- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1原告の請求被告は,原告に対し,金3億4127万1850円及び内金3億2460万9600円に対する平成20年1月22日から,内金666万2250円に対する平成20年6月3日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2事案の概要,(「」。)本件は原告が発注したし尿及び浄化槽汚泥以下浄化槽汚泥等という処理施設の建設工事の条件付一般競争入札に関し,被告の従業員が他の業者の担当者と談合し,原告に提示する参考見積金額を不当につり上げた上,他の共同企業体(以下「JV」という)に被告を代表構成員とするJVよりも高額。 の入札を行わせて,同JVが入札参加者間で公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札金額(以下「正常落札額」という)と比較して。 不当に高い金額で落札し,当該金額で建設工事を受注したため,原告に損害を被らせたとして,不法行為(使用者責任)による損害賠償請求権に基づき,正常落札額と実際の落札額との差額から既払いの約定損害金を控除した残額及び弁護士費用の支払いを求めた事案である。 前提事実(以下の事実は,括弧内に認定根拠を掲記する以外,当事者間に争いがない)。 (1)当事者ア原告は地方自治体である。 イ被告は昭和5年12月設立の株式会社で,現在の資本金は840億7028万0304円,事業目的は鋳鉄管・各種パイプ及び同附属品の製造・- 2 -販売並びに敷設工事,鋳造品・粉末冶金製品の製造・販売,各種環境装置並びにプラントの設計・製作・監理・施工及び請負,各種汚水・各種排ガス及び各種汚染土壌の処理並びに回収・再生事業その他で,多岐にわたっている。 (2) 本件の施設の競争入札等 造・販売,各種環境装置並びにプラントの設計・製作・監理・施工及び請負,各種汚水・各種排ガス及び各種汚染土壌の処理並びに回収・再生事業その他で,多岐にわたっている。 (2) 本件の施設の競争入札等ア原告は,昭和46年,現在の下関市彦島(以下略)に下関市彦島し尿処理場を建設し,運営していたが,老朽化で処理能力が落ちたため,新しく浄化槽汚泥等処理施設を建設する構想を進め,平成16年12月下旬,旧処理場と同一場所に新施設を建設することを決めた(甲8,52の3。以下,この建設工事を「本件工事」という。 。)イ原告を含めた市町村等が発注する浄化槽汚泥等処理施設の新設又は更新工事についての工事請負契約の締結の手順は,通常一般的に,発注の前々年度までに基本計画を策定し,事業着手年度の前年度に整備事業計画策定業務を行うとともに,概算の事業費を決定する資料とするため,施工能力,,,を有しかつ工事実績のある業者に対し見積設計図書の提出依頼を行いそれを参考にして予定価格を決定する。そして,事業着手年度には,それらを踏まえて発注仕様書を作成し,一般競争入札,条件付一般競争入札,公募型指名競争入札,指名競争入札等の方法による入札を行い,落札した業者と工事請負契約を締結していた。しかし,そのいずれの工事も,特殊専門的技術を要することから,ほとんどの場合において,基本計画策定,整備事業契約策定,発注仕様書作成等の業務は,専門のコンサルタント業者に委託されていた(甲4,8,弁論の全趣旨。 )ウ原告は,コンサルタント会社であるC1から本件工事の見積仕様書の作成を受け,本件工事の入札予定価格の設定の際の参考とする目的で,汚泥再生処理センターの受注実績がある全ての国内プラントメーカーに参考見積書の提出を依頼することにし,平成17年2月7日,次の14社に 成を受け,本件工事の入札予定価格の設定の際の参考とする目的で,汚泥再生処理センターの受注実績がある全ての国内プラントメーカーに参考見積書の提出を依頼することにし,平成17年2月7日,次の14社に対し- 3 -参考見積書の提出を依頼し,同年2月28日までに,辞退届を出した2社(C2,C3)以外の被告ほか11社から,別紙見積額一覧表記載のとおりの金額の見積書が提出された(甲8,8の3,8の4,甲31(以上につき,枝番のあるものはその全てを含む。以下,特記ない場合同様。 。))①被告②C4③C5④C6⑤C7⑥C8⑦C9⑧C10⑨C11⑩C12⑪C13⑫C14⑬C2⑭C3エ原告は,前記見積書を参考にして,設計金額を29億8100万円(税抜額。以下,特記なき場合同様)と決定し,平成17年7月1日,本件。 工事について,次の内容を含む条件付一般競争入札(以下「本件入札」という)の告示をした(甲8,8の5,7。なお,原告は,入札執行時。 )(開札時)において,電子くじによって決定する数値(98.00%~99.99%の範囲)を設計金額に乗じて,予定価格(競争入札を行う際の落札上限額)を決定していた(甲8,弁論の全趣旨。 )(ア)工事の概要- 4 -工事名下関市浄化槽汚泥等処理施設建設工事工事場所下関市彦島(以下略)(,)施設規模計画処理量198KL/日し尿41KL/日浄化槽汚泥157KL/日処理方式固液分離・希釈放流方式,資源化処理方式助燃剤方式敷地面積約18,000㎡工期平成19年3月23日まで設計金額29億8100万円(イ)入札条件①本工事は,特定建設工事JVによる共同施工方式とする。特定JVは,代表構成員,第1構成員で構成し,第1構成員 0㎡工期平成19年3月23日まで設計金額29億8100万円(イ)入札条件①本工事は,特定建設工事JVによる共同施工方式とする。特定JVは,代表構成員,第1構成員で構成し,第1構成員については,下関市内業者3者で構成する。 ②代表構成員は,下関市建設工事競争入札参加資格者総合評点又は総合評定値通知書の総合評点値の機械器具設置工事が1000点以上で,特定建設業(機械器具設置工事に係るものに限る)の許可を受。 けており,平成7年4月1日以降に,公共工事の元請けとして,環境省又は厚生省の認める「汚泥再処理センター」施設を施工し,引き渡した実績を有すること。 (ウ)申請方法下関市役所契約室に特定JVの代表者が競争入札参加申請書を持参し,平成17年7月12日17時までに提出すること。 (エ)入札方法郵送によること。 入札書締切平成17年7月25日(月)消印有効(オ)開札日時等開札日時平成17年7月28日(木)10時00分開札場所下関市役所7F入札室オ本件入札の参加JV- 5 -本件入札は,平成17年7月12日の参加申請書の提出期限までに次の5JVから応募があったが,C14を代表構成員とするJVは,代表構成員に条件である施工実績がないとして参加資格が認められず,残りの4JVのみの参加申請書が受理された(甲8,8の8。 )(ア)被告を代表構成員とし,C15,C16,C17を第1構成員とするJV(以下「被告JV」という)。 (イ)C4を代表構成員とし,C18,C19,C20を第1構成員とするJV(以下「C4JV」という)。 (ウ)C9を代表構成員とし,C21,C22,C23を第1構成員とするJV(以下「C9JV」という)。 (エ)C13を代表構成員とし,C24,C25,C26を第1構成員とするJV という)。 (ウ)C9を代表構成員とし,C21,C22,C23を第1構成員とするJV(以下「C9JV」という)。 (エ)C13を代表構成員とし,C24,C25,C26を第1構成員とするJV(以下「C13JV」という)。 なお,本件工事の参考見積書を提出した12社のうち,C5,C6,C8,C10,C11,C12の6社は,いずれも指名停止処分を受け,本件入札に参加できなかった。また,C7は,担当する広島支店において機械器具設置工事業の許可を得ていなかったため入札参加できなかった甲,(21,26。 )カ開札本件入札は,平成17年7月28日午前10時から開札の予定であったところ,その前日の同月27日,原告に対し,新聞各社より談合情報が寄せられたことから延期され,同月29日午前9時20分に開札された(甲8の9,8の10。 )入札額は,被告JVが26億8000万円,C9JVが28億3000万円,C13JVが28億4500万円,C4JVが27億7000万円であり,被告JVが本件工事を落札した。原告は,開札時において,電子くじによって決定した数値である98.51%を設計金額に乗じて予定価- 6 -格を29億3658万3000円と決定したが,落札額を予定価格で除した落札率は91.26%であった(甲8の9,弁論の全趣旨。 )(3)本件工事の請負契約等ア原告は,本件入札で落札者となった被告JVとの間で,平成17年8月1日,以下の条件で,本件工事についての請負仮契約を締結した。なお,仮契約は下関市議会の同意により同月4日をもって本契約となった甲,,(1の2。以下,本契約を「本件契約」という。 。)(ア)工期平成19年3月23日まで。 (イ)請負代金額28億1400万円(前記26億8000万円に消費税・地方消費税 った甲,,(1の2。以下,本契約を「本件契約」という。 。)(ア)工期平成19年3月23日まで。 (イ)請負代金額28億1400万円(前記26億8000万円に消費税・地方消費税を加算したもの)イ本件契約の契約書には,次の条項がある(甲1。 )第42条の2第1項発注者は,この契約に関して,次の各号の一に該当するときは,この契約を解除することができる。 ①請負者が,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)48条4項,49条2項,53条の3,5。 