昭和48(オ)889 家屋明渡等請求

裁判年月日・裁判所
昭和50年4月10日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 昭和46(ネ)650
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判決文本文4,732 文字)

主文 原判決中第一審判決添付物件目録記載(一)ないし(四)の建物に関する上告人敗訴部分を破棄し、右破棄部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。右破棄部分を除くその余の上告人敗訴部分に関する本件上告を却下する。前項に関する上告費用は、上告人の負担とする。理由 上告代理人増沢照久の上告理由第一点について。所論の点に関する原審の認定判断は、原判決拳示の証拠関係に照らし、正当として是認しえないものではなく、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。同第二点について。原審は、(一)被上告人B1は、昭和三六年七月二九日被上告人B2を連帯保証人として訴外D信用組合から一〇〇万円を利息日歩四銭、最終弁済期昭和三八年七月二九日の約定で借り受け、その際、右被上告人両名は、右消費貸借債務を担保するため、Dとの間で被上告人B2所有の本件(一)建物(第一審判決添付物件目録記載(一)の建物)及び被上告人B1所有の本件(二)ないし(四)建物(同目録記載(二)ないし(四)の建物)について抵当権を設定するとともに、弁済期日に債務の履行を遅滞したときは弁済に代えて右各建物の所有権を移転する旨の代物弁済予約を締結し、抵当権設定登記及び所有権移転請求権保全の仮登記を経由したこと、(二)被上告人B1、同B2は、利息の支払を怠つたため弁済期限の利益を失つて直ちに債務全額の弁済をしなければならなくなり、昭和三八年二月七日Dから分割弁済の承認を得て上告人の援助融資により債務元利金の一部を支払つたが、再び履行を遅滞したため、Dから右分割弁済の承認を取り消され、Dは、同年八月一六日、同年七月三〇- 1 -日以降 七日Dから分割弁済の承認を得て上告人の援助融資により債務元利金の一部を支払つたが、再び履行を遅滞したため、Dから右分割弁済の承認を取り消され、Dは、同年八月一六日、同年七月三〇- 1 -日以降における貸金残債権は元本残額四二万二〇四一円及びその完済までの遅延損害金であるとして、被上告人B1に対し支払の催告をしたうえ、被上告人B2に対し有体動産差押の強制執行を、次いで本件(一)建物につき任意競売の市立をしたこと、(三)被上告人B1、同B2は、当時事業の失敗、病気等による生活逼迫のため、右債務の全額一時弁済が困難であつたところから、同年八月二七日Dを相手方として債務支払方法協定の調停の申立をし、強制執行及び任意競売手続の各停止決定を得たこと、(四)ところが、Dは、債権の回収を急ぎ、右調停事件係属中の昭和三九年三月ころ上告人に対して本件貸金残債権四九万六三一三円の譲渡を申し入れ、上告人は、かねて右のような事情を知りながら、僅かな金額で本件(一)ないし(四)建物を取得する目的で、同月五日Dから右債権をこれと同額の代金額により右建物についての抵当権、代物弁済予約権等とともに譲り受け、抵当権移転及び仮登記移転の附記登記を経由し、さらに被上告人B1、同B2に対して、Dから同月二五日付書面をもつて債権譲渡の通知を、他方、上告人から翌二六日付書面をもつて本件(一)ないし(四)建物の所有権を代物弁済として取得する旨の意思表示をし、右書面はいずれもそのころ被上告人両名に到達し、上告人は本件(二)ないし(四)建物について同月二六日代物弁済を原因とする所有権移転登記を経由したこと、(五)代物弁済予約完結当時における本件(一)ないし(四)建物並びにその敷地の借地権の価額の合計は、少くとも七八六万円を下回るものではなかつたことの諸事実を認定したうえ、以上の事実 (一)ないし(四)建物の所有権を代物弁済として取得する旨の意思表示をし、右書面はいずれもそのころ被上告人両名に到達し、上告人は本件(二)ないし(四)建物について同月二六日代物弁済を原因とする所有権移転登記を経由したこと、(五)代物弁済予約完結当時における本件(一)ないし(四)建物並びにその敷地の借地権の価額の合計は、少くとも七八六万円を下回るものではなかつたことの諸事実を認定したうえ、以上の事実 を経由したこと、(五)代物弁済予約完結当時における本件(一)ないし(四)建物並びにその敷地の借地権の価額の合計は、少くとも七八六万円を下回るものではなかつたことの諸事実を認定したうえ、以上の事実によれば、上告人は、被上告人B1、同B2が窮乏状態にあり、苦境の打開策として被上告人らから申し立てた調停事件が現に係属中であることを知りながら、本件(一)ないし(四)建物を自己の手中に収める目的で、Dから本件貸金残債権四九万六三一三円を譲り受け、右譲受債権の代物弁済として、少くともその約一五倍の価値のある本件(一)ないし(四)建物並びにその敷地の借地権を取得しようとしたものであつて、上告人のかかる行為は、他人の窮迫に乗じて正常な取引通- 2 -念に照らして著しく均衡を失した価値を取得する暴利行為として民法九〇条に反する無効な法律行為というべきであると判示しているのである。