主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金678万円及びこれに対する平成11年11月20日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,税理士である原告が,熊本西税務署員や宇土税務署員らによる下記主張の違法な職務行為によって,V株式会社他1社との各税務委任契約に基づく税務代理権を侵害されるとともに,両社が同契約を解除するに至り,契約を破壊された旨主張して,同契約に基づく3年間の顧問料540万円の70%である378万円及び原告の信用を毀損されたことによる非財産的損害として300万円の合計678万円の損害につき,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求した事案である。 原告は,熊本西税務署員及び宇土税務署員の違法な職務行為として,原告が税務委任契約を締結している2社に対して,原告が遠方に居住しているため調査立会が困難であると知りながら,事前通知のない税務調査を行ったこと,調査の際,税理士の代理権を無視する発言を行ったこと,調査を不当に打ち切ったこと,調査理由を開示しなかったこと,納税者である2社に対し脅迫的言辞を行ったこと,調査の際,承諾なく建物内に進入することを容認しなければならないような威勢を示したこと等を主張している。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠によって容易に認められる。 (1) 当事者ア原告は,兵庫県西脇市に事務所を置く税理士である。(弁論の全趣旨)原告は,平成11年8月23日まで,熊本県内に本社を置くV株式会社(以下「V」という。)及び有限会社 1) 当事者ア原告は,兵庫県西脇市に事務所を置く税理士である。(弁論の全趣旨)原告は,平成11年8月23日まで,熊本県内に本社を置くV株式会社(以下「V」という。)及び有限会社W(以下「W」という。)との間で,それぞれ税務に関する委任契約を締結していた。(争いがない)イ被告は,国税等の賦課徴収を行うため国税庁の下に国税局や税務署等の組織を設置しているものである。(争いがない)(2) Vの件について(全て争いがない)ア熊本西税務署員は,平成10年2月3日,税務調査のために事前に通知することなくVq営業所に臨場した。その際,原告は,兵庫県西脇市内の事務所から電話によって同税務署員に対し,遠方にいて立ち会えないことを理由として調査の延期を申し入れた。 イ同年4月8日,熊本西税務署員,V及び原告の間で,調査日程の調整が行われた。 ウ同月22日,原告の立会いの下,熊本西税務署員によるVの税務調査の機会が持たれたが,同税務署員は途中で当日の調査を打ち切った。同調査の際,原告が調査理由の開示を求めた。 エ熊本西税務署では異動により担当調査官に変動があったことから,同年8月18日,新たな担当調査官がVを訪れ,改めて税務調査への協力を求めた。その際,原告は立ち会っていなかった。 オ熊本西税務署員は,同年9月9日,Vを訪れて税務調査への協力を求めた。その際,同税務署員は,「元帳等を見せてもらえなければ反面調査によって確認せざるを得なくなる。」旨述べた。 カ熊本西税務署員は,同年10月6日,Vを訪れて同社会長及び原告に対し,税務調査への協力を求めた。 キ熊本西税務署員は,同年12月4日,Vを訪れた。 ク熊本西税務署員は,平成11年1月13日,Vを訪れた。その際,同税 日,Vを訪れて同社会長及び原告に対し,税務調査への協力を求めた。 キ熊本西税務署員は,同年12月4日,Vを訪れた。 ク熊本西税務署員は,平成11年1月13日,Vを訪れた。その際,同税務署員は,「帳簿等を見せてもらえなければ,青色申告の取消しや消費税について課税仕入れが認められないという処理を行わざるを得なくなる。」旨述べた。 ケ熊本西税務署員は,同年3月12日にVを訪れた。その際,同税務署員は,「このままでは反面調査等を行わなければならないし,青色申告の問題や消費税の課税仕入れが認められないなどの問題が出てくる。」旨述べたコ熊本西税務署員は,同年4月12日にVを訪れた。その際,同税務署員は,「会社で調査に協力してもらえなければ,反面調査等の実施,青色申告承認の取消し,消費税の課税仕入れの否認等の処理を進めることになる。今後の処理については,これまでの経緯を上司に説明の上,その結果を今週末か来週早々には連絡する。」旨述べた。 サ熊本西税務署員は,同月27日,Vに電話をかけ,反面調査等を行うことになり,青色申告承認の取消し及び消費税の仕入税額控除否認の更正を行う旨告げた。 シ熊本西税務署員は,同年6月に反面調査を開始した。 (3) Wの件について(全て争いがない)ア宇土税務署員は,平成10年2月3日,税務調査のために事前に連絡することなくW事務所(前記Vq営業所と同じ建物内に所在する。)に臨場した。その際,原告は,兵庫県西脇市内の事務所から電話によって同税務署員に対し,遠方にいて立ち会えないことを理由として調査の延期を申し入れた。 イ原告及びWのJ会長(以下「J」という。)は,同年4月23日,宇土税務署を訪れ,調査理由の開示等を要請した。 ウ同年5月13日,原告の立会い ことを理由として調査の延期を申し入れた。 イ原告及びWのJ会長(以下「J」という。)は,同年4月23日,宇土税務署を訪れ,調査理由の開示等を要請した。 ウ同年5月13日,原告の立会いの下,宇土税務署員によるWの税務調査が行われたが,宇土税務署員は途中で当日の調査を打ち切った。その際,原告は,同年2月3日の税務調査において代理権無視の言動があったとして宇土税務署の職員に回答を求めた。 エ宇土税務署員は,同年7月9日,異動により担当調査官が変動することを伝達するため,Wの事務所を訪れた。 オ宇土税務署の新たな担当調査官は,同年8月4日,Wを訪れて改めて税務調査への協力を求めた。 カ宇土税務署員は,同年9月16日,Wを訪れて税務調査への協力を求めた。 キ宇土税務署員は,同年10月5日,Wを訪れた。その際,原告は,宇土税務署員が,原告の代理権侵害の申立てに対して文書による回答をしなかったため,回答するように求めた。 ク宇土税務署員は,平成11年4月22日,Wを訪れた。その際,同税務署員は,「調査協力が得られなければ反面調査等を行わざるを得ない。」旨述べた。 ケ宇土税務署員は,同月27日,Wを訪れた。その際,同税務署員は,「調査協力が得られなければ反面調査を行うことになる。青色申告承認の取消しと消費税の更正処分を行うことになる。」旨述べた。 コ宇土税務署員は,同年6月に反面調査を開始した。 (4) 平成11年7月2日,宇土税務署長は,Wに対して青色申告承認の取消処分及び消費税の仕入税額控除一部否認の更正処分等を行い,同日,熊本西税務署長は,Vに対して青色申告承認の取消処分及び消費税等の仕入税額控除否認の更正処分並びに消費税の過少申告加算税の賦課決定処分等を行った。(甲3の1,2 控除一部否認の更正処分等を行い,同日,熊本西税務署長は,Vに対して青色申告承認の取消処分及び消費税等の仕入税額控除否認の更正処分並びに消費税の過少申告加算税の賦課決定処分等を行った。(甲3の1,2,甲4の1,2,乙11)(5) V及びWは,それぞれ,平成11年8月21日付けの内容証明郵便にて,同日ころ,原告との税務に関する委任契約を解除する旨通知した。(甲5,6) 3 主要な争点(1) 熊本西税務署員及び宇土税務署員の原告に対する違法行為の有無(2) 原告の損害第3 争点に対する当事者の主張 1 原告の主張(1) 熊本西税務署員のVに対する調査における問題となる行為ア事前通知のない調査平成10年2月3日,熊本西税務署員が突然Vq営業所に調査に踏み込み,税務調査を強行しようとした。 相当期間前の事前通知は,諸外国では調査の法定要件であり,日本の納税者についてのみそれを無視することは許されない。 イ税理士の代理権を無視する発言熊本西税務署員は,平成10年2月3日,Vq営業所に調査に踏み込んだ際,「税理士は関係ないので社長さんさえよければ調査する。」などと税理士である原告の代理権を無視する発言をした。また,同税務署員は,同年12月4日に同営業所を訪れた際にも,「税理士が訴訟をするのであればやってもらってよい。 調査は社長が了解してくれればよいことである。」などと税理士の代理権を無視する調査要求をした。 諸外国では第三者の立会いは税務調査の要件である。日本の納税者が自らの権利利益を守る手だてとしては税理士による専門的な援助以外にないのであるから,税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない。 ウ税務調 の要件である。日本の納税者が自らの権利利益を守る手だてとしては税理士による専門的な援助以外にないのであるから,税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない。 ウ税務調査の不当な打切り平成10年4月22日,原告の立会いの下,熊本西税務署員によるVの税務調査が行われたが,原告が調査理由の開示を求め,理路整然と発問したのに,同税務署員は発問に対する回答をせず,調査不可能と称して調査を中止した。 