平成24(ワ)25935 補償金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年3月18日 東京地方裁判所
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判決文本文49,324 文字)

平成27年3月18日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第25935号補償金請求事件口頭弁論終結日平成26年12月1日判決東京都江戸川区<以下略>原告 A(以下「原告A」という。)東京都中央区<以下略>原告 B(以下「原告B」という。)上記両名訴訟代理人弁護士椙山敬士同曽根 翼同片山史英東京都千代田区<以下略>被告日本ゼオン株式会社同訴訟代理人弁護士日下部真治同岩瀬吉和同深津 健同訴訟復代理人弁護士別府里紗同後藤未来同補佐人弁理士重森一輝 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,1億円及びこれに対する平成24年3月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,1億円及びこれに対する平成24年3月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告の従業員であった原告らが,被告に対し,被告の保有又は出願に係る別紙発明目録記載1ないし4の日本国特許又は日本国特許出願における特許請求の範囲記載の各発明(以下,同目録記載の番号に対応して「本件発明1」などという。ただし,複数の請求項があるものについて,そのうちの一つの請求項に いし4の日本国特許又は日本国特許出願における特許請求の範囲記載の各発明(以下,同目録記載の番号に対応して「本件発明1」などという。ただし,複数の請求項があるものについて,そのうちの一つの請求項に記載された発明のみをいうときは,当該請求項の番号に対応して枝番を付ける。また,本件発明1ないし4を併せて「本件各発明」ということがある。),及び,別紙外国特許発明目録記載の外国特許(原告らが本件発明1及び3,本件発明2,又は本件発明4を基礎としたものである旨主張する外国特許)の請求項に係る各発明に関し,原告Aは本件発明1ないし3の共同発明者,本件発明4の単独発明者(少なくとも,共同発明者)であり,原告Bは本件発明1ないし3の共同発明者であるとして,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項及び4項(以下,同条について「特許法」という場合,同改正前の特許法をいう。)並びに同条3項及び4項の類推適用に基づき,原告Aについては本件各発明についての日本及び外国における特許を受ける権利を被告が承継したことの相当の対価として算定した19億4440万円の一部である1億円及びこれに対する請求の日の翌日である平成24年3月22日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告Bについては本件発明1ないし3についての日本及び外国における特許を受ける権利を承継したことの相当の対価として算定した10億6950万円の一部である1億円及びこれに対する同日から支払済みまでの上記割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 2 前提事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者ア原告Aは,昭和55年4月に被告に入社し,平成17年7月31日に退社するまでの間,被告の研究所において化学品事業に係 提事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者ア原告Aは,昭和55年4月に被告に入社し,平成17年7月31日に退社するまでの間,被告の研究所において化学品事業に係る研究開発(香料,医農薬中間体,フッ素系化学品等の新製品開発や新製造法,コストダウン研究等)に従事しており,入社14年目からは,研究室長を務めていた。 イ原告Bは,昭和46年4月に被告に入社し,平成3年までは被告の研究開発センターにおいて有機合成技術を活用した新製品の開発に,同年以降は被告の本社において新事業の開発に従事した後,平成17年2月28日に退職した。 ウ被告は,化学工業製品の製造,加工及び販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件発明1ないし3に係る出願の経過等被告は,他の出願人(工業技術院長,財団法人機械システム振興協会,社団法人日本電子機械工業会〔以下「EIAJ」という。〕)と共に,平成8年10月30日にした各特許出願(特願平8-305818,特願平8-305819,特願平8-305820)に基づく優先権をそれぞれ主張して,平成9年10月30日,発明者をC(以下「C」という。),原告A,原告B及びD(以下「D」という。)として,本件発明1ないし3に係る各特許出願(特願平9-312906,特願平9-312907,特願平9-312908)をし,下記アに記載のとおり,本件発明1に係る出願については特許権の設定登録(以下,外国における類似の手続を含め,「特許登録」という。)に至ったが,下記イ及びウに記載のとおり,本件発明2及び3に係る各出願については,審査官から拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判を請求した後,平成19年8月10日にいずれの審判請求も取り下げたことにより,同査定が確定した(甲1~3,32~39,乙4,6, び3に係る各出願については,審査官から拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判を請求した後,平成19年8月10日にいずれの審判請求も取り下げたことにより,同査定が確定した(甲1~3,32~39,乙4,6,7,9, 10)。 ア本件発明1に係る出願(甲1,32~35,乙4)出願公開平成10年7月21日拒絶理由通知平成17年4月26日(発送日)意見書提出平成17年6月27日手続補正書提出平成17年6月27日拒絶査定平成18年4月17日(起案日)審判請求平成18年5月25日手続補正書提出平成18年6月22日特許審決平成20年10月2日特許登録平成20年11月14日イ本件発明2に係る出願(甲2,36,37,乙6)出願公開平成10年7月31日拒絶理由通知平成17年4月26日(発送日)意見書提出平成17年6月27日手続補正書提出平成17年6月27日拒絶査定平成18年4月17日(起案日)審判請求平成18年5月25日手続補正書提出平成18年6月22日請求取下げ平成19年8月10日ウ本件発明3に係る出願(甲3,38,39,乙7,9,10)出願公開平成10年7月31日拒絶理由通知平成17年5月24日(発送日)意見書提出平成17年7月25日手続補正書提出平成17年7月25日拒絶査定平成18年4月17日(起案日) 審判請求平成18年5月25日手続補正書提出平成18年6月22日請求取下げ平成19年8月10日(3) 本件発明4に係る出願の経過等被告は,平成11年5月24日,発明者をE(以下「E」という。),原告A,F(以下「 補正書提出平成18年6月22日請求取下げ平成19年8月10日(3) 本件発明4に係る出願の経過等被告は,平成11年5月24日,発明者をE(以下「E」という。),原告A,F(以下「F」という。)及びG(以下「G」という。)として,本件発明4に係る特許出願(特願平11-143562)を行い,特許登録を得た。本件発明4に係る出願の経過は,概ね以下のとおりである(甲4,40~44,乙13,弁論の全趣旨)。 出願公開平成12年11月30日拒絶理由通知平成20年7月16日(発送日)意見書提出平成20年8月29日拒絶査定平成21年6月11日(起案日)審判請求平成21年9月10日(提出日)手続補正書提出平成21年9月10日特許査定平成22年3月3日(起案日)特許登録平成22年4月16日(4) 半導体製造におけるドライエッチングア半導体の製造過程においては,回路パターンをシリコンウエハー(シリコンの薄い膜。実際は,シリコン表面にシリコン酸化膜,シリコン膜,シリコン窒化膜などが積層されている。)上に形成する必要があり,その形成技術は主にリソグラフィー技術とエッチング技術からなる。 イリソグラフィー技術とは,シリコンウエハー表面に感光性樹脂(レジスト)を塗布した後,レジスト表面に回路パターンを露光することにより,露光した部分だけを硬化させ,回路パターン状のレジスト膜を形成するものである。なお,レジストには露光した部分のみが硬化するもの(ネガ 型)のほかに,露光した部分のみを落とすことができるもの(ポジ型)も存在する。 ウエッチング技術とは,回路パターンが形成されたレジスト膜をマスクとして,レジスト膜に覆われていない部分において,シリコンウエハー 露光した部分のみを落とすことができるもの(ポジ型)も存在する。 ウエッチング技術とは,回路パターンが形成されたレジスト膜をマスクとして,レジスト膜に覆われていない部分において,シリコンウエハー上に堆積されたシリコン酸化膜などの薄膜を除去し,回路パターンを形成するものである。シリコン酸化膜などを除去する方法として,反応性の気体(ガス)やイオンをプラズマ化させて用いるものを「ドライエッチング」,液体を用いるものを「ウェットエッチング」という。 エ集積度の高い半導体を製造する場合,エッチング速度が速いこと,シリコン酸化膜とシリコン窒化膜のエッチング選択性(シリコン酸化膜だけを除去すること。)が高いこと,エッチングの方向安定性(除去した穴の入口側(レジスト膜側)の大きさと,底側(シリコン窒化膜側)の大きさが近いこと。)が高いことは,エッチング性能を決める上での重要な要素である。 (5) 被告の従業員発明取扱規程被告の従業員発明取扱規程には,以下の規定がある(乙24)。 ア●(省略)●イ●(省略)●(6) ゼオローラの販売被告は,平成10年から,ドライエッチングガス製品であるゼオローラZFL-58(以下「本件製品」という。)を製造,販売している。本件製品の主成分はオクタフルオロシクロペンテン(C5F8)である。 3 争点(1) 原告らは本件発明1ないし3の共同発明者といえるか,原告Aは本件発明4の単独発明者又は共同発明者といえるか(2) 特許を受ける権利の譲渡の相当の対価の額 ア本件各発明に係る被告の独占の利益の有無イ本件各発明に対する被告の貢献度ウ本件発明4に対する原告Aの貢献エ相当対価額の算定 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(原告らは本件発明1ないし3の共同発明 益の有無イ本件各発明に対する被告の貢献度ウ本件発明4に対する原告Aの貢献エ相当対価額の算定 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(原告らは本件発明1ないし3の共同発明者といえるか,原告Aは本件発明4の単独発明者又は共同発明者といえるか)について(原告らの主張)ア本件発明1ないし3について本件発明1ないし3は,以下の経緯のとおり,いずれも原告らと工業技術院化学技術研究所(以下「化学技術研究所」という。)のCが協力して発明したものである。 (ア) フッ素化の考案及びフッ素化技術の導入本件発明1ないし3は,原告らが,昭和63年頃,オゾン層破壊物質であるフロン類の規制開始に対し,被告の独自原料であるシクロペンタンにフッ素を導入してフロン代替物質として事業化することを考えたことに端を発している。被告には,従来全くフッ素化学の知識,経験,技術がなかったことから,原告らは,この事業化に当たり,危険性の高い特殊な技術であるフッ素化技術についてCから技術指導を受け,同時にCと共同研究を進めてきた。特に,原告Aは,平成元年9月から平成2年6月までの間の平日,化学技術研究所にてフッ素化学を習得した。 (イ) フッ素化技術に関する研究原告らは,共同研究の過程で,シクロペンタンの10個の水素のうち5~8個をフッ素原子に置き換えたものが洗浄用溶剤として使用できること,特に洗浄用溶剤としての沸点範囲等を考慮すれば7個か8個が適していることを見出した上,その製造方法についても,シクロペンタン を原料としてその水素原子をフッ素原子で置き換える方法よりも,フッ素化合物(C5F8)を原料として水素化する方法の方が,単一物質の製品を製造するという観点から優れているとの知見を得たものである。 また,原告Aは,費用削減 子をフッ素原子で置き換える方法よりも,フッ素化合物(C5F8)を原料として水素化する方法の方が,単一物質の製品を製造するという観点から優れているとの知見を得たものである。 また,原告Aは,費用削減の観点から,原料となるC5F8の製造方法についても研究を進め,ヘキサクロロシクロペンタジエン(C5Cl6)の塩素原子をフッ素原子に置換する方法を改良する発明も行った。 一方で,被告は,平成8年度までの間,フッ素化技術の研究に人員を割いておらず,原告Aが中心となり研究を行っていたものである。原告らとCとの共同研究の中には,地球環境影響評価,特に地球温暖化能の明確化も含まれており,この研究において,原告らは,Cの指導の下,オクタフルオロシクロペンタン,オクタフルオロシクロペンテン,ヘプタフルオロシクロペンタン等の物質につき,温暖化に関する知見を得ることができた。 (ウ) ドライエッチングガスへの適用原告らがCの指導を受け始めた平成元年当時,高密度プラズマエッチング業界においては,ドライエッチングガスであるパーフルオロカーボン(C4F8等)が,地球温暖化能が非常に大きいことを理由に近年使用できなくなると見込まれていた。そこで,EIAJはエッチングガス代替ガス探索プロジェクトを立ち上げた。原告らは,Cとの共同研究により,C5F8が上記プロジェクトの目的である「低温暖化物質」に該当するとの成果を得ており,エッチング評価をするために十分な純度のC5F8サンプルを確保していたことから,C5F8等をEIAJにサンプルとして提出した。そして,上記プロジェクトの主要半導体製造装置メーカーの性能評価実験により,C5F8は地球温暖化能が低いだけでなく,当時ドライエッチングガスとして最も優れているとされていたC4F8よりも,エッチング速度,選択性ともに優れてい 要半導体製造装置メーカーの性能評価実験により,C5F8は地球温暖化能が低いだけでなく,当時ドライエッチングガスとして最も優れているとされていたC4F8よりも,エッチング速度,選択性ともに優れていると評価され た。 (エ) 特許化の検討原告らは,関係団体と調整し,本件発明1ないし3につき特許出願の手続を行った。