- 1 -主文 被告Y1株式会社は,原告X1に対し,2462万3747円及びこれに対する平成18年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Y1株式会社は,原告X2に対し,827万4249円及びこれに対する平成18年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Y1株式会社は,原告X3に対し,827万4249円及びこれに対する平成18年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Y1株式会社は,原告X4に対し,827万4249円及びこれに対する平成18年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らの被告Y1株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。 原告らの被告Y2株式会社に対する請求をいずれも棄却する。 ,, 訴訟費用は原告らと被告Y1株式会社との間に生じた費用はこれを3分しその1を原告らの負担とし,その余を被告Y1株式会社の負担とし,原告らと被告Y2株式会社との間に生じた費用は原告らの負担とする。 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告らは,原告X1に対し,各自3662万8273円及びこれに対する平成18年6月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X2に対し,各自1220万9424円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X3に対し,各自1220万9424円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X4に対し,各自1220万9424円及びこれに対する同- 2 -日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 に対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X4に対し,各自1220万9424円及びこれに対する同- 2 -日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告らの負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要及び前提事実 本件は,Aの相続人である原告らが,Aが悪性胸膜中皮腫にり患し,死亡したことについて,[ ]被告Y1に対しては,債務不履行,不法行為又は土地の 工作物の設置,保存上の瑕疵に係る責任に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を,[ ]被告Y2に対しては,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償及 び遅延損害金の支払を求める事案である。 前提事実(当事者間に争いのない事実)( ) Aは,昭和8年10月3日生まれの男性であり,株式会社Bの取締役店長 として,同社の店舗兼倉庫として使用していた甲鉄道乙線丙駅高架下所在の貸建物区画番号α号の建物(以下「本件建物」という)において勤務して。 いた者である。Aは,平成14年7月,b病院において悪性胸膜中皮腫の診断を受け,平成16年7月20日,自殺により死亡した。 ( ) 原告X1は,Aの妻であり,原告X2,原告X3及び原告X4は,いずれ もAの子である。 ( ) 被告Y1は,鉄道事業法,軌道法による運輸業等を業とする株式会社であ る。 ( ) 被告Y2は,建築物及び関連設備に関するメンテナンス業務並びに清掃管 理業務等を業とする株式会社である。 ( ) C株式会社は,昭和45年3月2日,株式会社Bに対し,賃貸期間を同年 ,(「」。)。 4月1日からとして本件建物を賃貸した以下本件賃貸借契約という( ) C株式会社は,昭和48年3月1日,関連会社等を吸収合併し,同日,商 号をD株式会社に変更した。 ( ) D株 「」。)。 4月1日からとして本件建物を賃貸した以下本件賃貸借契約という( ) C株式会社は,昭和48年3月1日,関連会社等を吸収合併し,同日,商 号をD株式会社に変更した。 ( ) D株式会社は,平成14年3月16日,被告Y2に対し,同年4月1日付 - 3 -けで本件賃貸借契約における賃貸人の地位を譲渡し,株式会社Bは,同日,上記賃貸人の地位の譲渡を承諾した。 ( ) 被告Y1は,平成14年4月1日,D株式会社販売株式会社に一部分割し たD株式会社を吸収合併し(以下,この合併を「本件合併」という,こ。),(。 。)れによりD株式会社の権利義務C株式会社時代のものを含む以下同じを包括承継した。 ( ) 被告Y2と株式会社Bは,平成15年3月,同月末日をもって本件賃貸借 契約を解約することを合意した。 第3主要な争点及び当事者の主張 被告Y1に対する請求関係上記請求に係る主要な争点は,以下の[ ]ないし[ ]のとおりであり,これら についての当事者の主張は,下記( )ないし( )のとおりである。 [ ] アスベスト(石綿)の危険性に関する知見及びアスベストの規制状況 [ ] Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因 [ ] 被告Y1には,本件建物の所有者として,本件建物に施工されているア スベスト含有吹き付け材による危険性を排除し又は同危険性を回避させる義務(以下,単に「安全性確保義務」という)があるかどうか,及び同。 義務の違反(不法行為)があるかどうか。 [ ] 被告Y1には,本件建物の占有者又は所有者として,本件建物の設置, 保存上の瑕疵に係る責任があるかどうか。 [ ] 被告Y1には,賃貸人として,本件建物の賃借人の役員又は従業員に対 する安全性確保義務があるかどうか,及び同義務の違反(債務 て,本件建物の設置, 保存上の瑕疵に係る責任があるかどうか。 [ ] 被告Y1には,賃貸人として,本件建物の賃借人の役員又は従業員に対 する安全性確保義務があるかどうか,及び同義務の違反(債務不履行又は不法行為)があるかどうか。 [ ] 被告Y1の上記[ ]ないし[ ]の義務違反等とAの死亡との間に相当因果 関係があるか。 [ ] 原告らの損害の有無及びその額 - 4 -[ ] 過失相殺,損益相殺(抗弁) ( ) 争点[ ](アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況) ア原告らの主張(ア) アスベストは,耐摩擦性,耐熱性,断熱・防音・吸音性,耐薬品性等の物質的特性を持ち,また,経済的に安価なものであることから,摩擦,,,材保温材耐火・耐熱・吸音・結露防止目的の吹き付け材などとして。 ,(),産業界に幅広く使用されてきたアスベストはクリソタイル白石綿アモサイト(茶石綿,クロシドライト(青石綿,アンソフィライト,))トレモライト及びアクチノライトの6種類に分類され,このうちクリソタイル,アモサイト及びクロシドライトが主として上記の用途に使用されてきた。 (イ) 他方,アスベストは,非常に細かな繊維状になる性質を有しており,これを人が呼吸をする際に吸引し,呼吸細気管支や肺胞に到達して沈着すると,石綿肺,肺がん,中皮腫,良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚などの疾患を発症させるものであり,人の生命,健康に深刻な被害を及ぼす有害性を持つものである。アスベストの中でも,クロシドライトは,発がん性などの有害性が最も強いものであり,少量の暴露でも致死的疾患である中皮腫を引き起こす危険性がある。 (ウ) アスベストの危険性(がん原性(肺がん,中皮腫原性)に関する知)見及びアスベストの規制状況は, の有害性が最も強いものであり,少量の暴露でも致死的疾患である中皮腫を引き起こす危険性がある。 (ウ) アスベストの危険性(がん原性(肺がん,中皮腫原性)に関する知)見及びアスベストの規制状況は,別紙のとおりであり,これによれば,遅くとも昭和46年ころまでには,アスベスト粉じんが人の生命,健康に有害であることは,日本の医学界やアスベスト製造業などのアスベスト関連企業のみならず,アスベスト製品を使用する建築業やアスベスト製品を使用した建築物を取り扱う不動産業などの産業界においても一般的知見として確立していたということができる。 (エ) 建物内のアスベストの飛散の危険性- 5 -建物内に施工されているアスベスト含有吹き付け材は,アスベストをセメントと混合して下地に綿状に吹き付けるという工法により施工されるものであり,そのような工法によるものであることから,経年劣化により,吹き付け層の表層部から次第にアスベスト繊維が毛羽立ったり,表層部のアスベスト繊維が崩れたり,垂れ下がりによりほぐれたり,下地と吹き付け層の間が浮いたりはがれたり,吹き付け層の外面が損傷したりなどして,徐々にアスベスト繊維が空気中に飛散するようになる。 さらに,吹き付け層が局部的にはく離して落下したり,層自体が下地からはがれたりして,アスベスト粉じんが発生するようになる。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否ア(ア)は認める。同(イ)は不知。同(ウ)及び(エ)は否認する。 (イ) 反論原告らが主張するアスベストの危険性に関する知見やアスベストの規制状況は,アスベストの製造や吹き付け作業,アスベスト含有物の解体又は焼却作業を行う作業場等における労働者の労働環境に関するものであって,アスベスト含有吹き付け材が施工された建物における労働環境や生活環境に関するものではなく,ア 付け作業,アスベスト含有物の解体又は焼却作業を行う作業場等における労働者の労働環境に関するものであって,アスベスト含有吹き付け材が施工された建物における労働環境や生活環境に関するものではなく,アスベストを含有する一般製品や建物設備の使用の規制,禁止に関するものではない。 原告が別紙の4( )に挙げるものは,いずれも日本における一般的知 見といえるものではない。なお,アスベスト含有建材を使用した建物に対する対策を内容とする最初の規制法令は,平成17年7月1日施行の石綿障害予防規則である。もっとも,同規則は,事業者は,その労働者を就労させる建築物等に吹き付けられた石綿が損傷,劣化等によりその,,粉じんを発散させ労働者がその粉じんに暴露するおそれがあるときは当該吹付け石綿の除去,封じ込め,囲い込み等の措置を講じなければな- 6 -らないとするものであり(10条,事業者の労働者に対する義務を規)定するものであって,建物所有者の義務を規定するものではない。 ( )争点[ ](Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因) ア原告らの主張(ア) 本件建物内におけるアスベスト含有吹き付け材の状況,,。 本件建物は1辺が約89mの方形をした高さ約5mの部屋である本件建物の室内壁面のうち天井端から約1.1ないし3.2mの幅の部分には,クロシドライトを25%含有する吹き付け材が約3㎝の厚さでむき出しのまま施工されている。 (イ) Aのアスベスト暴露a株式会社Bは,本件賃貸借契約の締結後,本件建物を1階部分と2階部分とに分け,1階部分を店舗として(以下,同部分を「本件1階店舗」という,2階部分を文具類の在庫商品を置く倉庫兼帳簿等。)をつけるための事務所として(以下,同部分を「本件2階倉庫」とい。),。 ,う使用してきた上記(ア) 下,同部分を「本件1階店舗」という,2階部分を文具類の在庫商品を置く倉庫兼帳簿等。)をつけるための事務所として(以下,同部分を「本件2階倉庫」とい。),。 ,う使用してきた上記(ア)の吹き付け材が施工されている部分は本件2階倉庫の壁面に当たる。 b本件建物は,鉄道の高架下にあり,電車が通るたびに振動が生じ,これにより吹き付け材の劣化が進み,昭和45年ころから,本件2階倉庫の壁面吹き付け材に含有するアスベスト(クロシドライト)繊維(,「」。),が粉じんとなって飛散し以下この粉じんを本件粉じんという本件2階倉庫の商品棚,商品及び床面等に降り積もっていた。 cAは,昭和45年3月から平成14年6月までの32年間,店長として,毎日,午前8時ころに本件建物に出勤し,午後8時ころに閉店するまで本件建物内で過ごしていたが,このような勤務中に本件2階倉庫に入り,仕事をすることによって本件粉じんに暴露した。暴露の具体的状況は,次のとおりである。 - 7 -( ) 1日に5,6回,文具の納入業者が納品した際,本件2階倉庫にa商品を搬入した。 ( ) 本件1階店舗に展示していない商品以外の商品の注文を受け,多bい日で約50回,少ない日で約2,30回,本件2階倉庫に商品を取りに行った。 ,,,( ) 在庫商品の整理整頓のため1週間に数回1回につき約1時間c本件2階倉庫内で仕事をした。 ( ) 毎月締めの日の直前には,本件2階倉庫内で伝票の整理等を集中d的に行った。 ( ) 平成2年に電気掃除機を購入するまでは,1月に1,2回,2,e30分かけて家庭用竹箒を使用して,同年以後は電気掃除機を使用して,本件2階倉庫内を掃除した。 ( ) 年末には数時間かけて本件2階倉庫の大掃除をした。 f,,。 ( ) 毎年棚卸しを 2,e30分かけて家庭用竹箒を使用して,同年以後は電気掃除機を使用して,本件2階倉庫内を掃除した。 ( ) 年末には数時間かけて本件2階倉庫の大掃除をした。 f,,。 ( ) 毎年棚卸しを行うために本件2階倉庫の在庫商品を確認したg( ) 本件2階倉庫内で仮眠をとることがあった。 hd光学顕微鏡による剖検肺を用いた石綿小体の算定を行った結果,Aの肺には,石綿小体が肺乾燥重量1g当たり平均72本検出された。 この数は,一般人の約2倍の検出量である。 電子顕微鏡によるアスベスト繊維の分析の結果,Aの肺内石綿濃度は,肺乾燥重量1g当たり1900万本であった。これは,職業的石綿暴露がない場合の数値である肺乾燥重量1g当たり183万本の10倍以上の濃度である。そして,上記アスベスト繊維のうち85%がクロシドライトであった。クロシドライトは,通常,大気環境中で検出されることの稀なアスベストであり,Aの肺内に認められたクロシドライトは,本件2階倉庫の壁面の吹き付け材に含まれていたクロシドライト以外に考えられない。 - 8 -e特定非営利活動法人Gセンターが平成15年に行った本件2階倉庫における石綿濃度測定では,[1]株式会社Bにおける普段の作業と同様の疑似作業をしないときは,幾何平均309fL(最小272な./.),,いし最大42[2]清掃と商品の搬入搬出の疑似作業をしたときは.幾何平均188fL(最小102ないし最大136,[3]商品の./.)搬入搬出の疑似作業をしたときは,幾何平均671fL(最小36./../.8ないし最大14)であり,全体の幾何平均は671fL(最小102ないし最大136)であった。また,被告Y1が平成17年11月に本件建物のアスベスト含有吹き付け材の撤去工事を行った際に行 /.8ないし最大14)であり,全体の幾何平均は671fL(最小102ないし最大136)であった。また,被告Y1が平成17年11月に本件建物のアスベスト含有吹き付け材の撤去工事を行った際に行われた株式会社Hセンターの測定では,220fLという数値であ/った。以上によれば,本件建物におけるアスベスト濃度は,少なくみても平均で671fL程度あったと推認できる。 ./日本産業衛生学会が示す許容濃度(平成13年)によれば,クロシドライトを含む石綿濃度が3fLでは過剰発がんリスクレベルが1/万人に1人とされており,本件建物内の上記石綿濃度は,上記数値の22倍に当たる。また,世界保健機構は,大気中の石綿濃度が05..fLのときに中皮腫が1万~10万人に1人発生するというリスク/評価をしている。 被告Y1が示す石綿濃度の規制値は,現在では採用されていない古い基準値であり,この数値との比較で本件建物内の石綿濃度が低いと主張するのは,失当である。 (ウ) Aの悪性胸膜中皮腫のり患とその原因aAは,平成13年11月ころから,次第に咳が酷くなり,寝付けない日が続くようになった。Aは,平成14年になり,近くの病院で診断を受けた結果,胸水が確認され,同年6月10日,a病院に検査入院し,悪性胸膜中皮腫の診断を受け,同年7月,b病院に入院し,同- 9 -病院において,悪性胸膜中皮腫上皮型との確定診断を受けた。 b悪性胸膜中皮腫は,アスベストの暴露を原因とする特異的な疾患であり,日本では,他の原因はほとんど見当たらない。Aは,その出生後死亡するまでの住居地において,アスベストの暴露を受けるような環境はなく,株式会社Bの店長として本件建物で働き始めるまでの職歴として,アスベストの暴露を受けるような仕事に従事したことはない。 c以上によれば の住居地において,アスベストの暴露を受けるような環境はなく,株式会社Bの店長として本件建物で働き始めるまでの職歴として,アスベストの暴露を受けるような仕事に従事したことはない。 c以上によれば,Aは,本件2階倉庫におけるクロシドライト繊維からなる本件粉じんに暴露したことにより,悪性胸膜中皮腫にり患したことは明らかである。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否。 ,,,,,,ア(ア)は認める同(イ)はaは認めbcの本文deは否認しcの( )~( )は不知。同(ウ)は,aのうちAが平成14年7月にb病院ahにおいて悪性胸膜中皮腫上皮型との診断を受けたことは認め,その余の事実は不知であり,bのうちAがその出生後死亡するまでの住居地において,アスベストの暴露を受けるような環境がないことは否認し,その余の事実は不知であり,cは争う。 (イ) 反論aアスベスト粉じんの暴露を受けた者が中皮腫を発症するまでには,平均的に42,3年程度の潜伏期間がある。原告らの主張を前提とすれば,Aは平成14年6月に悪性胸膜中皮腫の確定診断を受けたというのであるから,Aがその原因となるアスベスト粉じんの暴露を受けた時期は,同年から42,3年遡った昭和35年ころ(本件建物が建築される前の時点)ということになる。そして,同人は,当時,以下のとおり実際にアスベスト暴露を受ける環境に身を置いていたのであ- 10 -るから,Aの中皮腫り患は,本件建物以外の場所におけるアスベストの吸引が原因であると考えられる。 