- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨原判決を取り消す。 (1)被控訴人は,控訴人に対し,平成15年2月28日付けをもってした平(2)成11年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という)のうち,所得金額6億1124万370。 7円,納付すべき法人税額△7309万7106円を超える部分及び過少申(「」。)。 告加算税の賦課決定処分以下本件賦課決定処分というを取り消す訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 (3) 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要 本件は,被控訴人が控訴人に対し,控訴人のシンガポール共和国(以下「シ」。)(。)ンガポールというにおける子会社であるP1PteLtdP1社が租税特別措置法(平成12年法律第97号による改正前のもの。以下「措置法」という)66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当し(中略)。 ,同条3項の「債券」に当たるとして,同条1項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を,控訴人の所得の金額の計算上,益金の額に算入して,本件更(「」。),正処分及び本件賦課決定処分以下本件各処分というをしたことからこれを不服とした控訴人が本件各処分の取消しを求めた事案である。 「関係法令「前提事実等「税額等に関する当事者の主張「争点」及」,」,」,び「争点に関する当事者の主張」は,当審における当事者の補充主張を次項に- 2 -付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決8頁8行目の「シンガポール政府」を「シ ける当事者の補充主張を次項に- 2 -付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決8頁8行目の「シンガポール政府」を「シンガポール共和国政府」と,同11頁17行目の「○○株式会社」を「○○株式会社」と改める。 当審における当事者の補充主張争点1及び3(措置法66条の6の適用の有無)について(1)(控訴人の補充主張)ア租税回避とは,一般的には「異常な法形式が用いられていること」を,要素とし,また,措置法66条の6のタックスヘイブン対策税制が規制対象とする租税回避とは「軽課税国(いわゆるタックスヘイブン)にある,子会社等で我が国株主により支配されているようなものに我が国株主が所得を留保し,我が国での税負担を不当に軽減すること」をいうから,これ,。 らの規範に該当しない事案には措置法66条の6を適用すべきではない(中略)シンガポール内国歳入庁からは,P1社がシンガポールの居住法人であることを示す証明書も発行されている。 したがって,本件には租税回避行為は存在しないから,租税回避行為を規制対象とする措置法66条の6の適用はないというべきである。 ,,イなお形式的には措置法66条の6の要件に当てはまる事案であっても海外子会社が独立した活動を行うことに合理性が認められ「租税回避行,為とは評価し難いような事情」が存在する場合には,タックスヘイブン対(),策税制を適用すべきではないとの立場原判決の立場に立ったとしてもP1社は,その設立当初から,シンガポールにおいて製薬事業を行っており,それで得た利益を原資としてシンガポールで資金運用事業を行うことには経済的合理性があり(中略)本件には,上記「租税回避行為とは評,」,。 価し難いような事情が存 において製薬事業を行っており,それで得た利益を原資としてシンガポールで資金運用事業を行うことには経済的合理性があり(中略)本件には,上記「租税回避行為とは評,」,。 価し難いような事情が存在し措置法66条の6を適用すべきではないウシンガポールにおける10%のタックスリベート(戻し減税)は,19- 3 -98年11月にその実施が発表され,翌年の賦課決定から実施されたものであって(中略)当時のシンガポールの法人税率は,26%であったか,ら(中略。したがって,本件には租税回避行為はなく,タックスヘイ,)ブン対策税制を適用すべきではない。 エタックスヘイブン対策税制は,特定外国子会社等の累積された未処分利益に対して課税する制度ではなく,特定外国子会社等の合算対象年度における単年度利益に調整を加えた課税対象留保金額を基として課税する制度である。 (中略)いずれも,P1社がタックスヘイブン対策税制の対象外であった1997年12月期までに稼得した利益であるから,タックスヘイブン対策税制の対象外となる利益である(P1社がタックスヘイブン対策税制の対象とされたのは,1998年12月期のみである。 