平成13(ワ)670 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年2月15日 名古屋地方裁判所
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判決文本文10,996 文字)

主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して,70万円及びこれに対する平成14年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して,30万円及びこれに対する平成14年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。 5 この判決は,第1,第2項に限り仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告らは,原告Aに対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成14年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告Bに対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成14年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者等原告らは,夫婦であり,昭和59年以降,名古屋市a区b町c番地にある建物(以下「原告住居」という。)に居住してきた。 被告有限会社C(以下「被告会社」という。)は,昭和59年以前から,別紙物件目録1ないし8記載の土地上の同目録10記載の建物(以下「本件工場」という。)において,自動車修理,板金塗装業等をし,平成12年春頃からは同目録9記載の土地(以下「本件駐車場」という。)を駐車場として利用してきた。被告Dは被告会社の代表者である。 (2) 規制基準原告住居,本件工場及び本件駐車場の付近一帯の地域(以下「本件地域」という。)は,第一種低層住 本件駐車場」という。)を駐車場として利用してきた。被告Dは被告会社の代表者である。 (2) 規制基準原告住居,本件工場及び本件駐車場の付近一帯の地域(以下「本件地域」という。)は,第一種低層住居専用地域にあり,騒音規制法に基づく名古屋市の騒音に対する規制基準(90パーセント上端値。以下「規制基準」という。)は,以下のとおりである。 8時から19時まで 45デシベル6時から8時まで,19時から22時まで  40デシベル22時から6時まで 40デシベル(3) 騒音の状況被告らは,以下のとおり,平成7年頃から現在に至るまで,本件工場において自動車修理,板金塗装,解体等の作業をして,毎日断続的に午後8時ないし9時頃まで騒音を発生させ,また,本件駐車場の自動車の出し入れ作業をして騒音を発生させ,これを原告住居に侵入させている(以下,被告らが本件工場及び本件駐車場での作業により発生させている騒音を「本件騒音」と言うことがある。)。 ア平成9年8月25日,名古屋市a保健所(以下,単に「保健所」という。)の騒音測定の結果,大きく規制基準を超える中央値で50ないし65デシベルの騒音が測定された。 イ平成10年6月18日の騒音測定では,52から54デシベル,ハンマー音では56デシベルの騒音が測定された。 ウ平成11年9月28日から同年10月13日までの間,原告住居において騒音測定が行われた。その結果,前年より騒音は幾分減音があったが,依然として規制基準を超えていた。 エ平成12年12月8日から14日までの間の騒音測定では,平成11年の測定時より騒音がひどくなっていることが判明した。 (4) 原被告の対応状況ア原告らは,平成8年8月30日以来,保健所に苦情を申し立てる,原告代理人に依 14日までの間の騒音測定では,平成11年の測定時より騒音がひどくなっていることが判明した。 (4) 原被告の対応状況ア原告らは,平成8年8月30日以来,保健所に苦情を申し立てる,原告代理人に依頼して騒音を規制基準以下にすることを求める内容証明郵便を送付する,調停及び仮処分事件を申し立てるなどし,保健所は何度も立ち入り検査や指導をしたが,被告らは以下に記載した以外には一向に改善しようとしないばかりか,平成12年以降一層騒音を大きく,かつ,頻繁に出すようになった。 