主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人高田良爾の上告理由について一被上告人は税理士法に基づいて設立された法人であり、上告人らは被上告人に所属する会員であること、被上告人は、昭和五四年六月一六日開催の第一五回定期総会において、「(1) 昭和五四年度以降会費を従前の五万一〇〇〇円から五万四〇〇〇円に増額する。(2) 日本税理士会連合会(以下「日税連」という。)に対し、会員一人当たり会費八四〇〇円、特別会費二〇〇〇円の計一万四〇〇円の割合による連合会費を納入する。(3) 大阪合同税理士政治連盟(以下「大税政」という。)に対し拠出金一五〇万円を交付する。」旨の決議(以下「本件決議」という。)をしたこと、本件決議に基づいて、同年度中に、上告人らは被上告人に会費五万四〇〇〇円を支払い、被上告人は、日税連に連合会費を納入し、大税政に拠出金一五〇万円を交付したことは、原審の適法に確定したところである。 上告人らは、(一) 本件決議のうち、(1)の会費増額決議による三〇〇〇円の増額分の中には、日税連に対する特別会費分二〇〇〇円が含まれており、右増額決議中二〇〇〇円を増額する部分は、上告人ら会員から特別会費を強制的に徴収するものであった、(二) 被上告人が日税連に納入した連合会費のうちの特別会費に相当する部分及び被上告人が大税政に交付した拠出金は、最終的に、大税政の上部団体である日本税理士政治連盟(以下「日税政」という。)に納入され、日税政は、これを特定の政治家に対する政治献金の資金に充てた、(三) したがって、(1)の決議のうち会費二〇〇〇円を増額する部分、(2)の決議のうち特別会費二〇〇〇円を納入するとした部分及び(3)の決議は、違法な政治献金を行う目的 する政治献金の資金に充てた、(三) したがって、(1)の決議のうち会費二〇〇〇円を増額する部分、(2)の決議のうち特別会費二〇〇〇円を納入するとした部分及び(3)の決議は、違法な政治献金を行う目的でされたか、又- 1 -は政治団体である日税政や大税政に対する寄付を行う目的でされたものとして、被上告人の目的(権利能力の範囲)を逸脱し、また、会員個人の思想、信条の自由を侵すものとして憲法一九条に違反するから、無効であると主張して、被上告人に対し、各上告人につき、右特別会費に相当する二〇〇〇円及び右拠出金一五〇万円の一人当たり分担金相当額二一九円の合計二二一九円を支払うことを求めた。 二原審は、(1)の会費増額決議に係る増額分三〇〇〇円のうち二〇〇〇円相当部分が特別会費であるものとは到底認め難く、したがって、被上告人が右決議によって会員である上告人らから臨時に特別会費を徴収したことにはならないから、右決議のうち会費二〇〇〇円を増額する部分の無効をいう上告人らの主張は失当であり、また、(2)の決議のうち特別会費二〇〇〇円を納入するとした部分及び(3)の決議は、被上告人の目的の範囲を逸脱するものではなく、憲法一九条に違反するものでもないから、無効とはいえないと判断して、上告人らの請求を棄却すべきものとした第一審の判断を相当とし、上告人らの控訴を棄却した。 三所論は、要するに、(2)の決議のうち特別会費二〇〇〇円を納入するとした部分及び(3)の決議は無効とはいえないとした原審の判断には、憲法一九条、民法四三条の解釈適用を誤った違法があるというのである。 しかしながら、(1)の決議のうち会費二〇〇〇円を増額する部分の無効をいう上告人らの主張は失当であるとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができるところ、所論が無 る。 しかしながら、(1)の決議のうち会費二〇〇〇円を増額する部分の無効をいう上告人らの主張は失当であるとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができるところ、所論が無効であると主張する(2)の決議中前記部分及び(3)の決議は、被上告人が上告人ら会員から徴収する会費の使途を定めたものにすぎず、これに相当する金員を会員から徴収することを定めたものではない。 したがって、仮にこれらが無効であるとしても、そのことは、上告人ら会員が被上告人に対し右金員の支払を求める法的根拠にはならないことが明らかである。そうすると、所論の無効原因について判断するまでもなく、被上告人に対し、各上告人- 2 -につき二二一九円の支払を求める上告人らの請求は棄却を免れない。原判決は結論において是認することができ、論旨は採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官三好達の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 裁判官三好達の補足意見は、次のとおりである。 本件決議のうち(2)の決議の特別会費二〇〇〇円の納入に係る部分及び(3)の決議が無効であるとしても、そのことは、上告人らが被上告人に対しその主張の金員の支払を求める法的根拠とならないことは、法廷意見の説示するとおりであるが、事案にかんがみ、これらの効力について補足して意見を述べる。 一被上告人は税理士法に基づいて設立された法人であり、その目的につき、税理士法(昭和五五年法律第二六号による改正前のもの。以下単に「法」という。)