主文 被告株式会社田中興業エンタープライズは,原告Aに対し,67万4180円及びうち66万円に対する平成20年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告株式会社田中興業エンタープライズは,原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部に対し,20万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告Aの被告株式会社田中興業エンタープライズに対するその余の請求及び被告東京湾岸産業株式会社に対する請求をいずれも棄却する。 原告Bの被告東京湾岸産業株式会社に対する請求を棄却する。 原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部の被告株式会社田中興業エンタープライズに対するその余の請求及び被告東京湾岸産業株式会社に対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを11分し,その10を原告らの負担とし,その余を被告株式会社田中興業エンタープライズの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告株式会社田中興業エンタープライズは,原告Aに対し,220万6554円及びうち214万4040円に対する平成20年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告東京湾岸産業株式会社は,原告Aに対し,30万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告東京湾岸産業株式会社は,原告Bに対し,40万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告株式会社田中興業エンタープライズは,原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部に対し,400万円及びこれに対する平成19年5月10日から支 払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告東京湾岸産業株式会社は,原告全日本建設運 ,原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部に対し,400万円及びこれに対する平成19年5月10日から支 払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告東京湾岸産業株式会社は,原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部に対し,300万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告株式会社田中興業エンタープライズ(以下「被告田中興業」という。)の従業員として,被告田中興業が輸送契約を締結していた被告東京湾岸産業株式会社(以下「被告湾岸産業」という。)の工場に所在する車庫の車庫所長として就労しており,原告全日本建設運輸連帯労働組合関東支部(以下「原告組合」という。)の田中興業分会長である原告Aが,被告田中興業による東京湾岸産業車庫所長を解任するとの配転命令は無効であるとして,①被告田中興業に対し,不法行為に基づく損害賠償として,元金214万4040円並びにうち132万2760円に対する訴状送達の日の翌日から平成20年4月18日まで及び元金214万4040円に対する弁済期後である同月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②原告Aが,被告湾岸産業の工場長兼取締役であるCにより原告組合からの脱退勧奨を受けたとして,被告湾岸産業に対し,使用者責任による不法行為に基づく損害賠償として30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,③原告組合田中興業分会の副分会長である原告Bが,Cにより原告組合からの脱退勧奨を受けたとして,被告湾岸産業に対し,使用者責任による不法行為に基づく損害賠償として40万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支 からの脱退勧奨を受けたとして,被告湾岸産業に対し,使用者責任による不法行為に基づく損害賠償として40万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,原告組合が,④被告田中興業に対しては,同社による原告Aへの配転命令は不当労働行為に該当する等の理由により無効であり,団結権を侵害するとして,不法行為に基づき損害賠償として400万円,⑤被告湾岸産業に対しては,Cによる原告A及び原告Bへの原告組合脱退勧奨は,団結権を侵害するとして,不法 行為に基づき損害賠償として300万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求している事案である。 争いのない事実等(1)当事者等ア(ア)被告田中興業は,一般貨物自動車運送等を業とする株式会社である(争いのない事実)。 (イ)被告湾岸産業は,生コンクリートの製造販売等を業とする株式会社であり,Cは,東京都大田区<以下略>所在の同社工場の工場長で,同社の取締役である(争いのない事実)。 (ウ)被告田中興業は被告湾岸産業と,同社が操業を開始した平成17年1月ころから,輸送契約を締結していた(争いのない事実)。 イ(ア)原告組合は,建設,セメント・生コン,トラック,バス・タクシーなど建設業や運輸業で働く人を中心に組織されている産業別労働組合である(争いのない事実,甲3,弁論の全趣旨)。 (イ)原告A(昭和▲年▲月▲日生)は,被告田中興業の従業員で,平成17年11月1日から,被告湾岸産業の東京都大田区<以下略>所在の工場にある東京湾岸産業車庫において,車庫所長として勤務するよう命ぜられた者であり,平成18年9月17日に結成された原告組合田中興業分会の分会長である(争いのない事実, 東京都大田区<以下略>所在の工場にある東京湾岸産業車庫において,車庫所長として勤務するよう命ぜられた者であり,平成18年9月17日に結成された原告組合田中興業分会の分会長である(争いのない事実,甲4,弁論の全趣旨)。 (ウ)原告B(昭和▲年▲月▲日生)は,被告田中興業の従業員で,原告組合田中興業分会の副分会長であり,被告湾岸産業工場のプラント保守点検業務にも従事していた(原告Bが被告田中興業の従業員であることは,原告らと被告湾岸産業との間において争いがない。甲4)。 (2)原告組合田中興業分会の結成原告組合は,被告田中興業に対し,平成18年9月19日,原告組合田中 興業分会の結成を通知した(争いのない事実)。 (3)原告AとCの会話原告AとCは,同9月末ころ,焼肉店において食事をし,組合のことについても話をした(争いのない事実。なお,組合の話がどの程度であったや,内容の詳細については争いがある。)。 (4)原告BとCの会話原告BとCは,同年10月ころ及び同年12月5日,組合のことについて話をした(争いのない事実,甲14,丙2。なお,内容の詳細については,争いがある。)。 (5)労働基準監督署への申告原告Aは,船橋労働基準監督署において,同年11月21日,被告田中興業について,原告A外4名に対する未払残業代があるとして,労働基準法37条違反を理由とする申告をした(争いのない事実,甲5)。 (6)原告Aへの配転命令ア被告田中興業の就業規則9条は,以下のとおり規定している(乙4)。 会社は,業務の都合により,本人の希望,健康,技能,勤務状況等を公正に考慮して,従業員に対し転勤又は職場及び職種の変更を命ずることがある。 イ被告田中興業は,原告Aに対し,同年11月30日,東京湾岸産業車庫所長を解任すると通告した(以下「本件配転 勤務状況等を公正に考慮して,従業員に対し転勤又は職場及び職種の変更を命ずることがある。 イ被告田中興業は,原告Aに対し,同年11月30日,東京湾岸産業車庫所長を解任すると通告した(以下「本件配転命令」という。)(争いのない事実)。 (7)東京湾岸産業車庫における業務の終了被告田中興業は,平成20年3月31日,被告湾岸産業との間の契約の終了により,東京湾岸産業車庫における業務を終了した(争いのない事実)。 争点 (1)本件配転命令の有効性及び不法行為の成否(2)被告湾岸産業の原告Aへの脱退勧奨についての不法行為の成否 (3)被告湾岸産業の原告Bへの脱退勧奨についての不法行為の成否(4)被告田中興業の原告組合に対する不法行為の成否(5)被告湾岸産業の原告組合に対する不法行為の成否 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(本件配転命令の有効性及び不法行為の成否)(原告Aの主張)原告Aは,後記(2)のとおりのCによる脱退勧奨が功を奏さなかった後,被告田中興業から,聴聞の機会も与えられず,また前記1(5)のとおりの労働基準監督署への申告及び他の組合員の公然化の後すぐに本件配転命令を受けていることにかんがみると,本件配転命令は,原告組合田中興業分会長の原告Aに対する嫌がらせであって,権利濫用として無効であり,労働基準監督署への申立てに対し報復的に行われたものとして労働基準法104条2項に違反して無効であるし,さらに,労働組合法7条1号,3号の不当労働行為にも該当して無効である。 そして,原告Aは,無効な本件配転命令によって団結権を違法に侵害されるという不法行為により,以下のとおり元金合計214万4040円並びにうち平成19年3月分までの損害額合計132万2760円に対する訴状送達の日の翌日である平成19年5月10日 結権を違法に侵害されるという不法行為により,以下のとおり元金合計214万4040円並びにうち平成19年3月分までの損害額合計132万2760円に対する訴状送達の日の翌日である平成19年5月10日から平成20年4月18日までの年5分の割合による確定遅延損害金6万2514円及び元金214万4040円に対する平成20年3月分給与支払日の翌日である同月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の損害を被った。 ア責任者手当及び運行管理手当46万円原告Aは,東京湾岸産業車庫所長として,責任者手当月額2万円及び運行管理手当月額1万円を受けていたところ,責任者手当は,平成18年12月分から,運行管理手当は,平成19年2月分から支給されなくなったから,平成20年3月分までの給与において,以下のとおり46万円(平 成19年3月分までの給与における損害は10万円)の損害を被った。 (ア)責任者手当2万円×16か月分=32万円(平成19年3月分まで2万円×4か月分=8万円)(イ)運行管理手当1万円×14か月分=14万円(平成19年3月分まで1万円×2か月分=2万円)イ基本給の減額6万9000円原告Aの基本給は1日1万円であるが,待機になると1日7000円になるところ,本件配転命令前は1年間で待機日は3日(4か月で1日の頻度)しかなかったのに,本件配転命令後は4か月で待機日は24日であったから,平成19年3月分までで6万9000円の損害を被った。 3000円×(24-1)=6万9000円ウ残業代の減額61万5040円原告Aは,本件配転命令前は1年間で1か月平均6万5879円の残業代を得ていたが,本件配転命令後は,1か月平均で2万7439円の残業代を得るにすぎなくなったから,平成20年3月分までで61万5040円(平成 本件配転命令前は1年間で1か月平均6万5879円の残業代を得ていたが,本件配転命令後は,1か月平均で2万7439円の残業代を得るにすぎなくなったから,平成20年3月分までで61万5040円(平成19年3月分までの損害は15万3760円)の損害を被った。 (6万5879円-2万7439円)×16=61万5040円(平成19年3月分まで(6万5879円-2万7439円)×4=15万3760円)エ慰謝料100万円原告Aが,組合員であることを理由として本件配転命令をされたことにより受けた精神的苦痛を慰謝するには100万円を下らない。 オ合計214万4040円前記損害額を合計すると,平成19年3月分までの合計は,前記アのうち10万円,前記イ,前記ウのうち15万3760円及び前記エの合計132万2760円となる。 132万2760円に対する訴状送達の日の翌日である平成19年5月10日から平成20年4月18日まで345日間の民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金は6万2514円となる。 (被告田中興業の主張)被告田中興業は原告Aと,後記のとおりの理由により原告Aを東京湾岸産業車庫に配置しておくことができなくなったため,協議をしたところ,原告Aから配転先が最初の配属先である浦安営業所であればよいとの申し出を受けて,本件配転命令により,同営業所勤務を命じたのであって,原告Aは本件配転命令に同意している。 仮に,原告Aによる同意がなかったとしても,原告Aには,勤務中にパソコンゲームに興じる,勤務中に飲酒する,部下に飲酒を勧めるなどの行為をしたことが発覚した上,飲酒運転で帰宅したり,部下とけんかして殴るなどの行為をしたこともあったため,車庫所長として部下を管理する地位にとどめおくことはできなかった。原告Aは,被告田中興業において,上記の ことが発覚した上,飲酒運転で帰宅したり,部下とけんかして殴るなどの行為をしたこともあったため,車庫所長として部下を管理する地位にとどめおくことはできなかった。原告Aは,被告田中興業において,上記の事由を調査し,懲戒されるおそれがあるため,原告組合田中興業分会を結成したと考えられるが,被告田中興業は,上記の事由により,本件配転命令をしたのであって,労働基準監督署への申告や原告組合田中興業分会の結成とは無関係であるから,本件配転命令は有効である。 そして,原告の主張する損害についても,以下のとおり,理由がない。 ア責任者手当及び運行管理手当原告Aは,月額2万円の責任者手当の支給を受けていたが,本件配転命令により,車庫所長ではなくなり,現に業務を行っていないから,この支給を受けるべき根拠がない。また,原告Aは,月額1万円の運行管理手当の支給を受けていたが,本件配転命令の理由となった原告Aの行為に照らすと,運行管理業務の遂行は困難であるため,車庫所長の解任と同時に,運行管理者からも解任したのであって,現に業務を行っていないから,この支給を受け るべき根拠がない。 イ基本給の減額運転者が待機になるか否かは,業務量によって変動するところ,被告田中興業においては,現に業務量が低下したため,原告Aに限らず,他の従業員についても待機日が発生しているのであるし,本件配転命令により,原告Aの待機日が増加したのではないから,基本給の減額と本件配転命令は無関係である。 ウ残業手当の減額残業は,業務の必要性によって発生するのであり,業務量によって変動するのであって,支給が予定されているのではないから,労働者において,残業をしていない場合にも,残業手当請求権ないしその期待権があるとは解されない。そして,被告田中興業においては,現に業務量が低下している あって,支給が予定されているのではないから,労働者において,残業をしていない場合にも,残業手当請求権ないしその期待権があるとは解されない。そして,被告田中興業においては,現に業務量が低下しているのであるし,本件配転命令により,原告Aの残業が減少したのではないから,残業手当の減額と本件配転命令は無関係である。 エ慰謝料仮に,本件配転命令が無効であるとしても,それに伴う損害は,手当等の減額分の賠償によって補填されるから,他に精神的損害についても賠償を認める必要はない。 (2)争点(2)(被告湾岸産業の原告Aへの脱退勧奨についての不法行為の成否)(原告Aの主張)被告湾岸産業は,その設立の当初から,被告田中興業に対し,生コン輸送の外注をしているところ,被告田中産業の売上げのうち,被告湾岸産業に対する売上げが1割を占め,また,生コン輸送について過当競争が強まっている現況にもかんがみると,被告湾岸産業は,被告田中興業に対して圧倒的に優越的な地位にあったというべきである。 そして,被告湾岸産業は,原告組合を嫌悪していたところ,優越的地位を利用して,被告田中興業をして,原告組合を排除しようとし,被告湾岸産業の取締役Cにおいて,原告Aに対し,脱退勧奨をした。 すなわち,Cは,原告Aに対し,平成18年9月末ころ,前記1(3)のとおり焼肉店で話をするに当たり,「労働組合はいいけど,連帯というのはなぁ」「単組ならいいけど,上(連帯)を取ってくれ」「お前の親分のDはヤクザみたいな奴だ」「(連帯は)共産党だ」「組合を辞めろ,組合をやるなら頭(連帯)取れ」と執拗に迫り,「湾岸(被告湾岸産業)に火の粉を飛ばすな」と発言して,被告湾岸産業の業務の執行として原告組合からの脱退勧奨をし,原告Aの団結権を違法に侵害した。かかる不法行為による原告Aの精神的苦痛を 拗に迫り,「湾岸(被告湾岸産業)に火の粉を飛ばすな」と発言して,被告湾岸産業の業務の執行として原告組合からの脱退勧奨をし,原告Aの団結権を違法に侵害した。かかる不法行為による原告Aの精神的苦痛を慰謝するには,30万円を下らない。 (被告湾岸産業の主張)Cの原告Aに対する発言が,不法行為上違法か否かを判断するに当たっては,個々の発言を分断して判断するのではなく,両者の関係や発言の経緯等を踏まえて判断すべきところ,Cは,原告Aの上司ではなく,単に交友関係があったにすぎず,原告Aの労働条件の決定について影響を与えうる立場にもなかったのであって,原告Aが原告組合に加入したことについて,何ら利害関係を有していない。 