。)したがって(中略)ことをとらえて,タックスヘイブン対策税制を適,用するのは失当である。 (被控訴人の補充主張),,ア措置法66条の6は租税回避行為の防止を目的とするものではあるがその適用上「租税回避行為」があることや税負担の「不当な軽減」を図,る目的があることを要件とはしていない。これは「租税回避行為」とい,う概念自体が法律要件となるようなものではなく,租税負担の「不当な軽減」を図る目的という要件も,あまりにも主観的かつ抽象的で,その認定,,も困難を極めることが予想され適正な執行が妨げられかねないことから同条3項に となるようなものではなく,租税負担の「不当な軽減」を図る目的という要件も,あまりにも主観的かつ抽象的で,その認定,,も困難を極めることが予想され適正な執行が妨げられかねないことから同条3項に適用除外要件を定め,特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え,かつ,その所在地国で事業活動を行うことにつき十分な経済的合理性がある場合を明確に規定することによって,その適用の範囲を上記立法目的に即したものにしようとしたものである。 したがって,措置法66条の6第1項の規定が適用されないのは,同条- 4 -3項に規定している適用除外要件を満たしているものに限られるのであって,控訴人が主張するように,条文上の根拠もなく,法の適用を制限しようとすることは許されない。すなわち,租税回避行為があることや税負担の不当な軽減を図る目的があることが同条の適用要件であるとする控訴人の主張は失当である。 イしたがって,タックスヘイブン対策税制に基づく課税処分が適法であるか否かの判断基準は,あくまでも措置法66条の6の適用要件を充足しているか否かに求めるべきであって,控訴人が主張するように「租税回避,行為とは評価し難いような事情」がある場合には,その適用を除外すべき(),()であると解すること原判決の立場は課税要件明確主義憲法84条に違反する。タックスヘイブン対策税制の適用除外要件は,措置法66条の6に類型化して規定されているのであって,それ以外の要件を付加することは許されない。 ウP1社は,措置法66条の6第3項の適用除外要件を満たしていない。 控訴人は,シンガポールで資金運用事業を行うことには経済的合理性があるし,P1社は独立の企業体としての実体を有していると主張するが,海外における資金運用事業については,本来的に,その場所で行うこ 。 控訴人は,シンガポールで資金運用事業を行うことには経済的合理性があるし,P1社は独立の企業体としての実体を有していると主張するが,海外における資金運用事業については,本来的に,その場所で行うことに経済的合理性が見出せないことから,措置法66条の6第3項は,タックスヘイブン対策税制の適用除外要件から資金運用事業を除外しているし,(中略)というために不可欠な前提を欠き,独立企業としての実体を有しているとはいえず,控訴人の上記主張は失当である。 エ措置法66条の6が租税回避行為を同条の適用要件としていないことについては,原審以来述べてきたところであるが,本件においては,控訴人の租税回避行為がなかったとはいえない。 (中略,シンガポールでは,タックスリベート制度に限らず,株式等),,の譲渡所得のキャピタルゲインは従前から非課税とされていたのであり- 5 -(中略)争点2(日星租税条約7条1項違反の有無)について(2)(控訴人の補充主張)国際条約たる日星租税条約の解釈は,専ら条約を規律する一般国際法であるウィーン条約によることになるが,これによると,日星租税条約7条1項の解釈においては,原則として,明文にない例外は認められない。また,条約の趣旨及び目的に照らして,明文にない例外が許容されるとしても,それは厳しく制限されなければならず,日星租税条約が二重課税の排除と脱税の防止を明示的な趣旨及び目的として規定している以上,租税回避行為に対して合理的な課税を行うことは,その許容される例外には当たらない。すなわち,租税回避行為に対して国内法の定めによって課税を行うためには,日星租税条約上に,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止の(。 ための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約平成8年条約第1号以下「日仏租税 の定めによって課税を行うためには,日星租税条約上に,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止の(。 ための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約平成8年条約第1号以下「日仏租税条約」という)の議定書17のような明確な授権規定が。 (b)必要であるが,日星租税条約には,そのような規定はない。したがって,措置法66条の6によってシンガポール法人であるP1社の利得を内国法人である控訴人の収益とみなして課税することは,それ自体が国内法として優位に執行されるところの日星租税条約7条1項に抵触する。 (被控訴人の補充主張)日星租税条約7条1項は,二重課税防止条約において一般に認められた原則を示したものであり,これによると,我が国のタックスヘイブン対策税制は,法的手法としては,外国の子会社に留保している利益を,持分に応じて親会社の株主に配当されたものとみなして,自国企業の所得に合算し,自国企業に課税する制度(擬制配当課税制度)であると解すべきであるから,本件更正処分は,シンガポール法人の所得に対して課税しておらず,何ら日星租税条約に抵触するものではない。 - 6 -争点4(P1社の未処分所得の金額の算出方法)について(3)アP1社の未処分所得の金額は,シンガポールドル建てで算出すべきか,又はポンド建てで算出すべきか。 (控訴人の補充主張)措置法66条の6は,我が国のタックスヘイブン対策税制上ふさわしい未処分所得の金額を計算することを目的としているから,その計算の基礎となる「決算」は,海外子会社の所在地国の会社法等の規制に拘束されると解する必要はないし,同条は,我が国の親会社が子会社を通さないで直接国際取引をした場合とほぼ等しい税負担を課すことによって,租税回避を防止することを趣旨目的としているにとどまり,それを超えて れると解する必要はないし,同条は,我が国の親会社が子会社を通さないで直接国際取引をした場合とほぼ等しい税負担を課すことによって,租税回避を防止することを趣旨目的としているにとどまり,それを超えて,重い税負担を親会社に課すことを趣旨目的とするものではないと解される。そして(中略)ポンド建ての決算に基づいてP1社の未処分所得の金額を算,出することが上記措置法66条の6の趣旨目的に照らしても正当である。 (被控訴人の補充主張)措置法66条の6第2項2号には,控訴人が主張する「我が国のタックスヘイブン対策税制上ふさわしい未処分所得の金額を計算する」などといった主観的・抽象的な文言はなく,未処分所得の金額は,同条の規定に従って計算されるべきである。P1社の1998年12月期の決算については,RCBの承認がないから,同期の未処分所得の金額の算出の基となる決算は,シンガポール会社法に基づく決算,すなわち,シンガポールドル建ての決算によるべきである。 イ(中略)第3当裁判所の判断 争点1(本件事案に措置法66条の6の適用があるか)について。 (中略)そこには租税回避行為は存在しないから,本件事案に租税回避(1)。」,行為を規制対象とする措置法66条の6を適用する余地はないと主張し- 7 -その適用要件とすべき「租税回避行為」の具体的内容について,措置法66条の6がタックスヘイブン対策税制であることを根拠として,その趣旨目的から「軽課税国(いわゆるタックスヘイブン)にある子会社等で我が国株,主により支配されているようなものに我が国株主が所得を留保し,我が国での税負担を不当に軽減すること」を目的とする租税回避行為があることと,その租税回避行為に「異常な法形式が用いられていること」が必要であると主張するとともに,これらを措置法6 が所得を留保し,我が国での税負担を不当に軽減すること」を目的とする租税回避行為があることと,その租税回避行為に「異常な法形式が用いられていること」が必要であると主張するとともに,これらを措置法66条の6の適用要件と解さないとすると,同条は日星租税条約7条1項に違反することになるとして,日星租税条約との関係を上記解釈の重要な根拠の一つとして主張しているものと解される。 これに対し,被控訴人は,措置法66条の6は租税回避行為の防止を目的とするものではあるが,その適用上「租税回避行為」があることや税負担,の「不当な軽減」を図る目的があることを要件とはしていないと主張するので,まず,この点について検討する。 措置法66条の6は,いわゆる国際的な租税回避行為を防止するためのタックスヘイブン対策税制として立法されたものであって(甲73の3,185,乙37,1項においてタックスヘイブン対策税制が適用される特定外)国会社等を定義した上で,3項において適用除外要件を定め,特定外国子会社等(債券の保有等を主たる事業とするものを除く)が独立企業としての。 実体を備え,かつ,その所在地国で事業活動を行うことについて十分な経済的合理性がある場合には,1項の規定を適用しないとして,課税要件を明確かつ具体的に定め,その適用範囲を国際的な租税回避の事案に限定するとと,,,もに法の適正な執行が担保されるようにした規定であると解され同条がそれ以上に「税負担の不当な軽減を図る目的により,異常な法形式を用い,た租税回避行為が存在すること」といった要件まで要求していないことは,条文の文言上,明らかである。 - 8 -また,租税法規は,侵害規範であり,法的安定性が強く要請されることから,その解釈は,原則として文理解釈によるべきであって,文理解釈によっては規定の ことは,条文の文言上,明らかである。 - 8 -また,租税法規は,侵害規範であり,法的安定性が強く要請されることから,その解釈は,原則として文理解釈によるべきであって,文理解釈によっては規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合に初めて,規定の趣旨目的に立ち戻って,その意味内容を明らかにするという目的的解釈が行われるべきところ,控訴人の上記主張は,規定が設けられた趣旨目的から出発して,条文にない要件を付加して租税法規の適用範囲を限定しようとするものであり,しかも,その付加すべき要件自体が明確性に欠け,公平な解釈適用を確保することに困難が伴うものであるから,これを採用することはできないといわざるを得ない。 もっとも,控訴人の主張は,実質的には,P1社が独立企業としての実体を有しており(中略)に経済的合理性があるということを述べているもの,と解することができ,そうであるとすると,争点1における実質的争点は,本件事案に措置法66条の6第3項の適用除外規定の適用があるか否か(争点3)いうことに帰着するということになる。 P1社は,その発行済株式総数の90%を控訴人によって保有されてい(2)る外国法人であるから,措置法66条の6第1項所定の「外国関係会社」に該当し,かつ,同項所定の「その所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低い」という要件を満たしていること(すなわち,同項所定の「特定外国子会社等」に該当していること)は,引用に係る原判決の前提事実等に認定・判示するとおりで,,,ありまたP1社が同条3項所定の適用除外要件を満たしていないことは後記3で検討するとおりであるから,本件事案には同条の適用があるというべきである。 争点2(措置法66条の6は日星租税条約7条1項に違反 たP1社が同条3項所定の適用除外要件を満たしていないことは後記3で検討するとおりであるから,本件事案には同条の適用があるというべきである。 争点2(措置法66条の6は日星租税条約7条1項に違反するか)につい。 て控訴人は,措置法66条の6は我が国に恒久的施設を有しないシンガポ(1)- 9 -ールの海外子会社の利得に対して我が国が課税することを許容することになるから,日星租税条約7条1項に違反すると主張する。 しかしながら,措置法66条の6は,一定の要件を満たした海外子会社である特定外国子会社等の所得の一部を,その親会社である「内国法人の収益の額とみなして」課税するというものであって,海外子会社の利得に対して課税するものでないことは条文の文言上明らかであるそしてこのみ,,。 ,「なし課税」が無制限にできることになっているのであれば,形式的には,内国法人の所得に課税するという建前を採っていたとしても,実質的には,我が国に恒久的施設を有しないシンガポールの海外子会社の利得に対して我が国が課税することとなり,二重課税の防止を目的とする日星租税条約7条1項の趣旨を潜脱するおそれがあるということになる。しかしながら,措置法66条の6は,1項において,みなし課税の対象となる海外子会社を,内国親会社による一定以上の株式等の支配関係にある特定外国子会社等に限定し,さらに,みなし課税の対象とする海外子会社の未処分所得についても,その留保された金額の全額ではなく,そのうちの内国親会社が支配する株式等に対応する金額(課税対象留保金額)のみに限定した上で,3項において適用除外要件を定め,特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え,かつ,その所在地国で事業活動を行うことについて十分な経済的合理性がある場合には,1項の規定を適用しな に限定した上で,3項において適用除外要件を定め,特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え,かつ,その所在地国で事業活動を行うことについて十分な経済的合理性がある場合には,1項の規定を適用しないと定めている。そうすると,この1項の要件に該当し,3項の適用除外要件に該当しない事案においては,海外子会社の未処分所得のうちの課税対象留保金額は,本来,内国親会社に対して配当その他の方法によって利益移転されるべきものであって,利益移転がされた場合には,我が国おいて親会社の収益そのものとして課税されることになるのであるから,その利益移転がされていない場合には,租税回避の防止の観点から,本来あるべき利益移転が実際にあったものとみなして,我が国が親会社に対して課税することは,日星租税条約7条1項の趣旨を潜脱するこ- 10 -とにはならないものと解される。