令和4(ネ)10034 不当利得返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年9月6日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和1(ワ)28126
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令和5年9月6日判決言渡令和4年(ネ)第10034号不当利得返還請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(ワ)第28126号)口頭弁論終結日令和5年5月31日判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3 0日と定める。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、1億円及びこれに対する令和元年11月9日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は、発明の名称を「ページング方法および装置」とする発明に係る特許 権(特許第3287413号。以下「本件特許権」といい、本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有していたと主張する控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が「4GLTE」との名称で提供する無線通信ネットワークサービス(以下「被控訴人サービス」という。)に係るLTE(LongTermEvolution)通信方式の上りリンクのデータ送信に関する方法(以下「被控訴 人方法」という。)が、本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、 これにより被控訴人が実施料相当額を不当に利得している(ただし、被控訴人が原判決別紙ライセンス製品目録記載の本件特許のライセンス製品を使用する場合を除く。)と主張して、不当利得返還請求権に基づき、1546億2163万1435円の一部である1億円及びこれに対する訴状送達の日の 決別紙ライセンス製品目録記載の本件特許のライセンス製品を使用する場合を除く。)と主張して、不当利得返還請求権に基づき、1546億2163万1435円の一部である1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年11月9日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号に よる改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審が、被控訴人方法は本件発明の技術的範囲に属しないとして控訴人の請求を棄却したところ、控訴人がその取り消しを求めて本件控訴を提起した。 控訴人は、当審において、特許庁における無効審判請求事件(無効2021-800053号)において訂正請求を行ったことに基づくとして、原審被告 方法1に係る主張を取り下げるとともに、均等侵害の主張及び令和4年8月12日に同事件において控訴人が行った訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、その訂正を「本件訂正」という。)に基づく訂正後の特許請求の範囲の記載による予備的請求原因を追加した。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記 3のとおり当審における控訴人の主な補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の1、2及び第3(原判決4頁5行目ないし34頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決6頁18行目の末尾の次を改行し次のとおり加える。 「(5) 本件特許に対する無効審判請求 控訴人は、本件特許につき、無効審判請求(無効2021-800053号。以下『本件無効審判請求』という。)を受け、同事件の手続において、特許法134条の2に基づき、令和3年12月29日に訂正請求(甲39)を行った後、令和4年8月12日、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂 件無効審判請求』という。)を受け、同事件の手続において、特許法134条の2に基づき、令和3年12月29日に訂正請求(甲39)を行った後、令和4年8月12日、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂正請求(甲60)を行った。 本件訂正請求に対しては、令和4年9月27日付けで、訂正拒絶理由 通知書が発せられている(丙A26)。 なお、本件無効審判請求は、本件口頭弁論終結の時点において、確定していない。 (6) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(甲60。 訂正部分に下線を付した。後記(7)も同じ。)。 ア請求項2(以下『本件訂正発明』という。)『メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシステムを動作させる方法であって、リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定する リクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信することと、該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合に、該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのいずれかのタイム で該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該中央局から該ページャに送信することと、該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケットで該ページャから該中央局に送信することと を含む方法。』イ請求項4(以下『本件訂正発明4』という。)『メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシステムを動作させる方法であって、リクエスト信号を送信するためのスロットをページ 法。』イ請求項4(以下『本件訂正発明4』という。)『メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシステムを動作させる方法であって、リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定する リクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信すること と、該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合に、該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのいずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、 該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該中央局から該ページャに送信することと、該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケットで該ページャから該中央局に送信することとを含み、前記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージとは、それぞれ異 なる周波数で送信される、方法。』