【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人荒地孝敏上告趣意書第一点は「原審裁判所ガ被告人ニ対シ傷害ノ事実ヲ認 定シタルコトハ事実ノ真相ヲ誤リタル認定ナリ即チ
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人荒地孝敏上告趣意書第一点は「原審裁判所ガ被告人ニ対シ傷害ノ事実ヲ認定シタルコトハ事実ノ真相ヲ誤リタル認定ナリ即チ被告人ハAヲ殴ツテ怪我ヲ与ヘタル点ハ被告人自身モ被害者タルAヨリ相当殴ラレタル事実アルヲ以テ若シ被告人ニ於テモ直チニ医師ノ診断ヲ受ケタリトセハ相当傷害事実ニ付キ診断ヲ得ルモノト信ス故ニ本件ノ場合ニ於テハ被害者ノミノ診断書ニ依リ一方的ニ事実ヲ認定スヘキモノニ非スシテ被告人ノ受ケタル傷害事実ニ付キテモ考慮スヘキモノトス依ツテ被告人ノ受ケタル傷害事実ヨリ推測スルモ本件被告人ノ傷害行為ハ正ニ正当防衛行為トシテ已ムヲ得スシテ相手方ニ与ヘタル傷害ナリ然カルニ本件ハ事案ヲ一方的ニ之ヲ認メ以テ被告人ノ正当防衛行為ノ点ヲ認メサルコトハ事実ノ認定ヲ誤リタルモノトス」というにある。 しかし、被告人の行為が急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するため己むを得ずして為したものであるとの事実は原判決の認定しないところである。 しかのみならず原審公判調書によれば被告人並にその弁護人の何れからも被告人の本件行為が正当防衛に該るものであるとのことは何等主張してゐないので原判決が之に対し何等の判断を示さなかつたのは当然であつて所論は結局原判決の事実誤認を主張するに帰するが日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十三条第二項によれば原判決には事実誤認があるとの主張は適法な上告理由とならないから論旨は理由がない。 同上告趣意書第二点は「原審裁判所ハ被告人ニ対シ恐喝ノ事実ヲ認メタルコトハ事実ノ認定ヲ誤リタルモノトス即チ被告人ハB方ニ於テ無銭飲食ヲセル事実ニ付テハ被告人ハB等トハ既ニ顔見知リノモノニシテ之レマテ度々飲食シ以テ飲食代モ其- 1 -ノ都度支払ヲ ノ事実ヲ認メタルコトハ事実ノ認定ヲ誤リタルモノトス即チ被告人ハB方ニ於テ無銭飲食ヲセル事実ニ付テハ被告人ハB等トハ既ニ顔見知リノモノニシテ之レマテ度々飲食シ以テ飲食代モ其- 1 -ノ都度支払ヲナシ居リタルモノナリ故ニ被告人ハ客ナリ、故ニ被告人カ今回ノ飲食代ヲ一時借リタル点ニ付キ直チニ無銭飲食ト認メ且ツ又被告人カ相当酩酊中ニ為シタル腹ノ傷跡(手術跡)ヲBニ見セタル点ハ被告人カ無意識的ニ為サレタルモノニシテ意識的ニ為シタルモノニ非ス然ルニ原審ハ之レカ行為ハ意識的ニ為シ依ツテ相手方ニ恐怖ノ念ヲ与へ以テ飲食セルモノト認メタルコトハ事実ノ認定ヲ誤リタルモノトス」といひ。 同上告趣意書第三点は「以上ノ各点ニ付キ充分ナル審理ヲ為サスシテ第二審裁判所カ被告人ニ対シ懲役一年ト言渡シタルコトハ憲法第十一条ノ基本的人権ノ尊重ヲ侵害セルモノト思料スヘキヲ以テ茲ニ上告趣意書ヲ差出候也」というにある。 しかし、右第二点は原判決には事実の誤認があるといふに帰しその論旨の理由ないことは第一点につき説明した通りである。 而して原判決挙示の証拠によれば原判決認定の事実は十分之を認められるので原判決には何等審理不尽の違法もなく、又原審がその確定した右事実に対し原判決摘記の各法条を適用したのは正に相当であつて原審が之に基いて被告人を懲役一年に処する旨の言渡をしたからといつて、何等被告人の基本的人権を侵害するものではない。論旨は理由がない。 仍つて刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の通り判決する。 此の判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。 検察官柳川真文関与昭和二十三年四月十日最高裁判所第二小法廷裁判官霜山精一- 2 -裁判官栗山茂 昭和二十三年四月十日最高裁判所第二小法廷裁判官霜山精一- 2 -裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎裁判長裁判官塚崎直義は出張中につき署名捺印することが出来ない。 裁判官霜山精一- 3 -
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