平成25年4月12日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第29260号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年1月23日判決東京都千代田区<以下略>原告日本ミユウ株式会社同訴訟代理人弁護士井澤光朗同渕上 隆東京都中央区<以下略>被告株式会社エクセノヤマミズ 東京都品川区<以下略>被告株式会社中一被告両名訴訟代理人弁護士鹿内徳行同高松政裕 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して331万5000円及びこれに対する平成23年9月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その3を被告らの,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して554万7840円及びこれに対する平成 23年9月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告らに対し,①被告らによる船舶用油槽洗浄機(型番MBT-30のもの。以下「MBT-30型機」という。)の製造,販売は,原告・被告ら間の昭和46年4月1日付け各契約に違反するものであると主張し,債務不履行に基づく損害賠償(平成19年10月27日から平成23年6月3 以下「MBT-30型機」という。)の製造,販売は,原告・被告ら間の昭和46年4月1日付け各契約に違反するものであると主張し,債務不履行に基づく損害賠償(平成19年10月27日から平成23年6月30日までの分)として,454万7840円(附帯請求として,訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めるとともに,②被告らによる船舶用油槽洗浄機(型番MST-30XLのもの。以下「MST-30XL型機」という。)の製造,販売は,被告株式会社中一に関し,原告・同被告間の昭和46年4月1日付け契約に違反し,かつ,被告らに関し,共同不法行為が成立するものであると主張し,債務不履行又は共同不法行為(被告株式会社エクセノヤマミズについては共同不法行為のみ)に基づく損害賠償(平成19年10月27日から平成23年6月30日までの分)として,4506万7000円の一部である100万円(附帯請求として,訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求め,さらに,上記②との選択的請求として,③被告らが,船舶用油槽洗浄機(MST-30XL型機)に,原告の周知商品等表示である「MST-30」の名称を付して販売することは,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当すると主張し,同法4条に基づく損害賠償(平成8年11月1日から平成23年6月30日までの分)として,1億8029万7920円(同法5条3項)の一部である100万円(附帯請求として,訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等の記載のない事実については争いがない。)(1) 当事者等 ア原告は,船舶用洗浄機の設計,製造等を業とする株 遅延損害金)の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等の記載のない事実については争いがない。)(1) 当事者等 ア原告は,船舶用洗浄機の設計,製造等を業とする株式会社である。 イ被告株式会社エクセノヤマミズ(平成4年2月1日付け商号変更前の商号は「山水商事株式会社」。以下,商号変更前後を通じて「被告ヤマミズ」という。)は,船舶及び陸上向け燃料添加剤の販売,船舶油槽工事及び船舶関連機器類の開発及び販売等を業とする株式会社である。 ウ被告株式会社中一(昭和49年1月1日付け商号変更前の商号は「株式会社中一燃機工業所」。以下,商号変更前後を通じて「被告中一」という。)は,船舶用機器の製作等を業とする株式会社である。 (2) 原告・被告ら間の各契約ア第1契約(甲3)原告は,昭和46年4月1日,被告ヤマミズ及び日本カッパー工業株式会社(以下「カッパー工業」という。)との間で,特殊油槽洗浄機の製造販売に関し,下記条項を含む契約(以下「第1契約」という。)を締結した。 記第1条被告ヤマミズ及びカッパー工業は原告に対し,原告の考案設計した特殊油槽洗浄器(「マシン」)の生産を依頼する。 第2条被告ヤマミズ及びカッパー工業は原告よりマシンを購入し,国内において販売するものとす。 第4条被告ヤマミズ及びカッパー工業は原告の考案したマシンを原告以外のものに製造を依頼してはならない。 第5条原告はマシンを被告ヤマミズ及びカッパー工業以外のものに直接売渡すか,又は賃貸してはならない。 第7条被告ヤマミズ,カッパー工業及び原告はマシンの構造上の内容及び営業上の秘密を第三者に漏洩してはならないし,相互相手方に不利益又は のものに直接売渡すか,又は賃貸してはならない。 第7条被告ヤマミズ,カッパー工業及び原告はマシンの構造上の内容及び営業上の秘密を第三者に漏洩してはならないし,相互相手方に不利益又は損害を与えた場合は計算した額を弁済するものとす。 第8条本契約の第4条及び第7条は,契約の終了した日より起算して,10年間は更に継続して有効とする。 第10条本契約は締結日より向う1年とし,期間満了の1カ月前に双方異議の申出ない場合は更に1カ年自動的に延長し,以後もその例に準ずる。 イ第2契約(甲4)原告は,同日,被告中一との間で,特殊油槽洗浄機の製造販売に関し,下記条項を含む契約(以下「第2契約」という。)を締結した。 記第1条原告は原告の考案した機械の製作を被告中一に依頼する。 第2条被告中一は原告に依頼された機械の製作を原告と協議打合わせにより製作し,かつ指示された納期までに納入しなければならない。 第4条被告中一は原告の考えに基づく機械の製作上,機構,性能上の秘密を第三者に漏洩してはならない。また同じ目的に使用する類似した機械を原告以外の第三者から依頼され製作販売してはならない。 第5条原告及び被告中一は本契約に背いて相手側に損害を与えまた営業の妨げとなる行為を行なった場合は相手側に与えた損害額を弁済しなければならない。 第7条本契約は契約の日より五ケ年とし契約終了日より六ケ月前に原告・被告中一の両者が文書に依る契約延長の意志のないことを通知しなければ自動的に五ケ年延長されるものとする。 第9条本契約期日が終了又は破棄された場合でも原告,被告中一両者の利益を守るため本契約文の第3条,第4条,第5条は契約期日が終了ま を通知しなければ自動的に五ケ年延長されるものとする。 第9条本契約期日が終了又は破棄された場合でも原告,被告中一両者の利益を守るため本契約文の第3条,第4条,第5条は契約期日が終了また破棄された日から起算して向こう10ケ年間は有効とする。 ウ第3契約(甲5)(ア) 原告は,昭和54年6月29日,被告ヤマミズとの間で,「原告が考案しかつ原告及び被告ヤマミズで共同開発した油槽洗浄機MST-3 0型の製造並びに販売」に関し,下記条項を含む協定書(以下「第3契約」という。)を締結した。 記第1条本機械の特許権並びに営業権は,被告ヤマミズが原告より第3条を条件に取得する。 第3条被告ヤマミズは第1条による本機械の営業権及び特許権の取得の代償として原告に対し2500万円を支払う。 第4条原告及び被告ヤマミズは,本機械の機構図2部を作成し,各自署名の上一部ずつ保管するものとする。 第6条本機械以外のミユウマシンについて被告ヤマミズが原告に断りなく製造販売し原告に損害を与えた場合,又は原告が本機械を直接販売し被告ヤマミズに損害を与えた場合に生ずる一切の損害をそれぞれ相手方に支払わなければならない。 (イ) 原告及び被告ヤマミズの各代表者は,昭和55年10月13日,第3契約第4条所定の「MST-30型機機構図」として,MST-30R型機及びMST-30RF型機の機構図に署名した(甲6)。 (3) 原告は,昭和46年頃から,被告ヤマミズから発注を受けたMBT-30型機の製造を被告中一に委託し,被告中一からその納入を受け,これを被告ヤマミズに販売・納入することを内容とする取引を継続的に行うようになった。上記取引によって原告が得る販売差益は,MBT-30型機1台当た 製造を被告中一に委託し,被告中一からその納入を受け,これを被告ヤマミズに販売・納入することを内容とする取引を継続的に行うようになった。上記取引によって原告が得る販売差益は,MBT-30型機1台当たり1万7000円であった(甲31,33の1ないし8,10,34の1ないし6,35の1ないし12,36の1ないし12,45,乙27,30,31,弁論の全趣旨)。 (4) 被告らは,平成12年頃から,MBT-30型機の製造を,原告を介さず被告ヤマミズが直接被告中一に発注し,被告中一が上記発注に基づいてこれを製造した上,被告ヤマミズに納入するようになった。 (5) 従前の訴訟経過等ア前々訴事件(甲7,8)原告は,平成16年,被告らによる平成12年6月16日から平成15年8月27日までの間におけるMBT-30型機の製造販売が,第1契約及び第2契約に違反するものであって,被告らの共同不法行為に該当すると主張し,528万7000円(附帯請求として,訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の損害賠償を請求する訴訟を提起し(当庁平成16年(ワ)第12178号損害賠償請求事件。以下「前々訴事件」という。),平成18年2月17日,被告らに対し,上記同額の支払を命ずる判決(以下「前々訴地裁判決」という。)を得た(甲7)。 原告及び被告らは,同年7月21日,その控訴審(東京高等裁判所平成18年(ネ)第1559号損害賠償請求控訴事件)において,平成12年6月16日から平成15年8月27日までのMBT-30型機の製造販売に関し,被告らが原告に対し和解金として上記同額を支払う旨の内容の和解を成立させた(甲8)。 イ前訴事件(甲1,2)原告は,平成19年頃,被告らによる平成15年8月27日(8月2 機の製造販売に関し,被告らが原告に対し和解金として上記同額を支払う旨の内容の和解を成立させた(甲8)。 イ前訴事件(甲1,2)原告は,平成19年頃,被告らによる平成15年8月27日(8月28日の誤記であると解される。以下同じ。)から平成19年10月26日までの間におけるMBT-30型機の製造販売が,第1ないし第3契約違反の債務不履行又は共同不法行為に該当すると主張し,689万3500円の損害賠償(附帯請求として訴状送達日の翌日である平成19年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)を請求するとともに,被告らによる平成15年8月27日から平成19年10月26日までの間におけるMST-30XL型機の製造販売についても,第1ないし第3契約違反の債務不履行又は共同不法行為に該当すると主張し, 1億3532万円(附帯請求として訴状送達日の翌日である平成19年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)を請求する訴訟を提起した(当庁平成19年(ワ)第32096号損害賠償請求事件。