Cは原告Aと,平成18年9月末の焼肉店で会食したが,それはCが原告Aに自動車で送ってもらう際に寄り,原告Aから仕事の愚痴を聞く中でたまたま話が組合に及んだだけで,その話もわずかであり,Cは,脱退勧奨などしていないから,不法行為とはならない。また,Cの発言は,単なる友人関係に基づくものであって,被告湾岸産業の業務の執行についてしたのではないから,被告湾岸産業は使用者責任を負わない。 (3)争点(3)(被告湾岸産業の原告Bへの脱退勧奨についての不法行為の成否) (原告Bの主張)前記(2)(原告Aの主張)のとおり,被告湾岸産業は,被告田中興業に対して優越的な地位にあり,原告組合を嫌悪していた。 Cは,原告Bに対し,平成18年10月ころ,「裁判をやっても組合は負けるんだよ」「Bさん組合は辞めなさい」「契約社員として湾岸産業で働いてくれないか」などと発言した上,「このままでは,湾岸産業から出て行ってもらうことになる」「この業界では,働くところがなくなる」などと発言し,同年12月15日にも「Bさんも組合を辞めてそのままうちで働いてく か」などと発言した上,「このままでは,湾岸産業から出て行ってもらうことになる」「この業界では,働くところがなくなる」などと発言し,同年12月15日にも「Bさんも組合を辞めてそのままうちで働いてくれ」などと発言し,さらに,平成19年1月20日には「Bさんは外野なんだろう」「そのまま組合を辞めればいいじゃないか」などと発言し,同年2月10日にも「Bさんにいて欲しいんだよ。組合を辞めて,田中も辞めて,湾岸産業に来てくれ」などと発言して,被告湾岸産業の業務の執行として原告組合からの脱退勧奨をし,原告Bの団結権を違法に侵害した。かかる不法行為による原告Bの精神的苦痛を慰謝するには,40万円を下らない。 (被告湾岸産業の主張)前記(2)(被告湾岸産業の主張)のとおり,被告湾岸産業は,原告Bが,原告組合に加入するについて何ら利害関係を有していなかった。 Cは,原告Bと打ち解け,業務外の話もするような関係になっていたところ,64歳と高齢である原告Bが正社員でもないのになぜ組合に加入したのか疑問に思って,その理由を尋ねたら,被告田中興業の社長に対する個人的な恨みが理由となっているとの返答を受けたため,若い従業員を巻き込むことについて疑問を呈した。その他,Cが,原告Bと組合の話をしたのは,原告組合が平成18年12月5日,操業中の工場に押しかけた際,Bに対し,重機の運転を控えるよう伝えたところ,Bから「自分は外野だから」と言われたことがあったのみであり,この際にも脱退勧奨はしていない。 以上のとおり,Cは,原告Bに対し,組合からの脱退勧奨はしていないか ら,Cの発言は不法行為とはならない。また,Cの発言は,被告湾岸産業の業務の執行についてしたのではないから,被告湾岸産業は使用者責任を負わない。 (4)争点(4)(被告田中興業の原告組合に対する不法行為 の発言は不法行為とはならない。また,Cの発言は,被告湾岸産業の業務の執行についてしたのではないから,被告湾岸産業は使用者責任を負わない。 (4)争点(4)(被告田中興業の原告組合に対する不法行為の成否)(原告組合の主張)被告田中興業は,前記(1)(原告Aの主張)のとおり,原告Aに対する違法不当な本件配転命令をしているところ,これは,原告組合を嫌悪してされたものであって,原告組合の団結権を侵害するものである。原告組合は,かかる本件配転命令への対応に追われる等による無形の損害を被ったところ,かかる損害は400万円を下らない。 (被告田中興業の主張)前記(1)(被告田中興業の主張)のとおり,原告Aは本件配転命令に同意しているし,本件配転命令には正当な理由があるから,原告組合に対する不法行為にはならない。また,原告組合において,原告Aの本件配転命令に対応するのは組合活動として当然であるから,損害が生じたということもできない。 (5)争点(5)(被告湾岸産業の原告組合に対する不法行為の成否)(原告組合の主張)被告湾岸産業のCは,前記(2)(原告Aの主張),前記(3)(原告Bの主張)の主張のとおり,原告A及び原告Bに対し,違法な脱退勧奨をした。かかる違法な脱退勧奨により,原告組合の団結権は侵害されたところ,その対応等による損害は300万円を下らない。 (被告湾岸産業の主張)前記(2)(3)(被告湾岸産業の主張)のとおり,被告湾岸産業は,原告A及び原告Bに対し,不法行為責任を負わないから,原告組合に対する不法行為責任も負わない。また,原告組合について,損害が生じたということもできない。 第3争点に対する判断 争点(1)(本件配転命令の有効性及び不法行為の成否)(1)原告Aは,本件配転命令は,権利濫用であり,労働基準法104条2 て,損害が生じたということもできない。 第3争点に対する判断 争点(1)(本件配転命令の有効性及び不法行為の成否)(1)原告Aは,本件配転命令は,権利濫用であり,労働基準法104条2項に違反し,労働組合法7条1号,3号の不当労働行為にも該当して無効であると主張し,被告田中興業は,原告Aは,本件配転命令に同意しているし,勤務中にパソコンゲームに興じる,勤務中に飲酒する,部下に飲酒を勧めるなどの行為をし,また,飲酒運転で帰宅したり,部下とけんかして殴るなどの行為をしたために,車庫所長として部下を管理する地位にとどめておくことはできなかったから,本件配転命令は有効であると主張する。 そこで検討するに,前記争いのない事実等及び証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア原告Aは,平成18年の初めから春先にかけて,2回以上,東京湾岸産業車庫で飲酒した後,飲酒運転で帰宅したことがあった(乙2,証人E,原告A本人)。 イ原告Aは,勤務時間中に,パソコンゲームをしていたことがあった(甲13,乙2,証人E,原告A本人)。 ウ被告田中興業の従業員で,被告湾岸産業に出向し,配車業務等を担当しているEは,被告田中興業代表者に対し,平成18年2月か3月ころから同年7月終わりか8月ころまでの間,1か月から1か月半に一度程度の割合で,原告Aの東京湾岸産業車庫での勤務振りについて,飲酒運転も含めて報告した(証人E,被告田中興業代表者本人)。 