令和5(ワ)70257 発信者情報開示請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年9月6日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93718.txt

キーワード

判決文本文12,701 文字)

令和6年9月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第70257号発信者情報開示請求事件口頭弁論終結日令和6年7月16日判決 原告株式会社A&T 同訴訟代理人弁護士杉山 央 被告ビッグローブ株式会社 同訴訟代理人弁護士高橋利昌 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、別紙作品目録記載の各動画(以下、これらを総称して「本件各動画」という。)をそれ ぞれ複製して作成した動画ファイルを、公衆からの求めに応じ自動的に送信し たことによって、本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであり、本件各氏名不詳者に対する損害賠償等の請求のため、被告が保有する別紙発信者情報目録(以下「本件発信者情報目録」という。)記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信 者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案で 由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信 者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者(弁論の全趣旨) 原告は、アダルト動画の企画及び制作を行う株式会社である。 被告は、インターネット接続サービスを提供するプロバイダである。 (2) ビットトレントの仕組み(甲4ないし6、9、弁論の全趣旨)アビットトレントは、P2P方式のファイル共有プロトコルである。 ビットトレントを利用したファイル共有は、その特定のファイルに係る データをピースに細分化した上で、ピア(ビットトレントネットワークに参加している端末。「クライアント」とも呼ばれる。)同士の間でピースを転送又は交換することによって実現される。上記ピアのIPアドレス及びポート番号などは、「トラッカー」と呼ばれるサーバーによって保有されている。 共有される特定のファイルに対応して作成される「トレントファイル」には、トラッカーのIPアドレスや当該特定のファイルを構成する全てのピースのハッシュ値(ハッシュ関数を用いて得られた数値)などが記載されている。そして、一つのトレントファイルを共有するピアによって、一つのビットトレントネットワークが形成される。 イビットトレントを利用して特定のファイルをダウンロードしようとする 者は、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にインストールしたクライア のファイルをダウンロードしようとする 者は、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にインストールしたクライアント用のソフトウェア(以下「クライアントソフトウェア」ということがある。)に当該トレントファイルを読み込ませると、当該端末はビットトレントネットワークにピアとして参加し、定期的にトラ ッカーにアクセスして、自身のIPアドレス及びポート番号等の情報を提供するとともに、他のピアのIPアドレス及びポート番号等の情報のリストを取得する。 上記の手順によってピアとなった端末は、トラッカーから提供された他のピアに関する情報に基づき、他のピアとの間で、当該他のピアが現在稼 働しているか否かや、当該他のピアのピース保有状況を確認するための通信を行い、当該他のピアがこれに応答することを確認した上、当該他のピアが当該ピースを保有していれば、当該他のピアに対して当該ピースの送信を要求し、当該ピースの転送を受ける(ダウンロード)。また、ピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピ ースを当該他のピアに転送する(アップロード)。このように、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、必要なピースを転送又は交換し合うことで、最終的に共有される特定のファイルを構成する全てのピースを取得する。 (3) 株式会社utsuwa(以下「本件調査会社」という。)による調査(甲 1、5、7ないし9、弁論の全趣旨)本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件各動画の品番等に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した。 