エ調査理由の不開示等原告は,平成10年4月22日及び23日,熊本西税務署を訪れ,税務調査の理由を説明すること,熊本西税務署員の税理士の税務代理権を否認する発言の趣旨について納得の行く説明なり,行き過ぎ逸脱があると認めるなりして,早急に調査を円滑に行う条件を整えるべきことを申し入れた。同年8月5日にも,原告は,宇土税務署員に対し,税務代理権の侵害や冒涜についての質問書を出しているが,回答をもらっていないと述べた。さらに,原告は,熊本西税務署に対し,同年9月3日付け内容証明郵便により,税理士の代理権についてどう考えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているかなどについて文書で回答するように求めた。原告は,同年10月6日にも,熊本西税務署員に対し,前記抗議文に文書で回答するように求めた。 しかし,熊本西税務署は,これらに対して回答しないまま,頑なに調査の受け入れを要求した。 諸外国では,調査及び徴収のプロセス並びに納税者の権利を説明する義務がある。日本においても,法定手続の保障条項(憲法31条)から,生命,身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり, 税者の権利を説明する義務がある。日本においても,法定手続の保障条項(憲法31条)から,生命,身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり,課税庁の不明確な裁量が許される余地はない。 オ脅迫的発言熊本西税務署員は,平成10年9月9日,平成11年1月13日,同年3月12日,同年4月12日及び同月27日,Vに対し,前記前提となる事実・オ,クないしサのような脅迫的発言をした。 カ熊本西税務署員は,Vの承諾なく,q営業所内を我が物顔で行き来し,まるで承諾なく建物内に侵入することを容認しなければならないような威勢を示す行動をした。 (2) 宇土税務署員のWに対する調査における問題となる行為ア事前通知のない調査平成10年2月3日,宇土税務署員が突然Wの事務所に調査に踏み込み,税務調査を強行しようとした。 相当期間前の事前通知は,諸外国では調査の法定要件であり,日本の納税者についてのみそれを無視することは許されない。 イ税理士の代理権を無視する発言宇土税務署員は,平成10年2月3日,W事務所に踏み込んだ際,「税理士は関係ないので社長さんさえよければ調査する。」などと税理士の代理権を無視する発言をした。また,同年8月4日に同事務所を訪れた際にも,「調査を受けるのは会社。税理士ではない。だから,調査を受ける受けないは社長次第だ。」などと税理士の代理権を無視する発言がなされた。 諸外国では第三者の立会いは税務調査の要件であり,まして日本の納税者については,税理士による専門的援助以外に自らの権利利益を守る手だてがないから,税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない。 ウ税務調査の不当 あり,まして日本の納税者については,税理士による専門的援助以外に自らの権利利益を守る手だてがないから,税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない。 ウ税務調査の不当な打切り平成10年5月13日,原告の立会いの下,宇土税務署員によるWの税務調査が行われたが,同税務署員は代理権無視の言動に対する原告の質問に回答をせず,調査を放棄して帰った。 被告は,W側が調査の状況をビデオカメラで撮影したことを調査打切りの理由とするが,調査の経過はすべて明示されなければならない。 エ調査理由の不開示等原告は,平成10年4月23日,宇土税務署に対し,調査の理由を開示するとともに,税理士の代理権侵害の発言につき納得できる説明をする準備をするように求めた。また,原告は,宇土税務署に対し,同年6月10日付け内容証明郵便及び同年7月8日付け内容証明郵便により,税理士の代理権についてどう考えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているかなどについて文書で回答するように求めた。さらに,同年10月5日,原告は,宇土税務署員に対し,二度も文書で質問をしているのになぜ書面で回答しないのかと述べた。 しかし,宇土税務署は,これらに対して回答しないまま,かたくなに調査の受け入れを要求した。 諸外国では,調査又は徴収のプロセスとそこで納税者の権利を説明する義務がある。日本においても,法定手続の保障条項(憲法31条)から,生命,身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり,課税庁の不明確な裁量が許される余地はない。 オ脅迫的発言宇土税務署員は,平成10年9月 で大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり,課税庁の不明確な裁量が許される余地はない。 オ脅迫的発言宇土税務署員は,平成10年9月16日,Wを訪れ,威圧的な態度で,「税理士に調査を受けるようにお願いしてほしい。平行線なら反面調査を行う。」との脅迫的発言をした。また,宇土税務署員は,平成11年4月22日及び同月27日にもWを訪れ,前記前提となる事実・ク,ケのような脅迫的発言をした。 カ宇土税務署員は,Wの承諾なく,事務所内を我が物顔に行き来し,まるで承諾なく建物内に侵入することを容認しなければならないような威勢を示す行動をした。 (3) 熊本西税務署員及び宇土税務署員の行為の違法性ア税務代理権侵害行為原告は,国民の経済活動や財産取得が公権力による徴税権行使という強権に曝される際に,それが手続的にも内容的にも公正になされるよう,国民が違法不当な扱いをされないように規制し,国民の経済活動や財産取得の権利を保護するために不可欠なものとして,税務代理権をいわば瞳のように大切に考え,それを税理士の誇りとして守り,それに基づき業務をしてきたものである。 しかるに,熊本西税務署員や宇土税務署員は,当初から原告の税務代理権を侵害する意図に基づいて,①原告と委任契約を締結していたV及びWに対して不意打ち調査を強行しようとし,②前記各社が税理士である原告に対処を求めたのに対し,「税理士は関係ないので社長さえよければ調査します。」などと原告の税務代理権を無視する発言をし,③原告の立会いの下で行われた税務調査を正当な理由なくして打ち切り,④その後も原告がなぜ両者に対する調査が必要であるのかを明らかにするよう求めてもこれに応じず,原告が税務代理権の趣 無視する発言をし,③原告の立会いの下で行われた税務調査を正当な理由なくして打ち切り,④その後も原告がなぜ両者に対する調査が必要であるのかを明らかにするよう求めてもこれに応じず,原告が税務代理権の趣旨を双方で確認することを求めたのに対しても全くまともな対応をとろうとせず,さらに,⑤両社に対し,反面調査を強行して青色申告承認の取消処分や消費税等の更正処分を強行するとの脅迫的発言をした。 前記一連の行為は,原告の税務代理権に対する甚だしい違法な侵害行為である。 イ契約破壊行為税務署としては,調査に際して,調査対象者と税務代理を務める税理士との間の税務委任契約を殊更又は誤って破壊毀損しない注意義務を負うものである。 しかるに,熊本西税務署員及び宇土税務署員は,調査に訪れた際に,V及びWの担当者が原告に対処を求めることについて,「税理士は関係ない。」と決めつけ,税理士たる原告に両社の対課税庁折衝を委ねることに危惧をいだかせ,原告の立会いのない調査の受忍を求め,その後も,原告の不在のところで直接両社の役員,担当者と面談し,原告の税務調査に対する対応を話題にして,あたかも原告の税務署に対する対応が頑なで税務調査を混乱に陥れるものであり,許されない理不尽な行為であるかのように感じるように仕向けた。さらに,同税務署員らは,両社の担当者に対し,前記のように青色申告承認の取消しをする旨脅迫し,原告に従っていれば納税の面で不利益を被ることを意識させ,そのような指導をする税理士に不信を感じるように仕向け,顧問契約ないし委任契約の解除につながらしめた。 熊本西税務署員及び宇土税務署員は,前記のような結果が生じることを認識しつつ,あえて前記行為を強行し,原告とV,Wとの間の顧問契約ないし委任契約を破壊したものであ の解除につながらしめた。 熊本西税務署員及び宇土税務署員は,前記のような結果が生じることを認識しつつ,あえて前記行為を強行し,原告とV,Wとの間の顧問契約ないし委任契約を破壊したものであり,その行為は違法である。 (4) 損害ア逸失利益合計378万円原告は,W及びVとの間の各税務委任契約に基づく報酬として,それぞれ年間90万円の顧問料を得ていたところ,各税務委任契約の終了によって,報酬を得ることができなくなった。 前記税務署員らの違法な職務行為との間に相当因果関係を有する損害は,将来3年にわたる顧問料合計540万円のうち70%の部分である。 イ非財産的損害 300万円原告は,前記税務署員の違法な職務行為によって,30余年の税理士としての誇りと信用を著しく傷つけられ,それによる非財産的損害は300万円を下らない。 2 被告の主張(1) 熊本西税務署員のVに対する調査における問題となる行為との主張についてア事前通知のない調査について平成10年2月3日,熊本西税務署員が事前通知なくしてVのq営業所に臨場し,税務調査に協力するように求めたことはあるが,これが何ら問題となるものではないことは,後述のとおりである。 