4条1項もしくは第2項又は54条の2第1項の規定による審決を受け,かつ,当該審決の取消しの訴えを同法77条1項に規定する期間内に提起しなかったとき。 ②請負者が独占禁止法48条の2第1項の規定により課徴金の納付を命じられ,かつ,同条5項に規定する期間内に同項の審判手続の開始を請求しなかったとき。 ③(省略)④請負者又はその使用人その他の従業者について,刑法96条の3又は198条の刑が確定したとき。 第45条の2(不正行為に伴う損害の賠償)第1項請負者は,この契約に関して,第42条の2第1項各号の一に- 7 -該当するときは,請負代金額の10分の1に相当する金額を賠償金として発注者の指定する期間内に発注者に支払わなければならない。 第2項発注者は,前項の契約に係る損害の額が同項の請負代金の10分の1に相当する金額を超えるときは,請負者に対して,当該超える金額を併せて支払うことを請求することができる。 第3項前2項の規定は,第31条第4項から第6項までの規定により工事目的物の引渡しを受けた後においても適用があるものとする。 第4項発注者は,前項の場合において,請負者がJVであり,既に解散しているときは,当該JVの構成員であった全 から第6項までの規定により工事目的物の引渡しを受けた後においても適用があるものとする。 第4項発注者は,前項の場合において,請負者がJVであり,既に解散しているときは,当該JVの構成員であった全ての者に対して賠償金の支払いを請求することができる。この場合において,当該構成員であった者は,共同連帯して第1項の責任を負うものとする。 (4)本件契約の履行被告JVは,平成17年8月5日,本件工事に着工し,平成19年3月23日までにこれを完了した。 これに対し,原告は,次のとおり合計28億1400万円を被告JVに支払った。 平成17年11月30日工事代金の前払金4億2192万円平成18年4月10日部分出来高払金9億8449万2000円平成19年4月5日完成払金14億0758万8000円(5)談合事件の発覚等,(「」。),ア平成18年5月23日公正取引委員会以下公取委というは(,,,,,,,,被告ほか10社C7C4C5C6C8C9C10C11C12,C13)及びそれらの会社の従業員で受注調整連絡を担当した者11名を,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿等処理施設の新設又は更新工事の受注に関し,談合して,同工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限したとして,独占禁止法違反の容疑で,検事総- 8 -長に告発したが,当該談合に係る入札には,本件入札が含まれていた。 ,,,イ大阪地方検察庁検察官は前記告発事件につき平成18年6月12日前記11社とその従業員11名を被告人として,独占禁止法違反の罪で公訴提起し(大阪地方裁判所同年(わ)第3317号,大阪地方裁判所は,)平成19年4月23日,被告に対して罰金2億2000万円,被告の従業員P1に対して懲役1年6 告人として,独占禁止法違反の罪で公訴提起し(大阪地方裁判所同年(わ)第3317号,大阪地方裁判所は,)平成19年4月23日,被告に対して罰金2億2000万円,被告の従業員P1に対して懲役1年6月,執行猶予3年の有罪判決を言い渡し,同判決は同年5月8日に確定した。この判決で認定された犯罪事実は,次のとおりである(甲2,3。 )被告,C7,C4,C5,C6,C8,C9,C10,C11,C12,C13の11社は,市町村等発注のし尿処理施設の新設及び更新工事の請負等の事業を営む事業者であり,P1は,被告の環境エンジニアリング事業本部環境リサイクル事業部環境リサイクル営業部部長,P2は,C7の環境プラント事業本部営業企画部長等,P3は,C4の環境事業部営業二部専門部長,P4は,C5の環境事業カンパニー環境システム事業部第三営業室営業第一グループ室長等,P5は,C6の水環境事業部環境営業本部統括部長等,P6は,C8の水エンジニアリング事業部水システム営業部第3営業室長等,P7は,C9のプラント事業本部環境事業部営業グループ担当部長,P8は,C10の機械事業本部環境ソリューション部関東営業第一グループグループ長,P9は,C11の環境事業本部営業本部水・汚泥営業部担当部長等,P10は,C12の環境・プラント事業本部水処理・資源リサイクル営業部営業統括グループ長,P11は,C13のプラント事業統轄本部環境事業本部水処理営業第三部長等の職にあり,それぞれ,その所属する会社の従業者として,市町村等発注に係るし尿処理施設の新設及び更新工事の受注等に関する業務に従事していたものであるが,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11は,それぞれ,その所属- 9 -する会社の従業者と共謀の上,その所属する会社の業務に関し,平成1 務に従事していたものであるが,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11は,それぞれ,その所属- 9 -する会社の従業者と共謀の上,その所属する会社の業務に関し,平成16年12月上旬ころ,東京都(以下略)の当時のC11東京本社事務所等で会合を開催するなどし,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事につき,発注仕様書の作成に関する関与の度合いなどを勘案して受注希望者間の話し合いにより受注予定会社を決定するとともに当該受注予定会社が受注できるような価格で入札を行うなどする旨を合意し,そのころから平成17年7月ころまでの間,同合意に従って,同工事について受注予定会社を決定し,もって,被告ら11社が共同して,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事の受注に関し,被告ら11社の事業活動を相互に拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,同工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限したものである。 ウ被告の受注調整担当者であったP1は,本件入札に関しても,平成17年7月上旬ころ,談合組織のメンバーであるC4のP3,C9のP7,C,,13のP11と共謀の上被告JV以外のJVは形だけの入札参加をして被告JVに本件工事を落札させることを企て,被告JV以外のJVに被告JVの入札額より高値で入札させ,本件工事を被告に落札させていた(甲21。 )エ被告は,平成19年1月16日,公取委から,前記独占禁止法違反事件,,。 ,に関し排除命令及び課徴金納付命令を受け同命令が確定したそして被告は,6億0233万円の課徴金を納付した。 オ原告は,平成19年3月29日,本件契約の契約書第45条の2第1項に基づき,被告JVに対し,請負代金の10分の1に相 を受け同命令が確定したそして被告は,6億0233万円の課徴金を納付した。 オ原告は,平成19年3月29日,本件契約の契約書第45条の2第1項に基づき,被告JVに対し,請負代金の10分の1に相当する約定損害賠償金2億8140万円の支払いを請求したところ,被告は,自社のみが支払う旨申し出たため,原告はこれを承認し,同年5月7日,被告から上記賠償金全額を受領した。 - 10 -カ原告は,被告に対し,平成19年12月11日付けで,前記約定損害賠償金を超えて損害を受けていたとして,契約書第45条の2第2項に基づき,金3億2460万9600円を平成20年1月21日までに支払うよう催告したが,被告側は,平成20年1月11日付書面で,請求には応じられないとして,支払いを拒否した。なお,原告は,本件訴訟において,弁護士費用を除いた未払損害賠償金として3億4127万1850円を請求するが,当初の損害額算定の際に計算ミスをしたとして,666万2250円分については上記催告金額に含まれていない。 本件の争点本件の争点は,(1)見積段階での談合の有無,(2)損害の額であり,これに対する当事者の主張は,以下のとおりである。 (1)争点(1)(見積段階での談合の有無)について(原告の主張)ア原告は,設計金額の算定について,本件工事のように専門的知識や技術が必要なものに関しては,積算の専門的知識を有しないため,各社が提出した見積額を工種毎に分解し,この工種毎に全社の平均値を計算し,これらを単純に合算する方法を取っている。そして,原告は,本件工事についても,汚泥再生処理センターの受注実績がある全ての国内プラントメーカーに参考見積書の提出を依頼することにして,被告ら14社に対し仕様書を示して参考見積書の提出を依頼し,被告ら12社から提出された見 ても,汚泥再生処理センターの受注実績がある全ての国内プラントメーカーに参考見積書の提出を依頼することにして,被告ら14社に対し仕様書を示して参考見積書の提出を依頼し,被告ら12社から提出された見積書を基に上記のように計算し,さらに,近年施工された全国の同種施設の価格も参考にしながら設計金額を算定した。しかしながら,C14を除く被告ら11社は,専門分野であることを悪用し,予定価格を引き上げ,多額の利益を得るため,入札段階のみならず見積段階から談合して見積額を大幅に水増して原告に提出した。