件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件各動画の品番等に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した。 本件調査会社は、ビットトレントに対応するクライアントソフトウェアで ある「μTorrent」(以下「本件ソフトウェア」という。)に、入手し たトレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する動画ファイルをダウンロードし、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報を、端末のタスクバーに表示された時刻及び時刻表示ソフトウェアを用いて画面の右上に表示させた時刻とともに、スクリーンショットにより撮影した(以下、同スクリーンショットにより撮影された画像 (甲1)を「本件各スクリーンショット」という。)。 本件調査会社は、ダウンロードした上記各動画ファイル(以下、本件各動画に対応する動画ファイルを「本件各ファイル」という。)を再生して表示される映像と本件各動画とを比較して、その同一性を確認した。 (4) 本件各ファイルが本件各動画の複製物であること 本件各ファイルは、本件各動画をそれぞれ複製して作成されたものである(甲7、8、21)。 (5) 本件各発信者情報の保有被告は、本件各発信者情報を保有している。 3 争点 (1) 特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か(争点1)(2) 本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害 の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か)について(原告の主張)(1) 原告に本件各動画の著作権が帰属すること 本件各動画を収録した商品のパッケージには、いずれも「企画・制作・受 審株式会社A&T」という形で、原告の商号が著作者名として通常の方法により表示されている。 また、本件各動画は、原告代表者が従業員に指示して撮影、編集等をさせて、原告の著作の名義の下で公表されている。 したがって、原告は、著作権法14条により本件各動画の著作者と推定さ れるか又は同法15条1項により本件各動画の著作者とされるから、本件各動画の著作権は原告に帰属する。 仮に、同法14条及び15条1項所定の要件をいずれも充足しない場合であっても、本件各動画は、映画の著作物に該当することから、同法16条により、本件各動画の全体的な製作に関する決定を行った原告代表者や原告の 従業員が著作者となり、これらの著作者は、いずれも本件各動画の製作に参加することを原告と約束した者で構成されており、原告は、本件各動画の製作に発意と責任を有する者、すなわち本件各動画の映画製作者に当たるから、同法29条1項により、本件各動画の著作権は原告に帰属することとなる。 (2) 本件調査会社による調査結果は信用性を有すること 本件調査会社は、本件ソフトウェアを利用して、機械的に本件発信者情報目録記載のIPアドレス等を取得しており、そこに恣意が介在する可能性はない。また、把握したIPアドレス等の正確性の検証もさ 本件調査会社は、本件ソフトウェアを利用して、機械的に本件発信者情報目録記載のIPアドレス等を取得しており、そこに恣意が介在する可能性はない。また、把握したIPアドレス等の正確性の検証もされている。 したがって、本件調査会社による調査結果は信用性を有する。 (3) 本件各氏名不詳者により本件各動画が自動公衆送信されたこと アビットトレントネットワークにおいて共有されているファイルは、公衆の用に供されている電気通信回線であるインターネットに接続された他の者の管理するパソコン等の記録媒体に記録されたものであり、不特定のその他の者の求めに応じて自動的に送信される。 そして、本件ソフトウェアは、他のピアから特定のファイルに係るピー スをダウンロードしている際、実行画面の当該特定のファイルに係る「状 態」欄に「ダウンロード中」との表示が、それ以外の場合には「ダウンロード中」以外の表示が、それぞれされる仕様となっている。また、本件ソフトウェアの実行画面に複数のピアが表示される場合、当該複数の全てのピアからファイルを構成するピアをダウンロードすることが確認できている。 イ本件調査会社が、調査に当たって、ビットトレントネットワークを介して本件各ファイルを取得する際、本件調査会社の管理するピアで実行している本件ソフトウェアの画面には、本件各ファイルについて「ダウンロード中」と表示されていた。 