令和4年7月14日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 令和元年(ワ)第17622号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日令和4年4月21日判決 原告 株式会社ルス・コム 原告訴訟代理人弁護士 黒田健二 同吉村誠 被告 株式会社ナンシン 被告訴訟代理人弁護士 飯田秀郷 同隈部泰正 同清水紘武 主文 1 被告は、別紙被告方法目録1記載の方法を使用してはならない。 2 被告は、別紙被告方法目録1記載の方法で製造された別紙物件目録記載の製品を使用し、譲渡し、譲渡の申出をし、又は輸出してはならない。 3 被告は、被告の占有に係る前項記載の製品を廃棄せよ。 4 被告は原告に対し、10億0865万7965円及び内2億5952万0396円に対する令和元年7月17日から、内4億3629万0883円に対する令和3年10月23日から各支払済みまで年5分の割合による金員を、内3億1284万6686円に対する同日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用はこれを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 7 この判決は、4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告方法目録2記載の方法を使用してはならない。 2 被告は、別紙物件目録記載の製品を製造 7 この判決は、4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告方法目録2記載の方法を使用してはならない。 2 被告は、別紙物件目録記載の製品を製造し、使用し、譲渡し、譲渡の申出をし、輸出してはならない。 3 被告は、被告の占有に係る別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。 4 被告は、原告に対し、12億3583万6666円及び内3億2000万円に 対する令和元年7月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を、内9億1583万6666円に対する令和3年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、発明の名称を「電鋳管の製造方法及び電鋳管」とする特許権を有する原告が、被告が用いている別紙被告方法目録2記載の電鋳管の製造方法及び被告が製造、販売している別紙物件目録記載の電鋳管が同特許権に係る特許発明の技術的範囲に属するとして、被告に対し、特許法100条1項に基づき、同製造方 法の使用並びに同製品の製造、使用、譲渡、譲渡の申出及び輸出の差止め、並びに、同条2項に基づき製品の廃棄を求めるとともに、特許権侵害による損害賠償請求権として、民法709条及び特許法102条2項に基づき、平成24年から令和3年7月までの損害12億3583万6666円及び平成24年から平成27年までの損害(対応する1割の弁護士費用含む。合計2億7643万186 6円)及び平成28年の損害8008万9815円のうち4356万8134円 の合計3億2000万円に対しては訴状送達の日の翌日である令和元年7月17日から支払済みまで、その余の損害である9億1583万6666円については、令和3年10月18日付け訴え変更の 4円 の合計3億2000万円に対しては訴状送達の日の翌日である令和元年7月17日から支払済みまで、その余の損害である9億1583万6666円については、令和3年10月18日付け訴え変更の申立書送達の日の翌日である令和3年10月23日から支払済みまで、平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) ア原告は、マイクロチューブ(微細管)等の製造販売を行う株式会社である。 (争いなし)イ被告は、マイクロチューブ等の製造販売を行う株式会社である。(争いな し)ア原告は、以下の特許権(以下、「本件特許権」といい、本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有している。(甲1、2)特許番号特許第3889689号発明の名称電鋳管の製造方法及び電鋳管 出願日平成14年9月24日出願番号特願2002-278121登録日平成18年12月8日イ原告は、平成29年9月19日、本件特許につき訂正審判を請求した(訂正2017-390094)。特許庁は、同年11月13日付けで当該訂正 を認める旨の審決をし、同月24日、審決は確定した。(甲1、3、4)本件特許権に係る訂正後の特許請求の範囲の請求項1、5、6、9の記載は、以下のとおりである(以下、請求項1、5、6、9に記載された発明を順に「本件発明1」、「本件発明5」、「本件発明6」、「本件発明9」といい、これらの発明を総称して「本件発明」という。また、本件特許に係る明細書を「本件明細 書」という)。 ア請求項1外周面に電着物または囲繞物 「本件発明6」、「本件発明9」といい、これらの発明を総称して「本件発明」という。また、本件特許に係る明細書を「本件明細 書」という)。 ア請求項1外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であって、 前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物また は前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特徴とする、電鋳管の製造方法。 イ請求項5電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、 請求項1記載の電鋳管の製造方法。 ウ請求項6外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線 材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、 前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面 多角形状であって、前記電着物 前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、 前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面 多角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm以下であることを特徴とする、電鋳管。 エ請求項9電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、 請求項6又は7記載の電鋳管。 前記の請求項は、次のとおり分説することができる。 ア請求項11A 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を 形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であって、1B 前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、1C 前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるよ うに変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特徴とする、1D 電鋳管の製造方法。 イ請求項55A 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、5B 請求項1記載の電鋳管の製造方法。 ウ請求項6 6A 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設け た細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間 る材質の金属の導電層を設け た細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、 6B 前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、6C 前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面多角形状であって、6D 前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm以下であ ることを特徴とする、6E 電鋳管。 エ請求項99A 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、 9B 請求項6又は7記載の電鋳管。 被告は少なくとも次の3通りの方法(以下、次の被告方法1、被告方法2、被告方法3を併せて「被告方法」といい、被告方法1で製造された製品を「被告製品1」、被告方法2で製造された製品を「被告製品2」、被告方法3で製造された製品を「被告製品3」、被告製品1、2、3を併せて「被告製品」という。) でマイクロパイプを製造している。 ア被告方法1ステンレス製の細線材に対し、不動態膜を除去することなく連続電解メッキによって金-コバルト合金(Au:Co=99.7%:0.3%。以下「本件金‐コバルト合金」という。)、ニッケルの順でメッキをし、細線材の外周 に本件金‐コバルト合金層、その外周にニッケル層を電着させる(以下、細 線材にメッキをすることを「メッキ工程」ということがあり、メッキ工程によって形成された部分(被告方法1では本件金-コバルト合金層及びその ト合金層、その外周にニッケル層を電着させる(以下、細 線材にメッキをすることを「メッキ工程」ということがあり、メッキ工程によって形成された部分(被告方法1では本件金-コバルト合金層及びその外周のニッケル層)を「メッキ層」といい、細線材にメッキ層が形成され、細線材がメッキ層から分離するまでの細線材とメッキ層が一体となった物を「線材」ということがある。)。末端までメッキ層で覆われている線材の一端 をメッキ層の外側からエアーバイスで固定し、末端までメッキ層でおおわれている他端もラジオペンチ等でメッキ層の外側からつかみ、ラジオペンチ等で掴んだ部分を左右にゆする。これによって、エアーバイスで固定した部位及びラジオペンチ等でつかんだ部位の内側、直近の2か所においてメッキ層の本件金-コバルト合金層、ニッケル電着層の両方にクラックが生じる。そ の後、線材をラジオペンチでメッキ層の外側からつかんだまま2か所のクラックを広げる外側方向に引っ張ると、2か所のクラックの内側の細線材のみが引き延ばされ(以下、細線材を引き延ばす工程を「引っ張り工程」といい、被告方法1、2のクラックを入れた上で行う引っ張り工程を「被告引っ張り工程」ということがある。)、それによって、細線材の外表面から金-コバル ト合金メッキ層が剥離する。その後、線材をメッキ層ごとその一端をエアーバイスで固定したまま、ラジオペンチ又はロッキングプライヤ(以下「ラジオペンチ等」という。)でつかんでいた部位の内側の細線材が露出した部分を切断し、線材の末端において細線材が露出した状態にした上で、メッキ層をつかんで外側に引っ張り、細線材からメッキ層を外す(以下、細線材をメ ッキ層から外す工程を「分離工程」ということがある。)。その後、分離されたメッキ層を切断してマイクロパ した上で、メッキ層をつかんで外側に引っ張り、細線材からメッキ層を外す(以下、細線材をメ ッキ層から外す工程を「分離工程」ということがある。)。その後、分離されたメッキ層を切断してマイクロパイプとする。 被告方法1を本件発明1に対応して記載すると次のとおりとなる。(甲6、7、弁論の全趣旨)1a 外周面に本件金-コバルト合金の導電層を設けたステンレス製の細 線材の周りに電鋳によりニッケル電着物を形成し、前記電着物の内面に 前記導電層を残したまま細線材を除去してこれを切断してマイクロパイプを製造する方法であって、1b 前記本件金-コバルト合金の導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記ニッケル電着物より電気伝導率が高い。 1c-1 上記ステンレスワイヤに本件金-コバルト合金メッキおよびニ ッケルメッキした線材の一端をエアーバイスで固定する。 1c-2 上記線材の他端をラジオペンチ等でつかむ。 1c-3 上記線材の一端をエアーバイスで固定したまま、他端をつかんだラジオペンチ等を左右に揺すり、エアーバイスの固定部分および他端のラジオペンチ等でつかんだ部分の本件金-コバルト合金メッキおよび ニッケルメッキからなるメッキ層にクラックを生じさせる。 1c-4 他端をつかんだラジオペンチ等を前記2カ所のクラックの間隔をそれぞれ広げるように外方に引っ張る。 1c-5 上記ステンレスワイヤの外表面から本件金-コバルト合金メッキが剥離する。 1c-6 上記線材の他端をエアーバイスで固定したまま、上記線材の他端のラジオペンチ等を外し、同つかんでいた部分の線材を切断し、導電層およびニッケル電着物を外周から掴んで外方に引っ張りステンレスワイヤから導電層およびニッケルメッキ電着物からなるメッキ層を外 材の他端のラジオペンチ等を外し、同つかんでいた部分の線材を切断し、導電層およびニッケル電着物を外周から掴んで外方に引っ張りステンレスワイヤから導電層およびニッケルメッキ電着物からなるメッキ層を外す。 1c-7 前記上記線材から外れた導電層およびニッケル電着物からなる メッキ層を、所定長さに切断して、肉厚が50μm以下のマイクロパイプを製造する1d マイクロパイプを製造する方法。 イ被告方法2ステンレス製の芯材に連続電解メッキによって本件金-コバルト合金、ニ ッケルの順でメッキをした後、●(省略)●以外は、被告方法1と同じ。(弁 論の全趣旨)ウ被告方法3細線材の材質がステンレスではなくニクロム線であること以外は、被告方法1と同じ。 被告方法1、2は、構成要件1A、1B、1Dを充足する。また、被告方法 で製造された電鋳管は、6B、6C、6E、6Dを充足する。(弁論の全趣旨) 3 争点 本件発明1、5関係(被告方法1、2について)(争点1)なお、細線材の材質がステンレスでない被告方法3が、本件発明1、5の技術的範囲に属さないことは当事者間に争いがない。 ア被告方法1、2は、「前記細線材は一方または両方から引っ張って」(構成要件1C)を充足するか(争点1-1)イ被告方法1、2は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」(構成要件1C)を充足するか(争点1-2)ウ被告方法1、2は、「導電層は金」(構成要件5A)を充足するか(争点1 -3)エ本件発明1、5についての実施可能要件違反の有無(争点1-4)オ本件発明1、5についてのサポート要件違反の有無(争点1-5)カ本件発明1、5についての特開2001-192882号公報(乙1。以下「乙1公 についての実施可能要件違反の有無(争点1-4)オ本件発明1、5についてのサポート要件違反の有無(争点1-5)カ本件発明1、5についての特開2001-192882号公報(乙1。以下「乙1公報」という。)に記載された電鋳管を製造する方法の発明(以下 「乙1発明1」という。)を主引例とする進歩性欠如(争点1-6)本件発明6、9関係(被告製品について)(争点2)ア被告製品は、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って」(構成要件6-A)を充足するか(争点2-1)イ被告製品は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」(構成要件 6-A)を充足するか(争点2-2) ウ被告製品は、「導電層は金」(構成要件9A)を充足するか(争点2-3)エ本件発明6、9についての明確性要件違反の有無(争点2-4)オ本件発明6、9についての実施可能要件違反の有無(争点2-5)カ本件発明6、9についてのサポート要件違反の有無(争点2-6)キ本件発明6、9についての乙1公報記載の電鋳管の発明(以下「乙1発明 2」という。)を主引例とする進歩性欠如(争点2-7)消滅時効(争点3)損害(争点4) 4 争点に対する当事者の主張本件発明1、5関係 ア被告方法1、2は、「前記細線材は一方または両方から引っ張って」(構成要件1C)を充足するか(争点1-1)(原告の主張)被告方法1、2では、引っ張り工程においてメッキ層越しに細線材を引っ張っており、「前記細線材は一方または両方から引っ張って」を充足する。 被告は、引っ張り工程について細線材を直接つかんで引っ張る必要があると主張するが、特許請求の範囲の文言上、細線材を「直接掴んで」引っ張ることは記載されていない。 っ張って」を充足する。 被告は、引っ張り工程について細線材を直接つかんで引っ張る必要があると主張するが、特許請求の範囲の文言上、細線材を「直接掴んで」引っ張ることは記載されていない。 他方、特許請求の範囲の記載においては、「一方または両方から引っ張(る)」ことの目的が、「断面積が小さくなるように変形させ」、「変形させた細線材 と前記導電層の間に隙間を形成」することにあることが明記されている。すなわち、「断面積が小さくなるように変形させ」、「変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成」することができるのであれば、「一方または両方から引っ張(る)」にあたり、細線材を直接つかもうが間接的につかもうがいずれでも良いことが明らかである。 本件明細書にも、マスキング等により細線材の両端側にメッキ層が形成さ れないようにすることは、細線材の断面積が小さくなるように変形させる方法による細線材の除去方法の位置態様と記載されているにすぎないのであるから、構成要件1Cが細線材を直接つかむことを前提にしているとはいえない。 (被告の主張) 構成要件1Cは、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、」と規定しており、細線材のみを引っ張って断面積が小さくなるように変形させる必要があることは明らかである。細線材のみを引っ張って変形させるからこそ、変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成 することができる。そして、細線材のみを引っ張って細線材のみに張力を与えるためには、細線材を直接つかむなどして固定して引っ張る必要がある。 本件明細書の実施例にも、末端の細線材が露出し、その末端の細線材を直接つかんで引っ張る方法しか を引っ張って細線材のみに張力を与えるためには、細線材を直接つかむなどして固定して引っ張る必要がある。 本件明細書の実施例にも、末端の細線材が露出し、その末端の細線材を直接つかんで引っ張る方法しか開示されておらず、線材の末端までメッキ層が形成されている細線材の変形方法については何ら記載がない。メッキ層越し に細線材を引っ張ると、メッキ層にも引張力がかかり、メッキ層も伸長し、限界を超えるとメッキ層が線材の中間部分で破断し破壊されてしまう。このとき、メッキ層も伸長しているから、細線材と導電層の間に隙間を形成することができず細線材を取り外すことは困難になる。さらに、この場合、メッキ層は変形してしまうから、所定の寸法になるように製造することは現実的 ではない。末端までメッキ層が形成されている線材について細線材を取り外すためには、被告方法のようにメッキ層にクラックを生じさせる工程が不可欠であり、これは本件特許の出願時に当業者に知られた技術ではない。そうすると、本件発明は細線材を直接つかむことのみを規定しているというべきであるから、細線材を直接つかまない被告方法は構成要件1Cを充足しない。 イ被告方法1、2は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」(構 成要件1C)を充足するか(争点1-2)(原告の主張)本件発明の技術的思想は、細線材の除去において、細線材の断面積が小さくなるように変形させ、細線材とメッキ層の間に隙間を形成することで細線材の除去を容易にしたということにある以上、分離工程で、メッキ層を引っ 張っていても、細線材が引っ張って除去されているのであれば、本件発明の技術的思想を用いているといえる。 分離工程において、メッキ層と細線材とは一定程度接触しており、メッキ層を外方に引っ張るこ 張っていても、細線材が引っ張って除去されているのであれば、本件発明の技術的思想を用いているといえる。 分離工程において、メッキ層と細線材とは一定程度接触しており、メッキ層を外方に引っ張ることにより、メッキ層においては、メッキ層を外方に引っ張る方向とは逆方向に摩擦力が生じる。そして、細線材においては、作用・ 反作用の法則により、メッキ層内面と接触している箇所において、上記摩擦力が働く方向とは逆方向に同じ大きさの摩擦力が作用する。線材の他端が固定されていない場合にはこの摩擦力によって細線材が外方向に移動してしまうが、被告方法では細線材がエアーバイスで固定されているため、細線材は細線材にかかる摩擦力のかかる方向とは反対方向に同じ大きさの引張力 がかかることになるのであるから、細線材を引っ張っているといえ、これによってメッキ層は分離する。したがって、分離工程において、細線材は引っ張って除去されているといえ、被告方法1、2は構成要件1Cを充足する。 (被告の主張)構成要件1Cの「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」では、 細線材をつかんで引っ張って除去することが規定されているというべきである。被告方法1、2では、細線材を引っ張るのではなく、メッキ層をつかんで外方に引っ張って除去しているから、構成要件1Cを充足しない。 ウ被告方法1、2は、「導電層は金」(構成要件5A)を充足するか(争点1-3) (原告の主張) 電鋳法を含むメッキの当業者において、「金めっき」という用語には、コバルトが微量添加されているものも含むものとして用いられていたから、本件金‐コバルト合金メッキは、「導電層は金」を充足する。 (被告の主張)被告方法1、2における導電層は金‐コバルト合金メッキであり、金メ 添加されているものも含むものとして用いられていたから、本件金‐コバルト合金メッキは、「導電層は金」を充足する。 (被告の主張)被告方法1、2における導電層は金‐コバルト合金メッキであり、金メッ キではないから、構成要件5Aを充足しない。 エ本件発明1、5についての実施可能要件違反の有無(争点1-4)(被告の主張)本件明細書の発明の詳細な説明においては、細線材の除去方法について、「前記細線材の導電層が設けられていない部分を、一方または両方から引っ 張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材をつかんで引っ張って除去する」発明が記載されているところ、特許請求の範囲の記載の製造方法には、引っ張る対象の細線材について、導電層を設けない部分(細線材の露出部分)を備えるものと、導電層を設けない部分を備えないもの(細線材の露 出部分がないもの)の2種類が含まれる。