原告らは,出願手続をするに当たり,他社の特許を検討することで,C5F8によるドライエッチングが,①特別に冷却装置を強化することなく被エッチング基体の到達温度が60℃以上という高温の条件においてエッチング性能と生産性が高いこと,②C5F8は酸素あるいは酸素原子を含む新規な組合せにより高いエッチング性能を発揮できること,③高密度プラズマによるエッチングを行うことで実現されることを見出し,この知見を本件発明1ないし3に具現化した。 (オ) 以上によれば,本件発明1ないし3は原告らとCとの長年の研究の成果として生み出されたものであり,EIAJは一定の条件を設定してサンプルの性能を比較し,データを得たにすぎない。また,本件発明1ないし3の共同発明者として記載のあるEIAJのDは,実際には発明に関与していない。 イ本件発明4について本件発明4は,ドライエッチングガス用オクタフルオロシクロペンテンについて,その純度や品質面に着目して出願された特許発明であり,以下のとおり,原告Aが単独で考案したものである。 (ア) 原告Aによる考案と発見プラズマ反応用ガスは,最終的に酸素ガスや窒素ガスと併用して用いられることから,当業者において,既に高純度化されたオクタフルオロシクロペンテンの残余ガス中の酸素ガスや窒素ガスを高度にコントロールしようと考えることはなかったところ,原告Aは,オクタフルオロシクロペンテンの精製工程や分析 いて,既に高純度化されたオクタフルオロシクロペンテンの残余ガス中の酸素ガスや窒素ガスを高度にコントロールしようと考えることはなかったところ,原告Aは,オクタフルオロシクロペンテンの精製工程や分析工程の検証を通じて,液状のオクタフルオロシクロペンテンには酸素や窒素が大量に溶解することに気が付き, これを踏まえて精製方法や製品の分析方法を改善し,プラズマ反応用ガスの残余の不純物のうち,酸素ガスや窒素ガスの合計量を制限することにより,安定したドライエッチング反応やCVDが実現されることを発見したものである。すなわち,本件発明4の本質的特徴は,プラズマ反応用ガスを単に高純度にすることではなく,経時的に混在量が変化していた酸素ガス及び窒素ガスの容量を制限することにあり,外部からもたらされた純度や規格に関わる情報から着想を得たものではない。そして,原告Aは,純度を99.9%,窒素ガスと酸素ガス及び窒素ガスの合計量を200ppm以下というように,安定したエッチングが行えるしきい値を規定することで,物質の特性を切り出し,権利範囲の広い物質発明を完成させたものである。 (イ) 原告Aによる他の従業員への指示本件発明4の着想に至るには,オクタフルオロシクロペンテンに混在する酸素及び窒素を正確に把握するため,その分析方法を確立する必要があったところ,原告Aは,平成10年12月,L(以下「L」という。)らに向けて,研究室の態勢をオクタフルオロシクロペンテンに混在する酸素及び窒素の分析方法の確立とC5F8に対する窒素等の溶解性の研究に重点化することを,また,安全性試験等の業務を担当していたEには,被告において酸素,窒素の分析ができるようにすること,及び酸素,窒素の除去方法の確立をF及びGらに分担させることを指示した。さらに,原告Aは,Eに を,また,安全性試験等の業務を担当していたEには,被告において酸素,窒素の分析ができるようにすること,及び酸素,窒素の除去方法の確立をF及びGらに分担させることを指示した。さらに,原告Aは,Eに対し,ガスクロマト装置を用いた窒素分析法,並びに炊き上げによる方法及びそれ以外の窒素等の除去方法についても分担して検討するよう具体的に指示し,その結果得られた窒素ガスや酸素ガスの容量を制限する具体的方法を提示したものである。 (ウ) 以上によれば,原告Aは,本件発明4の本質的特徴を着想し,それを具現化したのであるから,本件発明4の唯一の発明者であり,E,F 及びGは,原告Aの具体的な指示に従って実験を行い,原告Aが本件発明4の明細書案を作成する際に補助的役割を担った者にすぎないから,本件発明4の発明者であるとはいえない。 なお,仮に,原告Aが本件発明4の単独発明者であるとはいえないとしても,共同発明者であることは明らかである。 (被告の主張)ア本件発明1ないし3について(ア) 本件発明1ないし3の特徴的部分本件発明1の特徴的部分は,外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却せず,60℃~250℃という条件でエッチングを行う点,本件発明2の特徴的部分は,パーフルオロシクロオレフィンを含むドライエッチングガス組成物中に1~40モル%の酸素成分を含有させる点,本件発明3の特徴的部分は,高密度領域のプラズマを用いること,及び特定量の「酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガス」を含有させる点にある。 (イ) 原告らは上記特徴的部分に係る着想,実験等を行っていない本件発明1,本件発明2-2及び本件発明3は,いずれもドライエッチング方法に関する発明であり,また,本件発明2-1は組成物に係る用途発明ではあるも は上記特徴的部分に係る着想,実験等を行っていない本件発明1,本件発明2-2及び本件発明3は,いずれもドライエッチング方法に関する発明であり,また,本件発明2-1は組成物に係る用途発明ではあるものの,実際にはドライエッチングを行う際のドライエッチング装置内における気体の構成比に係るものであるから,本件発明1ないし3はいずれもドライエッチングを行う半導体製造業者において実施されるものである。一方,被告は,化学工業品の製造,加工及び販売を行う会社であって,半導体製造業者ではないから,本件発明1ないし3を実施することはなく,ドライエッチングについての知見をほとんど有しておらず,ドライエッチングを行うための装置も有していなかった。そして,被告の従業員であった原告らも同様に,ドライエッチン グに関する知見をほとんど有していなかったのであるから,原告らは本件発明1ないし3の特徴的部分に係る着想を行っていない。原告らは,EIAJの半導体製造用フロン代替ガスプロジェクトにC5F8を含むいくつかの物質をドライエッチングガスのサンプルとして提供したにすぎず,本件発明1ないし3の特徴的部分に係る着想は,サンプルの提出先においてなされたものといえる。 また,本件発明1ないし3は,いずれもドライエッチングの性能を向上させるための発明であり,かかる発明につき技術的思想の創作を行ったといえるためには,着想では足りず,その有用性について実験等を通して試行錯誤する過程に関与することが必要である。しかし,被告はドライエッチングを行うための装置を有しておらず,被告の従業員であった原告らはC5F8のエッチング能力の評価又は実験を行っていない。 したがって,原告らは,本件発明1ないし3の特徴的部分につき,着想したとはいえず,また,着想の有用性を確認するための の従業員であった原告らはC5F8のエッチング能力の評価又は実験を行っていない。 したがって,原告らは,本件発明1ないし3の特徴的部分につき,着想したとはいえず,また,着想の有用性を確認するための実験を行ったともいえないから,本件発明1ないし3の発明者ではない。原告らが発明者性について主張するC5F8のサンプルを提供したことや,他社の特許の検討をしたことなどはいずれも発明の創作行為ではない。 イ本件発明4について原告Aは,本件発明4の単独発明者でも,共同発明者でもない。 (ア) 本件発明4-1及び4-2についてa 本件発明4-1及び4-2の特徴的部分本件発明4-1の特徴的部分は,オクタフルオロシクロペンテンを含む半導体装置製造用プラズマ反応用ガスにおいて,オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%以上であり,かつ,当該プラズマ反応用ガスに含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量を200容量ppm以下とした点,本件発明4-2の特徴的部分は,これに加えて 水分含有量を20重量ppmとした点にある。 b 原告Aは上記特徴的部分に係る着想,実験等を行っていない原告Aは,本件発明4-1及び4-2の特徴的部分に係る着想を行っていない。本件発明4-1及び4-2の特徴的部分に係る着想は,窒素がドライエッチングに好ましい影響を及ぼさないとの●(省略)●(以下「●(省略)●」という。)による指摘など,被告が本件製品の事業化過程で関わった外部の関係各社からもたらされたものである。原告Aは,本件発明4-1及び4-2を特許化する際に,この着想をクレームに盛り込むことを提案したにすぎない。 また,本件発明4-1及び4-2はC5F8の純度及び不純物の含有量を規定するものであるところ,このような発明は,その有用性を明確にするための実 着想をクレームに盛り込むことを提案したにすぎない。 また,本件発明4-1及び4-2はC5F8の純度及び不純物の含有量を規定するものであるところ,このような発明は,その有用性を明確にするための実験を繰り返し行い,有用性が認められる範囲を明確にすることにより初めて完成し,技術的思想の創作がなされたといい得るが,被告自身はドライエッチングの実験を行うための装置を有していないのであるから,被告の従業員であった原告Aが実験を行い,本件発明4-1及び4-2を支える結果を得ることはない。 原告Aは,窒素ガスと酸素ガスの合計量を制限することがドライエッチングに良い効果を及ぼすことを突きとめたと抽象的に主張するのみで,何ら具体的な主張をせず,裏付ける証拠も提出していない。そして,本件発明4-1の「窒素ガスと酸素ガスの合計量」が「200ppm」であることの意味も,明細書からは不明である。さらに,オクタフルオロシクロペンテンの純度についても,そもそも原告Aは,99.95容量%以上ないし99.98容量%以上を提案していたのであり,本件発明4-1の純度99.9%以上という数値は,競合他社による本件発明4の回避を警戒し,権利範囲を広げることを意図した原告Bの要請に従ったものにすぎない。加えて,原告Aが,他の従 業員に事件に関する具体的な指示を行ったこともない。 c したがって,原告Aは,本件発明4-1及び4-2の特徴的部分につき,着想したとはいえず,また,実験を通じて有用性を確認したものでもないから,本件発明4-1及び4-2の発明者ではない。 (イ) 本件発明4-3及び4-4についてa 本件発明4-3及び4-4の特徴的部分本件発明4-3及び本件発明4-4の特徴的部分は,高純度のプラズマ反応用ガスを得るために0属(18族)の不活性ガス中で 本件発明4-3及び4-4についてa 本件発明4-3及び4-4の特徴的部分本件発明4-3及び本件発明4-4の特徴的部分は,高純度のプラズマ反応用ガスを得るために0属(18族)の不活性ガス中で精製する工程を含む手法を用いた点にある。 b 原告Aは上記特徴的部分に係る着想,実験等を行っていない原告Aは,本件発明4-3及び4-4の特徴的部分に係る着想を行っていない。本件発明4-3及び4-4特徴的部分に係る着想は,外部の関係各社からC5F8の純度を上げ,窒素等の不純物を除去することを要求されたことに対して,被告の従業員であるFとGが協議して得られたものであり,2段階蒸留,減圧蒸留,ヘリウム中でのバブリング,モレキュラーシーブ等の吸着剤を用いる方法,加熱によって蒸気とともに窒素等を除去する方法,真空引き(加温脱気),液体窒素による凍結脱気,超音波脱気等も候補として提案された。 また,C5F8の純度を上げ,窒素等の不純物を除去する方法については,単にアイディアを出すだけではその効果が不確かであるため,実験を通して有用性を見出すことが技術的思想の創作であるといえるところ,精製方法について様々な実験を行い,0属(18族)の不活性ガス中で精製する工程を含む方法が効果的であることを見出したのは被告の従業員であるFとGであり,原告A自身は一切実験を行っていない。 c したがって,原告Aは本件発明4-3及び4-4の発明者ではない。 (2) 争点(2)ア(本件各発明に係る被告の独占の利益の有無)について(原告らの主張)ア本件各発明による独占の利益本件発明1ないし3には競業他社の市場参入を抑止する効果があり,また,被告は本件発明4を実施しているから,被告は本件各発明による独占の利益を得ている。 (ア) 本件発明1ないし3 よる独占の利益本件発明1ないし3には競業他社の市場参入を抑止する効果があり,また,被告は本件発明4を実施しているから,被告は本件各発明による独占の利益を得ている。 (ア) 本件発明1ないし3の抑止効果被告は,本件発明1ないし3を実施していないと主張するが,本件発明1,本件発明2-2及び本件発明3はドライエッチング方法に関するものであるから,被告が自己実施しないことは当然の前提である。本件発明1ないし3に係る特許出願は,当初から,半導体メーカーに供給するエッチングガスについて,競合他社によるC5F8の製造,販売への参入を抑止することが目的である。エッチングガス製造メーカーは,半導体メーカーを通じての間接侵害をおそれ,市場への参入を躊躇せざるを得なかったのであり,現に競合他社がC5F8の市場に参入していないことは被告も認めている。 被告は,本件発明1ないし3について,半導体メーカーから実施許諾の問い合わせがないことも主張するが,半導体メーカーは,そもそも,エッチングガスとして使用するために被告からゼオローラを購入しており,これを用いたドライエッチング方法を実施することが前提であることを考えれば,当然のことといえる。 (イ) 本件各発明を基礎とする外国特許の禁止効果本件各発明を基礎とする特許は,次のとおり,韓国を初めとする世界各国で登録されている(本件各発明に係る出願との関係は,別紙特許出願の流れ(①,③),別紙特許出願の流れ(②)及び別紙特許出願の流れ(④)記載のとおりであり,対応する発明は,別紙外国特許発明目録 の請求項の欄に記載のとおりである(原告第5準備書面6頁~12頁)。)。 a 本件発明1及び3を基礎とした特許(別紙外国特許発明目録記載1(1)ないし(4),別紙特許出願の流れ(①,③))韓国特許 求項の欄に記載のとおりである(原告第5準備書面6頁~12頁)。)。 a 本件発明1及び3を基礎とした特許(別紙外国特許発明目録記載1(1)ないし(4),別紙特許出願の流れ(①,③))韓国特許 KR 10-0490968米国特許 US 6,383,403欧州特許 EP 0 964 438B1台湾特許 TW 403955b 本件発明2を基礎とした特許(別紙外国特許発明目録記載2(1)ないし(4),別紙特許出願の流れ(②))韓国特許 KR 10-0510158米国特許 US 6,322,715欧州特許 EP 0 948 033B1台湾特許 TW 401602c 本件発明4を基礎とした特許(別紙外国特許発明目録記載3(1)ないし(3),別紙特許出願の流れ(④))米国特許 US 6,884,365(及びその分割であるUS7,449,415)欧州特許 EP 1 186 585B1台湾特許 TW 492953被告は,本件各発明を基礎とする外国特許により,極めて大きな権利を得たものである。