令和2(ワ)26207 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月14日 東京地方裁判所
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判決文本文55,701 文字)

令和6年3月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第26207号国家賠償請求事件口頭弁論終結日令和6年1月16日判決 主文 1 被告は、原告に対し、150万円及びうち30万円に対する令和2年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を、うち120万円に対する令和2年11月14日から支払済みまで年3分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを50分し、その3を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、2500万円及びこれに対する令和2年11月14日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、陸上自衛隊員であった原告が、所属中隊の中隊長その他の隊員からパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)を受け、精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項又は安全配 慮義務違反(債務不履行)に基づき、損害賠償金2500万円及びこれに対する違法行為の後である令和2年11月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告(ア) 原告は、昭和42年生まれの男性であり、昭和61年3月24日に陸上自衛隊に入隊し、同年8月23日にa教導団戦車教導隊(平成31年3月26日に機甲教導連隊に改編 ⑴ 当事者等ア原告(ア) 原告は、昭和42年生まれの男性であり、昭和61年3月24日に陸上自衛隊に入隊し、同年8月23日にa教導団戦車教導隊(平成31年3月26日に機甲教導連隊に改編。以下、改編の前後を問わず「戦車教導隊」 という。)の本部管理中隊(以下、単に「本部管理中隊」という。)に配置され、その後、退職するまで本部管理中隊に所属していた(乙24の14)。 (イ) 原告は、平成13年7月、2等陸曹に任命され、平成16年4月から平成22年12月まで中隊救護陸曹、平成23年1月から平成30年7月まで庶務陸曹に補職され、同年8月から平成31年3月までは中隊取扱主任 補助者として稼働し、同年4月以降は駐屯地医務室で勤務し、令和2年5月12日に定年退職した(乙24の4・14)。 イ本部管理中隊の関係者等(甲3参照)(ア) 平成22年8月から原告が退職した令和2年5月までの間、次の者が、本部管理中隊長を務めていた。 aB(平成22年8月1日~平成25年7月31日。以下「B中隊長」という。)bC(平成25年8月1日~平成28年3月22日。以下「C中隊長」という。)cD(平成28年3月23日~平成30年3月22日。以下「D中隊長」 という。)dE(平成30年3月23日~令和元年7月31日。以下「E中隊長」という。)eF(令和元年8月1日~。以下「F中隊長」という。)(イ) G(以下「G」という。)は、平成22年ないし平成25年当時、本部管 理中隊内における原告の同僚であった(乙26)。 (ウ) H(以下「H」という。)は、平成23年当時、服務指導上、原告を直接指導する立場の指導陸曹であり、本部管理中隊内における原告の上級者であった。 (エ) I(以下「I」 26)。 (ウ) H(以下「H」という。)は、平成23年当時、服務指導上、原告を直接指導する立場の指導陸曹であり、本部管理中隊内における原告の上級者であった。 (エ) I(以下「I」という。)は、平成23年当時、本部管理中隊の訓練陸曹であり、原告の上級者であった。 (オ) J(以下「J」という。)は、平成24年ないし平成25年当時、本部管理中隊の人事陸曹であり、原告の同僚であった。 (カ) K(以下「K」という。)は、平成28年当時、本部管理中隊の偵察小隊長であった。 (キ) L(以下「L」という。)は、平成28年当時、本部管理中隊の施設小隊 長であった。 ⑵ 関係法令等の定め別紙関係法令等のとおりである。 ⑶ 原告の障害原告は、平成20年7月、右臼蓋悪性骨腫瘍と診断され、bがんセンター(以 下「bがんセンター」という。)に入院し、同年10月、骨盤の半分、右股関節の一部及び周辺組織を切除する手術を受け、平成21年1月、身体障害程度等級3級(右下肢機能障害)と認定された。原告は、同年2月、bがんセンターを退院し、同年6月、職場に復帰し、以降は実施可能な業務に従事していた(甲1、2、4、乙24の4・5・9)。 ⑷ 原告の居住場所の移転経緯等ア原告は、平成23年12月当時、営舎外居住許可(自衛隊法施行規則51条ただし書)を受けており、自らが所有する静岡県御殿場市内のマンションの一室(以下「本件マンション」という。)に居住し、陸上自衛隊c駐屯地(静岡県駿東郡(住所省略)所在。以下「c駐屯地」という。)に私有車で通勤し ていた。 イところが、平成24年1月23日付けで、原告に対する営舎外居住許可が取り消された(乙18。以下「本件取消し」という。)。 原告は 駐屯地」という。)に私有車で通勤し ていた。 イところが、平成24年1月23日付けで、原告に対する営舎外居住許可が取り消された(乙18。以下「本件取消し」という。)。 原告は、本件マンションからc駐屯地内の生活隊舎(以下「本件生活隊舎」という。)5階の部屋に引っ越し、平成24年1月から平成29年5月まで、同所に居住した(甲22)。 ウ原告は、平成29年5月、本件生活隊舎5階の部屋から、c駐屯地内の勤務隊舎(以下「本件勤務隊舎」という。)1階の部屋に引っ越し、同月から平成31年3月まで、同所に居住した。 エ原告は、平成31年3月、本件勤務隊舎1階の部屋から、陸上自衛隊d駐屯地(静岡県御殿場市(住所省略)所在。以下「d駐屯地」という。)内の隊 舎(以下「本件e隊舎」という。)3階の部屋に引っ越し、同月から同年8月まで、同所に居住した。 オ令和元年10月15日付けで、原告に対する営舎外居住が再び許可された(乙16。以下「本件許可」という。)。 原告は、令和元年10月、本件e隊舎3階の部屋から本件マンションに引 っ越し、本件マンションでの居住を再開した。 ⑸ 本件訴えの提起原告は、令和2年10月16日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 ⑹ 消滅時効の援用 被告は、令和3年3月22日の本件第1回口頭弁論期日において、原告に対し、後記3⑴ア(原告の主張)記載の本件パワハラ行為①のうち、平成29年10月16日以前の行為(平成24年1月に原告に対する営舎外居住許可を取り消した行為、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、平成24年1月から平成29年5月まで原告を本件生活隊舎5階に居住させ又は居住させ続けた行為)、 後記3⑴イ(原告の主張)記載の本件パワハラ行為②のう た行為、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、平成24年1月から平成29年5月まで原告を本件生活隊舎5階に居住させ又は居住させ続けた行為)、 後記3⑴イ(原告の主張)記載の本件パワハラ行為②のうち、平成29年10 月16日以前の行為(平成23年12月から平成29年5月頃までの間、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告に対し、私有車の保有及び使用を認めなかった行為)及び後記3⑴ウ(原告の主張)(ア)ないし(コ)記載の本件パワハラ行為③ないし⑫を請求原因とする本訴請求債権のうち、国賠法1条1項に基づくものにつき、それぞれ消滅時効を援用するとの意思表示をした(当裁判所に 顕著な事実)。 2 争点⑴ パワハラに係る国賠法上の違法性の有無(争点1)ア原告を本件マンションに住まわせなかったことについてイ原告に私有車を保有・使用させなかったことについて ウその他様々な形の嫌がらせによるパワハラについて⑵ パワハラに係る安全配慮義務違反の成否(争点2)ア原告を本件マンションに住まわせなかったことについてイ原告に私有車を保有・使用させなかったことについてウその他様々な形の嫌がらせによるパワハラについて ⑶ 原告に生じた損害(争点3)⑷ 消滅時効の成否(国賠法に基づく請求について)(争点4) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(パワハラに係る国賠法上の違法性の有無)についてア原告を本件マンションに住まわせなかったことについて (原告の主張)(ア) 原告は、平成23年12月当時、営舎外居住許可を受けて、c駐屯地の近くにある本件マンションに居住していた。 a しかし、B中隊長は、平成24年1月、足に障害を負った原告が、5階まで階段の昇降を余儀なくされることを認識しな 当時、営舎外居住許可を受けて、c駐屯地の近くにある本件マンションに居住していた。 a しかし、B中隊長は、平成24年1月、足に障害を負った原告が、5階まで階段の昇降を余儀なくされることを認識しながら、自衛官の居住 場所に関する訓令5条2項に違反して、原告に対する営舎外居住許可を 取り消し(本件取消し)、原告をエレベーターのない本件生活隊舎5階に居住させた。 b また、B中隊長、C中隊長及びD中隊長は、足に障害を負った原告が、5階まで階段の昇降を余儀なくされていることを認識しながら、平成24年1月から平成29年5月まで、原告を本件生活隊舎5階に居住させ 続けた。 c さらに、B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長は、平成24年1月から令和元年8月まで、原告に対して営舎外居住の許可をしなかった。 d 加えて、E中隊長は、足に障害を負った原告が、3階まで階段の昇降 を余儀なくされることを認識しながら、平成31年3月から同年8月まで、原告をエレベーターのない本件e隊舎3階に居住させた。 (イ) 上記aないしdの各中隊長の行為(以下、これらの行為を「本件パワハラ行為①」と総称する。)は、いずれも原告を依願退職に追い込むための嫌がらせでパワハラであり、国賠法上違法である。 (被告の主張)(ア) 営舎外居住許可の取消しについて自衛隊法55条、自衛隊法施行規則51条及び自衛官の居住場所に関する訓令2条1項、3項、6条によれば、部隊等の長は、隊務運営上支障がないなどと認めるときに、例外的に営舎外居住を許可することができると されており、営舎外居住の許否の判断は、部隊等の長の裁量に委ねられていると解される。この点、本件取消しをしたのは、原告にとっての「部隊等の長」でその権限を有す 外居住を許可することができると されており、営舎外居住の許否の判断は、部隊等の長の裁量に委ねられていると解される。この点、本件取消しをしたのは、原告にとっての「部隊等の長」でその権限を有する戦車教導隊長であり、まずもってB中隊長が取り消したとの事実はない。 そして、B中隊長は、原告が、平成13年に、通勤時に停車中の車に追 突する事故(以下「平成13年事故」という。)を、平成22年に、国道1 38号線交差点において右折の際、対向車線の直進車に衝突する事故(以下「平成22年事故」という。)をそれぞれ起こしたことなどから、私有車の使用を制限することが相当と考え、原告に対し、公共交通機関を使用した通勤が可能か検討するよう指導したが、原告はこれに直ちに回答しなかった。そこで、B中隊長は、原告に対して私有車の使用を制限するととも に、原告が身体障害者手帳3級を保有し、身体的に不自由な状態にあることを踏まえると、原告の通勤や勤務に支障が生じ得ることを考慮して、原告が営舎外に居住することにつき隊務運営上支障がないとは認められないと考えた。その後、原告は、平成23年12月、通勤時に駐屯地内の樹木に自車を追突させ、樹木及び自車を損傷させる事故(以下「平成23年 事故」という。)も起こしたため、B中隊長は、平成24年1月、原告の営舎外居住許可を取り消すことを相当と判断し、戦車教導隊長に対し、その旨の意見具申をした。 以上によれば、B中隊長の上記判断は不合理なものではなく、B中隊長の意見具申を受けて戦車教導隊長が本件取消しをした行為は適切なもの であり、B中隊長の上記行為について、国賠法上の違法性はない。 (イ) B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を本件生活隊舎5階に居住させ、又は居住させ続けたことについて た行為は適切なもの であり、B中隊長の上記行為について、国賠法上の違法性はない。 (イ) B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を本件生活隊舎5階に居住させ、又は居住させ続けたことについて陸上自衛隊においては、中隊を1単位としてその職務が遂行されるため、即応性及び団結や規律を維持するといった業務統制の観点から、生活隊舎 においては、指揮系統に基づき、中隊ごとに居住階が指定されている。本件生活隊舎においては、1階から4階までに特科教導隊に所属する営内居住者が中隊ごとに各階に分かれて居住し、5階に本部管理中隊に所属する営内居住者が居住すると指定されていた。そして、清掃区分や共有場所等の使用要領などのルールが中隊ごとに定まっており、行動時間が中隊ごと に異なることなどから、1つの中隊が同じ階に居住するということは、中 隊の任務を達成する上で非常に重要なことであった。 B中隊長は、原告が本部管理中隊に所属していたため、上記居住区分に従って、原告を5階に居住させた。また、C中隊長は、上記居住区分の存在にもかかわらず、原告の障害に配慮し、原告の居住場所の移動を調整するよう指示していたが、結果としてその調整が奏功しなかったにすぎない。 そして、D中隊長は、原告の障害に配慮し、多忙な中にあっても、本部の1科長及び他の中隊の中隊長と話をして、原告が居住場所を移動できるよう調整を行い、平成29年5月頃、第2及び第3中隊から倉庫となっていた場所を借りる形で、原告の居住場所を確保して原告を1階に移動させた。 以上によれば、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を5階に居住 させ、又は居住させ続けたことについて、国賠法上の違法性はない。 (ウ) 営舎外居住許可をしなかったことについて原告は、平成24年 、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を5階に居住 させ、又は居住させ続けたことについて、国賠法上の違法性はない。 (ウ) 営舎外居住許可をしなかったことについて原告は、平成24年1月の本件取消しの後、令和元年10月の本件許可に係る申請に至るまで、営舎外居住許可を申請したことはなかった。 したがって、原告が営舎外居住許可を受けられなかったのは、各中隊長 の判断によるものではなく、原告が申請をしなかったことによるものであり、この点につき、国賠法上の違法性はない。 (エ) E中隊長が原告を本件e隊舎3階に居住させたことについてd駐屯地における原告の執務場所は、本件e隊舎2階であったから、執務場所までの移動は容易であり、従前の本件生活隊舎からc駐屯地の執務 場所まで移動するのに比べて、原告の負担は少なかった。また、本件e隊舎から正門までの距離は近く、外出も容易であった。そして、E中隊長は、原告に対し、これらの事情を話した上で3階への居住について説明し、これに対し、原告から特段反対の意思表示はされなかった。 したがって、E中隊長が原告を3階に居住させたことについて、国賠法 上の違法性はない。 イ原告に私有車を保有・使用させなかったことについて(原告の主張)(ア) 原告は、平成23年12月当時、自動車を所有し、本件マンションからc駐屯地までの通勤や休日の外出等に利用していた。 a しかし、B中隊長は、原告が足の障害により自動車を使えないと本件 マンションからc駐屯地までの移動等に不便であることを認識しながら、原告が自動車事故を起こしたこと等を口実に、平成23年12月24日頃、原告に対し、私有車の使用を禁止するとともに、私有車の売却を命じ、私有車の保有をも禁止した。 