平成9(く)170 再審請求棄却決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成13年10月29日 東京高等裁判所 棄却
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判決文本文16,185 文字)

主文 本件即時抗告を棄却する。 理由 本件即時抗告の趣意は,弁護人櫻井光政ほか14名が提出した即時抗告申立書に記載されているとおりであるから,これを引用する。 第1 これまでの経過申立人は,昭和55年5月6日,東京地方裁判所において,申立人の夫であるもA(死亡当時47歳)の殺害,申立人の当時の使用人Bの同棲相手であったCの殺害と死体遺棄の犯罪事実により死刑判決を受け,控訴したが,東京高等裁判所において控訴棄却の判決を受け,更に上告したが,平成3年1月31日,最高裁判所において上告棄却の判決を受けて,東京地方裁判所の第1審判決が確定した。 この確定判決に対して,申立人は,その認定された犯罪事実のうち,A殺害の事実に関し,D作成の平成3年6月27日付け鑑定書(以下,D新鑑定書という。)と平成4年4月6日付けE作成の回答書(以下,E回答書という。)を,刑訴法435条6号所定の無罪を言い渡すべき新規明白な証拠であるとして,原審東京地方裁判所に提出し,再審を請求した。 1 申立人の言い分と確定判決(一) 本件において,「昭和49年8月8日の夜間,申立人の夫であるAが,当時申立人と暮らしていた東京都江東区Fの自宅(以下,単にFということもある。)で,都市ガスの吸引による一酸化炭素中毒によって死亡した」事実は,関係証拠に照らして,疑いを容れる余地はなく,当初から申立人にも争いがないのであるが,妻である申立人がガス中毒死させて殺害したか否かが争われた。 申立人は,第1審公判段階以来,A殺害の事実を争い,Aの死因はガス自殺であって,当夜,申立人が当時営んでいたPから一時帰宅すると,Aが6畳間のガス栓からゴム管を4畳半へ引き込んでガスを放出させて,布団の上で浴衣着のままでいるのを発見し,呼びかけても返事はなかったが,咳き込ん ,当夜,申立人が当時営んでいたPから一時帰宅すると,Aが6畳間のガス栓からゴム管を4畳半へ引き込んでガスを放出させて,布団の上で浴衣着のままでいるのを発見し,呼びかけても返事はなかったが,咳き込んでいたので,ガス栓を止め,換気をして,大丈夫と思ってPへ戻ったものの,心配になって午後11時ころまた帰宅してみると,Aはぐったりしており,枕頭と6畳間の机の中にそれぞれ遺書が置かれていたが,外聞を憚ってガス風呂事故を装うこととし,申立人の当時の使用人G(なお,平成3年(み)第3号判決訂正申立事件記録中の戸籍謄本によれば,共同被告人であった同人は,申立人との養子縁組により,平成3年1月30日,Hと改姓したことが認められるが,本決定では旧姓のままで表示する。同人に対する懲役9年の第1審判決は,申立人の場合と同様の経過で,上告棄却の判決により確定した。)に手伝わせて,Aを裸にして風呂場に運んで医者や救急車を呼び,風呂場でガス中毒により事故死したかのように取り繕った上,発見した遺書は誰にも見せずに約1週間後に焼却した旨供述した。 本件A殺害については,昭和53年4月24日から25日にかけて行われたC殺害につき逮捕された,共犯者Bの口から洩らされたのが端緒で捜査が開始されたもので,発生当時,ガス中毒による死亡事故として処理されていたため,捜査開始時には,既に3年9か月の歳月を経過していて,客観証拠が少なく,関係者の供述の裏付け証拠に乏しい憾みがあることは否めない。 (二) しかし,第1審判決は,申立人の弁解は不自然,不合理で信用できないと判断し,Aの殺害を自白した申立人の捜査官に対する供述調書,申立人からA殺害の事実を詳しく打ち明けられて,Cの殺害を慫慂されたというBの証言,申立人とA殺害を共謀し,その犯行に協力した旨を自白したGの捜査官に対する供述調書 た申立人の捜査官に対する供述調書,申立人からA殺害の事実を詳しく打ち明けられて,Cの殺害を慫慂されたというBの証言,申立人とA殺害を共謀し,その犯行に協力した旨を自白したGの捜査官に対する供述調書等と間接証拠の存在から,申立人がA殺害の実行犯であると認定した。 2 控訴審におけるガス中毒に関する主張と審理控訴審において,弁護人は,事実認定上の争点の1つとして,ガス放出時期とAのガス中毒による死亡時期の関係について問題を提起し,後記の控訴審におけるガス関係の鑑定結果にもかんがみて,申立人の自白は信用できず,その公判段階の言い分どおりに,Aは,申立人が自宅を外出した後に,自らガス栓を開けてガスを吸引して自殺を遂げたと主張した。 しかし,控訴審は,結局,第1審判決に誤りはないと結論して控訴を棄却し,第1審判決は,上告棄却判決を経て確定した。 前記のガス中毒死に関する主張について,控訴審で取り調べられた鑑定証拠は,下記①ないし④のとおりである。 ① I鑑定Jの燃焼技術研究室員である鑑定人I作成の鑑定書(控訴審記録1521の19丁)及びその証言(併せてI鑑定という。)に控訴審の昭和57年7月20日付け決定及び同年9月21日付け決定を併せ見ると,I鑑定においては,本件現場であるFの4畳半に,同室6畳間に設置してあるガス栓からガスホースを引き込み,本件当時供給されていた都市ガスとほぼ同じ比重を持つ不活性ガスを放出して,時間経過に伴い,Aが死亡していたとされる位置でのガス濃度を測定し,ガス中に一酸化炭素が,それぞれ2.1パーセント,4.9パーセント(この値が,当時,同室に供給されていた都市ガスの一酸化炭素の平均濃度である。),7.5パーセント含有されていたとした場合における一酸化炭素濃度が算出された。なお,本件ガス栓からのガス流量は,2段階に切 の値が,当時,同室に供給されていた都市ガスの一酸化炭素の平均濃度である。),7.5パーセント含有されていたとした場合における一酸化炭素濃度が算出された。なお,本件ガス栓からのガス流量は,2段階に切り替えが可能で,ガス栓を格納する外部金属蓋の下部を閉じて元栓の先端部を水平に固定した状態にした場合(以下,下部閉じ[全開]という。)には,前記蓋を上下部とも開いた状態にした場合(以下,上下開[半開]という。)に比して,約2.3倍の流量であることが判明しており,鑑定に当たっては,両場合につき測定が行われた。 ② K鑑定Lの安全研究所長である鑑定人K作成の鑑定書(控訴審記録1521の43丁),鑑定書の一部訂正補足についてと題する書面(同記録1521の116丁)及びその証言(併せてK鑑定という。)によれば,I鑑定の結果から得られたガス濃度等の数値を用いて,Aの吸気中の一酸化炭素濃度が次第に上昇していく曝露状況を再現して,家兎を使って生体実験を行い,家兎の血液と人血との一酸化炭素に対する親和性の比較実験を経た結果,人血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が,本件Aの死体の測定値がそうであったように,80パーセントに達するには,6畳間のガス栓を下部閉じ[全開]にした場合は27分程度を要し,上下開[半開]の場合は81分ないし91分程度を要するという結果を得た(前記鑑定書添付の表4)。 ③ D鑑定M医学部助教授で,環境衛生学を専攻する鑑定人D(控訴審における口頭鑑定。D鑑定という。)は,人は血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度60ないし70パーセントで重篤・瀕死状態に陥り,それから後30分以上生きながらえることは不可能であって,本件Aの場合,血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が80パーセントに達していた事実は,相当急激にその濃度が上昇したことを意味すること,K 陥り,それから後30分以上生きながらえることは不可能であって,本件Aの場合,血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が80パーセントに達していた事実は,相当急激にその濃度が上昇したことを意味すること,K鑑定の家兎を用いた実験手法は医学的に妥当で,その鑑定結果も相当であると評価されること,同鑑定の結果によれば,本件でガス栓を上下開[半開]にしてガスを放出したのだとすると,Aは血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が60パーセントに達して重篤・瀕死状態に陥り,更にそれからなお45分以上生存して血中濃度80パーセントに到達したことになるが,死に至るのにそのような経過をたどることはあり得ないこと,他方,ガス栓下部閉じ[全開]でガスを放出した場合には,同人は一酸化炭素ヘモグロビン血中濃度60パーセントに達してから6分ないし10分のうちに濃度80パーセントに到達したことになり,死に至る経過として自然であって,この場合,Aはガス放出開始から約27分経過して死亡したと考えられることを述べる。 ④ E鑑定N法医学教室助教授・医師である鑑定人E作成の意見書(控訴審記録1521の128丁)及び同人の鑑定人兼証人としての公判供述(供述時は,O医学部法医学教授。併せてE鑑定という。)は,K鑑定が家兎を用いて得られた実験結果を血液循環や呼吸生理の異なる人の場合に類推適用するのは,法医学の立場から是認できないとし,法医学書に引用されているJ.Mayのグラフを用いて推計すると,I鑑定に示された一酸化炭素濃度の呼気中に曝露された場合に人が死亡に至る時間は,本件ガス栓上下開[半開]の場合は約2時間,下部閉じ[全開]の場合は約1時間であるとする。 3 再審請求と原決定の判断(一) 先に見たとおり,申立人は,確定判決が認定したA殺害の事実に関して,D新鑑定書とE回答書を,刑訴法435 は約2時間,下部閉じ[全開]の場合は約1時間であるとする。 3 再審請求と原決定の判断(一) 先に見たとおり,申立人は,確定判決が認定したA殺害の事実に関して,D新鑑定書とE回答書を,刑訴法435条6号所定の無罪を言い渡すべき新規明白な証拠として提出した。 (1) D新鑑定書は,Aが布団の上で,異常な体位をとらず,衣服に乱れはなく死亡しており,また,部屋の内部に乱れた状況は窺われなかったことなどから判断して,同人は高濃度の一酸化炭素に曝露されて短時間で死亡したものであること,控訴審におけるE鑑定が依拠したMayのグラフは不正確であり,しかも,一酸化炭素吸引に伴い生体内に生じる諸要因の相乗作用によって血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が急上昇することを考慮に入れていない欠陥があるから,同鑑定は採用できないことを内容とする。 (2) E回答書は,前記E鑑定が用いたMayのグラフ自体,厳密なものではないこと,E鑑定は,このグラフを適用した場合において,I鑑定の測定した一酸化炭素濃度の下で人が死亡するのに,どの程度の時間がかかるかにつき意見を述べたものであること,I鑑定とMayのグラフによると,人は血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が80パーセントになる以前に死亡すると考えられること,その濃度が80パーセントまで上昇するためには,呼吸の促進,アルコールの影響などによる急速な上昇を想定する必要があること,その上昇加速には,酸素の欠乏や一酸化炭素中毒による呼吸促進など,生体内に生じる諸要因の相乗作用によるものも考えられるが,E鑑定は,そのような点までは考慮しておらず,その意味で,示した数値は,当然に,前後大きな幅のある数値であることなどを内容とする。 (二) 申立人は,上記のD新鑑定書とE回答書を提出することにより,Aはガス放出後30分弱で死亡したと認定 ず,その意味で,示した数値は,当然に,前後大きな幅のある数値であることなどを内容とする。 (二) 申立人は,上記のD新鑑定書とE回答書を提出することにより,Aはガス放出後30分弱で死亡したと認定すべきことが明白になったと主張し,D新鑑定書とE回答書をこれまでに取り調べられた関係証拠と併せ見れば,Aをガス中毒死させて殺害した旨の申立人の捜査段階における自白は矛盾を生じて信用性を失い,申立人がAを殺害したことには合理的な疑いが生じ,確定判決のA殺害の事実認定は維持することができないと主張した。 これに対して,原決定は,再審請求で提出された証拠の明白性について,「無罪を言い渡すべき明らかな証拠とは,確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいうが,明らかな証拠であるかどうかは,もし当の証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたとするならば,はたしてその確定判決においてなされたような事実認定に到達したであろうかという観点から,当の証拠と他の全証拠とを総合的に評価して判断すべきである。」(原決定24丁表)と,その判断の基準を明らかにした上で,申立人提出の前記D新鑑定書とE回答書の明白性の検討を行い,その結果として,本件のガス中毒に関するこれらの証拠は,いずれも,確定判決が認定した申立人によるA殺害の事実に,合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠とは認められないと結論する。 第2 原決定の当否の検討 1 再審請求証拠の明白性の検討方法所論は,再審請求審の審判対象は,確定判決の事実認定の正当性であって,申立人提出のD新鑑定書とE回答書が,刑訴法435条6号にいう証拠として,明白性を具えているか否かを判断するには,まず確定判決審で取り調べた証拠(旧証拠)を全面的に評価 決の事実認定の正当性であって,申立人提出のD新鑑定書とE回答書が,刑訴法435条6号にいう証拠として,明白性を具えているか否かを判断するには,まず確定判決審で取り調べた証拠(旧証拠)を全面的に評価し直し,有罪認定を支える証拠の質と強度を分析し,有罪認定の強固さを解明し,その上で新証拠を加えて,改めて新旧全証拠を総合的に評価して,その結果,確定判決の事実認定に合理的な疑いが生ずるか否かを検討すべきであるのに,原決定は,確定判決の事実認定とそれを支える旧証拠の質と強度の全面的な再評価をせず,有罪認定の強固さ(脆弱さ)についても改めて解明していないと論難する。 按ずるに,再審請求審は,申立人から新規明白な証拠として提出されたD新鑑定書及びE回答書と,その立証命題(すなわちガス放出時期とAの死亡時期の関係)に関連する確定判決審が取り調べた全証拠(旧証拠)とを総合評価し,前記両証拠が新たに確定判決審の審理の対象に加わることによって,確定判決が既に行った事実認定につき合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性があるか否かを判断すべきものであって,その評価判断を行うに当たっては,その判決の当否を審査する過程において上訴審や再審請求審で取り調べた証拠をも,検討の対象にすることができるというべきである(最高裁平成7年(し)第49号同10年10月27日第三小法廷決定・刑集52巻7号363頁参照)。 