すなわち,本件発明1ないし3を基礎とする外国特許は,その国の半導体製造メーカーにより不可避的に実施されることから,当該国へC5F8ドライエッチングガスを販売(輸入又は譲渡)することは当該特許の間接侵害又は共同不法行為に当たり,競合他社による製造,販売は当然に禁止されるものであった。また,本件発明4を基 礎とする外国特許によってもC5F8ドライエッチングガスの製造,販売,使用が禁止されたものである。 (ウ) 特許出願中の抑止効果本件発明2及び3に係る各出願は,日本において特許登録されなかったものの,出願公開から約9年にわたり,拒絶査定に対する反論等を繰り返しながら,特許登録となる可能性を残し続け,他社の参 中の抑止効果本件発明2及び3に係る各出願は,日本において特許登録されなかったものの,出願公開から約9年にわたり,拒絶査定に対する反論等を繰り返しながら,特許登録となる可能性を残し続け,他社の参入を抑止したものである。一方,本件発明1及び4についても,出願公開後,早期に特許請求の範囲を絞って特許登録をすると,権利の幅が狭くなり,他社において被告の特許を回避しやすくなることから,原告Aは公開状態をできるだけ長く維持するように被告の知的財産部に働きかけ,他社の参入を抑止する効果を長く継続させたものである。 イ被告が主張する競業他社が市場に参入しなかった理由被告は,競業他社がC5F8の市場に参入しなかった理由として,競合品であるC4F6の方が優れていること,C5F8及びその原料であるC5Cl6の毒性管理が障壁になったことを主張する。しかし,C4F6が上市されたのはC5F8の上市よりも約7年も後のことであり,実際にC4F6が本件製品の売上げに影響を与え始めたのはそれから約1年後であるから,C5F8は約8年間にわたり,次世代エッチング用ガスとしてデファクトスタンダードの地位を得ていた。また,C5F8は毒性を持つが,フッ素化合物において原材料や最終生成物に一定の毒性があることは珍しいことではなく,C5F8が持つ程度の毒性であれば事業化の障壁になるものではないし,原材料であるC5Cl6についても,1988年当時,全世界で年間約1万5000トンの生産量があり,汎用化学品として知られていた。 ウ本件発明1は商業的に実施され得ること被告は,オクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングガスとして 用いることは,特開平4-258117号公報(乙1。以下「乙1文献」という。)及び特開平6-338479号公報(乙2。以下「乙2文献 タフルオロシクロペンテンをドライエッチングガスとして 用いることは,特開平4-258117号公報(乙1。以下「乙1文献」という。)及び特開平6-338479号公報(乙2。以下「乙2文献」という。)に開示されており,公知技術であったから,本件発明1は内部冷却手段により被エッチング基体を冷却せずにドライエッチングを行うことに特徴を有し,商業的に実施され得ない発明であると主張する。 しかし,乙1文献及び乙2文献には,オクタフルオロシクロペンテンを用いてドライエッチングを行うことは,記載も示唆もされていない。また,本件発明1は,エッチング時の急激な発熱に対応して急冷するような操作を除外するものであり,通常の被エッチング基体を取り出すまでに徐冷する程度の操作が含まれることは明細書の記載から明らかであるから,商業的に実施され得ないものではなく,半導体メーカーにより実施されている。 エ本件発明2ないし4の特許性について被告は,本件発明2ないし4について,特許性を有しないとか,特許性が脆弱であるなどと主張するが,いずれの発明も特許性を有する。そもそも,被告は,本件各発明に係る出願の過程において,本件各発明が格別の効果と独創性を有することを認めていたのであるから,被告の主張は出願過程での自身の主張と矛盾するものである。 (ア) 本件発明2の特許性本件発明2は特許性を有する。被告が挙げる公知文献から本件発明2の特許性は否定されない。すなわち,乙1文献には,1~40モル%の酸素成分を含むことが開示されていないし,特開平8-130211号公報(乙5。以下「乙5文献」という。)には,オクタフルオロシクロペンテンについての記載はなく,添加するガスの割合についても「50%以下」とあるのみで,これが体積比であるのか重量比であるのか明確ではな (乙5。以下「乙5文献」という。)には,オクタフルオロシクロペンテンについての記載はなく,添加するガスの割合についても「50%以下」とあるのみで,これが体積比であるのか重量比であるのか明確ではない。また,特開平5-283374号公報(乙38。以下「乙38文献」という。)にも,オクタフルオロシクロペンテンに1 0~50%の酸素系化合物を添加するとの記載はない。 したがって,ドライエッチングに関する技術分野において,酸素ガスを添加することによって本件発明2の「薄膜状重合体析出物の生成を回避しつつ,良好なエッチング特性が得られる」という効果が得られることは公知ではなく,また,上記発明の組合せにより容易に想到するものでもなかった。本件発明2が特許性を有することは,本件発明2につき,PCT出願を経て,米国,欧州,韓国及び台湾において特許登録がされていることから明らかである。本件発明2に係る出願につき日本において特許登録がなされなかったのは,被告が審判請求を取り下げたからにすぎない。 (イ) 本件発明3の特許性本件発明3は特許性を有する。本件発明3は,拒絶査定後に「パーフルオロシクロオレフィン」を「オクタフルオロシクロペンテン」(C5F8)に限定しているところ,被告が挙げる公知文献である特開平6-275568号公報(乙8。以下「乙8文献」といい,これに記載された発明を「乙8発明」という。)に開示されているのは,「一般式CxFy(ただし,x,yは自然数であり,y≦x+2の関係を満たす。)で表されるフルオロカーボン系化合物を主体とするエッチング・ガス」であって,オクタフルオロシクロペンテン(C5F8)は明らかにこれに含まれていない。 本件発明3が特許性を有することは,本件発明1及び3を基礎としてなされたPCT出願により,韓国, チング・ガス」であって,オクタフルオロシクロペンテン(C5F8)は明らかにこれに含まれていない。 本件発明3が特許性を有することは,本件発明1及び3を基礎としてなされたPCT出願により,韓国,米国及び欧州で特許登録がなされていること,本件発明1及び3を併合した発明につき,台湾において特許登録がなされていることからも明らかである。本件発明3に係る出願につき日本において特許登録がなされなかったのは,被告が審判請求を取り下げたからにすぎない。 (ウ) 本件発明4の特許性a 本件発明4-1及び4-2について本件発明4-1及び4-2は特許性を有する。本件発明4の特徴的部分は,プラズマ反応用ガスを単に高純度にすることにあるのではなく,経時的に混在量が変化していた酸素ガス及び窒素ガスの容量に着目し,その容量を制限することにあるから,被告の主張は前提を欠く。 b 本件発明4-3及び4-4について本件発明4-3及び4-4の特許性は脆弱なものではない。このことは,上記aのとおり,本件発明4-1には特許性があり,本件発明4-3及び4-4がいずれも本件発明4-1の発明特定事項を引用する形式で表現されていることからも,明らかである。 被告は,本件発明4-3及び4-4を回避することが可能であると主張するが,本件発明4-3及び4-4を回避できたとしても,本件発明4-1によって規制される以上,被告の主張には意味がない。 (被告の主張)ア被告の受けるべき利益は存在しないこと(ア) 本件発明1ないし3の不実施本件発明1,本件発明2-2及び本件発明3は,いずれもドライエッチング方法の発明であるところ,被告は,半導体製造業者ではなく,ドライエッチング組成物である本件製品を製造,販売しているだけであるから,上記各発明を実施していない び本件発明3は,いずれもドライエッチング方法の発明であるところ,被告は,半導体製造業者ではなく,ドライエッチング組成物である本件製品を製造,販売しているだけであるから,上記各発明を実施していない。また,本件発明2-1は,オクタフルオロシクロペンテンと特定量の酸素成分を含むことを特徴とするドライエッチングガス組成物に関する発明であるところ,本件製品はガス組成物中の酸素ガスを可能な限り除去した高純度のオクタフルオロシクロペンテンを含む製品であって,本件発明2-1に係るガス組成物とは異なるから,被告は本件発明2-1を実施していない。 さらに被告は,本件発明1ないし3について,ライセンス許諾の問い合わせを受けたこともないから,本件発明1ないし3につき,被告が受けるべき利益は存在しない。 (イ) 本件発明4による受けるべき利益の不存在被告は本件発明4を実施しているが,下記ウ(ウ)記載のとおり,本件発明4の特許性が脆弱なものであり,本件発明4の特徴的部分といえる製造方法に特許性が認められるとしても,代替となる精製手段を用いて第三者が発明の実施を回避することも不可能ではないから,その排他的効力は極めて限定的であるといえる。また,本件発明4が他社に実施許諾されたことはない。さらに,本件製品が平成10年度末に上市されて間もなく,C4F6がドライエッチングガスとして有望であることが公表され,その後,遅くとも平成14年頃までには,C4F6の方がC5F8よりもドライエッチングガスとして高性能で,将来性があることが認識されるようになったこと,本件製品の持つ強い毒性などの事情も考慮すると,他社が本件発明4の実施許諾を求めてくることは考え難く,実施許諾をする場合であっても,そのライセンス料は低廉にならざるを得ないから,本件発明4に係る特許を 製品の持つ強い毒性などの事情も考慮すると,他社が本件発明4の実施許諾を求めてくることは考え難く,実施許諾をする場合であっても,そのライセンス料は低廉にならざるを得ないから,本件発明4に係る特許を受ける権利を譲り受けたことにより,被告が受けるべき利益は存在しないか,存在するとしても僅少である。 イ本件発明1ないし3に禁止効果がないこと(ア) 本件発明1オクタフルオロシクロペンテン等のパーフルオロシクロペンテンをドライエッチングガスとして用いることが,公知文献である乙1文献及び乙2文献に開示されていること,本件発明1に係る出願の過程において,特許庁によりCF系ガスによりプラズマエッチングする際の温度範囲として60℃~250℃とすることが周知技術であると認定されているこ とからすれば,本件発明1は内部冷却手段により被エッチング基体を冷却せずにドライエッチングを行うことに特徴を有する。しかし,半導体製造業者が商業的にドライエッチングを行う場合,エッチング装置内に次々とウエハーを送り込み連続的にエッチングを行う必要があるが,仮に被エッチング基体を冷却せずに行えば,容易にレジストの融点を超える温度に達してしまい,被エッチング基体が損傷してしまうことから,商業的には実施され得ない発明である。技術的理由により商業的に実施されることのない発明については,競業他社はその影響を受けずに事業活動を行うから,競業他社に対しその実施を禁止する効果は認められない。 原告らは,本件発明1に係る特許の明細書(以下,特許登録時の明細書を「特許明細書」といい,出願時の明細書を「当初明細書」という。)の記載を根拠に,エッチング時の急激な発熱に対応して急冷するような操作を除外するものであり,通常の被エッチング基体を取り出すまでに徐冷する程度の操作 といい,出願時の明細書を「当初明細書」という。)の記載を根拠に,エッチング時の急激な発熱に対応して急冷するような操作を除外するものであり,通常の被エッチング基体を取り出すまでに徐冷する程度の操作は含まれると主張する。しかし,原告らの指摘する本件発明1に係る特許明細書(甲1参照)の段落【0015】における「被エッチング基体を取出すまでに徐冷する程度の操作は含まれる」という記載は,本件発明1に係る当初明細書(甲69参照)の段落【0015】を見れば明らかなように,出願当初の請求項1の構成要件であった「被エッチング基体の到達温度を実質的に制御することなく」という文言の説明を意図したものであって,本件発明1の発明特定事項である「外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく」との文言に関するものではない。本件発明1に係る特許明細書の段落【0015】において「外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく」との記載が存在するのは,拒絶査定不服審判中における補正によって請求項 1にかかる文言が追加された際に,これに伴って形式的に明細書の記載が補正されたことによるものにすぎない。したがって,当該審判中において通知された拒絶理由を回避するために「外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく」と請求項が補正されたものである以上,急冷か徐冷かに関わらず,内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することは,本件発明1の技術的範囲には含まれない。 (イ) 本件発明2ドライエッチングを行う際の酸素流量は実際にドライエッチングを行う者が適宜調整して定めるものであり,酸素流量を調整すること自体は従前から自然に行われていたことであって,40モル%以下となれ 発明2ドライエッチングを行う際の酸素流量は実際にドライエッチングを行う者が適宜調整して定めるものであり,酸素流量を調整すること自体は従前から自然に行われていたことであって,40モル%以下となれば特許権に抵触してしまうなどと考える者はいなかった。したがって,本件発明2に競業他社に対する事実上の禁止効果があったとはいえないから,被告が本件発明2により受けた独占の利益は存在しない。 (ウ) 本件発明3ドライエッチングを1010cm-3以上のプラズマ密度領域下で行うことは公知技術であり,酸素ガス等の流量を制御することも当業者における設計的事項であったから,1010cm-3以上のプラズマ密度領域下において,酸素ガス又は二酸化炭素ガスを含有させてドライエッチングを行ったからといって特許権に抵触してしまうなどと考えるものはいなかった。したがって,本件発明3に競業他社に対する事実上の禁止効果があったとはいえないから,被告が本件発明3により受けた独占の利益は存在しない。 ウ本件発明2ないし4に特許性がないこと(ア) 本件発明2本件発明2の特徴的部分は,パーフルオロシクロオレフィンを含むド ライエッチングガス組成物中に1~40モル%の酸素成分を含有させる点にあるが,以下のとおり,同部分は特許性を有しない。