- 1 -平成29年3月3日判決言渡平成25年(行ウ)第321号相続税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求中野税務署長が原告に対し平成24年3月27日付けでした再更正処分(中資特第85号)のうち,修正申告額1億7480万6500円を超える部分並びに平成23年6月29日付け(中資特第132号)及び平成24年3月27日付け(中資特第85号)でそれぞれした過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,亡P1(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人のうちの一人である原告が,本件被相続人からの相続(以下「本件相続」という。)において,相続財産中の借地権が設定されている別紙2記載の各土地(以下「本件各土地」という。なお,別紙2中の「本件A土地」等の略語は以下においても用いる。)の評価額を,不動産鑑定士による鑑定評価により算定した額として相続税の申告及び修正申告をしたところ,中野税務署長が,本件各土地について,財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直審(資)17国税庁長官通達。ただし,平成21年5月13日課評3-6による改正前のもの。以下「評価通達」という。)によらない特別な事情があるとは認められず,過少評価となっているとして,平成23年6月29日付けで,相続税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件第一次賦課決定処分」という。)をし,更に,平成24年3月27日付けで,相続- 2 -税の再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件第二次賦課決定処分」といい,本件再更正処分及び本件第一次賦課決定処分と 27日付けで,相続- 2 -税の再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件第二次賦課決定処分」といい,本件再更正処分及び本件第一次賦課決定処分と併せて「本件各処分」という。)をしたことから,上記再更正処分には時価を超える評価をした違法があるなどと主張して,本件各処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定めについて(1) 相続税法の定め相続税法22条は,同法第3章で特別の定めのあるものを除くほか,相続により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ,宅地について同章で特別の定めはない。 (2) 評価通達の定め(乙11)ア評価通達1(2)は,財産の価額は,時価によるものとし,時価とは,課税時期(相続により財産を取得した日等をいう。)において,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい,その価額は,この通達の定めによって評価した価額による旨を定めている。 イ評価通達11(1)は,宅地の評価は,原則として,市街地的形態を形成する地域にある宅地については路線価方式によって行う旨を定めている。 ウ評価通達13は,路線価方式とは,その宅地の面する路線に付された路線価を基とし,評価通達15から20-5までの定めにより計算した金額によって評価する方式をいう旨を定めている。 エ評価通達14は,路線価は,宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定し,路線に接する宅地で,その路線のほぼ中央部にあること,その一連の宅地に共通している地勢にあること,その路線だけに接していること,その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行距離を有するく形又 路線に接する宅地で,その路線のほぼ中央部にあること,その一連の宅地に共通している地勢にあること,その路線だけに接していること,その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行距離を有するく形又は正方形のものであることのすべての- 3 -事項に該当するものについて,売買実例価額,公示価格(地価公示法6条の規定により公示された標準地の価格をいう。以下同じ。),不動産鑑定士等による鑑定評価額,精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した1㎡当たりの価額とする旨を定めている。 オ評価通達14-3は,路線価が設定されている地域内において,路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には,納税義務者からの申出等により,当該道路を路線とみなして当該宅地を評価するための路線価(以下「特定路線価」という。)を設定することができる旨及び特定路線価は,その特定路線価を設定しようとする道路に接続する路線及び当該道路の付近の路線に設定されている路線価を基に,当該道路の状況,評価通達14-2に定める地区の別等を考慮して税務署長が評定した1㎡当たりの価額とする旨を定めている。 カ評価通達25(1)は,借地権の目的となっている宅地(以下「底地」ともいう。)の価額は,評価通達所定の方法により評価した自用地としての価額から,同通達27(借地権の評価)の定めにより評価した借地権の価額(同項のただし書の定めに該当するときは,同項の定める借地権割合を100分の20として計算した価額。)を控除した金額によって評価する旨を定めている。 キ評価通達27は,借地権の価額は,その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に,当該価額に対する借地権の売買実例価額,精通者意見価格,地代の額等を基として評定した借地権の価額の る。 キ評価通達27は,借地権の価額は,その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に,当該価額に対する借地権の売買実例価額,精通者意見価格,地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(借地権割合)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する旨,ただし,借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない旨を定めている。 - 4 - 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(括弧内に掲記する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等本件被相続人は,平成20年▲月▲日に死亡し,原告(本件被相続人の長男)は,他の共同相続人ら(本件被相続人の妻,長女及び次女)とともに本件各土地を含む財産を相続した(本件相続。甲1a・b,弁論の全趣旨)。 (2) 本件各土地について本件相続に係る相続財産の一部である本件各土地の概要は別紙3のとおりであり,本件各土地の存する地域は,戸建て住宅,賃貸住宅等の立ち並ぶ地域である(本件各土地の位置関係については別紙4の1・2参照)。本件各土地については,いずれも土地賃貸借契約が締結されており,その内容は別紙5のとおりである。(甲10,乙19の1~14,乙20の1~14,弁論の全趣旨)(3) 本件各処分の経緯等本件各処分の経緯等は,別紙6及び以下のとおりである。 ア原告は,平成21年4月20日,中野税務署長に対し,本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の期限内申告書を提出した(以下「本件当初申告」という。)。なお,原告は,本件当初申告において,本件各土地の評価額を,不動産鑑定士P2による鑑定 ,本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の期限内申告書を提出した(以下「本件当初申告」という。)。なお,原告は,本件当初申告において,本件各土地の評価額を,不動産鑑定士P2による鑑定評価(甲11a~11n。以下「P2鑑定」という。)により算定した額(別紙7-1「P2鑑定」欄参照)として,本件相続税の額を計算した。(甲1a,11a~11n,弁論の全趣旨)イ原告は,平成23年6月20日,中野税務署職員の調査に基づき,本件相続に係る相続財産の一部(有価証券及び立替金)が本件当初申告において申告漏れであったとして,中野税務署長に対し,本件相続税の修正申告書を提出した(以下「本件修正申告」という。甲1b,乙4,弁論の全趣- 5 -旨)。 ウ中野税務署長は,原告に対して,平成23年6月29日付けで,本件修正申告により納付すべき本税の額に対する過少申告加算税の賦課決定処分をした(乙5の1,2)。 また,中野税務署長は,本件各土地については評価通達によらない特別な事情があるとは認められないから,評価通達に基づいて評価すべきであるとして,同日付けで,原告に対し,更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件第一次賦課決定処分)をした(甲2a,乙1)。 エ原告は,平成23年8月24日,上記ウの各処分に不服があるとして,中野税務署長に対し,上記各処分の取消しを求める異議申立てをしたところ,中野税務署長は,同年11月22日,上記異議申立てを棄却する異議決定をした。原告は,同年12月22日,国税不服審判所長に対し,審査請求をした。(甲4,5)オ中野税務署長は,上記ウの更正処分において本件各土地の一部が過少に評価されていたとして,平成24年3月27日付けで,原告に対して再更正処分(本件再更正処分)及び過少 請求をした。(甲4,5)オ中野税務署長は,上記ウの更正処分において本件各土地の一部が過少に評価されていたとして,平成24年3月27日付けで,原告に対して再更正処分(本件再更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件第二次賦課決定処分)をした(甲2b,乙2)。 カ原告は,平成24年4月24日,上記オの各処分に不服があるとして,中野税務署長に対し,上記各処分の取消しを求める異議申立てをした。中野税務署長は,同年5月14日,上記異議申立てにかかる異議申立書を東京国税不服審判所首席国税審判官に送付し(国税通則法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下「通則法」という。)90条1項参照),上記異議申立てについては,国税不服審判所長に対する審査請求がされたものとみなされた(同条3項参照)。(甲7,乙7)キ東京国税不服審判所長は,上記エの審査請求及び上記カのみなし審査請- 6 -求を併合審理の上,平成24年12月10日付けで,上記各審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲8,10)。 (4) 本件訴えの提起原告は,平成25年6月3日,本件訴えを提起した。なお,原告は,当初は本件更正処分,本件第一次賦課決定処分,本件再更正処分及び本件第二次賦課決定処分の各取消しを求めるとともに,上記(3)キの審査請求棄却裁決の取消しを求めていたが,同年11月1日に実施された本件の第2回口頭弁論期日において,本件更正処分及び上記裁決の取消しを求める部分を取り下げた。 本件訴訟においては,本件各土地の価額について,原告からP2鑑定の鑑定書(甲11a~11n)が提出されたほか,被告から不動産鑑定士P3作成の鑑定書(乙55の1)及び意見書(乙58)が提出されている(以下,併せて「P3鑑定」という。)。また,当裁判所も,不動産鑑定士 定書(甲11a~11n)が提出されたほか,被告から不動産鑑定士P3作成の鑑定書(乙55の1)及び意見書(乙58)が提出されている(以下,併せて「P3鑑定」という。)。また,当裁判所も,不動産鑑定士P4による鑑定を実施した(不動産鑑定評価書及び補充鑑定書。以下,「P4鑑定」といい,上記不動産鑑定評価書を「本件鑑定書」という。)。本件各土地の評価通達による評価額及び上記各鑑定による評価額は,別紙7-1のとおりである。 4 被告の主張する課税の根拠及び本件各処分の適法性被告の主張する課税の根拠及び本件各処分の適法性は,別紙8のとおりである。なお,原告は,後記5の争点に関する部分を除く部分については明らかに争わない。 5 主な争点及び当事者の主張の要旨本件の主な争点は,本件相続時における本件各土地の相続税評価額であり,これに関する当事者の主張の要旨は以下のとおりである。 (被告の主張の要旨)(1) 相続税法上の「時価」及び課税処分の適法性の判断枠組み- 7 -ア相続税法22条にいう時価とは,相続財産の取得の時において,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価額,すなわち,客観的な交換価値をいうところ,相続財産の客観的な交換価値を個別に評価するよりも,あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が納税者間の公平・便宜,徴税費用の節減という見地からみて合理的であることから,課税実務上は,評価通達によって定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。 イそして,評価通達に定められた評価方式が合理的なものである限り,これが形式的に全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができるから,特定の納税者あるいは る。 イそして,評価通達に定められた評価方式が合理的なものである限り,これが形式的に全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができるから,特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ評価通達に定める方式以外の方法によってその評価を行うことは,納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり許されない。 ウ評価通達に基づく相続財産等の評価方法は,相続税法22条が規定する財産の時価すなわち客観的交換価値を評価・算定する方法として一定の合理性を有するものと一般に認められ,単に課税庁内部の行為準則ににとどまらず,一般の納税者が準拠すべき指針としても通用してきていることに照らせば,相続税に係る課税処分の取消訴訟において,課税庁が当該課税処分における課税価格ないし税額の算定を評価通達の定めに従って相続財産の価額を評価してしたものであることを評価通達の定めに即して主張・立証した場合には,その課税処分における相続財産の価額は「時価」すなわち客観的交換価値を適正に評価したものと事実上推認することができる。 よって,評価通達に定める評価方法により算出した評価額に基づく課税処分の適法性の判断枠組みについては,評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり,かつ,- 8 -当該評価方法に従って評価額が算出されている場合には,当該評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り,当該評価額は評価対象財産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当であり,当該評価額に基づく課税処分は適法なものと認められる。 ところで,不動産鑑定士による鑑定評価額も,それが公正妥当な不動産鑑定理論に従うとしても,なお鑑定士の主観 のではないと推認するのが相当であり,当該評価額に基づく課税処分は適法なものと認められる。 ところで,不動産鑑定士による鑑定評価額も,それが公正妥当な不動産鑑定理論に従うとしても,なお鑑定士の主観的な判断及び資料の選択過程が介在することを免れず,鑑定人が異なれば,同一の宅地についても異なる評価額が出てくることは避けられないという意味で,宅地の客観的交換価値にはある程度の幅があるとみざるを得ないから,単に,ある不動産鑑定評価により算出された評価額が評価通達に基づく評価額を下回っていることのみをもって,評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情が存するとすることは相当ではなく,また,評価通達による評価額が時価であることの推認が妨げられるものでもないというべきである。 (2) 借地権価額控除方式の一般的合理性について評価通達25に定める底地の評価方法は,その宅地の価額から借地権の価額を控除した金額によって評価する方式(以下「借地権価額控除方式」という。)であるところ,借地権価額控除方式は,土地に借地権が設定されている事実(客観的要素)のみを考慮し,契約当事者間の個別事情の影響を受けた主観的要素を排除した評価方式であるから,客観的な交換価値という相続税法22条の趣旨に沿うものといえる。そして,以下に述べるところからすれば,借地権価額控除方式には一般的合理性が認められるというべきである。 アまず,借地権割合に基づく借地権の評価方法は,借地権が売買される場合の取引価額の決定や新規の借地権を設定する場合の権利金の決定において,更地価格に対する一定割合を基準として話し合い,決定していたという事例を踏まえて相続税の評価方法として採用され,定着していったもの- 9 -であり,現実の取引において成立する借地権の経済的価値を適切に反映し る一定割合を基準として話し合い,決定していたという事例を踏まえて相続税の評価方法として採用され,定着していったもの- 9 -であり,現実の取引において成立する借地権の経済的価値を適切に反映して一定の割合として定めたものであると認められる。 イそして,借地権価額控除方式は,更地について借地権が設定されたことにより更地の価額から借地権の価額に相当する権利が失われ,借地人にその権利が移行する一方,土地の所有者には更地の価額から借地人に移行した借地権の価額を差し引いた価額及び権利が残るという経済的実態及び論理的計算に従ったものであり,合理性がある考え方である。 ウ底地の購入者は,一般的に,借地権存続中の地代のみならず借地権消滅後に復帰する更地を取得することも念頭において底地を購入するものと想定され,その場合,底地の価額は,将来的に自用地に復帰する可能性を潜在的に含んだものとして形成されることからすると,借地権価額控除方式,すなわち,「貸宅地の価額=自用地としての価額(更地価額)-借地権の価額」の算式は,借地人と底地の所有者との間で底地の売買が行われて同一の所有者に所有権が帰属する場合のみならず,底地の所有者と第三者との間で底地の売買が行われた場合であっても当然に妥当する。 (3) 借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情がないことについてア本件各土地は一般的な住宅地に存在する土地であり,普通借地権に係る一般的な土地賃貸借契約が締結されているというものであるから,評価通達に定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情はない。 イ原告は,本件各土地については完全所有権に復帰する可能性が極めて低いと考えられることを理由として,本件各土地の評価においては,評価通 適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情はない。 イ原告は,本件各土地については完全所有権に復帰する可能性が極めて低いと考えられることを理由として,本件各土地の評価においては,評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情が存在する旨も主張するが,本件相続後の事情ではあるものの,本件M土地及び本件N土地は,原告又は原告の関係法人が借地上の建物を買い取ることにより借地権が消滅- 10 -あるいは事実上消滅したことがうかがわれるから,本件各土地は将来借地権と併合して完全所有権に復帰する可能性が極めて低いとは認められない。 ウ原告は,P4鑑定における還元利回り及び割引率の査定,増改築承諾料の現在価値の加算並びに比準価格の採用を修正して独自に本件各土地の価額を算定し,これが借地権価額控除方式により算定される評価額を著しく下回っていることを理由として,上記特別の事情がある旨主張するが,P4鑑定は,P4鑑定人の職業専門家としての知識,経験及び判断に基づく一連の厳格かつ秩序的な手順によって行われた鑑定であり,その鑑定評価の過程の一部の事項を取り上げて,当該事項を適当に他の数値に置き換えることによって独自の評価額を計算し直したとしても,当該計算によって得られた独自の評価額が適正な時価を表している鑑定評価額とはいえない。 エそもそも,上記(1)ウにおいて述べたところからすれば,単に鑑定評価額が評価通達に基づく評価額を下回るというだけでは特別の事情があるとはいえず,また,評価通達に基づく評価額が時価であるとの推認が否定されるものでもない。 (4) 本件各土地の時価についてア以上のとおり,本件各土地を評価するに当たり適用される評価通達25の定め(借地権価額控除方式)は合理的なものであり,また,本件各土地については, でもない。 (4) 本件各土地の時価についてア以上のとおり,本件各土地を評価するに当たり適用される評価通達25の定め(借地権価額控除方式)は合理的なものであり,また,本件各土地については,同通達によらないことが相当と認められる特別の事情が存するとも認められないから,同通達に基づき算出された本件各土地の評価額は,本件各土地の客観的交換価値を適正に評価したものと推認されるが,上記評価額が時価として適正であることは,以下のとおり,P3鑑定及びP4鑑定の各鑑定評価額からも認められる。 イ P3鑑定について- 11 -P3鑑定は,不動産鑑定評価基準(平成19年4月2日付け国土地第321号の3による国土交通事務次官通知「不動産鑑定評価基準等の一部改正について(通知)」による改正後のもの。以下「鑑定評価基準」という。 乙23)に従い,収益還元法に基づく収益価格及び取引事例比較法に基づく比準価格を関連付けて,底地である本件各土地の鑑定評価額を求めている。具体的には,取引事例比較法により本件各土地の更地価格及び底地価格を算定するとともに,収益還元法により底地の純収益の現在価値の総和に土地の復帰価格の現在価値を加算する方法及び純収益を永久還元する方法により算出した各試算価格を比較考量して収益価格を算定し,上記各試算価格の特性及び底地の経済価値の本質などを総合的に考慮し,各試算価格を加重平均した額を本件各土地の鑑定評価額としている。 P3鑑定の鑑定評価額は,鑑定評価基準などの公正妥当な鑑定理論に従い,適切で合理的な根拠に基づき適正に鑑定されたものであり,本件各土地の正常価格を表示する適正な価格を表すものであるところ,評価通達に定める評価方式によって評価した本件各土地の価額は,いずれもP3鑑定の鑑定評価額を超えないことに照らしても,評価通達 あり,本件各土地の正常価格を表示する適正な価格を表すものであるところ,評価通達に定める評価方式によって評価した本件各土地の価額は,いずれもP3鑑定の鑑定評価額を超えないことに照らしても,評価通達に定める評価方式により評価した本件各土地の価額は,相続税法22条に規定する「時価」として適正なものである。 ウ P4鑑定について(ア) 以下の点からすれば,P4鑑定は,P3鑑定と比較すれば合理性が劣るものの,おおむね合理性を有すると認められるところ,P4鑑定の鑑定評価額からも,評価通達に基づき算出された本件各土地の評価額は時価として適正であるといえる。 a 鑑定評価基準においては,底地の価格についての収益還元法の適用に当たり,借地権が消滅し完全所有権に復帰することによる経済的利益を考慮すべきものとされているところ,P3鑑定はこれを考慮して- 12 -いるが,P4鑑定はこれを考慮していない。特に,本件M土地及び本件N土地については,P4鑑定が行われた時点までに,原告又は原告の関係法人が借地上の建物を買い取ることにより借地権が消滅あるいは事実上消滅したことがうかがわれるから,当然に復帰価格を考慮すべきである。 b 鑑定評価基準においては,取引事例比較法の適用に当たり,同一需給圏とは,一般に対象不動産と代替関係が成立して,その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域とされているところ,P3鑑定ではこれに沿う取引事例を採用しているが,P4鑑定は,本件各土地が所在する中野区のほか,隣接する杉並区,練馬区,豊島区,新宿区及び渋谷区の住宅地域を同一需給圏とした上で,本件各土地の用途地域(第一種低層住居専用地域)とは異なる用途地域(第一種住居地域,第一種中高層住居地域,第二種住居地域)における取引事例を選択 ,新宿区及び渋谷区の住宅地域を同一需給圏とした上で,本件各土地の用途地域(第一種低層住居専用地域)とは異なる用途地域(第一種住居地域,第一種中高層住居地域,第二種住居地域)における取引事例を選択しており,P3鑑定よりも合理性が劣る。 c 鑑定評価基準においては,取引事例比較法の適用に当たり,取引事例が特殊な事情を含み,これが当該事例に係る取引価格に影響していると認められるときは,適正な補正を行うものとされているところ,P4鑑定は,事情補正を要する特殊な取引である競売市場における取引事例を採用しているから,適正な補正をする必要があるが,このような補正をしたことをうかがわせる記載はない。 (イ) 上記のとおり,P4鑑定は,P3鑑定と比較すれば合理性が劣るものの,おおむね合理性を有すると認められるところ,P4鑑定における本件各土地の鑑定評価額は,その大半ともいえる11画地で借地権価額控除方式によって算定した評価額を上回るものであり,これを下回った残りの3画地(本件A土地,本件M土地,本件N土地)についても,借地- 13 -権価額控除方式によって算出した評価額とP4鑑定の鑑定評価額との開差の割合は1.79%~12.03%であり,看過できないほどの開差は生じていない。