見積段階で談合が行われることなど原告には想定外であり,原告は,被告らの見積書を信用せざるを得なかった。 - 11 -,,,なおC14の見積金額については平成16年7月に脱退するまでは同社は談合組織のメンバーであった(甲4)のであるから,同社も,見積調整についてその手法を熟知していたのであり,談合組織のメンバーによって見積調整が行われることを見越し,これに便乗して高めの見積をしたであろうことは,容易に推測できる。 イ被告らによる具体的な見積談合の方法は,談合会社の担当者らの供述によれば以下のようなものであり,本件においても同様の手法が採られたものと思われる。 まず,発注者から見積依頼が来ると,社内の技術部門で発注者の見積仕様書に基づく概算の見積金額を作成する。この概算の見積金額は,概算見積原価の総額に間接費を加えたものである。この概算見積原価は,実際の原価よりも20~25%程度水増しした額であり,また,間接費も概算見積原価の20%と非常に大きな割合であり,これだけ加算すれば十分利益が出るものである。そして,この概算の見積金額を11社の世話役である幹事会社に連絡すると,幹事会社が調整(各社の平均値をさらに1割増した金額を基準に調整)した上,各社 り,これだけ加算すれば十分利益が出るものである。そして,この概算の見積金額を11社の世話役である幹事会社に連絡すると,幹事会社が調整(各社の平均値をさらに1割増した金額を基準に調整)した上,各社に対し,発注者に提出すべき見積額の連絡をする。 ウ確かに,見積を基準とした原告の予定価格が本来の正常な価格よりも高額に設定されること自体は,直接原告に損害を与えるものではないが,当該予定価格が設定されたことにより,本来なら予定価格超過で失格となる入札額が有効となる可能性が高くなったこと,また,被告は,当該予定価格以下で落札すれば原告が満足するであろうことを見越した上で見積を提出していることからして,被告らの見積段階における談合も,それ自体極めて悪質な不法行為というべきである。 エ被告は,原告はコンサルタントを置いて見積額の当否を点検しているはずであると主張するが,被告らは自らも認める専門能力を有するプラント- 12 -メーカーであるし,コンサルタントといえども被告らの見積額の当否を検討できる能力は持ち合わせておらず,しかも,被告らはそれを知悉していたのである。よって,発注者である原告が,被告らの提出する見積を鵜呑みにするであろうことを知った上で,見積段階で談合して嵩上げした見積書を提出したことは,不法行為に該当する。 (被告の主張)ア原告は,見積段階の談合に関する具体的事実について一切主張を行わないから,この点に関する原告の主張自体が失当である。原告が根拠とする証拠には,本件において見積段階の談合が行われていることを具体的に示す記載はまったくない。 イまた,原告は,談合のメンバーではないC14からも見積書を徴求し,その上で設計金額を決めている上,同社の見積額は27億5000万円であり,被告提出の見積額29億5000万円との差はわず くない。 イまた,原告は,談合のメンバーではないC14からも見積書を徴求し,その上で設計金額を決めている上,同社の見積額は27億5000万円であり,被告提出の見積額29億5000万円との差はわずか7%程度に過ぎない。このことからすれば,見積段階での談合によって適正な見積額から30~35%も高くなっていたとの原告の主張は荒唐無稽であり,見積段階の談合自体が存在しなかったことを如実に示すものといえる。 ウ原告は,原告には見積額の当否を検討できる能力はなかったとか,原告の設計金額の算定手法が,各業者から見積書を徴収し,その見積額を工種毎に分解し,工種毎に平均値を計算して,これらを単純に合算するだけに過ぎなかったことを被告が悪用して,見積段階でも談合して見積額を引き上げ,より多額の損害を負わせたと主張する。 しかし,下関市財務規則120条では,予定価格は取引の実例価格,需給の状況,履行の難易,数量の多寡,履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないとされており,本件工事の予定価格も上記規則に則って決められたはずである。また,原告の環境部長は,市議会の答弁で,本件については各社から見積を徴し,原告と同規模で近年施工された同種- 13 -施設等とも比較して平均額等を出しながら設計額を算出した,また,実勢価格はキロリットル当たり3000万円と把握し,本件はそれ以下であった等と述べている。これらを踏まえると,原告は,同種施設の工事額等も参考にしながら,自己の計算と責任において適正に本件工事の設計金額を決定したといえる。仮に,原告が,主張のような計算方法で設計金額を決定したとしても,それは,各社から徴した見積が想定の範囲内であったことから,そのような方法を用いたまでのことである。また,原告は,本件工事に関し,環境省に対して補助金(交付金 計算方法で設計金額を決定したとしても,それは,各社から徴した見積が想定の範囲内であったことから,そのような方法を用いたまでのことである。また,原告は,本件工事に関し,環境省に対して補助金(交付金)を申請していたのであるから,客観的な工事金額を算定する必要性は一層高かったといえる。また,本件工事の設計金額決定に当たっては,専門のコンサルタント業者が介在していたのであるから,原告は設計金額を決定する能力も補うことができたというべきである。よって,原告の主張は失当である。 (2)争点(2)(損害の額)について(原告の主張)ア被告の従業員P1による本件の不法行為(談合による見積,入札)の結果,原告には以下の合計金6億2267万1850円の損害が発生したから,原告は,民法715条に基づき,被告に対し,前記損害金6億2267万1850円から既払いの約定損害賠償金2億8140万円を控除した残額である金3億4127万1850円及び内金3億2460万9600円(平成19年12月11日付け請求分)に対する催告期限の翌日である平成20年1月22日から,内金666万2250円(残金から弁護士費用を除いた部分)に対する訴状送達日の翌日である同年6月3日から,いずれも支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の各支払いを求める。 (ア)正常落札額と落札額との差額金6億1267万1850円本件の談合によって原告は,正常落札額と現実の落札額の差額相当額- 14 -の損害を被った。 本件入札における正常落札額は,22億0132万8150円(税込額)であるから,現実の落札額である28億1400万円(税込額)からこの額を控除すると,残額は6億1267万1850円である。 (イ)弁護士費用金1000万円イ正常落札額について(ア)本件入札の予定 から,現実の落札額である28億1400万円(税込額)からこの額を控除すると,残額は6億1267万1850円である。 (イ)弁護士費用金1000万円イ正常落札額について(ア)本件入札の予定価格の基となった原告の設計金額29億8100万円は,業者から参考見積書を徴求し,その見積額を工種毎に分解して平均値を計算した上,これらを単純合算しただけのものであるところ,前述のとおり,被告らは見積段階で既に談合していたのであって,上記設計金額も正常ではないから,これを基準とすることはできない。 (イ)そこで,標準工事価格を基準として適正な設計金額を算出し,これに原告の入札手続に従って正常落札額を算定することが合理的である。 ①まず,標準工事価格は,適正な工事原価と間接費との合計であるところ,工事原価については,被告自身が受注後に組み直した実行予算額である22億2150万円(甲18)を採用する。この価格は,談合による不当な落札価格を前提としたものであるから,ある程度の余,,裕をもった工事原価といえ必ずしも適正な原価とはいえないものの原告は被告に不当な賠償を求める意図はないから,これを工事原価とした。そして,本件工事が環境省国庫補助事業または同省交付金対象事業であることに鑑み,同省の交付要綱に基づき,同省の公共工事の実態調査から統計的に導き出した計算式により算出される一般管理費及び適正な利益(工事原価の11.5%)を間接費として加算した。 以上によれば,標準工事価格は,以下のとおり24億7697万2000円となる。 2,221,500,000円×1.115=2,476,972,000円- 15 -②適正な設計金額は,上記標準工事価格に,本件入札時の予定価格率98.51%を乗じたものであるから,次のとおり24億4006万5000円とな 1.115=2,476,972,000円- 15 -②適正な設計金額は,上記標準工事価格に,本件入札時の予定価格率98.51%を乗じたものであるから,次のとおり24億4006万5000円となる。なお,被告は,原告が採用している予定価格率の適用につき,許されない「歩切り」である旨非難するが,電子くじの数値は2%の範囲内であり,予定価格決定に当たっての必要最小限度の端数処理であるから,問題はない。 2,476,972,000円×98.51%≒2,440,065,000円③そして,正常落札額については,上記の適正な設計金額に,当時の平均落札率を掛けて算出すべきである。ここで,平均落札率は,原告が平成15年度から18年度までの間に発注した条件付一般競争入札のうち,機械器具設置工事で,設計金額が1億5000万円以上の工事における平均落札率85.92%を採用するのが合理的である。