このうち、細線材の両端に導電層を設けない部分を備えないもの(細線材の露出部分がないもの)を用いた場合、どのように細線材を直接つかんで引っ張ることができるのかや、「引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い」という本件発明1、 5の効果をどのように奏することができるのかについて、発明の詳細な説明には当業者に理解できるようにこれを記載していない。 これらによれば、本件特許は、発明の詳細な説明に、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法36条4項1号に違反するものである。 (原告の主張) 被告が主張するところの「引っ張る対象の細線材について、導電層を とができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法36条4項1号に違反するものである。 (原告の主張) 被告が主張するところの「引っ張る対象の細線材について、導電層を設けない部分(細線材の露出部分)を備えるもの」は、本件明細書では、「好ましい」態様として記載されているにすぎない。 本件明細書においては、引っ張る対象の細線材について、「導電層を設けない部分を備えないもの(細線材の露出部分がないもの)」を用いた場合につ いても、冶具や工具を用いて、細線材の露出部分がない部分である「電着物または囲繞物」を固定して、細線材を除去することが記載されており(【0008】、【0043】、【0076】、【0117】)、「線材の両端部分には導電層が設けられていない部分」を設けなければならないということはない。 また、電鋳品に溝(被告方法でいうクラック)を入れ、溝部分を曲げて折 ってから、引き抜くという方法が、本件特許の出願時には周知技術となっていた(甲27ないし29)。また、本件特許の出願時、電鋳品において、線材を露出していない電鋳部分をバイス等の冶具にセットして、線材を引き抜くという方法も周知技術であった(甲31、乙2、30)。 これらによれば、細線材の露出部分がないものを用いた場合であっても、 本件明細書の記載や当時の周知技術を適用することにより、当業者は、「引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い」という効果を奏することができることは明らかであり、本件明細書の発明の詳細な説明に当業者に理解できるような記載がある。 オ本件発明1、5についてのサポート要件違反の有無(争点1-5)(被告の主張)前記エで主 きることは明らかであり、本件明細書の発明の詳細な説明に当業者に理解できるような記載がある。 オ本件発明1、5についてのサポート要件違反の有無(争点1-5)(被告の主張)前記エで主張したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、「前記細線材の導電層が設けられていない部分を、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間 に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去する」発 明が記載されているのに対し、特許請求の範囲に記載された発明は、導電層が設けられていない部分を備えないもの(細線材の露出部分がないもの)を包含している。そして、この導電層が設けられていない部分を備えないもの(細線材の露出部分がないもの)については、その全長にわたって電着物または囲繞物が形成されているから、細線材を直接つかむことはできず、細線 材の一方または両方からどのように引っ張ることができるのかは不明と言わざるを得ない。 特許請求の範囲に記載された発明と、発明の詳細な説明に開示された発明とに齟齬があることになり、サポート要件を満たさない。 (原告の主張) 前記エと同様の理由によりサポート要件を満たすことは明らかである。 カ本件発明1、5についての乙1発明1を主引例とする進歩性欠如(争点1-6)(被告の主張)乙1公報には、以下の乙1発明1が記載されている。 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面 主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳 管を製造する方法であって、前記金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属導電層は、メッキで形成されたものであり、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、 前記細線材を引き抜くことにより、電鋳管を製造することを特徴とする、 電鋳管の製造方法。 本件発明1と乙1発明1とを対比すると、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 【一致点】外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウ ム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であって、 前記金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属導電層は、メッキで形成されたものであり、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、前記細線材を引き抜くことにより、電鋳管を製造することを特徴とする、 電鋳管の製造方法。 【相違点1】導電層のメッキ方法に関し、本件発明1は電解メッキであるのに対し、乙1発明1は、メッキの方法が特定されていない点。 【相違点2】 細線材の除去方法に関し 鋳管の製造方法。 【相違点1】導電層のメッキ方法に関し、本件発明1は電解メッキであるのに対し、乙1発明1は、メッキの方法が特定されていない点。 【相違点2】 細線材の除去方法に関し、本件発明1は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去するものであるのに対し、乙1発明1は、抜き取り方法について特定していないこと。 【相違点3】 電着物または前記囲繞物の肉厚に関し、本件発明1は、50μm以下であるのに対し、乙1発明1は、肉厚の特定をしていないこと。 相違点1について本件発明においては、芯材の外周面に金がメッキされていればよく、その金メッキの方法が電解メッキであることが特別の効果を奏する旨の記 載も示唆もない。 芯材が導電性であれば、当該芯材に対し金メッキを施す場合は、通常、電解メッキの方法による。そして、特開平10-335135号公報(乙3)、特開平10-251889号公報(乙4)、特開2000-328287(乙5)、特開2001-309927号公報(乙6)にも、金メッキ を電解メッキ法を用いて行うことが、各発明の前提として記載されている。 したがって、相違点1に係る本件発明1の構成を当業者は容易に想到できた。 相違点2について乙1公報には、芯材の除去について、「ステンレス線やリン青銅線は張 力が高いので、フェルール形成用微細円柱から芯線を引き抜くのに好都合である。」(【0020】)旨の記載がある。張力とは、物体内の任意の断面に、垂直に、面を互いに引っ張るように働く応力のことであるから、張力が高いということは、芯材を長手方向に引っ張るときに生じる張 である。」(【0020】)旨の記載がある。張力とは、物体内の任意の断面に、垂直に、面を互いに引っ張るように働く応力のことであるから、張力が高いということは、芯材を長手方向に引っ張るときに生じる張力が大きくても、引張り力によって芯材は弾性変形ないし塑性変形(いずれも、芯 材の直径方向の寸法が短くなり、断面積が小さくなる)するもののなかなか破断しないということを意味している。すなわち、上記記載は、実質的には相違点2を示唆するものである。 また、本件発明1と同様の電鋳管の製造方法において芯材の除去方法を示す特開2002-80991号公報(乙2。以下「乙2公報」という。) に記載されている発明(以下「乙2発明」という。)を乙1発明に適用する ことで、芯材(ステンレス製)が有する特有の塑性加工性により、引き抜く張力による軸方向の伸びと直径の細まりを生じることによって除去できることに、当業者は容易に想到する。 相違点3細線材に電着する金属の肉厚は、単なる設計事項であり(【0041】)、 前記メッキ層の厚さが50μm以下の範囲のものが製品として望ましいというにすぎない。細線材の除去も本件明細書で4種類開示されており容易であるから(【0042】)本件発明において、肉厚を50μm以下にすることが技術的な困難を伴うなどというものではない。つまり、肉厚を50μm以下にすることには格別な技術的意義はない。 乙1公報の実施例の記載によれば、平均約2.5mmの直径のニッケル電鋳品(肉厚は、1.19mmと計算される)は、電鋳を18時間実施することで得られるものであるから、この電鋳時間を短縮することによって、所望の肉厚の電鋳品が得られることは当業者には自明である。実際に、20~50μmの範囲で本件発明1の肉厚と一致する 18時間実施することで得られるものであるから、この電鋳時間を短縮することによって、所望の肉厚の電鋳品が得られることは当業者には自明である。実際に、20~50μmの範囲で本件発明1の肉厚と一致する電鋳管、肉厚50μm 以下のめっき膜、肉厚50μmの電着物(ニッケル光沢メッキ)を記載した文献(乙7、3、8)が存在し、相違点3は実質的相違点ではない。 原告は、本件発明1においては、薄層は、電着物または囲繞物の内面に残されたままの導電層であるのに対し、乙1発明1においては、薄層が、電着物または前記囲繞物の内面に残されず、細線材とともに除去される 点も、相違点であると主張する(以下、原告主張のこの点を「相違点4」という。)が、乙1公報の記載(【0002】、【0003】)によれば、乙1発明1では、内径0.126mmのフェルールを製造するために、外径0.126mmのステンレス製の線を母型とし、これに10μmの金メッキをして外径0.136mmの芯線にするところ、ステンレス製の線を引 き抜くときに、一緒に金メッキ層(10μm)を除去してしまうと、内径 0.136mmの電鋳管しか得られず、これをフェルールに用いることはできない。外径0.126mmのステンレス製の線を母型とし、当該母型であるステンレス製の線のみを除去することで初めて内径0.126mmの電鋳管が得られる。そして、この場合において、その内面に10μmの金メッキ層が残存することは当業者に明らかである。よって、乙1発明 1では薄層は電着物に残されているのであるから、相違点4は存在しない。 本件発明5は、本件発明1について電着物または囲繞物をニッケルとし、導電層を金としたのみであるから、本件発明5と乙1発明1との一致点及び相違点は本件発明1と乙1発明1の一 違点4は存在しない。 本件発明5は、本件発明1について電着物または囲繞物をニッケルとし、導電層を金としたのみであるから、本件発明5と乙1発明1との一致点及び相違点は本件発明1と乙1発明1の一致点及び相違点と同じであり、 前記からと同様の理由により進歩性が欠如している。 (原告の主張)乙1公報には、本件発明の「電着(析出)させた金属から細線材を除去することは、電着した金属が細線材の外面に密着しているので、容易なことではない」という課題の記載はないし、また、微細管の内部に導電層を 設けて電気伝導率を良くすること、「細線材を除去する際において、内面に設けた導電層に引張力がかかり難くして、導電層と基線材とを分離し易くし、導電層と電着物または囲繞物との密着性が損なわれ難いようにする」ことについて、記載も示唆もされていない。 また、以下の相違点1ないし4が存在し、当業者は本件発明1の構成を 容易に想到できない。 相違点1乙1発明において、「ステンレス線に10μm程度の薄い層に抵抗率の小さい金属をメッキ」(段落【0018】等)することについては、「電解メッキ」を積極的に排除している。すなわち、乙1発明1においては、乙 1公報の段落【0008】において、ステンレス線等の抵抗率の大きな芯 線において、金属を「電解メッキ」すると、電源に近い部分は電着量が多くなり、電源から遠いと電着量が少なくなり、外径が不均一になることが明記されている。このような記載からすれば、当業者は、抵抗率の大きいステンレス線の外表面に「電解メッキ法」によって金等の金属をメッキしたときにも、金メッキの外径は不均一となると理解する。そして、ステン レス線の外表面に電解メッキ法を用いて外径不均一な金メッキを行うと、仮に 外表面に「電解メッキ法」によって金等の金属をメッキしたときにも、金メッキの外径は不均一となると理解する。そして、ステン レス線の外表面に電解メッキ法を用いて外径不均一な金メッキを行うと、仮にその上に電鋳層が膜厚が均一に電着されたとしても、フェルールの外径は不均一なものとなってしまうことは容易に理解できる。そうすると、乙1発明1に接した当業者は、乙1発明1は、ステンレス線の外表面に、「電解メッキ法」によって金等の金属をメッキすることを積極的に排 除していると理解できる。 したがって、「金メッキを電解メッキ法を用いて行うこと」が、当業者において周知技術であるか否かにかかわらず、乙1発明1においては、金メッキを電解メッキ法を用いて行うことを積極的に排除している以上、乙1発明1の金メッキを電解メッキ法とすることを当業者は想到しない。 また、被告が引用する文献(乙4~乙6)に記載された技術は、パイプを形成した後に、内周面に電解金メッキを施すものであって、本件発明1はもとより、乙1発明1とも無関係である。本件発明1は、製造方法にかかる発明であるところ、乙1発明1に上記文献を組み合わせても、乙1発明1の微細円柱又はフェルールを形成した後に、電解メッキで金メッキ を施すことになるのであるから、本件発明1に係る構成を想到することはあり得ない。さらに、本件発明1は、電気伝導率を良好にする目的で導電層を設けるものであるが(【0008】、【0045】、【0082】及び【0119】)、被告が引用する文献においては、パイプの内周面に金メッキを施す目的について、電気伝導率を良好にするということは一切開示 されていない。したがって、乙1発明1と上記文献に記載された技術を組 み合わせても、本件発明1に係る構成を想到する キを施す目的について、電気伝導率を良好にするということは一切開示 されていない。したがって、乙1発明1と上記文献に記載された技術を組 み合わせても、本件発明1に係る構成を想到することはない。 相違点2被告は、乙1公報の段落【0020】の記載は、実質的には相違点2を示唆するものであると主張する。 しかしながら、被告が主張する「張力が高い」という技術的意味は不明 確である。そもそも「張力」という用語の意味も不明確であり、仮に、「張力」が、被告のいうように「引張り力」であるとしても、「張力が高い」ことが「引張り力が高い」ということとなり、引っ張る力が高いことになるという技術的意味が理解できない。また、「張力が高い」ということから、「なかなか破断しないということ」といえるのかも不明である。 仮に、「張力が高い」ということから、「なかなか破断しないということ」といえるとしても、「張力が高い」ということから、「引張り力によって芯材は弾性変形ないし塑性変形する」とは限らない。すなわち、引張り力(前述のとおり、「引張り力」が張力を意味するのかも不明である)によっても、変形せずに破断しないということもあり得る。 また、乙1公報の【0020】における引き抜きの記載は、「また、ステンレス線やリン青銅線は張力が高いので、フェルール形成用微細円柱から芯線を引き抜くのに好都合である。」という一文のみであり、具体的な引き抜き方法については記載されていない。むしろ、乙1公報の段落【0024】の記載からすれば、本件発明1における、芯線の断面積を小 さくするという引き抜き方法とは反対に、芯線の断面積が大きくなる引き抜き方法が示唆されているとすらいえる。 相違点3乙1発明1は、フェルール形成用微細円柱に における、芯線の断面積を小 さくするという引き抜き方法とは反対に、芯線の断面積が大きくなる引き抜き方法が示唆されているとすらいえる。 相違点3乙1発明1は、フェルール形成用微細円柱についてのものであるところ、乙1発明1のフェルール形成用微細管について、本件発明1の50μ m以下の肉厚にすることは、当業者は想到し得ない。すなわち、乙1公報 の【0003】に、「フェルールは、石英系光ファイバー接続用コネクタの構成部品の一部として使用される。光ファイバーは細くて折れやすいので、その接続のためには光ファイバーをコネクタに確実に固定する必要がある。このための光コネクタ用部品が、フェルールである。」と記載されているとおり、フェルールは、光ファイバをコネクタに確実に固定す るための部品である。そして、「実際のプラスチックフェルールに印加される押圧力Fとしては、5.9Nのばねを内蔵したMU形プラグの場合には、割りスリーブの許容されるゲージ保持力範囲(1.0~2.5N)[9]を差し引いた3.4~4.9Nの値が想定され、9.8Nのばねを内蔵したSC形プラグの場合には、割りスリーブのゲージ保持力範囲(2.0~ 5.9N)[10]を差し引いた4.1~7.8Nの値が想定される.」ため(甲34)、押圧や張力に耐えられるだけの強度が必要となる。そのため、フェルールは肉厚であることが要求され、乙1公報においては、フェルールの一例として、内径が約0.126mmで外径が2.5mmという内径に対して十分な肉厚(約1.187mmである)の外径となっている のである。このように、厚肉であることが要求されるフェルールにおいて、50μm以下に薄肉化することを当業者が想到することはあり得ない。したがって、乙1公報に触れた当業者は、 外径となっている のである。このように、厚肉であることが要求されるフェルールにおいて、50μm以下に薄肉化することを当業者が想到することはあり得ない。したがって、乙1公報に触れた当業者は、フェルールの肉厚を50μm以下にすることはできない。また、被告が関連するとして主張する技術と乙1発明1は、全く異なる技術分野のものであり、かつ、異なる内径の ものである以上、それらの文献に触れた当業者が、そこに記載された肉厚の数値を乙1発明1に適用するという動機付けはない。 乙1発明1と本件発明1とは、薄層と電着物又は囲繞物の関係について、本件発明1においては、薄層は、電着物または囲繞物の内面に残されたままの導電層であるのに対し、乙1発明1においては、薄層が、電着物又は 前記囲繞物の内面に残されず、細線材とともに除去される点も、相違点で ある(相違点4)。乙1公報では、「導電層」がステンレス製の細線材とともに「芯線」を構成すると記載されており(【0023】)、その上で、「芯線」が電鋳管から除去されると記載されている(【0024】)のであるから、「導電層」は電鋳管である電着物や囲繞物の内面に残されていない。 また、乙1公報において引用されている特開平11-193485号公 報(甲31)には、表面性状が平滑な素材を芯材として使用することで内面精度の高い細孔チューブを得ることができることが記載されている以上、乙1公報における「芯線の外表面が平滑になるというメリット」(【0020】)というのは、ステンレス線にメッキをすることによって芯線の外表面が平滑になることにより、フェルールの内面精度が高くなるという ことを意味していることは明らかである。すなわち、フェルールから除去されるのは、外表面が平滑になった芯線(表面に って芯線の外表面が平滑になることにより、フェルールの内面精度が高くなるという ことを意味していることは明らかである。すなわち、フェルールから除去されるのは、外表面が平滑になった芯線(表面に抵抗率の低い金属がメッキされている芯線)である。 薄層を設ける目的は、本件発明1においては、①芯線が除去され製造が完了した製品である、②電鋳管自体の内面の電気伝導性を良くすることで あるのに対し、乙1発明1においては、①’電鋳管の製造過程において、②’電鋳管ではなく、芯線の表面の抵抗率を小さくすることであって、その目的が全く異なる。 乙1発明1においては、電鋳管の製造過程において、芯線の表面の抵抗率を小さくする目的で薄層を設けているのであるから、当該薄層を電鋳管 の内面に残して電鋳管(フェルール)の内面の電気伝導性を良くするという技術思想は一切ない。むしろ、乙1発明1においては、均一な外径の電鋳管の製造が完了した際には、目的を達した以上、薄層が被覆されている芯線ごと除去されることは明らかである。したがって、乙1公報においては、薄層を電鋳管の内面に残して電鋳管(フェルール)の内面の電気伝導 性を良くするという、本件発明1の技術思想は一切ないばかりか、薄層を 電鋳管の内面に残さずに、薄層により被覆されている芯線ごと除去されるという反対の教示があるといえる。 これらから、乙1発明1から、本件発明1の構成を想到することはあり得ない。 本件発明5についても、上記と同様の理由により進歩性が認められる。 本件発明6、9関係ア被告製品は、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って」(構成要件6-A)を充足するか(争点2-1)(原告の主張)前記ア(原告の主張)と同様の理由により、被告方法1、2、 9関係ア被告製品は、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って」(構成要件6-A)を充足するか(争点2-1)(原告の主張)前記ア(原告の主張)と同様の理由により、被告方法1、2、3で製造 された電鋳管である被告製品は、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って」を充足する。 (被告の主張)前記ア(被告の主張)と同様の理由により、被告製品は、「前記細線材は、一方または両方から引っ張って」を充足しない。 イ被告製品は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」(構成要件6-A)を充足するか(争点2-2)(原告の主張)前記イ(原告の主張)と同様の理由により、被告方法1、2、3で製造された電鋳管である被告製品は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張っ て除去」を充足する。 (被告の主張)前記イ(被告の主張)と同様の理由により、被告製品は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去」を充足しない。 