平成23年7月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成21年ワ第16490号 商標権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年5月23日判決原告株式会社新日本技建同訴訟代理人弁護士原田紀敏被告有限会社オートケミカル被告P 上記両名訴訟代理人弁護士田野 壽同妹尾直人同宮崎隆博同石倉 尚同訴訟代理人弁理士森 寿夫主文 1 被告有限会社オートケミカルは,原告に対し,41万3961円(ただし,4万1396円の限度で被告Pと連帯して)及びこれに対する平成21年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Pは,原告に対し,被告有限会社オートケミカルと連帯して4万1396円及びこれに対する平成21年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の4,被告有限会社オートケミカルに生じた費用の5分の4,被告Pに生じた費用の20分の19を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。 5 この判決は,1及び2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告らは,別 を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。 5 この判決は,1及び2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告らは,別紙標章目録記載1ないし8の標章が付された塗装用商品を製造,販売,施工又は使用してはならない。 (2) 被告らは前項の商品を廃棄せよ。 (3) 被告らは,原告に対し,連帯して,2736万円及びこれに対する平成21年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (5) (3)項につき仮執行宣言 2 被告ら(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない又は弁論の全趣旨により認めることができる。)(1)当事者原告は,塗料の製造,販売,塗装工事,防水工事及び建築工事等を目的とする会社である。 被告有限会社オートケミカル(以下「被告会社」という。)は,自動車の外装保護剤販売及びカーフィルム販売,施工指導等を目的とする会社である。被告Pは,被告会社の代理店である。 (2)原告の商標権原告は,次の各登録商標(以下,併せて「本件各登録商標」という。)に係る各商標権(以下,併せて「本件商標権」という。)を有している。ア本件登録商標1登録番号第4805956号登録日平成16年9月24日出願日平成13年6月15日指定商品及び役務の区分第2類指定商品ポリマー塗料登録商標ポリマーガードイ本件登録商標2登録番号第5118108号登録日平成20年3月14日出願日 び役務の区分第2類指定商品ポリマー塗料登録商標ポリマーガードイ本件登録商標2登録番号第5118108号登録日平成20年3月14日出願日平成17年12月27日指定商品及び役務の区分第1類指定商品ポリマーを用いたコーティング剤指定商品及び役務の区分第3類指定商品ポリマーを用いて撥水効果を有するコーティング剤指定商品及び役務の区分第6類指定商品ポリマーを用いた建築用又は構築用の金属製専用材料指定商品及び役務の区分第11類指定商品ポリマーを用いた便所ユニット,ポリマーを用いた浴室ユニット指定商品及び役務の区分第37類指定役務ポリマーを用いた塗装工事指定商品及び役務の区分第41類指定役務ポリマーを用いた塗装工事の教授登録商標ポリマーガード(3)被告らの行為被告会社は,別紙標章目録記載1ないし8の各標章(以下,個別には「被告標章1」ないし「被告標章8」といい,併せて「被告各標章」という。)を付した自動車の塗装表面保護用コーティング剤(以下「被告商品」という。)を製造,販売していた。 被告Pは,被告会社から被告商品を購入し,専らインターネットを利用して販売していた。 (4)原告の取扱商品原告は,専ら建築用塗料を販売しており,自動車の塗装表面保護用コーティング剤は販売していない。 2 原告の請求原告は,被告らの行為により本件商標権が侵害されたとして,被告らに対し,商標法(以下「法」という。)