また,被告らは,シャッターを解放したまま作業をする,壁の破損部を修理せずに放置するなど,容易にできる減音対策さえしようとしていない。 イ平成10年12月には,保健所から改善指導がなされ,平成11年1月に本件工場のシャッターを二重構造とするなどの改善策についての回答をしたが,改善策が実施されたのは同年5月になってからであり,原告住居に近い窓を二重サッシとし,原告住居に近い所の一部にガラスの引き戸を付け,エアソーを騒音の小さなものにしたことだけであり,シャッターの二重構造は実施されなかった。 ウ仮処分事件(名古屋地方裁判所平成13年ヨ第158号事件。以下「本件仮処分事件」という。)において,平成13年12月27日に別紙和解条項のとおり和解(以下「本件和解」という。)をしたにもかかわらず,本件和解第3項に違反して,午後6時以降もシャッターを一部閉鎖しないで作業をしている。 (5) 原告らの被害状況原告らは,外構工事業を営む有限会社Eを経営し,原告住居を事務所として使用している。 原告Aは,原告住居で,電話番,記帳,書類作成等の事務全般を行っている。 このため,被告会社の騒音の被害を一日中受けることとなり,その結果,電話での注文が聞き取りにくく何度も聞き返したり,仕事に集中できな Aは,原告住居で,電話番,記帳,書類作成等の事務全般を行っている。 このため,被告会社の騒音の被害を一日中受けることとなり,その結果,電話での注文が聞き取りにくく何度も聞き返したり,仕事に集中できなかったりし,時には耳栓をして自己防衛しているものの,頭痛,夜間被告らの作業が終わっても板金の音が頭の中で鳴り響いている,睡眠不足等の症状が起こるとともに,家庭における安息感を得ることができなくなり,精神的・肉体的疲労が蓄積している。 被告Bは,帰宅しても騒音のためくつろぐことができず,精神的・肉体的疲労が蓄積している。 (6) 違法性及び被告らの責任被告らは,故意に,前記(4)のとおりの作業をして規制基準を上回る,受忍限度を超えた騒音を原告住居に侵入させ,それによって原告らに対し肉体的・精神的に多大な侵害を与え,原告らの人格権を違法に侵害してきた。 (7) 損害原告らは,平成7年から現在まで6年以上にわたって,毎日継続的に被告らの発生させる騒音により,多大な精神的・肉体的苦痛を被っており,これに対する慰謝料は,各自300万円を下回ることはない。 (8) よって,原告らは,被告らに対し,不法行為(民法719条)による人格権侵害に対する損害賠償として,連帯して各自300万円及びこれらに対する口頭弁論終結日の翌日である平成14年2月2日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)(当事者等)の事実は認める。 (2) 請求原因(2)(規制基準)の事実は認める。 (3) 請求原因(3)(騒音の状況)の事実のうち,平成9年8月25日,平成10年6月18日及び平成11年9月28日から同年10月13日に騒音測定があったことは認め,その余の事実は否認する。 平成7年頃及び平成12年に (騒音の状況)の事実のうち,平成9年8月25日,平成10年6月18日及び平成11年9月28日から同年10月13日に騒音測定があったことは認め,その余の事実は否認する。 平成7年頃及び平成12年に騒音が大きくなったことはなく,また,騒音の発生は一日に多くても数回,1回あたりの騒音発生時間は5分程度であり,日常生活に耐えられないようなものではない。 (4) 請求原因(4)(原被告の対応)の事実のうち,被告らが改善,減音対策をしようとしないとの点,平成12年以降一層騒音を大きくかつ頻繁に出すようになったとする点,シャッターの二重構造は実施されなかったとする点,シャッターを開放したまま作業をする点は否認し,保健所の立入検査や指導があったこと,被告が改善したこと,壁に破損部があること,本件和解をしたことは認め,本件和解後に一部シャッターを閉鎖していないことは否認し,その余の事実は明らかには争わず。 被告らは,本件工場の防音工事には多額の費用がかかるうえ,充分な防音効果をあげられる保障もないことなどから,本件土地を売却して,他に工場を移転することとし,本件駐車場が売却できて移転資金の準備もできたことから,また,早期移転を原告らに求められたことから工場を建築する時間的余裕がなく工場を賃借することとして,本件和解をした。 (5) 請求原因(5)(原告らの被害状況)の事実は否認ないし不知。 原告建物は,鉄筋コンクリートパネル造の建物で,外部からの騒音に遮音性が高い上,道路から2メートルも高く,本件工場から10メートル以上も離れている(なお,原告ら建物と本件工場の間の道路幅は側溝も含めて4メートルある。)。また,原告らは,原告ら建物の窓を二重窓にする,夜間は雨戸を閉めるなどの自衛策を全く取ろうとしていない。以上の事実からすると,原告らの騒音被害は,原 場の間の道路幅は側溝も含めて4メートルある。)。また,原告らは,原告ら建物の窓を二重窓にする,夜間は雨戸を閉めるなどの自衛策を全く取ろうとしていない。以上の事実からすると,原告らの騒音被害は,原告らの主張しているような程度のものとは到底いえない。また,原告らは日中仕事に出かけているので騒音による影響を受けない。 (6) 請求原因(6)(違法性及び責任)は否認ないし争う。 (7) 請求原因(7)(損害)の事実は否認する。 理由 1 請求原因(1)(当事者),同(2)(規制基準)の各事実は当事者間に争いがない。 2 請求原因(3)(騒音状況),同(4)(原被告の対応状況)について当事者間に争いのない事実,証拠(甲1ないし13,15ないし26,28ないし30,31及び32の各1及び2,33ないし35,39,乙1,2,3の1及び2,9,10,原告A本人,被告D本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。これに反する証拠は採用できず,他にこれを覆すに足りる証拠はない。 (1) 被告会社は,昭和54年3月28日に設立され,被告Dの父が代表取締役をしていたが,被告Dは昭和60年頃から父に代わって被告会社の経営を実質的にするようになり,平成6年6月15日に被告会社の代表取締役に就任した。 原告らは,昭和59年から原告住居に居住している。 (2) 原告住居は,本件工場とはその西側の約3.64メートル幅の道路を隔てて南西の位置にあり,本件駐車場とはその南側の約2.73メートルの道路を隔てて南の位置にある。甲2,23,乙2,3の1,2(3) 騒音の状況(ア) 被告会社は,平成7年頃から現在に至るまで,日祭日及び夜間も含めて毎日のように,午前9時頃から午後8時頃まで(日によっては午後9時過ぎまで)本件工場において ,3の1,2(3) 騒音の状況(ア) 被告会社は,平成7年頃から現在に至るまで,日祭日及び夜間も含めて毎日のように,午前9時頃から午後8時頃まで(日によっては午後9時過ぎまで)本件工場において自動車修理,板金塗装,部品取り等の作業をし,サンダー(研磨機)音,エアーソー(カッター)音,ハンマーによる打撃音,塗装釜の音,シャッターの閉鎖時の衝突音などの金属音等の騒音を発生させ,また,平成12年5月頃からは本件駐車場に自動車を出し入れする作業をしてエンジン音の騒音を発生させ,これを原告住居に侵入させている。上記騒音は,1日中切れ目無く継続するというものではなく,短時間に間欠的に発生する。上記騒音の騒音測定器による測定結果,原被告及び保健所の対応状況の概要は,以下のとおりである。甲1,3(イ) 被告会社は,原告らが居住するようになる以前から,本件工場で自動車の修理,板金塗装等の作業をして騒音を発生させてきたが,平成7年頃からは原告らが本件騒音を保健所等の援助を受けてでも減音させたいと思うほど大きくなった。 (ウ) 原告らは,本件工場からの騒音について,平成8年8月頃に保健所に苦情を申し出た。保健所は,同月30日,被告会社に対し規制基準を守るように立入指導をし,本件工場南西角付近での騒音測定の結果,瞬時値で54ないし64デシベルを測定したが,結局,本件工場の騒音は改善されなかった。 (エ) 原告らは,本件工場からの騒音について,平成9年6月頃に保健所に苦情を申し出た。保健所は,同年6月4日,立入指導をし,同年8月25日から9月2日にかけて原告住居北東角付近で騒音測定をした結果,上端値が57ないし75デシベル,中央値が50ないし65デシベルという大きく規制基準を超える騒音が測定されたので,同月19日,被告会社に対し,音の大きい作業は昼間にやる 東角付近で騒音測定をした結果,上端値が57ないし75デシベル,中央値が50ないし65デシベルという大きく規制基準を超える騒音が測定されたので,同月19日,被告会社に対し,音の大きい作業は昼間にやるよう,シャッターをできるだけ閉めて作業を行うよう指導した。 