なお,アスベストの潜伏期間がアスベストの暴露開始から中皮腫を発症するまでの期間をいうものであるとしても,そのことは,潜伏期間開始時点ころの暴露が当該中皮腫発症の原因であることを否定するものではない。むしろ,統計的にみると,潜伏期間 トの暴露開始から中皮腫を発症するまでの期間をいうものであるとしても,そのことは,潜伏期間開始時点ころの暴露が当該中皮腫発症の原因であることを否定するものではない。むしろ,統計的にみると,潜伏期間開始時点ころの暴露がその原因である可能性が高いし,逆に,潜伏期間の概念は,暴露開始時点後一定期間を経ての暴露がその原因であることを意味するも。 ,のではないアスベストの暴露量と悪性胸膜中皮腫の発症との関係はある一定の暴露量を超えれば悪性胸膜中皮腫を発症するというようなものではないのであって,低濃度かつ短期間の暴露でも悪性胸膜中皮腫を発症する可能性がある。 ()Aは,昭和26年4月から昭和39年4月までE工場において金a網職工として勤務していたところ,同工場に設置された焼鈍炉にはアスベストが使用されており,Aは,同工場勤務の期間,アスベスト暴露を受ける環境にあった。 原告らは,Aの部検肺から検出されたアスベスト繊維のうちクロシドライトが最も多かったことを根拠にAの悪性胸膜中皮腫の原因をクロシドライトとするが,前記のとおりアスベスト発症には潜伏期間が存在することからすれば,E工場の焼鈍炉に使用されていたアスベストがクリソタイルであったとしても,本件2階倉庫ではなく,E工場の焼却炉からの被暴によりAの悪性胸膜中皮腫が発生した可能性が高い。 ( )Aは,昭和39年5月から昭和41年5月までF工場において金b網職工として勤務していたところ,F工場の内部に吹き付けアスベストなどのアスベストが使用されていた可能性があり,前記のとお- 11 -りアスベスト発症には潜伏期間が存在することからすれば,AがF工場でアスベスト暴露を受け,悪性胸膜中皮腫を発症したことが十分に考えられる。 b原告らが指摘する本件建物内の石綿濃度の数値は,平成15年当時 スト発症には潜伏期間が存在することからすれば,AがF工場でアスベスト暴露を受け,悪性胸膜中皮腫を発症したことが十分に考えられる。 b原告らが指摘する本件建物内の石綿濃度の数値は,平成15年当時のものであり,Aが本件建物で勤務していた期間中の本件建物内の石綿濃度の数値を示すものではない。 なお,被告Y2は,平成15年6月,本件2階倉庫内の石綿濃度の検査を検査会社に依頼し,その結果,同年7月9日時点における本件2階倉庫内の石綿濃度は05fLであった。この数値は,商業都市./における一般大気環境における石綿濃度とほぼ同じであり,アスベスト関連作業現場等についての規制値として定められている労働省作業環境測定の規制値である管理濃度2000fL,日本産業衛生学会/が示す許容濃度2000fL,世界保健機構が示す環境保険判定基/準10fLと比べても大幅に下回る数値である。このような濃度し/かない本件2階倉庫において,Aが中皮腫にり患するようなアスベスト暴露を受けたとは到底考えられない。 cAの中皮腫について,証人W1医師は,その発症リスクは,数万分の1から数十万分の1の一定の幅にあると推定されるとしている。 ウ被告Y1の反論に対する原告らの再反論一般に,潜伏期間というのは,ある病原体に感染してから症状が発現するまでの期間を指し,病原体の感染は1回的なものである。しかし,アスベスト暴露による中皮腫発症に関して用いられている潜伏期間は,上記の一般的な意味のものではなく,アスベストの暴露開始時(最初のアスベスト暴露)から中皮腫の発症までの期間をいうものであり,中皮腫発症の原因となったアスベスト繊維が体内(肺,胸膜)に取り込まれてから中皮腫が発症するまでの期間をいうものではない。したがって,アスベストに係- 12 -る潜伏期間というのは うものであり,中皮腫発症の原因となったアスベスト繊維が体内(肺,胸膜)に取り込まれてから中皮腫が発症するまでの期間をいうものではない。したがって,アスベストに係- 12 -る潜伏期間というのは,当該期間より前の時点で体内に取り込んだアスベスト繊維のみが中皮腫の発症に関係し,それ以後当該期間中に体内に取り込んだアスベスト繊維が中皮腫発症に関係しないことを意味するものではない。 ( ) 争点[ ](被告Y1には,本件建物の所有者として,本件建物の安全性確 保義務があるかどうか,及び同義務違反があるかどうか)。 ア原告らの主張(ア) 被告Y1の建物所有者としての本件建物の安全性確保義務a建物所有者は,その所有建物について人の生命,健康を害する危険が生じた場合には,自らその危険を除去するか,当該建物使用者に対してその旨警告し,安全対策を執らせる注意義務がある。当該建物が分譲用建物や賃貸用建物であり,その所有者が建物の売買,賃貸を業とする者である場合には,上記注意義務はより高度なものが要求されるというべきである。 b本件建物の所有者( ) 本件建物は鉄道の高架下に存在するところ,鉄道の高架自体は被a告Y1の所有物であることからすれば,少なくとも本件建物の屋根にあたる部分及びこれを支える部分は被告Y1の所有であり,本件建物の主たる部分は被告Y1の所有である。したがって,本件建物の建設当初より被告Y1が本件建物全体の所有者である。 なお,原告らは,訴訟の当初から,本件建物の建設当時から本件建物の所有者が被告Y1であると主張しており,主張を撤回したことはない。また,当該主張の適否の判断のために新たな立証の機会が必要なものでもない。したがって,原告らの本件建物建設当初から本件建物の所有者が被告Y1であるとの主張は,時機に後れた攻 張を撤回したことはない。また,当該主張の適否の判断のために新たな立証の機会が必要なものでもない。したがって,原告らの本件建物建設当初から本件建物の所有者が被告Y1であるとの主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下の対象とはならない。 - 13 -( ) 仮に,被告Y1が,建設当初よりの本件建物の所有者ではなく,bC株式会社が本件建物を建築して所有していたものだとしても,C株式会社は,その後,関連会社等との合併及び商号変更により,D株式会社となり,更にその後,被告Y1は,本件合併により,D株式会社の権利義務を包括的に承継して本件建物の所有者となった(以下,原告が本件建物の所有者に関し「被告Y1」の呼称を用いる際には,1次的には昭和45年当時からの本件建物の所有者との意味で,2次的には本件合併前のC株式会社及びD株式会社が主体となる事柄に関してそれらの権利義務を包括承継した立場との意味で用いる。 。)c本件建物は,人の生命,健康に有害な物質であるアスベスト含有吹,,,き付け材が施工されていた建物でありかつ賃貸用建物であるから建物賃貸を業とする被告Y1は,本件建物所有者として,本件建物の安全性を確保する注意義務があり,その程度は高度なものである。 (イ) 被告Y1の建物所有者としての本件建物の安全性確保義務違反a上記( )アのアスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規 制状況並びに下記( )及び( )の事情に照らすと,被告Y1は,昭和4ab6年時点で,本件建物内に施工されているアスベスト含有吹き付け材の有害性,危険性を認識し又は認識し得た。 ( ) 昭和46年4月28日に公布された特定化学物質等障害予防規則a(労働省令第11号。以下「旧特化則」という)は,その規制対。 象とする化学物質等を分類した上で, 険性を認識し又は認識し得た。 ( ) 昭和46年4月28日に公布された特定化学物質等障害予防規則a(労働省令第11号。以下「旧特化則」という)は,その規制対。 象とする化学物質等を分類した上で,これらの化学物質等を扱う事業者に対し,化学物質等による労働者の健康障害を予防するため,使用する物質の毒性の確認,作業方法の確立,関係施設の改善,作業環境の整備,健康管理の徹底その他必要な措置を講ずるよう努めること(1条,石綿を含む第二類物質の粉じん等が発生する屋内)- 14 -作業場における局所排気装置の設置5条除じん装置の設置 (),(条,設備の改善等に関する措置(22条,呼吸用保護具の備え))付け(43条)など,執るべき措置を定めている。昭和47年に発行された労働省安全衛生部労働衛生課編の旧特化則の解説には,石,,,綿が中皮腫を引き起こすこと石綿が保温剤ブレーキライニングトムレックスなどに使用されていることが記載されている。 ,,,( ) 被告Y1は昭和46年当時鉄道事業及び自動車事業においてb旧特化則5条の適用を受ける石綿粉じんが発生する屋内作業場を有する事業者であった。 C株式会社及びD株式会社は,被告Y1の支配下にあった法人であり,それらの間において,役員を兼任する者がおり,情報も共有化されていた。 b被告Y1は,本件建物の建築を発注した者であることからすると,本件賃貸借契約が締結された後である昭和46年ころ又は遅くとも株式会社Bに本件建物の隣接建物を貸し増しした昭和55年ころには,本件建物内にアスベスト含有吹き付け材が施工されていること及びそれが施工されている本件2階倉庫内で発生する本件粉じんが本件建物を使用する人の生命,健康に有害なものであることを知り又は知り得た。したがって,被告Y1は, ト含有吹き付け材が施工されていること及びそれが施工されている本件2階倉庫内で発生する本件粉じんが本件建物を使用する人の生命,健康に有害なものであることを知り又は知り得た。したがって,被告Y1は,昭和46年又は昭和55年ころにおいて,本件建物内における本件粉じんの飛散を防止するため,本件2階倉庫内のアスベスト含有吹き付け材が施工されていた壁面を非石綿建材で覆って囲い込むなどの措置を執るべき注意義務があった。 なお,上記認識の程度については,被害法益が人の生命,健康という代え難いものであるときは,その被害法益の重大性にかんがみ,安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り,必ずしも生命,健康に対する悪影響の内容,程度,発症頻度について具体的に認- 15 -識する必要はない。また,アスベストが人の生命,健康に与える重大な危険性にかんがみても,このような危険な物質が上記( )ア(ア)のと おり壁面にむき出しのままの状態で存在していた本件建物の所有者である被告Y1が認識すべき事柄は,アスベストの安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り,必ずしも生命,健康に対する悪影響の内容,程度,発症頻度について具体的に認識する必要はないというべきである。 cまた,仮に被告Y1が上記bの措置を執ることが不可能であったとしても,被告Y1は,昭和45年4月から平成14年6月までの間,本件建物を賃借して使用していた株式会社Bに対し,本件建物にアスベスト含有吹き付け材が施工されており,アスベストが飛散するおそれのあることを伝えた上で,本件建物を使用する株式会社Bの従業員等が本件粉じんの暴露を受けないように対策を執るよう警告すべき注意義務があった。 しかし,被告Y1は,上記の措置及び警告のいずれもしなかった。 この不作為は,昭和45年4月か 用する株式会社Bの従業員等が本件粉じんの暴露を受けないように対策を執るよう警告すべき注意義務があった。 しかし,被告Y1は,上記の措置及び警告のいずれもしなかった。 この不作為は,昭和45年4月から平成14年6月までの間本件建物を使用していたAに対する不法行為となる。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否ア(ア)b( )は認めるが,その余は否認する。 b原告らの本件建物建設当初から被告Y1が本件建物の所有者であったとの主張は,第12回口頭弁論期日において確定した争点整理案に反するものであり,従前原告らが自白した事実を撤回するものであって,被告らは当該自白の撤回に異議がある。仮に裁判上の自白に当たらないとしても,時機に後れた攻撃防御方法にあたる。 (イ) 反論- 16 -a原告らが主張する被告Y1(以下,被告らが本件建物の所有者に関し「被告Y1」との呼称を用いる場合,本件合併前のC株式会社及びD株式会社が主体となる事柄に関してそれらの権利義務を包括承継した立場との意味で用いる)の「安全性確保義務」なるものは,被告。 Y1とAとの間において何らの法律関係もない場面(被告Y1が本件建物の所有者であるだけ)では発生する根拠のないものである。したがって,被告Y1は,原告らが主張する一般的,抽象的な危惧感を前提とした作為義務を負わない。 そもそも,吹き付けアスベストの危険性についての一般的知見や本件2階倉庫の吹き付けアスベスト被害の予見可能性に関する原告らの主張は,本件の場合,C株式会社,D株式会社及び被告Y1が,本件2階倉庫の壁面防火材として吹き付けアスベストが使用されていることを認識していたことが前提となる。この前提を欠く上記主張は論理的に意味がない。 b原告らが主張するアスベストの危険性に関する知見やアスベストの規制状況は,ア 吹き付けアスベストが使用されていることを認識していたことが前提となる。この前提を欠く上記主張は論理的に意味がない。 b原告らが主張するアスベストの危険性に関する知見やアスベストの規制状況は,アスベストの製造業や取扱業における労働者の労働環境に関するものであり,アスベスト含有吹き付け材が施工された建物における労働環境や生活環境に関するものではない。旧特化則は,事業場での生産活動に起因する公害問題,事業場内の労働者の健康を守るだけでなく,その結果として公害防止に寄与する方針の下に,制定,施行されたのであり,事業場での生産活動に起因する公害問題を対象としているものである。したがって,事業場での生産活動に起因しない本件2階倉庫におけるような一般建物のアスベスト含有吹き付け材及び同材が施工されている建物での業務を規制対象とするものではない。 被告Y1は,アスベスト関連製品の製造業者でも,その取扱業者で- 17 -もなく,本件建物に関しては,アスベスト製品の利用者,消費者にすぎず,アスベスト粉じんが人の生命,健康を害するか否かに関する知見も一般人と同程度にしか有していなかった。被告Y1が,建物内のアスベスト含有吹き付け材の損傷や劣化等によって人体に中皮腫等の健康被害が生じる可能性があることを具体的に認識したのは,平成17年2月24日に石綿障害予防規則が制定されたころである。 また,被告Y1は,本件建物を建築するに際し,建築業者に対し,壁面にアスベスト含有吹き付け材を使用することを指定したこともなければ,本件建物にアスベスト含有吹き付け材が施工されていることも知らなかった。被告Y1は,本件建物内にアスベスト含有吹き付け材が施工されていることについては,平成15年6月ころ,本件建物の賃貸人の地位をD株式会社から承継した被告Y2から聞いて初め ていることも知らなかった。被告Y1は,本件建物内にアスベスト含有吹き付け材が施工されていることについては,平成15年6月ころ,本件建物の賃貸人の地位をD株式会社から承継した被告Y2から聞いて初めて知った。 したがって,国が使用を許可している建材を使用して建築された建物の所有者に対し,建材の危険性について,国が対策を指示する以前に知り,かつ,その対策を執ることを期待することは困難であり,もとより,アスベスト専門業者でもアスベスト取扱業者でもない建物所有者が,その危険性を調査,研究すべき義務もない。被告Y1は,Aが本件建物で勤務していた期間中には,本件建物内にアスベスト含有吹き付け材が存在していたこと及びその危険性をいずれも知り得なかったから,結果回避義務の前提となる予見可能性がなく,原告らの不法行為の主張は,前提を欠き,失当である。 ( ) 争点[ ](被告Y1には,本件建物の占有者又は所有者として,本件建物 の設置,保存上の瑕疵に係る責任があるかどうか)。 ア原告らの主張(ア) 本件建物の占有者としての責任- 18 -「」,,a民法717条1項にいう占有者とは直接占有者だけに限らず被害者に対する関係で土地工作物を管理,支配すべき地位にある者もこれに当たると解するのが相当である。そして,被害者に対する関係で土地工作物を管理,支配すべき地位にある者かどうかは,土地工作物に対する関与の権限,態様,瑕疵作出への寄与の有無,程度,瑕疵,,,のある土地工作物の種類性質瑕疵による危険性の内容等を勘案し当該土地工作物の瑕疵による危険を除去し,損害の発生を防止することを期待できる者であるかどうか,及び,被害者との関係で占有者としての責任を負担させるのが相当かどうかという観点から判断すべきである。 被告Y1は,本 瑕疵による危険を除去し,損害の発生を防止することを期待できる者であるかどうか,及び,被害者との関係で占有者としての責任を負担させるのが相当かどうかという観点から判断すべきである。 被告Y1は,本件建物を株式会社Bに賃貸しているが,以下の( )aないし( )の事情からすると,本件建物を管理,支配すべき地位にあjった者というべきであり,本件建物に施工されたアスベスト含有吹き付け材による危険を除去し,損害の発生を防止することが期待される者であるから,Aとの関係で民法717条1項にいう「占有者」に当たる。 ( ) 本件建物は,鉄道高架下建物という特殊な物件であり,被告Y1aの本件建物に対する管理,支配は,一般の建物に対するものより強いものである。 ( ) 被告Y1は,本件建物に随時立ち入り,必要な措置を執る権限をb有している。 ( ) 被告Y1は,高架スラブ下の天井の点検口から高架橋検査を行うcことを予定している。 ( ) 被告Y1は,本件建物の主体建築物及び基礎的施設の維持管理にd必要な修繕義務を負担している。 ( ) 本件2階倉庫の壁面に施工されたアスベスト含有吹き付け材は,e- 19 -本件建物の主体構造と一体となっている。 ( ) 本件建物の賃借人が内装工事をする際には,事前に被告Y1に設f計図書を提出して同意を受けなければならず,本件建物内の改修並びに造作,間仕切り,電気装置,ガス,水道施設等の新設,変更及び撤去等の現状変更をする際には,事前に被告Y1に設計図書を提出して承諾を得なければならないとされている。 ( ) 被告Y1は,賃貸建物の管理等を業とし,昭和46年以降は,建g築士の資格を有する者を擁する建築部(建設部)が鉄道高架下建物の設計,施工監理,改修工事等の業務を行っており,以上の各業務について専門的知 Y1は,賃貸建物の管理等を業とし,昭和46年以降は,建g築士の資格を有する者を擁する建築部(建設部)が鉄道高架下建物の設計,施工監理,改修工事等の業務を行っており,以上の各業務について専門的知識を有する。 ( ) 本件2階倉庫の壁面に施工されたアスベスト含有吹き付け材は,h被告Y1が注文したものである。 ( ) アスベスト含有吹き付け材は,経年劣化や振動,接触等により容i易にアスベストが粉じん化し,飛散するものである。 ( ) アスベストの発がん性は,本件賃貸借契約締結以前から繰り返しj指摘されていた。 ,,b本件建物は店舗として人が日常的に出入りする建物であるところ本件2階倉庫の壁面に施工されたアスベスト含有吹き付け材の劣化に伴い本件粉じんが飛散し,本件建物を使用する人の生命,健康を害する危険を有していた。この点は,本件建物の設置又は保存上の瑕疵に当たる。 (イ) 本件建物の所有者としての責任a( )上記( )ア(ア)b( )と同じ。 a a( )上記( )ア(ア)b( )と同じ。 b bb上記ア(ア)bと同じ。 c本件建物の賃借人である株式会社Bは,文房具の小売りを業とする- 20 -,,株式会社であり建物の建材や部材に関する知識を何ら有しておらず本件2階倉庫の壁面にアスベスト含有吹き付け材が施工されているこ,。 とも知らなかったからアスベストの飛散防止措置を執り得なかったしたがって,株式会社Bは,本件建物の占有者(賃借人)として,アスベストに係る瑕疵に関する損害発生を防止するについて必要な注意をすべき義務がないから,同注意をしたときに当たり,民法717条1項ただし書により,同項本文の責任を負わない。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否ア(イ)a( )は認めるが,その余は否認する。 bア( 義務がないから,同注意をしたときに当たり,民法717条1項ただし書により,同項本文の責任を負わない。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否ア(イ)a( )は認めるが,その余は否認する。 bア(イ)a( )に対する被告らの反論は,上記( )イ(ア)のとおりである。 a (イ) 反論a建物の壁面にアスベスト吹き付け材が施工され,存在していること自体は危険ではない。石綿障害予防規則が制定された平成17年2月24日までは,アスベスト含有吹き付け材を施工すること及びそれに,,,ついて除去囲い込み等の措置を講じていない状態は違法ではなく社会的にも国家的にも「建物の瑕疵」とは認識されていなかった。したがって,本件2階倉庫の壁面にアスベスト含有吹き付け材が施工されていて,それについて除去,囲い込み等の措置が執られていなかった状態は,本件建物の設置又は保存上の瑕疵に当たらない。 少なくとも,平成7年にクロシドライトの新たな使用,製造が禁止される以前においては,本件建物にアスベスト含有吹き付け材が施工されていたことについて,建物が通常有すべき安全性を欠いており,本件建物の設置又は保存上の瑕疵に当たるものということはできない。 仮に上記のようにいうことができないとしても,Aは,密閉された- 21 -本件建物2階倉庫内で,マスクもせずに壁面落下物を吸引しながら労働していたのであり,Aの本件建物の使用方法は異常というべきであるから,本件建物の設置または保存に瑕疵があったということはできない。 b仮に本件建物にアスベスト含有吹き付け材が施工された壁があることが本件建物の設置又は保存上の瑕疵に当たるとしても,同瑕疵に係るAの損害に対する第1次的な責任は,本件建物を直接占有している本件建物の賃借人である株式会社Bにおいて負うものである(民法7 あることが本件建物の設置又は保存上の瑕疵に当たるとしても,同瑕疵に係るAの損害に対する第1次的な責任は,本件建物を直接占有している本件建物の賃借人である株式会社Bにおいて負うものである(民法717条1項本文。そして,上記壁は,本来天井で覆われたいわゆる)屋根裏の部分にあったものであり,同部分に人が出入りする構造になっていなかったところ,株式会社Bは,当該壁がある場所に2階部分を作り,同部分を倉庫として使用していたのであるから,株式会社B自身が,Aが本件粉じんの暴露を受けないようにアスベスト含有吹き付け材を除去,封じ込み,囲い込みするなどの対策を執るべきであった。本件建物の所有者であった被告Y1が損害賠償責任を負うのは,占有者である株式会社Bが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことが立証されたときであるところ(同項ただし書,株式会社B)は上記の注意をしていない。 c仮に土地工作物を管理,支配すべき地位にある者も民法717条1項にいう「占有者」に含むとしても,それは土地工作物が危険なものであり,かつ,そのことが事前に明らかな場合に限定されるべきであるところ,本件建物の危険性は事前に明らかでなかったから,被告Y1は占有者に当たらない。 被告Y1は本件建物の賃貸人にすぎず,本件建物は賃借人である株式会社Bに引き渡され,被告Y1は本件建物の合鍵すら持たず,本件建物を常時管理できる状態ではなかったのに対し,株式会社Bは独占- 22 -的,排他的に本件建物を占有していたものである。また,本件建物はいわゆるスケルトン貸しであり,店舗の内装は本件建物の賃借人の責任に属するところ,本件建物につき,2階を造り,倉庫として使用することは,すべて株式会社Bの都合と責任において行われた。したがって,被告Y1は本件建物を管理,支配すべき地位に は本件建物の賃借人の責任に属するところ,本件建物につき,2階を造り,倉庫として使用することは,すべて株式会社Bの都合と責任において行われた。したがって,被告Y1は本件建物を管理,支配すべき地位にある者ではなか。 ,,った原告主張の上記ア(ア)aの( )ないし( )の事由は被告Y1がajAに対する関係で本件建物を管理,支配すべき地位を根拠づけるものではなく,被告Y1は,一般の賃貸人が有する権限以上の権限を有する賃貸人ではないから,Aとの関係で本件建物を管理,支配すべき地位に立つ者ではない。 本件のような場合にまで建物を所有し,賃貸する者を土地工作物を管理支配すべき者として民法717条1項にいう「占有者」に当たるとすれば,民法717条1項ただし書の適用範囲はほとんどなくなる,。 のであって民法717条1項の立法趣旨に反するというべきである( ) 争点[ ](被告Y1には,賃貸人として,本件建物の賃借人の役員又は従 業員に対する安全性確保義務があるかどうか,及び同義務の違反があるかどうか)。 ア原告らの主張(ア) 被告Y1の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務建物の賃貸人は,賃貸借契約に付随する義務又は信義則上の義務として,賃借人に対し,賃貸建物及びこれに設けられている建物設備に起因して賃借人の生命,健康を害する危険が生じないようにすべき注意義務(安全性確保義務)を負う。 本件賃貸借契約は,被告Y1と法人である株式会社Bとの間で締結されていたものであるところ,このように賃借人が法人である場合においては,賃貸人は現実に賃貸建物を使用するのは自然人である当該法人の- 23 -役員や従業員であることを当然知っているし,賃貸建物が危険なものであることによって生命,健康が侵害されるのは当該法人ではなく,当該法人の役 賃貸建物を使用するのは自然人である当該法人の- 23 -役員や従業員であることを当然知っているし,賃貸建物が危険なものであることによって生命,健康が侵害されるのは当該法人ではなく,当該法人の役員や従業員であるから,賃貸人が上記安全性確保義務を負う相手方は,賃貸建物を使用する賃借人の役員や従業員である。 本件建物は,人の生命,健康に有害なアスベスト含有吹き付け材が施工されていた建物であるから,被告Y1は,本件賃貸借契約における賃貸人として,本件建物の賃貸借上の使用者であるAに対し,本件建物の安全性を確保する義務がある。 (イ) 被告Y1の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反被告Y1は,株式会社Bに対し,同社が本件建物を店舗兼倉庫として使用することを承知して,本件建物を賃貸した。また,被告Y1は,株式会社Bが家族経営の個人商店であり,同社の取締役であったAが本件建物において販売業務を行っていたことを認識していた。したがって,被告Y1は,本件賃貸借契約締結時において,Aが本件建物内で継続的に勤務することを認識していた。 また,上記( )ア(イ)のとおり,被告Y1は,遅くとも本件賃貸借契約 が締結された後である昭和46年ころには,本件2階倉庫内で発生する本件粉じんが本件建物を使用する人の生命,健康に有害なものであることを知り又は知り得た。したがって,被告Y1は,同年ころにおいて,Aに対し,上記(ア)の安全性確保義務として,本件2階倉庫内における本件粉じんの飛散を防止するため,アスベスト含有吹き付け材のある壁面を非石綿建材で覆って囲い込むなどの措置を執るべき義務があった。 しかし,被告Y1は,上記措置を執らなかった。この不作為は,昭和45年3月から平成14年6月までのAに対する本件賃貸借契約に基づく債務不履行又は不法行為となる。 イ どの措置を執るべき義務があった。 しかし,被告Y1は,上記措置を執らなかった。この不作為は,昭和45年3月から平成14年6月までのAに対する本件賃貸借契約に基づく債務不履行又は不法行為となる。 イ被告Y1の認否,反論- 24 -(ア) 認否否認する。 (イ) 反論aD株式会社,被告Y2及び株式会社Bは,平成14年3月16日,本件賃貸借契約における賃貸人の地位及び株式会社Bに対する一切の権利義務を同年4月1日以降被告Y2に譲渡することを合意した(以下「本件賃貸権譲渡合意」という。したがって,被告Y1は,本。)件合併の前後を通じて,本件賃貸借契約における賃貸人としての責任を負う者ではない。 b本件賃貸借契約は,法人間で締結されたものであり,賃貸人において賃借人(法人)の生命,健康に対する危険を防止すべき義務は存在し得ない。 また,本件賃貸借契約に基づく賃貸人の義務は,賃借人である株式会社Bに対して負うのであり,契約関係がなく,指揮監督の及ばない賃借人の従業員等やその他の第三者である賃貸建物の利用者に対して負う理由はない。 c被告Y1は,平成15年6月までの間,本件建物の建材にアスベストが含有されていることを知らなかったし,平成17年に石綿障害予防規則が制定施行されるまで,アスベスト含有吹き付け材の危険性も知らなかった。したがって,仮に賃貸人が原告ら主張の安全性確保義務を負うと解する見解に立っても,本件においては,被告Y1がAに対する具体的な義務としての安全性確保義務を負う前提を欠く。 ( ) 争点[ ](被告Y1の争点[ ]ないし[ ]の義務違反等とAの死亡との間に 相当因果関係があるか)。 ア原告らの主張(ア) Aは,上記( )ないし( )の被告Y1の義務違反等により,本件2階倉 - 25 - し[ ]の義務違反等とAの死亡との間に 相当因果関係があるか)。 ア原告らの主張(ア) Aは,上記( )ないし( )の被告Y1の義務違反等により,本件2階倉 - 25 -庫内において,上記1( )ア(イ)のとおり本件粉じんの暴露を受け,悪性 胸膜中皮腫にり患した。 (イ) Aは,平成16年7月8日,悪性胸膜中皮腫の症状が急激に悪化したため,救急車でhセンターに搬送され,緊急入院した。Aは,当時の担当医師に対し,呼吸困難の苦痛を訴え,従来から行われていた左肺側からの胸水排出だけでなく,右肺側からの排出をするよう強く求めた。しかし,同医師は,同月20日,Aに対し,衰弱が激しくリスクが大きいため不可能であると説明した。Aは,同日,呼吸困難による激しい苦痛及びそれから逃れるすべがないことに絶望し,上記センターの最上階から飛び降りて自殺した。 (ウ) Aは,悪性胸膜中皮腫による激しい胸痛,胸水の増加による慢性的な呼吸困難に苛まされ,医療機関への入通院を繰り返して各種の治療を受けたが改善せず,重度の精神的心理的ストレスにより適応障害を発病した。適応障害を発症した者は,主観的な苦痛,情緒障害により,抑うつ気分,不安,心配,現状の中ではやっていけないという感じ等の症状が出て,自殺念慮を抱きやすく,がん患者の自殺の研究では,その半数が適応障害などの抑うつ症状を有しているとの報告がある。Aは,以上のように,悪性胸膜中皮腫による重度のストレスから適応障害を発病し,これにより自殺するに至ったものである。 仮に被告Y1がAの自殺について予見可能性がなかったとしても,中皮腫の予後は極めて不良であって,中皮腫にり患した後の平均的な生存期間は213月といわれている。Aは遅くとも平成14年6月には中.皮腫にり患していたことからすると, 見可能性がなかったとしても,中皮腫の予後は極めて不良であって,中皮腫にり患した後の平均的な生存期間は213月といわれている。Aは遅くとも平成14年6月には中.皮腫にり患していたことからすると,Aが自殺行為をとらなくても,Aは平成16年7月20日からほどないころに中皮腫により死亡するに至ったことが明らかである。 したがって,Aが被告Y1の上記義務違反により悪性胸膜中皮腫にり- 26 -患したこととAが死亡したこととの間には相当因果関係がある。 イ被告Y1の認否,反論(ア) 認否Aの死亡日,その死亡が自殺によるものであることは認め,Aの受診等の内容,経緯,自殺の態様は知らず,Aが中皮腫にり患したこととAが死亡したことの間に相当因果関係があることは否認する。 (イ) 反論アスベスト粉じんの暴露を受けた者が中皮腫を発症するまでには,42,3年程度の潜伏期間がある。原告らの主張を前提とすれば,Aは平成14年6月に悪性胸膜中皮腫の確定診断を受けたというのであるから,Aがその原因となるアスベスト粉じんの暴露を受けた時期は,本件建物が建築された日より前の昭和35年ころということになる。そうすると,Aの中皮腫り患は,上記( )イ(イ)aのとおり,本件建物以外の場 所におけるアスベストの吸引が原因であると考えられる。したがって,原告らの主張する被告Y1の注意義務違反等とAの中皮腫り患との間に相当因果関係はない。なお,仮にAの中皮腫り患が本件2階倉庫内における本件粉じんの吸引と関連性がある(吸引が中皮腫り患の一因となっている)としても,中皮腫が発症するまでの潜伏期間を考慮すれば,Aの中皮腫は,本件建物において業務に従事する前に暴露を受けたアスベストにより発症したものであるといえ,また,本件建物壁面に使用された吹き付け材のアスベストにより中皮 るまでの潜伏期間を考慮すれば,Aの中皮腫は,本件建物において業務に従事する前に暴露を受けたアスベストにより発症したものであるといえ,また,本件建物壁面に使用された吹き付け材のアスベストにより中皮腫にり患する確率は十万から数十万分の1であるから,本件2階倉庫内における本件粉じんの吸引に係る被告Y1の注意義務違反(ただし,被告Y1は,同義務違反を争うものである)等とAの中皮腫り患との間には相当因果関係がないというべ。 きである。 仮に原告らが主張する被告Y1の注意義務違反等とAの中皮腫り患と- 27 -の間に相当因果関係があるとしても,Aの死亡は,A自身の個人的資質(素因)により自殺をしたことによるものであるところ,自殺をする原因には様々なものがあり,中皮腫にり患した者が必ず自殺するとは限ら,,,ないしまたがん患者の自殺率は02%にすぎないことからすると.中皮腫にり患した者が自殺をする蓋然性が高いということもできない。 したがって,被告Y1は,Aが自殺をすることについて予見することも結果を回避することもできない立場にあったことが明らかである。そして,Aは,中皮腫により死亡したのではなく,自殺というA自身の行為によって死亡したのであるから,Aの中皮腫り患とその死亡との間に相当因果関係はない。 ( ) 争点[ ](原告らの損害の有無及びその額) ア原告らの主張(ア) Aの治療経緯Aは,悪性胸膜中皮腫に関して,以下のとおり,入通院した。 aa病院平成14年6月6日通院。 同月10日から同月21日まで検査入院。 bb病院同日通院。 同年7月1日から同年9月3日まで検査,治療のために入院。 cc診療所同年7月26日から同年11月14日までの間に6日間通院。 dd病院同年10月26日から平成16年2月29日までの間 日通院。 同年7月1日から同年9月3日まで検査,治療のために入院。 cc診療所同年7月26日から同年11月14日までの間に6日間通院。 dd病院同年10月26日から平成16年2月29日までの間,断続的に通院。 ee病院- 28 -平成14年9月14日に通院(PET検査。 )ffクリニック同年11月20日から同年12月4日までの間に3日間通院。 gg病院平成15年11月4日から平成16年2月19日までの間に5日間通院。 hb病院平成15年11月28日から同年12月5日までの間(右脇腹腫瘍摘出)及び平成16年1月14日から同月27日までの間(抗がん剤治療)の合計22日入院。 ihセンター同年2月9日から同年4月12日までの間に6日間通院。 同月19日から同年6月28日まで入院。 同月30日から同年7月8日までの間に4日間通院。 同日から同月20日まで入院。 jiクリニック同年2月27日から同年4月17日までの間に8日間通院。 kjクリニック同年5月17日から同年7月15日までの間に6日間通院。 lその他Aは,免疫能力を強化するため,AHCフィトイムノ,D-12,アポイダン,サメ軟骨等の健康補助食品を摂取した。 (イ) Aの損害a積極損害合計735万1622円( ) 治療関係費小計632万1679円aa病院16万9730円- 29 -b病院84万1740円c研究所36万3620円d病院77万4880円同(d薬局)35万8710円e病院18万9910円fクリニック12万6000円g病院2万2300円hセンター24万5815円iクリニック148万1370円jクリニック122万5216円健康補助食品(k興産)11万4009円同(l薬局)85万9450円同(m商会) 万2300円hセンター24万5815円iクリニック148万1370円jクリニック122万5216円健康補助食品(k興産)11万4009円同(l薬局)85万9450円同(m商会)38万4079円高額医療費返還分-83万5150円( ) 通院付添費及び自宅付添費23万7000円bAは,hセンターで胸水コントロールの治療を開始した平成16年2月9日以降,入院期間を除く日(合計79日間)は終日,家族の付添いを要した。 