36条1項に基づき,被告各標章の使用行為の差止めを,同条2項に基づき,被告商品の廃棄を,民法709条,法38条2,3項に基づき,2736万円の損 として,被告らに対し,商標法(以下「法」という。)36条1項に基づき,被告各標章の使用行為の差止めを,同条2項に基づき,被告商品の廃棄を,民法709条,法38条2,3項に基づき,2736万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求めている。 3 争点(1)被告商品と本件登録商標1の指定商品の類否 (争点1)(2)被告各標章と本件各登録商標の類否 (争点2)(3)本件登録商標2の商標登録は無効であるか (争点3)(4)被告会社は,被告各標章について法32条に基づく先使用権を有するか(争点4)(5)損害額 (争点5)(6)差止請求の可否 (争点6)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告商品と本件登録商標1の指定商品の類否)について【原告の主張】(1)被告商品と本件登録商標1の指定商品とが同一であることア被告商品が塗料であること商標法施行規則別表は,塗料に属するものとして「油ペイント,漆,エナメル,防水塗料,ラッカー,ワニス」等の商品を挙げている。特許庁の審査基準でも,「この概念には,流動性の物質で,物体の表面に塗布すると固化し塗膜を形成するものが含まれる。」とされている。一般にも,塗料とは,「物体の表面に防腐・さび止め・着色・つやだしのために塗る流動性の物質」,「対象物を保護・美装,または,独自な機能を付与するために,その表面に塗りつける材料のこと」をいう。本件登録商標1の指定商品は「ポ 面に防腐・さび止め・着色・つやだしのために塗る流動性の物質」,「対象物を保護・美装,または,独自な機能を付与するために,その表面に塗りつける材料のこと」をいう。本件登録商標1の指定商品は「ポリマー塗料」である(前提事実2ア)。被告商品は,フッ素ポリマー,ケイ素ポリマー,セルロース繊維素を化学的に結合させたガラス繊維被膜で自動車の塗装表面を保護するコーティング剤である。したがって,被告商品は,流動性の物質であり,物体の表面に塗布して塗膜を形成するものであるから,塗料である。イ原告が出願経過において指定商品を建築用の塗料に限定したとする後記被告の主張は,否認する。(2)被告商品と本件登録商標1の指定商品が類似すること次のとおり,被告商品と塗料とは,材料,用途,生産者,販売者及び需要者が同じであり,商品として共通する点が多い。また,通常同一営業主により製造又は販売されているものであるから,これらの商品に同一又は類似の商標を使用したときに,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがある。よって,類似する商品に当たる。 ア被告商品の原材料であるシロキサン系,ポリシラサン系,ガラス系化学 成分は,塗料として広く用いられているものである。また,塗膜の厚さは,塗料よりもコーティング剤の方が総じて薄いものの,付着耐久力により別個の商品として区別できるものではない。イいずれも化学品メーカーが製造している。ウ自動車の塗装及びコーティング処理作業は,いずれも自動車整備業者が行うものであり,最終的な需要者も自動車の使用者であり,共通である。エポリシロキサンのコーティング剤は自動車のみならず,建材塗装にも用いられるものである。また,自動車及び住宅建材の両方について,コーティングを施工している施工業者 車の使用者であり,共通である。エポリシロキサンのコーティング剤は自動車のみならず,建材塗装にも用いられるものである。また,自動車及び住宅建材の両方について,コーティングを施工している施工業者もいる。オコーティング剤は,板金塗装店,修理工場などで販売されており,塗装に関する一連の商品群として捉えられるものである。【被告らの主張】(1)被告商品と本件登録商標1の指定商品との同一性被告商品は,塗料ではなく,本件登録商標1の指定商品と異なる。ア本件登録商標1の指定商品であるポリマー塗料は,建築物・構造物の表面の保護に用いられるものであるのに対し,被告商品は,ポリマーを用いた自動車の塗装表面保護用コーティング剤であり,用途が異なっている。また,ポリマー塗料が20年程度の耐久力を有するのに対し,被告商品は,せいぜい2,3年程度の付着力を持続するにとどまるから,耐久性も異なっている。コーティング剤が自動車用ワックスの延長線上に開発されたいわゆるアクセサリー商品であることからしても,取引通念上,塗料とは認識されない。