昭和41(オ)436 建物明渡等請求

裁判年月日・裁判所
昭和45年10月21日 最高裁判所大法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所 昭和38(ネ)1454
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【DRY-RUN】主    文      原判決中、上告人の控訴を棄却した部分を破棄し、第一審判決中、上告 人の反訴請求を棄却した部分を取り消す。      被上告人は、上告人に対し、別紙目録記載の建物につき所有権移転

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判決文本文2,835 文字)

主    文      原判決中、上告人の控訴を棄却した部分を破棄し、第一審判決中、上告 人の反訴請求を棄却した部分を取り消す。      被上告人は、上告人に対し、別紙目録記載の建物につき所有権移転登記 手続をせよ。      訴訟費用は、第一、二、三審を通じ、被上告人の負担とする。          理    由  上告代理人堀川多門の上告理由について。  原判決によれば、原審は、被上告人は、別紙目録記載の建物(以下、本件建物と いう。)を新築してその所有権を取得した後、昭和二九年八月これを上告人に贈与 し、当時未登記であつた右建物を同人に引き渡したが、右贈与は、被上告人がその 妾である上告人との間に原判決判示のような不倫の関係を継続する目的で上告人に 住居を与えその希望する理髪業を営ませるために行なつたもので、上告人も被上告 人のかような意図を察知しながらその贈与を受けたものであるとの事実を認定し、 右贈与は公の秩序または善良の風俗に反するものとして無効であり、また、被上告 人が、右贈与の履行行為として、本件建物を上告人に引き渡したことは、いわゆる 不法原因給付に当たると判断しているのである。原審の右事実認定は、原判決の挙 示する証拠関係に照らし、首肯できないものではなく、原審の認定した右事実関係 のもとにおいては、右贈与は公序良俗に反し無効であり、また、右建物の引渡しは 不法の原因に基づくものというのを相当とするのみならず、本件贈与の目的である 建物は未登記のものであつて、その引渡しにより贈与者の債務は履行を完了したも のと解されるから、右引渡しが民法七〇八条本文にいわゆる給付に当たる旨の原審 の前示判断も、正当として是認することができる。  そして、右のように、本件建物を目的としてなされた被上告人上告人間の右贈与 - 1 - が公序良俗に反し無効である場合には、本 ゆる給付に当たる旨の原審 の前示判断も、正当として是認することができる。  そして、右のように、本件建物を目的としてなされた被上告人上告人間の右贈与 - 1 - が公序良俗に反し無効である場合には、本件建物の所有権は、右贈与によつては上 告人に移転しないものと解すべきである。いわゆる物権行為の相対的無因性を前提 とする所論は、独自の見解であつて、採用することができない。  しかしながら、前述のように右贈与が無効であり、したがつて、右贈与による所 有権の移転は認められない場合であつても、被上告人がした該贈与に基づく履行行 為が民法七〇八条本文にいわゆる不法原因給付に当たるときは、本件建物の所有権 は上告人に帰属するにいたつたものと解するのが相当である。けだし、同条は、み ずから反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求すること を許さない趣旨を規定したものと認められるから、給付者は、不当利得に基づく返 還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを 理由として、給付した物の返還を請求することも許されない筋合であるというべき である。かように、贈与者において給付した物の返還を請求できなくなつたときは、 その反射的効果として、目的物の所有権は贈与者の手を離れて受贈者に帰属するに いたつたものと解するのが、最も事柄の実質に適合し、かつ、法律関係を明確なら しめる所以と考えられるからである。  ところで、原判決によれば、被上告人は、本件建物について昭和三一年一一月一 〇日附で同人名義の所有権保存登記を経由したのであるが、右登記は、被上告人が 本件建物の所有権を有しないにもかかわらず、上告人らに対する右建物の明渡請求 訴訟を自己に有利に導くため経由したもので、もともと実体関係に符合しない無効 な登記といわなければならず、本件においては他にこ 本件建物の所有権を有しないにもかかわらず、上告人らに対する右建物の明渡請求 訴訟を自己に有利に導くため経由したもので、もともと実体関係に符合しない無効 な登記といわなければならず、本件においては他にこれを有効と解すべき事情はな い。そして、前述のように、不法原因給付の効果として本件未登記建物の所有権が 上告人に帰属したことが認められる以上、上告人が被上告人に対しその所有権に基 づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を求めることは、不動産物権に関する法制 の建前からいつて許されるものと解すべきであつてこれを拒否すべき理由は何ら存 - 2 - しない。そうとすれば、本件不動産の権利関係を実体に符合させるため、上告人が 右保存登記の抹消を得たうえ、改めて自己の名で保存登記手続をすることに代え、 被上告人に対し所有権移転登記手続を求める本件反訴請求は、正当として認容すべ きものである。原判決が、本件贈与は公序良俗に反するものとして無効であるから、 右贈与が有効であることを前提とする上告人の反訴請求は失当である旨判示したの みで、右請求を棄却したのは違法であり、論旨は、理由があるに帰する。  よつて、原判決中、上告人の控訴を棄却した部分を破棄し、第一審判決中、上告 人の反訴請求を棄却した部分を取り消し、上告人の右請求を認容すべきものとし、 民訴法四〇八条一号、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり 判決する。  裁判官松田二郎は、退官につき評議に関与しない。      最高裁判所大法廷          裁判長裁判官    石   田   和   外             裁判官    入   江   俊   郎             裁判官    草   鹿   浅 之 介             裁判官    長   部   謹   吾               裁判官    入   江   俊   郎             裁判官    草   鹿   浅 之 介             裁判官    長   部   謹   吾             裁判官    城   戸   芳   彦             裁判官    田   中   二   郎             裁判官    岩   田       誠             裁判官    下   村   三   郎             裁判官    色   川   幸 太 郎             裁判官    大   隅   健 一 郎             裁判官    松   本   正   雄             裁判官    飯   村   義   美 - 3 -             裁判官    村   上   朝   一             裁判官    関   根   小   郷 - 4 -

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