令和7年10月30日宣告令和7年(わ)第225号、第261号被告人Aに対する死体遺棄、被告人B及び被告人Cに対する死体遺棄幇助各被告事件 主文 被告人Aを懲役1年に、被告人B及び被告人Cをそれぞれ懲役10月に処する。 未決勾留日数中、被告人Aに対し130日を、被告人B及び同Cに対し各110日を、それぞれその刑に算入する。 被告人3名に対し、この裁判が確定した日から3年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人AはDの夫であり、被告人Bは被告人Aの長姉の元夫であり、被告人Cは被告人Bの長男であるところ、第1 被告人Aは、令和2年9月7日頃、滋賀県長浜市(住所省略)被告人B方において、妻であるDが死亡しているのを認識したのであるから、その死体を葬祭しなければならない義務があったのに、同年9月9日頃、同所に設置された冷凍庫にその死体が入れられた状態で、同所から立ち去り、その頃から令和7年4月2日までの間、同所において、前記死体を放置し、もって死体を遺棄した。 第2 被告人B及び被告人Cは、被告人Aが前記第1の死体遺棄の犯行に及ぶに際し、その情を知りながら、共謀の上、前記冷凍庫の電源を入れた状態を維持して、その電気料金を負担するとともに、令和2年9月9日頃から令和6年10月17日頃までの間、多数回にわたり、前記冷凍庫の周辺に消臭剤を設置するなどして、もって被告人Aによる死体遺棄の犯行を容易ならしめてこれを幇助 した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件犯行に至る経緯等本件には、被告人Aの下の姉(故人。被告人Bからみて元妻の妹であり、被告人Cからみて叔母。 した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件犯行に至る経緯等本件には、被告人Aの下の姉(故人。被告人Bからみて元妻の妹であり、被告人Cからみて叔母。以下、単に「姉」という。)が深くかかわっており、被告人3名は、それぞれ理由は異なるが、姉に逆らい難い面があった。この姉は、後に遺棄されることとなった被告人Aの妻(以下、単に「妻」という。)が反抗的であるなどとして嫌っており、頻繁に暴力をふるうなどしていたが、自宅に出入りする介護職員らから妻への暴力が発覚することを恐れ、被告人Aとも相談の上、B家(被告人B方)で妻を引き取るよう依頼し、被告人Bも短期間であるならば、とこれを了承した。妻はB家に引き取られ、被告人Bや被告人Cが面倒を見ていたが、結局、被告人Aの下に戻されることはなく、令和2年9月7日頃に死亡した。被告人3名は、その遺体の処理について姉とも相談したが、やはり暴行の発覚を恐れて遺体を遺棄することになり、その方法についても、姉が被告人Aの提案を了承する形で冷凍庫に遺体を入れることとなった。 2 本件犯行について被告人3名がそれぞれ姉の意向に逆らい難い心理状態にあったことは否定できないが、およそ他の適切な手段を選択できないほど追い込まれた状態にあったとまでは認められないし、被告人3名とも結局は遺体のあざ等が発見されて自分たちが責任追及されるのを避けたいとの自己保身の思いもあって死体遺棄やその手助けを決意したといえるから、姉が被告人3名に対して強い影響力を有していたことを被告人3名の各弁護人がそれぞれ主張するほどには大きく酌むことはできない。 3 各被告人個別の関与等について被告人Aは、4年半以上もの長期間にわたり、妻の遺体を冷凍庫で凍らせた状態 で放置しているが、こう れぞれ主張するほどには大きく酌むことはできない。 3 各被告人個別の関与等について被告人Aは、4年半以上もの長期間にわたり、妻の遺体を冷凍庫で凍らせた状態 で放置しているが、こうした態様が死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を大きく害するものであることは誰の目にも明らかである。被告人Aは、夫として妻の遺体を適切に葬祭することを期待される立場にありながら、被告人B及び被告人Cに同遺体を押し付け、冷凍庫に入れた後はその様子をほとんど確認することもなく放置を決め込んでいたのであって、その意思決定は厳しい非難に値する。 また、被告人B及び被告人Cは、冷凍庫を稼働させ続けて凍結状態を維持し、臭いが漏れるのを防ぐために消臭剤を設置するなどしたほか、自宅を訪れた者による遺体の発見を妨げる行為まで行っており、被告人Aによる死体遺棄を手助けした程度は相応に大きいといえる。被告人B及び被告人Cは、自己保身の思いから死体遺棄の手助けを開始したのは前記のとおりであり、4年以上もの長きにわたって手助けを続けていたのであって、いずれも相応の非難を免れない。冷凍庫前に供花するなどもしているが、遺棄された遺体をそのままに供花することが両名の刑事責任を大きく減ずるものとはいえない。 4 各被告人の刑事責任について以上の被告人3名の各犯情からすると、被告人Aの刑事責任はもちろん、被告人B及び被告人Cの各刑事責任も軽視することはできないが、同種事案と比較した場合には、本件の各犯情が被告人3名いずれに対しても刑の執行猶予を付し得ないほどに悪いとはいえない。なお、被告人Bと被告人Cとでは、被告人Cの関与の程度が被告人Bのそれと比べると幾分弱いとはいい得るが、刑期の点で差をつけるほど刑事責任に大きな差はない。 5 総括その他の事情を見ると、 い。なお、被告人Bと被告人Cとでは、被告人Cの関与の程度が被告人Bのそれと比べると幾分弱いとはいい得るが、刑期の点で差をつけるほど刑事責任に大きな差はない。 5 総括その他の事情を見ると、被告人3名は、いずれも事実を認め、それぞれの立場から自らの行動を振り返って反省の言葉を述べるとともに、妻に対する謝罪の言葉を口にしている。被告人3名はいずれも前科を有しない。こうした被告人3名のために酌むべき事情をも踏まえ、被告人3名に対しては、それぞれその刑事責任に見合った主文の刑期を定めた上で、今回に限り、その刑の執行をいずれも猶予するの が相当であると判断した。 (検察官の求刑-被告人Aについて懲役1年、被告人B及び被告人Cについていずれも懲役10月、被告人A、被告人B及び被告人Cの各弁護人の科刑意見-いずれも執行猶予付きの判決)令和7年10月31日大津地方裁判所刑事部 裁判長裁判官畑口泰成 裁判官德井隆一 裁判官山下大智
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