そうすると正常落札額は次のとおり22億0132万8150円税,,(込額)となる。 2,440,065,000円×85.92%≒2,096,503,000円2,096,503,000円×1.05=2,201,328,150円(税込額)(ウ)C14は,別件訴訟において,本件工事は16億円で施行可能であったと述べているところ,この事実は,原告算定の損害額の合理性を裏付ける。 ウ正常落札額についての二次的主張(ア)被告らは見積段階から談合を行い,不当に見積額をつり上げて,原告により多額の損害を負わせた。C11の担当者によれば,同社は,他の自治体から依頼された見積を,以下のように行っていた。 まず,発注者からの発注仕様書に基づく原価よりも20~25%高く概算見積原価を算定し,この概算見積原価に,間接費(一般管理費)を。 ,,20%加算して概算見積金額を算定 以下のように行っていた。 まず,発注者からの発注仕様書に基づく原価よりも20~25%高く概算見積原価を算定し,この概算見積原価に,間接費(一般管理費)を。 ,,20%加算して概算見積金額を算定するよってこの概算見積金額は- 16 -発注仕様書に基づく原価より30%以上水増しした見積金額となる。これを,幹事会社に報告し,その幹事会社はさらに,談合メンバー各社の見積金額の平均値に10%程度上乗せした金額を基準にして,±5%程度の範囲で金額を決めて,メンバー各社に割り振る。 ①発注仕様書に基づく原価×1.2~1.25=概算見積原価②概算見積原価×1.2=概算見積金額③概算見積金額(メンバー各社平均値)×1.1=見積金額④見積金額×0.95~1.05=各社の見積額(イ)以上を前提に,本件でも同様であったとして原価を逆算すると,C14を除いた10社の見積額の平均額は30億4000万円であるから,発注仕様書に基づく原価(適正な原価)は高くても19億2000万円となる。 3,040,000,000円÷1.1≒2,763,000,000円(概算見積金額)2,763,000,000円÷1.2÷1.2≒1,920,000,000円(ウ)そして,前述のとおり,環境省の補助金交付要綱では,間接費は工事原価の11.5%と定められているから,これを基に適正な工事価格を認定すると,上限でも21億4080万円となり,これに消費税5%を加えた22億4784万円が正常落札額と考えることが合理的である。 1,920,000,000円×1.115=2,140,800,000円2,140,800,000円×1.05=2,247,840,000円エ正常落札額についての主張その3(ア)C11の担当者によれば,同社は他市の自治体からの見積りを以下のように 00,000円2,140,800,000円×1.05=2,247,840,000円エ正常落札額についての主張その3(ア)C11の担当者によれば,同社は他市の自治体からの見積りを以下のように行っていた。 まず,発注者からの発注仕様書に基づく原価よりも20~25%高く概算見積原価を算定し,この概算見積原価に,概算見積総額の20%程- 17 -度の間接費を加算して概算見積金額を算定する。これを,幹事会社に報告し,その幹事会社はさらに,談合メンバー各社の見積金額の平均値に10%程度上乗せした金額を基準にして,±5%程度の範囲で金額を決めて,メンバー各社に割り振る。 以上のことを算定式で表すと,次のようになる。 ①概算見積原価(A)+間接費(B)=概算見積金額(C)B=C×0.2②概算見積金額(C)×1.1=各社が提出する見積金額(D)(イ)C11が原告に提出した見積額は30億4000万円であるから,前記算定式に当てはめると,概算見積金額(C)=3,040,000,000円÷1.1≒2,763,000,000円間接費(B)=2,763,000,000円×0.2=552,600,000円概算見積原価(A)=2,763,000,000円-552,600,000円=2,210,400,000円となる。 C11のこの見積原価(A)は,実際の減価より20~25%ほど嵩上げして高く見積もったものであるから,適正な実際の原価は,高くても18億4200万円となる。 2,210,400,000円÷1.2=1,842,000,000円(ウ)そして,環境省の補助金交付要綱で定められた間接費(工事原価の11.5%)を加算すると,適正な工事価格は,高くても20億5383万円となり,これに消費税5%を加えた21億5652万1500円が正常落札額と考え 省の補助金交付要綱で定められた間接費(工事原価の11.5%)を加算すると,適正な工事価格は,高くても20億5383万円となり,これに消費税5%を加えた21億5652万1500円が正常落札額と考えることが合理的である。 1,842,000,000円×1.115=2,053,830,000円2,053,830,000円×1.05=2,156,521,500円オ正常落札額についての主張その4- 18 -(ア)被告の担当者は,事業部長から「限界利益率は25%から30%取れるようにしろ」などと指示が来ると供述している(甲19,23)。 ところ,限界利益率は,限界利益(粗利益)÷純売上高で計算されるから(実際の落札額26億8000万円-工事原価)÷26億8000,万円=30%より,工事原価は18億7600万円となる。 (イ)この原価に前記の間接費比率11.5%を掛けて算出した20億9174万円が適正な工事金額であり,税込額は21億9632万円である。 カ民事訴訟法248条の適用原告の損害額は前記の主張から明らかではあるが,究極のところ,被告らがどのような計算でいかなる不当な利得を得たかということは被告らが知悉していることであり,被告らが内実を正直に開示しなければ原告がその全てを知ることは不可能である。よって,仮に,前記損害の主張が認められない場合でも,民事訴訟法248条の定める損害額の認定がなされるべきである。 被告は,賠償額の予定条項がある場合には損害は生じないから,本件でも損害はないと主張するが,予定した賠償額を超える損害が発生している場合には当然本条の適用がある。 ,,キ被告は原告主張の金額では赤字が発生して妥当ではないと主張するが失当である。むしろ,被告の担当者は「落札率は80%台に抑えましょ,う。90%を切っても 場合には当然本条の適用がある。 ,,キ被告は原告主張の金額では赤字が発生して妥当ではないと主張するが失当である。むしろ,被告の担当者は「落札率は80%台に抑えましょ,う。90%を切っても十分利益は出る」と発言している。被告の環境エ。 ンジニアリング事業本部統括部に勤務するP12の供述(甲18)によれば,落札額26億8000万円を基に実行予算を組むと,最終的に4億1850万円の利益となるとのことであるが,これは過大な利益であるし,落札が談合の結果であるとすれば利益は更に大きいといえる。 (被告の主張)- 19 -ア原告が被った損害は,本件工事の請負代金額の10%に相当する2億8140万円を超えるものではなく,既に被告が原告に約定の賠償金を支払ったことにより填補されている。 イ原告の主張は,自らに都合の良い数字を羅列したものに過ぎず,具体的な根拠はない。原告が標準工事価格として算定する内容は極めて漠然としており,余りに抽象的過ぎる。原告は大阪地方検察庁の算定手法をそのまま採用したとするが,その手法の妥当性については何ら具体的に主張しない。大阪地方検察庁の手法は,具体的な中身はないに等しく,正確性は全く担保されていない。原告は,入手した刑事確定記録の証拠に基づいて被告の実行予算の金額を把握したものと推認されるが,実行予算の内訳及び対象費目は各社によってまちまちであるし,原告がいかなる根拠で実行予算と工事原価を同視したかについても不明確である。 また,原告は,予定価格率98.51%を乗じて設計金額を算出してい,「」るがこれは設計金額の一部を正当な理由なく控除するいわゆる歩切りである。歩切りは「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法,律」に基づいて定められた「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関す 金額の一部を正当な理由なく控除するいわゆる歩切りである。歩切りは「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法,律」に基づいて定められた「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」において,工事の品質や安全確保に支障を来し,建設業の健全な発達を阻害するおそれがあるため,厳に慎むべきとされていることからすれば,不適切な計算方法といわざるを得ない。 さらに,原告は,平成15年度から同18年度にかけて発注した条件付一般競争入札のうち,機械器具設備工事で設計金額が1億5000万円以上の工事における平均落札率である85.92%を乗じた額が正常落札額であったと主張する。しかし,機械器具設備工事の具体的な種別や件数は全く不明であり,平成15年度から同18年度までとの期間設定も明らかではない。しかも,原告の主張によれば,一般管理費及び適正な利益は工事原価の11.5%であるから,ここに平均落札率85.92%を適用す- 20 -ると,被告は,工事原価に上乗せされた一般管理費及び適正な利益をすべ,. 