令和7年3月13日宣告令和6年(わ)第373号、第498号殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 京都地方検察庁で保管中のサバイバルナイフ1本(令和6年領第1167号符号11)、脇差1振(鞘付き)(同年領第1238号符号2- 1)及び刀身の破片1点(同領号符号4)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、京都市内のクリーンセンターにおいて業務に従事していたものであるが、令和5年11月15日の勤務時間中に職場の同僚であるAから注意を 受けたことなどで怒りの感情を募らせ、同月16日午前7時48分頃、京都市a 区b 番地所在の前記クリーンセンタープラットホーム出口前において、同人(当時65歳)に対し、殺意をもって、その左腹部を右手に持ったサバイバルナイフ(刃体の長さ約25センチメートル。京都地方検察庁令和6年領第1167号符号11)で1回突き刺したが、同人が逃げたことで、同人に91日間 の入院加療を含む約9か月間の加療を必要とする見込みの腹部刺傷、腸管損傷、膵尾部損傷、左腎上極損傷、腎動静脈損傷、後腹膜膿瘍等の傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった。 第2 被告人は、業務その他正当な理由による場合でないのに、前記第1記載の日時場所において、前記サバイバルナイフ1本を携帯した。 第3 被告人は、法定の除外事由がないのに、同日、前記クリーンセンター1階控 室において、刀剣類である刃渡り約46.2センチメートルの脇差1振(鞘付き)(京都地方検察庁令和6年領第1238号符号2-1はその刀身から鑑定のために破片2個が切り取られ リーンセンター1階控 室において、刀剣類である刃渡り約46.2センチメートルの脇差1振(鞘付き)(京都地方検察庁令和6年領第1238号符号2-1はその刀身から鑑定のために破片2個が切り取られたものであり、同領号符号4は前記破片2個のうち鑑定のために費消された残りの1 個)を所持した。 (証拠) 省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、被告人が、同僚である被害者の左腹部をサバイバルナイフで突き刺し て殺害しようとしたものの、被害者が逃げたことで傷害を負わせたにとどまったという殺人未遂(第1の事案)と前記サバイバルナイフを携帯した銃砲刀剣類所持等取締法違反(第2の事案)のほか、許可等なく刀剣類である脇差1振を所持した同法違反(第3の事案)からなる事案である。 2 まず、量刑判断の中心となる殺人未遂(サバイバルナイフの携帯を含む。)の犯 罪行為そのものに関する事情(犯情)につき検討する。 (1) 被告人は、刃体の長さが約25センチメートルもあるサバイバルナイフでいきなり被害者の左腹部を1回突き刺したものであり、その後に追撃行為には及んではいないものの、殺傷能力の高いナイフを身に着けて被害者に会いに行っていることやナイフが約22センチメートルの深さまで刺さるほどの力で突き 刺していることなどからすれば、強い殺意に基づく相当に危険で悪質な態様であったというべきである。現に、被害者は91日間の入院を含む加療見込み約9か月間の腹部刺傷等の傷害を負い、多量の出血や腎臓の一つを摘出するまでに至っているのであって、死亡する現実的な危険があるほどの重大な結果が生じている。 (2) 被告人は、本件の前日、被害者から、終業時刻を告げるチャイムが鳴るまで 持ち場にいてもらう必要がある いるのであって、死亡する現実的な危険があるほどの重大な結果が生じている。 (2) 被告人は、本件の前日、被害者から、終業時刻を告げるチャイムが鳴るまで 持ち場にいてもらう必要がある旨の職務上の注意を受けたことなどで被害者に対する怒りの感情を募らせて本件犯行に及んだものと認められるところ、このような身勝手で理不尽な動機・経緯に酌むべき点はないし、仮に、被告人の強迫性パーソナリティ症に近い傾向が本件犯行に影響を与えたとしても、責任非難を減少させるような事情とは評価し得ず、被告人の意思決定は厳しい非難に 値する。 もとより、被害者にはこのような被害にあわなければならないような落ち度は認められないのであって、被害者の処罰感情が厳しいのも頷けるところである。 (3) 以上のほか、被告人が許可等なく脇差を所持するという銃砲刀剣類所持等取 締法違反の事案を犯していることも併せ考慮した上で、同種事案(量刑上考慮すべき前科のない被告人単独による知人、友人又は勤務先関係者に対する殺人未遂1件で傷害の程度が1年以内であり、他に主要な罪のない事案)等の量刑傾向を踏まえて検討すると、本件は、犯行態様が執拗な事案ほどの悪質さは認められず、殊更に重い部類に属するとまではいえないものの、被害結果の重大 さや責任非難の程度からすれば、前記量刑傾向の中では重い部類に属するといえる。 3 以上を前提に、被告人が事実を認めて反省の弁を述べるとともに、被害者に対して謝罪し、損害の一部弁償金として300万円を支払っていること、被告人の妹が当公判廷に出廷して被告人の監督を誓約していること、被告人が懲戒 免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けたといえること、前科もなく、これまでそれなりにまじめな社会生活を送ってきていたことなどの一般情 出廷して被告人の監督を誓約していること、被告人が懲戒免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けたといえること、前科もなく、これまでそれなりにまじめな社会生活を送ってきていたことなどの一般情状も考慮して、主文の刑を科すのが相当であると判断した。よって、主文のとおり判決する。(求刑:懲役9年、主文同旨の没収) 令和7年3月13日 京都地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官 川上宏 裁判官 檀上信介 裁判官 中谷洸
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