Aは少なくとも本件信用情報(ア)②及び同(イ)に,控訴人Bは少なくとも本件信用情報(ア)④ないし⑦に,それぞれアクセスし,これらの情報を印刷して作成した文書を取得したことが認められる。また,本件管理文書のうち,控訴人Aは本件管理文書④について,控訴人Bは本件管理文書③の一部について,それぞれ文書の原本を複写し,その写しを取得したことが認められる。そして,各印刷した文書及び写しは,いずれも被控訴人の所有物であるから,これを業務外の目的に使用するために,被控訴人の許可なく業務外で取得する行為は,形式的には,窃盗に当たるといえなくはない。 しかし,証拠(乙2)によれば,就業規則75条1項は出勤停止,減給又は譴責の事由として「許可を得ない るために,被控訴人の許可なく業務外で取得する行為は,形式的には,窃盗に当たるといえなくはない。 しかし,証拠(乙2)によれば,就業規則75条1項は出勤停止,減給又は譴責の事由として「許可を得ないで金庫の施設,什器備品,車両等を業務以外の目的で使用したとき(8号)」,「正当な理由なく金庫の金品を持ち出し,または私用に供したとき(9号)」を定めており,形式的に窃盗に当たる行為であっても出勤停止又はこれより軽い処分をもって臨む場合のあることが予定されていることが認められる。他方,同条2項4号の表現は「職場内外において・・・刑事犯または,これに類する行為」となっており,同号が懲戒解雇事由として予定しているのは,刑罰に処される程度に悪質な行為であると解される。 そうすると,控訴人らが取得した文書等は,その財産的価値はさしたるものではなく,その記載内容を外部に漏らさない限りは被控訴人に実害を与えるものではないから,これら文書を取得する行為そのものは直ちに窃盗罪として処罰される程度に悪質なものとは解されず,控訴人らの上記各行為は,就業規則75条2項4号には該当しないというべきである。付言すると,上記各文書等に記載された情報が被控訴人にとって重要なものであり,これを業務と関係なく取得することが許されないことは後記のとおりであるから,被控訴人らの行為は同条1項に所定の「服務規律または金庫の定める他の諸規則に違反したとき(14号)」に当たりうるものではあり,また上述の同項8号,9号の懲戒事由に当たりうるものでもあるが,いずれにしても,出勤停止よりも重い処分を科すことはできないものである。 2 なお,控訴人らは,被控訴人職員が担当業務以外の情報にアクセスすることは許容されていた旨主張する。 しかしながら,本件信用情報には,会員の出資額,顧客ランク,融資額 すことはできないものである。 2 なお,控訴人らは,被控訴人職員が担当業務以外の情報にアクセスすることは許容されていた旨主張する。 しかしながら,本件信用情報には,会員の出資額,顧客ランク,融資額,融資条件,返済方法,延滞状況,担保明細が記載され,本件管理文書③及び④には,手形の支払義務者の不渡り等の信用情報が記載されている。これらの融資の内容や融資の相手方の信用状況に関する情報は,当該顧客にとって,高度のプライバシーに属する事項であり,また,金融機関の融資の相手方に対する評価は,当該金融機関にとって,最高機密に属する事項である。 したがって,金融機関として顧客に対して高度の秘密保持義務を負い,機密情報を厳格に管理すべき立場にある被控訴人が,職員に対し,担当業務の遂行に関係のない目的でこのような機密情報にアクセスしたり,機密情報の記載された文書を複写したりすることを許容することはあり得ないことであり,このことは,上記認定のとおり,顧客信用情報へのアクセスにはオペレータカードを要し,しかもそのアクセスの経過が記録されることとされていることからも明らかである。 したがって,控訴人らの上記主張は採用できない。 三争点2(就業規則75条2項8号,11号及び13号の懲戒解雇事由該当行為の存否)について 1 Lが平成8年11月14日に持参してG会長に示した資料の中に控訴人らが取得した本件信用情報が含まれていたことは上記一で認定したとおりであり,本件資料のうちその余の資料についても,控訴人らが作成,収集して被控訴人の不正疑惑の追及に使用していた資料であると各資料の内容から認められるから,これらの事実から,Lが何らかの方法により控訴人らの取得した本件資料を入手した事実を推認することができる。 