主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成13年7月3日付けでした原告に対する平成12年分の所得税額を金2471万5500円とする決定処分及び無申告加算税額を金370万6500円とする賦課決定をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,別件訴訟事件において,その保有する株式を「譲渡」する対価として「代金」及び「その支払に代わる土地持分」を取得するとの裁判上の和解を成立させたところ,被告がこれによる譲渡所得が発生したとして前掲各処分を行ったので,上記和解は実質上未分割の遺産に係る分割協議であるから,本来相続税を課すべきであるにもかかわらず,譲渡所得税を課した違法な処分であると主張して,その取消しを求めた抗告訴訟である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実等)(1) 身分関係原告の親族関係は,別紙「原告の親族関係図」記載のとおりであり,父a(昭和49年12月14日死亡。)と母bの間に,長男である原告のほか,二男c,二女d,三女e,四女f,五女gの子供がいる(以下,c,d,e,f,gをbと併せて「cら」と総称する。)。 (2) 役員たる地位原告は,昭和32年ころ,aの経営していたh株式会社(以下「訴外会社」という。)に入社し,昭和49年2月ころから同社の代表取締役の地位にあったが,平成2年2月ころ,cが代表取締役に選任されたことから,その地位を失った。 (3) 訴訟の係属原告を当事者とする訴訟が,以下のとおり,名古屋地方裁判所一宮支部に提起された(以下,アないしエの事件を併せて「本件各事件」という。)。 ア平成7年(ワ)第76号株主権確認等請求事件(甲3ないし15,乙1, 事者とする訴訟が,以下のとおり,名古屋地方裁判所一宮支部に提起された(以下,アないしエの事件を併せて「本件各事件」という。)。 ア平成7年(ワ)第76号株主権確認等請求事件(甲3ないし15,乙1,15)原告原告被告訴外会社請求内容 ①原告が訴外会社の株式4500株を有する株主であることを確認する。 ②訴外会社は原告に対し,150万円(未払給与)及び平成7年3月から本案判決確定に至るまで毎月末日限り75万円の割合による金員(給与)を支払え。 主な争点原告は,訴外会社が雇用関係にある原告への給与の支払を理由なく停止し,また,aから贈与を受けあるいは増資の際に出資して取得した原告の持ち株数を勝手に否認していると主張したのに対し,訴外会社は,aが原告に株式を贈与したり原告が増資に際して出資した事実はなく,また,訴外会社と原告との関係は準委任契約であるところ,同契約は解除されたと主張した。 イ平成7年(ワ)第220号所有権移転登記手続請求事件(甲16ないし19,21ないし23,乙2,16)原告 cら被告原告請求内容原告は,cらに対し,別紙物件目録1,2記載の土地(以下「本件第1土地」という。)の各9分の1(ただし,bについては3分の1)の持分につき真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をせよ。 主な争点 cらは,本件第1土地は,名義上は原告の所有とされていたが,実際はaの所有であったもので,遺産として扱われるべきであると主張したのに対し,原告は,aから買い受けて所有者になったと主張した。 ウ平成7年(ワ)第322号建物収去土地明渡等請求事件(甲20ないし25,乙3)原告 れるべきであると主張したのに対し,原告は,aから買い受けて所有者になったと主張した。 ウ平成7年(ワ)第322号建物収去土地明渡等請求事件(甲20ないし25,乙3)原告原告被告訴外会社請求内容 ①訴外会社は原告に対し,別紙物件目録3,4記載の建物を収去して,本件第1土地を明渡せ。 ②訴外会社は原告に対し,平成7年1月1日から上記の土地明渡済みまで年47万5200円の割合による金員(使用損害金相当額)を支払え。 主な争点原告は,その所有に係る本件第1土地を訴外会社に賃貸していたところ,同社が賃料の支払を怠ったので,上記賃貸借契約を解除したと主張したのに対し,訴外会社は,本件第1土地はaの取得した土地で,現在はその相続人らの共有地であると主張した。 