以下「前訴事件」という。)。 当庁は,平成22年1月29日,MBT-30型機につき,被告らの債務不履行責任を認め,被告らが平成15年8月27日から平成19年10月26日までの間に製造販売したMBT-30型機の台数を304台と認定した上で,上記台数に係る原告の損害額516万8000円及び遅延損害金の支払を求める限度で原告の請求を認容する一方,MST-30XL型機に関する債務不履行及び共同不法行為の成立を否定し,この点に関する原告の請求を棄却する旨の判決(以下「前訴地裁判決」という。)をした(甲1)。 原告はこれに対し控訴し(ただしMBT-30型機については請求額を前訴地裁判決における認容額の限度に減縮 の点に関する原告の請求を棄却する旨の判決(以下「前訴地裁判決」という。)をした(甲1)。 原告はこれに対し控訴し(ただしMBT-30型機については請求額を前訴地裁判決における認容額の限度に減縮したため,不服の範囲はMST-30XL型機に係る損害賠償請求を棄却した部分のみとなった。),被告らは附帯控訴したところ,東京高等裁判所は,同年10月28日,控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する旨の判決をし,同判決はその後確定した(甲2)(以下「前訴高裁判決」という。)。 2 争点(1) MBT-30型機についてア MBT-30型機に関する債務不履行の成否イ MBT-30型機に関する損害額(2) MST-30XL型機についてア MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為の成否イ MST-30XL型機に関する不正競争の成否ウ MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為による損害 額エ MST-30XL型機に関する不正競争による損害額第3 当事者の主張 1 争点(1)ア(MBT-30型機に関する債務不履行の成否)(原告の主張)(1)ア前記前提事実(2)ア及びイのとおり,第1契約には,被告ヤマミズは原告の考案したマシンを原告以外の者に製造依頼してはならない旨の条項があり(同契約第4条),第2契約には,被告中一が原告の考案した機械と同じ目的に使用する類似した機械を原告以外の第三者から依頼され製作販売してはならない旨の条項がある(同契約第4条)ところ,MBT-30型機は,第1契約第4条及び第2契約第4条各所定の上記機械(マシン)に含まれるから,被告らは,第1,第2契約に基づき,原告以外の者にMBT-30型機の製造を依頼してはならず,また,原告以外から依頼を受けてMBT-30 条及び第2契約第4条各所定の上記機械(マシン)に含まれるから,被告らは,第1,第2契約に基づき,原告以外の者にMBT-30型機の製造を依頼してはならず,また,原告以外から依頼を受けてMBT-30型機を製造してはならない義務を負う。 イ被告らは,平成19年10月27日から平成23年6月30日までの44か月間,被告ヤマミズから依頼を受けて被告中一がMBT-30型機を製造し,被告ヤマミズが,上記のとおり被告中一が製造したMBT-30型機を第三者に販売し続けているところ,これらの行為は,被告ヤマミズにつき第1契約に,被告中一につき第2契約に違反するものであり,原告に対する債務不履行を構成する。 (2) 被告らの主張に対する反論等ア MBT-30型機が第1,第2契約の対象外であるとの主張について(ア) 被告らは,MBT-30型機が原告の考案設計したものではないと主張するが,否認する。原告は,その考案した機械のうち,MU-30型機については,被告中一との間で製造委託契約(甲20)を締結する一方,MBT-30型機については,東光精機株式会社(以下「東光精 機」という。)との間で製造委託契約(甲21)を締結したが,被告らの懇願を受けて,東光精機との上記契約を破棄し,被告中一に基本設計図及び基本構造図を渡し,細部形状,寸法,寸法公差等を逐一指示して製作図面を作成させ,MBT-30型機を製造させたものであり,同機は原告が考案設計したものである。これは,原告がMBT-30型機の図面(甲22,乙12)を所持していることからも明らかである。 (イ) 原告は,その考案した機械のうち,MUT-50型機については被告中一以外の者に製造を委託しているが,これは,MU-30型機及びMBT-30型機の製造により被告中一の製造能力が限界に達して (イ) 原告は,その考案した機械のうち,MUT-50型機については被告中一以外の者に製造を委託しているが,これは,MU-30型機及びMBT-30型機の製造により被告中一の製造能力が限界に達していたことなどから,被告中一の同意の下で他社に製造を委託したものにすぎず,この点をもって第2契約の対象が不明確であるというのは適切ではない。原告は,第1契約に従い,上記のとおり他社に製造させたMUT-50型機を被告ヤマミズに販売していたのであって(甲13の2),原告は,MUT-50型機を第1契約の対象として扱っていたとみるべきである。 (ウ) 第1契約は原告が考案した特殊油槽洗浄機全般を対象とするものであり,その中にはカッパー工業がリース業者として関わるもの(MU-30型機)も含まれるのであるから,同社が契約当事者となることと,MBT-30型機が契約対象に含まれることとは矛盾しない。 イ第1,第2契約が無効であるとの主張について(ア) 被告らの主張は争う。第1,第2契約当事者が念頭においていた対象物に,少なくともMU-30型機及びMBT-30型機が含まれることは明らかであり,第1,第2契約は無効とみるべきような内容不確定のものではない。 (イ) 第1,第2契約は,被告ら,原告及び原告代表者にそれぞれ義務を課すものであり,約定に反した場合には,原告及び原告代表者も損害賠 償義務を負うものとされているのであるから,同契約は,被告らに一方的不利益を課すものではない。被告らは自ら第1,第2契約に同意し,同契約を締結したのであるから,後になって不利益が発生したからといって,その効力を否定できるものではない。 ウ第1,第2契約が終了したとの主張について(ア) 被告らの主張は否認する。原告は,被告らによる船 るから,後になって不利益が発生したからといって,その効力を否定できるものではない。 ウ第1,第2契約が終了したとの主張について(ア) 被告らの主張は否認する。原告は,被告らによる船舶用油槽洗浄機の無断販売の情報を得て,昭和53年12月,被告ヤマミズに対し第1契約を解消する旨の通知(乙13)を送ったが,その後,被告ヤマミズ代表者から無断販売をしない旨の約束を得て,上記通知に係る意思表示を撤回した。 (イ) 原告は,第2契約の1回目の自動更新後の契約期間満了日である昭和56年3月31日以降も,被告中一との間で,第2契約を前提とする覚書(甲23)を取り交わして継続的取引関係を続けていたのであり,第2契約が終了していないことは明らかである。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) MBT-30型機が第1,第2契約の対象外であることア第1,第2契約の対象が不確定であることは下記(3)のとおりであるが,これを仮に特定するとすれば,原告の考案設計によるものということになるところ,MBT-30型機を考案設計したのは被告中一であるから,同機は第1,第2契約の対象に含まれない。 すなわち,被告中一は,昭和44年後半頃,被告ヤマミズからの製作依頼を受けて可搬型洗浄機であるMU-30型機を考案設計し,その後,これを更に発展させた固定式洗浄機として,MBT-30型機を設計考案した。MBT-30型機が原告ではなく被告中一の考案に係るものであることは,被告中一がMBT-30型機の基本構想を記した全体図(乙2)を 含む設計図(乙2ないし8)を作成していること,原告がMBT-30型機の設計図を所持していないこと(原告が同設計図であると主張する書面〔乙12〕は,完成品をスケッチして作成された組立図面 含む設計図(乙2ないし8)を作成していること,原告がMBT-30型機の設計図を所持していないこと(原告が同設計図であると主張する書面〔乙12〕は,完成品をスケッチして作成された組立図面であり,設計の際に必要な寸法公差も記入されておらず,設計図と呼べるものではない。),原告によるMBT-30型機の開発時期の主張が不明確であることから明らかである。 イ第1契約は,被告ヤマミズのほか,カッパー工業も契約当事者とするものであるところ,カッパー工業はリース会社であり,固定式洗浄機であるMBT-30型機についてはカッパー工業によるリースが予定されていないのであるから,カッパー工業を当事者とする第1契約の対象にMBT-30型機が含まれないことは明らかである。 (3) 第1,第2契約が無効であることア第1,第2契約の対象(「原告が考案(設計)した機械」)は,その範囲が広範かつ不明確である上,原告自身,前訴事件において,MUT-50型機について被告中一に製造を依頼しなかったこと,すなわち原告が考案した機械であっても,契約対象外となるものがあることを認めているのであるから,第1,第2契約は,その対象を特定することができず確定性を欠き無効である。 イ第1契約は,被告ヤマミズに対し,契約終了日から10年間にわたり,「原告の考案した機械」という漠然かつ包括的な種類の機械の製造販売を禁止するものである。また,第2契約は,被告中一に,原告の考案した機械と「同じ目的に使用する類似した機械」という,更に漠然かつ包括的な種類の機械の製造等を禁止するものである。原告は,MBT-30型機につき特許権等を取得しておらず,原告に保護に値する利益が存在しないにもかかわらず,被告らの営業の自由に上記のような強力な制限を課すことに社会的妥当性 を禁止するものである。原告は,MBT-30型機につき特許権等を取得しておらず,原告に保護に値する利益が存在しないにもかかわらず,被告らの営業の自由に上記のような強力な制限を課すことに社会的妥当性はなく,第1契約及び第2契約は公序良俗に反し無効であ る(民法90条)。 (4) 第1契約及び第2契約が終了していることア第1契約について原告は,昭和53年12月,被告ヤマミズに対し,昭和54年3月31日をもって第1契約を解消する旨の解除通知(乙13)を発出しており,これにより,第1契約は,同日をもって終了した。 イ第2契約について第1契約及び第2契約は,一連の取引を想定し,同じ日に締結されたものであるにもかかわらず,第2契約第7条に,第1契約第10条と異なり,「以後もその例に準ずる」旨の文言がないことに照らせば,第2契約が,自動更新を1回に限る趣旨であったことは明らかである。