平成13(行ウ)9 運転免許取消処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年2月17日 和歌山地方裁判所
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判決文本文18,441 文字)

平成16年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成13年(行ウ)第9号運転免許取消処分取消請求事件口頭弁論の終結の日平成15年12月16日 主文 1 被告が原告に対して平成13年7月12日付けでした運転免許取消処分を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告主文と同旨 2 被告(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,被告が原告に対して平成13年7月12日付けでした運転免許取消処分(以下「本件取消処分」という。)が,その前提となる事実を誤認するとともに法令の適用を誤った違法なものであるとして,その取消しを求めた。 これに対し,被告は,原告が亡A(以下「A」という。)を死亡させた交通事故(以下「本件事故」という。)につき,原告は,車両追越時において,道路交通法(平成12年法律第86号による改正前のもの,以下同じ)28条1項,4項に違反したことにより本件事故を起こしたものであり,かつ,被害者であるAには本件事故の発生につき過失として指摘すべき事項はなく,本件事故は専ら前記違反行為をした原告の不注意によって発生したものであるから,被告が原告に対してした本件取消処分は,道路交通法103条2項,同法施行令(平成13年政令第399号による改正前のもの,以下同じ)38条1項1号イ,別表第一の一及び二,別表第二に基づいた適法なものであるとして,争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者に争いがないか,証拠(甲1,2,4の1・7ないし9,5の2ないし6,6ないし8,原告本人)及び弁論の全趣旨により,容易に認めることができる。 (1) 原告は,平成元年2月20日,運転免許(第一種普通自動車免許)を取得し,平成12年 1・7ないし9,5の2ないし6,6ないし8,原告本人)及び弁論の全趣旨により,容易に認めることができる。 (1) 原告は,平成元年2月20日,運転免許(第一種普通自動車免許)を取得し,平成12年3月21日,運転免許の更新により,被告から運転免許(以下「本件免許」という。)を受けた。 原告は,後記(2)の本件事故が発生した平成13年6月15日を起算日とする過去3年以内において,道路交通関係法規に基づく行政処分前歴はなく,累積の違反点数もなかった。 (2) 原告は,平成13年6月15日午前10時30分ころ,和歌山県海南市a558番地の11先の歩車道の区別がある片側2車線の道路上(国道370号線,以下「本件道路」という。)において,その運転する普通(軽四輪)貨物自動車(以下「原告車」という。)を運転して,東から西に向けて,右側車線(以下「第2車線」という。)を進行していたが,本件事故の発生地点から約53メートル後方の信号により交通整理された交差点付近で第2車線から左側車線(以下「第1車線」という。)へ車線変更を開始し,車線変更を完了した直後,約42.8メートル前方の第1車線左端にA運転にかかる普通(軽四輪)貨物自動車(以下「A車」という。)が停車しているのを初めて視認し,本件事故の発生地点から後方約10メートルの地点において,A車の扉が開いたように感じ,人が降りてくると思い(AがA車の扉を開けて降車を開始した時期及び原告がAの降車を視認した際の同人の体勢等については争いがある。),急制動措置をとったものの,間に合わず,原告車をA車に追突させ,その衝撃によりA車から降車しないしは降車しようとしていたAを路上に転倒させた(本件事故)。 Aは,本件事故により生じた脳挫傷及び外傷性くも膜下出血により,翌16日午前2時33分ころ,入院先の病院にお 撃によりA車から降車しないしは降車しようとしていたAを路上に転倒させた(本件事故)。 Aは,本件事故により生じた脳挫傷及び外傷性くも膜下出血により,翌16日午前2時33分ころ,入院先の病院において死亡した。 (3) 道路交通法103条2項2号は,免許を受けた者が,自動車等の運転に関し同法若しくは同法に基づく命令の規定又は同法に基づく処分に違反したときは,その者が前記違反をした時における住所地を管轄する公安委員会(本件では被告)は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消すことができるとされ,同号の政令で定める基準につき定められた同法施行令38条1項1号イは,免許を受けた者が,違反行為(同法施行令33条の2第1項1号において,自動車又は原動機付自転車の運転に関し同法若しくは同法に基づく命令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反する行為で別表第一の一の表の上欄に掲げるものをいうと定義されている。)をした場合において,当該違反行為に係る累積点数(同法施行令33条の2第1項1号イにおいて,当該違反行為及び当該違反行為をした日を起算日とする過去3年以内におけるその他の違反行為のそれぞれについて別表第一に定めるところにより付した点数の合計と定義されている。)