エ原告組合田中興業分会は,同年9月17日に結成され,原告組合は,被告田中興業に対し,同月19日,原告組合田中興業分会の結成を通知した(前記争いのない事実等(1)イ(イ),(2))。 オ原告組合と被告田中興業は,同年9月28日,同年10月13日,同年11月21日に団体交渉をした(被告田中興業代表者)。 オ の結成を通知した(前記争いのない事実等(1)イ(イ),(2))。 オ原告組合と被告田中興業は,同年9月28日,同年10月13日,同年11月21日に団体交渉をした(被告田中興業代表者)。 オ原告Aは,船橋労働基準監督署において,同年11月21日,被告田中興業について,原告A外4名に対する未払残業代があるとして,労働基準法37条違反を理由とする申告をした(前記争いのない事実等(5))。 カ被告田中興業は,原告Aに対し,同年11月30日,東京湾岸産業車庫所長を解任すると通告し,被告田中興業代表者は,原告Aに対し,その際,原告Aは従業員のとりまとめができない等の理由を述べたが,飲酒の問題やパソコンゲームの問題については述べなかったし,電話をかけてきた原告組合代表者に対しても,そのような具体的な理由は述べなかった(前記争いのない事実等(6)イ,甲12,原告A本人,原告組合代表者,被告田中興業代表者)。 キ原告Aは,同年12月1日,翌日の配車を確認するため,被告田中興業浦安営業所に行ったが,被告田中興業代表者から,本件配転命令について,飲酒の問題やパソコンゲームの問題があるとの具体的理由の説明は受けなかったし,原告組合代表者も,被告田中興業代表者から,本件配転命令について具体的理由の説明は受けなかった。原告Aは,同日以降,浦安営業所には行かなかった(甲12,13,原告A本人,原告組合代表者,被告田中興業代表者)。 ク被告田中興業は,原告組合に対し,同月15日,原告Aに対する本件配転命令の理由として,「①業務上の無線連絡に出なかったり,連絡の遅れから出荷業務に支障を来たした。②①により他の社員からも反発・クレームが出るなど,所長として部下との信頼関係を築けないなかで,所長として不適格として異動した。③要は,部下との信頼関係を築けない 遅れから出荷業務に支障を来たした。②①により他の社員からも反発・クレームが出るなど,所長として部下との信頼関係を築けないなかで,所長として不適格として異動した。③要は,部下との信頼関係を築けない所長では,責任者として部下をとりまとめることもできず,業務上支障が生じる。」を記載した回答を交付した(甲15)。 ケ被告田中興業は,原告組合に対し,同月16日,原告Aに対する本件配転命令の理由として,飲酒運転をしたことや,内勤と称して多額の残業代を 受け取るという不正があったこと等を記載した書面を交付した(甲16)。 コ被告田中興業は,本件訴訟に至って初めて,本件配転命令の理由の一つとして,原告Aが勤務時間中にパソコンゲームに興じていたことを指摘した(甲13,原告組合代表者)。 (2)被告田中興業は,原告Aは,本件配転命令に同意していたと主張し,被告田中興業代表者も,原告Aに対し,車庫所長の任を解くと言ったところ,最初に配属された浦安営業所への配転であればいいと言われたため,浦安営業所への本件配転命令を発したなどとこれに沿う陳述(乙2)ないし供述をしている。 しかし,原告A本人において,本件配転命令を受けるに際し,一方的に言われても聞かないなどと同意していない趣旨の発言をしたと陳述(甲13)ないし供述していること,証拠(甲12,原告組合代表者)によれば,前記(1)カキのとおり,原告組合代表者が被告田中興業代表者と,本件配転命令のあった当日及び翌日に話をしているのは,原告Aから,本件配転命令に同意しないことを前提に相談を受けたためであると認められること,前記(1)キのとおり,原告Aは,平成18年12月2日以降,浦安営業所へ行っておらず,浦安営業所への配転に同意したのとは矛盾する行動を取っていることからすると,被告田中興業代表者の陳述な れること,前記(1)キのとおり,原告Aは,平成18年12月2日以降,浦安営業所へ行っておらず,浦安営業所への配転に同意したのとは矛盾する行動を取っていることからすると,被告田中興業代表者の陳述ないし供述は採用することができず,他に原告Aにおいて本件配転命令に同意したことを認めるに足りる証拠はないから,かかる事実を認定することはできない。 よって,原告Aが本件配転命令に同意したとの被告田中興業の主張は理由がない。 (3)原告Aは,本件配転命令は,権利の濫用であり,また,労働基準法104条2項に違反し,労働組合法7条1号,3号の不当労働行為にも該当して無効であると主張する。 原告Aは,原告組合田中興業分会の分会長であって,前記(1)エないしカの とおり,本件配転命令は,原告組合田中興業分会が,被告田中興業に対し,その結成を通知して団体交渉等をし,その後労働基準監督署へ未払残業代があるとする申告をするなど組合活動を始めてから約2か月半後にされているから,組合活動を嫌悪してされた可能性が高く,また,原告Aに対し責任者手当や運行管理手当が支給されなくなるなど,原告Aに不利益な取扱いをすることとなるものであって,原告組合に対する支配介入と評価されうるものである。 もっとも,前記(1)アイのとおり,原告Aは飲酒運転で帰宅したことがあったり,原告A本人は,被告湾岸産業の従業員からパソコンに慣れるためにパソコンゲームをするよう勧められたと供述するものの,勤務時間中にパソコンゲームをするなどしたことがあったのであって,これらの事実は,原告Aの車庫所長としての適格性に疑問を抱かせるものである。しかしながら,被告田中興業代表者は,被告田中興業は,平成18年8月か同年9月には,原告Aが飲酒運転をしたことがあることを把握し,原告Aにも確認していたと供述 ての適格性に疑問を抱かせるものである。