したがって,第2契約は,契約締結日から1回目の自動更新を経た契約期間満了日である昭和56年3月31日をもって終了した。 2 争点(1)イ(MBT-30型機に関する損害額)(原告の主張)原告は,被告らによるMBT-30型機の製造販売に関し,被告らの債務不履行又は共同不法行為の成立を認め,損害賠償を命ずる前々訴地裁判決及び前訴地裁・高裁判決を得ているところ,これらの判決は,いずれも,原告が,第1・第2契約に基づき,被告らから,MBT-30型機1台当たり1万7000円のロイヤリティを得ていたことを認め,上記債務不履行又は共同不法行為に基づく損害賠償として,上記ロイヤリティ額に被告らが製造販売したMBT-30型機の台数を乗じた金額を原告の損害として認めたものである。前訴地裁判決によれば,平成15年8月27日から平成19年 行為に基づく損害賠償として,上記ロイヤリティ額に被告らが製造販売したMBT-30型機の台数を乗じた金額を原告の損害として認めたものである。前訴地裁判決によれば,平成15年8月27日から平成19年10月26日までの50か月間に被告らが製造販売したMBT-30型機の台数は304台(1か月当たり6.08台)であり,本件請求に係る期間においても,同様の製造販売が行われてきたことが合理的に推認される。したがって,原告が従前得ていた ロイヤリティ額である1万7000円に,267.52台(6.08台×44か月)を乗じた454万7840円が,本件における原告の損害額となる。 (被告らの主張)原告の主張は争う。平成19年10月26日から平成23年6月30日までのMBT-30型機の製造販売台数は,乙31及び43記載のとおり,195台である。 3 争点(2)ア(MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為の成否)(原告の主張)(1) 第2契約第4条は,被告中一について「同じ目的に使用する類似した機械」を原告以外の第三者から依頼され製作販売することを禁じているところ,「同じ目的に使用する類似した機械」とは,原告又は原告代表者が開発した船舶用油槽洗浄機の設計を盗用した類似品を指す。 (2) 被告中一は,原告代表者が開発したTMU-33型機の設計を盗用した類似品であるMST-30XL型機を原告以外の第三者である被告ヤマミズから依頼されて製作し,同被告に対し販売したのであるから,被告中一の行為は,上記第2契約第4条に違反するものとして原告に対する債務不履行を構成する。また,被告らの上記行為は原告に対する共同不法行為を構成する。 (3) MST-30XL型機がTMU-33型機の設計を盗用した類似品に当たること するものとして原告に対する債務不履行を構成する。また,被告らの上記行為は原告に対する共同不法行為を構成する。 (3) MST-30XL型機がTMU-33型機の設計を盗用した類似品に当たることについてア TMU-33型機の設計上の核心部分は,「(従前のようにノズルボディに接合された)曲線ノズルを採用せずに(完全に)オフセットすること」にあり,上記目的を実現するために,「リンク方式を採用することにより洗浄ノズルをギアやシャフトなどでノズルボディと接合せず,ノズルボディと離れた3次元の位置に,真っ直ぐノズルを配置」するという手段を採用したことにある。なお,「オフセット」とは,「相殺」と訳され, 噴出反力がノズルボディの回転に影響を及ぼさず安定した洗浄が確保できている状態,又はそのための措置を指す。 すなわち,従前の洗浄機との対比においてTMU-33型機の特徴を説明した文書である公開特許公報(甲24)によれば,真っ直ぐノズルの洗浄機(甲24の第6,7図)では,ノズルからの洗浄液の噴出反力がノズルボディの回転に影響を及ぼし,洗浄パターンを乱してしまう。また,ノズルを屈曲させた洗浄機(甲24の第8,9図)では,噴出反力の延長上とノズルボディ中心線を交差させて噴出反力を相殺(オフセット)し,安定した洗浄を確保できるが,ノズル接合部分に上下回転可能な程度に遊びを設ける必要があるためオフセットが不完全なものとなり,また,ノズル可動範囲が制限されることや,ノズル長及びノズル重量の増大による加工コストの増加などの問題点がある。 これに対し,TMU-33型機は,甲24の第1ないし第5図のとおり,噴出反力の延長上とノズルボディの中心線が交差するよう設計されており,噴出反力のオフセットが可能である上,ノズル回転軸をノズルボデ これに対し,TMU-33型機は,甲24の第1ないし第5図のとおり,噴出反力の延長上とノズルボディの中心線が交差するよう設計されており,噴出反力のオフセットが可能である上,ノズル回転軸をノズルボディの前方に,垂直軸から距離を隔てた3次元の位置に設けたことから,直線ノズルを採用することができ,ノズルの可動範囲の制限及び加工コストの増加を克服することができた。加えて,TMU-33型機は,ノズル回転軸を上記の3次元の位置に設け,メインシャフトを上下に可動させ,そこに接続したレバー(甲24の第3図の12,甲10の5頁の部品番号30)及びリンク(甲24の第3図の16,甲10の4頁の部品番号12,5頁の部品番号31)を介してノズルを上下動させる設計としたため,ノズルボディ内部に駆動機構を収納する必要がなくなり,軽量化,機構のシンプル化,整備性の向上を図ることができた。 イ MST-30XL型機は,真っ直ぐな1本ノズル(甲25の部品番号15)がノズルボディ(甲25の部品番号13)前方の3次元の位置に設置 されており,噴出反力をオフセットする構造となっている。また,メインシャフト(甲25の部品番号10)を上下動させ,そこに接続したリンク(甲25の部品番号16)を介してノズルを上下動させる構造となっており,TMU-33型機の設計上の上記核心部分と全く同じ構造を採用したものに当たる。 (4) 被告らの主張に対する反論等ア既判力又は信義則違反に関する点について最高裁第二小判昭和37年8月10日は,一個の金銭債権の数量的一部請求の判決確定後の残部請求について,前訴において一部である旨を明示した場合には,訴訟物は当該一部であり,既判力は残部請求に及ばないとして,残部請求を適法としたものである。また,最高裁第二小判 一部請求の判決確定後の残部請求について,前訴において一部である旨を明示した場合には,訴訟物は当該一部であり,既判力は残部請求に及ばないとして,残部請求を適法としたものである。また,最高裁第二小判平成10年6月12日は,一個の金銭債権の数量的一部請求がなされた後の残部請求に関し,上記昭和37年最高裁判決を前提としつつ,信義則を根拠に残部請求が許されないとしたものであり,その理由とするところは,前訴において債権の全部について審理が行われたことにある。 しかるに,原告は,前訴事件において,被告らが継続的に行っている債務不履行又は不法行為に関し,時期を特定して損害賠償請求をしたものであり,一個の金銭債権の数量的一部請求をしたものではないから,上記昭和37年最高裁判決を引くまでもなく,前訴判決の既判力が本件請求に及ぶことはない。また,本件の場合,前訴事件で対象とならなかった時期における債務不履行又は不法行為に関し損害賠償を請求するものであり,これを信義則違反とすることは,原告の裁判を受ける権利を不当に侵害するものである。 したがって,MST-30XL型機に関する本件請求が,既判力又は信義則違反により排斥されることはない。 イ被告らの主張は,「オフセットを解消」などの表現を用いる点で,原告 とは異なる意味で「オフセット」の語を用いるものであり,適切な反論となっていない。また,被告らは,オフセットの方法の違いとして,MST-30XL型機が二又支持構造であることを挙げ,かつ,リンク機構の場所が相違すると主張するが,MST-30XL型機は,噴出反力の延長上とノズルボディの垂直中心軸を交差させる点でTMU-33型機と同一なのであり,二又支持構造であるか片側支持構造であるか,また,リンク機構の場所がどこであるか MST-30XL型機は,噴出反力の延長上とノズルボディの垂直中心軸を交差させる点でTMU-33型機と同一なのであり,二又支持構造であるか片側支持構造であるか,また,リンク機構の場所がどこであるかはオフセットとは無関係である。さらに,被告らは,リンク機構におけるクランク使用の有無を相違点として挙げるが,TMU-33型機は,オフセットした真っ直ぐノズルを採用し,かつ,リンク方式を採用した最初の洗浄機であり,リンク方式の採用自体が意味を持つのであり,クランク使用の有無は問題とならない。 (被告らの主張)(1) 原告らの主張は争う。 (2) 原告は,前訴において,被告らによるMST-30XL型機の製造販売につき,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として,平成15年8月27日から平成19年10月26日までの損害分を,一部請求であることを明示して請求し,棄却判決を受けて確定したものであり,本訴において,同一の請求原因に基づき,その残部を請求するものである。 明示的一部請求であっても,前訴で敗訴した原告が残部請求訴訟を提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されないとされる(最高裁第二小判平成10年6月12日・民集52巻4号1147頁)から,原告のMST-30XL型機に関する請求は,前訴を不当に蒸し返すものであり,前訴の既判力に抵触し,又は信義則に反し許されない。 (3) MST-30XL型機がTMU-33型機の設計を盗用した類似品に当たらないことについてア TMU-33型機は,リンク機構がノズルボディの横に位置し,センタ ーシャフトの上下動をノズルに伝達するためにリンクの一部を横に曲げ,ノズルにつなげる機構で元に戻し,オフセット(中心線からのずれ)を解消する,すなわち,噴出反力をノズルボデ 位置し,センタ ーシャフトの上下動をノズルに伝達するためにリンクの一部を横に曲げ,ノズルにつなげる機構で元に戻し,オフセット(中心線からのずれ)を解消する,すなわち,噴出反力をノズルボディの中心線上で受ける機構になっているのに対し,MST-30XL型機は,流体の流れの芯(パイプセンター,ノズルアクションシャフト,リンク機構,ノズルボディセンター,ノズル)と力の伝達経路を同一線上に位置させるという設計思想から,リンク方式の採用及び二又機構のノズルボディを実現させ,直線ノズルを採用することができたものであり,基本となる設計思想においてTMU-33型機とは全く異なるものである。 イ TMU-33型機のノズルボディは片側支持であり,センターシャフトからノズルに至る部分をS字管状に曲げることによりオフセット(中心線からのずれ)を解消する構造であるのに対し,MST-30XL型機は,初めからオフセット(中心線からのずれ)のない構造を目指し,二又機構のノズルボディを採用し,これを実現したものであり,両者はその目的の実現方法において決定的に異なる。 