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 以下,措置法66条の6が日星租税条約7条1項に違反するとの控訴人(2)のその余の主張についても検討しておく。 ア控訴人は,措置法66条の6は,法人税法11条の実質所得者課税の原則を具体化したものとして,タックスヘイブン子会社の留保所得が親会社に帰属することを定めた制度と解すべきであって,シンガポール法人であるP1社の事業所得に対して課税するものであるから「恒久的施設なけ,れば課税なし」という基本原則を明文化した日星租税条約7条1項に抵触すると主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張が採用できないことは,原判決47頁1行目から同15行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,①措置法66条の6は,その条文の文言からも,特定外国子会社等の利得に対して直接課税する制度であって,日星租税条約7条1項に違反する,②措置 に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,①措置法66条の6は,その条文の文言からも,特定外国子会社等の利得に対して直接課税する制度であって,日星租税条約7条1項に違反する,②措置法66条の6は,タックスヘイブン子会社の所得を課税対象とする制度であり,国内租税法の濫用によって課税権の侵害が行われることがないように,二国間の合意により課税権を調整し,両国間の財・サービス・資金の流れを円滑化することを目的とした日星租税条約の目的に反すると主張する。 しかしながら,①の主張は,措置法66条の6第1項柱書きの「その内国法人の収益の額とみな」すという条文の文言自体から,これを採用することはできないし,②の主張も,措置法66条の6がタックスヘイブン子会社の所得を直接の課税対象としているとの控訴人の主張を前提とするものであるから,採用することができない。 ウなお,控訴人は,フランス国務院が,フランスのタックスヘイブン対策税制がフランスとスイスとの間の租税条約の事業所得条項に違反するとし- 11 -た判決(甲80号証の1)を引用して,自らの主張が正当であると主張する。 しかしながら,P2教授の意見書(乙44号証)によると,フランスにおいては,日本とは異なり,法人税について国外所得非課税主義(国外所得免除法)を採用する反面,外国会社からの配当を含めて受取配当の95%を益金不算入としていることから,タックスヘイブン子会社の留保所得に対しては,法人税の一部としてではなく,分離して直接に課税する(すなわち,親会社が子会社の適用対象所得について納税義務を負う)という特殊な立法を採用していることが認められるから,フランスと日本では,その前提を異にしているものであり,また,フィンランド行政最高裁判所は,フィンランドのタックスヘイブン対策税制が 義務を負う)という特殊な立法を採用していることが認められるから,フランスと日本では,その前提を異にしているものであり,また,フィンランド行政最高裁判所は,フィンランドのタックスヘイブン対策税制がフィンランドとベルギーとの間の租税条約に違反するかが問題となった事案において,フランス国務院とは反対の判決(乙47号証)をしており,フランス国務院の見解が国際租税における主流であるとまで認めるに足りる証拠はないのであるから,フランス国務院の見解をもって本件事案における控訴人の主張を基礎付けるには足りないといわざるを得ない。 エ控訴人は,国内法と租税条約とが抵触する可能性がある場合には,条約の解釈は一般国際法であるウィーン条約によることになるところ,日星租税条約には7条1項の例外が明文で規定されていないから,措置法66条の6を適用することは,それ自体が国内法として優位に執行されるところの日星租税条約7条1項に抵触するとも主張する。 しかしながら,この主張は,措置法66条の6が日星租税条約7条1項の例外規定であることを前提とするものであるが,上記において検討(1)したとおり,措置法66条の6が日星租税条約7条1項の例外規定であると解することは困難である。 また,日星租税条約7条1項は,OECDモデル租税条約7条(事業所- 12 -得に対する課税)1項の規定に倣ったものであって,一方の国の企業は他方の国に所在する恒久的施設を通じて事業を行わない限り当該他方の国において租税を課されないという二重課税防止条約において一般に認められている原則を示したものであると解されるところ(乙39,40,この)OECDモデル租税条約7条1項の規定について,OECDモデル租税条約コメンタリーが「第1項の目的は,一方の締約国の,他方の締約国の居住者である企業の であると解されるところ(乙39,40,この)OECDモデル租税条約7条1項の規定について,OECDモデル租税条約コメンタリーが「第1項の目的は,一方の締約国の,他方の締約国の居住者である企業の事業所得に対する課税権の制限を規定することである。 