主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは原判決別紙4工事目録記載の工事を続行してはならない。 第2 事案の概要(以下,特に断らない限り,略称は原判決の表記による。) 本件は,控訴人らが,被控訴人らを起業者とする「二級河川川棚川水系石木 ダム建設工事並びにこれに伴う県道,町道及び農業用道路付替工事」(本件事業)に係る原判決別紙4工事目録記載の工事(本件工事)を続行することは,憲法上の権利又は人格権の一内容である,控訴人らの生命,身体の安全を侵害されない権利,不安に怯えず平穏に生きる権利,良好な環境の中で生活を営む権利,人が人として生きる権利(総体としての人間そのもの),人間の尊厳を維 持して生きる権利,税金を有効かつ適切に利用される権利等を違法に侵害するものであるなどと主張して,被控訴人らに対し,上記の権利に基づく妨害排除請求又は妨害予防請求として,本件事業に係る本件工事の続行の差止めを求める事案である。 原審は,本件事業により,控訴人らの生命,身体の安全が侵害されるおそれ があるとも,治水対策が執られないことにより,控訴人らの生命,身体の安全が侵害されるとも,控訴人らの生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利が侵害されているともいえない,控訴人らの主張する,こうばるの豊かな自然とその恵みを享受しながら生活を営む権利は,本件工事の続行の差止めを求め得る私法上の権利といえるような明確な実体を有するものではないし,人が人と して生きる権利(総体としての人間そのもの)及び人間の尊厳を維持して生き る権利も,民 事の続行の差止めを求め得る私法上の権利といえるような明確な実体を有するものではないし,人が人と して生きる権利(総体としての人間そのもの)及び人間の尊厳を維持して生き る権利も,民事上の差止請求を基礎付ける具体的な法的権利とはいえない,控訴人らは,税金を有効かつ適切に利用される権利の侵害を根拠として,本件工事の続行の差止めを求めることはできないとして,控訴人らの請求をいずれも棄却し,控訴人らは,これを不服として控訴を提起した。 第1審原告らの一部は,控訴を提起していない。また,控訴人らの一部は, 当審において,訴えを取り下げた。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,3のとおり当審における控訴人らの主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第1章請求及び事案の概要等」の第2の1及び2(原判決2頁1行目から10頁19行目まで),同「第2章争点に関する当事者の主張」の第1及び第2 (原判決10頁21行目から52頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決2頁8行目から24行目までを次のとおり改める。 別紙1控訴人ら目録の番号1から38までの控訴人らは,本件事業に係る起業地(本件起業地)の収用の部分に係る土地(以下「本件収用地」と いう。)内に居住する者又は居住していた者(以下「控訴人居住者」という。)である。 別紙1控訴人ら目録の番号39から149までの控訴人らは,本件収用地を所有していた者又は共有持分権を有していた者(以下「控訴人地権者」という。)である。 別紙1控訴人ら目録の番号150から209まで,並びに,230及び231の控訴人らは,長崎県東彼杵郡a 町内に居住する者(以下 ていた者(以下「控訴人地権者」という。)である。 別紙1控訴人ら目録の番号150から209まで,並びに,230及び231の控訴人らは,長崎県東彼杵郡a 町内に居住する者(以下「控訴人a 町民」という。)である。 別紙1控訴人ら目録の番号210から229まで,及び,232から255までの控訴人らは,長崎県佐世保市内に居住する者である。 別紙1控訴人ら目録の番号256から289まで,291から353ま で,383及び396の控訴人らは,長崎県内に居住する者である。 別紙1控訴人ら目録の番号290,354から382まで,384から395まで,及び,397から403までの控訴人らは,長崎県外に居住する者である。」 原判決4頁7行目の「石木ダムを建設し」から9行目末尾までを「石木ダム を建設することにより,洪水の調節を行い,流水の正常な機能の維持を図るとともに,新たに最大4万㎥/日の水道用水の確保を図ることを目的とするものである。」に改める。 原判決4頁14行目の「洪水調整計画」を「洪水調節」に改める。 