イ特許庁の審査基準でも,第1類の「化学品」と第2類の「塗料」は非類似であるとされており,その審査実務においても,塗料とコーティング剤とは非類似であるとの取扱いが安定的にされている。 ウそもそも,「ポリマー塗料」は,特許庁の審査基準に例示されていないのはもちろんのこと,用語辞典などの各種文献にも掲載されておらず,いかなる塗料を指すのかが明らかでない。原告は,出願当時,広く塗料一般ではなく,建築用に限定された塗料のみを指定商品として意図していたこと及び「ポリマー」の字義からすれば,「ポリマー塗料」とは,「高分子重合体(ポリマー)により耐候性を高めた建築用塗料」のみを指すものであ く,建築用に限定された塗料のみを指定商品として意図していたこと及び「ポリマー」の字義からすれば,「ポリマー塗料」とは,「高分子重合体(ポリマー)により耐候性を高めた建築用塗料」のみを指すものである。(2)被告商品と本件登録商標1の指定商品との類似性被告商品と本件登録商標1の指定商品は,前記1のとおり,品質・用途が全く異なり,部品と完成品の関係にもない上,次のとおり,生産部門・販売部門・需要者も全く異なるから,類似する商品にも当たらない。ア製造者は,ポリマー塗料が塗料製造業者中心であるのに対し,被告商品は化学品製造業者が中心である。イ販売者は,ポリマー塗料が塗料販売業者であるのに対し,被告商品はオートケミカル用品業者,自動車補修用塗料販売業者である。ウ需要者は,ポリマー塗料が建築・建設業者であるのに対し,被告商品は自動車ディーラー,修理工場,板金塗装店,洗車店,ガソリンスタンド,自動車所有者等である。 2 争点2(被告各標章と本件各登録商標の類否)について【原告の主張】被告各標章は,「ポリマーガード」という称呼を有しているが,本件各登録商標の称呼と同一であるなど,被告各標章は,本件各登録商標に類似する。 【被告らの主張】争う。 3 争点3(本件登録商標2の商標登録は無効であるか)について【被告らの主張】 本件登録商標2の商標登録は,次の理由から無効である。 (1)法4条1項10号該当事由次のとおり,被告標章1及び5は,本件登録商標2の出願当時において,被告らの業務に係る商品を表示するものとして需要者である自動車ディーラー,修理工場,板金塗装店,洗車店及び最終的な需要者の間に広く認識されていた。 ア被告商品の販売開始と販売先(ア)被告会社代表者は,平 表示するものとして需要者である自動車ディーラー,修理工場,板金塗装店,洗車店及び最終的な需要者の間に広く認識されていた。 ア被告商品の販売開始と販売先(ア)被告会社代表者は,平成5年8月ころ,他社と共同で被告標章1を付した被告商品の販売を開始し,その後も,岡山県及び近隣の自動車ディーラー・修理工場・板金塗装店・洗車店等を中心に販売を続けた。 平成12年には,「ポリマーガードⅡ」の標章を付した商品の販売を開始し,平成14年には,被告標章5を付した被告商品の販売を開始した。平成14年10月からは,関西・中国地方に約280の販売先施工店を有する株式会社サンエースに対し,上記商品を納入するようになり,平成15年4月からは,同社が運営する自動車用塗料販売店の全国組織「トップネットグループ」の会員を販売代理店として販売するようになった。「トップネットグループ」の他の会員は,北海道に約80の販売先施工店を有するマルサン塗料株式会社,東北地方に約104の販売先施工店を有する協立塗料株式会社,関東地方に約380の販売先施工店を有する伊丹塗料株式会社,九州・山口地方に約120の販売先施工店を有する大井産業株式会社である。(イ)また,被告会社代表者は,平成15年5月1日,被告会社を設立し,平成16年からは,オートグラス株式会社,大日本塗料グループのDNT山陽ケミカル株式会社,大同産業株式会社,中国資本の孔雀マット工業株式会社及び被告Pとそれぞれ販売代理店契約を結び,被告商品を販売していた。 (ウ)上記アのとおり,被告標章5を付した被告商品の施工店の数は,平成17年10月の時点において,全国で約700以上に達していた。また被告商品の直接の販売先も,平成17年7月時点で,100営業所を超えていた。 ,被告標章5を付した被告商品の施工店の数は,平成17年10月の時点において,全国で約700以上に達していた。また被告商品の直接の販売先も,平成17年7月時点で,100営業所を超えていた。イ被告会社の売上高平成15年4月から平成17年12月までの期間において,年間3100万円ないし3200万円であった。これは,ほぼすべて被告商品及びその付帯商品によるものであった。ウ被告商品の施工台数及び市場シェア(ア)被告商品は,平成9年から平成12年にかけて,岡山県及び広島県の一部地域において合計1万1600台に施工された。