このように,P4鑑定の鑑定結果から検討しても,借地権価額控除方式が底地の時価を算定するための評価方法として一般的な合理性を有するものであるといえる。 エ P2鑑定について原告が提出するP2鑑定については,収益価格の算定において,一般の住宅地に存する宅地の評価に適用するのがふさわしくないDCF法を用いていること,複数の収益価格を算定し一定の割合でこれを加重平均するという鑑定評価方法は原告独自のものであること,割引率及び最終還元利回りの査定に合理性がないことなどから, さわしくないDCF法を用いていること,複数の収益価格を算定し一定の割合でこれを加重平均するという鑑定評価方法は原告独自のものであること,割引率及び最終還元利回りの査定に合理性がないことなどから,鑑定評価基準に従っておらず,適正な時価を表したものであるとは認められない。 オ本件再更正処分の適法性について以上のとおりであり,仮に本件各土地には評価通達によっては適正に評価し得ない特別の事情があるとして,評価通達によらずに評価する場合であっても,P3鑑定に合理性が認められるから,その鑑定評価額を時価とすべきであり,その場合,本件再更正処分は,P3鑑定による鑑定評価額を下回る評価額に基づき行われているのであるから適法である。 また,仮にP4鑑定による鑑定評価額を時価とすべきであるとしても,本訴において被告が主張する本件各土地の評価額の合計額は1億6864万2879円であるところ,P4鑑定における本件各土地の鑑定評価額の合計額は1億8138万円であり,本件各土地の被告主張額を総額で上回るから,本件再更正処分は適法である。 (原告の主張の要旨)(1) 課税処分の適法性の判断枠組み評価通達は国税庁長官によって発出された通達であって,法形式上は行政- 14 -内部の機関や職員に対する関係で拘束力を有する行政規則にすぎず,国民に対して効力を有する法令としての性質を有するものではない。よって,課税庁が特段の事情がないにもかかわらず,評価通達に基づくことなく納税者に不利益な課税処分を行うことは許されないが,納税者による評価通達以外の方法による財産評価が法的に禁止されるわけではない。評価通達の内容が法令の趣旨に沿った合理的なものである限り,これに従った課税庁の処分が一応適法なものであるとの推定を受けることは認めるが,納税者が反対証拠を る財産評価が法的に禁止されるわけではない。評価通達の内容が法令の趣旨に沿った合理的なものである限り,これに従った課税庁の処分が一応適法なものであるとの推定を受けることは認めるが,納税者が反対証拠を提出して通達に基づく課税処分の適法性を争うことは何ら妨げられず,評価通達による評価額が「時価」を上回る場合には,これを採用した課税処分は違法となる。 (2) 借地権価額控除方式の一般的合理性について原告としても評価通達という画一的な評価方式による統一的な処理の必要性は理解するが,評価通達による評価が認められるのは,あくまで当該評価方式により算定される評価額が適正な時価評価額と同等以下となるような内容の評価方式を定めた場合に限られる。以下に述べるところからすれば,底地については,個別に時価評価を実施した場合の評価額が評価通達によって算定される評価額を下回るのが通常であるから,借地権価額控除方式を定めた評価通達25は,納税者に過大な負担を課す不合理なものである。 ア底地には借地借家法等によって強力に保護された借地権が付着しているから,底地の所有権を取得したからといって土地の利用権を得ることはまず不可能である一方,低廉な地代が設定されているため,固定資産税等の負担や管理の手間と費用を考慮すると収益性が極めて低く,第三者が底地を購入する利点がほとんどないことから,自由市場で底地を第三者に売却することは非常に困難である。 イ上記アのとおり,換価が困難で流通性が低いという底地の特殊性から,底地を第三者に売却する場合には,低廉な地代を基準とした収益価格によ- 15 -る算定が標準となり,その結果,底地の時価は更地価格の10%~15%となってしまい,借地権価額控除方式による評価額での売却は到底困難であるというのが不動産業界及び不動産鑑定業界 によ- 15 -る算定が標準となり,その結果,底地の時価は更地価格の10%~15%となってしまい,借地権価額控除方式による評価額での売却は到底困難であるというのが不動産業界及び不動産鑑定業界における一般的な認識である。P4鑑定においても,「底地の正常価格=更地価格の正常価格-借地権の正常価格の式は成り立たないと考える。」旨が明確に指摘されているところである。 ウ底地価格及び借地権割合は,地主と借地権者との当事者間における割合を想定したものであって,底地を借地権者に対して売却する場合の価格(限定価格)の算定に当たっては参考とされるものの,借地権者以外の第三者を相手方とする自由取引での市場価格としては,借地契約による制約等によって「底地価格+借地権価格」は更地価格とはならない。原告及び原告の母が過去3年間に借地権を買い取った事例(甲13a~c参照)においても,底地の価額は評価通達に基づいて計算された底地の価額の28%~72%にすぎない。 エ被告は,借地権割合は借地権の経済的価値を適切に反映したものであり,底地については借地権が設定されたことにより借地権の価額に相当する権利が失われ借地権価額を控除した価値が残るという意味で経済的実態及び論理的計算に従ったものであり合理性があると主張するが,借地権については取引市場が存在し借地権割合が現実の取引についても利用されている一方で,底地については第三者間での取引が極めて困難であり,その結果,第三者間での取引価格(客観的交換価値)が「更地価額-借地権価額」を著しく下回るという経済的実態があることが問題なのであるから,上記説明は不合理である。 (3) 借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があることについて以下に述べるところからすれば,本件各 とが問題なのであるから,上記説明は不合理である。 (3) 借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があることについて以下に述べるところからすれば,本件各土地の評価については,評価通達- 16 -によらないことが相当であると認められる特別の事情がある。 ア 「特別の事情」を広く認める必要があること本件においては,上記(2)のとおり,そもそも,借地権価額控除方式を定める評価通達による時価の推認に著しい疑義が存在するから,個別鑑定による時価評価等,他の合理的な時価の評価方式によることを広く認める必要がある。 しかるに,本件各土地の適切な時価評価額は,後記(4)ウ及びエで述べるように,P4鑑定のうち妥当性を欠いている部分を修正をしたものとすべきであり,その内容は別紙7-2の「収益価格」欄のとおりである。そして,これらは,いずれも借地権価額控除方式により算定される評価額を著しく下回っている。 イ完全所有権に復帰する可能性が極めて低いこと借地権価額控除方式による底地の評価については,将来底地権者が借地権を買い取ること等によって完全所有権に復帰する潜在的価値にも着目して価格形成されていると解されるが,本件各土地のうち,2画地を除く12画地については,いずれも借地権者が借地上に住宅を建築して自宅として使用しており,更新が繰り返され,極めて長期間借地契約が継続している。また,上記12画地のうち8画地の借地上の建物については,築年数が鑑定上の経済的耐用年数を超えているにもかかわらず,建替えが実施されていない。このような実態からすると,借地権者は資金的に余裕がないため底地を購入する可能性は極めて低く,また,借地権を底地人に売却して他の場所に移転する意思もないものと推認され,将来借地権 実施されていない。このような実態からすると,借地権者は資金的に余裕がないため底地を購入する可能性は極めて低く,また,借地権を底地人に売却して他の場所に移転する意思もないものと推認され,将来借地権と併合して完全所有権となる可能性は極めて低い。 また,本件各土地については,一筆の土地の上に複数の借地権が設定されているため,完全所有権に復帰させ処分するためには分筆を実施する必要があり,測量や経緯確認等に膨大な費用と手間が必要となる。このよう- 17 -な点からも,本件各土地について,完全所有権に復帰する可能性は低い。 (4) 本件各土地の時価についてア P2鑑定について原告は,本件当初申告において,本件各土地の評価額をP2鑑定に基づいて算定した。P2鑑定が不適切であるとする被告の主張はいずれも理由がない。 イ P3鑑定についてP3鑑定は,比準価格の算定に当たり,借地権者が底地を買い取る場合の取引事例を採用しているところ,かかる取引価格は限定価格であって,第三者取引価格とは全く性質が異なることから,市場性の回復等の増分価値による補正を行う必要があるにもかかわらず,一切補正等が行われていないため,不当に高額な鑑定結果となっている。 また,収益価格の算定に当たっても,借地契約の解約は困難であることを認めているにもかかわらず,本件各土地について一律に残存期間を25年と設定し,復帰価値を加算しているが,本件各土地については平均残存期間25年で更地に復帰する可能性は極めて低く,妥当ではない。 なお,本件M土地及び本件N土地について,原告ないし原告の関連会社が借地権を購入できたのは,たまたま原告に購入資金があり,たまたま借地人が売却に応じたからであり,このような可能性は極めて低い。 よって,P3鑑定には合理性が認められない。 告ないし原告の関連会社が借地権を購入できたのは,たまたま原告に購入資金があり,たまたま借地人が売却に応じたからであり,このような可能性は極めて低い。 よって,P3鑑定には合理性が認められない。 ウ P4鑑定についてP4鑑定は,収益価格の算定に当たって永久還元法を採用しており,そのこと自体に異議はないが,以下のとおり,一部について合理性,妥当性を欠いており,その評価額は適正なものではないから,後記エのとおり,必要な修正を行う必要がある。 (ア) P4鑑定は,還元利回り及び割引率の査定が低率すぎ妥当性を欠いて- 18 -おり,結果として収益価格が不当に高額に評価されている。すなわち,P4鑑定では長期金利に不動産の個別性を加味して還元利回り(2. 4%)及び割引率(1.9%)を査定しているが,不動産の個別性の判断に当たり,非流動性及び管理の困難性を考慮せず,資産としての安全性も高いものと誤った評価をしている。P4鑑定の還元利回り及び割引率の査定は,P3鑑定(還元利回り5.5%,割引率5.5%)やP2鑑定(還元利回り10%,割引率9%)と比較しても低率すぎる。 (イ) 増改築承諾料の現在価値の加算について,過去の実績や将来における受領可能性を無視している。すなわち,P4鑑定は,本件各土地のうちの10画地について,価格時点後10年に一律に更地価格の3%に相当する増改築手数料が得られるものとして現在価値を加算しているが,本件各土地の賃貸借契約において,過去に借地人から増改築手数料を受領した実績はないし,借地上の建物について増改築が実施される可能性もない。 (ウ) 取引事例比較法の適用に当たり,競売による取引事例しかなく,適切な事例が集積できなかったことから比準価格に信頼性がないとする一方,取引価格の下限を示す価格として部分的に る可能性もない。 (ウ) 取引事例比較法の適用に当たり,競売による取引事例しかなく,適切な事例が集積できなかったことから比準価格に信頼性がないとする一方,取引価格の下限を示す価格として部分的にとはいえ比準価格を採用している。 エ原告が本件訴訟で主張する本件各土地の適正な評価額上記ウ(ア)~(ウ)の点を修正し,適正な還元利回りを4.9%,割引率を4.5%とし,本件各土地上の建物の増改築時期については建築基準法の新耐震基準となった昭和57年よりも前に建築された建物については価格時点後10年,昭和57年以後に建築された建物については価格時点後20年とした上で増改築承諾料の現在価値を加算し,適切な根拠を欠く比準価格は採用しないこととして算定した本件各土地の適正な評価額は別紙7-2の「収益価格」欄のとおりである。 - 19 -なお,被告は,原告主張の上記適正評価額について,不動産鑑定士としての専門的知見等に基づくことなく,独自にP4鑑定における還元利回り等を操作して評価額を計算したものにすぎない旨主張するが,上記適正評価額は,原告が専門的知見を有する不動産鑑定士に意見を求めた結果得られたものであるから(甲21),上記批判は当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 判断枠組みについて相続税法22条は,特別の定めのあるものを除き,相続により取得した財産の価額は,相続の時における時価による旨を規定しているところ,同条に規定されている「時価」とは,当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。 