イ税理士の税務代理権を無視する発言との主張について平成10年2月3日,熊本西税務署のA上席調査官(以下「A」という。),B上席調査官(以下「B」という。),R上席調査官(以下「R」という。)及びC調査官(以下「C」という。)は,Vのq営業所を訪れ,「原告が来れないので,調査は後日にして下さい。」というD社長(以下「D」という。)に対し,Aが「社長さんはどうなんですか。調査に協力して 及びC調査官(以下「C」という。)は,Vのq営業所を訪れ,「原告が来れないので,調査は後日にして下さい。」というD社長(以下「D」という。)に対し,Aが「社長さんはどうなんですか。調査に協力してもらえるのでしょう。」と調査協力を要請し,原告に対しても電話で「現状確認だけはさせていただいて,その他は,後日に改めて伺うということはいかがですか。」と申し入れたが,原告及びDが拒否したことから,調査を行わなかったものである。 熊本西税務署員が「税理士は関係ない」との発言をした事実はない。 同年12月4日,熊本西税務署のE統括調査官(以下「E」という。),F上席調査官(以下「F」という。)及びG調査官(以下「G」という。)は,Vのq営業所に臨場したが,その際,原告が主張するような発言をした事実はない。 ウ税務調査の不当な打切りとの主張について平成10年4月22日,A,B,R及びCがVq営業所における税務調査を打ち切らざるを得なかったのは,原告らによって調査現場のビデオカメラ撮影が行われ,Aらが繰り返し停止要求したが,受け入れられなかったためである。 エ調査理由の不開示等との主張について平成10年4月22日,Aは,調査の理由について,「所得金額の確認のためである。」旨説明した。そもそも,調査理由の不開示が違法となるものではないことは,後述のとおりである。 オ脅迫的発言との主張について平成10年9月9日,E,F及びGがVに対し,前記前提となる事実・オ,クないしサのような発言をしたことはあったが,これが脅迫には当たらないことは後述のとおりである。 (2) 宇土税務署員のWに対する調査における問題となる行為との主張についてア クないしサのような発言をしたことはあったが,これが脅迫には当たらないことは後述のとおりである。 (2) 宇土税務署員のWに対する調査における問題となる行為との主張についてア事前通知のない調査について平成10年2月3日,宇土税務署員が事前通知なくしてW事務所に臨場し,税務調査に協力するように求めたことはあるが,これが何ら問題となるものではないことは,後述のとおりである。 イ税理士の代理権を無視する発言との主張について平成10年2月3日,宇土税務署法人税部門に所属するH上席調査官(以下「H」という。)とI調査官(以下「I」という。)は,W事務所を訪れ,原告の立会いがない限り調査をしないよう電話で求める原告に対し,「今日は,社長さん,会長さんともいらっしゃる訳ですから,ちょうど,今,調査の協力を依頼しているところです。今日は現状確認だけさせていただいて,後日,改めて伺うということではいかがですか。」と申し入れたが,原告が拒否し,Jもこれに同調したことから,調査を行わなかったものである。 宇土税務署員が「税理士は関係ない」との発言をした事実はない。 同年8月4日,宇土税務署のK統括調査官(以下「K」という。)は,W事務所を訪れ,「調査を受ける義務は会社にありますので,こうして調査の協力方をお願いに参っている。」旨発言したものである。 ウ税務調査の不当な打切りとの主張について平成10年5月13日,H及びL上席調査官(以下「L」という。)がWの税務調査を打ち切らざるを得なかったのは,原告らによって調査現場のビデオカメラ撮影が行われ,Hらが繰り返し停止要求をしたのも受け入れられなかったためである。 エ調査理由の不開 )がWの税務調査を打ち切らざるを得なかったのは,原告らによって調査現場のビデオカメラ撮影が行われ,Hらが繰り返し停止要求をしたのも受け入れられなかったためである。 エ調査理由の不開示等との主張について調査理由の不開示が違法となるものではないことは,後述のとおりである。 オ脅迫的発言との主張について平成10年9月16日,宇土税務署のK及びM調査官(以下「M」という。)は,Jに対し,「会長さんはじめ先生にもご協力いただいて元帳その他の帳簿書類により調査ができれば,反面調査を行う必要もありません。」旨説明するとともに,原告に対しても説得してほしい旨依頼したものである。 平成11年4月22日及び同月27日,K及びMは,前記前提となる事実・ク,ケのような発言をしたが,これが脅迫には当たらないことは後述のとおりである。 (3) 本件調査の適法性ア事前通知のない調査について(ア) 法人税法153条は,課税処分に必要な資料の取得収集が可能となるように,税務職員に,課税要件事実について関係者に質問し,帳簿書類その他の関係物件を検査するという質問検査権を認めている。 質問検査の範囲,程度,時期,場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については,前記の質問検査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り,これを権限ある収税官吏の合理的な選択に委ねたものと解するのが相当である。そして,この場合,実施の日時場所の事前通知,調査の理由及び必要性の個別的,具体的告知などは,質問検査を行う上の法律上一律の要件とされているものではない。 (イ) 本件における調査担当者の判断や選択及び実際の対応が社会通念上相当 通知,調査の理由及び必要性の個別的,具体的告知などは,質問検査を行う上の法律上一律の要件とされているものではない。 (イ) 本件における調査担当者の判断や選択及び実際の対応が社会通念上相当な限度にとどまるものであり,かつ,合理的なものであったことは,前記の平成10年2月3日における税務調査の状況から明らかである。 (ウ) よって,本件調査における事前通知のない臨場調査には何らの違法はなく,一般的に調査対象者は,税務職員の質問検査に対してこれを受忍すべき義務を負っているのであって,事前通知のない臨場が,原告らが本件調査を拒否する正当な理由にはなり得ない。 イ税理士の代理権を無視する発言との主張について前記のとおり,V及びWに対する調査において,熊本西税務署及び宇土税務署の調査担当者が,原告が主張するような発言をした事実は全くなく,あくまで税務調査への協力要請を行ったものである。 このような要請は,適正・公平な課税の実現を目的として行う税務調査の担当者として,当然の言動であると評価されるのであって,これが国家賠償法上の違法な公権力の行使に当たるとは到底解し得ない。 百歩譲って,原告が主張するような発言がなされたと仮定しても,本件においては,原告の申入れを無視して社長の了解だけで原告の立会いなしに調査を行った事実はないのであるから,前記発言に何らの違法はないといわなければならない。 ウ税務調査の不当な打切りとの主張について前記のとおり,平成10年4月22日及び同年5月13日に熊本西税務署員及び宇土税務署員が税務調査を打ち切ったのは,原告らが調査現場のビデオカメラ撮影を行い,停止要求も受け入れなかったためである。 そもそも,ビデオカメラによる撮影は,原則として撮 本西税務署員及び宇土税務署員が税務調査を打ち切ったのは,原告らが調査現場のビデオカメラ撮影を行い,停止要求も受け入れなかったためである。 そもそも,ビデオカメラによる撮影は,原則として撮影対象者の承諾を得なければならないところ,税務調査の現場での被調査者によるビデオ撮影は,その会話内容や撮影対象として,被調査者に関することのみでなく,国家公務員である税務職員が負っている守秘義務の対象となる第三者(被調査者の取引先等)に関係する事項や,税務調査の方法に関することなどが複合的に撮影されることとなる。しかも,当該ビデオが課税当局の所有,管理するものでないことから,守秘義務のない被調査者等によってその内容が第三者に明らかにされるおそれもあり,撮影することを承諾した調査担当者は守秘義務違反に問われる可能性がある。 したがって,調査担当者が税務調査の現場でのビデオ撮影を承諾せず,その中止を要求することは当然の正当な行為である。 エ調査理由の不開示等との主張について(ア) 調査理由の開示が税務調査をするに当たっての法律上の一律の要件でないことは前記のとおりであり,調査担当者が具体的な調査理由を被調査者や原告に開示しなかったとしても,そのことによって税務調査が違法となるものではない。 しかも,本件において,調査担当者は,本件調査の理由を「所得金額の確認である。」旨原告らに告げている上,税務調査のために臨場した旨を告げて調査の協力を要請していることは前記のとおりである。 よって,本件での調査理由の開示,不開示や開示の内容いかんが,原告の税務代理権を侵害するものではなく,国家賠償法上の違法な公権力の行使に当たるものではない。 (イ) また,原告らの抗議文や質問状に対して,税務署長が文 開示や開示の内容いかんが,原告の税務代理権を侵害するものではなく,国家賠償法上の違法な公権力の行使に当たるものではない。 (イ) また,原告らの抗議文や質問状に対して,税務署長が文書により回答すべき法律上の義務はなく,これらに回答しないことが国家賠償法上の違法な公権力の行使に当たるものではない。 