が,別表第二の第一欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表の第二欄,第三欄又は第四欄に掲げる点数に該当したときに,その者の免許を取り消すものとされていた。そして,同法施行令別表第一の一では,追越し(同法28条ないし30条の規定)違反の点数が2点とされ,別表第一の二では,人の死亡に係る交通事故が専ら当該違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合における違反行為に付する付加点数が13点とされており,別表第二では,その第一欄(当該違反行為をした日を起算日とする過去3年以内において道路交通 違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合における違反行為に付する付加点数が13点とされており,別表第二では,その第一欄(当該違反行為をした日を起算日とする過去3年以内において道路交通関係法規による行政処分の前歴がない者)に該当する者の第二欄は35点以上,第三欄は25点から34点まで,第四欄は15点から24点までと定められていた。 被告は,原告に対し,平成13年7月12日付けで,本件事故において,追越方法等に違反があったこと(2点)及び死亡事故を起こした(13点)ことを理由として,15点の累積点数を加算の上,本件免許を取り消した(本件取消処分)。 (4) 原告は,被告に対し,同年8月1日,本件取消処分に対する異議申立てをしたが,被告は,同年10月18日付けで,原告の異議申立てを棄却するとの決定をした。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件事故に際し,原告に車両追越しに関する違反行為があったか。 (被告の主張)追越しとは,車両が他の車両に追いついた場合において,その進路を変えてその追いついた車両等の側方を通過しかつ,当該車両等の前方に出ることをいう(道路交通法2条1項21号)とされており,また,同一の道路上にある他の車両に追いついて進路を変更し,その前車の直前に出るまでの必要はなく,斜めに出た場合でも追越しに当たると解すべきであるところ,原告は,本件事故の直前,前車から約6.3メートルのところまで追いつき,これを追い越すために左側に進路を変更し,本件事故の発生地点から東方約10メートルに至るまで前車と並進走行し,本件事故がなければ追越しを完了していたものであるから,原告の前記一連の行為は追越しに当たるというべきである。 そして,原告は,この追越しの際,①右側から追い越すのが原則である(道路交通法28条1項参照 事故がなければ追越しを完了していたものであるから,原告の前記一連の行為は追越しに当たるというべきである。 そして,原告は,この追越しの際,①右側から追い越すのが原則である(道路交通法28条1項参照)ところ左側から追越しを行った,②自車線及び左側車線前方の状況の十分な把握と安全な運転に必要な注意をしていなかった,③原告は,第1車線に停車していたA車と第2車線を走行していた車両との間をすり抜けて通行しようとしていたところ,原告が,すり抜けて通過できると判断した第2車線を走行する車両とA車との間隔は,約2.3メートルと狭く,全幅1.39メートル,全長3.29メートルの原告運転の車両が安全に走行するには不十分であるところ,原告はこれを時速約40キロメートルないし50キロメートルですり抜けようとしていたのであり,これに本件事故において原告がA車の後部右半分に原告車前部左半分を衝突させていることなどを併せると,原告は,同条1項及び4項所定の必要な注意義務を怠ったというべきである。 (原告の主張)被告の主張は争う。 ア本件道路は,前提事実(2)のとおり,片側2車線の道路であり,車線変更は禁止されていない。原告は,単に左車線に車線変更しただけであり,左側から追越しをしたわけではない。また,追越しというためには,元の車線に戻る意思を有していることが必要であると解すべきところ,原告は,車線変更後,第2車線に戻る意思を有していなかった。 したがって,原告が車両追越しに関して違反行為をしたとの被告の主張は,前提を欠くものである。 イ A車は,第1車線上の歩道に近接した位置に停車していたから,本件道路の路側帯の幅約0.6メートルと第1車線の幅約3メートルの合計からA車の幅約1.4メートルを控除した約2.2メートルが原告車両の通行可能な幅であるところ,運転 接した位置に停車していたから,本件道路の路側帯の幅約0.6メートルと第1車線の幅約3メートルの合計からA車の幅約1.4メートルを控除した約2.2メートルが原告車両の通行可能な幅であるところ,運転者は,通常,停車車両と第1車線第2車線間の白線の中央を走るのではなく,むしろ停車車両と第2車線を走行する車両との中央を走行するものであることからすると,幅約3メートルの第2車線を走行しているのが小型車であり,これが車線の中央を走行しているとすると,その車幅は約1.7メートルであるから,第1車線第2車線間の白線までは約0.65メートルの間隔があることになり,A車と第2車線を走行する車両との間隔は約2.85メートルとなる。原告車は車幅約1.4メートルであるから,その中央を通れば,約0.72メートルの間隔をとることができる。また,仮に,Aが歩道から約0.3メートル離れた場所にA車を停車させていたとしても,A車と第2車線を走行する車両との間には約2.55メートルの間隔があり,原告は,A車及び第2車線を走行する車両との間に,約0.57メートルの間隔をとることができる。