b あることを認識しながら、原告が自動車事故を起こしたこと等を口実に、平成23年12月24日頃、原告に対し、私有車の使用を禁止するとともに、私有車の売却を命じ、私有車の保有をも禁止した。 b 原告は、平成27年12月、戦車教導隊の指導員の下で運転の技量判 定を受け、問題ないと判定されたため、C中隊長に対し、自動車の保有及び使用を求めたが、C中隊長は、自分が許可しても戦車教導隊長が許可しないなどといった不当な理由で、原告による自動車の保有及び使用を認めなかった。 c その後、原告は、D中隊長に対しても、自動車の保有及び使用を求め たが、D中隊長は、平成29年5月頃、原告に対し、「事故を起こしたら誰が責任を取るんだ。」と述べ、原告による自動車の保有及び使用を認めなかった。 d 原告は、平成30年10月20日、障害者用のレンタカーを使用して適性検査を受け、車両指導員から合格の判定を受けたため、E中隊長に 対し、自動車の保有及び使用を求めたところ、E中隊長は、原告の運転を直接見たいと述べた。原告は、従前と同様にレンタカーを借りて実施することを求めたものの、E中隊長がこれを拒否したため、原告は、当時原告が元妻に使用させていた原告名義の自動車を、余分な費用をかけて障害者用に改造することを余儀なくされた。 なお、E中隊長は、同年12月20日、原告に自動車の保有及び使用 を認めた。 (イ) 上記aないしcの各中隊長の行為は、いずれも私有車保有等許可基準9項に違反しており、また、上記aないしdの各中隊長の行為(以下、これらの行為を「本件パワハラ行為②」と総称する。)は、いずれも原告を依願退職に追い込むための嫌がらせでパワハラであり、国賠法上違法である。 (被告の主張)(ア) B中隊長が 行為(以下、これらの行為を「本件パワハラ行為②」と総称する。)は、いずれも原告を依願退職に追い込むための嫌がらせでパワハラであり、国賠法上違法である。 (被告の主張)(ア) B中隊長が私有車の保有及び使用を許可しなかったことについてaB中隊長は、平成23年12月24日頃、原告に対し、今後、私有車の保有及び使用を許可しない旨を伝えたにすぎず、原告が私有車の保有及び使用の許可を申請したのに対し、これらを不許可としたものではな い。 したがって、B中隊長の上記発言により、原告が私有車を保有又は使用できなくなったとは認められない。 b(a) また、戦車教導隊所属隊員による私有車の保有については、所属隊員が私有車の保有を希望した場合に、中隊長が私有車の保有を許可す るものとされ(c駐屯地服務規則36条1項、私有車保有等許可基準1項)、さらに、営内に居住する所属隊員による私有車の使用については、車両保有者は、使用の都度、中隊長に申請し、使用許可を受けるものとされている(同基準7項)。 このように私有車の保有及び使用が許可制となっているのは、自衛 隊員に対する国民の信頼を確保することは必要不可欠であるとの法令の趣旨を踏まえ、戦車教導隊においても自衛隊員の私有車の保有及び使用について適切に管理・指導し、国民からの信頼の失墜を防ぐためである。また、私有車保有等許可基準7項⑴は、営内に居住し、私有車を保有する戦車教導隊所属隊員は、使用の都度中隊長に申請し、 使用許可を受けるものとする旨を定めるのみであるから、その際に考 慮すべき事情やその重みづけについては、指導の一環として、中隊長の裁量に委ねられているといえる。 以上を踏まえると、中隊長は、営内に居住する戦車教導隊所属隊員の私有車の の際に考 慮すべき事情やその重みづけについては、指導の一環として、中隊長の裁量に委ねられているといえる。 以上を踏まえると、中隊長は、営内に居住する戦車教導隊所属隊員の私有車の保有及び使用の許可につき一定の裁量を有していると解すべきである。 (b) 原告は、平成13年事故を起こした後、中隊長や上級者から、交通事故に注意するよう何度も注意を受けていたにもかかわらず、その後も、平成22年事故及び平成23年事故の2度の交通事故を起こした。 特に、平成23年事故は、死亡事故等の重大な事故になりかねない態様のものであった。 このような経過に照らせば、B中隊長が、平成23年12月以降、原告による私有車の保有及び使用を許可しなかったことは、仮に私有車保有等許可基準に基づく回答であったとしても、その裁量の範囲を逸脱するものではなく、国賠法上の違法性はない。 (イ) C中隊長及びE中隊長が私有車の保有及び使用を許可しなかったこと について原告は、平成27年1月24日、運転技能の検定を受け、合格と判定されたものの、上記のような原告による交通事故に係る経過を踏まえると、原告については特に慎重に判断する必要性が高かったから、運転技能の検定において1度合格の判定を受けたというだけの状況で、原告の私有車の 保有及び使用を許可しなかったとしても、各中隊長の判断がその裁量の範囲を逸脱するものではない。 したがって、C中隊長が平成27年12月頃に、D中隊長が平成29年5月頃に、原告による私有車の保有及び使用をそれぞれ許可しなかったことにつき、国賠法上の違法性はない。 (ウ) E中隊長による私有車の保有及び使用の許可に係る経緯について 上記のような原告による交通事故に係る経過を踏 れぞれ許可しなかったことにつき、国賠法上の違法性はない。 (ウ) E中隊長による私有車の保有及び使用の許可に係る経緯について 上記のような原告による交通事故に係る経過を踏まえると、E中隊長が、平成30年12月15日、原告が実際に使用する予定であった車両(元妻の車両を障害者用に改造したもの)を運転させ、同車両に同乗してその運転技能の習熟度を確認したことは、それ自体違法と評価されるような行為とはいえないから、この点につき、国賠法上の違法性はない。 ウその他様々な形の嫌がらせによるパワハラについて(原告の主張)原告は、以下の(ア)から(サ)までのとおり、本部管理中隊の中隊長その他の隊員から、原告を依願退職に追い込むための嫌がらせによるパワハラを受けており、各行為者の行為は、国賠法上違法である。 (ア) 無理な応援の強要(以下「本件パワハラ行為③」という。)B中隊長は、原告の右足が手術によって短くなっており、安定的に立つこと自体が難しい状態であることを認識しながら、原告に対し、平成22年11月13日に開催された隊内の駅伝大会の応援をすることを強要した。原告は、6時間もの間、不整地に立たされ続け、必要のない応援をさ せられた。 (イ) 娘の卒業式の最中の呼出し(以下「本件パワハラ行為④」という。)指導陸曹のH及び訓練陸曹のI等は、平成23年頃、休暇を取って娘の卒業式に参列していた原告に対し、原告の休暇申請書類に1か所印鑑が押されていなかったことを理由として、必要がないのに、部隊に戻ってくる よう命じた。原告は、娘の卒業式の最中に、部隊に戻って来ざるを得なかった。 (ウ) 退職の強要(以下「本件パワハラ行為⑤」という。)B中隊長は、平成23年10月、原告に対 戻ってくる よう命じた。原告は、娘の卒業式の最中に、部隊に戻って来ざるを得なかった。 (ウ) 退職の強要(以下「本件パワハラ行為⑤」という。)B中隊長は、平成23年10月、原告に対し、「原告2曹(原告)がいることで他の者に迷惑をかけていると思わないのか?」、「寄生虫のように自 衛隊に居続ける気か?」、「本来なら俺が上番する前に自分から潔く身を引 いてほしかった。」などと述べ、退職を強要した。 (エ) 仕事を与えない嫌がらせ(以下「本件パワハラ行為⑥」という。)B中隊長は、平成23年10月、原告に対し、「何もしなくても良いから。」と述べ、仕事を与えず、一日中、本部管理中隊の事務室の椅子に座ることを強要した。 (オ) 体力錬成の強要(以下「本件パワハラ行為⑦」という。)B中隊長は、平成24年秋頃、原告に対し、「なんも仕事がないから体力検定をするために、体力錬成をしろ。」、「体重を落とせ。」と述べ、原告に自分で体力錬成のメニューを考えさせ、腕立て伏せ、腹筋、歩行6キロメートルなどを行わせた。これにより、原告は、平成25年2月、発熱し、 腰の炎症と右股関節が痛んで入院することとなり、同年3月には、右股関節から膿を出す手術をするに至った。B中隊長は、中隊長として、障害を負っている者に対して身体・安全の注意をして実行すべきであったのに、これを怠った。 (カ) ライターで髪を焼いたこと(以下「本件パワハラ行為⑧」という。) Jは、平成24年12月頃、御殿場駅前の居酒屋で本部管理中隊の忘年会をした際、飲酒して寝ていた原告の髪の毛をライターで焼いた。また、Jは、平成25年5月頃にも、本部管理中隊の旅行の際、寝ていた原告の髪の毛をライターで焼いた。 (キ) 赤ペンによる嫌がらせ( 年会をした際、飲酒して寝ていた原告の髪の毛をライターで焼いた。また、Jは、平成25年5月頃にも、本部管理中隊の旅行の際、寝ていた原告の髪の毛をライターで焼いた。 (キ) 赤ペンによる嫌がらせ(以下「本件パワハラ行為⑨」という。) 原告は、平成28年3月頃、Kから、本件マンションでの生活の利点及び本件生活隊舎5階での生活の問題点をまとめるように言われ、これらを紙に書いてKに交付した。Kは、原告が挙げた利点及び問題点の1つ1つに対し、赤ペンで、原告の障害に全く配慮しない文句を書き入れ、これを原告に返却した。 (ク) 自宅の捜索とプライバシー侵害(以下「本件パワハラ行為⑩」という。) Kは、平成28年4月、原告が自衛隊に返還すべき制服を発見できなかった際、D中隊長の指示により、本件マンションに臨場し、原告に室内の清掃を指示するとともに、原告の同意なく、部屋の内部を捜索し、引き出しの中身など、誰にも知られたくないものを含むあらゆる物を撮影し、その画像をD中隊長等に送信した。これにより、原告は、プライバシーを侵 害され、屈辱的な思いをした。 (ケ) 自宅に帰らせない嫌がらせ(以下「本件パワハラ行為⑪」という。)原告が、平成28年5月11日、病院を受診する前日の夕方に本件マンションの風呂に入るため、休暇申請を出したところ、他の隊員であれば問題なく許可されるはずなのに、D中隊長は、「明日通院に間に合うなら、明 日の朝に出ろ。前日からは許可できない。」と述べて、原告に対して外出許可を出さなかった。 (コ) 個人資産に関する不当な干渉(以下「本件パワハラ行為⑫」という。)D中隊長、L及びKは、平成28年5月12日頃、原告に対し、全く必要がないにもかかわらず、金銭管理指導を行い、個人財産 (コ) 個人資産に関する不当な干渉(以下「本件パワハラ行為⑫」という。)D中隊長、L及びKは、平成28年5月12日頃、原告に対し、全く必要がないにもかかわらず、金銭管理指導を行い、個人財産に対して干渉し た。特に、Kは、原告に対し、「144万のうち100万を定期預金に入れろ。」と述べたり、144万円のうち100万円を防衛省共済組合用の総合預金通帳の定期に入れろと命令したり、月の手取り収入である25万円のうち7万円を貯金しろと述べたり、ボーナスは40万円貯金するように述べたりした。 (サ) ペナルティ文書の強要(以下「本件パワハラ行為⑬」という。)D中隊長は、平成29年10月27日、原告の体重がたった0.5キログラム増加したことを理由として、原告に対し、ペナルティとして、「服務の本旨」という題名の1万字の反省文書(自衛隊法52条(服務の本旨)を繰り返し1万字に至るまで記載するもの)を書くことを強要した。原告 は、同月28日、キャリアコンサルタント受講のために外出する予定があ ったにもかかわらず、約9時間かけて反省文書を書かされ、一睡もすることができなかった。 (被告の主張)本件パワハラ行為③から⑬までについて、以下のとおり、いずれも国賠法上の違法性はない。 (ア) 本件パワハラ行為③(無理な応援の強要)原告が平成22年11月13日に開催された隊内の駅伝大会の応援に参加していたことは認め、その余は否認する。同駅伝大会においては、各隊員が適宜休憩を取ることが可能な態勢が整えられており、原告が6時間も立ち続けた事実や、B中隊長が原告に応援を無理やり行わせた事実はな い。 (イ) 本件パワハラ行為④(娘の卒業式の最中の呼出し)H及びIが原告に対し、原告の娘の卒 おり、原告が6時間も立ち続けた事実や、B中隊長が原告に応援を無理やり行わせた事実はな い。 (イ) 本件パワハラ行為④(娘の卒業式の最中の呼出し)H及びIが原告に対し、原告の娘の卒業式中に部隊に戻ってくるよう命じた事実はない。 (ウ) 本件パワハラ行為⑤(退職の強要) B中隊長が原告に対し、退職を強要した事実はない。 (エ) 本件パワハラ行為⑥(仕事を与えない嫌がらせ)B中隊長が原告に対し、仕事を与えない嫌がらせをした事実はない。 (オ) 本件パワハラ行為⑦(体力錬成の強要)B中隊長が原告に対し、トレーニングを行うよう指導したことはあるが、 これを強要した事実はない。原告は、足に障害を有していたとはいえ、腕立て伏せや腹筋など受験可能な科目があるのに、自衛官が年1回受験すべき体力検定の受験や、そのための最低限のトレーニングを行っていなかった。そこで、B中隊長は、原告に対し、同検定合格のために、座ってバーベル運動をするなど、自分なりに可能な範囲でトレーニングをするよう指 導したものであり、パワハラには当たらない。なお、原告の発熱等の症状 の原因は明らかではない。 (カ) 本件パワハラ行為⑧(ライターで髪を焼いたこと)Jが原告の髪の毛をライターで焼いた事実はない。 (キ) 本件パワハラ行為⑨(赤ペンによる嫌がらせ)Kが、原告の作成した「マンションでの生活について」と題する書面及 び「生活隊舎(5階)での生活の問題点」と題する書面に、手書きでコメントを記入したことは認め、その余は否認ないし争う。Kは、原告が本件生活隊舎から出たいと述べたことを受け、上司に報告するために、原告に上記各書面を提出させたが、記載内容が具体性に欠けていたため、そのまま報告することは 認め、その余は否認ないし争う。Kは、原告が本件生活隊舎から出たいと述べたことを受け、上司に報告するために、原告に上記各書面を提出させたが、記載内容が具体性に欠けていたため、そのまま報告することは相当でないと考え、服務指導としてその記載内容の趣旨 を確認するとともに、原告が述べる問題点等がより具体的になるよう疑問を投げかけるなどしたものであるから、正当な服務指導であり、パワハラには当たらない。 (ク) 本件パワハラ行為⑩(自宅の捜索とプライバシー侵害)原告が官物の制服を返還しなかったために、D中隊長の指示によりKが 本件マンションに立ち入り、同制服を探し、原告と一緒に散らかっていた部屋を片付けたことはあるが、D中隊長がKに対し、写真撮影を指示したことはない。Kは、原告が返還すべき官物の制服を返還しておらず、陸上自衛隊服務細則44条1項違反の疑いがあったため、本件マンションを訪れ、同制服を探したものである。しかも、自衛隊の制服は、紛失するなど して市場に流通すると、自衛官へのなりすましなど、第三者によって悪用されるおそれがあった。したがって、Kの行為は、正当な業務行為であり、パワハラには当たらない。 (ケ) 本件パワハラ行為⑪(自宅に帰らせない嫌がらせ)原告が、平成28年5月10日、外出許可を申請し(原告は、休暇申請 と主張するが、外出許可申請の誤りである。)、D中隊長が、同月11日、 原告の外出を許可しなかったことは認め、その余は不知、否認ないし争う。 「自衛官は、常に身辺を整理し、命令により直ちにいかなる行動にも応じ得る物心両面の準備を整えておかなければならない。」(陸上自衛隊服務細則37条1項)ところ、原告は、生活隊舎の自室を整理整頓していないのが常態であり、上記(ク)のとおり、官 ちにいかなる行動にも応じ得る物心両面の準備を整えておかなければならない。」(陸上自衛隊服務細則37条1項)ところ、原告は、生活隊舎の自室を整理整頓していないのが常態であり、上記(ク)のとおり、官物の制服を無くした直後でもあった ことから、D中隊長は、自室の整理をさせる必要があり、原告に外出を認めるのが相当でないと判断し、外出を許可しなかった。原告の主張する外出許可申請の理由は、病院を受診する前日に自宅の風呂に入りたいというもののみであり、外出を許可する必要性が高いとはいえなかった。したがって、D中隊長が外出を許可しなかったことは、正当な業務行為であり、 パワハラには当たらない。 (コ) 本件パワハラ行為⑫(個人資産に関する不当な干渉)D中隊長及びKが、平成28年5月12日頃、原告に対し、金銭管理について服務指導したことは認め、その余は否認ないし争う。自衛隊員には公務員としての高い倫理性が求められるのみならず、自衛隊法に基づく服 務の本旨(自衛隊法52条)等の高度の倫理規範を遵守し、国民の支持と信頼を得ることが必要不可欠であるから、多額の借財等の不祥事の原因となり得る状況を特に慎むよう服務指導する必要性が高い。