もっとも,Lが被控訴人に持ち込んだ資料中に,控訴人らが と各資料の内容から認められるから,これらの事実から,Lが何らかの方法により控訴人らの取得した本件資料を入手した事実を推認することができる。 もっとも,Lが被控訴人に持ち込んだ資料中に,控訴人らが端末機を使用して帳票用紙に印刷した文書そのものが含まれていたとまでは認定することができない。 すなわち,G会長は,原審での証人尋問において,帳票用紙に印刷されたものがあったかどうか明確な記憶がない旨証言し,また,Lが持ち込んだ資料を複写したH常務は,原審での証人尋問において,帳票用紙に印刷されたものがあった証言するものの(同人の陳述書(乙56)も同旨),他方でコピーであったものもあったかもしれない旨証言しており,いずれの証言も明確性に欠けている。そして,そもそも,帳票用紙に印刷された文書が存在したとすれば,その文書は正に被控訴人の外部に流出させてはならないものであり,Lがいかなる経路で入手したものにせよ,G会長やH常務としてはその返還を拒んで当然のものであるところ,Lに資料を全部返還したというのであるから,帳票用紙に印刷された文書は存しなかったことが強くうかがわれるところである。したがって,上記のH常務の証言及び陳述書はにわかに採用できず,他に帳票用紙に印刷された文書がLの持ち込んだ資料中に存したことを認定するに足りる証拠はない。 また,Lが本件資料を被控訴人に持ち込んだ当時,Lと被控訴人らとの間に何らかの人的関わりがあったことをうかがわせる証拠も存しない。 そうすると,Lの取得した本件資料が元々は控訴人らの作成,収集した資料に由来するものであることは確かであるものの,同資料と同内容の複写を所持しうる者が他にもあった以上,本件資料が控訴人らの意思に基づいてLに渡ったものとまでは推認することはできないというべきである。 そうすると,本件資料を は確かであるものの,同資料と同内容の複写を所持しうる者が他にもあった以上,本件資料が控訴人らの意思に基づいてLに渡ったものとまでは推認することはできないというべきである。 そうすると,本件資料をLが所持していたことに関しては,控訴人らに就業規則75条2項8号,11号又は13号に該当する事実は,これを認めることができないというべきである。なお付言すると,Lに本件資料が流出したことについて,控訴人らに本件資料の保管・管理義務違反の過失があったと評価することは不可能ではないが,就業規則では,過失により被控訴人に損害を与える行為は出勤停止又はこれより軽い懲戒処分に処することとされており(就業規則75条1項12号,13号),就業規則75条2項8号,11号及び13号はもっぱら故意による行為を懲戒解雇事由としているものと解されるから,過失により本件資料を流出させたとしても,同各号所定の懲戒解雇事由には当たらないというべきである。 2 控訴人Aが弟である国会議員秘書Cに本件資料を交付した事実は同控訴人も自認するところであり,この事実が少なくとも形の上では就業規則75条2項8号に該当することは否定できない。しかし,本件資料が国会議院の秘書に交付されることで,直ちに被控訴人の名誉,信用の失墜や取引関係への悪影響に繋がるものとは解されず,実際,Cに交付されたことがそのような事態に繋がったことを推認できる証拠もないから,同項11号に該当する行為があったとはいえない。また,控訴人AのCに対する本件資料の交付が控訴人Bと共同してのものであったことを認めるに足りる証拠はない。 なお,控訴人らは,Cへの本件資料の交付は本件懲戒解雇時に被控訴人の認識していなかった事実であるからこれを同解雇の事由とすることはできない旨主張するが,被控訴人は,誰に対する漏洩であるかを特 い。 なお,控訴人らは,Cへの本件資料の交付は本件懲戒解雇時に被控訴人の認識していなかった事実であるからこれを同解雇の事由とすることはできない旨主張するが,被控訴人は,誰に対する漏洩であるかを特に限定しないでおよそ本件資料を外部へ流出させたことを懲戒解雇事由としていたものと解されるから,控訴人らの上記主張は採用できない。 