。 ,て剥奪された上約56%程度工事原価を割り込むことになるつまり原告の主張は,採算の取れない金額で被告に受注を強いるものであり,前記適正化指針においても「不採算工事の受注強制などは厳に慎むべきであり」とされていることからすれば,原告の主張は合理性がない。 原告は,損害の主張に当たり,正常落札額として22億0132万8150円,22億4784万円,21億5652万1500円,21億9632万円(いずれも税込額)を挙げるが,これらの金額は,被告の実行予算における23億3257万5000円(税込額)を,8473万5000円から1億7605万5000円も下回る。すなわち,上記各金額によれば,被告は適正な利益はおろか,工事原価すらも は,被告の実行予算における23億3257万5000円(税込額)を,8473万5000円から1億7605万5000円も下回る。すなわち,上記各金額によれば,被告は適正な利益はおろか,工事原価すらも捻出できず,大幅な赤字受注を余儀なくされる。公取委によれば,公共建設工事は,落札額が実行予算上の工事原価を下回る金額である場合は,独占禁止法19条の不当廉売に該当するおそれがあるとされているから,原告の主張は,落札業者に対し,大幅な赤字受注のみならず,独占禁止法違反にも問われかねない行為を強いるもので極めて不当である。原告は,談合がうまくいかなかった場合の落札率との比較についても論じるが,いずれも実行予算上の工事原価を大幅に下回る金額で落札されたものと考えられ,不当廉売に該当する蓋然性が極めて高く,比較対象として不適当である。 原告は,適正な工事価格を算定する能力がなかったと主張するが,この主張は,業者からの見積書はあくまでも価格決定の参考に過ぎないとの主張と矛盾する。仮に,原告に本件工事の適正な工事価格を算定する能力がなかったとすると,当然ながら正常落札額を算定する能力もないことになるから,正常落札額に関する原告の主張は合理性がないことになる。 また,原告は,C14が本件工事は16億円で施工できたと述べていることを主張の一つの根拠としているが,このC14の発言は別件訴訟(住- 21 -民訴訟。原告がこの訴訟の被告となっている)における住民側の主張で。 あり,それを援用する姿勢は別件訴訟との関係で矛盾する。しかも,別件訴訟の判決は,この主張を「認めるべき証拠はない」として排斥してい。 る。 ウ仮に,見積段階で何らかの談合があったとしても,入札段階で談合がまとまらなければ,自由競争の下で入札が行われたこととなり,正常落札額と実際の落札額が るべき証拠はない」として排斥してい。 る。 ウ仮に,見積段階で何らかの談合があったとしても,入札段階で談合がまとまらなければ,自由競争の下で入札が行われたこととなり,正常落札額と実際の落札額が一致することになるから,損害を観念できない。また,逆に,見積段階で何らの談合もなかったとしても,入札段階で談合が行われれば損害が生じる余地はあるから,やはり入札前の見積金額が損害に影響を及ぼす余地はない。よって,見積段階の談合を議論すること自体,無意味である。 エ原告は,民事訴訟法248条の適用も主張する。 そもそも,同条は,損害の発生に関する原告の立証が奏功したことを前提として,なお,損害額の厳格な立証を要求すると不当な結論になる場合に初めて適用される。 本件では,本件契約の契約書第45条の2第1項本文に「乙(請負者)は,この契約に関して,第42条の2第1項各号の一に該当するときは,請負代金額の10分の1に相当する金額を賠償金として甲(原告)の指定する期間内に支払わなければならない」旨の規定が存する。これは,民。 法420条1項の賠償額の予定であり,同種事件において民事訴訟法248条が適用される場合,請負代金額の3~8%という損害額が認定される,,のが通例であったため訴訟の際の損害額の算定や立証の困難さを解消し損害額を明確化することによって発注者の損害の回復を迅速かつ容易にする目的で導入されたものである。その損害額の割合についても,従前の判例で認められていた請負代金額の概ね3~8%という割合を参考にしつつ,談合等の不正行為の抑止効果を発揮することも期待されたことから,- 22 -従前の裁判例で認められていた割合に上乗せをして10%に設定されているのである。本件では,この条項に基づいて,原告は被告から請負代金額の10分の1に相当する ことも期待されたことから,- 22 -従前の裁判例で認められていた割合に上乗せをして10%に設定されているのである。本件では,この条項に基づいて,原告は被告から請負代金額の10分の1に相当する2億8140万円の支払いを受けており,損害は填補されているから,現時点では原告に損害は発生していない。よって,民事訴訟法248条の適用はない。 また,原告が,損害額は,被告から支払いを受けた約定損害賠償金を超過していると主張して,前記条項の例外規定である契約書第45条の2第2項によって損害賠償請求をするのであれば「約定損害賠償金を超過し,た損害」の発生について厳格な立証を行う必要があり,その立証が奏功しない限り損害の発生そのものが認定し得ないから,民事訴訟法248条の適用はその前提を欠くことになる。上記の点について厳格な立証が奏功しない場合に同条を適用して裁判所が相当な損害額の認定を行うとすれば,前記条項を合意した当事者の意思に反して賠償額を増減することになるから,民法420条1項後段に反することになり,不当である。 第3当裁判所の判断 まず,当事者間に争いのない事実に加え,証拠(甲2ないし5,7,8,8の3,8の4,8の7,11ないし14,19ないし22,24,26ないし28,34ないし38,52の3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (1)浄化槽汚泥等処理施設とは,し尿や浄化槽汚泥の有機性廃棄物に生物学的又は理化学的な操作を加えることにより,これらを無害化,安定化させるための施設であるが,それに加え,その過程で発生するエネルギーを回収したり,有効利用できる肥料等の製品を製造する設備を併有する施設が含まれることもある。 (2)被告を含むプラントメーカーは,平成8年6月以前から,談合 それに加え,その過程で発生するエネルギーを回収したり,有効利用できる肥料等の製品を製造する設備を併有する施設が含まれることもある。 (2)被告を含むプラントメーカーは,平成8年6月以前から,談合組織を構成し(その構成会社には時期により変動がある,市町村や一部事務組合。)- 23 -等が競争入札の方法により発注する浄化槽汚泥等処理施設の新設又は更新工,。 事に関し次のような方法により受注予定会社を決定する談合を行ってきたすなわち,市町村等から指名業者に選定され,入札参加者となった談合組織のメンバー各社の受注調整担当者は,入札実施の数日前に集まって個別受注調整会議を行うなどして,いわゆる「汗かきルール」に基づき,受注予定会社を決定した上で,受注予定会社以外の業者は,入札を辞退したり,受注予定会社が指示した高値により入札するなどして,当該受注予定会社がその希望する価格で当該工事を確実に落札できるように協力していた。なお,汗かきルールとは,受注希望会社のうち発注者側が作成する発注仕様書の記載などから,その作成への関与の程度が大きく,発注者側の意向に沿った業者であると受注希望会社の間で認められる者を受注予定会社と決める内部的なルールであった。 また,談合組織のメンバーは,市町村等及びコンサルタント業者に対し,談合組織に加入していない業者を入札参加者として指名しないように働きかけることによって,談合組織のメンバーのみが指名されるようにする「指名外し」を行ったり,市町村等から談合組織のメンバーに対して見積設計図書の提出依頼がなされた場合には,工事の予定価格を引き上げる目的で,見積調整を行ったりしていた。 他方,談合組織に一旦は加入したにもかかわらず,受注調整会議において決まった受注予定会社が落札できるように協力せず,受注予定会社に代わっ 事の予定価格を引き上げる目的で,見積調整を行ったりしていた。 他方,談合組織に一旦は加入したにもかかわらず,受注調整会議において決まった受注予定会社が落札できるように協力せず,受注予定会社に代わって落札すべく安値で入札する「談合破り」をする業者もないではなく,その意味で,談合組織の結束は必ずしも強固といいがたい面もあった。なお,談合破りをした業者は,談合組織から除名されて,以後高値での落札,受注ができないようにされたり「指名外し」の対象とされるなどした。 ,(3)被告の従業員であったP1は,平成8年6月から被告の受注調整担当者に就任していた。 - 24 -本件工事によって更新される旧施設(下関市彦島し尿処理場)を設計施工したC14も,談合組織のメンバーであったが,平成16年7月ころ談合破りを行い,離脱していた。 平成16年8月ころの談合組織のメンバーは,し尿処理業界の御三家とい,,,,,,,,,われる被告C5C4のほかC6C7C9C8C10C11C12の合計10社であったが,同年12月3日ころ,C13が加わって11社となった。 (4)平成10年9月から,C27の受注調整担当者であり,同社が平成14年5月に環境プラント事業部をC11に営業譲渡した以降は,平成17年3月までC11の受注調整担当者であったP9は,見積段階の談合につき,平(),。 