その後も,保健所は,被告会社に対し,2回立入指導をし,同年11月18日には日曜や夜間の作業はできるだけ止めるように指導をしたが,本件工場の騒音は改善されなかった。 (オ) 原告らは,本件工場からの騒音について,平成10年1月頃に苦情を申立てた。保健所は,同月16日立入指導をし,被告会社は,同月26日に防音シート(ビニールカーテン)等を設置し,保健所は,規制基準を厳守するよう再度指導した。 その後も,夜間騒音等を巡って苦情申立,立入指導が繰り返された。同年10月8日になされた夜間騒音の測定結果は,通過車両等による暗騒音が50デシベル程度であった。また,同年10月23日から11月3日までの保健所による騒音測定の結果,昼間の上端値が全日平均で58デシベル,最高値で82デシベル,エアーソー(カッター)の騒音が79ないし82デシベルであること,本件工場の著しい大きな騒音は短時間に間欠的に発生していること,昼間の暗騒音が54デシベルあることが判明した。そこで,保健所は,同年12月21日頃,原告らは明らかに騒音被害にあっているとの判断,及び本件工場の騒音を暗騒音以下とすることが相当であるとの判断に基づき,被告会社に対し,著しく騒音の大きな作業にあっては作業方法の改善,防音対策を至急行う必要がある旨の改善指導をした。被告会社は,平成11年1月29日に本件工場(板金工場部分)のシャッターを二重構造とするとの改善策を回答をし,同年4月27日には原告住居側窓(1か所)について二重サッシとする,エアーソ 指導をした。被告会社は,平成11年1月29日に本件工場(板金工場部分)のシャッターを二重構造とするとの改善策を回答をし,同年4月27日には原告住居側窓(1か所)について二重サッシとする,エアーソー(カッター)を騒音の小さい物にするとの改善策を回答して同年5月にこれを実施したが,シャッターの二重構造化は実施せずに原告住居に近い出入口(1か所)にガラスの引き戸を設けた。 同年6月9日,保健所が騒音測定したところ,カッターは75デシベル,サッシを閉めた場合は69デシベル,サッシとシャッターを閉めた場合は63デシベルであり,保健所は改善の結果12デシベルの減音効果があったと評価したが,規制基準に照らし更なる防音対策が必要であると判断した。甲1,6ところが,被告会社は,本件工場には上記以外の開口部を含めてシャッターがあるにもかかわらず,作業環境・効率の悪化(夏期はシャッターを閉めるとクーラー等が設置されていなかった本件工場内は非常に暑くなる)や作業効率の低下(10分おきくらいに自動車を出し入れして修理等を行うため,いちいちシャッターを開閉するのは手間がかかる。出し入れ時も他の作業も平行して行った方が効率がよい。)を回避するため,これを閉めないで作業をすることが多く,上記改善策にもかかわらす騒音はほとんど変わらなかった。 (カ) 原告らは,原告ら代理人に依頼して,被告会社に対し,平成11年9月14日頃,騒音を暗騒音以下(昼間,54デシベル以下)とすることを求めるなどと記載した内容証明を出したが,被告会社からは回答がなく,騒音にも変化はなかった。甲5保健所によって,平成11年9月28日から同年10月13日までの間,原告住居において騒音測定が行われた。その結果,前年より騒音は幾分減音があったが,依然として規制基準を超えていた。 (キ) 原告らは 保健所によって,平成11年9月28日から同年10月13日までの間,原告住居において騒音測定が行われた。その結果,前年より騒音は幾分減音があったが,依然として規制基準を超えていた。 (キ) 原告らは,本件工場の騒音が大きくなったと感じ,午後8時過ぎまで打撃音や切断音がし,また,日祭日も作業をして騒音を出すことが多かったことから,保健所に対し,平成12年1月24日,苦情申立てをし,保健所は指導をしたが,騒音は変わらなかった。 原告らは,再度,原告ら代理人に依頼して,被告会社に対し,同年2月28日頃,騒音を暗騒音以下(昼間,54デシベル以下)とすることを求めるなどと記載した内容証明を出したが,被告会社からは回答がなく,騒音にも変化はなかった。