ウ TMU-33型機は,リンクに,シャフトの上下動に従って回転運動するクランクバー(乙33の部品番号205)を使用しているが,その回転運動の移動により半径距離が変化し,リンク作動が成り立たなくなることを避けるため,これに長円形の穴を開け,この部分で連結点(乙33の部品番号210がはまっている場所)がスライドして距離の変化に追随し,シャフトの上下動に合わせられるような構造が採用されている。これに対し,MST-30XL型機ではシャフトの上下動をシャフトの下部でリンクに直接連結して,リンクの枚数でノズルを動かす仕組みを採用しており(乙40の3枚目,部品番号L22),リンク機構の使い方に れに対し,MST-30XL型機ではシャフトの上下動をシャフトの下部でリンクに直接連結して,リンクの枚数でノズルを動かす仕組みを採用しており(乙40の3枚目,部品番号L22),リンク機構の使い方においてTMU-33型機とは全く異なる。また,TMU-33型機がノズルの裏にリンクを位置させてクランクと連結しているのに対し,MST-30XL型 機は,シャフトの真下にリンクを位置させており,この点においても両者は全く異なる。 エ原告は,「3次元の位置にノズルを配置」することがTMU-33型機の設計上の核心を成すと主張するが,これが,洗浄機本体の垂直中心軸より3次元の位置にあることを意味するとすれば,MST-30R型機やMST-30RF型機のノズル部(甲6の6枚目,N-4ノズルホルダーへのN-5ノズルローターアッセンブリーの固定位置はノズルボディ中心軸であるN-15アクションラックから離れた位置にある。)においても同様であり,上記構成はTMU-33型機固有の技術的特徴に当たらない。 オそもそも,被告らは,前訴提起時までTMU-33型機の構造を知らなかったばかりか,TMU-33型機は,ノズル部分に流路に貫通して直径14ミリのピン(乙33の部品番号212)が存在することにより乱流が発生し,有効射程距離を確保できず,激しい振動と衝撃を伴い,部品等を損傷させるおそれも高い劣悪な性能のものであり,被告らがその技術を盗用する理由がない。 カしたがって,MST-30XL型機はTMU-33型機の設計を盗用した類似品に当たらない。 4 争点(2)イ(MST-30XL型機に関する不正競争の成否)(原告の主張)(1) 「MST-30」の周知性ア原告代表者は,自ら開発した船舶用洗浄機を「MUMachine(ミュウ 4 争点(2)イ(MST-30XL型機に関する不正競争の成否)(原告の主張)(1) 「MST-30」の周知性ア原告代表者は,自ら開発した船舶用洗浄機を「MUMachine(ミュウマシン)」と名付け,「MU-30」型機(昭和45年頃に,初の国産船舶用油槽洗浄機として考案・設計されたもの),「MBT-30」型機(固定式洗浄機であり,被告ヤマミズが原告の独占的販売代理店として販売してきたもの)など,「M」の文字を冠した型式名で製造販売を行ってきており,船舶用油槽洗浄機の需要者の間において,「M」の文 字を冠した型式名は,原告の商品であると広く認識されていた。 また,原告は,「MUMachine(ミュウマシン)」のうち,固定式洗浄機を「MUCannonfix(ミュウ・キャノンフィックス)」シリーズと名付けて販売してきたところ,被告ヤマミズは,「ミュウ・キャノンフィックス」を「ミューの洗浄機」すなわち原告の商品として宣伝してきたのであり(甲13の2),「MUCannonfix(ミュウ・キャノンフィックス)」は,原告が考案,設計,製造する固定式船舶洗浄機の表示として周知のものであった。 イ 「MUCannonfix」シリーズとしての「MST-30」「MST」とは,「MuSingleTankcleaningmachine」の略であるところ,被告ヤマミズは,「MST-30」型機を,上記アのとおり原告の商品表示として周知である「MUCannonfix(ミュウ・キャノンフィックス)」シリーズの製品として位置付けた上で,昭和52年頃から54年12月までの間に,船主13社に対し,上記「MST-30」型機を販売しているのであるから(甲17,18),遅くとも同月には,船舶油槽洗浄機の需要者の間で,「MST-3 けた上で,昭和52年頃から54年12月までの間に,船主13社に対し,上記「MST-30」型機を販売しているのであるから(甲17,18),遅くとも同月には,船舶油槽洗浄機の需要者の間で,「MST-30」は,原告が考案,設計,製造する固定式船舶洗浄機の表示として周知のものとなった。原告が海外専門誌(甲19)において「MST-30」型機を自社製品として紹介していることも,「MST-30」が原告の商品表示として周知であったことを裏付けている。 ウ被告らは,「MST-30」は被告ヤマミズの商品等表示であると主張するが,被告らが指摘する事実は,いずれも「MST-30」が昭和54年12月までに原告の商品等表示として周知となった後の混同惹起行為であり,「MST-30」が被告ヤマミズの商品等表示であることを基礎付けない。 (2) 被告らによる不正競争 ア被告ヤマミズは,第3契約により,原告との間で,原告から「MST-30」型機の特許権,営業権等の譲渡を受ける旨を合意し,昭和55年10月13日付け合意により,第3契約に係る「MST-30」型機とは,MST-30R型機及びMST-30RF機を指すことを確定させた。ところが,被告ヤマミズは,平成8年11月1日から平成23年6月30日までの間,MST-30R型機及びMST-30RF機とは全く異なる機械であるMST-30XL型機を被告中一に製造させ,これに「MST-30」の型式名を付して販売している。「MST-30」の名称は,「M」の文字を頭に冠した型式名である点で,原告の商品名と類似している。 イ不正競争防止法2条1項1号にいう「混同」とは,両者間に緊密な営業上の関係があるのではないかと誤信する場合も含まれると解される。 MST-30XL型機に関しては,MST-3 している。 イ不正競争防止法2条1項1号にいう「混同」とは,両者間に緊密な営業上の関係があるのではないかと誤信する場合も含まれると解される。 MST-30XL型機に関しては,MST-30R型及びMST-30RF型とは異なり,原告と被告らとの間に何ら営業上の関係がないにもかかわらず,被告らが,MST-30XL型機に,原告の周知商品等表示である「MST-30」の名称を使用して販売することにより,原告・被告ヤマミズ間に代理店契約が存在するなどの緊密な営業上の関係が存在するものと誤信するおそれが生じているのであり,被告らがMST-30XL型機を製造販売する行為が,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に当たることは明らかである。 (被告らの主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 「MST-30」が被告ヤマミズの商品等表示であることア不正競争防止法2条1項1号にいう「他人」とは,商品等表示の僭用者以外の者であり,かつ,主体的に当該商品等表示に係る商品又は営業についての事業を営む者であって,当該商品等の需要者が当該商品等表示に化 体した信用の主体として認識する者をいい,「他人」に該当するかどうかは,当該商品等表示の内容や態様,当該商品の広告・宣伝の規模や内容,品質保証表示のあり方などに照らし,当該商品等表示が何人のものとして需要者に認識されているかによって定めるのが相当である。 イ 「MST-30」のような原油洗浄機の需要者である造船会社等の事業者は,型式承認書の記載,製品カタログ,会社案内等を通じ,又は実際に展示会等で商品に接してその商品主体を認識するものであり,とりわけ型式承認における製造者がどこかが重要であるところ,次の事実に照らし,上記需要者が当該商品等表示に化体した信用の主体として認識する者は被 示会等で商品に接してその商品主体を認識するものであり,とりわけ型式承認における製造者がどこかが重要であるところ,次の事実に照らし,上記需要者が当該商品等表示に化体した信用の主体として認識する者は被告ヤマミズに他ならない。 (ア) 型式承認海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律及び船舶安全法の規定に基づく型式承認は,「MST-30」の表示が付された全機種につき,被告ヤマミズ名で行われており,型式承認書(乙21の1ないし3)も同被告宛てに発行されている。また,上記型式承認結果を記載した官報(乙22の1ないし3),「国土交通省型式承認物件一覧表(舶用品)」(乙23),社団法人日本船舶品質管理協会発行の「品質時報」(乙24ないし26)には,「MST-30」の表示が付された機種の製造者として,いずれも被告ヤマミズが記載されている。 (イ) 展示会「MST-30」の表示が付された機種は,被告ヤマミズの商品として,展示会で広く公開されている。 例えば,国際海事展(SeaJapan94)のカタログ(乙15)には,被告ヤマミズを紹介する項目において,「YAMAMIZUMST-30Xは…1978年に発表以来高い評価を頂いたMST-30シリーズの最新型機です。」と記載されている。 (ウ) 製品カタログMST-30R,MST-30RF,MST-30XLの各カタログ(乙16,17)には,随所に被告ヤマミズの名称が記載されており,これらの商品が被告ヤマミズの商品であることが一目瞭然である。 (エ) 被告ヤマミズにおける製品案内・会社案内被告ヤマミズの製品案内(乙18),会社案内(乙19,20)において,MST-30型機は被告ヤマミズの商品であると紹介されている。 ウ (エ) 被告ヤマミズにおける製品案内・会社案内被告ヤマミズの製品案内(乙18),会社案内(乙19,20)において,MST-30型機は被告ヤマミズの商品であると紹介されている。 ウしたがって,被告らが「MST-30」を含む型式名を付して船舶用油槽洗浄機を製造販売することは,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に当たらない。 5 争点(2)ウ(MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為による損害額)(原告の主張)(1) 原告は,従前,MBT-30型機の製造販売に関し,1台当たり1万7000円のロイヤリティを得ていたところ,MST-30XL型機がMBT-30型機より高額であることからすると,その使用料相当額は1台当たり1万7000円を下らない。したがって,同額がMST-30XL型機1台当たりにつき原告が得べかりし利益となる。 (2) 平成8年11月1日から平成15年8月27日までの間のMST-30XL型機の販売台数は4942台(1か月平均60.26台)であるから(甲12),平成19年10月27日から平成23年6月30日まで(44か月)の間におけるMST-30XL型機の販売台数は2651台(60. 26台×44か月)と推認される。 