ところで,財産の客観的交換価値は,必ずしも一義的に確定されるものではなく,これを個別に評価すると,その評価方法及び基礎資料の選択の仕方等によっては異なる評価額が生じることが避け難いし,また,課税庁の事務負担が重くなり,課税事務の迅速な処 一義的に確定されるものではなく,これを個別に評価すると,その評価方法及び基礎資料の選択の仕方等によっては異なる評価額が生じることが避け難いし,また,課税庁の事務負担が重くなり,課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがある。そこで,課税実務上は,法に特別の定めのあるものを除き,財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ,原則としてこれに定められた画一的な評価方法によって,当該財産の評価を行うこととされている。このような扱いは,税負担の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減といった観点からみて合理的であり,これを形式的にすべての納税者に適用して財産の評価を行うことは,通常,税負担の実質的な公平を実現し,租税平等主義にかなうものである。そして,評価通達の内容自体が財産の「時価」を算定する上での一般的な合理性を有していると認められる限りは,評価通達の定める評価方法に従って算定された財産の評価額をもって,相続税法上の「時価」であると事実上推認することができるものと解される。 もっとも,評価通達の上記のような趣旨からすれば,評価通達に定める評価方法を画一的に適用することによって,当該財産の「時価」を超える評価額と- 20 -なり,適正な時価を求めることができない結果となるなど,評価通達に定める評価方法によっては財産の時価を適切に評価することのできない特別の事情がある場合には,不動産鑑定士による不動産鑑定評価によるなどの他の合理的な評価方法により「時価」を評価するのを相当とする場合があると解されるものであり,このことは,評価通達6が,「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定め,評価通達自らが例外的に評価通達に定める評価方法以外の方法をとり得るものとしていることから めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定め,評価通達自らが例外的に評価通達に定める評価方法以外の方法をとり得るものとしていることからも明らかである。 以上によれば,評価通達に定める方法によっては財産の時価を適切に評価することのできない特別の事情のない限り,評価通達に定める方法によって相続財産を評価することには合理性があるというべきである(最高裁平成20年(行ヒ)第241号同22年7月16日第二小法廷判決・集民234号263頁参照)。 2 借地権価額控除方式の一般的合理性について(1) 借地権は,借地借家法等によってその存続期間が保障され,借地権者に契約更新請求権,建物の買取請求権等が付与されているところ(同法3~5条,13条等参照),このような法的規律を背景とし,借地権者には,土地を長期間占有し得る安定的利益や,適正な賃料と実際支払賃料との乖離が持続するために生ずる経済的価値などが帰属することになることを基礎として,借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域が存在する。 評価通達は,建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権(借地借家法2条1号)のうち,同法22条から25条までの規定により定められている定期借地権等以外のものを,「借地権」と定義した上(評価通達9(5)。以下「普通借地権」という。),普通借地権の目的となっている宅地における借地権の価額(以下「借地権価額」という。)について,当該宅地が借地権- 21 -の取引慣行があると認められる地域にある場合には,当該宅地の自用地としての価額に,借地権割合を乗じて計算した金額によって評価することとする一方(評価通達27),普通借地権の目的と 権- 21 -の取引慣行があると認められる地域にある場合には,当該宅地の自用地としての価額に,借地権割合を乗じて計算した金額によって評価することとする一方(評価通達27),普通借地権の目的となっている宅地(底地)の価額について,自用地としての価額から,上記の通達の定めにより評価した借地権価額を控除した金額によって評価する旨を定めている(評価通達25。借地権価額控除方式)。 宅地が借地権の取引慣行があると認められる地域にある場合,借地権の売買実例価額等を参考として,一定の地域ごとに適用可能な借地権割合を定めた上,その借地権割合を用いて普通借地権の価額を算定することは,課税上の合理性があることが明らかである。また,上記のような地域において,ある宅地につき普通借地権が設定されている場合,理論的には,宅地という一つの有体物の客観的価値全体が,普通借地権を有する者と宅地(底地)の所有者との間で分割されている状態にあると評価することにも,相応の合理性があるということができる。 評価通達25の定める借地権価額控除方式は,このように,底地の価額をその地域の借地権取引の状況等を踏まえて定められた借地権割合を乗じて算定される当該土地の借地権価額との相関関係において捉え,自用地としての価額から借地権価額を控除して残余の土地の経済的価値を把握しようとするものであり,底地の客観的交換価値に接近する方法として相応の合理性を有すると考えられる方法の一つであるということができる。 (2) この点に関し,原告は,底地については換価が困難で流通性が低いという特殊性があり,第三者に売却する場合には,低廉な地代を基準とした収益価格による算定が標準となり,その結果,底地の時価は更地価格の10%~15%となってしまい,借地権価額控除方式による評価額での売却は到底困難 あり,第三者に売却する場合には,低廉な地代を基準とした収益価格による算定が標準となり,その結果,底地の時価は更地価格の10%~15%となってしまい,借地権価額控除方式による評価額での売却は到底困難である,底地価格及び借地権割合は,地主と借地権者との当事者間における割合を想定したものであって,底地を借地権者に対して売却する場合の価格- 22 -(限定価格)の算定に当たっては参考とされるものの,借地権者以外の第三者を相手方とする自由取引での市場価格としては,「底地価格+借地権価格」は更地価格とはならないなどとして,底地については,個別に時価評価を実施した場合の評価額が評価通達によって算定される評価額を下回るのが通常であるから,借地権価額控除方式を定めた評価通達25は,納税者に過大な負担を課す不合理なものである旨主張し,これに沿う証拠(甲17~20)を提出する。 そこで検討するに,一般に,宅地につき借地権の取引慣行があると認められる地域であるとしても,底地につき同様の取引慣行があるということはできず,底地の市場性は,借地権のそれとは全く異なる状況にあり,また,底地のみが取引されることがあるとしても,借地契約の当事者間での売買のほうが通常であり,第三者間での取引については市場が相当限定されているものと推測される(本件鑑定書32頁,P2鑑定(甲11a~11n)の各「試算価格の調整及び鑑定評価額の決定」欄及び「VII.近隣地域の概要」「不動産市場の動向」「(B)底地」欄,P3鑑定(乙55の1)の47頁参照)。 そして,本件各土地の近隣で実際に観察できる底地の売買についてみても,借地権者による底地の買取の事例(P3鑑定において取引事例比較法の対象となった取引事例)と,競売市場での売却事例(P4鑑定において取引事例比較法の対象となった取引事例 きる底地の売買についてみても,借地権者による底地の買取の事例(P3鑑定において取引事例比較法の対象となった取引事例)と,競売市場での売却事例(P4鑑定において取引事例比較法の対象となった取引事例)が認められる程度であり,被告の調査した売買事例(乙50)によっても,純粋な第三者による取引事例は把握できない。 上記のような取引の状況からすると,底地は,第三者が取引を行うような一般的な市場及びそこにおける取引相場を想定することは困難であり,むしろ,取引があるとすれば将来的に借地契約の当事者間において売買が行われることが通常であるという特殊な財産であるというべきである。そうすると,このような底地の特性を踏まえつつ,底地につきそれ自体としての客観的交- 23 -換価値を把握するには,底地の状態が当分の間は継続することを念頭におき,その状態において地代収入が生じることにより得られる経済的利益と,将来,底地の取引形態としては通常である借地契約の当事者間での売買(借地権者による底地の買取等)が行われるであろうことを念頭におき,その場合において宅地全体に復帰することになるであろう経済的利益の現在価値とを共に考慮することが相当であると解される。 この点,鑑定評価基準(乙23)が,「底地の価格は,借地権の付着している宅地について,借地権の価格との相互関連において賃貸人に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。賃貸人に帰属する経済的利益とは,当該宅地の実際支払賃料から諸経費等を控除した部分の賃貸借等の期間に対応する経済的利益及びその期間の満了等によって復帰する経済的利益の現在価値をいう。底地の鑑定評価額は,実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする。」(各論第1章第 って復帰する経済的利益の現在価値をいう。底地の鑑定評価額は,実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする。」(各論第1章第1節I3.(2),409~410頁)としているのは,上記で判示したところと同趣旨と解される。 以上のとおりであるから,将来的にも完全所有権の復帰がおよそ考え難いというような特殊な事情がある場合はともかくとして,少なくとも借地契約終了後に完全所有権が復帰することが予定されている通常の借地契約に係る底地の時価については,地代徴収権に代表される借地契約存続中の収益に対応する価値のみならず,借地契約の終了後に復帰することとなる借地権の負担のない所有権に対応する価値を含むものと捉えるべきであり,第三者に売却する場合には低廉な地代を基準とした収益価格による算定が標準となるとする原告主張の方法は,底地の客観的交換価値の全てを適切に表すものとはいい難く,これを底地の時価とみるのは相当ではないというべきである。 なお,P4鑑定は,競売市場での売却事例を取引事例として,取引事例比較法により本件各土地の比準価格を求めているところ,その比準価格は,本- 24 -件各土地の更地価格の約20~24%となっている(別紙7-1「P4鑑定・比準価格・底地割合」欄参照)。この比準価格は,P4鑑定において正常価格の下限を示す価格として捉えられているものであるが(P4鑑定39頁),その水準でさえも,原告が主張するような更地価格の10%~15%よりも相当程度高いものであるということができる。 (3) 以上を踏まえて借地権価額控除方式の一般的合理性について検討するに,上記(1)のとおり,評価通達25の定める借地権価額控除方式は,底地の価額をその地域の借地権取引の状況等を踏まえて きる。 (3) 以上を踏まえて借地権価額控除方式の一般的合理性について検討するに,上記(1)のとおり,評価通達25の定める借地権価額控除方式は,底地の価額をその地域の借地権取引の状況等を踏まえて定められた借地権割合を乗じて算定される当該土地の借地権価額との相関関係において捉え,自用地としての価額から借地権価額を控除して残余の土地の経済的価値を把握しようとするものであり,このような考え方は,底地の客観的交換価値に接近する方法として相応の合理性を有すること,他方で,上記(2)のとおり,低廉な地代を基準とした収益価格による算定を標準として底地の時価とみる原告主張の方法は相当ではないというべきことに加え,底地の価額や借地権価額の算定の前提である自用地としての価額の基礎となる路線価の付設に当たっては,評価の安全性を考慮して各年1月1日時点の公示価格と同水準の価格のおおむね80%程度を目途として評定するという控え目な運用が行われており(乙16参照),借地権価額控除方式により算出された底地の価額が直ちに時価を超えることとなるわけではないと考えられること,およそ完全所有権への復帰の可能性があるとは考え難い場合など,評価通達に定める評価方法によっては財産の時価を適切に評価することのできない特別の事情がある場合には,借地権価額控除方式によらずに時価を算定することが可能であること(評価通達6)をも考慮すると,評価通達25の定める借地権価額控除方式は,底地の客観的交換価値を算定する上での一般的な合理性を有していると認められる。この点に関する原告の主張は採用することができない。 