平成30年11月8日判決言渡平成29年(行ウ)第11号運転免許取消処分取消等請求事件 主文 1 大阪府公安委員会が平成27年8月5日付けで原告に対してした,同日から6年間を運転免許を受けることができない期間として指定する処分のうち,同日から5年間を超えて運転免許を受けることができない期間として指定する部分を取り消す。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを6分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 大阪府公安委員会が平成27年8月5日付けで原告に対してした運転免許を取り消す処分を取り消す。 2 大阪府公安委員会が平成27年8月5日付けで原告に対してした,同日から6年間を運転免許を受けることができない期間として指定する処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,平成26年8月11日に交通事故(以下「本件事故」という。)を起こした原告が,平成27年8月5日付けで,大阪府公安委員会から,「危険運転致傷等(治療期間30日以上)」の違反行為があったとして,原告の運転免許を取り消す処分(以下「本件取消処分」という。)及び同日から6年間を運転免許を受けることができない期間(以下「欠格期間」という。)として指定する処分(以下「本件指定処分」といい,本件取消処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたことから,原告の行為は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転死傷処罰法」という。)2条6号の危険運転致傷罪には該当せず,仮に該当するとしても本件各処分は重きに失するなどと主 張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め( 険運転致傷罪には該当せず,仮に該当するとしても本件各処分は重きに失するなどと主 張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 自動車運転死傷処罰法等自動車運転死傷処罰法2条は,同条各号に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する旨規定し,同条6号は,「通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」と規定する。 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令(以下「自動車運転死傷処罰法施行令」という。)2条は,自動車運転死傷処罰法2条6号の政令で定める道路又はその部分は,同施行令2条各号に掲げるものとする旨規定し,同条1号は,「道路交通法(昭和35年法律第105号)第8条第1項の道路標識等により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分(当該道路標識等により一定の条件(通行の日又は時間のみに係るものを除く。次号において同じ。)に該当する自動車に対象を限定して通行が禁止されているもの及び次号に掲げるものを除く。)」と規定する。 (2) 道路交通法道路交通法103条2項は,運転免許を受けた者が同項各号のいずれかに該当することとなったときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなった時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,その者の運転免許を取り消すことができる旨規定し,同項2号は のいずれかに該当することとなったときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなった時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,その者の運転免許を取り消すことができる旨規定し,同項2号は,「自動車等の運転に関し自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条から第4条までの罪に当たる行為をしたとき。」と規定する。 同条8項は,公安委員会は,同条2項各号のいずれかに該当することを理 由として同項又は同条4項の規定により運転免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,3年以上10年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が運転免許を受けることができない期間(欠格期間)を指定するものとする旨規定する。 (3) 道路交通法施行令道路交通法施行令別表第2の2の表によれば,特定違反行為(同表の上欄に掲げる行為をいう。以下同じ。)である「危険運転致傷等(治療期間30日以上)」の基礎点数は51点となる。なお,上記「危険運転致傷等(治療期間30日以上)」とは,人の傷害(治療期間が30日以上3月未満であるもの(後遺障害が存するものを除く。)に限る。)に係る自動車運転死傷処罰法2条から4条までの罪に当たる行為をいうものとされている(同施行令別表第2備考2の121)。 同施行令38条7項1号は,特定違反行為をしたことを理由として運転免許を取り消したときの欠格期間の基準を定めるところ,同号ホによれば,前歴のない者(当該特定違反行為をした日を起算日とする過去3年以内において同施行令別表第3備考1の1から4までのいずれかに該当したことのない者)について,累積点数が50点から54点まで(同別表第3の2の表の第6欄)に該当したときは,欠格期間は6年となる。 (4) 運転免許 別表第3備考1の1から4までのいずれかに該当したことのない者)について,累積点数が50点から54点まで(同別表第3の2の表の第6欄)に該当したときは,欠格期間は6年となる。 (4) 運転免許を受けることができない期間の指定に係る処分基準(乙17)運転免許を受けることができない期間の指定に係る処分基準(平成29年3月12日大阪府公安委員会)第2の1(1)(以下「本件処分基準」という。)は,特定違反行為をしたことを理由として処分を行おうとする場合の累積点数が道路交通法施行令別表第3の2の表の第1欄に掲げる区分に応じ同表第2欄から第9欄までに掲げる点数に達したことにより,運転免許の取消しの処分基準に該当することとなった者において,その者の運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情があるときは,同施行令38条7項の 欠格期間から1年を減じた期間に軽減することができる旨定める。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特に断らない限り枝番号を含む。)(1) 原告(甲1)原告は,平成23年12月19日に大阪府公安委員会から第一種運転免許(中型自動車)に係る運転免許証の交付を受けていた者である。 (2) 本件事故の概要(甲5,乙1,3,5)原告は,平成26年8月11日午前7時45分頃,普通乗用自動車(以下「原告車両」という。)を運転し,別紙1通行禁止規制見取図の斜線部分の道路(以下「本件道路」といい,本件道路東端の国道E線との交差点を「国道交差点」という。)から別紙2現場見取図の交差点(本件道路西端の交差点。以下「本件交差点」という。)に進入した際,本件交差点に右方道路から進入し 路」といい,本件道路東端の国道E線との交差点を「国道交差点」という。)から別紙2現場見取図の交差点(本件道路西端の交差点。以下「本件交差点」という。)に進入した際,本件交差点に右方道路から進入してきた原動機付自転車(以下「被害車両」という。)の左側面に原告車両の前部を衝突させて被害車両を転倒させ,その運転者(以下「被害者」という。)に加療約6週間を要する右肩甲骨烏口突起骨折等の傷害を負わせる交通事故(本件事故)を起こした(別紙2現場見取図参照)。 (3) 刑事裁判の経緯等(乙9)ア原告は,自動車運転死傷処罰法2条6号の危険運転致傷罪により起訴され,平成27年5月12日,大阪地方裁判所岸和田支部において,同罪により,懲役1年,3年間執行猶予の有罪判決(以下「刑事一審判決」という。)の言渡しを受けた。 刑事一審判決が認定した罪となるべき事実は,「被告人(原告)は,平成26年8月11日午前7時45分頃,普通乗用自動車(原告車両)を運転し,道路標識により自動車の通行が禁止されている大阪府α郡ab番地先から同ac番地先までの道路(本件道路)を進行し,かつ,時速約20 キロメートルの速度で自車を運転し,もって通行禁止道路を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したことにより,同道路の出口である同ad番地先の交通整理の行われていない交差点(本件交差点)に前記速度のまま進入した際,折から右方道路から同交差点へ進行してきたA(被害者)運転の原動機付自転車(被害車両)を右斜め前方約2メートルの地点に認め,急制動の措置を講じたが間に合わず,同車左側面部に自車前部を衝突させて同人を同人運転車両もろとも路上に転倒させ,よって,同人に加療約6週間を要する右肩甲骨烏口突起骨折等の傷害を負わ ルの地点に認め,急制動の措置を講じたが間に合わず,同車左側面部に自車前部を衝突させて同人を同人運転車両もろとも路上に転倒させ,よって,同人に加療約6週間を要する右肩甲骨烏口突起骨折等の傷害を負わせたものである。」というものであった。 イ原告は,刑事一審判決を不服として控訴したが,平成27年11月27日,大阪高等裁判所において,控訴棄却の判決(以下「刑事控訴審判決」という。)の言渡しを受けた。原告は,さらにこれを不服として上告したが,平成29年2月9日付けで,最高裁判所から上告棄却決定を受けた(同月15日確定)。 (4) 本件各処分に至る経緯等(甲1,2)ア大阪府公安委員会は,平成27年8月5日,原告に対する意見聴取を行った上で,同日,原告に対し,本件各処分を行った。 イ原告はこれを不服として異議申立てをしたが,大阪府公安委員会は,平成28年7月20日付けで,上記異議申立てを棄却する旨の決定をした。 (5) 本件訴えの提起(顕著な事実)原告は,平成29年1月20日,本件訴えを提起した。 3 主たる争点(1) 危険運転致傷罪の成否ア自動車運転死傷処罰法2条6号が憲法31条に違反するかイ自動車運転死傷処罰法施行令2条が委任の範囲を超え無効であるかウ本件道路について有効な自動車の通行禁止の指定があったか エ原告が本件道路を「重大な交通の危険を生じさせる速度」で進行したといえるかオ原告が本件道路を進行したことと本件事故との間に因果関係があるか(2) 本件各処分の量定の適否等ア欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホが委任の範囲を超え無効であるかイ本件取消処分に との間に因果関係があるか(2) 本件各処分の量定の適否等ア欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホが委任の範囲を超え無効であるかイ本件取消処分につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(比例原則違反の有無)ウ本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」が存在し,本件指定処分のうち,欠格期間を5年間を超えて指定した部分が違法であるか 4 主たる争点に関する当事者の主張(1) 危険運転致傷罪の成否ア自動車運転死傷処罰法2条6号が憲法31条に違反するか(原告の主張)自動車運転死傷処罰法2条6号は,通行禁止道路の進行による危険運転致死傷罪を定めており,危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役とされている。しかるに,通行禁止道路といってもその状況は様々であり,道路の状況によっては本来的に自動車の通行による危険が大きいとはいえないところもあるし,その違反の程度も状況によって様々であり,通行禁止道路における事故に対して,一律に,通行禁止道路以外の場所の事故と比較して大きく加重した刑罰をもって臨むことは相当でない。現に,本件道路は,午前7時30分から午前9時までと午後0時から午後3時まで(土曜,日曜及び祝日を除く。)の時間帯を指定して車両通行止め規制がされているが,通常は不特定多数の自動車の通行が許されている道路である。 このように,通行禁止道路における事故につき,それ以外の道路におけ る事故と比較して著しく重い法定刑を定める自動車運転死傷処罰法2条6号は,罪刑の均衡を失しており,憲法31条に違反し無効である。 (被告の主張)自動車運転死傷処 る事故と比較して著しく重い法定刑を定める自動車運転死傷処罰法2条6号は,罪刑の均衡を失しており,憲法31条に違反し無効である。 (被告の主張)自動車運転死傷処罰法2条6号に規定する行為が危険運転致傷罪の対象とされたのは,自動車の通行が禁止されている道路では,他の通行者は,自動車が通行することはないとの前提で通行しており,このような道路を重大な交通の危険を生じさせる速度で進行すれば衝突を避けることが困難であることから,同条1号から5号までの行為と同じく悪質で危険な運転といえるためであって,同条6号が規定する危険運転致死傷罪が,同法5条に規定する過失運転致死傷罪(法定刑7年以下の懲役若しくは禁錮又は罰金)と比べて刑の均衡を欠くものとはいえない。 したがって,自動車運転死傷処罰法2条6号は,憲法31条に違反しない。 イ自動車運転死傷処罰法施行令2条が委任の範囲を超え無効であるか(原告の主張)自動車運転死傷処罰法2条の危険運転致傷罪は,法定刑が極めて重いことから,それ自体が重大な危険を伴うような自動車の運転行為を想定しているものと解され,同条1号から5号までにおいても,アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為など,それ自体が極めて危険な行為が構成要件とされている。