再審請求により新証拠が提出されたのを機に,再審請求審が,新証拠の立証命題とは関わりなく,確定判決審が取り調べた証拠を全面的に評価し直し,事案全体につき自らの心証を形成した上で,新たに提出された証拠をこれに加えて,改めて確定判決の事実認定全体の当否を判断すべきであるとする見解をとるときは,判決が確定したことにより動かし得ないものとなったはずの事実関係を 心証を形成した上で,新たに提出された証拠をこれに加えて,改めて確定判決の事実認定全体の当否を判断すべきであるとする見解をとるときは,判決が確定したことにより動かし得ないものとなったはずの事実関係を,事後になって,それ自体としては証拠価値の乏しい新証拠を提出することにより,安易に動揺させることになりかねない。そのような事態は,確定裁判の安定を損ない,延いては,三審制を事実上崩すことに連なるものであって,現行刑訴法の再審手続とは相容れないものといわなければならない。 このような次第で,所論はその前提において既に失当である。 2 原審の行った明白性検討の当否本件において,Aが,昭和49年8月8日の夜間,妻である申立人と暮らしていたFにおいて,都市ガスの吸引による一酸化炭素中毒によって死亡したことは,関係証拠に照らし疑いを容れない事実であるところ,確定判決審以来,Aのガス中毒死が,申立人による殺害か否かが争われたいきさつは,先に見たとおりである。 申立人は,確定判決裁判所である原審に対して,叙上の問題点につき,「Fから外出する前に,6畳間のガス栓を開放してガスを4畳半に放出し,同所で就寝していたAを殺害した」旨の申立人の捜査段階における自白は虚偽であり,Aは,申立人が外出後に,自らガスを放出して自殺したと主張し,ガス中毒に関するD新鑑定書とE回答書の両証拠を新規明白な証拠として提出した。 (一) D新鑑定書は,第1の2掲記の③D鑑定の鑑定人により作成されたもので,D鑑定を布衍ないし補足するもの,E回答書は,同④のE意見書の作成者が,その内容の趣旨につき弁護人の質問に回答した書面であって(D新鑑定書とE回答書を,同③,④と対比検討すると,その新規性には問題があると思われるが,原決定が,明白性についてのみ判断を示している事情にかんがみ,この点は問 き弁護人の質問に回答した書面であって(D新鑑定書とE回答書を,同③,④と対比検討すると,その新規性には問題があると思われるが,原決定が,明白性についてのみ判断を示している事情にかんがみ,この点は問題として指摘するに留める。なお,検察官は,平成4年8月10日付け再審請求に対する意見書において,両証拠はいずれも新規性を欠く旨の意見を述べている。),その立証命題は,前記のとおり,ガス放出時期とAの死亡時期の関係であるところから,他の証拠と総合評価するに当たっては,この両証拠を,確定判決審及び控訴審で取り調べられたガス中毒関係の証拠と併せて,確定判決審の立場で検討評価した上で,A殺害に関する申立人の自白の信用性にどのような影響を及ぼすか,それにより申立人がAを殺害した旨の事実認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠であるかを検討するべきである。 (二) この点について,原決定が,その「第三・当裁判所の判断」(同23丁裏以下)において,D新鑑定書とE回答書を,「主として他のガス鑑定に関する証拠と併せて評価」すると判示したのはよいとして,これに続けて,「新証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたならば,はたしてその確定判決においてなされたようなガス鑑定の評価に到達したであろうかを検討し,自白調書の真実性に合理的な疑いを生じさせるか否かを判断すべきもの」(同24丁裏)と判示するのは,そもそもガス中毒に関する鑑定証拠の取り調べを行ったのは控訴審であって,確定判決審(第1審)においては,その点の問題提起はなく,証拠調べも行われなかったのであるから,不適切というほかない。そして,原決定は,さらに,「控訴審判決は,(中略)それらの鑑定(E鑑定とK鑑定を指す。)の結論の大筋における合理性を認め,申立人の自白の真実性に合理的な疑いを生じさせるものとはいえな うほかない。そして,原決定は,さらに,「控訴審判決は,(中略)それらの鑑定(E鑑定とK鑑定を指す。)の結論の大筋における合理性を認め,申立人の自白の真実性に合理的な疑いを生じさせるものとはいえないとしているのであるから,D新鑑定書のうち前記②の部分(E意見書が用いたMayのグラフは不正確であり,しかも,吸気中の一酸化炭素濃度の上昇や酸素欠乏などによる呼吸増進などの諸要因の相乗作用で血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が急上昇することを考慮に入れていない旨の指摘を指す。)