3 借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない- 25 -特別の事情の有無について(1) 原告は,本件各土地の借地権者が住宅を建築して自宅として使 とができない。 3 借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない- 25 -特別の事情の有無について(1) 原告は,本件各土地の借地権者が住宅を建築して自宅として使用していること,借地契約の更新が繰り返され,極めて長期間借地契約が継続していること,築年数が鑑定上の経済的耐用年数を超えているにもかかわらず,建替えが実施されていない建物があることなどから,借地権者は資金的に余裕がないため底地を購入する可能性は極めて低く,借地権を底地人に売却して他の場所に移転する意思もないものと推認され,将来完全所有権となる可能性は極めて低いと主張する。 しかし,原告が指摘する上記の事情は,宅地に設定された普通借地権において通常見受けられるものであり,そのこと自体から,将来完全所有権に復帰する可能性が絶無であることを意味するものとはいえない。実際にも,本件M土地及び本件N土地については,本件相続後ではあるものの,原告又は原告の関係法人が借地上の建物を買い取ることにより借地権が消滅あるいは事実上消滅したことがうかがわれるところ(甲12f,乙34の2,55の1末尾から3枚目及び7枚目,乙72),本件M土地及び本件N土地とこれら以外の本件各土地との間で,特に事情が異なるとみるべき点も見当たらないことからすれば,その他の本件各土地についても,完全所有権となる可能性が潜在しているというべきである。 さらに,原告は,本件各土地については一筆の土地の上に複数の借地権が設定されているため,完全所有権に復帰させ処分するためには分筆を実施する必要があり,測量や経緯確認等に膨大な費用と手間が必要となる旨も主張するが,このことから直ちに,本件各土地について完全所有権に復帰する可能性が低いとはいえない。 よって,原告の上記主張は採用することが があり,測量や経緯確認等に膨大な費用と手間が必要となる旨も主張するが,このことから直ちに,本件各土地について完全所有権に復帰する可能性が低いとはいえない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 原告は,借地権価額控除方式を定める評価通達による時価の推認に著しい疑義が存在するから,個別鑑定による時価評価等,他の合理的な時価の評価- 26 -方式によることを広く認める必要があると主張する。 そして,本件においては,原告がその申告の基礎となったP2鑑定(甲11a~11n)を提出し,被告がP3鑑定(乙55の1,乙58)を提出したところ,当裁判所においては,P4鑑定を実施した上,これらの各鑑定を参照しつつ,底地の合理的な評価方法について審理してきたところである。 そこで,上記のような原告の主張及び訴訟の経緯に鑑み,上記各鑑定の信用性について検討する。 ア P2鑑定(甲11a~11n)の内容P2鑑定は,借地期間満了時以降も賃貸借の継続を想定したシナリオAと期間満了時に賃貸借契約終了の上第三者への売却を想定したシナリオBの2手法について収益価格を試算するものであり,その手順の概要は以下のとおりである。 (ア) 本件各土地ごとに投資用不動産としての分析期間を想定し,各期の純収益と分析期間終了時の試算価格を求め,それぞれの現在価値の総和を基礎として収益価格の試算価格を求める(DCF法)。シナリオAにおいては,借地期間満了後も契約が更新されて賃貸借契約が継続することを想定し(分析期間は各土地ごとに15年又は19年と設定されている。),対象不動産ごとに予測した更新料や増改築(建替)承諾料(いずれも更地価格の3%)を加算して試算されている。 (イ) シナリオBにおいては,借地期間(各土地ごとに3年~19年と設定されている る。),対象不動産ごとに予測した更新料や増改築(建替)承諾料(いずれも更地価格の3%)を加算して試算されている。 (イ) シナリオBにおいては,借地期間(各土地ごとに3年~19年と設定されている。)満了時に賃貸借契約が終了し,更地として第三者に売却することを前提としており,借地期間満了時に復帰するであろう更地価格の現在価値を加算して試算されている。 (ウ) 上記(ア),(イ)の試算において現在価値を求めるのに用いられる割引率については,「10年国債流通利回り」直近の概ねの平均値1.5%に「リスクプレミアム」2.5%,「流動性欠如プレミアム」2%,「資- 27 -産としての安全性プレミアム」3%を加算した9%が用いられている。 また,シナリオAにおいて,分析期間終了後の試算価格を求める際に用いられる最終還元利回りについては,収益予測の不確実性を考慮したとして,割引率に1%を加算した10%が用いられている。 (エ) 取引事例比較法を用いて試算した本件各土地の更地価格に底地割合を乗じた割合方式による底地価格を試算する。 (オ) 上記(ア),(イ),(エ)の試算価格を比較し,(ア),(イ)の収益価格が(エ)の割合方式による底地価格よりも精度・規範性が高く,シナリオBよりもシナリオAの実現可能性が高いとして,シナリオAによる試算価格とシナリオBによる試算価格を8:2で加重平均し,鑑定評価額を決定する。 イ P3鑑定(乙55の1,58)の内容P3鑑定は,収益還元法に基づく収益価格及び取引事例比較法に基づく比準価格を関連付けて本件各土地に係る底地の鑑定評価額を求めるものであり,その手順の概要は以下のとおりである。 (ア) 本件A土地~本件C土地と本件D土地~本件N土地の属する地域についてそれぞれ標準画地を想定し,取引事例比較法に基づく比 の鑑定評価額を求めるものであり,その手順の概要は以下のとおりである。 (ア) 本件A土地~本件C土地と本件D土地~本件N土地の属する地域についてそれぞれ標準画地を想定し,取引事例比較法に基づく比準価格及び公示価格を考慮した基準価格を踏まえて標準画地の更地価格を求め,本件各土地の個別的要因の比較を行って本件各土地の更地価格を求める。 (イ) 収益価格は,純収益の現在価値の総和に土地の復帰価格の現在価値を加味する方法及び純収益を永久還元する方法の両試算価格を比較考量して求める。 a 上記については,実際支払賃料から公租公課を控除して求めた純収益の現在価値の総和に更地の復帰価格の現在価値を加算して試算価格を求める。 純収益の現在価値を求める際に用いる複利年金現価率及び更地の復帰価格の現在価値を求める際に用いる複利現価率については,いずれ- 28 -も年率5.5%,期間25年と査定されている。期間が25年間とされた理由については,賃貸借契約の残存期間が10年未満のものについては1回更新後の期間を,10年以上のものについては当該期間を前提とし,本件各土地の平均的残存期間25年を採用したとされている。また,現価率については,同種の土地の賃貸借に係る賃料利回りを基準とし,長期国債等の金融機関の利回り,各土地の投資対象としての危険性,管理の困難性,資産としての安全性等の個別性を加味して査定したとされている。 b 上記については,実際支払賃料から公租公課を控除して求めた純収益を還元利回りで除して試算価格を求める。還元利回りについては,上記と同様の理由により,5.5%と査定されている。 c 上記a,bを比較し,aについては復帰期間を25年と設定したことにより鑑定評価基準に定める底地価格の考え方に即した適正な価格が求められたものと考えられ の理由により,5.5%と査定されている。 c 上記a,bを比較し,aについては復帰期間を25年と設定したことにより鑑定評価基準に定める底地価格の考え方に即した適正な価格が求められたものと考えられる一方,bについては実際支払賃料のみを純収益とし,将来発生するであろう更新料その他の一時金収入及び地代の増額による純収益の増加については全く考慮されていないなどとして,a:bを0.7:0.3で加重平均し,収益価格を決定する。 (ウ) 底地の取引事例を基に取引事例比較法を適用し,本件A土地~本件C土地と本件D土地~本件N土地の属する地域ごとに想定した標準画地に係る比準価格を求め,本件各土地の個別的要因及び補正率を査定して本件各土地の底地の比準価格を求める。 (エ) 上記(イ)の収益価格と上記(ウ)の比準価格を調整し,底地の経済価値の本質や両試算価格の特性等を総合的に考慮した結果として,(イ)cの収益価格と(ウ)の比準価格を7:3で加重平均し,鑑定評価額を決定する。 ウ P4鑑定の内容P4鑑定は,実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求める- 29 -ことにより得た収益価格及び比準価格を関連付けて鑑定評価額を決定するものであり,その手順の概要は以下のとおりである。 (ア) 本件A土地~本件C土地と本件D土地~本件N土地の属する地域についてそれぞれ標準画地を想定し,取引事例比較法及び地価公示価格等との均衡を考慮の上標準価格を求め,本件各土地の個別的要因及び補正率を査定して本件各土地の更地価格を求める。 (イ) 月額支払賃料の年額から公租公課を控除した額を還元利回りで割り戻した額,第1回目の更新時に支払われる更新料(更地価格の3%)の現在価値(借地契約の残存年数に応じて割引率で割り戻した額),新築後20年以上経過するなど建替時期 公課を控除した額を還元利回りで割り戻した額,第1回目の更新時に支払われる更新料(更地価格の3%)の現在価値(借地契約の残存年数に応じて割引率で割り戻した額),新築後20年以上経過するなど建替時期が迫っている建物について,平均の建替時期を価格時点(本件相続開始日である平成20年6月26日。以下同じ。)後10年と想定した場合の増改築承諾料(更地価格の3%)の現在価値(期間10年で割引率で割り戻した額)を合計して収益価格を求める。 収益価格の算定において,同一需給圏内では借地権の取引慣行は成熟しており,期間満了等によって回復する経済的利益が生じることは考え難く,借地契約期間は長年にわたって続くと考えられるとして,復帰価格は考慮されていない。 還元利回り及び割引率については,長期金利(10年もの国債,平成20年当時1.4%程度)に不動産の個別性を加味したとして,還元利回りが年2.4%,割引率が1.9%と査定されている。 (ウ) 同一需給圏内の類似地域の競売市場で売却された底地の取引事例を採用して取引事例比較法を適用し,本件A土地~本件C土地と本件D土地~本件N土地の属する地域ごとに標準価格を求め,本件各土地の個別的要因及び補正率を査定して本件各土地の底地価格(比準価格)を求める。 (エ) 上記(イ)の収益価格と(ウ)の比準価格を比較し,収益価格は信頼性が高- 30 -く,他方,比準価格は正常価格の下限を示す価格として捉え,鑑定評価額を決定する。 エ P5意見の内容原告は,P4鑑定が行われた後,不動産鑑定士P5の意見書(甲21)を提出した(以下「P5意見」という。)。P5意見は,P4鑑定について,還元利回り及び割引率の査定が低率すぎ妥当性を欠いている,増改築承諾料の現在価値の加算について,過去の実績や将来における受領可能性を した(以下「P5意見」という。)。P5意見は,P4鑑定について,還元利回り及び割引率の査定が低率すぎ妥当性を欠いている,増改築承諾料の現在価値の加算について,過去の実績や将来における受領可能性を無視している,部分的とはいえ競売による取引事例を前提とする取引事例比較法による比準価格を採用しているなどと指摘した上,上記の点については適正な還元利回りを4.9%,割引率を4.4%とし,上記の点については原告が適正と考える時点における増改築承諾料の現在価値を加算し,の点については適切な根拠を欠く比準価格は採用しないこととして,P4鑑定を修正の上再計算したものである。 オ検討(ア) P2鑑定についてa 被告は,P2鑑定が収益価格の算定において一般の住宅地に存する宅地の評価に適用するのがふさわしくないDCF法を用いている旨を主張する。 しかし,被告の提出する証拠によっても,直接還元法(一定期間の純収益を還元利回りで還元する方法)とDCF法との違いは,純収益及び価格の変動予測を還元利回りの査定及び一期間の純収益の査定において織り込むか(直接還元法),毎期の純収益の見通しに織り込むか(DCF法)という評価の過程の違いに過ぎず,毎期の純収益及び価格の変動予測が適切に評価の過程に織り込まれる場合には,両者に手法上の優劣があるとはいえないとされているところであり(乙30,190頁),P2鑑定がDCF法を採用しているからといって,直ち- 31 -に不合理であるとはいえない。 b また,被告は,複数の収益価格を算定し一定の割合でこれを加重平均するという鑑定評価方法は原告独自のものである旨も主張するが,このような評価方法が一慨に不合理であるとも考え難く,被告の提出するP3鑑定においても同様の手法が用いられているところである。 もっとも,P2 いう鑑定評価方法は原告独自のものである旨も主張するが,このような評価方法が一慨に不合理であるとも考え難く,被告の提出するP3鑑定においても同様の手法が用いられているところである。 