令和4(わ)626 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、殺人未遂、傷害

裁判年月日・裁判所
令和5年12月12日 さいたま地方裁判所
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判決文本文19,138 文字)

- 1 -主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。 さいたま地方検察庁で保管中の猟銃2丁(令和4年さいたま領第930号符号1及び2)及び催涙スプレー1本(令和4年さいたま領第930号符号6-1)を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、被告人の実母であるAと同居しながら四六時中Aの介護をしていたところ、Aは、平成29年1月頃からC医師が理事長を務める医療法人が運営するD在宅クリニック、E在宅クリニック及びF在宅訪問看護(以下、併せて「本件クリニック等」という。以下に表記する理学療法士や医療相談員は本件クリニック等に所属する者である。)において、C医師による在宅医療を受けながら、理学療法士I、Mらが関わる中で、後記被告人方でリハビリ施術を受けており、Uは、医療相談員として被告人の電話に対応するなどしていた。 令和4年1月26日午後3時45分頃、その少し前から症状を悪化させていたA(当時92歳)の死亡が確認された。これに対し、被告人が蘇生措置を強く求めたためC医師はAに強心剤を投与したが、心臓マッサージは行わなかった。その後、被告人は、I、M及びUのことが納得がいかないとして線香をあげに来るように求めたことから、C医師、I、M及びUを含む7名が同月27日午後9時に訪問することとなった。被告人は、Aが亡くなったことを悔やむ中で、C医師による死亡直前の対応等に対し一方的な恨みを募らせ、Aが死んだのはC医師のせいで殺されたも同然であるので「断ずる」旨のメモを、続けて、I、M及びUの3名による過去のリハビリの方法や相談の対応に一方的な恨みを募らせ、3名のせいで母が死んだも同然であるなどとして「3名も断ずる」旨のメモを作成し、日付(1月27日) 旨のメモを、続けて、I、M及びUの3名による過去のリハビリの方法や相談の対応に一方的な恨みを募らせ、3名のせいで母が死んだも同然であるなどとして「3名も断ずる」旨のメモを作成し、日付(1月27日)と名前を書き、自害するなどと書いたメモも作成した。また、被告人は、C医師らが被告人方を訪問- 2 -するまでの間に、別表番号1記載のレミントン銃1丁(以下「レミントン」という。)及び別表番号2記載のベレッタ銃1丁(以下「ベレッタ」という。)や弾丸を準備し、同日午後4時30分頃には、銃砲店に対して水平2連の散弾銃(ベレッタ)で強い弾を発射することができるかを問い合わせた。 同日午後9時頃、C医師ら7名が被告人方を訪問すると、被告人はC医師に対し、死後72時間以内であれば蘇生する可能性があると主張し、再度Aに蘇生措置として心臓マッサージを行うよう求めたが、C医師は、これを断り、エコー検査をしてAの心臓が停止していることを明らかにした。そのうち、被告人は、銃身が長いモデルガンをC医師に示してBB弾を天井に向け発射するなどして購入を求めたが断られ、その後、C医師らが被告人方6畳洋間で線香をあげ終わるまでの間に同モデルガンとレミントンをすりかえ、C医師らが線香をあげ終わった6畳洋間の入口付近に戻り、C医師と対峙した。 (罪となるべき事実)被告人は、埼玉県公安委員会の許可を受けて、標的射撃の用途に供するため、別表記載の散弾銃2丁を所持するものであるが、第1 C医師(当時44歳)に対し、何度も電話連絡をしたのに状態が悪化したAのところに直ちにかけつけなかったことなどに一方的に恨みを募らせ、法定の除外事由がないのに、同日午後9時15分頃、埼玉県ふじみ野市(住所省略)の被告人方(当時、以下同じ。)において、C医師に対し、殺意をもって、レミントン(令 かったことなどに一方的に恨みを募らせ、法定の除外事由がないのに、同日午後9時15分頃、埼玉県ふじみ野市(住所省略)の被告人方(当時、以下同じ。)において、C医師に対し、殺意をもって、レミントン(令和4年さいたま領第930号符号1)で弾丸1発を発射し、同人の胸部に命中させ、よって、その頃、同所において、同人を前胸部射創による心破裂により死亡させて殺害した。 第2 令和元年11月頃までAのリハビリを担当していた理学療法士I(当時41歳)がその頃歩行訓練を行わなかったことなどのせいでAが死亡したと一方的に恨みを募らせ、法定の除外事由がないのに、判示第1の日時場所において、Iに対し、殺意をもって、レミントンで弾丸1発を発射し、同人の右側腹部に命中させたが、同- 3 -人に、胆のう全摘出を伴い入院加療66日間を含む加療121日間を要する肝損傷、横行結腸損傷、胆のう損傷及び多発肋骨骨折の傷害並びに加療期間不明の腹壁瘢痕ヘルニアの傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった。 第3 前記第2の発砲後、医療相談員B(当時32歳)が被告人が持っていたレミントンを両手で押さえつけるなどしてきたため、これを取り返そうと考え、同日午後9時16分頃、被告人方において、Bに対し、その顔面に催涙スプレー(令和4年さいたま領第930号符号6-1)を吹きかける暴行を加え、よって、同人に全治まで約2週間を要する両点状表層角膜症、両化膿性結膜炎の傷害を負わせた。 