及びE回答書が控訴審に提出されていたとしても,E鑑定の結論の大筋における合理性を承認した控訴審の判断は変更されないものと認められる。」(同28丁裏ないし29丁表)と判示し,また,「D新鑑定書がその判断の基礎としている前提事実やその推論の過程には疑問があるところ,控訴審判決は,右新鑑定書と類似する根拠と推論によって同一の鑑定結果を導き出したD鑑定を排斥しているのであるから,D新鑑定書のうちの前記①の部分(Aが死に際に,もがき,暴れたことが窺われないことから,同人は,ガス栓下部閉じ[全開]の状態で放出された高濃度の一酸化炭素に曝露されて短時間で死亡した旨判定したことを指す。)が控訴審に提出されていたとしても,D鑑定を排斥した控訴審の判断は変更されないものと認められる。」(同32丁)などと判示するのも,再審請求審として審理するに当たり,どの裁判所の立場に立って,確定前に取り調べられた証拠と新証拠を総合評価すべきかを,取り違えているばかりではなく,新証拠の明白性の評価判断のあり方としても不適切である。 3 明白性の検討そこで,以下,D新鑑定書とE回答書の再審請求の証拠としての明白性につき,当審として,更に検討を加える。 (一) 先に見たとおり,再審申立人が提出した証拠の明白性の存否 切である。 3 明白性の検討そこで,以下,D新鑑定書とE回答書の再審請求の証拠としての明白性につき,当審として,更に検討を加える。 (一) 先に見たとおり,再審申立人が提出した証拠の明白性の存否の判断は,確定判決審の立場において,これを,その立証命題に関連する確定判決審が取り調べた全証拠(旧証拠)と総合評価することによって行われるが,この総合評価に当たっては,再審請求の対象となった判決の確定の前後を問わず,その当否の審査の過程で取り調べられた証拠をも検討の対象にすることができるのであり,その結果,確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠であると判断されるときは,明白性が認められることとなる。 申立人は,①確定判決審の証拠上,申立人が本件当日Fを出て自らが経営するPへ向かったのは,午後6時30分ころであること,②監察医作成の死体検案調書謄本(確定判決審記録449の2734丁)などから,Aの死亡時刻は,同日午後9時ころと推定されること,③東京都監察医務院長の回答書(同記録449の2736丁)から,死亡した同人の血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は,80パーセントであったと認められることを前提に,申立人が外出前に6畳間のガス栓を開けてガスを放出したとした場合,前記のとおり,Aの血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が80パーセントに達して,午後9時ころ死亡するという事態が発生し得るかを問題にする。そして,D新鑑定書とE回答書によって,そのような事態は起こり得ないことが明らかになったから,申立人が確定判決審段階で述べるとおり,同人が自宅を外出した後になって,Aが自らガス栓を開けガスを放出させて自殺したものであることが認められ,申立人の捜査段階における自白は信用できず,A殺害の事実については無罪であると主張 べるとおり,同人が自宅を外出した後になって,Aが自らガス栓を開けガスを放出させて自殺したものであることが認められ,申立人の捜査段階における自白は信用できず,A殺害の事実については無罪であると主張するのである。 (二) そこで,所論がその主張の基礎におく,申立人の外出時期(午後6時30分ころ)ないしそれより以前のガスの放出開始時期,Aの推定死亡時期(午後9時ころ),同人の死体の血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度(80パーセント)などの精度につき,検討を加える。 (1) まず,申立人が当日自宅を出た時期,ガス栓を開放した時期につき検討する。 本件当日,申立人がAと魚釣りを兼ねた長距離ドライブに出かけ,帰宅してから同人とその愛人問題で激しく口論した後,いつごろ自宅を出てPへ向かったかについて(自宅からP間の距離は,確定判決審記録449の2901丁の捜査報告書から,2キロメートル強と認められる。なお,申立人は,当時,Pとの往復にタクシーを利用したと述べているところ,その場合,Pまでの所要時間は,前記の距離などから推して,流しのタクシーを待つ時間を入れても,10分前後と認められる。),前記死体検案調書謄本によれば,申立人が事件の翌朝現場に臨場した警察官や監察医に対して,「午後6時半ころ店に出かけ(た)」と述べたことが窺われる。 