エ平成9年(ワ)第92号所有権確認請求事件(甲26ないし28,乙4,17) 原告 cら被告原告請求内容 cらと原告との間において,別紙物件目録5ないし7記載の土地(以下「本件第2土地」という。)が,cら及び原告につき持分9分の1(ただし,bについては持分3分の1)の共有であることを確認する。 主な争点 cらは,本件第2土地については原告名義の持分登記が存在しているが,実際はaの取得した土地で,その相続人らの共有であると主張したのに対し,原告は,上記持分は原告が共同で買い受けたことにより取得したと主張した。 (4) 裁判上の和解の成立原告,cら,訴外会社及び利害関係人iは,平成12年11月28日,名古屋地方裁判所一宮支部において,本件各事件について,以下の内容をもって和解し(以下「本件和解」という。),その旨記載された和解調書が作成された 訴外会社及び利害関係人iは,平成12年11月28日,名古屋地方裁判所一宮支部において,本件各事件について,以下の内容をもって和解し(以下「本件和解」という。),その旨記載された和解調書が作成された(以下「本件調書」という。甲2)。 ア(ア) 原告は,cに対し,訴外会社の株式3327株を代金1億0455万2723円(以下「本件第1代金」という。)にて譲渡する。 (イ) cは,原告に対し,本和解の席上において本件第1代金1億0455万2723円を支払い,原告はこれを受領した。 イ(ア) 原告は,bに対し,訴外会社の株式1073株(以下,ア(ア)の株式と併せて「本件株式」という。)を代金3371万8754円(以下「本件第2代金」という。)にて譲渡する。 (イ) bは,原告に対し,本件第2代金3371万8754円の支払に代え,本件第2土地上のbの共有持分(342分の150。以下「本件持分」という。)を譲渡する。 (ウ) bは,原告に対し,本件第2土地につき,直ちに平成12年11月28日代物弁済を原因とする持分全部移転登記手続をする。 ウ(ア) 原告は,iに対し,本件第1土地につき,錯誤を原因とする所有権移転登記抹消登記手続をする。 (イ) iは,bに対し,本件第1土地につき,昭和44年7月3日売買を原因とする所有権移転登記手続をする。 エ原告は,本書をもってbの相続に関する遺留分を放棄する。なお,本件遺留分放棄については名古屋家庭裁判所一宮支部の許可があることを当事者全員が確認する。 オ当事者全員は,原告が訴外会社の株主でなくなったことを確認する。 カ原告は,本日以降訴外会社の敷地建物に立ち入らず,当事者全員は本件紛争に関する一切の事項について第三者にこれを口外しない。 キ(ア) 本和解において,各不動産に関する登記手続費用は各登記名 する。 カ原告は,本日以降訴外会社の敷地建物に立ち入らず,当事者全員は本件紛争に関する一切の事項について第三者にこれを口外しない。 キ(ア) 本和解において,各不動産に関する登記手続費用は各登記名義を取得する者の各負担とし,各不動産に課される公租公課(固定資産税・都市計画税)については,本和解の日までの分は各従前の名義人の,本和解の翌日分以降の分は各登記名義を取得する者の各負担とする。 (イ) 本和解に伴って不動産・株式等一切の財産の名義移転に課される税金については,賦課される名義人がこれを自ら負担することを確認する。 ク原告及びcらは,その余の請求をそれぞれ放棄する。 ケ原告とcら,原告と訴外会社との間には,本和解条項に定めるほか何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。 コ訴訟費用及び和解費用は,各自の負担とする。 (5) 和解条項の履行原告は,本件和解の席上において,cから本件第1代金として額面合計1億0455万2723円の小切手を受け取り(乙5),また,平成12年12月4日,bから本件持分の持分全部移転登記を得た(乙6ないし8)。 他方,原告は,本件第1土地につき,平成12年11月28日,錯誤を理由として自己名義の所有権移転登記の抹消登記手続をしている(乙9,10)。 (6) 原告の収入原告は,平成12年中に,j市役所から給与として6300円,社会保険庁から老齢厚生年金287万0900円を得た。 (7) 課税の経緯被告が原告に対してした平成12年分の所得税についての決定及び無申告加算税の賦課決定の各処分(以下「本件各処分」という。),原告がした異議申立て及び審査請求並びに国税不服審判所長がした裁決の経緯は,別紙「本件課税処分の経緯」記載のとおりである。 原告は,平成14年7月17日,本訴を 本件各処分」という。),原告がした異議申立て及び審査請求並びに国税不服審判所長がした裁決の経緯は,別紙「本件課税処分の経緯」記載のとおりである。 原告は,平成14年7月17日,本訴を提起した。 2 争点及び当事者の主張の要旨本件和解により原告が取得した本件第1,2代金は,所得税法33条1項所定の譲渡所得に係る収入に当たるか。 (1) 被告の主張裁判上の和解は,和解調書に記載されたとおりに当事者双方の意思表示の合致があったものとして成立するものであるから,その解釈は,文言に即して行われるべきである。しかるところ,aの相続は,昭和49年12月14日に開始し,本件和解までに相当年月が経過していること,相続財産性に争いのある場合に,それに関する確認を何ら行わないまま特定の財産について和解をするような場合には,事後に相続財産性を争点とする訴訟等が提起されると再度の紛争を惹起しかねないことから,通常,和解条項においてその旨確認するか,あるいは遺産分割協議書を別途作成するなどして,この点に関する事後の紛争を防止するための方策を講じるのが通常であるところ,本件和解には,そのような条項や事情は認められないこと,また,本件第1,2土地及び本件株式(以下,総称して「本件各財産」という。)以外に,aの相続財産が何ら存在しなかったとは通常考えられないこと,その反面,本件各事件には,給与支払請求のように,それ自体相続財産といえないものに関する請求が含まれていること,原告は,本件各事件において,本件各財産はいずれも原告の固有財産であり,aの遺産ではないと主張していること,本件各処分についての異議申立手続における調査の際,原告は,本件各財産を譲渡した趣旨であると答えていること,aの婚外子が本件和解の当事者となっていないこ 産であり,aの遺産ではないと主張していること,本件各処分についての異議申立手続における調査の際,原告は,本件各財産を譲渡した趣旨であると答えていること,aの婚外子が本件和解の当事者となっていないことなどを総合すれば,本件和解が,原告主張のように未分割の遺産の分割協議に当たると解することはできず,それぞれ譲渡により移転したというべきであるから,これにより取得した本件第1,2代金は,所得税法33条1項所定の資産の譲渡による収入というべきである。 (2) 原告の主張実質的にみて,本件各事件の当事者はいずれもaの相続人であり,その主たる争点は,本件各財産の帰属,すなわち原告の固有財産であるか,aの未分割の遺産であるかの点にあった。 原告は,本件各事件において,これらは自らが取得したものであると主張していたが,訴外会社やcらが主張していたとおり,本件株式は,aがその出資金を出捐したものであるから,実際にはaの遺産であった可能性が極めて高く,本件第1土地も,aが実際の買主であったが,当時,農地であったため,i名義で購入し,その後,aに愛人がいた関係で原告名義にしたにすぎないから,実体としてはaの遺産であった可能性が極めて高かった。本件第2土地についても,原告名義の持分は名義上のものにすぎず,真実はaの所有物であった可能性が極めて高かった。 したがって,本件和解は,実質上,原告が,本件株式を取得しない代わりに本件第1代金及び本件持分を取得し,かつ,母であるbの相続に関する遺留分を放棄し,他方,cが訴外会社の株式3327株を取得し,bが訴外会社の株式1073株及び本件第1土地を取得することを合意する旨の遺産の分割協議であった。 確かに,被告主張のように,aの未分割の遺産を確定した上で,正式に遺産分割協議を成立させることが望ましいが,そのような形式 73株及び本件第1土地を取得することを合意する旨の遺産の分割協議であった。 確かに,被告主張のように,aの未分割の遺産を確定した上で,正式に遺産分割協議を成立させることが望ましいが,そのような形式を取れば,余分な時間と費用を要すること,原告は本件各財産の権利者であると強硬に主張しており,和解で解決するにはそのような原告の主張に配慮せざるを得なかったこと,aの愛人及び婚外子との関係において,これらがaの未分割の遺産とすることに多少の問題があったこと等の事情により,遺産分割協議ではなく,「譲渡」という形式を取らざるを得なかったのである。