原判決5頁16行目の「依頼した」の次に「(乙15)」を加える。 原判決5頁17行目から22行目までを次のとおり改める。 「イ被控訴人県は,昭和47年7月29日,a 町b 郷,a 町c 郷及びa 町d郷(以下,併せて「3郷」という。)との間で,a 町長を立会人として,石木川の河川開発調査に関し,① 被控訴人県は,3郷の同意を得て,石木川の河川開発のための地質調査及び周辺の地形測量を実施する,ただし, 調査内容を変更する場合はあらかじめ3郷の了解を得なければならない,② 被控訴人県は,地質調査等の開始時期をあらか て,石木川の河川開発のための地質調査及び周辺の地形測量を実施する,ただし, 調査内容を変更する場合はあらかじめ3郷の了解を得なければならない,② 被控訴人県は,地質調査等の開始時期をあらかじめ3郷に明示し,かつ,その完了予定時期を3郷に明らかにする,③ 被控訴人県は,地質調査の結果の公表時期を3郷に明らかにする,地質調査が単年度に終了しない場合,3郷が要求するときは,被控訴人県は,中間調査概況を公表し説 明する,④ 調査の結果,ダム建設の必要が生じたときは,被控訴人県は,改めて,3郷と協議の上,書面による同意を受けた後,建設に着手する旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わした(甲D1)。 3郷は,昭和47年7月29日,a 町長との間で,石木川の河川開発調査に関し,① 本件覚書は,飽くまで3郷(地元関係者)の理解の上に作 業が進められることを基調とするものであり,被控訴人県が,本件覚書の 精神に反し,独断専行,強制執行等の行為に出た場合は,a 町長は,総力を挙げて反対し,作業を阻止する行動を執ることを約束する,② 地元関係者の完全な理解が成立しダム建設が行われることになった場合,a 町長は,⒜ 被控訴人県が,3郷の長い歴史,伝統,連帯が根底から覆されることに思いを致し,3郷の将来に対する不安を解消するため,その生活環 境の整備等に万全の便宜供与を行うこと,⒝ 被控訴人県が,就職のあっせんを含む,十分な補償の方途を講ずることについて,3郷の立場で,被控訴人県と折衝し,その実現に協力する,③ 3郷は,長崎県知事を信頼し,a 町長の協力を確信して,本件覚書に調印することを約束する旨の覚書も取り交わしている(甲D2)。」 原判決6頁7行目の「法31条に基づき,」の次に「本件 郷は,長崎県知事を信頼し,a 町長の協力を確信して,本件覚書に調印することを約束する旨の覚書も取り交わしている(甲D2)。」 原判決6頁7行目の「法31条に基づき,」の次に「本件起業地(土地及び漁業権)の一部について,事業認定後の」を加え,8行目の「留保する」を「保留する」に改める。 原判決6頁11行目から12行目にかけての「(以下,両名を併せて「本件各有識者」という。)」を削り,16行目の「回答した」の次に「(以下,こ の各意見を併せて「本件各有識者意見」という。)」を加える。 原判決6頁18行目から19行目にかけての「土地収用法20条及び138条1項の規定により準用される法20条の規定に基づき」を「本件事業は,法20条各号の要件を全て充足するとして,同条及び法138条1項に基づき」に,21行目の「前記カの手続の保留と共に告示した」を「起業者の名称,事 業の種類,起業地,事業の認定をした理由等を告示し,併せて事業の認定後の収用又は使用の手続が保留される旨を告示した」にそれぞれ改める。 原判決6頁22行目から23行目にかけての「処分行政庁が土地収用法の規定に基づいてした本件事業認定処分は,違法な処分であるとして」を「処分行政庁である国土交通省九州地方整備局長がした本件事業認定処分は,法20条 3号及び4号に反する違法な処分であるとして」に,25行目の「以下「別件 訴訟」という。」を「以下「別件訴訟」といい,別件訴訟における原告らを「別件訴訟の原告ら」という。」にそれぞれ改める。 原判決7頁1行目の「原告らの」から4行目の「判決を言い渡した」までを「本件起業地内に土地又は建物を所有又は共有している別件訴訟の原告らは,本件事業認定処分の取消しを求める原告適格を る。 原判決7頁1行目の「原告らの」から4行目の「判決を言い渡した」までを「本件起業地内に土地又は建物を所有又は共有している別件訴訟の原告らは,本件事業認定処分の取消しを求める原告適格を有するが,その余の原告らにつ いては,本件事業認定処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するとはいえず,当該原告らの訴えは不適法であるとして,これを却下するとともに,本件事業が法20条3号及び4号の要件を充足するとした処分行政庁(国土交通省九州地方整備局長)の判断に違法はなく,合理性を欠くものとはいえないとして,原告適格を有する別件訴訟の原告らの請求をいずれも棄却する判決を した」に改める。 