第4 医療相談員U(当時42歳)の相談対応が良くなかったことなどに一方的に恨みを募らせ、法定の除外事由がないのに、同日午後9時18分頃、被告人方において、1階西側窓から、被告人方先路上にいたUに対し、殺意をもって、ベレッタ(令和4年さいたま領第930号符号2)で弾丸1発を発射したが、危険を感じて身をか のに、同日午後9時18分頃、被告人方において、1階西側窓から、被告人方先路上にいたUに対し、殺意をもって、ベレッタ(令和4年さいたま領第930号符号2)で弾丸1発を発射したが、危険を感じて身をかがめるなどした同人の付近を弾丸が通過して命中しなかったため、殺害の目的を遂げなかった。 (争点に対する判断)第1 争点令和4年1月27日午後9時15分頃、被告人方において、被告人が被告人方1階6畳洋間(以下「6畳洋間」という。)にいるC医師に対し、レミントンでスラッグ弾を1発発射し、その胸部に命中させ、前胸部射創による心破裂により死亡させたこと(以下「第1事件」という。)、その直後に、被告人が手にしていたレミントンからスラッグ弾1発が発射され、6畳洋間にいたIの右側腹部に命中し、判示の傷害を負わせたこと(以下「第2事件」という。)、Bに対し、催涙スプレーを吹きかけ、判示の傷害を負わせたこと(以下「第3事件」という。)、その後、被告人方の1階西側窓から、被告人方先路上に向けてベレッタで散弾を1発発射したが、Uの付近を通過し同人に命中しなかったこと(以下「第4事件」という。)は当事者間で争いがなく、関係証拠により明らかである。犯罪の成否に関する本件- 4 -の争点は、第1、第2及び第4事件の各発射行為の際に、被告人に殺意があったか否かであり、第4事件については、発射行為の危険性も争点となっている。また、弁護人は第2事件では誤射であると主張するため発射罪(銃刀法31条の11第3項、10条2項)の成否も争われている。 当裁判所は、判示のとおり、C医師及びIに対し、殺意をもって、連続的に散弾銃で弾丸を発射したことは明らかであり、また、殺意をもって、Uの身体に向けて散弾銃で弾丸を発射しており、それがUの生命を害する危険が高いことも明らかで C医師及びIに対し、殺意をもって、連続的に散弾銃で弾丸を発射したことは明らかであり、また、殺意をもって、Uの身体に向けて散弾銃で弾丸を発射しており、それがUの生命を害する危険が高いことも明らかであると認めた。以下にその理由を説明する。 第2 争点に関する判断 1 第1事件及び第2事件について⑴ 第1事件の発射状況等についてアレミントンでスラッグ弾を発射すると、銃口前方約1.5メートル先に約25ミリメートル間隔で設置した合板(厚さ約9ミリメートル)16枚を貫通するほどの威力があり、スラッグ弾は、猪や熊等の大型獣を撃つために用いられる。 イ第1事件の発射直前に被告人とC医師が向かい合う状況を6畳洋間のAが横たわるベッド(以下「ベッド」という。)の西側付近に立って見ていたUは、廊下との境目辺りにいた被告人がC医師の顔の方にモデルガンだと思った銃の銃口を向けると、C医師が銃口を手で半時計周りによけるような動作をした後、銃口がC医師の胸辺りに来てすぐに発砲があり、撃たれた場所を押さえながらC医師が倒れた旨供述し、ベッド北側にいたMは、6畳洋間の入口境目辺りにいた被告人が同洋間の真ん中よりは入口寄りにいたC医師の胸に銃身を向けて構えた際にC医師が手で払いのけるような動作をした直後に発砲があってC医師が仰向けに倒れた旨供述し、6畳洋間入口の敷居付近に立ちC医師の方に向いていたKは、自身の右後ろからC医師の胸の辺りに向かって床と水平に長いものが現れ、その後バンッと発砲があってC医師がううっとうなって倒れ、もう1回バンッと音がしてIが倒れたので、右を向いて被告人の銃を両手で掴んだ旨供述し、直後に銃撃を受けたIも、C医師の- 5 -右後方にいて、ふすま辺りにいた被告人が胸辺りの前でモデルガンを構えていたところ、爆発するような大きな音が 、右を向いて被告人の銃を両手で掴んだ旨供述し、直後に銃撃を受けたIも、C医師の- 5 -右後方にいて、ふすま辺りにいた被告人が胸辺りの前でモデルガンを構えていたところ、爆発するような大きな音がしてC医師が倒れ、倒れた方を見ていたらお腹に焼けるようなすごい痛みを感じた旨を供述し、Bも、モデルガンだと思った銃の発射音がした後、銃を掴んでいるKに加勢したことなどを供述している。 ウ細かい点で差異はあるが、いずれの供述も、発射前後の状況について具体的な供述をしたものであり、いずれも被告人がC医師の胸等の方に向けて銃身を構えていた趣旨を述べていて供述が合致し、各供述の内容は格別疑わしい点はない自然なものであって、C医師の傷や壁に残る銃痕の位置(後記オ)や発射実験等からも銃口が水平な状態で発射されたと推認される点ともよく整合する。録音された音声(甲196)によれば被告人がモデルガンを持ち出し、BB弾を打った際にもC医師は買取りをきっぱり断っていることが認められ、目の前の銃身をよける動作をC医師がしたというMやUの供述部分も自然である。そうすると、UやMは被告人の手元も含め見えていた旨を述べており、IやKも同趣旨の供述をしているので、被告人は6畳洋間に近い位置でレミントンを構えていたといえる。そして、6畳洋間は約266センチメートルの奥行きであって、その南側には物が置かれ、廊下寄りの場所にC医師が立って被告人と対峙していたことは被告人も含め関係者が一致して供述している。被告人がいた廊下の幅は約83センチメートルしかなく、被告人は全長約115センチメートルのレミントンを構えていたのであるから、これらの事実だけでも銃身は6畳洋間側にかなりはみ出していたと推認されるところ、上記証人の供述等によれば、C医師とレミントンの銃口との距離は、C医師が手で触 トルのレミントンを構えていたのであるから、これらの事実だけでも銃身は6畳洋間側にかなりはみ出していたと推認されるところ、上記証人の供述等によれば、C医師とレミントンの銃口との距離は、C医師が手で触れられる程度に近かったと認められる。 