しかしながら,申立人は,A殺害の自白を翻した確定判決審でも,(申立人の言い分によると,4畳半の布団でガス自殺を遂げていたという)Aの死体を,Gに手伝わせて風呂場へ運んだ上,翌日午前零時44分ころ臨場した救急隊員や(城東消防署長回答書,同記録449の2724丁),午前10時25分ころ行われた検死の係官(前記死体検案調書謄本)に対し嘘をついて,ガス風呂での事故死を偽装したことは認めるのであるから,検死の係官に不審を抱かれないよう 同記録449の2724丁),午前10時25分ころ行われた検死の係官(前記死体検案調書謄本)に対し嘘をついて,ガス風呂での事故死を偽装したことは認めるのであるから,検死の係官に不審を抱かれないようにするために,その際,わざと外出時期を早めに申告した可能性はあるといわなければならない。そして,その後の申立人の司法警察員調書,検察官調書などを通覧し,死体の移動を手伝ったGの捜査段階での供述調書,確定判決審第18回公判での供述(当日申立人がPに出てきた時刻について,大要,「開店は,通常午後7時であるところ,申立人が出てくるのは通常は6時とか7時とかまちまちであるが,田舎の方へドライブに行くから事件当日は店に出る時間が遅くなるので,店はやっててもらいたい旨,前日に頼まれていて,申立人が実際に出てきたのは,午後8時前後ころであったと思うが,はっきりは覚えていない。」と述べる。)なども併せ見ると,死体検案調書謄本の前記の外出時期の記載をそのままは信用し難く,これらを総合して検討すると,申立人がFを外出したのは,おおよそ午後7時過ぎから8時前ころまでの間であったものと推測される。したがって,ガス栓の開放から外出までの所要時間をおよそ15分前後とみると,逆算して,ガス栓開放が行われたのは,それより幾らか早い午後7時ころから7時半過ぎころの時間帯であったことになる。 (2) Aの死亡推定時期については,監察医Q作成の前記死体検案調書謄本の受傷又は発病日時欄と死亡の日時欄にいずれも「8月8日午後9時頃・推定」と記載があり,検案日時欄に「8月9日午前10時25分」と,死亡の原因並びに死亡の種類欄に「一酸化炭素中毒(不慮の中毒・推定)」と,それぞれ記載されているが,当時,本件がガス風呂の事故死と認定されて処理された関係上,剖検は行われず,死体の外面所見と申立人の 死亡の原因並びに死亡の種類欄に「一酸化炭素中毒(不慮の中毒・推定)」と,それぞれ記載されているが,当時,本件がガス風呂の事故死と認定されて処理された関係上,剖検は行われず,死体の外面所見と申立人の申告供述等から死亡時期を推定したもので,発症から死亡,死亡から検案までの各経過時間についての厳密な検討がなされているとは認め難い。申立人宅の隣室Rの「当夜午後10時ころ就寝したが,その30分前あたりにガス臭が強くしたので,屋内のガス洩れがないか点検した」旨の証言(確定判決審第14回公判)を併せ検討しても,監察医が推定した前記死亡時期は,相当に幅のあるものと理解される。 (3) 次に,Aの死体の血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度(飽和度)が80パーセントと報告されたことについて検討する。 前記東京都監察医務院長の回答書と監察医Qの司法警察員調書(確定判決審記録449の2738丁)によれば,Aの死体の心臓血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は,80パーセントであったと報告されている。 しかし,控訴審の鑑定人兼証人Eの供述するところによれば(第21回公判),同人は,昭和31年S医学部法医学教室の講師になり,昭和54年N法医学教室助教授に転じ,昭和59年以来,O医学部法医学教室教授の職にある傍ら,昭和31年夏から証言当時(昭和60年4月)に至るまで,警視庁の鑑識課の嘱託をしている者であるが,本件当時,血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の検定に関しては,ガスクロマトグラフィーを用いる方法が開発される以前であって,東京都監察医務院で行われていたのは,秋谷・谷村法であったかと思うが,この手法は精度に問題があり,その検定結果は明確な数値で表されるけれども,それを絶対的な数値として受け止めるのは危険であるというのである。したがって,この80パーセントという数値も,その かと思うが,この手法は精度に問題があり,その検定結果は明確な数値で表されるけれども,それを絶対的な数値として受け止めるのは危険であるというのである。したがって,この80パーセントという数値も,そのまま所与の数値として受け止めるのは相当ではないことが明らかである。 (三) そこで次に,申立人提出のD新鑑定書が信頼に値するとして依拠する,ガス中毒に関するI鑑定,K鑑定の各結果の精度について検討を加える。 (1) まず,第1の2掲記の①I鑑定が行った,本件現場4畳半に敷かれた布団の上で就寝中のAが,6畳間のガス栓から引き込まれた都市ガスを吸引してガス中毒死に至ったとされるまでの,時間経過に伴う吸気中の一酸化炭素濃度の再現シミュレーションにより得られたデータについて検討する。 