四九条二項は、「税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」と規定し、また、法四九条の一 四九条二項は、「税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」と規定し、また、法四九条の一二第一項は、「税理士会は、税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。」と規定している。原審の認定する被上告人の会則中の目的及び事業に係る規定も、右各条項所定の範囲を超えるものではないと解せられる。 原審の確定したところによれば、(3)の決議は、被上告人において、税理士業界の政治的要求実現のために政治運動を進める目的で創設された政治団体である大税政に対し、拠出金一五〇万円を交付するというものであって、このような政治団体に対し金員を支出することは、右各法条及び会則に明示されている目的及び事業に直接包含されていないことは明らかである。 二もっとも、株式会社その他営利を目的とする法人がその社会的役割を果たす- 3 -ための活動をすることは、それがその法人の定款等に明示された目的に直接は包含されていないものであるとしても、間接的にはその目的遂行のために必要なものであるというを妨げず、その権利能力の範囲内にあるものと解せられ、政治団体に対する政治資金の寄付についても同様であるということができる(最高裁昭和四一年(オ)第四四四号同四五年六月二四日大法廷判決・民集二四巻六号六二五頁参照)。 そして、この理は、営利を目的としない団体についても、それが任意加入団体である限り、その目的等による差異はあるにしても、原則として当てはまるものと解してよいであろう。 三しかしながら、法四九条一項は、「税理士は、国税局の管轄区域ごとに、一個の税理士会を設立しなければならない。」と規定 等による差異はあるにしても、原則として当てはまるものと解してよいであろう。 三しかしながら、法四九条一項は、「税理士は、国税局の管轄区域ごとに、一個の税理士会を設立しなければならない。」と規定し、法五二条は、「税理士会に入会している税理士でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除く外、税理士業務を行つてはならない。」と規定しているから、税理士の資格を有する者であっても、税理士の業務を行おうとするならば、税理士の設立する税理士会に入会することが法的に義務付けられている。法がこのような制度を採用しているのは、税理士の職責にかんがみ、税理士を構成員とする税理士会をして、税理士に対する指導、連絡及び監督に関する事務を行わせることが相当であることによるものであって、右加入強制により、職業選択の自由が制限され、ひいては結社に関する消極的自由が制限されることとなるものの、税理士会の行う活動が法所定の目的の範囲内のものである限りにおいては、公共の福祉の要請による規制として、許容されるものというべきである。 そうしてみると、税理士会が法所定の目的の範囲を超えて活動することは、この制度を採用した趣旨を逸脱するものといわなければならない。そして、その活動が思想、信条に係るものであるなど、個人としてであればそのような活動をするか否かは本来その個人の自由にゆだねられている事柄に係るものであるときは、その活- 4 -動により、構成員である税理士において法の予定するところを超えてその自由を侵害される結果となることを免れない。したがって、税理士会がそのような活動をすることは、それが社交儀礼の範囲内のものであるならば格別、そうでなければ、その権利能力の範囲を逸脱するものというべきであり、税理士会の総会がそのような活動を行うことを決議しても、その決議は無効と することは、それが社交儀礼の範囲内のものであるならば格別、そうでなければ、その権利能力の範囲を逸脱するものというべきであり、税理士会の総会がそのような活動を行うことを決議しても、その決議は無効といわなければならない。特に、政治活動をし、又は政治団体に対し金員を拠出することは、たとえ税理士に係る法令の制定改廃に関してであっても、構成員である税理士の政治活動の自由を侵害する結果となることを免れず、税理士会の権利能力の範囲を逸脱することは明らかである。 四以上説示したところからして、被上告人がその総会において政治団体に対し金員を拠出することを決議した右(3)の決議は、無効というほかはないものと考える。 五 (2)の決議のうち日税連への特別会費納入に係る決議については、右決議に当たり、被上告人の総会が日税連におけるその使途を了知していたかどうかは、原審の認定するところからは必ずしも明らかでない。しかし、もし右特別会費が日税連において法四九条の一二第一項所定の建議の範囲を超えてする法改正運動などの政治活動の費用に使用され、あるいは政治団体である日税政(日税政が政治団体であることは、原審の確定するところである。)に拠出されるものであって、しかも、被上告人の総会がこれらのことを知って右納入を決議したとするならば、右決議もまた無効というべきものと考える。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官大堀誠一裁判官味村治裁判官小野幹雄- 5 -裁判官三好達- 6 - 野幹雄 裁判官三好達
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