平成12(わ)245 強盗殺人,窃盗,死体遺棄

裁判年月日・裁判所
平成13年10月31日 神戸地方裁判所 姫路支部
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判決文本文14,306 文字)

判決平成13年10月31日神戸地方裁判所姫路支部平成12年(わ)第245号強盗殺人,窃盗,死体遺棄被告事件 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中500日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯) 1 被告人は,昭和29年ころ地元の高校を中退後,ホテルのボーイ,運送会社やレジの販売会社等の勤務を経て,同53年ころから独立してBの屋号でレジの販売業を営むようになる一方,同61年ころからは,兵庫県加古川市内でレンタルビデオ店Cをも経営していた。 被告人は,その間,同40年7月に妻と結婚し,二人の子をもうけたものの,次第に競馬にのめり込むようになって,妻に内緒で多額の借金を抱え込むことになり,これが妻の知るところとなって,立腹した妻と同54年7月に離婚することとなったが,双方の親族等がその借金の肩代わりをして同年9月には無事借金を返済することができ,妻と再び籍を入れることとなった。しかしながら,被告人は,またしても競馬等により借金がふくれ上がり,再びこの借金のことが妻に発覚し,激怒した妻らに半ば放り出される形で,同59年8月に再度離婚することとなった。 そして,今度も双方の家族が協力して借金を肩代わりし,被告人も二度と無断で借金などしない旨約束して,同60年5月には再び妻と結婚することができた。 2 被告人は,再び結婚できた嬉しさに,今度こそは賭け事を止め,家族を裏切るまいと決意したが,前記B及びCの売上げが落ちたことなどから,パチンコでもして金儲けをしようと考え,パチンコにのめり込むようになり,パチンコ代を捻出するため,またも妻に無断でサラ金からの借入れを繰り返すようになった。そして,被告人は,平成11年3月ころには,妻に対し,以前友人の保証人になったときの借金が残っていると虚偽の事実を告げ,妻を保証人として銀行から15 に無断でサラ金からの借入れを繰り返すようになった。そして,被告人は,平成11年3月ころには,妻に対し,以前友人の保証人になったときの借金が残っていると虚偽の事実を告げ,妻を保証人として銀行から1500万円を借り入れて上記借金の返済を図ったが,その借金の全額を清算するには至らず,そのサラ金の返済のために別のサラ金から借入れを繰り返す自転車操業の状態に陥っていった。 3 被告人は,同年1月ころ,行きつけのパチンコ店で被害者Aと知り合い,パチンコ台の情報交換などをするうちに親しく付き合うようになり,同年6月ころには,Aから,「金がいるんやったら回したるで。」と言われたので,借用書等の作成はせずに,返済期限も定めることなく月2万円の利息を支払うということで120万円を借り入れた。 被告人は,同年12月ないし平成12年1月ころからAに元本の返済を求められるようになったが,サラ金の返済に追われていたことから再三にわたりAに支払の猶予を申し入れ,Aから兄に相談して金を工面するよう求められたため,兄になりすましてAに電話をかけ,支払猶予を求めたこともあった。 そのような中で,Aは,一向に借金を返済しようとしない被告人の態度に業を煮やし,被告人に対してその妻に借金返済の相談をするようにも求めたが,被告人は,前記のように,妻とは借金が原因で2回も離婚に至っている上,これまでの借金を全て清算し,二度と借金をしない旨を約束していたため,妻に頼ることもできなかった。そして,被告人は,同年2月ころに支払猶予を求めた際には,Aから,「ええ加減にしとけよ。」などと怒鳴りつけられ,その場しのぎに,同年3月一杯で借金を返済することを約束した。 被告人は,同月31日になっても,その借金返済の目途が立っていなかったため,Aに対し,書類ミスで当日は銀行からの融資ができなか けられ,その場しのぎに,同年3月一杯で借金を返済することを約束した。 