ウ被告製品は、「導電層は金」(構成要件9A)を充足するか(争点2-3) (原告の主張) 前記ウ(原告の主張)と同様の理由により、被告方法1、2、3で製造された電鋳管である被告製品は、「導電層は金」を充足する。 (被告の主張)前記ウ(被告の主張)と同様の理由により、被告製品は、「導電層は金」を充足しない。 エ本件発明6、9についての明確性要件違反の有無(争点2-4)(被告の主張)物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合、その発明の要旨は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定されると解するのが相当である。 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲 方法が記載されている場合、その発明の要旨は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定されると解するのが相当である。 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる と解するのが相当である。 本件発明6及び本件発明9は電鋳管の発明であり、出願時において当該電鋳管をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するとすることは到底できない。 さらに、本件明細書の発明の詳細な説明において、同請求項に記載された 製造方法を含めて、電鋳管の製造方法における細線材の除去方法については、以下の開示がある(【0041】 以下、その番号に応じて、記載された方法について、「1の方法」、「2の方法」などということがある。)。 「細線材は、▲1▼電着物または囲繞物を加熱して熱膨張させ、または細線材を冷却 して収縮させることにより、電着物または囲繞物と細線材の間に隙間を 形成したり、▲2▼液中に浸してまたは液をかけることにより、細線材と電着物または囲繞物が接触している箇所を滑り易くしたり、▲3▼一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、掴 んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。 また、▲4 線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、掴 んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。 また、▲4▼熱または溶剤で溶かしても除去できる。」(【0041】)本件発明6及び本件発明9の電鋳管は、特許請求の範囲に記載された以外 の細線材を除去する方法(上記1、2又は4の方法)によっても製造することができるものであり、製造された電鋳管がどのような製造方法に基づくものであるのか不明とならざるを得ないから、本件発明6及び本件発明9をもって、これを明確であるとすることはできない。 (原告の主張) 特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっても、当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、明細書、図面の記載や技術常識から一義的に明らかな場合には、第三者の利益が不当に害されることはないから、明確性要件違反には当たらないと解される。 本件発明6の特許請求の範囲の「外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し」という記載は、本件発明に係る電鋳管が、導電層と電着物または囲繞物を有するという、電鋳管の構造を示すものにすぎない。また、「前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前 記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細 線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される」という記載は、断面積を小さくすることで、「細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電 物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される」という記載は、断面積を小さくすることで、「細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物から支障なく除去できる」(【0044】)ことから、良好な内面精度の電鋳管という構造又は特性 を有することが一義的に明らかである。 これに対し、被告は、本件明細書の段落【0041】に、本件発明6及び本件発明9とは異なる除去方法(1の方法、2の方法、4の方法)が記載されていることを挙げて、本件発明6及び本件発明9が明確であるとすることはできないと主張する。 しかしながら、「細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物から支障なく除去できる」(【0044】)ことから、良好な内面精度の電鋳管という構造又は特性を有するのに対し、1の方法では、「電着物または囲繞物を加熱して熱膨張」すると所定の径の電鋳管が得られないことになる上、「細線材を 冷却して収縮させ」ても支障なく除去できるものではない。 また、2の方法では、「細線材と電着物または囲繞物が接触している箇所を滑り易くし」ているものの、当該記載から「細線材と電着物または囲繞物が接触している」ことは明らかである。細線材と電着物又は囲繞物が接触したまま引き抜くと、細線材が電着物又は囲繞物から支障なく除去できない。 すなわち、乙1公報の【0020】に「芯線の表面は平滑な表面であることが好ましいが、微小な凹凸があることが多い。」と記載されていることから明らかなように、芯線の表面には微小な凹凸が多い。したがって、細線材と電着物または囲繞物が接触したまま引き抜くと、当該凹凸により、電着物または囲繞物の内面 あることが多い。」と記載されていることから明らかなように、芯線の表面には微小な凹凸が多い。したがって、細線材と電着物または囲繞物が接触したまま引き抜くと、当該凹凸により、電着物または囲繞物の内面に線状痕のような傷がついてしまい、電鋳管の内面精度が 低いものとなる。すなわち、本件発明6は、「細線材と電着物または囲繞物の 間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物から支障なく除去できる」(【0044】)ことから、良好な内面精度の電鋳管という構造又は特性を有するものであるのに対し、細線材と電着物又は囲繞物が接触したまま引き抜くと、内面精度の低い電鋳管になってしまう。 さらに、4の方法では、乙2公報の【0007】に「芯材にアルミ線を使用し、電鋳後にアルミを溶解除去することは、チューブの内径が充分に大きく且軸方向の長さが短くなければ化学反応は作用し難く実用性がない。芯材に電鋳層より融点の低い金属材料(合金を含む)を使用し、加熱することにより芯材を選択的に溶融状態にできても、細いチューブから溶融した芯材を 排出除去することは至難である。したがって芯材表面の良好な仕上面を細孔チューブの内面に転写し得る電鋳法による製造方法は、芯材の除去についてのこれらの問題点を解決しない限り、引き抜き加工の欠点を改善する新しい製造方法としての実用性がない。」と記載されているとおり、内面精度の点で実用性がない。 そして、本件発明6に係る電鋳管とは、細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造された、内面精 なるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造された、内面精度の高い電鋳管であるといえる。そうすると、本件発明6の特許請求 の範囲6に製造方法が記載されているとしても、本件発明6に係る電鋳管のどのような構造又は特性を表しているのかは、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかである。よって、本件発明6、9の特許請求の範囲の記載により、同発明に係る特許が明確性要件に違反するということはない。 オ本件発明6、9についての実施可能要件違反の有無(争点2-5) (被告の主張)前記エ(被告の主張)と同様の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (原告の主張) 前記エ(原告の主張)と同様の理由により、本件発明6、9について実施可能要件違反はない。 カ本件発明6、9についてのサポート要件違反の有無(争点2-6)(被告の主張)前記オ(被告の主張)と同様の理由により、特許請求の範囲に記載され た発明と、発明の詳細な説明に開示された発明とに齟齬があることになり、本件発明6、9についてサポート要件を満たさない。 (原告の主張)前記オ(原告の主張)と同様の理由により、本件発明6、9については、サポート要件違反はない。 キ本件発明6、9についての乙1発明2を主引例とする進歩性欠如(争点2-7)(被告の主張)乙1公報には、以下の乙1発明2が記載されている。 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウ ム及びこれらの金属 とする進歩性欠如(争点2-7)(被告の主張)乙1公報には、以下の乙1発明2が記載されている。 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウ ム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、 前記金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいず れかからなる金属導電層は、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状であることを特徴とする、電鋳管。 本件発明6と乙1発明2とを対比すると、以下の点で一致し、以下の点 で相違する。 【一致点】外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケ ルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、前記金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属導電層は、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合 金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状であることを特徴とする、電鋳管。 【相違点 ケル又はニッケルを主体とする合 金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状であることを特徴とする、電鋳管。 【相違点1】細線材の除去方法に関し、本件発明6は、一方または両方から引っ張っ て断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去するものであるのに対し、乙1発明2は抜き取り方法について特定していないこと【相違点2】 電着物または前記囲繞物の肉厚に関し、本件発明6は、5μm以上50 μm以下であるのに対し、乙1発明2は肉厚の特定をしていないこと本件発明6、9と乙1発明2の相違点は、実質的には、本件発明1と乙1発明1の相違点2、3と同じである。したがって、前記カ(被告の主張)と同様の理由により、当業者には容易想到であり進歩性が欠如している。 (原告の主張)本件発明6、9と乙1発明2には、被告が主張する相違点1、2に加えて、次の相違点(相違点3)がある。 細線材と薄層と電着物又は囲繞物の関係について、本件発明6においては、薄層は、電着物または囲繞物の内面に残されたままの導電層であるのに対し、 乙1発明2においては、薄層が、電着物または前記囲繞物の内面に残されず、細線材とともに除去される点本件発明6、9と乙1発明2の相違点は、実質的には、本件発明1と乙1発明1の相違点2、3、4と同じであり、前記カ(原告の主張)と同様の理由により、進歩性が認められる。 消滅時効(争点3)(被告の主張)平成22年7月12日当時、被告は、自社で電鋳管を製造はせず、他社から電鋳管を購入してこれを切断加工して販売してい 由により、進歩性が認められる。 消滅時効(争点3)(被告の主張)平成22年7月12日当時、被告は、自社で電鋳管を製造はせず、他社から電鋳管を購入してこれを切断加工して販売していたが、同日、原告から被告に電鋳管の発注先を変更した顧客から、被告が製造している電鋳管は原告の特許 権を侵害していて、同月中には提訴の準備ができるとの話を原告からされたとのメールを受信した。また、被告は、平成24年4月以降に電鋳管の生産を開始し、平成27年頃には、電鋳によるマイクロチューブ製造の主要会社として知られるようになった。 これらによれば、原告は、被告に対する訴訟提起を検討していた旨の発言を 被告の取引先にした平成22年7月12日か、遅くとも被告がマイクロチュー ブ製造分野における主要な会社として知られるようになった平成27年頃には、被告が被告製品を販売しており、かつ、これが特許権侵害を構成し得るものであると認識していたというべきである。よって、対応する期間の製造に係る損害賠償については、時効により原告の不法行為に基づく請求権は消滅した。 (原告の主張) 被告の主張は否認ないし争う。 被告は、本件訴訟提起前の証拠保全においてですら、被告製品の製造に当たり、細線材としてニッケル芯線を用いていると説明しており、その旨の仕様を提出していた。原告が被告が被告方法を実施していることを知ったのは、被告が本件訴訟の答弁書を提出したときである。 被告の主張によれば、平成22年当時、被告は被告方法を用いた電鋳管の製造をしていなかったのであるから、消滅時効が成立する余地はない。 損害(争点4)(原告の主張)ア被告方法1、2を使用して平成24年3月から令和3年7月までに製造さ れた被告製品1、2の売 ていなかったのであるから、消滅時効が成立する余地はない。 損害(争点4)(原告の主張)ア被告方法1、2を使用して平成24年3月から令和3年7月までに製造さ れた被告製品1、2の売上げは、次のとおりである。 被告製品1売上げ ●(省略)●円被告製品2売上げ ●(省略)●円本件において被告製品1、2のそれぞれの売上げ上位20品目のいわゆる限界利益率が被告製品1、2の売上全体の限界利益率であることについては 当事者間に争いがない。 被告製品1及び対象製品2の売上げ上位20品目の平成28年7月から令和3年7月までの売上合計額はそれぞれ次のとおりである。 被告製品1(上位20品目)売上げ ●(省略)●円被告製品2(上位20品目)売上げ ●(省略)●円 上記売上げにつき、経費に当たるのはメッキ消耗品、AuCoメッキ、芯 線の費用である。他の経費は、以下のイのとおり、認められない。上記売り上げから経費を控除すると限界利益は次のとおりになる。 被告製品1(上位20品目)限界利益 ●(省略)●円被告製品2(上位20品目)限界利益 ●(省略)●円そうすると、被告製品1の上位20品目の限界利益率は●(省略)●%、 被告製品2の上位20品目の限界利益率は●(省略)●%になる。 よって、被告製品による利益は次のとおりとなる。 被告製品1利益 ●(省略)●円被告製品2利益 ●(省略)●円弁護士費用相当損害金は、これらの合計額の1割である●(省略)●円を下 らない。 上記の限界利益率(●(省略)●%と●(省略)●%)を適用して各年の損害を計算すると、別紙損害計算表(原告主張)のとおりとなる。 よって、被告は原告に対し、民法709条及び特許法102条2項に 上記の限界利益率(●(省略)●%と●(省略)●%)を適用して各年の損害を計算すると、別紙損害計算表(原告主張)のとおりとなる。 よって、被告は原告に対し、民法709条及び特許法102条2項に基づき、12億3583万6666円及びうち3億2000万円(平成24年から平成 27年までの損害合計2億7643万1866円及び平成28年の損害8008万9815円のうち4356万8134円の合計額)に対しては令和元年7月17日から支払済みまで、その余の損害である9億1583万6666円については、令和3年10月23日から支払済みまでの遅延損害金を請求する。 イ経費について 電気代、水道代被告は、電気代、水道代が各部門マネージャー間で協議の上でマイクロチューブ製造部門が負担すべき割合を定めたと主張するが、当該割合を定めた合理的な説明や合理的根拠が一切示されていないことに加えて、これらが変動費に該当することについて合理的な資料もない。さらに、マイク ロチューブ製造部門では、被告製品1、2以外の製品も多数製造している のであるから、被告が計上する費用が不当であることは明らかである。 被告製品1、2の売上げと電気代、水道代は全く比例関係にない。被告製品1、2の電着物の肉厚は薄いものであるため、消費電力は大きくない。 そのため、電鋳に用いられる電気代は通常工場全体の電気代の数%程度である。そして、工場が寒冷地に立地していることからすると暖房費がかさ むことが容易に推測できる。また、被告においては、純水を朝から夜まで交換することなく貯めて使用しているので、水道代も多くかからない。そうすると、製造に要する費用は、被告が主張する5割ではなく、多く見積もっても全体の1割である。 また、被告は後工程にも電気代 で交換することなく貯めて使用しているので、水道代も多くかからない。そうすると、製造に要する費用は、被告が主張する5割ではなく、多く見積もっても全体の1割である。 また、被告は後工程にも電気代を要すると主張するが、後工程には、単 に電鋳管を鋏などでカットしたり検査するだけの工程であり、切断工程及びカシメ等加工は、外注加工しているから、追加的に必要になる電気代は存在しない。 外注加工代(切断加工)及び外注加工代(カシメ等加工)被告の証拠によれば、「マイクロチューブ切断加工」の他に、「ダイサー 加工品」、「スライシング加工品」の項目も計上されており、後者は電鋳管の切断加工工程に該当しない。 また、被告は治工具(ワークローラー芯金や新規カットローラー)について外注加工費に含まれると主張するが、被告製品1、2の加工数量に比例する数量の治工具が必要となるわけではないから、被告製品1、2の製 造販売に直接関連して追加的に必要となった経費ではない。加えて、新規カットローラーを用いて製造された製品が被告製品1、2であるか不明であることからも経費から除外するべきである。同様に、「ワークローラー芯金」、「カット治具代含む」、「ローラー費込み」、「ニッケル棒加工治具代」についても経費から除外されるべきである。 また、単価が「式」となっているものは、数量にかかわらず一定の値の ものがほとんどであるから、加工する数量に比例して価格が決まるという性質ではない。また、1個当たりの単価が定められているものについては、「品名・仕様」欄(上記緑色枠囲み)には、外径(φ)×内径(φ)と長さ(L)しか記載されておらず、マイクロチューブの内面に金メッキの導電層が設けられているか不明である。そして、「ニッケル棒」と記載さ 「品名・仕様」欄(上記緑色枠囲み)には、外径(φ)×内径(φ)と長さ(L)しか記載されておらず、マイクロチューブの内面に金メッキの導電層が設けられているか不明である。そして、「ニッケル棒」と記載されて いるだけのものについては、そもそも「電鋳管」かも不明である。 人件費被告の従業員の給与については、定額の基本給に種々の手当が加算されて支給されているだけであり、侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費には該当しない。 派遣従業員の費用についても、時間単価で定められているだけである。 また、当該派遣従業員が製造以外に関与している時間も含まれる。よって、被告従業員の給与と同様に侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費には該当しない。また、被告が提出した資料では、被告製品1、2の製造に関与した人員に係る費用であることが示されていない。 さらに、被告製品1、2の売上高と人件費が全く比例関係にないため、不合理である。 ウ切断加工による付加価値の増加について切断加工による付加価値の増加を裏付けるものとして被告が提出した注文書等には、承認欄も作成欄も押印がなく、社印も押されていないから不自 然であり、実際に長尺の電鋳管を購入した際の資料であるとは考えられない。 さらに、被告が提出した資料には、「マイクロチューブ」とは記載されているものの、「ニッケル」とも「電鋳管」とも記載がないのであるから、被告製品1、2と同等の製品であったことを裏付けるとはえいない。 また、被告が提出した資料からは、被告が仕入れた長尺の電鋳管が被告が 販売したマイクロチューブに加工されたことを裏付ける記載が一切ない。販 売されたマイクロチューブの長さも不明で、本当に5本得られたのかも不明であ 被告が仕入れた長尺の電鋳管が被告が 販売したマイクロチューブに加工されたことを裏付ける記載が一切ない。販 売されたマイクロチューブの長さも不明で、本当に5本得られたのかも不明である。 被告は、切断等加工に独自のノウハウがあると主張するが、マイクロチューブの切断には、通常ワイヤーソーを用いるのであり、その場合、バリのない高品質の切断が可能になるし、砥粒、砥粒液を用いることも通常のことで ある。さらに被告は加工について外注しているのであるから、独自のノウハウなどない。 原告の場合、単価900円(数量300)の120mmのマイクロチューブについて、切りしろを考慮すると長さ4mmのマイクロチューブを27本得ることができ、これを1本36円(数量10000)で販売しているから、 切断加工による価格上昇は10%未満である。 エその他の推定覆滅について被告は、原告の完全子会社化により原告の顧客が移動した旨主張するが、その根拠の電子メール(乙25)の記載は、同電子メールの発信者の憶測にすぎないことが明白であり、被告が主張する事情は認められない。 (被告の主張)ア被告製品1、2の売上げ上位20品目の経費については別紙上位20品目経費一覧表(被告主張)記載のとおりである。また、被告製品1については、平成24年から、被告製品2については、平成27年から製造しており、裏付け資料のない費用については0円で計上しているが、実際にはいずれの費 用についても相当額を計上すべきである。控除すべき各費用は、以下のとおりである。 メッキ消耗品、AuCoメッキ、芯線は、いずれも材料費である。 電気代、水道代電気代、水道代として計上している金額は、製造当時、各部門マネージ ャー間で全社の電気代、水 りである。 