3000円×79日=23万7000円( ) 入院雑費23万7900円c1300円×入院実日数183日=23万7900円( ) 通院交通費等45万4518円dhセンター(駐車場代)3000円iクリニック(新幹線代)26万6000円同(レンタカー代)6993円同(宿泊代)8万7155円- 30 -d病院,hセンター,b病院(高速代)7万6620円jクリニック(タクシー代)1万4750円( ) 器具購入費10万0525円e身体の苦痛緩和のための温灸器及びもぐさ8万9145円介護用ベッド1万1380円b消極損害合計2378万7361円( ) 休業損害815万3589円aAは,平成14年6月10日にa病院に入院してから死亡するまでの771日間,悪性胸膜中皮腫により稼働できなかった。Aの平,,成13年の年収は386万円であったから上記の間の休業損害は386万円×(771日÷365日)=815万3589円(円未満切り捨て)となる。 ( ) 死亡による逸失利益1563万3772円bAは,死亡時70歳であり,その平均余命14年の2分の1の7年間は就労することが可能であった。上記( )の年収を基に,生活a.費控除を30%として,上記就労可能期間(ライプニッ 万3772円bAは,死亡時70歳であり,その平均余命14年の2分の1の7年間は就労することが可能であった。上記( )の年収を基に,生活a.費控除を30%として,上記就労可能期間(ライプニッツ係数5.786)における逸失利益を算出すると,386万円×(1-03)×5786=1563万3772円となる。 .c精神的損害合計3191万0000円( ) 入通院慰謝料391万0000円a上記アの入院6か月,通院19か月に対する慰謝料の額は,391万円が相当である。 ( ) 死亡慰謝料2800万0000円bd葬儀関係費用354万7563円e弁護士費用666万0000円(ウ) 原告らは,Aの損害に係る賠償請求権をそれぞれ法定相続分(原告X- 31 -1は2分の1,その余の原告らは各6分の1)に従って相続した。 (エ) 以上によれば,原告X1の請求額は3662万8273円,その余の原告らの請求額は各1220万9424円(円未満切り捨て)となる。 イ被告Y1の認否争う。 ( ) 争点[ ](過失相殺,損益相殺:抗弁) ア被告Y1の主張(ア) Aの直接の死因は自殺である。したがって,仮に請求原因事実が認められるとしても,被告Y1が補てんすべき損害額は相当程度減額されるべきである。 (イ) 原告X1は,Aの死亡後,独立行政法人環境再生保全機構に対し,石綿による健康被害の救済に関する法律に基づき,Aの死亡に関する救済給付申請を行い,平成19年8月29日,Aの死亡について石綿起因性が認められて,特別遺族弔慰金280万円及び特別葬祭料19万9000円,以上合計299万9000円の支給決定がされ,同額の支給を受けている。この支給額は,損益相殺の対象となるものである。 イ原告らの認否ア(ア)は争う。同(イ)のうち, び特別葬祭料19万9000円,以上合計299万9000円の支給決定がされ,同額の支給を受けている。この支給額は,損益相殺の対象となるものである。 イ原告らの認否ア(ア)は争う。同(イ)のうち,原告X1が被告Y1主張の金員の支給を受,。 けたことは認めるがこれが損益相殺の対象となるものであることは争う 被告Y2に対する請求関係上記請求に係る主要な争点は,以下の[ ]ないし[]のとおりであり,これ らについての当事者の主張は,下記( )ないし( )のとおりである。 [ ]アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況 []Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因 []被告Y2には,賃貸人として,賃借人の役員又は従業員に対する本件 建物の安全性確保義務があるかどうか,及び同義務違反(債務不履行又- 32 -は不法行為)があるか。 []被告Y2の上記義務違反とAの死亡との間に相当因果関係があるか。 []原告らの損害の有無及びその額 []過失相殺,損益相殺(抗弁) ( ) 争点[ ](アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況) ア原告らの主張上記1( )アと同じ。 イ被告Y2の認否,反論上記1( )イと同じ。 ( )争点[](Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因) ア原告らの主張上記1( )アと同じ。 イ被告Y2の認否,反論上記1( )イと同じ。 ウ被告Y2の反論に対する原告らの再反論上記1( )ウと同じ。 ( ) 争点[](被告Y2には,賃貸人として,賃借人の役員又は従業員に対す る本件建物の安全性確保義務があるかどうか,及び同義務違反があるか)。 ア原告らの主張(ア) 被告Y2の賃貸人としての本件建物の 被告Y2には,賃貸人として,賃借人の役員又は従業員に対す る本件建物の安全性確保義務があるかどうか,及び同義務違反があるか)。 ア原告らの主張(ア) 被告Y2の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務建物の賃貸人は,賃借人に対し,建物を使用収益させる義務を負うのみならず,賃貸借契約に付随する義務又は信義則上の義務として,当該建物及びこれに設けられている建物設備に起因して賃借人の生命,健康を害する危険が生じないよう配慮すべき注意義務(安全性確保義務)を負う。 本件賃貸借契約は,当初はC株式会社・D株式会社と株式会社Bとの- 33 -間で締結され,平成14年3月16日の本件賃貸権譲渡合意により,被告Y2がその賃貸人の地位を承継した。 本件賃貸借契約における賃借人は法人である株式会社Bであるところ,このような場合においては,賃貸人は,現実に賃貸建物を使用するのは自然人である当該法人の役員や従業員であることを当然知っているし,賃貸建物が危険なものであることによって生命,健康が侵害されるのは,当該法人ではなく,当該法人の役員や従業員であるから,賃貸人が上記安全性確保義務を負う相手方は,賃貸建物を使用する賃借人の役員や従業員である。 (イ) C株式会社・D株式会社に係る賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反aC株式会社・D株式会社は,株式会社Bに対し,同社が本件建物を店舗兼倉庫として使用することを承知して,本件建物を賃貸した。また,C株式会社・D株式会社は,株式会社Bが家族経営の個人商店であり,同社の取締役であったAが本件建物において販売業務を行っていたことを認識していた。したがって,C株式会社・D株式会社は,本件賃貸借契約締結時において,Aが本件建物内で継続的に勤務することを認識していた。 b上記( )アによれば,C株 て販売業務を行っていたことを認識していた。したがって,C株式会社・D株式会社は,本件賃貸借契約締結時において,Aが本件建物内で継続的に勤務することを認識していた。 b上記( )アによれば,C株式会社・D株式会社は,遅くとも本件賃 貸借契約が締結された後である昭和46年ころには,本件2階倉庫内で発生する本件粉じんが本件建物を使用する人の生命,健康に有害なものであることを知り又は知り得た。したがって,C株式会社・D株式会社は,同年ころにおいて,Aに対し,上記(ア)の安全性確保義務として,本件2階倉庫内における本件粉じんの飛散を防止するため,アスベスト含有吹き付け材のある壁面を非石綿建材で覆って囲い込むなどの措置を執るべき義務があった。 - 34 -しかし,C株式会社・D株式会社は,上記措置を執らなかった。この不作為は,昭和46年ころから平成14年3月31日までの間のAに対する本件賃貸借契約に基づく債務不履行又は不法行為となる。 c被告Y2は,本件賃貸権譲渡合意により,上記bのC株式会社・D株式会社が負っていたAに対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償義務を承継した。 (ウ) 被告Y2自身の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反,,,a被告Y2は平成14年3月16日本件賃貸権譲渡合意に基づき本件賃貸借契約における賃貸人の地位をD株式会社から譲り受けた。 そして,被告Y2は,上記(イ)aの賃借人株式会社Bの本件建物使用状況を認識していた。したがって,被告Y2は,本件賃貸権譲渡合意に基づいて本件賃貸借契約における賃貸人の地位を取得したことにより,Aに対し,本件建物及びこれに設けられている建物設備によりAの生命,健康を害する危険が生じないようにすべき安全性確保義務を負う。 b上記( )アによれば,被告Y2は,本件賃貸 取得したことにより,Aに対し,本件建物及びこれに設けられている建物設備によりAの生命,健康を害する危険が生じないようにすべき安全性確保義務を負う。 b上記( )アによれば,被告Y2は,本件賃貸権譲渡合意の時点で, 本件2階倉庫内で発生する本件粉じんが本件建物を使用する人の生命,健康に有害なものであることを知り又は知り得た。したがって,被告Y2は,上記の時点以降,Aに対し,上記aの義務として,本件建物における本件粉じんの飛散を防止するため,アスベスト含有吹き付け材が施工された壁面を非石綿建材で覆って囲い込むなどの措置を執るべき義務があった。 しかし,被告Y2は,上記措置を執らなかった。この不作為は,平成14年4月1日から同月6月までの間のAに対する本件賃貸借契約に基づく債務不履行又は不法行為となる。 イ被告Y2の認否,反論- 35 -(ア) 認否否認する。 (イ) 反論C株式会社・D株式会社及び被告Y2のいずれも,Aが本件建物で勤務していた期間中,本件建物内にアスベスト含有吹き付け材が施工されていたことを知らなかった。 原告ら主張に係る被告Y2の「安全性確保義務」なるものは,建物賃貸借契約においては発生する根拠のないものである。また,建物賃貸人は,建物賃借人に対して賃貸借契約上の義務を負うものであって,建物賃借人の役員又は従業員に対して同義務を負うものではない。 被告Y2は,賃貸人であるD株式会社と賃借人である株式会社Bとの間の賃貸借契約上の権利義務を承継したが,その承継の対象は,賃貸人の賃借人に対する権利義務であって,賃貸人であるD株式会社の第三者に対する権利義務は含まれない。したがって,仮に,C株式会社・D株式会社がAに対して債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償義務を負っていたとしても,それは上記承継の対象外である るD株式会社の第三者に対する権利義務は含まれない。したがって,仮に,C株式会社・D株式会社がAに対して債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償義務を負っていたとしても,それは上記承継の対象外である。 ( ) 争点[](被告Y2の上記争点[]の義務違反とAの死亡との間に相当因 果関係があるか)。 ア原告らの主張(ア) 上記( )アのC株式会社・D株式会社及び被告Y2の各安全性確保義 務違反により,Aは,本件2階倉庫内において,上記1( )ア(イ)のとお りアスベスト粉じんの暴露を受け,悪性胸膜中皮腫にり患した。 (イ) 上記1( )ア(イ)と同じ。 (ウ) 上記1( )ア(ウ)と同じ(ただし「被告Y1」とあるのを「C株式会 ,社・D株式会社及び被告Y2」と読み替える。 。)イ被告Y2の認否,反論- 36 -上記1( )イと同じ(ただし「被告Y1」とあるのを「C株式会社・ ,D株式会社及び被告Y2」と読み替える。 。)( ) 争点[](原告らの損害の有無及びその額) ア原告らの主張上記1( )アと同じ。 イ被告Y2の認否上記1( )イと同じ。 ( ) 争点[](過失相殺,損益相殺:抗弁) ア被告Y2の主張上記1( )アと同じ(ただし「被告Y1」とあるのを「C株式会社・ ,D株式会社及び被告Y2」と読み替える。 。)イ原告らの認否上記1( )イと同じ。 第4争点に対する判断 被告Y1に対する請求関係( ) 争点[ ](アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況) について証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。)アアスベストの性質等(ア) アスベストは,耐 及びアスベストの規制状況) について証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。)アアスベストの性質等(ア) アスベストは,耐摩擦性,耐熱性,断熱・防音・吸音性,耐薬品性等の物質的特性を持ち,また,経済的に安価なものであることから,摩擦,,,材保温材耐火・耐熱・吸音・結露防止目的の吹き付け材などとして。 ,(),産業界に幅広く使用されてきたアスベストはクリソタイル白石綿アモサイト(茶石綿,クロシドライト(青石綿,アンソフィライト,))トレモライト及びアクチノライトの6種類に分類され,このうちクリソ- 37 -タイル,アモサイト及びクロシドライトが主として上記の用途に使用されてきた(以上,当事者間に争いがない)。 。 (イ)aアスベストは,縦に裂ける傾向があり,次々と細かい繊維となっていく(甲B1。アスベスト繊維は,細いものは直径0.02p18)ないし0.06ミクロン程度の太さのものであり(甲B1,人p22)が呼吸をする際に鼻,気管,気管支の繊毛を通り抜けて呼吸細気管支や肺胞に到達,沈着し,石綿肺,アスベストによる肺がん,中皮腫等の石綿関連疾患を引き起こす(甲B1。アスベストの中でp18,p105)もクロシドライト(青石綿)は,発がん性などの有害性が最も強いものである(甲B1。 p15)bアスベスト暴露を受けた者には,胸膜肥厚斑(プラーク又は限局性胸膜肥厚と呼ばれる胸膜の病変(甲B1)及び石綿小体(肺内p61)に吸入された石綿繊維がマクロファージの作用で亜鈴のような形を形成したもの甲B1という重要な医学的所見が認められる甲())(p80B1序。 )アスベスト関連疾患は,アスベストを吸入することによって生じる マクロファージの作用で亜鈴のような形を形成したもの甲B1という重要な医学的所見が認められる甲())(p80B1序。 )アスベスト関連疾患は,アスベストを吸入することによって生じる疾患であり,石綿肺(呼吸細気管支や肺胞に繊維化が生じ,更に進行すると,蜂窩肺の所見を示す疾患(甲B1,肺がん(アスベp237))スト繊維が原因となって発生した肺がん,中皮腫(正常で中皮細胞)の存在する胸膜,腹膜,心膜及び精巣鞘膜に発生する腫瘍(甲B1,良性石綿胸水(石綿胸膜炎ともいわれるものであり(甲B1p243)),通常は片肺に少量の胸水を認める疾患(甲B1,びまp147p222)))ん性胸膜肥厚(臓側胸膜の病変で,壁側胸膜との癒着を伴うもの(甲B1)が知られている(甲B1。 p149p105))イアスベスト関連疾病に関する知見の推移(ア) 諸外国における知見- 38 -a石綿肺に関する知見1906年(明治39年,イギリスのミュレイにより,石綿肺が)公表された。その後,イタリア,ドイツ,カナダでも石綿労働者に見られる肺疾患が報告され,1930年(昭和5年)には,アメリカでも石綿労働者の肺疾患が報告された(以上,甲B1)。 p106b石綿肺がんに関する知見1935年(昭和10年,アメリカのリンチとスミスにより初め)てアスベストを原因として発症した肺がんの報告がされた(甲B1。その後,石綿肺所見を有する者に高い率で肺がんが合併するp107)旨の報告が相次いでされ(甲B1の,195p108Merewether,Gloyne)5年(昭和30年,イギリスのドールにより,疫学的手法によって)アスベスト暴露労働者に肺がんの罹患率が高いことが明らかにされた(甲B1。 p108)c中皮腫に ewether,Gloyne)5年(昭和30年,イギリスのドールにより,疫学的手法によって)アスベスト暴露労働者に肺がんの罹患率が高いことが明らかにされた(甲B1。 p108)c中皮腫に関する知見1931年(昭和6年,クレンペラーによりアスベストを原因と)して発症した中皮腫が報告された(甲B1。また,1943年p109)(昭和18年,1953年(昭和28年,1954年(昭和29))年)に石綿肺合併胸膜中皮腫例が報告され(甲B3・甲B1,p109)1952年(昭和27年)には石綿労働者の石綿配合併胸膜中皮腫症例が報告された(甲B1。1960年(昭和35年)には,南p109)アフリカのワグナーらにより,疫学的にアスベストと中皮腫との関連性が明確となった(甲B2の1。なお,ワグナーの調査では,中皮)腫発症33例のうち非職業性暴露(環境暴露及び家庭内暴露)によるものが14例存在した(甲2の1。 B)(),1965年昭和40年のイギリスのニューハウスらの調査では中皮腫患者76例のうち31例が石綿工場で働いた経験を有し,残り- 39 -45例中9例は石綿労働者の家族,11例は石綿工場から半マイル以内の居住者であった。また,ニューハウスは,クロシドライト以外のアスベストも中皮腫発症の原因となることを明らかにした(以上,。 甲B2の1ないし,甲B11。 p67p69p97)d国際会議での報告1964年(昭和39年,ニューヨーク科学アカデミーが主催す)る「石綿の生物学的影響」と題する国際会議及び国際対がん連合が主催する「石綿とがん」と題する国際会議が開催され,各国から石綿の発がん性が報告された(甲2の1,甲B21。 Bp68)1972年(昭和47年,国際がん研究機関が主催した「石綿 対がん連合が主催する「石綿とがん」と題する国際会議が開催され,各国から石綿の発がん性が報告された(甲2の1,甲B21。 Bp68)1972年(昭和47年,国際がん研究機関が主催した「石綿の)生物学的影響」と題する国際会議において,アンソフィライト以外の種類の石綿が中皮腫を引き起こし,中でもクロシドライトが最も危険性が高いことが報告された(甲 。また,同年,国際労働機Bp109)関が石綿の発がん性を指摘した(甲 。 Bp23)e建物に吹き付けられたアスベストの除去工事例アメリカのエール大学では,1971年(昭和46年)にアスベスト繊維のはく離を防ぐ固定処理をしたが,それでもアスベストの飛散が治まらないため,1974年(昭和49年)に石綿を除去する工事が実施された(甲A34の1,2。 )(イ) 我が国におけるアスベスト関連疾病に関する知見の推移及びアスベストの規制状況a石綿肺に関する知見等( ) 昭和2年,大阪鉄道病院の鈴木医師が日本で初めて石綿肺を報告aした(甲 。