エなお、弁護人は、UやMがC医師が銃身をよけながら被告人を注意した旨述べる点が、録音された音声(甲196)にないとか、無言で銃口を払いのけることは考えにくいので、信用できないなどと主張する。被告人を除くいずれの者もレミントンがモデルガンであると思っていたので、C医師が無言でよける動作をしても不自然ではない。また、録音された微かな音声ではC医師が注意するような発言をした- 6 -ことは確認できないが、同日モデルガンを買わない旨きっぱりと告げた様子等からC医師が被告人を注意したと感じた可能性もある。いずれにしても、被告人が6畳洋間近くに立ち、C医師の胸等に向けて銃身を構えて弾丸を発射した旨一致して供述する部分の信用性には影響しない。このほか、弁護人はC医師の倒れ方に関するBやIの供述が不自然であるとか、本件クリニック等に属するU、M、Kらが本件の発生状況について話して刷り込みがなされた可能性があるなどの種々の主張をするが、いずれも特にこれらの者の信用性に影響するとはいえない。 オ次に、C医師の前部の銃創は仰臥位の状態で左足底部から銃創下端部まで133.5センチメートル(立位で肋骨前側が下がる。)、背部の銃創は左足底部から銃創下端部まで123.2センチメートルであること及び6畳洋間南側2本引窓の床上121センチメートルから136センチメートルの間にC医師に命中した弾丸が着弾したことから、C医師に命中したスラッグ弾の弾道はほぼ水平であると認められる。後記のG供述及び発射実験の内容も併せ考慮すると、レミント メートルから136センチメートルの間にC医師に命中した弾丸が着弾したことから、C医師に命中したスラッグ弾の弾道はほぼ水平であると認められる。後記のG供述及び発射実験の内容も併せ考慮すると、レミントンの銃身はC医師の胸の辺りに水平に向けられていたことが推認される。 カ以上によれば、被告人は、左手を引き金にかけ右手で先台を持ち、廊下側から、すぐ近くにいるC医師の胸の辺りに銃口を向けて床と水平にレミントンを構えていたと認められる。 キこれに対し、被告人は、線香をあげた後C医師が帰ろうとした時に頭に血が上って大けがをさせてやろうと、背中をトイレの壁につけて銃身を下向きにしC医師の右膝周辺を狙って発射したものの、銃身が跳ね上がりC医師の胸に弾が命中してしまった旨の弁解をする。しかし、そもそも膝を狙うというのに被告人が述べるような姿勢を取るのが不自然である上、被告人以外の者はモデルガンを持ち出したと思っているので、被告人が述べるように銃身が見えないようにして構える必要などない。被告人は、6畳洋間の引き戸の裏からレミントンを持ち出し、台所でマガジンキャップを取り付けてスラッグ弾をこめて戻ってきた上で上記姿勢で構えたなどというが、発砲前の音声を聞いても、モデルガンを持ち出した後に被告人が述べる- 7 -ような動きをうかがわせる音声も、それをするための十分な時間もなく、不自然である。さらに、被告人は、発射直前に外していたマガジンキャップをレミントンに取り付け、弾を1発込めた可能性も指摘するが、直前まで被告人の声がボイスレコーダーの録音に入っており(被告人は別人の声である旨述べるが、明らかに被告人の声である。)、弾を装填するための十分な時間はない。加えて、埼玉県警察科学捜査研究所で銃を専門的に取り扱っているG証人は、弾丸が発射されると発射方向と 人は別人の声である旨述べるが、明らかに被告人の声である。)、弾を装填するための十分な時間はない。加えて、埼玉県警察科学捜査研究所で銃を専門的に取り扱っているG証人は、弾丸が発射されると発射方向と反対方向に反動が生じ、この時、引き金部分が銃身軸より下にあるため、引き金部分が支点となって回転させるような動きが生じ、上方向へ跳ね上がりが起きる旨を供述しており、その信用性に疑いはない。そして、レミントンの発射実験(甲161、162)において、弾丸が極めて高速度で発射されるので、近い的であればそこに的中した後に銃身の跳ね上がりが生じることが明らかになっている(弁護人は、証拠上実験状況等が明らかにされていないとして信用できない旨主張するが、上記の実験結果の信用性に格別影響を及ぼさない。)。そうすると、水平に構えたレミントンの銃口からC医師に向けて水平に弾丸が発射されたはずであり、下向きに構えた銃身が発射により跳ね上ったとしても、水平に弾丸が飛ぶとはおよそ考え難い。被告人の主張は採用できない。 ク以上のとおり、被告人は、殺傷能力の高いレミントンを用い、至近距離でC医師の胸辺りへ銃身を向けて発射したと認められる。こうした発射行為は、C医師をほぼ確実に死亡させる危険な行為であり、これだけでも、殺意に基づくものであることを示しているといえる。 ⑵ 第2事件の発射状況等ア Iに対して第2事件の発砲がされた際には、第1事件の直後であったためにその影響やC医師の様子などに注意が向いていた。そのため、被告人の構えなどを見た者はいない。ただし、Kは、2発目の発砲後すぐに横を向いてレミントンを両手で押さえ廊下まで押した旨を述べており、Kがレミントンを押さえていたことはこれに加勢したBの供述とも整合しており、信用することができる。 - 8 -イ Iの供述 後すぐに横を向いてレミントンを両手で押さえ廊下まで押した旨を述べており、Kがレミントンを押さえていたことはこれに加勢したBの供述とも整合しており、信用することができる。 - 8 -イ Iの供述のほか、前記K、Uらの供述やレミントンから第1事件での発砲の約4秒後に発射されたスラッグ弾がIの右側腹部付近から射入し、肝臓周辺の臓器に大きな損傷を与えながら直進的に進み、左胸部付近から射出し、被告人方南側壁面床上約96センチメートルに着弾したこと等を総合すると、Iは、C医師の右側の背後付近にいて、第1事件の被害を受けたC医師の方に体を向けていたとうかがわれ、したがって、Iと被告人との距離もかなり近かったと認められる。そのような状態で直線的に弾丸が進んでIの体を貫通し、南側壁面に着弾した。 ウ C医師は既に仰向けに床に倒れており、レミントンの発射事件などに照らしても第1事件の発射で格別煙などにより視界は妨げられない。したがって、被告人が立つ位置からC医師の近くにいたIは見えていたと推認される。被告人は、Iがどこにいるか分からなかったような供述をするが、上記イのほかKやIの供述によればC医師のすぐ近くにIが立っていたのは明らかであり、被告人はC医師が倒れていたのも分かっているので、Iが視界に入らないはずはない。また、犯行後に説得交渉官と被告人がした電話通話で、被告人は怪我をした人がいるか分からないような口ぶりをしつつも、眼鏡をかけたリハビリの人が怪我をしたこと、靴も履かずに外に逃げたこと、「痛い、痛い」と言っていたことなどを自発的に説明していることからも、被告人はIの被害状況を理解していたと推認される。 エ第1事件の4秒後という極めて短時間で第2事件の弾丸が発射されているところ、ボイスレコーダーで録音された音声では、第1事件から第2事件発生ま も、被告人はIの被害状況を理解していたと推認される。 エ第1事件の4秒後という極めて短時間で第2事件の弾丸が発射されているところ、ボイスレコーダーで録音された音声では、第1事件から第2事件発生までの間に、金属を擦るような音(先台を操作するような音と考えても矛盾しない。)が1回聞こえるにすぎないこと、後記のとおり、被告人が述べるポケットから弾丸を取り出してレミントンを発射し得る状態にし、さらに、その直前とは別の考えに基づき行動を取ろうとするには4秒は短すぎることも考慮すると、第1事件発生前までに既にレミントンにはスラッグ弾2発以上が込められていたと推認することができる。 オそして、被告人方南側壁面床上約96センチメートルに着弾していることか- 9 -ら、Iの傷害結果も考慮すると、C医師に着弾した弾丸よりもやや低い弾道で発射されたことが推認される。 カ前記のとおり殺意があると推認される第1事件の行為からわずか4秒後に連続的に第2事件の発射がされているので、第1事件と同様の意図の下に行われたと考える方が自然である。また、C医師が倒れたことにも動じることなくレミントンの操作を行っている。このこともIに対しても一応殺意があることを推認させる。 キなお、Iについては被告人以外にその銃撃姿勢を明確に見ている者がいないので事前事後の事情も検討する。 (ア) 事前のメモ等について被告人は、1月27日の日付で3枚のメモを作成しているところ、1枚目には「40度の熱があることを報告していたにもかかわらずそれを、無視し、見殺しにした」などとして「母はCDrに殺されたのも同様である。よって断じる!」という内容が、その2枚目には、U、M、Iを名指した上で、「リハビリに関しては頑張れば歩けるように元気に母がなったものをそれをやろうともせず」「Uにお CDrに殺されたのも同様である。よって断じる!」という内容が、その2枚目には、U、M、Iを名指した上で、「リハビリに関しては頑張れば歩けるように元気に母がなったものをそれをやろうともせず」「Uにおいては対応が母の傷害(障害)となっていた。」として「3名のせいで死んだも同ぜんである」として「3名も断ずる」という内容がある上、3枚目には、「自害することにする。私は万死に値する人間である。」などとある。殺害するまでの言葉は出ていないものの、3枚目には自害の意図が示されており、Aが死亡した後で、線香をあげに来ることなったC医師、U、M及びIに対し、C医師の直前の対応への不満や過去のリハビリや相談対応に関する不満から恨みを募らせる過程で書いたものとうかがえる。これはこれらの者への強い害意をうかがわせる。 なお、弁護人は、本件以前に本件クリニック等による治療等への不満に対し被告人がアンガーマネジメントとして記載したものと主張するが、Aを直前に亡くしたという状況が質的に異なる上、従前ノート等に書き込んだ記載と体裁や文言が異なっているし、MやIに対しては過去に遡った不満であり、かつ、4名がいずれもその日に線香をあげるために訪問する前のタイミングで書かれていること、公判廷で- 10 -も未だにC医師の蘇生措置等について不満を口にして固執していることをみると、Aの死の直後にはかなり気持ちが高ぶっていたものとうかがえ、これまでのノート等の記載とは異なるものと評価できる。また、被告人は事件当日に銃砲店に対しベレッタで散弾銃を使用することを念頭においた質問をしている。被告人がレミントン、ベレッタ及び弾丸を準備していたとうかがえることやベレッタの使用に向けた行動を、C医師らへの不満を募らせた過程で行ったことは、C医師らの訪問を前にしてレミントン等を使って危害 。被告人がレミントン、ベレッタ及び弾丸を準備していたとうかがえることやベレッタの使用に向けた行動を、C医師らへの不満を募らせた過程で行ったことは、C医師らの訪問を前にしてレミントン等を使って危害を加える意思があったことを示す事情といえる。 (イ) 立てこもり時の被告人の発言(甲199)被告人は、1月27日午後11時39分から翌28日午前0時11分までの説得交渉官との電話において、「母と同じあの世に行くのが目的なもんですから。」