もっとも,P2鑑定においては,上記アのとおり,借地期間満了時以降も賃貸借の継続を想定したシナリオAと,期間満了時に賃貸借契約終了の上第三者への売却を想定したシナリオBの2手法についてそれぞれ収益価格を査定した上,シナリオAによる試算価格とシナリオBによる試算価格を8:2で加重平均して鑑定評価額を決定しており,その理由については,「長年にわたって賃貸借が継続しており立退や当事者間の買取などの目途が現時点ではまったくないことを勘案すると,シナリオBよりもシナリオAの実現可能性がはるかに高いと判断せざるを得ないため」としている(甲11a~11nの各2頁「試算価格の調整及び鑑定評価額の決定」欄)。しかるに,期間が満了した時点において賃貸借契約が終了した上で第三者への売却をするというシナリオBにおける想定自体,必ずしも現実的なものではない(乙33参照)。このように,実現可能性の低いシナリオ(シナリオB)を想定しつつ,他方のシナリオ(シナリオA)の実現可能性が高いことを理由としてこれを重視し加重平均を行うことにより,底地の客観的交換価値を適切に把握することができるかは疑問であるといわざるを得ない。結局,P2鑑定においては,借地契約の期間満了等によって復帰する経済的利益をやや軽視するものとの評価を免れないと考えられる。 c さらに,P2鑑定においては,収益価格の試算において用いられる割引率が9%,最終還元利回りが10%と査定されているのであるが,- 32 -原告自身,一般的な底地の還元利回りは年5%前後と考えられるとしていること(原告準備書面(7))に照らし て用いられる割引率が9%,最終還元利回りが10%と査定されているのであるが,- 32 -原告自身,一般的な底地の還元利回りは年5%前後と考えられるとしていること(原告準備書面(7))に照らしても,上記の査定の合理性には疑問があるというべきである。 d 以上によれば,P2鑑定は,合理性に欠ける部分を含んでいるといわざるを得ない。 (イ) P3鑑定についてa 上記イのとおり,P3鑑定は,収益還元法に基づく収益価格及び取引事例比較法に基づく比準価格を関連付けて本件各土地に係る底地の鑑定評価額を求めるものであり,収益価格については,純収益の現在価値の総和に土地の復帰価格の現在価値を加味する方法及び純収益を永久還元する方法の両試算価格を比較考量して求めるものであるところ,このような鑑定手法は,大筋において鑑定評価基準に適合するものというべきである。 b 原告は,P3鑑定は収益価格の算定に当たり借地契約の解約は困難であることを認めているにもかかわらず,本件各土地について一律に残存期間を25年と設定し,復帰価格を加算しているが,本件各土地については平均残存期間25年で更地に復帰する可能性は極めて低く,妥当ではない旨主張する。 しかし,本件各土地について,完全所有権に復帰する可能性が潜在しているというべきこと(上記3(1))からすると,借地契約の平均的な残存期間を25年とする査定が短すぎるとまではいえない。また,P3鑑定においては,上記イ(イ)cのとおり,上記aのとの収益価格を0.7:0.3で加重平均し,収益価格を査定しているところ,鑑定評価基準の考え方を前提とした精通者の見解として,必ずしも不合理であるともいえない。 c 原告は,P3鑑定は比準価格の査定(上記イ(ウ))は借地権者による- 33 -底地の買取事例のみで評 定評価基準の考え方を前提とした精通者の見解として,必ずしも不合理であるともいえない。 c 原告は,P3鑑定は比準価格の査定(上記イ(ウ))は借地権者による- 33 -底地の買取事例のみで評価しており,その補正が必要なのにそれがされていない点を指摘する。 この点,P3鑑定は,「採用した各事例について底地価格の更地価格に対する割合及び取引当事者の属性を検証した結果,本件各取引事例について,増分価値が生じている可能性の程度等の修正を要する必要性は認められない」としているところ(乙55の1,47頁,乙58の4頁),借地権者による底地の買取事例をもとに取引事例比較法により求めた本件各土地の底地の比準価格は,本件各土地の更地価格の約27%にとどまっていること(別紙7-1「P3鑑定・比準価格・底地割合」欄参照)からすると,実際には,増分価値が生じている可能性を念頭におきつつ,修正は不要と判断して比準価格を査定したことがうかがわれるところである。 そうすると,P3鑑定における底地の比準価格は,必ずしも不合理であるとまではいえない。 (ウ) P4鑑定についてaP4鑑定は,借地契約の期間満了等によって復帰する経済的利益について,「同一需給圏内では,借地権の取引慣行は成熟しており,期間満了等によって回復する経済的利益が生じることは考え難く,借地契約期間は長年に亘って続くと考えるのが一般的である。」(本件鑑定書27頁)として,これを加算することはせず,他方において,純収益を還元利回りで永久還元する方法のみを採用して収益価格を算出するに際し,平成20年当時の長期金利約1.4%に不動産の個別性を加味する方法が信頼性が高いとして,還元利回りを年2.4%,割引率を年1.9%と査定し,地価公示地の鑑定評価で採用されている還元利回り(年4.5 平成20年当時の長期金利約1.4%に不動産の個別性を加味する方法が信頼性が高いとして,還元利回りを年2.4%,割引率を年1.9%と査定し,地価公示地の鑑定評価で採用されている還元利回り(年4.5%程度)よりも相当低いものとしている。 この判断は,一般に,地価公示地の鑑定評価で採用されている還元- 34 -利回りは,取引価格に追いついておらず,「実際の還元利回り」は低下しているという見解に基礎を置き(同28頁),他方では,底地については,第三者が底地を買い取る市場は競売市場しかなく,適切な取引事例が得難いため,通常であれば収益価格と対比させて勘案すべき比準価格の信頼性が劣ることをも勘案して,基本的には収益価格を採用する(比準価格は正常価格の下限を示す価格として捉える)こととし,「実際の還元利回り」を査定するという手法を採用したものと考えられる。 そして,この方法は,鑑定評価基準にいう「底地の鑑定評価額は,実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする」との手法と不整合とまではいえず,かえって,底地の客観的価値の評価の困難さ(復帰価格をどの程度織り込むのかという問題)を巧みに回避するものとして,一つの見識であるということができる。 b 原告は,P4鑑定における還元利回りが低すぎること,また,競売による取引事例により比準価格を査定したことが不当である旨主張する。しかしながら,原告のこの主張は,上記のようなP4鑑定における還元利回りの考え方や競売市場の取引事例の参照方法を正解しないものであり,当を得ないものといわざるを得ない。 また,原告は,P4鑑定における増改築承諾料の現在価値の算定が過去の実績を無視していると主張するが,その点は,将来予想に関わる事柄であ を正解しないものであり,当を得ないものといわざるを得ない。 また,原告は,P4鑑定における増改築承諾料の現在価値の算定が過去の実績を無視していると主張するが,その点は,将来予想に関わる事柄であるから,必ずしも不合理とまで断定することはできない。 (エ) P5意見についてP5意見は,比準価格を全く考慮せず,また,借地契約の期間満了等によって復帰する経済的利益を考慮していない点において,鑑定評価基準に適合しておらず,必ずしも合理性の高いものではないと評価せざる- 35 -を得ない。 カ以上の検討によれば,上記各鑑定等のうち,P2鑑定及びP5意見には,不合理な点があると言わざるを得ない。他方,P3鑑定及びP4鑑定が示す価額は,比較的近似した水準となっているところ,両鑑定は,その鑑定手法は相当程度異なるものの,底地の客観的交換価値の把握の困難さがあることを前提として,それぞれに合理性のある考え方に則って行われたものということができ,両鑑定が示すような価額の水準をもって,本件各土地の時価として相当なものであると解することが相当である。 そうすると,P2鑑定及びP5意見の存在は,借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があることを裏付けるに足りるものということはできない。 よって,この点に関する原告の主張は採用することができない。 4 小括上記2のとおり,借地権価額控除方式を定める評価通達25は本件各土地の時価を算定する上での一般的な合理性を有しており,上記3のとおり,本件各土地について,借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められないから,借地権価額控除方式によって本件各土地を評価することには合理性があるというべきである。 5 本件 価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められないから,借地権価額控除方式によって本件各土地を評価することには合理性があるというべきである。 5 本件再更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性について(1) 原告は,争点に関する部分のほかに本件再更正処分の根拠及び適法性を争っていないところ,上記4のとおり,借地権価額控除方式によって本件各土地を評価することには合理性があるというべきであり,これを前提とすると,原告の納付すべき相続税額は,別紙8の1(2)カのとおり,1億8498万8100円であると認められる。そして,本件再更正処分における原告の納付すべき相続税額は1億8498万8100円であり,上記と同額であるから,本件再更正処分は適法である。 - 36 -(2) 上記(1)のとおり,本件再更正処分は適法であり,上記争点についてこれと同旨の本件更正処分も適法であるというべきところ,本件更正処分及び本件再更正処分によって原告が新たに納付すべきこととなった相続税額に基づいて計算した過少申告加算税の額は,別紙8の3(1),(2)のとおり,95万円(本件更正処分の分)及び6万7000円(本件再更正処分の分)であると認められる。そして,本件第一次賦課決定処分における過少申告加算税の金額は95万円,本件第二次賦課決定処分における過少申告加算税の金額は6万7000円であり,上記と同額であるから,本件第一次賦課決定処分及び本件第二次賦課決定処分は,いずれも適法である。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 も理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官平山馨 裁判官徳井真 - 37 - (別紙3) 本件各土地の概要 1 本件A土地本件A土地は,平成9年6月13日に,本件被相続人がP6(以下「本件A土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額2万7865円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件A土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件A土地は,北側の一面でのみ路線と接するほぼ長方形の整形地であり,間口距離は約7.50メートル,奥行距離は約11.40メートル,地積は92.40平方メートルである。本件A土地は路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件A土地の北側の路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり48万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 2 本件B土地本件B土地は,平成14年1月1日に,本件被相続人がP7(以下「本件B土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額1万6855円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件B土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件B土地は,北側及び東側の二面で路線と接面するいわゆる角地にあるほぼ長方形の整形地であり,北側を た宅地であり,本件相続の開始当時は,本件B土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件B土地は,北側及び東側の二面で路線と接面するいわゆる角地にあるほぼ長方形の整形地であり,北側を正面とすると間口距離は約5.80メートル,奥行距離は約10.83メートル,地積は62.81平方メートルである。本件B土地は路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は,普通住宅地区である。