メッキ消耗品、AuCoメッキ、芯線は、いずれも材料費である。 電気代、水道代電気代、水道代として計上している金額は、製造当時、各部門マネージ ャー間で全社の電気代、水道代のうち、マイクロチューブ製造部門におい て負担すべきとされた分担額(乙37~41、52。いずれも当時の資料が残っているものに限る。)を基礎に計算したものである。 上記のマイクロチューブ製造部門において負担すべき水道代のうち、製品の製造に係る部分は50%を下らないと推計し、被告製品1、2の全売上げ(別紙損害計算表(原告主張)記載のとおり。)と被告製品1、2の上 位20品目の売上げ(別紙20品目の売上げ(被告主張)記載のとおり。)から、電気代及び水道代のうち被告製品1、2の上位20品目に相当する額を算出した(電気代は前工程と後工程でさらに2分した。)。 外注加工代(切断加工)及び外注加工代(カシメ等加工)被告製品1、2全体に係る切断加工及びカシメ等加工の費用(裏付け資 料のあるものに限る。)に、と同様に、被告製品1、2の売上げに占める被告製品1、2の上位20品目の売上げを乗じて算定した。 工具代工具代は、マイクロチューブの加工に用いる特殊鋏の費用について、と同様に、被告製品1、2の売上げに占める被告製品1、2の上位20品 目の売上げを乗じて算定した。 人件費従業員賃金及び派遣従業員の費用の合計額である。 被告製品1、2全体に係る従業員賃金、派遣従業員の費用(いずれも裏付け資料のあるものに限る。)に、と同様に、被告製品1、2の売上げに 占める被告製品1、2の上位20品目の売上げを乗じて算定した。 イ切断加工による付加価値仮に被告方法1、2が本件発明1、5の技術的範囲に属する に、と同様に、被告製品1、2の売上げに 占める被告製品1、2の上位20品目の売上げを乗じて算定した。 イ切断加工による付加価値仮に被告方法1、2が本件発明1、5の技術的範囲に属するとしても、本件発明1、5は、被告製品1、2を製造する工程のうち、長尺の電鋳管を半製品として製造する過程に係るものである。被告はこれをさらに切断してマ イクロチューブとして販売している。したがって、本件発明1、5を使用し て製造されたのは切断前の製品である。また、譲渡された電鋳管について、切断加工による付加価値は、損害から控除又は特許法102条2項による損害推定の覆滅が認められるべきである。 被告は、切断工程とこれに続く洗浄工程において独自の技術を保有している。切断に用いるワイヤーソーは特注品であり、独自のノウハウを用いて精 度の高い加工を行っている。また、使用する砥粒液の砥粒も、一般的に用いられているものに比べて非常に細かなものを使用している。洗浄工程では、通常の超音波によるマイクロチューブ内面の異物を剥離、分散するのとあわせて、被告専用の特注の超音波洗浄機を用いて真空洗浄も行う。さらに、洗浄機による洗浄のみならず、剥離剤の結晶をすすぐための手作業の洗浄工程 もあり、独自のノウハウがある。 被告が平成24年3月にマイクロチューブの電鋳製造を開始する以前は、他社から長尺の電鋳管を購入し、切断加工を施した上で製品として顧客に販売していた。その一例として、被告製品と同等の仕様の長さ53.mmの電鋳管を●(省略)●円で仕入れ、これを●(省略)●本に切断することによ って一本当たり●(省略)●円、合計●(省略)●円で販売していた。よって、被告の切断、洗浄による付加価値は、電鋳管製造工程と1対1として計算されるべ 、これを●(省略)●本に切断することによ って一本当たり●(省略)●円、合計●(省略)●円で販売していた。よって、被告の切断、洗浄による付加価値は、電鋳管製造工程と1対1として計算されるべきである。 ウその他推定覆滅事由原告の親会社が、平成21年に原告を完全子会社化したことにより、従前 原告と取引関係にあった半導体検査装置等を販売する顧客が、競合会社の子会社である原告からのマイクロチューブの購入を忌避する動きが生じた。このような顧客側の事情から、原告が原告製品を販売できない事由があったということが明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書について 本件明細書の記載(甲2)【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、電気鋳造(本明細書では「電鋳」という)管の製造方法及び電鋳 管、電鋳管を製造するための細線材に係り、更に詳しくは、微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管に関する。また、微細な内径を有する電鋳管を製造するための細線材に関する。 【0002】【従来技術及びその課題】 従来からLSI等の集積回路を製造する際には、半導体パターンが設計通りに出来上がっており、電気的導通が良好であるかどうかの検査が行われている。この検査は、多数のコンタクトプローブを備えた装置(本明細書では「プローブ装置」という)を用い、コンタクトプローブのピンを形成した各電極に接触させて行われる。コンタクトプローブは、所要長さを有する極細 の管の内部にバネが設けてあり、ピンを管内に進退可能に設けた構造を有している。 【0003】ところで近年の半導体製造技術の進化は目覚ましいものがあり、集積度はますます高密度化する傾向にある。これに伴い電極の ネが設けてあり、ピンを管内に進退可能に設けた構造を有している。 【0003】ところで近年の半導体製造技術の進化は目覚ましいものがあり、集積度はますます高密度化する傾向にある。これに伴い電極の電気的導通を検査するプ ローブ装置においても最新の集積回路に対応できるように、コンタクトプローブの数を増やし(多ピン化)、線径も細くし(細線化)、コンタクトプローブ間の間隔もより狭く(狭ピッチ化)することが求められている。現在のコンタクトプローブ用の管は、外径が110μm、内径が88μmのものが世界最小とされている(例えば、非特許文献1参照)。 しかしながら、上記したように半導体製造技術はますます進化しているた め、コンタクトプローブも更に小型化することが必要とされている。 【0005】本発明者は、電鋳に関する研究を行っており、以前に電鋳によって径小な管を製造することに成功している。このときの電鋳管は、中空部が断面円形状であり、内径が126μmのものである(例えば、特許文献1参照)。従っ て、本発明者は電鋳技術を使えば、コンタクトプローブ用の微細な内径(中空部)を有する管もつくれるのではないかとの着想を得た。 【0006】そして更に研究を重ねたところ、直径が10μmから85μmまでの細線材を用い、この細線材の外面に最小5μmの金属の膜を付着させることに成功 した。そうして、この金属から上記細線材が除去できれば、微細な内径(中空部)を有する管がつくれることを知見した。 しかし、電着(析出)させた金属から細線材を除去することは、電着した金属が細線材の外面に密着しているので、容易なことではなかった。 【0008】 (本発明の目的)本発明の目的は、▲1▼微細な内径を有する電鋳管の製造方法及 を除去することは、電着した金属が細線材の外面に密着しているので、容易なことではなかった。 【0008】 (本発明の目的)本発明の目的は、▲1▼微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管、この電鋳管を製造するための細線材を提供することにある。 ▲2▼細線材を電着物または囲繞物から除去する際に、治具や工具等が電着 物または囲繞物に引っ掛けたりできるようにして、細線材を除去し易くする電鋳管の製造方法を提供することにある。 ▲3▼内面に金メッキ等の導電層を設けて、電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良いようにする電鋳管の製造方法及び電鋳管、この電鋳管を製造するための細線材を提供することにある。 ▲4▼内面に材質の異なる導電層を少なくとも二層以上設け、導電層相互及 び電着物または囲繞物の密着性が良いようにする電鋳管の製造方法及び電鋳管、この電鋳管を製造するための細線材を提供することにある。 ▲5▼中空部を複数備えた電鋳管の製造方法及び電鋳管を提供することにある。 ▲6▼中空部を複数備えており、各中空部の周りを形成する部分ごとに独立 して電気伝導が可能な電鋳管の製造方法及び電鋳管を提供することにある。 ▲7▼細線材を除去する際において、内面に設けた導電層に引張力がかかり難くして、導電層と基線材とを分離し易くし、導電層と電着物または囲繞物との密着性が損なわれ難いようにする電鋳管の製造方法を提供することにある。 【0011】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。 第1の発明にあっては、外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステ ンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を じた本発明の手段は次のとおりである。 第1の発明にあっては、外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステ ンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であって、前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、 前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することを特徴とする、電鋳管の製造方法である。 【0018】 第5の発明にあっては、 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、第1の発明に係る電鋳管の製造方法。 【0027】第6の発明にあっては、 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去し て製造される電鋳管であって、前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面多角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm 以下であることを特徴とする、電鋳管である。 ・・・・・・・第 形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面多角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm 以下であることを特徴とする、電鋳管である。 ・・・・・・・第9の発明にあっては、電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とす る、第6又は7の発明に係る電鋳管である。 【0033】細線材は、例えば、金属線材等のように全体が導電性材料で形成されたものを使用することもできるし、前記導電性材料の周りに導電層(例えば、メッ キ等の金属やカーボン等)を設けたものを使用することもできる。また、合 成樹脂線材等の絶縁性材料の細線材を用い、この周りに導電層(例えば、無電解メッキ等の金属やカーボン等)を設けて形成したもの等を使用することもできる。 更に、細線材の近傍に別体の導体を設けて、この導体に金属が電着(析出)するようにした場合では、上記した細線材の他に、更に合成樹脂線材等のよ うに全体が絶縁性材料で形成されたもの(導電性の材料が設けられていないもの)を使用することもできる。 【0034】電鋳によって金属が電着する箇所の材質は、導電性を有していれば特に材質は限定するものではないが、金属を電着させ易くするために電気伝導率が良 好なものを使用することが好ましい。例えば、鉄、ステンレス、銅、金、銀、真鍮、ニッケル、アルミニウム、カーボン等が使用できる。 【0038】細線材を溶かして除去する溶剤としては、例えば、アルカリ性溶液や酸性溶液等を挙げることができる。 【0040】「中空部の周りを形成する部分」とは、電鋳による電着物または囲繞物の場合もあるし、電着物または囲繞物とは異なる材質を有し、中空部の内面に設けられた導電層(隔壁体 ができる。 【0040】「中空部の周りを形成する部分」とは、電鋳による電着物または囲繞物の場合もあるし、電着物または囲繞物とは異なる材質を有し、中空部の内面に設けられた導電層(隔壁体の導電層を含む)の場合もある。 【0041】 (作用)本発明によれば、電鋳によって形成された電着物または囲繞物から細線材が除去できる。細線材は、▲1▼電着物または囲繞物を加熱して熱膨張させ、または細線材を冷却して収縮させることにより、電着物または囲繞物と細線材の間に隙間を形成したり、▲2▼液中に浸してまたは液をかけることによ り、細線材と電着物または囲繞物が接触している箇所を滑り易くしたり、▲ 3▼一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。また、▲4▼熱または溶剤で溶かしても除去できる。 【0042】細線材の除去に際して、このような方法を用いれば、例えば、直径が10μmから85μmまでの細線材を用いて、この細線材の外面に5μm以上50μm以下の肉厚を有するように形成した電着物または囲繞物からでも、細線材を除去することができる。従って、この細線材の除去方法を用いることに より、例えば、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できる。 【0043】細線材に形成される端部側の電着物または囲繞物の量を多くして電鋳管を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いた り押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞物の量を多くした 着物または囲繞物の量を多くして電鋳管を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いた り押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞物の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりすることができる。従って、この場合では、電着物または囲繞物を固定した状態にして細線材が除去できるようになるので、細線材が除去し易い。 【0044】 細線材を外方に引っ張って伸ばしたときの横ひずみの変形量が断面積の5%以上あるようにした電鋳管の製造方法によれば、細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物から支障なく除去できる可能性が高い。仮に横ひずみの変形量が断面積の5%未満しかなかった場合では、隙間が十分でないので、除 去に際して支障が生じる場合がある。 【0045】外面に導電層が設けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内面に残るように細線材を除去する電鋳管の製造方法によれば、内面に金メッキ等を設けた電鋳管が製造できる。このような電鋳管は、例えば、内面に設ける導電層の材質によって電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良好にできる ので、この場合では電気を伝導するのに適した部品として使用できる。 なお、内面に電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある電鋳管や、外面に、電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある細線材についても、同様に電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良い電鋳管が形成できる。 【0046】外面側に材質の異なる導電層が少なくとも二層以上形成してある細線材を用いた電鋳管の製造方法によれば、例えば、外側の導電層を銅で構成し、銅と接する内側の導電層を金で構成して 【0046】外面側に材質の異なる導電層が少なくとも二層以上形成してある細線材を用いた電鋳管の製造方法によれば、例えば、外側の導電層を銅で構成し、銅と接する内側の導電層を金で構成して、電鋳によりニッケルが電着物または囲繞物として形成されるようにできる。この場合では、ニッケルは金よりも銅 と密着性が良く、銅は金とも密着性が良いので、密着性の良好な電鋳管が形成できる。 なお、内面に電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてあり、更に、電着物または囲繞物と上記導電層との間には、当該導電層とは異なる材質の導電層が設けてある電鋳管や、外面に、電着物または囲繞物とは異なる 材質の導電層が設けてあり、更に、細線材基部材と上記導電層との間には、当該導電層とは異なる材質の導電層が設けてある細線材についても、同様に電着物または囲繞物と導電層との密着性の良好な電鋳管が形成できる。 【0049】両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が設け られていない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が導電層 に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い。 【0050】【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。 図1は本発明に係る電鋳管を製造するための電鋳装置の一例を示す断面説明図である。 まず、電鋳管を製造する電鋳装置について説明する。 【0061】電鋳装置100を使用した電鋳管の製造方法について説明する。 まず、線材固定部材42、43に細線材30の一端部と他端部をそれぞれ固定させて、線材固定部材42、43の間で細線材30を緊張した状態にする。このとき電解液2 管の製造方法について説明する。 まず、線材固定部材42、43に細線材30の一端部と他端部をそれぞれ固定させて、線材固定部材42、43の間で細線材30を緊張した状態にする。このとき電解液20は電鋳槽10に供給されており、電鋳槽10の上部からあふれ出して(オーバーフロー部12を形成して)、外槽11内に流れ込むようになっている。また、オーバーフロー部12は、水平アジャスター装 置13によって電鋳槽10を略水平にし、各所に電解液20が均一に分布するように調整されている。 【0062】本実施の形態で細線材30は、直径50μmの断面略円形状を有するステンレス製で、外方に引っ張る略1500N/mm2の引張力をかけたときに横ひ ずみの変形量が断面積の10%になるものを使用した。 【0063】次に、駆動モータ47を作動させて、回転軸46と共に歯車480、481を回転させる。これにより歯車482、483と線材固定部材42、43が回転し、細線材30が回転する。 【0064】 電極接触部材49、49を電極部14、14と接触させて、垂設部材41、41を電鋳槽10の側方に位置させ、細線材30のみをオーバーフロー部12中に浸ける。電極接触部材49、49が電極部14、14と接触することにより、電極部15が電源のプラス極と電気的に接続されているので、細線材30が電源のマイナス極と電気的に接続された状態となって電鋳が始ま る。こうして細線材30の周りに金属(本実施の形態で示す電解液20によればニッケル)が電着(析出)される。細線材30の周りに電着する金属は電着物(または囲繞物)である。 【0065】細線材30を所要時間オーバーフロー部12内に浸け、電着した金属の外径 が全長にわたり略70μmになるまで る。細線材30の周りに電着する金属は電着物(または囲繞物)である。 【0065】細線材30を所要時間オーバーフロー部12内に浸け、電着した金属の外径 が全長にわたり略70μmになるまで電鋳する。目標外径に到達したら、細線材30をオーバーフロー部12より取り出して電鋳を止める。金属の電着量(析出量)、つまり細線材に電着する金属の肉厚は、電流や電圧、電鋳時間等によって予め制御可能である。 【0066】 電鋳装置100では、各所にて電解液20が均一に分布するようにオーバーフロー部12が調整されており、しかも、細線材30は回転させているので、仮に電解液20内の電流密度に不均一な箇所が発生した場合であっても、細線材30における金属の電着状態(析出状態)にはばらつきが生じ難い。従って、細線材30の周囲には、全長にわたって略均等な肉厚を有する ように金属が電着する。これにより電鋳管は、細線材30を除去するだけで高精度のものが製造できる。 【0069】そして、周りに金属が電着した細線材30を線材固定部材42、43から取り外し、最後に形成された電着物(囲繞物)から細線材30を除去する。 【0070】 細線材30は、外面に電着物が密着しているので、単に、細線材30を掴んで引っ張ったり、吸引したり、物理的に押し遣ったり、気体または液体を噴出して押し遣ったりするだけでは除去が困難である。従って、細線材30は、以下に示す(1) ~(4) のいずれかの方法を用いて除去される。 【0071】 (1) 電着物を加熱して熱膨張させ、または細線材30を冷却して収縮させて、電着物と細線材30の間に隙間を形成し、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかの 加熱して熱膨張させ、または細線材30を冷却して収縮させて、電着物と細線材30の間に隙間を形成し、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 【0072】 (2) 洗浄剤を溶解させた液体中に浸したり、この液体をかけたりして、細線材30と電着物とが接触している箇所を滑り易くする。そして、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 【0073】 (3) 細線材30を一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させる。そして、電着物と細線材30の間に隙間を形成し、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 【0074】 (4) 細線材30を熱によって溶かしたり、またはアルカリ性溶液や酸性溶液等の溶剤によって溶かしたりして除去する。 【0075】こうして細線材30を除去することにより、残った電着物によって微細な内径(中空部)を有する電鋳管がつくられる。この電鋳管は、コンタクトプロ ーブ用の管等として使用可能である。 【0076】本実施の形態では、全長にわたって略均等な肉厚を有する電着物から細線材を除去するようにしたが、これは限定するものではない。