「どうせ死ぬんだったら、…悪い言葉で道連れじゃないんですけどね、…やってやろうかというそういう気持ちで、やってしまったことなんですよね。」「本当だったらもう今日来てる人、女性以外は、あと私の銃を奪った眼鏡をかけた背の高い男の子以外は、…全部もう撃つつもりだったんですよ。」と言い、また、「外に逃げた方で、もう一人、たぶん、リハビリの人だと思うんですけど」「みなさん…外に逃げて…一人の方が「痛い、痛い」と言っていたので。」「致命的なものではないと思うんですが、なんか足かどこかに当たったのかな」と言っている。 被告人は1月28日午前4時頃に睡眠薬を飲んだと推認されるところ(被告人には飲んだ時間についての明確な記憶はないが、立てこもり時の発言内容によれば、その頃までは睡眠薬を服用していなかったとうかがえ、H医師もその旨公判で述べている。)、前記発言に睡眠薬の影響はなく、自然な会話の流れの中で格別の誘導もなく話した内容であると評価できる。 前記のとおり、死ぬ「道連れ」「女性と眼鏡をかけた背の高い男の子(Bを指すものと考えられる。)以外は全部撃つつもりだった」といった発言は、犯行直後のの時期に、メモにもある自殺をしようか思案する中で行ったもので、被告人の内心を正直に吐露したものである可能性が高く、C医師やIに対して られる。)以外は全部撃つつもりだった」といった発言は、犯行直後のの時期に、メモにもある自殺をしようか思案する中で行ったもので、被告人の内心を正直に吐露したものである可能性が高く、C医師やIに対して殺意があったこと- 11 -をよく裏付けるものである。また、そこでのやり取りは、前記3枚目のメモで馬鹿なことをしたので自殺すると記載した内容とも全体的に符合し、後記Uとの関係でも、C医師やIに対し立て続けにスラッグ弾を発射したが、2名の救命に気を回すことなく、その後Bによりレミントンを取り上げられたとうかがえる約1分後にベレッタをUに向けて発射した一連の経緯に照らして自然な内容といえる。 ク被告人は、弾を1発装填して第1事件の発射をした後、その発射により大騒ぎになった6畳洋間内を鎮めるため天井に向け発射しようとズボンの左ポケットから2発目のスラッグ弾を取り出し排莢口から装填した際、引き金に手がかかったまま先台を引いたため、誤って発射してしまった旨主張する。 しかし、被告人が言うような操作をすればそれなりの操作音が発生するはずであるが、それに見合う音声は録音されていない上、4秒という短時間で室内の状況を把握し、室内を鎮まらせるために天井に発射しようと思考を巡らせることはできない。被告人はそれなりにレミントンの扱いに慣れているとうかがえるところ、被告人が誤射をするような精神状況にあったともうかがえない。 ⑶ 以上によれば、第1事件でC医師に対する殺意があることが優に認められ、その直後に発生した第2事件においてもIに対する殺意があった認められる。したがって、第2事件の誤射の主張も採用できず、発射罪の成立も認められる。 2 第4事件について⑴ Uの証言及びその信用性についてア Uは、第2事件の発砲後、6畳洋間西側掃き出し窓の南側窓からシャ って、第2事件の誤射の主張も採用できず、発射罪の成立も認められる。 2 第4事件について⑴ Uの証言及びその信用性についてア Uは、第2事件の発砲後、6畳洋間西側掃き出し窓の南側窓からシャッターの鍵を開けてTと共に屋外へ逃げ、被告人方前の路上で倒れたIや、Iを介抱するKに声をかけた。被告人方西側市道からふと被告人方を見ると、被告人が、その同じ窓からベレッタをUに向けて構えており、被告人に対し「やめろ」と叫びながら反転してしゃがんだところ、しゃがむのとほぼ同時に発砲された、その後すぐにその場から走って逃げた旨供述する。 イこの供述は、Uが1度目に「やめろ」と叫んだ後、間もなく2度目に「やめ- 12 -ろ」と叫ぶのと同時に、発砲に係る大きな物音がし、直後にUが走るような音が録音された110番通報の録音音声やボイスレコーダーの音声とも整合する。また、Uは事件後さほど時間が経っていない時期に被告人方前路上で自身の位置や被告人の場所について確認し再現する捜査に立ち会っているところ、公判での供述はその頃から一貫している。Uは被告人が顔をベレッタに近づけたため狙われていると感じたことや反転ししゃがんだ際の隣家の見え方、自分が逃げれば攻撃の矛先がIやKに向いてしまうと思い動けなかったという心境等も具体的に供述しており、1度「やめろ」と叫んだことしか記憶にないなど記憶の有無も真摯に供述している。被告人の立ち位置はUらが逃げ出した窓であるところ、Uらが被告人方から逃げ出す際の引き戸やシャッターを開ける音はボイスレコーダーに録音されていて裏付けられており、シャッターの鍵の位置からも南側窓を開けて逃げた旨の供述に疑わしいところはない。Uらが逃げ出して間もない時間であるから、Uらが逃げ出した窓に被告人が姿を現したという流れも自然である。 ウ弁 おり、シャッターの鍵の位置からも南側窓を開けて逃げた旨の供述に疑わしいところはない。Uらが逃げ出して間もない時間であるから、Uらが逃げ出した窓に被告人が姿を現したという流れも自然である。 ウ弁護人は、ベレッタの右銃身からは秒速約370メートルで散弾が発射されるため、狙われていることに気付いてから散弾を避けることは非常に難しい旨主張するが、ベレッタの発射数秒前にUは1度目の「やめろ」という叫び声をあげ、発射以前に身の危険を感じていたと推認できるので(なお、ボイスレコーダーの音声によればKも危険を感じて被告人に声をかけたとうかがえる。)、しゃがんで散弾をよけられたとしても不自然ではない。