被告人は,同月31日になっても,その借金返済の目途が立っていなかったため,Aに対し,書類ミスで当日は銀行からの融資ができなかったが4月3日には金ができる旨の嘘を申し向けて当座の支払猶予を求めたところ,Aはこれを了承した。被告人は,さらに支払を猶予してもらえるかもしれないと期待し,同日夜,兄になりすましてAに電話をかけ,支払猶予を求めたが,Aからは,「いつまで待たすんや。」などと怒鳴られ,支払猶予を得ることはできなかった。 4 被告人は,同年4月3日,Aに対し,銀行員が融資金を持って午後5時30分ころ前記Cに来ることになったと申し向け,同店への来訪を求めた。被告人は,同店を訪れたAに対し,銀行員が来るというのは嘘であると打ち明けて謝ったが,Aに,「初めからでけんと分かっとったんやったら,嘘をつかんとそう言わんかえ。」と怒鳴りつけられ,その左耳付近を殴りつけられた。被告人は,さらに支払猶予を求めたが,Aは借金を返済できないのであれば被告人の妻の所へ行くと言うばかりで,これを聞き入れなかった。被告人は,一旦カウンターの内側に戻り,何気なくカウンターの引き出しを開けてみたところ,その中に梱包用ロープがあるのが目に入り,その瞬間,Aを殺せば借金を返さなくてよくなるという考えが浮かび,ズボンのポケットにそのロープを滑り込ませた。 被告人は,なおも支払猶予を求めたが,Aがこれを受け入れなかったことから,Aを殺害して借金を踏み倒す覚悟を固めたものの,これを実行に移すことに踏み切れずに思い悩むうちに,Aが被告人への貸付けに関するメモを持っていたらそれを奪わなければならないが,そのメモがあるとしたら財布の中かもしれないので,殺した後で財布の中を確認しないといけないが,財布の中には金や 悩むうちに,Aが被告人への貸付けに関するメモを持っていたらそれを奪わなければならないが,そのメモがあるとしたら財布の中かもしれないので,殺した後で財布の中を確認しないといけないが,財布の中には金やキャッシュカードもあるだろうから,それも奪ってしまおうと考えるに至り,Aを殺害してその借金の返済を免れるとともに,同人の金品を強取することを決意した。 (罪となるべき事実)被告人は,第1 A(当時66歳)を殺害して同人に対する120万円の借金の返済を免れるとともに,同人の所持金品を強取しようと企て,平成12年4月3日午後5時50分ころ,兵庫県加古川市a町bc番地d所在のレンタルビデオ店Cの店内において,Aに対し,その背後から所携の前記梱包用ロープ(長さ約1.5メートル,直径約8ミリメートル)をその頸部に巻き付けて強く絞め付けた上,同所にあったテープカッターで同人の頭部を数回殴打するなどし,よって,そのころ,同所において,同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害した上,同人所有又は管理に係る現金約12万円及びキャッシュカード等2点在中の黒色財布1個(時価合計約1000円相当)を強取し,かつ,前記借金の返済を免れて同金額相当の財産上不法の利益を得た。 第2 前記強取に係るA名義のキャッシュカードを用いて同人名義の預金口座から現金を窃取しようと企て,別表(省略)記載のとおり,同月4日から同月6日までの間,6回にわたり,同県加古川市e町fg丁目h番地のi所在の株式会社D銀行E支店ほか3か所において,同所等に設置されている現金自動支払機にそのキャッシュカードを挿入して同機を作動させた上,同機から同支店支店長Fほか3名管理に係る現金合計484万円を窃取した。 第3 前記第1の犯行を隠蔽する目的で,同月3日午後6時ころ,前記Aの死体を前記Cの店内の便所に引 挿入して同機を作動させた上,同機から同支店支店長Fほか3名管理に係る現金合計484万円を窃取した。 第3 前記第1の犯行を隠蔽する目的で,同月3日午後6時ころ,前記Aの死体を前記Cの店内の便所に引きずり込み,これを黒色ポリ袋で包んで同便所内に隠匿し,次いで,その死体を布団袋に入れて収納ケースに詰め,自動車で搬送した上,同月11日午後零時30分ころ,同県明石市j町kl番地m所在のG店の駐車場内にあらかじめ止めていた同人所有の普通乗用自動車の後部トランク内にその収納ケースを積み込んで,その自動車ごと同所に放置し,さらに,同月12日午後零時ころ,その収納ケースを積んだその自動車を同県姫路市n区o町p丁目q番所在のH店駐車場に移動させて放置し,死体を遺棄した。 (証拠の標目)省略(事実認定に関する補足説明)第1 判示第1の犯行について 1 弁護人は,被告人がAを殺害するに際してAからの借金の返済を免れる意思も,Aの所持金品を強取する意思もなく,また,Aからの借金の返済を免れていないので,被告人には強盗殺人罪は成立しないと主張し,被告人も,公判廷において,かかる主張に沿い,Aを殺害したのは,Aが被告人の近所に住むAの親戚のところに行き被告人の借金の話を言いふらすと述べたので,そうなると家族が家に住めなくなると考えたためであって,A殺害の際に借金の返済を免れる意思や,Aの所持金品を奪う意思はなかった旨を供述しているが,当裁判所は,判示認定のとおり被告人に対して強盗殺人罪の成立を認めたので,この点につき,補足して説明する。 2 強盗の犯意について(1)ア被告人がAを殺害したこと自体については被告人もこれを認め,また,証拠上も明らかであるところ,その際に被告人において,債務を免れる意図及び金品を奪取する意図を有していたか否かを検討するに, (1)ア被告人がAを殺害したこと自体については被告人もこれを認め,また,証拠上も明らかであるところ,その際に被告人において,債務を免れる意図及び金品を奪取する意図を有していたか否かを検討するに,まず,上記の争いのある点にかかる被告人の捜査段階の供述以外の証拠により認定することができる事実として,①被告人は,Aから120万円を借り入れた平成11年6月当時には,サラ金からの借金が重なり,新たにサラ金から金を借りては他のサラ金の借金の返済に充てるという自転車操業の状態に陥っており,本件犯行当時にはサラ金10社からの借入額合計が500万円以上となり,その他にもCの客であったIから合計500万円以上もの借金をし,同年10月ころから再三にわたりその返済を求められ,本件犯行時には残元金として330万円を返還する旨を約束していた状況にあったこと,②平成11年9月に発注したCの看板の費用も一部である16万円が同12年に入ってから支払われない状況にあり,被告人は,同年3月末に督促を受けた際には同年4月12日に支払う旨を約束していたこと,③被告人は,これまで2回にわたり,妻に無断で借金を作ったことから離婚に至った経験があり,その借金の原因が競馬であったことを妻には隠し通し,サラ金からの借金については平成11年3月ころの借入れにより清算した旨の嘘をついて妻を安心させており,また,妻との2度目の離婚の際に,兄に保証人になってもらい借金を返済したことから,兄から絶縁を申し渡されていたこと,④被告人がAから金銭を借り入れるに際しては借用書等の書面は何ら作成されていないこと,⑤被告人は,平成11年12月か同12年1月ころからAに元本の返済を求められるようになり,支払の猶予を求め続けていたところ,同年2月には激しく怒鳴られて一旦は同年3月一杯で支払う旨を約束するに と,⑤被告人は,平成11年12月か同12年1月ころからAに元本の返済を求められるようになり,支払の猶予を求め続けていたところ,同年2月には激しく怒鳴られて一旦は同年3月一杯で支払う旨を約束するに至ったがこれを守ることができず,銀行から金を借りることができるという虚偽の事実を告げて取りあえず本件当日の同年4月3日まで支払を猶予してもらった状況にあったこと,⑥被告人は,本件殺害行為の当日,銀行からの借入れの話が嘘であった旨をAに打ち明け,更なる支払猶予を懇願したが,激しい怒りを露にしたAにこれを拒絶され,その直後にAを殺害するに至ったこと,⑦被告人は,本件犯行後,現金やキャッシュカード等が入ったAの財布を持ち去り,同年4月4日から同月6日までの間に,盗んだキャッシュカードを利用して現金合計484万円を引き出し,その金員の中から前記Iに対する借金の返済や看板費用の支払を行っていることなどの事実を認めることができる。 