オ脅迫的発言との主張について前記のとおり,熊本西税務署員及び宇土税務署員らは,それまで再三にわたり調査協力の要請をしてきたにもかかわらず,帳簿等の提示が得られず,調査を拒否されたため,反面調査等を行わざるを得ず,その結果に基づき,青色申告承認の取消処分や仕入税額控除の否認という消費税の更正処分を行うことになる旨を告げたものであり,その内容は,法人税法及び消費税法の解釈・適用上,当然の過程や結果を説明したものであって,その説明や発言内容は何ら脅迫的な言動といえるものではない。 カまとめ以上のとおり,本件調査の担当者らは,調査に応じようとしない原告らに対して,1年以上かけて,繰り返し説得ないし調査協力の要請をしたものであり,かつ,その手続や内容等には何ら違法な点はない。 また,本件調査は適法であり,原告が違法である旨抗議して謝罪を求めたり,主張している内容はいずれも理由がない。 (4) 損害争う。 第4 争点に対する判断 1 認定事実前記前提となる事実と証拠(甲4の1及び2,5,6,11の5,19,乙1ないし7の各1から3,8ないし11,証人A,同H,同J,同D,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(前記証拠のうち,以下の認定に反する部分は信用できない。)。 (1) Jは,昭和53年8月ころ,和歌山で行われた同じ通信制の大学課程を履 告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(前記証拠のうち,以下の認定に反する部分は信用できない。)。 (1) Jは,昭和53年8月ころ,和歌山で行われた同じ通信制の大学課程を履修した者同士の勉強会の合宿で原告と相部屋となった際,頑なに勉学に対する自己の姿勢を貫く原告の姿に感銘を受けたことから,昭和56年5月に,WやVの経営に関与するようになった際,税理士である原告に両社の税務顧問を依頼した。当初,原告は,遠隔地であることを理由に断ったが,Jが度々依頼を続けたため,同年11月に,両社との税務委任契約を締結した。 WやVに対する税務署の調査は,平成10年2月ころから遡って約10年以上もの間,行われていなかった。 (2) 同年2月3日午前9時ころ,熊本西税務署法人課税部門第3部門に所属するA,B,R,Cは,Vに対する税務調査のため,同社q営業所に臨場した。Vに対する税務調査は,N統括官(以下「N」という。)の命令を受けたもので,事前に通知しないこととされていた。 また,同日同刻ころ,宇土税務署法人課税部門に所属するHとIは,Wに対する税務調査のため同社事務所に臨場した。Wに対する税務調査はO統括調査官(以下「O」という。)の命令によって行われたものであったが,Vに対するものと同様に,事前に通知しないこととされていた。 Vq営業所とW事務所は同じ建物内にあり,Vq営業所が2階に,W事務所が1階にあった。 (3) 熊本西税務署の調査官らがVq営業所に臨場した際,同社の代表取締役社長であるDは不在であったため,Aが税務調査のため臨場した旨を同社の従業員に告げ,Dの帰社を待つこととした。その際,同社従業員の一人であるPが階下のW事務所へ通ずる階段を降りて行ったため,Cは 役社長であるDは不在であったため,Aが税務調査のため臨場した旨を同社の従業員に告げ,Dの帰社を待つこととした。その際,同社従業員の一人であるPが階下のW事務所へ通ずる階段を降りて行ったため,CはW事務所内にVの帳簿種類等が存在する蓋然性が高いと判断し,Pに追随した。Pは,税務署員が調査のため臨場したのにDが不在であったため,JやWのQ社長(以下「Q」という。)に対応してもらおうとして,W事務所に赴いたのであった。Cは,Pに追随して赴いたW事務所で原告と電話で話をすることになったところ,原告から,調査に協力できないとの回答を受けたため,Vq営業所に戻ってその旨Aに報告した。そのため,Aらは,引き続きDが帰社するのを待つことにした。 他方,W事務所に臨場した宇土税務署のHらは,直ちに身分証明書を呈示した上,居合わせたQやJに,調査協力を依頼した。Jは,事前の連絡なく来たことをHに確認したが,有りのままを見たいため事前に通知を行わなかったとHが回答すると,原告に電話をかけて対応策の相談を始め,しばらくすると,Hに原告との電話に出るように求めた。Hが原告との電話に出たところ,原告は,自分が立ち会えない以上,本日の調査は拒否し,帳簿,書類等の現状の確認(以下「現状確認」という。)も拒否する旨Hに申し入れた。Hは,Qに対し,現状確認だけでも応じるように申し入れたが,Jが,原告が了解しない以上応じるわけにはいかない,捜査令状があるのか聞けと原告に言われている,と頑なに拒否したため,Hらは,同日の調査や現状確認を断念し,後日,原告と日程を調整した上で再度調査に訪れる旨を告げて,宇土税務署に戻った(JがHらに対して,不法侵入であると述べたような事実は認められず,Hが二日酔いの状態で調査に赴いた事実も認められない。)。 整した上で再度調査に訪れる旨を告げて,宇土税務署に戻った(JがHらに対して,不法侵入であると述べたような事実は認められず,Hが二日酔いの状態で調査に赴いた事実も認められない。)。 Vq営業所では,Aらの臨場から30分ほどでDが帰社したため,Aらが,税務調査のため臨場した旨を告げ,身分証明書を提示した。Dは,当初,Aらと応接室で談笑し,Aに対し,調査立会いの時間もとれそうである等と話すなど,調査に応じる姿勢を見せていたが,原告の了解を得てもらいたい旨のAの要請に従って,電話で原告と相談した後,態度を変え,調査延期を申し入れるようになった。そのため,Aが,D自身の調査協力の意思を確認したところ,Dは,原告が了解しない調査には協力しない旨を回答した。 そこで,Aが原告に対し,電話で,Dの了解を得て調査することの了解を求め,原告が承諾しない場合には現状確認だけを実施したい旨申し入れたところ,原告は,自分の立会いがなければ現状確認も拒否すると頑なに申入れを拒否した。Aは,Dに対しても,現状確認だけを実施すること,帳簿調査は原告立会いによって後日行うことを度々申し入れたが,Dは,自分は原告の指示で動いているため,原告が了解しない以上,いかなる調査にも応じない旨回答するのみであった。しかし,Aらが,なおも現状確認への協力要請を続けたため,Dは,原告の了解がない以上仕方がない,調査官から原告に説得して下さいと返答して,再度,原告に電話して対応を求めようとした。Aらは,正式な調査は後日原告が立ち会える日程を決めて行うこととし,今日のところは現状確認だけでもDが承諾してくれないかと,更にDの調査協力を要求した。そのようなやり取りを続けるうちに,JがW事務所からVq営業所に移動して来たため,Aは,Jに対しても調査協力を求めた のところは現状確認だけでもDが承諾してくれないかと,更にDの調査協力を要求した。そのようなやり取りを続けるうちに,JがW事務所からVq営業所に移動して来たため,Aは,Jに対しても調査協力を求めたが,JもDと同様の対応をし,Wの調査は税務職員が諦めたこと,捜査令状を持っているのか聞くように原告に言われていることをJがAらに告げた。Aらは,原告と日程を調整した上で再度調査に赴く旨をDに伝え,Vを立ち去った。 (4) 同年4月8日,Nと原告は電話で,Vの調査の件につき,前回同様4人の調査官が赴き,同月22日から3日間調査を行う旨の合意をし,Vも同調査を了承した。その際,原告は,Nに対し,調査日までに,税理士代理権侵害に対する釈明をするよう求めた。 他方,Wの調査については,同月20日,Hが原告に電話して,原告との間で,同年5月13日からの2日間で,原告立会いの上,Wの帳簿調査をすることとなった。その際,原告は,Hに,調査期日までに,税務署員が税理士の代理権を侵害したことの謝罪や,無予告調査が必要であった理由を具体的に開示することを申し入れたが,Hは書面による回答はできない旨返答した。なお,原告は,同年4月23日にも,前記申入れと同様の申入れをHの上司であるOに行っている。 (5) 同年4月22日,原告との合意に基づき,A,B,R,Cは,帳簿調査のため,再びVを訪れたが,Aらが案内された会議室には,J,D,原告,原告の事務員1名の4名が待機していたほかは,ビデオカメラやテープレコーダーの準備がされているのみで帳簿等は準備されていなかった。 原告はビデオカメラの撮影を開始した上,無予告で異常な調査をした理由は何か,所得金額の確認のためという回答では納得できない,詭弁だ,投書があって来たのではないか, されていなかった。 原告はビデオカメラの撮影を開始した上,無予告で異常な調査をした理由は何か,所得金額の確認のためという回答では納得できない,詭弁だ,投書があって来たのではないか,とAらに申し立てた。Aらは,調査理由として,所得金額の確認のためであると回答したが,原告は,守秘義務の問題や肖像権侵害を理由にビデオカメラによる撮影を中止するようAらが求めても撮影を中止せず,Aらに対し,あんなに大勢で会社に踏み込んで,ちゃんとした調査理由もないという異常な事態に対しては,異常な態勢で対処する,先日Aらが,原告の立会いなくDが了解すれば調査すると述べたことは税理士代理権の侵害であると申し立てた。当日,原告側がビデオカメラで撮影をしたのは,原告がJに対し,4人が3日間も調査に訪れることは述べ12人の調査となるもので異常な調査であるから,納税者を守るために撮影しておく必要があるから準備するようにと指示していたためであった。 