したがって,同条6号の通行禁止道路を進行したことによる危険運転致傷罪についても,同条1号から5号までと同様に,それ自体が重大な危険を伴う運転行為を想定しているものと考えられる。しかるに,本件道路のように,通常は不特定多数の自動車が通行するような道路で,時間帯を限定して車両通行止め規制をし,警察署長の許可があれば自動車の通行が可能になるような道路の走行は のと考えられる。しかるに,本件道路のように,通常は不特定多数の自動車が通行するような道路で,時間帯を限定して車両通行止め規制をし,警察署長の許可があれば自動車の通行が可能になるような道路の走行は,想定される危険の範囲外というべきである。 したがって,本件道路のような車両通行止め規制の道路を一律に同条6号の通行禁止道路とする自動車運転死傷処罰法施行令2条の規定は,同号の委任の範囲を超えるものとして無効である。 (被告の主張)自動車運転死傷処罰法施行令2条は,自動車運転死傷処罰法2条6号が規定する通行禁止道路を具体的に規定しているのであって,その委任の範囲を超えていないことは明らかである。 ウ本件道路について有効な自動車の通行禁止の指定があったか(原告の主張)(ア) 本件道路は車両通行止め規制の対象となっていないこと本件事故当時の本件道路に係る車両通行止め規制の内容は,平成15年に泉南警察署長が作成した「交通規制上申書」(甲3の8頁。以下「本件上申書」という。)記載の「ab番地先(国道E)から西へ同c番地先」までを規制場所とする車両通行止め規制(以下「本件規制」という。)に従っていたものである(乙8)。本件上申書では,本件規制の規制区間について,「ab番地先」から「同c番地先」と定められているが,少なくとも終点については,地番の並び(甲4)や交通禁止規制見取図(乙8の3枚目)からすると,本件上申書添付図面(甲3の9頁)の「B」との記載のある建物付近となるはずであり,本件事故当時,本件道路に車両通行止め規制(本件規制)が及んでいたとはいえない。 (イ) 規制区間の指定が不明確であり無効であること 頁)の「B」との記載のある建物付近となるはずであり,本件事故当時,本件道路に車両通行止め規制(本件規制)が及んでいたとはいえない。 (イ) 規制区間の指定が不明確であり無効であること仮に,本件道路に本件規制が及んでいたとしても,本件上申書の規制区間の記載とその添付図面との記載内容には明らかな齟齬があること,上記指定に係る規制区間の方向が不明確であること,本来は120mである規制区間の距離が200mと決定されており80mもの齟齬が生じていることからすると,本件規制の規制区間の指定は不明確であるとい わざるを得ず,無効である。 本件事故当時,本件道路に対してそもそも本件規制が及んでおらず,仮に及んでいたとしてもその内容が不明確で無効であることは,本件事故の直後である平成26年8月29日に本件道路の交通規制について変更の上申がされ,同年9月4日に交通規制の改正が行われていることからも強く推認される。 (被告の主張)(ア) 本件道路は車両通行止め規制の対象となっていること原告が進行した本件道路(国道交差点から本件交差点までの東西方向に通じる道路)は,大阪府公安委員会が車両通行禁止道路と定めており,規制標識等の設置についても,本件道路の東側出入口と西側出入口に車両通行禁止を示す道路標識が適正に設置されており,その視認性は良好であって,本件規制が道路交通法4条の通行禁止の指定に合致することは明らかである。 (イ) 規制区間の指定が不明確ではないこと本件規制の規制区間は,本件規制が開始された昭和47年3月31日から現在に至るまで,その規制区間を示す地図(乙10の6枚目,甲3の9頁,38頁)において示 明確ではないこと本件規制の規制区間は,本件規制が開始された昭和47年3月31日から現在に至るまで,その規制区間を示す地図(乙10の6枚目,甲3の9頁,38頁)において示されているとおり,何ら変わりはないのであり,本件道路を規制区間とする大阪府公安委員会の規制区間についての意思決定は,現在の地番における「ae番地先(国道E)から西北へ同d番地先交差点東南詰まで」であり,一貫している。また,規制距離についても,大阪府公安委員会の規制決定にある距離は概算表示されているものであって,規制距離と実際の距離に食違いがあっても,規制区間を不明確にするものとはいえない。 したがって,本件規制の規制区間に関する大阪府公安委員会の意思決定について,その明確性に問題はない。 エ原告が本件道路を「重大な交通の危険を生じさせる速度」で進行したといえるか(原告の主張)自動車運転死傷処罰法2条6号は単に「交通の危険を生じさせる速度」ではなく「重大な」交通の危険を生じさせる速度という要件を定めていること,危険運転致傷罪の法定刑は過失運転致傷罪(同法5条)のそれと比較して非常に重いこと,危険運転致傷罪を犯した者に対しては極めて重い行政処分が予定されていること等からすると,同号にいう「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは,通常想定される危険の範囲を超える速度というべきであり,具体的には,当該道路の状況に照らして,通常走行する速度を超えて進行し,かつ,これによって事故の回避が困難な速度を指すものと解すべきである。 車両通行止め規制のない時間帯の本件道路の最高速度は時速20㎞であるところ,原告は,本件事故当時,本件道路を時速18.68㎞の速度で走行して 避が困難な速度を指すものと解すべきである。 車両通行止め規制のない時間帯の本件道路の最高速度は時速20㎞であるところ,原告は,本件事故当時,本件道路を時速18.68㎞の速度で走行しており,速度規制については遵守していた。また,本件規制は,本件道路がCの児童の通学路となっているため,児童の安全を確保するために設けられた規制であるが,本件事故当日は,Cは夏休み中であり登校日でもなかった。そのため,原告が本件道路を通行した際,本件道路を通行する児童はいなかった。このような事実関係に照らすと,本件事故当時の本件道路の状況は,車両通行止め規制のない時間帯の状況と何ら変わらなかった。 そうすると,原告が時速20㎞という制限速度を遵守して走行している以上,原告が本件道路を「重大な交通の危険を生じさせる速度」で進行したとはいえない。 (被告の主張)自動車運転死傷処罰法2条6号の「重大な交通の危険を生じさせる速度」 とは,単なる速度そのものを指しているものではなく,通行禁止道路を走行した車両が,他車と衝突すれば重大な事故を惹起することになると一般的に認められる速度,あるいは,重大な事故を回避することが困難であると一般的に認められる速度を意味するものと解され,判例も,時速約20㎞で走行していたところ,前方約14.8mの地点に相手方車両を認め,急制動の措置を執ったが間に合わずに衝突した場合につき,重大な交通の危険を生じさせる速度に当たると判断している(最高裁判所平成18年3月14日第二小法廷決定・刑集60巻3号363頁)。 