したがって,本件和解の実質は,aの相続財産若しくは相続財産であるとして争われていた本件各財産について,その相続人全員の合意により,これを分割したものであり,遺産分割協議と評価されるべきである。 そして,租税は,その実質に基づいて課税すべきものであるから,被告は,本来相続税を課すべきところ,その評価を誤り,譲渡所得を生じたものとして本件各処分をしたのであるから,違法として取り消されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 所得税法33条1項にいう譲渡所得とは,「資産の譲渡」によって生じた所得,すなわち,有償無償を問わず,資産を移転させる一切の行為によって生じた所得をいい,これに対して,相続税は,「相続又は遺贈に因り財産を取得した」(相続税法11条)ことを原因として課される資産税であるから,両者は,課税上,明確に区別されなければならないことは当然である。 そこで,本件和解により,原告が取得することとされた本件第1,2代金が,被告主張のように資産の譲渡の対価として取得した財産に当たるか,それとも原告の主張するように遺産分割協議により取得した財産に当たるかについて判断するに,一般に,裁判上の和解は,当事者双方の合意 が,被告主張のように資産の譲渡の対価として取得した財産に当たるか,それとも原告の主張するように遺産分割協議により取得した財産に当たるかについて判断するに,一般に,裁判上の和解は,当事者双方の合意内容が裁判官の面前で述べられ,裁判官による確認という慎重な手続を経て成立するものであるから,和解調書に記載された内容は,当事者双方の合意内容を正確に反映していると考えられる。そして,事実関係を最も正確に認識しているのは当事者であるから,上記合意内容は,特段の事情が認められない限り,当事者が認識している事実関係を前提として,紛争解決のための互譲を行った結果の生成物であると考えられる。したがって,和解調書に記載された条項は,通常,当事者による事実関係の認識に裏付けされていると考えられるから,その意義を解釈するに際しては,それが多義的であったり不明確なものでない限り,文言に即して合理的,客観的に行われるべきは当然である。特に,本件和解のように,長期間にわたって訴訟が係属し,深刻な対立が続いた後に成立した和解は,当事者が熟慮を重ねた結果を反映したものと推認できるから,上記の解釈指針がより妥当すると解される。 これを本件について見るに,前記のとおり,本件調書には,cが支払う本件第1代金1億0455万2723円について,原告が「譲渡する」訴外会社の株式3327株の「代金」であると明記され,bが譲渡する本件持分についても,原告が「譲渡する」訴外会社の株式1073株の「代金」の支払に代えるものであると明記されていることに照らすと,本件第1,2代金が原告の有する資産の譲渡の対価たる性質を有することは,その文言に即して理解する限り,疑いを容れる余地はないというべきである。 この点につき,原告は,本件株式は,aがその出資金を出捐したものであるから,実際にはaの遺 譲渡の対価たる性質を有することは,その文言に即して理解する限り,疑いを容れる余地はないというべきである。 この点につき,原告は,本件株式は,aがその出資金を出捐したものであるから,実際にはaの遺産であった可能性が極めて高いと主張するが,本件調書には,本件株式がaの遺産に属することや,上記の各代金が遺産の分割の調整金(若しくは代償金)の性質を有することを窺わせる文言は一切使用されておらず(仮に,本件和解がaの未分割の相続財産を対象とするのであれば,前記のとおり,本件各事件において,本件各財産が相続財産であるか否かが重要な争点になったのであるから,どの財産が相続財産であるかについての確認条項があって然るべきところ,そのような条項は存在しない。),かえって,原告は,本件各事件において,一貫して本件株式が原告固有の財産であると主張していたところ,本件調書上の和解条項は,まさしくこれに沿った内容となっていることに照らすと,最終的にはcらも原告の主張を受け入れ,本件和解に際しては原告固有の財産であることの共通認識が形成されていたと推認することができるから,上記主張は採用できるものではない。 