- 1 -平成19年(ネ)第10060号特許を受ける権利の確認請求,承継参加控訴事件平成20年12月24日判決言渡,平成20年10月6日口頭弁論終結(原審・東京地方裁判所平成18年(ワ)第126号,同第20971号,平成19年6月27日判決言渡)判決控訴人(原審被告)X1控訴人(原審被告承継参加人)X2控訴人(原審被告承継参加人)X3控訴人(原審被告承継参加人)X4控訴人(原審被告承継参加人)X55名訴訟代理人弁護士大森鋼三郎,庄野功章被控訴人(原審原告)株式会社東北バイオマス技研(旧商号:株式会社シー・シー・ワイ)訴訟代理人弁護士柿崎喜世樹主文本件各控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 - 2 -第2事案の概要被控訴人は,原判決別紙出願目録記載の各特許出願に係る各発明(以下「本件各発明」という。)につき,これらに係る各特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」という。)を発明者から譲り受けた上,それぞれ特許出願をした者,控訴人X1(以下「控訴人X1」という。)は,特許庁長官に対し,上記各特許出願について,控訴人X1を本件特許を受ける権利の全部承継人とする出願人名義変更届を提出した者,控訴人X1を除くその余の控訴人4名(以下「控訴人X2ら」という。)は,控訴人X1を被告とする本件訴訟(東京地方裁判所平成18年(ワ)第126号)の提起後,特許庁長官に対し,上記各特許出願について,控訴人X2らを同権利の一部承継人とする出願人名義変更届を提出した者である。 本件は,被控訴人が,控訴人X1及び同控訴人の共同訴訟人として本件訴訟に参加 後,特許庁長官に対し,上記各特許出願について,控訴人X2らを同権利の一部承継人とする出願人名義変更届を提出した者である。 本件は,被控訴人が,控訴人X1及び同控訴人の共同訴訟人として本件訴訟に参加(同裁判所同年(ワ)第20971号)した控訴人X2らとの間で,被控訴人が本件特許を受ける権利を有することの確認を求める事案である。 本件の争点は,被控訴人から控訴人X1に対する本件特許を受ける権利の譲渡に係る合意の有無である。 原判決は,上記合意に係る権利譲渡証書(被控訴人の代表者印に基づいて顕出された印影が存在するもの)につき,いわゆる二段の推定を覆すに足りる反証があるなどとして,上記合意の事実を認めることはできないと判断し,被控訴人の請求はいずれも理由があるものとして,これを全部認容した。 前提となる事実等本件における前提となる事実等は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「第2事案の概要」の「1前提となる事実等」に摘示のとおりであるから,これを,ここに引用する。 (1)原判決2頁18行目の「争いがない事実」を「全当事者間に争いのない事実」と改め,20行目の「原告」の次に「(平成20年4月1日変更前の商号・株式会社シー・シー・ワイ)」を,22行目の「78」の次に「,193」をそれぞ- 3 -れ加える。 (2)原判決3頁2行目の「その後は」から3行目末尾までを「その後も,平成19年4月30日までは,被控訴人取締役の地位にあった(甲71,乙5,78,193)。」と,24行目の「同年9月22日」を「同年7月26日」とそれぞれ改める。 (3)原判決4頁14行目の「参加人」を「控訴人X2ら」と,16行目の「乙85~88」を「乙85,86,88」とそれぞれ改める。 争点及びこれについての当事者の主張本件の争点及びこれについての当事者 原判決4頁14行目の「参加人」を「控訴人X2ら」と,16行目の「乙85~88」を「乙85,86,88」とそれぞれ改める。 争点及びこれについての当事者の主張本件の争点及びこれについての当事者の主張は,次のとおり加除訂正し,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「第2事案の概要」の「2争点」及び「3争点についての当事者の主張」に摘示のとおりであるから,これを,ここに引用する。 (1)原判決4頁21行目の「被告の主張」を「控訴人らの主張」と改める。 (2)原判決7頁2行目の「,2」を削る。 (3)原判決8頁17行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「また,被控訴人は,甲68の通告書を根拠に,Aが同月24日の時点で真正代表者印を所持していなかった旨主張する。 しかしながら,Bの陳述書(乙132)によれば,同通告書は,責任の所在を明らかにするため,AとCとの合意の下に送付されたものである。また,被控訴人は,当時,Cが真正代表者印を所持していないことを知っていたのであるから,同通告書は,相手方を誤って送付されたものということになる。したがって,同通告書は,真正代表者印が返還されていたにもかかわらず,返還前に作成しておいたものを,そのまま発送したものにすぎず,同通告書をもって,真正代表者印が同月22日に返却されたとの事実が否定されるものではない。」(4)原判決9頁6行目の「原告が」の次に「その唯一の資産であった」を加え,- 4 -8行目の「しかしながら」を「確かに,本件特許を受ける権利が被控訴人の唯一の資産であったことは認めるが」と,16行目の「被告ら」を「控訴人X1及びその指示を受けた者」とそれぞれ改める。 当審における当事者の主張(控訴人らの主張)(1)平成16年9月24日の時点におけるA あったことは認めるが」と,16行目の「被告ら」を「控訴人X1及びその指示を受けた者」とそれぞれ改める。 当審における当事者の主張(控訴人らの主張)(1)平成16年9月24日の時点におけるAによる真正代表者印の所持Aが平成16年9月24日の時点において真正代表者印を所持していたことは,本件各約条書(乙19,20,57)及び本件約定書(乙23)が存在することからも明らかである。 (2)本件譲渡証書(乙3)が偽造されたものであるとの被控訴人の主張についてアDは,山形地方裁判所米沢支部平成18年(ワ)第60号事件及び同第66号事件(以下「別件訴訟」という。)の本人尋問において,被控訴人の実権を握った平成16年9月末の時点で真正代表者印等を専務のEにきちんと管理させた旨供述し,同年12月ころ,被控訴人の従業員において,勝手に真正代表者印を使用することが不可能であることを自認した(乙175)。 イ平成17年8月10日に開催された取締役会において承認する旨の議決がされた第9号議案は,本件各約条書に言及するものであるから(乙99),この時点において,既に本件各約条書が存在していたものである。 ウ被控訴人の後記主張(2)ウ(「本件譲渡証書に係る文書ファイルの作成時期」)に対し被控訴人の後記主張(2)ウの後段は否認する。 一般に,文書ファイルに記録された日時が真実のファイル作成日時を示すとは限らないものであるから,被控訴人主張に係る事実は,本件譲渡証書の作成時期が平成16年9月24日でないことを何ら根拠付けるものではない。 (3)本件譲渡合意の内容の合理性- 5 -アオーナー社長にとっては,会社の倒産は最も避けるべき事態であるから,倒産の危機に瀕した経営者がとる手段は,会社資産の切り売りである(会社が倒産すれば,本件特許を受ける権利 容の合理性- 5 -アオーナー社長にとっては,会社の倒産は最も避けるべき事態であるから,倒産の危機に瀕した経営者がとる手段は,会社資産の切り売りである(会社が倒産すれば,本件特許を受ける権利も,何ら価値のないものとなる。)。現に,Aは,かつて,本件特許を受ける権利を担保に供しようとしたことがあり(乙117),ダイニに対しては,実際に,本件特許を受ける権利を担保に供したものである。 イ本件譲渡合意の内容は,本件特許を受ける権利に係る特許権についての実施権を被控訴人にとどめるというものであり,被控訴人は,本件譲渡合意が存在しても,本件各発明を実施して事業を継続することができるのであるから,本件特許を受ける権利が被控訴人の唯一の資産であったことをもって,本件譲渡合意の内容の合理性を否定すべきではない。 ウ控訴人X1の果たした役割は,被控訴人の存続にとって不可欠なものであったにもかかわらず,控訴人X1が被控訴人から何ら対価を得ないというのは,著しく不合理である。 エ本件譲渡証書及び本件各約条書は,被控訴人の多数の株式を有する者により控訴人X1が被控訴人から排除されないための手段(保全のための手段)であるから,これらの書面に記載された控訴人X1が受ける利益(被控訴人が被る損失)が大きいのは当然である。 (4)本件譲渡合意を承認する取締役会決議の存在本件譲渡合意に先立つ平成16年9月12日,A,B及びG出席の上,被控訴人取締役会が開催され,被控訴人が控訴人X1との間で,本件譲渡合意をすること及び本件各約条書を取り交わすことをいずれも承認する旨の決議がされた(乙149)。 (被控訴人の主張)(1)控訴人らの主張(1)(「平成16年9月24日の時点におけるAによる真正代表者印の所持」)に対し控訴人らの主張(1)は否認する。 - 6 - 決議がされた(乙149)。 (被控訴人の主張)(1)控訴人らの主張(1)(「平成16年9月24日の時点におけるAによる真正代表者印の所持」)に対し控訴人らの主張(1)は否認する。 - 6 -本件各約条書の各被控訴人作成部分は,いずれも偽造されたものである。 (2)控訴人らの主張(2)(「本件譲渡証書(乙3)が偽造されたものであるとの被控訴人の主張について」)に対しア控訴人らの主張(2)アは否認する。 別件訴訟におけるDの供述中,「真正代表者印を代表取締役になった直後に預かった」とは,甲49(平成16年12月16日付け「預り確認書」)にいうところの「預かり」を指すものにすぎない。 イ控訴人らの主張(2)イは否認する。 平成17年8月10日の取締役会においては,第9号議案にいう「約定書」が示されたわけではないから,これが何を指すのかは明らかでないが,同議案においては「約定書」とされているのに対し,本件各約条書の表題は「約条書」とされているし,契約の相手方も,同議案においては「取締役」とされているのに対し,本件各約条書においては「代表取締役」とされている。 また,第9号議案の趣旨は,「同日の取締役会で決議されたことは,被控訴人と控訴人X1との約束に関わるものである」というものである。 ウ本件譲渡証書に係る文書ファイルの作成時期被控訴人側は,本件訴えを提起したころ,控訴人X1外を被疑者として,有印私文書偽造・同行使の被疑事実により告訴をしていたところ,警察当局は,原判決後の平成20年7月,Fがかつて所持していたフラッシュメモリーの分析を完了した。 これにより,Fが,本件譲渡証書に係る文書ファイルを平成17年10月26日に作成したこと,同ファイルが控訴人X1側のパソコンに保存されてきたことが判明した(甲114~121)。 (3)控訴人 た。 これにより,Fが,本件譲渡証書に係る文書ファイルを平成17年10月26日に作成したこと,同ファイルが控訴人X1側のパソコンに保存されてきたことが判明した(甲114~121)。 (3)控訴人らの主張(3)(「本件譲渡合意の内容の合理性」)に対しア控訴人らの主張(3)アの前段は否認する。 控訴人らの主張(3)アの前段が一般論として成り立つか否かは疑問である。 また,会社の存続のため,その資産を譲渡したり,これを担保として提供したり- 7 -するのであれば,それは,現に資金援助をした者(ダイニ又はD)に対して行うのが通常であるし,後者の場合は,書面にその旨記載するのが通常である。 イ控訴人らの主張(3)イは否認する。 ウ控訴人らの主張(3)ウは否認する。 