特に原告は、借財や金銭管理を疎かにする傾向があったため、金銭管理について服務指導をする必要性があった。したがって、D中隊長及びKの行為は、正当な服 務指導であり、パワハラには当たらない。 (サ) 本件パワハラ行為⑬(ペナルティ文書の強要)D中隊長は、日頃から、原告を含む本部管理中隊の陸曹に自衛隊員としての心構えを再認識させるべく、必要な服務指導として、自衛隊法52条(服務の本旨)をよく読み、各人の任務分析を行うように指導しており、 特に原告については、体重が増えたことによって、自衛官 しての心構えを再認識させるべく、必要な服務指導として、自衛隊法52条(服務の本旨)をよく読み、各人の任務分析を行うように指導しており、 特に原告については、体重が増えたことによって、自衛官としての職務が できなくなるので、ダイエットする必要がある旨を指導していたが、原告に対し、単に自衛隊法52条(服務の本旨)を繰り返し書き写すという無意味な指導をしたことはなく、原告から当該反省文書の提出も受けていない。 ⑵ 争点2(パワハラに係る安全配慮義務違反の成否)について ア原告を本件マンションに住まわせなかったことについて(原告の主張)被告には、身体障害を負っている自衛隊員が安全に職務を全うできるように、隊員の居住環境を整える安全配慮義務がある(陸上自衛隊服務規則71条、陸上自衛隊服務細則78条参照)。B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE 中隊長は、前記⑴ア(原告の主張)(ア)のとおり、本件パワハラ行為①を行っており、被告の安全配慮義務の履行補助者として、原告が安全に職務を全うできるような居住環境を整えたとはいえないから、被告は安全配慮義務に違反した。 (被告の主張) 被告に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が肯定されるためには、原告に具体的な結果が生じたこと、被告がその具体的な結果を予見できたこと及び結果回避可能性が認められる必要があるところ、原告の主張を前提としても、5階までの階段を昇降することにより、原告に右下肢機能障害の悪化その他生命及び健康等に対する危険が生じたとは認められない上、 原告が安全に職務を全うできないほどの支障が具体的に生じていたとは認められない。また、そうである以上、B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長が、各行為の当時、原告に対する具体的な結 い上、 原告が安全に職務を全うできないほどの支障が具体的に生じていたとは認められない。また、そうである以上、B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長が、各行為の当時、原告に対する具体的な結果を予見できたとは到底認められない。その他の被告の主張は、前記⑴ア(被告の主張)のとおりである。したがって、被告に安全配慮義務違反はない。 イ原告に私有車を保有・使用させなかったことについて (原告の主張)被告には、身体障害を負っている隊員が職務を安全に遂行できるように、毎日の生活及び休日の生活に支障が出ないよう交通手段に配慮すべき安全配慮義務がある。B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長は、前記⑴イ(原告の主張)(ア)のとおり、本件パワハラ行為②を行っており、被告の安全 配慮義務の履行補助者として、生活に支障が出ないよう交通手段に配慮したとはいえないから、被告は安全配慮義務に違反した。 (被告の主張)争う。被告の主張は、前記⑴イ(被告の主張)のとおりである。 ウその他様々な形の嫌がらせによるパワハラについて (原告の主張)(ア) B中隊長は、被告の履行補助者として、身体障害を負っている隊員が安全に職務を全うできるように指導する安全配慮義務を負い、パワハラにより原告が精神的苦痛を負うような行動を自ら行わないとともに、部下である原告の上司や同僚によるいじめや嫌がらせが起こらないように監督す る義務を負っていたところ、本件パワハラ行為③、⑤、⑥及び⑦を自ら行い、また、本件パワハラ行為⑧を現認しながら放置し、部下による具体的な行動を知らなかったとしても本件パワハラ行為④を生じさせ、安全配慮義務に違反した。 (イ) D中隊長も、被告の履行補助者として、同様に上記各義務を負っていた 認しながら放置し、部下による具体的な行動を知らなかったとしても本件パワハラ行為④を生じさせ、安全配慮義務に違反した。 (イ) D中隊長も、被告の履行補助者として、同様に上記各義務を負っていた ところ、本件パワハラ行為⑪、⑫及び⑬を自ら行い、また、本件パワハラ行為⑩においてKの行為を指示し、Kによる具体的な行動を知らなかったとしても本件パワハラ行為⑨を生じさせ、安全配慮義務に違反した。 (被告の主張)争う。被告の主張は、本件パワハラ行為④について、B中隊長が具体的な 結果を予見できたとは認められないこと、本件パワハラ行為⑨について、D 中隊長が具体的な結果を予見できたとは認められないことを追加するほかは、前記⑴ウ(被告の主張)のとおりである。 ⑶ 争点3(原告に生じた損害)について(原告の主張)原告は、平成21年6月に復職してから令和2年5月に退職するまでの約1 1年という長い期間にわたり、歴代の中隊長や上級職員、同僚からいじめられ、屈辱を味わい、時には退職を申し出たりもしたが、ひたすら耐えてきた。また、原告には、平成24年1月の営舎外居住許可の取消し当時、9歳と11歳の子どもがいたが、再び営舎外居住が許可された令和元年10月までの7年以上の間、子どもたちが休日に自宅に遊びに来ても、私有車の保有が禁止されていた ために、遊びに連れて行くことすらできなかった。原告に生じたこれらの精神的な損害を金銭的に評価すれば、2500万円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 ⑷ 争点4(消滅時効の成否)について (被告の主張)原告は、本件パワハラ行為①ないし⑬(以下、これらを併せて「本件パワハラ行為」という。)についてその都度損害及び加害者を知っていたところ、本件 滅時効の成否)について (被告の主張)原告は、本件パワハラ行為①ないし⑬(以下、これらを併せて「本件パワハラ行為」という。)についてその都度損害及び加害者を知っていたところ、本件パワハラ行為のうち平成29年10月16日以前に行われた行為に係る国賠法上の請求権は、本件訴え提起時である令和2年10月16日において、3年 間の消滅時効期間を経過している(国賠法4条、改正前民法724条前段)。 (原告の主張)争う。改正前民法724条前段にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれらを知った時を意味するところ(最高裁昭和45年(オ)第 628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁 参照)、本件パワハラ行為は、原告に対して継続的に行われたハラスメントであり、また、原告が在職中は更なるパワハラを受ける可能性があったから、被告に対する損害賠償請求をすることが事実上可能ではなかった。したがって、本件パワハラ行為に係る国賠法上の請求権に関する消滅時効の起算点は、原告が退職した令和2年5月12日であり、本件訴え提起時において、消滅時効期 間を経過していない。さらに、このような事情に照らせば、被告による消滅時効の援用は、権利の濫用として許されない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(主として、本件パワハラ行為①及び②に関する事実)前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認 められる。 ⑴ B中隊長就任より前の出来事ア原告は、平成7年、女性(以下「A女」という。)と婚姻した。平成8年、当時3等陸曹であった原告は、婚姻により扶養親族ができたことを理由とし められる。 ⑴ B中隊長就任より前の出来事ア原告は、平成7年、女性(以下「A女」という。)と婚姻した。平成8年、当時3等陸曹であった原告は、婚姻により扶養親族ができたことを理由として営舎外居住を許可され(自衛官の居住場所に関する訓令2条1項3号参 照)、c駐屯地の外で居住するようになり、平成12年3月、エレベーターのある本件マンションを購入した。(甲9の1、乙24の1・2頁、原告本人)イ原告は、平成13年3月、出勤時に、通勤経路外である静岡県御殿場市(住所省略)付近において、雪によるスリップのため、停車中の新聞配達車に追突するという平成13年事故を起こした。同新聞配達車の車内は無人であっ たため、人身事故には至らなかったが、平成13年事故により、原告の車両は廃車となった。(乙24の1・4~5頁)ウ原告について作成された服務指導観察記録(以下「本件観察記録」という。)の平成20年4月15日欄には、「昨年11月の車両事故の件で罰金20万円中隊長から報告について指導を受けた。」との記載がある(乙24の1・ 29頁)。 エ原告は、平成20年7月、右臼蓋悪性骨腫瘍と診断され、bがんセンターに入院し、同年10月、骨盤の半分、右股関節の一部及び周辺組織を切除する手術を受けた(前記前提事実⑶)。 bがんセンター整形外科医作成の原告に係る同年12月18日付け「身体障害者診断書・意見書(肢体不自由障害用)」(甲1)には、総合所見として 「右下肢に7cmの短縮あり。また、臼蓋及び大腿骨頭と周囲の筋と共に広範切除してあるので、股関節の安定性がなく、股関節周囲筋筋力は消失している。患肢では立位を保持できず、装具なしでの歩行は不可能であり、右下肢機能全廃と判断する。」と記載され、「将来再認定 と共に広範切除してあるので、股関節の安定性がなく、股関節周囲筋筋力は消失している。患肢では立位を保持できず、装具なしでの歩行は不可能であり、右下肢機能全廃と判断する。」と記載され、「将来再認定(障害程度の変化の見込)」は「不要」と記載されている(甲1・1枚目)。また、同書の「肢体不自由の 状況及び所見」を記載すべき部分のうち「動作・活動」欄には、2階までの階段を昇降するためには、手すり及び杖の使用並びに他者による介助が必要である旨が記載されている(同2枚目)。 オ原告は、平成21年1月、身体障害程度等級3級(右下肢機能障害)と認定され、同年2月、bがんセンターを退院した(前記前提事実⑶)。 カ原告は、平成21年初め頃、A女と離婚した。本件観察記録の同年2月頃から平成22年7月頃までの欄及び「原告2曹病歴等」と題する本件観察記録の補足資料には、原告がA女と離婚したこと、A女との離婚に伴う紛争、A女や子供との関係、平成21年頃原告が知り合った第三者との本件マンションでの同居、第三者に関する借金のトラブル及びその後の第三者との別居 に関するものと思われる記載がある。(乙24の1・31〜36頁、24の19、原告本人)キ原告は、平成21年6月、職場に復帰し、本部管理中隊の衛生小隊に配属され、実施可能な業務に従事していた(甲22、乙14、前記前提事実⑶)。 ⑵ B中隊長在任中(平成22年8月1日~平成25年7月31日)の出来事 ア本件観察記録の平成22年10月26日欄には、「身体の状態を見つつ継 続した指導をして下さい。現状として、昇任についても不適としてありません。が、現階級の2曹としての能力がかなり欠けています。知識と技術をしっかりと確立させて下さい。あと、将来設計と家庭の方もよろしく願 した指導をして下さい。現状として、昇任についても不適としてありません。が、現階級の2曹としての能力がかなり欠けています。知識と技術をしっかりと確立させて下さい。あと、将来設計と家庭の方もよろしく願います。 (中略)あと、営外居住をする理由がないため、営内で過ごさせることも検討します。その際は自宅についても処置について検討必要。」とのB中隊長 による記載がある(乙24の1・38頁)。 イ原告は、当時、私有車を保有し、これを営舎外の移動の際に使用していたところ、平成22年11月13日、f交差点において右折した際、対向車線の直進車に衝突するという平成22年事故を起こした。人身事故には至らなかったが、平成22年事故により、原告及び相手方の車両はいずれも自走不 可能となった。なお、原告は、同年12月頃、新たに軽自動車を購入した。 (乙24の1・38頁、24の19・2枚目、24の30・31)ウ原告は、平成23年1月から、本部管理中隊の中隊本部に配属された(甲22、乙24の14)。 本件観察記録の同月から同年12月までの欄には、Hによる記載があり、 その中には、原告について、理解力や国語力が乏しい、能力が低い、業務的に進歩がない等のコメントとともに、指導を徹底している旨の記載がある。 また、本件観察記録の同年9月28日の欄には、「御苦労さまです。心中さっします。ハッキリ物事を言えるようにならないとダメですね。あと、もっと国語勉強させないと。」とのB中隊長による記載がある。(乙24の1・39 〜42頁)エ bがんセンターが作成し、自衛隊g学校医務室に宛てて送付した原告に係る通院連絡票(甲4。以下「本件通院連絡票」という。)の平成23年9月8日欄には、「現在より運動の機能改善は見込めません。もし状況としてどうしても説明を 、自衛隊g学校医務室に宛てて送付した原告に係る通院連絡票(甲4。以下「本件通院連絡票」という。)の平成23年9月8日欄には、「現在より運動の機能改善は見込めません。もし状況としてどうしても説明を必要であれば外来で説明します。」との担当医による記載及び B中隊長による押印がある(甲4・6枚目)。 オ B中隊長は、平成22年事故から平成23年事故までの間に、原告に対し、本件マンションからc駐屯地までバスなどの公共交通機関を用いて通勤することが可能か尋ねた。原告は、数日以内に、B中隊長に対し、公共交通機関での通勤は難しい旨回答した。(原告本人)B中隊長は、平成23年11月30日、原告に対し、営舎外居住許可を取 り消し、原告を営舎内に居住させざるを得ないと考えている旨を述べるとともに、原告において営舎内に居住することに問題はあるか尋ねた。これに対し、原告は異議を述べなかった。なお、本件観察記録の同日欄の直後(同年12月20日欄より前)には、「年明けより生活態度改善のため、営外居住取消しの話をした。」とのB中隊長による記載がある。(甲5・3枚目、22、 原告本人)。 カ原告は、平成23年12月6日、B中隊長に対し、依願退職の申出をした。 本件観察記録の同年11月30日欄の直後には、「12/6本人より依願退職の申し出あり。営内生活に耐えられる身体ではないとのこと。また、中隊員からの視線が厳しい中で、支援に行けない身体で申し訳ないのに、事務仕 事もできない事から、自衛隊に居場所を見つけられていない。退職については時期を含めて検討する。とりあえず次の職について情報収集をしてもらいたい。今、本人は、やっと現実が見れている。よく話を聞いてもらいたい。」とのB中隊長による記載がある。(甲5・3枚目、原告本人) 時期を含めて検討する。とりあえず次の職について情報収集をしてもらいたい。今、本人は、やっと現実が見れている。よく話を聞いてもらいたい。」とのB中隊長による記載がある。(甲5・3枚目、原告本人)キ原告は、平成23年12月、先任のMから、年始までに本件生活隊舎5階 に引っ越すように告げられた(甲22)。 ク原告は、平成23年12月23日、c駐屯地内の樹木に自車を追突させ、自車を損傷させるという平成23年事故を起こした。なお、「原告2曹病歴等」と題する本件観察記録の補足資料(乙24の19)には、平成23年事故について「アクセルとブレーキを踏み間違え、駐屯地内駐車場で立木に激 突軽自動車廃車」との記載がある。B中隊長は、同日、平成23年事故の 報告を受けた際、原告に対し、今後車両の保有及び使用を認めない旨の方針を伝え、その保有車両の処分を求めた。(甲22、乙24の19・2枚目、原告本人)ケ原告は、平成23年12月から平成24年1月にかけて、本件マンションから本件生活隊舎5階に引っ越した。なお、本件生活隊舎においては、一つ の階に一つの中隊が居住することとされ、1階から4階に特科教導隊の隊員が、5階に本部管理中隊の隊員が居住することとされていた。本件生活隊舎にエレベーターはなく、1階から5階までの階段の段数は68段であった。 また、原告の当時の勤務場所は、本件生活隊舎とは別の建物であり、別途階段を上って執務場所に行く必要があった。