しかしながら,被告田中興業代表者は,被告田中興業は,平成18年8月か同年9月には,原告Aが飲酒運転をしたことがあることを把握し,原告Aにも確認していたと供述しているところ,これを前提としても,直ちに車庫所長を解任するなどの対応は取っていないし,前記(1)カないしコのとおり,被告田中興業は,原告Aに対し,同年11月30日に本件配転命令をした際に具体的理由を説明していないことはもとより,その後同年12月16日に至るまで,飲酒の問題等が原因となって本件配転命令がされたとの説明をしておらず,本件訴訟に至るまでパソコンゲームの問題を指摘していない。 また,被告田中興業は,本件配転命令の理由として,他に勤務中に飲酒する,部下に飲酒を勧めるなどの行為をしたことが発覚したし,部下とけんかして殴るなどの行為をしたことも挙げている。しかし,証人Eは,原告Aは,部下の仕事が終わらないうちに酒を飲み,部下に酒を飲むよう勧めていたし,E自身は同席していなかったが,同席していた者から,原告Aにおいて,部下を殴ったと聞いたと陳述(乙3)ないし証言しているが,原告A本人は, 自身の勤務時間中はもとより,部下の勤務時間中にも飲酒しておらず,部下に飲酒を勧めたこともないし,部下とけんかしたことはあったが,頭突きをされただけで殴っていないと陳述(甲13)ないし供述していることからすると,証人Eの陳述ないし証言によって,原告Aが勤務時間中に飲酒したり,部下に飲酒を勧めたことや,部下とのけんかにおいて,部下を殴ったとは認められない。また,前記(1)カないしコ及び証拠(甲13)によれば,被告田中興業において,原告Aが部下を殴ったことも本件配転命令の理由の一つであるとの指摘がされたのは,平成19年1月11日からであるから,本件配転命令 記(1)カないしコ及び証拠(甲13)によれば,被告田中興業において,原告Aが部下を殴ったことも本件配転命令の理由の一つであるとの指摘がされたのは,平成19年1月11日からであるから,本件配転命令当時において,原告Aが部下を殴ったことが本件配転命令の理由となっていたとは認められない。 以上のとおり,原告Aが飲酒運転で帰宅したことがあるなど,同人の車庫所長としての適格性に疑問を抱かせる事実があったにもかかわらず,被告田中興業は,車庫所長解任に向けて直ちに対応を取らず,その後の本件配転命令に際し,このような事実を指摘していないことにかんがみると,被告田中興業は,原告Aに車庫所長としての適格性がないことよりも,原告Aが原告組合の構成員であることを重視して,そのことの故をもって,本件配転命令を発したと推認することができる。被告田中興業は,原告Aにおいて,飲酒の問題等により懲戒されることを恐れて,原告組合田中興業分会を結成したと考えられるのであって,本件配転命令と組合の結成は無関係であると主張するが,上記のとおり,被告田中興業において,飲酒の問題等について把握した後も,直ちに対応していないことにかんがみると,かかる主張は採用できない。そうすると,本件配転命令は,労働組合法7条1号,3号に該当する不当労働行為であると認められるから無効である。 (4)以上検討のとおり,本件配転命令は,不当労働行為に該当して無効であるところ,被告田中興業は,本件配転命令の際に,飲酒の問題やパソコンゲームの問題等,原告Aの車庫所長としての適格性を疑わせる事実を説明してお らず,これらの事実により本件配転命令をするとの認識であったとは認められないから,本件配転命令が適法であることについて誤信しており,そのことについてやむを得ない事情が認められる場合に当たるとはいえ らず,これらの事実により本件配転命令をするとの認識であったとは認められないから,本件配転命令が適法であることについて誤信しており,そのことについてやむを得ない事情が認められる場合に当たるとはいえず,少なくとも過失があったと認めるのが相当であり,本件配転命令は,不法行為上も違法と評価されるべきものである。そうすると,被告田中興業の原告Aに対する本件配転命令は,不法行為となるから,以下損害額について検討することとする。 ア責任者手当及び運行管理手当被告田中興業は,原告Aを,本件配転命令により東京湾岸産業車庫所長から解任し,それと同時に,本件配転命令の理由となった原告Aの適格性の欠如という理由により,運行管理者からも解任したと主張するが,本件配転命令が無効であることは,前記(3)に検討したとおりであるから,運行管理者の解任についても理由がないこととなる。そうすると,原告Aは,前記争いのない事実等(7)のとおり,平成20年3月までは被告田中興業の東京湾岸産業車庫における業務は存在していたので,平成18年12月から平成20年3月までの責任者手当32万円,平成19年2月から平成20年3月までの運行管理手当14万円の合計46万円の支給を受け得たのに,無効な本件配転命令により,これを受けられなくなったのであって,被告田中興業において,原告Aからの責任者及び運行管理者としての労務の受領を拒否したと評価できるのであるから,原告Aが責任者及び運行管理者として業務を行っていなくとも同額を賠償する義務を負うこととなる。 イ基本給の減額原告Aは,基本給は1日1万円であるが,待機になると1日7000円になるところ,本件配転命令前には,1年間で待機日は3日であったのに,本件配転命令後には4か月で待機日は24日になっているとして,基本給の減額分も損害である 万円であるが,待機になると1日7000円になるところ,本件配転命令前には,1年間で待機日は3日であったのに,本件配転命令後には4か月で待機日は24日になっているとして,基本給の減額分も損害であると主張する。 しかし,待機になるか否かは,業務量に応じた使用者の判断により定まるものであって,使用者の業務命令権に属することであるから,労働者において,当然に1日1万円の基本給を請求する権利又は法律上保護される利益を有するものではない。したがって,かかる権利又は利益が侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。 