ウ請求項5(以下『本件訂正発明5』といい、本件訂正発明及び本件訂正発明4と併せ『本件各訂正発明』という。)『メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシステ ムを動作させる方法であって、リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定するリクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信することと、該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合に、 該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのいずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該中央局から該ページャに送信することと、 のタイムのうちのいずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該中央局から該ページャに送信することと、 該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケッ トで該ページャから該中央局に送信することとを含み、前記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージとは、それぞれ異なる周波数で送信され、前記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージと前記リクエストエネーブル信号とは、それぞれ異なる周波数で送信される、 方法。』(7) 本件各訂正発明の構成要件本件各訂正発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである。 ア本件訂正発明A’ メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシス テムを動作させる方法であって、B’ リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定するリクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信することと、C’ 該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合 に、該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのいずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、D’ 該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該 中央局から該ページャに送信することと、E’ 該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケットで該ページャから該中央局に送信することとF’ を含む方法。 イ本件訂正発明4 4A’ メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシ ステムを動作させる 信パケットで該ページャから該中央局に送信することとF’ を含む方法。 イ本件訂正発明4 4A’ メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシ ステムを動作させる方法であって、4B’ リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定するリクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信することと、4C’ 該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合 に、該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのいずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局に送信することと、4D’ 該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を 該中央局から該ページャに送信することと、4E’ 該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケットで該ページャから該中央局に送信することとを含み、前記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージとは、それぞれ異なる周波数で送信される、 4F’ 方法。 ウ本件訂正発明55A’ メッセージを通信パケットで送受信する双方向ページングシステムを動作させる方法であって、5B’ リクエスト信号を送信するためのスロットをページャに指定 するリクエストエネーブル信号を中央局から該ページャに送信することと、5C’ 該ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合に、該リクエストエネーブル信号を受け取ると、複数のフレームのそれぞれの該スロットに対応する複数のタイムのうちのい ずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局 に送信することと、5D’ 該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該 トに対応する複数のタイムのうちのい ずれかのタイムで該リクエスト信号を該ページャから該中央局 に送信することと、5D’ 該ページャからの該リクエスト信号に応答して、許可信号を該中央局から該ページャに送信することと、5E’ 該許可信号を受け取ると、該ページングメッセージを通信パケットで該ページャから該中央局に送信することとを含み、前 記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージとは、それぞれ異なる周波数で送信され、前記リクエスト信号と前記許可信号と前記ページングメッセージと前記リクエストエネーブル信号とは、それぞれ異なる周波数で送信される、5F’ 方法。」 (2) 同6頁19行目の「(5)」を「(8)」と、同頁23行目の「(6)」を「(9)」とそれぞれ改め、同7頁19行目の「(イ)」から同頁24行目の末尾までを削り、同頁25行目の「」を「(イ)」と改める。 (3) 同8頁8行目の「(エ)」を「」と、同頁14行目の「(7)」を「(10)」と、同頁6行目の「情報が含まれることがある」を「情報が含まれることがあり、 このSchedulingRequestConfigにはsr-ConfigIndexと呼ばれるスケジューリングリクエスト信号が送信されるサブフレームを決定するために使われる情報が含まれることがある。」とそれぞれ改め、同行目の「甲12の2」を「12の2、甲49、50」と改め、同頁17行目の「1a、1c、」及び同頁19行目の文頭から同9頁4行目 末尾までを削る。 (4) 同10頁4行目の「原告の利得額」を「被控訴人の利得と控訴人の損失」と、同頁19行目の「補助参加人富士通」を「被控訴人補助参加人富士通株式会社(以下『補助参加人富士通』という。)」と、同11頁16行目 10頁4行目の「原告の利得額」を「被控訴人の利得と控訴人の損失」と、同頁19行目の「補助参加人富士通」を「被控訴人補助参加人富士通株式会社(以下『補助参加人富士通』という。)」と、同11頁16行目の「補助参加人エリクソン」を「被控訴人補助参加人エリクソン・ジャパン株式会 社(以下『補助参加人エリクソン』という。)」と、同12頁16行目の「補 助参加人FCNT」を「被控訴人補助参加人FCNT株式会社(以下『補助参加人FNCT』という。)」と、同14頁7行目、同頁8行目、同頁11行目、同頁12行目、同頁19行目、同頁21行目、同15頁21行目及び16頁24行目の各「4つ」をいずれも「四つ」とそれぞれ改める。 (5) 同17頁16行目の「1つ」を「一つ」と改め、同18頁7行目の「ア」 から同頁12行目の「イ」までと同20頁7行目の「ア」から同21頁4行目の「イ」までをそれぞれ削る。 (6) 同30頁10行目の「PSS/SSS信号(RRCセットアップ信号)」を「RRCセットアップ信号」と改め、同31頁2行目及び同頁21行目の各「PSS/SSS信号又は」をいずれも削り、同34頁10行目の「原告 の利得額」を「被控訴人の利得と控訴人の損失」と改める。 3 当審における控訴人の主な補充主張(1) 争点2-1(構成要件Aの「双方向ページングシステム」及び構成要件BないしEの「ページャ」の充足性)についてア原判決は、「ページャとは、信号や簡単なメッセージを受け取る無線呼 出しの携帯用受信機のことを定義する用語であって、日本においては『ポケットベル』として普及し、電話等の他の通信端末とは明らかに異なるものを意味することが、本件優先日当時の技術常識であったことが認められる。」とし、構成要件BないしEにいう「ペ て、日本においては『ポケットベル』として普及し、電話等の他の通信端末とは明らかに異なるものを意味することが、本件優先日当時の技術常識であったことが認められる。」とし、構成要件BないしEにいう「ページャ」を、情報を「受け取る無線呼出しの携帯用受信機」に限定した。 原判決の上記判示によれば、「ページャ」に該当するか否かは、受け取る情報が「信号」または「簡単なメッセージ」か否かによって判断されることとなるところ、受け取る情報が「簡単」か「複雑」かは、情報量の評価の問題であって外延が著しく不明瞭であり、特許請求の範囲への充足・非充足を判断する際の基準とすることはできない。 そもそも、本件優先日当時の「ページャ」が受信するデータを「簡単な メッセージ」と評価することはできない。すなわち、本件明細書等の3欄50行から51行には、「例えばメッセージを含む英数字ディスプレイのような出力能力を強化している。」との記載がある。そして、甲40の68頁中欄には「スカイテルはこれまでの・・・米国初のページャへの電子メール送信サービス開始(92年)などから分かるように、常に進んだサ ービスを提供し続けてきた事業者だ。」との記載があり、本件特許優先日当時のページャは、実用化されたサービスの一環として電子メールを受信していたものである。 しかるところ、甲40・69頁左欄には「①自由文の送信が可能(1文字ずつボタン操作で選択して入力)」、「ページャからの新規メッセージ 発信が可能(タンゴでは、受信メッセージに応答する形でのみメッセージ発信が可能)」との記載があり、また69頁右欄には、「97年2月にスカイテルが発表した事業計画によると、・・・双方向パーソナル通信ができる機種を5~6万、システム搭載型のアプリケーションを1万 ージ発信が可能)」との記載があり、また69頁右欄には、「97年2月にスカイテルが発表した事業計画によると、・・・双方向パーソナル通信ができる機種を5~6万、システム搭載型のアプリケーションを1万5000~2万、スカイワード・プラスを15万としている。」との記載がある。 本件優先日当時のページャは、自由文による新規メッセージを送信・表示(つまり受信)できるものであった。この「自由文による新規メッセージ」は、単なる「信号」ではなく、また「簡単なメッセージ」と評価することもできない。 そして、本件優先日当時の「ページャ」はメッセージ送信が可能であっ た。したがって、本件優先日当時の「ページャ」は、情報を「受け取る」ための「受信機」に限定することもできない。よって、これを、情報を「受け取る無線呼出しの携帯用受信機」に限定した原判決は誤りである。 イ原判決は、「本件各発明は、・・・もともと双方向通信が予定されている電話システム等の通信システムに関する発明ではないことが認められ る。」、「被告方法に係るLTE通信方式は、もともと双方向通信が予定 されている通信システムであることが認められ、構成要件Aの『双方向通信システム』に該当しない。」と判示する。つまり、原判決は、本件各発明の「ページャ」にあたるためには、従来片方向通信であったものを双方向通信にした歴史的経緯を備える必要があるとする。 しかし、被控訴人方法は、通常、当該特許公報の公開後に実施される。 現に、被控訴人のLTE通信方式も、本件特許公報の公開後に実施された(甲6)。 したがって、被控訴人のLTE通信方式が本件各発明を模倣するものである以上、上記のような歴史的経緯を辿ることなく、「もともと双方向通信を予定」しているのは当然である。よって、この れた(甲6)。 したがって、被控訴人のLTE通信方式が本件各発明を模倣するものである以上、上記のような歴史的経緯を辿ることなく、「もともと双方向通信を予定」しているのは当然である。よって、このような歴史的経緯をク レームの充足・非充足の判断基準とすることは、特許発明の模倣を許容することに他ならず、特許法の運用として誤りである。 ウ(ア) 原判決は「構成要件Aにいう『双方向ページングシステム』とは、上記受信機に送信機能を持たせて従来片方向であったものを双方向にしたページングシステムを意味するものであって、もともと双方向通信が予 定されている電話システムのような通信システムは、これに含まれないものと解するのが相当である。」、「被告方法に係るLTE通信方式は、もともと双方向通信が予定されている通信システムであることが認められ、構成要件Aの双方向通信システムに該当しない。」と判示する。 しかし、前記の通り、従来片方向通信であったものを双方向通信にし たという歴史的経緯はページャを限定する理由にはならない。したがって、上記判示は、被控訴人のLTE通信方式は電話システムであるから、構成要件Aの「双方向ページングシステム」に当たらないとの判断に尽きることになる。しかるに、原判決は、被控訴人のLTE通信方式が電話システムに該当すると判断した理由、及びLTE通信方式が電話システ ムである場合に被控訴人のLTE通信方式が「双方向ページングシステ ム」を充足しなくなる理由を明示しない。 したがって、原判決に理由不備があることは明らかであるが、原判決が上記判断に至った理由は、被控訴人主張に従って、本件各発明の「双方向ページングシステム」は電話システムと独立している必要があることを前提に、被控訴人のLTE通信方式は電 とは明らかであるが、原判決が上記判断に至った理由は、被控訴人主張に従って、本件各発明の「双方向ページングシステム」は電話システムと独立している必要があることを前提に、被控訴人のLTE通信方式は電話システムであって電話シス テムから独立していないから、被控訴人のLTE通信方式は「双方向ページングシステム」を充足しないと判断したと考察できる。 