このように約0.57メートルないし約0.72メートルの間隔があれば,一般の運転者は徐行することなく通常走行している上,道路交通法71条2号の3において,停車している通園通学バスの側方を通過するときは,徐行して安全を確認することと定められていることからすれば,それ以外の車両の側方を通過する車両には,徐行義務はなく,まして停止義務も存在しないこととなる。したがって,被告の前記主張のうち,③の点を原告の過失と評価することはできない。 (2) 原告に車両追越しに関する違反行為が認められる場合,本件事故は,原告の前記違反行為により発生したものか。 (被告の主張)前記(1)の被告の主張のとおり,本件事 過失と評価することはできない。 (2) 原告に車両追越しに関する違反行為が認められる場合,本件事故は,原告の前記違反行為により発生したものか。 (被告の主張)前記(1)の被告の主張のとおり,本件事故がなければ,原告の追越しが完了していたものであることに照らすと,本件事故は,原告の追越しによって生じたものというべきである。 (原告の主張)本件事故は,原告車と駐車していたA車との事故であり,また,原告が車線変更をした位置から本件事故が発生した地点即ちA車との距離は,40メートル以上あり,原告が時速40キロメートル(秒速11.1メートル)で走行していたとしても,3.6秒以上かかることからすると,原告が本件事故前にした車線変更が仮に追越しと評価され,追越しの際に違反行為があったとしても,これと本件事故との間には因果関係はないというべきである。 (3) 本件事故が,専ら原告の不注意によって発生したものか。 (被告の主張)ア Aは,本件事故直後,自車の運転席から南西に約5.5メートル離れた路上に倒れていた。また,原告は,警察官や検察官の取調べに対し,まさに衝突直前の危険が切迫した状況において,「被害者が私の方を振り向き,びっくりしたような顔をしていた。」と,原告がAの顔と向き合ったとする具体的かつ信憑性のある供述をしている。 これらのことからすれば,Aは,本件事故の時点において,A車の運転席の扉を開け,運転席側の扉付近に佇立していたか両足を地面に着け,自車からまさに離れようとしていたことは明らかである。 ところで,Aは,本件事故当時,椎間板ヘルニアに罹患していたことから,動作が鈍くなっており,降車の際も扉を開けてから降車するまでに通常人よりも時間がかかり,Aが自車の扉を開けてから降車するまでに少なくとも約3.8秒以上の時間を要していたとみることが ていたことから,動作が鈍くなっており,降車の際も扉を開けてから降車するまでに通常人よりも時間がかかり,Aが自車の扉を開けてから降車するまでに少なくとも約3.8秒以上の時間を要していたとみることができる。 これに原告が本件事故当時,原告車を時速40キロメートル(秒速11.1メートル)ないし50キロメートル(秒速13.9メートル)で走行させていたことを併せると,Aが自車の扉を開けた時,原告車は,本件事故の発生地点即ちA車から少なくとも40メートル以上後方の地点を走行していたこととなる。しかるに,原告は,本件事故の発生地点から10メートル後方の地点に至るまで,Aが自車から降車するのを認識していなかったのであり,自車から40メートル以上離れた地点を原告が走行していたという状況で,自車の扉を開けて降車しようとしたAにおいて,過失があったということはできず,他方,原告に前方の交通に注意しなかった過失(道路交通法28条4項参照)があったことは明らかであるから,本件事故は,専ら原告の不注意によって生じたものというほかない。 イ本件事故がAの過失により発生したとの原告の主張は争う。 原告車がA車の後方約10メートルの地点に差し掛かった際に,AがA車の扉を開けたとの原告の主張は,前記アのとおり,Aが椎間板ヘルニアに罹患しており,自動車から降車するのに時間を要していたこと,Aの体が本件事故により,約5.5メートル離れた車外に投げ出されたという客観状況からは矛盾するというほかない。 また,本件事故発生地点の約10メートル手前においてAがA車の扉を開けたのを見たので,Aを轢過しないよう急制動措置をとるとともにハンドルを左に切ったという原告の主張ないし供述は,原告が本件事故直後に実施された実況見分においてした,上記地点においてドアが開き人が降りたのを見たとの ,Aを轢過しないよう急制動措置をとるとともにハンドルを左に切ったという原告の主張ないし供述は,原告が本件事故直後に実施された実況見分においてした,上記地点においてドアが開き人が降りたのを見たとの供述から変遷している上,前記アの本件事故の客観的状況とも整合しないこと,原告の主張ないし供述を前提とすると,原告がA車の扉が開くのを視認してから本件事故発生までのわずか1秒間のうちに,Aを轢過しないよう急制動措置をとるとともにハンドルを左に切るといった冷静な判断をしていたこととなるが,原告が,このように冷静な判断に基づく措置をとることができるとは到底考え難いことに照らすと,採用することができない。 (原告の主張)原告車が,本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった時,AがA車から降車を完了したかその直前の状態であったとの点は否認し,本件事故が専ら原告の不注意によって発生したとの主張は争う。 以下の事実に照らすと,原告は,本件事故の発生地点すなわちA車が停止していた地点から約10メートル後方の地点において,A車の扉が開くのを目撃し,急制動措置を講ずるとともに,Aを轢過するのを回避するためにハンドルを左に切ったが,間に合わず,自車をA車に接触させて本件事故を発生させたのであり,本件事故の発生は,Aが後方を確認することなく自車の扉を開けて降車しようとしたことが原因であるから,専ら原告の不注意により本件事故が発生したということはできない。 