原告は,本件道路を本件交差点に至るまで時速約20㎞で進行していたことが認められ,被害車両を発見して制動措置を執ったが間に合わず同車両に衝突して 二小法廷決定・刑集60巻3号363頁)。 原告は,本件道路を本件交差点に至るまで時速約20㎞で進行していたことが認められ,被害車両を発見して制動措置を執ったが間に合わず同車両に衝突しており,実際に被害車両は衝突によって約3.5m飛ばされ,被害者は治療期間6週間を要する傷害を負っていることからしても,本件事故当時の原告車両の速度は,「重大な交通の危険を生じさせる速度」であったと認められる。 オ原告が本件道路を進行したことと本件事故との間に因果関係があるか(原告の主張)仮に本件規制が有効であるとしても,本件交差点側の本件規制の及ぶ範囲は,「自転車及び歩行者専用」の道路標識(乙4の6枚目。以下「本件標識」という。)の設置された地点(別紙2現場見取図の△)までである。 すなわち,自動車運転死傷処罰法施行令2条1号は,道路標識等(道路標識及び道路標示をいう。道路交通法2条1項4号)により通行を禁止されている道路又はその部分を通行禁止道路として定めるところ,本件標識が設置されているのは,Dの駐車場の東端部分である。したがって,本件規制が及ぶのは,上記駐車場の東端の本件標識までであり,本件事故は,本件標識から西に9.8m離れた場所で起きており,本件規制の範囲外で起こった事故である。 そして,本件規制の規制区間の終点から本件事故現場までの間にはD駐車場の出入口があること,原告車両と同等の普通乗用自動車は本件標識付近から加速しても本件事故の地点で時速約20㎞に達することなどからすると,原告が通行禁止道路を進行したことと,本件事故との間に因果関係は存在しない。 (被告の主張)本件規制の規制区間は,本件標識の位置までではなく,交差道路との境 と,原告が通行禁止道路を進行したことと,本件事故との間に因果関係は存在しない。 (被告の主張)本件規制の規制区間は,本件標識の位置までではなく,交差道路との境界までである。そして,原告車両が被害車両と衝突した位置は,本件規制の規制区間を通過した直後であること(別紙2現場見取図参照)からすれば,本件道路の進行と本件事故との因果関係は認められる。 本件標識の上方にある「最高速度20キロメートル毎時」の規制標識には,規制区間の始まりを示す補助標識が設置されているが,その下方にある「自転車及び歩行者専用」の標識(本件標識)には,区間の始まりを示す補助標識は附置されていないから,本件標識の設置場所が本件規制の始点又は終点を示すことにはならない。 (2) 本件各処分の量定の適否等ア道路交通法施行令38条7項1号ホが委任の範囲を超え無効であるか(原告の主張)道路交通法103条8項は,危険運転致傷罪に当たる行為等をしたことを理由として運転免許を取り消された場合の欠格期間について,政令で定める基準に従い,「3年以上10年を超えない範囲内」で指定するものとしており,上記委任に基づき,道路交通法施行令38条7項がその欠格期間の基準を定めている。そして,治療期間30日以上の危険運転致傷の場合については,同施行令別表第2の2により基礎点数51点が自動的に付加され,同施行令別表第3の2により「前歴がない者」の「第6欄点から54点まで」に該当することとなり,同施行令38条7項1号ホが 適用されることにより,一律に6年の欠格期間が指定されることになる。 しかし,危険運転致傷罪の構成要件に該当する行為といっても,その道路交通に 施行令38条7項1号ホが 適用されることにより,一律に6年の欠格期間が指定されることになる。 しかし,危険運転致傷罪の構成要件に該当する行為といっても,その道路交通に対する危険の程度は様々であるし,欠格期間中は運転免許を取得することができず,生活の足ともいうべき自動車を運転することができないという重大な不利益を伴うことからすれば,欠格期間の定めは,個別具体的な事情を考慮し,当該違反行為が道路交通に対する危険を生じさせた程度に応じて慎重に定められるべきである。そうすると,このような個別事情を考慮することなく,機械的かつ一律に欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホの規定は,道路交通法103条8項の委任の範囲を逸脱するものであって無効である。 (被告の主張)道路交通法施行令38条7項1号は,道路交通法103条8項を受けて,特定違反行為に係る累積点数が同施行令別表第3の2の表の第一覧に掲げる区分に応じ,同表の第二欄ないし第九欄に掲げる点数に該当した場合,3年以上10年を超えない範囲で運転免許を受けることができない期間をそれぞれ規定しているのであり,同施行令38条7項1号が同法103条8項の委任の範囲を超えたものとはいえない。 イ本件取消処分につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(比例原則違反の有無)(原告の主張)本件取消処分については,次の事情を考慮すると,本件事故に係る原告の行為の危険性の度合いに照らして著しく重きに失すると認められ,比例原則に違反するものであって,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとして違法である。 (ア) 本件事故に係る原告の行為の危険性が小さいこと本件 きに失すると認められ,比例原則に違反するものであって,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとして違法である。 (ア) 本件事故に係る原告の行為の危険性が小さいこと本件規制は,本件道路がCの通学路であることを理由とするものであ るところ,Cの生徒数は本件規制が設けられた当時から大きく減少しており,そもそも本件規制を継続する必要性が失われている。 また,本件事故当日,Cは夏休み中であり,登校日でもなく,児童の通行の安全が問題となる状況にはなかった。そして,原告は,かつて教員として勤務していた経験から,本件事故当日,Cが夏休み期間中であり,登校日でもないことをよく知っていた。 原告は,本件事故当時,本件道路を時速約18.68㎞の速度で走行しており,最高速度時速20㎞という規制には違反しておらず,重大な交通の危険を生じさせる速度ではなかった。 本件事故は,原告が本件道路を通過した後の事故であり,被害者は,本件道路に車両通行止め規制があるとの認識を有していなかったから,本件規制が想定していた危険性が現実化したものではない。また,本件事故については,被害者にも,左方道路の安全確認を怠った過失があり,被害者は原告に対する軽い処分を望んでいる。 (イ) 原告が本件取消処分によって受ける不利益原告は,本件取消処分により運転免許が取り消され,再度運転免許の試験を受験して運転免許を取得しなければならないという不利益を被っている。しかも,原告が再び運転免許の試験を受験することができるようになるのは欠格期間が満了した後であるから,6年間という長期にわたって自動車の運転をすることができない。