Aらは,J,Dに対し,調査拒否と解さざるを得ない旨を告げたが,Jは,拒否ではなく,納得のいく調査理由があれば調査に応じますと述べるのみであったので,Aは,調査を続行することはできないと判断し,税務署に戻った(なお,Cが原告に飛びかかった事実は認められない。)。 原告及びJは,翌日,調査が実施されないことに抗議するため,熊本西税務署長との面会を求めたが,同署長との面会ができなかったため,原告はOに対して,調査理由の開示を求め,持参したテープレコーダーでOの返答を録音しようとするなどした。 (6) 同年5月13日,HとLは,原告との合意に基づき,帳簿調査のためWを訪れたが,HらがQに案内された会議室には,原告とJが待機していたほかは,ビデオカメラが設置されているのみで,帳簿等は準備され 6) 同年5月13日,HとLは,原告との合意に基づき,帳簿調査のためWを訪れたが,HらがQに案内された会議室には,原告とJが待機していたほかは,ビデオカメラが設置されているのみで,帳簿等は準備されていなかった。 原告とJが,ビデオカメラによる撮影を開始した上,原告が,Hらに対し,同年2月3日の調査では原告の税理士代理権が無視ないし侵害された,営業妨害である,国家賠償法による損害賠償請求も考えている旨を申し入れた。Hらは,税理士代理権を侵害した覚えはないと回答するとともに,肖像権侵害及び守秘義務違反の問題を指摘してビデオカメラによる撮影を中止するように,原告らに申し入れたが,Jは,自分達は非常に弱い立場にあるから,最終的にはこのテープを第三者に判断してもらうつもりである旨を申し立て,撮影を停止しなかった。Hらは,原告やJに対し,同年2月3日は結局現状確認もせず帰署しており,本日の調査日程の取り決めも会社と原告の都合を考慮した上のことであるので,その意を酌んでもらえないか,と再度申し入れたが,原告は,仮に調査に応じたとしても対立関係のままでの調査であり,修正申告には応じず,更正決定を待って徹底的に争う旨回答し,Jも,原告にすべてを委ねているため,原告が納得するまで撮影を停止しないと発言した。Hらは,会議室に帳簿等が,全く準備されていなかったことから,Wに調査に応じる意思がないものと判断し,訪問からおよそ1時間30分ほどのやり取りをした後,やむを得ず帰署した。 (7) 同年6月9日,Hは,原告に対し電話で,再度Wの調査を行うことを申し入れたが,原告は,調査には応じない,前回は税務署が調査せず4日間も無駄になった,出張旅費や滞在費等を国に賠償請求することを考えていると返答した。Hは,前回調査できなかったのは,原告側がビデオ 申し入れたが,原告は,調査には応じない,前回は税務署が調査せず4日間も無駄になった,出張旅費や滞在費等を国に賠償請求することを考えていると返答した。Hは,前回調査できなかったのは,原告側がビデオカメラ撮影を停止しなかったためである,調査拒否と解してよいか,と申し入れたが,原告の対応は変わらなかった。 翌日,Hは,再度,Wの調査の件でJに電話し,調査協力を要請したが,Jは,原告に全て任せてあるので原告に従う,損害賠償についても一緒に戦っていく,税務署は文書で原告に回答すべきだと答えるのみで,Hが文書による回答はできない旨返答しても,対応は変わらなかった。また,Hは,Wを訪れ,Jに対し,同年2月3日に税理士は関係ない旨の発言をしていないと述べたが,Jは,当該発言はあった旨反論した。 (8) 同日(同年6月9日),原告は,宇土税務署長に対して,同年2月3日にHが税理士は関係ないと発言したことや,3日間が無駄になったこと,原告を無視してJに調査を申し出ていること等を主張して,これに抗議し,質問を求める内容証明郵便を送付し,同書面は,同月12日に,同税務署に届いた。 (9) 同年7月8日,原告は,宇土税務署長に対し,書面による回答がないどころか,Oから社長を説得するようにとの見当違いの電話を受けたとして,重ねて,原告を無視して調査を求めた行為が税理士代理権の侵害にあたること,同年5月13日に調査が行われなかったこと,HがJに直接電話する行為が税理士の代理権を侵害するものであること等を抗議する内容証明郵便を送付し,同書面は,同年7月10日,宇土税務署に届いた。 (10) 同月9日,O及びHが,W事務所を訪れ,異動の挨拶を行ったところ,J及びQが面談に応じ,Jは,Oらの訪問に理解を示した上,税務署の誠意は酌み取った旨 月10日,宇土税務署に届いた。 (10) 同月9日,O及びHが,W事務所を訪れ,異動の挨拶を行ったところ,J及びQが面談に応じ,Jは,Oらの訪問に理解を示した上,税務署の誠意は酌み取った旨発言した。 (11) 同月31日,Eが,VのJに電話し,人事異動の挨拶のため訪問したい旨を伝えたところ,Jは,原告に相談した上Eに連絡すると返答したが,その後Eに連絡をとらなかった。そこで,同年8月3日,Eが,再度連絡したところ,Jは,Eから直接原告に電話するように返答した。 同月5日,Eが原告に電話したところ,原告は,Eの前任者から代理権の侵害や冒涜を受けており,税務署の調査官らは原告の質問書にも回答せず,原告との面会にも応じず,また,調査立会いのため同年4月に原告が熊本に赴いても調査が行われないので,国家賠償請求も考えている旨,Eに申し立てた。Eは,前任者が原告を中傷したことはないと聞いていること,同年4月に調査を行わなかったのは原告がビデオ撮影を中止しなかったためであると聞いていることを原告に説明し,話し合う機会を持つよう提案したが,原告は,書面での回答がない限り調査には応じないと主張するのみで,Eとの話合いに応じようとしなかった。 (12) 同年8月18日,EとF及びGは,調査協力要請のため,Vを訪れたが,Jは,Eらに対し,調査において調査員側と原告及びJらとの間に隔たりができ残念に思っていること,税務署の調査に協力していたつもりであったのに,5名での無予告調査を受け心外であること,調査やその後の調査員の対応に不満があること,ビデオ撮影をしたのは2名で来所するといいながら3名で来所したため,原告が指示したものであったこと等を述べた。Eらは,原告との電話の内容をJに伝えたが,Jは,調査を受けても構わないが,原告 ること,ビデオ撮影をしたのは2名で来所するといいながら3名で来所したため,原告が指示したものであったこと等を述べた。Eらは,原告との電話の内容をJに伝えたが,Jは,調査を受けても構わないが,原告が税理士生命をかけて争うと述べている以上,原告についていきたいと考えていること,穏便かつ早期に解決できるのであれば,それを希望すること等を申し立てた。そこで,Eは,調査を早期に進めるため原告の協力が得られるようにJにも協力を求め,JもEの意向を原告に伝える旨了承した。 同年9月2日,EからJに原告の意向を尋ねたところ,Jは,原告にEの意向は伝えたが,原告の意向は分からないと回答するのみであった。 (13) 同月7日,原告から熊本西税務署長に宛てて,同年4月の調査が中止になったこと,税務署の職員が税理士の代理権を侵害していることに抗議する内容の同年9月3日付けの内容証明郵便が送付された。そこで,E,F,Gの3名は,再度Vを訪れ,Jに対し,訪問の目的は調査協力の要請のためであって,原告の代理権を侵害するものではない旨を告げると,Jは,Eらが原告に書面で回答しないために原告が抗議文を送ったのであろう,原告の真意や考えは分からないが,原告との委任契約がある以上勝手に調査を受けることはできない,と回答した。Eは,書面で回答できないことは既に原告に伝えていると述べた上,再度,Jに対し,原告が調査に応じるように協力を求めた。すると,JはEに対し,原告に直接連絡すべきであると返答したので,EはJに対し,調査依頼は法人の代表者に対してなすものであり,本来は代理人になすものではない,代理人が調査を承諾しても代表者が拒否すれば調査はできない,代理人の職務は代表者に対してなされた調査の申入れに対して,代表者にかわって回答し得る点にある,このま り,本来は代理人になすものではない,代理人が調査を承諾しても代表者が拒否すれば調査はできない,代理人の職務は代表者に対してなされた調査の申入れに対して,代表者にかわって回答し得る点にある,このままでは反面調査や銀行調査を行わざるを得ない等と重ねて原告を説得するよう依頼した。しかしながら,Jは,税務署の調査は受けることはできない,いかなる調査も覚悟はできている,10月の帳簿調査をするのであれば原告に取り計らってみるので,その結果は後日連絡すると回答するのみであった。 (14) 同年10月5日,EがJと原告に電話したところ,翌日にVに調査のため臨場することで合意した。しかし,EとFが,翌日,Vq営業所を訪れて,J及び原告と面会すると,原告は,またもや,抗議文に対する回答を要求したので,Eは,文書での回答はできないことにつき理解を求め,加えて,代理権侵害の問題と調査の受忍義務は別の問題であり,Vが調査に応じないと,税務署として,不本意ながら反面調査や銀行調査を行わざるを得ない旨を原告に申し入れた。しかし,原告はその提案には納得せず,Jも,取引先や取引銀行に調査に応じないように要請する,反面調査等を強行すれば損害賠償を要求する等とEらに申し立てた。