(前記前提事実⑷イ、甲22、乙2 7、証人C、証人E、原告本人)コ B中隊長は、当時の戦車教導隊長に対し、原告に対する営舎外居住許可を取り消すべき旨の意見具申を行い、戦車教導隊長は、平成24年1月23日付けで、原告に対する営舎外居住許可を取り消した(本件取消し。乙18、 長は、当時の戦車教導隊長に対し、原告に対する営舎外居住許可を取り消すべき旨の意見具申を行い、戦車教導隊長は、平成24年1月23日付けで、原告に対する営舎外居住許可を取り消した(本件取消し。乙18、27、証人C)。 サ本件通院連絡票の平成24年2月1日欄には、「本人より体力検定や格闘訓練の参加の希望ということでしたが、前回の上司には説明しましたが、骨盤の骨を切除しており、こうした訓練は困難です。改めて説明が必要であれば対応致します」との担当医による記載及びB中隊長の押印がある(甲4・12枚目)。 シ原告は、平成24年、退職届を作成するなどして退職の準備を進めていたが、同年6月12日、退職意思の最終確認の場において、退職後の生活への不安等を理由として、依願退職の申出を撤回した。なお、本件観察記録の同年4月26日欄には、「6月30日退職を決める(本人の意思ではなく)」、「本人笑いながら、よろしくお願いしますと開き直る。」とのHによる記載 がある。(乙24の1・43頁、24の14~18) ⑶ C中隊長在任中(平成25年8月1日~平成28年3月22日)の出来事ア C中隊長は、中隊長在任中、先任陸曹から、原告が本件生活隊舎5階まで階段を上るのに苦労していると聞き、当該陸曹に対し、他の中隊の先任陸曹との間で原告の居住場所を1階に移動できないか調整を試みるよう一度指示したことがあったものの、調整がつかないとの報告を受け、結局、居住場 所の移動は奏功せずに終わった(乙27、証人C)。 イ本件通院連絡票の平成26年3月20日欄には、「尚、現在本人は、営内生活の隊舎の5階で生活されており、階段の昇降について、困難と考えられておられるようです。その点について御配慮頂ければと思います」との担当医による記載及 6年3月20日欄には、「尚、現在本人は、営内生活の隊舎の5階で生活されており、階段の昇降について、困難と考えられておられるようです。その点について御配慮頂ければと思います」との担当医による記載及びC中隊長の押印がある(甲4・15枚目)。 また、本件観察記録には、いずれもJによる記載として、同月23日欄には、「日々イジメのように精神的・肉体的に指導?をしているが、「ヘコまない」強さには頭が下がる。毎日のようにダメ出しをしているが確実に日々前進はしている。」との記載、同年10月16日欄には、「足を伸ばす事の他に営外者になりたい事、車両を持ちたい事について相談を受けた。」との記載、 平成27年1月27日欄には、「これから営外・私有車購入等、色々と面倒をかけるとは思いますがよろしくご指導のほうお願いします。」との記載、同年2月13日欄には、「自分と他隊員との待遇の違いにかなり不満をもっているようで語りかけを実施」との記載、同年3月18日欄には、「営外・私有車について(待遇の不満)」との記載がある(乙24の1・51頁、54〜5 6頁)。 ウ本件通院連絡票の平成26年11月12日欄には、「身障の認定をうけているように、今後、仮に脚長差の補正をおこなっても、本人が期待している機能の獲得は困難ではないかと思います。したがって、残存機能で日常生活の活動性を広げる為にも、運動ではなく、車の運転等をおこなっていくこと の方がメリットが高いような気がします。以前のエピソードが原因となって いるので、仕方のない点もありますが、上司の方などの説明(股関節機能の改善が難しいこと等)必要なら行わせて頂きたいと思います」との担当医による記載及びC中隊長による押印がある(甲4・18枚目)。 エ原告は、平成27年1月24日 が、上司の方などの説明(股関節機能の改善が難しいこと等)必要なら行わせて頂きたいと思います」との担当医による記載及びC中隊長による押印がある(甲4・18枚目)。 エ原告は、平成27年1月24日、h駐屯地団教育隊総合コース及び静岡県御殿場市内において、1等陸曹の指導の下、運転技能の検定を受け、合格と 判定された(乙24の32~34)。 オ原告は、平成27年、上記検定の結果を受け、C中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めた。これに対し、C中隊長は、原告が足に障害を有しており、私有車がなければ移動に不便を来すことを考慮しつつも、原告の交通事故歴等(平成13年事故、平成22年事故及び平成23年事故を含 む。)や、上記検定において「対向車を避けるため、路側帯に進入してしまった」、「交差点等で停止する際、停止位置が手前すぎる時がある」、「進路変更をする際、合図を出す時機が早すぎたり遅すぎたりする場合がある」との3つの改善すべき事項が指摘されていたことなどを踏まえ、原告の運転能力には未だ不安が残ると考え、原告に対し、私有車の保有及び使用を許可しなか った。(甲22、乙24の32、27、証人C)カ本件通院連絡票の平成27年3月19日欄には、「身障車用の訓練ありがとうございました。今後の本人の生活を考えるとやはり車での移動ができる方が有用と考えます。もし、可能なら現状について説明させていただきたく思います(上司に対して)。 3/26 ○9~100 ○120~130 ○ 160~170 この中でお時間の良い時に上司であるC1尉に御連絡して良いでしょうか?」との担当医による記載及びC中隊長による押印がある(甲4・21枚目、証人C)。 キ本件通院連絡票の平成27年12月3日欄には、「居住する隊舎に関しては5階で C1尉に御連絡して良いでしょうか?」との担当医による記載及びC中隊長による押印がある(甲4・21枚目、証人C)。 キ本件通院連絡票の平成27年12月3日欄には、「居住する隊舎に関しては5階であり可能であれば、下の方が望ましいかと思います。申し訳ありま せんが、御検討お願いします」との担当医による記載及びC中隊長による押 印がある(甲4・19枚目)。 ⑷ D中隊長在任中(平成28年3月23日~平成30年3月22日)の出来事ア原告は、平成29年4月頃、c駐屯地内のg学校総務部人事課所属の業務班長に対し、本件生活隊舎5階からの移動希望について相談した。D中隊長は、原告が同所からの移動を希望していたこと等を踏まえ、同月頃、本部の 1課長及び他の中隊の中隊長と話をするなどして、原告が居住可能な部屋があるか検討し、調整を図った。最終的には、第2中隊及び第3中隊に居住区域として割り当てられながらも当時使用されていなかった本件勤務隊舎1階の部屋を借りる形で、移動の調整ができた。(甲22、乙29、証人D)イ原告は、平成29年5月、本件生活隊舎5階から本件勤務隊舎1階に引っ 越した(前記前提事実⑷ウ)。 ウ原告は、平成29年5月頃、D中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めた。これに対し、D中隊長は、原告が足に障害を有しており、私有車が無ければ移動に不便を来すことを考慮しつつも、原告の現在の運転技能が不明であったこと、原告の交通事故歴(平成13年事故、平成22年事故 及び平成23年事故)、並びに普段から原告の注意力が散漫であると感じていたことなどから、原告に対し、私有車の保有及び使用を許可しなかった。 (乙29、証人D)エ本件観察記録には、いずれもD中隊長による記載として、平成28年3月31日 の注意力が散漫であると感じていたことなどから、原告に対し、私有車の保有及び使用を許可しなかった。 (乙29、証人D)エ本件観察記録には、いずれもD中隊長による記載として、平成28年3月31日付けで、「申し受け、引き続き善導よろしくおねがいします。本人の精 神的な成長が必要な隊員であるため、機会をとらえてよく指導してください。」との記載、同年7月31日付けで、「原告2曹には、「組織の中の隊員」という立場を認識させる必要があります。今まで指導が疎かにされていた分、根は深いです。根気強く、「自由勝手ではダメだ」という事をよく教えてください。」との記載、平成30年3月15日付けで、「中隊に対する貢献度が無 く、かつ、不平不満のみを云い指導に服さない。中隊の係累であるため注意 されたい。」との記載がある。(乙24の1・59頁、60頁、64頁)⑸ E中隊長在任中(平成30年3月23日~令和元年7月31日)の出来事ア原告は、平成30年10月20日、左足でアクセルが踏めるように改造されたレンタカーを使用して、運転適性診断(筆記試験及び実技試験。「運転適性検査K-2」と称されるもの。)を受け、問題がない旨の判定を受けた(甲 19、乙24の35)。 イ E中隊長は、平成30年11月、原告に対し、私有車の保有及び使用を最終的に許可するに当たって原告の実際の運転を見たい旨を述べた。原告は、自ら費用をかけてA女が使用していた車両を改造し、Eによる技能判定を受けることとなった。E中隊長は、同年12月15日、原告が運転する上記改 造車両に同乗して技能判定を実施し、同月20日、原告に対し、私有車の保有及び使用を許可した。(甲7、22、乙24の1、28、証人E)ウ本件通院連絡票の平成31年2月14日欄には、「今のところ 造車両に同乗して技能判定を実施し、同月20日、原告に対し、私有車の保有及び使用を許可した。(甲7、22、乙24の1、28、証人E)ウ本件通院連絡票の平成31年2月14日欄には、「今のところ明らかな再発所見はなさそうです。しかしながら、エレベーターのない状態での高層の階段歩行が非常に困難を伴なうと考えられます」との担当医による記載及び E中隊長による押印がある(甲4・25~26枚目)。 エ戦車教導隊(機甲教導連隊)は、改編に伴い、平成31年3月、c駐屯地からd駐屯地に移転することとなった。その際、原告を含む本部管理中隊の営内居住者は、本件e隊舎3階の部屋に引っ越すこととされた。d駐屯地における原告の執務場所は、本件e隊舎2階に所在していた。E中隊長は、同 月頃、原告に対し、本件e隊舎3階の部屋に移動することになること、現在の居住場所よりも高層となるが、執務場所との間の距離や正門との間の距離は現在よりも短くなること等を伝えた。これに対し、原告は、特段の異議を述べなかった。(乙28、証人E)オ原告は、平成31年3月、本件勤務隊舎1階の部屋から、本件e隊舎3階 の部屋に引っ越した。なお、本件e隊舎にエレベーターはなく、その1階に は他の中隊の執務スペースや倉庫があり、居住用のスペースはなかった。 (前記前提事実⑷エ、乙28、証人E)⑹ F中隊長在任中(令和元年8月1日~)の出来事原告は、令和元年9月、営舎外居住許可の申請をし、当時の戦車教導隊長(機甲教導連隊長)は、同年10月15日付けで同申請を許可した(本件許可。乙 16)。 2 争点2(パワハラに係る安全配慮義務違反の成否)について⑴ はじめに後記争点4(消滅時効の成否(国賠法に基づく請求について))の判断を踏ま 可した(本件許可。乙 16)。 2 争点2(パワハラに係る安全配慮義務違反の成否)について⑴ はじめに後記争点4(消滅時効の成否(国賠法に基づく請求について))の判断を踏まえ、まず、争点2に関する判断を行うこととする。 ⑵ 被告の安全配慮義務について国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、信義則上、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものと解される(最高裁昭和48年 (オ)第383号同50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照)。そして、公務員が公務を遂行するに際し、肉体的・心理的負荷等が過度に蓄積すると、公務員の心身の健康を損なう危険があることからすれば、国は、その公務の管理にあたっては、公務の遂行に伴う肉体的・心理的負荷等が過度に蓄積して公務員の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき安全 配慮義務を負うものと解するのが相当である。 中隊長は、被告の負う上記安全配慮義務の履行補助者として、上記義務の内容に従って、その権限を行使すべきであり、公務員の心身の健康を損なうことがないよう、部下である各隊員の健康状態やその時々の状況に応じて必要な措置を講じ、その就労環境等の整備を行う義務を負うものというべきである。 ⑶ 安全配慮義務違反の成否について ア本件パワハラ行為①について(ア) B中隊長による本件取消しに係る行為及び原告を本件生活隊舎5階に居住させた行為についてa 自衛隊の即応体制を確保するため、曹長以下の自衛官は、原則として、自衛隊の基地内での集団的居住場所(営舎)に居住 長による本件取消しに係る行為及び原告を本件生活隊舎5階に居住させた行為についてa 自衛隊の即応体制を確保するため、曹長以下の自衛官は、原則として、自衛隊の基地内での集団的居住場所(営舎)に居住しなければならず、 例外として、許可を得て、営舎外に居住することができるとされている(自衛隊法55条、自衛隊法施行規則51条)。自衛官の居住場所に関する訓令において、2条1項各号所定の自衛官については、部隊等の長に対し、上記許可を申請することができるとされ、部隊等の長は、かかる申請があった場合において、隊務運営上支障がなく、かつ、その居住し ようとする場所が、勤務する場所から著しく遠距離であること及び勤務する場所との交通が著しく不便であることのいずれにも該当しないと認めるときは、営舎外居住を許可することができるとされている(同訓令2条1項・3項、6条)。そして、部隊等の長は、営舎外居住を許可した理由がなくなったと認める場合には、当該営舎外居住の許可を取り消 すものとされている(同訓令5条2項)。 b このように、本部管理中隊所属隊員に係る営舎外居住許可の取消しは、「部隊等の長」である戦車教導隊長の権限で行われるものであって、B中隊長は、その取消し権限を有しない。 しかしながら、証拠(乙27、証人C)及び弁論の全趣旨によれば、 中隊長は、所属隊員の勤務状況ないし生活状況を把握していることから、営舎外居住許可の取消しに先立ち、これに関する報告及び意見具申を戦車教導隊長に対して行うものであり、現に、B中隊長は、本件取消しに先立ち、これに関する報告及び意見具申を行ったと認められる。そして、原告は、本件訴訟において、B中隊長による本件取消しに関する報告及 び意見具申を問題にしているものと解されるから、以下では、当該報告 、これに関する報告及び意見具申を行ったと認められる。そして、原告は、本件訴訟において、B中隊長による本件取消しに関する報告及 び意見具申を問題にしているものと解されるから、以下では、当該報告 及び意見具申を「本件取消しに係る行為」と称して検討する。 c ところで、原告は、2等陸曹になる前の平成8年に、A女との婚姻により扶養親族ができたことを理由として営舎外居住を許可されたが(前記認定事実⑴ア)、平成21年初め頃にA女と離婚したことから(同カ)、本件取消し当時、自衛官の居住場所に関する訓令2条1項3号には該当 しなくなっていたものである。もっとも、原告は、本件取消し当時、年齢30歳以上の2等陸曹であったから(前記前提事実⑴ア)、同訓令2条1項2号に該当する者として、営舎外居住の許可を申請することができる立場にあり、この場合、部隊等の長は、前記aの要件の下で、営舎外居住を許可することができたものである。 そうすると、B中隊長は、本件取消しに係る行為を検討するに当たっては、原告が上記許可を申請することができる地位にあったことを考慮して、隊務運営上の支障の有無及び居住場所の要件の有無の観点から、その許否に関する報告及び意見具申を行う必要があったと認めるのが相当である。 d しかしながら、B中隊長は、中隊長として着任後、原告がA女と離婚し、当初の営舎外居住の許可の事由がなくなったことのみを理由として、営舎外居住の許可の取消しについて検討していことが窺われるところ(前記認定事実⑵ア)、本件観察記録における原告に対する厳しい評価(同ア、ウ)に加え、本件取消しに関する方針を原告に伝えた平成23 年11月30日頃の本件観察記録の記載(同オ)も踏まえると、B中隊長は、自らが本件観察記録に残したとおり、専 対する厳しい評価(同ア、ウ)に加え、本件取消しに関する方針を原告に伝えた平成23 年11月30日頃の本件観察記録の記載(同オ)も踏まえると、B中隊長は、自らが本件観察記録に残したとおり、専ら「生活態度改善のため」に本件取消しが必要との判断を行ったと認めるのが相当である。