仮に危険運転致傷ではなく過失運転致傷 かも,原告が再び運転免許の試験を受験することができるようになるのは欠格期間が満了した後であるから,6年間という長期にわたって自動車の運転をすることができない。仮に危険運転致傷ではなく過失運転致傷とされた場合には,運転免許の停止処分にとどまるのが通常であることからすると,本件取消処分は重きに失する。原告は,家族が休みの日以外に買物に行くことができないなど,日常生活を送る上で多大な不利益を被っている。 (被告の主張)原告は,通行禁止時間帯に本件道路を自動車で通行して本件事故を起こ したものであり,車両の通行が禁止される時間帯であれば,他の通行者は本件道路を通行する自動車がないことを前提として通行することからすれば(本件事故のように通行禁止区間を過ぎた直近の場所でも同様である。),原告の行為は,それ自体危険性が高いとみざるを得ないものである。また,原告は,本件道路が通行禁止道路であることを認識していながら,夏休みで通学する児童がいないなどと独自に判断して本件道路を進行し,重大な交通の危険を生じさせる速度で本件交差点に進入したため,本件交通事故を起こしたことも考慮すれば,本件取消処分につき,比例原則に違反する事情が存在するとはいえず,著しく重きに失する処分であるとはいえない。 ウ本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」が存在し,本件指定処分のうち,欠格期間を5年間を超えて指定した部分が違法であるか(原告の主張)上記イ(原告の主張)で掲げた事情等に照らすと,原告には本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるというべきであり,少なくとも,本件指定処分のうち欠格期間を5年間を (原告の主張)で掲げた事情等に照らすと,原告には本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるというべきであり,少なくとも,本件指定処分のうち欠格期間を5年間を超えて指定した部分は裁量権の範囲の逸脱又はその濫用により違法である。 (被告の主張)上記イ(被告の主張)で掲げた事情等に照らすと,原告には本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」はなく,本件指定処分に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。 原告が主張する事情のうち,被害者の年齢や本件事故当時の被害者の認識,被害者への損害補填等の違反行為後の事情,本件規制の趣旨,本件道路の交通量等の事情は,原告の運転者としての危険性とは関係のない事情であり,これらの事情は「運転者としての危険性がより低いと評価すべき 特段の事情」を基礎付けるものではない。 第3 危険運転致傷罪の成否に係る当裁判所の判断 1 自動車運転死傷処罰法2条6号が憲法31条に違反するか(争点(1)ア)原告は,通行禁止道路における事故(危険運転致傷罪)につき,それ以外の道路における事故(過失運転致傷罪)と比較して著しく重い法定刑を定める自動車運転死傷処罰法2条6号は,罪刑の均衡を失しており,憲法31条に違反し無効であると主張する。 しかし,危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役であるところ(関係法令等の定め(1)),同罪は故意による危険運転行為により人に傷害の結果を生じさせた罪であり,一般的にその危険性,悪質性は高いといえること,また,その法定刑の下限は1か月であり(刑法12条1項),酌量減軽により1か月未満にすることも可能である上(同法14条2項,66条), させた罪であり,一般的にその危険性,悪質性は高いといえること,また,その法定刑の下限は1か月であり(刑法12条1項),酌量減軽により1か月未満にすることも可能である上(同法14条2項,66条),執行猶予を付すことも可能である(同法25条)ことからすると,自動車運転死傷処罰法2条6号が罪刑の均衡を失しているとはいえず,原告の主張はその前提を欠くものというべきである(最高裁判所平成27年(あ)第1862号平成29年2月9日第一小法廷決定(乙9の4)参照)。原告の主張は採用することができない。 2 自動車運転死傷処罰法施行令2条が委任の範囲を超え無効であるか(争点(1)イ)原告は,本件道路のような車両通行止め規制の道路を一律に自動車運転死傷処罰法2条6号の通行禁止道路とする自動車運転死傷処罰法施行令2条(1号)の規定は,同法2条6号の委任の範囲を超えるものとして無効であると主張する。 しかし,同号は,「通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速 度で自動車を運転する行為」と規定するところ,その趣旨は,通行禁止道路においては,他の通行者としては,自動車が進行してくることはないはずであるとの前提で通行しており,このような道路を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する行為は,自動車運転死傷処罰法2条1号から5号までの危険運転行為と同等の危険性・悪質性が存するといえることから,危険運転致傷罪の対象とすることにあるものと解される。しかるところ,本件道路のように,道路標識によ 車運転死傷処罰法2条1号から5号までの危険運転行為と同等の危険性・悪質性が存するといえることから,危険運転致傷罪の対象とすることにあるものと解される。しかるところ,本件道路のように,道路標識により曜日等及び時間帯を限定して車両通行止め規制がされている道路(自動車運転死傷処罰法施行令2条1号)であっても,当該規制が及ぶ時間帯においては,他の通行者は自動車が進行してくることはないはずであるとの前提で通行するものといえ,このような道路を同法2条6号の通行禁止道路に含めることは,同号の趣旨に反するものではないというべきである。 したがって,同施行令2条(1号)の規定は,同法2条6号の委任の範囲を超えるものではないというべきである。原告の主張は採用することができない。 3 本件道路について有効な自動車の通行禁止の指定があったか(争点(1)ウ)(1) 本件規制に係る規制場所の記載等ア大阪府公安委員会は,昭和47年3月31日,規制区間を「ab番地先(国道E線)から西へ同c番地先まで」,規制時間を「午前7時30分から午前9時まで」及び「午後0時から午後3時まで(日曜及び祝日を除く。)」と決定した。 その際に作成された交通規制上申書(乙10の6枚目)の現場見取図には,簡略な図をもって本件道路が図示されており,本件道路西端の北側(本件交差点の北東側)の区画には「c地」との記載が,本件道路東端の南側(国道交差点の南西側)の区画には「b地」との記載がある。(以上につき,乙10,18)イ大阪府公安委員会は,平成15年9月26日,本件規制の規制時間等から土曜日を除くことを決定した。 その際に作成された本件上申書(甲3の8頁)には,規制内容として「ab番地先(国道E)か ,平成15年9月26日,本件規制の規制時間等から土曜日を除くことを決定した。 