令和5(ネ)10039 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年10月4日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和3(ワ)7321
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令和5年10月4日判決言渡 令和5年(ネ)第10039号損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第7321号) 口頭弁論終結日令和5年7月24日判決 控訴人 株式会社アイエスアイ 同訴訟代理人弁護士 千且和也 同訴訟代理人弁理士 矢口太郎 同補佐人弁理士 尾城日奈子 被控訴人 PayPay株式会社 同訴訟代理人弁護士 塩月秀平 同 松山智恵 同 高梨義幸 同 松本陸 同補佐人弁理士 澤井光一 同 吉田幸二 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、100万円及びこれに対する令和3年4月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 本件は、発明の名称を「電子マネー送金方法及びそのシステム」とする二つの特許権(特許第6306227号[本件特許権1]及び特許第6710820号[本件特許権2])を有する控訴人が、被控訴人の提供する電子決済サービスは上記特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、主位的には不法行為に基づく損害賠償 1]及び特許第671082 0号[本件特許権2])を有する控訴人が、被控訴人の提供する電子決済サービスは上記特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、主位的には不法行為に基づく損害賠償請求として、予備的には不当利得返還請求として、損害又は利得の一部として100万円及びこれに対する令和3年4月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前 のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の支払を求めた事案である。 原判決は控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人が原判決を不服として控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり補正し、 後記4のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の2から4(2頁11行目から49頁8行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。 3 原判決の補正⑴ 原判決5頁16行目の「(電子署名、個体情報)」及び同頁24行目の「(ス テップS111、112)」を削る。 ⑵ 原判決6頁26行目の「前記送金の際、」の後、7頁3行目の「及び/又は、」の後、同頁12行目の「並びに/又は、」の後、及び同頁17行目の「対応しているか否か、」の後で、それぞれ改行する。 ⑶ 原判決10頁11行目の「(顧客マスタ」から同頁12行目の「明情報)」 まで及び11頁1行目の「(ステップS111、112)」を削る。 ⑷ 原判決13頁20行目の「弁論の全趣旨」を「乙1、2、弁論の全趣旨」に、14頁1行目の「商品の購入」を「商品の売却」に、同頁6行目及び7行目の「清算金」をいずれも「精算金」に、それぞれ改める。 ⑸ 原判決22頁23行目の「したこと」の後に「により、」を加え、23頁2行目か 1行目の「商品の購入」を「商品の売却」に、同頁6行目及び7行目の「清算金」をいずれも「精算金」に、それぞれ改める。 ⑸ 原判決22頁23行目の「したこと」の後に「により、」を加え、23頁2行目から3行目にかけての「本件特許」を「本件各特許」に改める。 ⑹ 原判決37頁6行目の「れる。」の後で改行し、同行目の「本件各発明は、」から同頁8行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件発明1は、平成28年4月14日を公開日とする第1世代出願の公開特許公報(乙4)に記載されている発明と同一であるから、新規性を欠く。 本件発明2は、上記公開特許公報に掲載されている平成28年3月1日付 け手続補正書の【請求項4】に記載の発明と実質的に同一であるか、又は少なくとも同発明によって容易に想到可能であるから、新規性又は進歩性を欠く。 本件発明3は、本件発明2と若干文言の違いがあるものの、ユーザの認証の送信、受取指示及び受取額の指定をいずれも受金側が行う態様を含むもの であることは、本件発明2と同一であるから、本件発明2と同様、本件発明3も新規性又は進歩性を欠く。」