本件B土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,- 38 -1平方メートル当たり,北側の路線が48万円,東側の路線が39万円であり,両路線に係る借地権割合は共に70パーセントである。 3 本件C土地本件C土地は,昭和49年4月9日に,本件被相続人がP8(以下「本件C土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年とし土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件C土地賃借人の相続人と考えられる者が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件C土地は,東側及び南東側の二面で路線と接面するいわゆる準角地にあるやや変形した台形をしており,南東側を正面とすると間口距離は約8.80メートル,奥行距離は約12.21メートル,地積は109.25平方メートルである。本件C土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件C土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,東側及び南東側の路線ともに1平方メートル当たり39万円であり,両路線に係る借地権割合は共に70パーセントである。 4 本件D土地本件D土地は,平成3年8月29日に,本件被相続人がP9(以下「本件D土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額3万1190円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の 件D土地は,平成3年8月29日に,本件被相続人がP9(以下「本件D土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額3万1190円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件D土地賃借人の相続人と考えられる者が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件D土地は,北側の一面でのみ路線と接するほぼ正方形の宅地であり,間口距離は約12.80メートル,奥行距離は約11.36メートル,地積は145.47平方メートルである。本件D土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件D土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり37万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 - 39 - 5 本件E土地本件E土地は,平成3年7月1日に,本件被相続人がP10(以下「本件E土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額1万5750円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件E土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件E土地は,北側の一面でのみ路線と接するほぼ長方形の宅地であり,間口距離は約6.87メートル,奥行距離は約9.84メートル,地積は69. 42平方メートルである。本件E土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件E土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり37万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 6 本件F土地本件F土地は,本件被相続人がP11(以下「本件F土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を昭和55年9月1日から20年,賃借料を月額1万1333円として土 パーセントである。 6 本件F土地本件F土地は,本件被相続人がP11(以下「本件F土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を昭和55年9月1日から20年,賃借料を月額1万1333円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件F土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件F土地は,北側及び東側の二面で路線と接するほぼ正方形の宅地であり,北側を正面とすると,間口距離は約10.70メートル,奥行距離は約10. 10メートル,地積は110.88平方メートルである。本件F土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件F土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,北側及び東側ともに1平方メートル当たり37万円であり,両路線に係る借地権割合は共に70パーセントである。 7 本件G土地本件G土地は,昭和62年1月19日に,本件被相続人がP12及びP13(以下「本件G土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃料- 40 -を月額1万6619円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件G土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 なお,本件G土地及び本件H土地は,登記上の地目は山林となっているが,現況は宅地である。 本件G土地は,北側の一面で路線と接するほぼ長方形の宅地であり,間口距離は約6.40メートル,奥行距離は約12.60メートル,地積は80.80平方メートルである。本件G土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件G土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり38万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 8 本件H に定める地区区分は普通住宅地区である。本件G土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり38万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 8 本件H土地本件H土地は,昭和60年5月12日に,本件被相続人がP14(以下「本件H土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額1万3400円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件H土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件H土地は,北側の一面で路線と接するほぼ長方形の宅地であり,間口距離は約6.30メートル,奥行距離は約12.70メートル,地積は80.55平方メートルである。本件H土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件H土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり38万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 9 本件I土地本件I土地は,平成元年3月10日に,本件被相続人がP15,P16,P17,P18及びP19(以下「本件I土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を昭和58年8月27日から平成25年8月26日までの30年,賃料を月額3万5432円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相- 41 -続の開始当時は,本件I土地賃借人が所有すると考えられる未登記の建物の敷地として利用されていた。 本件I土地は,北側及び西側の二面で路線と接する正方形に近い形状の宅地であり,北側を正面とすると,間口距離は約11.50メートル,奥行距離は約13.00メートル,地積は163.30平方メートルである。本件I土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である すると,間口距離は約11.50メートル,奥行距離は約13.00メートル,地積は163.30平方メートルである。本件I土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件I土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり,北側の路線は38万円,西側の路線は37万円であり,両路線に係る借地権割合は共に70パーセントである。 10 本件J土地本件J土地は,昭和49年7月6日に,本件被相続人がP20(以下「本件J土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額1万3000円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件J土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件J土地は,本件J土地の南側で路線価の付されていない路線に一部が接するほぼ正方形の宅地であり,間口距離は約2.70メートル,奥行距離は約12.90メートル,地積は171.90平方メートルである。本件J土地が接する路線には,平成20年分において路線価は付されておらず,評価通達14-3の定めによる特定路線価が設定されている。本件J土地が接する路線に付された平成20年分の特定路線価は,1平方メートル当たり33万円,地区区分は普通住宅地区,借地権割合は70パーセントである。 11 本件K土地本件K土地は,平成19年1月15日に,本件被相続人がP21相続人P22との間で,賃貸借期間を20年,賃料を月額3万1515円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,P21ほか1名が所有する建物の敷地として利用されていた。 - 42 -本件K土地は,本件K土地の西側で路線価の付されていない路線に一部が接する正方形に近い台形をした宅地であり,間口距離は約1.77メート 名が所有する建物の敷地として利用されていた。 - 42 -本件K土地は,本件K土地の西側で路線価の付されていない路線に一部が接する正方形に近い台形をした宅地であり,間口距離は約1.77メートル,奥行距離は約10.20メートル,地積は108.87平方メートルである。本件K土地が接する路線には,平成20年分において路線価は付されておらず,評価通達14-3の定めによる特定路線価が設定されている。本件K土地が接する路線に付された平成20年分の特定路線価は,1平方メートル当たり33万円,地区区分は普通住宅地区,借地権割合は70パーセントである。 12 本件L土地本件L土地は,平成6年2月7日に,本件被相続人がP23(以下「本件L土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額2万5655円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件L土地賃借人ほか1名が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件L土地は,本件L土地の北東側で路線価の付されていない路線に一部が接する長方形の一部が欠けた形状をした宅地であり,間口距離は約2.90メートル,奥行距離は約10.80メートル,地積は96.33平方メートルである。本件L土地が接する路線には,平成20年分において路線価は付されておらず,評価通達14-3の定めによる特定路線価が設定されている。本件K土地が接する路線に付された平成20年分の特定路線価は,1平方メートル当たり33万円,地区区分は普通住宅地区,借地権割合は70パーセントである。 