【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人等を、何れも懲役二月に処する。 但し、被告人A、同B、同C、同D、同Eに対しては、本裁判確定の日 から三年間右各刑の執行を猶予する
主文 原判決を破棄する。 被告人等を、何れも懲役二月に処する。 但し、被告人A、同B、同C、同D、同Eに対しては、本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する。 訴訟費用中、原審において支給した分は、全部被告人等の連帯負担とし、当審において支給した分は、被告人Eの負担とする。 理由 被告人Eを除くその他の被告人等の弁護人上田光保の控訴趣意及び被告人Eの国選弁護人稲垣昇の控訴趣意は別紙の通りである。 弁護人土田光保の控訴趣意第一点について。 判決には、罪となるべき事実を示さねばならないことは、刑事訴訟法第三三五条第一項の規定するところである。而して「罪となるべき事実」とは、犯罪の構成要件に該当する具体的事実を指すものであることも所論の通りである。本件について、これを見るに、原判決は、犯罪事実欄においては、単に「故なく侵入したものである」と記載しただけで、何が故に「故なく」と認定したかその具体的事実を明確にしていないので、右記載だけでは、犯罪事実を明確に示していないことになる。然し原判決では、その末尾に「裁判所の見解」を明らかにし、その中に、被告人等が、多衆をたのみ、G岐阜縣知事等が政令違反(飲食営業緊急措置令)の行為を為していることを確実に認識せず、又現行犯逮捕の確実な意思もなく、かかる犯罪摘発の名の下に、原判決旅館兼料理業H館奥座敷に侵入したことを評定し、右行為は、違法性があるものと解している点があるので、この点と原判示冒頭の犯罪事実とを結びつけて見るときは、住居侵入罪の事実を具体的に示したものと認めることができる。従つて原判決の記載が刑事訴訟法第三三五条第一項に違反するとする論点は、採用することができない。 同第二乃至第四点について。 原判決挙示の証拠によ の事実を具体的に示したものと認めることができる。従つて原判決の記載が刑事訴訟法第三三五条第一項に違反するとする論点は、採用することができない。 同第二乃至第四点について。 原判決挙示の証拠によれば、被告人等がG知事等の政令違反の現行犯を逮捕するための目的で原判示H館に侵入したこと並に被告人等が現行犯逮捕のためならば、何人も他人の住居その他建造物に侵入するも、違法でないと信じていたことを認むることはできない。被告人等は、G知事等が大学設置問題に関し文部省関係係官を招致し饗応していることを聞き、これは政令違反(飲食営業緊急措置令違反)であるとしこれが摘発であると主張して、右H館に乗り込みG知事等にいやがらせを為して、政治的効果をねらつたもので、真に現行犯逮捕以外に他に何等の意思もなかつたとは認められない。これと同趣旨の認定をした原判決には、判決に影響すること明らかな事実誤認はない。然し原判決は通常人が現行犯逮捕する場合でも、他人の住居に侵入し得るように解しているが、これは誤りであり、控訴趣意も同様の誤りをおかしているから、この点につい<要旨>て説明する。現行犯人は、何人でも、逮捕状なくして、これを逮捕することができるものであることは、刑事</要旨>訴訟法第二一三条に規定するところであるが、司法警察職員、検察官及び検察事務官でない通常人は、現行犯人を認めても逮捕することを義務づけられてはいないから、一旦逮捕にとりかかつても中途からこれをやめることもできるわけである。然し右の通常人は現行犯逮捕のため、他人の住居に侵入することは認められていない。このことは、刑事訴訟法第二二〇条によつても、明らかである。即ち、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、現行犯人を逮捕する場合には人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索を のことは、刑事訴訟法第二二〇条によつても、明らかである。即ち、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、現行犯人を逮捕する場合には人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすることができる旨を規定しているところから見れば、通常人に対しては右の行為をすることは禁止せられているものと解すべきものである。