本件譲渡証書及び本件各約条書の作成日付である平成16年9月21日の時点では,控訴人X1は,被控訴人の内部の者ではない。また,被控訴人の参与に報酬はない。 したがって,控訴人X1に報酬が支払われないことは,何ら不合理なことではない。 エ控訴人らの主張(3)エは否認する。 (4)控訴人らの主張(4)(「本件譲渡合意を承認する取締役会決議の存在」)に対し控訴人らの主張(4)は否認する。 控訴人らが主張する平成16年9月12日の取締役会が開催されたことはない。 また,乙149のA作成部分は,偽造されたものである。 第3当裁判所の判断 本件譲渡証書(乙3(甲11の2))の形式的証拠力について(1)本件譲渡証書(乙3(甲11の2(偽造文書として提出されたもの)。以下,甲11の2を併せて挙示することは省略する。))は,本訴において,写しが提出されたものであるが,甲11によれば,本件譲渡証書の原本は,特許庁長官に提出され,同庁において保管されているものと認められるから,当該原本が存在する ことは省略する。))は,本訴において,写しが提出されたものであるが,甲11によれば,本件譲渡証書の原本は,特許庁長官に提出され,同庁において保管されているものと認められるから,当該原本が存在することについては,これを認めることができる。 他方,本件譲渡証書の原本の成立についてみるに,本件譲渡証書に存在する被控訴人代表取締役A名下の印影が真正代表者印によって顕出されたものであることは,全当事者間に争いがないから,反証のない限り,当該印影は,Aの意思に基づいて- 8 -顕出されたものと事実上推定され,ひいて民事訴訟法228条4項の規定により,本件譲渡証書の原本は真正に成立したものと推定される。 そこで,以下,上記推定を覆すに足りる反証があるか否かについて検討する。 (2)平成16年9月下旬当時の真正代表者印の管理・保管の状況についてアAが平成16年9月21日の時点で真正代表者印を所持していなかった事実は,全当事者間に争いがない。 イ証拠(甲68,74,112,乙5,108(左上部の捨て印に係る印影部分,「㈱東北サンラト」との記載を抹消する二本線部分,当該二本線上に存在する訂正印に係る印影部分,「㈱シーシーワイ代表取締役会長」との手書き部分及び左下部の手書き部分を除く。),115,122,187,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア)平成16年7月26日,被控訴人取締役会が開催され,同日に被控訴人取締役に就任したCに対して真正代表者印の管理・保管を委ねることが決議された。 (イ)その後,C並びに同じく同月26日に被控訴人取締役に就任したB及びGの3名が話し合った結果,現実には,Bが真正代表者印を保管・管理することとなった。 (ウ)Aは,同年9月19日,Bの自宅を訪れ,真正代表者印の返還を求めたが,同人は, 訴人取締役に就任したB及びGの3名が話し合った結果,現実には,Bが真正代表者印を保管・管理することとなった。 (ウ)Aは,同年9月19日,Bの自宅を訪れ,真正代表者印の返還を求めたが,同人は,当時,真正代表者印を所持していなかった。 (エ)同月22日,被控訴人取締役会が開催され,A,D及びCの3名の取締役が出席した上,Dを代表取締役に選任する旨の決議がされたところ,同取締役会の議事録(乙122)のA名下(Aの記名の右側)には,真正代表者印でない被控訴人の代表者印(銀行届出印)によって顕出された印影が,当該印影の中央部には,「○」とのゴム印の印影が,同銀行届出印に係る印影の右横には,真正代表者印に消よって顕出された印影がそれぞれ存在する。 (オ)被控訴人は,同月23日,Bに対し,次の内容の同日付け「お願い」と題する書面(乙108(上記各部分を除く。))をファクシミリ送信した。 - 9 -「本日,貴殿に対して,弊社の代表印をCに代表印の係りを任せておりましたが,Cより貴殿にお預けしているとのことで,貴殿に対し,代表印の返却をお願いしましたが,その願いもかなえてもらうことができませんでした。よって弊社が支援いただく,株式会社ダイニ代表取締役に相談したところ,印鑑の返却がないままに弊社が借入している,白鷹建設㈱よりの借財の返済については,代表印の返却がないままでは,支援できないとのことであり,このままで行けば期日までの返済が出来なくなることであり,貴殿に対して申し訳ございませんが,白鷹建設社長にご連絡させていただき,返済遅れの理由を明確にさせていただき,返済期限の延長のお願いをさせていただきますので,宜しくお願い申し上げます。 尚,FAXの内容を査収いただきましたら,連絡いただけるのであれば,当社のH・・・までご連絡いただければ幸せと存じ ただき,返済期限の延長のお願いをさせていただきますので,宜しくお願い申し上げます。 尚,FAXの内容を査収いただきましたら,連絡いただけるのであれば,当社のH・・・までご連絡いただければ幸せと存じます。」(カ)被控訴人は,翌24日,Cに対し,次の内容の本件通告書(甲68)を書留内容証明郵便物として差し出した。なお,本件通告書のA名下には,被控訴人の銀行届出印によって顕出された印影が存在する。 「平成十六年七月二六日弊社代表取締役会議において,弊社代表印鑑の管理を貴殿に委ねましたが,貴殿に代表印鑑の返却を求めたところ,弊社代表取締役Aの承諾も得ず,第三者に弊社代表印鑑を預けたことは真に遺憾であり,この通告書到着後三日以内に弊社に返却なき場合には,被害届等の法的手続きの処置をすることを通告いたします。尚,貴殿責任において管理することになった平成十六年七月二六日以降に弊社代表印鑑を使用したことについて弊社は一切の責任は負わない事も通告致します。」(キ)Aは,同年9月28日,Dの被控訴人代表取締役への就任登記手続に用いられる登記委任状(甲74)に真正代表者印を押捺し,同日,同登記がされた。なお,同登記委任状の右上余白及びA名下(Aの記名の右側)には,いずれも,被控訴人の銀行届出印によって顕出された各印影が,当該各印影の各中央上部には,いずれも,「○」とのゴム印の印影が,A名下の同銀行届出印に係る印影の右横には,消真正代表者印によって顕出された印影がそれぞれ存在する。 ウ以上の事実によれば,Aは,平成16年7月下旬ころから少なくとも同年9- 10 -月24日までは,真正代表者印を自ら管理・保管していない状態にあったものと認められる。 そして,かかる事実は,控訴人らが,本件譲渡証書の原本につき,平成16年9月24日の午前中にA自身が真正代 -月24日までは,真正代表者印を自ら管理・保管していない状態にあったものと認められる。 そして,かかる事実は,控訴人らが,本件譲渡証書の原本につき,平成16年9月24日の午前中にA自身が真正代表者印を押捺して作成した旨明確に主張し,控訴人X1も,別件訴訟の本人尋問(乙191)において,これに沿う供述をしていることに照らせば,実際に,本件譲渡証書の原本が,いつ,誰により,いかなる方法で作成されたかなどの如何を問わず,本件譲渡証書の原本がAの意思に基づいて作成されたものではないとの事実を認めるに十分であるというべきである。 エ(ア)控訴人らは,Gが平成16年9月22日ころに真正代表者印をAに返還した旨主張するが,そうであれば,前記イ(エ)及び(キ)のように,同月22日の取締役会議事録やDの代表取締役就任登記手続に係る登記委任状に,後に抹消されることとなる被控訴人の銀行届出印がわざわざ押捺されているのは極めて不自然であるといわざるを得ないから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (イ)控訴人らは,本件通告書に関し,「同通告書は,責任の所在を明らかにするため,AとCとの合意の下に送付されたものであるし,また,同通告書は,相手方を誤って送付されたものである。したがって,同通告書は,真正代表者印が返還されていたにもかかわらず,返還前に作成しておいたものを,そのまま発送したものにすぎない」旨主張する。 しかしながら,AとCとの間に,控訴人らが主張するような合意があったものと認めるに足りる確たる証拠はないし,本件通告書の宛先(相手方)に関しても,同通告書の内容(前記イ(カ))は,Cが真正代表者印を第三者に預けたことを前提にしつつ,取締役会決議により真正代表者印の管理につき第一次的な責任を負うこととなったCに対してその返還を求めるものであ 同通告書の内容(前記イ(カ))は,Cが真正代表者印を第三者に預けたことを前提にしつつ,取締役会決議により真正代表者印の管理につき第一次的な責任を負うこととなったCに対してその返還を求めるものであるから,何ら不自然なものとはいえない。したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (ウ)控訴人らは,前記イ(オ)の平成16年9月23日付け「お願い」と題する書面(以下「乙108書面」という。)に真正代表者印が押捺されているのであるか- 11 -ら,Aは,同月24日の時点で真正代表者印を所持していたと主張する。 確かに,乙108書面に顕出された捨て印及び訂正印に係る各印影(いずれも写し)が真正代表者印によって顕出されたものであることは,全当事者間に争いがない。そして,上記各印影が被控訴人代表者の意思に基づいて顕出されたとの事実上の推定を覆すに足りる反証はないから,上記各印影は,被控訴人代表者の意思に基づいて顕出されたものと認められる。 しかしながら,乙108書面の内容(前記イ(オ))は,Bに対し,「Bから真正代表者印の返却を受けていないため,ダイニの支援を受けることができず,白鷹建設株式会社に対する借入金の返済ができない。ついては,同社社長に対し,返済が遅れる理由を明確にさせてもらう」旨を告知するものであり,そのような内容の書面に,文書の作成日であり,かつ,ファクシミリ送信の日である平成16年9月23日の時点で真正代表者印が押捺されているとすれば,書面の趣旨として重大な矛盾が生じてしまうことになるから,そのような事態はおよそ考え難いし(なお,Bは,別件訴訟における証人尋問(乙176)において,「乙108書面を見たことがある。私の事務所にファクシミリで届いた。これを見て,私は,Hに,口頭で,真正代表者印はGに返したと回答した」旨供述 ,Bは,別件訴訟における証人尋問(乙176)において,「乙108書面を見たことがある。私の事務所にファクシミリで届いた。これを見て,私は,Hに,口頭で,真正代表者印はGに返したと回答した」旨供述している(「乙108書面に真正代表者印が押捺されているのでおかしいと思った」などとは供述していない)ところ,乙108書面のファクシミリ送信を受けたBのかかる対応は,乙108書面の内容に応じたものとして自然なものである。),また,上記各印影(乙108書面と同一の書面である乙182の2枚目に顕出されたもの(いずれも写し)も含む。)には,ファクシミリ送信された文書に通常みられ,乙108書面及び乙182の2枚目の各印刷文字部分にもみられる字画の混同(例えば,宛名欄の「清」の字,本文の「鷹」の字など)等がさほどみられず,微細部分を多数含む印影にしては,通常の写しと同程度に鮮明に顕出されているものと認められるのであるから,上記捨て印及び訂正印は,乙108書面の作成・送信の後,押捺されたものと認めるのが相当である。したがって,乙108書面をもって,Aが平成16年9月24日の時点- 12 -で真正代表者印を所持していたとの控訴人らの上記主張は,これを採用することができない。 (エ)控訴人らは,Aが平成16年9月24日の時点において真正代表者印を所持していたことは,本件各約条書(乙19,20,57)が存在することからも明らかであると主張する。 本件各約条書の各被控訴人代表取締役A名下の各印影がいずれも真正代表者印によって顕出されたことは全当事者間に争いがない。 