なお,原告は,被告が本件各発明の特許性を争うことは禁反言の原則に反し許されないなどと主張するが,出願過程において発明に特許性があると主張することは当然であり,このことにより,後の相当対価請求訴訟において,発明の特許性を争えなくなるのであるとすれば,特許化しなかった発明についても,特許登録された発明と同様に扱われることとなり,不合理である。したがって,原告の主張は失当である。 公知文献である乙1文献及び乙2文献にはオクタフ のであるとすれば,特許化しなかった発明についても,特許登録された発明と同様に扱われることとなり,不合理である。したがって,原告の主張は失当である。 公知文献である乙1文献及び乙2文献にはオクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングガスとして用いることが,乙5文献にはエッチングレートを向上させるためにフルオロカーボン系ガスに酸素ガスを50%以下の割合で混合することが,乙38文献にはポリマー堆積物を回避する目的で環状フルオロカーボンに10~50%の酸素系化合物を添加してエッチングを行うことがそれぞれ開示されている。そして,上記各文献は技術分野を共通にし,また,シリコン酸化膜等のドライエッチングにおいて,高選択性及び高いエッチングレートを達成するという課題を共通するものであるから,オクタフルオロシクロペンテンを用いてエッチングを行う際に,上記のとおり酸素成分を添加することは,当業者が容易になし得ることであったといえる。また,酸素流量の制御については実際にドライエッチングを行う者が調整して定めるものであるから,本件発明2の特徴的部分は当業者の設計的事項にすぎず,進歩性が認められないことは明らかである。 そして,職務発明が特許性を有しないのであれば,それを承継したことに対する相当の対価を認め,発明に対するインセンティブを与える必要はないから,特許性を有しない本件発明2に関して相当対価請求権は発生しない。 (イ) 本件発明3本件発明3の特徴的部分は,パーフルオロシクロオレフィンを含むガスを用いたドライエッチングにおいて,高密度領域のプラズマを用いること,及び特定量の「酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガス」を含有させる点にあるが,同部分は特許性を有しない。 公知文献である乙1文献及び2文献には,オクタフルオロシクロペン 域のプラズマを用いること,及び特定量の「酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガス」を含有させる点にあるが,同部分は特許性を有しない。 公知文献である乙1文献及び2文献には,オクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングガスとして用いることが,乙8文献には,1010cm-3以上のプラズマ密度を用いることが,特開平7-283206公報(乙45。以下「乙45文献」という。)には,高密度プラズマをフルオロカーボン系ガスによるシリコン酸化膜のドライエッチングに適用した場合に,対Si選択比を大きく維持しながら高速異方性エッチングを行うことが可能となることがそれぞれ開示されている。また,本件発明3に係る出願の過程において,特許庁によりパーフルオロオレフィン等のCF系ガスに「酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガス」を含ませることが周知技術であったと認定されている。したがって,オクタフルオロシクロペンテンを用いてドライエッチングを行う際に,高密度プラズマを適用することは当業者が容易になし得たことであり,本件発明3には進歩性がない。そして,職務発明が特許性を有しないのであれば,それを承継したことに対する相当の対価を認め,発明に対するインセンティブを与える必要はないから,特許性を有しない本件発明3に関して相当対価請求権は発生しない。 (ウ) 本件発明4オクタフルオロシクロペンテンは公知であり,これをドライエッチングに用いることも公知であったから,本件発明4の特徴的部分は,オクタフルオロシクロペンテンを含むプラズマ反応用ガスにおいて,特定の純度及び窒素ガス等の不純物含有量を規定した点,及びかかる高純度の プラズマ反応用ガスを得るために0属の不活性ガス中で精留する手法を用いた点にある。しかし,ドライエッチング用途等の半導体製造用プラズマ反応用 不純物含有量を規定した点,及びかかる高純度の プラズマ反応用ガスを得るために0属の不活性ガス中で精留する手法を用いた点にある。しかし,ドライエッチング用途等の半導体製造用プラズマ反応用ガスにおいて,可能な限り高純度であることが望ましいことは当該技術分野において常識であり,オクタフルオロシクロペンテン以外の従来製品や後続製品においても同様に求められている。また,純度及び窒素ガス等含有量を本件発明4-1及び4-2の値に規定することにより格別の効果が生じることも認められない。よって,本件発明4-1及び4-2は,新規性又は進歩性を欠き,特許性がない。 また,本件発明4-3及び4-4についても,窒素雰囲気下における精留によりオクタフルオロシクロペンテンを精製する手法は既に存在しており,かかる手法との相違点は窒素ガスに代えてヘリウム等の0属の不活性ガスを用いた点にすぎないから,本件発明4-3及び4-4において特許性を有する部分は極めて限られた範囲のものである。 なお,純度99.9容量%並びに窒素ガス及び酸素ガスを特定濃度にすることは,通常の能力を有する合成研究員であれば,常識的手法を用いて達成可能な課題である。そして,オクタフルオロシクロペンテンの純度を高め,かつ,窒素ガス等の不純物を除去するための手段としては,本件発明4以外にも代替手法が存在するため,第三者が本件発明4を回避することも不可能ではなく,本件発明4に係る特許の独占排他的な機能は限定的である。 エ本件各発明を基礎とする外国特許について(ア) 本件発明1及び3を基礎とする外国特許a 米国特許及び欧州特許本件発明1及び3を基礎とする米国特許及び欧州特許に係る各発明(別紙外国特許発明目録記載1(2)及び(3)の請求項欄記載の各発明)は,本件発明1と同様に,「被 外国特許a 米国特許及び欧州特許本件発明1及び3を基礎とする米国特許及び欧州特許に係る各発明(別紙外国特許発明目録記載1(2)及び(3)の請求項欄記載の各発明)は,本件発明1と同様に,「被エッチング基体を冷却せずに」ドライ エッチングを行うものであるから,商業的に実施され得ないものであるから,半導体製造メーカーにより不可避的に実施されるものではない。 b 韓国特許本件発明1及び3を基礎とする韓国特許にかかる発明(別紙外国特許発明目録記載1(1)の請求項欄記載の発明)は,「被エッチング基体の到達温度60℃~250℃」でドライエッチングを行うものであるが,ドライエッチングにおいて被エッチング基体を冷却することは技術常識であり,通常は所望の選択性を得るために60℃以下に制御されるから,商業的に実施され得ないものである。また,上記発明は,本件発明1とは異なり,「被エッチング基体の温度を,外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく」との要件を付さず,単に「被エッチング基体の到達60℃~250℃」としているが,かかる温度範囲においてエッチングを行うことが周知であったことは,本件発明1に係る出願の審査過程で指摘されている。そして,上記発明のうち圧力の範囲に係る要件は,一般的な条件にすぎず,技術的特徴を提供するものではない。よって,上記発明は進歩性を欠く。 c 台湾特許本件発明1及び3を基礎とする台湾特許に係る発明(別紙外国特許発明目録記載1(4)の請求項欄記載の発明)は,本件発明1の特徴的部分を有さず,本件発明3と同じである。本件発明1及び3を基礎とするPCT出願の過程において,当該出願に係る請求項は,「オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用いて,1010c 部分を有さず,本件発明3と同じである。本件発明1及び3を基礎とするPCT出願の過程において,当該出願に係る請求項は,「オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用いて,1010cm-3以上の高密度領域のプラズマを発生させて被エッチング基体をドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方 法。」と補正されており,同請求項は,「パーフルオロシクロオレフィン」が「オクタフルオロシクロペンテン」となっている点を除いて,本件発明3と同じであった。その後,上記PCT出願の過程において補正された請求項は,米国,欧州及び韓国において,乙1文献及び乙45文献等の引用により進歩性が否定され,いずれも被エッチング基体の温度に関する要件,すなわち,本件発明1の特徴的部分と同様の要件が追加されている。このような経緯に鑑みれば,台湾特許に係る上記発明が特許性を欠くことは明らかである。 d 以上によれば,本件発明1及び3を基礎とする外国特許に係る各発明のうち,米国特許,欧州特許及び韓国特許にかかる各発明は,商業的に実施され得ないものであり,また,韓国特許及び台湾特許に係る各発明は,進歩性を有しないから,これらにより被告が受けるべき利益は存在しない。なお,本件発明3を基礎とする外国特許に関しては,そもそも1010cm-3のプラズマ密度領域下でドライエッチングを行うこと自体は,周知のものであったから,本件発明3を基礎とする外国特許との抵触を懸念する者はおらず,事実上も,禁止効果がなかった。 (イ) 本件発明2を基礎とする外国特許本件発明2を基礎とする米国特許,欧州特許及び韓国特許に係る各発明(別紙外国特許発明目録記載2(1)ないし(3)の請求項欄記載の各発明)は,酸素成分の含有に関する要件と,飽和ハイドロフルオロカーボン 件発明2を基礎とする米国特許,欧州特許及び韓国特許に係る各発明(別紙外国特許発明目録記載2(1)ないし(3)の請求項欄記載の各発明)は,酸素成分の含有に関する要件と,飽和ハイドロフルオロカーボンの含有に関する要件を有するが,酸素成分の要件だけでは特許が成立せず,飽和ハイドロフルオロカーボンの要件が追加されたものである。 しかし,酸素成分に関する要件は,乙1文献及び乙2文献に対応する米国特許の公報並びに乙38文献等から当業者が容易になし得たものであるし,飽和ハイドロフルオロカーボンの要件も,乙45文献に記載され ており,さらには,エッチング選択比の向上のために,飽和ハイドロフルオロカーボンを含むエッチングガスを用いることは当該技術分野において周知の事項であったから(乙161〔枝番を含む。〕),当業者が容易に採用し得たものである。また,飽和ハイドロフルオロカーボンの上限値についても,飽和ハイドロフルオロカーボンの地球温暖化係数が高いことは周知であり(乙28),このような添加成分が,可能な限り少ないことが好ましいことは自明であった。よって,上記発明はいずれも進歩性に欠けるものである。 本件発明2を基礎とする台湾特許に係る発明(別紙外国特許発明目録記載2(4)の請求項欄記載の発明)は,酸素成分の要件のみを有するものであるところ,本件発明2に係る出願,並びに上記米国特許,欧州特許及び韓国特許の出願経過に鑑みても,進歩性に欠けるものといえる。 以上によれば,本件発明2を基礎とする外国特許に係る発明はいずれも進歩性を有しないから,これらにより被告が受けるべき利益は存在しない。なお,本件発明2を基礎とする外国特許に関しては,ドライエッチングを行う際の酸素流量の制御は実際にドライエッチングを行う者が適宜調整するものであり,従前からごく当 被告が受けるべき利益は存在しない。なお,本件発明2を基礎とする外国特許に関しては,ドライエッチングを行う際の酸素流量の制御は実際にドライエッチングを行う者が適宜調整するものであり,従前からごく当然に行われていたものであるから,酸素成分が40モル%以下になれば,特許権に抵触すると懸念する者はおらず,事実上も,禁止効果がなかった。 (ウ) 本件発明4を基礎とする外国特許本件発明4を基礎とする欧州特許及び台湾特許に係る各発明(別紙外国特許目録記載3(2)及び(3)の請求項欄記載の各発明)は,本件発明4-1と同じである。そして,C5F8の純度を99.9容量%以上とすることは公知文献(乙12)に開示されており,また,窒素ガス及び酸素ガスの合計量を200容量ppmとすることも半導体業界では広く知られていた技術的事項であった(乙32等)。また,エッチングガス中 に窒素が存在することにより,窒化ケイ素のエッチング速度が影響を受け,選択比が変化することも既に報じられていたから(乙161の4),個々のエッチングプロセスに応じて窒素ガスの含有量を適切な値に調節するため,半導体メーカーにおいて購入するエッチングガスにおける窒素ガスの含有量が,一定量であり,かつ可能な限り低量であることが好ましいことは明らかであった。一方で,酸素の含有量に関しても,上記窒素の場合と同様に,その含有量が一定量であり,かつ可能な限り低量であることが好ましいことは当然であった。 本件発明4を基礎とする米国特許に係る発明(別紙外国特許目録記載3(1)の請求項欄記載の発明)についても,窒素ガスと酸素ガスの合計量が「150容量ppm以下」となっているが,当該数値に臨界的意義は見出せないから,「200容量ppm以下」とすることと特段の相違はない。 以上によれば,本件発 ついても,窒素ガスと酸素ガスの合計量が「150容量ppm以下」となっているが,当該数値に臨界的意義は見出せないから,「200容量ppm以下」とすることと特段の相違はない。 以上によれば,本件発明4を基礎とする外国特許に係る発明はいずれも,新規性又は進歩性を有しないから,これらにより被告が受けるべき利益は存在しない。なお,本件発明4を基礎とする外国特許に関しては,窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppmないし150容量ppmを超える純度のC5F8を用いてエッチングすることは可能であり(乙112),回避することができるから,事実上も,禁止効果がなかった。 (3) 争点(2)イ(本件各発明に対する被告の貢献度)について(原告の主張)ア被告の貢献度被告が本件製品の販売により多額の利益を得られたのは,まさに本件各発明により被告がC5F8の市場を独占できたからである。本件各発明は被告のそれまでの事業活動と全く関係のない分野のものであり,原告らが 創設し,他企業との共同による試験,ビジネス構築,特許戦略及び公的融資を取り付けたのであるから,原告らの本件各発明に対する貢献度は非常に高く,被告の貢献度は80%を超えるものではない。 