したがって、本件調査会社の管理するピアが、本件発信者情報目録記載 の各日時において、各IPアドレス等により特定される本件各氏名不詳者の管理するピアから、本件各ファイルを構成するピースをダウンロードしていたこと、すなわち、本件各氏名不詳者が、同日時において、公衆からの求めに応じ、本件各ファイルを構成するピースを自 件各氏名不詳者の管理するピアから、本件各ファイルを構成するピースをダウンロードしていたこと、すなわち、本件各氏名不詳者が、同日時において、公衆からの求めに応じ、本件各ファイルを構成するピースを自動的に送信したことは、明らかである。 (4) 本件各氏名不詳者による本件各動画の自動公衆送信に係る通信は特定電気通信に当たること本件ソフトウェアを利用すれば、誰でも本件各ファイルをダウンロードすることができるから、本件発信者情報目録記載の各日時及び各IPアドレス等により特定される通信は、いずれも「不特定の者によって受信されること を目的とする電気通信…の送信」(プロバイダ責任制限法2条1号)、すなわち、特定電気通信に当たる。 (5) 違法性阻却事由の不存在本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。 (6) 小括 以上によれば、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)。 (被告の主張)(1) 原告に本件各動画の著作権が帰属することは明らかではないこと 原告は、本件各動画を収録した商品のパッケージの記載に基づき、原告の商号が著作者名として通常の方法により表示されていると主張するが、上記の記載は不鮮明なものであり、このような記載をもって原告の商号が著作者名として通常の方法により表示されているとはいえない。 その余の原告の主張については不知ないし争う。 したがって、原告に本件各動画の著作権が帰属しているかは明らかではない。 (2) 本件調査会社による調査結果は信用性を有しないことア本件調査会社がダウンロードしたとする本 う。 したがって、原告に本件各動画の著作権が帰属しているかは明らかではない。 (2) 本件調査会社による調査結果は信用性を有しないことア本件調査会社がダウンロードしたとする本件各ファイル(甲8の7の1ないし8の9の4)のサイズは、本件各動画を記録した正規品のファイル (甲7の7ないし7の9)のサイズとも、本件各スクリーンショットの「サイズ」欄に記載された動画のサイズ(甲1の15ないし1の20)とも一致しない。また本件調査会社がダウンロードしたとされる本件各ファイル(甲8の7の1ないし8の9の4)はいずれも複数に分割されているところ、本件各スクリーンショット(甲1の15ないし1の20)は、分 割された本件各ファイルのうちどのファイルをダウンロードした際に撮影されたものであるか明らかでない。 イ原告は、本件調査会社が、本件ソフトウェアを利用して機械的にIPアドレス等を取得しており、そこに恣意が介在する可能性はないと主張しているが、本件調査会社の恣意によらなくとも、その調査結果に誤りが含ま れる可能性は存在する。 ウ本件各スクリーンショットにおいて、本件調査会社の管理するピアの通信相手として複数のピアが表示されている場合は、本件調査会社がいずれのピアからダウンロードを行っているかは明らかではないから、本件調査会社が本件各氏名不詳者の管理するピア以外のピアから本件各ファイルをダウンロードした可能性も否定できない。 エ同じ品番の作品をダウンロードした際に撮影された甲第1号証の16と同号証の18のスクリーンショットは、4日間経過してもダウンロードのパーセンテージが同一のままである。このことからすると、上記スクリーンショットは、対象ピアからの自動公衆送信に係る通信がまさに行われた 号証の18のスクリーンショットは、4日間経過してもダウンロードのパーセンテージが同一のままである。このことからすると、上記スクリーンショットは、対象ピアからの自動公衆送信に係る通信がまさに行われた瞬間であるとはいえず、本件各スクリーンショットによって、本件各氏名 不詳者の管理するピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファイルを構成するピースが実際に送信されているのか明らかとはいえない。 オ以上によれば、本件調査会社による調査結果は信用性を有せず、本件調査会社が、実際に本件各ファイルをダウンロードしたといえるかは明らか ではない。 (3) その余の主張についていずれも否認ないし争う。 (4) 小括したがって、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆 送信権)が侵害されたことは明らかであるとはいえない。 2 争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か)について(原告の主張)原告は、本件各氏名不詳者に対し、損害賠償等を請求する予定であるが、そ のためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要がある。 したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。 (被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か)について(1) 本件各動画に係る著作権の帰属について証拠(甲18、19)及び弁論の全趣旨によれば、本件各動画は、原告代 表者及び原告の従業員が、原告の指示に基づき撮影し 書、1号)か)について(1) 本件各動画に係る著作権の帰属について証拠(甲18、19)及び弁論の全趣旨によれば、本件各動画は、原告代 表者及び原告の従業員が、原告の指示に基づき撮影した動画であることが認められるから、「法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物」であるといえる。 そして、証拠(甲2、20)及び弁論の全趣旨によれば、本件各動画は、原告の著作の名義で公表されたものと認められるから、「法人等が自己の著 作の名義の下に公表するもの」という要件を満たす。 また、弁論の全趣旨によれば、原告とその従業員との間の契約、勤務規則その他において著作権に関する別段の定めはないものと認められる。 したがって、本件各動画は職務著作に該当するから、その著作者は原告とされ(著作権法15条1項)、その著作権は原告に帰属するものと認められ る。 (2) 本件調査会社による調査結果の信用性について前提事実(3)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査会社は、本件各ファイルに係るトレントファイルをダウンロードした上、本件ソフトウェアに同トレントファイルを読み込ませ、同トレントファイルに対応する本件各ファイ ルをダウンロードし、実際にダウンロードしたファイルを再生して表示され る映像と本件各動画とを比較することにより、これらが同一の内容を有していることを確認したことが認められる。そして、本件全証拠によっても、このような本件調査会社による調査結果に不自然、不合理な点は認められない。 したがって、本件調査会社による調査結果は信用性を有するといえる。 (3) 特定電気通信である自動公衆送信に係る情報の流通によって原告の権利が 侵害されたか否かについて前提事実(2)のとお したがって、本件調査会社による調査結果は信用性を有するといえる。 (3) 特定電気通信である自動公衆送信に係る情報の流通によって原告の権利が 侵害されたか否かについて前提事実(2)のとおり、ビットトレントネットワークを形成するピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送(アップロード)するように動作する。また、前提事実(3)のとおり、本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有 されている本件各ファイルをダウンロードしているところ、前提事実(4)のとおり、本件調査会社がダウンロードした本件各ファイルは、本件各動画をそれぞれ複製して作成されたものである。 そして、証拠(甲1、4、5、9、33)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査会社は、本件各ファイルのダウンロード中に、端末で実行している時 刻表示ソフトウェアが表示する時刻及び本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報に基づいて、本件発信者情報目録記載の日時及びIPアドレス等を特定したことが認められるところ、この本件調査会社による調査は、当該ピアが本件調査会社の管理するピアに対して本件各ファイルを構成するピースを継続的に送信している状態を捉えたものといえ る。 また、特定のファイルに対応するトレントファイルは、インターネット上で公開されているのが通常であると考えられるところ、そのようなトレントファイルは、インターネット上で公開されている以上、不特定の者において利用することができるから、同じトレントファイルを共有している各ピアの 管理者も、その不特定の者となるのが通常である。これに対し、本件各ファ イルが特定かつ少数の者の間でのみ共有されていたと認めるに足りる証拠 同じトレントファイルを共有している各ピアの 管理者も、その不特定の者となるのが通常である。これに対し、本件各ファ イルが特定かつ少数の者の間でのみ共有されていたと認めるに足りる証拠はないから、本件各ファイルに係るトレントファイルを取得してビットトレントネットワークに参加した本件調査会社は、「公衆」(著作権法2条5項)に当たるといえる。 以上によれば、本件発信者情報目録記載の各日時において同各IPアドレ ス等が割り当てられていた端末により、本件各動画がそれぞれ自動公衆送信されたと認められ、これは、特定電気通信である当該自動公衆送信に係る情報の流通によって、原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものというべきである。 (4) 被告の主張について ア被告は、①本件調査会社がダウンロードしたとする本件各ファイル(甲8の7の1ないし8の9の4)のサイズが、本件各動画を記録した正規品のファイル(甲7の7ないし7の9)のサイズとも、本件各スクリーンショットの「サイズ」欄に記載された動画のサイズ(甲1の15ないし1の20)とも一致せず、かつ本件調査会社がダウンロードしたとされるファ イル(甲8の7の1ないし8の9の4)は複数に分割されているところ、本件各スクリーンショット(甲1の15ないし1の20)は、分割された本件各ファイルのうちどのファイルをダウンロードした際に撮影されたものであるか明らかでないこと、②本件調査会社の恣意によらなくとも、その調査結果に誤りが含まれる可能性は存在すること、③本件各スクリーン ショットにおいて、本件調査会社の管理するピアの通信相手として複数のピアが表示されている場合、本件調査会社がいずれのピアからダウンロードを行っているかは明らかではないこと、④本件各スクリーンショットの ョットにおいて、本件調査会社の管理するピアの通信相手として複数のピアが表示されている場合、本件調査会社がいずれのピアからダウンロードを行っているかは明らかではないこと、④本件各スクリーンショットのうち、とりわけ甲1の16及び1の18は、自動公衆送信に係る通信がされた瞬間を捉えたものではないから、本件調査会社による調査結果は信用 性を有せず、特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害さ れたことは明らかであるとはいえないと主張する。 イ前記①については、前提事実(4)、証拠(甲1、7、8、22)及び弁論の全趣旨によれば、本件各ファイルは、本件各動画を記録した正規品のファイルを基に第三者によって作成された正規品のファイルとは別個のものであると認められるところ、本件各ファイルを作成する際の符号化やデ ータ圧縮の方法如何により、そのサイズが正規品のファイルのサイズと大きく異なり得ること(顕著な事実)からすれば、本件各ファイルのサイズが本件各動画を記録した正規品のファイルのサイズと一致しないことにより、本件調査会社による調査の信用性が否定されるものではないというべきである。 また、本件各ファイル(甲8の7の1ないし8の9の4)は、それぞれ二つ又は四つに分割されているところ、証拠(甲22)及び弁論の全趣旨によれば、このように分割されているのは、本件各ファイルに対応するトレントファイルを最初にアップロードしたユーザーが、上記の正規品のファイルを複製して作成した動画ファイルを分割し、これを一つの共有ファ イルとしてビットトレントネットワークにアップロードしたことによるものであると認められ、また、証拠(甲28の1ないし28の3)によれば、上記分割されたファイルのファイルサイズを合計して、本件各ファイル ルとしてビットトレントネットワークにアップロードしたことによるものであると認められ、また、証拠(甲28の1ないし28の3)によれば、上記分割されたファイルのファイルサイズを合計して、本件各ファイルのサイズ表示をギガバイトに換算すると、本件各スクリーンショットの「サイズ」欄に記載された動画のサイズと整合していると認められる。これら の事実に照らせば、本件各ファイル(甲8の7の1ないし8の9の4)のサイズと、本件各スクリーンショットの「サイズ」欄に記載された動画のサイズ(甲1の15ないし1の20)は一致していないことを理由に本件調査会社による調査の信用性を否定する被告の主張は採用できないというべきである。 そして、前提事実(3)のとおり、本件調査会社は、本件各動画の品番等 に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した上で、本件ソフトウェアに同トレントファイルを読み込ませ、同トレントファイルに対応する本件各ファイルをダウンロードしているから、本件スクリーンショットの表示からは、本件各氏名不詳者が、上記分割されたファイルのいずれをダウンロードしたもの かを特定できないとしても、本件発信者情報目録記載の各日時において同各IPアドレス等が割り当てられていた端末により、本件各動画がそれぞれ自動公衆送信されたとの認定を妨げないというべきである。 ウ前記②については、本件全証拠によっても、本件調査会社の恣意によることなく、その調査結果に誤りが発生していることをうかがわせるような 事実を認めることはできず、被告の主張は抽象的な可能性を指摘するものにすぎない。 エ前記③については、本件調査会社の管理するピアの通信相手として複数のピアが表示されている場合 ような 事実を認めることはできず、被告の主張は抽象的な可能性を指摘するものにすぎない。 エ前記③については、本件調査会社の管理するピアの通信相手として複数のピアが表示されている場合であっても、以下のとおり、本件各氏名不詳者の管理するピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファ イルを構成するピースが実際に送信されていると認めることができる。 