主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人ら所有の原判決別紙株券目録(1)ないし(6)記載の各株券(以下「本件各株券」という。)を被控訴人株式会社種清(以下「被控訴人会社」という。)において保管中,何者かによる盗難被害にあって紛失したため,各名義人株主を申立人として除権判決を得るため簡易裁判所に公示催告の申立てをしたところ,控訴人から本件各株券を所持している旨の権利の届出がされたことから,被控訴人らが控訴人に対して,本件各株券の所有権の確認と引渡を求めた事案であり,原判決がこれを認容したため,控訴人が控訴したものである。 2 当事者の主張(1) 請求原因原判決2頁8行目冒頭から22行目末尾までのとおりであるから,これを引用する。 (2) 請求原因に対する認否同頁24行目冒頭から26行目末尾までのとおりであるから,これを引用する。 (3) 抗弁① Aは,平成12年1月当時,本件各株券を所持していた。 ② BはAに対し,平成12年1月12日,1500万円を貸し付ける(以下「本件貸付」という。)にあたり,Aからその担保として本件各株券の差入れを受け,所持するに至った。また,本件貸付の際,本件各株券の時価相場が上がったときはAの申入れによりこれを売却して貸付金を返済し,時価相場が貸付額の7割相当額以下に下落したときはBの判断でこれを売却して貸付金の返済に当て剰余があればAに精算交付するとの約定であった(以下「本件特約」という。)。 ③ 控訴人はBに対して,平成12年2月10日,Aに代 相当額以下に下落したときはBの判断でこれを売却して貸付金の返済に当て剰余があればAに精算交付するとの約定であった(以下「本件特約」という。)。 ③ 控訴人はBに対して,平成12年2月10日,Aに代わり本件貸付債務を弁済する(以下「代位弁済」という。)と同時に,Bから本件各株券に対する担保権の譲渡を受けてその引渡を受けたが,その後Aから返済もなく,時価相場も下落したので,本件特約に基づき本件各株券を取得するに至ったものである。 (4) 抗弁に対する認否抗弁事実はすべて否認する。 (5) 再抗弁① Aは,本件各株券を含む盗難株券を多数所持しており,その入手経路も不自然であることから,窃盗団に連なる売りさばき人と推測されるのであって,無権利者である。 ② 本件各株券は上場株式であり,いつでも証券市場で売却することができるにもかかわらず,Aが高利の金融業者であるBに,時価総額の約7割の本件貸付を受けるために,これを担保として提供することは一般的に考えられないところであるし,本件各株券が盗難株券であることは証券会社又は最終名義人に対して問い合わせれば容易に判明し得たものである。 ③ しかるに,Bは本件貸付の担保として本件各株券を受け入れるに際し,何らの調査もしていない。よって,BはAが無権利者であることについて悪意か,仮に善意であるとしても重大な過失があり,本件各株券を善意取得することはない。 ④ また,控訴人は,AをBに紹介して,本件貸付及び本件各株券の担保差入れの際に立ち会っていた者であるから,Bに対して,Aに代わり本件貸付金を代位弁済してBから本件各株券に対する担保権の譲渡を受けてその引渡を受けるに際し,Aが無権利者であることについて悪意か,仮に善意であるとしても重大な過失があり,本件各株券を善意取得することはない。 (6) 再抗 から本件各株券に対する担保権の譲渡を受けてその引渡を受けるに際し,Aが無権利者であることについて悪意か,仮に善意であるとしても重大な過失があり,本件各株券を善意取得することはない。 (6) 再抗弁に対する認否① 再抗弁事実はすべて否認ないし争う。 ② Aは,C社の取締役会長であり,商品の代金として本件各株券を受領して取得したものであり,無権利者ではない。 ③ 仮に,前記②の事実が真実でないとしても,本件貸付の際に,AはB及び控訴人に対して,C社取締役会長の名刺を提示し,油の販売代金として本件各株券を取得したものである旨説明し,また紳士的な対応で身体障害者手帳を示して住所氏名を明らかにしていたのであり,疑いを持つような状況ではなかった。 ④ 商法205条2項により,株券の占有者は適法の所持人と推定されるから,特別な事情がない限り,譲受人において真実の権利者であるかどうか調査すべき義務はない。したがって,B,控訴人は善意,無重過失であり,本件各株券を善意取得している。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因について原判決5頁13行目冒頭から15行目末尾までのとおりであるから,これを引用する。 2 抗弁について(1) 証拠(証人B,控訴人[いずれも原審],後掲証拠)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ① 控訴人は,過去に十数年間貸金業をしていた経験を有するが,現在不動産業を営む者であり,BはEの商号で貸金業を営む者であり,控訴人の妻とBの兄の妻が姉妹であって控訴人及びBはいわゆる義理兄弟の関係にあるが,15年位前から専ら仕事上の関係でつきあいがある。 ② 控訴人は,30年来の友人であるDから,株券を担保に借入をしたい者がいるという情報を得て,その者をBに紹介することとした。そして,平成12年1月12日,Bの事務所で,控訴人 でつきあいがある。 ② 控訴人は,30年来の友人であるDから,株券を担保に借入をしたい者がいるという情報を得て,その者をBに紹介することとした。そして,平成12年1月12日,Bの事務所で,控訴人,B,D及びその借入希望者が落ち合った。その借入希望者というのがAであり,控訴人及びBはAとは,この時が初対面であり,Aからは,名刺(乙20号証)を貰いC社という油の貿易会社の代表者をしているという自己紹介を受けるとともに,担保提供株は商品代金として取得したものである旨の説明を受けた(但し,C社という会社が真実存するかどうかは証拠上明らかではない。)。 ③ 同日,BとAとの間で,貸付金1500万円,返済方式自由,利率年24.33パーセント,最終弁済日同年6月11日とする借用証書(乙1号証)及び元本極度額1500万円の債権の根担保として本件各株券を差し入れる旨の有価証券担保契約証書(乙2号証)を取り交わした。この当時における本件各株券の時価総額は約2345万円である(甲10号証,11号証の1)。 ④ さらにその後,BとAとの間で,同月19日付けで貸付金1500万円の借用証書(乙6号証)及び株式会社ファミリーマート株券30通を担保とする有価証券担保契約証書(乙7号証),同月25日付けで貸付金700万円の借用証書(乙10号証)及び東日本旅客鉄道株式会社他4社の株券16通を担保とする有価証券担保契約証書(乙11号証)がそれぞれ取り交わされ,担保とされた前記各株券はBに交付された。 ⑤ このようにして,Bは,Aに対して3度にわたり本件各株券他の株券を担保に貸付をしていたが,同年2月上旬,株式会社ファミリーマートの株式相場が値下がりしたため,証券会社に問い合わせたところ,Bが担保としている株式会社ファミリーマートの株券が事故株であり,このままでは売 貸付をしていたが,同年2月上旬,株式会社ファミリーマートの株式相場が値下がりしたため,証券会社に問い合わせたところ,Bが担保としている株式会社ファミリーマートの株券が事故株であり,このままでは売却できない旨の連絡があった。そこで,Bは,同月1日か2日頃,A,控訴人及びDを呼び出したうえ,事故株であるから何とかするように要求したが,Aは前記貸付の返済資金もないため,具体策は出なかった。その頃,本件各株券も事故株であることが判明したが,Aはその入手先として説明した商品の買主と交渉することもなかった。 ⑥ 同年2月5日,控訴人の事務所において,控訴人とBとの間で,Aに代わり控訴人がBに前記貸付金を返済する,本件各株券を含む担保とされた株券は貸付金を返済した者に返還する旨の合意ができた。 ⑦ 同年2月10日,Bは控訴人に対して,前記各借用証書,有価証券担保契約証書及び本件各株券を含む担保とされた株券を交付した。 B作成の控訴人宛の平成12年10月26日付け書面(乙16号証)には,前記各貸付金について,控訴人から,同年2月3日500万円,同月5日100万円,同月10日2400万円,同年4月5日750万円(計3750万円)の代位弁済を受け,借用証書及び株券等を同年2月10日に控訴人に交付したことを認める旨の記載がある。 ⑧ また,Aと控訴人との間で,前記各貸付について,控訴人の代位弁済のため,Aから控訴人に本件各株券を含む担保とされた株券を譲渡した旨の両名作成に係る平成12年3月21日付け譲渡書3通(乙4,8,12号証)がある。 (2) 以上の事実によると,BはAから,平成12年1月12日,本件貸付の担保として本件各株券の交付を受けたこと,同年2月10日,Aに代わり本件貸付債務を代位弁済した控訴人はBから,本件各株券に対する担保権の譲渡を受け ると,BはAから,平成12年1月12日,本件貸付の担保として本件各株券の交付を受けたこと,同年2月10日,Aに代わり本件貸付債務を代位弁済した控訴人はBから,本件各株券に対する担保権の譲渡を受けるとともに本件各株券の引渡を受けたこと,その後Aから返済もなかっため,同年3月21日,担保権の実行により本件各株券を取得したということができる。 3 再抗弁について(1) まず,Aが本件各株券の権利者であったかどうかについてみるに,本件貸付当時における本件各株券の時価総額は約2345万円であるから,Aとしては,市中の金融業者であり,かつこれまで取引のなかったBから,これを担保として借入れたりせずに,金融機関からこれを担保に借り入れたり,あるいはこれを証券市場を通じて売却して現金化することに,通常は支障がないとみられること,またAは,商品の代金として第三者から本件各株券を取得したといいながら,Bから事故株であるとしてその対処を求められても,当該第三者に対して交渉するなどの対応をとることはなく,前記各貸付の債務者でありながら,その返済について関心を示さず控訴人とBとの交渉に任せていたことが指摘できるのであり,このようなAの行動は本件各株券の正当な権利者の行動として合理的なものとはいいがたい。