平成23年4月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(行コ)第10006号却下処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第597号)口頭弁論終結日平成23年3月24日判決控訴人(原告)インヴィトロジェンダイナルエーエス訴訟代理人弁護士井坂光明補佐人弁理士奥山尚一有原幸一松島鉄男河村英文深川英里被控訴人(被告)国 処分行政庁特許庁長官訴訟代理人弁護士大西達夫指定代理人下田一博市川勉江摩弥子天道正和 主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。2 特許庁長官が,意願2008-006212について,平成21年3月4日にした,平成20年11月4日付け提出の手続補正書に係る手続に対する却下処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 控訴人(原告)は,「域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)」(Office for Harmonization in the Internal Market)において,商標登録出願を行った。 出の手続補正書に係る手続に対する却下処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 控訴人(原告)は,「域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)」(OfficeforHarmonizationintheInternalMarket,OHIM)出願を基礎とするパリ条約による優先権主張をして我が国の特許庁に意匠登録出願(本件出願)をしたところ,その優先権証明書提出書(本件提出書)に係る手続について,意匠法15条1項,特許法43条2項所定の優先権証明書が添付されておらず,不適法な手続であり,補正をすることができないものとして,意匠法68条2項,特許法18条の2第1項の規定により同手続を却下する旨の先行処分を受けた。控訴人は,上記手続については補正(原本の追完)が認められるべきであり,補正の機会を与えずに同手続を却下した提出書却下処分は違法である旨主張して,異議申立てをした上で,優先権証明書の原本を添付した手続補正書を提出したが,この手続補正書に係る手続についてもこれを却下する本件処分を受けた。本件訴訟は,この本件処分の取消請求である。 2 控訴人が先行処分の取消しを求めて別件訴訟(東京地方裁判所平成21年(行ウ)第540号)を提起しているところ,原判決は,仮に別件訴訟において提出書却下処分を取り消す旨の判決が確定すれば,後続する本件処分については,その前提を欠くものとして失効するか,少なくとも,処分行政庁である特許庁長官は,不整合処分である本件処分を職権により取り消す義務が生じることになると解され,- 3 -その結果,本件提出書に係る手続につき手続補正があったものとして取り扱わなければならなくなるから,別件訴訟とは別に,本件処分の取消しを求める訴えの利益がないとして,本件訴えを却下した。 3 争いのない事実及び争 提出書に係る手続につき手続補正があったものとして取り扱わなければならなくなるから,別件訴訟とは別に,本件処分の取消しを求める訴えの利益がないとして,本件訴えを却下した。 3 争いのない事実及び争点は,原判決2頁25行目以下の「2 争いのない事実」及び5頁18行目以下の「3 争点」記載のとおりである。 第3 当事者の主張 1 原審における主張原審における当事者の主張は,原判決5頁21行目以下の「4 争点に関する当事者の主張」記載のとおりである。 2 当審における主張(争点の「本件訴えの利益」について)(1) 控訴人先行処分を取り消す旨の判決が別件訴訟で確定することによって本件処分が失効するとしても,処分行政庁が同じ見解によらなければ再度訴訟の必要が生じることとなる。また,いわゆる不整合処分の取消義務が生じるにすぎない場合も,そのような義務に反して取消しがされないときは,別途,取消しを求める訴訟を提起する必要が生じることとなる。いずれにしても,本件訴訟で本件処分が取り消される場合に比べて控訴人にとって不利益である。 (2) 被控訴人控訴人の主張は,処分行政庁である特許庁長官が,行政事件訴訟法33条1項に違反し,先行処分の取消判決の拘束力に従わない場合に,控訴人が本件処分について別途取消訴訟の提起を強いられるという不利益を主張するものであるが,そもそも被控訴人自らが,そのような判決の拘束力により,本件処分について処分行政庁に取消義務が生ずることを認めているにもかかわらず,処分行政庁がその取消判決の拘束力に従わないという違法な対応に及ぶという事態は,現実的には想定し難い。 このような事実上の不利益,あるいは客観的にみて想定し難い不利益を回避する必- 4 -要性をもって,先行処分とは別個独立に本件処分の取消しを求め 法な対応に及ぶという事態は,現実的には想定し難い。 このような事実上の不利益,あるいは客観的にみて想定し難い不利益を回避する必- 4 -要性をもって,先行処分とは別個独立に本件処分の取消しを求める固有の法律上の利益の存在を基礎付けることはできない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所は,先行処分についての違法事由と後行する本件処分についての違法事由とが完全に一致するものではないことにかんがみ,先行処分の取消訴訟が係属していることをもって,本件処分の取消しを求める訴えの利益を否定することはできないと判断するが,本案についての争点は法律論のみであり,この点の当事者双方の主張も尽きているので,以下に本件処分の適法性について検討することとする。 控訴人は,先行処分が違法なもので,取り消されるべきものであるから,これを前提とする本件処分も違法なものとして,取り消されるべきであると主張する。そこで,先行処分の適法性について判断する。 2(1) パリ条約による優先権についてパリ条約による優先権は,新規性,進歩性等の判断の基準日を遡らせるなど,その効果が第三者に与える影響は大きく,第二国における出願の際に主張することによって現実的な効力が生じるものであるから,優先権主張の手続について要求される法定の方式には,権利関係の安定,先願主義等の関係から,厳格な様式性が求められ,パリ条約及び我が国の法令上定められた方式を満たしていない場合には,その主張に係る優先権の効力は生じないというべきである。 (2) パリ条約による優先権主張の手続第二国出願について優先権の利益を享受するためには,①パリ条約上の権利能力を有する者が同盟の第二国に出願をすること(パリ条約4条A),②第二国の出願人が,最初の出願をした者又はその承継人であること(パリ条約4条A いて優先権の利益を享受するためには,①パリ条約上の権利能力を有する者が同盟の第二国に出願をすること(パリ条約4条A),②第二国の出願人が,最初の出願をした者又はその承継人であること(パリ条約4条A(1)),③第一国出願と第二国出願が内容の実質的同一性を有していること,④第二国出願が優先期間内の出願であること(パリ条約4条C(1)),⑤優先権の申立てをすること(パ- 5 -リ条約4条D)が必要である。 このうち優先権の主張の手続については,出願の時点ではパリ条約4条D(1)及び(3)以上の手続を要求することはできず,各同盟国は,同条D(1)の手続及びD(3)所定の謄本の提出を要求したときはその手続を怠った場合の効果について,優先権の喪失を限度として定めるものとされている(同条D(4))。 我が国の法令においては,優先権の主張を伴う出願をする際,当該出願と同時に,優先権を主張する旨並びに最初に出願をした同盟国(第一国)の国名及び最初の出願の出願日を記載した書面を特許庁長官に提出すること(ただし,当該出願の願書に優先権を主張する旨及び必要な事項を記載して,上記書面の提出を省略することができる〔意匠法施行規則19条3項,特許法施行規則27条の4第1項〕。),この第一国の出願日(優先日)を証明する資料として「最初に出願をしたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面」を,第一国の出願の対象物を証明する資料として「最初に出願をしたパリ条約の同盟国の認証がある出願の際の書類で…図面に相当するものの謄本」又は「これらと同様な内容を有する公報若しくは証明書」(優先権証明書)をその提出期限(意匠登録出願については当該出願の日から3か月)内に特許庁長官に提出することが要求されるとともに,優先権証明書をその提出期間内に提出しないときは,当該 しくは証明書」(優先権証明書)をその提出期限(意匠登録出願については当該出願の日から3か月)内に特許庁長官に提出することが要求されるとともに,優先権証明書をその提出期間内に提出しないときは,当該優先権の主張はその効力を失う旨を定めている(意匠法15条1項,特許法43条1項,2項,4項)。 したがって,パリ条約による優先権主張の効力を生じさせるためには,上記のとおり,①出願と同時にする優先権を主張する旨及び必要な事項を記載した書面を提出(又はそれらの事項を願書に記載)した上,②優先権証明書提出期間内に優先権証明書を提出することが必要であり,仮に,上記①の手続をしてパリ条約による優先権の主張をしても,上記②の手続を怠った場合には,当該優先権の主張はその効力を失い(意匠法15条1項,特許法43条4項),優先権の主張自体がなかったことになる。 (3) 本件における提出書- 6 -控訴人は,本件出願と同時にパリ条約による優先権の主張をしたものの,優先権証明書提出期間内に提出した本件提出書の添付書類は,OHIMが発行した優先権証明書の原本ではなく,その一部(表紙を含む2枚)を複写したもの及びその訳文であった。 意匠法15条1項が準用する特許法43条2項は,パリ条約4条D(3)の規定を受けて,優先権証明書について「最初に出願をし…たパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面,…及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する…証明書であってその同盟国の政府が発行したもの」の提出を要求しており,「写し」等の提出で足りるものとはしていないから,パリ条約による優先権主張の手続において提出することが要求される優先権証明書は,同盟国の政府が発行した優先権証明書そのものであり,その写しが含まれないことは明らかである。優先権証 はしていないから,パリ条約による優先権主張の手続において提出することが要求される優先権証明書は,同盟国の政府が発行した優先権証明書そのものであり,その写しが含まれないことは明らかである。優先権証明書を複写した書面は,法令の規定による優先権証明書ではないから,本件提出書に係る手続は,意匠法15条1項,特許法43条2項の規定に反し不適法である。控訴人が,その後,優先権証明書提出期間(平成20年6月12日まで)内に優先権証明書の原本を提出したことについての主張立証はないから,本件出願についてのパリ条約による優先権の主張は,その効力を失ったものというべきである。そして,かかる手続の瑕疵は,優先権主張の手続における重大な要件の瑕疵であり,もはや補正することはできない。 (4) 控訴人の主張について控訴人が以上の判断につき主張する点について当裁判所が判断する内容は,別件訴訟(東京地方裁判所平成21年(行ウ)第540号)で同裁判所が平成22年10月8日に言い渡した判決の該当部分と同一であるので,これを本判決の別紙として添付する。 (5) 以上のとおり,本件提出書に係る手続は,補正することができない不適法なものであるから,意匠法68条2項,特許法18条の2第1項の規定に基づき同手続を却下した先行処分が違法であるとは認められず,これが違法であることを前- 7 -提とする控訴人の主張は理由がない。 第5 結論以上によれば,本件訴えについて訴えの利益は認められるが,本件処分について控訴人主張の違法事由があるということはできず,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却すべきである。 本件訴えを却下した原判決は,これと結論を異にするが,被控訴人から不服申立てのない本件においては,原判決を控訴人の不利益に変更することは許されない。 よって, ないから,これを棄却すべきである。本件訴えを却下した原判決は,これと結論を異にするが,被控訴人から不服申立てのない本件においては,原判決を控訴人の不利益に変更することは許されない。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官清水 裁判官古谷健二郎 以下別紙省略
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