イなお,弁護人は,被告人には多額の収入と十分な資産があり,サラ金からの借入れの返済に窮していた状況は全くなく,Aを殺害して金品を奪い,借入金の返済を免れる動機はなかったと主張し,被告人は,C及びBの売上げと年金を併せると,毎月60万円前後の収入があることや,妻に内緒で,1か月あたり約40万円の金員を売上げから抜き取っていたなどと供述するが,かかる店舗の売上げ及び年金等の収入並びに店舗や自宅等の資産は,基本的には被告人の一存で自由に処分できる財産ではなく,被告人は,妻に借金のことを隠しており,Aの口から妻に借金のことが伝わり,再び離婚に追い込まれることを極度に恐れていたのであるから,かかる収入及び資産の全てを自由に使えるものではなかったといえ,また,被告人が,店舗の売上げから抜いていたという金銭についても,その殆どはパチンコ代や 追い込まれることを極度に恐れていたのであるから,かかる収入及び資産の全てを自由に使えるものではなかったといえ,また,被告人が,店舗の売上げから抜いていたという金銭についても,その殆どはパチンコ代やサラ金の利息の返済に充てられていたのであって,そうだからこそ,被告人は,Aからの度重なる返済の督促にも応じることができず,その他にも,Iからの借金の返済もままならず,犯行の1か月程前の平成12年2月末にもサラ金の利息の支払等のために取立てが厳しい個人経営の消費者金融から50万円を借り受けており,少なくとも,被告人が本件犯行当時,Aからの借金を直ちに返済することができる見込みは全くなかったものと認めることができる。 ウしたがって,被告人が,本件犯行当時,パチンコが原因となり多額の借金を抱えて経済的に困窮し,Aから証拠となるような書面の作成のないまま120万円もの金員を借り受けたものの,その元本の支払を求められるようになっても妻や兄には借金のことを相談することができずに支払猶予を頼み込むばかりであったが,やがて,Aから強く支払を求められるようになるといよいよ切羽詰まった状況に陥り,その場しのぎに支払の目途があるかのような嘘をつくなどし,Aにその嘘がばれて支払猶予を拒絶されるや,同人を殺害するに至り,その後キャッシュカード等を奪い現金を引き下ろして債務の一部を弁済するなどしたことが認められるところ,かかる事実からは,被告人がAを殺害するに際し,同人に対する債務を免れ,併せてその所持金品を奪う意図を有していたであろうことが強くうかがわれる。 (2) 被告人の自白調書の任意性及び信用性についてさらに,被告人がAを殺害するに際して借金返済を免れる意思や金品を奪う意思を有していたことを認める旨の警察官及び検察官に対する各供述調書が作成されているところ, 自白調書の任意性及び信用性についてさらに,被告人がAを殺害するに際して借金返済を免れる意思や金品を奪う意思を有していたことを認める旨の警察官及び検察官に対する各供述調書が作成されているところ,弁護人はかかる自白には任意性及び信用性がない旨を主張しているので,この点につき検討する。 ア被告人の捜査段階の供述経過は下記のとおりである。 被告人は,平成12年4月19日の朝からJ警部補の求めに応じて加古川警察署に出頭し,翌20日午前零時40分ころまでの間,Aを殺害した容疑で取調べを受けたが,その際は,事件へのかかわりを否定し,一旦帰宅した。 被告人は,帰宅した際,家族に対し,Aを殺害したことを打ち明けたところ,被告人の予想に反して妻や娘らは被告人を待っているから罪を償うよう述べたことから,同日午前3時過ぎころ,再び同警察署に出頭し,J警部補に対して自分がAを殺害したことを申告し,その旨の自首調書が作成された。そして,被告人は,引き続き逮捕状により通常逮捕され,同日午前中に,Aを殺せば妻に借金がばれず,借金の返済も免れると頭にひらめいて殺害した旨の記載がある供述調書が作成され,その後の警察及び検察での取調べにおいても,同様の内容の調書が作成された。 そして,同年5月3日の神戸地方検察庁姫路支部におけるK検事の取調べにおいて,被告人がAを殺して借金を踏み倒し,ついでに財布からお金を奪おうと考えてAを殺した旨の供述調書が作成され,同月7日にはJ警部補の取調べにおいても同様の調書が作成され,以後,警察及び検察において,被告人には借金返済を免れる意図のみならず,Aから金品を奪う意図もあった旨の供述調書が作成された。 そして,被告人は,同月11日,強盗殺人,窃盗,死体遺棄罪の本件公訴事実により神戸地方裁判所姫路支部に起訴され,同支部で勾留質問を受け ならず,Aから金品を奪う意図もあった旨の供述調書が作成された。 そして,被告人は,同月11日,強盗殺人,窃盗,死体遺棄罪の本件公訴事実により神戸地方裁判所姫路支部に起訴され,同支部で勾留質問を受けた際,同支部裁判官に対し,事実はそのとおり間違いない旨を述べた。 