また原告は,遺産分割協議の形式を取れば,余分な時間と費用がかかること,原告が本件各財産の所有権を主張していたことを配慮せざるを得なかったこと,aの愛人及び婚外子との関係においてaの未分割の遺産とすることに多少の問題があったこと等の事情により,遺産分割協議の体裁を取らずに,「譲渡」という形式を取らざるを得なかった旨主張するが,乙14によれば,原告は,異議申立てに伴う被告の調査に対し,本件和解は追いつめられてやむなく成立させたもので,不本意な内容であることを強調しているものの,これが実質的にaの遺産分割協議に当たることを示唆する発言を一切していないことが認められ の調査に対し,本件和解は追いつめられてやむなく成立させたもので,不本意な内容であることを強調しているものの,これが実質的にaの遺産分割協議に当たることを示唆する発言を一切していないことが認められ,この事実に,本件和解には,相続人ではない訴外会社及び利害関係人が加わっていること,かえって,認知済みの婚外子が加わっていないこと(乙18),本件各事件には,遺産をめぐる紛争とは明らかに関係のない給与の支払請求に係る事件が含まれていること,本件和解の内容として,bの相続についての遺留分放棄の条項まで含まれていること,各不動産に課される公租公課(固定資産税・都市計画税)については,本件和解の日までの分は従前の名義人の,その翌日以降の分は各登記名義を取得する者の各負担とする旨合意されており,本件和解期日までは従前の名義人の所有であったことを前提としていると解されること,本件和解に伴って不動産・株式等一切の「財産の名義移転に課される税金」については賦課される名義人がこれを自ら負担することが確認されているところ,仮に,遺産分割協議であれば,移転に課される税金という表現になるはずがないから,当事者としては,譲渡に係る税が課されることを予想していたというほかないこと,これらの事情を総合すれば,本件和解は,原告主張のように遺産分割協議の性質を有するものであったと認める余地はなく,本件各財産がそれぞれの名義人の権利に属することを前提として,その譲渡を約することなどにより,紛争を終了させようとしたものであり,その一環として,原告は本件株式をc及びbに譲渡して訴外会社の経営権の所在を明確化し,他方でc及びbはその対価として代金を支払う(ただし,bは本件第2土地の持分をもって代物弁済を行う。)ことを合意したと認定するのが合理的であるから,上記譲渡は,譲渡所得税 の経営権の所在を明確化し,他方でc及びbはその対価として代金を支払う(ただし,bは本件第2土地の持分をもって代物弁済を行う。)ことを合意したと認定するのが合理的であるから,上記譲渡は,譲渡所得税の対象となる資産の譲渡に当たるというべきである。 2 そこで,以上の判断を前提として,原告の平成12年分の納付すべき所得税額及び無申告加算税額を検討する。 (1) 総所得金額 177万8175円前記のとおり,原告は,平成12年中にj市役所から給与として6300円,社会保険庁から老齢厚生年金287万0900円を得ているところ,前者については所得税法28条2項,4項を,後者については所得税法35条2項ないし5項をそれぞれ適用して給与所得,雑所得を算出すると,0円及び177万8175円になる。 (2) 株式譲渡に係る譲渡所得金額 1億3135万7904円また,前記認定・判断のとおり,原告は,本件和解によりc及びbに譲渡した本件株式(3327株と1073株)の代金として合計額1億3827万1477円(1億0455万2723円と3371万8754円)を得ており,乙14によれば,同金額は譲渡の対価として不相当なものでないと認められるところ,譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は,その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とされている(所得税法38条1項)が,本件株式の取得時におけるその評価額を算出することが困難であるため,所得税法基本通達38-16に基づき,総収入金額1億3827万1477円の100分の5に相当する691万3573円をもって取得費の額と認めるべきであるから,これを控除した所得額は,1億3135万7904円となる(なお,乙11ないし13によれば,原告が,本件各事件の代理人と 