成18年6月6日付け検察官面前調書甲38で次のように述べている談合組織では,発注者である市町村等やコンサルタント業者から見積依,。 ,頼を受けた場合には幹事にその旨を連絡することになっていたそしてC11の社内では,技術部門に対して,見積仕様書に基づく概算見積金額の作成を依頼し,技術部門は,大抵の場合1週間程度で概算見積金額を算。 ,,出し は幹事にその旨を連絡することになっていたそしてC11の社内では,技術部門に対して,見積仕様書に基づく概算見積金額の作成を依頼し,技術部門は,大抵の場合1週間程度で概算見積金額を算。 ,,出していたこの概算見積金額は概算見積原価に間接費を加えたもので間接費の内訳は,共通仮設費,現場管理費及び利益を含めた一般管理費等であった。間接費は,概算見積金額全体の20%程度となるのが通例であったが,この概算見積原価は,実際に受注した後に発注仕様書に基づいて原価計算したものより20~25%高いことが多かった。その理由は,見積仕様書では,仕様の細部が不明な所に対して現実的に想定できる範囲で最も費用がかかる場合を想定して原価計算しているからだと思う。また,例えば,各社対応とされている資源化設備に関し,技術水質保証項目で求められている数値を実現するための当社の設備が他にあっても,技術提案,,の意味合いも含めてさらに優れた数値を実現できる自社の技術を採用しより高額の設備を前提に見積するなどして,概算見積原価が膨れあがって- 25 -いく。 このようにして作った概算見積金額をC11の希望価格として,談合組織の幹事に連絡すると,幹事から,遅くとも見積書の提出期限の2日前ころまでに,C11が発注者側に提出する見積金額の連絡が届いた。幹事から連絡される見積金額は,ほとんどの場合,幹事に知らせた希望価格よりも増額されたものになっていた。そして,C11では,このように幹事が調整し連絡してきた見積金額で,内訳を調整し,見積書を発注者側に提出していた。 P9は,幹事になったことがないので,詳しい見積調整の仕方はわからないが,幹事経験者から聞いたところによれば,各社から連絡を受けた希望価格の平均値を出し,その1割増しの金額を基準にし,それ以上の金額の見積金額を なったことがないので,詳しい見積調整の仕方はわからないが,幹事経験者から聞いたところによれば,各社から連絡を受けた希望価格の平均値を出し,その1割増しの金額を基準にし,それ以上の金額の見積金額を各社の分準備し,連絡するなどということである。したがって,談合組織のメンバーが発注者側に提出していた見積金額は,最初に各社で算出した見積額より1割程度高い金額になっていたと思う。 (5)平成16年10月から平成17年3月まで談合組織の幹事を務めていたC5のP4は,平成18年6月9日付け検察官面前調書(甲28)で,次のように述べている。 自分達の談合組織のメンバーは,談合により発注予定会社を決めるなどしていただけでなく,発注者からの引き合いに応じて見積書を提出する際にも,発注者が設定する工事の予定価格を引き上げるために,メンバー各社が提出する見積額を調整していた。全国の市町村等がし尿処理施設の新設・更新工事を発注する際,通常は,当該工事の入札が行われる事業年度,,の前年度に当該し尿処理施設建設のための概算の事業費を決定するためプラントメーカーに対し,見積設計図書及び見積書の作成を要請し,各プラントメーカーから提出された見積書の金額等を参考にして工事の予定価格等を決定していた。発注者が見積設計図書や見積書の提出を依頼する相- 26 -手方は,工事実績のある大手プラントメーカーに限られていたため,結局は,自分達の談合組織のメンバーがこのような依頼を受けていた。 そこで,メンバー各社の受注調整担当者は,発注者から見積設計図書や見積書の提出依頼があった場合には,依頼があった日かその翌日位までに。 ,その旨を談合組織の幹事に連絡することにしていた連絡を受けた幹事はメンバー各社の受注調整担当者に対し,発注者に対する見積書提出期限の3,4日位前まで 合には,依頼があった日かその翌日位までに。 ,その旨を談合組織の幹事に連絡することにしていた連絡を受けた幹事はメンバー各社の受注調整担当者に対し,発注者に対する見積書提出期限の3,4日位前までに各社が提出しようとしている見積額を連絡するよう指示していた。C5が見積額を幹事に連絡する場合は,予定価格を高く設定してもらうため,社内で積算した見積額とは別に,施工後の不具合による費用増加や事故の危険負担等のあらゆるリスクを最大限に加味して,もうこれ以上高くならないという金額を算出して伝えるようにしていた。 幹事は,メンバー各社から連絡された金額を基に,各社が発注者に提出する見積額を決めていた。その決め方は,幹事によって若干異なるかもしれないが,P4が幹事を務めていたときは,メンバー各社が見積額を調整していることが発注者にばれないようにするため,各社から連絡を受けた見積額の平均値に10%程度上乗せした金額を基準にして,±5%の範囲内でばらつきができるように金額を決め,あみだくじを作って引き,各金額を適当にメンバー各社に割り振っていた。メンバー各社から提出された見積額があまりに極端に離れている場合には,最高金額と最低金額を切っ。 ,てから平均値を出していた見積額の平均値に10%程度上乗せするのは発注者が通常プラントメーカーの提出する見積額から機械的に10%程度削った数字を基に設計価格や予定価格を決める傾向にあったので,それを見越してのことであった。確か平成15年のことと記憶しているが,全般的に予定価格が下落傾向にあったことから,幹事を持ち回る5社の間で話をして,見積額の調整の際には,各社の見積額の平均額に10%程度上乗せした数字を基準にすることを決めたものである。 - 27 -(6)原告は,コンサルタント会社であるC1から本件工事の見積 間で話をして,見積額の調整の際には,各社の見積額の平均額に10%程度上乗せした数字を基準にすることを決めたものである。 - 27 -(6)原告は,コンサルタント会社であるC1から本件工事の見積仕様書の作成を受け,本件工事の入札予定価格の設定の際の参考とする目的で,平成17年2月7日,国内プラントメーカー14社に参考見積書の作成を依頼し,同月28日までに,被告ら12社から,別紙見積額一覧表記載のとおりの金額の見積書の提出を受けた。この12社のうち,C14以外は,談合組織のメンバーであった。 原告では,本件工事のように専門的な知識が必要な工事に関しては,積算を行うことができる職員がいないため,前記12社が提出した見積額を工種毎に分解し,工種毎に計算した各社の平均値を単純に合算して,本件工事の設計金額である29億8100万円を決定した。 (7)被告の営業活動や談合状況等ア被告においては,本件工事担当の営業マンは,中国支社のP13であったが,同支社の営業課長がし尿処理施設の専門家ではなかったこともあって,阪神事務所の大阪環境リサイクル営業部・水環境営業課長P14が実,。 質的なP13の上司として本件工事についての営業活動を統括していたまた,九州支社の営業課長を務め,その後子会社であるC28に転籍していたP15も,本件工事についての営業の応援を行っていた。 イ平成17年5月ころ,日本道路公団等が発注する鉄橋上部工事の競争入札に関する談合事件(いわゆる橋梁談合)に関し,浄化槽汚泥等処理施設の談合組織のメンバーを兼ねる多数の業者が公取委から刑事告発されるなどした。 本件工事については,談合組織のメンバーのうちC8が受注すべく営業努力を重ねていたが,同年5月下旬ころ,C8は,橋梁談合の関係で公取,。 委から排除勧告を受けてこれを応諾し 告発されるなどした。 本件工事については,談合組織のメンバーのうちC8が受注すべく営業努力を重ねていたが,同年5月下旬ころ,C8は,橋梁談合の関係で公取,。 委から排除勧告を受けてこれを応諾し下関市から指名停止処分を受けたその直後ころ,P1は,上司のP16(環境エンジニアリング事業部・事業部長補佐)から,本件工事に関する被告の技術担当者が原告のコンサル- 28 -タント業者と打合せをするので,同行して話を聞くよう指示された。そこで,P1は,同年5月31日ころ,広島市に出張し,本件工事に関する被告の技術担当であったP17やその上司のP18(水環境技術部・NS技術グループ長)と合流し,原告のコンサルタントであるC1中国支店の担当者P19(技術部長,P20(山口事務所長)と発注仕様書作成に関)する技術的な意見交換をするなどした。 同年6月に入り,P1は,同じく本件工事の受注のため熱心に営業活動を展開していたC5が,先に国土交通省が行政処分をした建設業法違反により,原告からも指名停止処分を受けることになりそうだという情報を得た。C8とC5という強力な競争相手2社が脱落することになることを知,,り両社から営業資料を入手して自社の営業に役立てようと考えたP1はC8がC1に食い込んで技術提案をしていたという情報を得た上,同年6月下旬ころ,C8本社を訪れ,受注調整担当のP6に対し,C8が営業を下りたのであれば,C1に提案した技術資料を見せてほしいと申し入れ,C8がC1との間で遣り取りしていた図面の写しを入手した。同じころ,P1は,C5の本社も訪れ,受注調整担当のP4から,浄化槽汚泥等の投入量に関するデータや原告の職員との接触状況に関する資料を入手した。 ウ同年7月1日,本件入札の告示がなされ,P1もそれをインターネットで確認し,プラン れ,受注調整担当のP4から,浄化槽汚泥等の投入量に関するデータや原告の職員との接触状況に関する資料を入手した。 