しかしながら,控訴人らは,本件各約条書の各被控訴人作成部分につき,同月24日の午前中に(すなわち,Aが本件譲渡証書の原本に真正代表者印を押捺して作成した日時として控訴人らが主張する日時と同じ日時に), しながら,控訴人らは,本件各約条書の各被控訴人作成部分につき,同月24日の午前中に(すなわち,Aが本件譲渡証書の原本に真正代表者印を押捺して作成した日時として控訴人らが主張する日時と同じ日時に),A自身が真正代表者印を押捺して作成した旨主張し,控訴人X1は,別件訴訟の本人尋問(乙191)において,この主張に沿うほか,Aが本件各約条書に真正代表社印を押捺した場所も本件譲渡証書の原本にその押捺をした場所と同一である旨の供述をしているのであるから,控訴人らの主張及び控訴人X1の供述を前提とすれば,要するに,本件譲渡証書の原本と本件各約条書の各被控訴人作成部分は,同一の機会にAが真正代表者印を押捺して作成したものということになる。そうとすれば,本件各約条書の各被控訴人作成部分の成立の真正についての判断(すなわち,A名下の各印影が真正代表者印によるものであることによって,それがAの意思に基づいて顕出されたと推定され,ひいて本件各約条書の各被控訴人作成部分が真正に成立したものと推定されるか,いずれかの推定を覆すに足りる反証が存在するかという判断であり,本件譲渡証書の場合と同様,詰まるところは,同月24日にAが真正代表者印を自ら管理・保管していたか否かという判断に帰着する。)に関わる事情は,本件譲渡証書の成立の真正についての判断に関わる事情と全く同じであるというべきであるから,本件各約条書の存在をもって,Aが同月24日に真正代表者印を自ら所持していたことの証左であるとする控訴人らの主張は,同語反復というに相等しいものであって,失当といわざるを得ない。 - 13 -(オ)控訴人らは,Aが平成16年9月24日の時点において真正代表者印を所持していたことは,本件約定書(乙23)が存在することからも明らかであると主張する。 確かに,本件約定書の被控訴人 13 -(オ)控訴人らは,Aが平成16年9月24日の時点において真正代表者印を所持していたことは,本件約定書(乙23)が存在することからも明らかであると主張する。 確かに,本件約定書の被控訴人代表取締役A名下に真正代表者印が押捺されていることについては,被控訴人もこれを争うものではなく,また,本件約定書の作成日付は,平成16年9月24日とされている。 しかしながら,本件約定書に記載された内容は,下記のとおりである。 「この度,株式会社シー・シー・ワイの事業推進についての貴殿の取りまとめ,御尽力により平成16年9月24日付より株式会社ダイニ代表取締役D氏が弊社の代表取締役に就任申請手続きを完了させていただきました事はひとえに貴殿の御尽力の賜ものであり,心より感謝申し上げますとともに,下記の事項を約します。 記1,貴殿より弊社の取締役就任の要求された場合の件1,貴殿より推薦要求人物(若干名)の弊社取締役就任の件以上の事項について,期日を問わず私儀の全責任において対応し,とりきめの完了を約します。」上記記載中には,「平成16年9月24日付より株式会社ダイニ代表取締役D氏が弊社の代表取締役に就任申請手続きを完了させていただきました」との文言があるが,被控訴人の取締役会においてDが代表取締役に選任されたのは同月22日であって(乙5,122),同月24日ではないこと,及び上記文言中の「就任申請手続き」との語句に照らせば,上記記載中の「代表取締役に就任申請手続きを完了」したこととは,Dについての代表取締役就任登記の申請手続が完了したことを意味するものと解するのが自然であり,他方,同月23日が祝日であったことを併せ考えると,Aは,当初,上記登記申請手続を同月24日(金曜日)に行うことを予定し,それに合わせて本件約定書の文面を起案し,作成日付も同月 解するのが自然であり,他方,同月23日が祝日であったことを併せ考えると,Aは,当初,上記登記申請手続を同月24日(金曜日)に行うことを予定し,それに合わせて本件約定書の文面を起案し,作成日付も同月24日としたが,同日に上記登記申請手続をすることができない事情が出来し,結局,上記登記- 14 -申請手続は同月28日(乙5)までずれ込んだことが推認される。そして,同月24日に上記登記申請手続をすることができなかった事情とは,上記イ(キ)のとおり,同登記申請手続に係る登記委任状(甲74)のA名下に被控訴人の銀行届出印が一旦押捺された上で抹消され,その右横に真正代表者印が押捺されていることに照らして,同月24日までにAが真正代表者印の返還を受けることができなかったことであることは明らかである。そうすると,本件約定書に真正代表者印が押捺されて,それが完成したのも,少なくとも同月24日より後である(「代表取締役に就任申請手続きを完了」という文言との平仄を考慮すれば,同月28日以降である)ものというべきであるから,本件約定書の存在を根拠として,同月24日の時点でAが真正代表者印を所持していたとする控訴人らの主張は失当であり,採用することができない。 (3)本件譲渡証書及び本件各約条書の記載内容の合理性について上記(2)のとおり,本件譲渡証書の作成経過,特にその作成日に関する控訴人らの主張及び控訴人X1の別件訴訟における供述を前提とすれば,Aが,平成16年7月下旬ころから少なくとも同年9月24日までは,真正代表者印を自ら管理・保管していない状態にあったとの事実が認められる本件においては,本件譲渡証書の原本がAの意思に基づいて作成されたものではないとの事実を認めるに十分である(前記(1)のいわゆる二段の推定を覆すに足りる反証がある)というべきである の事実が認められる本件においては,本件譲渡証書の原本がAの意思に基づいて作成されたものではないとの事実を認めるに十分である(前記(1)のいわゆる二段の推定を覆すに足りる反証がある)というべきであるが,念のため,以下,本件譲渡証書の記載内容の合理性についても検討を加えることとする。なお,上記(2)エ(エ)のとおり,控訴人らの主張及び控訴人X1の供述を前提とすれば,本件譲渡証書の原本と本件各約条書(いずれも原本)の各被控訴人作成部分とは同一の機会に作成された(Aが同一の機会に真正代表者印を押捺した)ということになるのであるから,本件譲渡証書の記載内容の合理性を検討するに当たっては,本件各約条書(これらのうち,平成16年9月21日付け「約条書(1)」と題する書面(乙19。以下「本件約条書(1)」という。)を除くその余の書面2通に,控訴人X1外の利益となる約束が記載されている。)の記載内容の合理性と- 15 -併せて検討するのが相当である。 ア認定事実第2の1の「前提となる事実等」に証拠(甲1~10,28~30,60~63,71,82,86~92,97,110の1及び2,113,乙1,5,7,8,11~17,25,26,28~32,34~37,42~47,59,66~68,78,79,99,107,109,115,122,132,133の1及び2,150~152,154~157,163,170,175,176,180,187,190,191,194,証人A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (ア)Aは,平成14年,勤務していた銀行を退職した後,同年7月15日,山形県米沢市に本店を置き,農産物,食品廃棄物等を原材料とする乳酸及び乳酸エチルの精製・販売等を目的とする被控訴人を設立し,その代表取締役に就任した。被控訴人 いた銀行を退職した後,同年7月15日,山形県米沢市に本店を置き,農産物,食品廃棄物等を原材料とする乳酸及び乳酸エチルの精製・販売等を目的とする被控訴人を設立し,その代表取締役に就任した。被控訴人の設立当初,資本の額は,1000万円であり,株主構成は,A(500株)外4名(合計500株)であった。 被控訴人が進めようとしていた事業は,バイオマス(農産物,食品廃棄物等の生物由来資源)の利活用に係る技術,具体的には,農産物(主として政府備蓄米)を原料として精製された発酵乳酸から生分解性プラスチックを製造する技術の実用化に向けた研究開発を行うというもの(以下「本件事業」という。)である。 (イ)被控訴人は,設立当初から資金的に脆弱な面があり,遅くとも平成15年初めころからは,将来の新株発行時の払込金に充てるとの名目で出資を募るようになり,その一環として,同年1月21日には,Cから100万円(100株分)を預かった。 (ウ)農林水産省(以下「農水省」という。)は,同年4月1日,前年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき,「バイオマス利活用フロンティア推進事業等実施要綱」及び「バイオマス利活用フロンティア推進事業等実施要領」を定め,バイオマスの利活用の推進を支援する政策を打ち出した。 - 16 -(エ)被控訴人は,平成15年4月10日,大木建設株式会社に対し,実証プラントの設計・建設工事を発注した(ただし,平成16年6月の段階で,建設工事を中止せざるを得ない状況となり,被控訴人は,大木建設株式会社が先行して進めていた設計業務につき,清算金の支払義務を負うこととなった。)。 (オ)他方,被控訴人は,Iを中心として本件事業に係る研究を進め,I及びAは,遅くとも平成15年夏ころまでには,本件各発明を完成させた。また,被控訴 つき,清算金の支払義務を負うこととなった。)。 (オ)他方,被控訴人は,Iを中心として本件事業に係る研究を進め,I及びAは,遅くとも平成15年夏ころまでには,本件各発明を完成させた。また,被控訴人は,同年6月からは,「農産物の効率的な乳酸発酵の手法開発」との課題で,Sとの共同研究を開始した。なお,Iは,同年5月,被控訴人の技術開発部長に就任し,同年7月31日には,Jから被控訴人の株式100株を譲り受け,同年10月10日には,被控訴人の取締役に就任した。 本件各発明の概要は,次のとおりである。 a原判決別紙出願目録記載1の特許出願に係るものサツマイモ,カボチャその他の農作物の乳酸発酵のための前処理方法及び当該方法を利用した乳酸製造方法に関するものであり,カボチャから精製される乳酸に対する特徴付けを目的とするものである。 b同目録記載4の特許出願に係るもの食品廃棄物である酒粕(乳酸菌育成因子が含まれている。)又はオカラ(菌体育成のための窒素供給源になる。)を栄養剤として利用した乳酸発酵又は乳酸菌生育のための培地を作る方法に関するものであり,乳酸の生産コストの低減と食品リサイクルを目的とするものである。 c同目録記載5の特許出願に係るもの酒粕を濃縮・精製して製造する乳酸菌の生育促進添加剤及びその製造方法に関するものである。 d同目録記載3の特許出願に係るもの米又はでんぷん質と糖質を含む農作物を主な原料として,発酵カスを廃棄することなく乳酸エチルを製造する方法に関するものであり,自己完結型循環型の乳酸エ- 17 -チル製造方法を提供するものである。 e同目録記載2の特許出願に係るもの全国の乳酸誘導体製造工場を束ねてポリ乳酸大工場に生産を集中する生産支援システムをITを用いたビジネスモデルとして提供するものであり,本件事業の将来構 である。 e同目録記載2の特許出願に係るもの全国の乳酸誘導体製造工場を束ねてポリ乳酸大工場に生産を集中する生産支援システムをITを用いたビジネスモデルとして提供するものであり,本件事業の将来構想となるビジネスモデルに係るものである。 (カ)被控訴人は,同年8月,A及びIから,本件特許を受ける権利を譲り受けた上,同月8日,原判決別紙出願目録記載1の特許出願をし,同年11月には,同目録記載2ないし5の各特許出願をした。 (キ)被控訴人の事業年度は,毎年9月1日から翌年の8月31日までであるが,平成15年8月31日現在の財務状況は次のとおりであった。 a貸借対照表(a)資産合計290万8064円(b)負債合計1110万7990円(c)資本欠損819万9926円b損益計算書(a)営業損失1707万0634円(全て販管費分である。)(b)経常損失1742万0175円(c)当期未処理損失1819万9926円このように,被控訴人は,いまだ資金的に極めて厳しい状況にあり,本件事業を進める上で,外部からの借入れに大きく依存しなければならなかった。そのような中,Aは,同年9月29日,株式会社東北サンライトの代表者を務めていたBから,1000万円を借り入れた。 (ク)被控訴人は,K(以下「K」という。)及びL(以下「L」という。)の各研究室とともに,平成16年4月,農水省に対し,「『バイオマス生活創造構想』に係る研究課題応募」として,「バイオマスプラスチック製造コスト低減に向けた技術開発」と題する研究課題を提出した。 - 18 -これに対し,農水省は,同年5月,提出された上記研究課題を「バイオマス生活創造構想事業に係る技術開発における平成16年度研究課題」として内定し,Sに対し,平成16年度分として2300万円を配 8 -これに対し,農水省は,同年5月,提出された上記研究課題を「バイオマス生活創造構想事業に係る技術開発における平成16年度研究課題」として内定し,Sに対し,平成16年度分として2300万円を配分することとした。うち,被控訴人への再配分額は,500万円であった。 被控訴人従業員Nは,同年6月9日,山形県の担当者とともに農水省を訪れ,上記内定に伴う提出書類を提出するとともに,農水省の担当者らと,今後の手続等について打合せをした。 農水省は,同月24日,「バイオマスプラスチック製造コスト低減に向けた技術開発事業」を,山形グループ(S及び被控訴人)外2グループを事業実施主体として実施する旨のプレスリリースを発し,翌25日には,その旨の新聞報道がされた。 (ケ)しかしながら,このころ,被控訴人は,経営的に行き詰まった状態にあったため,会社の立て直しを図るべく,同年7月7日,取締役,本件事業の関係者らが集まり,①A及びIが出席した臨時取締役会,②A及びIのほか,新取締役候補であるB,G(同人は,同年6月30日に大木建設株式会社を退職した。)らや,大木建設株式会社の代表者ら合計8名が出席した事業説明会,③A,I,B,G,C(新取締役候補)ら合計6名が出席した会議がそれぞれ開かれた。 これらの会議において,Iは,Aの経営手腕等を厳しく批判し,代表取締役としてAが再任されることのみならず,取締役として同人が再任されることにも反対した。 また,同年7月15日には,A及びIがSを訪れ,K及びLと話合いをしたが,席上,Kは,被控訴人に研究資金がないことなどを挙げて被控訴人の経営の在り方につきAを叱責し,同人に対し,農水省からの補助金を受けるためには,代表取締役を辞任し,自己資金1億1000万円(総事業費から補助金分を控除した残額)を準備することなどを申し渡 控訴人の経営の在り方につきAを叱責し,同人に対し,農水省からの補助金を受けるためには,代表取締役を辞任し,自己資金1億1000万円(総事業費から補助金分を控除した残額)を準備することなどを申し渡した。 (コ)Iは,同月20日,Aに対し,これまで自己が立て替えて支払った被控訴人の費用99万円を同年8月20日までに支払うよう請求し,次いで,同年7月2- 19 -4日,Aに対し,取締役辞任届を提出するとともに(なお,辞任登記がされたのは,同年9月28日である。),上記99万円のほか,将来の新株発行の払込金として預託した100万円及び経営支援金として支出した150万円の返還を求めた。 また,被控訴人の従業員のN及びMは,同年7月21日,Aに対し,賃金の遅配等を理由として同年8月3日付けで退職する旨の退職願を提出した。 (サ)同年7月26日,B,G及びCは,被控訴人の取締役に就任した。 (シ)被控訴人は,同月28日,米沢労働基準監督署労働基準監督官から,Iにつき平成15年5月1日から平成16年6月30日までの賃金不足分として約320万円,N及びMにつき平成15年4月1日から平成16年2月29日まで及び同年5月1日から同年6月30日までの賃金不足分としてそれぞれ約140万円及び約50万円を平成16年8月31日までに支払うよう是正勧告を受けた。 被控訴人は,同年8月10日,同労働基準監督署長に対し,上記のうち,N分について是正した旨の是正報告書を提出したが,同日,同年7月28日付けで,同労働基準監督署労働基準監督官から,上記I分(ただし,金額は,約200万円である。)及びM分を同年8月31日までに支払うよう是正勧告を受けた。 (ス)被控訴人の同年8月31日現在の財務状況は,次のとおりであった。 a貸借対照表(a)資産合計679万3489円 円である。)及びM分を同年8月31日までに支払うよう是正勧告を受けた。 (ス)被控訴人の同年8月31日現在の財務状況は,次のとおりであった。 a貸借対照表(a)資産合計679万3489円(b)負債合計3458万5826円(c)資本欠損2779万2337円なお,このころ,実際上,被控訴人が有する見るべき資産は,本件特許を受ける権利のみであった。 b損益計算書(a)営業損失2197万3315円(全て販管費分である。)(b)経常損失1952万2441円(c)当期未処理損失3779万2337円- 20 -(セ)Aは,同年6月ころ,Bを介して控訴人X1を知るようになったところ,上記のとおり財務状況が切迫した中,同年8月下旬ころ,控訴人X1に対し,同月末日に要する資金として1000万円の支援を依頼した。 控訴人X1は,自ら支援する資力を有していなかったことから,旧知のDに対し,本件事業の将来性や返済の見通し(「16農会第864号」文書(甲92)に係る農水省からSに対する委託費2550万円)などを説明して説得したところ,Dは,控訴人X1が連帯保証人となることなどを条件に,これを承諾した。 これを受け,Dが経営するダイニは,被控訴人に対し,同月31日,同年9月30日に元利金1100万円を返済するとの約定で,1000万円を貸し付け,Aはこれを保証し,控訴人X1はこれを連帯保証した。なお,同貸付けに係る借用書(乙16の1)には,特約事項として,下記記載がある(ただし,「別紙」の添付はない。)。 「保証人Aが取得する50%別紙特許願2003-391348を借用人に対し,担保提供する事とし,返済期日までに返済出来なかった場合,貸付人にその権利を移行することに承諾します。」また,上記貸付けがされた同年8月31日,被控訴人( 許願2003-391348を借用人に対し,担保提供する事とし,返済期日までに返済出来なかった場合,貸付人にその権利を移行することに承諾します。」また,上記貸付けがされた同年8月31日,被控訴人(甲),ダイニ(乙)及び控訴人X1(丙)は,次の内容の合意書(乙66)を取り交わした。 「1,甲は,平成16年9月1日より,乙の指定する人を甲の会社の代表権登記の手続きを早急に完了すること。 1,甲は,甲の会社を将来,資本増資の際は,乙が全体資本の30%,丙は同じく15%を取得するものとする。 1,甲は,甲の会社にて事業に伴うガス・燃料等の使用については乙の会社より双方,単価協議の上,納入すること。 1,甲は,甲の会社の事業において,第三者会社と提携することにおいても,第三者会社に乙の会社のガス・燃料等を納入することの条件を提示し,契約締結することとする。 1,甲は,平成17年以降に社員の雇用について,乙・丙の推薦する人を若干名必要に応じて- 21 -雇用するものとする。」(ソ)しかしながら,Aは,平成16年9月30日までに上記借入金1000万円及び利息100万円を返済する見通しが立たなかったことから,同月半ばないし下旬ころ,控訴人X1に対し,返済期日の延期の交渉及び被控訴人の立て直しを依頼した。 同月22日,Dは,被控訴人の取締役に就任し,他方,B及びGは,同日,取締役を辞任したものとされた。そして,同日,A,D及びCが出席した上,被控訴人の取締役会が開催され,Dが代表取締役に選任された(就任登記がされたのは,同月28日である。)。 同月30日,ダイニは,被控訴人に対し,上記借入金(元利金1100万円)の返済を同年10月31日まで猶予した。また,ダイニは,これと同時に,被控訴人に対し,同年10月31日を返済期日として,300万円を貸し付け,Aは は,被控訴人に対し,上記借入金(元利金1100万円)の返済を同年10月31日まで猶予した。また,ダイニは,これと同時に,被控訴人に対し,同年10月31日を返済期日として,300万円を貸し付け,Aはこれを保証し,控訴人X1はこれを連帯保証した。 なお,上記弁済猶予に係る「借用書」(乙16の2)及び上記300万円の貸付けに係る「借用書」(乙79)には,いずれも,特約事項として,下記記載がある(ただし,「別紙特願2003-391348」の添付はない。)「保証人Aが取得する50%(別紙特願2003-391348)を借用人に対し,担保提供する事とし,返済期日までに返済できなかった場合は貸付人にその権利を移行することに承諾します。 (なお,別紙“16農会第864号”に係る委託費入金後)」また,上記弁済猶予等がされた同年9月30日,控訴人X1も,Aに対し,同年10月31日を返済期日として,300万円を貸し付け,Aは,控訴人X1に対し,自己の有する被控訴人の株式(500株)を担保として提供した。なお,Aは,結局,返済期日までに返済することができなかったため,同年10月31日,控訴人X1に対し,上記株式を控訴人X1名義とすることなどを承諾する旨の承諾書を差し入れた。 - 22 -(タ)同年10月12日,控訴人X1は,ダイニの参与として,I,ダイニ常務取締役のE(以下「E」という。),被控訴人営業企画部長のHとともに,農水省を訪れ,Iにおいて,ダイニが被控訴人に対し資金的な支援を行うことになった旨を,控訴人X1において,ダイニの立場等をそれぞれ説明するなどし,農水省側の理解を得た。 翌13日,上記4名にDを加えた5名が面談し,控訴人X1は,今後の作業等について説明するとともに,Iに対し協力を求めるなどした。 同月15日,控訴人X1,D,H及びIは,Kと 農水省側の理解を得た。 翌13日,上記4名にDを加えた5名が面談し,控訴人X1は,今後の作業等について説明するとともに,Iに対し協力を求めるなどした。 同月15日,控訴人X1,D,H及びIは,Kと面談し,控訴人X1は,これまでの被控訴人における問題を解決しつつ,早急に各所との関係改善に向けて動く意向であることなどを説明し,Dも,被控訴人の本件事業に協力していく旨を述べ,Lの理解を得た。 控訴人X1は,同月20日,Iが経営するAZコンサルテーション有限会社と被控訴人との間に,被控訴人が農水省,山形県等に対して提出すべきバイオマス利用推進事業に係る申請書類等の作成事務をAZコンサルテーション有限会社に依頼するに当たっての覚書を取り交わさせるとともに,同月25日には,Iと被控訴人との間に,技術顧問契約を締結させた。 同日,控訴人X1,E,H及びIは,山形県の担当者と面談し,これからの被控訴人の新しい組織の在り方,事業への姿勢等について説明した。 被控訴人は,同月27日,Tに対し,研究題目を「バイオマスプラスチックの製造コスト低減のためのプロセス研究開発」とする共同研究申込書を提出し,同学部長は,翌28日,この共同研究を承認し,次いで,同年11月1日,Sと被控訴人との間に,共同研究契約が締結された。 (チ)同月17日,被控訴人の定款が改正され,被控訴人の取締役会の決議により参与(取締役会に出席することを要し,意見を述べることができるが,議決権を有しない役職)を置くこととされた。