その際に作成された本件上申書(甲3の8頁)には,規制内容として「ab番地先(国道E)から西へ同c番地先」と記載されており,本件上申書に添付された住宅地図には,本件道路に色が塗られている。(以上につき,甲3)ウ大阪府警察本部交通部交通規制課長は,本件事故後の平成26年9月4日,専決により,本件規制の規制区間の表記を「ab番地先(国道E)から西へ同c番地先まで」から「ae番地先(国道E)から西北へ同d番地先交差点東南詰まで」に変更した(同年11月28日実施)。 その際に作成された交通規制上申書(甲3の37頁)には,「住居表示と距離を現状に合わせ変更するものである。」と記載され,その添付図面には,本件道路にラインが引かれ,本件道路の西端には「d地」との記載が,本件道路の東端には「e地」との記載がある。(以上につき,甲3)(2) 原告は,規制区間の終点である「同c番地先」は,本件上申書添付図面(甲3の9頁)の「B」との記載のある建物付近であり,本件事故当時,本件道路について本件規制がされていたとはいえないと主張する。 しかし,昭和47年に本件規制が開始された際の交通規制上申書(乙10の6枚目)の現場見取図には,本件道路西端の北側(本件交差点の北東側)の区画に「c地」との記載があること(上記(1)ア)からすると,規制区間の終点である「同c番地先」とは,本件道路の西端(本件交差点との境界)を指す趣旨で記載されたものと認められる。そして,上記(1)によれば,大阪府公安委員会は,昭和47年以降現在に至るまで,一貫して,本件規制が及ぶ範囲(規制区間)を本件道路(国道交差点との境界から本件交差点との境界まで たものと認められる。そして,上記(1)によれば,大阪府公安委員会は,昭和47年以降現在に至るまで,一貫して,本件規制が及ぶ範囲(規制区間)を本件道路(国道交差点との境界から本件交差点との境界までの道路)と決定し,かつ,そのように認識していたものと認められる。 また,本件事故当時,本件道路には,その東側出入口である国道交差点付近に本件規制を示す東向きの道路標識2本が,西側出入口である本件交差点付近に本件規制を示す西向きの道路標識(本件標識)1本が,それぞれ設置 されていたことが認められる(甲14,乙4)。 以上によれば,本件事故当時,本件道路には本件規制が及んでいたものと認められ,これに反する原告の主張は採用することができない。原告が指摘する事情は,上記認定を左右するに足りない。 (3) 原告は,仮に本件道路に本件規制が及んでいたとしても,本件規制の規制区間の指定は不明確であり,無効であると主張する。 しかし,上記(1)及び(2)によれば,本件事故当時,本件道路に本件規制が及んでいたことは十分に明らかであるといえ,原告が指摘する事情(地番や距離に誤りがあること等)を考慮しても,本件規制の規制区間の指定が,無効と評価すべきほどに不明確であるとはいえない(刑事控訴審判決2,3頁参照)。 なお,原告は,本件事故後に行われた本件規制の改正(上記(1)ウ)は,本件規制が無効であることを強く推認させるなどと主張する。しかし,その際の交通規制上申書(甲3の37頁)に「住居表示と距離を現状に合わせ変更するものである。」と記載されているとおり(上記(1)ウ),上記改正は,昭和47年に作成された交通規制上申書(乙10の6枚目)記載の規制区間,方向及び距離の表記が,無効とはいえないまでも不正確な 更するものである。」と記載されているとおり(上記(1)ウ),上記改正は,昭和47年に作成された交通規制上申書(乙10の6枚目)記載の規制区間,方向及び距離の表記が,無効とはいえないまでも不正確なものであったことから,現状に合わせてより正確な表記となるよう訂正したものであり,このような表記の訂正がされたことをもって,本件規制の無効等が推認されるものとはいえない。 (4) 以上によれば,本件事故当時,本件道路には有効な本件規制が及んでいたと認められる。原告の主張は採用することができない。 4 原告が本件道路を「重大な交通の危険を生じさせる速度」で進行したといえるか(争点(1)エ)自動車運転死傷処罰法2条6号の「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは,通行禁止道路を進行した場合に,自車が相手方と衝突すれば大きな事故を 生じさせると一般的に認められる速度,あるいは,相手方の動作に即応するなどしてそのような大きな事故になることを回避することが困難であると一般的に認められる速度を意味するものと解される。 原告は,本件事故当時,時速20㎞前後で本件道路を進行していたものと認められるところ(乙9,原告本人。なお,時速18.68㎞であったことを裏付ける証拠はない。),通行禁止道路において,自動車が進行してくることはないはずであるとの前提で歩行者や自転車が本件道路を通行又は利用していた場合,時速20㎞前後であっても,一般的に,自動車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせる可能性が高く,その通行等の態様によっては,そのような大きな事故になることを回避することも困難である。本件事故についてみても,原告は,右方から本件交差点に進入してきた被害車両を認め,とっさにブレーキを踏んだが衝突を回避することができず は,そのような大きな事故になることを回避することも困難である。本件事故についてみても,原告は,右方から本件交差点に進入してきた被害車両を認め,とっさにブレーキを踏んだが衝突を回避することができず,被害車両の左側面に原告車両の前部を衝突させた結果,被害者は衝突地点から約3.5m飛ばされ,加療約6週間を要する骨折等の傷害を負ったこと(乙3,5,9,原告本人)が認められるのであり,このような本件事故の状況等にも照らすと,本件事故当時の原告車両の速度は,本件道路の制限速度と同程度ではあるものの,自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度であり,相手方の動作に即応するなどしてそのような大きな事故になることを回避することが困難であると一般的に認められる速度でもあったというべきである。 したがって,本件事故の際の原告車両の速度は,自動車運転死傷処罰法2条6号の「重大な交通の危険を生じさせる速度」に該当すると認められる(刑事一審判決2,3頁,刑事控訴審判決3,4頁参照)。これに反する原告の主張は採用することができない。 5 原告が本件道路を進行したことと本件事故との間に因果関係があるか(争点(1)オ)自動車運転死傷処罰法2条6号の危険運転致傷罪が成立するためには,危険 運転行為(通行禁止道路を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転すること)と傷害結果との間に因果関係があることが必要であるが,衝突した場所が通行禁止道路の外であっても,通行禁止道路から出た直後に受傷させた場合など,行為の危険性が現実化したものといえるときは,危険運転行為と人の傷害との間に因果関係が認められ,同罪が成立するものと解される。 