したがって,被告らの債務不履行又は共同不法行為による原告の損害額は4506万7000円(1万7000円×2651台)となるところ,原告は,その一部である100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 6 争点(2)エ(MST-30XL型機に関する不正競争による損害額)(原告の主張)(1) 争点(2)ウに関する原告の主張のとおり,MBT-30型機のロイヤリティ額との比較等によれ 6 争点(2)エ(MST-30XL型機に関する不正競争による損害額)(原告の主張)(1) 争点(2)ウに関する原告の主張のとおり,MBT-30型機のロイヤリティ額との比較等によれば,MST-30XL型機の使用料相当額は1台当たり1万7000円を下らない。 (2) 平成8年11月1日から平成15年8月27日までの間のMST-30XL型機の販売台数は4942台(1か月平均60.26台)であるから(甲12),平成8年11月1日から平成23年6月30日まで(176か月)の間におけるMST-30XL型機の販売台数は1万0605.76台(60.26台×176か月)と推認される。 したがって,被告らの不正競争に対し原告が受けるべき金銭の額(不正競争防止法5条3項)は1億8029万7920円(1万7000円×1万0605.76台)となり,原告は,その一部である100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(MBT-30型機に関する債務不履行の成否)について(1) 事実の経緯証拠(争いのない事実以外は,末尾に証拠等を記載する。)によれば,争点(1)アに関し,次の事実が認められる。 ア原告代表者であるA(以下「原告代表者」という。)は,昭和30年代中頃,被告ヤマミズに入社し,同社において,船舶用油槽洗浄機の開発業務等に従事し,可搬式船舶用油槽洗浄機(カッパーマシンN-2型機)の 開発及びその製造,リース等に関与したが,昭和45年3月31日付けで被告ヤマミズを退社した(甲45,乙27)。 イ原告代表者は,上記退社の翌日である昭和45年4月1日,被告ヤマミズと,被告ヤマミズの船舶用油槽洗浄機のリース関 たが,昭和45年3月31日付けで被告ヤマミズを退社した(甲45,乙27)。 イ原告代表者は,上記退社の翌日である昭和45年4月1日,被告ヤマミズと,被告ヤマミズの船舶用油槽洗浄機のリース関係取引先であったカッパー工業との間で,①「原告代表者の考案した新型タンククリーニングマシン」及びその改良点の考案は原告代表者に帰属し,その実施権は被告ヤマミズらに帰属すること,②被告ヤマミズらは原告代表者の製造する上記マシンを購入すること,③被告ヤマミズらが原告代表者以外の者に上記マシンの製造を発注するときには,原告代表者に設計製造に関する指導を依頼し,原告代表者は責任をもってこれを引き受け,その対価の支払を受けること等を内容とする契約(甲30)を締結した。 また,原告代表者は,その頃,原告の代表者に就任し,同月6日,被告中一との間で,「原告が考案した新型洗浄機」の製造を被告中一に一手に依頼すること等を内容とする契約(甲20)を締結した(以下,これらを併せて「昭和45年契約」という。)(甲20,30,45,乙27)。 ウ原告は,その後,被告中一に対し,MU-30型機の製造を委託し,同機の納入を受けた上で,被告ヤマミズ等に販売するようになった(甲45,乙27,30)。 エ上記MU-30型機は可搬式船舶油槽洗浄機であったが,原告は,昭和45年頃,可搬式ではなく固定式の船舶油槽洗浄機の開発を検討し,昭和45年9月1日,東光精機との間で,「固定式洗滌機」の設計,製作,営業について,設計は原告が行い,製作は原告の指示に基づき東光精機が行うこと等を内容とする契約(甲21)を締結した(甲21,45,乙27)。 オその後,原告は,東光精機との間の上記エの契約を解消し,前記前提事実(2)ア及びイのとおり,昭和46年4月1日付けで被告ヤ 等を内容とする契約(甲21)を締結した(甲21,45,乙27)。 オその後,原告は,東光精機との間の上記エの契約を解消し,前記前提事実(2)ア及びイのとおり,昭和46年4月1日付けで被告ヤマミズとの間 で第1契約を,同日付けで被告中一との間で第2契約をそれぞれ締結した(甲4,5,45,乙27,30)。 カその上で,原告は,固定式船舶油槽洗浄機であるMBT-30型機の設計を行い(甲22,乙2ないし8,10,11,12の1ないし4は,いずれも上記設計の過程で作成された図面である。),その頃から,前記前提事実(3)のとおり,被告ヤマミズからMBT-30型機の発注を受け,その製造を被告中一に委託し,被告中一からその納入を受けた上で被告ヤマミズに販売・納入する取引を行うようになった。 キ原告は,昭和53年頃,被告中一が製造したMBT-30型機が,原告を経由することなく,被告ヤマミズから販売されているのではないかという疑念を強く抱くようになり,昭和53年12月21日,被告ヤマミズに対し,第1契約10条に基づき,同契約を昭和54年3月31日付けで終了させる旨の通知書を発出した(乙13)。これに対し,被告ヤマミズは,昭和54年1月16日付けで,円満解決を希望する旨の書面(甲32)を送付した。 ク原告,被告ヤマミズ及び被告中一は,その後も,平成12年頃までの間,MBT-30型機に関し,前記前提事実(3)及び上記カ記載の取引を継続している(甲33の1ないし10,34の1ないし6,35の1ないし12,36の1ないし12,37の1ないし8,45,乙27,29)。 (2) MBT-30型機が第1,第2契約の対象外であるか否かア以上の事実に照らして検討するに,上記(1)オのとおり,第1,第2契約は固定式船舶油槽洗浄機で し8,45,乙27,29)。 (2) MBT-30型機が第1,第2契約の対象外であるか否かア以上の事実に照らして検討するに,上記(1)オのとおり,第1,第2契約は固定式船舶油槽洗浄機であるMBT-30型機の考案・設計段階で締結されたものであり,上記(1)カのとおり,その後,程なくして,実際に,MBT-30型機について,製造者である被告中一と販売者である被告ヤマミズの間に原告が介在し,製造価格と販売(被告ヤマミズへの卸売)価格との差益を得るという,第1,第2契約の内容に沿った取引が開始され ているのであるから,第1,第2契約の当事者である原告及び被告らにおいて,第1,第2契約の対象(第1契約における「原告の考案設計した特殊油槽洗浄機〔「マシン」〕」,第2契約における「原告の考案した機械」,「同じ目的に使用する類似した機械」)に,当時,考案・設計中であったMBT-30型機が含まれるものとして同契約を締結したことがうかがわれるのであり,MBT-30型機が,第1,第2契約の対象に含まれると解するのが,契約当事者の意思解釈として合理的である。 イこの点,被告らは,MBT-30型機は被告中一が考案設計したものであるから,同機は第1契約における「原告の考案設計した特殊油槽洗浄機」及び第2契約における「原告の考案した機械」のいずれにも含まれないと主張する。 しかし,MBT-30型機が第1,第2契約の対象外であるという被告らの主張が,MBT-30型機の設計,製造及び販売に関する事実経過からうかがわれる当事者の意思に沿わないものであることは,上記アでみたとおりである。 また,原告代表者が,被告ヤマミズにおいて,上記(1)アでみたとおりの業務に従事していたことに加え,原告代表者が被告ヤマミズを退社した直後の時期 ないものであることは,上記アでみたとおりである。 また,原告代表者が,被告ヤマミズにおいて,上記(1)アでみたとおりの業務に従事していたことに加え,原告代表者が被告ヤマミズを退社した直後の時期に,被告ヤマミズが「原告代表者の考案した新型タンククリーニングマシン」を実施する権利(販売する権利)を,被告中一が「原告の考案した新型洗滌機」を製造する権利を各取得する契約を原告又は原告代表者と締結し(上記(1)イ),更に,被告らが,昭和46年に原告との間で第1,第2契約を締結した上で(上記(1)オ),実際に,MU-30型機及びMBT-30型機について,原告を被告中一による機械製造と被告ヤマミズによる機械販売の間に介在させる取引を継続的に行ってきたこと(上記(1)ウ,カ),原告が,東光精機と一旦は契約を締結したにもかかわらず,これを解消して第1,第2契約を締結したものであり(上記(1) エ,オ),第1,第2契約の締結は,被告らの希望によるものであることがうかがわれることに鑑みれば,被告らが,原告(原告代表者)の船舶用油槽洗浄機に係る技術を評価し,原告の考案設計した油槽洗浄機を製造,販売する権利を早期に確保することに営業上の利益があるものと考えて,そのために昭和45年契約や第1,第2契約を締結したものであると解するのが合理的である。これらの事情に照らせば,MBT-30型機は,原告(原告代表者)が,その技術に基づき考案設計したものとみるのが相当である。 なお,被告らは,被告中一においてMBT-30型機の設計図面(上記(1)カの乙号証として挙げたもの)を保有していることを挙げて,MBT-30型機は被告中一において考案設計したものであると主張する。しかし,原告代表者の陳述書(甲45)及び前訴における原告代表者尋問調書(乙27。 として挙げたもの)を保有していることを挙げて,MBT-30型機は被告中一において考案設計したものであると主張する。しかし,原告代表者の陳述書(甲45)及び前訴における原告代表者尋問調書(乙27。以下「原告代表者調書」という。)によれば,原告は,第1,第2契約締結後,被告中一にMBT-30型機の構造等を説明し,寸法等を指示して製図を行わせたというのであり,上記の第1契約,第2契約に至る経緯に照らしても,上記陳述は合理的なものということができる。この点に関し,前訴における被告ヤマミズ従業員Bの証人尋問調書(乙28。 以下「B調書」という。)及び被告中一従業員Cの証人尋問調書(乙30。 以下「C調書」という。)には,MU-30型機及びMBT-30型機は被告らが設計したものである旨述べる部分があるが,上記証人らは,いずれも,MU-30型機及びMBT-30型機が被告らの設計に係るものであるにもかかわらず,これらの製造販売につき原告が介在することとなった理由を説明できておらず,採用することができない。 また,第1契約の当事者にカッパー工業が入っているからといって,上記結論が左右されるものではない。 (3) 被告らは,第1,第2契約はその対象を特定することができず,また, 公序良俗に反するから無効である旨も主張する。 ア対象不特定による無効の主張について第1,第2契約の締結時において,原告及び被告らが,少なくともMBT-30型機を対象に含める意思であったとみられることは上記(2)アでみたとおりである。加えて,上記(1)でみた事実経過に照らし,上記時点において,原告及び被告らが,上記契約の対象に含まれる機械(原告が考案設計した船舶用油槽洗浄機)を特定することは十分に可能であったと認められるから,第1,第2契約が でみた事実経過に照らし,上記時点において,原告及び被告らが,上記契約の対象に含まれる機械(原告が考案設計した船舶用油槽洗浄機)を特定することは十分に可能であったと認められるから,第1,第2契約が,その対象を特定できないことを理由として無効であるとは認められない。 