例えば、図2に示すように、電着物50の一端側に外径の大きな径大部500を形成して、細線材30を引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体 を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去することもできる。このように径大部500を形成することで、引き抜いた 、細線材30を引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体 を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去することもできる。このように径大部500を形成することで、引き抜いたり押し遣ったりする際において、治具や工具が径大部500の端面に引っ掛けることができる。従って、この場合では、電着物を固定した状態にして細線材30が除去できるようになるので、細線材が除去し易くなる。なお、このように一部分の電着 量を多くする作業は、他の電鋳装置に移し替えられて行われることもある。 【0078】上記した細線材は、断面形状が略円形状を有するものでは、外径が10μm以上85μm以下であれば、また、外形状が断面多角形状を有するものでは、内接円の直径が10μm以上85μm以下であれば、微細な内径を有す る電鋳管の製造において使用できることが、本発明者の実験によりわかっている。 【0079】また、本実施の形態で示す細線材30は、外方に引っ張る略1500N/mm2の引張力をかけたときに横ひずみの変形量が断面積の10%になるものを 使用した。しかし、細線材の横ひずみの変形量は特に限定するものではない。本発明者が実験したところによれば、少なくとも断面積の5%以上の変形量があれば良いようである。 【0080】本実施の形態では直径50μmの断面略円形状を有する細線材30の周り に、略10μmの肉厚で金属を電着させて、全体として略70μmの外径と なるように形成したが、電着させる金属の肉厚は特に限定するものではない。本発明者が実験したところによれば、少なくとも略5μmの肉厚を有するように細線材30の周りに電着させることができれば、細線材30を除去した後でも電鋳管が形成できることがわかっている。 【00 い。本発明者が実験したところによれば、少なくとも略5μmの肉厚を有するように細線材30の周りに電着させることができれば、細線材30を除去した後でも電鋳管が形成できることがわかっている。 【0081】 本実施の形態で細線材30はステンレス製のものを使用し、この細線材30の周りに金属を直接電着させるようにした。しかし、電鋳装置100で使用可能な細線材は、導電性を有するようにしてあれば特に限定するものではなく、例えば、芯部を金属や合成樹脂等でつくり、その外面に導電層(メッキ(金属層(膜))やカーボン等)を設けたもの等を使用することもできる。こ のような細線材を使用することにより、例えば、図4に示すように、外周面に金メッキ321を設けた細線材32に電着物52を形成した場合では、金メッキ321を電着物52の内周面に残して、基線材320のみを除去することも可能である。この場合では、内周面に金メッキ321が施された電鋳管が形成できる。 【0082】内周面に金メッキ321が施された電鋳管は、金メッキ321を設けないときよりも電気伝導率を良くすることができるので、例えば、コンタクトプローブ用の管等の電気を伝導するのに適した部品として使用できる。 【0083】 更に例えば、細線材は、上記したメッキ等による導電層の外周側に、更にこれとは材質の異なる他の導電層を設けたものを使用することもできる。例えば、電鋳により電着する金属がニッケルであり、金メッキ331の外周側に銅メッキ332が設けられた細線材33の周りに電着物53を形成した場合(図5参照)では、ニッケルは金よりも銅と密着性が良く、銅は金とも密着 性が良いので、基線材330のみを除去して、ニッケルと銅と金が密着性の 良好な状態で接着された電鋳管が形 た場合(図5参照)では、ニッケルは金よりも銅と密着性が良く、銅は金とも密着 性が良いので、基線材330のみを除去して、ニッケルと銅と金が密着性の 良好な状態で接着された電鋳管が形成できる。この電鋳管の内周面には金メッキ331が露出している。 【0084】このように外周部に導電層(例えば、金メッキ)が設けられた細線材を、断面積が小さくなるように変形させて析出した金属から除去する場合では、図 6に示すように細線材34の両端側に導電層(例えば、金メッキ340)を設けない部分(マスキング部341、341)を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張るようにすることが好ましい。このようにすることで引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物54との密着性も損なわれ難い。 【0104】電鋳装置101によれば、通電することにより細線材35の周りと導電層881の表面に電着物が形成される。そして、電着物55により細線材35と隔壁部材88が、所要の程度囲繞されたところで電鋳を止める。電着物55の電着量(析出量)は、電流や電圧、電鋳時間等によって予め制御可能であ る。 【0105】電鋳を止めた製造用治具8は電解液21から取り出され、再び、治具本体80と保持部材87に分解される。このとき隔壁部材88は、析出した電着物55によって細線材35の間にて固定されているので、保持部材87から分 離される。その後、電着物55により一体にされた細線材35と隔壁部材88を治具本体80より取り外す。 【0106】そして、電着物55と隔壁部材88に機械加工を施して形状を整えて(図9参照)、電着物55から細線材35を除去する。なお、細線材35の除去は、 上記電鋳装置1 0より取り外す。 【0106】そして、電着物55と隔壁部材88に機械加工を施して形状を整えて(図9参照)、電着物55から細線材35を除去する。なお、細線材35の除去は、 上記電鋳装置100で製造されたものと同様の方法で行うので、説明は省略 する。 こうして中空部が複数個(具体的には8個)ある電鋳管がつくられる。 【0110】電鋳管は、上記実施の形態で示す電鋳装置100、101以外の他の形態の電鋳装置を使用して製造することもできる。また、電鋳装置で使用する製造 用治具の種類も特に限定するものではない。 【0111】本実施の形態で示す具体的な寸法(大きさ、長さ)を表す数値は、理解を容易にするために記載したものであって、特に寸法を限定する意図はない。例えば、細線材の径、電着物の肉厚、細線材の変形量や引張力、導電層(膜) (メッキ等)の厚み、隔壁部材の厚み等がある。これらの寸法は、範囲を設定したものについてはその範囲内において、任意に設定可能である。 【0112】本実施の形態では、細線材の外面に電鋳による金属を電着させて細線材を覆うようにしたものを示したが、これは限定するものではなく、例えば、細線 材の近傍に通電可能な導体(金属等)を設けて、この導体に電鋳による金属を電着させることで、細線材も電着する金属によって覆われるようにして電鋳管をつくることもできる。 【0115】本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、 なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。 【0116】【発明の効果】 本発明 徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。 【0116】【発明の効果】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明によれば、電鋳によって形成された電着物または囲繞物から細線材が除去できる。細線材は、▲1▼電着物または囲繞物を加熱して熱膨張させ、または細線材を冷却して収縮させることにより、電着物または囲繞物と細線材の間に隙間を形成したり、▲2▼液中に浸してまたは液をかけることにより、細線材と電着物または囲繞物が接触している箇所を滑り易くした り、▲3▼一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。また、▲4▼熱または溶剤で溶かしても除去できる。 細線材の除去に際して、このような方法を用いれば、例えば、直径が10μmから85μmまでの細線材を用いて、この細線材の外面に5μm以上50μm以下の肉厚を有するように形成した電着物または囲繞物からでも、細線材を除去することができる。従って、この細線材の除去方法を用いることにより、例えば、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を 有する電鋳管が製造できる。 【0117】(b)細線材に形成される端部側の電着物または囲繞物の量を多くして電鋳管を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いたり押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞 物の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりすることがで を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いたり押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞 物の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりすることができる。従って、この場合では、電着物または囲繞物を固定した状態にして細線材が除去できるようになるので、細線材が除去し易い。 【0118】(c)細線材を外方に引っ張って伸ばしたときの横ひずみの変形量が断面積 の5%以上あるようにした電鋳管の製造方法によれば、細線材と電着物また は囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物から支障なく除去できる可能性が高い。仮に横ひずみの変形量が断面積の5%未満しかなかった場合では、隙間が十分でないので、除去に際して支障が生ずる場合がある。 【0119】 (d)外面に導電層が設けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内面に残るように細線材を除去する電鋳管の製造方法によれば、内面に金メッキ等を設けた電鋳管が製造できる。このような電鋳管は、例えば、内面に設ける導電層の材質によって電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良好にできるので、この場合では電気を伝導するのに適した部品として使用でき る。 なお、内面に電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある電鋳管や、外面に、電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある細線材についても、同様に電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良い電鋳管が形成できる。 【0123】(h)両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が設けられていない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く (h)両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が設けられていない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い。 本件発明の意義本件明細書によれば、半導体製造技術が進化し微細な内径を有するコンタクトプローブ用の管が必要なところ、電鋳技術を用いれば、当時最小とされていたコンタクトプローブ用の管よりも微細な内径を有する管を作れるのではないかと思われたが、電着させた金属から細線材を除去することは電着した金属 が細線材の外面に密着しているため容易なことではなかった。本件発明は、細 線材の外面に電着により金属の膜を付着させた後に細線材を引っ張って細線材の断面積を小さくさせて電着した金属を剥離させ、細線材を除去しやすくすることとし、それによって微細なコンタクトプローブ用の管が製造できるようにする方法やその管に関する発明である。 2 争点1-1(被告方法1、2は、「前記細線材は一方または両方から引っ張っ て」(構成要件1C)を充足するか)について構成要件1Cには細線材が一方又は両方から引っ張られることが記載されているところ、同構成要件には、それ以上に、細線材が具体的にどのようにして引っ張られるかに関する記載はない。 本件明細書によれば、本件発明1において細線材を引っ張る目的は、細線材 と導電層の間に隙間を形成してそれらが分離しやすくなるよう、細線材の断面積を小さくすることにあるといえる(【0011】、【0041】、【0044】)。 そして、引っ張りによって細線材の断面積が小さくなるように変形するのは、細線材の両端それぞれの部位に対して、同時に、互いに反対方向の ることにあるといえる(【0011】、【0041】、【0044】)。 そして、引っ張りによって細線材の断面積が小さくなるように変形するのは、細線材の両端それぞれの部位に対して、同時に、互いに反対方向の力が細線材を伸長するようにかかることによって生ずる効果であるといえる。したがって、 細線材の両端それぞれの部位に、同時に、互いに反対方向の力がかかれば、細線材の断面積が小さくなり、本件発明1における細線材を引っ張ることの目的を達するといえる。また、「引っ張る」という文言自体、①ひきのばして張る、②力を入れて引く等の意を有しているものであり(広辞苑(第7版))、必ずしも対象物を直接つかむことに意義があるともいえない。これらの本件明細書に 記載された本件発明1において細線材を引っ張ることの技術的意義や文言の意義からすると、構成要件1Cの「前記細線材は一方または両方から引っ張って」とは、細線材の断面積が小さくなるように細線材の両端それぞれの部位において、同時に、互いに反対方向の力が加えられるようにすることを意味するものであって、その方法としては、一定の固定がされた細線材自体を直接つか んで引っ張ることによって力を加える方法を含むものの、それに限られるもの ではなく、細線材の両端それぞれに対して力を加える方法は、直接、間接を問わないものであると解するのが相当である。 被告は、構成要件1Cの「前記細線材は一方または両方から引っ張って」について、メッキ層越しではなく細線材を直接つかんで引っ張ることに限られる旨主張し、その理由として、両末端までメッキ層が設けられている線材(以下 「末端メッキ線材」ということがある。)については、被告方法のようにクラックを入れるなどの工夫もせずに線材をメッキ層ごとつかんで引っ張ると細線材 、両末端までメッキ層が設けられている線材(以下 「末端メッキ線材」ということがある。)については、被告方法のようにクラックを入れるなどの工夫もせずに線材をメッキ層ごとつかんで引っ張ると細線材と共にメッキ層にも力が加わって伸長し、限界を超えるとメッキ層が中間部分で破断して破壊されてしまったり、細線材と共にメッキ層まで変形してしまうことになってしまい、最終生成物を所定の寸法になるように製造することが できなくなるなどの不都合が生ずることを挙げる(なお、後記6のとおり、末端メッキ線材も本件発明1の線材に該当する。)。 しかし、本件発明1において細線材を引っ張ることの技術的意義は前記のとおりであり、その技術的意義からは、構成要件1Cの引っ張る方法は、一定の固定がされた細線材に、直接、間接を問わず、同時に、互いに反対方向の力が 加えられるような方法であれば足りると解される。被告が主張するところが実施可能要件等において問題となることがあるとしても、それが構成要件1Cを被告主張のように解する根拠になるとは解されない。 以上を前提に、被告方法1、2について検討すると、被告方法1、2では、引っ張り工程においてあらかじめクラックを入れるという工程をはさむもの の、メッキ層越しではあるが細線材をつかんで引っ張ることにより、細線材の両端に、同時に、互いに反対方向の力が加えらえることによってその断面積が小さくなるように変形させている。 そうすると、被告方法1、2では、構成要件1C所定の「前記細線材は一方または両方から引っ張って」いると認められる。 3 争点1-2(被告方法1、2は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除 去」(構成要件1C)を充足するか)について構成要件1Cでは、引っ張って変形させた細線 られる。 3 争点1-2(被告方法1、2は、「前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除 去」(構成要件1C)を充足するか)について構成要件1Cでは、引っ張って変形させた細線材をつかんで引っ張って除去することが記載されている。 ここで、一つになっている二つの物体が「引っ張る」ことにより分離するのは、二つの物体それぞれに対して、同時に、これらの相対位置を固定する摩擦 力等の力を超える、互いに反対方向の力が加わるからである。構成要件1Cの分離工程においても、細線材とメッキ層が分離するのは、細線材とメッキ層のそれぞれに対して、同時に、互いに反対方向の力が加わるからである。したがって、本件発明1の除去は、細線材とメッキ層のそれぞれに対して、同時に、互いに反対方向の力が加わり、それにより二つの物体の相対位置が変わり、密 着していたものが離れた状態になることによってされるのであり、構成要件1Cの技術的意義からも、そこでの「引っ張って除去」とは、変形させた細線材とメッキ層のそれぞれをつかむ等したうえでそれぞれに対して、同時に、互いに反対方向の力を加える(引っ張る)ことにより、それらの相対位置が変わり、密着していたものが離れた状態になることを意味すると解される。 また、上記の作用は、細線材を「つかむ」ことによって行われることとされているが、本件発明1において細線材を「つかむ」技術的な意義は、細線材を「つかむ」物が加える力によって、細線材に長手方向の力を加えることができるようにすることにある。そして、「つかむ」とは「手の指をまげて、物を強く保持する。」(広辞苑(第7版))と説明されるが、本件で、手の指で行われるこ とに限定する技術的意義はなく、一般に、ペンチ等の工具を用いた場合でも「つかむ」という用語が の指をまげて、物を強く保持する。」(広辞苑(第7版))と説明されるが、本件で、手の指で行われるこ とに限定する技術的意義はなく、一般に、ペンチ等の工具を用いた場合でも「つかむ」という用語が用いられることからすると、「つかむ」とは、機械的に細線材を保持(つかむ物とつかまれる物の相対位置を固定)し、つかむ物が細線材に長手方向の力を加えられるようにすることを意味すると解するべきである。 被告方法1、2では、分離工程において、線材をエアバイスで固定している ところ、エアバイスでの固定は、線材に圧力を加えてその摩擦力によってエア バイスと線材の相対位置を固定するものであるから、エアバイスは線材「つかんで」いると認められる。分離工程に当たって、メッキ層に長手方向の力が加えられるが、メッキ層は、固定された細線材とメッキ層の間に生じる摩擦力を超えた力を加えられることによって加えられた力の方向に移動する。メッキ層に力が加えられた場合に、細線材がエアバイスに固定されなければメッキ層と 細線材の間に生じる摩擦力によって、細線材とメッキ層の相対位置は変わらず、分離されない。しかし、細線材がエアバイスで固定される(つかまれる)ことによって、エアバイスから細線材に対してメッキ層に加えられた力と反対方向で、かつメッキ層の移動に伴い加えられる摩擦力に釣り合う力が細線材に加えられる(細線材が引っ張られる)ことになり、これによって細線材に加わる合 力が0になることによって細線材は移動しない。その結果、メッキ層のみが移動することによって細線材とメッキ層の相対位置が変わり、細線材とメッキ層が離れた状態になって、細線材が除去されることになる。 したがって、被告方法1、2では、メッキ層に一定方向の力が加えられ、細線材がエアバイスでつかまれる メッキ層の相対位置が変わり、細線材とメッキ層が離れた状態になって、細線材が除去されることになる。 したがって、被告方法1、2では、メッキ層に一定方向の力が加えられ、細線材がエアバイスでつかまれることによって細線材に長手方向の力を加えら れるようにし、細線材にメッキ層に加えられた力と反対方向の力が加わる(引っ張られる)ため、メッキ層と細線材それぞれに対して、同時に、互いに反対方向の力が加えられ、これによってメッキ層と細線材が分離されるのであり、「細線材を掴んで引っ張って除去」されているとするのが相当である。 被告は、細線材をつかんで引っ張って除去することと、メッキ層をつかんで 引っ張って除去することを区別している。これについて、つかんだ場所により区別されることをいうものとすると、本件発明1、2の分離工程において細線材がつかまれていると評価できることは前記で説示したとおりである。また、被告が、細線材、メッキ層、地面の相対位置に着目し、地面に対してメッキ層が固定され、細線材が地面に対して移動する場合には細線材が引っ張って除去 されているといい、地面に対して細線材を固定し、メッキ層が移動する場合に はメッキ層が引っ張って除去されていることをいう(地面との相対位置に着目して除去された対象を特定すべきとしている)ものと解するとしても、本件発明1における分離工程で問題になるのは細線材とメッキ層の相対位置であり、これらと地面との相対位置に着目して片方が除去されたものとして評価することに意味はなく、上記に述べた本件発明1における分離工程の技術的意義に 照らして被告の主張は採用できない。 4 争点1-3(被告方法1、2は、「導電層は金」(構成要件5A)を充足するか)について被告方法で製造される導電層の材質は る分離工程の技術的意義に 照らして被告の主張は採用できない。 4 争点1-3(被告方法1、2は、「導電層は金」(構成要件5A)を充足するか)について被告方法で製造される導電層の材質は、本件金-コバルト合金であり、金の他にコバルトが0.3%含まれている。 特許請求の範囲では、「導電層は金」とされているが、その「金」の純度については何ら規定されておらず、本件明細書の発明の詳細な説明にも「金」の純度についての記載はない。 本件発明5では導電層はメッキによって形成されるのであるから、「導電層は金」は、「導電層は金メッキ」を意味するといえる。