Eは,調査に応じれば会社の信用問題につながる反面調査等を行わずに済む,従業員やその家族のことも考えて調査に協力して欲しいと更に説得したが,Jは,会社の存続ができなくなったら,会社を解散してでも徹底的に争う,私としても穏便に調査を進めていただいて,早期に問題を解決したいが,原告に全面的に委任しているので,原告の了解を得て欲しいと回答するのみであった。そこで,Eが,再度,原告に調査協力を要請したところ,原告は,専税協の訴訟に関する委員長として,私が一度振り上げた手を下ろすことはできない,調査要 で,原告の了解を得て欲しいと回答するのみであった。そこで,Eが,再度,原告に調査協力を要請したところ,原告は,専税協の訴訟に関する委員長として,私が一度振り上げた手を下ろすことはできない,調査要請については,ほとんど可能性はないと思うが,検討して連絡する旨を回答するのみであった。 (15) 同月29日,Eが原告に電話したところ,原告は,税務代理権等について説明がないと調査には応じられない旨回答したので,Eは,Jは原告の了解があれば調査に応じると述べているので,税務代理権の問題と調査を分けて考えてはどうか,反面調査ということになると,原告と税務署の問題ではなく,会社にまで迷惑がかかる,と再度原告を説得したが,原告は,私も訴訟関係の役員をやっている立場から,問題を別々に考えることはできない,Jも私と一緒に戦っていくと言っていますと回答するのみであった。 (16) 同年12月4日,E,F,ZがVを訪れ,Jと面談したところ,Jは,原告が税務署の紳士的な対応を誠実に受け止め,原告も紳士的に対処しなければならないと話していたと告げ,J自身,早めに解決したい,調査を受けることに何の問題もない,今日にでも原告に協力を要請するように連絡したいと話し,Eらも,重ねて協力を要請した。 (17) 同月18日,EがJに電話したところ,Jは,原告に電話で協力を要請したものの,原告が調査を了解しないと言っていたとEらに告げ,原告はEらがVを訪れている件も代理権侵害になると言っている,原告は振り上げた手の下ろし場所がないのではないか,何か丸くおさまる方法はないか,と申し入れた。 (18) 平成11年1月13日,E,F,Gは,Vを訪れ,Jと面談したところ,Jは,自分もできる限り努力するから,税務署としても文書による回答を検討できないか,正 法はないか,と申し入れた。 (18) 平成11年1月13日,E,F,Gは,Vを訪れ,Jと面談したところ,Jは,自分もできる限り努力するから,税務署としても文書による回答を検討できないか,正式な回答でなくとも,玉虫色の回答でもよい,また,署としてでなくとも統括官としてでもよいから,文書での回答について検討できないか,とEらに申し入れた。Eは,いかなる形でも書面での回答はできない旨答え,帳簿等の調査ができなければ,青色申告承認の取消しや,消費税については課税仕入れが認められないということになると告げて,原告に対し調査協力を依頼するよう再度要請した。Jは,3月末には,原告に会って協力を依頼すると回答するのみであった。 (19) 同年3月12日,E,F,Gが,Vを訪れ,Jに対し,このままでは反面調査や銀行調査を実施せざるを得なくなることを説明して,再度調査協力を申し入れたところ,Jは,同年4月3日,4日に原告を訪れるため,原告の協力を取り付けてきたい旨の返答をした(Eらが,消費税のランクが厳しくなる旨の発言をしたとは認められない。)。なお,同月3日ころ,Jは,西脇市に居住する原告を訪れ,国税当局との円満な解決を申し入れたが,原告は,調査に応じない姿勢を崩すことはなかった。 (20) 同年4月12日,E,F,Zが,Vを訪れたところ,原告が調査に応じる意思がないことが明らかとなったため,Eは,Jの原告を説得する試みに感謝の意を述べたが,人事異動が予定されており調査を終了しなければならないこと,調査が実施できない場合に反面調査等を実施することになること等をJに説明した。Jは,同年7月の上旬に原告が熊本を訪れること,その際,原告と税務署との間で話合いによる解決ができると考えられることを申し入れたが,Eらは,今後の方針につき,署で ることになること等をJに説明した。Jは,同年7月の上旬に原告が熊本を訪れること,その際,原告と税務署との間で話合いによる解決ができると考えられることを申し入れたが,Eらは,今後の方針につき,署で対応した上,Jに連絡すると回答した上,Vから立ち去った。 (21) 同月27日,Eは,Jに連絡し,反面調査及び銀行調査を実施することになったこと,青色申告承認を取り消し,消費税の課税仕入れ控除の否認の更正処分も併せて行うとの方針を連絡した。Jは,そうですか,原告に伝えます,と回答するのみであったが,翌日,Jは,WのQ社長とともに,宇土税務署長及び熊本西税務署長に対し,脅迫に抗議する旨の各文書を送付し,原告も,同日,両署長に対し,青色申告承認の取消しを行う等の前記発言を脅迫であるとし,調査に応じないのは,税務署が税理士の代理権を無視したからで,この問題が解決されない限り,Jは調査に応じない旨の文書を送付した。 (22) 宇土税務署長及び熊本西税務署長は,W及びVに対し,同年6月から実施された反面調査等の結果に基づき,同年7月2日,前記前提となる事実・のとおり,青色申告承認の取消処分,消費税仕入れ税額控除否認の更正処分,消費税の過少申告加算税の賦課決定処分等を行い,結果としてW及びVに対し,本税及び加算税として合計6500万円余りを追加して納付する義務を課した。 (23) 原告は,W及びVを倒産の危機に追い込んだことに責任の一端を感じ,納付を命じられた税金の一部でも負担したい旨を会社側に申し入れたところ,Jはこれを辞退したが,Dは,一部ではなく全額を持ってくるのが当然であると原告に申し入れた。原告は,Qとの交渉の結果,Wの土地を1500万円で買うことにしたが,同年8月21日,V及びWは,それぞれ,原告との税務代理の各委任契約を解 ではなく全額を持ってくるのが当然であると原告に申し入れた。原告は,Qとの交渉の結果,Wの土地を1500万円で買うことにしたが,同年8月21日,V及びWは,それぞれ,原告との税務代理の各委任契約を解除するに至った。 (24) 平成13年3月27日付けで国税庁長官が作成した書面「税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)」には,事前通知は,昭和37年9月6日付官総6-230ほか5課共同「税務調査の際の納税者及び関与税理士に対する事前通知について」に基づいて適切に実施することとされているほか,「業種・業態,資料情報及び過去の調査状況等からみて,帳簿書類等による申告内容等の適否の確認が困難であると想定されることから,事前通知を行わない調査(無予告調査)により有りのままの事業実態等を確認しなければ,申告内容等に係る事実の把握が困難であると想定される場合」については,事前通知を行わない旨記載されている。 以上の認定に対し,原告は,税務署員が「税理士は関係ない」旨発言したと主張し,証人J,同Dの各証言やJ作成の書面(甲11の5)及び原告本人の供述中には,Hが「税理士は関係ない,社長が良ければ調査する」の一点張りであり,押し問答が続いたとか,JがVq営業所に行くと,AらがDを取り囲んで口々に「税理士は関係ない」などと威圧した旨述べる部分が存する。しかし,本件で,税務署員らがそのような言動を用いてまで税務調査を強行する必要性があったとはいえず,いずれも信用できない。また,仮に本件で税務署員らが税務調査につき税理士の立会いの要否に触れる発言をしたとしても,VとWの両社の業務の責任者である各社長の了解を得て調査を進める場合には,税理士である原告の立会いが必要的ではない旨発言したことを,短絡的に「税理士は関係ない」との税理士排除のニュアンス としても,VとWの両社の業務の責任者である各社長の了解を得て調査を進める場合には,税理士である原告の立会いが必要的ではない旨発言したことを,短絡的に「税理士は関係ない」との税理士排除のニュアンスを含む発言のように誤解したことも想定され,いずれにせよ,原告の主張する前記事実は認められない。 2 熊本西税務署員のVに対する調査について(1) 事前通知のない調査前記認定事実によれば,平成10年2月3日,税務署員らが税務調査を行おうとしてVq営業所に臨場したが,原告やJ,Dが反対したため税務調査を行わなかったこと,税務署員らは帳簿や会計に関する書類の現状確認を申し出たが,同様の事情によりそれも行わなかったことが認められる。 そうであれば,税務調査や現状確認が結局行われていない以上,違法な調査が行われた旨の原告の主張には理由がなく,また,それ以前10年以上Vに関する税務調査がなされなかったことを考慮すると,前記調査を行おうとしたこと自体が違法であるとは評価できない。