当時の岡山県及び広島県における1年間当たりの新車登録台数は,合計11万8000台であった。当時,多くとも新車購入者の約1割しか自動車に対するポリマーコーティングをしていなかったことから,当時,岡山県及び広島県において,ポリマーコーティングを施工された自動車台数は多く見積もっても合計4万7200台程度である。したがって,被告商品は,これらの地域においてポリマーコーティングを施工する自動車のうち20パーセント以上のシェアを有していた。(イ)被告標章5を付した被告商品は,平成15年から平成17年にかけて,全国で延べ約2万5000台の自動車に施工された。エ被告商品の広告宣伝被告各標章は,被告商品のボトルに貼付するシール,施工自動車に貼付するステッカー,パンフレット,保証書兼取扱説明書,施工証明書,チラシ及び施工料金表などに使用され,広く需要者の目に触れていた。また,被告会社の販売代理店は,独自に施工店用の立看板やのぼりを作成しており,各施工店は,パンフレット,自動車情報誌,インターネットなどを利用して,旺盛な広告宣伝活動をした。これらの広告宣 被告会社の販売代理店は,独自に施工店用の立看板やのぼりを作成しており,各施工店は,パンフレット,自動車情報誌,インターネットなどを利用して,旺盛な広告宣伝活動をした。これらの広告宣伝の結果,遅くとも平成17年7月の時点では,インターネットの検索サイトで「ポリマーガード」の文字を検索すると,ヒットした記事のほぼすべてが,被告会社の商品を表示するに至っていた。(2)法3条1項3号及び4条1項16号該当事由ア 「ポリマー」の文字は,高分子の可塑性重合体を意味し,重合反応させて作った高分子化合物の商品を表す語として,この種の商品を取り扱う業界において理解・使用されている。「ガード」の文字は,守る,保護するといった意味を表すから,これらの語を結合しても単に商品・役務の品質を表示するにすぎず,識別力に乏しいものであって,一種の造語を表したものと認識されることもない。イしたがって,本件登録商標2は,商品の品質,原材料,効能又は用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなり,法3条1項3号に該当する。ウまた,本件登録商標2は,指定商品以外の商品に使用した場合には当該商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり,法4条1項16号に該当する。エなお,被告会社は,平成16年8月26日,被告標章1について,指定商品を第1類「化学品」として登録出願をしたものの,平成18年3月31日,前記イ及びウの理由により拒絶査定を受けた。原告も,本件登録商標2の登録出願について,平成19年1月12日,法3条1項3号に当たるとして,いったんは拒絶査定を受けている。【原告の主張】(1)法4条1項10号該当性本件登録商標2の出願当時,被告各標章が需要者の間に広く認識されていたことは否認する。 るとして,いったんは拒絶査定を受けている。【原告の主張】(1)法4条1項10号該当性本件登録商標2の出願当時,被告各標章が需要者の間に広く認識されていたことは否認する。 ア被告商品の販売先は,主にグループ企業に限られており,店舗数も少ない。施工店は自動車整備工場などであり,取引の実態すら明らかでない。100を超える営業所に直接販売したというのも,個別の自動車販売店やガソリンスタンドに対するものである。イ被告らが主張する平成9年から平成12年にポリマーコーティングを施工された自動車台数は憶測にすぎず,被告商品の市場占有率は明らかでない。また,平成15年から平成17年までの四輪車生産台数は,乗用車合計で延べ839万台,登録車合計で957万台であり,平成17年時点の自動車保有台数は5300万台である。そうすると,被告らが主張するこの期間における延べ約2万5000台の施工実績がどれほどの市場シェアを占めるのかも明らかではない。ウ被告各標章は,新聞・雑誌・テレビ広告のような不特定多数が目にすることのできる広告宣伝媒体によって定期的に使用されたことがない。(2)法3条1項3号及び4条1項16号該当性本件登録商標2は,商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものではない。これを「ポリマー」と「ガード」に二分すると,各々の外来語を連結することで「ポリマーを用いて保護すること」という意味合いを暗示させるとしても,商標全体は片仮名のみで構成され,文字で構成される簡潔な語句であるから,一体性が強いものである。 