イ以上の内容の自白調書に関し,弁護人は,①同年4月19日の任意の取調べにおいてJ警部補が被告人の数度にわたる帰宅の申出を拒んで深夜まで取調べを続けており,かかる取調べは任意捜査として許される範囲を逸脱したものであって,また,被告人の再出頭後も徹夜で取調べを続けている,②J警部補は,自首調書を作成して被告人に自首が成立するものと誤解させ,これに乗じて取調官に有利な自白を引き出したものである,③被告人は同年5月6日の実況見分中に右足指を骨折して痛みが続き,正常な判断ができない状態にあったにもかかわらず,捜査当局が取調べを続けて供述調書を作成したものである,④被告人の犯行時の心理経過の録取内容や短時間の取調べで膨大な量の検察官調書が作成されていることなどからしてみても,K検事やJ警部補は,誘導・誤導により強盗の犯意を認める被告人の供述調書を作成したものである,⑤同月11日の勾留質問も,裁判官と捜査官の区別もつかないまま違法な取調べの影響下において行われたものであるなどと主張し,被告人の上記自白には任意性がなく,また,併せて,被告人が逮捕された際にパニック状態に陥っており,その後の足指の骨折の痛みや鎮痛剤の副作用,高血圧症等の事情から正常な心理状態で取調べを受けることができず,同月7日に被疑事実が強盗殺人となったことを知ってK検事やJ警部補に説明を求めたが納得できる回答が得られず,投げやりな気持ちで取調べに応じたことなども指摘した上で,被告人の上記自白には信用性がないなどと主張し,被 実が強盗殺人となったことを知ってK検事やJ警部補に説明を求めたが納得できる回答が得られず,投げやりな気持ちで取調べに応じたことなども指摘した上で,被告人の上記自白には信用性がないなどと主張し,被告人も公判廷においてかかる主張に沿う事実を供述する。 しかしながら,K検事及びJ警部補は,その取調べ経過につき具体的に証言しているところ,J警部補は,同年4月19日の取調べにおいて被告人から帰宅の申出はなく,翌20日の再出頭時には被告人に対して眠くないかなどと確認をしたが,被告人は早く調べてほしい旨を述べたので取調べを続けて午前中でこれを終え,午後は取調べをしていないこと,その時点では,まだ逮捕状の請求に至っていなかったことなどから自首が成立すると判断して自首調書を作成したが,その際には裁判の情状で有利になるから作成すると説明するなどしてはいないこと,同年5月6日の実況見分時に足の指を骨折した後も被告人から取調べに支障がある旨の訴えはなく,むしろ取調べに支障はない旨を述べていたこと,被告人は2項強盗の犯意は逮捕時から一貫して認めており,同警部補としても被告人がAの所持金品を奪う意図も有していたのではないかと思っていたが,被告人との人間関係ができるまで本格的な追及は待とうと考えて取調べを続けたところ,同月7日に1項強盗の犯意を認めたことなどを証言し,K検事は,弁解録取の段階で2項強盗の犯意につき誘導をしないよう注意して確認したが被告人はこれを認めていたこと,同月3日の取調べにおいては,被告人が意外にすんなりと1項強盗の犯意を認めたこと,同月7日に被告人が足の指を骨折して車椅子で取調室に入ってきた際,帰って休んでもよい旨を告げたが,被告人が大丈夫であるなどと述べたので取調べを行ったこと,被告人は饒舌で語彙も豊富であったので,その言葉で表現しても 人が足の指を骨折して車椅子で取調室に入ってきた際,帰って休んでもよい旨を告げたが,被告人が大丈夫であるなどと述べたので取調べを行ったこと,被告人は饒舌で語彙も豊富であったので,その言葉で表現してもそのまま調書を起こすのにさほど苦労せず,調書は割合早く作ることができたことなどを証言している。 K検事及びJ警部補のかかる証言内容は,それ自体不自然なところがなく,具体的かつ詳細であって,被告人の供述内容の疑問点につき確認していく状況やその際の取調官としての内心の状況等に関し自然で臨場感もあり,信用性が高いものといえる。その一方で,被告人の公判廷での供述は,各調書の作成過程について適切に説明できない部分が多く,あいまいで不自然なものというほかなく,また起訴後間もなく警察官に手紙を出し,J警部補らに大変良くしてもらった旨の謝礼の言葉を述べており,これは意に沿わぬ供述調書を作成された者の態度としては不自然であって,被告人の公判廷での供述は信用することができない。 