⑺ 原判決41頁8行目、13行目、14行目、22行目、24行目及び42頁1行目の「乙13」をいずれも「乙18」に改める。 4 当審における控訴人の補充主張 ⑴ 本件各発明は、新たな種類の「貨幣価値を有するデジタルデータ」を提案するものではなく、あくまで、既存の電子マネーの新規な送金方法に関する発明である。 電子商取引推進協議会という団体が平成14年にまとめた報告書である「モバイル電子決済ビジネスモデルと技術的要件」(甲49。以下「本件報告 書」という。)の定義によれば、「電子マネー」とは、「お金の価値に相当する バリュー」であり、携帯電話に「充填(チャ 「モバイル電子決済ビジネスモデルと技術的要件」(甲49。以下「本件報告 書」という。)の定義によれば、「電子マネー」とは、「お金の価値に相当する バリュー」であり、携帯電話に「充填(チャージ)」して、「携帯電話網を介したインターネット(バーチャル)決済と、加盟店端末、POS端末や自販機、鉄道の駅改札、バスの車載機、駐輪場など日常生活における(リアル)決済の両方を可能」にするものであって、電子マネーは、そもそもその用途が加盟店等における支払・決済に使用されるものである。また、本件報告書 の記載からすると、電子マネーは現金と同様の転々流通性を有し、物の購入やサービスへの支払はその一形態であり、現金と同様、紛失すると取り戻すことが困難であるものである。さらに、本件報告書でいう「決済」とは、ICチップに格納された電子マネーを、物販やサービスと引き換えに、電子マネーのまま商店のPOS端末等に移転させることをいう。そして、電子マネ ーは、決済完了後又は同時に、プリペイド決済会社に対する請求によって、現金又は銀行振込等により貨幣価値として精算されることになる。 本件明細書に従来技術として記載されたEdyサービスに関する「楽天Edy加盟店規約」(甲50)の規定によれば、EdyサービスはICチップを用いた電子マネー決済サービスであり、電子マネーである「Edy」が、利 用者のICカードである「Edyカード」から加盟店の端末である「Edy店舗端末」に対して移転され、その後精算のためにEdyセンタに送信される。 平成10年版通信白書(甲51)に記載された、サイバービジネス協議会が平成10年9月から提供するとされる「インターネットキャッシュ」も、 電子マネーが電子マネーのまま商店に移転され、その後金融機関によって現金として 51)に記載された、サイバービジネス協議会が平成10年9月から提供するとされる「インターネットキャッシュ」も、 電子マネーが電子マネーのまま商店に移転され、その後金融機関によって現金として精算されることとされている。 以上のモバイル電子決済分野の技術常識及び実施例によれば、本件各発明以前に、送金元から送金先への「電子マネーの直接送金」自体は実現されていた。また、同技術常識によれば、上記決済後は、所定のタイミングでプリ ペイド決済会社又は金融機関に対して精算指示を送出することによって、支 払われた電子マネーが現金として精算されるようになっており、利用者が商店に電子マネーを支払う処理である「決済」は、商店に対する現金の支払等がされる処理「精算」と全く異なる処理として認識されている。当該技術常識に照らせば、本件各特許の請求項中の「電子マネーの送金」の語に接した当業者は、本件各発明の「電子マネーの送金」とは電子マネーを支払う処理 である「決済」に相当するものであり、その決済後において送金先に対し行う精算(現金精算)を排除するものではないと理解する。したがって、本件各発明の「電子マネーの送金」が利用者による電子マネー利用後に店舗等に対する現金の支払等が行われないものと解することは、甲49から甲51までに示されている電子マネー決済の技術常識に反し、誤りである。 ⑵ 本件報告書によれば、従来技術のICチップを用いた決済においては、ICチップを含む携帯電話やICカードの盗難、本人認証のプロセスがないことによる成り済ましの危険など、不正・セキュリティ対策の困難さ・不十分さから、電子マネーの転々流通性を認めながらも、利用者間の電子マネーの移転や、電子マネーを受け取った商店から他の商店や利用者への再移転は実 現されて ど、不正・セキュリティ対策の困難さ・不十分さから、電子マネーの転々流通性を認めながらも、利用者間の電子マネーの移転や、電子マネーを受け取った商店から他の商店や利用者への再移転は実 現されておらず、電子マネーの用途は商店への支払とそれに伴う現金精算という電子マネーの本来目的を達することだけに限定されていた。具体的には、本件報告書では、簡単に転々流通を認めた場合の問題としてマネーロンダリングが挙げられているが、これは、従来ICチップを利用した決済方法では、決済時に本人認証がされない構成、及び発行した電子マネーと精算請求され た電子マネーとの間の突合を行っていない構成となっていたことに起因する問題である。 