I鑑定は,控訴審において,検察官と弁護人双方が了解し,裁判所が指定した要領に従って,本件Fをそのまま用いて,本件当時供給されていた都市ガスとほぼ同じ比重の不活性ガスを6畳間のガス栓からホースを通して4畳半に放出して,時間の経過に伴って変化する室内のガス濃度を,Aが就寝していてガス中毒死した位置付近で測定する実験を行い,本件当時供給されていた都市ガス中の一酸化炭素の月間平均濃度である4.9パーセントの一酸化炭素がそのガスに含有されていたとして,吸気中の一酸化炭素濃度を算出しているのである。 同鑑定の実験は,事件当時の状況と可及的に合致するよう慎重に諸条件を設定して実施されたものと認められるが,もともと事件当時の状況を細部にわたり厳密に確定することは困難であって,事件当時の状況を再現することには自ずから限界が存するのであり,したがって,実験結果に基づき算出された一酸化炭素濃度の数値と事件当時の実際値との間に,ある程度の誤差が見込まれることは,避け難いものといわなければならな することには自ずから限界が存するのであり,したがって,実験結果に基づき算出された一酸化炭素濃度の数値と事件当時の実際値との間に,ある程度の誤差が見込まれることは,避け難いものといわなければならない。 (2) 次に,第1の2掲記の②K鑑定は,I鑑定が算出したデータを用いて,Aの吸気中の一酸化炭素濃度が次第に上昇していく曝露状況の再現を試み,人の代替として家兎を使って生体実験を行った上で,家兎の血液と人血との一酸化炭素に対する親和性の比較試験の結果を用いて,家兎の血液で得たデータを人血の場合に置換し,人血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が,本件Aの場合がそうであったように,死亡時80パーセントに達するのに要する時間を算出したところ,6畳間のガス栓を下部閉じ[全開]にした場合は,ガス放出開始から27分程度を要し,上下開[半開]の場合は81分ないし91分程度を要する旨のデータを得たというのである。 このK鑑定は,まず,ある程度の誤差が見込まれるI鑑定算出のデータを適用している点で,鑑定結果に相応の誤差が生じることは不可避であるといわなければならない。さらに,K鑑定は,家兎と人の各血液中のヘモグロビン含有率が近似していることに着目し,両者の血液の一酸化炭素に対する親和性の比較試験の結果を用いて,家兎の血液で得たデータを人血の場合に置換するという操作を行っているのであるが,比較試験のデータは試験管内において行った,血液の一酸化炭素に対する曝露実験の結果得られたものに過ぎず,生体内における実際の数値がこれと同一とはいえないことは,K鑑定人自身がその証言で認めるところであり(控訴審第18回公判),第1の2掲記のE鑑定人の証言(控訴審第20回公判)も併せ見ると,家兎と人とは,呼吸生理,血液循環,臓器組織への酸素供給などで大きな差異があるのに,これらの点を るところであり(控訴審第18回公判),第1の2掲記のE鑑定人の証言(控訴審第20回公判)も併せ見ると,家兎と人とは,呼吸生理,血液循環,臓器組織への酸素供給などで大きな差異があるのに,これらの点を全く考慮に入れないで,前記データ置換の操作を行ったK鑑定には,大きな欠陥があるといわざるを得ない。加えて,Aの死体の血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度80パーセントという検査数値についても,誤差を見込まなければならないことは,上記(二)(3)で見たとおりである。 以上によれば,K鑑定によって得られた,人血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度が80パーセントに達するのに要する時間に関するデータが,Aの死亡時の実際値との間で,大きな誤差を内包することは,容易に察せられるというべきである。 (四) 申立人は,先に見たとおり,申立人の外出時期が当日午後6時半ころであり,Aの推定死亡時期が午後9時ころであることを,証拠上明白な所与の事実とした上で,D新鑑定書と第1の2掲記の③D鑑定の結論を援用し,これにE回答書を併せて,同掲記の④E鑑定の結果が取るに足りないものであることが明らかであるとして,Aは,申立人が午後6時半ころ外出した後に,自らガス栓を下部閉じ[全開]で開放して自殺を企図し,ガス放出から30分弱の経過で死亡したもので,申立人が殺害したものではないと主張する。 検討するに,このD新鑑定書と第1の2掲記の③D鑑定とを併せ見ると,D鑑定人は,前記I鑑定の鑑定結果で得られたデータに依拠して前記K鑑定が算出したデータを信頼すべきものと承認した上で,本件の場合,6畳間のガス栓が下部閉じ[全開]で開放され,Aはその放出されたガスに曝露され,30分弱のうちに一酸化炭素中毒により死亡したと結論するのである。 しかしながら,上記(三)で検討したとおり,I鑑定で得られたデータ が下部閉じ[全開]で開放され,Aはその放出されたガスに曝露され,30分弱のうちに一酸化炭素中毒により死亡したと結論するのである。 