したがって,K検事らの証言により認められる被告人の取調べ状況にかんがみれば,自白の任意性に関する上記弁護人の主張は,その多くにつき前提を欠くものであって,被告人の自白については任意になされたものと認めることができる。 そして,かかる取調べ状況に併せ,債務の返済を免れる意思については逮捕された日から一貫してこれを認めていること,財物奪取の意思についても一旦これを認めた後は起訴時の勾留質問の段階まで変遷がないこと,これらの意思の形成過程等についての供述も自然かつ具体的で迫真性に富む内容であること,これらは前記(1)アで指摘した諸事実にも合致すること,被告人は公判廷においてAを殺害した理由について同人が親戚等に被告人の借金の話をして隣保にその噂が広まり,被告人の家族が家に住めなくなるのを恐れ れらは前記(1)アで指摘した諸事実にも合致すること,被告人は公判廷においてAを殺害した理由について同人が親戚等に被告人の借金の話をして隣保にその噂が広まり,被告人の家族が家に住めなくなるのを恐れたためであると供述するものの,捜査段階においてはかかる事情は付随的に述べられているに過ぎず,そのような供述の変遷について覚えていないなどと述べるのみで合理的な説明をすることができないでいることなどにかんがみると,債務の返済を免れ,あわせて金品を奪おうと考えてAを殺害したとの被告人の捜査段階での供述は十分にこれを信用することができる。 3 殺害行為による債務支払免脱及びその認識の有無弁護人は,Aが知人らに対し被告人に対する貸付けのことを話しており,多数の者が当該貸金のことを知っていたのであって,Aが死亡しても,その相続人が被告人に対して債権を追及することは容易であったとして,被告人は財産上不法の利益を得たものではなく,また,被告人はAが知人に被告人に対する貸金のことを話していると考え,Aを殺害しても借金の返済を免れることができないと思っていたので,被告人には債務の支払を免れる意思はなかったと主張する。 確かに,Aは,知人のLやMらに対して被告人に金銭を貸し付けている旨を告げているが,その内容は抽象的なものにとどまっていたり,酒の席での話で,聞いた者がその詳細を記憶していなかったりして,当該貸付けの具体的な内容がA以外の者に明らかとなっていたとはいえない上,Aの相続人であるその妻や娘らも,Aの被告人に対する貸付けについて具体的に認識していたものではなく,現に被告人が自白するまで当該貸付けのことを具体的に知ることはできなかったのであり,また,当該貸付けに関して借用書等の書面は何ら作成されていなかったのであって,これらの諸事情にかんがみれば,Aが殺 現に被告人が自白するまで当該貸付けのことを具体的に知ることはできなかったのであり,また,当該貸付けに関して借用書等の書面は何ら作成されていなかったのであって,これらの諸事情にかんがみれば,Aが殺害された場合,その相続人が被告人に対して本件貸付金の返済を求めることは著しく困難となる状況にあったと認められ,Aの殺害により,事実上債権の請求をなし得ない状態に陥らせて債務の支払を免れたものと評価することができる。 また,かかる点についての被告人の認識についても,被告人は,公判廷において,Aが上記Lらと飲みに行くのを見て,貸付けのことを話すと思ったと述べるが,そう考えた理由も人間は飲んだら何でも言うのでないかというさほど根拠のあるものでない上,捜査段階においては,借用書等のない借金なのでAを殺せば借金を返さずに済むと考えた旨を繰り返し供述しており,前記の被告人の自白の信用性における検討結果にかんがみても,かかる捜査供述は十分に信用できる。 以上により,被告人は,Aを殺害したことによりAからの借金の返済を免れて「財産上不法の利益を得」(刑法236条2項)たものであって,その旨の認識もあったものと認めることができ,弁護人の上記主張は採用できない。 4 以上より,判示第1のとおり,被告人は,Aに対する120万円の借金の返済を免れるとともに,同人の所持金品を強取しようと考えて同人を殺害したものと認定した次第である。 