JIS規格によれば、「金め っき」については、金含有率が99.9%以上とされ、金含有率が58.5%以上99.9%未満のものについては「合金金めっき」とされ、「合金金めっき」のメッキの硬さは「金めっき」に比べて一般に高いとされていることが認められる(乙9、10)。また、コバルトが0.1~0.4mass%含有するものについて純金の2倍以上の硬度を示す「硬質金めっき」と称されたりしていることが認めら れる(甲26)(被告方法も、導電層に本件金‐コバルト合金を採用しているのは、このような効果を企図したものであることが推認できる。)。他方で、上記文献等において、金について、これら微量な金属を混ぜることによって電気伝導率が変化することは言及されておらず、少なくとも本件金-コバルト合金と99. 9%以上の純度の金の電気伝導率に有意な差があると認めるに足りる証拠はな い。 本件明細書には、導電層についてその外周のメッキ層よりも電気伝導率が高いことが特徴として記載されている(【0011】)ことや金の電気伝導率が高いことは技術常識であることなどからしても、本件発明5は、 本件明細書には、導電層についてその外周のメッキ層よりも電気伝導率が高いことが特徴として記載されている(【0011】)ことや金の電気伝導率が高いことは技術常識であることなどからしても、本件発明5は、金の電気伝導率の高さに着目して、その導電層の材質を金としたものであると認められる。 上記の分類で本件金-コバルトメッキが属する「合金金めっき」、「硬質金めっ き」という文言自体が、金メッキの範囲に属することを示唆するものであること、本件金-コバルト合金は、金の純度99.9%以上のものに比べ、硬度には差があるものの、本件発明5における「導電層は金」とする構成における技術的な意義である電気伝導率の高さにおいては有意な差があるとは認められないことからすると、被告方法1、2で本件金―コバルト合金によって形成される金メッキ は、「導電層は金」を充足すると解するのが相当である。 5 以上及び前提事実アの被告方法1の内容によれば、被告方法1は、本件発明1の技術的範囲に属するということができる。 被告方法2は、ニッケルメッキをした後に、金-コバルトメッキをするほかは被告方法1と同じ方法である。本件発明1において、特許請求の範囲にも発明の 詳細な説明にも、導電層の外周の電着物について、異なる金属によって2層となる(導電層と併せると3層)ことをことさらに除外すべき記載もない。本件発明1において、導電層の外周について、その電気伝導率や肉厚が問題となるとしても、それが1層であるか2層であるか自体により、本件発明1における技術的な意義において何らかの違いがあるとはいえない。そうすると、被告方法2も、被 告方法1と同様の理由により、本件発明1の技術的範囲に属するといえる。 そして、前記4で説示したところによれば、被告方法1、2のいずれの方法に あるとはいえない。そうすると、被告方法2も、被 告方法1と同様の理由により、本件発明1の技術的範囲に属するといえる。 そして、前記4で説示したところによれば、被告方法1、2のいずれの方法においても形成される導電層は金であるといえるから、被告方法1、2のいずれについても、本件発明5の技術的範囲に属するといえる。 6 争点1-4(本件発明1、5についての実施可能要件違反の有無)について 明細書の発明の詳細な説明には、その発明の属する技術分野における通常の 知識を有する者が、過度の試行錯誤等を経ることなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていなければならない。 本件発明1は、細線材を引っ張ることによって変形させ、細線材とメッキ層の間に隙間を作ることによって分離しやすくした後、細線材とメッキ層を分離する発明である。 本件明細書には、両端で細線材が露出している線材について、両端の細線材を直接つかんで引っ張ることで細線材を変形させてメッキ層との間に隙間を作り、これによってメッキ層から細線材を引き抜きやすくしてから細線材とメッキ層を分離する方法が記載されている(【0049】、【0084】等参照)。 ここで、本件発明1の特許請求の範囲には、線材に導電層であるメッキ層が形 成されていることが記載されているが、線材のどの範囲にメッキ層が形成されているかを限定する記載はない。本件明細書の発明の詳細な説明においては、「両端部に導電層が設けられていない部分がある細線材は・・・分離し易く、・・」(【0049】)、「・・・細線材を、断面積が小さくなるように変形させて析出した金属から除去する場合では、・・・細線材・・の両端側に導電層・・・を設け ない部分・・・を形成し、この導電層を設 (【0049】)、「・・・細線材を、断面積が小さくなるように変形させて析出した金属から除去する場合では、・・・細線材・・の両端側に導電層・・・を設け ない部分・・・を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張るようにすることが好ましい。・・・」との記載がある。そうすると、本件明細書には、細線材の両末端には導電層であるメッキ層が形成されておらず、細線材が露出している細線材が好ましいことが記載されているが、それは好ましい形態として記載されているのであり、上記の特許請求の範囲の記載と併せると、線材の末端ま でメッキ層が形成されている末端メッキ線材を使用する方法も、本件発明1の技術的範囲に属することを前提としているといえる。したがって、本件発明1の線材は、線材の両末端までメッキ層が設けられている線材である末端メッキ線材を含むと解される。 ここで、被告は、末端メッキ線材について、過度の試行錯誤等を経ることなく、 特許請求の範囲に記載された発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載され ていない旨主張する。 末端メッキ線材については、末端で細線材が露出していないため、そのままでは末端で露出した細線材を直接つかむことができない。また、本件明細書にも末端メッキ線材について、どのようにして発明を実施するかについての具体的な方法自体は記載されていない。末端メッキ線材の両端をそのままつかんで互い に反対方向に力を加えて引っ張ると、メッキ層を介して細線材の両端にも互いに反対方向の力を同時に加えることができるものの、メッキ層にも同様に互いに反対方向の力が加わり、メッキ層も細線材と同様に変形して細線材とメッキ層の間に隙間が生じなくなったり、メッキ層が想定外のタイミング及び部位で破断したりすることも想定される。 もっ に互いに反対方向の力が加わり、メッキ層も細線材と同様に変形して細線材とメッキ層の間に隙間が生じなくなったり、メッキ層が想定外のタイミング及び部位で破断したりすることも想定される。 もっとも、本件発明1は、細線材のみに力を加えて引っ張ることによって細線材のみを変形させ、細線材とメッキ層の間に隙間を作ることによって細線材とメッキ層を分離する発明である。末端メッキ線材についても、上記のことを実現するためには、例えば、末端メッキ線材の末端の細線材が露出していないことが問題なのだから、末端のメッキ層を破壊その他の方法で除去して細線材を露出 させてこれを引っ張ったり、細線材をメッキ層越しにつかむとメッキ層に引張力がかかってしまいこれによって生ずる破断のタイミング及び部位を制御できないことが問題であれば、そのメッキ層の任意の箇所にあらかじめ破断を生じさせてメッキ層の両端には同時に互いに反対方向の力(引張力)がかからないようにするといった単純な解決方法が当業者に明らかであったといえる。そして、 二層以上になっている管を引っ張ったとき、外側のもろい層のみに任意の場所に破断を生じさせる手段として、あらかじめ破断を生じさせたい層の任意の場所に切れ込みを入れたり、その他の方法を用いたりして当該部位を破断しやすくしておくことは、一般的に知られた方法であり、電鋳管を用いた製品の製造において、芯線と電鋳部の2層のうち電鋳部に溝を入れてその部分を折り曲げて 破断を生じさせる方法が用いられている。(甲27ないし29。なお、被告方法 のラジオペンチ等で線材をつかんで揺すってクラックを生じさせる行為も任意の場所にあらかじめ破断を生じさせておく手段といえる。)そのままではどこが破断するかわからない場合に破断個所を制御するためにあらかじ ジオペンチ等で線材をつかんで揺すってクラックを生じさせる行為も任意の場所にあらかじめ破断を生じさせておく手段といえる。)そのままではどこが破断するかわからない場合に破断個所を制御するためにあらかじめ機械的な作業をして破断しやすくしておくというのは、単純な原理であってそのための方法も広く知られていたといえ、当業者が本件発明1にこれを適用できないと考 える理由もうかがえない。また、このようなメッキ層の末端の破断または除去により本件発明の実施を考える場合、破断部位の内側のメッキ層のみを保存すればよく、破断部位の両端側のメッキ層を保存する必要はないのでるから、この部位については破損しても完全に除去してもよく、破断ないし除去の方法についての制約は小さいといえる。 これらによれば、本件発明1において、当業者にとり、細線材をメッキ層越しにつかんでもメッキ層に破断が生じれば細線材とメッキ層を分離することができることが当業者に明らかであったことや出願当時の技術等に照らせば、当業者にとり、末端メッキ線材についても、例えばメッキ層について何らかの方法で破断させやすい部位を作成しておくことで、本件発明1を実施することは、過度 な試行錯誤を要するものではなかったといえる。 以上のとおりであって、本件発明1の実施に当たって、線材の両端で細線材が露出している線材に限らず、末端メッキ線材についても、過度な試行錯誤を経ることなく、本件発明1を実施することができるといえる。その他、本件発明1について、その実施につき過度の試行錯誤を要する事情は見当たらない。よって、 本件発明1については、実施可能要件違反があるとはいえない。 被告は、本件発明5についても、本件発明1と同様の理由により、実施可能要件違反がある旨主張するが、以上に述べたところに照ら って、 本件発明1については、実施可能要件違反があるとはいえない。 被告は、本件発明5についても、本件発明1と同様の理由により、実施可能要件違反がある旨主張するが、以上に述べたところに照らし、本件発明5について、実施可能要件違反があるとはいえない。 7 争点1-5(本件発明1、5についてのサポート要件違反の有無)について 特許請求の範囲の記載がいわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求 の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの である。 被告は、本件発明1、5について、末端メッキ線材を含むことを理由として、サポート要件違反の無効理由がある旨主張する。 しかし、前記6で説示したとおりの、メッキ層に破断が生じれば細線材とメッキ層を分離することができることが当業者に明らかであったことや出願当時の 技術に照らせば、本件発明1、5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件発明1、5についてサポート要件違反の無効理由があるとはいえない。 8 争点1-6(本件発明1、5についての乙1発明1を主引例とする進歩性欠如)について乙1公報には、次の記載があ よって、本件発明1、5についてサポート要件違反の無効理由があるとはいえない。 8 争点1-6(本件発明1、5についての乙1発明1を主引例とする進歩性欠如)について乙1公報には、次の記載がある。 【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバーのコネクタに使用する金属製フェルールを効率よく製造する方法に関する。特に、本発明は、フェルールの中間体であるフェルール形成用微細円柱を効率よく製造する方法に 関するものである。 【0002】【従来の技術】微細孔パイプは、産業上有用なものである。特に、通信分野で使用されるフェルールは図1に示したように、径が0.126mm程度の細孔を有し、外径が2.5mm で、長さが12mm 程度の微細孔パイプである。 【0003】フェルールは、石英系光ファイバー接続用コネクタの構成部品 の一部として使用される。光ファイバーは細くて折れやすいので、その接続のためには光ファイバーをコネクタに確実に固定する必要がある。このための光コネクタ用部品が、フェルールである。即ち、光コネクターは、0. 125mm程度の太さの光ファイバーを円筒形の管に通して固定することにより、光ファイバーの中心にあるコア同士の位置を正確に合わせて接続 を図るものである。 【0004】現在使用されているフェルールは、ジルコニア又はプラスチック製であり、ジルコニア製が主流を占めている。ジルコニア製のフェルールを製造するには、高価な射出成型機、押出成型機、金型を必要とし、また、成型機、金型の寿命が短い、ジルコニア・樹脂の成型物を500~120 0℃という高温で処理するためエネルギーコストが高い、中心部孔の寸法精度をだすために線状のダイヤモンド研磨体で該孔を研磨し 成型機、金型の寿命が短い、ジルコニア・樹脂の成型物を500~120 0℃という高温で処理するためエネルギーコストが高い、中心部孔の寸法精度をだすために線状のダイヤモンド研磨体で該孔を研磨しなければならない、研磨は作業者の高度の熟練した手作業によるため生産性が低い、等の問題が指摘されている。外径の精度を上げるためには、表面の研磨加工を行う。更に、内径と外径の同軸度の精度を上げるために、ワイヤセンタレス機 による加工を行う。こうした、諸加工を行っても、内径、外径及び同軸度にバラツキが生じ、一個一個検査し、寸法による区分分けを行っているのが実状である。 【0005】本発明は、このような高価なジルコニア製フェルールに代えて電鋳により金属フェルールを効率よく製造する方法に関する。電鋳により 細孔パイプを製造することは既に知られている。例えば、特開平11-19 3485号公報には、芯材の表面に金属皮膜を形成し、形成された金属皮膜を残して芯材を除去する細孔を有するチューブの製造方法が記載されている。また、特開昭56-90995号公報、特開平4-311589号公報には、薬品にて溶解できる芯線の外周面に金属を電鋳メッキし、所定の寸法に切断後、芯線を薬品で溶解除去して細径パイプを製造する方法が記載さ れている。 【0006】光ファイバーコネクタ用の金属フェルールを製造するに際して、基本的にはこの方法を使用することができるが、問題は、フェルールの内径は0.126mm程度のものと極めて細いので、フェルール形成用微細円柱の中の芯線をエッチング液で溶出するのは極めて困難である。また、芯 線を引き抜く際にも、芯線が断線し易いという問題があった。 【0007】本発明者等は、芯線として0.126mm径のステンレス線を使用 線をエッチング液で溶出するのは極めて困難である。また、芯 線を引き抜く際にも、芯線が断線し易いという問題があった。 【0007】本発明者等は、芯線として0.126mm径のステンレス線を使用しこの外表面にニッケル等を電鋳することにより外径2.5mmのフェルール形成用微細円柱を作り、これを例えば12mmの長さに切断した後、これから芯線を引き抜いてフェルールを製造する方法を考案した。この 製法の生産効率を高める為には、芯線をできるかぎり長くし、例えば30~40cmにして、この外表面に均一な外径となるように電鋳して長さ30~40cmのフェルール形成用微細円柱を形成し、これを所定の長さに切断することで効率的な製造が可能になる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芯線が長ければ長いほど、その外表面に電鋳により形成されたフェルール形成用微細円柱の外径は、図3(b)に示したように電源に近い側の径は大きくなり、電源から遠い側の径は小さくなるり、外径が不均一な電鋳体が得られる傾向がある。これば、電源に近い部分は電流密度は大きいが、電源から遠ざかる芯線部分ほど芯 線の電気抵抗が大きくなり電流密度が小さくなり、芯線表面への電着量が 少なくなるからである。この結果、電流密度の大きい電源に近い部分ほど径が大きく、電源から遠い部分ほど径は小さくなる。 【0009】本発明は、特に、長尺で、内径が0.126mm程度と小さいフェルール用の微細孔パイプを電鋳で製造するに際して、外径が均一で小さい内径を有し、かつ、同軸性の高いフェルールを形成するための微細円柱 を効率よく製造する方法を提供しようとするものである。 【0010】【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、芯線母型に電鋳を施すに際し、 軸性の高いフェルールを形成するための微細円柱 を効率よく製造する方法を提供しようとするものである。 【0010】【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、芯線母型に電鋳を施すに際し、抵抗率が5×10-6Ωcm以下の芯線を使用することを特徴とするフェルール形成用微細円柱の製造方法である。 【0014】細径を有するパイプを電鋳による製造するには、例えば、特開平10-335135号公報によれば、まず、クロム芯材に軟磁性薄膜を電気メッキにより形成する。これをワイヤーソーで所定の長さに切断し、クロームエッチング液に浸漬してクローム芯材をエッチングして中空の円筒体を得ている。 【0015】この方法では、生産性を高めるためには、できるだけ長い芯線に電鋳を施し、しかる後に、所定の長さに切断する方法が推奨される。 【0016】既に述べたように、例えば、ステンレス製直径0.125mmの断面が円形の線を芯線として使用して電鋳を行うと(図2参照)、図3(b)に示したように一端から他端に向かって、外径が次第に小さくなる外径が 不均一な電鋳体が得られる。本発明者等は、この径の不均一化の問題を解決すべく種々研究の結果、芯線の抵抗率が径の不均一化に大きく影響することを見出し、抵抗率が一定の値よりも小さい値をもつ金属を芯線として使用することにより、長尺の芯線を使用しても均一な外径を有するフェルール形成用微細円柱の製造が可能になったのである。 【0017】芯線表面の抵抗率をゼロにすることが望ましく、例えば、抵抗 率5×10-6Ωcm以下のものを選択するのが好ましい。抵抗率が、この値よりも大きいと、長尺の芯線を使用して電鋳を施した場合、外径の均一な電鋳品は得られ難い。抵抗率が5×10-6Ωcm以下の物質としては、金 0-6Ωcm以下のものを選択するのが好ましい。抵抗率が、この値よりも大きいと、長尺の芯線を使用して電鋳を施した場合、外径の均一な電鋳品は得られ難い。抵抗率が5×10-6Ωcm以下の物質としては、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを主体とする合金があげられる。また、リン青銅は抵抗率も低く、張力も大きいので、好適に使用できる。 【0018】抵抗率は、5×10-6Ωcm以下のものが好ましい。芯線自身、抵抗率が5×10-6Ωcm以下のものを使用してもよいし、抵抗率の大きい金属、例えば、ステンレス線に10μm程度の薄い層に抵抗率の小さい金属をメッキしたものでもよい。これらの芯線を使用して電鋳を行うことにより、芯線の長さ方向に沿った電着量は均一となり、外径の均一なフェ ルール形成用微細円柱を得ることができる。抵抗率の低い第一金属をメッキする層の厚みは、良好な電気伝導度を確保する厚みであればよく、数μm~十数μmが好適に適用される。 【0019】【発明の実施の形態】次に、本発明を実施形態に基づいて説明する。電鋳装 置は、図2に示したようなものである。電鋳装置10は、陽極と陰極を含む。 陽極15は、電着すべき金属であって、金属板、金属球等を使用することができる。金属球を使用する場合は、金属球を導電性を有する袋等に入れた状態で使用することができる。陽極は電源11、例えば、電池の陽極に接続される。陰極は、電鋳を施す芯線16であり、例えば、電池の陰極に接続され る。芯線16は、支持枠14に支持されている。芯線16は支持枠14に支持された状態で、電鋳液18に浸漬され、モータ12で回転されながら、電鋳が施される。 【0020】母型に使用する線の基質としてステンレスを選択し、その表面に厚さ10μm程度の銀、金、銅メッキを施したもの た状態で、電鋳液18に浸漬され、モータ12で回転されながら、電鋳が施される。 【0020】母型に使用する線の基質としてステンレスを選択し、その表面に厚さ10μm程度の銀、金、銅メッキを施したものを芯線に使用すること ができる。また、基質が金、銀、アルミニウム、銅又はそれらを主体とする 合金を使用することもできる。芯線の表面は平滑な表面であることが好ましいが、微小な凹凸があることが多い。表面に抵抗率の低い金属をメッキすることにより、芯線の外表面が平滑になるというメリットもある。また、ステンレス線やリン青銅線は張力が高いので、フェルール形成用微細円柱から芯線を引き抜くのに好都合である。 【0021】電鋳液18は、目的とする電鋳金属の種類によって、決まるものである。電鋳金属としては、ニッケル、鉄、銅、コバルト、タングステン又はこれらの合金などの電鋳金属を使用することができる。これらの金属に対応して、それぞれ、電鋳液として、スルフアミン酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、スルフアミン酸第一鉄、ホウフッ化第一鉄、ピロリン 酸銅、硫酸銅、ホウフッ化銅、ケイフッ化銅、チタンフッ化銅、アルカノールスルフォン酸銅、硫酸コバルト、タングステン酸ナトリウムなどの水溶液を主成分とする液を使用することができる。【0022】これらのうち、特に、スルフアミン酸ニッケルを主成分とする電鋳液が、電鋳作業の容易性、製品の硬度などの物性、化学的安定性、溶接の 容易性などの面から好適に使用できる。直流電流7~10A/dm2程度の電流密度で、 1 日間程通電を行うことにより、 直径3mm 程度に成長した電鋳品を得る。この電鋳品から母型に使用した線を引き抜き、押し出すなどして、芯線16を除去する。【0023】 【実施例 で、 1 日間程通電を行うことにより、 直径3mm 程度に成長した電鋳品を得る。この電鋳品から母型に使用した線を引き抜き、押し出すなどして、芯線16を除去する。【0023】 【実施例】以下本発明を、実施例に基づいて説明する。断面が円形で径が0. 126mm で長さが355mm のステンレス製の線に金(抵抗率2.05×10-6Ωcm)を10μmメッキした、直径0.136mmの芯線を得た。この芯線を図2示す様に電鋳用治具にセットした。一方、スルフアミン酸ニッケルを主成分とする電鋳浴に、ニッケルの金属板をセットし、電鋳浴に浸漬 した。芯線を陰極、ニッケル板を陽極にして、10A/dm2程度の電流密度 で電鋳を18時間実施した。電鋳により、平均約2.5mmの直径のニッケル電鋳品を得た。電鋳品は、長さ方向に沿って外径は2.5mm±0.05mm の範囲内にあり、均一な電鋳品が得られた。また、真円度、同軸性も良好なものであった。 