本件各発明の発明者は、このようにセキュリティ対策が採られていない状況を「電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではない」(本件明細書の段落【0012】)と表現したのであり、電子マネーが現金として 精算されること自体を問題視したのではない。 本件各発明は、従来技術における問題点を解決したものであり、その第1の特徴は、各ユーザ下にある携帯端末やICカードに電子マネーを記憶するのではなく、これらのユーザの情報を格納した電子マネー管理サーバが集中的に電子マネーを管理するようにしたことである。これにより、電子マネーを操作する各ユーザ端末・媒体の紛失・盗難時においても電子マネーの喪失 を防止することができる。 また、本件各発明の第2の特徴は、電子マネー管理サーバにおいて各ユーザの端末を確実に認証できるようにしたことである。具体的には、電子マネー管理サーバと各第1及び第2のユーザ端末は、それぞれ、ユーザ情報に関連付けられた第1の証明情報若しくは第2の証明情報を格納しており、送金 の際、この証明情報の とである。具体的には、電子マネー管理サーバと各第1及び第2のユーザ端末は、それぞれ、ユーザ情報に関連付けられた第1の証明情報若しくは第2の証明情報を格納しており、送金 の際、この証明情報の少なくとも一部である端末情報を一方の端末から送金先の他の端末に送信し、当該他の端末から電子サーバに送信することで、当該第1の端末及び第2の端末が上記第1及び第2の証明情報に対応するかを認証することで、電子マネーの送受金を行おうとしている端末を確実に認証できるようにしたものである(本件明細書の段落【0036】)。このことで、 「電子マネーの送金の安全性を確保しつつ、第1ユーザから第2ユーザに電子マネーを直接に送ることができる」(同段落【0039】)のである。 以上に述べた本件各発明の課題解決手段によれば、「電子マネーの送金の安全性を確保しつつ、各ユーザに電子マネーを直接送ることができるため、電子マネーを現金に極めて近い感覚でやり取りすることが可能になる。」(本 件明細書の段落【0022】、【0034】、【0039】)。すなわち、本件各発明により電子マネーの送金における「安全性を確保」できるので、従来のICチップを利用した決済では実現できなかった電子マネーの転々流通性の実装を実現することが可能となり、商店で物やサービスを購入するだけでなく、ユーザ間で直接電子マネーを送金することができるようになり、現金に 極めて近い感覚でやり取りできるようになるのである。 なお、物販又はサービスの決済に対する支払手段という電子マネーの本来の目的及び本件各特許の出願当時の技術常識を踏まえれば、電子マネーを利用者から受け取った商店が、当該電子マネーをサーバ上の自分のアカウントに蓄積し、月末にプリペイド決済会社に現金での精算を請求できることは当 び本件各特許の出願当時の技術常識を踏まえれば、電子マネーを利用者から受け取った商店が、当該電子マネーをサーバ上の自分のアカウントに蓄積し、月末にプリペイド決済会社に現金での精算を請求できることは当然に可能であり、これを排除する記載は本件明細書にはない。 以上によれば、原判決が、本件各発明の「電子マネーの送金」の意義について、「利用者が利用するICチップから決済相当額の電子マネーが減額されるが、その利用を行った店舗に対して現金の支払がされるものは、本件各発明とは異なる従来技術であり、本件各発明は、そのような従来技術の課題を解決した『電子マネーを直接送る』ものである。したがって、本件各発明 の『電子マネーの送金』とは、利用者が電子マネーを利用してその後に利用先の店舗等に対する現金の支払等がされるようなものではない。」と判断したことは誤りである。 ⑶ 被控訴人方法(1-1)のうち、原判決別紙各被控訴人方法に関する主張整理表の被控訴人方法(1-1)の構成(a)(以下、単に「構成(a)」と いう。)の「サービス利用者」、「利用者端末(PayPayアプリが動作するスマートフォン及びタブレット及びPC)」、「加盟店」、「加盟店端末(出力形態①においてはQRコードが表示可能な端末)」、「PayPay残高」、「PayPayサーバ」が、それぞれ、本件発明1及び本件発明3の「第1ユーザ」、「第1ユーザ端末(A)」、「第2ユーザ」、「第2ユーザ端末(B)」、「電子マ ネー」、「電子マネー管理サーバ(300)」に該当する。 構成(a)の「加盟店の売上金額」は、ユーザのPayPay残高から減算された取引金額と同額が加算されるものであるから、PayPay残高による売上金額、すなわち本件発明1及び本件発明3の「電子マネー」に該当する。被 盟店の売上金額」は、ユーザのPayPay残高から減算された取引金額と同額が加算されるものであるから、PayPay残高による売上金額、すなわち本件発明1及び本件発明3の「電子マネー」に該当する。被控訴人は、被控訴人方法(1-1)の「売上金額」は、被控訴人方 法(1-1)の「精算金」と同じく「現金」であると主張する。