そうすると,「ポリマーを用いた保護剤」という意味合いのみを認識させるものではなく,構成文字全体で一種の造語として認識されるものである。 4 争点4(被告会社は,被告各標章について法 ものである。 そうすると,「ポリマーを用いた保護剤」という意味合いのみを認識させるものではなく,構成文字全体で一種の造語として認識されるものである。 4 争点4(被告会社は,被告各標章について法32条に基づく先使用権を有するか)について【被告らの主張】(1)前記3【被告らの主張】1と同じ。(2)上記1からすると,被告各標章は,本件登録商標1の出願の際(平成13年6月15日),遅くとも,本件登録商標2の出願の際(平成17年12月27日)には,被告らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。したがって,被告らは,被告各標章について,法32条1項に基づく先使用権を有する。 【原告の主張】前記3【原告の主張】(1)と同じ。 5 争点5(損害額)について【原告の主張】(1)法38条2項による推定被告らは,平成16年ころから,1本当たり代金●●●●円として,少なくとも1か月●●●本の被告商品を販売した。 被告らが販売に要した費用は,多く見積もっても代金の約●割であるから,被告らは1か月48万円の利益を得た。 〔計算式〕●●●●×●●●×(1-●.●)=480,000そうすると,被告らが,平成17年1月1日から平成21年9月30日までの期間において,被告商品を販売したことにより受けた利益の額は,1か月48万円に57か月分を乗じた合計2736万円である。 〔計算式〕480,000×57=27,360,000これは法38条2項により原告が被った損害額と推定される。 (2)法38条3項による推定有機化学製品である特殊用途用コーティング材料(樹脂)に関する商標について,使用料率を10%とした裁判例があり,本件商品分野では産業全体 と推定される。 (2)法38条3項による推定有機化学製品である特殊用途用コーティング材料(樹脂)に関する商標について,使用料率を10%とした裁判例があり,本件商品分野では産業全体の通常の使用料率3%よりも大きい率が一般的に適用されている。また,原告が製造販売している塗料と被告商品とは品質効果も同等であり,同様な方法で使用できることも考慮すると,使用料率は10%が相当である。そうすると,1か月80万円の売上高に57か月分を乗じた合計4560万円に10%を乗じた456万円が,法38条3項により推定される損害額である。〔計算式〕800,000×57×0.1=4,560,000【被告らの主張】(1)法38条2項の適用について法38条2項は,侵害標章を付した商品と商標権に係る商標を付した商標権者の商品との間に,市場における代替関係が存する場合に限り適用することができるものである。前提事実3,4のとおり,被告商品と原告が製造販売する商品には,市場における代替関係がなく,競合する余地はない。 (2)法38条3項の適用について登録商標の顧客吸引力が類似標章を付された商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは,法38条3項による損害も生じない。前記1のとおり,被告商品と原告が製造販売する商品とは市場で全く競合していないから,本件登録商標の顧客吸引力は被告商品の売上げに全く寄与していない。仮に寄与していたとしても,その程度は極めて低く,使用料率はせいぜい1%である。なお,被告商品の平成17年1月から平成21年9月までの累計売上高は4139万6190円であった。 6 争点6(差止請求の可否)について【原告の主張】被告らは,原告から被告各標章の使用 告商品の平成17年1月から平成21年9月までの累計売上高は4139万6190円であった。 6 争点6(差止請求の可否)について【原告の主張】被告らは,原告から被告各標章の使用中止を求められたにもかかわらず,本件訴訟に至るまで使用を続けており,将来,使用を再開するおそれがあるから,本件訴えのうち差止請求に係る部分にも理由がある。【被告らの主張】被告らは,平成22年12月8日までに被告各標章の使用を中止し,これらの標章が付されたパンフレット,ステッカー,ラベル,シール,施工証明書等の在庫をすべて廃棄し,別の標章に変更したパンフレット,取扱説明書,施工証明書及びシールを作成した。 