なお、散弾粒が拡がりながら着弾する散弾の特徴を踏まえると、民家への着弾状況のみから被告人がベレッタを発射した窓が6畳洋間西側掃き出し窓のうちいずれの窓かを特定することは困難であり、弁護人が指摘する発射場所に関する証拠(弁4)とU供述が矛盾するものではない。そのため、この証拠はU供述の信用性に影響しない。 エ Uの供述する位置関係に基づき、6畳洋間西側掃き出し窓の南側窓から市道を見ると、被告人方の正面に並ぶ立木や柱が障害物となり、見通せる視界の広がりは被告人が構えた銃の辺りから斜め右方向のかなり狭い角度に限られている。被告人- 13 -は、約5.5メートルしか離れていないUの近くを通過する弾道でベレッタを発射している。5.5メートルの距離で発射した実験結果(甲178)等によれば、縦幅約17センチメートル、横幅約15センチメートルの範囲に散弾が着弾し、特に縦幅約8センチメートル、横幅約7センチメートルの範囲に散弾が集中するので、その集中する部分が人の背中等に衝突すれば致命傷になり得る。第4事件では、Uが素早くしゃがんだために散弾が当たらなかった可能性が高 8センチメートル、横幅約7センチメートルの範囲に散弾が集中するので、その集中する部分が人の背中等に衝突すれば致命傷になり得る。第4事件では、Uが素早くしゃがんだために散弾が当たらなかった可能性が高く、もししゃがんでいなければ、Uの胸部付近に散弾が直撃して致命傷を負わせる危険があった。 オしたがって、Uに対するベレッタでの発射行為はUを殺害する危険が高い行為であり、散弾を発射した被告人に殺意があったことが強く推認される。 カ加えて、C医師及びIに対する発射後、Kがレミントンの銃身を掴んだ後、Bがレミントンの銃身を掴み銃口をBから見て左上に向け、顔面に催涙スプレーをかけられながらも被告人とレミントンを取り合った。この取り合いの中で、被告人は「お前はやんねえ。」「Bやんねえから離せっつんだよ。」と叫んでいるところ、レミントンを掴まれた際に抵抗して離さなかったこと自体それを用いて加害する意図があったことをうかがわせる上、「お前はやんねえ。」などの発言は、B以外の者(Uを含む)に対する加害の意図があることをうかがわせる事情である。 なお、被告人はBとの間のレミントンの取り合いについて、Bにレミントンを掴まれていた時にレミントンを離させるため天井に向かって威嚇射撃をしようと弾倉に弾丸を装填したと弁解する。しかしながら、催涙スプレーを噴射したことを考慮しても、被告人よりも若く体格も大きいBにレミントンを取り上げられるかもしれない状況の中で、さらに弾丸を装填するような余裕があったとはうかがえない。この点でも、この被告人の主張は不自然であり、信用できない。 キそして、前記の断ずる旨のメモにはUの名前があって、Uを加害する意思があることが示されており、被告人はベレッタを用いることに向けた準備もしている。 前記のとおり、立てこもり時に被告人がUを含め キそして、前記の断ずる旨のメモにはUの名前があって、Uを加害する意思があることが示されており、被告人はベレッタを用いることに向けた準備もしている。 前記のとおり、立てこもり時に被告人がUを含めて殺す意図があった旨を自認する言動をしていたことも、被告人に殺意があったことをよく裏付けている。 - 14 -ク被告人は、Uが被告人方西側市道の中央から被告人方に進んできたため、Uの右側を狙い威嚇のために当たらないようにベレッタで散弾を発射した旨主張する。 しかし、何ら武器を持たず被告人方から逃げ出したUがベレッタを持った被告人に対し向かっていくという事態は想定し難い上、危険を感じて二度も「やめろ」と叫んだUの反応とも整合しない。通常空に向けて撃つことが教本でも示されている散弾銃を、限られた視界で人がいる中に、あえて相当狭い範囲に向けて撃つというのも不自然である。この被告人の主張は採用できない。 ケ小括以上によれば、Uに対する発射行為がUを殺害する危険が高い行為であったと優に認められ、被告人に発射の際に殺意があったことも明らかである。 第4 結論被告人にはC医師、I及びUに対し殺意があり、Uに対する発射行為の危険性もあったと認められるから、C医師に対する殺人罪、I及びUに対する各殺人未遂罪の成立が認められる。また、Iに対する発射は誤射ではなかったと認められるから、Iに対する発射罪の成立も認められる。 (量刑の理由) 1 当裁判所は、被告人を無期懲役に処するのが相当と認めたので、以下、その理由を説明する。 2 犯行態様等が極めて危険で悪質であること判示第1、第2の事件の態様をみると、C医師については、目の前で被告人をなだめていた同医師に対し、レミントンで大型獣の狩猟等に用いられるスラッグ弾を胸の辺りに銃身を向けて発射し、 で悪質であること判示第1、第2の事件の態様をみると、C医師については、目の前で被告人をなだめていた同医師に対し、レミントンで大型獣の狩猟等に用いられるスラッグ弾を胸の辺りに銃身を向けて発射し、理学療法士Iについては、同医師の背後にいて同医師が倒れたのに気を奪われていたIに対し、至近距離から腹部辺りに銃身を向けて発射したというもので、いずれも、生命侵害の危険性が極めて高い悪質なものである。強固な殺意に基づく冷酷な犯行である。判示第4の事件の態様は、被告人方の掃き出し窓から5メートル余りの距離にいるUに対し、狙いを定めてベレッタで散- 15 -弾銃を発射したもので、発射直前にUがしゃがまなければ多数の散弾粒がUに着弾した可能性が高く、これも極めて危険な態様であった。被告人はBとのレミントンの取り合いの際にお前はやんねえなどと言っており、それを取り上げられた後に、わずか1分程度の時間でベレッタを持ち出してUに対し発射している。