われわれの住居は侵すことができないもので、これを侵しても違法でないとするためには、憲法並に刑事訴訟法に規定してある場合でなければならない。通常人が現行犯人を逮捕し得ることは、憲法並に刑事訴訟法でもこれを認めているが、この逮捕のため、他人の住居に侵入し得る旨を規定した法律は存しない。従つて通常人は、屋外若しくは自宅で現行犯を逮捕するか又は住居権者等の承諾ある場合に限り、佳居内で現行犯人を逮捕し得るのである。若し論旨の如く、通常人でも現行犯人逮捕のためならば、自由に他人の住居に侵入し得るとするならば、われわれの住居は一日も平穏であることはできない。従つて真に現行犯人逮捕の目的であつても、承諾なくして、他人の住居に侵入するときは、住居侵入罪が成立するものと解すべきものである。而して住居とは、一戸の建物のみを指すのではなく、族館料理屋の一室と雖これを借り受けて使用したり、又は宿泊したり飲食している間は、そのお客の居住する住居と認むべきもので、本件においては、原判示H館の奥座敷に岐阜県知事Gその他が居て宴席を設けていたのであるから、刑法上、同人等の住居と云うことができる。被告人等が現行犯人逮捕と主張して、右奥座敷にG知事の招きによらず、無断で入り込んだのであるから、住居侵入罪が成立する。従つてこの点について論旨は理由がないが、原判決も前記のように現行犯人逮捕のためならば、住居に侵入し得る旨解し、その旨判示したのは、違法で此の 、無断で入り込んだのであるから、住居侵入罪が成立する。従つてこの点について論旨は理由がないが、原判決も前記のように現行犯人逮捕のためならば、住居に侵入し得る旨解し、その旨判示したのは、違法で此の点において、原判決は破棄を免れない。 同第五点並に弁護人稻垣昇の控訴趣意について。 被告人Fは、昭和二十二年五月六日大津地方裁判所で、窃盗罪により、懲役一年六月、三年間執行猶予の判決を受けているので、更に執行猶予することはできない。右の点と同被告人が本件犯行を為すに至つた動機、目的、社会的影響等諸般の情状を綜合するときは、原判決の量刑は相当であつて、同被告人に対する量刑不当の論点は採用できない。他の被告人等については、前科もなく、年令も若く、青年の血気と正義観に燃え、行過ぎの行為をしたものと認めることができ、而かも右被告人等に懲役二月と云う極めて短期の実刑を科するのは、被告人等にとつて不利益であるのみならず、刑政上悪影響の方が多いと思料せられるから、此の点を考慮するときは、被告人等を執行猶予するのが相当である。論旨は理由があり、原判決は、破棄を免れない。 よつて刑事訴訟法第三九七条第三八一条第三八〇条により、原判決を破棄し、同法第四百条但書によリ、次の通り自判する。 (犯罪事実)被告人等は、共謀の上、昭和二十四年一月三日午後七時過頃、岐阜市a町b丁目c番地旅館兼料理業H館奥座敷において、岐阜県知事G等十数名が文部省係官等と大学昇格問題について会合し、宴席を設けていたのを聞知し、これは政令違反の現行犯であるから、逮捕又は摘発すると主張して、右同所に乱入して、故なく住居に侵入したものである。 (証拠の標目)一、 証人I、同J、同K、同Lに対する原審証人尋問調書中の各供述記載。 一、 証人M、同N、同O、同Pに対する原審第三回公判調書中 に乱入して、故なく住居に侵入したものである。 (証拠の標目)一、 証人I、同J、同K、同Lに対する原審証人尋問調書中の各供述記載。 一、 証人M、同N、同O、同Pに対する原審第三回公判調書中の各供述記載。 一、 証人Q、同Rに対する原審第四回公判調書中の各供述記載。 一、 証人S、同G、同Tに対する原審第五回公判調書中の各供述記載。 一、 被告人C、同F、同Aの検察事務官に対する各供述調書の供述記載。 一、 被告人B、同Fの司法警察員に対する各供述調書中の供述記載。 (法律の適用)被告人等の判示所為は、刑法第百三十条第六十条に該当すおので、所定刑中、懲役刑を選沢し、各被告人を何れも懲役二月に処するが、被告人Fを除く、その余の被告人等は、犯罪の情状により、刑の執行を猶予するを相当と認め、同法第二十五条により、本裁判確定の日から、三年間、右各刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法第百八十一条を適用し、主文の通り負担させる。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長判事赤間鎭雄判事鈴木正路判事濱田従六)
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