しかし、本件明細書等の「独立して動作する」は、ページャが備えるページングメッセージ送信機能が電話システムを使用しないでも動作できることを意味する。そして、本件優先日当時の技術常識を基準とすれ ば、本件明細書等の「電話システム」は、通話者同士を物理的あるいは論理的な伝送路でつなぎ、通信を行っている間は当該伝送路を占有する方式である回線交換方式を意味する。したがって、回線交換(電話システム)を使用しないでデータが送信されるシステムは、「双方向ページングシステム」を充足する。 (イ) 被控訴人のLTE通信方式のパケットデータ送信機能は電話システム(回線交換方式)を使用しないでも動作できる。すなわち、LTE通信方式の前世代にあたる3Gの通信規格において、データ通信は、LTEと同じパケット交換方式で行う一方、音声通話は回線交換方式で行われていた。これに対し、現在のLTE通信方式では、3Gのような2種類の 通信方式ではなく、パケット交換方式によるパケット通信が行われる。 しかし、VoLTE導入前の音声通話では、LTE通信方式においても、3Gすなわち回線交換方式を使用していた。VoLTE導入前後を問わず、データ通信はパケット交換方式で行われており、VoLTE導入後は、音声通話もデータ通信と同様、パケット交換方式で行われている。 したがって、被控訴人のLTE通信方式は、VoLT 後を問わず、データ通信はパケット交換方式で行われており、VoLTE導入後は、音声通話もデータ通信と同様、パケット交換方式で行われている。 したがって、被控訴人のLTE通信方式は、VoLTE導入前後を問 わず、電話システム(回線交換方式)を使用しないでも動作でき、現に動作している。よって、被控訴人のLTE通信方式は、「電話システムから独立して動作する」ものに相当する。 この被控訴人のLTE通信方式が「電話システムから独立して動作する」ものに相当することは、関連米国訴訟における被告(AppleI nc)側の専門家証人の供述からも裏付けられる。米国関連訴訟の控訴人側の専門家証人は、甲45に従い、被控訴人のLTE通信方式においてはVoLTE導入前の音声通話が電話システム(回線交換)を使用していたものの、データ通信及びVoLTE導入後の音声通話はパケット交換方式で行われていたことを説明した。また、同訴訟の被告側の専門 家証人は、LTEシステムは回線交換ネットワークなしで実装が可能であることを認めている。 以上の通り、関連米国訴訟の被告側の証言からも、被控訴人のLTE通信方式において、被控訴人方法の「UE」のパケットデータ送信機能は電話システム(回線交換方式)を使用しないでも動作できることは明ら かである。 よって、被控訴人のLTE通信方式は「電話システムから独立して動作する」ものに相当する。 エ仮に本件明細書等の「電話システム」を回線交換、パケット交換といった方式を問わない通話システムと解釈したとしても、少なくとも、VoLT E導入前の被控訴人のLTE通信方式のデータ通信は、LTE上で音声着信(通話)する際には、3G-CS(CircuitSwitched、回線交換)ドメインの機能に切 も、少なくとも、VoLT E導入前の被控訴人のLTE通信方式のデータ通信は、LTE上で音声着信(通話)する際には、3G-CS(CircuitSwitched、回線交換)ドメインの機能に切り替える仕組みである「CSFallback機能」が標準化されているから(甲43)、電話システムから独立して動作する無線データ通信システムであり、「双方向ページングシステム」に 該当する。 (2) 争点2-2(構成要件B及びCの「リクエストエネーブル信号」の充足性)についてア原判決は、リクエストエネーブル信号に関し、本件明細書等にはフレームを時分割したタイムスロットをページャに指定するローカルクロック合わせ信号及びSLOTASSIGNMENTCOMMANDCODE を備えた周波数C2によるメッセージが開示されている一方で、タイムスロットを用いずにリクエスト信号の送信を可能にする信号については記載も示唆もされていないから、「リクエストエネーブル信号」とは、リクエスト信号の送信を時分割方式で行うことを前提として、ページャのタイムスロットを特定するための信号を意味するものと解するのが相当であるとし た上で、被控訴人方法に係るLTE通信方式は、データ通信に周波数分割多元方式を採用しており、時分割方式を採用していないと認められることからすると、データ送信に当たりタイムスロットという概念は、そもそも存在するものではなく、RRCセットアップ信号も、時分割方式におけるページャのタイムスロットを特定するものではないから、「リクエストエネーブル 信号」に該当しないとした。 しかし、原判決が根拠とする甲8には、一般的にLTEは上りと下りの双方向通信をFDD(FrequencyDivisionDuplexin クエストエネーブル 信号」に該当しないとした。 しかし、原判決が根拠とする甲8には、一般的にLTEは上りと下りの双方向通信をFDD(FrequencyDivisionDuplexing、周波数分割複信)で行うという記載があるものの、原判決には、甲8に記載された「FDD(周波数分割複信)」の意義及びこれとTDD(時 間分割複信)との差異についての誤認がある。 すなわち、FDDは周波数分割複信、TDDは時間分割複信といわれるところ、その違いは、FDDの上り通信と下り通信が別々の周波数を使用し、TDDの上り通信と下り通信は一つの周波数を使用するという点にある(甲48)。 したがって、FDDとTDDとでは、上り通信と下り通信に用いる周波数 の数が違うに過ぎず、FDDを行うことは、これと同時に時分割方式を行うことを排除しない。 つまり、LTE通信方式が周波数分割多元方式(FDD)を採用していることは、RRCセットアップ信号がスケジューリングリクエスト信号を送信するタイムスロットを指定するものではないという理由にはならない。 よって、原判決の甲8を根拠とした判示は、FDDの意義及びこれとTDDとの差異についての誤解に基づくものであり、誤りである。 イ(ア) RRCセットアップ信号には、sr-ConfigIndexが含まれているところ、sr-ConfigIndexはスケジューリングリクエスト信号を送信するサブフレームを決定するために用いられ、スケジュ ーリングリクエスト信号が送信されるサブフレームを指定する。 例えばUEの電源を入れた場合や、新しいeNodeBの領域の範囲に入った場合等、スケジュール要求の専用リソースが設定されていない場合、スケジューリングリクエスト信号を送信するために、UEはR る。 例えばUEの電源を入れた場合や、新しいeNodeBの領域の範囲に入った場合等、スケジュール要求の専用リソースが設定されていない場合、スケジューリングリクエスト信号を送信するために、UEはRRC_Connected状態(ネットワークに接続された状態)に遷移する必要 がある。そして、UEをRRC_Connected状態(ネットワークに接続された状態)に遷移させるため、eNodeBはUEに対しRRCセットアップ信号を送信する。 RRCセットアップ信号はSchedulingRequestConfigと呼ばれる情報を含んでいる。このSchedulingR equestConfigは、スケジューリングリクエスト信号を送信するために必要となるパラメーターを特定する情報である。 しかるところ、SchedulingRequestConfigはTS仕様書で定義されており、「sr-ConfigIndex」が含まれている(甲7の7・132頁)。また、被控訴人のLTE通信方式の SchedulingRequestConfigにおいても、「s r-ConfigIndex」が含まれていることが実際に確認されており(甲12の2・4頁参照)、RRCセットアップ信号には、sr-ConfigIndexが含まれている。 (イ) sr-ConfigIndexは、以下のとおり、スケジューリングリクエスト信号を送信するサブフレームを決定するために用いられる。 被控訴人方法は、UEが送信すべきパケットデータを有する場合に、該RRCセットアップ信号を受け取ると、スケジューリングリクエスト信号をUEからeNodeBに送信する。 しかるところ、sr-ConfigIndexはスケジューリングリクエスト信号(SR)を送信するP RCセットアップ信号を受け取ると、スケジューリングリクエスト信号をUEからeNodeBに送信する。 しかるところ、sr-ConfigIndexはスケジューリングリクエスト信号(SR)を送信するPUCCHの時間ドメインリソースを決定 する(甲49)。また、sr-ConfigIndexは、表と計算式に基づきスケジューリングリクエスト信号(SR)が送信されるサブフレームを決定するために用いられる(甲50)。 上記の通り、sr-ConfigIndexは、スケジューリングリクエスト信号(SR)が送信されるサブフレームを指定する。しかるところ、 この指定されたサブフレームは、一定の時間領域を意味し、原判決がリクエストエネーブル信号の定義で言及する「タイムスロット」に相当する。 したがって、sr-ConfigIndexを含む「RRCセットアップ信号」は、スケジューリングリクエスト信号の送信を時分割方式で行うことを前提として、UEのタイムスロットを特定する信号である。 よって、RRCセットアップ信号は、原判決のいうリクエストエネーブル信号に相当する。 (3) 均等侵害(構成要件Aの「双方向ページングシステム」及び構成要件BないしEの「ページャ」)についてア被控訴人方法は、均等侵害の第1ないし5要件(最高裁平成6年(オ)第 1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、 最高裁平成28年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号359頁。以下「平成10年最判及び平成29年最判」という。)を充足し、「双方向ページングシステム(ページャ)」と均等である。 したがって、被控訴人方法は本件各発明の技術的範囲に属する。理由は以下のとおりである。 イ第1要件( 29年最判」という。)を充足し、「双方向ページングシステム(ページャ)」と均等である。 したがって、被控訴人方法は本件各発明の技術的範囲に属する。理由は以下のとおりである。 イ第1要件(非本質的部分)本件各発明に係るページングメッセージの送信方法は、ページャが送信すべきページングメッセージを有する場合に、ページャがリクエスト信号を中央局に送信し(構成要件C)、次に、中央局は、ページャに対し、ページングメッセージを送信するためのリソースを割り当てるために許可 信号を送信する(構成要件D)。 すなわち、無数にあるページャそれぞれに特定のリソースを割り当てることを避け、構成要件Cのリクエスト信号及び構成要件Dの許可信号という2段階のステップを経て有限なリソースを有効活用するという技術的思想が、本件各発明の本質的部分である。 しかるところ、被控訴人LTE通信方式も、データの送受信を行うチャネルを複数のユーザで共有するシステムである。そして、被控訴人方法を含むLTE通信においては、送受信データを有する各ユーザに(構成要件C参照)、共有データチャネル上の無線リソースを割り当てるスケジューリングを行う。 具体的には、LTE通信においては、送受信データを有するUEが、スケジューリングリクエスト信号を送信する(構成要件C参照)。そして、これに応答して、eNodeBはDCI信号を送信する(構成要件D参照)。このDCI信号は、丙A10の1(図3)のようにRBに関する情報を送信しRBを割り当てている(甲7の2「5.3.3.1.1 Fo rmat0」参照)。 そして、被控訴人のLTE通信において上記のようなスケジューリング(RBの割当)が行われていることは、丙A10の1の記載からも明らかである。 1 Fo rmat0」参照)。 そして、被控訴人のLTE通信において上記のようなスケジューリング(RBの割当)が行われていることは、丙A10の1の記載からも明らかである。 以上の通り、被控訴人LTE通信方式においては、上記のようなスケジューリングを行うことにより、周波数方向の12本のサブキャリアを含む RBが膨大な数のUEにおいて共通化されている。 したがって、送受信データを有するUEがスケジューリングリクエスト信号を送信し(構成要件C)、これに応答して、eNodeBがDCI信号を送信する(構成要件D)という2段階のステップを経て有限なリソースを有効活用するという技術的思想は本件各発明と同一であり、被控訴人 LTE通信方式は本件各発明の本質的部分に何ら変更を加えない。 よって、被控訴人方法は第1要件を充足する。 ウ第2要件(置換可能性)前記の通り、被控訴人LTE通信方式では、RBが膨大な数のUEにおいて共通化されるという本件各発明の目的及び作用効果が達成される。し たがって、被控訴人方法は第2要件を充足する。 エ第3要件(置換容易性)前記の通り、被控訴人LTE通信方式(第4世代)のネットワーク構成は電話システム(回線交換)ではなく、パケット交換方式のデータ通信に変化している(甲51)。つまり、被控訴人LTE通信方式は、「双方向 ページングシステム」(構成要件A)と同様、双方向データ通信システムである。 しかるところ、双方向で信号の交換が可能な双方向データ通信システムであれば、端末から中央局に対し構成要件Cのリクエスト信号を送信し、これに応じて、中央局から端末に対し構成要件Dの許可信号を送信するこ とができる。したがって、当業者は、被控訴人LTE通信方式に本件各発 ら中央局に対し構成要件Cのリクエスト信号を送信し、これに応じて、中央局から端末に対し構成要件Dの許可信号を送信するこ とができる。したがって、当業者は、被控訴人LTE通信方式に本件各発 明を適用できることを容易に認識する。 そして、当業者は、被控訴人LTE通信方式の技術的内容(双方向データ通信システムであること)を把握するから、「電話システム」という一般的な呼称は適用の妨げにはならない。 さらに、原判決によれば、前記「電話システム」においては、もともと 双方向通信が予定されており、被控訴人方法に係るLTE通信方式も、もともと双方向通信が予定されている通信システムであるというのであるから、そもそも双方向通信が予定されていなかったという「ページングシステム」よりも、本件各発明の適用はさらに容易である。 その上、原判決は、「そもそもページャとは、信号や簡単なメッセージ を受け取る無線呼出しの携帯用受信機のことを定義する用語」であり、これが、「ページャという概念」が「電話という概念」と「区別して使用されている」ことの根拠とする。したがって、被控訴人LTE通信方法における各「UE」は、「ページャ」よりも遥かに大容量のメッセージを扱うことになり、本件各発明におけるよりも特定の周波数を独占して使用する 時間が格段に長くなり得る。実際、丙A10の1(11頁左欄)には「限られた周波数を有効に利用できる無線通信技術が重要となってくる。」との記載があり、LTE通信方式において有限な周波数を有効活用することが大きなテーマとなっていた。よって、被控訴人LTE通信方法においては、有限なリソースの有効活用という本件各発明の技術的思想はより一層 必要となる。 以上の通り、当業者は、被控訴人LTE通信方式に本件各発明を容易 いた。よって、被控訴人LTE通信方法においては、有限なリソースの有効活用という本件各発明の技術的思想はより一層 必要となる。 