イ被告が主張する貢献について(ア) 本件各発明の創作への貢献被告は,本件各発明の創作への貢献として,●(省略)●(以下「●(省略)●」という。),化学技術研究所及び●(省略)●(以下「●(省略)●」という。)との協働関係の構築を主張する。 しかし,被告と●(省略)●との交流は,フッ素化技術の導入を目的としたものではなく,フッ素化自体は●(省略)●が行い,被告がフッ素化されたモノマーを重合することや,被告が作成した合成ゴムなどのポリマーを●(省略)●がフッ素化することなどを目的とした 導入を目的としたものではなく,フッ素化自体は●(省略)●が行い,被告がフッ素化されたモノマーを重合することや,被告が作成した合成ゴムなどのポリマーを●(省略)●がフッ素化することなどを目的としたものにすぎない。 また,Cが所属する化学技術研究所との関係についても,Cとの関係を構築したのは原告らである。すなわち,原告らが,平成元年頃,フッ素化技術を導入するため東京薬科大学のH教授や岡山大学のI教授に相談し,紹介されたのがCであり,原告らがCとの関係を築きあげた結果として,化学技術研究所から継続的に技術指導を受けることができた。 なお,被告が主張する被告と化学技術研究所の間の技術指導契約(乙57)は,原告らとCとの実質的な関係を形式的に整えるために,被告と化学技術研究所との間で書類が交わされたにすぎない。 さらに,●(省略)●との協働関係を構築したのも原告らである。原告Aは,C5F8のサンプルを,●(省略)●を含む評価会社各社に提出し,原告Bは,被告の情報材料事業部が関与する以前に,原告Aの技術的協力を得ながら,市場開発を協働で行うため,●(省略)●に個別に接触し,交渉をしていた。 なお,被告は,設備や施設が原告らの提供によるものではない旨主張するが,一従業員である原告らが提供しないのは通常である。 (イ) 本件製品の事業化への貢献被告は,本件製品の事業化への貢献につき,●(省略)●,●(省略)●(以下「●(省略)●」という。),●(省略)●(以下「●(省略)●」という。)との協働体制の構築を主張するが,そもそも,他社との協働体制の確立を提案したのは原告Bである。原告Bは,原告Aの技術的協力を得ながら,上記他社との協働体制をいち早く構築した。 被告は,その他,毒性への対処,生産設備への投資,資金調達など主張するが, 協働体制の確立を提案したのは原告Bである。原告Bは,原告Aの技術的協力を得ながら,上記他社との協働体制をいち早く構築した。 被告は,その他,毒性への対処,生産設備への投資,資金調達など主張するが,そもそも公的資金の確保に重要となる申請書の作成は原告Aが行ったものである。そして,原告Aが獲得した公的資金は,C5F8の毒性把握や,製品評価,工場対応のための分析,フッ素化技術の継続や蓄積のために用いられた。 被告は,本件製品の事業化における原告Bの貢献は多大でないと主張するが,原告Bが本件製品から離れたのは平成11年のことであり,原告Bは,ゼオローラ事業の推進を行うことを決めた平成8年頃から平成11年までの間に,経営陣への提案,報告を行い,常務会においてドライエッチングガス事業の将来計画について説明するなど,ドライエッチングガスの事業化推進当初から上市まで,本件製品の中心的推進者として携わっており,その貢献は多大である。 (ウ) 本件発明4固有の貢献被告は,本件発明4に対する被告の貢献として,本件発明4の研究開始の経緯,被告が蓄積していた技術(乙12)の応用,F及びGの果たした役割,被告の知財部による権利化の主導を主張する。 しかし,本件発明4の研究開始の経緯につき,被告が行ったと主張する事項は,すべて原告らが行ったものであるし,上記技術は本件発明4 の本質と直接関係がない。そもそも,上記技術は原告Aが発明したものであり,その意味では原告Aの貢献が大きい。 また,FとGはいずれも原告Aの指示に従い作業を行っていた補助者にすぎず,本件発明4の出願手続について,クレーム及び明細書の準備及び記載を行ったのは原告Aであり,特許審査及び登録手続において被告が行った対応は貢献とはいえない。 (被告の主張)ア本件各発明の創作へ 本件発明4の出願手続について,クレーム及び明細書の準備及び記載を行ったのは原告Aであり,特許審査及び登録手続において被告が行った対応は貢献とはいえない。 (被告の主張)ア本件各発明の創作への貢献被告には,従来,フッ化水素等の物質を扱う研究,開発部門は存在したものの,フッ素系化合物の合成に関する十分な技術は備わっていなかった。 そこで,フッ素化技術導入のため,●(省略)●との間では相互交流を,Cが所属する化学技術研究所との間では技術指導契約を締結するなどしていた。また,装置メーカーである●(省略)●とは,C5F8のドライエッチングガスとしての販売事業化に向けて協働関係を築いていた。原告らは,被告にはフッ素化技術がなかったと主張するが,●(省略)●との交流は昭和62年のことであるし,●(省略)●との協働関係も平成8年頃に始まったものである。また,原告Aに業務命令を発し,化学技術研究所で約1年間フッ素化技術を学ばせたのも被告である。さらに,本件各発明の創作は,専ら被告の提供した設備,又は被告に協力する化学技術研究所等の設備を用いて行われたものである。したがって,被告は,本件各発明の創作について,基礎となる他社との協働関係を築き,人事面及び物的施設面でも貢献している。 イ本件製品の事業化への貢献(ア) ドライエッチングガスは,通常,半導体製造業者において,当該ガスの持つ特性を発揮できるように設計された装置と共に採用されることから,新規のドライエッチングガスを半導体製造業者に採用してもらう ためには,装置メーカーとの協働が不可欠であり,被告は,C5F8がドライエッチングガスとして有望であることが見出された平成8年頃から,●(省略)●と協業してきた。そして,被告がC5F8に関する●(省略)●のデータを利用して営業活動 可欠であり,被告は,C5F8がドライエッチングガスとして有望であることが見出された平成8年頃から,●(省略)●と協業してきた。そして,被告がC5F8に関する●(省略)●のデータを利用して営業活動を行った結果として,C5F8をドライエッチングガスとして使用する●(省略)●のエッチング装置が,国内外の半導体製造業者に採用されたものである。また,被告は,●(省略)●と共同開発契約を締結することにより,C5F8の原料となるC5Cl6の供給体制,及びC5F8の調達体制を確保し,●(省略)●と協働することで,顧客への供給体制を確立した。 (イ) 被告は,その他,C5F8の毒性への対処や,生産設備としての高岡工場建設への約●(省略)●円もの投資,事業立上げのための資金調達等,本件製品の事業化に貢献したものである。 (ウ) 原告Bは,本件製品の事業化に貢献したと主張するが,平成10年頃にC5H3F7を主成分とするゼオローラHの事業化に専念するよう指示を受けた後は,本件製品の事業化には関与していないし,平成12年頃には,自ら異動を申し出て,ゼオローラHの事業化の推進業務からも離れたのであるから,本件製品の事業化や売上げ拡大に貢献していない。 ウ本件発明4固有の貢献(ア) 本件発明4は,平成10年にゼオローラ生産用の工場である高岡工場が完成した際,被告が工場生産品を試験的に製造してみたところ,高い純度を保てないことが判明したことに端を発する。業界では,フォーナイン(99.99%)以上の純度で顧客にガスを提供することが常識となっており,被告が提示していた規格においても,高純度かつ不純物である窒素,酸素,水分等を一定程度以下に収めることとされていたことから,被告において,C5F8の純度を高めるためのドライエッチン グガスの製造方法の いた規格においても,高純度かつ不純物である窒素,酸素,水分等を一定程度以下に収めることとされていたことから,被告において,C5F8の純度を高めるためのドライエッチン グガスの製造方法の模索が課題となり,研究が始まったものである。 (イ) 本件発明4に際して行った実験に用いた装置や研究室等の設備は,いずれも被告が元々備えていたものである。そして,C5F8の純度を高めるための技術的基礎は既に被告において蓄積されていたものであり,本件発明4はこれを応用したものである。 (ウ) 本件発明4に係る研究作業等は,主にF及びGが実際の実験等の役割を担い,データ等の収集を行ったものである。 (エ) 本件発明4の権利化を主導したのは,被告の知的財産部の大仲である。また,出願書類完成後は,外部の特許事務所に原稿の確認を依頼するなど,被告の尽力があった。本件発明4の第1回の拒絶理由通知書の発送を受けた平成20年7月16日には,原告Aは既に退職しており,被告の知的財産部の担当者及びFが協議して,対応を行ったものである。 (4) 争点(2)ウ(本件発明4に対する原告Aの貢献)について(原告Aの主張)上記(1)及び(3)で述べたところによれば,原告Aの本件発明4に対する貢献は極めて大きい。 (被告の主張)仮に,原告Aが本件発明4の共同発明者であるとしても,原告Aは本件発明4の特徴的部分の着想に関与しておらず,また,実験等にも関わっていないから,本件発明4の共同発明者間における原告Aの貢献は著しく低い。 (5) 争点(2)エ(相当対価額の算定)について(原告らの主張)ア本件製品の売上額(ア) 平成10年度(上市)から平成12年11月30日(本件発明4の出願公開日)まで乙169の2によれば,上記期間の本件製品の売上額の合計は ついて(原告らの主張)ア本件製品の売上額(ア) 平成10年度(上市)から平成12年11月30日(本件発明4の出願公開日)まで乙169の2によれば,上記期間の本件製品の売上額の合計は,以下 のとおりである。 合計額約●(省略)●円●(省略)●円(平成10年度)●(省略)●円(平成11年度)●(省略)●円×8か月/12か月(平成12年度・同年11月30日まで)(イ) 平成12年12月1日から平成25年度末まで乙169の2によれば,上記期間の本件製品の売上額の合計は,以下のとおりである。 合計額約●(省略)●円●(省略)●円(平成12年度)×4か月/12か月(平成12年度・同年12月1日から)●(省略)●円(平成13年度)●(省略)●円(平成14年度)●(省略)●円(平成15年度)●(省略)●円(平成16年度)●(省略)●円(平成17年度)●(省略)●円(平成18年度)●(省略)●円(平成19年度)●(省略)●円(平成20年度)●(省略)●円(平成21年度)●(省略)●円(平成22年度)●(省略)●円(平成23年度)●(省略)●円(平成24年度)●(省略)●円(平成25年度)(ウ) 平成26年度から平成29年10月30日(本件発明1ないし3の 出願日から20年後)まで平成26年度以降の1年ごとの本件製品の売上額は,平成25年度の売上額がそのまま推移すると考えるのが合理的であり,上記期間の本件製品の売上額の合計は,以下のとおりである。 ●(省略)●円×(3年度分+7か月/12か月)≒●(省略)●円(エ) 平成29年10月31日から平成31年5月24日(本件発明4の出願日から20年後)まで上述のとおり,1年ごとの本件製品の売上額 省略)●円×(3年度分+7か月/12か月)≒●(省略)●円(エ) 平成29年10月31日から平成31年5月24日(本件発明4の出願日から20年後)まで上述のとおり,1年ごとの本件製品の売上額は,●(省略)●円であるから,上記期間の本件製品の売上額の合計は,以下のとおりである。 ●(省略)●円×(5か月/12か月+1年度+54日/365日)≒●(省略)●円イ超過利益率(ア) 平成25年度以前ゼオローラが上市された平成11年から平成23年までの各年における,ゼオローラの1kg当たりの販売価格,及び売上数量は別紙ゼオーラ事業の利益表のとおりであり,総売上額は少なくとも●(省略)●円である。ゼオローラの1kg当たりにかかる費用は●(省略)●円(原料費●(省略)●円,精製費●(省略)●円)であるから,平成11年から平成23年までの間に販売したゼオローラにかかる費用は,同別紙のとおり●(省略)●であり,ゼオローラにかかる被告の粗利益は●(省略)●円,粗利益率は●(省略)●%と算定される(なお,この数値は,被告が本件製品の売上げ等に関する資料を提出する前のものであるが,本件製品にかかる部門別損益計算書(乙149の4によっても,限界利益率は●(省略)●%(売上高●(省略)●円,変動費●(省略)●円,限界利益●(省略)●)であり,乙149の3によっても限界利益率●(省略)●%(売上高●(省略)●円,変動費●(省略)● 円,限界利益●(省略)●円)であるから,控えめに主張するものである。)。 そして,被告事業における通常の利益率は,同別紙のとおり,平成11年度から平成23年度までの平均で,●(省略)●%である。よって,上記粗利益率から上記通常の利益率との差●(省略)●%が,本件各発明により得られた超過利益率となる。した は,同別紙のとおり,平成11年度から平成23年度までの平均で,●(省略)●%である。よって,上記粗利益率から上記通常の利益率との差●(省略)●%が,本件各発明により得られた超過利益率となる。したがって,本件各発明により平成23年度までに被告が得た独占的利益は,上記ゼオローラの売上高●(省略)●円に超過利益率●(省略)●%を乗じて得られる額であるから,●(省略)●円となる。 (イ) 平成26年度以降平成26年度以降の1年ごとの本件製品の売上額,販売数量は,上記ア(ウ)のとおり,平成25年度と同じであると考えられるから,売上額●(省略)●円,販売数量●(省略)●トンである。本件製品1kg当たりの変動費は,上記(ア)のとおり●(省略)●円(1トン当たり●(省略)●円)であるから,利益率は,以下のとおりである。 (●(省略)●円-●(省略)●トン×●(省略)●円/トン)÷●(省略)●円≒●(省略)●(=●(省略)●%)そして,上記(ア)のとおり被告事業における通常の利益率は,●(省略)●%であるから,平成26年度以降の本件製品の超過利益率は,以下のとおりである。 ●(省略)●%-●(省略)●%=●(省略)●%ウ被告が受ける独占的利益(ア) 平成10年度から平成12年11月30日まで●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過利益率)≒●(省略)●円(イ) 平成12年12月1日から平成25年度末まで ●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過利益率)≒●(省略)●円(ウ) 平成26年度から平成29年10月30日まで●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過利益率)≒●(省略)●円(エ) 平成29年10月31日から平成31年5月24日まで●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過 月30日まで●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過利益率)≒●(省略)●円(エ) 平成29年10月31日から平成31年5月24日まで●(省略)●円(売上額)×●(省略)●%(超過利益率)≒●(省略)●円エ本件各発明への独占的利益の振り分け及び原告らが受けるべき相当対価額本件各発明は,いずれも本件製品に係る独占的利益の源泉となるものであり,本件各発明に独占的利益を振り分けるのは無意味であると考えるが,本件各発明はいずれも同程度の抑止力を有するものとして便宜上行うと,原告らが受けるべき相当対価額は,以下のとおり算定される。 (ア) 本件発明1本件発明1に係る独占的利益は,平成10年度から平成12年11月30日までの33.3%,平成12年12月1日から平成25年度末までの25%,平成26年度から平成29年10月30日までの25%であるから,以下のとおである。 ●(省略)●円×33.3%+●(省略)●円×25%+●(省略)●円×25%≒●(省略)●円そして,被告の貢献度は80%を超えるものではないから,原告らが本件発明1につき受けるべき相当対価額はそれぞれ,以下のとおりとなる。 原告A:●(省略)●円×20%÷2≒●(省略)●円原告B:●(省略)●円×20%÷2≒●(省略)●円 (イ) 本件発明2本件発明2に係る独占的利益及び原告らが受けるべき相当対価額は,本件発明1の場合と同様に考えられるから,原告らが本件発明2につき受けるべき相当対価額はそれぞれ,●(省略)●円である。 (ウ) 本件発明3本件発明3に係る独占的利益及び原告らが受けるべき相当対価額は,本件発明1の場合と同様に考えられるから,原告らが本件発明3につき受けるべき相当対価額はそれぞれ,●(省略)●円である。 (エ) 本件発明3に係る独占的利益及び原告らが受けるべき相当対価額は,本件発明1の場合と同様に考えられるから,原告らが本件発明3につき受けるべき相当対価額はそれぞれ,●(省略)●円である。 (エ) 本件発明4本件発明4に係る独占的利益は,平成12年12月1日から平成25年度末までの25%,平成26年度から平成29年10月30日までの25%,平成29年10月31日から平成30年5月24日までの100%であるから,以下のとおりである。 ●(省略)●円×25%+●(省略)●円×25%+●(省略)●円≒●(省略)●円そして,被告の貢献度は80%を超えるものではないから,原告Aが本件発明4につき受けるべき相当対価額は,以下のとおりとなる。 ●(省略)●円×20%≒●(省略)●円オまとめ以上によれば,原告Bが,被告に対し,本件発明1ないし3についての日本及び外国における特許を受ける権利を被告が承継したことにより受けるべき相当対価額は●(省略)●円である。また,原告Aが,被告に対し,本件各発明についての日本及び外国における特許を受ける権利を被告が承継したことにより受けるべき相当対価額は●(省略)●円である。なお,本件各発明と外国の対応特許は協働して世界的な抑止力を発揮しているので,これを殊更に区分することは無理であり,実益もないが,便宜上,原 告らの相当対価請求権の根拠を,日本における特許を受ける権利と外国における特許を受ける権利で分けるとすれば,形式的に50%ずつとなる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告は,本件製品以外の被告製品の「通常の利益率」又は被告事業の「一般的な利益率」というものを想定して,本件製品の利益率との差分を「超過利益率」とし,これを本件製品の売上高に乗じて得られたものが本件各発明による被 以外の被告製品の「通常の利益率」又は被告事業の「一般的な利益率」というものを想定して,本件製品の利益率との差分を「超過利益率」とし,これを本件製品の売上高に乗じて得られたものが本件各発明による被告の独占的利益であると主張するが,独自の見解にすぎず,通常の仮想実施料方式が採用されるべきである。そもそも,製品ごとに利益率が異なるのは,原材料や販売管理の方法等,種々の要素によるものであるから,上記差分がすべて特許によるものであるということはできない。また,原告らは,本件製品の利益率を算定するに当たり,本件製品に係る費用につき,本件製品の製造過程において生じる販売管理費等の費用を等閑視し,本件製品の販売に係る費用として原料費と精製費しか想定しておらず失当である。 仮に,被告が,原告らに対し,本件各発明につき相当対価を支払う必要があるとしても,被告は,原告らに対し,既に十分な金銭を支給している。すなわち,被告は,原告Aに対しては,本件発明1ないし3についての出願時発明奨励金●(省略)●円及び優秀発明奨励金●(省略)●円,並びに本件発明4についての出願時発明奨励金●(省略)●円及び優秀発明奨励金●(省略)●円の合計●(省略)●円を,原告Bに対しては,本件発明1ないし3についての出願時発明奨励金●(省略)●円,登録時補償金●(省略)●円及び優秀発明奨励金●(省略)●円の合計●(省略)●円を支払った。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実等,後掲の証拠(ただし,以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件発明1ないし3に至る経緯 ア被告は,昭和63年当時,合成ゴム原料からイソプレンを抽出した後の副原料から製品を創出することを内容とするC5総合利用計画の一環として,特にシクロペ 本件発明1ないし3に至る経緯 ア被告は,昭和63年当時,合成ゴム原料からイソプレンを抽出した後の副原料から製品を創出することを内容とするC5総合利用計画の一環として,特にシクロペンタンの溶剤用途開発を検討しており,●(省略)●と議論を重ねていたが,同社からシクロペンタンの持つ可燃性が指摘され,そのことが開発に当たっての課題となっていた。被告の研究企画部長であったJと原告らは,同社からの指摘を受け,シクロペンタンの持つ可燃性への対処として,シクロペンタンをフッ素化することを発案し,その後,被告においてシクロペンタンのフッ素化が正式な研究テーマとなった(原告B本人,甲5,乙29)。 イシクロペンタンをフッ素化するに当たり,被告には実用レベルでのフッ素化技術がなかったことから,通商産業省工業技術院の化学技術研究所のフッ素化学研究室長であったCからフッ素化技術を指導してもらうこととなり,原告Aが同研究所に派遣されることとなった。原告Aは,平成元年9月から平成2年6月までの間,平日は同研究所で技術指導を受け,被告には月に1度進捗状況の報告を行っていた。原告Aが被告に復帰した後の平成3年からは,被告において,オクタフルオロシクロペンタンなどの合成技術の開発など,溶剤用途としてのフッ素化合物の研究が重ねられた(原告A本人,証人K,甲5,乙29)。 ウ被告では,主にフッ素化合物の溶剤用途としての事業化が検討されていたが,平成8年2月に,CからEIAJの半導体製造用フロン代替ガスプロジェクトを紹介されたことから,被告の事業企画開発部は,被告において扱っていた化合物の中から,オクタフルオロシクロペンタンの合成中間体であったオクタフルオロシクロペンテンなどを選択し,サンプルとして提供した(原告B本人,原告A本人,証人K,甲5,乙 ,被告において扱っていた化合物の中から,オクタフルオロシクロペンタンの合成中間体であったオクタフルオロシクロペンテンなどを選択し,サンプルとして提供した(原告B本人,原告A本人,証人K,甲5,乙29)。 エ平成8年7月,被告において,事業企画開発部内にフッ素化C5事業開発チームが立ち上げられ,原告Bは同チームのリーダーとなった。被告の 開発研究所の合成研究室の室長であった原告Aも,同チームの一員であった(乙29)。 オ平成8年9月,上記プロジェクトのメンバーであった●(省略)●など半導体製造メーカーによる性能評価の結果,オクタフルオロシクロペンテンがエッチングガスとして有望であることが判明した(原告B本人,原告A本人,乙28)。 カオクタフルオロシクロペンテンがエッチングガスとして有望であるとの結果を受けて,被告においてこれを特許化することが検討された。エッチングガスとしてのオクタフルオロシクロペンテンの特許化を目指すに当たり,オクタフルオロシクロペンテンをエッチングガスに使用したものとして,既にソニー株式会社の特許出願(特願平3-40966)に係る発明(以下「ソニー発明」という。)があったことから,原告らは,上記プロジェクトにおいてオクタフルオロシクロペンテンの性能評価を行った●(省略)●などの半導体製造メーカーの担当者からソニー発明との違いを聴取した結果,被告の提供したオクタフルオロシクロペンテンによるエッチングは,①エッチングの開始直後に基体の温度が100℃を超えること,②プラズマ密度が高いこと,③酸素等の混入が積極的に望まれることの点で,ソニー発明と相違することが判明し,被告においてこれを出願することとした(原告B本人,原告A本人,甲5,87,乙1)。 (2) 本件発明4に至る経緯ア平成10年8 積極的に望まれることの点で,ソニー発明と相違することが判明し,被告においてこれを出願することとした(原告B本人,原告A本人,甲5,87,乙1)。 (2) 本件発明4に至る経緯ア平成10年8月7日に行われた被告と●(省略)●の会議において,●(省略)●から,C5F8を利用するに当たって要求されるスペックについて,従来使用してきたガスのスペックと同等,又は同スペックとは異なるものであっても,問題ないことをデータで示すことができればよいとの意見が述べられた。そして,●(省略)●からは,従来使用してきたガスのスペックの例として,純度Five9(99.999%),水分100 0ppb以下,空気4000ppb以下のC4F8のスペックが挙げられるとともに,窒素がプラズマ中では不活性ガスではないとの見解が示された(証人K,被告代表者L,乙32)。 イ Lは,平成10年9月1日,被告の情報材料事業部ゼオローラ開発チーム長となり,エッチングガス用途のC5F8の事業化に専従するようになった(乙61,186)。 ウ Lは,平成10年9月24日,ゼオローラの事業化に関する報告において,ゼオローラの規格については●(省略)●との間で取決めがあるところ,混入してくる窒素の除去対策が必要であり,蒸留工程での除去と充填時の除去の両方を検討していること,窒素含有量として100ppm以下が必要であることを報告した(乙102)。 エ Lは,平成10年9月25日,C5F8からの窒素除去方法として,蒸留時にヘリウムを使用する方法,及び窒素で蒸留し,その後,分離膜等を使用して窒素を除去する方法が可能であるか,被告の生産技術部において検討するよう要請した(甲61)。 オ原告Aは,平成10年9月28日,C5F8からの窒素除去方法として,C5F8を蒸留後に沸 を使用して窒素を除去する方法が可能であるか,被告の生産技術部において検討するよう要請した(甲61)。 オ原告Aは,平成10年9月28日,C5F8からの窒素除去方法として,C5F8を蒸留後に沸騰させて窒素ガスを追い出し,冷却時にヘリウムガスを注入してする方法を提案した(甲61,乙104の1)。 カ Lは,平成10年10月5日,ゼオローラの規格として,純度を99. 99%以上,窒素含有率100ppm以下,酸素含有率20ppm以下,類縁体(パーフルオロ1,3ブタジエン)含有量50ppm以下,水分含有量10ppm以下を目標値として提案した(乙34)。 キ F及びGは,平成10年9月からエッチングガスの純度を上げるための技術開発への関与を開始し,その方法を検討した。そして,C5F8の精製は,加圧も減圧も行えない被告の高岡工場の蒸留塔設備で行うことが決まっていたことから,同年12月には,蒸留段階でヘリウムと置換するこ とを基本として,還流法を検討することとなった。還流法としては,加熱還流することと単蒸留することが候補となり,Fが加熱還流を,Gが単蒸留を担当することとなった(証人F,証人G,乙23,30)。 ク原告Aは,平成11年2月26日,本件発明4に係る特許出願の明細書の案文を作成するに当たり,E,F,G,及び鈴木健文に対し,それぞれが担当した部分の実施例を記載するように指示した。Fは,本件発明4に係る特許明細書の実施例1ないし3を,Gは実施例4を担当した。同明細書には,実施例1ないし13が存在するところ,実施例1ないし4は高純度プラズマ反応用ガスの製造に関するもの,実施例5ないし13は高純度プラズマ反応ガスによるドライエッチングに関するものである(証人F,甲4,55)。 ケ被告は,当初,オクタフルオロシクロペンテンの純 ラズマ反応用ガスの製造に関するもの,実施例5ないし13は高純度プラズマ反応ガスによるドライエッチングに関するものである(証人F,甲4,55)。 ケ被告は,当初,オクタフルオロシクロペンテンの純度を99.95容量%として特許出願を行う予定であったが,原告Bが,競合他社が99. 95%をわずかに下回る製品を出してこないとも限らないとの理由で,純度を99.90容量%と修正することを提案し,このとおり修正された。 純度99.90容量%のプラズマ反応用ガスの性能実験は行われていない(原告A本人,甲53,乙103の1)。 2 争点(1)(原告らは本件発明1ないし3の共同発明者といえるか,原告Aは本件発明4の単独発明者又は共同発明者といえるか)について(1) 発明者について発明とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項),「産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができる」と規定されている(同法29条1項柱書き)。そして,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに, 完成したと解すべきである(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。したがって,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきであり,①部下の研究者に対し,具体的着想を示さずに,単に研究テーマを与えたり,一般的な助言や指導を行ったにすぎない者(単なる管理者),②研究者の指示に従い,単にデー 作に関与した者を指すというべきであり,①部下の研究者に対し,具体的着想を示さずに,単に研究テーマを与えたり,一般的な助言や指導を行ったにすぎない者(単なる管理者),②研究者の指示に従い,単にデータをまとめた者や実験を行った者(単なる補助者),③発明者に資金や設備を提供するなどし,発明の完成を援助した者又は委託した者(単なる後援者・委託者)は,発明者たり得ない。 