その態様等から、これも強固な殺意による冷酷な犯行といえる。 3 動機や計画性について⑴ 動機についてア C医師を殺害しようとした動機は、被告人の実母Aが死亡する1月26日の直前に、その容態が悪化した旨の連絡をしていたにもかかわらず緊急に訪問して診察してもらえなかったことなどに不満を抱き、Aの死亡により自暴自棄となる中、被告人が求めた心臓マッサージなどの措置を断ったC医師に対し一方的に恨みを抱いた末に自殺する際に道連れに殺害しようと決断したといえる。また、Iについては、被告人が求めた歩行訓練をAに実施しなかった2年以上前のリハビリのやり方等への不満を思い起こし、Uについては、Aの在宅医療に関するUの相談対応が良くなかったなどと不満を抱き、Iらに恨みを募らせ決断したといえる。 イ被告人は、Aが死亡した1月 以上前のリハビリのやり方等への不満を思い起こし、Uについては、Aの在宅医療に関するUの相談対応が良くなかったなどと不満を抱き、Iらに恨みを募らせ決断したといえる。 イ被告人は、Aが死亡した1月26日の午前9時30分頃から何度も電話をかけて、Aの反応がない、40度の熱があるなどと本件クリニック等に訴えたが、C医師はこれまでの経過や直前の血液検査等の結果も踏まえ、同月27日午後4時に予定された定期診察までは経過観察することとし、結局同日午後3時45分頃C医師が被告人方に来てAの死亡確認をした。直前の被告人の求めには応じていないものの、Aの死亡直前の状況を含めたC医師の在宅医療については、在宅医療に詳しい医師らも問題がなかったと述べているとおり、C医師は、入院させることを望まない被告人の意向を踏まえ、在宅医療で取り得る最善の措置を模索しつつ対応していたと評価でき、死亡確認後も被告人が求める蘇生措置をできない理由を説明し、発砲直前まで被告人を労う言葉をかけ続けていた。被告人がAが元気になることを希望してその介護を最優先にして多くの時間を費やし、Aの死で大きな衝撃や喪失感があっ- 16 -たことを考慮しても、C医師に恨みを抱き、銃を用いて危害を加えようと決断したのは理不尽というほかない。また、被告人はIやMのリハビリの方法やUの電話等の対応に不満を抱いていたと認められる。しかし、Iは、体力等を踏まえ段階的にリハビリを進める必要がある旨を被告人に説明していたし、Uも、多くの要望や不平不満を出してくる被告人に対しC医師の意向を酌んでその要望に対応するなどしていたとうかがえ、やはりIやUに対し銃を用いて恨みも晴らそうと決断したのは理不尽である。 ウ利欲に基づくものでなく、一身をささげて介護していたAが死亡したことによる喪失感の大きさなどを考 どしていたとうかがえ、やはりIやUに対し銃を用いて恨みも晴らそうと決断したのは理不尽である。 ウ利欲に基づくものでなく、一身をささげて介護していたAが死亡したことによる喪失感の大きさなどを考慮しても、銃器によりC医師らの殺害を決断したことには厳しい非難が向けられる。 ⑵ 計画性等についてア被告人がC医師に対し、I、M及びUのことが納得がいかないなどとして線香をあげに来るように求めた結果、C医師、I、M及びUら7名が犯行日午後9時に訪問することとなった。被告人は、前記⑴のとおり恨みを募らせ、Aが死んだのはC医師が母を見殺しにしたせいで殺されたも同然であるので「断ずる」旨のメモを、続けて、I、M及びUの3名において母のことにしっかりした対応がなされていないなどとして、過去のリハビリの方法や相談の対応に一方的な恨みを募らせ、3名のせいで母が死んだも同然であるなどとして「3名も断ずる」旨のメモを作成し、日付(1月27日)と名前を書き、自害するなどと書いたメモも作成した。また、被告人はレミントン、ベレッタや弾丸を6畳洋間付近に準備するとともに、1月27日午後4時30分頃に銃砲店に対して水平2連の散弾銃(ベレッタ)で強い弾を発射することができるかを問い合わせた。遅くとも1月27日に本件クリニック等の職員らが来訪するまでには、メモで名指ししたC医師、I、M及びUの殺害を計画した。なお、実際モデルガンでBB弾を発射する様子を見せ、その後レミントンに持ち換えた経過等に照らして、被告人はモデルガンを示して油断させるためにそれを準備し、催涙スプレーも抵抗に備えて身につけていたことがうかがえる。 - 17 -イ線香をあげに来た者の動きなどを細かく予想して周到かつ綿密な計画を立てたものではないが、6畳洋間にいるC医師を含む4名を殺害するために 抵抗に備えて身につけていたことがうかがえる。 - 17 -イ線香をあげに来た者の動きなどを細かく予想して周到かつ綿密な計画を立てたものではないが、6畳洋間にいるC医師を含む4名を殺害するために必要な猟銃や弾丸等が準備されていて、4名を殺害する目的実現のために十分な準備といえ、犯行前には全員に6畳洋間に入るよう促して実行している。本件には高い計画性があり、Kらがレミントンを押さえる抵抗をしていなければ、その場でさらなる銃撃がされた可能性が高い。 4 結果の重大性等第1事件によりC医師を即死させている。C医師は、患者やその家族に寄り添う在宅医療を実践しながら地域医療の水準を上げようと尽力し、職員や患者からも信頼され慕われていた。そのC医師が自らが診療に関わっていた患者の家族の凶弾で殺されたことの無念さは察するに余りあり、その父が最大限の厳罰を求め、その妻が最大限長く刑務所に入り本当の反省をしてほしいと求めるのも当然である。そして、本件クリニック等の事業等に与えた悪影響も無視できない。 次に、理学療法士Iはスラッグ弾が身体を貫通した結果、判示第2のとおりの重傷を負い、胆のうの全摘出を伴う手術を受け、事件から約1年経過した後にも腹壁瘢痕ヘルニアの治療のために自身の足の筋膜を腹部に移植する手術も受け、この裁判で証言をした時点でも腹壁瘢痕ヘルニアの再発傾向があって全治の見込みが立たない状態にあり、生活に多大な支障が生じている。