ウ残業代の減額原告Aは,本件配転命令前は1か月平均6万5879円の残業代を得ていたが,本件配転命令は1か月平均2万7439円の残業代しか得ておらず,この差額が損害であると主張する。 しかし,残業を命じることは,使用者の業務命令権に属することであるから,労働者において,当然に残業代を請求する権利又は法律上保護される利益を有するものではない。したがって,かかる権利又は利益が侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。 エ慰謝料本件配転命令は,不当労働行為であり,不法行為にも該当するところ,これによって生じた原告Aの精神的損害に対する慰謝料は,既に検討したとおりの諸事情に照らし,20万円とするのが相当である。 被告田中興業は,経済的損害が補填されれば,精神的損害について賠償を認める必要はないと主張するが,採用することはできない。 オ合計原告Aの損害のうち,平成19年3月分までの損害は,前記アのうち10万円と前記エの20万円の合計30万円となる。そして,証拠(乙3,4)によれば,被告田中興業の賃金は末日締め翌月20日(休日の場合はその前日)払とされていることが認められるところ,平成20年 ち10万円と前記エの20万円の合計30万円となる。そして,証拠(乙3,4)によれば,被告田中興業の賃金は末日締め翌月20日(休日の場合はその前日)払とされていることが認められるところ,平成20年4月20日は日曜日であるから,同月19日が支払日となる。上記30万円に対する平成19年5月10日から平成20年4月19日まで346日間の民法所定の年5分 の割合による遅延損害金は1万4180円である。 300,000 × 0.05 × 346 ÷ 366 ≒14,180(1円未満切捨て)そして,損害賠償額の元金の合計は,前記アの46万円と前記エの20万円の和である66万円となるから,被告田中興業は,原告Aに対し,67万4180円及びうち66万円に対する平成20年3月分給与の弁済期後である平成20年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払う義務を負う。 争点(2)(被告湾岸産業の原告Aへの脱退勧奨についての不法行為の成否)(1)原告Aは,被告田中興業に対して圧倒的に優越な地位にあった被告湾岸産業の工場長兼取締役であるCから原告組合を脱退するよう勧奨を受けたと主張し,原告A本人も,Cから,平成18年9月末ころ,焼肉店において「組合の上部団体をはずせ」「連帯の親分は今パクられているだろう」「連帯は右翼で,やくざで共産党だ」等と言われ,「組合員は忙しくて家族とあそぶこともできなくなる」「俺達に火の粉をとばすな。そうなれば俺も経営者の顔になるぞ」とも言われたとこれに沿う陳述(甲13)ないし供述している。 被告湾岸産業は,原告AとCとの関係も考慮して発言を解釈すれば,原告AとCとの間の会話において,組合の話が出たとしても,脱退勧奨したとはいえず,不法行為とはならないと主張し,証人Cも,原告Aとは仕事上の関係のみならず,友人でもあっ も考慮して発言を解釈すれば,原告AとCとの間の会話において,組合の話が出たとしても,脱退勧奨したとはいえず,不法行為とはならないと主張し,証人Cも,原告Aとは仕事上の関係のみならず,友人でもあったのであり,平成18年9月末ころの焼肉店での会話において,上部団体に属すると自由にならないとか,休日も取られるなど組合のことについて話はしたし,上部団体に組合費等を支払うシステムについてやくざだと言ったかもしれないが,脱退の働きかけをしたわけではないと陳述(丙2)ないし証言している。 (2)そこでまず,被告田中興業と被告湾岸産業の関係について検討する。 証拠(丙1,被告田中興業代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告田中興業と被告湾岸産業は,被告湾岸産業の事務所において被告田中興業の従業 員が業務を遂行することがあるものの,被告田中興業が同社従業員に対して事業主及び使用者としての責任を負うとの内容の運送取引基本契約を締結しており,同契約においては,1車両当たり1か月70万円という金額が固定されていたことが認められる。このように,被告湾岸産業は,被告田中興業と,1車両当たりの金額が固定され,被告田中興業において,同社従業員に対する責任を負うとの契約を締結していたことにかんがみると,被告田中興業従業員が労働組合を結成し,被告田中興業に対して組合活動を行って労働条件の改善等を求めたとしても,直接にはこれに影響を受ける立場にはなかったし,その労働条件を変更できる地位にもなかったと評価できる。 Cは,被告田中興業の従業員の組合活動について直接には影響を受けない被告湾岸産業の工場長兼取締役であることにも照らすと,前記(1)のとおり,証人Cが,原告A本人の陳述ないし供述と反する陳述ないし証言をしている本件において,原告A本人の陳述ないし供述のみによって, 被告湾岸産業の工場長兼取締役であることにも照らすと,前記(1)のとおり,証人Cが,原告A本人の陳述ないし供述と反する陳述ないし証言をしている本件において,原告A本人の陳述ないし供述のみによって,Cが原告Aに対し,原告組合からの脱退勧奨をするために,原告A本人が陳述ないし供述するとおりの発言をしたとは認定できない。 なお,原告組合代表者は,被告田中興業は,被告湾岸産業からの依頼により,本件配転命令をしたなどと,被告らの間で共謀して,組合嫌悪の意思の下に,本件配転命令や原告A及び原告Bへの脱退勧奨をしたと示唆する陳述(甲12)をし,原告A本人も同趣旨の陳述(甲13)をしているが,証人Cが,原告Aへの本件配転命令へは関与していないと証言していることや,上記のとおり,被告湾岸産業は,被告田中興業の従業員の労働条件の改善に影響を受ける立場にはないし,また,労働条件を変更できる地位にもなかったことにも照らすと,これらの陳述のみによって,かかる事実を認めることはできない。 そうすると,原告Aの主張は採用できず,被告湾岸産業に対し,団結権侵害による損害賠償を請求することはできない。 