ところで,時速20㎞前後の速度を秒速に換算すると秒 た場合など,行為の危険性が現実化したものといえるときは,危険運転行為と人の傷害との間に因果関係が認められ,同罪が成立するものと解される。 ところで,時速20㎞前後の速度を秒速に換算すると秒速5ないし6mであるから,仮に本件規制の終点(本件道路の西端)が原告主張のとおり本件標識付近であったとしても,本件規制の終点から本件事故の衝突地点までは約10mにすぎず(別紙2現場見取図参照),原告車両と被害車両が衝突したのは,計算上,原告車両が本件道路を通過してからわずか2秒後の出来事である。 そうすると,原告の主張を前提としても,原告車両が本件道路を通過してから被害車両と衝突するまでの距離や時間は短く,原告車両は,本件道路を通過した直後に被害車両と衝突したものといえる。原告及び被害者による安全確認がいずれも不十分であった可能性を考慮に入れても,本件事故は,原告が通行禁止道路である本件道路を時速20㎞前後で進行した行為の危険性が現実化したものというべきであり,上記危険運転行為と本件事故との間の因果関係は優に認められるというべきである(刑事控訴審判決4,5頁参照)。これに反する原告の主張は採用することができない。 6 小括以上のとおり,危険運転致傷罪の成否に係る原告の主張は,いずれも採用することができない。本件事故における原告の行為は,刑事一審判決及び刑事控訴審判決のとおり(乙9),自動車運転死傷処罰法2条6号の危険運転致傷罪に該当すると認められる。したがって,原告の上記行為は,道路交通法103条2項2号に該当する。 第4 本件各処分の量定の適否等に係る当裁判所の判断 1 欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホが委任の範囲を超え無効であるか(争点(2)ア)原告は,個 本件各処分の量定の適否等に係る当裁判所の判断 1 欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホが委任の範囲を超え無効であるか(争点(2)ア)原告は,個別の事情を考慮することなく,機械的かつ一律に欠格期間を定める道路交通法施行令38条7項1号ホの規定は,道路交通法103条8項の委任の範囲を逸脱するものであって無効であると主張する。 しかし,日々大量に発生する交通違反に係る処分基準としての性質や,公安委員会による恣意的な処分の量定の回避等の要請から,類型的かつ定型的な判断をもって欠格期間を定める必要性があることは否定し難く,同法103条8項の「政令で定める基準」による委任が,同施行令38条7項各号のように累積点数等と欠格期間(年数)とを個別に対応させる基準(累積点数等から自動的に欠格期間が定まる基準)を許さない趣旨であるとは解し難い。また,欠格期間の指定に係る公安委員会の裁量権は,同項の基準に完全に拘束されるものではなく,現に本件処分基準において,「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるときは,同項の欠格期間から1年を減じた期間に軽減することができるものとされていること(関係法令等の定め(4)参照)も考慮すると,同項1号ホの規定は,同施行令別表第3の表も含め,同法103条8項の委任の趣旨に反するものとも,その委任の範囲を逸脱するものとも認められない。また,このことは,危険運転致傷に係る基礎点数を定める同施行令別表第2の2の表についても同様である。 なお,原告の上記主張の実質は,要するに,本件事故につき原告に危険運転致傷罪が成立するとしても,個別の事情に照らすと本件各処分は重きに失する旨をいうものと解されるところ,この点については,後記2及び3において別 上記主張の実質は,要するに,本件事故につき原告に危険運転致傷罪が成立するとしても,個別の事情に照らすと本件各処分は重きに失する旨をいうものと解されるところ,この点については,後記2及び3において別途検討する。 2 本件取消処分につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(比例原則違反の有無)(争点(2)イ)(1) 道路交通法103条2項は,運転免許を受けた者が同項各号(危険運転致 死傷等に当たる行為等)のいずれかに該当することとなったときは,所定の公安委員会は,その者の運転免許を取り消すことができる旨規定するところ,「取り消すことができる」という規定の文言に照らすと,上記運転者の運転免許を取り消すかどうかについては,所定の公安委員会の合理的な裁量に委ねられているものと解される。 もっとも,同項の規定は,同条8項と共に,平成19年法律第90号による道路交通法の改正の際に新設されたものであるところ,その趣旨は,危険運転致死傷罪に当たる行為,酒酔い運転,救護義務違反(ひき逃げ)等をした特に悪質・危険な運転者について,欠格期間の上限を5年から10年に引き上げ,より長期間の欠格期間の適用を可能にすることにより,このような運転者を長期間道路交通の場から排除し,将来における道路交通の危険の防止及び安全の確保を図るとともに,予測可能性の観点から,このような運転免許の取消しと共に長期間の欠格期間が指定されることとなる行為を,政令ではなく法律で明確に規定することとしたものであると解される。このような道路交通法103条2項等の趣旨に加え,同項が適用される場合には運転免許の効力の停止を選択する余地がないこと(同条1項参照)も考慮すると,同条2項各号に該当する行為を行った運転者に対しては,その運転免許を取り消すこ 2項等の趣旨に加え,同項が適用される場合には運転免許の効力の停止を選択する余地がないこと(同条1項参照)も考慮すると,同条2項各号に該当する行為を行った運転者に対しては,その運転免許を取り消すことが当然に予定されているというべきであり,同項に基づく運転免許の取消処分が,後述する欠格期間短縮の可能性を考慮してもなお重きに失し,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるのは,極めて例外的な場合に限られるというべきである。 (2) これを本件についてみると,本件事故に係る原告の行為は,自動車運転死傷処罰法2条6号の危険運転致傷罪に該当するものであるから(前記第3),道路交通法103条2項2号に該当し,同項の規定が適用されるというべきである。 しかるところ,原告は,本件事故当時,本件道路が通行禁止道路であるこ と(車両通行止め規制の時間帯であること)を十分に認識しながら,自宅への近道であることから,夏休み中であり通学中の児童もいないだろうと考え,上記規制に反して時速20㎞前後で本件道路を通行し(乙1,2,原告本人),その結果,本件交差点において出会い頭に被害車両と衝突し,被害者に加療約6週間を要する重傷を負わせたものであって(前提となる事実(2)),その運転行為の危険性や被害結果の重大性は一概に否定し難い。そうすると,原告の指摘する事情(後記3参照)を考慮してもなお,本件取消処分は,社会通念上著しく不合理というほどに重きに失するということはできず,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとまではいえない。原告の主張は採用することができない。 3 本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」が存在し,本件指定処分のうち,欠格期間を5年間を超えて指定 とまではいえない。原告の主張は採用することができない。 3 本件処分基準所定の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」が存在し,本件指定処分のうち,欠格期間を5年間を超えて指定した部分が違法であるか(争点(2)ウ)(1) 道路交通法103条8項は,公安委員会は,同条2項各号のいずれかに該当することを理由として同項又は同条4項の規定により運転免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,3年以上10年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が運転免許を受けることができない期間(欠格期間)を指定するものとする旨規定するところ,このような規定の文言に照らすと,同条2項の規定により運転免許を取り消したときに欠格期間をどの程度の期間とするかについては,3年以上10年を超えない範囲内で公安委員会の合理的な裁量に委ねられているものと解され,その判断に当たっては,原則として,上記「政令で定める基準」(道路交通法施行令38条7項)に従うことが求められているものと解される。 もっとも,道路交通法施行令の点数制度は,自動車等の運転手の交通違反や交通事故にあらかじめ一定の点数を付し,その累積点数の多寡によって推認される行為者の危険性の度合いに応じて,運転免許の取消しや欠格期間の 指定等の処分を行うものであるが,行為者の危険性の度合いを定型的,画一的に評価推認することとされているため,違反行為の態様,被害者側の落ち度,違反行為をするに至った経緯・動機その他個別具体的な事情によっては,同施行令の基準に従った処分をすることが処分を受ける者の運転者としての危険性の度合いに照らして重きに失すると認められる場合もあり得る。そこで,本件処分基準は,運転免許の取消しの処分基準に該当することとなった者において,その者 することが処分を受ける者の運転者としての危険性の度合いに照らして重きに失すると認められる場合もあり得る。そこで,本件処分基準は,運転免許の取消しの処分基準に該当することとなった者において,その者の「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるときは,同施行令38条7項の欠格期間から1年を減じた期間に軽減することができる旨定めているところ,このような欠格期間の軽減に係る基準を定めることは,点数制度に係る上記弊害を緩和するものとして合理的であり,公安委員会の裁量の範囲内のものというべきである。そして,行政手続法12条1項の趣旨に照らすと,大阪府公安委員会が本件処分基準を恣意的に運用することは許されないというべきであって,処分を受ける者に「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるにもかかわらず,同公安委員会がこれを考慮せず,処分を軽減しなかった場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用により当該処分は違法と評価されることとなると解される。 (2) これを本件についてみると,確かに,原告の行為は危険運転致傷罪に当たるものと評価され,上記2(2)のとおり,その運転行為の危険性や被害結果の重大性は一概に否定し難い。 しかし,①本件規制は,本件道路がCの児童の通学路となっているため,通学する児童の安全を確保するために設けられた規制(スクールゾーン)であり,休校日である土曜,日曜及び祝日は規制から除かれているが(甲3,乙4~8,10,18),本件事故当日は同小学校の夏休み期間中であり,登校日でもなく,原告はそのことを認識しながら,本件道路を通行したものであり,実際にも,原告が本件道路を通行した際,本件道路に児童はいなか ったこと(乙1,2,甲18,原告本人),②原告は,本件事故 告はそのことを認識しながら,本件道路を通行したものであり,実際にも,原告が本件道路を通行した際,本件道路に児童はいなか ったこと(乙1,2,甲18,原告本人),②原告は,本件事故当時,時速20㎞前後で本件道路を進行していたところ(乙1,2,原告本人),この速度は,本件道路の制限速度とほぼ同じ速度であり,自転車の速度と同程度であって,危険運転致傷罪の構成要件である「重大な交通の危険を生じさせる速度」と評価される下限に近い速度といえること,③本件事故は,本件道路を過ぎた本件交差点において発生しており,当時,被害者も本件道路が通行禁止道路であったことを認識しておらず(甲15,乙1,2),本件事故の直接かつ最大の原因は,原告が本件道路を時速20㎞前後で通行したこと(被害者が本件道路から自動車が来るとは想定していなかったこと)ではなく,原告及び被害者双方の本件交差点内の安全確認が不十分であった点にあるといえることを指摘することができ,さらに,④原告は,本件事故について,危険運転致傷罪の有罪判決を受けたものの,その量刑は懲役1年,3年間執行猶予という同種事件の中では相当軽いものであること(乙9)も考慮すると,本件事故に係る原告の行為は,危険運転致傷罪の構成要件に該当するものではあるが,その実質的な危険性や悪質性の程度は,危険運転致傷罪に該当する行為の中でもかなり低いというべきである。 以上の事情等に照らすと,原告には「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」があるというべきであり,本件処分基準に基づき欠格期間を軽減することなく,漫然と欠格期間を6年間と指定した本件指定処分は,5年間を超えて欠格期間を指定した部分につき,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であると認められる。 軽減することなく,漫然と欠格期間を6年間と指定した本件指定処分は,5年間を超えて欠格期間を指定した部分につき,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であると認められる。 なお,本件指定処分のその余の部分については,いささか重い印象は否めないものの,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法であるとまでは認められない。 第5 結論よって,原告の請求は,本件指定処分のうち平成27年8月5日から5年間を 超えて欠格期間を指定する部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官徳地淳 裁判官横井真由美
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