ア原告は,本件事故を最初に申告した際,警察官に対し,本件事故発生地点に約10メートル後方において,A車の扉が開いたのに驚愕し,急制動措置を講じた旨述べているし,その後の警察官及び検察官の取調べ,本件にかかる刑事事件の被告人質問,原告本人尋問においても,一貫してその旨供述している。 イ椎間板ヘル の扉が開いたのに驚愕し,急制動措置を講じた旨述べているし,その後の警察官及び検察官の取調べ,本件にかかる刑事事件の被告人質問,原告本人尋問においても,一貫してその旨供述している。 イ椎間板ヘルニアを患い動作が鈍くなっていたAは,本件事故当時,A車の扉を開けてから降車するのに5ないし6秒かかるとされていることからすれば,被告の主張どおり,原告が本件事故発生地点の10メートル後方において,Aが自車から降車して佇立しているのを視認したとすれば,Aは,その5ないし6秒前には,A車の扉を開けていたことになる。 しかしながら,Aの妻の警察官に対する供述や実況見分の結果からみて,同女がA車から降車してから本件事故が発生するまでの間が2ないし3秒間であったところ,Aは,A車を下車する準備をしていた同人の妻から下車を促されてA車から下車することとしたのであり,同女が下車を開始した時点では下車する準備をしていたにすぎず,同女が下車してから2ないし3秒後に下車をしていたとは考えられず,Aは,同人の妻が下車を開始したころ,シートベルトを外し,それから自車の扉を開けたとみるのが自然であるから,AがA車の扉を開けたのは,同人の妻が下車してから1ないし2秒後,つまり本件事故発生の約1秒前とみるのが自然である。 また,Aが,原告がA車の扉が開いたと感じた時点から5ないし6秒前に,A車の扉を開けていたとすれば,原告が第1車線に車線変更後最初にA車の存在を認識した時点(Aの約42.8メートル後方を走行していた時点)で既にA車の扉は開いていたことになるが,これを裏付ける資料は何ら存在せず,かえって,原告は,この時点において,A車の扉は開いていなかったと明言しているのであり,この時点では,A車の扉は開いていなかったとみるほかない。そうだとすると,降車に5ないし6秒かかる ら存在せず,かえって,原告は,この時点において,A車の扉は開いていなかったと明言しているのであり,この時点では,A車の扉は開いていなかったとみるほかない。そうだとすると,降車に5ないし6秒かかるAが,原告がA車の扉が開いたと感じた地点までの約31.3メートルを走行する約3秒の間に,A車の扉を開けて降車を完了しているとは到底考えられない。 ウ A車は,本件事故により,左前方に押し出され,最終的には歩道に乗り上げる形で停車し,Aは,車外に放り出され,路上に転倒した。この事故態様からすれば,Aが完全に運転席に着席しているとは考えられないものの,同人が本件事故の時点で運転席から少しでも腰を浮かした状態であれば,同人が車外に放り出されることも十分考えられる。 そして,人が自動車の扉を開ける際には,扉内側の取っ手に体重をかけて押すようにして扉を開けるのであるから,扉を開け終わった段階においては,車外に重心が存在するとしても何ら不思議ではない。このことからすれば,Aが本件事故により車外に放り出されたことから,直ちに,同人が本件事故の3秒以上前にA車の扉を開け,運転席付近に佇立していたということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1),(2)はさておき,争点(3)から先に判断する。 (1)ア前提事実(2)のほか,証拠(甲1,2,4の1ないし4・6ないし11・14・20ないし24,5の3ないし6,6ないし8,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) Aは,平成12年秋ころから腰痛を訴え,平成13年1月16日,医療機関を受診し,椎間板ヘルニアと診断され,同月17日から同年3月10日までの間,同医療機関に入院して治療を受け,退院後も約2週間に1度の割合で,同医療機関に通院して治療を受けていた。 Aの平成13年6月当 し,椎間板ヘルニアと診断され,同月17日から同年3月10日までの間,同医療機関に入院して治療を受け,退院後も約2週間に1度の割合で,同医療機関に通院して治療を受けていた。 Aの平成13年6月当時における状態は,腰痛が持続し,太股の力が弱く,左大腿前面のしびれが残存していた。そのため,Aは,腰に負担をかけないようにするために動作が鈍くなり,車両からの降車に際しても,右手を右太股の下に入れて持ち上げるようにして先に右足を車外へ出してから左足を手を添えることなく車外に出して降車するという動作をするため,A車(座席の高さは地上72センチメートルである。)から降車するのに,5.43ないし6.02秒あるいはそれ以上の時間を要していた。 (イ) 原告は,平成13年6月15日午前10時30分ころ,雨上がりで路面が湿潤していた本件道路(最高時速が50キロメートルと規制され,また,駐車禁止とされており,各車線幅員は,第1,第2車線とも約3メートルであり,第1車線から段差のある歩道までの間にある路側帯の幅員は,約0.6メートルである。)の第2車線を東から西に向かって,時速約40ないし50キロメートルで原告車(車幅139センチメートル,長さ329センチメートル)を運転して走行していた。