原判決7頁7行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「シ当庁は,令和元年11月29日,別件訴訟一審判決は相当であるとして,別件訴訟の原告らの控訴を棄却する旨の判決をした。別件訴訟の原告らは,これを不服として上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,令 和2年10月8日,上告棄却,上告不受理の決定をした。(乙A42,丙21)」 原判決7頁22行目の「(以下その内容を「平成19年度水需要予測」という。)」を「(以下,これを「平成19年水需要予測」という。)」に改める。 原判決8頁7行目の「本件水需要予測は」から8行目の「処分行政庁に提出 された」までを「被控訴人県は,国土交通省九州地方整備局長から依頼を受け,本件事業認定処分に係る追加資料として,同局長に対し,本件水需要予測の結果を提出した」に改める。 原判決9頁12行目の「中小河川計画検討会は」を「学識経験者,建設省及び都道府県の河川技術者により構成される中小河川計画検討会は」に改め,1 3行目末尾を改行の上,次のとおり加え 。 原判決9頁12行目の「中小河川計画検討会は」を「学識経験者,建設省及び都道府県の河川技術者により構成される中小河川計画検討会は」に改め,1 3行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「オ被控訴人県は,平成11年,技術基準解説及び中小河川手引きを踏まえ,流域の重要度の評価指標と計画規模を対応させた長崎県二級河川流域重要度評価指標(以下「県評価指標」という。)を設定した。県評価指標は,技術基準及び中小河川手引きの改定後も変更されていない。」 原判決9頁20行目から21行目にかけての「(その位置は別紙7のとおり である。)」を削り,同行目の「(甲C13)」を「(甲C13,乙A2の16頁)」に改める。 原判決10頁4行目から5行目にかけての「1400㎥/秒」から6行目の「1130㎥/秒とした」までを「1400㎥/秒と設定し,流域内の洪水調節施設で270㎥/秒を調節することにより,基準点における河道への配分流 量を1130㎥/秒とした」に改める。 原判決10頁14行目の「前項の数値と同じ」の次に「1130㎥/秒」を加え,15行目の「10頁」を「11頁」に改める。 原判決10頁17行目及び21行目の「各権利利益」をいずれも「権利」に改め,24行目の「生命・身体の安全」を「生命,身体の安全を侵害されない 権利」に改める。 原判決11頁16行目及び19行目の「生命・身体の安全」をいずれも「生命,身体の安全を侵害されない権利」に改め,同行目の「平穏に生きることが」を「平穏に生きる権利が」に改める。 原判決13頁15行目の「92億5000万円が」を「92億5000万円 が補助金として交付される」に改める。 原判決13頁23行目の「生 を「平穏に生きる権利が」に改める。 原判決13頁15行目の「92億5000万円が」を「92億5000万円 が補助金として交付される」に改める。 原判決13頁23行目の「生命・身体の安全」を「生命,身体の安全を侵害されない権利」に改める。 原判決14頁19行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「5 控訴人らは,原判決別紙4工事目録記載第1の1(一部)及び2,第2 の1から4まで,及び,同6,並びに,第3の2の各工事の対象地の居住 者ではなく,当該対象地につき何ら権利を有していない。上記各工事の実施により,控訴人らの権利や法律上の利益が侵害されることはないし,その余の工事についても,収用委員会による収用又は使用の裁決を得るなど,適法に進められていて,その工事の実施により,控訴人らの権利や法律上の利益が侵害されることはない。土地収用自体が控訴人らの権利や法律上 の利益を侵害するというのであれば,本件事業認定処分の取消しを求める訴えや収用委員会の裁決に関する訴えにより争うべきである。」 原判決14頁21行目の「生命・身体の安全」を「生命,身体の安全を侵害されない権利」に改める。 原判決15頁23行目及び24行目の「各権利利益」をいずれも「権利」に 改める。 