そもそも,税務署員には課税処分に必要な資料の取得収集が可能となるように,課税要件事実について関係者に質問し,帳簿書類その他の関係物件を検査する権利が与えられているところ(法人税法153条),質問検査の範囲,程度,時期,場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については,前記の質問検査の必要があり,かつ,これと被調査者の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り,前記権限を行使する収税官吏の合理的な選択に委ねられていると解するべきであり,税務調査の日時,場所の事前通知,調査の理由及び必要性の個別的,具体的告知が法律上,税務調査の一律の要件とされているものではないと解すべきところ(最高裁昭和58年7月14日第1小法廷判決・訟務月報30巻1号151 場所の事前通知,調査の理由及び必要性の個別的,具体的告知が法律上,税務調査の一律の要件とされているものではないと解すべきところ(最高裁昭和58年7月14日第1小法廷判決・訟務月報30巻1号151頁参照),本件で事前通知なく税務調査のため臨場した税務署員らの行為が,調査の必要性と被調査者の私的利益との衡量において,社会通念上相当な限度を超えているとみるべき事情が認められないから,事前通知がないことを違法事由とする原告の主張に理由はない。 また,本件においては,税理士である原告が兵庫県西脇市に在住しているという事情があったが,被調査者は,遠隔地に居住する税理士と税務委任契約を締結している場合でも,電話等で連絡をとって対応を相談することは可能であり,そのような場合に事前通知を欠く調査が相当な限度を越えていると解すべき理由はない。 なお,前記認定事実によれば,本件で税務署員は,税務調査を断念した後もDやJに対して帳簿等の現状確認を求めていることが認められるが,結局Dらがこれに応じることはなかったのであり,それ自体に対する制裁措置も取られていないところ,税務署員が調査のため臨場したり,本人に現状確認のための任意の協力を求めたりする行為自体は,もとより違法な公権力の行使に当たるとはいえず,また,かかる行為が税理士の代理権を侵害したともいえない。 この点,原告は,相当期間前の事前通知は諸外国では調査の法定要件であり日本の納税者についてのみそれを無視することは許されないと主張するが,諸外国の法制度がそのまま我が国の法解釈に結びつくものではなく,失当である。 したがって,原告の主張に理由はない。 (2) 税理士の代理権を無視する発言本件で,熊本西税務署員が,平成10年2月3日,Vq営業所で,「税理 に結びつくものではなく,失当である。 したがって,原告の主張に理由はない。 (2) 税理士の代理権を無視する発言本件で,熊本西税務署員が,平成10年2月3日,Vq営業所で,「税理士は関係ないので社長さんさえよければ調査する。」などと発言をした事実が認められないことは既に説示したとおりである。また,同年12月4日に同営業所で,「税理士訴訟をするのであればやってもらってよい。調査は社長が了解してくれればよいことである。」と申し向けて調査要求をした事実も本件証拠上認められない。 原告は,諸外国では第三者の立会いは税務調査の要件であると主張するが,我が国においてそのように解すべき法的根拠はなく失当であるし,そもそも,本件で代理人の立会いがないまま,税務調査が行われた事実は認められない。 なお,前記認定事実によれば,同年2月3日の税務調査の際,原告が立ち会えないことが原告との電話によって明らかとなり,原告が税務調査の延期を申し出た後において,税務署員らがJやDに対して帳簿の管理状況等の確認を求めた事実が認められるが,帳簿や会計書類が,どのように管理されているかを開示するだけであれば被調査者の負担も少ないことを考えると,それにつき被調査者の任意の協力を求めることが違法とはいえないことは既に述べたとおりであり,税理士の代理権を無視するものとも解しがたい。 したがって,原告の主張に理由はない。 (3) 税務調査の不当な打切り前記認定事実によれば,平成10年4月22日,熊本西税務署員によるVの税務調査に際し,原告が調査理由の開示を求めたところ,同税務署員が調査不可能との理由により調査を中止した事実が認められる。 しかしながら,前記税務調査の際,原告らが調査現 員によるVの税務調査に際し,原告が調査理由の開示を求めたところ,同税務署員が調査不可能との理由により調査を中止した事実が認められる。 しかしながら,前記税務調査の際,原告らが調査現場をビデオカメラで撮影し,税務署員らが中止を求めても応じなかった事実も認められるところ,国家公務員の守秘義務の対象であると考えられる税務調査の様子が一般私人によって不特定多数の部外者に明らかにされる危険が予想される状況において,守秘義務を負う国家公務員が撮影されることを回避するため撮影中止を求め,それに応じない場合には撮影の対象となっている当日の税務調査自体を打ち切るということも相当な判断として是認できる。加えて,仮に税務調査の打切りがあったとしても,そのことが税理士の代理権を侵害するものと解すべき理由はないから,いずれにせよ,同職員らが税務調査を中止したことが不当であるとの原告の主張には理由がない。 なお,原告は,税務署員が調査理由の開示等を求める原告の発問に答えなかった旨を主張するが,この点に関しては後記・で判示のとおりである。 (4) 調査理由の不開示等前記認定事実及び証拠(乙5の1)によれば,原告が,平成10年4月22日及び23日に熊本西税務署員に対して,税務調査の理由を開示するよう申し入れたこと,同年8月5日に,宇土税務署員に対して,税務代理権への侵害や冒涜についての質問書を出しているが,回答を得ていないと述べたこと,原告が熊本西税務署に対し,同年9月3日付け内容証明郵便により,税理士の代理権についてどう考えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているか等について文書で回答するように求めたこと,原告が,同年10月6日に,熊本西税務署員に対し,前記抗議 えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているか等について文書で回答するように求めたこと,原告が,同年10月6日に,熊本西税務署員に対し,前記抗議文に回答するよう求めたことが認められる。 しかし,調査理由の個別的,具体的告知が法律上,税務調書の一律の要件とされていないことは既に判示のとおりであるし,前記認定事実によれば,調査担当者である熊本西税務署員は,所得金額の確認をすることが目的である旨回答したものであり,これ以上の調査内容を明らかにする必要も認められないことからすると,本件で税務署員らに違法な行為があったとは認められない。 原告は,調査又は徴収のプロセスとそこで納税者の権利を説明する義務があると諸外国の例を挙げ,日本においても,法定手続の保障条項(憲法31条)から,生命,身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり,課税庁の不明確な裁量が許される余地はない旨主張するが,調査理由をどの程度,個別具体的に明示するかは質問検査の実施の細目であり,税務署員の裁量に委ねられているものであることは既に判示のとおりであるし,仮に調査理由を明かさなかったとしても,そのことが税理士の代理権を侵害することになるとは解しがたいから,いずれにせよ原告の主張に理由がないことは明らかである。 (5) 脅迫的発言前記認定事実によれば,熊本西税務署員が,平成10年9月9日,平成11年1月13日,同年3月12日,同年4月12日及び,同月27日,Vに対し,前記前提となる事実・オ,クないしサのような発言をしたことが認められる。 しかし,熊本西税務署員は,Vが税務調査に応じなかったために反面調査等をせざるを得ず,その結果,青色申告 日,Vに対し,前記前提となる事実・オ,クないしサのような発言をしたことが認められる。 しかし,熊本西税務署員は,Vが税務調査に応じなかったために反面調査等をせざるを得ず,その結果,青色申告承認の取消処分や更正処分として消費税の仕入税額控除の否認等が行われる可能性がある旨の税務上当然予想される取扱いや結果について説明する目的で前記発言をなしたものとみることができ,同職員らに原告らを脅迫する意図があったとは認められないし,その内容自体,不当に原告らを畏怖させるべきものではないのであるから,これらをもって脅迫的言辞である旨の原告の主張は失当である。 したがって,原告の主張に理由はない。 (6) その他の威圧的言動について原告は,熊本西税務署員が,Vの承諾なく,その営業所内を我が物顔に行き来し,まるで承諾なく建物内に侵入することを容認しなければならないような威勢を示す行動をしたと主張するが,前記認定事実に照らしても,そのような事情は認められない。 3 宇土税務署員のWに対する調査について(1) 事前通知のない調査平成10年2月3日に,宇土税務署員が事前の通知を行うことなくW事務所に臨場し,税務調査を行おうとしたことは当事者間に争いがない。 しかし,税務調査に先立って事前の通知をすることが法律上の要件ではないことは既に判示のとおりであるし,前記認定事実によれば,同社に対し,それまで10年近く税務調査を行っていなかったことが認められるところ,過去の調査状況等からみて有りのままの事業実態を確認すべき事情があったといえることから,事前の通知を行わなかったことが,調査を違法とする事由とはならないと解しうる。 原告は,相当期間前の事前通知は諸外国では調査の法定要件であり日本の納税者につ き事情があったといえることから,事前の通知を行わなかったことが,調査を違法とする事由とはならないと解しうる。 原告は,相当期間前の事前通知は諸外国では調査の法定要件であり日本の納税者についてのみそれを無視することは許されない旨主張するが,失当であることは,既に判示のとおりである。 (2) 税理士の代理権を無視する発言宇土税務署員が,平成10年2月3日,Wの事務所に臨場した際,「税理士は関係ないので社長さんさえよければ調査する。」などと発言をしたこと,同年8月4日に同事務所を訪れた際,「調査を受けるのは会社。税理士ではない。だから,調査を受ける受けないは社長次第だ。」と発言したことが認められないことは,既に認定説示のとおりである。 したがって,税理士の代理権を無視する発言がなされた旨の原告の主張は理由がない。 原告は,諸外国では第三者の立会いは税務調査の要件であり,まして日本の納税者について,税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない旨主張するが,前記認定事実によれば,税務署員らが,税理士立会いの上で行う税務調査を後日行うことにして,現状確認だけでも応じてもらえないかと任意の協力を求め,それに応じられなかったので現状確認も断念したことが認められるところ,任意の協力として現状確認に応ずるよう求めることはもとより適法な行為であり,このような現状確認に税理士の立会いが必要不可欠であるとは認められない上,前記職員らは現状確認への協力を求めたにとどまり,現に現状確認を行っていないのであるから,いずれにしても原告の立会権が侵害されたとは認められない。 したがって,原告の主張は理由がない。 (3) 税務調査の不当な打切り前記認定事実によれば,平成10年5月13日,原告 しても原告の立会権が侵害されたとは認められない。 したがって,原告の主張は理由がない。 (3) 税務調査の不当な打切り前記認定事実によれば,平成10年5月13日,原告の立会いの下,宇土税務署員によるWの税務調査が行われたが,同税務署員が,代理権無視の言動があったことを認めない旨回答した後,調査を打ち切って帰署した事実が認められる。 しかるところ,Wに対する当日の税務調査が打ち切られたのは,W側がビデオカメラで撮影する等の対応に出たため,同税務署員が調査を続行できなかったという事情にあったためであり,調査を中止し,帰署した対応も相当として是認することができるし,そもそも,税務署が調査を打ち切ったことが,税理士の代理権を侵害するものと解すべき理由はないから,いずれにせよ,原告の主張は失当である。 この点,原告は,調査の経過はすべて明示されなければならないと主張するが,一般人によって不特定多数に知られ得る方法で調査の様子が記録されることは,税務職員の守秘義務との関係で問題があることは前記説示のとおりであるから,原告の主張は失当である。 (4) 調査理由の不開示等原告が,平成10年4月23日,宇土税務署に対し,調査理由の開示を求めるとともに,税理士の代理権侵害の発言につき納得できる説明をする準備をするように求めたことは当事者間で争いがない。 また,前記認定事実によれば,原告が宇土税務署に対し,平成10年6月10日付け内容証明郵便及び同年7月8日付け内容証明郵便により,税理士の代理権についてどう考えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているかなどを文書で回答するように求めたこと,同年10月5日,原告は, より,税理士の代理権についてどう考えるか,これを侵害した税務署員の発言をどう考えるか,調査理由の開示についてどのように理解しているかなどを文書で回答するように求めたこと,同年10月5日,原告は,宇土税務署員に対し,抗議文に対する回答を要求したことが認められる。 しかし,調査理由の個別的,具体的告知が調査の一律の要件とされていないことは既に判示のとおりであり,本件で同税務署員に違法な行為があったとは認められない。 また,原告らの抗議文や質問状に対して,税務署長が文書によって,又は,口頭で,回答すべき法律上の義務はなく,これらに回答しないことが国家賠償法上の違法な公権力の行使に当たるものではない。 原告は,調査又は徴収のプロセスとそこで納税者の権利を説明する義務があると諸外国の例を挙げ,日本においても,法定手続の保障条項(憲法31条)から,生命,身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり,課税庁の不明確な裁量が許される余地はない旨主張するが,調査理由をどれだけ個別具体的に明示するか否かは質問検査権の実施の細目であって,税務署員の裁量に委ねられているものであることは既に判示のとおりである。 よって,原告の主張は理由がない。 (5) 脅迫的発言原告は,宇土税務署員が,平成10年9月16日,Wを訪れ,「税理士に調査を受けるようにお願いしてほしい。平行線なら反面調査を行う。」と発言したこと及び平成11年4月22日及び同月27日にWを訪れ,前記前提となる事実・ク,ケのような発言をしたことが脅迫的発言に当たると主張するが,このような発言は,税務上当然予想される取扱いや結果を説明したものであると考えられ,脅迫的発言に当たるとは認められないから, なる事実・ク,ケのような発言をしたことが脅迫的発言に当たると主張するが,このような発言は,税務上当然予想される取扱いや結果を説明したものであると考えられ,脅迫的発言に当たるとは認められないから,原告の主張に理由はない。 (6) その他の威圧的言動について原告は,宇土税務署員が,Wの承諾なく,事務所内を我が物顔に行き来し,まるで承諾なく建物内に侵入することを容認しなければならないような威勢を示す行動をしたと主張するが,前記認定事実に照らしても,そのような事情は認められないから,原告の主張に理由はない。 4 熊本西税務署員及び宇土税務署員の行為の違法性(1) 税務代理権侵害行為との主張について原告は,熊本西税務署員や宇土税務署員が,当初から原告の税務代理権を侵害する意図に基づいて,①原告と委任契約を締結していたV及びWに対して不意打ち調査を強行しようとし,②両社が税理士である原告に対処を求めたのに対し,「税理士は関係ないので社長さえよければ調査します。」などと原告の税務代理権を無視する発言をし,③原告の立会いの下で行われた税務調査を正当な理由なくして打ち切り,④その後も原告がなぜ両社を調査する必要があるのかを明らかにするよう求めてもこれに応じず,原告が税務代理権の趣旨を双方で確認することを求めたのに対しても全くまともな対応をとろうとせず,⑤両社に対し,反面調査を強行して青色申告の取消しや消費税等の更正処分を強行するとの脅迫的発言をするなどし,そのような一連の行為によって,原告の税務代理権を甚だしく違法に侵害したと主張する。 しかしながら,本件において,熊本西税務署員及び宇土税務署員につき,原告主張のごとき違法行為ないし違法事由を肯認できないことは既に認定説示のとおりである。よって,同税務 と主張する。 しかしながら,本件において,熊本西税務署員及び宇土税務署員につき,原告主張のごとき違法行為ないし違法事由を肯認できないことは既に認定説示のとおりである。よって,同税務署員らが原告の税務代理権を違法に侵害したとは認められない。 (2) 契約破壊行為原告は,熊本西税務署員及び宇土税務署員が,調査に訪れた際に,V及びWの担当者が原告に対処を求めることについて,「税理士は関係ない。」と決めつける言動をなし,税理士たる原告に会社の対課税庁折衝を委ねることに危惧をいだかせ,原告の立会いのない調査の受忍を求め,その後も,原告の不在のところで直接両社の役員,担当者と面談し,原告の税務調査に対する対応を話題にして,あたかも原告の税務署に対する対応が頑なで税務調査を混乱に陥れるものであり,許されない理不尽な行為であるかのように感じるように仕向け,さらに,両社の担当者に対し,前記のように青色申告承認の取消しをする旨脅迫し,原告に従っていれば納税の面で不利益を被ることを意識させ,そのような指導をする税理士に不信を感じるように仕向け,税務委任契約の解除につながらしめたと主張する。 しかし,熊本西税務署員及び宇土税務署員が,両社の調査に際し,税理士は関係ないと述べた事実が認められないことは既に認定説示のとおりであるし,熊本西税務署員及び宇土税務署員が,原告と両社との税務委任契約が解除されることを意図し,あるいはその恐れを認識しつつ,敢えて原告と両社ないしJら関係者との信頼関係を破壊するような行為をなし,もって税務委任契約が解除されるに至らしめたことを認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実に照らすと,原告が両社から税務委任契約を解除されるに至ったのは,両社が熊本西税務署長及び宇土税務署長から青色申 委任契約が解除されるに至らしめたことを認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実に照らすと,原告が両社から税務委任契約を解除されるに至ったのは,両社が熊本西税務署長及び宇土税務署長から青色申告承認の取消処分や消費税等の更正処分等を受け,多額の税金の追加納付を余儀なくされたことが主たる原因であり,税務署員らの行為により信頼関係を破壊されたことが原因であるとは認めがたい。 第5 結論よって,原告の請求は全て理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官田中澄夫 裁判官大藪和男裁判官三宅知三郎
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