原告車の前方には,約10台の車両が連なって走行しており,前車(普通乗用自動車)がしばしばブレーキをかけ,これに合わせて,原告も自車にしばしばブレーキをかけつつ走行しなければならなかった。原告は,この状況を走りにくいと感じ,通行車両が見当たらず空いていた第1車線に出て,第2車線の前方車両をその左側から追い越して行くことを企図して,本件事故の発生地点から約65.5メートル後方の地点において,先行車の後方約6.3メートルに接近した際に,左折の合図をし,そこから先行車との距離を保 車両をその左側から追い越して行くことを企図して,本件事故の発生地点から約65.5メートル後方の地点において,先行車の後方約6.3メートルに接近した際に,左折の合図をし,そこから先行車との距離を保ちつつ約12.5メートル走行した地点(本件事故の発生地点の約53メートル東方)において,時速約50キロメートルに加速しつつ,第2車線から第1車線に車線変更をした。 Aは,そのころ,A車を本件道路上の歩道から約30センチメートル離れた路側帯上に停車させ,その助手席に同乗していた同人の妻がシートベルトを外したのとほぼ同じころにシートベルトを外し,同女から近くのパン屋にパンを買いに行くために一緒に降車するよう誘われたことから,自身も降車することを決めた。 (ウ) 原告は,本件道路の第2車線から第1車線への車線変更を完了した直後,約42.8メートル前方の道路左側にA車(車幅139センチメートル,長さ329センチメートル)が扉を閉じた状態で停車しているのを認めた。そこで,原告は,第2車線に再度車線変更をしようとして,約2.65秒間にわたり,原告車の右側ドアミラーを見たり,第2車線を直接目視したりして,車線変更の機会を窺ったが,第2車線で原告車に後続して走行していた車両(普通乗用自動車)が,前車との車間距離を詰め,第1車線を走行する原告車の右前方と後方に2台の普通乗用自動車があり,これらと併走する状態となったことから,原告は,第2車線への車線変更を断念し,第1車線の前方に停車していたA車と第2車線を走行する併走車両との間を縫って通り抜けることとした。 Aは,同人の妻がA車から降車する時点では,運転席の扉を開けていなかった。Aの妻は,降車後本件事故に至るまでの間,Aの動静を見ていなかった。 (エ) 原告は,原告車を時速40ないし50キロメートルで運 は,同人の妻がA車から降車する時点では,運転席の扉を開けていなかった。Aの妻は,降車後本件事故に至るまでの間,Aの動静を見ていなかった。 (エ) 原告は,原告車を時速40ないし50キロメートルで運転し,本件道路の第1車線のほぼ中央付近を走行し,前方に停止しているA車の約10メートル手前まで接近したところ,A車の運転席側の扉が開いたように感じ,人が降りてくると思い,すぐに原告車に急制動措置をかけたがスリップし,原告車を左に転把しようとしたもののスリップ状態にあった原告車の進路を変更することができないまま進行させ,約1.3メートル手前において,Aの驚いた顔を認めた直後に,原告車の車体前面左側部分をA車の後部右側部分に追突させた(衝突時の原告車の角度はA車の正中線よりわずかに右向きであった。)。原告車は,右前方にそのまま逸走し,追突した地点から約10.6メートル先の第2車線上にほぼ北西方向に向かって停止し,A車は,追突した地点から約9メートル先の道路左脇の段差のある歩道上に,右前後輪を路側帯に残し,車体の多くの部分を乗り上げた状態で停止した。Aは,追突の衝撃により,転倒し,A車運転席扉付近から約5.5メートル離れた地点において,原告車の左側後部付近の下側に下半身が入った状態で頭を南側に向けて仰向けに倒れていた。 Aの妻は,A車から下車し,歩道を2,3歩歩き,A車から約1.5メートル離れた歩道上で,原告車がA車に追突する音を聞いた。 (オ) Aは,本件事故により,左側頭蓋骨骨折,外傷性くも膜下出血及び脳挫傷等の傷害を負い(これらの頭部の傷害及び左足踵の上方17センチメートルの下腿部前面の皮下出血以外に,Aの身体に外傷はなかった。),本件事故発生の日の翌日である平成13年6月16日午前2時33分ころ,脳挫傷,外傷性くも膜下出血により,入院 足踵の上方17センチメートルの下腿部前面の皮下出血以外に,Aの身体に外傷はなかった。),本件事故発生の日の翌日である平成13年6月16日午前2時33分ころ,脳挫傷,外傷性くも膜下出血により,入院先の病院において死亡した。 イ原告は,前記ア(エ)の認定に反し,原告において本件道路の第1車線を第2車線に若干はみ出すように原告車を運転してA車に接近したと主張し,証拠(甲8,原告本人)中には,この主張に沿う原告本人の供述記載ないし供述部分がある。 しかしながら,前記ア(ウ),(エ)認定のとおり,第1車線を走行する原告車の右前方及び右後方の第2車線上を走行する車両が原告車と併走しており,原告車が第2車線に若干はみ出すように走行するには危険な状態であったこと,本件事故において,原告車の車体前面左側部分とA車の後部右側部分とが衝突し,その際の原告車の角度はA車の正中線よりわずかに右向きであったことに照らすと,原告本人の前記供述記載ないし供述部分は上記客観的事実に反するものであるから採用することができず,他に,原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。 (2)ア被告は,①Aの身体が本件事故の衝撃により自車の運転席付近から約5. 