そして,同日,被控訴人の取締役会が開催され,控訴人X1が参与に選任された(なお,控訴人X1は,対外的には,「S・共- 23 -同研究開発業務・企画・営業対外交渉総括代表取締役付参与」との肩書を使用した。)。 また,同日,E,O,H,P及びQが被控訴人の取締役に就任し お,控訴人X1は,対外的には,「S・共- 23 -同研究開発業務・企画・営業対外交渉総括代表取締役付参与」との肩書を使用した。)。 また,同日,E,O,H,P及びQが被控訴人の取締役に就任した。従前取締役であったCは,同月10日付けで辞任していたため,同月17日現在の被控訴人の取締役は,D,A,E,O,H,P及びQの合計7名となった。 さらに,同日の取締役会において,新株発行を承認する旨の決議がされ,同年12月1日,2000株の新株が発行された。これにより,被控訴人の株主構成(発行済株式総数・3000株)は,ダイニ(1500株),A(500株),O(400株),Q(200株),控訴人X2(150株),I(100株)並びにH,P及びF(各50株)となった。 (ツ)控訴人X1は,平成17年3月4日,後に被控訴人との間で実証プラントに係る電気計装工事請負契約を締結することとなる東北電化工業株式会社と被控訴人との間に,秘密保持契約を締結させ,その他,後に被控訴人との間でプラント建設工事請負契約を締結することとなる株式会社庄司製作所と被控訴人との間にも,秘密保持契約を締結させた。 (テ)農水省は,同年4月7日,「バイオマス生活創造構想整備事業実施要綱」を定めた。 これを受けて,被控訴人は,同月15日,米沢市長及び山形県知事を経由して農水省に対し,「平成17年度バイオマス生活創造構想整備事業の事業実施採択申請書」を提出した。 (ト)控訴人X1は,同月14日,被控訴人と株式会社庄司製作所との間に,後に正式に締結することとなるプラント建設工事請負契約に係る覚書を取り交わさせた。 (ナ)農水省は,同年7月11日,被控訴人が提出した上記(テ)の採択申請を採択し,山形県知事に対し,補助金1億1000万円の割当の内示をした。米沢市長は,同日,被控 に係る覚書を取り交わさせた。 (ナ)農水省は,同年7月11日,被控訴人が提出した上記(テ)の採択申請を採択し,山形県知事に対し,補助金1億1000万円の割当の内示をした。米沢市長は,同日,被控訴人に対し,上記採択の事実及び山形グループの総事業費が2億200- 24 -0万円であることを通知した。 (ニ)被控訴人は,株式会社庄司製作所との間で,同月26日,乳酸誘導体の発酵製造実証プラントの建設請負工事契約(請負代金額・1億8994万5000円)を締結し,次いで,同月28日,東北電化工業株式会社との間で,上記プラントに係る電気計装工事請負契約(請負代金額・2265万5000円)を締結した。 (ヌ)ところが,このころ,被控訴人内部において,控訴人X1とD及びEとが対立するようになった。 そして,かかる対立を背景として,Qを除く6名の取締役(D,E,A,O,H及びP)が出席して開催された平成17年8月10日の取締役会において,①控訴人X1に従前どおりの任務・権限を与えること,②控訴人X1に取締役会招集請求権を与えること,③控訴人X1と執行者側との間に意思の相違等が発生し,協議により解決することができないときは,取締役会を開催して処理すること,④控訴人X1から委任状の交付要請があったときは,取締役会を開催して審議した上交付すること,⑤Aの有する株式500株及びQの有する株式200株を控訴人X1に譲渡すること,⑥控訴人X1が経営するクリエーティブジャパンに1000株の新株予約権を無償で付与することなどの各議案が,D及びEを除く4取締役の賛成により,可決・承認されたものの,同年9月3日には,D,E及びOの3名の取締役が出席して開催された取締役会(H及びPは,同年8月31日付けで取締役を辞任したものとされたため,取締役の数は,上記3名にA及びQ 可決・承認されたものの,同年9月3日には,D,E及びOの3名の取締役が出席して開催された取締役会(H及びPは,同年8月31日付けで取締役を辞任したものとされたため,取締役の数は,上記3名にA及びQを加えた5名であった。)において,上記平成17年8月10日の取締役会において可決・承認された上記各議案のうち,株式譲渡承認案を除くその余の議案に係る各決議をいずれも取り消す旨の決議が,D及びEの賛成により可決・承認された。 次いで,同年9月26日,D外3名の取締役が出席して開催された被控訴人の取締役会において,控訴人X1を参与から解任する旨の決議がされ,被控訴人は,同月29日付けで,控訴人X1に対し,その旨の通知をした。 (ネ)控訴人X1は,同年10月27日,本件名義変更届出をした。 - 25 -(ノ)なお,「平成17年度バイオマス生活創造構想整備事業」に係る補助金については,平成18年3月9日にその交付決定がされ,同年4月28日,被控訴人の銀行預金口座に,1億1000万円が振込送金された。 イ本件譲渡証書及び本件各約条書の記載内容(ア)本件譲渡証書(乙3)「株式会社シー・シー・ワイ代表取締役Aが,下記の特許出願済の特許出願人権利者である当社全ての権利譲渡した事に相違ありません。 但し,特許使用に関しては,全て双方協議合意の上に当社に使用を認める事とする。 ※今後当社が事業を営んでいる間,あらたに特許出願申請する特許出願人権利全ての権利を譲渡する。 記譲渡内訳(省略。判決注:原判決別紙出願目録記載の各特許出願が特定されている。)」(イ)本件約条書(1)(乙19)「・・・X1(甲と言う)・・・株式会社シー・シー・ワイ代表取締役A(乙と言う)は,甲に乙が事業運営推進する事においてのとりまとめを依頼するに当り,下記の条項を締結した。 記 条書(1)(乙19)「・・・X1(甲と言う)・・・株式会社シー・シー・ワイ代表取締役A(乙と言う)は,甲に乙が事業運営推進する事においてのとりまとめを依頼するに当り,下記の条項を締結した。 記1,甲は乙が事業運営推進するに当り事業資金調達,又他企業の事業参加等のとりまとめをする事(他企業資本参加等の場合は会社登記簿に取締役就任にて可)2,Iの乙に対しての協力をとりつける事(契約書にて可)3,Sの乙に対しての協力をとりつける事(契約書にて可)4,甲は乙が事業運営推進している事にて,農林水産省総合食料局長より,山形県・米沢市を通して乙が補助金交付申請書提出している事のとりまとめをする事(採択通知をもって可)」(ウ)平成16年9月21日付け「約条書(2)」と題する書面(乙20。以下「本件約条書(2)」という。)- 26 -「・・・X1(甲と言う)・・・株式会社シー・シー・ワイ代表取締役A(乙と言う)は別紙約条書(1)の条項を全てにおいて達成後に,下記条項において甲に対して乙は報酬を支払う条件を締結した。 記1.乙は農林水産省総合食料局長より行政の手順を経て,補助金交付,採択通知後60日以内に甲に対し,金壱億円也を支払うものとする。 1.乙は補助金交付,採択通知後に事業運営推進する乳酸誘導体の発酵製造実証プラント建設工事着工時,金五千萬円也を支払うものとするが,実証プラント建設工事完成後においても,金五千萬円也を支払うものとする(合計壱億円也)。 1.乙は事業運営推進するに当り,甲に対し会社の重要な位置に登用し,年収壱千萬円也を終身支払うものとする。終身後においては,甲の一等親権者を会社の重要な位置に登用し,年収六百萬円也を支払うものとする。 1.乙は甲との終身後においても,一等親権者の終身後一等親権者に継続するものとする。その うものとする。終身後においては,甲の一等親権者を会社の重要な位置に登用し,年収六百萬円也を支払うものとする。 1.乙は甲との終身後においても,一等親権者の終身後一等親権者に継続するものとする。その場合において,乙の代表者と甲との代表者との双方協議の上実行する事。」(エ)同日付け「約条書(3)」と題する書面(乙57。以下「本件約条書(3)」という。)「・・・X1(甲と言う)・・・株式会社シー・シー・ワイ代表取締役A(甲(判決注:『乙』の誤記であると認められる。)と言う)は,別紙約条書(1)を締結しているが,乙の事業運営推進を無償にて従事しているI,P,H,Fを下記の条件にて約条書を締結した。 記(1)Iに対して,今後支払う給与を基本として,満60歳まで雇用する事とする(雇用契約にても可)(2)P・H・F三名についても,今後支払う給与を基本として,満60歳まで雇用を保証する事とする。 (3)(1),(2)において,如何なる事態等の発生により,乙との関わりをなくしたり,又はなくされた場合等においても,その否可後第一回目の給与額を基本として満60歳までの合計を- 27 -算出し,功労退職金として60日以内に支払う事とする。」ウ検討(ア)前記認定のとおり,被控訴人は,平成16年夏,経営的に行き詰まった状態にあり,本件事業における研究開発の中核的存在であったIはAと対立して取締役を辞任するなどし,また,KはAの代表取締役辞任と被控訴人の自己資金1億1000万円の準備を求めるなどし,さらに,賃金の遅配等により従業員2名も退職したほか,同年8月下旬ころには,同月末日に1000万円の資金を必要とする状況にあったところ,Aから依頼を受けた控訴人X1は,Dを説得し,自ら連帯保証人となってダイニからの融資を実行させ,さらに,当該1000万円に 月下旬ころには,同月末日に1000万円の資金を必要とする状況にあったところ,Aから依頼を受けた控訴人X1は,Dを説得し,自ら連帯保証人となってダイニからの融資を実行させ,さらに,当該1000万円に係る元利金の返済の見通しが立たなかったAから返済期日の延期の交渉と被控訴人の立て直しを依頼され,ダイニをして,当該返済期日を延期させたほか,ダイニによる資本参加(Dの被控訴人代表取締役への就任を含む。)を実現させ,その後は,Iの技術協力を取り付けたほか,農水省,S,山形県等,本件事業の関係者らとの交渉等に積極的に関与し,Sとの間の共同研究契約の締結,東北電化工業株式会社等との間の秘密保持契約の締結,株式会社庄司製作所との間の覚書の取り交わし,同各社との間の工事請負契約の締結等に尽力したものである。 (イ)しかしながら,本件譲渡証書の記載内容は,被控訴人が,本件特許を受ける権利のみならず,被控訴人が将来行う特許出願に係る特許を受ける権利のすべてを控訴人X1に譲渡するというものであり,また,本件約条書(2)の記載内容は,被控訴人が,控訴人X1に対し,総額2億円を支払うほか,控訴人X1の生存中,年間1000万円の給与ないし報酬を支払い,さらに,控訴人X1の死後においても,控訴人X1と1親等の関係にある者(控訴人X1の子を指すものと認められる。)を雇用して,重要な地位に就け,年間600万円の給与ないし報酬を支払うというものである。 そうすると,本件約条書(2)の記載に係る,控訴人X1及びその子が受ける金銭的利益だけを取り出してみても,控訴人X1の働きと対比して(仮に,本件約条書- 28 -(2)が,控訴人らの主張・控訴人X1の別件訴訟における供述のとおり,平成16年9月24日に作成されたものとすれば,その時点までに控訴人X1のしたことは,上記(ア て(仮に,本件約条書- 28 -(2)が,控訴人らの主張・控訴人X1の別件訴訟における供述のとおり,平成16年9月24日に作成されたものとすれば,その時点までに控訴人X1のしたことは,上記(ア)のうち,Dを説得してダイニからの1000万円の融資を実行させ,また,Dの被控訴人代表取締役就任を実現させたこと程度であるが,ここで対比すべき「控訴人X1の働き」とは,本件約条書(2)の記載に従って,本件約条書(1)に記載された各業務をすべて達成したものと仮定して,それを上記現実の働きに併せ考えたものをいうことになる。),社会通念上著しく均衡を欠くものであって,通常の経済的合理性に基づく判断の下においては,およそあり得ないものといわざるを得ない。 