本項は,一方の締約国の,自国の国内法令の従属外国法人規定に基づく自国の居住者に対する課税権を,これらの居住者に対して課せられる当該租税が,他方の締約国に居住している企業の利得で,これらの居住者の当該企業への持分に帰せられる部分に基づき算定されるのにもかかわらず,制限していない。一方の国によって自国の居住者に対してこのように課される租税は,他方の締約国の企業の利得を減少させず,それ故,当該利得に対して課せられたとはいい得ない」と解説していること(パラグラフ1。 0.1(乙41(103頁,57(105頁,同コメンタリーは,そ)))の性質上,法的拘束力を有するものではないが,一般的な二重課税防止条約のモデルとなっているOECDモデル租税条約の各規定の解釈指針を説明した重要な資料として広く受け入れられていること(甲74の2・3,76,乙38)にかんがみると,一般的な二重課税防止条約は我が国の措置法66条の6のような国内法を直ちに制限するものではないとの解釈が可能である。上記フィンランド行政最高裁判所も,上記ウの判決(乙47号証)の中で,OECDモデル租税条約コメンタリーがOECD加盟国がタックスヘイブン対策税制を採用する可能性を容認しているから,OECDモデル租税条約に基づく租税条約が反対の規定を置いていない限り,同条約は締約国がタックスヘイブン対策税制を適用することを容認しなければならないと判示している。 - 13 -なお,控訴人は,租税回避行為に対して国内法の定めによって課税を行うため ていない限り,同条約は締約国がタックスヘイブン対策税制を適用することを容認しなければならないと判示している。 - 13 -なお,控訴人は,租税回避行為に対して国内法の定めによって課税を行うためには,日仏租税条約の議定書17のような明確な授権規定が必(b)要であるところ,日星租税条約にはそのような規定がないことを指摘する,(),,が上記議定書甲188号証はその規定内容及び規定振りからして全体として日仏租税条約の各規定の意味内容や趣旨を明らかにするための補充的な合意としての性質を有するものと解されるし,その17の規(b)定も,条約の締結によってフランスのタックスヘイブン対策税制の適用が「妨げられない」ことを確認した解釈規定であって,この規定があることによって初めてタックスヘイブン対策税制の適用が可能になるという趣旨「」,で控訴人が主張しているものと解される授権規定とは解されないから日仏租税条約は,上記OECDモデル租税条約コメンタリーやフィンランド行政最高裁判所判決と同じ立場に立っているものということができる。 以上によると,結局,ウィーン条約等の国際法を根拠とする控訴人の上記主張は採用することができないというほかはない。 争点3(P1社は措置法66条の6第3項所定の適用除外要件を満たしているか)について。 当裁判所も,P1社は措置法66条の6第3項所定の適用除外要件を満たしていないと判断するその理由は以下のとおり訂正するほかは原判決の事。 ,,「」()実及び理由中の第3の3原判決58頁23行目から同67頁12行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決66頁8行目の末尾に行を改めて,次のとおり加える。 (1)「ウ(中略)から,本件事案において,P1社は,措置法66条 行目から同67頁12行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決66頁8行目の末尾に行を改めて,次のとおり加える。 (1)「ウ(中略)から,本件事案において,P1社は,措置法66条の6第()1項所定の「その所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低い」という要件を満たしているというべきである。 エ(中略)()- 14 -控訴人は,タックスヘイブン対策税制は特定外国子会社等の累積された未処分利益に対して課税する制度ではなく,特定外国子会社等の合算対象年度における単年度利益に調整を加えた課税対象留保金額を基として課税する制度であるところ(中略),(中略)したがって,控訴人主張の根拠をもってしては上記認定を覆す(2)に足りないというほかはない」。 争点4(P1社の未処分所得の金額の算出方法)について(P1社の未処分所得の金額は,シンガポールドル建てで算出すべきか,(1)又はポンド建てで算出すべきか)。 