ウ同年7月1日,本件入札の告示がなされ,P1もそれをインターネットで確認し,プラントメーカー1社と地元の建設業者3社によるJVによる入札参加になることや,JVの代表構成員の施工実績の条件のため,旧施設の施工業者として営業活動を行っていたC14が入札に参加できないことを知った。程なく,P14から本件工事の入札に関する電話が被告の東京本社にいたP1にあり「JVの相手は,こちらで手配できそうです。 ,地元は4グループを考えているようですが,他に動いているメーカーはありません。こちらで他社の分のJVの相手も手配しようと思っていますので,プラントメーカーの状況を調べてみて下さい。取りあえず,指名停止- 29 -を受けていないC7,C4,C9に声をかけたらどうでしょうか」と言。 ,,,,われP1は地元業者とJVを組むことが相当以前から情報を収集し地元の有力な建設業者と交渉していく困難な作業であるにもかかわらず,P14が自社のみならず他社のJV相手まで手配すると豪語しているのは,思っていた以上にP14ら営業マンが努力をして発注者側に食い込んだ営業を行い,地元の業者も押さえている証であると考えた。 そこでP1は,早速,C7の受注調整担当者で,当時の談合組織の幹事であったP2に電話し「下関の件,公募を出してくれるかい。今からJ,Vを組むのは大変だよ。地元はうちが押さえているし。C7さんのJVの相手はうちで手配してあげるよ」と述べた。P2は,本件入札の告示が。 されたことさえ広島支店の営業担当者から聞かされておらず,そもそもC7は本件工事の受注を希望していなかったため「わかりました。営業に,。 []。」確認して出す 。P2は,本件入札の告示が。 されたことさえ広島支店の営業担当者から聞かされておらず,そもそもC7は本件工事の受注を希望していなかったため「わかりました。営業に,。 []。」確認して出すことにしますJVの手配は被告さんにお願いしますと述べたところ,P1から「わざわざ集まらなくていいよな」として,。 集合しての受注調整会議は省略したい旨言われ「P1さんに任せます」,。 と承諾した。P1は,引き続き,C4のP3,C9のP7に順次同様の電話をかけて,いずれも了承を得た上で,大阪にいるP14に電話をかけ,プラントメーカーではC7,C4,C9が入札参加することになった旨を伝えた。しかし,その翌日ころ,C7のP2からP1に電話があり,C7に入札参加資格がないことがわかったので入札参加できないと伝えられたため,P1は,C13のP11に電話をかけ「下関は公募を出す予定で,すか。今からJVを組むなんて無理でしょ。C13さんの代わりにこちらでJVを手配しますよ。実は,C4とC9も[被告]にJVを手配してもらいたいのでお願いしますと言ってくれているんですよ」などと述べ,。 P11の了承を得た。この時点で,C5,C6,C8,C10,C11,C12の6社は指名停止になっており,入札参加資格がなかったため,P- 30 -1は,それらの会社の受注調整担当者とは連絡を取らなかった。 その後,P1は,C13のP11,C4のP3,C9のP7に電話をかけて,本件工事を被告が受注することを再度確認した上,P14に報告した。その際,P14から,JVを組む地元業者が連絡するための各社の窓口担当を教えてくれと言われ,P11,P3,P7に電話で問い合わせるなどした。 ,,,,,このようにして被告C13C4C9の受注調整担当者が談合し同年7月 が連絡するための各社の窓口担当を教えてくれと言われ,P11,P3,P7に電話で問い合わせるなどした。 ,,,,,このようにして被告C13C4C9の受注調整担当者が談合し同年7月5日ころまでに,本件入札について被告が落札することが決まった。 エそして,同年7月20日過ぎころ,P1は,P14から被告JVの入札額と他の3JVの入札額を伝えられて,東京本社からC4のP3,C9のP7,C13のP11に電話をかけ,各JVが入札すべき具体的金額を伝え,被告JVの入札額については,P14から中国支社に連絡して,入札の準備を進めさせるよう指示した。 オこうして,同年7月29日,本件入札の開札が行われ,被告が26億8000万円で落札した。 争点(1)(見積段階での談合の有無)について(1)前記認定事実に照らせば,談合組織のメンバーにおいては,発注者側に参考見積書を提出する際,設計金額等をつり上げるため,談合によって不当な見積額調整をしていたことが認められるところ,本件の参考見積についても別異に解すべき事情は見当たらないから,原告に参考見積書を提出した12社のうちC14以外の11社の受注調整担当者によって,見積額の談合が行われたと認めるのが相当である。前記11社からの見積額の平均値は30億0475万4545円であるところ,11社の見積額は,この平均値の-5.82%(C4)から+6.50%(C10)までの範囲に散らばっており,P9やP4の検察官面前調書の内容を裏付けるものである。 - 31 -ただし,見積段階での談合が原告の損害とどう繋がるのかについては,不明というほかない。 (2)なお,原告は,見積段階での談合においては,談合メンバー各社が実際の工事原価よりも20~25%程度水増しした概算見積原価にその20%程度の間接費を がるのかについては,不明というほかない。 (2)なお,原告は,見積段階での談合においては,談合メンバー各社が実際の工事原価よりも20~25%程度水増しした概算見積原価にその20%程度の間接費を加えて概算見積額とし,幹事において,各社の概算見積額の平均値を1割増しした金額を各社に割り振って,発注者側に提出すべき見積額を算出していた旨主張するが,談合組織の幹事がメンバー各社から出された概算見積金額の平均値を取り,その10%程度加算した金額を基準として,±5%程度の範囲内で各社に具体的な見積金額を割り振っていたことは認められるが,各社が実際の工事原価よりも20~25%程度水増しした概算見積原価にその20%程度の間接費を加えて概算見積額としていたとまでは認められない。前記認定事実によれば,C11においては,概算見積額全体の20%程度の間接費を計上するのが通例であり,概算見積原価も受注後に原価計算したものより20~25%高いことが多かったことが認められるが,他社も同様であったとする証拠はなく,また,C11で概算見積原価が20~25%高額になる原因は,見積仕様書で不明な仕様部分について最大限の費用を想定して計算していることや,技術提案の意味合いも含めて,より高額の設備を採用していることなどが原因であることが窺われるから,20~25%程度不当な水増しをしたとまではいえない。また,C5は,予定価格を高く設定してもらうため,社内で積算した見積額とは別に,施工後の不具合による費用増加や事故の危険負担等のあらゆるリスクを最大限に加味して,もうこれ以上高くならないという金額を算出して談合組織の幹事に伝え,。 ていたことが窺われるが他社も同様であったと認めるに足りる証拠はない 争点(2)(損害の額)について(1)本件工事においては,被告の従業員で ないという金額を算出して談合組織の幹事に伝え,。 ていたことが窺われるが他社も同様であったと認めるに足りる証拠はない 争点(2)(損害の額)について(1)本件工事においては,被告の従業員であるP1らによる談合が行われたために,公正な競争がなされないまま被告JVが落札し,本件契約に至った- 32 -,,,もので請負契約額が不当に高額になったことが認められるから原告にはP1らの不法行為によって,正常落札額と請負契約額との差額が損害として発生したといえる。 (2)原告主張の正常落札額の計算についてア原告は,まず被告が談合発覚後に組み直した実行予算22億2150万円を適正工事原価とし,これに,環境省の発表する一般管理費及び適正利益の割合11.5%を乗じた2億5547万2000円を間接費として加算した24億7697万2000円を標準工事価格とした上で,これに予定価格率98.51%を乗じた24億4006万5000円を適正設計金額とし,この適正設計金額に,原告が平成15年度から18年度までの間に発注した条件付一般競争入札のうち,1億5000万円以上の設計額であった機械器具設置工事の平均落札率85.92%を乗じた20億9650万3000円(税込額は22億0132万8150円)を正常落札額とする。 しかしながら,証拠(甲16,17)によれば,前記11.5%は,昭和53年5月31日厚生省環第382号厚生事務次官通知の別紙「廃棄物処理施設整備費国庫補助金交付要綱(平成16年4月28日一部改正)」において,補助金の交付対象となる事業費の算定方法を定める中で,請負施工の場合の一般管理費は,工事原価が2000万円を超える場合は,工事原価の11.5%を乗じて得た額の範囲内とするとしているところの割合であり,当該比率はあくまで標準的な業者が 法を定める中で,請負施工の場合の一般管理費は,工事原価が2000万円を超える場合は,工事原価の11.5%を乗じて得た額の範囲内とするとしているところの割合であり,当該比率はあくまで標準的な業者が十分に利益を出しつつ適正な工事を実施できる金額はどれだけかという観点から,実態調査も踏まえ定められた比率にすぎないことが認められ,標準的な指標以上の位置づけはできず,本件工事において当該比率が具体的に妥当することを示す客観的な証拠もないから,直ちに採用するわけにはいかない。 ,. ,また原告が主張する予定価格率9851%の合理性は不明である上- 33 -平均落札率85.92%は,原告が平成15年度から18年度までの間に発注した条件付一般競争入札のうち,機械器具設置工事で設計金額が1億5000万円以上の工事における平均落札率というのであるが,その数値が何故に本件入札の正常落札額の算出に相応しいのか説得力のある説明はないから,その数値採用に合理性があるとはいえない。なお,原告は,C14が別件訴訟において本件工事が16億円で施行可能であったと述べていることは,原告の主張の合理性を裏付けると主張するが,C14が本件工事を16億円で施行できたことを窺わせるに足りる証拠はないし,そもそもC14は参考見積において27億5000万円の見積金額を提出していたものであるから,同社が本件工事を16億円で施行できると解することはおよそ困難である。 ,,なお被告及びP1を被告人とする前記独禁法違反被告事件においては大阪地方検察庁特別捜査部検事は,落札額と標準工事価格との差額が談合による損害であると捉え,本件入札に関しては,前記の工事原価22億2150万円にその11.5%の間接費を加算した24億7697万2500円を標準工事価格とし,これと現実の落札額26億 との差額が談合による損害であると捉え,本件入札に関しては,前記の工事原価22億2150万円にその11.5%の間接費を加算した24億7697万2500円を標準工事価格とし,これと現実の落札額26億8000万円との差額2億0302万7500円(税込額は2億1317万8875円)を損害と推計している(甲15。 )ところで,原告の主張する正常落札額は,要するに合理的な工事原価と間接費を加算し,適正な落札金額の算定を行おうとするものであると思われるが,多数の経済的合理性を追求する入札者が自由に落札価格を形成することが予定されている入札であれば格別,本件入札は,入札参加者がわずか4者(JV)しかおらず,談合がなかったとしても,各JVの個別の思惑が落札価格の形成に大きな影響を与えることは容易に推測でき,その意味で本件の入札市場に理想的な形での適切な落札金額の形成を想定することは困難というほかないから,適正な落札額を推計し,それが本件の正- 34 -常落札額とすること自体,相当であるとは思われない。 よって,原告の正常落札額に関する前記主張は採用できない。 イ原告は,また,見積談合の内容から工事原価を逆算し,これに前記補助金交付要綱の間接費割合11.5%を適用して適正落札額を算出する方法を2通り主張するが,そもそも適正落札額の推計が相当とは思われないことや間接費割合11.5%を直ちに採用できないことは,前述のとおりである。 そして,談合組織のメンバー各社が実際の工事原価よりも20~25%程度水増しした概算見積原価にその20%程度の間接費を加えて概算見積額としていたとは認められないし,C11においては,概算見積額全体の20%程度の間接費を計上するのが通例であり,概算見積原価も受注後に原価計算したものより20~25%高いことが多かったことが認めら 額としていたとは認められないし,C11においては,概算見積額全体の20%程度の間接費を計上するのが通例であり,概算見積原価も受注後に原価計算したものより20~25%高いことが多かったことが認められるが,概算見積原価が20~25%高額になる原因は,見積仕様書で不明な仕様部分について最大限の費用を想定して計算していることや,技術提案の意味合いも含めて,より高額の設備を採用していることなどが原因であることが窺われるから,20~25%程度不当な水増しをしたとはいえない。そもそも,本件入札では,C11には参加資格がなかったのであるから,C11の場合を基準に正常落札額を想定することはできない。 したがって,原告の前記主張も採用できない。 ウ原告は,さらに,被告の担当者P1が事業部長から「限界利益率は25%から30%取れるようにしろ」などと指示が来ると供述していること。 を捉え,落札額26億8000万円と利益率30%を用いて工事原価を逆算する方法を主張しているが,そもそも適正落札額の推計が相当とは思われないことや間接費割合11.5%を直ちに採用できないことは,前述のとおりであるし,事業部長の指示が本件入札で忠実に守られたことを窺わせる証拠はないから,説得力に乏しい。むしろ,P1は,本件入札参加の- 35 -当時,社会を騒がせていた鋼鉄製橋梁談合の捜査状況に神経質となってお,,り被告が本件工事を余り高値で落札するのはまずいのではないかと考え「橋梁でやられたばかりだから(落札率)95%以上はまずいよ。談合,情報もあるみたいだから,できるだけ下げといてもらえませんか」と入。 札額をできるだけ下げるように上司であるP16に進言していたこと(甲21)が認められる。 よって,原告の前記主張も採用できない。 (3)民事訴訟法248条の適用について てもらえませんか」と入。 札額をできるだけ下げるように上司であるP16に進言していたこと(甲21)が認められる。 よって,原告の前記主張も採用できない。 (3)民事訴訟法248条の適用についてアなるほど,被告ら談合組織のメンバー11社は,前判示のとおり,本件工事の見積段階で談合をし,各メンバーから出された概算見積額の平均値に10%程度の上乗せをした上で,±5%程度のばらつきを生じるように各メンバーの見積額を調整し,それが原告に提出されたことが認められるが,そのことが本件入札における正常落札額の形成にどのように影響を与えたのかについては不明というほかない。 そもそも,正常落札額は,実在しない価格であり,直接これを裏付ける的確な証拠は存在しないのみならず,公正な競争によって価格が形成され,,,,る際には入札するプラントメーカーの数や規模競争力技術的な特性発注されたし尿処理施設の規模,種類,特殊性,その当時の経済状況等の種々の要因が複雑に絡み合っていると考えられるところ,本件入札の参加資格を有していたのは,被告のほか,C4,C9,C13のわずか4JVのみであり,多数の業者が競争入札に参加する場合に比べ,4JVの有する個別事業が入札額に影響する程度は著しく大きくなるから,仮に見積,入札の談合がなかった場合に,どのような落札額が形成されたかを認定することは極めて困難である。 イそこで,原告は,本件の損害の認定につき,民事訴訟法248条を適用すべき旨主張する。 - 36 -しかしながら,本件入札の市場は,参加業者が限定された極めて狭いものであって,適切な落札額の形成が本質的に難しいものであると解されるところ,参加JVの代表構成員であるプラントメーカーでは,被告以外のC4,C9,C13の受注に向けた営業努力は被告に比べ劣って いものであって,適切な落札額の形成が本質的に難しいものであると解されるところ,参加JVの代表構成員であるプラントメーカーでは,被告以外のC4,C9,C13の受注に向けた営業努力は被告に比べ劣っており,受注意欲がそれ程芳しくなかったことが窺われる。その他,本件の談合の具体的経緯やその実態,工事の規模や特殊性,予定価格等の事情を勘案し,損害の公平な分担の観点から手堅く控え目な認定をすると,民事訴訟法248条を適用しても,本件における損害額が実際の落札額である28億1400万円(税込額)の10%を超えるものと認めることは困難である。 そうすると,被告は,既に,前記28億1400万円の10%である2億8140万円を約定賠償金として原告に支払っているから,本件の談合によって原告に発生した損害は既に填補されており,残額はないことになる。 (4)弁護士費用について前判示のとおり,本件の談合によって原告に発生した損害が残存しているとは認められないから,弁護士費用の請求は認容することができない。 結語以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 山口地方裁判所下関支部第1部裁判長裁判官政岡克俊裁判官武野康代裁判官本松智- 37 -(別紙)見積額一覧表(単位:円)業者名工事価格消費税合計額被告2,950,000,000147,500,0003,097,500,000C62,900,000,000145,000,0003,045,000,000C52,950,000,000147,500,0003,097,500,000C72,850,000,000142,500,0002,992,500,000C ,045,000,000C52,950,000,000147,500,0003,097,500,000C72,850,000,000142,500,0002,992,500,000C42,830,000,000141,500,0002,971,500,000C122,988,000,000149,400,0003,137,400,000C103,200,000,000160,000,0003,360,000,000C83,129,000,000156,450,0003,285,450,000C133,080,000,000154,000,0003,234,000,000C93,135,300,000156,765,0003,292,065,000C113,040,000,000152,000,0003,192,000,000C142,750,000,000137,500,0002,887,500,000
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