しかしながら、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、所有権移転請求権保全の仮登記をするという法手段がとられる場合においては、かかる仮登記担保契約を締結する趣旨は、債権者が目的不動産の所有権を取得すること自体にあるのではなく、当該不動産の有する金銭的価値の実現によつて自己の債権の排他的満足を得ることにあるのであるから、債権者は、債務者に履行遅滞があつたときは、仮登記担保契約に基づき、予約完結の意思を表示し、原則として当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめる帰属清算の方法により、又は特別の事情があるときは相当の価格で第三者に売却等をする処分清算の方法により、目的不動産を換価 、原則として当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめる帰属清算の方法により、又は特別の事情があるときは相当の価格で第三者に売却等をする処分清算の方法により、目的不動産を換価し、その換価金から自己の債権の弁済を得るとともに、換価額が右債権の額を超えるときは、超過額を清算金として債務者に交付する義務を負い(なお、帰属清算の場合は、債務者は、清算金の支払があるまで本登記手続義務の履行を拒むことができる。 を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめる帰属清算の方法により、又は特別の事情があるときは相当の価格で第三者に売却等をする処分清算の方法により、目的不動産を換価し、その換価金から自己の債権の弁済を得るとともに、換価額が右債権の額を超えるときは、超過額を清算金として債務者に交付する義務を負い(なお、帰属清算の場合は、債務者は、清算金の支払があるまで本登記手続義務の履行を拒むことができる。)、その反面、債務者は、右清算金の支払時期である換価処分の時までは債務の全額(換価に要した相当費用額を含む。)を弁済して仮登記担保契約に基づく債権者の権利(以下仮登記担保権という。)を消滅させ、その目的不動産の完全な所有権を回復することができると解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決参照)、右のように、仮登記担保契約において、予約完結権を行使した仮登記担保権者が債務者に対して清算金の支払義務を負担し、かつ、換価処分の時までは債務者に目的不動産の取戻権が認められる結果、原則として清算金支払義務の現実の履行が確保される以上、仮登記担保権者が- 3 -債権額と目的不動産の価額との較差により著しく均衡を失した価値を取得する余地はないものというべきであるから、他に特段の事情のないかぎり、仮登記担保契約がいわゆる暴利行為にあたるとして民法九〇条に違反すると解することは、相当でない。そして、第三者が、仮登記担保権者から、その債権とともに仮登記担保権の譲渡を受け、その実行手続の一環として予約完結権を行使した場合であつても、譲受人は、譲渡人である仮登記担保権者と法律上同一の地位に立つものにすぎないのであるから、譲受人による仮登記担保権の実行が暴利行為に該当するか 実行手続の一環として予約完結権を行使した場合であつても、譲受人は、譲渡人である仮登記担保権者と法律上同一の地位に立つものにすぎないのであるから、譲受人による仮登記担保権の実行が暴利行為に該当するかどうかの判断にあたつても、前述のところと理を異にするものではない。これを本件についてみるに、前記原審の確定した事実によれば、Dと被上告人B1、同B2との間における本件(一)ないし(四)建物についての代物弁済予約の趣旨は、前記の内容の仮登記担保契約と推認すべきものであり、上告人は、Dから被上告人B1、同B2に対する債権とともに右仮登記担保権を譲り受け、その実行手続の一環として予約完結権を行使したものであるから、上告人は、債権額と本件(一)ないし(四)建物の換価額との差額について清算金の支払義務を免れず、その反面、被上告人B1、同B2は、換価処分の時までは右建物の取戻権を失わないと解せられるのであり、原審の認定する諸事情をもつてしては、いまだ前述の特段の事情の存在を認めるに足りないといわざるをえない。 に対する債権とともに右仮登記担保権を譲り受け、その実行手続の一環として予約完結権を行使したものであるから、上告人は、債権額と本件(一)ないし(四)建物の換価額との差額について清算金の支払義務を免れず、その反面、被上告人B1、同B2は、換価処分の時までは右建物の取戻権を失わないと解せられるのであり、原審の認定する諸事情をもつてしては、いまだ前述の特段の事情の存在を認めるに足りないといわざるをえない。そうすると、Dから本件(一)ないし(四)建物についての仮登記担保権の譲渡を受けて予約完結権を行使した上告人の行為が著しく均衡を失した価値を取得する暴利行為として民法九〇条に違反するとした原審の判断は、同条の規定の適用を誤り、ひいて理由不備の違法をおかしたものであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は、この点において理由がある。なお、上告人は、原判決中本件(五)ないし(七)建物(第一審判決添付物件目録記載(五)ないし(七)の建物)に関する上告人敗訴部分については、上告の理由を記載- 4 -した書面を提出しない。よつて、原判決中、本件(一)ないし(四)建物に関する上告人敗訴部分を破棄し、右破棄部分についてさらに審 建物)に関する上告人敗訴部分については、上告の理由を記載- 4 -した書面を提出しない。よつて、原判決中、本件(一)ないし(四)建物に関する上告人敗訴部分を破棄し、右破棄部分についてさらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、本件(五)ないし(七)建物に関する上告人敗訴部分に対する上告を却下することとし、民訴法四〇七条一項、三九九条ノ三、三九九条、三九八条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岸盛一裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸上康夫裁判官団藤重光- 5 -

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