13 本件M土地本件M土地は,平成10年1月1日に,本件被相続人がP24(以下「本件M土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額3万5796円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続 件M土地は,平成10年1月1日に,本件被相続人がP24(以下「本件M土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額3万5796円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件M土地賃借人が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件M土地は,北側及び西側の二面で路線と接する正方形に近い形状の宅地であり,西側を正面とすると,間口距離は約11.80メートル,奥行距離は- 43 -約10.30メートル,地積は,135.13平方メートルである。本件M土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件M土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,北側及び西側の路線ともに1平方メートル当たり37万円であり,両路線に係る借地権割合は共に70パーセントである。 14 本件N土地本件N土地は,平成9年7月26日に,本件被相続人がP25(以下「本件N土地賃借人」という。)との間で,賃貸借期間を20年,賃借料を月額4万6440円として土地賃貸借契約を締結した宅地であり,本件相続の開始当時は,本件N土地賃借人の親族と思われる者が所有する建物の敷地として利用されていた。 本件N土地は,西側の一面でのみ路線と接するほぼ長方形の整形地であり,間口距離は約10.85メートル,奥行距離は約15.80メートル,地積は,178.31平方メートルである。本件N土地は,路線価地域に存し,評価通達14-2に定める地区区分は普通住宅地区である。本件N土地が接する路線に付された平成20年分の路線価は,1平方メートル当たり37万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 - 44 -(別紙8) 被告の主張する課税の根拠及び本件各処分の適法性 1 課税の根拠 は,1平方メートル当たり37万円であり,当該路線に係る借地権割合は70パーセントである。 - 44 -(別紙8) 被告の主張する課税の根拠及び本件各処分の適法性 1 課税の根拠被告が主張する原告の本件相続税の課税価格及び納付すべき税額は,別紙9-1及び以下のとおりである。 (1) 課税価格の合計額(別紙9-1,順号11の合計額欄)11億4687万円上記金額は,本件相続に係る共同相続人(以下「本件共同相続人」といい,原告を除く共同相続人らを「訴外相続人ら」という。)が本件相続によりそれぞれ取得した下記アの財産の価額(別紙9-1,順号8の原告欄及び訴外相続人ら欄)から,それぞれ負担した下記イの債務等の金額(別紙9-1,順号9の原告欄及び訴外相続人ら欄)を控除した後の金額につき,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数金額を切り捨てた後の各人の課税価格(別紙9-1,順号11の原告欄及び訴外相続人ら欄)の合計額である。 ア相続により取得した財産の価額(別紙9-1,順号8の合計額欄)19億8127万3417円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した財産の総額であり,次の(ア)ないし(キ)の各金額の合計額である。 (ア) 土地の価額(別紙9-1,順号1の合計額欄)13億3105万0210円上記金額は,別紙9-4「土地の明細」記載の各土地の評価額の合計額(別紙9-4,順号34の評価額欄)である。本件各土地の各評価額は別紙9-5のとおり(その詳細については9-5-1ないし9-5-14のとおり)であり,その余の土地の各評価額は甲1bの修正申告書(以下「本- 45 -件修正申告書」という。)に記載された各価額と同額である。 (イ) 家屋,構築物の価額(別紙9-1,順号2の合計額欄) )であり,その余の土地の各評価額は甲1bの修正申告書(以下「本- 45 -件修正申告書」という。)に記載された各価額と同額である。 (イ) 家屋,構築物の価額(別紙9-1,順号2の合計額欄)1億7381万4738円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した家屋及び構築物の価額の合計額であり,本件修正申告書にそれぞれ記載された金額の合計額と同額である。 (ウ) 事業(農業)用財産の価額(別紙9-1,順号3の合計額欄)2044万4501円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した事業(農業)用財産の価額の合計額であり,本件修正申告書にそれぞれ記載された金額の合計額と同額である。 (エ) 有価証券の価額(別紙9-1,順号4の合計額欄)2億5301万8247円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した有価証券の価額の合計額であり,本件修正申告書にそれぞれ記載された金額の合計額と同額である。 (オ) 現金・預貯金等の価額(別紙9-1,順号5の合計額欄)1億1764万3712円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した現金・預貯金等の価額の合計額であり,本件修正申告書にそれぞれ記載された金額の合計額と同額である。 (カ) 家庭用財産の価額(別紙9-1,順号6の合計額欄) 5万円上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した家庭用財産の価額の合計額であり,本件修正申告書に記載された金額と同額である。 (キ) その他の財産の価額(別紙9-1,順号7の合計額欄)8525万2009円- 46 -上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した上記(ア)ないし(カ)以外の財 同額である。 (キ) その他の財産の価額(別紙9-1,順号7の合計額欄)8525万2009円- 46 -上記金額は,本件共同相続人が本件相続により取得した上記(ア)ないし(カ)以外の財産の価額の合計額であり,本件修正申告書にそれぞれ記載された金額の合計額と同額である。 イ債務等の金額(別紙9-1,順号9の合計額欄)8億3440万0781円上記金額は,本件被相続人の債務及び本件被相続人に係る葬式費用の合計額であり,本件修正申告書に記載された金額と同額であり,その内訳及び負担者は,本件修正申告書に記載された内容と同じである。 (2) 納付すべき相続税額本件相続に係る原告の納付すべき相続税額は,相続税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下「相続税法」という。)15条ないし19条の各規定に基づき,次のとおり算定される。 ア課税遺産総額(別紙9-2,順号3) 10億5687万円上記金額は,上記(1)の課税価格の合計額11億4687万円(別紙9-1,順号11の合計額欄及び別紙9-2,順号1)から,相続税法15条の規定により,5000万円と1000万円に本件相続に係る相続人の数である4を乗じた金額4000万円との合計額9000万円(別紙9-2の順号2)を控除した後の金額である。 イ法定相続分に応ずる取得金額(別紙9-2,順号5)(ア) 原告(法定相続分6分の1) 1億7614万5000円(イ) 訴外相続人ら(法定相続分6分の5) 8億8072万5000円上記各金額は,相続税法16条の規定により,本件共同相続人が上記アの金額を民法900条の規定による相続分(法定相続分)(別紙9-2,順号4の各欄の割合)に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額(ただし,昭和34年 16条の規定により,本件共同相続人が上記アの金額を民法900条の規定による相続分(法定相続分)(別紙9-2,順号4の各欄の割合)に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額(ただし,昭和34年1月28日付け直資10による国税庁長官通達「相続税法基本通達の全部改正について」(平成20年7月8日付け課資3-10ほかに- 47 -よる改正前のもの。)16-3の取扱いにより,各相続人ごとに1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)であるウ相続税の総額(別紙9-1,順号12の合計額欄,別紙9-2,順号7)3億7759万1500円上記金額は,上記イの(ア)及び(イ)の各金額(ただし(イ)の金額については,訴外相続人ら各人の法定相続分に応ずる取得金額)に,それぞれ相続税法16条に定める税率を乗じて算出した各金額(別紙9-2,順号6)に,それぞれ相続税法16条に定める税率を乗じて算出した各金額の合計額である。 エ本件共同相続人各人の算出税額(別紙9-1,順号13の合計額欄及び別紙9-3の順号6) 3億7759万1497円上記金額は,相続税法17条の規定により,上記ウの金額に,本件共同相続人各人の課税価格(別紙9-1,順号11,別紙9-3,順号3)が上記(1)の課税価格の合計額に占める割合をそれぞれ乗じて算出した各金額(別紙9-3,順号5)の合計額である。 (ア) 原告 1億8498万8129円(イ) 訴外相続人ら 1億9260万3368円オ税額控除額(別紙9-1,順号14の合計額欄)1億5387万1326円上記金額は,相続税法19条の2の規定により,訴外相続人らのうちの一人である 1億9260万3368円オ税額控除額(別紙9-1,順号14の合計額欄)1億5387万1326円上記金額は,相続税法19条の2の規定により,訴外相続人らのうちの一人である本件被相続人の配偶者の納付すべき税額の計算上控除される配偶者の税額の軽減額である。 カ原告の納付すべき相続税額(別紙9-1,順号15の原告欄)1億8498万8100円上記金額は,上記エの原告の算出税額について,通則法119条1項の規定により100円未満の端数金額を切り捨てた後のものである。 2 本件再更正処分の適法性- 48 -被告が主張する本件相続に係る原告の納付すべき相続税額は,上記1(2)カのとおりであるところ,本件再更正処分における原告の納付すべき相続税額は,1億8498万8100円であり(乙2参照),上記被告主張額と同額であるから,本件再更正処分は適法である。 3 本件賦課決定処分の根拠(1) 本件第一次賦課決定処分被告が本訴において主張する本件更正処分に係る原告の過少申告加算税の額は95万円である。当該金額は,本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった相続税額950万円(通則法118条3項の規定により1万円未満を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に,同法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 (2) 本件第二次賦課決定処分被告が本訴において主張する本件再更正処分に係る原告の過少申告加算税の額は6万7000円である。当該金額は,本件再更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった相続税額67万円に,同法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 4 本件第一次賦課決定処分及び本件第 額は,本件再更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった相続税額67万円に,同法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。 4 本件第一次賦課決定処分及び本件第二次賦課決定処分の適法性上記3のとおり,被告が本訴において主張する本件更正処分に係る過少申告加算税の額は95万円であり,本件再更正処分に係る過少申告加算税の額は6万7000円であるところ,これらは本件第一次賦課決定処分及び本件第二次賦課決定処分における各過少申告加算税の額とそれぞれ同額である。ところで,増額再更正処分として本件更正処分を吸収する本件再更正処分が,上記2で述べたとおり適法であるということは,本件再更正処分により確認された課税価格及び納付すべき税額がいずれも総額として適法であることを意味するから,本件更正処分及び本件再更正処分により生じた新たに納付すべき税額には,いずれも違法な部分は存しない。したがって,本件更正処分及び本件再更正処分により生じた新た- 49 -に納付すべき税額を基礎として,原告に対して,上記3のとおり計算された金額に相当する過少申告加算税を課した本件第一次賦課決定処分及び本件第二次賦課決定処分はいずれも適法である。 以上
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