しかし、「精 算金」は、被控訴人自身が認めるように、一定期間ごとに売上金額を基に算定されるにすぎないものであり、上記「PayPay残高」による「売上金額」と同意義ではない。また、被控訴人方法(1-1)の「売上金額」は、「精算金」が加盟店に支払われる前には、「PayPay残高」、すなわち電子マネーとして利用者(ユーザ)に返金できることからしても、上記「売上 金額」が電子マネーであることは明らかである。 被控訴人方法(1-1)は、「被控訴人が加盟店に対して一定期間ごとに売上金額を基に算定した精算金(現金)を支払う」ものであるが、精算金(現金)を算定する前提として、被控訴人が特定しているように、「PayPayサーバ内のサービス利用者のPayPay残高の残額を取引金額の分だけ減 算すると共に、PayPayサーバ内の売上金額を取引金額の分だけ増額する工程(原判決別紙各被控訴人方法に関する主張整理表の「被控訴人方法(1-1)」中の構成(c-2-5))を実行するものであり、これが「電子マネーの送金」に当たる。そして、構成(a)の「被控訴人が加盟店に対して一定期間ごとに売上金額を基に算定した精算金(現金)を支払う」工程は、電 子マネーの送金の後処理若しくは付加的な精算工程(クリアリング)にすぎない。 したがって、構成(a)は、本件発明1及び本件発明3の「電子マネーの送金方法」を実行するものであり、構成要件A及び 子マネーの送金の後処理若しくは付加的な精算工程(クリアリング)にすぎない。 したがって、構成(a)は、本件発明1及び本件発明3の「電子マネーの送金方法」を実行するものであり、構成要件A及びFを充足する。 ⑷ 原判決の判断の誤りについて ア各被控訴人方法において加盟店のために加算されたデジタルデータは、他の加盟店との取引に利用することができず、現金に精算するしかないが、そうであるからといって、当該デジタルデータが電子マネーではないということにはならない。むしろ、本件各特許の出願当時の技術常識によれば、ICカードにチャージされた電子マネーは、いずれも他店との取引で使用 できないことを前提として当該ICカードから減額されて商店に支払わ れ、POS端末に同数額のデジタルデータが増加累積されて電磁的に記録されるものであるが、増加したデジタルデータの数額は利用者が支払に用いた電子マネーと同一の電子マネーであるとされている。 加盟店規約5条では、被控訴人がPayPayサーバ内で利用者から加盟店のために代理受領するのは、PayPay残高で支払われた対象商品 等の代価であるところ、上記技術常識に照らせば、これはPayPayサーバ内で利用者から加盟店に電子マネーの送金がされていることに当たる。 また、加盟店規約の規定は、被控訴人サービスが採用しているPayPay残高を用いた決済の法律構成を規定したものであり、デジタルデータ である電子マネーが利用者から加盟店へ移動するという外形的現象とは別である。加盟店がPayPay残高を取得しているか否かは、専ら、PayPay残高であるデジタルデータが利用者から加盟店に移動しているかという外形的現象によって決定されるべきであるところ、原判決は、そのようなPayPay残高の外 高を取得しているか否かは、専ら、PayPay残高であるデジタルデータが利用者から加盟店に移動しているかという外形的現象によって決定されるべきであるところ、原判決は、そのようなPayPay残高の外形的現象を考慮せず、加盟店規約に記載 された法律的構成のみに基づいて加盟店がPayPay残高を受領していないと認定しており、誤りである。 イ返金に関する原判決の判断は、要するに、たとえ利用者にPayPay残高の返金ができたとしても、PayPayサーバ上のデジタルデータは他の商店との取引に使用できないものであるから、PayPay残高とは 別の性質を有するものであることに変わりがないという趣旨であると解される。 しかし、本件各特許出願時の技術常識によれば、商店に移転された電子マネーは、他の商店との取引に使用できないものであっても、利用者が支払った電子マネーと同じバリューを有する電子マネーであり、当業者もそ のように理解する。 したがって、他の商店との取引に使用できないものというだけで、PayPay残高として返金できるにもかかわらず、PayPay残高(電子マネー)とは別の性質を有する別のものとの原判決の判断は誤りである。 むしろ、PayPayサーバ上のデジタルデータの残額内でPayPay残高として返金できることが、当該デジタルデータがPayPay残高で あることの証左である。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。 