昭和12年から昭和15年には,保険院社会Bp115)保険局健康保険相談所大阪支所長らにより,大阪府泉南郡の石綿工場従事者の健康障害調査が行われ,胸部X線検査をした251名中- 40 -65名に石綿肺が認められた旨の報告がされた(甲 B。 p125,126)昭和22年には,労働基準法施行規則において,石綿肺が業務上疾病に指定され,労災補償の対象とされた。 ( ) 昭和27年,奈良の石綿工場における石綿肺検診により,203b名中10名に石綿肺が認められた旨の報告がされた(甲 B。昭和31年,労働省は「特殊健康診断指導指針について」p127),(同年基発第308号)と題する通達を出し,けい肺を除くじん肺を起こ 中10名に石綿肺が認められた旨の報告がされた(甲 B。昭和31年,労働省は「特殊健康診断指導指針について」p127),(同年基発第308号)と題する通達を出し,けい肺を除くじん肺を起こし又はそのおそれのある粉じんを発散する場所における業務としてアスベストに関連する作業を示し,当該作業に従事した労働者に対してX線直接撮影による胸部の変化の検査を行うものとした(甲B68)。同年には,労働省労働衛生試験研究として組織された石綿肺の診断基準についての共同研究班により,石綿工場での作B業従事者に有意な石綿肺所見率が認められた旨の報告がされ(甲 ,昭和32年及び33年には,石綿肺の診断基準等を示p128)した報告書が提出された(甲 。 Bp147)( ) 昭和35年3月31日にじん肺対策強化のために制定,施行されcたじん肺法では「石綿をときほぐし,合剤し,ふきつけし,りゅ,う綿し,紡糸し,紡織し,積み込み,もしくは積みおろし,または石綿製品を積層し,縫い合わせ,切断し,研まし,仕上げし,もしくは包装する場所における作業」が同法上の「粉じん作業」と定められ(じん肺法施行規則別表第1の23号(甲 ,上記業Bp26))務に従事した労働者について定期的なじん肺健康診断を受けること(甲 )等の規定が設けられた。 Bp27bアスベストによる肺がん,中皮腫に関する知見等( ) 昭和34年から昭和43年の知見等a- 41 -昭和34年2月に,石綿肺での高率な肺がん合併が注目されている旨指摘する文献(甲B48)が,同年12月には,イギリスやp48ドイツでは石綿肺での肺がん合併がけい肺のそれよりも多いとして重視されていることを指摘する文献が(甲B49),昭和37年p88月には,アスベストが職業性肺が ,同年12月には,イギリスやp48ドイツでは石綿肺での肺がん合併がけい肺のそれよりも多いとして重視されていることを指摘する文献が(甲B49),昭和37年p88月には,アスベストが職業性肺がんの原因物質であることを指摘する文献が(甲B52),それぞれ発表された。 p138昭和40年12月には,昭和10年のリンチとスミスの報告例を紹介して(甲B50の表),アスベスト製造産業従事者に肺がんp63が多いこと及びアスベストが発がん物質として呼吸器を経由して,肺,肋膜,腹膜にがんを引き起こすことを指摘する文献が(甲B5 )発表された。 p65昭和42年8月には,昭和41年に開催された国際癌学会の結果とこれまでの研究結果を報告した上で,石綿の発がん性が疫学的,実験動物学的に疑えない事実であること,石綿肺症として,当時専門医が診断し得ない程度の低濃度,長期間の暴露により肺がん及び中皮腫が発生することがあることを指摘する文献が発表された(甲B64)。昭和42年10月には,アスベストの発がん性を指p679摘する文献が発表された(甲B53表)。 p120昭和43年12月には,最近職業がんの中で石綿による肺がんと胸膜・腹膜の中皮腫が最大の関心を払われていること及び上記のがんは石綿の製造者・加工者だけでなく,その使用者にも起りうる職業病として問題にすべきであることを指摘する文献が刊行された(甲B51)。 p399,400( ) 昭和45年の知見等b昭和45年10月,アスベストに曝された人々の間に肺がんや胸膜・腹膜の中皮腫の発症が異常に多いとの諸外国の疫学的研究報告- 42 -を紹介した上で,疫学的研究の結果により,アスベスト工業に携わる人々のみならず,その工場付近の住民,アスベスト鉱山地域の住民,さらにこの物質の消費量の に多いとの諸外国の疫学的研究報告- 42 -を紹介した上で,疫学的研究の結果により,アスベスト工業に携わる人々のみならず,その工場付近の住民,アスベスト鉱山地域の住民,さらにこの物質の消費量の多い都市の一般住民の肺にも高率にアスベストが検出されたこと,中皮腫の発生がごく短期間のアスベストの接触によるごく軽度の肺アスベスト症の症例も認められることなどを指摘し(),アスベストが極めて難治である肺がん,中p56皮腫の発生に何らかの因果関係を持つことが明らかになった以上,この物質の規制にあたることは,単に工場衛生の立場からのみならず,公衆衛生の立場からも大切であると指摘した()論文が発表p58された(甲B3)。 同年11月には,アスベストの製造工場で従業員らに肺がんが多発していることが明らかにされ,新聞で「石綿粉じんが肺ガン生,む8人発病,6人死ぬ「工場従業員以外にも発症例」と報道」,され(甲B46の1),同じころ,大気中に発がん物質であるアスベストが含まれていることが明らかにされ,新聞で「東京の空気に,石綿微量だが発ガン物質」と報道された(甲B46の2)。同年1,,「」,2月11日には新聞に大気を汚す発ガン物質等の見出しで,。 石綿の有害性危険性を指摘する記事が掲載された(甲B46の3)( ) 昭和46年の知見等c昭和46年,労働省は「石綿取扱い事業場の環境改善等につい,て(同年基発第1号)と題する通達を出し,石綿のがん原性(肺」がん)について言及した上で,関係事業場に対する指導,監督を要請した(甲8)。また,同年3月頃,東京都所属の研究者は,アp28スベストの発がん作用及びアスベスト,特にクロシドライトと中皮腫との関連性を指摘した上で「関係はほとんど決定づけられた」,と述べ(甲B 甲8)。また,同年3月頃,東京都所属の研究者は,アp28スベストの発がん作用及びアスベスト,特にクロシドライトと中皮腫との関連性を指摘した上で「関係はほとんど決定づけられた」,と述べ(甲B4),アスベストの使用について,新しい建材としp35- 43 -ての用途についても,人間の生活空間に露出しているような使い方はなるべく避けたほうがよい旨を指摘した(甲B4)。 p37昭和46年4月28日,旧特化則が制定された。旧特化則は,石綿を日常の作業で労働環境の空気汚染をおこすとされる第二類物質に分類し,石綿に係る規制として,[ ] 石綿粉じんが発散する屋内 作業場での一定の除じん装置を有する局所排気装置の設置(条), [ ] 石綿を製造し,又は取り扱う作業場への関係者以外の立入りの 禁止(条),[ ] 石綿を製造する作業に労働者を従事させる場合 の特定化学物質等作業主任者の選任(条),[ ] 石綿を常時製造 し,又は取り扱う屋内作業場での半年に1度の空気中における濃度の測定実施(条),[ ] 石綿を製造し,又は取り扱う作業場への (),呼吸用保護具マスク等の備付け(条)などが定められた(以上 甲B8,甲B47,甲B70)。 同年6月頃には,アスベストの発がん性及び人体への有害性を指摘した雑誌(科学朝日)が(甲B31),同年9月ころには,疫「」学的,実験腫瘍学的にアスベストの発がん性を肯定した上で,都市空気のアスベストへの汚染を広く公衆衛生上の問題として取り扱うべきと指摘する論文が発表された(甲B6,)。 p20 ( ) 昭和47年の知見等d環境庁の公的な研究の報告において,ドール,ワグナー,ニューハウスらによる海外の報告を引用し,石綿暴露と中皮腫発症との間 が発表された(甲B6,)。 p20 ( ) 昭和47年の知見等d環境庁の公的な研究の報告において,ドール,ワグナー,ニューハウスらによる海外の報告を引用し,石綿暴露と中皮腫発症との間に密接な因果関係のあることを明らかにした上で,非職業性暴露でも中皮腫が発生することや,比較的低濃度のアスベスト暴露であっても長年月の経過により中皮腫発症の危険性があることが指摘された(甲B)。 54,55同年6月8日,労働安全衛生法が制定され,同年9月30日,同- 44 -法に基づく省令として特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第39号。以下,単に「特化則」という)が改正された。特化則。 も,旧特化則と同様,石綿に関する規制を定めた(甲B47)。 ( ) 昭和48年から昭和60年の知見等e昭和48年から昭和49年にかけては,我が国においても,アスベストを原因とする中皮腫の症例が報告され(甲B10),同年11月1日には,アスベストの環境汚染を指摘し,アスベストが原料の吹き付け(吹き付けアスベスト)から飛散するアスベスト粉じんの有害性を警告する書籍が出版された(甲B11)。 p109昭和50年3月には,鉱山や工場よりはるかに低い濃度のアスベスト暴露でもアスベスト性の肺がんを起こすことが指摘され(甲B),同年9月30日,特化則が改正され,石綿が発がん性物質と して特別管理物質とされるとともに(条の),[ ] 石綿吹付け作 業の原則禁止(条の),[ ] 石綿等の作業環境測定記録の保存期 間を30年間に延期すること(条の4),[ ] 石綿等を製造し, 又は取り扱う業務について健康診断を実施すること(条),[ ] 石綿等を張り付けたものの破砕,解体等の石綿粉じんを発生しやすい特定の ること(条の4),[ ] 石綿等を製造し, 又は取り扱う業務について健康診断を実施すること(条),[ ] 石綿等を張り付けたものの破砕,解体等の石綿粉じんを発生しやすい特定の作業について原則として湿潤化すること(条の)などが 規定された(甲B56)。 昭和51年1月,専門の臨床医は,低濃度のしかしながら持続的な一定期間にわたる暴露による中皮腫(ないし肺がん)の発現を指摘した上,アスベスト繊維に汚染された大気中に環境的に生活する人々に対しての発病のリスクが多く,我が国において,今後中皮腫の発現が,増加してくる可能性は否定できないと指摘している(甲B58)。同年には「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推p17進について(同年基発第408号)と題する通達により,石綿を」- 45 -可能な限り有害性の少ない他の物質に代替させること,石綿に汚染された作業衣からの二次汚染を防止するため,作業衣の洗濯や持ち出し禁止等の徹底を図ることなどが事業場に指導された(甲B40「2「5」)。 」昭和53年,労働省は,専門家会議による研究,検討を行い,その結果を同年9月に公表した(甲B13文中)。同研究に携わった瀬良好澄医師は,昭和54年7月,石綿と中皮腫との因果関係が疫学的に明らかとされていること,中皮腫は肺がんを発生するのに必要な暴露量よりも少量で発症する可能性があることを指摘した上(甲B13),石綿の輸送,製造,使用,再利用,廃棄処理までp27,28の流れの中で接触するすべての人の健康管理が必要であり,発じん防止を早急かつ完璧に行うことを最優先すべきであること,日本人が放射性物質や放射線に対してとっているのと同じ鋭敏さが求められていることを指摘している(甲B13)。 p28昭和56年には,東京などの各 を早急かつ完璧に行うことを最優先すべきであること,日本人が放射性物質や放射線に対してとっているのと同じ鋭敏さが求められていることを指摘している(甲B13)。 p28昭和56年には,東京などの各地での検診結果等を基に,石綿による健康障害は石綿を扱う労働者の問題からその家族や一般住民にまで広がっていること,短期間又は低濃度の石綿暴露によっても胸膜肥厚等の病変が発生することなどが指摘され(甲B14ないp383し),昭和60年11月には,屋内の壁面などにアスベストがp386吹き付けられており,吹き付けアスベストのある室内の浮遊アスベスト濃度が戸外よりも高く,建築後時間の経過とともに吹き付け材が劣化し,はく離し始めると,汚染が進行していくこと(甲B17),いかに少量のアスベスト暴露でも健康に対する何ほどかp18,p19の障害をもたらすこと(甲B17),それを回避するためにp42,p165少しでも汚染の可能性のあるアスベストは除去又は隔離すべきであることなどを指摘している(甲B17)。 p166- 46 -( ) 昭和62年の知見等f昭和62年2月,環境庁による石綿の健康や環境に対する影響に関する知見をまとめる調査研究の報告が発刊された(甲B18)。ま,,,,,た同月自然はく離人の接触はく離した繊維の再遊離により屋内環境を汚染すること,欧米では吹き付けアスベストに閾値はないと考えられており,吹き付けアスベストのある学校等における対策の必要性を指摘する論文が発表された(甲B35(ただし,発行月は明示なし))。同年4月,日本消費者連盟が発刊した「グッバイ・アスベストくらしの中の発ガン物質」では,室内で吹き付けアスベストの粉じんが飛散し,住人や使用人の健康を損なうおそれがあり,吹き付けアスベスト暴露の 同年4月,日本消費者連盟が発刊した「グッバイ・アスベストくらしの中の発ガン物質」では,室内で吹き付けアスベストの粉じんが飛散し,住人や使用人の健康を損なうおそれがあり,吹き付けアスベスト暴露の危険があるときは除去等の措置を執る必要があることを指摘し(甲B19),同書は,同年5月7日,朝日新聞に大きく取り上げられた。同新聞では,吹き付けアスベストによる室内汚染とそれによる健康影響にも目を向けて危険な場合には除去を求めるよう呼びかけている旨紹介された(甲B46の23)。 同年7月には,文部省は,全国すべての公立小・中・高校を対象にして,吹き付けアスベストの実態調査を実施することとし,吹き付けアスベストの除去工事が進められることとなった(甲B46の27,29,33,36)。 同年,建設省は,建築基準法令の耐火構造の指定から吹き付けアスベストを削除した(甲B72の1,2)。 同年9月,大阪府は,アスベスト対策検討委員会を設置し,アスベスト対策に取り組んだ(甲30)。同年には,アスベストによBる環境汚染の問題と健康被害の危険性を指摘する内容の論文等が複数発表された(同年11月・甲38・甲39,同年12月・甲BB- 47 -20。 B)( ) 昭和63年の知見等g昭和63年1月には建設省住宅局建築指導課長から都道府県建築主務部長宛てに民間建築物における吹き付けアスベストに関する調査依頼の通知が(甲B25),同年2月1日には,環境庁大気保全局大気規制課長・厚生省生活衛生局企画課長から都道府県衛生・環境主管部局長等宛てに「建築物内に使用されているアスベストに係る当面の対策について(通知」が出された(甲B29)。 )同年5月,東京都や横浜市は,建物に使用された吹き付けアスベストの処理対策マニュアルを発表した(甲B45,46 に使用されているアスベストに係る当面の対策について(通知」が出された(甲B29)。 )同年5月,東京都や横浜市は,建物に使用された吹き付けアスベストの処理対策マニュアルを発表した(甲B45,46の39)。 同年6月には,建設省住宅局建築指導課長から特定行政庁建築主務部長宛てに「既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止対策の推進について」と題する通知が出された(甲B26の1)。そのころ,財団法人日本建築センターの「既存建築物の吹付けアスベスト粉じん防止処理技術指針・同解説」が,関係部局や建築関係団体に配布された(甲B26の2,3)。 被告Y1は,同年11月に発刊したD株式会社の社史「二十年のあゆみD株式会社創業20周年記念誌」において,昭和62年の年間メモとして「アスベストの発がん性が問題となり,各地で除,去作業」と記載している(甲A16)。 p41( ) 平成元年以降の知見等h平成元年には,大気汚染防止法が改正され,アスベストも規制の対象となった。 ,,「」平成2年5月1日大阪府は大阪府アスベスト対策基本方針を公表し,吹き付けアスベストが劣化し,飛散しやすい状態になったときには,適切な措置を講じることが必要であり,吹き付けアス- 48 -ベストが使用された建築物の所有者及び管理者は,吹き付けアスベストの有無について設計図書で調査し,アスベスト使用が確認された場合には,劣化状況を診断し,粉じん飛散防止処理を行うことを指示している(甲B30)。 平成7年,労働安全衛生法施行令が改正され,クロシドライトの新たな使用,製造が禁止された。 平成17年2月24日,石綿障害予防規則が制定され,同年7月1日,施行された。同規則は,事業者は,その労働者を就労させる建築物等に吹き付けられた石綿が損傷,劣化等によりその粉じんを が禁止された。 平成17年2月24日,石綿障害予防規則が制定され,同年7月1日,施行された。同規則は,事業者は,その労働者を就労させる建築物等に吹き付けられた石綿が損傷,劣化等によりその粉じんを発散させ,労働者がその粉じんに暴露するおそれがあるときは,当該吹付け石綿の除去,封じ込め,囲い込み等の措置を講じなければならないなどとするアスベスト含有建材を使用した建物に対する対策を内容とする最初の規制法令であった(乙2)。 ,,,上記認定事実によれば建築物の吹き付けアスベストに関し我が国では昭和45年ころの時点では,未だその暴露による健康被害の危険性は指摘されていなかったところ,昭和49年に吹き付けアスベストから飛散するアスベスト粉じんの有害性を警告する書籍が出版されたのを皮切りに,昭和60年,62年と,吹き付けアスベスト暴露の危険性に対してはその除去等の対策を執るべきことを指摘する論稿が出され,後者は全国紙にも大きく取り上げられるとともに,同年には建築法規上も耐火構造から吹き付けアスベストが排除されたり,文部省によって全国の公立学校を対象とした吹き付けアスベストの除去工事が実施されたりなどしたほか,大阪府もアスベスト対策に取り組む委員会を設置するようになり,当時,後に被告Y1により吸収合併されることとなるD株式会社も,このようなアスベストを巡る問題提起と全国各地の動きを認識していたことを指摘することができる。 そうすると,建築物の吹き付けアスベストの暴露による健康被害の危険性- 49 -及びアスベストの除去等の対策の必要性が広く世間一般に認識されるようになったのは,早くても昭和62年ころと認めるのが相当である。 ,,,,これに対し上記認定事実によれば昭和34年以降我が国においてもアスベストが中皮腫や肺がんと関連性を有 認識されるようになったのは,早くても昭和62年ころと認めるのが相当である。 ,,,,これに対し上記認定事実によれば昭和34年以降我が国においてもアスベストが中皮腫や肺がんと関連性を有しているという指摘がされ,昭和41年には低濃度アスベストの暴露による肺がん及び中皮腫発生の可能性が,昭和43年にはアスベスト使用者の肺がん及び中皮腫発生の可能性が,それぞれ指摘されており,また,昭和35年制定,施行のじん肺法,昭和46年制定,施行の旧特化則などにより,アスベスト取扱い労働者に対する対策が執られていることが認められ,これらの事実からすれば,昭和45年ころには,アスベスト自体の人の生命,健康に対する危険性,有害性(特に肺がんや中皮腫の原因物質となり得る有害性)について,一般的に認識されていたと評価することができる。 ( )争点[ ](Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因)について 証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。)アアスベストを原因とする中皮腫に関する知見アスベストを吸入することにより中皮腫が生じることがあり(甲B1,確定診断された中皮腫のほとんどはアスベストが原因であるとさp105)れているところ(乙4,証人W1,,アスベストの累積暴露量と中p774)皮腫の発症との間には,アスベストの累積暴露量が多いほど発症しやすいという関係があり,これを量反応関係という(証人W1。 p17)また,アスベストに最初に被暴してからアスベスト関連疾患が発症する(,),までの期間は一般に潜伏期間と呼ばれているところ甲B1乙4p182,,中皮腫発症までの潜伏期間は非常に長いとされており潜伏期間について最小7年から最大68年(平均約43年)とする報告(甲 までの期間は一般に潜伏期間と呼ばれているところ甲B1乙4p182,,中皮腫発症までの潜伏期間は非常に長いとされており潜伏期間について最小7年から最大68年(平均約43年)とする報告(甲B1,最p182)小11.5年から最大54.2年(平均38年)とする報告(乙5,平)- 50 -均40年程度とする報告(乙4,最小10年から最大70年(平均約4)2,3年)とする証言(証人W1)などがある。 p18,57,76イAの生活環境や就労歴等(ア) Aは,出生直後から大阪府布施市(現在は東大阪市)丁a番地に居住したのをはじめとし,合計4か所に居住したが,各建物にはアスベストは使われておらず(原告X1本人,甲A49,従業員十数名の町p1p2)工場規模の石綿工場は東大阪市内にも存在したものの,環境暴露に有意に関係するものと考えられる各建物の周辺500以内にはクロシドmライトを使用している石綿工場はなかった(証人W1,,甲A1p29 。 p2)また,Aの両親は農家を営んでおり(甲A49,その他,Aと同p2)居していた際に石綿を取り扱う仕事に従事していた者の存在は認められない(原告X1本人,甲A49。 p1p2)(イ) Aは,昭和24年4月から昭和26年3月まで実家の農業を手伝った後,同年4月から昭和39年4月まで,E工場において金網職工として勤務していた(甲A49。 p2)同工場に設置された焼鈍炉にはクリソタイルが使用されており(甲A ,証人W1,,同焼鈍炉について,1日程度かかる補修p2p5455)工事が年に2回実施されていた(証人W1。また,Aは,昭和3p29)9年5月から昭和41年5月まで,F工場において,金網職工として勤務していた(原告X1本人,甲A49 修p2p5455)工事が年に2回実施されていた(証人W1。また,Aは,昭和3p29)9年5月から昭和41年5月まで,F工場において,金網職工として勤務していた(原告X1本人,甲A49。 p1p2)ウ本件建物の状況(ア) 株式会社Bは,本件賃貸借契約の締結後,本件建物のうち,本件2階倉庫を文具類の在庫商品を置く倉庫兼帳簿等をつけるための事務所として使用してきた。本件建物は,1辺が約8~9mの方形をした高さ約5mの部屋であり,本件2階倉庫の壁面部分のうち天井端から約1.1な- 51 -いし3.2mの幅の部分には,クロシドライトを25%含有する吹き付け材が約3㎝の厚さでむき出しのまま施工されている(以上,当事者。 間に争いがない)。 (イ) 本件建物は,頻繁に電車が往来する鉄道の高架下にあり,電車が通るたびに,棚に置いた商品が徐々にずれる程度の振動が生じる状態であった(証人W2,甲A48。特に,昭和61年ないし62年ころp8,9p5)以降は,本件粉じんが目立って飛散し,本件2階倉庫の商品棚,商品及(,,び床面等に降り積もっている状態であった証人W2ないしp2 p16甲A48。 p2)エ本件2階倉庫の石綿濃度(ア) 石綿濃度に関する基準空気中の石綿濃度に関する基準として,以下のような基準が提唱されている。なお,空気中測定濃度は,力(衝撃や振動)の加わり方,床面への落下物の量,人が立ち入った回数と作業の内容などによって変化する(甲A24,25。 )a環境省の測定結果環境省が平成18年に実施した全国の気中石綿濃度調査では,商工業地域における幾何平均0.27fL(最小0.11から最大1. /68)であった(甲A26。 )b労働省の規制値アスベスト関連作業現場等についての評価基準と した全国の気中石綿濃度調査では,商工業地域における幾何平均0.27fL(最小0.11から最大1. /68)であった(甲A26。 )b労働省の規制値アスベスト関連作業現場等についての評価基準として定められてい/る労働省作業環境測定の規制値である管理濃度は従来2000f,,Lであったが(乙7,平成16年に変更され,アモサイト及びクロ)シドライトを除く石綿についての管理濃度は150fLとなった甲/(A24表1。 )c日本産業衛生学会の許容濃度- 52 -日本産業衛生学会が示す許容濃度は,従来,2000fLであっ/たが(乙7,平成13年に変更され,クロシドライトを含む石綿に)ついて,許容濃度が3fL(過剰発がんリスクレベルが1万人に1/人)と勧告された(甲A24表1。 )d世界保健機構の環境保健判定基準/世界保健機構は昭和61年に環境保健判定基準として10f,,,Lを示し(甲A24,乙7,平成12年の「欧州空気質ガイドラp5)イン」では,大気中の石綿濃度が05fLのときに中皮腫が1万な./いし10万人に1人発生するというリスク評価を示した(甲A27の2。 )(イ) 本件2階倉庫の石綿濃度測定結果a平成15年の5月から12月にかけて,本件2階倉庫における石綿濃度測定が行われ,[1]東大阪文具における普段の作業と同様の疑似作業をしないときは,幾何平均3.09fL(最小2.72ないし/最大4.2,[2] 清掃と商品の搬入搬出の疑似作業をしたときは,). (. . ),[]幾何平均188fL最小102ないし最大136 /商品の搬入搬出の疑似作業をしたときは幾何平均671fL最,. (/小3.68ないし最大14)の石綿濃度がそれぞれ計測され,全体 平均188fL最小102ないし最大136 /商品の搬入搬出の疑似作業をしたときは幾何平均671fL最,. (/小3.68ないし最大14)の石綿濃度がそれぞれ計測され,全体の幾何平均は6.71fL(最小1.02ないし最大136)であっ/た(甲A7。 )b平成15年6月,本件2階倉庫内の石綿濃度の検査が作業環境測定会社に依頼して行われ,その結果,同年7月9日時点における本件2階倉庫内の石綿濃度は0.5fLであった(乙6。 /)c被告Y1が平成17年11月に本件建物のアスベスト含有吹き付け材の撤去工事を行った際に行われた測定では,撤去工事を行う前の室内の石綿濃度は220fLと計測された(甲A30。 /)- 53 -オAの本件建物内での就労状況,,,Aは昭和45年3月から平成14年5月までの32年間店長として毎日,午前8時ころに本件建物に出勤し,午後8時ころに閉店するまでのほとんどの時間を本件建物内で過ごしていたが,その間,本件2階倉庫に,(,,)。 入り仕事をすることがあった証人W2甲A48甲A49p5p3p2本件2階倉庫におけるAの勤務の具体的態様は以下のとおりである。 (ア)文具の納入業者が納品した際,1日に約7ないし8回,本件2階倉庫に商品を搬入し(証人W2ないし,甲A48,,また,本p5 p34)件1階店舗に展示していない商品以外の商品の注文を受けて本件2階倉庫に商品を取りに行く(証人W2,甲A48)など,多い日で約p7p450回,少ない日で20から30回程度,本件1階店舗と本件2階倉庫とを往復していた(証人W2。 p7)(イ)在庫商品の整理整頓のため,1週間に数回,1回につき約1時間,本件2階倉庫内で仕事をし,また,毎月締めの日 0から30回程度,本件1階店舗と本件2階倉庫とを往復していた(証人W2。 p7)(イ)在庫商品の整理整頓のため,1週間に数回,1回につき約1時間,本件2階倉庫内で仕事をし,また,毎月締めの日ころには,本件2階倉(,)。 庫内で伝票の整理等を集中的に行っていた証人W2甲A48p7p4毎年2月に行う棚卸しの際には,本件2階倉庫の壁際の棚に置いた在庫商品の上に積もった本件粉じんを払い落としながら在庫を確認していた(証人W2,甲A48。 p7p5)(ウ) 平成2年に電気掃除機を購入するまでは,1月に1ないし2回,20から30分かけて,家庭用竹箒を使用して本件2階倉庫内を掃除し,同年以後は電気掃除機を使用して,本件2階倉庫内を掃除していた(証人W2,甲A48。また,年末には数時間かけて本件2階倉庫の大p7p4)掃除をしていた(甲A48。 p5)(エ) 本件2階倉庫内で1,2時間の仮眠をとることがあった(甲A48。 p5)カAにおける悪性胸膜中皮腫の発症- 54 -Aは,平成13年11月ころから,次第に咳が酷くなり,寝付けない日が続くようになった(原告X1本人,甲A49。Aは,平成14p17p3)年になり,近くの病院で診断を受けた結果,胸水が確認され,同年6月10日,a病院に検査入院し,同月20日ころ,悪性胸膜中皮腫の診断を受け(甲A49,同年7月,b病院に入院し,同病院において,悪性胸p3)膜中皮腫上皮型との確定診断を受けた(当事者間に争いがない。 。)キAの死亡時点での肺の状態等Aの剖検肺を用いて,光学顕微鏡による石綿小体の算定を行った結果,Aの肺から,石綿小体が肺乾燥重量1g当たり平均72本検出された。なお,職業性,家族性及び環境性のアスベスト暴露がない場合の肺乾燥重量1g当たり 用いて,光学顕微鏡による石綿小体の算定を行った結果,Aの肺から,石綿小体が肺乾燥重量1g当たり平均72本検出された。なお,職業性,家族性及び環境性のアスベスト暴露がない場合の肺乾燥重量1g当たり石綿小体数は,35本であり,国際的に共通な石綿関連疾患の判断基準として提言されている「」の「職業での石綿粉じHelsinkiCriteria」,ん暴露が高い可能性がある人物であることを確定するガイドラインでは「肺乾燥重量1g当たり1000本以上の石綿小体の場合」が基準とされている(以上,甲A20の1,2)。 また,同様に,Aの部検肺を用いて電子顕微鏡によるアスベスト繊維の分析を行った結果,Aの肺内石綿濃度は,肺乾燥重量1g当たり1900万本であり,このうち,約85%にあたる1610万本がクロシドライトであった(甲A20の3。これは,職業的石綿暴露がない場合の数値で)ある肺乾燥重量1g当たり183万本の10倍以上の濃度である(甲A20の1。 )上記認定事実によれば,[ ]中皮腫の原因の多くはアスベストであり,ア スベスト暴露の量が多くなればそれだけ中皮腫に発症しやすくなるところ,Aは,本件建物において約32年間勤務し,その間,クロシドライトを含む吹き付けアスベストが用いられた本件建物2階倉庫において,頻繁な鉄道の通過による振動で飛散する本件粉じんに曝された中でも相応の時間作業をし- 55 -ていたこと,[ ]Aの死後,本件建物2階倉庫で当該作業と同様の作業を行 って石綿濃度を測定した結果,全国の気中平均を超え,世界保健機構や日本,,産業衛生学会の基準を超える石綿濃度が検出されたこと[ ]Aの生活環境 家族歴や就労状況において,本件建物2階倉庫部分以外にクロシドライトに被暴する機会がなかった(E工場及びF工場での勤務 ,産業衛生学会の基準を超える石綿濃度が検出されたこと[ ]Aの生活環境 家族歴や就労状況において,本件建物2階倉庫部分以外にクロシドライトに被暴する機会がなかった(E工場及びF工場での勤務の点については後述する)中で,Aの剖検肺からは,国際的に共通な職業的暴露の基準として提。 唱されている基準の10分の1以下の数の石綿小体及び職業的石綿暴露がない場合のアスベスト繊維数の約8.8倍のクロシドライトが検出されているが,この検出結果は,Aの石綿暴露が職業的な暴露ではなく,環境的な暴露として有意なものであることを指摘することができる。そして,これらの事実及び[ ]Aが昭和45年3月に本件建物での勤務を開始し,本件2階倉庫 で初めて暴露してから,31年以上の潜伏期間を経て,平成13年11月に咳の悪化により寝付けなくなり,Aの悪性胸膜中皮腫が発症したという機序は,一般的な中皮腫発症の機序として合理的なものと評価できることを総合すると,Aの悪性胸膜中皮腫の原因は,本件2階倉庫におけるクロシドライト繊維からなる本件粉じんによるものであると高度の蓋然性をもって推認することができる。 これに対し,上記認定事実によれば,Aは,クリソタイルが使用された焼鈍炉の設置されたE工場で金網職工として13年間勤務し,また,F工場においても,2年間金網職工として勤務した事実が認められるが,E工場の焼鈍炉に使用されたアスベストはクロシドライトではない上,年に2回の補修工事の機会以外に,Aが,焼鈍炉により被暴することは考えにくいこと,F工場において,アスベストが使用されていた事実を認めるに足りる証拠はないことからすれば,これらの事実は,具体的に本件粉じん以外の高度の蓋然性を有する他の原因と評価できるものではなく,上記推認を妨げるものではない。また,証拠(乙18 ていた事実を認めるに足りる証拠はないことからすれば,これらの事実は,具体的に本件粉じん以外の高度の蓋然性を有する他の原因と評価できるものではなく,上記推認を妨げるものではない。また,証拠(乙18,証人W1)によれば,本件2階倉庫部分のp42- 56 -アスベスト暴露によるAの中皮腫発症リスクは数万分の1から数十万分の1であるとの事実が認められるけれども,この確率自体,環境基準として健康被害に対し明確な対策が必要な程度に達している(証人W1)ものであp42る上,上記( )で認定したとおり建築物の吹き付けアスベスト材により中皮 腫が発生することがあることが高度の蓋然性をもって認められる以上,客観的,統計的な発生の確率が小さくても上記推認は妨げられないのであって,この事実も上記推認を妨げるものではない。 ( )争点[ ],[ ]及び[ ](被告Y1の所有者としてあるいは賃貸人としての 安全性確保義務違反に基づく責任の有無等)についてア昭和62年以前の安全確保義務違反の有無前記( )のとおり,建築物の吹き付けアスベストの暴露による健康被害 の危険性及びアスベストの除去等の対策の必要性が世間一般に認識されるようになったのは,早くても昭和62年ころであることからすれば,C株式会社ないしD株式会社は,昭和62年以前においては,本件2階倉庫部分の吹き付けアスベストの危険性について予見することができず,安全確保義務を負わないというべきである。 イ昭和62年以降の安全確保義務違反の有無これに対し,前記( )のとおり,昭和62年ころには建築物の吹き付け アスベストの暴露による健康被害の危険性及びアスベストの除去等の対策の必要性が世間一般に認識されるようになったと評価する余地があることからすれば,D株式会社は,昭和62 ころには建築物の吹き付け アスベストの暴露による健康被害の危険性及びアスベストの除去等の対策の必要性が世間一般に認識されるようになったと評価する余地があることからすれば,D株式会社は,昭和62年以降においては,本件2階倉庫部分の吹き付けアスベストの危険性について予見可能性があったといえる余地はある。しかしながら,前記( )のとおり,アスベスト暴露の量が多く なればそれだけ中皮腫に発症しやすくなるものであるところ,Aは,昭和45年3月から平成14年5月までの約32年間,本件建物2階倉庫において本件粉じんに曝された中でも勤務していたことからすれば,アスベス- 57 -ト暴露開始から既に17年経過した昭和62年の時点において,吹き付けアスベストの撤去等の措置を執っていたとしても,Aにおける中皮腫の発症を回避できたものと直ちに認めることは困難である。そうすると,仮にD株式会社に昭和62年以降における安全確保義務違反があったとしても,当該義務違反とAの悪性胸膜中皮腫の発症との間には相当因果関係を認めることはできないというべきである。 したがって,C株式会社ないしD株式会社を承継した被告Y1について,安全確保義務違反に基づく責任を認めることはできない。 ( ) 争点[ ](被告Y1の,本件建物の占有者又は所有者としての,本件建物 の設置,保存上の瑕疵に係る責任の有無)についてア本件建物の設置,保存上の瑕疵の有無について工作物に設置,保存上の瑕疵がある場合とは,工作物が,その種類に応じて通常有すべき安全性を欠いている場合をいうと解するのが相当である。そして,人が利用する建物は,その性質上これを利用する者にとって絶対安全でなければならず,人の生命,身体に害を及ぼさないことが当然前提となっているものというべきところ,本件建物は,鉄道の 当である。そして,人が利用する建物は,その性質上これを利用する者にとって絶対安全でなければならず,人の生命,身体に害を及ぼさないことが当然前提となっているものというべきところ,本件建物は,鉄道の高架下に存(),,在する商業用店舗であり甲A40本件建物内で営業を行う者の生命身体に害を及ぼさない安全な性状のものであることが予定されていたとい。 ,,,,えるまた前記( )で検討したとおり昭和45年ころには人の生命 健康に対するアスベストの危険性,有害性について,一般的に認識されていたものと評価できる。 ところが,本件建物は,本件2階倉庫の壁面部分に,人がそれを吸入することにより中皮腫等の石綿関連疾患を引き起こす原因物質であり,アスベストの中でもとりわけ発がん性などの有害性が強いクロシドライトを一定量含有する吹き付け材が露出した状態で施工されており(前記( )ウ (ア) ,しかも,頻繁に電車が往来する鉄道の高架下にあって,鉄道が通)- 58 -るたびに相応の振動が生じることにより,上記吹き付け材が飛散しやすい状態にあった(前記( )ウ(イ))のであるから,本件建物は,それを利用す る者にとって,アスベスト吹き付け材から発生した粉じんの暴露,吸入により,生命,健康が害され得る危険性があったといえる。そうすると,本件賃貸借契約開始時である昭和45年3月の時点以降,本件建物には,設置,保存上の瑕疵があったものと認めるのが相当である。 