原判決17頁5行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 そして,本件水需要予測を含む被控訴人市の水需要予測が不合理で誤っていることは,被控訴人市の令和元年度の事業再評価に伴う水需要予測(以下「令和元年水需要予測」という。)において,従前の推計手法を採用してい ないことや,本件水需要予測において,業務営業用水の大口需要から除外し,小口需要に分類していた大型観光施設(A)を,再度大口需 和元年水需要予測」という。)において,従前の推計手法を採用してい ないことや,本件水需要予測において,業務営業用水の大口需要から除外し,小口需要に分類していた大型観光施設(A)を,再度大口需要に分類していることからも明らかである。被控訴人市が令和元年水需要予測において採用した推計手法も,① 業務営業用水,工場用水の大口需要(A,B株式会社〔以下「C」という。〕)につき,独自の負荷率(計画負荷率)を設定して, 一日最大給水量を算定する,② 業務営業用水の大口需要(防衛施設)につき,使用水量の実績値とかい離した過去の実績の最大値を予測値として採用する,また,計画給水量を一日最大給水量に採用し,これに基づき予測値を算定する,③ 工場用水の小口需要について,恣意的な推計手法を採用する,④ 業務営業用水及び工場用水の需要予測において,現在,地下水で賄って いる分を潜在的需要として計上する,⑤ 使用水量の実績値を考慮すること なく,不合理で恣意的な佐世保市全体の負荷率(計画負荷率)を設定する,⑥ 浄水処理過程における損失とは無関係である水源の不安定性を考慮して,安全率,すなわち利用量率を設定するなど,恣意的で不合理なものである。 使用水量の実績値が本件水需要予測及び令和元年水需要予測の予測値を 下回り,実績値と予測値が大幅にかい離する一方,本件水需要予測の予測値と令和元年水需要予測の予測値とがおおむね一致していることは,被控訴人市の水需要予測が,恣意的で不合理であることの証左である。」 原判決17頁8行目の「原単位の」を「市民1人当たりの生活用水の使用水量(以下「原単位」という。)の」に改める。 原判決20頁10行目の「被告市の調査に対するCの回答は」から13行目の「説明したも 目の「原単位の」を「市民1人当たりの生活用水の使用水量(以下「原単位」という。)の」に改める。 原判決20頁10行目の「被告市の調査に対するCの回答は」から13行目の「説明したものであり」までを「被控訴人市が本件水需要予測の策定前に実施した調査に対するCの「これまでの倍以上の水量を供給して頂くことも十分考えられる」との回答は,新造船事業と修繕船事業を合算し」に,15行目から16行目にかけての「②本件水需要予測の策定後に実施された分については」 を「被控訴人市が本件水需要予測の策定後に実施した調査については」にそれぞれ改める。 原判決21頁23行目の「中水道については」を「中水道(下水処理水を原水とし,トイレの処理水等に利用される再生水)については」に改める。 原判決22頁17行目の「設計指針の規定」を「設計指針の定め」に改める。 原判決27頁25行目の「処分行政庁が」を「処分行政庁である国土交通省九州地方整備局長が」に改める。 原判決29頁5行目の「川棚川流域の雨量は」から6行目の「高く無い」までを「川棚川流域の雨量と佐世保雨量観測所の雨量とが一致するわけではない」に改める。 原判決29頁13行目の「対象降雨群について」から15行目の「1400 ㎥/秒としたが」までを「対象降雨群として選定した13の洪水の実績降雨群につき,3時間雨量をⅢ型(計画継続時間内雨量及び洪水到達時間内雨量を計画規模の確率雨量まで引き伸ばす方法)により引き伸ばすなどして,上記のうち3洪水を対象降雨から棄却(除外)し,さらに,貯留関数法(流域からの流出高と流域内の雨水貯留高により,流域の降水量による流出量を推定する方法) により流量を算出するなどした結果,昭和42年7月 ち3洪水を対象降雨から棄却(除外)し,さらに,貯留関数法(流域からの流出高と流域内の雨水貯留高により,流域の降水量による流出量を推定する方法) により流量を算出するなどした結果,昭和42年7月9日に発生した洪水(以下「昭和42年7月洪水」又は「昭和42年7月9日洪水」という。)を引き伸ばした後のハイドログラフ(河川の特定の地点における流量と時間の経過の相関関係を図示したもの。以下,昭和42年7月洪水に係るハイドログラフを「昭和42年洪水型」又は「昭和42年7月9日洪水型」という。)