被告らには,今後,被告各標章を使用する予定もないから,本件訴えのうち差止請求に係る部分にも理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告商品と本件登録商標1の指定商品の類否)について(1)法37条1号の規定する指定商品に類似する商品に当たるかどうかは,それらの商品自体に取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるかどうかにより判定すべきものである。 (2)本件についてみると,甲29の1ないし3,乙20,84ないし88によれば,被告らが最大の取引先であるとする「トップネットグループ」を構成する5社は,いずれも「塗料の販売」を目的の一つとする会社であることが認められる。このうち伊丹塗料株式会社を除いて,いずれも土木建設工事等も目的とし,現に業として実施していることも認められる。 そうすると,本件登録商標1の指定商品である塗料と被告商 社であることが認められる。このうち伊丹塗料株式会社を除いて,いずれも土木建設工事等も目的とし,現に業として実施していることも認められる。 そうすると,本件登録商標1の指定商品である塗料と被告商品とは,通常同一営業主により製造又は販売されていることが認められるのであり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 したがって,同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができるから,この点に関する原告の主張は理由がある。 (3)なお,被告商品と本件登録商標2の指定商品が類似することについては,当事者間に争いはない。 2 争点2(被告各標章と本件各登録商標の類否)について本件各登録商標は,いずれも片仮名ゴシック体で「ポリマーガード」と表記されたものである。 被告各標章は,別紙標章目録記載のとおりであり,いずれも「ポリマーガード」もしくは「PolymerGuard」(イタリック体のものを含む。)を含み,その後尾に,被告標章2は「アルファ」もしくは「α」が,被告標章3は「ベータ」もしくは「β」が,被告標章4は「K100」が,被告標章5は「Ⅲ」が,被告標章7は斜めに傾いた「Ⅲ」が,被告標章8はゴシック体の「α」が付加しているものであるが,いずれも,「ポリマーガード」もしくは「PolymerGuard」が要部というべきである。 そして,英語表記のものとは外観において異なるが,それ以外においては,外観において類似もしくは一致し,称呼,観念において一致しており,被告各標章と本件各登録商標は類似する。 3 争点3(本件登録商標2の商標登録は無効であるか)について(1)法4条1項10号該当事由の存否ア 「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには,商標 と本件各登録商標は類似する。 3 争点3(本件登録商標2の商標登録は無効であるか)について(1)法4条1項10号該当事由の存否ア 「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには,商標登録出願の時において,全国の主要商圏における同種商品取扱業者に相当程度認識されているか又は狭くとも1県の単位にとどまらず,その隣接数県の相当範囲の地域にわたって,その同種商品取扱業者の相当程度の層に認識されていることを要するものと解すべきである。イ被告らは,被告標章1及び5が,本件登録商標2の出願当時において,被告らの業務に係る商品を表示するものとして,需要者である自動車ディーラー,修理工場,板金塗装店,洗車店及び最終的な需要者の間に広 く認識されていたと主張するが,次の理由から,被告らの主張は理由がない。 (ア)被告らは,被告商品を販売した取引先からの陳述書等を提出しているものの,これらの証拠によっては市場において被告商品が占める割合や認知度を認定するまでには至らない。 (イ)被告らは,平成9年から平成12年にかけて,被告標章1を付した被告商品が岡山県及び広島県の一部において1万1600台に施工されたと主張する。 しかしながら,これは施工された自動車に貼布するためのステッカー1万1600枚分を購入したことから推測したというものであるが,同一の自動車に繰り返し施工された可能性も否定できず,現実に1万1600台に施工されたとまでは認めるに足りない。 