また,前記認定事実によれば,本件譲渡証書において譲渡の対象とされた本件特許を受ける権利は,実質的に平成16年9月ころにおける被控訴人の唯一の見るべき資産であったのみならず,本件事業を推進する上で絶対に欠くことのできない極めて重要かつ中核的な資産であったといえるから,上記(ア)の控訴人X1の働きの内容を考慮しても,これを他人に譲渡するということは,常識では考え難いものである。加えて,本件譲渡証書においては,被控訴人が将来行う特許出願に係る特許を受ける権利のすべてについても譲渡の対象とされているところ,本件事業の内容(農産物を原料として精製された発酵乳酸から生分解性プラスチックを製造する技術の実用化に向けた研究開発を行うというもの)に照らせば,これら将来の権利をすべて他人に譲渡するということは,およそあり得ないというべきである。 さらに,本件約条書(2)の1項目及び2項目の約定に記載された各金員についてみても,当該約定に記載された支払時期及び金額並びに前記認定のとおりの本件事業の内容及び被控訴人の財務状況 いうべきである。 さらに,本件約条書(2)の1項目及び2項目の約定に記載された各金員についてみても,当該約定に記載された支払時期及び金額並びに前記認定のとおりの本件事業の内容及び被控訴人の財務状況に照らせば,これらの金員は,被控訴人においておよそ支払うことのできないものであったといわざるを得ない(特に,本件事業の内容及び被控訴人の財務状況に照らすと,被控訴人において,「補助金交付,採択通知後60日以内」に1億円を,「実証プラント建設工事着工時」に5000万円を支払うことなど絶対にできなかったといっても過言ではない。)。また,3項目- 29 -の約定をみても,控訴人X1が,本件約条書(1)に記載された各業務をすべて達成しただけで(あるいは,それに上記現実の働きを加えただけで),その後の控訴人X1の被控訴人に対する貢献度に関わりなく,その生存中にわたり年間1000万円の給与ないし報酬の支払を約束することなど,平成16年9月当時,設立から2年余り経たのみで,売上が全くなかった被控訴人にとって,およそ考え難いものであるし,まして,いかなる資質,能力,人格等を有するのかも明らかでなく,何の実績も示していない控訴人X1の子についてまで,無条件で雇用し,重要な地位に就け,年間600万円の給与ないし報酬の支払を約束するとの点に至っては,常識外れも甚だしい内容のものであるというべきである。 加えて,本件約条書(3)の3項目の約定によれば,例えば,F(昭和37年5月21日生)が仮に平成17年5月に被控訴人を退職した場合,会社都合による退職の場合であれ,自己都合による退職の場合であれ,被控訴人は,Fが満60歳に達する平成34年5月まで,17年間(204か月)分の給与に相当する「功労退職金」を支払わなければならないことになるが,そのようなことは,被控訴人のみ よる退職の場合であれ,被控訴人は,Fが満60歳に達する平成34年5月まで,17年間(204か月)分の給与に相当する「功労退職金」を支払わなければならないことになるが,そのようなことは,被控訴人のみならず,いかなる企業においても,およそあるはずのないことである。 (ウ)以上のとおり,本件譲渡証書並びに本件約条書(2)及び(3)(以下「本件譲渡証書等」という。)の各記載内容は,控訴人X1の働きの内容を考慮しても,常識的にみておよそあり得ない極めて不合理なものというべきである。 エ控訴人らの主張について(ア)a控訴人らは,倒産の危機に瀕した経営者がとる手段は会社資産の切り売りであると主張するが,そのような一般論が正しいか否かは措くとしても,そのこと自体をもって,本件譲渡証書等の各記載内容の不合理性についての上記認定判断を左右するものではないから,控訴人らの当該主張は失当である。 b控訴人らは,乙117の金銭消費貸借契約書を挙げ,Aが,かつて,本件特許を受ける権利を担保に供しようとしたことがある旨主張する。 確かに,証拠(乙9,117,179,187,証人A)によれば,A及びBは,- 30 -いずれも被控訴人の代表取締役として,平成16年夏ころ,オリエンタル技術開発株式会社から,本件特許を受ける権利(ただし,契約書の文言上は,「特許権」とされている。)を担保として,1億1000万円の融資を受けようとしたものと認められる。 しかしながら,証拠(乙11,117,179)及び弁論の全趣旨によれば,上記融資は,農水省から補助金の交付を受けるために必要な自己資金を準備するためのものであり,被控訴人は,オリエンタル技術開発株式会社に対し,融資を受けることとなる1億1000万円を一切使用しないことを確約する旨の覚書(乙179)を差し入れていたこと,融 己資金を準備するためのものであり,被控訴人は,オリエンタル技術開発株式会社に対し,融資を受けることとなる1億1000万円を一切使用しないことを確約する旨の覚書(乙179)を差し入れていたこと,融資の条件は,平成16年9月1日に1億1000万円を利息年1.9%の約定で借り受け,約3年後の平成19年9月30日に元利金(利息については平成16年10月30日からの分)を一括返済するというものであることが認められるのであるから,本件特許を受ける権利を担保に供したからといって,A及びBにおいて,担保権が実行される蓋然性が高いものと考えていたとはいえず,したがって,当該担保提供が試みられた事実をもって,これを,本件特許を受ける権利が確定的に控訴人X1に移転してしまう本件譲渡合意と同視することはできない。 cまた,控訴人らは,Aが,実際,ダイニに対し,本件特許を受ける権利を担保に供した旨主張する。 控訴人らの主張は,前記ア(セ)及び(ソ)の1000万円の融資及び弁済猶予の際の特約条項についていうものと解されるところ,当該特約条項の内容(特に,「保証人Aが取得する50%」との文言)からすると,当該特約条項は,Aが,被控訴人の物上保証人として,自己の有する発明者の権利(原判決別紙出願目録記載3の特許出願に係るもの)を担保提供するとの趣旨であると認められるから,控訴人らの上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。 (イ)控訴人らは,本件譲渡合意の内容が本件特許を受ける権利に係る特許権についての実施権を被控訴人にとどめるものであり,被控訴人は本件各発明を実施し- 31 -て事業を継続することができるから,本件特許を受ける権利が被控訴人の唯一の資産であったことをもって,本件譲渡合意の内容の合理性を否定すべきではない旨主張する。 確かに,前記イ(ア) し- 31 -て事業を継続することができるから,本件特許を受ける権利が被控訴人の唯一の資産であったことをもって,本件譲渡合意の内容の合理性を否定すべきではない旨主張する。 確かに,前記イ(ア)のとおり,本件譲渡証書には,「特許使用に関しては,全て双方協議合意の上に当社に使用を認める事とする」との文言がある。 しかしながら,控訴人らの主張は,被控訴人が本件各発明を実施することができれば本件事業の継続に影響がないということを前提とするものであるところ,前記認定のとおりの本件事業の内容(農産物を原料として精製された発酵乳酸から生分解性プラスチックを製造する技術の実用化に向けた研究開発を行うというもの)に照らせば,被控訴人は,そのような新規の技術分野におけるパイオニア的事業展開を企図する企業の常として,本件各発明や将来において特許出願をする発明を自ら実施するのみならず,これらに係る特許権について第三者に対し実施許諾をすることにより,実施料収入を得ることをも当然視野に入れていたと考えられるから,控訴人らの上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。 さらに,本件譲渡証書に記載された上記文言は,被控訴人に許諾される実施権の種類,範囲,対価の額等を何ら特定するものではなく,対価の額等の各種条件が折り合わなければ,控訴人X1が実施許諾をしない事態も想定されるのであるし,また,上記文言にいう「使用」が専用実施権をいうものであれば,その設定の効力発生のためには登録が必要であり,通常実施権をいうものであったとしても,登録をしなければ第三者に対抗することができないところ,本件譲渡証書のみを原因証書とする専用実施権又は通用実施権の設定の登録が認められないことは,上記文言の内容に照らして明らかであるから,本件譲渡証書の上記文言により本件事業の継続に影響がな いところ,本件譲渡証書のみを原因証書とする専用実施権又は通用実施権の設定の登録が認められないことは,上記文言の内容に照らして明らかであるから,本件譲渡証書の上記文言により本件事業の継続に影響がないということはできず,この点でも,控訴人らの上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。 (ウ)控訴人らは,控訴人X1の果たした役割に照らし,控訴人X1が被控訴人から何ら対価を得ないことは著しく不合理である旨主張する。 - 32 -しかしながら,本件譲渡証書等に記載された控訴人X1及びその子が得る金銭的な利益だけをみても,控訴人X1の働きと比較して,社会通念上著しく権衡を欠くものであることは,前記説示のとおりであるから,控訴人らの上記主張事実は,本件譲渡証書等の各記載内容の不合理性についての前記認定を何ら左右するものではない。 (エ)a控訴人らは,本件譲渡証書及び本件各約条書は被控訴人の多数の株式を有する者により控訴人X1が被控訴人から排除されないための保全の手段であるから,これらの書面に記載された控訴人X1が受ける利益が大きいのは当然である旨主張する。 bしかしながら,前記イ(ア),(ウ)及び(エ)のとおり,本件譲渡証書等には,控訴人X1が被控訴人から排除された場合に効力を生じる趣旨の記載は一切みられない。 また,保全の手段であるというからには,被控訴人において多数の株式を有する者,具体的には,遅くとも平成16年12月1日の新株発行以降は,発行済株式の半数を有するに至ったダイニ(前記ア(チ))を経営するDに対し,本件基本合意を締結したことや本件譲渡証書等が存在することを知らしめておくのが自然であると考えられるところ,控訴人X1は,別件訴訟における本人尋問(乙194)において,本件基本合意につき「Dには言っていない」旨供述しており(な 本件譲渡証書等が存在することを知らしめておくのが自然であると考えられるところ,控訴人X1は,別件訴訟における本人尋問(乙194)において,本件基本合意につき「Dには言っていない」旨供述しており(なお,控訴人X1は,同本人尋問において,「(Aを通してDに)話は通っていると思っていた」旨供述するが,これは,自己の訴訟代理人による再主尋問における「あなたとしては,当然に,共に代表取締役であるAとDが話し合っているとは思っていなかったのか。Aを通してDに伝わっているとは」との誘導尋問に対してした供述であり,直ちに信用することはできない。),また,控訴人X1は,同本人尋問において,「平成17年6月中ころから7月末まで入院していたが,その際に,Eの方から私を排除するという話が出ていると聞いた」旨供述しているにもかかわらず,この時点で,控訴人X1が,本件譲渡証書等を用いて,EやDを牽制したとの事実は証拠- 33 -上窺われない(控訴人X1は,同本人尋問において,わずかに,「平成17年9月に解任されたとき,本件約条書(1)及び(2)のような約条書があることをDに言ったか」との問いに対し,「記憶は定かではないが,内容証明等で,譲渡されたものについてはこうなっていますよと,被控訴人の代表者には送付した記憶がある」との供述を,「平成17年8月10日から解任されるまでの間にそういうことを言ったのか」との問いに対し,「精査しないと日にちは分からないが,内容証明で送付した覚えがある」との供述をそれぞれするのみであるが,控訴人X1のこれらの供述を裏付ける客観的な証拠とて全くない。)