発明者となるためには,一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化の過程において,発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。 そして,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分を指すものと解すべきである。 (2) 原告らは本件発明1ないし3の共同発明者といえるかア本件発明1ないし3への原告らの関与本件発明1ないし3に至る経緯は,大要,前記1認定のとおりであるところ,原告らは,①シクロペンタンをフッ素化することを考えたこと,②フッ素化技術の習得に当たりCとの関係を築いたこと,③化学技術研究所に派遣する者を原告Aに決めたこと,④CからEIAJのプロジェクトを紹介され,サンプルを選択し,提供したこと,⑤同プロジェクトの評価結果を受けて,特許化することを検討し,関係者間での意見調整,先行技術の調査,出願のための文案の作成等をしたことは,すべて原告ら二人で行 ったものであると主張し,その旨供述する。 しかし,証拠(原告B,原告A,証人K,甲5,乙29)によれば,原告らが,被告の従業員として被告のC5総合利用計画に関与 ,すべて原告ら二人で行 ったものであると主張し,その旨供述する。 しかし,証拠(原告B,原告A,証人K,甲5,乙29)によれば,原告らが,被告の従業員として被告のC5総合利用計画に関与し,被告におけるフッ素化技術の導入とその後の研究に尽力したことは認められるものの,一つのプロジェクトの主要事項を,被告の一従業員である原告ら二人だけで決定,実行し,被告の他の従業員はみなそれに追従したにすぎないとはおよそ考え難く,この点に関する客観的裏付けに乏しい原告らの上記供述は直ちに信用することができない。 イ本件発明1ないし3の特徴的部分への創作的寄与発明者に当たるというためには,発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことが必要であることは,前記(1)説示のとおりである。 しかし,原告らが本件発明1ないし3の共同発明者であることの根拠として主張する,本件発明1ないし3に対する原告らの関与は,①シクロペンタンをフッ素化することを考えたこと,②フッ素化技術の習得に当たりCとの関係を築いたこと,③化学技術研究所に派遣する者を原告Aに決めたこと,④CからEIAJのプロジェクトを紹介され,サンプルを選択し,提供したこと,⑤同プロジェクトの評価結果を受けて,特許化することを検討し,関係者間での意見調整,先行技術の調査,出願のための文案の作成等をしたことなどであり,これらすべてを原告ら二人で行ったと認められないことは,上記アのとおりである。 また,仮に,本件発明1ないし3に対する原告らの関与が,原告らの主張するとおりであったとしても,上記関与それ自体は,被告の事業に対する大きな貢献であると評価することができるものの,単なるビジネス面での貢献にすぎないものというべきである。 そして,原告らが,本人尋問において,EIAJの性能評価実験におけ 自体は,被告の事業に対する大きな貢献であると評価することができるものの,単なるビジネス面での貢献にすぎないものというべきである。 そして,原告らが,本人尋問において,EIAJの性能評価実験における条件の決定に関与したこともなければ,オクタフルオロシクロペンテン の性能に関して,そのメカニズム等の解析も行っていないことを供述していることも考慮すれば,原告らは,本件発明1ないし3の発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したものと到底認めることはできず,原告らの主張はそれ自体失当であると言わざるを得ない。 ウ小括以上によれば,原告らは,本件発明1ないし3特徴的部分に創作的に寄与したとはいえず,本件発明1ないし3の共同発明者であると認めることはできない。 (3) 原告Aは本件発明4の単独発明者又は共同発明者といえるかア原告Aの関与本件発明4に至る経緯は,大要,前記1認定のとおりである。 原告Aは,本件発明4は当業者の技術常識に反して原告Aが単独で考案したものであり,プラズマ反応用ガスの残余の不純物のうち,酸素ガスや窒素ガスの合計量を制限することにより,安定したドライエッチング反応やCVDが実現されることを発見したと主張し,その旨供述する。しかし,かかる原告Aの主張を客観的に裏付ける実験結果や実験結果の具体的な分析などは提出されておらず,他に同主張を裏付ける証拠もない。 イ本件発明4の特徴的部分(ア) 公知文献について本件発明4に係る特許出願前である平成4年9月14日に頒布された刊行物である乙1文献には,以下の記載がある(乙1)。 「【特許請求の範囲】【請求項1】分子構造の少なくとも一部に環状部を有する飽和フルオロカーボン系化合物を含むエッチング・ガスを用いて被エッチング基体の温度を50℃以下に制 がある(乙1)。 「【特許請求の範囲】【請求項1】分子構造の少なくとも一部に環状部を有する飽和フルオロカーボン系化合物を含むエッチング・ガスを用いて被エッチング基体の温度を50℃以下に制御しながら基板上に形成されたシリコン化合物 層のエッチングを行うことを特徴とするドライエッチング方法。」「【0028】実施例3本実施例は,本願の第2の発明をコンタクト・ホール加工に適用し,・・・C5F8(オクタフルオロシクロペンテン・・・)を使用して,酸化シリコンからなる層間絶縁膜をエッチングした例である。・・・」(イ) 本件発明4に係る特許明細書には,以下の記載がある(甲4)。 「【0004】・・・例えば,1,2-ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンをフッ化カリウムと反応させて得られた粗生成物を,工業的に通常用いられる方法で精留したオクタフルオロシクロペンテンを,酸化シリコンに代表されるシリコン化合物層のドライエッチングに適用すると,エッチング条件によってはエッチング速度やフォトレジストおよびポリシリコンなどの保護膜に対する選択性が十分満足できるとは言い難く,さらにはエッチングが高速度で均一に行われないという問題があった。」「【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは,・・・ある種の不純物の存在がプラズマ反応に大きく影響することを見出した。また,プラズマ反応に影響する特定の不純物を効率よく除去して極めて高純度なオクタフルオロシクロペンテンを得る方法の確立にも成功して,本発明を完成させるに到った。」(ウ) 上記(ア)で認定したところによれば,乙1文献には,オクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングに使用することが開示されており,本件各発明の特許出願時点で公知技術であったことが認められる。 (ウ) 上記(ア)で認定したところによれば,乙1文献には,オクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングに使用することが開示されており,本件各発明の特許出願時点で公知技術であったことが認められる。そし て,原告らも,陳述書(甲87)において,「従来技術の調査において『問題特許』として発見されたのは乙第1号証のソニーの特許で,C5F8を用いたエッチングについて書かれておりました。この特許のため,当初原告Aらが企画したC5F8そのもの及びその上位概念(環状不飽和フッ素化合物など)を特許化することは不可能になっただけでなく,・・・」と述べていることからすれば,オクタフルオロシクロペンテンをドライエッチングに使用すること自体は,本件発明4に係る特許出願の時点で公知技術であったと認められる。そして,上記(イ)で認定した特許明細書の記載からすれば,本件発明4は,従来のエッチング速度及び選択性に係る問題に対する特定の不純物の影響を明らかにするとともに,不純物の効率的な除去により高純度のオクタフルオロシクロペンテンを得る方法を確立したものであると認められるから,本件発明4-1及び4-2の特徴的部分は,不純物の含有量及びオクタフルオロシクロペンテンの純度を規定した部分,すなわち,「オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%以上であり,かつ残余の微量ガス成分として含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppm以下である」との部分,及び上記部分に加え,「水分含量が20重量ppm以下である」との部分であり,本件発明4-3の特徴的部分は,「オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を0属の不活性ガス中で精留する」との部分,本件発明4-4の特徴的部分は,「オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を,純度99 オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を0属の不活性ガス中で精留する」との部分,本件発明4-4の特徴的部分は,「オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を,純度99. 9容量%以上に精留する第1工程,次いで残留する微量不純物を除去する第2工程」との部分であるというべきである。なお,本件発明4-3及び4-4は,上記精製方法により,本件発明4-1及び4-2のプラズマ反応用ガスを製造するものであり,上述した本件発明4-1及び4-2の特徴的部分は,本件発明4-3及び4-4の特徴的部分でもある。 ウ本件発明4の特徴的部分への創作的寄与(ア) 本件発明4-1及び4-2の特徴的部分への創作的関与についてa 本件発明4-1及び4-2に係る着想前記1(2)カ認定のとおり,Lが,平成10年10月5日時点で,ゼオローラの規格として,純度99.99%以上,窒素含有量100ppm以下,酸素含有量20ppm以下との案を提示していたことから,オクタフルオロシクロペンテンの純度を上げ,窒素及び酸素の含有量を下げることは,被告内部の目標として掲げられていたものと認められる。そして,前記1(2)ア認定のとおり,Lによる上記規格の提案に先立ち,同年8月7日に行われた被告と●(省略)●との会議において,●(省略)●から,C5F8のスペックについての要請と共に,窒素がプラズマ中では不活性ガスではないとの見解が示されたこと,Lが,同年9月24日のゼオローラの事業化に関する報告において,ゼオローラの規格については●(省略)●との間で取決めがあるとして,混入してくる窒素の除去対策を検討しており,窒素含有量として100ppm以下が必要であると報告していることに照らせば,オクタフルオロシクロペンテンの純度を上げ,窒素及び酸素の含 取決めがあるとして,混入してくる窒素の除去対策を検討しており,窒素含有量として100ppm以下が必要であると報告していることに照らせば,オクタフルオロシクロペンテンの純度を上げ,窒素及び酸素の含有量を下げることは,少なくとも●(省略)●からの要請であって,原告Aが着想したものと認めることはできない。 これに対し,原告Aは,エッチング業者による単なる純度を上げる要請は,本件発明4-1及び4-2の着想には当たらない旨主張する。 しかし,前記1(2)ア認定のとおり,●(省略)●はC4F6と同等のスペックとして具体的な数値を要求しているし,また,同スペックとは異なるものであっても問題ないことをデータで示すことができればよいとの見解について,具体性に欠けるとしても,前記1(2)エ認定のとおり,この見解を踏まえてゼオローラの規格の具体的な案を提 示しているのはLであって,原告Aがゼオローラの純度並びに窒素及び酸素の含有量について,何らかの提案をしたとは認められない。 b 本件発明4-1及び4-2の効果について原告Aは,本件発明4につき,プラズマ反応用ガスの残余の不純物のうち,酸素ガスや窒素ガスの合計量を制限することにより,安定したドライエッチング反応やCVDが実現されることを発見したと主張しているところ,かかる効果の観点からも,以下のとおり,原告Aが発明者であると認めることはできない。 本件発明4-1及び4-2のプラズマ反応用ガスは,オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%以上であり,窒素ガス及び酸素ガスの合計量が200容量ppm以下であるところ,前記1(2)ケで認定したところによれば,このようなスペックを持つガスについてのエッチング性能実験は行われておらず,オクタフルオロシクロペンテンの純度99.9容量%以上とい ppm以下であるところ,前記1(2)ケで認定したところによれば,このようなスペックを持つガスについてのエッチング性能実験は行われておらず,オクタフルオロシクロペンテンの純度99.9容量%以上というのは,当初99.95%以上(なお,この数値についての性能実験が行われたことを示す証拠もない。)として出願しようとしていたところ,競合他社が99.95%をわずかに下回る製品を出してこないとも限らないとの原告Bの進言により,何ら根拠なく決められた数値である。また,証拠(原告A本人)によれば,窒素ガス及び酸素ガスの合計量が200容量ppm以下というのも,被告のユーザーにサンプルとして出荷していたC5F8を測定したところ,窒素ガス及び酸素ガスの合計量が140ppmであり,この数値を丸めたものにすぎないことが認められる。さらに,本件発明4-2の水分の含有量についても,20重量ppm以下での性能実験が行われたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件発明4-1及び4-2のプラズマ反応用ガスについてのエッチング性能実験が行われていない以上,原告Aが自身の発明者性を裏付け るべく主張する,安定したドライエッチング反応やCVDが実現されるという効果を同プラズマ反応用ガスが有するか否かは不明であるから,原告Aが同効果を発見したということはありえないというべきである。 (イ) 本件発明4-3及び4-4の特徴的部分への創作的関与について証拠(証人F,証人G)及び上記1(2)エで認定したLによる窒素除去方法の検討要請によれば,本件発明4-3及び4-4の精製方法を提案したのはLであると認められる。前記1(2)オで認定したとおり,原告Aも,窒素除去方法についての自身の案を提示しているが,証拠(証人F,証人G,甲61,乙30)によれば,原告Aの提 の精製方法を提案したのはLであると認められる。