の流出量が最大 となったことから,これを採用して基本高水のピーク流量を1400㎥/秒としたが」に改める。 原判決32頁12行目から19行目までを次のとおり改める。 「イ川棚川水系河川整備計画は,川棚川のうち石木川との合流点より上流域の計画規模を1/30とするところ,川棚川の流域面積81.44㎢のう ち,石木ダムより下流の流域面積は7.14㎢であり,全流域面積の8. 8%にすぎないことから,100年に1度の大雨が降れば,上記合流点より上流域において川棚川は氾濫することになる。また,川棚川沿いのe 町やa 町のハザードマップにおいても,100年に1度の大雨が降れば,川棚川が多くの箇所で氾濫することが予想されているところ,上記合流点よ り下流にある川棚大橋から下流方向へ1㎞の区間については,氾濫の危険性が高いのに,河川の整備に関する計画がなく,石木ダムにより洪水を防ぐことのできる範囲は,全流域面積の8.8%よりもさらに狭小である。」 原判決32頁24行目の「認めるべきではなく」から25行目末尾までを「認めるべきではない。」に改める。 原判決33頁2行目から3行目にかけての「(低地への降水が河川等に流出 原判決32頁24行目の「認めるべきではなく」から25行目末尾までを「認めるべきではない。」に改める。 原判決33頁2行目から3行目にかけての「(低地への降水が河川等に流出 できなかったことによる氾濫)」を削り,9行目の「平成2年洪水」を「平成2年7月に発生した洪水」に改める。 原判決33頁15行目の「不特定便益は」を「本件事業による不特定便益は」に改める。 原判決35頁5行目の「土地収用法等」を「法等の」に,25行目の「法1 条」を「水道法1条」に,36頁6行目の「法15条2項」を「水道法15条2項本文」に,12行目の「法5条」を「水道法5条1項2号」にそれぞれ改める。 原判決38頁11行目から12行目にかけての「市民一人当たり生活用水使用水量原単位(以下,「原単位」という。)」を「原単位」に改める。 原判決38頁17行目から22行目までを次のとおり改める。 「 原単位については,従前の実績を検討したところ,何らかの渇水対策を実施した年度は,原単位の数値が前年度より減少し,渇水対策を実施しなかった年度は,原単位の数値が増加する傾向にあったこと,佐世保市における原単位の数値が,人口規模の類似する他都市の数値(平均値)に比し60ℓ以上 少ないことなどから,市民の水使用が渇水により制約を受けていると判断した。」 原判決39頁18行目及び19行目の「当該造船企業」をいずれも「C」に改める。 原判決41頁6行目の「H19水需要予測」を「平成19年水需要予測」に 改める。 原判決41頁7行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 控訴人らは,被控訴人市は,令和元年水需要予測において,従前の推計手法を採用してい 成19年水需要予測」に 改める。 原判決41頁7行目末尾を改行の上,次のとおり加える。 「 控訴人らは,被控訴人市は,令和元年水需要予測において,従前の推計手法を採用していない,被控訴人市が令和元年水需要予測において採用した推計手法は,恣意的で不合理なものであるなどとの主張をする。 しかしながら,被控訴人市は,本件事業の工期延長に伴い,令和元年度に 事業再評価を実施し,従前の使用水量の実績値に基づく統計学的検証の結果を踏まえ,本件事業における計画規模を,中長期的将来を見据え,事故,災害等の非常時にも量的安全性を確保し得るものとするため,その時点における適切な推計手法を採用し,より実態に即して,令和元年水需要予測を策定したにすぎない。令和元年水需要予測は,妥当であり,不合理はない。 控訴人らは,使用水量の実績値が本件水需要予測及び令和元年水需要予測の予測値を下回り,実績値と予測値が大幅にかい離していて不合理である旨の主張もするが,水需要予測は,水道施設の計画規模の算定を目的とするものであるところ,この算定に当たっては,非常時においても水道の安定的な供給を図るため,様々なリスクを見込む必要性があることから,使用水量の 実績値が水需要予測の予測値を下回るのは当然である。」 