第2 判示第3の犯行について被告人は,平成12年4月11日午後零時30分ころ,G店の駐車場内において,Aの所有する普通乗用自動車の後部トランクにAの死体の入った収納ケースを積み込んだ事実はあるが,その後すぐに,同車を運転して同駐車場を出て,その足で同車をH店に移動させており,G店の駐車場に翌12日まで同車を放置した事実はない旨供述し, にAの死体の入った収納ケースを積み込んだ事実はあるが,その後すぐに,同車を運転して同駐車場を出て,その足で同車をH店に移動させており,G店の駐車場に翌12日まで同車を放置した事実はない旨供述し,弁護人もまた同様の主張をする。 しかしながら,G店駐車場の警備員であるNの司法警察員に対する供述調書によると,同人が,同月11日午後9時30分ころに確認したところ,同駐車場に上記普通乗用自動車が駐車されており,同月12日に出勤したところ,午前8時30分ころの開店時には同車が駐車していたとの引継ぎを受けたというのであって,また,H店の保安係であるOの司法巡査に対する供述調書によれば,同店駐車場に自由に出入りできるのはおおむね午前9時30分ころから午後9時30分ころまでの間であり,同月11日には上記普通乗用自動車は駐車されておらず,同月12日午後9時30分ころに初めて同車を確認したとのことであり,これらの事実に反する被告人の上記公判供述を信用することはできず,むしろ,判示第3記載の事実のとおりの被告人の捜査段階の供述こそ信用することができることから,同事実を認定した。 (自首の成否について)弁護人は,被告人が平成13年4月20日に加古川警察署に出頭してA殺害の事実を申告したことをもって自首が成立する旨主張するが,関係各証拠によれば,警察においては,Aが知人に対して被告人の借金の保証人になる旨を告げてCを訪れてから行方が分からなくなったこと,Aが電話で話をしていた際に被告人が借金の返済をしないとして怒っていた様子をAの家族が聞いていたこと,Aは経済的に困窮していなかったこと,被告人はサラ金などからの借金があったこと,それにもかかわらず被告人はAがCを訪れてきた際にAの借金の保証人になってほしいと頼まれた旨の説明をしていたことなどから,被告人を本 窮していなかったこと,被告人はサラ金などからの借金があったこと,それにもかかわらず被告人はAがCを訪れてきた際にAの借金の保証人になってほしいと頼まれた旨の説明をしていたことなどから,被告人を本件の最も有力な容疑者として特定し,同月19日に被告人に任意同行を求めて任意での取調べを行うとともに,被告人が経営するCの捜索を行い,同店からは血痕様のものが付着したガムテープが発見されたことが認められ,これらの事情にかんがみると,被告人の上記出頭時には,警察において合理的根拠に基づいて被告人を犯人として特定していたものであって,犯人が捜査機関に発覚していたものとみるべきであるから,自首が成立するものとはいえず,弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用) 1 罰条(1) 判示第1の所為刑法240条後段(2) 判示第2の所為同法235条(3) 判示第3の所為同法190条 2 刑種の選択判示第1の罪について無期懲役刑 3 併合罪の処理同法46条2項本文 4 未決勾留日数算入同法21条 5 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,被害者を殺害して同人に対する借金の返済を免れるとともに,同人の所持金品を強取しようと企て,同人を殺害した上,現金及びキャッシュカード等在中の同人の財布を強取し,かつ,前記借金の返済を免れて財産上不法の利益を得,さらに,前記強取に係るキャッシュカードを用いて同人名義の預金口座から現金を窃取した上,被害者の死体を遺棄したという事案である。 