その理由は、後記1のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3(49頁1 0行目から106頁6行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の補正⑴ 原 おける控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3(49頁1 0行目から106頁6行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の補正⑴ 原判決96頁10行目の「争点1-1」を「争点1-1-1」に改め、同頁15行目の「記載」を「本件各特許の」に改め、同頁26行目の末尾に「また、本件明細書においては、『電子マネー(金銭的価値)』という表現が複数 の段落で用いられている(段落【0002】、【0004】、【0009】)。」を加える。 ⑵ 原判決98頁9行目の末尾に「しかも、本件明細書では、電子マネーに係る従来技術に言及した段落(【0002】~【0012】)の中で、『電子マネーの支払い』及び『電子マネーによる支払い』の語句は用いているものの、 『電子マネーの送金』の語句は用いておらず、このことは、従来技術において『電子マネーの送金』が行われていなかったことを示しているといえる。」を加える。 ⑶ 原判決98頁15行目の「置き換わることを意味する」を「置き換わって、これにより、金銭的価値が送金元から送金先に直接移動することとなり、電 子マネーの発行会社等から送金先に対する金銭の支払等、裏で金銭のやり取 りが行われない方法を意味する」に改める。 ⑷ 原判決102頁23行目から103頁8行目までを削除し、同頁9行目冒頭の符号「イ」を「⑶ア」に改める。 ⑸ 原判決104頁2行目の「清算金」を「精算金」に改める。 ⑹ 原判決104頁4行目から105頁3行目までを次のとおり改める。 「 以上の利用規約及び加盟店規約の規定によれば、利用者がPayPay残高によって加盟店に対して対象商品等の代金の支払を行う場合、対象商品等の代金に相当するPayPay残高が利用者のPay 「 以上の利用規約及び加盟店規約の規定によれば、利用者がPayPay残高によって加盟店に対して対象商品等の代金の支払を行う場合、対象商品等の代金に相当するPayPay残高が利用者のPayPay残高アカウントから減算されるが、加盟店は被控訴人に対して対象商品等の代価の代理受領権限を授与しており、被控訴人は、利用者のPayPay残高の減算完了後、 加盟店に対し、一定期間ごとに精算金を支払うこととされている。 これらのことからすると、利用者がPayPay残高による対象商品等の代金の支払を行っても、加盟店が利用者のPayPay残高を直接受領することはなく、かつ、裏で金銭のやり取りがされるといえる。 上記支払の過程では、PayPayサーバ内の売上金額を取引金額の分だ け増額する工程が行われるが(当事者間に争いのない事実。原判決別紙「各被控訴人方法に関する主張整理表」参照。)、上記のとおりである利用規約及び加盟店規約に基づく取引内容に加え、利用規約又は加盟店規約において、加盟店が、PayPayサーバ内の売上金額の増額分を、PayPay残高による決済が可能な他の加盟店との取引で利用できる旨定める規定が存在し ないことをも考慮すれば、加盟店に関するPayPayサーバ内の売上金額の増額が利用者から加盟店に対するPayPay残高の移動であるとは認められない。」⑺ 原判決105頁8行目冒頭の符号を「ウ」から「イ」に改める。 ⑻ 原判決105頁9行目、10行目、12行目、15行目の「清算金」をい ずれも「精算金」に改める。 ⑼ 原判決105頁16行目の「ここで、」から同頁24行目末尾までを「このように、利用規約及び加盟店規約に基づく取引における返金処理は、加盟店が有するPayPay残高を利用者に移転する取引で ⑼ 原判決105頁16行目の「ここで、」から同頁24行目末尾までを「このように、利用規約及び加盟店規約に基づく取引における返金処理は、加盟店が有するPayPay残高を利用者に移転する取引ではないから、PayPayシステムを用いた取引において返金処理が行われること、この返金処理によって利用者のPayPay残高が増加することなど、控訴人が挙げる事 情をもって、各被控訴人方法による決済が本件各発明の『電子マネーの取引』に当たると解されることにはならない。」に改める。 ⑽ 原判決106頁5行目の「前記イ」を「前記ア」に改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 前記第2の4⑴の主張について 控訴人は、本件各発明の「電子マネーの送金」について、利用者による電子マネー利用後に店舗等に対する現金の支払等がされるようなものでないと解することは、甲49から甲51までに示されている電子マネー決済の技術常識に反するものであって誤りであると主張する。 