原判決41頁10行目の「水道事業の認可申請について」から16行目末尾までを「そして,水道法7条1項,水道法施行規則1条の3第1項4号は,水道事業経営の認可の申請をするには,申請書に,「取水が確実かどうかの事情を明らかにする書類」を添えて,これを厚生労働大臣に提出しなければならな い旨を定め,水道法8条1項2号,水道法施行規則6条10号は,水道事業経営の認可は,その申請が「当該水道事業 うかの事情を明らかにする書類」を添えて,これを厚生労働大臣に提出しなければならな い旨を定め,水道法8条1項2号,水道法施行規則6条10号は,水道事業経営の認可は,その申請が「当該水道事業の計画が確実かつ合理的であること」,「取水に当たって河川法23条の規定に基づく流水の占有の許可を必要とする場合にあっては,当該許可を受けているか,又は許可を受けることが確実であると見込まれること」に適合していると認められるときでなければ,与えて はならない旨を定めている。」に改める。 原判決43頁10行目の「昭和31年8月洪水」を「昭和31年8月に発生した洪水」に改める。 原判決43頁17行目から23行目までを次のとおり改める。 「 河川法1条は,この法律は,河川について,洪水等による災害の発生が防 止され,河川が適正に利用され,流水の正常な機能が維持され,及び河川環 境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより,国土の保全と開発に寄与し,もって公共の安全を保持し,かつ,公共の福祉を増進することを目的とする旨を定める。また,河川法16条1項は,河川管理者は,その管理する河川について,計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持(河川の整備)についての基本となるべき方針に関する事項(河 川整備基本方針)を定めておかなければならない旨を,同法16条の2第1項は,河川管理者は,河川整備基本方針に沿って計画的に河川の整備を実施すべき区間について,当該河川の整備に関する計画(河川整備計画)を定めておかなければならない旨を定める。」 原判決44頁1行目の「河川管理者は」から3行目から4行目にかけての「さ れており,」までを「河川法16条1項所定の」に改める。 を定めておかなければならない旨を定める。」 原判決44頁1行目の「河川管理者は」から3行目から4行目にかけての「さ れており,」までを「河川法16条1項所定の」に改める。 原判決44頁16行目の「河川管理者は」から18行目の「されており,」までを「河川法16条の2第1項所定の」に,23行目の「河川工事の施工」を「河川工事の施行」にそれぞれ改める。 原判決47頁1行目から2行目にかけての「(河川のある地点における流量 と時間の関係を図示したもの)」を削る。 原判決47頁20行目及び49頁6行目の「同解説」をいずれも「技術基準解説」に改める。 原判決48頁11行目から12行目にかけての「長崎県二級河川流域重要度評価指標」を「県評価指標」に改め,13行目の「なお」から16行目末尾ま でを削る。 原判決51頁4行目から10行目までを削り,12行目の「平成2年7月洪水」を「平成2年7月に発生した洪水」に改める。 3 当審における控訴人らの主張控訴人居住者は,憲法上の権利又は人格権の一内容である,自己が選択した土 地で継続的かつ平穏に生活し,快適な生活を営む権利ないし人格的生存を図る権 利,自己が選択した土地に包括生活基盤を置いて継続的かつ安定的に生活する利益を享受する権利,すなわち,平穏生活権を有する。控訴人居住者は,本件工事により,電気,水道,ガスの供給のほか,医療,警察,消防,教育,育児環境,交通,通信等の社会生活上の基盤を喪失して,自己が生活の本拠として選択し,生まれ育ち,住み続けたいと選択した土地での平穏な生活を奪われるのみならず, 生業,生活環境,自然環境,地域の人々との交流,さらには,心の拠り所,思い出の地としての「ふるさと」を として選択し,生まれ育ち,住み続けたいと選択した土地での平穏な生活を奪われるのみならず, 生業,生活環境,自然環境,地域の人々との交流,さらには,心の拠り所,思い出の地としての「ふるさと」を奪われ,具体的権利である平穏生活権を侵害されるところ,これにつき,法に基づく正当な補償は行われていないのであって,控訴人居住者は,当然に本件工事の続行の差止めを求め得るというべきである。 また,本件工事は,現時点において,治水面においても,利水面においても, 全く必要性のないものである上,超過洪水時には,計画最大放流量を超える流量や,場合によっては,流入量に等しい流量が石木ダムから放流され,河川の水位を急激に上昇させることにより,かえって,住民らの生命,身体に対する危険性を増大させることになる。