昭和24(れ)368 公務執行妨害

裁判年月日・裁判所
昭和24年9月1日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  弁護人村上信金上告趣旨第一点について。  所論は、原審において弁護人が主張した法律上犯罪の成立を阻すべき原由に対す る判

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判決文本文2,539 文字)

主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人村上信金上告趣旨第一点について。 所論は、原審において弁護人が主張した法律上犯罪の成立を阻すべき原由に対する判断が、原判決において示されていない違法があると主張する。原審第三回公判調書には、「村上弁護人は弁論要旨に基き被告人の為め有利の陳述をし、被告人に対して無罪の判決を求むと述べた」旨の記載があることは、所論の言うとおりである。そして、右弁論要旨においては、被告人は激昂した二、三十名の朝鮮人を制止しなかつたのではなく、制止ないし抑制については十分努力した、力の限り説得した、「幸にして被告が支部長であつたればこそ流血の惨を見なくて済んだのであります」と述べている。そして、引続き「何人をこの場合被告の立場におきましても、これ以上悪くなるとも決してよくはならなかつたのであります。換言すれば、被告に是れ以上期待することはできなかつたのでありますから、……被告に刑事責任を問うことは出来ないと固く信ずるものであります。即ち期待不可能性の理論よりいたしまして被告は無罪ということに相成るのでございます」と結んでいる。所論は、この点を捉えて刑訴三六〇条二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」に当ると言うのである。 さて、原判決理由においては、「被告人は……右令状に捜索すべき場所として記載された全部の場所にわたる捜索を拒否し、この間前記支部長室附近には、二、三十名の支部員が群がり「生命にかけても見せるものか」などと口々に怒号し、その一部の者は小児の頭ほどある大きな石塊をふり上げ「これで撲らなければ判らんだ」と叫びながら、A警部補をめがけて投げつけるような態度を示したりしたのであるが、被告人はこのような情況を察知するや更に同警部補に対し「このと ほどある大きな石塊をふり上げ「これで撲らなければ判らんだ」と叫びながら、A警部補をめがけて投げつけるような態度を示したりしたのであるが、被告人はこのような情況を察知するや更に同警部補に対し「このとおり若い者- 1 -も絶対に承知しない、B事件やC事件の例もある、強いて捜索するなら実力をもつてこれを阻止するであろう」と腕をまくり拳を振つて高声に怒号して、あくまで令状に示された捜索の実施を拒絶し、附近に群集している支部員の言動をあえて制止することもなく、むしろその気勢に威力をかりてみずからもまた叙上の言辞を弄してA警部補らを脅迫し、もし強いて令状に記載された全部の場所にわたる捜索を強行するときは、四囲の情況から判断して不測の流血事態を惹起すべきことを危倶させた」旨を判示している。そこで、原審における弁護人の前記期待可能性の理論の主張が、刑訴三六〇条第二項に該当するものとしてもこれに対する判断の判示方法は、必ずしも常に弁護人の主張事実を掲げてこれに対し直接的に判断を示す方法を採ることを要するものではなく、弁護人の主張する事実に関し却つて反対の事実を認定して、間接的に主張否定の判断を示す方法を採ることも差支えがたいと言わねばならぬ。本件において原判決は、前述のごとく群集している部員の言動をあえて制止することもなく、むしろその気勢に威力をかりてみずからも「強いて捜索するなら実力をもつてこれを阻止するであろう」と腕をまくり拳を振つて高声に怒号して、あくまで令状に示された捜索の実施を拒絶した旨を判示しているのであるから、間接的に弁護人の期待可能性の理論に基く事実の主張に対して否定の判断を示しているものと解するを相当とする。論旨は、それ故に理由がない。 同第二点、第三点について。 所論は、原審が判決をなすに当つて錯誤に陥つていたと主張するが錯誤に 基く事実の主張に対して否定の判断を示しているものと解するを相当とする。論旨は、それ故に理由がない。 同第二点、第三点について。 所論は、原審が判決をなすに当つて錯誤に陥つていたと主張するが錯誤に陥つたと見るべき箇所の存しないことは前点における説明に照らしても明らかである。弁護人は、原判決の認定しない事情を強調し独自の見解に立つて原判決を非難するに過ぎないから、論旨は採ることを得ない。 弁護人丹篤上告趣意について。 所論は、判示の捜索令状の具体的内容は、原判決に挙げている証拠からは推知し- 2 -得ないから証拠説明はその理由を欠くものであると主張する。しかしながら、原審において被告人に対して捜索令状の謄本は展示されているのであり、従つて原審公判廷における被告人の供述中に現われる捜索令状は右捜索令状の謄本と同一内容のものを意味することは明白である。それ故判示の捜索令状の内容は、被告人の原審公廷における供述を証拠として認められ得るわけである。されば、所論の証拠説明を欠くことの非難は是認し難く、論旨は採るを得ない。 同第二点について。 原判決に挙げている証拠によつて、被告人が公務の執行たることを認識していたことは明瞭に認められるところであるから、これ以上証拠を掲げる必要はない。なお捜索をする際には捜索令状の原本を示して若し公務執行の妨害をする者に対して犯罪事実の認識をなさしめることは必要であり、現にそのとおり示されたのであるが、裁判所が証拠調をする際には必ずしも常に捜索令状の原本についてなすを要するものではない。その謄本もまた原本と内容を同じくする公正証書であるから、謄本によつて令状の内容が判明し別段異議がない場合には原本を取寄せてこれについて取調をする必要はない。(所論原判決に被告事件とあるは被疑事件の誤りと認むべきものである)論 くする公正証書であるから、謄本によつて令状の内容が判明し別段異議がない場合には原本を取寄せてこれについて取調をする必要はない。(所論原判決に被告事件とあるは被疑事件の誤りと認むべきものである)論旨は、それ故に採ることができない。 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。 検察官小幡勇三郎関与昭和二四年九月一日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官真野毅裁判官沢田竹治郎裁判官岩松三郎- 3 -

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