。 c以上の経緯に照らすと,本件譲渡証書及び本件各約条書が被控訴人から排除されないための保全の手段であったことを前提とする控訴人らの上記主張は,これを採用することができないというべき 全くない。)。 c以上の経緯に照らすと,本件譲渡証書及び本件各約条書が被控訴人から排除されないための保全の手段であったことを前提とする控訴人らの上記主張は,これを採用することができないというべきである。 d控訴人らは,本件譲渡証書及び本件各約条書が控訴人X1外の身分の保全のためのものである旨を記載した被控訴人名義の本件承諾書(乙112。写し)が存在する旨主張するが,本件承諾書に存在する被控訴人代表取締役A名下の印影は,本件譲渡証書(乙3)及び本件各約条書(乙19,20,57)に存在する被控訴人代表取締役A名下の各印影(いずれも,真正代表者印によって顕出された印影であることにつき,全当事者間に争いがない。)と対照すると,少なくとも「会」の字体並びに「代」の字体及び「代」の字と上側の枠との距離(いずれも人偏の部分)については,両者が同一であるとまで認めることはできず,その他,本件承諾書に存在する被控訴人代表取締役A名下の印影が真正代表者印によって顕出されたものと認めるに足りる確たる証拠はない(なお,Aは,当審の証人尋問において,本件承諾書のみを示された上,同承諾書に存在する被控訴人代表取締役A名下の印影は真正代表者印によって顕出されたものである旨証言するが,上記両印影を対照すると,これらが酷似していることは明らかであるから,本件承諾書のみを示されてしたAの上記証言をそのまま採用することはできない。)。そして,その他,本件承諾書の原本がAの意思に基づいて作成されたものと認めるに足りる証拠はない- 34 -から,本件承諾書を根拠とする控訴人らの上記主張は理由がない。 eまた,控訴人らは,控訴人X1の身分保障のため本件譲渡証書,本件各約条書及びA個人の譲渡証書に押捺する旨を記載したA名義の本件誓約書(乙110(写し))が存在する旨主張する 記主張は理由がない。 eまた,控訴人らは,控訴人X1の身分保障のため本件譲渡証書,本件各約条書及びA個人の譲渡証書に押捺する旨を記載したA名義の本件誓約書(乙110(写し))が存在する旨主張するが,本件誓約書の原本が真正に成立したものと認められないことは,後記説示のとおりであるから,本件誓約書を根拠とする控訴人らの上記主張は失当である。 fなお,本件各約条書が従業員を含む保全のための約条書である旨を記載したA,B及びG名義の平成16年9月12日付け臨時取締役会議事録(乙149(写し))も存在するが,当該議事録の原本のA作成部分が真正に成立したものと認められず,当該議事録(B及びG各作成部分)の記載内容を信用することができないことも,後記説示のとおりである。 オ小括以上のとおり,本件譲渡証書及び本件各約条書の記載内容は,全体として,社会通念に照らし著しく合理性を欠き,およそあり得ないものというべきである。 (4)本件譲渡証書の形式的証拠力についての結論前記(2)及び(3)のとおりであるから,本件譲渡証書の原本の成立については,前記(1)の二段の推定を覆すに足りる十分な反証があるということができる。したがって,本件譲渡証書に存在する被控訴人代表取締役A名下の印影が真正代表者印によって顕出されたとの事実をもって,本件譲渡証書の原本が真正に成立したとの推定は働かないということになる。 そして,他に,本件譲渡証書の原本が真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はないから,本件譲渡証書(乙3)は,形式的証拠力を欠くものであるといわざるを得ない。 なお,以上説示したところに照らせば,本件各約条書の各被控訴人作成部分の成立についても,二段の推定は働かず,他に,これらが真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はないというべきであるから,本 なお,以上説示したところに照らせば,本件各約条書の各被控訴人作成部分の成立についても,二段の推定は働かず,他に,これらが真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はないというべきであるから,本件各約条書(乙19,20,- 35 -57)の各被控訴人作成部分も,それぞれ形式的証拠力を欠くことになる。 本件譲渡合意の成否について(1)本件譲渡証書(乙3)のほか,本件譲渡合意がされたものと認めるに足りる確たる証拠はない。却って,前記1(3)において説示したところに照らせば,被控訴人の代表取締役であったAが控訴人X1との間で本件譲渡合意をするなどということは,およそあり得ないことというべきである。 (2)控訴人らの主張についてア(ア)控訴人らは,A,B及びG名義の平成16年9月12日付け臨時取締役会議事録(乙149(写し)。以下「乙149議事録」という。)を挙げ,同日に開催された被控訴人取締役会において,被控訴人が控訴人X1との間で本件譲渡合意をすること及び本件各約条書を取り交わすことをいずれも承認する旨の決議がされたと主張する。 (イ)a証拠(乙4の2,187)及び弁論の全趣旨によれば,乙149議事録に存在するA名下の印影は,Aの印章によって顕出されたものと認められる。 しかしながら,乙149議事録に存在するA名義の署名,その名下の印影,当該印影の傾き及び当該署名と当該印影との位置関係を,被控訴人及びA名義の平成16年9月28日付け確認書(乙159(写し)。以下「本件確認書」という。なお,甲84(偽造文書として提出されたもの。写し)も,本件確認書と同一の文書であるが,以下,併せて挙示することは省略する。)に存在するA名義の署名,その名下の印影,当該印影の傾き及び当該署名と当該印影との位置関係と対照すると,これらは,すべて完全 ,本件確認書と同一の文書であるが,以下,併せて挙示することは省略する。)に存在するA名義の署名,その名下の印影,当該印影の傾き及び当該署名と当該印影との位置関係と対照すると,これらは,すべて完全に一致するものと認められる(なお,この点については,全当事者間に争いがない。)。そうすると,ともに写しである乙149議事録及び本件確認書にそれぞれ存在する各A名義の署名及びその名下の印影は,いずれも,第三の文書に存在するA名義の署名及びその名下の印影を複写して利用することにより作出された可能性が十分にあるといえるから(この点は,本件確認書(乙159)- 36 -がカラーコピーとして存在することによって左右されるものではない。),乙149議事録の原本のA作成部分については,Aの意思に基づいて作成されたものでないとの十分な反証があるというべきである。 bその他,乙149議事録の原本のA作成部分が真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はない。 (ウ)ところで,乙149議事録は,上記(ア)のとおり,Aのほか,B及びGの作成名義に係るものであって,平成16年9月12日開催の取締役会にA,B及びGが出席し,Aが議長に選出されて開会を宣し議事に入ったこと,Aが第1号議案(本件譲渡合意についての承認の件)及び第2号議案(本件各約条書の締結についての承認の件)の各提案理由の説明をしたこと,第1号議案及び第2号議案がいずれもAを含めた全員一致で承認されたことが記載されたものである。 しかるところ,上記(イ)のとおり,乙149議事録の3名の作成名義人のうち,同取締役会に出席して,その開会を宣し,議長を務め,各議案の提案理由を説明し,各議案に賛成したとされているAの作成部分について,その原本の成立の真正が認められないのであるから,同人が同取締役会に出席したこ 役会に出席して,その開会を宣し,議長を務め,各議案の提案理由を説明し,各議案に賛成したとされているAの作成部分について,その原本の成立の真正が認められないのであるから,同人が同取締役会に出席したこと(したがって,5名の取締役の過半数の出席があったこと),同人が議長を務め,各議案の提案理由を説明し,各議案に賛成したこと自体が極めて疑わしく,そうすると,B及びGの作成名義に係る部分について,仮に成立の真正が認められたとしても,その記載内容を信用することはできないというべきである。 (エ)したがって,乙149議事録を根拠とする控訴人らの上記主張は理由がない。 (オ)なお,上記(イ)のとおり,乙149議事録の原本のA作成部分は,真正に成立したものとは認められず,また,上記(イ)において説示したところに照らせば,本件確認書の原本のA作成部分もまた,真正に成立したものとは認められないといえるところ,控訴人らがこのような文書を真正文書として,しかも,原判決の言渡後に提出したことは,控訴人らの立証の全体の信用性を大きく減殺させるものであ- 37 -るといわざるを得ないことを付言しておく。 イ(ア)控訴人らは,本件譲渡合意の存在を裏付ける事情の一つとして,A名義の平成16年9月17日付け本件誓約書(乙110(写し))が存在することを挙げる(なお,控訴人らは,控訴人X1が,同日,本件誓約書をファクシミリにより受信した旨主張する。)。 (イ)a証拠(乙4の2,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,本件誓約書に存在するA名下の印影は,Aの印章によって顕出されたものと認められる。 しかしながら,本件誓約書は,控訴人X1に宛てたものであり,その記載内容は,下記のとおりである。 「Aは,株式会社シー・シー・ワイの代表取締役を務めておりますが,今般貴殿のご尽力によ と認められる。 しかしながら,本件誓約書は,控訴人X1に宛てたものであり,その記載内容は,下記のとおりである。 「Aは,株式会社シー・シー・ワイの代表取締役を務めておりますが,今般貴殿のご尽力により平成16年8月31日株式会社ダイニ代表取締役D氏より運転資金として-金壱阡萬円也を借入しましたが,諸般の事情により今月末日までの返済することが出来なくなり,貴殿と相談の上に株式会社ダイニより私共の事業に参入していただくよう貴殿の取り計らいにより,平成16年9月28日付にてD氏を私共の取締役に就任していただく内諾を得,登記手続確定したことは偏に貴殿の努力の賜物であり心より感謝申し上げます。その証として貴殿の将来に対して身分保証の保全をしていただくため,別紙(作成済)特許出願人権利譲渡書日付平成16年9月21日,それに伴う約条書日付平成16年9月21日,私個人が所有する特許発明者持分比率権利譲渡書日付平成16年9月24日(印鑑証明発効日)と会社実印押捺については諸般の事情により平成16年7月26日より他の取締役が保管しており,早急に返却していただき押捺することを誓約させていただきますので,今後の事業運営推進の構築をお願いします。」しかるところ,このような重要な内容の文書の原本を名宛人である控訴人X1が所持していないこと自体,極めて不自然である。