甲7,11被告会社は,同年5月頃,本件駐車場を取得して,修理のために自動車を駐車し,本件工場への出し入れをするようになったため,本件工場の騒音に加えて,出し入れの際の自動車のエンジン音が従前に増して原告住居に侵入するようになった。甲4,8(ク) 原告らは,被告らに対し,平成12年5月10日に規制基準以上の騒音を出さないことを求めて名古屋簡易裁判所に調停(平成12年公5号事件)を申立て,同年6月20日を第1回として調停期日が重ねられた。調停委員からは,被告らに対し,本件工場の板金作業をする部分に二重サッシ,防音壁及び電動シャッターを設置する,原告住居に近い壁の破損個所を速やかに修理するとの提案がなされ,原告らには原告住居の窓を厚く作り変えるとの提案がなされるなどしたが,結局,被告らにおいて防音対策のための見積書の提出や破損個所の修理もなされないまま,また,原告らにおいては被告らの防音対策がなされないのに原告らにおいて防音対策をする必要はないとの見解もあって,同年10月6日の第6回期日で不調となった 積書の提出や破損個所の修理もなされないまま,また,原告らにおいては被告らの防音対策がなされないのに原告らにおいて防音対策をする必要はないとの見解もあって,同年10月6日の第6回期日で不調となった。甲9(ケ) 原告らの依頼で,保健所は,平成12年12月8日から14日までの間,騒音測定をした結果,エアーソー(カッター)の騒音が71から72デシベルと小さくなっていたが,サンダー音は72ないし73デシベル,ハンマー音は69ないし73デシベルと平成11年の測定時(サンダー音63ないし65デシベル,ハンマー音66ないし69デシベル)より騒音がひどくなっている部分もあることが判明した。甲10(コ) 原告らは,平成13年になって,被告らを相手に,名古屋地方裁判所に,本件仮処分事件の申立てをし,また,同年2月20日に本件訴訟を提起した。本件仮処分手続の中で,裁判所から,被告らに前記(ク)の防音対策をすること,シャッターの開閉をできるだけ減らし,午後6時以降できるだけ板金作業をしないことなどが提案された。 被告会社は,同年4月末頃にようやく前記破損個所を修理した。また,被告らにおいて,同年5月1日頃,上記防音対策のための請負代金の見積書を取得したところ約1000万円を要するうえ,充分な防音効果が上がるか疑問であるとの回答を得た。そこで,被告らは,本件工場を移転することとし,移転費用を捻出するため,同月10日には宅地建物取引業者と本件工場,その敷地及び本件駐車場売却の専任媒介契約を締結するなどして具体的売却行為に着手し,同年7月にはシャッターを閉鎖して作業ができるようにスポットクーラー4基を設置した。 しかし,被告らは,本件仮処分事件及び本件訴訟進行中も仕事の繁忙,緊急性等を優先して,午後9時過ぎに30分間にわたって本件駐車場の自動車の入れ替え作業 きるようにスポットクーラー4基を設置した。 しかし,被告らは,本件仮処分事件及び本件訴訟進行中も仕事の繁忙,緊急性等を優先して,午後9時過ぎに30分間にわたって本件駐車場の自動車の入れ替え作業を行って騒音を発生させたり,作業の効率的進行のためシャッターや引き戸を閉めないで作業をする,日祭日等も作業をするなどしており,騒音軽減のため比較的容易にできる対応さえ怠った。甲35,乙1,2(サ) 原告らは,騒音を防ぐため,本件工場に近い窓(1か所)の雨戸を日中も締め切りにし,その他の窓も開けないようにしている。また,平成11年5月頃に本件工場に近いよう壁(原告住居の北側及び東側の一部)の上に防音性の高いフェンス(高さ約1.5メートル)を設置した。その結果,騒音の測定結果に差異はないが,原告らは騒音が柔らかい感じになったと思っている。他の雨戸は,被告らが防音に努力しないことの対抗上,夜間でも閉めていないし,就寝する午前零時頃には騒音はないので閉める意味がない。 (シ) 被告らは,本件駐車場が売却できて移転資金の準備もできたことから,また,早期移転を原告らに求められたことから工場を建築する時間的余裕がなく工場を賃借することとして,平成13年12月27日,本件仮処分事件において本件和解をした。 (4) 原告らの被害状況(ア) 証拠(甲12,原告A本人)によれば,以下の事実が認められる。 原告らは,外構工事業を営む有限会社Eを経営し,原告住居を事務所として使用している。 