【0024】この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一 方の端を中ぐり加工をした。該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上にして、芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、加工品の下からから頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を除去した。端面を研磨してフェルールとした。 【0025】 【比較例】芯線としてステンレス(抵抗率90×10-6Ωcm)製の直径0.126mm、長さ355mmの線を使用したほかは、実施例と同様にして電鋳を行った。得られた電鋳品は、上方の径が大きく下方の径が小さいものであった。即ち、上方の径は2.77mmで、下方の径は2.42mm 程度であった。このように、芯線としてステンレス製の芯線を使用した場合は、 不 電鋳品は、上方の径が大きく下方の径が小さいものであった。即ち、上方の径は2.77mmで、下方の径は2.42mm 程度であった。このように、芯線としてステンレス製の芯線を使用した場合は、 不均一な電鋳品しか得られないことがわかる。 【0026】【発明の効果】芯線表面の抵抗率が5×10-6Ωcm以下の物質で被覆するか、芯線として抵抗率5×10-6Ωcm以下の物質からなるものを使用することにより、外径が均一で、真円度、同軸度が高い、そして長尺のフェ ルールを形成するための微細円柱を製造することができる。電鋳によるフェルールの製造は、高価な成型機、金型を必要とせず、設備としては安価な電鋳設備があればよい。また、高温で焼成する工程がないため、エネルギーコストが低い。更に、電鋳は寸法転写精度が極めて良いため、製品の寸法は、寸法の測定により区分分けする必要はないほど精度の良いものである。 前記によれば、本件発明1と乙1発明1は、次の点で一致する。 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であ って、前記金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなる金属導電層は、メッキで形成されたものであり、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、 前記細線材を引き抜くことにより、電鋳管を製造することを特徴とする、電鋳管の製造方法。 り、前記ニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる電着物または前記囲繞物より電気伝導率は高く、 前記細線材を引き抜くことにより、電鋳管を製造することを特徴とする、電鋳管の製造方法。 本件発明1と乙1発明1には少なくとも次の相違点がある。 ア相違点1導電層のメッキ方法に関し、本件発明1は電解メッキであるのに対し、乙 1発明1は、メッキの方法が特定されていない点。 イ相違点2細線材の除去方法に関し、本件発明1は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材をつかんで引っ張って除去する ものであるのに対し、乙1発明1は細線材の抜き取り方法について特定していないこと。 ウ相違点3電着物または前記囲繞物の肉厚に関し、本件発明1は50μm以下であるのに対し、乙1発明1は肉厚の特定をしていないこと。 相違点2について ア本件発明1と乙1発明1には相違点2があるところ、被告は、乙1公報には、芯材の除去について、「ステンレス線やリン青銅線は張力が高いので、フェルール形成用微細円柱から芯線を引き抜くのに好都合である。」(【0020】)旨の記載があり、張力が強いということは、引っ張るときの張力が大きくても芯材が弾性変形しても破断しにくいことを意味していることか ら、実質的には相違点2に係る本件発明1の構成を示唆するものであると主張する。 しかし、「張力が高い」という記載自体からは、芯材の弾性変形が想定されていることを読み取ることはできない。乙1公報において芯材の弾性変形に言及する記載も見当たらない。そして、乙1公報では、従来技術の課題とし、 芯線を引き抜く際の芯線の断線に 弾性変形が想定されていることを読み取ることはできない。乙1公報において芯材の弾性変形に言及する記載も見当たらない。そして、乙1公報では、従来技術の課題とし、 芯線を引き抜く際の芯線の断線について言及していること(【0006】)に照らすと、「張力が高い」とは、芯材によっては引き抜こうとすると断線してしまうが、「張力が高い」芯線であれば断線しにくいという趣旨で記載されているものであると認められる。したがって、同記載が、本件発明1で規定されている細線材を事前に弾性変形させてメッキ層と分離し易くするこ とを示唆しているとみることはできない。 イ続いて、被告は、乙1発明1に乙2発明を組み合わせることで相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到できる旨主張する。乙2公報には、以下の記載がある。 【発明の詳細な説明】 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、細孔チューブの製造方法に関する。 【0002】【従来の技術】従来、チューブの製造には引き抜き加工が用いられてきた。 すなわち、加工の容易な大きさの範囲まで、金属を管状に成形し、この一端 をテーパー状の孔を有するダイスの入口側の大きい孔にくぐらせ、出口側の 小さい孔の方向に引き抜き、塑性加工によって小さい孔の内径に等しい外径に細める。所要の寸法によっては、順次孔径の小さいダイスに交換し、引き抜き加工と熱処理工程を繰返し、漸次細めてゆく必要がある。 【0003】この方法によれば、加工は外径に対して行われ、内側の孔は工具と接触することなく、引き抜きによる塑性変形の結果として細められたも のである。仕上程度も使用目的によっては要求を充し得ない場合が多い上に、孔が細いために内面仕上の追加加工の手段はない。このような引き抜き加工による細孔チューブ 塑性変形の結果として細められたも のである。仕上程度も使用目的によっては要求を充し得ない場合が多い上に、孔が細いために内面仕上の追加加工の手段はない。このような引き抜き加工による細孔チューブの内面仕上程度の弱点を解決するために、芯材を使用し、その表面を電鋳法によって転写してチューブの内面とし、電着層をチューブの肉厚とする細孔チューブの製造方法が提案されている。 【0004】この方法は、チューブの内径に等しい芯材にニッケル等のメッキ層を電着し、所定の厚さの電鋳層を生成した後、芯材を除去することにより電鋳層自体をチューブとして使用するものである。芯材としては、樹脂を用いその表面を無電解ニッケル等の手段によって導電化し、その上に電鋳層を生成した後、芯材を引き抜く方法、あるいは芯材にアルミ線を用い表面に 直接電鋳層を生成した後、アルミ芯材を化学的に溶解除去して細孔チューブとする方法等が提案されている。 【0005】芯材としては上記の樹脂・アルミ線以外に、電鋳層の材質に対し融点が低い等の物理的性質の違いにより選択的に除去できる金属等を応用する方法も提案されている。これら電鋳による方法は、芯材の表面が良好 なものであれば、その仕上げ面がそのままチューブ内面に転写される利点があることから、従来の引き抜き加工に比べ、内面の仕上程度においては上質のものが得られ易いと考えられるが、芯材の除去方法に問題があり、内径数ミリ以下の細いチューブになると、上記の方法によって目的を達成することは不可能である。すなわち、チューブの内径が数ミリ以上で、軸方向の長さ が短かければ、引き抜き加工後の内面仕上程度が充分には良好でなくても、 適切な機械加工手段を選択加工して仕上程度を改善させることができるので、敢て生産速度の遅い電鋳 、軸方向の長さ が短かければ、引き抜き加工後の内面仕上程度が充分には良好でなくても、 適切な機械加工手段を選択加工して仕上程度を改善させることができるので、敢て生産速度の遅い電鋳法を採用することにメリットはない。 【0006】また、内径数ミリ以下、あるいは一般に極細と云われる内径1ミリ以下の場合、引き抜き加工後に機械加工による内面仕上の追加はできないが、一方この程度の細い芯材を用いて電鋳層を生成した場合は芯材の除去 は極めて困難となり、少なくとも上記の方法で芯材を除去することは現実には不可能である。芯材が樹脂の場合、その引張強度は引き抜きに必要な張力に耐えられず切断してチューブ内部に残留することを避けられず、残留したものを除去することはできない。 【0007】また、芯材にアルミ線を使用し、電鋳後にアルミを溶解除去す ることは、チューブの内径が充分に大きく且軸方向の長さが短くなければ化学反応は作用し難く実用性がない。芯材に電鋳層より融点の低い金属材料(合金を含む)を使用し、加熱することにより芯材を選択的に溶融状態にできても、細いチューブから溶融した芯材を排出除去することは至難である。 したがって芯材表面の良好な仕上面を細孔チューブの内面に転写し得る電 鋳法による製造方法は、芯材の除去についてのこれらの問題点を解決しない限り、引き抜き加工の欠点を改善する新しい製造方法としての実用性がない。 【0008】【発明が解決しようとする課題】内面仕上精度の良好な細孔チューブは、引き抜き加工によって製造することは難しく、また、電鋳の転写性を活用すれ ば内面仕上の良好な細孔チューブが得られる筈であるが、芯材の除去方法について問題点を解決しなければ目的は達せられない。本発明の目的は、芯材の材質の選択および電解 また、電鋳の転写性を活用すれ ば内面仕上の良好な細孔チューブが得られる筈であるが、芯材の除去方法について問題点を解決しなければ目的は達せられない。本発明の目的は、芯材の材質の選択および電解メッキ浴組成等の条件を電鋳層に圧縮の内部応力が生ずるように制御することにより、溶解・溶融等の手段を加えることなく、芯材の除去を容易に行い内面仕上精度の良好な細孔チューブを得る製造方 法を提供することにある。 【0009】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明による細孔チューブの製造方法は、以下の方法を採用する。すなわち、芯材を用い電鋳法によって良好な内面仕上精度をもつ細孔チューブを製造するには、芯材の材質としてオーステナイト系のステンレス線を使用する。表面がそのま々転 写されてチューブの内側となるために良好な仕上面状態のものが必要である。芯材を真直且鉛直に保持し電解ニッケルメッキ浴中に浸漬するに適した治具に取り付け、上下両端の芯材取付部付近をテープで遮蔽する。芯材は治具と共に浴中で回転しながらその表面に均等に近い厚みのニッケル電鋳層を生成させるが、なお厚みの一様化と能率向上のため、浴中に複数の正電極 を増設することもある。 【0010】このニッケル電鋳の工程においては、浴濃度・PH・電流密度・添加剤等の条件に注意しつつ、電鋳層に発生する内部応力の制御を行い、電鋳工程の終了時において適切な圧縮応力が残るように工程管理を行う。電鋳層が所定の厚みに達すれば、電解槽より引き上げ、芯材と電鋳層が一体とな ったものを治具より取りはずし、芯材両端の遮蔽テープを取り除く。外側の電鋳層部分をバイス等で固定し、テープが除かれた芯材の露出部分を工具等でくわえ、芯材に引き抜く力を加えれば、オーステナイト系 ったものを治具より取りはずし、芯材両端の遮蔽テープを取り除く。外側の電鋳層部分をバイス等で固定し、テープが除かれた芯材の露出部分を工具等でくわえ、芯材に引き抜く力を加えれば、オーステナイト系ステンレス特有の塑性加工性と電鋳層に内蔵された圧縮応力の効果によって容易に芯材を抜きとることができ、引き抜き加工では得られなかった良好な内面仕上精度 をもつ細孔チューブを製造することができる。 【0011】【作用】この製造方法によれば、芯材のもつ特有の塑性加工性により、引き抜く張力による軸方向の伸びと直径の細まりを生じ、さらに電鋳層自体の圧縮応力が芯材との剥離に寄与し、引き抜きが容易になると共に芯材の細まり のためにチューブ内側に転写されている良好な仕上状態が引き抜きに伴う 摩擦によって損なわれることがない。また、芯材の除去に溶解等によらないため、極細のチューブの製造も容易であり、内径0.1ミリ程度のチューブの製造も困難ではない。 【0012】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説 明する。図1~図6は本発明による細孔チューブの製造方法の実施の形態を示す図である。図1は芯材を保持し、一体となって電解ニッケルメッキ浴中に浸漬するための治具を表す。1は樹脂製の部材で上下に金属部分2、3が設けられ、芯材取付部2’、3’に芯材の両端を取り付ける。4はモータ軸とのジョイント部を示す。 【0015】図5は電鋳層12が所定の厚みに達したところで、治具1を電解槽9から引き上げ、芯材取付部2’、3’のねじ5a、5bを緩めて芯材5、電鋳層12の一体となったものを取りはずし、上下2ヶ所の遮蔽テープ6を取り除いたものである。芯材5の外径より僅かに大き目の孔を有する芯材引抜用治具13に芯材5 、3’のねじ5a、5bを緩めて芯材5、電鋳層12の一体となったものを取りはずし、上下2ヶ所の遮蔽テープ6を取り除いたものである。芯材5の外径より僅かに大き目の孔を有する芯材引抜用治具13に芯材5の一端の露出部分を通し、電鋳層12を係止させ て芯材5をくわえ、矢印方向に引き抜く。 【0016】図6は、図5に示す芯材5を電鋳層12より引き抜くことで取り除かれ、ニッケル電鋳層による細孔チューブの完成品を示したものである。 【0017】上記製造方法において電解浴における電鋳生成では適切な圧縮応力が残るように工程管理を行うことは上述した通りであり、これについて 詳述する。ニッケルは電着時発生する内部応力が大きいため、厚いメッキ、すなわち電鋳においては内部応力を制御することは重要である。これが増加し過ぎると母型や芯材からの電着中の剥離やクラックが発生し所期の製品が得られないことになる。母型からメッキがめくれ上る方向に働く力を引張り応力(+)、母型をおしつける方向に働く力を圧縮応力(-)と呼び、何れ も製品に支障を残さない許容範囲内に止めるよう諸条件に留意する。内部応 力はメッキ浴の種類によっても大きく異なり、ホウフツ化浴、ワット浴等に対し、応力の発生が最も少ないことからスルファミン酸浴が電鋳に適しているが、濃度、PH、電流密度、添加剤によっても変動する。 【0019】さらにオーステナイト系ステンレス線の選択について述べる。 ステンレスはその機械・物理・化学的諸特性から電鋳の基板・芯材に最も適 した材料として広く用いられているが、細孔チューブを電鋳法で製造するにあたり、その芯材として使用するには、電着終了後に芯材を引き抜き除去することが容易であることが大切である。特に直径0.5ミリ以下で軸方向に長い場合、芯材には いるが、細孔チューブを電鋳法で製造するにあたり、その芯材として使用するには、電着終了後に芯材を引き抜き除去することが容易であることが大切である。特に直径0.5ミリ以下で軸方向に長い場合、芯材には引き抜きの力に耐える引張り強さと塑性加工性が不可缺で、硬度が高過ぎ、脆性の大きい材質は引き抜きに際して破断し易い。 【0020】したがって、実験の結果、芯材に適する材質としては、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス(Cr18%、Ni9%を基本とする)選択の必要性が確かめられ、SUS410に代表されるマルテンサイト系(低Cr系、Cr11~14%)ステンレスやSUS430に代表されるフエライト系(中~高Cr系、Cr17%)ステンレスでは硬度が 高く脆性が大きく塑性加工性が低いため、引き抜きに際して破断することが多く、電着終了後に引き抜く必要がある芯材としては使用できない。オーステナイト系ステンレス線は引き抜きに際して、その特有の塑性加工性により軸方向の引張力により伸びを生じ、断面積が減少することにより電鋳層との間に剥離が発生し、転写面を損なうことなく容易に芯材を引き抜くことがで きる。なお、電鋳層には、その生成段階において応力の制御を行い、得られた圧縮応力は剥離効果として相乗的に作用し、一層芯材引き抜きを容易にする。 【0021】【発明の効果】以上、説明したように本発明は上記の方法・工程によって構 成されているので以下の効果を有する。 (1)、表面仕上げ程度の良好な芯材の転写によって細孔チューブの内面が生成されるので、従来の引き抜き加工によるチューブ内面に比べ、格段に優れた仕上面が得られる。 (2)、電鋳工程後の芯材の除去方法については、芯材にオーステナイト系ステンレス線を使用して、そ 内面が生成されるので、従来の引き抜き加工によるチューブ内面に比べ、格段に優れた仕上面が得られる。 (2)、電鋳工程後の芯材の除去方法については、芯材にオーステナイト系ステンレス線を使用して、その特有の塑性加工性を活用すると共に、電鋳層に圧 縮応力を残すようにメッキ工程を制御することにより、単に電鋳層に対し芯材に引張力を加えるだけで容易に抜き取ることができる独自の芯材除去方法を実現することができた。 【0022】(3)、(2) の芯材除去方法によれば、芯材が引き抜かれる際にその塑性加工性によって軸方向に伸びを生じ、直径は細まる。また、電鋳層に 内蔵された圧縮応力は芯材に対し剥離作用を有するため、芯材の除去工程において電鋳層による細孔チューブの内側の転写面が損われることがない。 (4)、芯材除去にあたり、芯材の溶解・溶融等の手段によらないため極細チューブの製造が容易であり、他の方法では至難とされる0.1ミリ程度の細孔チューブの製造も困難ではない。 ウ乙2発明は、オーステナイト系ステンレス芯線にニッケル電鋳によってニッケル電鋳層を形成させ、電鋳層をバイス等で、ステンレス芯線の露出部分を工具等で固定し、芯材に引き抜く力を加えてステンレス芯線を引き抜いてニッケル電鋳層のチューブを得る方法の発明であると認められる。 このような乙2発明において、細線材を分離する工程に先立って、細線材 の両端に、同時に互いに反対方向の力を加えるという引っ張り工程によって細線材とメッキ層の間に隙間を作る工程は存在しないのであるから、乙2発明の構成をそのまま乙1発明1に組み合わせても相違点2に係る本件発明1の構成に至ることはない。 また、乙2公報には、オーストナイト系ステンレス芯線を用いると、「芯材 のもつ特有の塑性加工性によ 構成をそのまま乙1発明1に組み合わせても相違点2に係る本件発明1の構成に至ることはない。 また、乙2公報には、オーストナイト系ステンレス芯線を用いると、「芯材 のもつ特有の塑性加工性により、引き抜く張力による軸方向の伸びと直径の 細まりを生じ、さらに電鋳層自体の圧縮応力が芯材との剥離に寄与し、引き抜きが容易になると共に、芯材の細まりのためにチューブ内側に転写されている良好な仕上がり状態が引き抜きに伴う摩擦によって損なわれることがない。」(【0011】。【0022】にも同旨の記載がある。)との記載があり、これは、芯材を引き抜くときに引張力がかかると、その直径の細まりによっ て電鋳層との摩擦力が低下して引き抜きやすくなることを示唆しているとする余地はある。しかし、乙2発明は、芯材と1層のメッキ層で構成される場合の発明であるのに対し、乙1公報には、実施例において、ステンレス芯線を金メッキしたものを「芯線」とした上で「芯線」が除去されることが記載され(【0020】、【0023】、【0024】)、また、芯線の表面を金等で メッキすることによって「芯線」の表面を平滑にするというメリットについても言及されている(【0020】)。そうすると、乙1公報には、ステンレス芯線を除去する際に、2層のメッキ層(内側が金メッキ等、外側がニッケルメッキ等)のうち、内側の層がステンレス芯線と共に除去されてしまうことが記載されていて、乙1発明1においては、ステンレス芯線を除去しようと した場合に内側のメッキ層も共に除去されるものであることが理解できる。 そうすると、乙2公報にステンレス芯線に引張力を加えることによってこれを細めて分離の際の摩擦力を低下させるということが示唆されているとしても、当業者は、それを乙1発明1に組み合わせるこ 理解できる。 そうすると、乙2公報にステンレス芯線に引張力を加えることによってこれを細めて分離の際の摩擦力を低下させるということが示唆されているとしても、当業者は、それを乙1発明1に組み合わせることによって2層構造のメッキ層の内側の層をステンレス芯線上に残置させることになると考える とはいえない。これによれば、乙2公報に記載されている上記記載部分も、相違点2に係る本件発明1の構成を記載したものとはいえない。そもそも、乙1発明1は、ステンレス芯線を除去するときに、2層のメッキ層のうち内側の層も同時に除去する発明であるから、この発明に芯線の除去に当たってステンレス芯線のみを除去する発明を組み合わせる動機もないといえる。 したがって、乙1発明1に乙2公報の上記記載を組み合わせて相違点2に 係る本件発明1の構成に至ることはなく、それらを組み合わせる動機もなく、当業者が上記発明及び記載によって、相違点2に係る本件発明1の構成に容易に想到できると認めることはできない。 エ以上のとおりであって、相違点2は、本件発明1と乙1発明1の相違点であると認められ、当業者が相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到で きたともいえないから、本件発明1は進歩性に欠けるものではない。 また、同様の理由により、本件発明1を引用する本件発明5は進歩性に欠けるものではない。 9 争点2-4(本件発明6、9についての明確性要件違反の有無)について本件発明6、9については、事案に鑑みて争点2-4から検討する。 本件発明6は、電鋳管についての物の発明であるところ、特許請求の範囲において、当該電鋳管について、細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成する工程(メッキ工程)、細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくな ついての物の発明であるところ、特許請求の範囲において、当該電鋳管について、細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成する工程(メッキ工程)、細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させる工程(引っ張り工程)、変形させた細線材を除去する工程(分離工程)を経て製造されることが記載されている。 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合、その発明の要旨は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定される。