被告人は,競馬にのめり込んで借金を作ったため二度にわたって妻との離婚を余儀なくされ,いずれの場合も親族の援助で借金を清算して復縁するに至っていたにもかかわらず,今度はパチンコにのめり込むように 被告人は,競馬にのめり込んで借金を作ったため二度にわたって妻との離婚を余儀なくされ,いずれの場合も親族の援助で借金を清算して復縁するに至っていたにもかかわらず,今度はパチンコにのめり込むようになってまたもサラ金から借金を重ねる中で,パチンコ店で知り合って交際を続けていた被害者の好意で120万円もの金銭を借り受けたところ,同人から再三にわたり借金の返済を求められるようになり,一旦はその場限りの嘘の返済約束をしたが,窮してそれが嘘であることを打ち明けて謝り,更なる支払猶予を求めたが,激高した被害者から怒鳴られたり殴られたりした上,借金を返済することができないのであれば妻のところに行くなどと告げられたため,被害者を殺害してこれを阻止するとともに,同人に対する借金の返済を免れ,同人の所持金品を強取しようと考えて本件犯行に及んだものであり,場当たり的で身勝手な生活を続けた挙げ句,自らの保身のため人一人の尊い命を奪うに至ったその経緯及び動機に酌量すべき余地は全くない。 また,本件各犯行の態様についてみると,被告人は,被害者の背後から近づき,ロープをその首に巻き付けて渾身の力を込めて絞め付け,必死で抵抗しようとしていた同人が意識を失い倒れようとするや,止めを刺すためテープカッターでその頭部を殴打し,さらに倒れて痙攣する同人を同様に殴打するなどして殺害した上,その後およそ2週間もの間,被害者の死体を店舗のトイレや車のトランクの中に押し込み,腐敗が進んで膨張し,変わり果てた無惨な姿になるまでこれを放置していたものであって,残忍かつ非情というほかはない。 しかも,被告人は,強取したキャッシュカードを用い,6回にわたり,合計484万円もの現金を引き出し,逮捕されるまでの間に,そのほとんどを借金の返済等として費消するなどし,また,被害者の遺族や知人らが しかも,被告人は,強取したキャッシュカードを用い,6回にわたり,合計484万円もの現金を引き出し,逮捕されるまでの間に,そのほとんどを借金の返済等として費消するなどし,また,被害者の遺族や知人らが行方不明となった被害者のことを尋ねに来た際には素知らぬ顔をして応対した上,その後に間もなく被害者の口座が止められてしまうと考えて口座の残金の引き出しを行うなどしており,犯情は悪質である。 被害者は,定年退職後,年金等で生計を立て,パチンコを趣味として楽しむなどして妻とともに平穏に暮らし,娘や孫らからも慕われて幸せな生活を送っていたところ,深い信頼を寄せていた友人である被告人の手により突如としてその生命を奪われたものであり,その無念さは到底計り知ることができない。のみならず,突然,夫や父親を奪われた上,遺体の損傷が激しかったために遺体との対面すら叶わなかった妻や娘ら遺族の痛恨,悲嘆の情は,察するに余りがあり,当公判廷に出廷した被害者の次女も,示談書を交わした後もなお,被告人に対し極刑を望み,被告人に対する怒りの情を露にするなど,遺族らの心情は,到底和らいでいるとはいえない。 以上の諸事情を考慮すると,被告人の刑事責任は極めて重大である。 そこで,被告人が,当初から本件犯行を計画していたものではないこと,殺人,窃盗及び死体遺棄の限度においては一貫してこれを認め,被害者に対する謝罪の意を表していること,被害者の遺族らとの間で示談書を取り交わして950万円を支払い,その際の示談書においては遺族らが被告人を宥恕する旨が示されていること,被告人には業務上過失傷害等による交通関係の罰金前科を除き前科前歴がないこと,被告人の妻及び長男が,当公判廷において被告人のために証言し,あわせて遺族らに謝罪の意思を表していること,その他の弁護人主張の諸事情等,被告人 傷害等による交通関係の罰金前科を除き前科前歴がないこと,被告人の妻及び長男が,当公判廷において被告人のために証言し,あわせて遺族らに謝罪の意思を表していること,その他の弁護人主張の諸事情等,被告人のために酌むべき事情も考慮に入れて検討するも,前記本件犯行に係る諸事情にかんがみると,被告人において終生をもって罪の償いをさせるのが相当であると思料し,被告人を無期懲役に処するべきものと判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (検察官三澤あずみ,私選弁護人吉田保之各出席)(求刑無期懲役)平成13年10月31日神戸地方裁判所姫路支部刑事部裁判長裁判官横山敏夫裁判官小倉哲浩裁判官平城恭子・

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