しかし、本件明細書の記載によれば、電子マネーに関する従来技術は、電 子マネーによる支払・決済がされた場合には、その後に電子マネーの発行会社等による金銭のやり取り(精算)が行われるものであり、それゆえに電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではないと理解され、本件各発明は、この課題を解決するために、各ユーザ端末が互いに有する電子証明書の内容を交換すること等によって電子マネーの送金の安全性を確保し つつ、各ユーザに電子マネーを直接送ることを可能として、電子マネーを現金に極めて近い感覚でやり取りすることを可能としたものである。 本件報告書(甲49)に記載されている「モバイル電子決済プリペイド」、楽天Edy加盟店規約(甲50)に基づく取引、及び平成10 ネーを現金に極めて近い感覚でやり取りすることを可能としたものである。 本件報告書(甲49)に記載されている「モバイル電子決済プリペイド」、楽天Edy加盟店規約(甲50)に基づく取引、及び平成10年版通信白書(甲51)に記載されている「インターネットキャッシュ」のいずれも、支 払をうけた加盟店・商店等が事後的に金銭の精算(クリアリング)を受ける 取引であると認められ、本件明細書に記載された従来技術の内容及び課題に関する理解と矛盾するものではない。なお、本件報告書には、電子マネー(バリュー)を現金と同様に転々流通させることが考えられる旨の記述もあるが、法制度的な課題の存在や対不正対策の必要性が指摘されており、従来技術として、現金と同様に転々流通する電子マネーの技術が実現していたとか、事 後的な金銭のやり取りがされない電子マネーの送金が行われていたとは認められない。 したがって、本件各発明の「電子マネーの送金」は利用者による電子マネー利用後に店舗等に対する現金の支払等がされるようなものでないと解することが、甲49から甲51までに示されている電子マネー決済の技術常識に 反するものであって誤りであるとは認められない。 ⑵ 前記第2の4⑵の主張について控訴人は、本件明細書段落【0012】の「電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではない」との記載は、電子マネーが現金として精算されること自体を問題視したものではなく、その他本件明細書によれば、 本件各発明は電子マネーの送金における安全性の確保を実現し、これによって現金に極めて近い感覚で電子マネーのやり取りをすることを実現したものであって、現金での精算を排除するものではないから、本件各発明の「電子マネーの送金」はその後に店舗等に対する現金の支払等がされ って現金に極めて近い感覚で電子マネーのやり取りをすることを実現したものであって、現金での精算を排除するものではないから、本件各発明の「電子マネーの送金」はその後に店舗等に対する現金の支払等がされるものではないと解することは誤りであると主張する。 しかし、本件明細書は、段落【0011】において、従来技術において、ICチップ付き携帯端末を用いて店舗のPOS端末で電子マネーの支払を行う場合、電子マネーを管理するセンターにおいて決済が問題ないことを確認すると、センターから店舗に実際の現金を支払うための処理が行われ、これにより携帯端末の持ち主から店舗への支払が行われたものとみなされること を記載し、段落【0012】は、この段落【0011】の記載を受け、IC カードやICチップ付き携帯端末による電子マネーによる支払は、一見電子マネーによる支払が行われているように見えるが、実は裏で現金のやり取りがされており、電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではないと記載している。これらの記載からすれば、段落【0012】は、裏で現金のやり取りがされていることを「電子マネーが完全に現金の代用として 使われているものではない」ことの根拠としていると認められ、セキュリティ対策が採られていない状況を「電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではない」と表現したとは認められない。 そして、段落【0012】は、本件明細書の「【背景技術】」の最後の段落として記載され、段落【0013】は、「【発明が解決しようとする課題】」と して、「本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、電子マネーを現金に極めて近い感覚で取り扱うことを可能とし、」と記載しているのであるから、段落【0012】にある「裏で現金のやりとりが して、「本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、電子マネーを現金に極めて近い感覚で取り扱うことを可能とし、」と記載しているのであるから、段落【0012】にある「裏で現金のやりとりがされており、電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではない」ことが、段落【0013】の「このような課題」に含まれると認められ、本件各発明 は、従来技術における「裏で現金のやり取りがされており、電子マネーが完全に現金の代用として使われているものではない」という課題を解決するものであると認められる。 