そして、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において、その製造方法が記載されていると、一般的には、当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか、又は 物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり、特許請求の範囲等の記載を読む者において、当該発明の内容を明確に理解することができず、権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うことになる。したがって、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、 又はおよそ実際的でないという事情が存在するなどの第三者の利益を不当に 害しない事情が存在するのでない限り、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するとはいえない(最高裁平成24年(受)第1204号同27年6月5日第二小法廷判決・民集69巻4号700頁参照)。本件発明6の特許請求の範囲において は、物の製造方法が記載されているところ、出願時において製造された物をその構造又は特性 204号同27年6月5日第二小法廷判決・民集69巻4号700頁参照)。本件発明6の特許請求の範囲において は、物の製造方法が記載されているところ、出願時において製造された物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情についての主張はなく、また、同事情を認めるに足りる証拠もない。 原告は、本件発明6のメッキ工程は、電鋳管の構造を示すものにすぎず、ま た、引っ張り工程及び分離工程は、良好な内面精度を有する電鋳管という構造又は特性を有することを示すものであるため、本件発明6の特許請求の範囲で記載された製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、本件明細書、図面の記載や技術常識から一義的に明らかであり、本件発明6の特許請求の範囲の記載は「発明が明確であること」という要 件に適合すると主張する。 本件明細書には、本件発明6の電鋳管と同様の形状等を有する電鋳管について本件発明6の方法以外の複数の方法で製造できると記載されている【0041】、【0042】)。そして、本件発明6の引っ張り工程及び分離工程の方法によった場合の電鋳管の内面精度について、特許請求の範囲、本件明細書、図面 には記載はない。また、原告が主張する本件発明6の技術的範囲に属するという場合の電鋳管の客観的な内面精度自体が必ずしも明確ではなく、また、本件特許の出願当時、引っ張り工程及び分離工程により製造された電鋳管の内面精度を含む構造又は特性が、技術常識により明らかであったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、電鋳管の発明である本件発明6について、少なくとも引っ張り 工程及び分離工程に関して電鋳管のどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範 りる証拠はない。 そうすると、電鋳管の発明である本件発明6について、少なくとも引っ張り 工程及び分離工程に関して電鋳管のどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、明細書、図面の記載や技術常識から明らかであるとはいえない。原告の主張は採用することができない。 以上によれば、本件発明6は、明確であるとはいえない。 そして、本件発明9は、本件発明6を引用する発明を含むものであり、本件 発明9も、明確であるとはいえない。 以上によれば、被告方法1、2は、本件発明1、5の技術的範囲に属し、また、本件発明1、5に係る特許については無効とすべき理由も認められないから、被告が、被告方法1、2を使用することやそれらの方法により製造された製品を譲渡等することは本件特許権を侵害するといえる(被告方法3が本件発明1、5の 技術的範囲に属さないことについては当事者間に争いがない。)。本件発明6、9に係る特許には無効とすべき理由がある。 争点3(消滅時効)について被告は、原告が平成22年7月12日に被告に対する訴訟提起を検討している旨の発言をしたことをもって、原告が、当時被告が被告方法を用いて電鋳管を製 造していたことを知っていたと主張する。しかし、当時、被告は被告方法を使っていなかったと認められる(弁論の全趣旨)から、原告が、当時、被告が被告方法1、2を使用していると知っていたとは認められない。 また、被告は、被告がマイクロチューブ製造分野における主要な会社として知られるようになったことをもって、原告が、被告が被告方法を用いていることを 知っていたと主張する。しかし、被告が製造するマイクロチューブについて被告方法1、2以外の方法で製造する余地がないことが知られていたことを認めるに て、原告が、被告が被告方法を用いていることを 知っていたと主張する。しかし、被告が製造するマイクロチューブについて被告方法1、2以外の方法で製造する余地がないことが知られていたことを認めるに足りず、仮に原告が被告が製造する電鋳管の仕様を知っていたとしても、被告が被告方法1、2を用いてこれを製造していたことについてまで知っていたと認めることはできない。他に、原告が本件訴えを提起するまでに被告が被告方法1、 2を使用して製造していることを知っていたと認めるに足りる証拠はない。 よって、被告方法1、2を使用して製造された電鋳管に係る損害賠償請求権について消滅時効により消滅したとは認められない。 争点4(損害)について被告方法1、2を使用して製造された被告製品1、2の平成24年3月から令和3年7月までの被告の売上額は、別紙損害計算表の「総売上額」欄記載の とおりである(弁論の全趣旨)。 被告製品1、2の利益の算定に当たり、被告製品1、2の年度ごとの利益率について、被告製品1、2に係る売上上位20品目の製品(以下、被告製品1の売上上位20品目の製品を「20品目(製品1)」といい、被告製品2の売上げ上位20品目の製品を「20品目(製品2)」といい、これらを併せて「20 品目」という。)に係る利益率とそれぞれ同一であるとすることについて、当事者間に争いはない。 20品目に係る平成24年3月から令和3年7月までの各年の売上げは、別紙利益率計算表の「売上げ」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨。なお、被告製品2に係る平成26年の売上げについては明らかにされていない。)。20 品目につき、利益から控除されるべき経費として、別紙利益率計算表の、メッキに係る消耗品である「メッキ消耗品」欄記載の額の費用 2に係る平成26年の売上げについては明らかにされていない。)。20 品目につき、利益から控除されるべき経費として、別紙利益率計算表の、メッキに係る消耗品である「メッキ消耗品」欄記載の額の費用、金メッキの費用である「AuCoメッキ」欄記載の額の費用、ステンレス芯線の費用である「芯線」欄記載の額の費用があることについては、当事者間に争いはない。他方、以下の項目について、利益から控除すべき経費であるか及びその額について、 当事者間に争いがある。以下、これらの費目について検討する。 ア電気代、水道代について被告方法1、2では電鋳によりメッキ層を形成しており、被告製品1、2を製造するに当たって、直接関連して追加的に必要な電気の使用があったことが認められる。またマイクロチューブについては洗浄等も行われており(乙 28)、被告製品1、2を製造するに当たって直接関連して追加的に必要な水 道の使用があったことが認められる。 被告は、被告において部門間においてマイクロチューブの製品製造部門が負担すべき額として合意した額を基礎とした上で、その額の50%に対し、被告製品1、2の売上げに占める20品目の売上げの割合を乗じたものが20品目に係る電気代(ただし、電気代については、前工程と後工程で更に2 分割している。)及び水道代であると主張する。しかし、マイクロチューブ製造部門において、被告方法1、2を使用して製造した製品の割合に関する証拠は提出されていない(少なくとも別の方法で製造しているマイクロチューブがある(被告方法3参照)。)。電気代及び水道代のうち、製造に直接関連して追加的に必要となったといえる電気代及び水道代の割合についての具体的 な根拠やそれに関する証拠の提出がないといった事情(なお、被告は令和3年8月 )。電気代及び水道代のうち、製造に直接関連して追加的に必要となったといえる電気代及び水道代の割合についての具体的 な根拠やそれに関する証拠の提出がないといった事情(なお、被告は令和3年8月18日付け準備書面で一定の被告製品の売上高を開示し、その後、経費その他に関する主張が当事者双方からされ、令和4年4月21日の期日において被告は経費について従前した以上の具体的な主張立証をしない旨述べた。)も考慮すると、経費として控除すべき電気代及び水道代の割合は、被告 主張の額(電気代については前工程と後工程の合計額)の2分の1(部門間で合意した額×20品目の割合×50%÷2)によって計算)と認めるのが相当である。 また、平成24年から平成26年についても、被告製品1を製造するに当たり電気及び水道を使用していたことが認められる。被告は、資料を保存し ていないことを理由に具体的な料金について主張しないが、これらの期間の製品についても、少なくとも上記のとおり認定できる各年度の電気代、水道代の費用の20品目の売上げに対する割合のうち、最も割合が小さい年の割合(電気代は令和3年、水道代については平成28年)に対応する額について、経費として計上するのが相当である(平成24年から平成26年の20 品目の売上げに同割合を乗じて計算する。)。以上によれば、電気代及び水道 代は別紙利益率計算表の「電気代」及び「水道代」欄記載のとおりとなる。 イ外注加工代(切断加工)及び外注加工代(カシメ等加工)証拠(乙42、43、53、54、)及び弁論の全趣旨によれば、被告が被告製品1、2に係る切断加工及びカシメ等加工の費用として支出した額について被告製品1、2の売上げに占めるそれぞれの20品目の売上げの割合を 乗じた額が、被告が主張 弁論の全趣旨によれば、被告が被告製品1、2に係る切断加工及びカシメ等加工の費用として支出した額について被告製品1、2の売上げに占めるそれぞれの20品目の売上げの割合を 乗じた額が、被告が主張する額である別紙利益率計算表の「切断(外注)」、「カシメ等(外注)」欄記載のとおりであることが認められ、20品目に係るこれらの外注加工に係る経費が同額を下回るとはいえない。 原告は、被告が切断加工のために計上した費用のうち、「ダイサー加工品」、「スライシング加工品」として計上されているものは、切断加工工程に当た らないと主張する。しかし、被告は、これらの費用は、被告製品に係る事業を立ち上げてしばらくの期間は、ダイサー加工(ダイシング加工)やスライシング加工を含む様々な条件でカットを試み、顧客からの評価を踏まえて製造販売をし、その後マルチワイヤーソーによる加工が確立された旨主張するところ、その主張に不自然なところはなく、これらの費用は被告製品1、2 のために支出されたと認められる。 また、原告は、治工具(ワークローラー芯金や新規カットローラー)については、被告製品1、2の加工数量に比例する数量が必要になるわけではないと主張する。しかし、これらは、請求書上は治工具の名目で計上はされているものの、被告が委託先から治工具を購入したという趣旨ではなく、外注 先が外注された作業の費用として計上しているものであって、被告がこの部分を分離して作業を依頼できる性質のものではなく、他の名目の費用と一体として委託のために必要な費用であることがうかがえる。したがって、これらが被告製品1、2の製造のために直接必要な費用ではないとは認められない。同様に、原告が指摘する「ワークローラー芯金」、「カット治具代含む」、 「ローラー費込み」、「 がえる。したがって、これらが被告製品1、2の製造のために直接必要な費用ではないとは認められない。同様に、原告が指摘する「ワークローラー芯金」、「カット治具代含む」、 「ローラー費込み」、「ニッケル棒加工治具代」についてもこれらが被告製 品1、2の製造のために直接必要な費用ではないとは認められない。 さらに、原告は、単価が「式」となっているものについても、数量にかかわらず一定の値のものがほとんどであるから控除されるべき費用に計上すべきではないと主張する。しかし、これらは、当該時期に当該数量の製品について問題となる作業を外注するために必要であった費用であることがう かがわれるのであるから、原告が指摘する事情をもって、これらの費用が被告製品1、2の製造のために直接必要な費用ではないとは認められない。その他、原告は、特定の請求書について、金メッキの導電層が設けられているか不明、「ニッケル棒」と記載されているだけであり、そもそも「電鋳管」かも不明などと主張するが、いずれについてもこれらが被告製品1、2に関す る費用ではないとは認められない。 ウ工具類被告は、マイクロチューブの製造に必要な特殊鋏の費用についても被告製品1、2の製造に必要な費用として利益から控除すべきであると主張する。 しかし、被告のマイクロチューブ製造部門では、被告製品1、2以外にもマ イクロチューブを製造しており(被告方法3参照)、同鋏が被告製品1、2のみに用いられているなど、被告製品1、2を製造していなければ同費用がかからなかったことをうかがわせる事情について明らかにされていないことからすると、上記費用は、被告製品1、2の製造に直接必要な費用であるとは認められない。 エ人件費被告は、被告製品1、2の製造に関与し かがわせる事情について明らかにされていないことからすると、上記費用は、被告製品1、2の製造に直接必要な費用であるとは認められない。 エ人件費被告は、被告製品1、2の製造に関与した従業員の賃金及び派遣従業員の派遣に要した派遣費用について、被告製品1、2の製造に必要な費用として利益から控除すべきであると主張する。 しかし、被告の従業員の賃金については、被告製品1、2を製造しなけれ ばこれらの賃金が発生しなかった関係にあることをうかがわせる事情もな いから、被告製品1、2の製造に直接必要な費用であるとは認められない。 派遣費用についても、被告のマイクロチューブ製造部門では、被告製品1、2以外の製品も製造していたことやその派遣費用の内容も明らかでないことから、被告製品1、2を製造していなければ被告主張の派遣費用が発生しない関係にあったのかについての具体的な事情が明らかであるとはいえず、 被告製品1、2の製造に直接必要な費用であるとは認められない。 以上を前提に20品目の経費を計算すると、別紙利益率計算表の「経費合計」欄記載のとおりとなり、利益率は、同「利益率」欄記載のとおりとなる(被告は、被告製品2の20品目に係る平成26年の売上げ及び経費を明らかにしないため、同年については経費を考慮しない。)。 被告製品1、2の売上額の合計に同利益率を乗じると、利益額は同「利益額」欄記載のとおりとなる。 推定覆滅等について被告は、本件発明1、5は、被告製品1、2の製造工程のうち、長尺の電鋳管を半製品として製造する過程に係るものであり、被告製品1、2は、この後 の切断加工する工程を経て完成するのであるから、本件発明1、5を使用して製造されたのは切断前の製品であると主張するほか、切断加工に係 して製造する過程に係るものであり、被告製品1、2は、この後 の切断加工する工程を経て完成するのであるから、本件発明1、5を使用して製造されたのは切断前の製品であると主張するほか、切断加工に係る付加価値分については損害の推定額は覆滅されるべきであると主張する。また、被告は、被告が被告方法による電鋳管を製造する前、製品の仕入後、切断等をして、仕入額の倍額で販売していたため、上記製品の製造工程と切断、洗浄による付加 価値は1対1として計算すべきであると主張する。 しかし、被告が販売する被告製品1、2は、本件発明1、5を使用した後に切断工程等があるとしてもその工程は販売する被告製品1、2に対する一連のものといえ、本件発明1、5を使用して製造されたものといえる。そして、被告が過去に仕入れていたという製品がどのように製造されていたかは不明で あり、その製品と被告方法1、2によって製造した切断加工前の製品の品質、 価格、価値等の関係も不明である。被告製品1、2を製造するに当たり、前記イで認定したとおり、被告は切断加工工程の少なくとも一部は外注して、利益の算定に当たりその外注加工代は経費として控除されているところ、その控除後の被告の利益とされる部分に、切断加工により得た被告の利益が存在することやその額を認めるに足りる証拠はない。 また、被告が主張する、原告に係る親子会社関係に関する主張は推定を覆滅すべき事情に当たるとはいえない。 以上によれば、被告の主張する推定覆滅を認めるに足りない。 以上を前提に損害額を計算すると、別紙損害計算表の「損害額」欄記載のとおりとなる。 各年の損害に係る弁護士費用相当額は、同損害額の1割が相当であるから、その額は同「弁護士表」欄記載のとおりとなり、各年の損害額 算すると、別紙損害計算表の「損害額」欄記載のとおりとなる。 各年の損害に係る弁護士費用相当額は、同損害額の1割が相当であるから、その額は同「弁護士表」欄記載のとおりとなり、各年の損害額は同「損害額」欄記載のとおりとなる。各年の総損害額は、同「年間損害額」欄記載のとおりとなる。 よって、原告の損害賠償請求については同「年間損害額」欄記載の額の合計 額である10億0865万7965円及びうち2億5952万0396円(平成24年から平成27年までの損害2億2620万9678円及び平成28年の損害に同年の損害に係る一部請求の割合(4356万8134円/8008万9815円)を乗じた額である3331万0718円の合計額)については、令和元年7月17日から、4億3629万0883円(平成28年に係る 上記の損害額を除いた2792万3240円、平成29年から令和元年までの損害合計額3億6820万5466円及び令和2年の損害の12分の3である4016万2177円の合計額。)に対する令和3年10月23日から各支払済みまで年5分の遅延損害金を、その余の3億1284万6686円に対する同日から支払済みまで年3分の遅延損害金を請求する限度で理由がある。 なお、本件発明5に対する侵害を前提に損害額を検討しても、上記損害額を 上回るものではない。 第4 結論以上のとおりであって、原告の請求は、被告方法1、2の使用及び被告方法1、2を用いて製造された製品の使用、譲渡等の差止め、同製品の廃棄、並びに、主文第4項の金員の請求の限度で理由があり、その余の請求には理由がないから、 これらを棄却することとし、主文第1項から第3項には仮執行宣言は相当でないので、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。 東京地 求の限度で理由があり、その余の請求には理由がないから、 これらを棄却することとし、主文第1項から第3項には仮執行宣言は相当でないので、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 別紙被告方法目録1 1 以下の構成を有する電鋳管の製造方法。 外周面に金-コバルト合金(Au:Co=99.7%:0.3%)の導電層を設 けたステンレス製の細線材の周りに電鋳によりニッケル電着物を形成し、前記電着物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去してこれを切断してマイクロパイプを製造する方法であって、前記金-コバルト合金の導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記ニッケル電着物より電気伝導率が高い。 前記ステンレスワイヤに前記金-コバルト合金メッキおよびニッケルメッキした線材の一端をエアーバイスで固定する。 前記線材の他端をラジオペンチ等でつかむ。 前記線材の一端をエアーバイスで固定したまま、他端をつかんだラジオペンチ等を左右に揺すり、エアーバイスの固定部分および他端のラジオペンチ等でつかんだ 部分の前記金-コバルト合金メッキおよびニッケルメッキからなるメッキ層にクラックを生じさせる。 他端をつかんだラジオペンチ等を前記2カ所のクラックの間隔をそれぞれ広げるように外方に引っ張る。 前記ステンレスワイヤの外表面から前記金-コバルト合金メッキが剥離する。 前記線材の他端をエアーバイスで固定したまま、前記線材の他端のラジオペンチ等を外し、同つかんでいた部分の線材を切断し、導 記ステンレスワイヤの外表面から前記金-コバルト合金メッキが剥離する。 前記線材の他端をエアーバイスで固定したまま、前記線材の他端のラジオペンチ等を外し、同つかんでいた部分の線材を切断し、導電層およびニッケル電着物を外周からつかんで外方に引っ張りステンレスワイヤから導電層およびニッケルメッキ電着物からなるメッキ層を外す。 前記上記線材から外れた導電層およびニッケル電着物からなるメッキ層を、所定 長さに切断して、肉厚が50μm以下のマイクロパイプを製造する 電鋳管を製造する方法。 2 ステンレス製の芯材に連続電解メッキによって金-コバルト合金(Au:Co=99.7%:0.3%)、ニッケルの順でメッキをした後、●(省略)●以外は、1と同じ電鋳管の製造方法。 別紙被告方法目録2 以下の構成を有する電鋳管の製造方法。 a 外周面に金のメッキ又は金を主成分とする金合金のメッキによる金メッキ層を設けたステンレス製の芯材の周りに電鋳によりニッケルメッキ層を形成し、前記ニッケルメッキ層の内面に前記金メッキ層を残したまま芯材を除去して電鋳管を製造する方法である。 b 前記金メッキ層は、電解メッキで形成されたものである。金メッキ層は前記ニ ッケルメッキ層より電気伝導率が高い。 c 前記芯材は、一方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた芯材と前記金メッキ層の間に隙間を形成して、前記変形させた芯材をつかんで引っ張って除去することにより、前記ニッケルメッキ層の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造する d 電鋳管の製造方法。 別紙物件目録 1 製品名:マイクロチューブ、マイクロパイプ、電鋳バレル又は超高精度微細管 2 構造: μm以下である電鋳管を製造する 電鋳管の製造方法。 別紙物件目録 1 製品名:マイクロチューブ、マイクロパイプ、電鋳バレル又は超高精度微細管 2 構造:ニッケルメッキ層の内面に金のメッキ又は金を主成分とする金合金のメッキによる金メッキ層を有し、ニッケルメッキ層の肉厚が50μm以下である電鋳管 別紙損害計算表(原告主張)(省略) 別紙利益率計算表(省略) 別紙20品目の売上げ(被告主張) (省略) 別紙損害額計算表(省略) 以上
▼ クリックして全文を表示