近時の気候変動や,本邦における治水政策の推移に照らすと,現時点において,本件事業が不合理かつ違法であることは明らかであり, 控訴人らは,憲法上の権利又は人格権に基づき,本件事業に係る本件工事の続行の差止めを求め得るというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正し,2のとおり当審における控訴人らの主張に対する判断を加え るほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3章当裁判所の判断」の第1(原判決52頁25行目から54頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決52頁25行目の「各権利利益」を「権利」に改める。 原判決53頁3行目の「生命・身体の安全」を「生命,身体の安全を侵害さ れない権利」に改める。 原判決53頁4行目から11行目までを次のとおり改める。 「 控訴人らは 判決53頁3行目の「生命・身体の安全」を「生命,身体の安全を侵害さ れない権利」に改める。 原判決53頁4行目から11行目までを次のとおり改める。 「 控訴人らは,被控訴人らが本件事業を進めることにより,控訴人居住者,控訴人地権者及び控訴人a 町民の生命,身体の安全を侵害されない権利又は生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利が侵害され,侵害されるおそれがある旨の主張をする。 しかしながら,本件事業は,石木ダムを建設することにより,流水の正常な機能を維持し,水道用水を確保するとともに,洪水の調節を行うことを目的とするものであって,本件事業を進めることにより,控訴人居住者らの生命,身体の安全を侵害されない権利又は生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利が侵害され,侵害されるおそれがあると認めることはできない。控 訴人らは,① 被控訴人県は,本件事業を優先し,本来行うべき他の治水対策を行っていない,② そのため,現時点において,豪雨が発生した場合,洪水が発生し,控訴人居住者らは,その生命,身体の安全を侵害されない権利又は生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利が侵害され,侵害されるおそれがある旨の主張をするが,本件事業を進めることと,他の治水対策を 講ずることとは,基本的に別個の問題であって,仮に,被控訴人県において,本件事業を優先して進めているとしても,このことから直ちに,控訴人居住者らの生命,身体の安全を侵害されない権利又は生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利が侵害され,侵害されるおそれがあると認めることはできない。 したがって,控訴人らの,生命,身体の安全を侵害されない権利や生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利を法的根拠とする本件工事の続行の されるおそれがあると認めることはできない。 したがって,控訴人らの,生命,身体の安全を侵害されない権利や生命,身体の不安に怯えず平穏に生きる権利を法的根拠とする本件工事の続行の差止請求には理由がない。」 原判決53頁13行目の「原告らの主張は」を「控訴人らの主張する上記権利の内容は」に,16行目の「主観的な評価による部分が大きく」から19行 目末尾までを「主観的な評価による部分が大きいといわざるを得ないし,当該 権利の成立要件,法的効果,場所的又は空間的範囲,権利の主体等も不明確であって,これは,本件工事の続行の差止請求の法的根拠になるものではない。」にそれぞれ改める。 原判決53頁22行目から54頁2行目までを次のとおり改める。 「 控訴人らの主張する上記権利の内容も,それ自体,抽象的で不明確である 上,その成立要件,法的効果等も不明確であって,これは,本件工事の続行の差止請求の法的根拠になるものではない。」 2 当審における控訴人らの主張に対する判断控訴人らは,本件工事により,社会生活上の基盤を喪失して,自身が生活の本拠として選択し,生まれ育ち,住み続けたいと選択した土地での平穏な生活を奪 われるのみならず,生業や,生活環境,自然環境,地域の人々との交流,さらには,心の拠り所,思い出の地としての「ふるさと」を奪われ,自己が選択した土地で継続的かつ平穏に生活し,快適な生活を営む権利ないし人格的生存を図る権利,自己が選択した土地に包括生活基盤を置いて継続的かつ安定的に生活する利益を享受する権利,すなわち平穏生活権を侵害される旨の主張をする。