原告Aは,原告住居で,電話番,記帳,書類作成等の事務全般を行っており,図面・書類及び荷物の受渡,集金等のため1日に30分ないし1時間(長いときで2,3時間)外出することはあるものの,本件騒音の被害をほぼ1日中受けることとなる。本件騒音のため,電話での注文が聞き取りにくく何度も聞き 荷物の受渡,集金等のため1日に30分ないし1時間(長いときで2,3時間)外出することはあるものの,本件騒音の被害をほぼ1日中受けることとなる。本件騒音のため,電話での注文が聞き取りにくく何度も聞き返したりすることになり,仕事に集中できなかったりし,また,時には耳栓をして自己防衛しているものの,頭痛(時々薬を飲むこともある。),夜間被告らの作業が終わっても板金の音が頭の中で鳴り響いている,睡眠不足等の症状が起こるとともに,家庭における安息感を得ることができなくなり,精神的・肉体的疲労が蓄積している。 被告Bは,昼間は外出して仕事をしているが,夕方帰宅しても騒音のためくつろぐことができず,精神的・肉体的疲労が蓄積している。 (イ) 被告らは,証拠によれば,原告住居は,道路よりも2メートル高い要壁の上にあり,遮音性の高いコンクリートパネル構造であること,原告ら以外の近隣住人からは苦情はないことを指摘し,証拠(乙10,原告A本人,被告D本人)によればこれらの事実を認めることができる。しかし,騒音に対する反応には個人差があるものの,前記保健所の騒音測定の結果及び改善勧告の状況,本件工場からの騒音が金属音等で耳障りなものであること等からすると,前記(ア)の被害状況が誇張されたもの,騒音に対する過剰な反応であるとは認められない。 3 違法性及び被告らの責任被告会社は,前記2のとおりであって,①本件地域が第一種低層住居専用地域であって住民の安眠及び平穏な生活を重視すべき地域であること,②本件騒音によって売上げの減少や通院・治療等の事態にまでは至っていないものの,原告らの日常業務の遂行及び家庭生活に支障を生じていること,③本件騒音が長期間にわたって継続していること,④被告会社は,保健所の指導等にもかかわらず経営効率を優先させてほとんど防音対策をしな のの,原告らの日常業務の遂行及び家庭生活に支障を生じていること,③本件騒音が長期間にわたって継続していること,④被告会社は,保健所の指導等にもかかわらず経営効率を優先させてほとんど防音対策をしないまま経過してきたこと,⑤本件騒音が公法上の規制基準を大幅に超えるものであること,⑥本件騒音が平成7年頃から大きくなっていることからすると,被告会社が原告らが居住するようになる以前から本件工場で自動車の修理,板金塗装等の作業をして騒音を発生させていたこと,暗騒音の存在を考慮しても,被告会社(従業員等)の発生させている騒音は,原告らの受忍限度を超えた違法なものと認められ,被告会社は故意に本件騒音を発生させてきたものであり,これによって原告らが被った損害を賠償すべき義務がある(民法709条,715条)。 また,被告Dは,被告会社の代表取締役であり,かつ,本件工場及び本件駐車場の騒音防止の措置を取りうる地位にありながら,故意に,十分な措置を取らずにこれを放置してきたことは前記2のとおりであるから,民法719条に基づき,被告会社とともに原告らが被った損害を賠償すべき義務がある。 4 損害原告らは,平成7年から本件口頭弁論終結時まで約7年間にわたって,毎日のように継続的に規制基準を大幅に超える本件騒音にさらされ,精神的・肉体的苦痛を被ってきたのであるから,被告会社において移転のための具体的手続に着手し,本件和解が成立していることを考慮しても,これに対する慰謝料としては,本件騒音にさらされる時間の長かった原告Aについては70万円,時間が短かった原告Bについては30万円が相当である。 5 よって,原告Aの請求は70万円の限度で,原告Bの請求は30万円の限度で理由があるから認容することとし,その余の請求は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する 30万円が相当である。 5 よって,原告Aの請求は70万円の限度で,原告Bの請求は30万円の限度で理由があるから認容することとし,その余の請求は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判官戸田彰子(別紙物件目録及び和解条項省略)

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