以上の通り、当業者は、被控訴人LTE通信方式に本件各発明を容易に適用でき、同方式が「電話システム」であることは、当業者による適用を妨げないだけでなく、適用をより容易とする。 さらに、当業者は、被控訴人LTE通信方式に本件各発明の技術的思想 を適用する必要性を強く認識するから、本件特許請求の範囲に「双方向デ ータ通信システム(LTE通信システム)」及び「UE」と明記されているのと同じように、容易に認識することができる。 よって、被控訴人方法は第3要件を充足する。 オ第4要件(公知技術との同一性又は容易推考性)及び第5要件(意識的除外等の特段の事情) 当業者は、本件優先日当時、被控訴人方法(被控訴人のLTE通信方式)の構成を公知技術から容易に想到し得えない。 また、本件特許の出願手続において、パケット交換方式のネットワーク構成に上記スケジューリング機能を導入(置換)したLTEを意識的に除外したという事情は存在しない。 したがって、被控訴人方法は第4及び第5要件を充足する。 カ結論よって、被控訴人方法の「双方向データ通信システム(LTE通信システム)」及び「UE」という構成は、本件特許発明の「双方向ページングシステム」及び「ページャ」という構成と均等であり、その技術的範囲に 属する。 (4) 本件各訂正発明の技術的範囲への属否についてア控訴人は、本件無効審判請求において本件訂正請求をしているところ、被控訴人方法は、本件訂正後の本件各訂正発明についても、その技術的範囲に属するものであるので、予備的請求原因として、その充足を主張する。 イ 審判請求において本件訂正請求をしているところ、被控訴人方法は、本件訂正後の本件各訂正発明についても、その技術的範囲に属するものであるので、予備的請求原因として、その充足を主張する。 イ被控訴人方法は、以下のとおり本件各訂正発明の技術的範囲に属する。 (ア) 被控訴人のLTE通信方式は双方向データ通信システムである。また、被控訴人のLTE通信方式においてデータを送信する際に通信パケットで送受信するパケット交換方式を採用している。 したがって、被控訴人方法は本件各訂正発明の構成要件A’、E’を充 足する。 (イ) 被控訴人のLTE通信においては、被控訴人方法のsr-ConfigIndexによって指定されたサブフレームに対応する複数のタイムのうちいずれかのタイムでスケジューリングリクエスト信号を送信している。 したがって、被控訴人方法は本件各訂正発明の構成要件C’を充足す る。 被控訴人方法が前記同様に、構成要件B’、構成要件D’及び構成要件F’を備えることは、本件各発明についての控訴人の主張のとおりである。なお、被控訴人のLTE通信方式において、UEからeNodeBへのデータ送信を通信パケットで行っていることに争いはない。 (エ) 以上によれば、被控訴人方法は、本件各訂正発明の技術的範囲に属する。 ウ仮に被控訴人方法が「双方向ページングシステム」及び「ページャ」の構成を文言上侵害しないとしても、本件各訂正発明の「双方向データ通信システム(LTE通信システム)」及び「UE」は本件各訂正発明の「双 方向ページングシステム」及び「ページャ」という構成と均等であり、その技術的範囲に属する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、当 双 方向ページングシステム」及び「ページャ」という構成と均等であり、その技術的範囲に属する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主な補充主張も踏まえ、次のとおり補正し、後記2のとおり 当審における控訴人の主な補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第4の1及び2(原判決35頁1行目ないし54頁17行目まで)のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決52頁7行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。 「(3) ページャについての文献等の記載(なお、乙19、丙A8及び甲40 (甲59、乙20は同じ文献)は、いずれも本件優先日である平成6年 (1994年)6月24日より後の文献である。)・乙19(改訂『電子情報通信用語辞典』社団法人電子情報通信学会編、コロナ社、1999年7月9日発行)『ページングシステムぺーじんぐしすてむ [OFS] pagingsystem 移動体通信システムの一つである無線呼出し.携帯して移動 する相手に信号や簡単なメッセージを送信するシステム.ページャやポケットベル(NTTの登録商標)とも呼ばれている.ページングは無線局から電波を送信し、端末を携帯する相手に信号や非常に短いメッセージ、データを一方通行で送るシステムである.・・・しかし、1995年の3月から端末売り切り制度が導入され、簡単なメッセージ 表示型などの新型の端末も登場し、契約数も1000万件を超えたが、携帯端末で起こったようなブームは起こらなかった.・・・』・丙A8(『情報・通信用語辞典』2005~2006年版、日経BP社、2004年11月22日発行)『ページャ [page 件を超えたが、携帯端末で起こったようなブームは起こらなかった.・・・』・丙A8(『情報・通信用語辞典』2005~2006年版、日経BP社、2004年11月22日発行)『ページャ [pager] 無線を使ってトーン信号や簡単なデータを送 ることで、相手から自分あてにメッセージが入ったことを知らせてくれる移動通信システム。・・・』・甲40(『月間テレコミュニケーション』平成9年(1997年)6月号(同年5月25日発行)。甲59、乙20)『サービス開始当初に使用されたページャは、モトローラ製の『タン ゴ』である。』(68頁右欄)『『タンゴ』の後継機種・・・『スカイライター』(写真②)を導入した。 タンゴとの相違点は以下のとおりだ。 ①自由文の送信が可能(1文字ずつボタン操作で選択して入力)②ページャからの新規メッセージ発信が可能(タンゴでは、受信メ ッセージに応答する形でのみメッセージ発信が可能)』(69頁左欄) 『97年2月にスカイテルが発表した事業計画によると、97年末までにReFLEX利用のユーザ数として20万を予定している。その内訳としては、・・・双方向のパーソナル通信ができる機種を5~6万、システム搭載型のアプリケーションを1万5000~2万、スカイワード・プラスを15万としている。』(同頁右欄) ・甲57(平4-73813号特許公報(平成4年(1992年)11月24日公告))『携帯用セル型(Cellular)無線電話は、優れた二方向通信サービスを提供するが、ページャ使用者の要求を超えており、サービスに相応して高価格である。現時点での活動を乱されずに通報を受け 取ることのみを望む使用者にとつては、実時間での声(またはデータ)通報は必ずしも望ましいとは言えない。』 求を超えており、サービスに相応して高価格である。現時点での活動を乱されずに通報を受け 取ることのみを望む使用者にとつては、実時間での声(またはデータ)通報は必ずしも望ましいとは言えない。』(6欄34行目から40行目)」(2) 同54頁15から16行目の「双方向通信システム」とあるのを「双方向ページングシステム」に改める。 (3) 同57頁4行目の「PSS/SSS信号も」を削る。 