分の5に相当する691万3573円をもって取得費の額と認めるべきであるから,これを控除した所得額は,1億3135万7904円となる(なお,乙11ないし13によれば,原告が,本件各事件の代理人となった弁護士に対し,相当額の弁護士費用を支払った事実が認められるが,上記弁護士費用は,本件株式の譲渡そのものに対する報酬として支払われたものではなく,本件各事件の提起,遂行,その他紛争解決に関する種々の事務を処理するため,あるいは最終的に紛争が解決されて一定の利益が原告にもたらされたことに対して支払われたというべきであるから,譲渡に必要な費用とはいえない。)。 (3) 所得控除額 98万2800円前記所得金額から控除すべき金額は,原告が平成12年中に支払った国民健康保険に係る保険料22万2800円(所得税法74条),配偶者控除額38万円(同法83条1項),基礎控除の額38万円(同法86条1項)の合計額98万2800円である。 (4) 課税総所得金額 79万5000円(1)の総所得金額から(3)の所得控除額を控除した金額(79万5375円)に,国税通則法118条1項の規定を適用して1000円未満の端数を切り捨てた上記金額が,課税総所得金額となる。 (5) 株式等に係る課税譲渡所得金額 1億3135万7000円国税通則法118条1項の規定を適用して1000円未満の端数を切り捨てた上記金額が,課税譲渡所得金額となる。 (6) 算出税額 2635万0900円課税総所得金額に対する税額は,(4)の金額に所得税法89条1項を適用して算出した7万9500円であり,株式等に係る課税譲渡所得金額に対する税額は,(5)の金額に平成13年法律第67号による改正前の租税特別措置法37条の1 ,(4)の金額に所得税法89条1項を適用して算出した7万9500円であり,株式等に係る課税譲渡所得金額に対する税額は,(5)の金額に平成13年法律第67号による改正前の租税特別措置法37条の10第1項の規定を適用して算出した2627万1400円であって,その合計額は2635万0900円となる。 (7) 定率減税額 25万円上記金額は,(6)の算出税額2635万0900円に,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律6条2項の規定を適用して算出した金額である。 (8) 源泉徴収税額 4万7763円原告は,(1)の給与収入について,315円の,(1)の年金収入について,4万7448円の各所得税を源泉徴収されており,その合計額は4万7763円となる。 (9) 納付すべき税額 2605万3100円上記金額は,(6)の税額から,(7)の定率減税額25万円及び(8)の源泉徴収税額4万7763円を控除した金額に,国税通則法119条1項の規定を適用して100円未満の端数を切り捨てた金額である。 (10) 無申告加算税 390万7500円原告は,確定申告書を法定申告期限までに被告に提出しなかったものであり,かつ不提出について,国税通則法66条1項ただし書所定の「正当な理由」が存在したと認めることができないので,原告は,同法66条1項本文,118条3項及び119条4項によって算出した無申告加算税を納付する義務がある。 以上の検討によれば,原告が納付すべき税額は,本件各処分に係る税額を上回ることが明らかであるから,本件各処分は適法というべきである。 3 以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負 告が納付すべき税額は,本件各処分に係る税額を上回ることが明らかであるから,本件各処分は適法というべきである。 3 以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官富岡貴美
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