四争点4(本件懲戒解雇の相当性)について上述のとおり,被控訴人が本件懲戒解雇の事由として主張する事実のうち,就業規則所定の懲戒解雇事由に当たると認めうるのは控訴人AがCに本件資料を交付したとの点のみである。したがって,控訴人Bについては本件懲戒解雇は当然に無効であるといわざるをえず,控訴人Aについても,懲戒解雇事由に該当する事実が実質的にそれほど重大なものとは解されず,懲戒解雇は相当性を欠くものとしてやはり無効であるといわざるをえない。 しかし,上述のとおり,形式的には控訴人らに就業規則75条2項4号に該当しうる行為があったものであり,また就業規則を拡大解釈すれば,控訴人らの過失により本件資料がLに渡った点がなお就業規則75条2項8号,11号に当たるとの見解,あるいは控訴人AがCに本件資料を交付した点が同項11号にも当たるとの見解が成り立ちえないではないので,仮に,控訴人らの行為がこれら各条項にも該当するものとした場合について,検討しておくこととする。 証拠(甲15の1~3,16の1~3,19,20の1~4,21の1~4,22,23の1・2,29,30,31の1~3,34の14,40,乙46の15・16,73)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人における複数の不正疑惑案件について,平成8年以降,控訴人らが中心となって,組合の三役交渉等を通じて被控訴人の理事らに事案の解明と善処を強く求めていたこと,控訴人らが本件 論の全趣旨によれば,被控訴人における複数の不正疑惑案件について,平成8年以降,控訴人らが中心となって,組合の三役交渉等を通じて被控訴人の理事らに事案の解明と善処を強く求めていたこと,控訴人らが本件資料を作成,収集したのもその活動の一環としてであったこと,控訴人Aが本件資料を警察やCに交付したのも,行政(大蔵省)や司直の手により被控訴人内部の不正が改められるのを期待してのことであったこと,控訴人らの追及が発端となって,被控訴人において,不正を把握してこれに関わった職員を懲戒し,理事の監督責任を認めて減俸等を行う事態が繰り返され,また,その一部は刑事事件に発展して関与した元理事や元職員が逮捕された案件もあったこと,そして,Lが本件資料を持参した後も,控訴人らが主張(原判決「事実及び理由」第二・二3控訴人らの主張(一))するとおりの不正疑惑の追及活動が継続されていたことが認められる。 そうすると,控訴人らはもっぱら被控訴人内部の不正疑惑を解明する目的で行動していたもので,実際に疑惑解明につながったケースもあり,内部の不正を糺すという観点からはむしろ被控訴人の利益に合致するところもあったというべきところ,上記の懲戒解雇事由への該当が問題となる控訴人らの各行為もその一環としてされたものと認められるから,このことによって直ちに控訴人らの行為が懲戒解雇事由に該当しなくなるとまでいえるかどうかはともかく,各行為の違法性が大きく減殺されることは明らかである。 また,就業規則74条は,出勤停止より重い処分として懲戒解雇の他に停職,降職降格,諭旨免職を予定しており(乙2),懲戒解雇が相当となるのは特に違法性の大きい場合であると解されるところ,上記のとおり,控訴人らの各行為には出勤停止又はこれより軽い処分を科すべきと解されるものが多く,かつ上記のとおり違 り(乙2),懲戒解雇が相当となるのは特に違法性の大きい場合であると解されるところ,上記のとおり,控訴人らの各行為には出勤停止又はこれより軽い処分を科すべきと解されるものが多く,かつ上記のとおり違法性が減殺される事由も存することを勘案すると,控訴人らの各行為に懲戒解雇に当たるほどの違法性があったとはにわかに解されない。 したがって,上記のように控訴人らの行為が被控訴人主張の各懲戒解雇事由に当たると仮定してみても,控訴人らを懲戒解雇することは相当性を欠くもので権利の濫用に当たるといわざるをえず,やはり本件懲戒解雇はいずれも無効である。 第四結論よって控訴人らの請求はいずれも理由があるところ,これを棄却した原判決は失当であるから取り消し,同請求を認容する。 (口頭弁論終結の日平成14年4月16日)福岡高等裁判所宮崎支部裁判長裁判官馬渕勉裁判官黒津英明裁判官岡田健
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