したがって、本件各発明の「電子マネーの送金」はその後に店舗等に対する現金の支払等がされるものではないと解することは、本件明細書の記載に 沿ったものであるといえ、上記解釈が誤りであるとは認められない。 ⑶ 前記第2の4⑶の主張について控訴人は、被控訴人方法(1-1)の構成(a)は、本件発明1及び本件発明3の「電子マネーの送金方法」を実行するものであり、構成要件A及びFを充足すると主張する。 しかし、利用規約及び加盟店規約によれば、加盟店は被控訴人に対して対 象商品等の代価の代理受領権限を授与しており、被控訴人は事後的に一定期間ごとに加盟店に精算金を支払うこととされている。また、上記各規約においては、加盟店がPayPayサーバ内の売上金額の増額分を他の加盟店との取引で利用できる旨定める規定が存在しない(補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の2⑶ア)。 これらのことからすれば、各被控訴人方法においてPayPayサーバ上に記録される「加盟店の売上金額」がPayPay残高と同じものであるとは認められず、各被控訴人方法における「PayPayサーバ内の売上金額を取引金額の分だけ増額する工程」(構成(c- Payサーバ上に記録される「加盟店の売上金額」がPayPay残高と同じものであるとは認められず、各被控訴人方法における「PayPayサーバ内の売上金額を取引金額の分だけ増額する工程」(構成(c-2-5))が本件各発明の「電子マネーの送金」に当たるとは認められない。 ⑷ 前記第2の4⑷の主張についてア控訴人は、本件各特許の出願当時の技術常識によれば、加盟店について増加したデジタルデータの数額は利用者が支払に用いたものと同一の電子マネーであり、加盟店規約5条に基づき被控訴人が対象商品等の代価を代理受領することは、PayPayサーバ内で利用者から加盟店に電子マ ネーの送金がされていることに当たると主張する。 しかし、加盟店がPayPayサーバ内の売上金額の増額分を他の加盟店との取引で利用できない事実、及び加盟店が加盟店規約5条に基づき対象商品等の代価の代理受領権限を被控訴人に授与している事実は、いずれも、利用者が加盟店に電子マネーを直接送り、電子マネーを現金に極めて 近い感覚でやり取りすることとは相いれない事実であって、これらの事実は、各被控訴人方法が本件各発明の構成要件A及びFを充足しないことの根拠となるというべきである。 また、控訴人は、原判決が、PayPay残高であるデジタルデータが利用者から加盟店に移動しているかという外形的現象を考慮せず、加盟店 規約に記載された法律構成のみに基づいて加盟店がPayPay残高を 受領していないと判断したのは誤りであると主張する。 しかし、各被控訴人方法は利用規約及び加盟店規約に基づいて行われる取引であるから、各被控訴人方法が本件各発明の構成要件を充足するか否かの判断に際し、各被控訴人方法の利用規約及び加盟店規約の内容を考慮し、これらの規約に基づく取引の内 び加盟店規約に基づいて行われる取引であるから、各被控訴人方法が本件各発明の構成要件を充足するか否かの判断に際し、各被控訴人方法の利用規約及び加盟店規約の内容を考慮し、これらの規約に基づく取引の内容を検討することは当然であり、上記 構成要件充足性の判断において加盟店規約を考慮することが誤りであるとはいえない。 イ控訴人は、PayPay残高としての返金ができるにもかかわらず、加盟店が他の商店との取引に利用できないことを理由に、加盟店について増加したデジタルデータがPayPay残高でないと判断した原判決は誤 りであると主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の2⑶イのとおり、利用規約及び加盟店規約に基づく取引における返金処理は、加盟店が有するPayPay残高を利用者に移転する取引ではないから、上記返金処理が可能であることをもって、利用者がPayPay残高による代価 の支払を行った場合に加盟店がPayPay残高を受領すると認められることにはならない。 ⑸ 以上のとおり、当審における控訴人の補充主張は、いずれも採用することができない。 3 その他、原審及び当審において控訴人が縷々主張する内容を検討しても、当 審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 第4 結論以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官 裁判長 裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則

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