また,控 訴人らは,本件工事は,現時点において,治水面においても,利水面においても,全く必要性のないものであ 定的に生活する利益を享受する権利,すなわち平穏生活権を侵害される旨の主張をする。また,控 訴人らは,本件工事は,現時点において,治水面においても,利水面においても,全く必要性のないものである上,かえって,住民らの生命,身体に対する危険性を増大させることになるのであって,本件事業が不合理かつ違法であることは明らかである旨の主張もする。 しかしながら,控訴人らの主張する平穏生活権の内容も,抽象的で不明確であ り,その成立要件,法的効果等も不明確といわざるを得ない。また,上記平穏生活権の侵害が,本件事業につき本件事業認定処分がされたことによって,土地を収用されたり,転居を余儀なくされたりしたことをいうものであったとしても,本件事業認定処分がされたことによる権利,法律上の利益の侵害についての救済は,本件事業認定処分の取消しを求める訴えによるべきであって,本件工事自体 に起因する騒音,振動,水質汚濁等により,控訴人らが,社会生活上受忍すべき 限度を超えて,生活妨害や健康被害を受け,又は受けるおそれがあるというのであればともかく,本件事業自体が不合理であり違法であること,すなわち,本件事業により得られる公共の利益が乏しい一方,これにより失われる利益が甚大であること,他に有効な代替案があることなど,本件事業が法20条各号の要件を充足しないことを理由に,本件事業に係る本件工事の差止めを請求することはで きないというべきである。 控訴人らは,前記平穏生活権の侵害につき,法に基づく正当な補償が行われていない旨の主張もするが,法68条は,土地を収用し,又は使用することによって土地所有者及び関係人が受ける損失について,起業者の補償を義務付けているのであって,前記平穏生活権の侵害につき,法に基づく補償が行われてい もするが,法68条は,土地を収用し,又は使用することによって土地所有者及び関係人が受ける損失について,起業者の補償を義務付けているのであって,前記平穏生活権の侵害につき,法に基づく補償が行われていないか らといって,前記判断は左右されない。 被控訴人県が,昭和47年7月,3郷との間で,① 被控訴人県は,3郷の同意を得て,石木川の河川開発のための地質調査及び周辺の地形測量を実施する,ただし,調査内容を変更する場合はあらかじめ3郷の了解を得なければならない,② 被控訴人県は,地質調査等の開始時期をあらかじめ3郷に明示し,かつ,そ の完了予定時期を3郷に明らかにする,③ 被控訴人県は,地質調査の結果の公表時期を3郷に明らかにする,地質調査が単年度に終了しない場合,3郷が要求するときは,被控訴人県は,中間調査概況を公表し説明する,④ 調査の結果,ダム建設の必要が生じたときは,被控訴人県は,改めて,3郷と協議の上,書面による同意を受けた後,建設に着手する旨の覚書(本件覚書)を取り交わしたこ と,また,3郷が,a 町長との間で,① 本件覚書は,飽くまで地元関係者の理解の上に作業が進められることを基調とするものであり,被控訴人県が,本件覚書の精神に反し,独断専行,強制執行等の行為に出た場合は,a 町長は,総力を挙げて反対し,作業を阻止する行動を執ることを約束する,② 地元関係者の完全な理解が成立しダム建設が行われることになった場合,a 町長は,⒜ 被控訴 人県が,3郷の長い歴史,伝統,連帯が根底から覆されることに思いを致し,3 郷の将来に対する不安を解消するため,その生活環境の整備等に万全の便宜供与を行うこと,⒝ 被控訴人県が,就職のあっせんを含む,十分な補償の方途を講ずることについて,3郷の立場で,被控訴 郷の将来に対する不安を解消するため,その生活環境の整備等に万全の便宜供与を行うこと,⒝ 被控訴人県が,就職のあっせんを含む,十分な補償の方途を講ずることについて,3郷の立場で,被控訴人県と折衝し,その実現に協力する,③ 3郷は,長崎県知事を信頼し,a 町長の協力を確信して,本件覚書に調印することを約束する旨の覚書を取り交わしたことは,前記認定事実のとおりである。 そうであるにもかかわらず,未だ,本件事業につき地元関係者の理解が得られるには至っていないのであって,控訴人県を始めとする本件事業の起業者には,今後も,本件事業につき地元関係者の理解を得るよう努力することが求められるものの,本件覚書が存在することにより,前記判断が左右されるわけではない。 控訴人らの主張は採用できない。 3 よって,原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官森冨義明 裁判官佐藤拓海 裁判官伊賀和幸
▼ クリックして全文を表示