Iは、銃撃により瀕死の重傷を負って、死の恐怖を感じ、悲痛な叫び声をあげ、死線をさまよっている。Iが必死に玄関の外へ逃げ出し、救命措置が行われたために一命をとりとめたが、そのまま被告人方にとどまれば死亡していた可能性が高い。また、Iは、精神科への通院も余儀なくされ、被告人が世の中にいると考えるととても怖いと述べている し、救命措置が行われたために一命をとりとめたが、そのまま被告人方にとどまれば死亡していた可能性が高い。また、Iは、精神科への通院も余儀なくされ、被告人が世の中にいると考えるととても怖いと述べている。Iが判示第2の犯行により受けた結果は、相当重い。 5 Bに対する傷害は、予想外にBがレミントンを両手で押さえつけるなどしたのに対し、さらに同銃でUらを殺害するために取り返そうとする過程で、催涙スプレーをBの顔面に吹きかけたというものであり、酌むべき要素はない。 - 18 - 6 小学校等が付近にある住宅街の個人宅内で猟銃2丁が使用されて散弾を含む3発の弾丸が発射され、その1発が付近の住宅の門扉等に着弾し、その後に現場に立てこもるなどした本件は、近隣住民に多大な恐怖を与えただけでなく、多数の者が在宅での介護サービス等を受け、医療機関側も日常的に少人数で逃げ場のない場所でのサービスに努めている現状において、死に直面した高齢者の家族が逆恨みで凶行に及んだというもので、医療関係者等に及ぼす悪影響も懸念される。 7 一方、被告人は、猛省などと口にするが、公判においても、30年以上前にテレビで見ただけの医学的根拠のない72時間の蘇生論にこだわり続け、蘇生措置をしなかったC医師、被告人の要求に応じなかったI、M及びUに非があるかのような自論を繰り返し述べ、自らの不合理な弁解に終始しているといわざるを得ない。反省以前に未だ自らの凶行について振り返ることができていない。また、被害者やその遺族に対して何らの慰謝の措置も講じていない。 なお、被告人には、本件で考慮すべき前科はない。 8 量刑の検討当裁判所は、検察官が指摘する単独で、凶器を用いて、殺人等に及んだ事案(処断罪と同一又は同種の罪の件数2~4件、計画的又は強固な殺意あり、減刑事由なし)の量刑傾向 き前科はない。 8 量刑の検討当裁判所は、検察官が指摘する単独で、凶器を用いて、殺人等に及んだ事案(処断罪と同一又は同種の罪の件数2~4件、計画的又は強固な殺意あり、減刑事由なし)の量刑傾向のほか、銃器を用いて1名の者が殺害された単独犯の量刑傾向等も参照した。前者の量刑傾向では無期懲役に処された事案が多く、30年ないしそれに近い長期の有期懲役に処された事案も一定程度ある。また、後者の件数は少ないが、わが国では銃器が厳しく規制されていてその使用には厳正な態度で臨む必要があり、他の凶器と異なり、銃器が使われれば生命侵害の危険性が非常に高いので、1名を殺害しただけでも長期の懲役刑は免れないとの傾向はうかがえる。 そこで、本件をみると、犯行態様は、発射されれば生命侵害の危険性が高い猟銃が第1、第2及び第4で用いられている。加えて、計画実現のための十分な準備を行っていて、その態様や計画性に照らすと、殺意は強固で生命軽視の程度も大きい。なお、複数の殺人行為に及んだ事件で、1名を殺害をした事案と2名を殺害した事案- 19 -とでは量刑傾向に差異があるものの、第2事件も強固な殺意に基づき行われ、Iが瀕死の重傷を負って今後後遺症を抱え、生活に大きな支障が生ずることが予想される状況にある結果を見ると、2名が殺害されたわけではないが、本件はそれに近い悪質さ・結果を有するとみる余地もあるので、本件の行為責任に相応しい被告人の刑としては、有期懲役刑の上限(30年)では評価し尽くせないというべきであり、無期懲役刑か死刑に処することも視野に入れて検討をした。 死刑は、最も冷厳で誠にやむを得ない場合に言い渡される究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないことを踏まえ、公平の観点から、これまで死刑が選択された事案の傾向などにも照らして検討を加えると は、最も冷厳で誠にやむを得ない場合に言い渡される究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないことを踏まえ、公平の観点から、これまで死刑が選択された事案の傾向などにも照らして検討を加えると、銃身を2人からつかまれるという予想外の抵抗にあう中でIが被告人方から逃げることに成功し、幸いにして、Iは重い後遺症等を伴う重傷を負うも一命をとりとめた。 そこで、前記のとおりの犯行の動機や計画性、猟銃を発射したという犯行態様の危険性・残忍さ、遺族の感情に加え、本件の社会的影響等を考慮しても、被害者が1名にとどまり、検察官が無期懲役の求刑にとどめている本件において、死刑を選択することが真にやむを得ないものというには躊躇を覚える。 そこで、被告人を無期懲役に処し、今後生涯をかけて被告人に自己の凶行を振り返らせ、贖罪をさせるのが相当と認めた。 (求刑無期懲役、猟銃2丁及び催涙スプレー1本の没収、弁護人の科刑意見懲役15年、猟銃2丁及び催涙スプレー1本の没収)(さいたま地方裁判所第5刑事部裁判長裁判官小池健治裁判官森田初恵裁判官志村塔子)- 20 -別表 番号銃種型式銃番号商品名 散弾銃単身自動1239552Vレミントン 散弾銃水平二連C49420ベレッタ

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