2 当審における控訴人の主な補充主張に対する判断(1) 争点2-1(構成要件Aの「双方向ページングシステム」及び構成要件BないしEの「ページャ」の充足性)についてア前記第2の3(1)アの補充主張につき(ア) 控訴人は、原判決の判示によれば、「ページャ」に該当するか否かは、 受け取る情報が「信号」または「簡単なメッセージ」か否かによって判断されることになるところ、受け取る情報が「簡単」か「複雑」かは、情報量の評価の問題であって外延が著しく不明瞭であり、原判決の判断基準は特許請求の範囲の充足・非充足を判断する基準とすることはできない旨を主張する。 しかし、ページャについての文献等(電子情報通信用語辞典、情報・ 通信用語辞典)には、本件優先日の後においても、前記のとおり「相手に信号や非常に短いメッセージ、データを一方通行で送るシステム」(乙19)、「無線を使ってトーン信号や簡単なデータを送ることで、相手から自分あてにメッセージが入ったことを知らせてくれる移動通信システム」(丙A8)などと記載されているところであり、ページングシステ ム(ページャ)については、信号や簡単なメッセ―ジを送信するシステムであるとしている。 そうすると、「ページャとは、信号や簡単なメッセージを受け取る無線呼び出しの携帯用 り、ページングシステ ム(ページャ)については、信号や簡単なメッセ―ジを送信するシステムであるとしている。 そうすると、「ページャとは、信号や簡単なメッセージを受け取る無線呼び出しの携帯用受信機のことを定義する用語」であるとした原判決の判示は、「ページャ」、「ページングシステム」との用語について、辞典に 記載された一般的な解説に基づいたものであって、誤りはないというべきである。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 (イ) 控訴人は、本件優先日当時の「ページャ」は、自由文による新規メッセージを送受信できたものであるから、原判決において「ページャ」 を受信機に限定解釈したことは誤りである旨を主張し、それに沿う証拠を提出する。そして、控訴人は、甲40の前記「①自由文の送信が可能(1文字ずつボタン操作で選択して入力)」、「②ページャからの新規メッセージ発信が可能(タンゴでは、受信メッセージに応答する形でのみメッセージ発信が可能)」、「97年2月にスカイテルが発表した事業 計画によると、97年末までにReFLEX利用のユーザ数として20万を予定している。その内訳としては、・・・双方向のパーソナル通信ができる機種を5~6万、システム搭載型のアプリケーションを1万5000~2万、スカイワード・プラスを15万としている。」との記載を根拠として、本件優先日当時のページャは、自由文による新規メ ッセージを送受信できるものであったと主張する。 しかし、控訴人の指摘する甲40の記載部分は、前記のとおり、モトローラ製のページャである「タンゴ」との相違点について記載したものであるところ、双方向ページャであるモトローラ製の「タンゴ」自体、そもそも本件優先日の約1年3月後である1995年9月に実用 り、モトローラ製のページャである「タンゴ」との相違点について記載したものであるところ、双方向ページャであるモトローラ製の「タンゴ」自体、そもそも本件優先日の約1年3月後である1995年9月に実用化されたものであるから(乙28、86頁右欄)、「タンゴとの相違点」とし て記載された前記記載によって、本件優先日当時のページャにおいて、自由文の送信が可能であったとは認められない。 また、甲40の「97年2月にスカイテルが発表した事業計画によると、97年末までにReFLEX利用のユーザ数として20万を予定している。その内訳としては、・・・双方向のパーソナル通信ができる 機種を5~6万、システム搭載型のアプリケーションを1万5000~2万、スカイワード・プラスを15万としている。」との記載についても、1997年2月にスカイテルが発表した事業計画に基づくものにすぎず、これは本件優先日よりも約2年8月も後のことであり、本件優先日において、双方向パーソナル通信ができる機種が利用されてい たことを示すものではない。 このように、甲40は、そもそも本件優先日の約3年後に発行された技術雑誌であるところ、甲40には本件優先日当時において、ページャが自由文による新規メッセージを送受信できたことを裏付ける記載はないというべきである。 控訴人が当審において提出した甲57、58、69ないし73等は、いずれも特許出願に係る文献であって、双方向ページングシステムに関する技術については記載があるものの、これにより直ちに本件優先日当時のページャが自由文の送信が可能であったことを裏付けるものとはいえない。 むしろ、前記1(1)のとおり、甲57には、「携帯用セル型(Cell ular)無線電話は、優れた二方向通信サービスを提供 文の送信が可能であったことを裏付けるものとはいえない。 むしろ、前記1(1)のとおり、甲57には、「携帯用セル型(Cell ular)無線電話は、優れた二方向通信サービスを提供するが、ページャ使用者の要求を超えており、サービスに相応して高価格である。現時点での活動を乱されずに通報を受け取ることのみを望む使用者にとつては、実時間での声(またはデータ)通報は必ずしも望ましいとは言えない。」(6欄34行目から40行目)と記載されており、かかる記載 は、ページャは二方向通信サービスを提供する電話システムとは異なり、通報を受け取るのみの受信機として利用されていたことを示すものということができる。 そして、本件明細書等には、従来技術として、従来のページャは片方向通信であったこと、双方向通信とする試みとしては、ページャを電話 システムに接続することや、アックバックシステムによるものについてしか開示されていない(3欄45行目から4欄25行目)ところであり、本件優先日当時のページャについて、自由文による新規メッセージを送受信することが可能な双方向ページャであったと理解することは、本件明細書等の開示内容に反するものというほかない。 以上によれば、本件優先日当時の「ページャ」について、自由文による新規メッセージを送受信できるものであると認定すべきではなく、原判決が、ページャを受信機と解釈したことに関し、誤りはないというべきである。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ前記第2の3(1)イの補充主張につき控訴人は、原判決が、本件各発明の「双方向ページングシステム」を理解するに当たり、歴史的経緯を備える必要があるとするのは、特許請求の範囲の充足・非充足の判断基準として誤っている の補充主張につき控訴人は、原判決が、本件各発明の「双方向ページングシステム」を理解するに当たり、歴史的経緯を備える必要があるとするのは、特許請求の範囲の充足・非充足の判断基準として誤っている旨を主張する。 しかし、原判決は、本件各発明の「双方向ページングシステム」の技術 的意義について、「そもそも、データの受信機能しか従来有していなかった ページャに送信機能を持たせ、電話から独立して動作する双方向のページングシステムを構築するに当たり、周波数や周波数サブバンドが多数になるなどの技術的課題を解決するためのもの」(原判決52頁26行目~同53頁3行目)であるとした上で、もともと双方向通信が予定されている被控訴人方法は、本件各発明の前記技術的課題を解決するためのものでは ないと判示しているのであり、控訴人のいう歴史的経緯を判断基準としているものではない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ前記第2の3(1)ウ及びエの補充主張につき控訴人は、本件明細書等の「電話システムから独立して動作する」(21 欄40行目)旨の記載は、本件優先日当時の電話システムが回線交換方式であったことに鑑みれば、回線交換方式の電話システムから独立して動作することを意味するものであると主張する。 