また,被告らは,平成9年から平成12年の間における岡山県及び広島県における新車登録台数は1年当たり合計11万8000台,合計で約47万2000台であり,このうちポリマーコーティングを施工された自動車は1割程度にとどまるから,合計でも4万7200台であるとも主張する ける新車登録台数は1年当たり合計11万8000台,合計で約47万2000台であり,このうちポリマーコーティングを施工された自動車は1割程度にとどまるから,合計でも4万7200台であるとも主張する。しかしながら,この1割という数字は憶測であるし,新車以外に施工されていなかったというのも証拠がない。 (ウ)被告らは,平成15年度から平成17年度の間に,被告標章5を付した商品を合計5130本販売し,全国で延べ約2万5000台に施工されたとも主張する。しかしながら,これは,被告商品がすべて消費されたことを前提とするものであるところ,この前提を認めるに足りる証拠はない。しかも,延べ台数であるため,実際に何台に施工されたか明らかでないのは,上記イと同様である。かえって,甲37及び38によれば,平成15年から17年までの新車販売台数は乗用車(普通・小型)合計で約992万台,登録車合計で約1200万台であり,平成17年時点における自動車保有台数は約5600万台にものぼることが認められる。そうすると,仮に被告らの主張を前提としても,本件登録商標2が登録された時点で,相当範囲の地域にわたって,少なくともその同種商品取扱業者の多くに認識されていたとまではいえない。また,乙49によると,平成22年時点において,被告商品と同種の自動車用ボディーコーティング剤について100を超えるブランドがあることが認められることに照らしても被告らの主張は採用しがたい。 (エ)なお,被告らは,インターネットで「ポリマーガード」の文字を検索すると,ほとんどすべてが被告会社の商品であったとも主張する。このことについては,単に原告と被告らの他に当該標章を使用するものがいないということ以上の意味は見いだせない。 ウこれらのことからする ,ほとんどすべてが被告会社の商品であったとも主張する。このことについては,単に原告と被告らの他に当該標章を使用するものがいないということ以上の意味は見いだせない。 ウこれらのことからすると,被告各標章が本件登録商標2の登録出願がされた当時,需要者の間に広く認識されていたとは認めるに足りないというべきである。 (2)法3条1項3号及び4条1項16号に該当する事由の存否通常の注意力をもってみれば,本件各登録商標は,「ポリマー」と「ガード」の2つの語からなる結合標章であることが容易に看取できると認められる。 このうち「ポリマー」の部分は,「重合体」を意味する英語の「polymer」の表音であること及び「ガード」の部分は,「守る。保護する。」などの意味を有する英語の「guard」の表音であることも容易に看取できる。 他方において,これらの単語の組み合わせが熟語として用いられているとか,商品の品質,原材料,効能又は用途を表すものとして,普通に用いられていることを認めるに足りる証拠はない。英熟語としても,一義的に意味を特定することはできないものであって,一種の造語として認識されるものというべきである。したがって,ここから特定の意味合いを看取することはできないし,特定の商品の品質又は役務の質を直接かつ具体的に表示するものでもないとする原告の主張を排斥することはできない。 したがって,この点に関する被告らの主張はいずれも採用することができないというべきである。 4 争点4(被告会社は,被告各標章について法32条に基づく先使用権を有するか)について前記3で検討したところによると,本件登録商標1について出願がされた平成13年6月15日の際はもちろん,本件登録商標2について出願がされた平成17年12月27日 使用権を有するか)について前記3で検討したところによると,本件登録商標1について出願がされた平成13年6月15日の際はもちろん,本件登録商標2について出願がされた平成17年12月27日の際にも,被告各標章が,法32条にいう「被告らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた」とまで認めることはできない。 よって,この点に関する被告らの主張も採用することはできない。 5 争点5(損害額)について(1)法38条2項の適用の可否法38条2項は,「損害の額」を推定するものであって,「損害の発生」まで推定するものではない。したがって,損害の発生の立証がない場合には,適用されない。 前提事実(3),(4)のとおり,これまで原告は,専ら建築用塗料を販売しており,被告商品であるポリマーを用いた自動車の塗装表面保護用コーティング剤を販売していないのであって,市場において全く競合していないことが認められる。 