また,このような重要な内容の文書を所持していたのであれば,本件譲渡証書や本件各約条書とともに書証として早期に提出するのが自然であると考えられるところ,控訴人X1は,平成18年4月10日の原審第1回弁論準備手続期日において,本件譲渡証書及び本件各約条書を- 38 -含む多数の書証(乙1~65)を提出したにもかかわらず,控訴人らが本件誓約書を書証として提出したのは,弁論準備手続が終結された後であり,Fの証人尋 おいて,本件譲渡証書及び本件各約条書を- 38 -含む多数の書証(乙1~65)を提出したにもかかわらず,控訴人らが本件誓約書を書証として提出したのは,弁論準備手続が終結された後であり,Fの証人尋問が実施された平成19年2月21日の原審第2回口頭弁論期日に至ってである(記録上明らかな事実)。加えて,上記ア(オ)において説示したところにも照らすと,控訴人らは,上記ア(イ)aのように第三の文書に存在するAの印影を複写して利用することなどにより本件誓約書が作出されたことを糊塗するため,あえて,控訴人X1が本件誓約書の原本ではなくその写しを所持していることとした可能性も考えられないではない。 また,本件誓約書には,上記のとおり,「平成16年9月28日付にてD氏を私共の取締役に就任していただく内諾を得,登記手続確定した」との記載があるところ,本件誓約書の作成日とされ,控訴人らが,控訴人X1において,ファクシミリにより同誓約書を受信したと主張する日である平成16年9月17日の時点において,「登記手続確定」というのは明らかに誤りであるし(乙5),この点を措くとしても,前記1(2)エ(オ)において説示したとおり,Aは,当初,Dの被控訴人代表取締役への就任登記手続を同月24日に行うことを予定していたが,同日までに真正代表者印の返還を受けることができなかったため,同日に当該登記手続を行うことができなかったと認められるのであるから,本件誓約書に,同月17日の時点において,Dの取締役就任日付ないしはその登記日付として,実際に登記申請手続のなされた同月28日という日付の記載があることは,極めて不自然であるといわざるを得ない。 そうすると,本件誓約書の原本については,Aの意思に基づいて作成されたものでないとの十分な反証があるというべきである。 bその他,本件誓 の記載があることは,極めて不自然であるといわざるを得ない。 そうすると,本件誓約書の原本については,Aの意思に基づいて作成されたものでないとの十分な反証があるというべきである。 bその他,本件誓約書の原本が真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はない。 (ウ)以上のとおりであるから,本件誓約書を根拠とする控訴人らの上記主張を採用することはできない。 - 39 -ウ(ア)控訴人らは,本件譲渡合意の存在を裏付ける事情の一つとして,被控訴人と控訴人X1が,平成16年9月22日ころ,「別紙特許出願人の権利譲渡・約定書を承認したことの確認し次の事項を委任する」との記載のある本件委任状(乙21(原本))を作成したことを挙げる。 (イ)a本件委任状の被控訴人代表取締役A名下の印影が真正代表者印によって顕出されたものであることは,全当事者間に争いがない。 しかしながら,本件委任状の作成経過につき控訴人らが上記のとおり明確に主張していることに照らせば,前記1(2)において説示したとおり,Aが,平成16年7月下旬ころから少なくとも同年9月24日まで,真正代表者印を自ら管理・保管していなかったとの事実は,本件委任状のA作成部分がAの意思に基づいて作成されたものではないとの事実を認めるに十分であるというべきであるし,また,上記「別紙特許出願人の権利譲渡・約定書」との文言が,前記1のとおり,その原本が真正に成立したものとは認められない本件譲渡証書及びその各被控訴人作成部分がいずれも真正に成立したものとは認められない本件各約条書を指すものであると認められることをも併せ考慮すると,本件委任状の被控訴人作成部分については,Aの意思に基づいて作成されたものでないとの十分な反証があるというべきである。 bその他,本件委任状の被控訴人作成部分が真正に成立したも とをも併せ考慮すると,本件委任状の被控訴人作成部分については,Aの意思に基づいて作成されたものでないとの十分な反証があるというべきである。 bその他,本件委任状の被控訴人作成部分が真正に成立したものと認めるに足りる確たる証拠はない。 (ウ)以上のとおりであるから,本件委任状を根拠とする控訴人らの上記主張は理由がない。 エ控訴人らは,平成17年8月10日に開催された取締役会において,本件各約条書に言及する第9号議案を承認する旨の決議がされたと主張する。 しかるところ,同取締役会の議事録(乙99)には,第9号議案につき,下記のとおりの記載がある。 「第9号議案今回の取締役会開催議事録2部を作成し1部を代表取締役付参与に保管させる事,及び公証役場にて確定日付をしていただく事の承認の件- 40 -議長より,今回の取締役開催については,当社が事業運営推進を進めるにあたり,当社取締役と代表取締役付参与との約定書に関わるものとして受けとめ,今後の事業運営推進を磐石にして行くためのものであり代表取締役付参与に1部保管及び,公証役場にて確定日付をもらいたい旨の提案があり,・・・。」上記のとおり,第9号議案中には,「当社取締役と代表取締役付参与との約定書」との記載があるものの,当該「約定書」の作成日付等が記載され,あるいは当該「約定書」が同議事録に添付されるなどして,その特定がなされているものではないし,同議事録の記載から,当該「約定書」が複数あることが窺われるものでもない。したがって,当該「約定書」が本件各約条書を指すものであると直ちに認められるということはできないのみならず,そもそも,前記1(4)のとおり,本件各約条書の各被控訴人作成部分(具体的には被控訴人代表取締役Aの作成部分)は真正に成立したものとはいえないのであるから,前記1(3)ア(ヌ とはできないのみならず,そもそも,前記1(4)のとおり,本件各約条書の各被控訴人作成部分(具体的には被控訴人代表取締役Aの作成部分)は真正に成立したものとはいえないのであるから,前記1(3)ア(ヌ)のとおり,Aが出席している同取締役会において,本件各約条書の内容を前提とする決議がされること自体不合理である。 加えて,第9号議案の内容は,要するに,同取締役会の議事録を2部作成し,1部に確定日付を得た上,控訴人X1に保管させる(他1部は,当然被控訴人自身が保管するものと考えられるから,「控訴人X1に保管させる」とは,実質的に控訴人X1に交付することを意味するといえる。)というものであるところ,前記1(3)ア(ヌ)のとおり,同取締役会においては,控訴人X1の権限の拡大,控訴人X1が経営するクリエーティブジャパンへの新株予約権の付与等,控訴人X1にとって有利な内容の議案が可決・承認されたこと,第9号議案中の文言上,「当社と代表取締役付参与との約定書」でも「当社代表取締役と代表取締役付参与との約定書」でもなく,「当社取締役と代表取締役付参与との約定書」とされていることを併せ考えれば,その「当社取締役」とは,代表取締役であったAを意味するのではなく,被控訴人の取締役会を構成する各取締役の総体を意味するものであって,結局,第9号議案は,同取締役会で決議された各事項が被控訴人と控訴人X1との約定を構- 41 -成するものであり,ゆえに,その内容を証する議事録1部を控訴人X1に交付するという趣旨であると解することが合理的である。 その他,同議案が本件各約条書に言及したものと認めるに足りる確たる証拠はない。したがって,同議案が本件各約条書に言及したものである旨をいう控訴人らの上記主張は失当である。 オ控訴人らは,本件譲渡合意の存在を裏付ける事情の一つと 言及したものと認めるに足りる確たる証拠はない。したがって,同議案が本件各約条書に言及したものである旨をいう控訴人らの上記主張は失当である。 オ控訴人らは,本件譲渡合意の存在を裏付ける事情の一つとして,A及び控訴人X1名義の平成16年9月24日付けA個人の譲渡証書(乙4の1(原本))を挙げる。 しかしながら,仮に,A個人の譲渡証書のA作成部分が真正に成立したものであるとしても,同証書に記載された内容は,本件各発明に係る発明者の権利の持分(証拠(甲1~5,乙16)及び弁論の全趣旨によれば,その持分割合は,50%であると認められる。)をAが控訴人X1に譲渡するというものにすぎず,前記1(3)において説示したところに照らせば,これをもって,被控訴人が控訴人X1との間で本件譲渡合意を含む本件基本合意をしたものと認めることは到底できないというべきであるから,A個人の譲渡証書を根拠とする控訴人らの上記主張は理由がない。 カ(ア)控訴人らは,本件譲渡合意の存在を裏付ける事情の一つとして,控訴人X1が,Aに対し,平成16年9月24日,本件譲渡証書及びA個人の譲渡証書に係る各譲渡の対価として500万円を支払い,Aが,同日付けの受領書(乙111(原本)。以下「本件受領書」という。)を作成した旨主張する。 (イ)しかしながら,控訴人らの上記主張は,本件受領書の但書欄に記載された「別紙譲渡証書」が本件譲渡証書を含むことを前提とするものであるところ,本件譲渡証書の原本が真正に成立したものと認められないことは,前記1(4)のとおりであるし,また,本件受領書の但書欄には,「別紙譲渡証書に伴う代金として」と記載されているのみであり,別紙の添付がされていないこと,本件受領書の受領者欄に受領者として記載されているのは,A個人のみであり,被控訴人の記載がない- 42 ,「別紙譲渡証書に伴う代金として」と記載されているのみであり,別紙の添付がされていないこと,本件受領書の受領者欄に受領者として記載されているのは,A個人のみであり,被控訴人の記載がない- 42 -ことを考慮すると,上記「別紙譲渡証書」がA個人の譲渡証書のみを指すことも十分に考えられ,その他,上記「別紙譲渡証書」に本件譲渡合意に係る証書等が含まれるものと認めるに足りる確たる証拠はないから,仮に,本件受領書が真正に成立したものであるとしても,本件受領書を根拠とする控訴人らの上記主張は失当であるというべきである。 (ウ)aなお,本件承諾書(乙112(写し))には,下記記載があるが,本件承諾書の原本が真正に成立したものと認められないことは,前記1(3)エ(エ)dのとおりである。 「1. 平成16年9月24日付譲渡証書に伴う代金受領書はA個人名とするが平成16年9月21日付の譲渡書も含むものとし将来会社の受領書と差し換えするものとする」bまた,本件確認書(乙159(写し))には,下記記載があるが,本件確認書の原本のA作成部分が真正に成立したものと認められないことは,前記ア(オ)のとおりであるし,被控訴人作成部分が真正に成立したものと認めるに足りる証拠もない。 「1. 平成16年9月21日に弊社所有の特許出願人権利を貴殿に譲渡したこと・・・1. 平成16年9月24日弊社代表取締役A個人が所有する特許発明者持分比率権利を貴殿に譲渡したこと以上確認するが特許に関わる譲渡には貴殿より弊社及びAは対価を得ていることを確認する。」(3)本件譲渡合意の成否についての結論以上のとおりであるから,被控訴人と控訴人X1との間に本件譲渡合意が成立したものと認めることはできない。 被控訴人の請求についての結論以上によれば,本件特許を受ける権利の喪失の 否についての結論以上のとおりであるから,被控訴人と控訴人X1との間に本件譲渡合意が成立したものと認めることはできない。 被控訴人の請求についての結論以上によれば,本件特許を受ける権利の喪失の抗弁は失当であるから,被控訴人- 43 -の請求はいずれも理由があることになる。 第4 結論 よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であるから,本件各控訴をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官石原直樹裁判官榎戸道也裁判官浅井憲
▼ クリックして全文を表示