まず、証拠(甲30、31)によれば、ビットトレントにおいては、ビットトレントネットワーク上に、自己のピア以外に、共有されているファイルを構成するピースの全部又は一部を保有するピアが複数存在する場合には、当該ピースを、その複数のピアのいずれからもダウンロードすると の仕組みが採用されており、本件ソフトウェアにおいても同様の動作をすることが確認されていると認められる。他方、本件全証拠によっても、本件各スクリーンショットが撮影された前後を通じて、本件ソフトウェアが上記の仕組みどおりの動作をしていなかったことをうかがわせる事実は認められない。 そうすると、本件各スクリーンショットにおいて、被告が指摘するよう な状況が記録されているとしても、本件調査会社の管理するピアが本件各氏名不詳者の管理するピア以外のピアのみから本件各ファイルを構成するピースをダウンロードしたとはうかがわれないというべきであって、本件各スクリーンショットが記録される前後の時点で、本件各氏名不詳者の管理するピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファイルを 構成するピースが送信されていたと認めるのが相当である。 オ前記④については、前提事実(4)及び前記(3)のとおり、本件各スクリーンショットが撮影されたのは、本件発信者情報目録記載の各日時及び各IPアドレス等に 送信されていたと認めるのが相当である。 オ前記④については、前提事実(4)及び前記(3)のとおり、本件各スクリーンショットが撮影されたのは、本件発信者情報目録記載の各日時及び各IPアドレス等により特定されるピアが、本件調査会社の管理するピアに対して本件各ファイルを構成するピースを継続的に送信している間であって、 本件調査会社の管理するピアがダウンロードした本件各ファイルは、本件各動画をそれぞれ複製して作成されたものである。また、証拠(甲25)によれば、ダウンロードの速度や進行は、接続しているピアの数、シーダーの有無、各ピアの通信設定等により異なり、ダウンロードのパーセンテージが進まず、ダウンロード完了までに1カ月以上かかる場合もあると認 められる。 そうすると、仮に本件各スクリーンショットが撮影された時点において一時的にピースの送信がなかったとしても、本件各スクリーンショットが撮影された前後を通じて、本件各氏名不詳者の管理するピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファイルを構成するピースの継続的 な送信がされている以上、その前後も含めた通信の全体をみれば、同撮影の時点も含めて、本件各氏名不詳者の管理するピアから、本件調査会社の管理するピアに対し、本件各ファイルを構成するピースが実際に送信されていたものと評価することができ、原告が特定した本件発信者情報目録記載の各日時においても、同各IPアドレス等を使用して、本件各動画の自 動公衆送信に係る通信を行っていたと認めることができる。 カしたがって、被告の前記①ないし④の主張はいずれも採用できないというべきである。 (5) 違法性阻却事由の不存在本件全証拠によっても、本件各氏名不詳者の行為について、違法性を阻却すべき事情はう って、被告の前記①ないし④の主張はいずれも採用できないというべきである。 (5) 違法性阻却事由の不存在本件全証拠によっても、本件各氏名不詳者の行為について、違法性を阻却すべき事情はうかがわれないから、違法性阻却事由は存在しないと認めるの が相当である。 (6) 小括以上によれば、本件各氏名不詳者によって本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、本件各発信者情報は、当該各権利侵害に係る発信者情報に該当すると認められる。 2 争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か)について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各氏名不詳者に対し、本件各動画に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるものと認められ、その請求のためには、被告が保有する 本件各発信者情報の開示を受ける必要があるといえる。 したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)と認められる。 第5 結論よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 塚 間明宏充 裁判官 塚田久美子 (別紙)発信者情報目録 以下の日時に以下のIPアドレス及びポート番号を割り当てられていた契約者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレス(以下省略)以上 (別紙作品目録省略)以上

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る