前記1(2)オで認定したとおり,原告Aも,窒素除去方法についての自身の案を提示しているが,証拠(証人F,証人G,甲61,乙30)によれば,原告Aの提案が書かれた電子メールの宛先に,FとGは入っておらず,エッチングガスの純度を高める実験に携わっていたF及びGにおいて,原告Aの提案を把握していないこと,原告Aの案は,窒素を除去する工程をヘリウム雰囲気下で行うものではなく,本件発明4-3及び4-4の精製方法とは異なることが認められるから,本件発明4-3及び4-4の精製方法に係る特徴部分を原告Aが着想したとは認められない。なお,原告A自身が,本人尋問において,本件発明4-3及び4-4の精製方法を提案していないことを供述している。 もっとも,証拠(原告A本人,証人F及び被告代表者L)によれば,本件発明4-3及び4-4の精製方法自体は,化学的知見を有するものであれば容易に思いつくものであることが認められるから,このような精製方法を提案しただけでは本件発明4-3及び4-4の特徴的部分に創作的に寄与したものとはいえず,発明者とはいえない。本件発明4-3及び4-4においては,実験を繰り返し行い,上記精製方法により具体的に本件発明4-1及び4-2のプラズマ反応用ガスを製造できることを見出してこそ,その発明の特徴的部分への創作的な寄与があったと いうべきである。そして,証拠(原告A本人,証人F,証人G)及び前記1(2)キ及びク認定の事実によれば,原告Aは直接実験を行っておらず,本件発明4-3及び4-4に係る実験を実際に行ったのはF及びGであると認められるから,本件発明4-3及び4-4の共同発明者は,F及びGであるというべきであり,原告Aは単独発明者とも,共同発明者ともということができない。こ に係る実験を実際に行ったのはF及びGであると認められるから,本件発明4-3及び4-4の共同発明者は,F及びGであるというべきであり,原告Aは単独発明者とも,共同発明者ともということができない。これに対し,原告Aは,F及びGが原告Aの具体的な指示に従った補助者にすぎないと主張するが,原告AがF及びGに対し行ったとする本件発明4-3及び4-4に関する具体的な指示の内容を客観的に裏付ける的確な証拠はない。この点,被告の従業員であったEの陳述書(甲71)には,オクタフルオロシクロペンテンに混在する窒素及び酸素の濃度分析の確立につき,原告Aから具体的な指示を受けたこと,原告Aの指示の下,F及びGらを指揮し,実験を分担したことの記載があるが,オクタフルオロシクロペンテンに混在する窒素及び酸素の濃度分析の確立は,前記イ(イ)で認定した本件発明4-3及び4-4の特徴的部分に直接関係するものとは認められず,また,F及びGに対して行ったとする指示の具体的な内容も明らかではないから,上記陳述書をもって,本件発明4-3及び4-4の特徴的部分に関し,原告AからF及びGに対して具体的な指示があったと認めることはできない。その他,本件全証拠に照らしても,原告AがF及びGらに対して具体的な指示を行い,本件発明4-3及び4-4の特徴的部分に創作的に寄与したと認めることはできない。 (ウ) 小括以上によれば,原告Aは,本件発明4の特徴的部分に創作的に寄与したとはいえず,本件発明4の単独発明者であるとも,共同発明者であるとも認められない。 3 まとめ したがって,原告らはいずれも,本件各発明の発明者であるとは認められない。 第4 結論以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却するこ たがって,原告らはいずれも,本件各発明の発明者であるとは認められない。 第4 結論以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 本井修平 発明目録 1 発明の名称ドライエッチング方法優先日平成8年10月30日優先権主張番号特願平8-305818出願日平成9年10月30日出願番号特願平9-312906公開日平成10年7月21日公開番号特開平10-189553登録日平成20年11月14日特許番号特許第4215294号特許請求の範囲【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチングガスを用い,かつ,エッチング時において,被エッチング基体の温度を,外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく,被エッチング基体が到達する温度である60℃~250℃として,プラズマによりドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。 2 発明の名称ドライエッチング用ガス組成物およびドライエッチング方法優先日平成8年10月30日優先権主張番号特願平8-305819出願日平成9年10月30日出願番号特願平9-312907公開日平成10年7月31日公開番号特開平10-199865 月30日優先権主張番号特願平8-305819出願日平成9年10月30日出願番号特願平9-312907公開日平成10年7月31日公開番号特開平10-199865 特許請求の範囲【請求項1】パーフルオロシクロオレフィンと,該パーフルオロシクロオレフィンに基づき1~40モル%の酸素ガスおよびガス状酸素含有化合物の中から選ばれた少なくとも一種の酸素成分を含んでなるドライエッチング用ガス組成物。 【請求項2】パーフルオロシクロオレフィンと,該パーフルオロシクロオレフィンに基づき1~40モル%の酸素ガスおよびガス状酸素含有化合物の中から選ばれた少なくとも一種の酸素成分を含んでなるガス組成物を用いてドライエッチングを行うことを特徴とするドライエッチング方法。 3 発明の名称ドライエッチング法優先日平成8年10月30日優先権主張番号特願平8-305820出願日平成9年10月30日出願番号特願平9-312908公開日平成10年7月31日公開番号特開平10-199866特許請求の範囲【請求項1】パーフルオロシクロオレフィンを含むドライエッチング用ガスを用いて,1010cm-3以上の高密度領域のプラズマを発生させて被エッチング基体をドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング法。 4 発明の名称プラズマ反応用ガス及びその製造方法出願日平成11年5月24日 出願番号特願平11-143562公開日平成12年11月30日公開番号特開2000-332001登録日平成22年4月16日登録番号特許第4492764号特許請求の範囲【請求項1】半導体装置製造時の,ドライエッチン 2年11月30日公開番号特開2000-332001登録日平成22年4月16日登録番号特許第4492764号特許請求の範囲【請求項1】半導体装置製造時の,ドライエッチングまたはケミカル・ベーパー・デポジッションに用いられる,オクタフルオロシクロペンテンからなる半導体装置製造用プラズマ反応用ガスであって,該半導体装置製造用プラズマ反応用ガスの全量に対して,オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%以上であり,かつ残余の微量ガス成分として含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppm以下であることを特徴とする,半導体装置製造用プラズマ反応用ガス。 【請求項2】水分含量が20重量ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置製造用プラズマ反応用ガス。 【請求項3】オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を,0属の不活性ガス中で精留することを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置製造用プラズマ反応用ガスの製造方法。 【請求項4】オクタフルオロシクロペンテンを主成分とする反応粗生成物を,純度99. 9容量%以上に精留する第1工程,次いで残留する微量不純物を除去する第2工程,からなることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置製造用プラズマ反応用ガスの製造方法。」 外国特許発明目録 1 本件発明1及び3を基礎とする特許(1) 韓国特許 KR 10-0490968【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンを含有するドライエッチング用ガスを用いて,プラズマガス組成物の圧力10torr~10-5torrで,そして被エッチング基体の到達温度60℃~250℃で1010cm-3以上の高密度領域のプラズマを発生させて被エッチング基体をドライエッチングす ラズマガス組成物の圧力10torr~10-5torrで,そして被エッチング基体の到達温度60℃~250℃で1010cm-3以上の高密度領域のプラズマを発生させて被エッチング基体をドライエッチングすることを特徴とする,ドライエッチング方法。 (2) 米国特許 US 6,383,403【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用いて,ガスの圧力が10Torrから10-5Torrの範囲で,基体の到達温度を実質的に制御せずに,基体の到達温度60℃から250℃の範囲で,少なくとも1010イオン/cm3の高密度領域のプラズマを発生させて被エッチング基体をドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。 (3) 欧州特許 EP 0 964 438B1【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用いて,被エッチング基体をドライエッチングするドライエッチング方法において,ガスの圧力が1333Pa(10Torr)から133.3.10-5Pa(10-5Torr)の範囲で,基体の到達温度を制御せずに,基体の到達温度60℃から250℃の範囲で,少なくとも1010/cm3の高密度領域のプラズマを発生させることを特徴とするドライエッチング方法。 (4) 台湾特許 TW 403955【請求項1】 パーフルオロシクロオレフィンを含有するドライエッチング用ガスを用い,1010cm-3以上の高密度領域のプラズマを発生させて,被エッチング基体に対してドライエッチングを行うことを特徴とする,ドライエッチング法。 2 本件発明2を基礎とする特許(1) 韓国特許 KR 10-0510158【請求項12】オクタフルオロシクロペンテンと,該オクタフルオロシクロペンテンに対し1~ ,ドライエッチング法。 2 本件発明2を基礎とする特許(1) 韓国特許 KR 10-0510158【請求項12】オクタフルオロシクロペンテンと,該オクタフルオロシクロペンテンに対し1~40モル%の酸素ガス及びガス状酸素含有化合物の中から選択される1種以上の酸素成分,そしてガス組成物合計重量に対し50モル%以下の飽和ハイドロフルオロカーボンを含有するガス組成物を用いてドライエッチングを行うことを特徴とする,ドライエッチング方法。 (2) 米国特許 US 6,322,715【請求項8】クレーム1(判決注:(i)オクタフルオロシクロペンテン,(ii)該オクタフルオロシクロペンテンに基づき1~40モル%の,酸素ガスおよびガス状酸素含有化合物の中から選ばれた少なくとも一種の酸素成分,および(iii)ドライエッチング用ガス組成物全体に基づき50モル%以下の飽和ハイドロフルオロカーボンガスを含んでなるドライエッチング用ガス組成物。)に記載のガス組成物を用いてドライエッチングを行うステップを含むドライエッチング方法。 (3) 欧州特許 EP 0 948 033B1【請求項8】クレーム1(判決注:(i)オクタフルオロシクロペンテン,(ii)該オクタフルオロシクロペンテンに基づき1~40モル%の,酸素ガスおよびガス状酸素含有化合物の中から選ばれた少なくとも一種の酸素成分,および(iii)ドライエッチング用ガス組成物全体に基づき50モル%以下の飽和 ハイドロフルオロカーボンガスを含んでなるドライエッチング用ガス組成物。)から7のいずれか一項に記載のガス組成物を用いてドライエッチングを行うことを特徴とするドライエッチング方法。 (4) 台湾特許 TW 401602【請求項9】オクタフルオロシクロペンテンと,該オク のいずれか一項に記載のガス組成物を用いてドライエッチングを行うことを特徴とするドライエッチング方法。 (4) 台湾特許 TW 401602【請求項9】オクタフルオロシクロペンテンと,該オクタフルオロシクロペンテンに対して1~40モル%の酸素ガス及びガス状酸素含有化合物の中から選ばれた,少なくとも1種の酸素成分とを含有することにより構成されるガス組成物を用いてドライエッチングを行うことを特徴とする,ドライエッチング方法。 3 本件発明4を基礎とする特許(1) 米国特許 US 6,884,365【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンからなるプラズマ反応用ガスであって,該オクタフルオロシクロペンテンは純度が99.9容量%以上であり,0. 1%未満の微量ガス不純物を有し,該微量ガス不純物における窒素ガスと酸素ガスの合計量が150容量ppm以下であるプラズマ反応用ガス。 (2) 欧州特許 EP 1 186 585B1【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンからなるプラズマ反応用ガスにおいて,該プラズマ反応用ガスの全量に対して,オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%以上であり,かつ残余の微量ガス成分として含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppm以下であることを特徴とするプラズマ反応用ガス。 (3) 台湾特許 TW 492953【請求項1】オクタフルオロシクロペンテンからなるプラズマ反応用ガスであって,該 プラズマ反応用ガスの総量に対して,オクタフルオロシクロペンテンの純度が99.9容量%であり,かつ残余の微量ガス成分として含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppm以下であり,ドライエッチング,ケミカルペーパーデポジッションまたはアッシングのいずれか1種のプラズマ反応に であり,かつ残余の微量ガス成分として含まれる窒素ガスと酸素ガスの合計量が200容量ppm以下であり,ドライエッチング,ケミカルペーパーデポジッションまたはアッシングのいずれか1種のプラズマ反応に用いられることを特徴とする,プラズマ反応用ガス。

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