しかるに、B中隊長は、原告に対し、一般的な服務指導を行う権限を有すると解されるものの(陸上自衛隊服務規則71条1項参照)、そもそも、営舎 外居住の許可ないしその取消しに当たり、当該自衛官の生活態度改善の 要否を直接考慮することができると認めるに足りる訓令上の根拠はなく、仮にこれを隊務運営上の支障の有無の要件の中で判断するとしても、本件訴訟において、被告は、原告が営舎外で居住することで生活態度に問題を生じ、それによって隊務運営上の支障があったためにB中隊長が本件取消しを相当と判断した旨の主張立証はしていない。 e この点、被告は、原告が平成13年事故及び平成22年事故を起こしたことなどから、B中隊長は、原告について私有車の使用を制限するとともに、原告の障害を踏まえると、原告の通勤や勤務に支障が生じ得ることを考慮して、原告が営舎外に居住することにつき隊務運営上支障がないとは認められないと考えていたところ、原告が平成23年事故も起 こしたため、本件取消しを相当と判断し、その旨の意見具申をしたと主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、B中隊長は、原告が平成22年事故を起こす前から、営舎外居住許可の取消しを検討していた上(前記認定事実⑵ア)、後記イで詳述するとおり、そもそもB中隊長による原 告の私有車の保有及び使用の制限自体が、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであり、安全配慮義務に違反するものであったと認められるとこ )、後記イで詳述するとおり、そもそもB中隊長による原 告の私有車の保有及び使用の制限自体が、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであり、安全配慮義務に違反するものであったと認められるところ、B中隊長は、「生活態度改善のため」に私有車の保有及び使用の制限と本件取消しの意見具申とを、一連のものとして行ったものと認められることからすれば、B中隊長の本件取消しに係る上記判断が不合 理なものでないとはいえず、被告の上記主張は採用することができない。 f 加えて、B中隊長による本件取消しに係る行為当時、原告は、右下肢機能全廃と診断され、階段の昇降には手すり及び杖の使用並びに他者による介助が必要な状態であるとの医師の意見があり、身体障害程度等級3級の認定を受けていて(前記認定事実⑴エ、オ)、B中隊長はそのこと を認識していたものと認められる。しかし、B中隊長は、原告を営舎内 で居住させる場合、その居住場所がエレベーターのない本件生活隊舎5階となることを認識していたにもかかわらず、原告の上記障害に配慮してその点について検討した形跡が何ら窺われない。 g そうすると、原告が、B中隊長に対し、本件生活隊舎5階への居住について特段異議を述べた形跡が見当たらないこと、陸上自衛隊において は、中隊を1単位として職務を遂行することなどから、通常、中隊ごとに居住階が指定されており、原告の所属する本部管理中隊には本件生活隊舎5階が割り当てられていたこと(前記認定事実⑵ケ、弁論の全趣旨)を考慮しても、B中隊長による本件取消しに係る行為及び原告を本件生活隊舎5階に居住させた行為は、B中隊長と原告の指揮命令関係を背景 として、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであり、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的 原告を本件生活隊舎5階に居住させた行為は、B中隊長と原告の指揮命令関係を背景 として、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであり、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強いた点において、安全配慮義務に違反するものであったと認めるのが相当である。 (イ) B中隊長、C中隊長及びD中隊長による原告を本件生活隊舎5階に居住させ続けた行為について a まず、B中隊長について見るに、前記認定判断によれば、B中隊長は、その中隊長在任期間において、被告の安全配慮義務の履行補助者として、原告の健康及び障害に配慮し、原告の居住場所につき、原告にとって階段昇降の負担の少ない場所を提供するなど、必要な措置を講じるべき義務を負っていたと認めるのが相当である。 そこで検討するに、B中隊長の在任中、原告が5階までの階段の昇降について特段異議を述べた形跡は見当たらないものの、原告の障害の内容及び程度に照らし、5階までの階段の昇降に相当な困難を伴うことは容易に想像できるものであり、原告の障害の内容及び程度を把握していたB中隊長も、当然ながら原告の心身にかかる負担の大きさを認識でき たものである。それにもかかわらず、B中隊長は、在任中の約1年8か 月にわたり、原告を本件生活隊舎5階以外の場所に居住させることを検討した形跡が全く窺われない。 そうすると、陸上自衛隊においては、中隊を1単位として職務を遂行することなどから、通常、中隊ごとに居住階が指定されており、原告の所属する本部管理中隊には本件生活隊舎5階が割り当てられていたこ と(前記認定事実⑵ケ、弁論の全趣旨)を考慮しても、B中隊長が、原告に階段昇降の負担の少ない居住場所を提供すべく必要な措置を講じることなく、原告を漫然と本件生活隊舎5階に 割り当てられていたこ と(前記認定事実⑵ケ、弁論の全趣旨)を考慮しても、B中隊長が、原告に階段昇降の負担の少ない居住場所を提供すべく必要な措置を講じることなく、原告を漫然と本件生活隊舎5階に居住させ続けた行為は、前記安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 b 次に、C中隊長について見るに、C中隊長も、B中隊長と同様に、前 記aで述べた安全配慮義務を負っていたものと認めるのが相当である。 この点、C中隊長は、在任中の約2年6か月にわたり、原告を本件生活隊舎に居住させ続けるに当たり、5階よりも下階に移動させることを一度は検討し、調整を図ったものの、奏功しなかったことが認められる(前記認定事実⑶ア)。しかしながら、C中隊長は、居住区の調整につい て、部下である先任陸曹に指示してこれを委ね、その調整が奏功しない旨の報告を受けたのみで終了しており、その時期及び期間も定かではなく(証人C・20〜21頁)、C中隊長において、更に進んで自ら調整に出たり、他の方策を検討したりした形跡は窺われない。 また、C中隊長は、在任中、先任陸曹から、原告が本件生活隊舎5階 まで階段を上るのに苦労しているとの話を聞いていた上、原告がbがんセンターの担当医に対し、階段の昇降に困難を来たしている旨を訴え、当該担当医も本件通院連絡票により原告の上級者に対してその点に関する配慮を求めており、C中隊長は、そのことを知っており(前記認定事実⑶イ、キ)、原告が隊舎の階段を苦労しながら昇降する様子も認識し ていたものと認められる(証人C・12~13頁)。そして、後にD中隊 長の調整によって原告を本件生活隊舎1階へ移動させることが現に実現できていることからすれば、原告に階段昇降の負担の少ない居住場所を提供すべく必要な措置を講じる 3頁)。そして、後にD中隊 長の調整によって原告を本件生活隊舎1階へ移動させることが現に実現できていることからすれば、原告に階段昇降の負担の少ない居住場所を提供すべく必要な措置を講じることは十分に可能であったものというべきである。 そうすると、C中隊長が原告を本件生活隊舎5階に居住させ続けた行 為は、前記安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 c さらに、D中隊長について見るに、D中隊長も、B中隊長、C中隊長と同様に、前記aで述べた安全配慮義務を負っていたものと認めるのが相当である。 この点、D中隊長は、着任から約1年を経過した平成29年4月頃、 原告がc駐屯地内のg学校総務部人事課所属の業務班長に対して本件生活隊舎5階からの移動希望を相談したことを契機として、本件生活隊舎1階への移動を調整したことが認められる(前記認定事実⑷ア)。 しかしながら、D中隊長は、中隊長として着任後、本件通院連絡票等によりC中隊長在任中の担当医の意見(前記認定事実⑶イ、キ)を通じ て原告が本件生活隊舎での階段の昇降について困難を感じていたことを知っていたと考えられるほか、原告が本件生活隊舎の階段を左手で杖をつき右手で手すりを掴みながら昇降する様子を何度も現認していた(証人D・17頁)にもかかわらず、原告が別の部署の業務班長に直接相談を持ち掛けるまでの間、原告について本件生活隊舎5階より下階に 移動させることを検討した形跡が窺われない。 そうすると、D中隊長が原告を平成29年4月まで本件生活隊舎5階に居住させ続けた行為は、前記安全配慮義務に違反するものと認めるのが相当である。 (ウ) B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長が、原告に営舎外居住許可 をしなかった行為について 証拠( 行為は、前記安全配慮義務に違反するものと認めるのが相当である。 (ウ) B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長が、原告に営舎外居住許可 をしなかった行為について 証拠(証人C、証人D、証人E、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件取消しの後、F中隊長の在任中である令和元年9月に営舎外居住許可の申請をするまで、B中隊長、C中隊長、D中隊長及びE中隊長に対し、営舎外居住を事実上希望しつつも、正式な営舎外居住許可の申請をしたことはなかったものと認められる。 そうすると、上記各中隊長が、本件取消しの後、各在任期間中に、原告に関して営舎外居住許可をすべき旨の意見具申をしなかったとしても(なお、営舎外居住の許可権者は「部隊等の長」である戦車教導隊長であり、中隊長は、戦車教導隊長に対する報告及び意見具申を行うものである。 前記(ア)a、b参照)、被告の安全配慮義務違反は認められない。 (エ) E中隊長が原告を本件e隊舎3階に居住させた行為について前記認定事実によれば、E中隊長は、平成31年3月、戦車教導隊が改編によりc駐屯地からd駐屯地に移転するのに伴って、原告を本件勤務隊舎1階から転出させて、エレベーターのない本件e隊舎3階に居住させたことが認められるが、一方で、d駐屯地における原告の執務場所が本 件e隊舎2階であったこと、本件e隊舎から正門までの距離が従前の居住環境と比して近かったことなどから、E中隊長は、原告の障害ないし階段の昇降に係る困難を考慮しつつ、原告を本件e隊舎の3階に居住させたものと認められる(前記認定事実⑸エ、オ)。 これらの事情に照らせば、原告の居住場所が1階から上階である3階 に移ることにはなったものの、執務場所への移動距離及び外出のための移動距離はむしろ従 のと認められる(前記認定事実⑸エ、オ)。 これらの事情に照らせば、原告の居住場所が1階から上階である3階 に移ることにはなったものの、執務場所への移動距離及び外出のための移動距離はむしろ従前よりも短くなったものであり、E中隊長は、原告の健康及び障害にも配慮して、原告を本件e隊舎3階に居住させたといえるから、このE中隊長の行為について、被告の安全配慮義務違反は認められない。 イ本件パワハラ行為②について (ア) B中隊長による私有車の保有及び使用を認めず、車両の処分を求めた行為についてac駐屯地服務規則36条1項及び私有車保有等許可基準によれば、私有車の保有及び使用に関する中隊長の許可は、隊員による許可申請を前提とするものと解される。しかるに、B中隊長は、平成23年12月2 3日、原告に対し、今後車両の保有及び使用を認めない旨の方針を伝えているところ(前記認定事実⑵ク)、この際、原告による許可申請はされていないから、B中隊長は、原告からの許可申請に対してこれを不許可としたものではない。 しかしながら、原告は、当時、私有車を保有していたところ(ただし、 後に廃車となった。前記認定事実⑵ク)、B中隊長は、特段留保を付すことなく、上記方針を一方的に伝達したものである。そうすると、B中隊長による上記方針の伝達は、原告に対し、既に有していた私有車の保有資格を取り消し、今後私有車の保有及び使用の申請をしてもこれを許可しない予定である旨の服務指導であり、併せて車両の処分についても指 導したものであると認めるのが相当である。 そこで、以下では、当該指導行為の当否について検討する。 b この点、c駐屯地服務規則36条1項及び私有車保有等許可基準は、私有車の保有資格基準について定めるほか、許可・保 認めるのが相当である。 そこで、以下では、当該指導行為の当否について検討する。 b この点、c駐屯地服務規則36条1項及び私有車保有等許可基準は、私有車の保有資格基準について定めるほか、許可・保有資格の取消しがされる場合について定めるものの、保有・使用の許可基準については詳 しい定めを置いていない。そうすると、c駐屯地服務規則36条1項及び私有車保有等許可基準は、私有車の保有及び使用に関する中隊長の許可の判断を、その合理的な裁量に委ねたものと解される。もっとも、私有車保有等許可基準が、許可・保有資格の取消しについて、「車両事故及び交通三悪に関する重大な違反により重処分以上の懲戒処分を受ける など、中隊長が保有を不適当と認めた場合」と定めていることを考慮す ると、中隊長の許可・保有資格の取消しないし保有の不許可が全くの自由裁量であると解することはできず、許可・保有資格の取消しないし保有の不許可事由は、上記で例示されたのと同程度の事情がある場合に限られるものと解するのが相当である。 c そこで、まず、B中隊長の前記方針の伝達が、許可・保有資格の取消 しないし保有の不許可事由に関する前記解釈に沿うものかを検討する。 この点、原告は、B中隊長の着任後間もなく平成22年事故を起こした上、B中隊長の前記方針の伝達直前に、平成23年事故を起こしたものである(前記認定事実⑵イ、ク)。そして、平成22年事故が相手方車両のある衝突事故であったこと、平成23年事故が自損事故ではあるも のの、自動車を廃車とする状況であったことを考慮すると、B中隊長において、原告に対し、今後交通事故を発生させないよう何らかの指導を行うこと自体は必要な状況であったと認められる。 しかしながら、B中隊長は、更に進んで原告の私有車の保有・使用 考慮すると、B中隊長において、原告に対し、今後交通事故を発生させないよう何らかの指導を行うこと自体は必要な状況であったと認められる。 しかしながら、B中隊長は、更に進んで原告の私有車の保有・使用を一般的に認めない旨言明したところ、本件全証拠によっても、原告が、 平成22年事故及び平成23年事故により重処分以上の懲戒処分を受けたとは認められないことはもとより、これらの事故が重処分以上の懲戒処分に相当する程度の重大事故であったことを裏付けるに足りる的確な事情も見当たらない(さらに、被告は、平成13年事故の存在にも言及するほか、平成19年にも何らかの車両事故の形跡が窺われるが(前記 認定事実⑴ウ)、これらはB中隊長の前記方針の伝達よりもかなり前の出来事であり、しかも、これらについて重処分以上の懲戒処分に相当する程度の重大事故であったことを裏付けるに足りる的確な事情も見当たらない。)。そうすると、B中隊長の前記方針の伝達は、許可・保有資格の取消しないし保有の不許可事由に関する前記解釈に沿うものではなく、 それ自体、合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ない。 d 次に、B中隊長の前記方針の伝達に至る経緯を見るに、B中隊長は、その在任当初(平成22年事故発生前)から、原告について営舎外居住許可の取消しについて検討していた上(前記認定事実⑵ア)、原告が足の障害のため私有車を保有及び使用していたことを認識していたにもかかわらず、原告に対する営舎外居住許可取消しに関する方針の伝達に先 立ち、平成23年事故発生前から私有車保有・使用許可の取消しを検討していたことが窺われ(前記認定事実⑵オ)、営舎外居住許可の取消しの意見具申と私有車の保有・使用の許可取消しを一連のものとして行ったものと認められる。また、B中隊長 有車保有・使用許可の取消しを検討していたことが窺われ(前記認定事実⑵オ)、営舎外居住許可の取消しの意見具申と私有車の保有・使用の許可取消しを一連のものとして行ったものと認められる。