しかし、本件優先日当時において、パケット交換方式の電話システムは周知の技術に属するものであり(乙54~62)、電話システムが回線交換 方式に限られるものでないことについては技術常識であったと認められるところ、本件明細書等の「電話」及び「電話システム」について、これが回線交換方式に限られ、パケット交換方式の電話システムは除外される旨の記載は認められない。 そうすると、本件明細書等に記載の「電話システム」に 明細書等の「電話」及び「電話システム」について、これが回線交換方式に限られ、パケット交換方式の電話システムは除外される旨の記載は認められない。 そうすると、本件明細書等に記載の「電話システム」について、回線交 換方式の電話システムを意味するとの控訴人の主張は、本件明細書等の記載及び本件優先日当時の技術常識に整合するものということはできない。 したがって、被控訴人サービスに係るLTE通信方式におけるデータ通信はパケット交換方式であって、回線交換方式の電話システムから独立して動作するものであるから、「電話システムから独立して動作する双方向 ページングシステム」に該当する旨の控訴人の主張は、採用することがで きない。 以上のとおり、被控訴人方法が本件各発明の「ページャ」及び「双方向ページングシステム」を充足するとする控訴人の主張は理由がない。 (2) 均等侵害(構成要件Aの「双方向ページングシステム」及び構成要件BないしEの「ページャ」)について 控訴人は、仮に被控訴人方法が、文言上は本件各発明の技術的範囲に属しないものとしても、これと均等なものとして、特許権侵害に当たる旨を主張する。 特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、 ①同部分が特許発明の本質的部分ではなく、②同部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、③上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、④対象製品等 が、特許発明の特許出願時における に、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、④対象製品等 が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解する のが相当である(平成10年最判及び平成29年最判)。 そして、上記①の要件(以下「第1要件」という。)における特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり、特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解 決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。 本件各発明は双方向ページングシステムの動作方法に関する発明であるところ、本件各発明の意義は、既に検討したとおり、従来は片方向であったページングシステムに双方向通信能力を提供するものであって、多数の周波数 を用いることなく、少ない周波数によって電話システムから独立して動作する双方向ページングシステムを提供することにあるから、本件各発明の本質的部分、すなわち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分とは、従来は片方向であったページングシステムを前提とし、これを多数の周波数を用いることなく、電話 るから、本件各発明の本質的部分、すなわち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分とは、従来は片方向であったページングシステムを前提とし、これを多数の周波数を用いることなく、電話システムから独立して双方向化する点 にあるものと認められる。 これに対し、被控訴人方法は、LTE通信方式における上りリンクのデータ送信に関する方法であるから、本件各発明と被控訴人方法とは、ページングシステムであるか電話システムであるかという点において相違するものである。 そして、電話システムは、双方向のリアルタイム通話を前提としたシステムであって、片方向通信を双方化するという課題がそもそも生じ得ないものであるから、被控訴人方法は、本件各発明の意義を本質的に有するものではない。加えて、補正の上で引用した原判決第4の2(1)イのとおり、本件各発明は前記電話システムから独立して動作するものであることからしても、本 件各発明と電話システムである被控訴人方法とは、その本質的部分において異なるというべきである。 そうすると、本件各発明はページングシステムであるのに対して、被控訴人方法は電話システムであるとの相違部分について、本件各発明の本質的部分ではないとすることはできない。 よって、被控訴人方法は、均等侵害の第1要件を充足しないから、均等侵 害は成立しない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 (3) 本件各訂正発明の技術的範囲への属否について控訴人は、被控訴人方法は、本件訂正後の本件各訂正発明の技術的範囲に属し、仮に文言上属しないものとしても均等なものとして、その技術的範囲 に属する旨を主張する。 しかし、本件各発明の「双方向ページングシステム」(構成要件A)及び「ページャ」 明の技術的範囲に属し、仮に文言上属しないものとしても均等なものとして、その技術的範囲 に属する旨を主張する。 しかし、本件各発明の「双方向ページングシステム」(構成要件A)及び「ページャ」(構成要件BないしE)について前記のとおり解される以上、その特許請求の範囲を減縮した本件各訂正発明の「双方向ページングシステム」(構成要件A’)及び「ページャ」(構成要件B’ないしE’)について も同様に解されるところであるから、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人方法が本件各訂正発明の技術的範囲に属することはない。 また、上記(2)の説示によれば、本件各訂正発明についても同様に、被控訴人方法につき本件各訂正発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するものとも認められない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 3 結論よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 別紙当事者目録 控訴人ジーピーエヌイーコーポレイション 同訴訟代理人弁護士 別紙当事者目録 控訴人 ジーピーエヌイーコーポレイション 同訴訟代理人弁護士 宮原正志 山本健策 上米良大輔 福永聡 本田輝人 同訴訟代理人弁理士 長谷部真久 同補佐人弁理士 飯田貴敏 被控訴人 KDDI株式会社 同訴訟代理人弁護士 辻居幸一 渡辺光 同補佐人弁理士 那須威夫 被控訴人補助参加人 エリクソン・ジャパン株式会社 同訴訟代理人弁護士 三好豊 飯塚卓也 渡邉峻 同訴訟代理人弁理士 大塚康徳 高柳司郎 同補佐人弁理士 江嶋清仁 坂本隆志 被控訴人補助参加人 FCNT株式会社 同訴訟代理人弁護士 田中成志 被控訴人補助参加人 FCNT株式会社 同訴訟代理人弁護士田中成志 板井典子 山田徹 澤井彬子 沖達也 被控訴人補助参加人 AppleJapan合同会社 同訴訟代理人弁護士北原潤一 米山朋宏 黒田薫 同訴訟代理人弁理士中村佳正 被控訴人補助参加人 富士通株式会社 同訴訟代理人弁護士服部誠 中村閑 梶並彰一郎 以上

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