これに対し,証拠(甲A3,甲A11の1,甲A26)及び弁論の全趣旨によれば,株式会社Bは,C株式会社から本件建物をスケルトン貸しで借り受けたが,いわゆる屋根裏部分(ちょうど,壁面にアスベスト吹き付け材が施工されている空間部分)を天井板や床板で仕切って本件2階倉庫部分を造ったことが は,C株式会社から本件建物をスケルトン貸しで借り受けたが,いわゆる屋根裏部分(ちょうど,壁面にアスベスト吹き付け材が施工されている空間部分)を天井板や床板で仕切って本件2階倉庫部分を造ったことが認められるが,屋根裏部分を倉庫等として利用するこ,,とは商業用店舗においては少なからず実践されている利用方法であって,,この事実によって株式会社Bの本件建物の使用方法が異常なものであり本件建物には,設置,保存上の瑕疵がなかったということはできない。また,同じく弁論の全趣旨によれば,Aは,密閉された本件建物2階倉庫内で,格別粉じんに対する予防策を講じずに壁面落下物を吸引しながら作業に従事していた事実が認められるけれども,Aは文具店の店長であり,本来的に粉じんが飛散する工場等の作業現場で働く者ではなかったことからすれば,粉じんに対する予防策を執らなかったことをもって,直ちに本件建物の異常な使用方法であり,本件建物には,設置,保存上の瑕疵がなかったということもできない。 イ本件建物の所有者について証拠(乙11,乙12)によれば,昭和44年12月,C株式会社を建築主として,本件建物の建築が開始され,昭和45年3月ころ,本件建物が竣工した事実が,証拠(乙11,乙13の1ないし6)によれば,C株式会社ないしC株式会社から商号変更したD株式会社は,本件建物に係る- 59 -昭和46年度,昭和48年度,昭和51年度,昭和54年度,昭和57年度,昭和60年度の各固定資産税を,本件建物の所有者として支払った事実が,それぞれ認められ,これらの事実を総合すれば,昭和45年当時の本件建物の所有者はC株式会社であったことが推認でき,この推認を妨げるに足りる事実はない。 そして,C株式会社が,関連会社等との合併及び商号変更により,D株式会社となり,更にその ,昭和45年当時の本件建物の所有者はC株式会社であったことが推認でき,この推認を妨げるに足りる事実はない。 そして,C株式会社が,関連会社等との合併及び商号変更により,D株式会社となり,更にその後,被告Y1は,本件合併により,D株式会社の権利義務を包括的に承継して本件建物の所有者となったことは,当事者に争いがない。 ウ本件建物の占有者について前提事実証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる認,,(定に用いた証拠は各文末尾に記載する。 。)(ア) 本件建物は,頻繁に電車が往来する鉄道の高架下にあり,電車が通る,。 ,たびに棚に置いた商品が徐々にずれる程度の振動が生じていた特に昭和61年ないし62年ころ以降は,アスベスト吹き付け材の経年劣化もあいまって,本件粉じんが目立って飛散し,本件2階倉庫の商品棚,商品及び床面等に降り積もっている状態であった(以上,( )ウ(イ)で。 認定のとおり)。 (イ) C株式会社は,昭和45年3月2日,本件賃貸借契約を締結し,株式会社Bに対し,本件建物を賃貸した(第2の2「前提事実」( ))。 本件賃貸借契約では,本件建物が駅高架下に存在するという鉄道施設に関連した特殊物件であることを前提に(甲A8第1条,甲A40第1条,弁論の全趣旨,C株式会社に対し,管理上必要があるときに,本)件建物に立ち入り,必要な措置を執る権限が認められていた(甲A8第13条,甲A40第13条,弁論の全趣旨。 )(ウ) 本件賃貸借契約上,C株式会社は,本件建物の主体建築物及び基礎的- 60 -施設の維持管理に必要な修繕義務を負担しているところ(甲A8第12条,甲A40第12条,本件2階倉庫の壁面には,クロシドライトを)含有する吹き付け材が施工されている(( )ウ(ア)で認定のとおり。 持管理に必要な修繕義務を負担しているところ(甲A8第12条,甲A40第12条,本件2階倉庫の壁面には,クロシドライトを)含有する吹き付け材が施工されている(( )ウ(ア)で認定のとおり。 。)(エ) 株式会社Bは,Aのほか,Aの兄弟であるI,Jが取締役を勤めており(甲A42,49,Aが店長として勤務していた(第2の2「前提)事実」( ) 。 1 )ところで,民法717条1項は,危険な工作物を支配,管理する者が,当該危険が現実化したことによる責任を負うべきであるとの考え方に基づくものであることからすれば,同項にいう「占有者」とは,被害者に対する関係で土地工作物から生ずる危険を支配,管理し,損害の発生を防止し得る地位にある者をいうと解するのが相当である。そうしたところ,上記(ア)ないし(エ)と前記イで認定した事実によれば,[ ]C株式会社は,本件 建物の所有者として,本件建物が駅高架下に存在するという鉄道施設に関連した特殊物件であることを前提に,本件賃貸借契約を締結し,同契約においては,C株式会社に対し,管理上必要があるときに,本件建物に立ち入り,必要な措置を執る権限が認められていたこと,[ ]本件賃貸借契約 上,賃貸人であるC株式会社は,本件建物の主体建築物及び基礎的施設の維持管理に必要な修繕義務を負担しているところ,本件2階倉庫の壁面には,アスベスト吹き付け材が施工されており,電車の振動及び経年劣化により,本件2階倉庫部分には本件粉じんが飛散し得る状態であったことが認められ,これらの事実によれば,本件2階倉庫の壁面につき修繕等の措置を執ることが許容されているのは専ら賃貸人たるC株式会社であって,。 ,賃借人の株式会社Bにはそのような権限がなかったものといえる加えて[ ]賃借人である株式会社Bが,取締役はA及びその 等の措置を執ることが許容されているのは専ら賃貸人たるC株式会社であって,。 ,賃借人の株式会社Bにはそのような権限がなかったものといえる加えて[ ]賃借人である株式会社Bが,取締役はA及びその兄弟で占められてい る上,Aが店長として本件建物で勤務しており,個人営業が法人成りしたに過ぎないことにかんがみると,株式会社Bは,吹き付けアスベストに曝- 61 -され続け,損害を被った被害者であるAと実質上同一であると評価できることを総合考慮すると,被害者であるAに対する関係で本件建物2階倉庫部分に施工されている吹き付けアスベスト材から生じる危険について,支配,管理し,損害の発生を防止し得る地位にあった者は,C株式会社であるというべきである。したがって,C株式会社が,民法717条1項にいう占有者に当たると認められる。 ,(,,)これに対し 証拠 甲A8第11条甲A40第11条証人W2p15及び弁論の全趣旨によれば,本件建物はスケルトン貸しであり,店舗の内,,装に関する事項は本件建物の賃借人の責任に属するところ前記のとおり株式会社Bにより本件2階倉庫が造られ,倉庫等として使用されてきた事実が認められるが,本件で瑕疵が問題となっている部分は,本件建物の主体構造と一体となっている本件2階倉庫の壁面部分であって,内装に関す,,る部分ではないから内装に関してC株式会社に権限がないことをもって。 ,C株式会社が占有者に当たるとの上記認定を妨げることはできないまた被告Y1は,C株式会社が本件建物の合鍵さえ持っていなかったと主張するが,事実としての合鍵所持の有無と,支配,管理すべき責任の所在とは別個の問題であって,仮にC株式会社が本件建物の合鍵を所持していなかった(乙24)としても,そのことにより,C株式会社が占有者に当たる ,事実としての合鍵所持の有無と,支配,管理すべき責任の所在とは別個の問題であって,仮にC株式会社が本件建物の合鍵を所持していなかった(乙24)としても,そのことにより,C株式会社が占有者に当たるとの上記認定は妨げられるものではない。 エまとめ前記イ,ウによれば,結局,本件建物に係る民法717条1項の関係で責任を負うべき主体は,その責めを負うべき期間(すなわち,Aが本件建物内で吹き付けアスベストに曝され始めた昭和45年3月から,悪性胸膜中皮腫を発症した平成13年11月ころまでの間)に占有者(賃貸人)兼所有者(同項において占有者と所有者が同一のときは,同項後段の免責は問題とならず,占有者兼所有者が責任を負う)であったC株式会社(昭。 - 62 -和48年2月末日まで)ないしD株式会社(同年3月1日以降)を承継した被告Y1となる。そうすると,被告Y1は,原告らに対し,民法717,。 条1項に基づき後に検討するAが被った損害につき賠償する義務がある( ) 争点[ ](本件建物の設置,保存上の瑕疵とAの死亡との間の相当因果関 係の有無)についてア証拠及び弁論の全趣旨によれば,Aの症状の経過につき以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。),,(),(ア) Aは平成14年7月悪性胸膜中皮腫との診断を受け争いがない同月以降,中皮腫につき,抗がん剤治療を受け始めた(甲A49。 p4)治療開始後の同年10月ないし11月には,担当医師から良好な状態である旨告げられていたが,平成16年1月24日には,医師から毎週抗がん剤の点滴が,また,同年2月22日には,週に2回抗がん剤の点滴が必要となり,それぞれ指示どおりの点滴が行われるようになった(甲A49ないし,弁論の全趣旨。 p5 )また,平成1 毎週抗がん剤の点滴が,また,同年2月22日には,週に2回抗がん剤の点滴が必要となり,それぞれ指示どおりの点滴が行われるようになった(甲A49ないし,弁論の全趣旨。 p5 )また,平成14年にAの肺に胸水が確認され,7月に胸水を除去した後,Aの胸水の量は,増減はあるものの,経過観察で足りる程度であったが,平成16年4月12日には,レントゲン撮影により,再び胸水の増加が確認され,同日,hセンターに入院の上,同月19日に胸水の除去が行われた(甲A49ないし。 p48)(イ) Aは,平成16年4月20日ころから咳き込むようになり,同月23日には気胸が確認され,その後,呼吸困難に陥った。胸水も増加し,ドレーンによる排水が実施された(以上,甲A49)。 p8同年5月には,いったんは肺の状態が改善されたものの,再度胸水が,()。 溜まり気胸からの空気の漏れも見られるようになった甲A49p9(ウ) 平成16年6月になっても,Aの胸水は改善されず,同月中旬ころからは,Aには微熱,食欲不振などの症状が見られるようになり,衰弱が- 63 -目立つようになった(甲A49。Aは,同月19日「ドクターのp10),説明によっては決断しなければ「家族を開放してやりたい」と日記」,。 に記載し(甲A50,また,21日には「もう生きる希望がなくなっ)た」と医師に伝えるようになった(甲A49,甲A50。同月下p10)旬に入ると,Aは,右肩肩胛骨下付近の腫れと痛みが著しくなり,不眠症状も見られるようになり,また,呼吸困難のため,外出の際には酸素ボンベが必要な状態となっていた(以上,甲A49,,原告X。 p10 1本人)p9そのような中,Aは,6月23日にhセンター心療内科のI医師により「悪性胸膜中皮腫の治 出の際には酸素ボンベが必要な状態となっていた(以上,甲A49,,原告X。 p10 1本人)p9そのような中,Aは,6月23日にhセンター心療内科のI医師により「悪性胸膜中皮腫の治療見通しに対しての精神,心理的ストレス」,を原因とする「適応障害(不安と抑うつ気分を伴う混合型」と診断さ),(,れ薬物療法及び支持的カウンセリングを受けることとなった甲A2甲A36。 )(エ) Aは,平成16年6月28日にhセンターを退院した後も呼吸困難を訴えており,その原因として,左肺側に胸水が貯留し始めていることが(,,)。 考えられると医師から説明があった甲A49原告X1p11 p9Aは,同年7月4日,再び「死にたい」などと日記に記載した(甲A。 50。同月8日には,Aは,症状悪化のため再度hセンターに入院し)た(甲A49,,原告X1本人。 p11 p9)同月9日,痛みを座薬で抑えていたAの左側肺にドレーンを留置し,胸水の排水を開始したが,Aは,同月14日ないし16日,右側肺にも管を留置し,呼吸を楽にすることを強く希望した(甲A49。 p12,13)このころ,Aは「死ぬのは怖くないが,息ができないのが苦しい」,。 と漏らすようになり,また,Aは食事が摂れておらず,衰弱していたため,同月18日には,ブドウ糖の点滴が開始された(甲A49。 p13)同月14日の心療内科受診時,Aには,不眠,不安,抑うつ気分の再燃- 64 -が見られた。なお,Aには,中皮腫に伴う心身の苦痛,苦悩以外のストレス要因は診療経過上確認されなかった(以上,甲A36。 。 )(オ)平成16年7月20日,Aは,とにかく胸水を抜いてほしい旨希望したが,同日午後5時過ぎ,主治医は,原告X1及び原告X3に対し,衰弱が激し 診療経過上確認されなかった(以上,甲A36。 。 )(オ)平成16年7月20日,Aは,とにかく胸水を抜いてほしい旨希望したが,同日午後5時過ぎ,主治医は,原告X1及び原告X3に対し,衰弱が激しく体力が低下しているためこれ以上胸水を抜くことができない,余命は4,5日であると伝えた(甲A49,原告X1本人p13,14。これを受けて,原告X3が,Aに対し,胸水を抜くことがでp12,13)きないことを伝えたところ,Aは深く絶望した様子で,崩れ落ちるような状態であった(甲A49,原告X1本人。 p14p13)(カ)Aは,平成16年7月20日午後8時45分,自殺により死亡した(争いがない。 )イさらに,証拠(甲A36,37)によれば,適応障害と自殺との関係について,以下の事実が認められる。 (ア) 適応障害とは,はっきりと確認できるストレス(がんの診断や再発の告知など)に関連して起こる不安・抑うつで,上記ストレスにより予測されるものをはるかに超えた苦痛あるいは社会的,職業的機能の著しい障害を生じている状態である(DSM-Ⅳ。がん患者に多いのは,不)安と抑うつを伴う適応障害である(以上,甲A36資料)。 p3(イ) 適応障害は,その病態として自殺念慮が出現する蓋然性が高い精神障害の一つと医学的に認められている(甲A36,37。 )(ウ) I医師は,臨床医学的知見から,Aの自殺につき,中皮腫による適応障害(不安と抑うつ気分を伴う混合型)の精神症状(特に抑うつ気分)が自殺行動の誘因となった可能性がある旨推定している(甲A36。 )ウ上記認定事実によれば,[ ]Aは,平成14年7月に悪性胸膜中皮腫と の診断を受け,中皮腫の治療を開始したところ,中皮腫はいったん改善傾向を見せたものの,その後はむしろ悪化し,腫瘍の痛みの増強 ウ上記認定事実によれば,[ ]Aは,平成14年7月に悪性胸膜中皮腫と の診断を受け,中皮腫の治療を開始したところ,中皮腫はいったん改善傾向を見せたものの,その後はむしろ悪化し,腫瘍の痛みの増強とともに,- 65 -胸水の増加やそれに伴う呼吸困難,衰弱が生じたこと,[ ]そのような症 状悪化と肉体的苦痛が持続していた状況のもとで,Aは,自ら死を希求する趣旨の発言をするようになり,心療内科医により適応障害と診断されるに至ったこと,[ ]他方,診療経過上,中皮腫以外のストレス要因は認め られなかったことが認められ,これらの事実を総合すると,Aは,前記I医師の診断どおり,中皮腫の症状の悪化による重度の精神的心理的ストレスにより適応障害を発症したものと認めることができる。したがって,Aの悪性胸膜中皮腫と適応障害との間には,相当因果関係があるというべきである。 また,上記認定事実によれば,Aが適応障害と診断された後,Aの疼痛及び呼吸困難は一層悪化したため,Aは,特に呼吸困難に苦しみ,胸水を抜くことを強く希望していたが,その希望が医師により断られたことに深く絶望し,その直後,Aが自殺したことが認められる。そして,このようなAの病態や診療経過にかんがみると,Aは,かねてから適応障害によって自殺念慮を抱き,自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥っていたところ,主治医によってもはや呼吸困難改善のため胸水を抜くこともできない旨の絶望的見通しを告知されたのが引き金になって自殺するに至ったものと推認することができる。そうすると,Aの中皮腫及びこれに起因する適応障害がAの自殺の原因であるということができるから,Aの悪性胸膜中皮腫と自殺による死亡との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。 そして,上記のとおりAの悪 の中皮腫及びこれに起因する適応障害がAの自殺の原因であるということができるから,Aの悪性胸膜中皮腫と自殺による死亡との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。 そして,上記のとおりAの悪性胸膜中皮腫と自殺による死亡との間には相当因果関係があることに加え,前記( )のとおり本件建物にはアスベス (),,トクロシドライト吹き付け材から発生した粉じんの暴露吸入により生命,健康が害され得る危険性があるという意味において設置,保存上の瑕疵があったものと認めるられるところ,前記( )のとおり,上記危険が - 66 -顕在化し,本件2階倉庫におけるクロシドライト繊維からなる本件粉じんを原因としてAの悪性胸膜中皮腫が発症したと推認できることからすれば,本件建物の設置,保存上の瑕疵とAの死亡との間には,相当因果関係が認められるというべきである。 ( )争点[ ]及び[ ](原告らの損害額,過失相殺及び損益相殺の可否及びそ の割合)についてア損害額(ア) 入通院,治療及び休業に関する損害a治療関係費505万3711円証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。)( ) Aは,a病院に平成14年6月6日から通院し,同月10日からa同月21日までの12日間,検査のため入院し,悪性胸膜中皮腫との診断を受け,診療費として16万9730円を支払った(甲C1の1ないし5,甲C31。 )( ) Aは,悪性胸膜中皮腫の治療のため,b病院に平成14年6月2b1日から通院し,同年7月1日から同年9月3日までの65日間,検査,治療のために,平成15年11月28日から同年12月5日までの8日間,悪性胸膜中皮腫を原因とする右脇腹腫瘍摘出のために,平成16年1月14 通院し,同年7月1日から同年9月3日までの65日間,検査,治療のために,平成15年11月28日から同年12月5日までの8日間,悪性胸膜中皮腫を原因とする右脇腹腫瘍摘出のために,平成16年1月14日から同月27日までの14日間,抗がん剤治療のために,それぞれ入院し,診療費として84万1740円を支払った(甲C2の1ないし40,甲C32。 )( ) Aは,悪性胸膜中皮腫の治療のため,c診療所に平成14年7月c26日から同年11月14日までの間に通院し,診療費として36万3620円を支払った(甲C3の1ないし6,甲C33。 )( ) Aは,悪性胸膜中皮腫の治療のため,d病院に同年10月26日d- 67 -から平成16年2月29日までの間通院し,治療費として86万7330円(平成14年10月26日から同年12月31日分は重複していると考えられるので,証拠記載額をそのまま合算した98万()。),5280円から11万7950円甲C4の1を控除したを薬剤費として35万5150円(3560円の返金(甲C5の8)を控除した金額)をd薬局に,それぞれ支払った(甲C4の1ないし51,甲C5の1ないし53,甲C34,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,平成14年9月14日,悪性胸膜中皮腫の検査のためにee病院に通院し,検査費及び薬剤費として18万9910円を支払った(甲C6の1,2,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,平成14年11月20日から同年12月4日の間,悪性胸f膜中皮腫の検査,治療のためにfクリニックに通院し,検査費及び診療費として12万6680円(原告が同クリニックに係る請求額に掲げていない680円(甲C7の2)を含む)を支払った(甲。 C7の1,2,弁論の全趣旨。 ),,( ) Aは平成15年11月4日から平成16 12万6680円(原告が同クリニックに係る請求額に掲げていない680円(甲C7の2)を含む)を支払った(甲。 C7の1,2,弁論の全趣旨。 ),,( ) Aは平成15年11月4日から平成16年2月19日までの間g悪性胸膜中皮腫の検査,治療のためにg病院に通院し,治療費等と(,)。 して2万2300円を支払った甲C8の1ないし5甲C36( ) Aは,胸膜中皮腫の診療のために,平成16年2月9日から同年h4月12日までの間及び同年6月30日から同年7月8日までの間,hセンターに通院し,同年4月19日から同年6月28日までの間及び同年7月8日から同月20日までの合計84日間,同病院に入院し,診療費として,24万5815円を支払った(甲C9の1ないし15,甲C37。 )( ) Aは,胸膜中皮腫の治療のために,平成16年2月26日から同i年4月17日までの間,iクリニックに通院し,治療費として14- 68 -8万1370円を支払った(甲C10の1ないし4,甲C38。 )( ) Aは,胸膜中皮腫の治療のために,平成16年5月17日,同月j,,,,31日同年6月25日同年7月1日同月8日及び同月15日jクリニックに通院し,治療費等として122万5216円を支払った(甲C11の1ないし7,甲C39。 )( ) Aは,上記治療費のうち83万5150円につき,高額医療費返k還分として給付返還を受けた(甲C15の1ないし17。 )上記認定事実によれば,Aは,悪性胸膜中皮腫に関する治療関係費として,合計505万3711円を負担したことが認められるので,Aは,同額の損害を被ったことが認められる。 なお,証拠(甲C12の1ないし2,甲C13の1ないし17,甲C14の1ないし9)によれば,Aは,免疫力改善のため健康補助 を負担したことが認められるので,Aは,同額の損害を被ったことが認められる。 なお,証拠(甲C12の1ないし2,甲C13の1ないし17,甲C14の1ないし9)によれば,Aは,免疫力改善のため健康補助食品などを購入し,合計135万7538円を支払ったことが認められるけれども,証拠(原告X1)によれば,これらの健康補助食品p25などは医師の勧めではなく自発的に試みたことが認められるので,Aが被った相当因果関係ある損害として認められないというべきである。 b通院付添費及び自宅付添費認められない証拠(原告X1)によれば,平成16年7月8日のhセンターp25,。 への入院の直前までは家族の介護は必要なかったことが認められるそうすると,Aが,通院付添費及び自宅付添費相当額の損害を被ったとは認められない。 c入院雑費23万7900円上記(ア)で認定した事実によれば,Aは,悪性胸膜中皮腫の治療等のため183日間入院しており,この間の入院雑費は1日1300円とするのが相当である。 - 69 -したがって,入院雑費は,1300円に入院日数183日を乗じた23万7900円となり,Aは同額の損害を被ったと認められる。 d通院交通費等45万4118円証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(認定に用いた証拠は,各文末尾に記載する。 。)( ) Aは,hセンターへの通院の際,駐車場代として,3000円をa支払った(甲C16の1ないし9,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,iクリニックへの通院の際,新幹線代として26万600b0円を,レンタカー代として6993円を,宿泊代として8万71,(,,55円をそれぞれ支払った甲C17の1ないし10甲C18甲C19の1ないし4,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,d病院, を,レンタカー代として6993円を,宿泊代として8万71,(,,55円をそれぞれ支払った甲C17の1ないし10甲C18甲C19の1ないし4,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,d病院,hセンター,b病院への通院の際,高速代としてc7万6220円を支払った(甲C20の1ないし7,弁論の全趣旨。 )( ) Aは,jクリニックへの通院の際,タクシー代として1万475d0円を支払った(甲C21の1,2,弁論の全趣旨。 ),,,,,上記認定事実によればAはiクリニックd病院hセンターb病院,及びjクリニックへの通院の際,交通費として合計45万4118円を支出したことが認められるところ,上記(ア)で認定したとおり,Aは,これらの病院に,悪性胸膜中皮腫の診療,治療等のために通院していたこと,jクリニックへの通院日のうち,平成16年5月17日,同月31日,同年6月25日及び同年7月15日は,Aはhセンターに入院しており,その他の通院日である同年7月1日及び同月8日において,上記( )ア(エ)で認定したとおりAは呼吸困難を訴 ,,えていたことを考慮するとAが支出した交通費45万4118円はAが被った損害と認められる。 - 70 -e器具購入費1万1380円(,),,, 証拠 甲C22弁論の全趣旨によればAは平成16年6月自宅で寝起きする際の苦痛を緩和するため介護用ベッドを購入し,その代金として1万1380円を支出したことが認められるので,当該購入費用はAが被った損害と認められる。 これに対し,証拠(甲C23の1,2,原告X1)によれば,p26Aは,悪性胸膜中皮腫の治療のため,温灸器及びもぐさを購入し,8万9145円を支払ったことが認められるけれども,証拠(原告X1)によれば,当該 証拠(甲C23の1,2,原告X1)によれば,p26Aは,悪性胸膜中皮腫の治療のため,温灸器及びもぐさを購入し,8万9145円を支払ったことが認められるけれども,証拠(原告X1)によれば,当該温熱療法は医師の勧めではなく自発的に行ったp25ことが認められるので,Aが被った相当因果関係ある損害として認められないというべきである。 f休業損害815万3589円証拠(証人W2,原告X1,甲C24,弁論の全趣旨)にp17p19よれば,Aは,株式会社Bでの勤務により,平成13年は386万円の収入を得ていたところ,平成14年6月10日にa病院に入院してから平成16年7月20日に死亡するまでの771日間,悪性胸膜中皮腫により稼働できなかったことが認められるので,上記期間にAが被った休業損害は,以下のとおり815万3589円となる。 386万円×(771日÷365日)=815万3589円(円未満切り捨て。以下同じ。 )g入通院慰謝料391万円上記(ア)で認定したとおりAは,悪性胸膜中皮腫のため,平成14年6月6日にa病院に通院し始めてから平成16年7月20日に死亡するまでの間(合計25か月,183日間入院し,入院期間以外は)通院していた。 上記入通院に対する慰謝料の額は,391万円が相当である。 - 71 -よって,Aの入通院,治療及び休業に関する損害は,上記aからgの合計額1782万0698円となる。 (イ) 死亡による損害a葬儀関係費用150万円証拠(甲C25,甲C26の1,2)によれば,Aの葬儀関係費用として354万7563円が支出されたことが認められ,このうち,150万円が,Aの死亡と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 b死亡による逸失利益1340万1302円Aは,死亡当時70歳であった(争 563円が支出されたことが認められ,このうち,150万円が,Aの死亡と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 b死亡による逸失利益1340万1302円Aは,死亡当時70歳であった(争いがない)ことからすれば,。 その平均余命14年の2分の1の7年間を就労可能期間とし,中間利息控除として同期間に対応するライプニッツ係数(5.7864)を。 ,(,用いて逸失利益を計算するのが相当であるまた証拠甲A49p3甲C24,27)によれば,Aは,死亡当時一家の支柱であり,妻の原告X1を扶養していた(Aの子であるその余の原告らは,いずれも独自の収入を得ていた)ことが認められるから,Aの生活費の控除。 割合は4割とするのが相当である。そこで,上記(ア)fで認定した年収386万円を基に,生活費控除割合を4割として逸失利益を算出すると,Aの死亡による逸失利益は,以下のとおり1340万1302円となる。 386万円×(1-0.4)×5.7864=1340万1302円c死亡慰謝料2800万円Aの死亡慰謝料は,2800万円とするのが相当である。 よって,Aの死亡による損害は,aからcの合計額4290万1302円となる。 - 72 -イ損益相殺及び過失相殺(ア) 過失相殺aAが平成16年7月20日に自殺により死亡したことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲A36添付書類)によれば,我が国p4のがん患者の自殺率は0.2%であったとの報告が平成11年になされていることが認められる。そして,このように,がん患者のうち自殺に至る者の割合は小さいことからすれば,前記( )ウのとおり,A が,悪性胸膜中皮腫を原因とする適応障害によってかねてから自殺念慮を抱き,自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥っ 割合は小さいことからすれば,前記( )ウのとおり,A が,悪性胸膜中皮腫を原因とする適応障害によってかねてから自殺念慮を抱き,自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥っていたところ,主治医によってもはや呼吸困難改善のため胸水を抜くこともできない旨の絶望的見通しを告知されたのが引き金になって自殺するに至ったとの事情を考慮しても,損害の公平な分担の観点から,民法722条2項を類推適用して,上記ア(イ)のAの死亡による損害から1割減額するのが相当である。 そうすると,Aの死亡による損害額は,3861万1171円となる。 b前記( )アで認定したとおり,株式会社Bは,本件2階倉庫部分を 造り,当該部分を倉庫等として利用した事実及びAは,密閉された本件建物2階倉庫内で,格別粉じんに対する予防策を講じずに壁面落下物を吸引しながら作業に従事していた事実が認められるところ,前記( )アで検討したとおり,これらの事実から直ちに本件建物の使用方 法が異常なものであるということはできないけれども,株式会社B及びAの上記使用方法ないし作業態様も,Aの本件粉じん吸引による悪性胸膜中皮腫の発症に一定程度寄与したことものと合理的に推認されることにかんがみると,損害の公平な分担の観点から,民法722条2項を類推適用して,Aが被った全損害から2割の減額をするのが相- 73 -当である。 そうすると,Aの損害額は,上記ア(ア)の1782万0698円と上記aの3861万1171円を合計した5643万1869円から2割を減額した4514万5495円となる。 そして,原告X1は,Aの妻であり,原告X2,原告X3及び原告X4は,いずれもAの子であることは当事者間に争いがないので,原告らは,Aの損害に係る賠償請求権をそれぞれ法定相続分(原告X 5円となる。 そして,原告X1は,Aの妻であり,原告X2,原告X3及び原告X4は,いずれもAの子であることは当事者間に争いがないので,原告らは,Aの損害に係る賠償請求権をそれぞれ法定相続分(原告X1は2分の1,その余の原告らは各6分の1)に従って相続した結果,原告X1の損害額は2257万2747円,その余の原告らは各752万4249円となる。 (イ) 損益相殺原告X1は,Aの死亡後,独立行政法人環境再生保全機構に対し,石綿による健康被害の救済に関する法律に基づき,Aの死亡に関する救済給付申請を行い,平成19年8月29日,Aの死亡について石綿起因性が認められて,特別遺族弔慰金280万円及び特別葬祭料19万9000円,以上合計299万9000円の支給決定がされ,同額の支給を受けたことは当事者間に争いがないところ,このうち,特別葬祭料19万9000円は,損益相殺の対象となるものであるから,原告X1の損害額は,2237万3747円となる。 これに対し,特別遺族弔慰金は,石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とするものであり(石綿による健康被害の救済に関する法律第1条,損害を填補する性質を有するものということはできない)から,損益相殺の対象とならないというべきである。 ウ弁護士費用本件訴訟の内容,審理経過及び認容損害額等にかんがみると,被告Y1に賠償させるべき弁護士費用は合計450万円(原告X1につき225万- 74 -円,その余の原告らにつきそれぞれ75万円)とするのが相当である。 以上によれば,原告X1の損害額は2462万3747円,その余の原告らの損害額はそれぞれ827万4249円(合計4944万6494円)となる。 被告Y2に対する請求関係( ) 争点[ ](アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況) ,その余の原告らの損害額はそれぞれ827万4249円(合計4944万6494円)となる。 被告Y2に対する請求関係( ) 争点[ ](アスベストの危険性に関する知見及びアスベストの規制状況) について前記1( )のとおり。 ( )争点[](Aの悪性胸膜中皮腫の発症原因)について 前記1( )のとおり。 ( ) 争点[],[](被告Y2の賃貸人としての安全性確保義務違反に基づく 責任の有無等)についてアC株式会社,D株式会社に係る賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反に基づく責任の有無前記1( )で検討したとおり,C株式会社ないしD株式会社に,賃貸人 としての本件建物の安全性確保義務違反に基づくAの悪性胸膜中皮腫罹患についての責任を認めることはできない。 イ被告Y2自身の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反に基づく責任の有無前記1( )のとおり,すでに昭和62年ころには建築物の吹き付けアス ベストの暴露による健康被害の危険性及びアスベストの除去等の対策の必要性が世間一般に認識されるようになったと評価する余地があり,その後のさらなるアスベストを巡る知見の浸透も考慮すると,被告Y2が本件建物の賃貸人たる地位を承継した平成14年4月の時点においては,本件2階倉庫部分の吹き付けアスベストの危険性について予見可能性があったといえる。 - 75 -しかしながら,前記1( )のとおり,アスベスト暴露の量が多くなれば それだけ中皮腫に発症しやすくなるものであるところ,Aは,昭和45年4月から平成14年5月までの約32年間,本件建物2階倉庫において本件粉じんに曝された中でも勤務していたこと,Aは,平成13年11月ころから,次第に咳が酷くなり,寝付けない日が続くようになり,平成1 4月から平成14年5月までの約32年間,本件建物2階倉庫において本件粉じんに曝された中でも勤務していたこと,Aは,平成13年11月ころから,次第に咳が酷くなり,寝付けない日が続くようになり,平成14年には胸水が確認され,同年6月20日ころ,悪性胸膜中皮腫の診断を受け,同年7月,b病院において,悪性胸膜中皮腫上皮型との確定診断を受けたことからすれば,被告Y2が本件建物の賃貸人たる地位を承継した平成14年4月の時点において,吹き付けアスベストの撤去等の措置を執っていたとしても,Aにおける中皮腫の発症を回避できたものと認めることは困難である。そうすると,仮に被告Y2自身の賃貸人としての本件建物の安全性確保義務違反があったとしても,当該義務違反とAの悪性胸膜中皮腫の発症との間には相当因果関係を認めることはできないというべきである。 したがって,被告Y2に対し,賃貸人たる地位を承継した立場及び固有の賃貸人たる地位のいずれについても,安全確保義務違反に基づく責任を認めることはできないから,原告らの被告Y2に対する請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 結語以上によれば,原告らの被告Y1に対する請求は,主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却し,原告らの被告Y2に対する請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条,65条1項を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第20民事部- 76 -裁判長裁判官徳岡由美子裁判官下澤良太裁判官野口晶寛- 77 - 徳岡由美子 下澤良太 野口晶寛
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