当裁判所も,P1社の未処分所得の金額はシンガポールドル建てで算出すべきであると判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」中の第3の (原判決67頁14行目から同70頁3行目まで)に記載のとおりで(1)あるから,これを引用する。ただし,原判決69頁10行目の冒頭の「エ原告」から同頁14行目冒頭の「する」までを次のとおり改める。 。 「エ控訴人は,①シンガポール会社法は適正な課税所得を計算するために制定されたものではなく,RCBの承認を得たかどうかは決算に係る計算書類の効力に何らの影響も及ぼさない,②措置法66条の6の趣旨目的からすると,その計算の基礎となる「決算」について所在地国の会社法等の規制に拘束されると解する必要はないし,親会社に重い税 に係る計算書類の効力に何らの影響も及ぼさない,②措置法66条の6の趣旨目的からすると,その計算の基礎となる「決算」について所在地国の会社法等の規制に拘束されると解する必要はないし,親会社に重い税負担を課すべきではないなどとして,P1社の経営実態を最もよく反映するポンド建て決算に基づいて未処分所得の額を算出すべきである旨主張する」。 (中略)(2)ア(中略)イ(中略)ウ(中略)- 15 -エ(中略)法人税基本通達2-2-12(甲39,62)は,課税の公平という観点から,客観的に覚知し得る事実に基づいて課税をし,企業の恣意が入りやすい費用の見越し計上を防止する必要があることにかんがみ,損金に算入することができる確定した債務といえるためには,①当該費用に係る債務が成立し,②当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し,③その金額を合理的に算定し得るものであることが必要であるとしている。この通達は,上記の観点及び趣旨に照らして合理的な基準であると認められるところ(中略),オ控訴人は,英国の税務係争の大部分は訴訟手続ではなく,和解交渉手続により解決に至ること,和解交渉手続において企業側が額を提示するということは,提示額と同額の税金債務を将来負うことになることを企業側に認識させるという効果を生み出すという英国特有の税制及び慣行があることを前提にすると(中略),しかしながら,そもそも,控訴人が主張する上記英国の税制及び慣行の根拠となる意見書(甲69号証)の記載によっても,企業が自らが提示した支払税額を後になって覆すことが事実上困難であるということを超えて,企業側の提示額を最低限とする追加法人税額の法的支払義務までもが生ずると解することができるのか疑問があるのみならず(中略), まとめそうす なって覆すことが事実上困難であるということを超えて,企業側の提示額を最低限とする追加法人税額の法的支払義務までもが生ずると解することができるのか疑問があるのみならず(中略), まとめそうすると,本件事案には措置法66条の6が適用されることになり,控訴人に係る措置法66条の6第1項に規定する特定外国子会社等であるP1社の1998年(平成10年)12月期における課税対象留保金額を,控訴人の平成11年12月期の所得の計算上,益金の額に算入して算出した控訴人の課税所得金額及び納付すべき税額は,引用に係る原判決の別紙2記載の被控訴人の主張額と同額であり(なお,本件争点に関する部分を除き,計算の基礎となる- 16 -金額及び計算方法については,当事者間に争いがない,これらの金額及び。)税額は本件更正処分における控訴人の平成11年12月期の法人税に係る課税所得金額及び納付すべき税額を上回るから,本件更正処分は適法である。 また,上記のとおり本件更正処分は適法であるところ,本件賦課決定処分において過少申告加算税の対象とした税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前における税額の計算の基礎とされなかったことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから,控訴人の平成11年12月期の法人税に係る過少申告加算税の額は上記控訴人が納付すべき税額に同条1項及び2項に規定する割合を乗じて算出した金額であり,この金額は上記別紙2記載の被控訴人の主張額と同額であるから,本件賦課決定処分も適法である。 第4 結論 以上によれば,本件各処分は適法であり,控訴人の請求はいずれも理由がない。 よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部 処分は適法であり,控訴人の請求はいずれも理由がない。 よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官宗宮英俊裁判官坂井満裁判官原優
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