イ公序良俗違反による無効の主張について(ア) 第1,第2契約は,被告中一による機械の製造と被告ヤマミズによる機械の販売につき,原告をその中間に介在させるものであり,原告は,これにより,製造価格と販売(被告ヤマミズへの卸売)価格との差益を得ることになったものと認められる。しかし,前記(2)イでみたとおり,第1,第2契約には,被告らが,原告の船舶用油槽洗浄機に係る技術に基づき開発,設計された機械の製造権・販売権を確保するという意味合いがあったとみられるのであって,第1,第2契約により被告らが利益を得る面もあるものと認められる上,第1,第2契約は,原告に対し,被告らが機械の製造・販売をすることが可能になるよう,その考案等に係る機械の構造等を被告らに開示する義務を負わせるものと解されるのであるから,同契約が,被告らに一方的な負担を負わせるものであり,または,原告に何ら負担なく不当な利益を得させるものであるなどと評価することはできない。 (イ) 被告らは,原告がMBT-30型機につき特許権等の知的財産権を保有していないにもかかわらず,第2契約に基づき,被告中一に「同じ目的に使用する類似した機械」の製造を契約終了後10年間にわたり禁 ずること(第4条,第9条)は,被告中一に不明確かつ過重な負担を負わせるものである旨も主張する。 しかし,被告らは,前記(1)オのとおり,MBT-30型機の設計段階で第1,第2契約を締結しているのであり,同機に係る技術内容が特許 中一に不明確かつ過重な負担を負わせるものである旨も主張する。 しかし,被告らは,前記(1)オのとおり,MBT-30型機の設計段階で第1,第2契約を締結しているのであり,同機に係る技術内容が特許権等の対象となるものであるか否かの確認を待つことなく,早期にその技術内容の開示を受け,その製造権及び販売権を確保することを選択したものと解されるのであって,これにより,市場における利益を確保した面もあるものと解されるのであるから,原告がMBT-30型機につき特許等を取得しなかったとしても,これにより,第2契約が当初から無効のものであったとみるべきものとは解されない。 また,上記(ア)でみたとおり,第2契約は,原告が,その考案に係る機械の構造等を被告中一に対し開示することにより,被告中一がその製造をすることを可能とするものと解されるものであるところ,被告中一が,上記開示に係る情報を利用して製造した機械を第三者に販売し,または,被告中一が上記情報を第三者に開示した場合には,原告が保有する技術が流出し,第1,第2契約が無意味なものとなるおそれがある。 第2契約の第4条前段が,被告中一に対し,原告の考案した機械の製作上,機構,性能上の秘密を第三者に漏洩することを禁じ,かつ,同条後段が,被告中一につき,「同じ目的に使用する類似した機械」の製造販売を禁じているのは,上記のような事情に鑑みたものであることがうかがわれるところである。そうすると,第2契約第4条は,その趣旨において合理的なものであり,同条を上記趣旨に沿う内容のものとして解釈する限り,被告中一に,不合理な義務を一方的に課すものであるとは認められない。そして,第2契約第4条の上記趣旨や,第4条の構成(第4条が,第三者に対し機械製作上等の秘密を漏洩することを禁じた第4条前段に続けて,同一条文内で 理な義務を一方的に課すものであるとは認められない。そして,第2契約第4条の上記趣旨や,第4条の構成(第4条が,第三者に対し機械製作上等の秘密を漏洩することを禁じた第4条前段に続けて,同一条文内で「同じ目的に…機械」の製造販売を禁ず る旨規定していること)等に鑑みれば,第4条は,原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機そのものを原告に無断で製造した上,原告以外の者に納入すること及び原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機そのものではなくとも,原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機に関する,原告の保有する技術上の秘密と評価することができる範囲の設計・構造上の技術的事項を利用した機械を原告に無断で製作することを禁じたものと解されるのであり,同条をこのように解する限り,同条が,被告中一に不当かつ過重な負担を負わせるものであるとか,同条項が漠然かつ包括的に過ぎるものであるなどとは解されない。なお,前訴高裁判決における,第2契約第4条後段に関する認定(原告又は原告代表者が開発した船舶用油槽洗浄機そのものを原告に無断で製造販売すること又は同機の設計を盗用した類似品の製造販売を禁じた趣旨である旨)も同様の趣旨であると解される。 (ウ) 以上によれば,第1,第2契約が,公序良俗に反し無効であるとも認められない。 (4) 被告らは,第1契約は昭和54年3月31日に,第2契約は昭和56年3月31日に各終了済みであるとも主張する。 ア第1契約について原告が,昭和53年12月21日,被告ヤマミズに対し,第1契約を昭和54年3月31日付けで終了させる旨の通知を送付したことは前記(1)キのとおりである。しかし,原告は,被告ヤマミズとの協議の結果,上記意思表示を撤回した旨の主張をしており,原告代表者の陳述書にはこれに沿う部分がある(甲45 させる旨の通知を送付したことは前記(1)キのとおりである。しかし,原告は,被告ヤマミズとの協議の結果,上記意思表示を撤回した旨の主張をしており,原告代表者の陳述書にはこれに沿う部分がある(甲45の9頁)ところ,被告ヤマミズが,昭和54年1月16日付けで円満解決を希望する旨の書面を原告に送付していること(前記(1)キ)及び原告と被告ヤマミズとの間で,その後,MBT-30型機について,取引が継続されていること(前記(1)ク)は,原告の上記 主張に沿うものである。 したがって,原告による第1契約を終了させる旨の意思表示は撤回され,第1契約は従前どおり継続したものと認めるのが相当である。 イ第2契約について第2契約は,自動更新を1回に限る旨を明示するものではない上(甲4),前記(1)クのとおり,被告中一は,第2契約が終了した旨主張する昭和56年3月31日以降も,MBT-30型機について,従前と同様の取引を継続しているのであるから,原告及び被告中一の間において,第2契約が第7条に基づき更新された後の契約期間満了日である昭和56年3月31日の後においても同契約を継続する旨の黙示の合意があったものとみるのが相当である。 ウ以上によれば,第1,第2契約が昭和54年又は昭和56年に終了済みである旨の被告らの主張はいずれも採用できない。 (5) 以上によれば,第1,第2契約はMBT-30型機を対象とするものであると認められ,無効であり又は終了済みのものであるとは認められないのであるから,被告らが,原告を介さず直接MBT-30型機の製造及び販売を行うことは,被告ヤマミズについては第1契約第4条所定の,被告中一については第2契約4条所定の各義務に反するものであり,原告に対する債務不履行を構成するも 介さず直接MBT-30型機の製造及び販売を行うことは,被告ヤマミズについては第1契約第4条所定の,被告中一については第2契約4条所定の各義務に反するものであり,原告に対する債務不履行を構成するものと認められる。また,被告ヤマミズと被告中一の従前の関係等(乙28ないし30,弁論の全趣旨)に照らし,被告らは,第1,第2契約に基づく義務を原告に対して各自負っていることを互いに認識しながら,前記前提事実(4)のとおり,原告を介さず直接に取引するようになったものと認められ,同被告らの上記行為は,共同不法行為(民法719条1項)も構成するものと認められる。 2 争点(1)イ(MBT-30型機に関する損害額)について(1) 証拠(乙31,43)によれば,被告ヤマミズによる平成19年10月 27日から平成23年6月30日までの間におけるMBT-30型機の販売台数は,195台であると認められる。この点に関し,原告は,前訴地裁判決において,平成15年8月28日から平成19年10月26日までのMBT-30型機の販売台数が1か月平均8.11台とされていることから,同月27日以降も同様の販売があったことが推認されると主張するが,具体的裏付けを欠き,採用できない。 (2) 前記前提事実(3)のとおり,原告が,MBT-30型機の販売に当たり得ていた販売差益(ロイヤリティ相当額)は,1台当たり1万7000円であったと認められるから,被告らの不法行為により原告が被った損害額は,下記計算式のとおり331万5000円となる。なお,債務不履行に基づく原告の損害額も,上記金額を超えるものではないものと認められる。 1万7000円×195台=331万5000円 3 争点(2)ア(MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為の成否)について も,上記金額を超えるものではないものと認められる。 1万7000円×195台=331万5000円 3 争点(2)ア(MST-30XL型機に関する債務不履行又は共同不法行為の成否)について(1) 既判力への抵触又は信義則違反の主張についてア原告は,本訴において,被告らによる平成19年10月27日から平成23年6月30日までの間におけるMST-30XL型機の製造販売は,被告中一につき第2契約第4条違反の債務不履行に,被告らにつき共同不法行為に各該当すると主張し,これらに基づく損害賠償を請求するものであるところ,前記前提事実(5)イのとおり,原告は,前訴において,被告らによる平成15年8月27日から平成19年10月26日までの間におけるMST-30XL型機の製造販売は,第1,第2又は第3契約違反の債務不履行又は共同不法行為に各該当すると主張して損害賠償を請求したものであり,これを棄却する判決が確定していることが認められる。 イ被告らは,原告のMST-30XL型機に関する本訴請求が前訴確定判決の既判力に抵触し,又は信義則に反し許されないと主張する。 (ア) しかし,本件における債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求は,いずれも,被告らの継続的行為により継続的に損害が発生していくものであり,その継続的行為及び損害の発生する期間が訴訟物を画する要素となるものである。前訴における請求と,本訴における請求が,行為及び損害において異なる時期を対象とするものである以上,両請求は訴訟物を異にするものであり,本訴請求が前訴確定判決の既判力に抵触するとはいえない。 (イ) もっとも,原告の本訴請求は,上記のとおり,被告らによる継続的行為に関し,債務不履行又は不法行為を主張するものであり,原告が被告らによる 訴確定判決の既判力に抵触するとはいえない。 (イ) もっとも,原告の本訴請求は,上記のとおり,被告らによる継続的行為に関し,債務不履行又は不法行為を主張するものであり,原告が被告らによる違反を主張する契約条項は,前訴において問題とされた契約条項と同一である上,原告が問題とするMST-30XL型機の構成部分は,前訴において問題とした部分と実質的に同一であるから,原告の本訴請求は,前訴において認められなかった主張と実質的にほぼ同一の争点に関し,再び審理判断を求めるものということができる。 しかし,上記(ア)のとおり,前訴請求と本訴請求は,その請求期間において異なるものであり,前訴において,本訴に係る期間における債権の存否が審理されたものとまではいうことはできず,被告らが,前訴における請求期間から,MST-30XL型機の設計に変更がない旨陳述していることなどを考慮しても,原告の本訴請求が信義則に反するものとまでは認められない。 ウしたがって,被告らの主張には理由がない。 (2) 債務不履行の成否ア第2契約第4条が,被告中一について,原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機そのものを原告に無断で製造した上,原告以外の者に納入すること及び原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機に関する原告の保有する技術上の秘密と評価できる範囲の設計や構造上の技術的事項を原告に無断で利用し, 船舶用油槽洗浄機を製作することを禁じたものと解されることは,前記1(3)イ(イ)でみたとおりである。 イ原告は,その考案に係る船舶用油槽洗浄機であるTMU-33型機に関する技術的事項が,MST-30XL型機において利用されているとし,被告中一が原告に無断でMST-30XL型機を製造することは,第2契約第4条違反の債務不履行に当たると主張する。 MU-33型機に関する技術的事項が,MST-30XL型機において利用されているとし,被告中一が原告に無断でMST-30XL型機を製造することは,第2契約第4条違反の債務不履行に当たると主張する。 しかし,原告は,TMU-33型機の設計上の特徴を,原告代表者による昭和54年の特許出願に係る昭和55年の公開特許公報(甲24。以下「本件公報」という。)に基づき説明しているところ,本件公報に係る特許出願は拒絶査定を受け,特許権の設定登録がされなかったものであるから(乙27,弁論の全趣旨),仮にMST-30XL型機において本件公報記載の技術を利用しているものであるとしても,原告が本件において債務不履行又は不法行為の成立を主張する平成19年ないし平成23年の時点においては,本件公報記載の技術は公知のものであったというべきであり,上記利用行為が,原告の保有する秘密に係る技術的事項を利用したものと評価されることはないものと解される。 ウまた,TMU-33型機の技術的特徴に照らして検討しても,下記エ及びオのとおり,MST-30XL型機はTMU-33型機の技術を利用したものに当たらない。 エ(ア) 原告は,TMU-33型機が「(従前のようにノズルボディに接合された)曲線ノズルを採用せずに(完全に)オフセットすること」を目的とし,そのために「リンク方式を採用することにより洗浄ノズルをギアやシャフトなどでノズルボディと接合せず,ノズルボディと離れた三次元の位置に真っ直ぐノズルを配置」するという手段を採用したことに技術的特徴があると主張し,上記技術的特徴に関し,本件公報を引用して説明をする。 (イ) そこで本件公報を見ると,本件公報の「発明の詳細な説明」では,オイルタンカーの油槽等の洗浄機に関し,従来技術の問題点として,①回動ケ に関し,本件公報を引用して説明をする。 (イ) そこで本件公報を見ると,本件公報の「発明の詳細な説明」では,オイルタンカーの油槽等の洗浄機に関し,従来技術の問題点として,①回動ケーシングに直線状の回動ノズルを接合させた場合,回動ノズルから噴射される洗浄液による反力が,回動ノズルの回動に伴って増減することにより,回動ケーシングの回動速度に影響し,洗浄パターンが乱されること,②回動ケーシングに屈曲させた回動ノズルを接合させた場合,洗浄液による反力は回動ケーシングの中央を通ることから,反力による上記①のような問題は生じないが,屈曲のためノズルの回動が制限され,洗浄できない部分が生じることが挙げられるとした上で(1頁左下欄~2頁左上欄),洗浄機の通路を形成した可動ケーシングに垂直軸を設け,該垂直軸の前方に距離を隔てて立体的に水平軸を設け,該水平軸に,前記通路に連通する洗浄機の通路を形成し,また該水平軸に,前記通路に連通するノズルを回動自在に設け,該ノズルの中心線の延長線を,前記垂直軸に交叉せしめること(「特許請求の範囲」,2頁左上欄)により,油槽内部のほぼ全面にわたって洗浄することができる上,回動速度が乱されずにすむ(2頁左下欄,右下欄)という作用効果を得ることができる旨が記載されている。 (ウ) 本件公報の上記記載に照らせば,出願人である原告代表者自身が,船舶用油槽等洗浄機において,回動ノズルからの洗浄液の噴射による反力が回動ケーシングの回動に影響を及ぼすことがあること及び洗浄液の噴射方向の延長線を,回動ケーシングの中央を通らせることにより,上記反力の問題を解消することができることが従来技術であると認識していたことが明らかである。そして,本件公報記載の発明は,反力による上記①の問題を解消するため,洗浄液の噴射方向 通らせることにより,上記反力の問題を解消することができることが従来技術であると認識していたことが明らかである。そして,本件公報記載の発明は,反力による上記①の問題を解消するため,洗浄液の噴射方向の延長線を回動ケーシングの中央に通すべく,従来技術のように屈曲したノズルを用いると,ノズルの回動範囲の制限という別の問題が生じることから,回動ケーシ ングに設けた垂直軸の前方に距離を隔てて立体的に水平軸を設け,更にその水平軸にノズルを設けた上,ノズルの中心線の延長線を垂直軸に交叉させるという請求項記載の構成を採用したものであり,原告代表者が,このような,ノズルや洗浄液流路の形状,その位置という具体的構成に当該発明の技術的特徴があると認識していたことがうかがわれるというべきである。そして,原告が,上記(ア)のとおり,本件公報の記載を引用してTMU-33型機の技術的特徴を説明していることや,TMU-33型機の構造(甲10,乙33)が本件公報記載の第1図ないし第5図の構造と基本的に同一であることからすれば,TMU-33型機の技術的特徴も,これと同様であると解されるところである。 (エ) そうすると,MST-30XL型機において,ノズルからの洗浄液の噴出方向の延長線が,ノズルボディの中心線を通るように設計されており(甲25,乙40),これにより,洗浄液の噴出による反力がノズルボディの回動に影響を及ぼすことを避ける(原告のいう「オフセット」)という効果を得ることができるものであるとしても,それ自体は,原告代表者自身も従来技術であると認識していた事項に属するものであり,この点をもって,直ちに,MST-30XL型機がTMU-33型機における原告代表者の考案に係る技術を利用したものとみることはできない。 (オ) そして,上記(ウ)でみた本件 項に属するものであり,この点をもって,直ちに,MST-30XL型機がTMU-33型機における原告代表者の考案に係る技術を利用したものとみることはできない。 (オ) そして,上記(ウ)でみた本件公報に係る発明の目的(ノズルからの洗浄液の噴出による反力の問題を解消しつつ,洗浄範囲に制限が生じないようにすること)を達成するための,ノズルや洗浄液流路の形状,その位置といった具体的構成については,本件公報には,実施例として第2図ないし第5図記載の構成しか示されていない上,上記(エ)でみたとおり,TMU-33型機も,上記実施例とほぼ同一の構成を採っているものであるから,TMU-33型機に技術的特徴があるとすれば,ノズ ルや洗浄液流路の形状,その位置を,本件公報の第2図ないし第5図記載のような構成(ノズルボディの前方に距離を隔てて設けた水平軸に向けて,洗浄液の流路を屈曲した形状で設け,上記水平軸に直線状のノズルを設けた形状)とした点にあるとしか解されない。これに対し,MST-30XL型機は,洗浄液の流路がノズルボディの先端付近から一旦二方向に分かれた上,中央のノズルにおいて合流する構成を採っているのであり(甲25,乙40),このようなノズルや洗浄液流路の形状,位置は,本件公報及びTMU-33型機のいずれにも示されていないものであるということができる。そうすると,MST-30XL型機は,TMU-33型機の技術的特徴であるとみられる点において,異なる構成を採用しているものであり,この点において,同機の技術を利用したものに当たるとは認められない。 なお,MST-30XL型機の構成が,ノズルからの洗浄液の噴出方向の延長線がノズルボディの中心線を通るように設計されており,これにより,洗浄液の噴出による反力がノズルボディの回動に影響を及ぼす なお,MST-30XL型機の構成が,ノズルからの洗浄液の噴出方向の延長線がノズルボディの中心線を通るように設計されており,これにより,洗浄液の噴出による反力がノズルボディの回動に影響を及ぼすことを避けることができるという点で,TMU-33型機と同一の効果を果たすものであるとしても,この点をもって,技術的特徴部分において同一であるといえないことは,上記(エ)でみたとおりである。 オまた,原告の主張する構成を個別にみたとしても,次のとおり,MST-30XL型機が,TMU-33型機の技術を利用したものとは解されない。 (ア) すなわち,まず,直線ノズルをノズルボディと離れた3次元の位置に設置したとする点については,上記エ(イ)及び(ウ)でみたところに加え,本件公報に,「水平軸4を,垂直軸3の前方に距離rを隔てて立体的に設けたことにより,ノズル6の先端は,第1図に示す如く直上を示す迄に回動せしめ得る」(2頁左下欄16行~19行)との記載がある ことも考慮すれば,ノズルの回動に制限が生じることを避けるためのものであり,ここでいう「距離」又は「ノズルボディと離れた3次元の位置」とは,そのために十分な程度のものを指すと解されるところである。 そして,MST-30XL型機は,ノズルがノズルボディの中心軸から近い位置に設けられており,ノズルを回動させたときに,直上まで達する前にノズルがノズルボディに接触するものであるとみられるのであって(甲25及び乙40の1枚目の,向かって左側の図面参照),実際に,その回動範囲は130度に限られるというのであるから(甲25,乙29〔D調書24頁〕,40),ノズルとノズルボディの間の距離が,ノズルの回動に制限が生じることを避けるために十分なものであるということはできない。したがって,MST-3 うのであるから(甲25,乙29〔D調書24頁〕,40),ノズルとノズルボディの間の距離が,ノズルの回動に制限が生じることを避けるために十分なものであるということはできない。したがって,MST-30XL型機は,この点においても,TMU-33型機における技術的特徴を利用したものではないというべきである。 (イ) 更に,リンク機構の採用についてみても,本件公報において,リンク機構の存在は,同公報記載の発明の実施例(第1図~第5図)の説明として,「垂直軸3の先端は槓杆12に,その長穴13により軸着14されており,又この槓杆12は可動ケーシング2に軸着15されている。 前記槓杆12の先端はアーム16に軸着17され,このアーム16はノズル6に軸着18されている。」(2頁右上欄12行~16行)と記載されているのみであり,上記構造を採用することによる作用効果については,「この結果垂直軸3の軸方向の往復動によりノズル6が上下に揺動し得るようになっている。」という一般的な効果以外に特に記載がない。そして,上記構造は特許請求の範囲の記載にも反映されていないのであるから,原告代表者が,リンク機構の採用そのものに特段の技術的意義があると考えていたとは解されない。この点,原告は,リンク機構の採用により,ノズルボディ内部に駆動機構を収納する必要がなくなり, 軽量化,機構のシンプル化,整備性の向上を図ることができた旨主張するが,このような作用効果はリンク機構の採用から自明の事項であると解されるのであって,原告代表者の考案に係る技術的事項であると解することはできない。なお,原告は,「オフセットした真っ直ぐノズル」と「リンク機構」を組み合わせたことに技術的意味がある旨も主張するが,上記組合せにより,前者に係る作用効果(反力の問題の解消)と,後者に とはできない。なお,原告は,「オフセットした真っ直ぐノズル」と「リンク機構」を組み合わせたことに技術的意味がある旨も主張するが,上記組合せにより,前者に係る作用効果(反力の問題の解消)と,後者に係る作用効果(軽量化,機構のシンプル化等)とは別の新たな作用効果が生じる旨主張するものではなく,その組合せに新たな技術的意味を見出すことができない。また,仮に,TMU-33型機のリンク機構の具体的構造に技術的意義があるとしても,MST-30XL型機は,リンク機構の具体的構造においてTMU-33型機とは異なるものであると認められるから(甲10,24,33,40),MST-30XL型機における利用の事実を認めることができない。 カ以上のとおりであって,MST-30XL型機が,原告の考案に係る船舶用油槽洗浄機に関する原告の保有する技術上の秘密と評価できるような設計や構造上の技術的事項を原告に無断で利用して作成されたものとは認められず,被告中一がMST-30XL型機を製造し,被告ヤマミズに納入したことが,第2契約第4条に違反するものとは認められない。 (3) 共同不法行為の成否上記(2)でみたとおり,被告中一に債務不履行の成立が認められない以上,被告中一によるMST-30XL型機の製造及び被告ヤマミズへの納入に違法性はなく,この点につき被告らに共同不法行為が成立する余地はない。 4 争点(2)イ(MST-30XL型機に関する不正競争の成否)について(1) 原告は,「MST-30」は昭和54年12月頃には原告の考案,設計,製造する固定式船舶油槽洗浄機の表示として周知となったと主張するところ,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)によれば,この点に関し,次の事実 が認められる。 ア被告ヤマミズは,昭和52年 製造する固定式船舶油槽洗浄機の表示として周知となったと主張するところ,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)によれば,この点に関し,次の事実 が認められる。 ア被告ヤマミズは,昭和52年11月頃,「造船技術 ‘77/11号」(甲17)に,同社の新製品として「MUCANNONFIXMODELMST-30」を紹介する記事を掲載し,昭和53年8月頃から,「MST-30」で始まる型番を付した船舶用油槽洗浄機(以下「MST-30型機」という。)を販売するようになった(甲17,18,乙28〔B調書7頁〕)。なお,上記記事には,被告ヤマミズの前身である「山水商事(株)機械課」との記載はあるものの,原告に関する記載はない(甲17)。 被告ヤマミズは,昭和53年8月から昭和54年12月までにかけて,石川島播磨重工業,三菱重工業,日立ロビンドック等の国内造船所に対し,MST-30型機を順次納入した(甲18,乙28)。 イ被告ヤマミズは,前記前提事実(2)ウ(ア)のとおり,昭和54年6月29日,原告との間で第3契約を締結し,同(イ)のとおり,昭和55年10月13日,MST-30R型機及びMST-30RF型機の機構図に署名することにより,第3契約の対象製品が上記2機種であることを確定させた(甲5,6)。 ウ被告ヤマミズは,昭和59年4月頃,「YAMAMIZUMST-30」から始まる型番を付した船舶用油槽洗浄機5機種について,運輸大臣(当時)による型式承認を受け,その頃から,これらの製品を販売するようになった(乙21の1,22の1,23,弁論の全趣旨)。これらの製品のカタログには,被告ヤマミズの名称のみが記載されており,原告に関する記載はない(乙16)。 エその後,被告ヤマミズは,平成2年に「YAMAMIZUMST-30X 論の全趣旨)。これらの製品のカタログには,被告ヤマミズの名称のみが記載されており,原告に関する記載はない(乙16)。 エその後,被告ヤマミズは,平成2年に「YAMAMIZUMST-30XMODEL-A」の,平成8年に「YAMAMIZUMST-30XL」の各型式承認を受け,各型式承認の頃から,各製品を販売してい る(乙21の2,3,22の2,3,23)。MST-30XL型機のカタログには,被告ヤマミズの名称のみが記載されており,原告に関する記載はない(乙17)。 オ原告は,自らを製造者として「UE-7」,「MUUE-6」等の型式の油槽洗浄機につき型式承認を得ているが,原告自身が「MST-30」を含む型式名を付した船舶用油槽洗浄機を日本国内において販売したことはない(乙23,弁論の全趣旨)。 (2) 以上の事実に照らせば,「MST-30」の表示を付した船舶用油槽洗浄機は,一貫して被告ヤマミズにより製造販売されてきたものであり,その販売に際し,上記製品が原告の製造等に係る商品であることを示す表示がされていたような事情もうかがわれないのであるから,上記表示が原告の商品等表示であるとは認められない。 (3) この点に関し,原告は,「MUMachine(ミュウマシン)」,「MuCannonfix(ミュウ・キャノンフィックス)」は原告の商品等表示として周知であったところ,被告ヤマミズは,MST-30型機を「MuCannonfix」シリーズの商品として販売したものであるから,上記表示に接した船舶用油槽洗浄機の需要者は,MST-30型機が原告の商品であることを認識可能である旨主張する。しかし,「MuMachine」と題する昭和45年頃の被告ヤマミズのカタログ(甲13の2)には,原告との共同開発研究により新た ,MST-30型機が原告の商品であることを認識可能である旨主張する。しかし,「MuMachine」と題する昭和45年頃の被告ヤマミズのカタログ(甲13の2)には,原告との共同開発研究により新たな洗浄機を完成したこと及びその名称が「ミュウ・キャノンフィックス」である旨の文章がカタログ1頁目において掲載されているほかには,商品と原告とのつながりを示す記載はなく,かえって,その販売者が被告ヤマミズであることを示す記載がされているものということができる。また,昭和55年頃の海外専門紙広告(甲19)によれば,原告が,国外において,「MST-30」,「MuMachine」を自己の商品として宣伝していたことがうかがわれるものの,原告が国 内において同様の宣伝をしていた事実はうかがわれず,かつ,上記専門紙広告が,国内業者が一般的に目にするものであったとも認められない。加えて,上記カタログや専門紙広告の発行部数等の具体的主張立証がないことも考慮すれば,原告が周知性の獲得を主張する昭和54年時点において,「ミュウ・キャノンフィックス」等の表示が原告の商品等表示として周知であったとは認められない。 また,仮に「ミュウ・キャノンフィックス」等の表示が原告の商品等表示として周知であったとしても,船舶用油槽洗浄機の需要者において,これと切り離した「MST-30」の表示自体について,原告の商品を表示するものと認識するものであったと認めるに足りる立証もないというべきである。 (4) 原告は,「MST-30」の「MST」部分が,「MuSingleTankcleaningmachine」の略称であるとも主張しており,上記主張は,需要者において,「MST-30」の表示自体から,同表示が原告の商品等表示であることを認識可能であると主張する Tankcleaningmachine」の略称であるとも主張しており,上記主張は,需要者において,「MST-30」の表示自体から,同表示が原告の商品等表示であることを認識可能であると主張する趣旨であるとも解される。しかし,昭和54年時点において,船舶用油槽洗浄機の需要者が,「MST」の「M」から「Mu」を想起し,更にそこから原告を想起するのが一般的であったと認めるに足りる立証はない上,仮に上記需要者が「M」から原告を想起するものであったとしても,上記(3)でみたカタログ(甲13の2)の記載にも照らせば,同表示を付した商品が原告の商品であるとまで認識するのが一般的であったとは認められない。 なお,原告は,「M」の文字を冠した型式名は,船舶需要者の間において原告の商品であると広く認識されていたとも主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 (5) 以上によれば,「MST-30」は原告の周知商品等表示であると認められないから,その余の点について検討するまでもなく,被告らによるMST-30XL型機の製造販売行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正 競争に該当するものとは認められない。 5 小括以上のとおりであって,MST-30XL型機に関する原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がないことに帰着する。 第5 結論以上のとおり,原告の請求は,被告らに対し,連帯して331万5000円及び被告らに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余については理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀 主文 の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余については理由がない。よって,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官森川さつき
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