加えてAは,本件各株券が盗難被害にあった日から2か月程度しか経過していない段階で,本件各株券のほか前記株式会社ファミリーマートの株券等の盗難株券を所持していた者である。よって,Aが本件各株券について無権利者であったことは優に推認することができるというべきである。 (2) 次に,控訴人による善意取得の成否について検討する。 ① ところで,控訴人は,Bから本件各株券を取得したものであるとして,まずBによる善意取得を主張する。 しかしながら,控訴人の主張によっ (2) 次に,控訴人による善意取得の成否について検討する。 ① ところで,控訴人は,Bから本件各株券を取得したものであるとして,まずBによる善意取得を主張する。 しかしながら,控訴人の主張によっても,BはAから本件貸付の担保として本件各株券の交付を受けたにすぎないのであるから,その担保権が譲渡担保権であるとしても,その譲渡担保権の実行のない限り,担保物について確定的に所有権を取得することはない。そうすると,控訴人の主張によるも,Bが譲渡担保権の実行をした旨の主張はないし,前記認定事実によってもこのような事実は認められない。 よって,本件各株券についてBによる善意取得を前提とする控訴人の承継取得は,その余について判断するまでもなく理由がないことに帰する。また控訴人は,本件貸付に際して本件特約をした旨の主張もするが,Bが本件特約に基づく実行をした事実はない。 ② そこで,控訴人自身による善意取得の成否についてみるに,前記認定事実のとおり,控訴人はAに代わりBに対して前記貸付金を代位弁済して,Bの有する(譲渡)担保権を譲り受け,これを実行して取得したというのであるから,本件各株券の前主はAであるといえる(本件特約に基づく実行であるとしても同様である。)。 しかしながら,Bから(譲渡)担保権を譲り受けた平成12年2月10日からこれを実行するにいたった同3月21日までの間,控訴人において,既に本件各株券が事故株であることを認識していたことは明らかであり,事故株が盗難株券のみを意味するものでないとしても,その当時AがBに担保として差し入れた株券のうち,本件各株券のみならず前記株式会社ファミリーマートの株券等も事故株であったのであり,事故株であることが判明した後もAは正当な権利者として合理的な行動をとっていないこと等の事情が指摘できる 券のうち,本件各株券のみならず前記株式会社ファミリーマートの株券等も事故株であったのであり,事故株であることが判明した後もAは正当な権利者として合理的な行動をとっていないこと等の事情が指摘できる。そうであれば,控訴人としてAが本件各株券の正当な所持人であるかどうか疑問を抱いて当然であり,さらにAから事情説明を求めるなり,あるいは本件各株券の最終名義人や証券会社等に問い合わせるなどの調査をすべきであり,このような調査を尽くせば,本件各株券が盗難株券であることは容易に判明できたというべきである。しかるに,控訴人はこのような調査を尽くしていないのであるから,前主のAが本件各株券の正当な権利者ではないことについて悪意であるか,善意であるとしても重大な過失が認められる。 ③ よって,再抗弁は理由がある。 なお,控訴人の原審における主張,すなわち,本件各株券が事故株であることが判明した後,B,A,D及び控訴人の4名が協議した結果,控訴人が紹介者として責任を取ることになり,Bに対し,Aの借入金全額を代位弁済し,Aが借受金の担保となっている本件各株券を含む前記各株券を控訴人に譲渡すること,控訴人がその株券を換金するが,その額が代位弁済額に満たない場合にはその不足金をAが控訴人に対し別途返済することが合意され,控訴人が,そのその協議結果に基づき,順次代位弁済を行い,平成12年2月10日,Aより本件各株券の譲渡を受けた旨の主張についても,前記認定によると,前記譲渡時において,Aが無権利者ではないことについて控訴人に悪意又は重大な過失の存することは明らかというべきである。 4 以上の次第で,被控訴人らの本訴請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民 いうべきである。 4 以上の次第で,被控訴人らの本訴請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部裁判長裁判官小川克介裁判官黒岩巳敏裁判官永野圧彦
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