しかしながら,上記(三)で検討したとおり,I鑑定で得られたデータにある程度の誤差が見込まれる上に,更に,これを用いたK鑑定は,家兎と人,両者の間に呼吸生理,血液循環,臓器組織への酸素供給機能などの面で大きな差異が存することを全く考慮しないまま,ただ試験管の中で行った一酸化炭素に対する血液の親和性の比較試験で得たデータに依拠して,家兎による生体実験の結果データを人の場合に置換し,本件においてAがガス中毒死する経過時間を推測するという,鑑定手法自体に内在する欠陥のゆえに,その立証命題との関連で有意性を評価するにつき,看過することのできない誤差があることは明らかである。 したがって,両鑑定のデータを信頼すべきものと承認した上で,上記結論を導き出したD鑑定及びD新鑑定書の判定結果には,多大の疑問があるといわなければならない。 しかも,上記(二)(1),(2)で見たように,申立人がF6畳間のガス栓を開放してガスを放出した時期ないしその後外出してPへ向かった時期,Aが死亡したと推定される時期は,いずれも証拠上相当の幅を持たせた認定にならざるを得ないのである。 これらの事情を併せ考慮すると,D新鑑定書及びD鑑定は,「6畳間のガス栓を開放して,ガスを4畳半に放出し,同所で就寝していたAを殺害した」旨の申立人の捜査段階の自白の信用性を動揺させるものではないことは,明らかというべきである。 なお,E回答書は,第1の2掲記の④E鑑定につき,その用いたMayのグラフが厳密なものでないことや,生体内における呼吸促進等の諸要因の相乗作用を考慮していないことなどからして,そこで示した数値は大きな幅を伴うものであることを認める内容のもの つき,その用いたMayのグラフが厳密なものでないことや,生体内における呼吸促進等の諸要因の相乗作用を考慮していないことなどからして,そこで示した数値は大きな幅を伴うものであることを認める内容のものであるが,もともとE鑑定人は,控訴審の証言(第20回公判)において,Mayのグラフの適用には限界があることなどを自認し,その上で,I鑑定に示された一酸化炭素濃度の空気中に曝露された場合の人が死亡に至る時間を大まかに算出した旨述べているのであって,E鑑定の算出した数値が相当広い幅を持つことは,E回答書によるまでもなく,明らかというべきである。したがって,E回答書及びE鑑定が,前記申立人の自白の信用性を揺るがすものではないことも,また明らかである。 〈要旨〉  このように検討してくると,本件殺害時のガス栓の開放が,申立人提出のD新鑑定書の判定どおりに下部閉じ[全開]で行われたことを前提に,D新鑑定書とE回答書を,その立証命題であるガス放出時期とAの死亡時期との関係,換言すればAが一酸化炭素ガスに曝露されてから死亡するまでの経過時間に関連する,確定判決審で取り調べられた証拠及び控訴審で取り調べられた証拠と併せて,確定判決審の立場において総合的に評価しても,その結果,申立人が自宅を外出した後に,Aがガス栓を開放した疑いが生じるとは言い難く,申立人提出の前記両証拠は,「Fから外出してPへ向かう前に,6畳間のガス栓を開放してガスを4畳半に放出し,同所で就寝していたAを殺害した」旨の申立人の捜査段階における自白の信用性とこの自白を支える関係証拠の評価を動揺させ,延いては,確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠であるとは,到底認められないのであり,刑訴法435条6号所定の明白な証拠とはいえない。〈/要旨〉 4 審理不尽 ては,確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせ,その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠であるとは,到底認められないのであり,刑訴法435条6号所定の明白な証拠とはいえない。〈/要旨〉 4 審理不尽の主張の検討所論は,原審が再審請求に関する事実の取調べとして,申立人の求めるD,E,Kの各証人調べを行わなかったのは,審理不尽であると主張する。 しかしながら,D,E,K各鑑定人の鑑定結果は,先に検討したとおりであって,再審請求手続において,更にこれらの鑑定人の証人調べを行っても,その結果が,Aを殺害した旨の申立人の自白の信用性とこれを支える関係証拠の評価の動揺に連なるとは考え難く,原審が,再審請求審として所論の証拠調べを行わなかったことに,審理不尽の廉はない。 5 結論以上の次第で,所論にかんがみ原決定を検討するに,新証拠の明白性の評価判断の仕方に不適切な点のあることは,先に見たとおりであるが,申立人が提出援用する証拠の明白性を否定して本件再審請求を棄却した原決定の判断は,その結論において相当であり,記録を検討しても,他に違法不当の廉はなく,結局,本件即時抗告は理由がないことに帰するから,刑訴法426条1項後段により棄却することとし,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官高木俊夫裁判官飯田喜信裁判官高麗邦彦)

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