また、B中隊長は、その在任当初から、原告の執務能力に対する疑問を呈しており、前記ア(ア)fのとおり、営舎外居住許可 の取消しの意見具申に際し、原告の障害に配慮した居住場所の検討を行った形跡も見当たらないことからすると、B中隊長による営舎外居住許可の取消しの意見具申及び私有車保有・使用許可の取消しは、B中隊長にとっては、いずれも原告に対する「生活態度改善のため」(前記認定事実⑵オ)にされた、服務指導の一環であったと解さざるを得ない。 e そして、原告は、B中隊長の在任前、A女と離婚した後、第三者と本件マンションで同居し、借金のトラブルを抱えたことはあったものの、その後、特筆すべき生活上の問題を抱えた形跡が見当たらず、平成23年の時点において、生活態度改善を目的とした服務指導であったとしても、その私有車の保有・使用を一般的に認めないまでの必要性があった とまでは認め難い。そして、原告にとって、障害の観点からも私有車の保有・使用が必要であったこと(前記認定事実⑶ウ、カ参照)を考慮すると、これを一般的に認めない旨のB中隊長の前記方針の伝達及び車両の処分の要求は、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであり、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強い た点において、安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 (イ) C中隊長による私有車の保有及び使用の不許可について原告は、平成27年1月、運転技能検定に合格したことを受け、同年、C中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めたところ、C中 (イ) C中隊長による私有車の保有及び使用の不許可について原告は、平成27年1月、運転技能検定に合格したことを受け、同年、C中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めたところ、C中隊長は、原告の足の障害を考慮しつつも、平成13年事故、平成22年事故及び平成23年事故並びに上記検定における改善点の指摘を懸念して、私有 車の保有及び使用を許可しなかったと認められる(前記認定事実⑶エ、オ)。 また、bがんセンターの担当医は、原告の生活のためには車が運転できた方がよい旨の意見を本件通院連絡票に記載し、C中隊長はこれを確認していたものである(前記認定事実⑶ウ、カ)。 そこで、C中隊長による不許可行為について検討するに、前記(ア)のと おり、B中隊長による私有車の保有及び使用を認めない方針の伝達は、それ自体、安全配慮義務に違反するものであった。また、C中隊長は、B中隊長の前記方針の伝達があったことについて引継を受けていたと考えられるところ、更に平成23年事故から3年以上も経過した時点において、原告が運転技能検定に合格したにもかかわらず、また、原告の担当医から、 車の運転ができた方がよい旨の意見があったことを確認していたにもかかわらず、なおも私有車の保有及び使用を許可しなかったものであり、これも合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ない。 そうすると、C中隊長による前記不許可行為は、合理的な裁量を逸脱し、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強い た点において、安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 (ウ) D中隊長による私有車の保有及び使用の不許可について原告は、平成29年5月頃、D中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めたところ、D中隊長は、原告の足の であったと認められる。 (ウ) D中隊長による私有車の保有及び使用の不許可について原告は、平成29年5月頃、D中隊長に対し、私有車の保有及び使用の許可を求めたところ、D中隊長は、原告の足の障害を考慮しつつも、平成13年事故、平成22年事故及び平成23年事故の存在に加え、原告の当 時の運転能力が不明だったこと、並びに原告の注意力が散漫であると感じ ていたことなどから、私有車の保有及び使用を許可しなかったと認められる(前記認定事実⑷ウ)。また、bがんセンターの担当医は、C中隊長の在任中、原告の生活のためには車が運転できた方がよい旨の意見を本件通院連絡票に記載しており(前記認定事実⑶ウ、カ)、D中隊長もこれを確認していたものと考えられる。 そこで、D中隊長による不許可行為について検討するに、前記(ア)及び(イ)のとおり、B中隊長による私有車の保有及び使用を認めない方針の伝達及びC中隊長による不許可行為は、いずれも安全配慮義務に違反するものであった。また、D中隊長は、B中隊長及びC中隊長の対応について引継を受けていたと考えられるところ、更に平成23年事故から5年以上も経過 した時点において、原告の運転技能について改めて確認することもなく、なおも私有車の保有及び使用を許可しなかったものであり、原告の担当医から車の運転ができた方がよい旨の意見があったことを確認していたと考えられることにも照らすと、これも合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ない。 そうすると、D中隊長による前記不許可行為は、合理的な裁量を逸脱し、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強いた点において、安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 (エ) E中隊長による私有車の保有及び使用の許可に係る経 逸脱し、これにより原告に心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強いた点において、安全配慮義務に違反するものであったと認められる。 (エ) E中隊長による私有車の保有及び使用の許可に係る経緯についてa 原告は、平成30年10月、運転適性診断を受け、問題がない旨の判 定を受けたところ、E中隊長は、私有車の保有及び使用を最終的に許可するに当たって原告の実際の運転を見たい旨を述べたことが認められる(前記認定事実⑸ア、イ)。 しかしながら、E中隊長の上記発言は、服務に関する指導として必要かつ相当な範囲を超えたハラスメントであると理解することはできず、 上記発言が原告に対する安全配慮違反を構成するものとは認められない。 b また、原告は、E中隊長が原告の運転を見るに際してレンタカーの使用を許さなかった結果、余分な費用を出捐してA女が使用していた車両を改造することを余儀なくされた旨を主張する。 しかしながら、E中隊長がレンタカーの使用を許さなかった事実までは証拠上認められず、原告の陳述書(甲22・27~29頁)を前提と しても、E中隊長はレンタカーを借りる以外の軽易な方法がないか問いを発しているにすぎず、かかるE中隊長の問いに対して原告がA女の車両を改造する案を提示したため、E中隊長がその方向で進めることを指示したというにすぎないから、いずれにせよ、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 ウ本件パワハラ行為③ないし⑬について(ア) 本件パワハラ行為③(無理な応援の強要)について証拠(甲22、乙26、証人G、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、平成22年11月13日の午前8時頃から午後0時30分頃までの間(勤務時間内)に、c駐屯地において隊内の駅伝大会が開催され、原告 証拠(甲22、乙26、証人G、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、平成22年11月13日の午前8時頃から午後0時30分頃までの間(勤務時間内)に、c駐屯地において隊内の駅伝大会が開催され、原告が屋外 でその応援に参加したことは認められる。 しかしながら、同大会において応援の場所や方法が指定されたり休憩することが禁止されたりしたことはなかった旨のGの証言(証人G・8頁)、及び応援場所について「好きなところで応援しろ」と言われていた旨の原告自身の供述(原告本人・30頁)等に照らせば、B中隊長が、原告を6 時間もの間、不整地に立たせ続けて必要のない応援をさせたとの事実は認められない。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (イ) 本件パワハラ行為④(娘の卒業式の最中の呼出し)について原告の前記主張に沿う原告の陳述書が存在するが(甲22・10頁)、こ れを裏付ける的確な証拠はなく、原告主張の事実を認めることができない。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (ウ) 本件パワハラ行為⑤(退職の強要)について原告の前記主張に沿う原告の陳述書及び供述が存在する(甲22・6頁、原告本人・6~7頁。ただし、行為の時期は平成23年10月ではなく同年2月とされている。)。また、本件観察記録には、B中隊長が、同年12 月6日、原告からの依願退職の申出を受けた際、原告はやっと現実が見れているなどの認識を記載したこと(前記認定事実⑵カ)、Hが、平成24年4月26日、「6月30日退職を決める(本人の意思ではなく)」などと記載したこと(同シ)が認められる。しかしながら、本件観察記録の各記載が原告の上記陳述書ないし供述を裏付けるに足りるとまではいえず、他に 6日、「6月30日退職を決める(本人の意思ではなく)」などと記載したこと(同シ)が認められる。しかしながら、本件観察記録の各記載が原告の上記陳述書ないし供述を裏付けるに足りるとまではいえず、他に 原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (エ) 本件パワハラ行為⑥(仕事を与えない嫌がらせ)について原告の前記主張に沿う原告の陳述書及び供述が存在するが(甲22・5頁、原告本人・9~10頁。ただし、行為の時期は平成23年10月では なく同年1月とされている。)、これを裏付ける的確な証拠はなく、原告主張の事実を認めることができない。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (オ) 本件パワハラ行為⑦(体力錬成の強要)についてa 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (a) B中隊長は、平成24年秋頃、原告に対し、陸上自衛隊員が毎年1回受検することとされている体力検定に向けて、自分でメニューを決めて体力錬成をするよう命じた。これを受けた原告は、腕立て伏せ20回及びバーベル上げ10回又は腹筋60回を1セットとし、これを合計10セット行った後、約6キロメートルを歩行するメニューを考 案し、同メニューを一定期間にわたり毎日実践した。(甲22、乙2 6、証人G、原告本人)(b) 原告は、平成24年11月30日、股関節に疼痛を訴え、右下肢に浮腫がみられる状態となったため、悪性骨腫瘍の再発の可能性を案じて、bがんセンターを受診した。同院における検査により、原告の上記症状の直接の原因が腎機能の低下にあることまでは判明したもの の、腎機能の低下の原因までは判明しなかった。同院の担当医 能性を案じて、bがんセンターを受診した。同院における検査により、原告の上記症状の直接の原因が腎機能の低下にあることまでは判明したもの の、腎機能の低下の原因までは判明しなかった。同院の担当医は、原告に対し、安静を指示するとともに、同年12月6日から同院に入院すること、及び痛むようであれば自衛隊病院への通院も検討することを提案した。(乙24の19・3枚目・21)(c) 原告は、平成24年12月2日から同月6日までi病院に入通院し、 同日、bがんセンターに転院した(乙24の20・21)。 (d) bがんセンターの担当医は、本件通院連絡票の平成24年12月6日欄に、原告の上記症状について「基本的には指示を超えた運動が今回の症状のまず原因と考えます。」、「激務休として下さい(12/6~2week間)」と記載するとともに、同連絡票の同月13日欄に、 「再発の可能性があり画像診断をすすめていきます。」「12/13より約8weekの激務休が必要です」と記載した(甲4・10~11枚目)。 (e) bがんセンターの担当医は、本件通院連絡票の平成25年1月24日欄に、上記症状の原因について、検査の結果、悪性骨腫瘍の再発は 認められず、「可能性としては、今回の疼痛出現前に行った体力錬成が引き金になったのではないかと思います。(断定ではありません)」と記載するとともに、当該体力錬成が当時の原告にとって負荷が強いと思われる旨を記載した(甲4・13枚目)。 (f) 原告は、平成25年2月16日、39度を超えて発熱し、bがんセ ンターにおける検査の結果、右臼蓋骨肉腫術後偽関節腔部(骨盤部) 膿瘍を発症し、敗血症を疑われたため、緊急穿刺ドレナージ手術を施行された(甲8、乙24の27)。 b 上記a(a)~(f)の経 ーにおける検査の結果、右臼蓋骨肉腫術後偽関節腔部(骨盤部) 膿瘍を発症し、敗血症を疑われたため、緊急穿刺ドレナージ手術を施行された(甲8、乙24の27)。 b 上記a(a)~(f)の経緯によれば、原告は、B中隊長による体力錬成の指示を契機として、体力錬成メニューを考案し、これを実行したものであるところ、当該メニューの実行が、股関節の疼痛、右下肢の浮腫等の 症状を引き起こした可能性が否定できず、当該運動は原告に過度の肉体的負担を与えるものであったといえる。そして、上記a(a)のとおり、B中隊長は、原告が行うべき体力錬成の具体的内容まで指示しておらず、実際に行われた体力錬成のメニューは原告が自ら考案したものであるものの、原告が前記認定事実のとおり障害を負っていた上、医師から体 力検定や格闘訓練への参加は困難である旨の忠告があり、B中隊長もこれを認識していたこと(前記認定事実⑵サ)からすると、B中隊長は、いかなる限度の運動であれば許されるかについて、原告を通じて又は自ら担当医に確認するなどして、過度の運動により原告の健康が損なわれることのないよう配慮すべき安全配慮義務を負っていたものと認める のが相当である。 しかしながら、B中隊長は、かかる義務を怠り、漫然と原告に対して体力錬成を指示し、原告による体力錬成メニューについても何ら具体的な指導や確認をすることなくその実行を指示し、原告に前記肉体的負担を与えたものである。そうすると、B中隊長による前記指示は、前記安 全配慮義務に違反するものであったと認められる。 (カ) 本件パワハラ行為⑧(ライターで髪を焼いたこと)について原告の前記主張に沿う原告の陳述書及び供述が存在するが(甲22・9、13頁、原告本人・30~32頁)、これを裏付ける的確な証拠は (カ) 本件パワハラ行為⑧(ライターで髪を焼いたこと)について原告の前記主張に沿う原告の陳述書及び供述が存在するが(甲22・9、13頁、原告本人・30~32頁)、これを裏付ける的確な証拠はなく、原告主張の事実を認めることができない。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (キ) 本件パワハラ行為⑨(赤ペンによる嫌がらせ)についてa 証拠(甲9、22)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (a) 原告は、平成28年3月頃、当時本部管理中隊の偵察小隊長であったKに対し、本件生活隊舎5階での生活よりも本件マンションでの生 活の方がよい旨を告げたところ、Kは、原告に対し、本件マンションで暮らすことの利点と本件生活隊舎で暮らすことの問題点を紙に書いて提出するよう指示した。 原告は、本件マンションで暮らすことの利点等を6点記載した「マンションでの生活について」と題する書面(甲9の1。以下「書面A」 という。)及び本件生活隊舎で暮らすことの問題点等を11点記載した「生活隊舎(5階)での生活の問題点」と題する書面(甲9の2。 以下「書面B」という。)を作成し、Kに提出したところ、Kは、原告の記載のほぼ全てに赤字でコメントを付してこれを原告に返却した。 (b) 書面Aにおける、原告の記載事項の要点は以下のとおりであり、K のコメントはその後の下線部記載のとおり(ただし、誤記等は訂正した。)であった。 ①ゴミの問題の解決(生活ゴミ収集日に出せる)ゴミの量が多くて出すのに負担がかかるのでは?手に持っての移動は不安定なんでしょ? ②家に何かあってもすぐに対応できない。いても対応できるの? ③子供たちを自由に部屋に泊まらせられる。