5メートル離れた路上に放り出されて倒れていた(前記(1)ア(エ))こと及び原告が本件事故の直前においてAが自車を降りたこと及び同人の驚いた顔を見た(前記(1)ア(エ))と明確に供述していることからすれば,Aは,本件事故直前において,自車の運転席の扉を開け,運転席側の扉付近に佇立していたか両足を地面に着け,自車からまさに離れようとしていたところであったところ,②Aが自車の扉を開けて降車するには少なくとも約3.8秒以上要したのであり,原告が自車を時速約40ないし約50キロメートル(秒速約11.1ないし約13. 9メートル)で走行 いたところであったところ,②Aが自車の扉を開けて降車するには少なくとも約3.8秒以上要したのであり,原告が自車を時速約40ないし約50キロメートル(秒速約11.1ないし約13. 9メートル)で走行していた(前記(1)ア(エ))ことからすれば,Aが自車の扉を開けた時点では,原告車はA車の停車していた本件事故の発生地点から少なくとも40メートル以上後方を走行していたこととなるとして,自車の後方40メートル以上の地点において走行している車両が存在しない状況で,自車の扉を開けて降車しようとしたAには,本件事故につき指摘すべき過失はなく,本件事故は,専らAが扉を開け降車していたことを看過して第1車線を走行していた原告の不注意によって生じたものである旨主張する。そして,証拠(甲4の4・7・15ないし19,5の3ないし5)によれば,Aと同世代の健常者2名が,A車と同車種の車両の扉を開けてから両足を地面に着地して降車するのに要した時間は,普通に降車する場合,1名は1.59秒ないし2.26秒,他の1名は1.50秒ないし1.98秒,両足を揃えて着地する場合,1名は3.87秒ないし4.28秒,他の1名は2.24秒ないし2.56秒であったこと,また,原告は,本件事故直後に実施された実況見分の際,本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点において,扉が開き人が降りるのを見た旨説明したこと,平成13年9月17日付け実況見分調書(甲4の7)には,原告が,同月11日に実施された3度目の実況見分の際,本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点において,A車の扉が開いているのを見たと説明した旨の記載があること,原告が,同年8月24日に実施された和歌山県海南警察署司法警察員による取調べの際,本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点において,A車の運転席側の いるのを見たと説明した旨の記載があること,原告が,同年8月24日に実施された和歌山県海南警察署司法警察員による取調べの際,本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点において,A車の運転席側の扉が開きAが降りてきたので,驚いて自車に急制動措置をかけた後,Aが驚いたような顔をしていたことを見た旨供述し,同年9月27日に実施された同警察署司法警察員による取調べの際,同月17日付け実況見分調書に記載された自身の指示説明が正しいこと及び本件事故の発生した地点の約1.3メートル後方の地点においてAの驚いた顔を見た旨供述し,平成14年4月2日和歌山地方検察庁検察官による取調べの際,原告車に急制動措置を講じた後A車に追突する寸前にAが驚いたような顔をしていたのを見た旨供述したことが認められる。 しかしながら,前記(1)ア(ア),(エ)認定のとおり,Aは,椎間板ヘルニアに罹患しており,腰に負担をかけないようにするため動作が鈍くなっており,降車に際しては,右手を右太股の下に入れて持ち上げるようにして先に右足を車外に出してから左足を手を添えることなく車外に出して降車するという動作をするため,A車からの降車には5.43ないし6.02秒あるいはそれ以上の時間を要していたこと,原告が本件事故直前において自車を時速約40ないし約50キロメートル(秒速約11.1ないし13.9メートル)で走行させていたことに照らすと,Aが,原告がA車の扉が開くのを認めた同車の後方約10メートルの地点において,降車を完了するかその寸前であったとすれば,原告車が本件事故の発生地点の後方約60.27ないし約83.63メートルの地点を走行していた時に,自車の扉を開けていなければならないこととなるが,これは,前記(1)ア(ウ)認定のとおり,原告が本件道路の第2車線から第1車線に車線変更 0.27ないし約83.63メートルの地点を走行していた時に,自車の扉を開けていなければならないこととなるが,これは,前記(1)ア(ウ)認定のとおり,原告が本件道路の第2車線から第1車線に車線変更した直後に約42.8メートル前方に停車していたA車を見た際に,A車の運転席側の扉が開いていなかったことと矛盾する。また,Aが,原告が約42. 8メートル先に停車していたA車を見た直後に自車の扉を開けたとすれば,被告主張のとおり,Aが降車を完了していたかその直前だったとするならば,Aは,原告が自車を約32.8メートル走行させる2.35ないし2.95秒間のうちに降車を完了させるかその寸前でなければならないこととなるが,これは,Aと同世代の健常者が両足を揃えてA車と同車種の車両から扉を開けて降車するのに要する時間とは矛盾しないものの,前記のとおり,椎間板ヘルニアに罹患し,動作が鈍くなっていたAの降車に要する時間としては短すぎることとなる。 また,前記(1)ア(エ),(オ)認定のとおり,Aが自車の運転席扉付近から約5. 