争点(3)(被告湾岸産業の原告Bへの脱退勧奨についての不法行為の成否)(1)原告Bは,被告田中興業に対して圧倒的に優越な地位にあった被告湾岸産業の工場長兼取締役であるCから原告組合を脱退するよう勧奨を受けたと主張し,原告B本人も,Cから,平成18年10月ころ,「裁判をやっても,組合は負けるんだよ」「Bさん組合は辞めなさい」「契約社員としてうちで働いてくれ,体が動く限り面倒をみるから」「組合も田中も辞めて湾岸で働いてくれないか」「このままでは湾岸産業から出てってもらうことになる」「この業界では,働くところがなくなる」等と,同年12月15日,「Bさんも組合を辞 り面倒をみるから」「組合も田中も辞めて湾岸で働いてくれないか」「このままでは湾岸産業から出てってもらうことになる」「この業界では,働くところがなくなる」等と,同年12月15日,「Bさんも組合を辞めて,そのままうちで働いてくれないか」等と,平成19年1月20日,「Bさんは,外野なんだろう」「そのまま組合をやめればいいじゃないか」等と,同年2月10日,「だからBさんに居てほしいんだ,組合も田中もやめて湾岸に来てくれ,おじいちゃんの面倒は動けなくなるまで見るから」等と言われたとこれに沿う陳述(甲14)ないし供述をしている。 被告湾岸産業は,原告Bが原告組合に加入することについて,何ら利害関係を有していなかったところ,Cも脱退勧奨などしていないと主張し,証人Cも,原告Bとの間で組合の話が出たことはあったが,高齢の原告Bが組合に加入する理由を聞いたのに対する原告Bの被告田中興業社長への恨みという返答に疑問を呈したのみであり,また,原告Bから「自分は外野だから」と告げられたのであって,原告Bの技量を買っていたために,被告湾岸産業で働いてくれないかとの趣旨の発言をしたことはあるものの原告組合からの脱退勧奨はしていないなどとこれに沿う陳述(丙2)ないし証言をしている。 (2)被告湾岸産業と被告田中興業の関係は,前記2(2)に検討したとおりであり,被告湾岸産業は,被告田中興業従業員の組合活動について直接の利害関係を有していなかったところ,原告B本人も,Cによる組合つぶしは,被告田中興業から依頼されたとしても内政干渉であり掟破りであると陳述(甲14)するなど,被告湾岸産業が,被告田中興業従業員の組合活動について直 接の利害関係を有していないことを認めていると解される。 Cは,被告田中興業の従業員の組合活動について直接には影響を受けない被告湾岸産業の 被告湾岸産業が,被告田中興業従業員の組合活動について直 接の利害関係を有していないことを認めていると解される。 Cは,被告田中興業の従業員の組合活動について直接には影響を受けない被告湾岸産業の工場長兼取締役であることにも照らすと,前記(1)のとおり,証人Cが,原告B本人の陳述ないし供述と反する陳述ないし証言をしている本件において,原告B本人の陳述ないし供述のみによって,Cが原告Bに対し,原告組合からの脱退勧奨をするために,原告B本人が陳述ないし供述するとおりの発言をしたとは認定できない。 なお,原告B本人は,Cによる脱退勧奨が被告田中興業の依頼である可能性を示唆する陳述(甲14)をしているが,かかる事実を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告Bの主張は採用できず,被告湾岸産業に対し,団結権侵害による損害賠償を請求することはできない。 争点(4)(被告田中興業の原告組合に対する不法行為の成否)前記1に検討したとおり,本件配転命令は,労働組合法7条1号,3号に該当する不当労働行為であって,原告組合田中興業分会の活動に影響を及ぼすものであるところ,被告田中興業において,本件配転命令が適法であることについて誤信しており,そのことについてやむを得ない事情が認められる場合には当たらないから,被告田中興業は,原告組合に対しても,不法行為責任を負う。 被告田中興業は,原告組合において,本件配転命令に対応するのは組合活動として当然であるから,損害が発生していないと主張するが,本件配転命令に対応するのは組合活動として当然であるとしても,このように対応せざるを得なくなったのは,無効な本件配転命令がされたためであるから,被告田中興業の主張は採用できない。したがって,原告組合には,本件配転命令への対応に追われる等の無形損害が発生しているところ,その ざるを得なくなったのは,無効な本件配転命令がされたためであるから,被告田中興業の主張は採用できない。したがって,原告組合には,本件配転命令への対応に追われる等の無形損害が発生しているところ,その額は20万円と評価するのが相当である。 よって,被告田中興業は,原告組合に対し,20万円の賠償責任を負う。 争点(5)(被告湾岸産業の原告組合に対する不法行為の成否)被告湾岸産業は,前記2,3に検討したとおり,原告A及び原告Bに対し,団結権侵害による不法行為責任を負わず,原告組合に対する関係でも,違法に団結権を侵害したとは評価できないから,原告組合の被告湾岸産業に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 結論 以上検討のとおり,原告Aの被告田中興業に対する請求は67万4180円及びうち66万円に対する平成20年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,原告組合の被告田中興業に対する請求は20万円及びこれに対する平成19年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,原告A及び原告組合の被告田中興業に対するその余の請求及び原告らの被告湾岸産業に対する請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部荒谷謙介裁判官
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