そうすると,被告商品の存否が原告の売上げに影響を及ぼすこと,ひいては本件商標権侵害により原告に逸失利益に相当する損害が発生したことも認めるに足りない。 したがって,本件では法38条2項の推定規定を適用することはできないというべきである。 (2)法38条3項の適用法38条3項によれば,商標権者は,損害の発生について主張立証する必要はなく,権利侵害の事実と通常受けるべき金銭の額を主張立証すれば足りる。これに対し,侵害者は,損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して,損害賠償の責めを免れることができる。 まず,前記1ないし4によれば,被告各標章を付した被告商品の販売は本件商標権を侵害するものである。本件各登録商標に顧客吸引力が全くない場合には,損害の発生があり得ない 責めを免れることができる。 まず,前記1ないし4によれば,被告各標章を付した被告商品の販売は本件商標権を侵害するものである。本件各登録商標に顧客吸引力が全くない場合には,損害の発生があり得ないとして,法38条3項の適用を否定することができるが,顧客吸引力がないことを認めるに足りる証拠はない。かえって,原告が本件各登録商標を付した商品を継続して販売してきたことについては被告らも積極的に争っていないから,本件各登録商標には一定の信用が化体しているものというべきである。 他方において,上記(1)のとおり,原告の製造販売する商品と被告商品とは市場において全く競合していない。 そうすると,本件各登録商標の被告商品の売上げに対する寄与度は非常に乏しいというべきであって,その他関連する事情を総合考慮すると,本件における実施料率はせいぜい被告らの主張する1%とするのが相当である。 乙150によれば,平成17年1月から平成21年9月までの間における被告商品の累計売上高は4139万6190円であることが認められる。 よって,原告は,これに1%を乗じた41万3961円の損害を被ったものと認めることができる。 (3)被告Pについてみると,被告らの主張及び被告会社代表者の陳述書(乙133)によれば,被告Pは平成16年から代理店としてインターネットを通じて被告商品を販売しているというのである。 しかしながら,被告Pが販売した数量等については,主張立証がない。 被告らの主張によれば,平成17年における「トップネットグループ」以外への販売数量は,全体の約10分の1以下であったというのであるから,その後も同様であったと一応推認するのが相当である。 そうすると,被告Pが責任を負うのは,被告会社の売上げのうち多くとも10分 販売数量は,全体の約10分の1以下であったというのであるから,その後も同様であったと一応推認するのが相当である。 そうすると,被告Pが責任を負うのは,被告会社の売上げのうち多くとも10分の1にとどまると認めるのが相当であり,この認定に反する主張立証はない。 よって,被告Pは,原告に対し,前記(2)の10分の1である4万1396円の限度でのみ連帯して責任を負うと解するのが相当である。 6 争点6(差止請求の可否)について乙148及び149によれば,被告会社は,被告各標章を付したパンフレット,ステッカー,ラベル,シール,施工証明書等の在庫をすべて廃棄処分したことが認められる。また,乙122の①ないし乙126の⑥によれば,被告会社は,平成22年11月に,被告各標章を用いないパンフレット,取扱説明書,施工証明書及びシールを新たに作成したことも認められる。 このように,すでに費用をかけて標章を変更した被告会社が,再度,費用と手間をかけて,被告各標章の使用を再開することは,にわかに想定しがたいというべきである。そうすると,今後,被告らによって侵害行為が行われる蓋然性があると認めるに足りないから,本件訴えのうち差止請求の部分は理由がない。 第5 結論以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条及び64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官達野ゆき 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 達野ゆき 裁判官 西田昌吾 標章目録 1 ポリマーガード 2 ポリマーガードアルファ 3 ポリマーガードベータ 4 ポリマーガードK100 5 ポリマーガードⅢ
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