5メートル離れた地点において倒れていたこと,Aに頭部と左足以外に外傷がなかったことからすれば,原告車がA車に追突した瞬間,Aの重心が車外にあったことから同人が本件事故の衝撃により放り出されたことは合理的に推認されるものの,前記(1)ア(ア)認定の事実及び証拠(甲4の4・17,7)によれば,A車は,座席の高さが地上72センチメートルの普通(軽四輪)貨物自動車であり,自分の重心を扉側に持っていくようにして扉を開ける場合は,扉を開けた際に,上半身及び体の重心が車外に出る可能性は否定できないことが認められ,この事実に照らすと,Aの体が本件事故により自車の運転席扉付近から約5.5メートル離れた位置に転倒したことから,直ちに原告車がA車に追突した瞬 の重心が車外に出る可能性は否定できないことが認められ,この事実に照らすと,Aの体が本件事故により自車の運転席扉付近から約5.5メートル離れた位置に転倒したことから,直ちに原告車がA車に追突した瞬間において,Aが自車から降車を完了するかその寸前であったとまで推認することはできない。 そして,証拠(甲4の4・7,5の3ないし5,7,8,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故発生直後に実施された実況見分において,本件事故の発生した地点から約10メートル後方の地点で,A車の扉が開いたのを認め,それと同時にAが降りてきたと感じたことから,同地点において扉が開き人が降りたのを見た旨指示説明し,同年8月24日に実施された取調べにおいて,和歌山県海南警察署司法警察員に対し,Aが腰痛を呈していたことや通常人が降車する場合でも扉を開けてから降車するまでに約2秒かかることを指摘されても,前記地点において,Aが扉を開けて車外に出てきた旨の供述をしていること,原告は,同年9月11日に実施された3度目の実況見分においても,本件事故の発生した地点から約10メートル後方の地点において,Aが自車の扉を開けたと説明したところ,同警察署司法警察員から,Aの倒れていた位置等から不自然であるなどと指摘されたことから,同地点において扉が開いているのを認めたと指示説明を変え,同月27日に実施された取調べにおいても,同司法警察員に対し,同地点において,A車の扉が開いたように思ったが,時間的な経過等から既に扉が開いていたのだと思う旨供述するとともに,3度目の実況見分の結果を記載した実況見分調書(同月17日付け,甲4の7)の指示説明が正しい旨供述したものの,平成14年4月2日に実施された取調べにおいて,和歌山地方検察庁検察官に対し,3度目の実況見分の際の指示説明のうち 載した実況見分調書(同月17日付け,甲4の7)の指示説明が正しい旨供述したものの,平成14年4月2日に実施された取調べにおいて,和歌山地方検察庁検察官に対し,3度目の実況見分の際の指示説明のうち,A車の扉が開いているのを認めた地点(本件事故の発生地点から約10メートル後方の地点)とあるのは,扉が開いたと思った地点ないし扉が開いたのを認めた地点であり,実況見分調書上の指示説明は自己の認識と異なる旨供述したこと,原告は,本件事故に関する刑事事件の被告人質問において,本件事故が発生した地点から約10メートル後方を走行していた時に,A車の扉が開き,人が降りてくると思ったと供述し,本件訴訟においても同様の供述をしていることが認められ,以上の原告の供述経過に照らすと,原告の本件事故当時の認識は,本件事故の発生した地点から約10メートル後方の地点を走行していた際,Aが降りてくる姿自体を見たのではなく,A車の扉が開いたのを見たというものであること,原告の本件事故直後の実況見分における指示説明は,あくまでA車の扉が開いたという趣旨にとどまること,原告が平成13年9月11日の3度目の実況見分及び同月27日の取調べにおいて,前記地点において扉が開いているのを見たと指示説明ないし供述したのは,司法警察員からの働きかけがあったからであると認められる。したがって,前記地点において,Aの姿を見たという趣旨の原告の供述記載部分はにわかに採用することができない。 以上によれば,Aの身体が,本件事故により,A車運転席側扉から約5.5メートル離れた地点に倒れていたことは,原告が本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった際,Aが自車から降車を完了し又はその寸前であったとの根拠とはならず,また,同地点においてAの姿を見た旨の原告の供述ないし指示説明もA車の 本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった際,Aが自車から降車を完了し又はその寸前であったとの根拠とはならず,また,同地点においてAの姿を見た旨の原告の供述ないし指示説明もA車の扉が開いたという趣旨ないし捜査官の働きかけによるものでありにわかに採用することができず,原告が扉を開いたのを認めて急制動措置をとった後にAの驚いたような顔を見た(原告がAの体の他の部分を見たことを認めるに足りる証拠はない。)という事実のみでは,Aが,原告が本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった際,A車から降車を完了していたか又はその寸前であったと認めるには足らない。 また,仮に,この時点において,AがA車から降車を完了していたか又はその寸前であったとしたら,Aが椎間板ヘルニアに罹患したために動作が鈍くなっており,自車からの降車に5.43ないし6.02秒あるいはそれ以上要していたことと矛盾することとなるから,原告が本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった際,Aが自車から降車を完了し又はその寸前であったことを前提とする被告の主張は,その前提を欠き,採用することができない。 