平日に泊りにくるの?外 すのに負担がかかるのでは?手に持っての移動は不安定なんでしょ? ②家に何かあってもすぐに対応できない。いても対応できるの? ③子供たちを自由に部屋に泊まらせられる。平日に泊りにくるの?外出はフリーでしょ? ④風呂に入る事が出来る。(バリアフリー化されている)⑤マンション内にエレベーターがあり部屋までの移動が容易である。 (2階)エレベーターから部屋までの距離は?バス停等までの移動距 離は?総合的に営内とかわらないのでは⑥マンションから役所の出張所が比較的近くにある。(駅前、B-1等)近くにあって何ができるの? (c) 書面Bにおける、原告の記載事項の要点は以下のとおりであり、Kのコメントはその後の下線部記載のとおりであった。 ①5階までの階段(64段)を昇降しなければならない。1日最低1回の往復休日2回これによってどんな問題があるの? ②階段の昇降にともない腰の装具に負担がかかる。上記の理由じゃないのどんな風に負担になってどのような支障がでるの? ③夜中に2~3数回トイレに起きる(マンションの生活では0~1回 程度)寝ぼけている為足取りが不安定で歩行距離が長くの行来で体の眠気が覚めてしまい眠れなくなる。なんで2~3回も起きるの?マンションと何が違うの? ④駐屯地浴場に浴室用のバリアフリー設備が無いため風呂に行けずにシャワーのみを使用しての生活を実施冬はシャワールームから 部屋まで廊下を歩くので体が冷めてしまう。(椅子がないためズボンを穿けずに軽装(短パン)で移動しなければならない。)中隊からパイプ椅子をもって行けば!!ズボンがはけないなら上着を着れば良いんじゃない? ⑤部屋から距離のある場所に、キッチン、便所、シャワー、洗濯室が あり歩行しなければ手 ばならない。)中隊からパイプ椅子をもって行けば!!ズボンがはけないなら上着を着れば良いんじゃない? ⑤部屋から距離のある場所に、キッチン、便所、シャワー、洗濯室が あり歩行しなければ手に物を持っての移動は不安定で不便である。マンションと営内とでどれほど距離の差があんの? ⑥廊下にワックスがかけてあると滑りやすくバランスをくずして転倒する。月に何回転倒したことあんの?で、その後どうなったの? ⑦普段の眠りが浅い住人のいびき等がうるさくよく眠れない。部屋 割の変更を要望したの? ⑧営内での生活を始めてから数回の入院をする。営内になってからいつといつ入院したの?何が原因で入院することになったの? ⑨車両等を使用できないので足に負担むくみ等ができる。運転できないからしかたないじゃん!! ⑩暖房が効かないので部屋が寒い。服装をかんがえれば対処可能で は?他の営内者も同じなのでは? ⑪網戸がないので夏は部屋の窓を開けられない。他の営内者はどうしてんの? b 上記aの認定事実によれば、Kは、当時、原告の上級者として原告の服務指導をする立場にあったと認められるところ、Kによる書面A及び書 面Bの作成指示及びこれに対するコメントの付記は、Kが、居住場所の待遇に関して不満を有する原告に対し、上記服務指導の一環として、その作成を求めたものであったと認めるのが相当である。 しかしながら、前記アで認定判断したとおり、原告は、平成28年3月当時、営舎外居住許可を取り消されて営内で生活しており、D中隊長の下 で再び営舎外居住許可が認められるか否かも明らかでない状況にあったものである。それにもかかわらず、Kにおいて、当時、原告に対し、服務指導として書面A及び書面Bを作成させる必要があったか否 下 で再び営舎外居住許可が認められるか否かも明らかでない状況にあったものである。それにもかかわらず、Kにおいて、当時、原告に対し、服務指導として書面A及び書面Bを作成させる必要があったか否かは定かではない。また、仮に服務指導上の必要があったとしても、Kは、書面A及び書面Bにおいて、原告の挙げた理由について逐一反論し、これを否定し ているところ、その文面に照らせば、Kは、原告に対し、現状の営舎での生活を受け入れるよう説得する観点で同書面を作成したものと認められる。そして、原告に対して営舎外居住を認めず、本件生活隊舎5階に居住させること自体が安全配慮義務に違反するものであった状況下で、原告に対し、現状の営舎での生活を受け入れるよう説得するため、書面A及び 書面Bを作成させた上でこれにコメントする行為は、服務指導としての 必要性も相当性も認め難いものであるといわざるを得ない。 以上の事情を総合考慮すると、Kによる書面A及び書面Bの作成指示及びこれに対するコメント行為は、Kの原告に対する指導監督関係を前提に、必要かつ相当な限度を超えた服務指導であったと認めるのが相当である。 そして、当時Kの上司であったD中隊長は、自ら書面A及び書面Bの作成を指示していなかったとしても、原告の上位者であるKに対し、日頃から原告の服務指導をするよう促しており、実際にKが原告の服務指導に当たっていることを認識していたこと(証人D・5頁、20~21頁等)などからすれば、D中隊長において、Kがその服務指導に際して行き過ぎ た言動をして原告に過度の心理的負荷等を与えることのないよう配慮すべき義務があったというべきところ、D中隊長はその義務を怠り、Kによる上記服務指導が行われた結果、原告に精神的苦痛を与えたと認められ、この をして原告に過度の心理的負荷等を与えることのないよう配慮すべき義務があったというべきところ、D中隊長はその義務を怠り、Kによる上記服務指導が行われた結果、原告に精神的苦痛を与えたと認められ、この点について被告には安全配慮義務違反が認められる。 (ク) 本件パワハラ行為⑩(自宅の捜索とプライバシー侵害)について a 証拠(甲22、乙29、証人D、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、戦車教導隊においては、平成28年4月、伊勢志摩サミットが開催されることを踏まえ、警備上の必要性から隊員が規定の数の制服を保有しているかを確認することになったところ、原告の制服のズボンが1枚不足していることが発覚し、これがc駐屯地内からは見つからなかった こと、D中隊長は、原告並びに補助者としてK及びもう1名の隊員に対し、本件マンション内に制服がないか探しに行くよう命じたこと、これを受けたKは、本件マンションにおいて、原告の制服を探すとともに、部屋の内部や原告の私物(アダルトグッズ等)の写真をスマートフォンで撮影し、その画像データを、D中隊長を含む隊員に対して送信したこ とが認められる。 b 上記認定の探索に至る経緯、及び自衛隊の制服が外部に流出すると自衛官へのなりすましなど第三者に悪用されるおそれがあることに照らせば、当時、原告の制服を探索すべき必要性があったこと自体は否定できず、また、原告以外の隊員が本件マンションに入室することについて、原告が特段の異議を述べたことが窺われないことも踏まえると、D中隊 長が制服の探索にKを向かわせ、原告も現場にいる中でKがこれを実行したこと自体は、服務指導の一環として許されないとまではいえず、この点について被告に安全配慮義務違反があるとは認められない。 しかしながら、上記認定事 を向かわせ、原告も現場にいる中でKがこれを実行したこと自体は、服務指導の一環として許されないとまではいえず、この点について被告に安全配慮義務違反があるとは認められない。 しかしながら、上記認定事実によれば、Kは、アダルトグッズ等を含む原告の私物を写真撮影し、当該画像データをD中隊長のみならず他の 隊員に対しても送信したものであって、当該行為は、服務指導としての必要性、相当性を超えたものと評価せざるを得ない。そうすると、Kによる原告の私物の写真撮影及びD中隊長を含む他の隊員に対する送信行為は、Kの原告に対する指導監督関係を前提に、必要かつ相当な限度を超えた服務指導であったと認めるのが相当である。 そして、当時Kの上司であったD中隊長は、Kに対して原告の私物の写真撮影及びその画像の送信までは指示していなかったとしても、前記(キ)のとおり、D中隊長において、Kがその服務指導に際して行き過ぎた言動をして原告に過度の心理的負荷等を与えることのないよう配慮すべき義務があったというべきところ、D中隊長は、その義務を怠り、 特段の注意を払うことなく漫然とKを探索のため本件マンションに向かわせた結果、Kによる上記行為が行われ、これによって原告に精神的苦痛を与えたと認められ、この点について被告には安全配慮義務違反が認められる。 (ケ) 本件パワハラ行為⑪(自宅に帰らせない嫌がらせ)について 陸上自衛隊服務細則37条1項は「自衛官は、常に身辺を整理し、命令 により直ちにいかなる行動にも応じうる物心両面の準備を整えておかなければならない。」と定め、同細則64条1項は「許可権者は、隊務に支障のない限り、緊急連絡時の操縦手及び営内監視要員等を除き、営内に居住する陸曹及び陸士の外出を許可することができる。」と定めて かなければならない。」と定め、同細則64条1項は「許可権者は、隊務に支障のない限り、緊急連絡時の操縦手及び営内監視要員等を除き、営内に居住する陸曹及び陸士の外出を許可することができる。」と定めているところ、原告は、当時、本部管理中隊に所属していたから、原告の外出許可申請に 係る許可権者は、D中隊長であった(同細則60条参照)。 そして、証拠(乙24の1・46頁、64~65頁、28、証人D)及び弁論の全趣旨によれば、D中隊長は、平成28年5月11日頃、原告の居室が整理整頓されておらず、また、前月には原告が制服を紛失したものと考えていたことから、生活環境を整える必要があるとの理由で、原告に 対して外出を許可しなかったことが認められる。そして、かかる経緯及び陸上自衛隊服務細則の上記規律に照らせば、D中隊長による外出不許可は、原告に対する正当な服務指導の範疇に含まれるものということができる。 したがって、この点について被告の安全配慮義務違反は認められない。 (コ) 本件パワハラ行為⑫(個人資産に関する不当な干渉)について aD中隊長及びKが、平成28年5月12日頃、原告に対して金銭管理指導を行ったこと自体は当事者間に争いがなく(なお、Lが、原告に対して金銭管理指導を行ったことについては、これを認めるに足りる証拠はない。)、証拠(甲22、乙24の1・4頁、34頁、36~37頁、乙24の19・1枚目最終行、28、証人D)及び弁論の全趣旨によれ ば、原告は、平成13年1月、何かの手違いで住宅ローン(50万円)が口座から引き落とされなかった際、ボーナスを冬の休暇でほとんど費消していたため、定期貯金の一部を解約したこと、平成21年10月頃、金銭トラブルに巻き込まれたこと、平成22年5月、所有している2台の携帯電話を き落とされなかった際、ボーナスを冬の休暇でほとんど費消していたため、定期貯金の一部を解約したこと、平成21年10月頃、金銭トラブルに巻き込まれたこと、平成22年5月、所有している2台の携帯電話を1台に減らすよう指導されたにもかかわらず、その2か月 後に新しい携帯電話を購入したことなどがあり、原告には金銭管理が不 十分な傾向が見られたため、D隊長及びKは、平成28年5月12日頃、原告に対し、月の貯金額を指導したり、定期預金口座を開設して一定額を入金するよう指導したりしたことが認められる。 b そして、D中隊長及びKには、原告に対する服務指導の権限があったところ、自衛隊法及び自衛隊員倫理法等の趣旨も踏まえると、原告の上 記状況を改善するために、当時、原告に対して金銭管理指導の必要があったこと自体は否定できず、その指導内容に照らしても、D中隊長及びKによる金銭管理指導が、必要かつ相当な服務指導の域を超えたものであったとまでは認められない。 c 以上によれば、この点について被告の安全配慮義務違反は認められな い。 (サ) 本件パワハラ行為⑬(ペナルティ文書の強要)について原告は、D中隊長が、平成29年10月27日、原告に対し、原告の体重増加を理由に、ペナルティとして自衛隊法52条の文言を繰り返し1万字に至るまで記載する内容の反省文書を書くよう命じた旨を主張し、これ に沿う原告の陳述書及び供述が存在する(甲22・24~25頁、原告本人・21~23頁、42~43頁)。 そこで検討するに、この点に関し、原告が上記内容の「服務の本旨」と題する反省文書を作成したこと(甲10)、及び原告がキャリアコンサルタント講座を受けるため、同日午後5時30分の外出許可を申請していた ところ、原告が実際に外出した 上記内容の「服務の本旨」と題する反省文書を作成したこと(甲10)、及び原告がキャリアコンサルタント講座を受けるため、同日午後5時30分の外出許可を申請していた ところ、原告が実際に外出したのはその翌日である同月28日の午前3時40分であることが認められる(甲10、17、弁論の全趣旨)。そして、原告の供述内容は、これらの認定事実と整合するものであり、上記内容の文書を当時又は後日において自発的に作成したとは考え難いこと、原告が外出許可を申請した約10時間後の深夜に外出しているのは明らかに不 自然であることに照らすと、原告の陳述書及び供述は信用することができ、 原告主張の上記事実が認められるというべきである。これに対し、反対趣旨のD中隊長の陳述書(乙29)及び同人の証言はいずれも採用することができない。 そして、上記認定事実によれば、D中隊長による上記指導は、D中隊長の原告に対する指揮命令関係を前提に、必要かつ相当な限度を超えた服務 指導であったと認めるのが相当であり、これによって原告に過度の心身の負担を与え、精神的苦痛を被らせたと認められ、この点について被告には安全配慮義務違反が認められる。 3 争点4(消滅時効の成否(国賠法に基づく請求について))について⑴ 国賠法1条1項に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知っ た時から3年間行使しない時は時効によって消滅するところ(同法4条、改正前民法724条前段)、原告の主張する本件パワハラ行為①のうち、B中隊長が原告の営舎外居住許可を取り消した(取り消すべき旨の意見具申をした)こと(本件取消しに係る行為)、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を本件生活隊舎5階に居住させ、又は居住させ続けたこと、本件パワハラ行為②のう ち、B中隊長が 消すべき旨の意見具申をした)こと(本件取消しに係る行為)、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を本件生活隊舎5階に居住させ、又は居住させ続けたこと、本件パワハラ行為②のう ち、B中隊長が原告に対し私有車の保有及び使用を今後認めない旨を伝えたこと、C中隊長及びD中隊長が原告に対し私有車の保有及び使用を許可しなかったこと、並びに本件パワハラ行為③~⑫(以下「本件3年以上前の行為」と総称する。)は、いずれも平成29年10月16日より前の行為であり、本件訴訟が提起された令和2年10月16日時点において上記消滅時効期間の3年は 経過している。そして、被告は、前記平成29年10月16日より前の行為について、消滅時効を援用する旨の意思表示をしたから(前記前提事実⑹)、上記行為を請求原因とする本訴請求債権のうち国賠法1条1項に基づくものは、消滅時効が完成した。 ⑵ これに対し、原告は、本件パワハラ行為は中隊長を始めとする自衛隊員が原 告を依願退職させるために行った継続的な不法行為であり、また、原告が自衛 隊に在職中は被告に対して損害賠償請求をすることが事実上可能でなかったとして、本件訴求債権のうち国賠法1条1項に基づくものの消滅時効の起算点は原告が自衛隊を退職した令和2年5月12日であると主張するほか、被告による消滅時効の援用が権利の濫用であると主張する。 しかしながら、本件観察記録(乙24の1)その他本件全証拠を精査しても、 中隊長を含む自衛隊員において、原告を依願退職させるための継続的な不法行為があったとまで認めることは困難である。また、原告が自衛隊に在職していた間に、国に対して損害賠償を求めることが事実上可能でなかったということはできない。さらに、前記1及び2の認定判断に照らせば、被告による時効援用の意思 とは困難である。また、原告が自衛隊に在職していた間に、国に対して損害賠償を求めることが事実上可能でなかったということはできない。さらに、前記1及び2の認定判断に照らせば、被告による時効援用の意思表示が権利の濫用として許されないものとまでは認められない。 以上によれば、原告の上記主張は、採用することができない。 4 争点1(パワハラに係る国賠法上の違法性の有無)についてそこで、以下においては、本件パワハラ行為のうち上記時効によって消滅しなかった本訴請求債権部分の請求原因について、国賠法上の違法性の有無を検討する。 ⑴ 本件パワハラ行為①のうち、営舎外居住許可をしなかったことについて前記2⑶ア(ウ)で説示したとおり、原告は、本件取消しの後、各中隊長に対し、営舎外居住許可を申請したことはなかったから、各中隊長が、各在任期間中に原告に関して営舎外居住許可をすべき旨の意見具申をしなかったとしても、この点について国賠法上の違法性は認められない。 ⑵ 本件パワハラ行為①のうち、E中隊長が原告を本件e隊舎3階に居住させたことについて前記2⑶ア(エ)で説示したとおり、E中隊長は、原告の健康及び障害にも配慮して、原告を本件e隊舎3階に居住させたといえるから、この点について国賠法上の違法性は認められない。 ⑶ 本件パワハラ行為②のうち、E中隊長による私有車の保有及び使用の許可に 係る経緯について前記2⑶イ(エ)で説示したとおり、原告が運転適性診断で問題がない旨の判定を受けたことに加えて、E中隊長が、私有車の保有及び使用を最終的に許可するに当たって原告の実際の運転を見たい旨を述べたことが、服務に関する指導として必要かつ相当な範囲を超えたハラスメントであったということはで きないし 隊長が、私有車の保有及び使用を最終的に許可するに当たって原告の実際の運転を見たい旨を述べたことが、服務に関する指導として必要かつ相当な範囲を超えたハラスメントであったということはで きないし、E中隊長が原告によるレンタカー使用を許さなかった事実までは証拠上認められない。したがって、この点について国賠法上の違法性は認められない。 ⑷ 本件パワハラ行為⑬(ペナルティ文書の強要)について前記2⑶ウ(サ)で説示したとおり、本件パワハラ行為⑬、すなわちD中隊長 が、原告に対し、自衛隊法52条(服務の本旨)の文言を1万字に至るまで記載する内容の反省文書の提出を命じたことが認められるところ、これは必要かつ相当な限度を超えた服務指導であったと認めるのが相当であるから、この点については国賠法上の違法性が認められる。 5 争点3(原告に生じた損害)について 前記争点1ないし4の認定判断によれば、本件パワハラ行為①のうち、B中隊長による本件取消しに係る行為、B中隊長、C中隊長及びD中隊長が、原告を本件生活隊舎5階に居住させ、又は居住させ続けたこと、本件パワハラ行為②のうち、B中隊長が原告に対し私有車の保有及び使用を今後認めない旨を伝えたこと、C中隊長及びD中隊長が原告に対し私有車の保有及び使用を許可しなかったこ と、並びに本件パワハラ行為⑦(体力錬成の強要)、⑨(赤ペンによる嫌がらせ)、⑩(自宅の捜索とプライバシー侵害)及び⑬(ペナルティ文書の強要)について、前記認定の範囲で被告の安全配慮義務違反が認められ、本件パワハラ行為⑬については国賠法上の違法性も認められる。 そして、上記被告の安全配慮義務違反及び国賠法上の違法行為により、原告は、 障害を抱えていながら、長期間にわたり、日常的に5階までの階段の昇降を余儀 については国賠法上の違法性も認められる。 そして、上記被告の安全配慮義務違反及び国賠法上の違法行為により、原告は、 障害を抱えていながら、長期間にわたり、日常的に5階までの階段の昇降を余儀 なくされ、また、私有車の保有及び使用が認められず、車両での移動ができないことにより、心身の健康を損ないかねない肉体的・精神的負担を強いられたほか、必要かつ相当な域を超えた服務指導により過度の心身の負担と精神的苦痛を受けたことが認められる。その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、150万円(うち30万円は国賠法1条1項 に基づく請求に係る損害)とするのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、主文第1項の限度で理由があるからその限りで認容し、その余は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第17部 裁判長裁判官池田知子 裁判官古市文孝 裁判官丹羽健悟 (別紙)関係法令等第1 自衛隊法(自衛隊の任務)第3条自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防 衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。 2以下(省略)(服務の本旨)第52条隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、 厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものと を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする。 (指定場所に居住する義務) 第55条自衛官は、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住しなければならない。 (委任規定)第65条本節又は自衛隊員倫理法に定めるもののほか、隊員の服務に関し必要な事項は、防衛省令で定める。 第2 自衛隊法施行規則(自衛官の営舎内居住義務)第51条陸曹長、海曹長又は空曹長以下の自衛官(次条の規定により船舶内に居住すべき者を除く。)は、防衛大臣の指定する集団的居住場所(以下「営舎」とい う。)に居住しなければならない。ただし、防衛大臣の定めるところに従い、防衛 大臣の指定する者の許可を受けた者は、営舎外に居住することができる。 (営舎内居住命令)第55条防衛大臣又はその指定する者は、幹部自衛官、准陸尉、准海尉及び准空尉たる自衛官並びに許可を得て営舎外に居住している自衛官に対して、勤務のため特に必要があるときは、いつでも営舎内に居住を命ずることができる。 第3 自衛官の居住場所に関する訓令(乙7。令和2年6月30日防衛省訓令第39号による改正前のもの)(営舎内居住)第1条自衛隊法施行規則(以下「規則」という。)第51条又は第52条第2項の 規定により営舎内に居住すべきものとされている自衛官は、それぞれの勤務する防衛省本省の内部部局、施設等機関、幕僚監部、統合幕僚学校、自衛隊の部隊若しくは機関、情報本部、防衛監察本部若しくは地方防衛局又は防衛装備庁(以下「部隊等」という。)のために設けられた営舎に居住するものと 本省の内部部局、施設等機関、幕僚監部、統合幕僚学校、自衛隊の部隊若しくは機関、情報本部、防衛監察本部若しくは地方防衛局又は防衛装備庁(以下「部隊等」という。)のために設けられた営舎に居住するものとする。 2(省略) (営舎外居住の許可)第2条前条第1項に規定する自衛官のうち、次の各号に掲げる者は、順序を経て、別に指定する部隊等の長(以下「部隊等の長」という。)に対し、営舎外居住許可申請書(別紙様式第1)を提出して、営舎外居住の許可を申請することができる。 ⑴ 陸曹長、海曹長若しくは空曹長又は1等陸曹、1等海曹若しくは1等空曹で ある自衛官⑵ 2等陸曹、2等海曹又は2等空曹である自衛官で年齢30歳以上の者⑶ 前2号に掲げる自衛官以外の者で親族又は婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を扶養し又は保護するため営舎外に居住しようとする者 2(省略) 3 部隊等の長は、第1項の申請があつた場合において、隊務運営上支障がなく、かつ、その居住しようとする場所が第6条に該当しないと認めるときは、営舎外居住を許可することができる。 (営舎外居住許可の取消)第5条第2条第3項又は第4条第2項により営舎外居住を許可されている自衛 官は、営舎外居住を許可された理由となつた事情がなくなつたときは、直ちにその旨を部隊等の長に報告しなければならない。 2 部隊等の長は、前項の報告を受けた場合又は営舎外居住を許可した理由がなくなつたと認める場合には、当該営舎外居住の許可を取り消すものとする。 (営舎外居住者の居住場所) 第6条営舎外に居住する自衛官(規則第52条第1項に規定する海上自衛官を除く。)の居住場所は、勤務する場所から著しく遠距離であるか又は勤務する場所との交 。 (営舎外居住者の居住場所) 第6条営舎外に居住する自衛官(規則第52条第1項に規定する海上自衛官を除く。)の居住場所は、勤務する場所から著しく遠距離であるか又は勤務する場所との交通が著しく不便である場所であつてはならない。 (営舎内居住命令)第8条規則第55条に規定する防衛大臣の指定する者は、当該自衛官の部隊等の 長とする。 第4 自衛隊員倫理法(乙10参照)(目的)第1条この法律は、自衛隊員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負 託された公務であることにかんがみ、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。 第5条内閣は、第三条に掲げる倫理原則を踏まえ、自衛隊員の職務に係る倫理の 保持を図るために必要な事項に関する政令(以下「自衛隊員倫理規程」という。) を、国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)第五条第一項に規定する国家公務員倫理規程に準じて定めるものとする。この場合において、自衛隊員倫理規程には、自衛隊員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等自衛隊員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し自衛隊員の遵守すべき事項が含まれていなければな らない。 2以下(省略) 第5 自衛隊員倫理規程(乙11参照)(倫理行動規準) 第1条自衛隊員(自衛隊員倫理法(以下「法」という。)第二条第一項に規定する自衛隊員をいう。以下同じ。)は、自衛隊員としての誇りを持ち、かつ、その使命を自覚し、第一号から第三号までに掲げる法第三条の倫 条自衛隊員(自衛隊員倫理法(以下「法」という。)第二条第一項に規定する自衛隊員をいう。以下同じ。)は、自衛隊員としての誇りを持ち、かつ、その使命を自覚し、第一号から第三号までに掲げる法第三条の倫理原則とともに第四号及び第五号に掲げる事項をその職務に係る倫理の保持を図るために遵守すべき規準として、行動しなければならない。 一~四(省略)五自衛隊員は、職務に従事していない場合においても、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならないこと。 第6 陸上自衛隊服務規則(乙13) (総則)第1条陸上自衛隊(自衛隊情報保全隊及び陸上幕僚長の監督を受ける共同の機関を含む。第3条において同じ。)における営内服務その他自衛官の服務に関しては、別に定めるもののほか、この訓令の定めるところによるものとする。 (用語の意義) 第2条この訓令において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定める ところによる。 (1) 「営内服務」とは、駐屯地内(以下「営内」という。)における自衛官の勤務及び居住に関する服務をいう。 (2) 「営内生活」とは、営内における居住をいう。 (3)~(4)(省略) (5) 「中隊(長)等」とは、中隊(長)及びこれに準ずる部隊(長)をいう。 (6) 「部隊(長)」とは、前3号に掲げる部隊(長)をいう。 (7)(省略)(部隊長)第9条部隊長は、常に部下の服務を指導監督し、団結を強固にし、規律厳正、か つ、士気おう盛な部隊を育成し、精到な教育訓練と相まつて、事にあたつては機を失することなく全能力を発揮することができるようにしなければならない。 (中隊長等)第11条中隊長等は、営内服務にあたつては、部下と真に一体となつて 精到な教育訓練と相まつて、事にあたつては機を失することなく全能力を発揮することができるようにしなければならない。 (中隊長等)第11条中隊長等は、営内服務にあたつては、部下と真に一体となつて率先垂範に努め、隊員相互の親和を助長し、もつて中隊長等を核心として強固に団結した 中隊等をつくり上げなければならない。 2(省略)(部隊長)第71条部隊長は、自衛官の健康の増進及び体力の向上を図るため、教育訓練その他の隊務の計画及び実施にあたつては、常に健康管理に留意するとともに、営 内生活における健康管理に関する計画を樹立し、その実施を指導監督しなければならない。 2(省略) 第7 陸上自衛隊服務細則(乙14) (目的) 第1条この細則は、陸上自衛隊服務規則(昭和34年陸上自衛隊訓令第38号。 以下「規則」という。)第82条の規定に基づき、陸上自衛隊における服務に関し細部を規定することを目的とする。 (身辺の整理)第37条自衛官は、常に身辺を整理し、命令により直ちにいかなる行動にも応じ 得る物心両面の準備を整えておかなければならない。 2(省略)(官物の持出)第44条官物は、部隊長又はその指定する者の承認を受けた者でなければ営外に持ち出してはならない。ただし、規定に基づき装着する物品、行動、教育訓練、 作業その他駐屯地司令又は部隊長の命ずる場合に持ち出す物品および幹部、準陸尉、営外に居住する陸曹及び陸士が携帯する物品については、この限りでない。 2以下(省略)(外出許可権者)第60条自衛官の外出許可権者(以下「許可権者」という。)は、別紙第4の表に 示す区分に従い、左欄に掲げる自衛官については右欄に掲げる部隊等の長とする。 (外出の許可)第64 可権者)第60条自衛官の外出許可権者(以下「許可権者」という。)は、別紙第4の表に 示す区分に従い、左欄に掲げる自衛官については右欄に掲げる部隊等の長とする。 (外出の許可)第64条許可権者は、隊務に支障のない限り、緊急連絡時の操縦手及び営内監視要員等を除き、営内に居住する陸曹及び陸士の外出を許可することができる。 2以下(省略) (営内生活)第78条営内生活は、日常の苛烈な訓練と相まって、自衛官の使命達成に寄与するものであるから、その指導に当たっては、勤務に伴う疲労を回復し、新鋭の気を養って次の勤務にますます精励することのできるような家庭的環境を築くことに努めなければならない。 2(省略) 第8 c駐屯地服務規則(乙15、21)(目的)第1条この達は、陸上自衛隊服務規則(昭和34年陸上自衛隊訓令第38号。以下「規則」という。)及び陸上自衛隊服務細則(陸上自衛隊達第24-5号。以下「細則」という。)に定めるもののほかc駐屯地の服務に関し、必要な事項を定め ることを目的とする。 (私有車による通勤)第36条営外者で通勤に私有車を使用する場合は、様式別紙第21により営門の出入り及び駐車場の使用について駐屯地司令(総務部長気付)に申請するものとする。 営内者で私有車を取得・使用する場合は中隊長の許可を受けた後、様式別紙第21により駐屯地司令(総務部長気付)に申請するものとする。 第3段落以下(省略) 第9 私有車保有等許可基準(甲6、乙22、23。なお、以下は甲6に準拠する。) 1項目的戦車教導隊所属隊員の私有車両(原動機付自転車以上のものの総称で、四輪車及び二輪車に区分し、二輪車は原動機付自転車、サイドカー付も含む。)の取得及 以下は甲6に準拠する。) 1項目的戦車教導隊所属隊員の私有車両(原動機付自転車以上のものの総称で、四輪車及び二輪車に区分し、二輪車は原動機付自転車、サイドカー付も含む。)の取得及び使用に関する各中隊長の行う許認可及び指導統制の準拠とする。 2項許認可、指導統制上の留意事項 ⑴ 隊員の私有車取得及び使用に関する指導統制は、本基準を厳正かつ公平に準用すること。 ⑵ 各中隊長は保有車〔ママ〕全員にあらゆる機会をとらえ確実な保管、安全運転、事故等発生時の処置について教育指導に万全を期すものとする。 3項私有車保有資格基準 私有車両保有者の資格基準は、次の各号を満たしているものとする。 ⑴ 四輪車・二輪車共通ア保有する車種に応ずる運転免許を保有していること。 イ車両運転適性検査(KⅡ型)準適以上であること。 ウ陸士にあっては、1任期を継続した陸士であること。 エ常に50万円以上の貯金があること。 オ保有する車種に応じ、自賠責保険及び次の保険に加入していること。 (以下省略)4項~6項(省略)7項私有車の使用及び届け出義務⑴ 営内保有者は、使用の都度(駐屯地内除く。)中隊長に申請し、使用許可をう けるものとする。 ⑵以下(省略)8項(省略)9項保有資格の取消し保有者は、車両事故及び交通三悪に関する重大な違反により重処分以上の懲戒 処分を受けるなど、中隊長が保有を不適当と認めた場合は、許可・保有資格の取消しができる。 以上 以上

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