イもっとも,AがA車の扉を開け降車途中であったところ,原告がこれを看過して,時速40ないし50キロメートルで自車を走行させ,本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かった際,A車の扉が開いているのを認めたのだとすれば,本件事故が,専ら車線変更後に前方を注視することなく走行を継続した原告の不注意によって生じたものということができる。 しかしながら,乙1によれば,人の反応時間を0.75秒(運動神経の普通の人の反応時間は0.6ないし0.8秒である。),路面の摩擦係数を0.7と仮定すると,走行中の車両が制動措置を講じてから停止するまでの しながら,乙1によれば,人の反応時間を0.75秒(運動神経の普通の人の反応時間は0.6ないし0.8秒である。),路面の摩擦係数を0.7と仮定すると,走行中の車両が制動措置を講じてから停止するまでの距離(以下「停止距離」という。)は,時速40キロメートルで走行している場合には17.34メートル,時速50キロメートルで走行している場合には24.49メートルであると認められ,前記(1)ア(イ)認定のとおり,本件事故当時,本件道路の路面は,湿潤していたので,原告車の停止距離は,前記認定の停止距離距離よりも長くなると推測されるところ,Aの体が本件事故により自車の運転席扉付近から約5.5メートル離れた位置に倒れていたという位置関係は,前記ア説示のとおり,A車が,座席の高さが地上72センチメートルの普通(軽四輪)貨物自動車であり,自分の重心を扉側に持っていくようにして扉を開ける場合には,扉を開けた際に,上半身及び体の重心が車外に出る可能性を否定できないことからすると,Aが,原告車が本件事故の発生した地点の約10メートル後方に差し掛かった時点において,すでに扉を開け降車途中であったことを裏付ける証拠になるとはいえず,他に,Aが,原告車が本件事故発生地点から約10メートル後方の地点に差し掛かる前の時点においてA車の扉を開け,原告車が同地点に差し掛かった時点において降車途中であったことを認めるに足りる証拠はなく,Aがいつの時点で自車の扉を開けたかは不明であるといわざるを得ない。 (3) そこで,前記(1),(2)認定の事実によって以下判断する。 前記(1)ア(イ)ないし(エ)認定の事実によれば,原告は,本件道路の第1車線を走行中,同車線上に停車中のA車と第2車線を走行中の普通乗用自動車との間を縫って通り抜けようとしていたところ,Aが自車(車幅139センチ )ないし(エ)認定の事実によれば,原告は,本件道路の第1車線を走行中,同車線上に停車中のA車と第2車線を走行中の普通乗用自動車との間を縫って通り抜けようとしていたところ,Aが自車(車幅139センチメートル)を歩道から約30センチメートルの地点に停車していたことからすれば,第1車線(路幅約3メートル,路側帯約60センチメートル)上には,A車両の右側約191センチメートルの通行可能な空間幅があり,第2車線を走行する車両の走行に影響しないよう第1車線をはみ出ないように原告車を走行させるとしても,原告車とA車との間に約52センチメートルの隙間が存在すると認められ,これによれば,原告車は,一応,A車と第2車線を走行中の車両とを縫うように走行することは可能であったということができる。これに,前記(1)ア(エ)認定のとおり,原告が,A車の約10メートル手前まで接近したところ,A車の運転席側の扉が開いたように感じ,急制動措置をかけるなどしたが,原告車がスリップした状態で進行し,原告車前面左側部分をA車後方右側部分に接触させ,もって本件事故が発生したことを併せると,原告が,A車と第2車線を走行中の車両の間を縫うように原告車を走行させようとして,第1車線を時速40ないし50キロメートルで進行したことが,追越しに際しての違反行為に該当するといえるかはともかく,AがA車の扉を開けて降車しようとしたことが,本件事故の誘因であることは明らかである。そして,前記(2)イ説示のとおり,Aが自車の扉を開けた時点が不明である以上,前記(1)認定の事実のもとでは,Aが,原告の主張するように,A車の運転席側の扉を原告車が本件事故発生地点の約10メートル手前に差し掛かった際に開けたことは十分にあり得ることであり,その場合にはAに本件事故発生につき相当の過失があったといわざる するように,A車の運転席側の扉を原告車が本件事故発生地点の約10メートル手前に差し掛かった際に開けたことは十分にあり得ることであり,その場合にはAに本件事故発生につき相当の過失があったといわざるを得ず,よって本件事故が専ら原告の不注意によって発生したと認めることはできない。そうとすると,本件においては,本件事故が専ら原告の不注意によって発生したとの被告主張事実はこれを認めることができないというべきである。 2 結論以上によれば,本件事故によりAが死亡したのは,専ら原告の不注意によるものであるということはできないから,被告が,原告に対し,車両の追越しに関し違反行為(2点)があり,これにより本件事故が発生したとしても,13点の付加点数を累積することはできないというべきであり,この13点を累積して,原告の違反点数の合計が15点に至ったとして,本件取消処分を行ったことは違法であるといわざるを得ない。よって,本件取消処分の取消しを求める原告の本件請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官秋本昌彦裁判官成田晋司

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